IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人産業技術総合研究所の特許一覧

<>
  • 特開-電気化学的酸素還元用触媒 図1
  • 特開-電気化学的酸素還元用触媒 図2
  • 特開-電気化学的酸素還元用触媒 図3
  • 特開-電気化学的酸素還元用触媒 図4
  • 特開-電気化学的酸素還元用触媒 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157715
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電気化学的酸素還元用触媒
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20241031BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20241031BHJP
   H01M 12/06 20060101ALI20241031BHJP
   B01J 33/00 20060101ALI20241031BHJP
   B01J 31/28 20060101ALI20241031BHJP
   C08G 73/02 20060101ALI20241031BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20241031BHJP
【FI】
H01M4/86 B
H01M4/92
H01M4/86 M
H01M12/06 F
B01J33/00 B
B01J31/28 M
C08G73/02
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072236
(22)【出願日】2023-04-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高温低加湿作動を目指した革新的低白金化技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 眞一
(72)【発明者】
【氏名】朝日 将史
(72)【発明者】
【氏名】五百蔵 勉
【テーマコード(参考)】
4G169
4J043
5H018
5H032
5H126
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BA22A
4G169BA22B
4G169BA32A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BE01A
4G169BE01B
4G169BE06A
4G169BE07A
4G169BE16A
4G169BE16B
4G169CC31
4G169CC32
4G169DA06
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EB18Y
4G169EC28
4G169EE01
4G169FA01
4G169FA06
4G169FB14
4G169FB23
4J043PA01
4J043PA04
4J043PC165
4J043PC166
4J043QC02
4J043QC13
4J043RA02
4J043SA06
4J043SB01
4J043TA42
4J043TA54
4J043TB01
4J043UA392
4J043XA03
4J043XA16
4J043ZA41
4J043ZB47
5H018AA06
5H018AA10
5H018AS03
5H018EE03
5H018EE05
5H018EE08
5H018EE16
5H018EE17
5H018HH00
5H032AA01
5H032AS01
5H032AS02
5H032AS03
5H032AS11
5H032EE01
5H032EE04
5H032EE15
5H032EE18
5H032HH01
5H126BB06
(57)【要約】
【課題】酸素還元活性及びその耐久性に優れる電気化学的酸素還元用触媒を提供する。
【解決手段】白金を含むナノ粒子と炭素数2以上のアルキレン鎖を有するアルキルメラミンポリマーとを含有する、電気化学的酸素還元用触媒。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金を含むナノ粒子と炭素数2以上のアルキレン鎖を有するアルキルメラミンポリマーとを含有する、電気化学的酸素還元用触媒。
【請求項2】
前記アルキルメラミンポリマーが、一般式(1):
【化1】
[式中、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、水酸基、置換若しくは非置換アルキル基、又は置換若しくは非置換アルコキシ基を示す。Rは炭素数が2以上である置換若しくは非置換アルキレン基を示す。]
で表される繰り返し単位を有するアルキルメラミンポリマーである、請求項1に記載の電気化学的酸素還元用触媒。
【請求項3】
前記白金を含むナノ粒子の上に、前記アルキルメラミンポリマーが担持されている、請求項1に記載の電気化学的酸素還元用触媒。
【請求項4】
導電性担体上に担持されている、請求項1に記載の電気化学的酸素還元用触媒。
【請求項5】
前記導電性担体が炭素質材料である、請求項4に記載の電気化学的酸素還元用触媒。
【請求項6】
燃料電池用カソード触媒である、請求項1に記載の電気化学的酸素還元用触媒。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の電気化学的酸素還元用触媒を用いた燃料電池又は金属空気電池用空気極。
【請求項8】
請求項7に記載の空気極を正極として用いた、燃料電池。
【請求項9】
請求項7に記載の空気極を正極として用いた、金属空気電池。
【請求項10】
一般式(1):
【化2】
[式中、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、水酸基、置換若しくは非置換アルキル基、又は置換若しくは非置換アルコキシ基を示す。Rは炭素数が2以上である置換若しくは非置換アルキレン基を示す。]
で表される繰り返し単位を有するアルキルメラミンポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的酸素還元用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池(PEFC)は、小型で効率がよく、また地球環境問題の観点からも早期の普及が期待されている。
【0003】
一般に、PEFCに使用されている高分子電解質は強酸性のカチオン交換膜であるため、電極触媒は強酸性条件下で安定に作用することが必要である。このような理由から、現在のところ、実用に耐え得る電極触媒は白金又は白金を含む合金のみである。
【0004】
ただし、PEFCに使用される白金又は白金を含む合金による触媒の活性は十分とは言えない。具体的には、PEFCの長時間の使用や負荷変動等により、白金又は白金を含む合金による触媒が劣化することが知られている。
【0005】
このため、白金系触媒の活性及び耐久性を向上させることが求められている。本発明者らは、メラミン化合物やそのポリマー等を白金系触媒に修飾すると、白金系触媒が高活性化・高耐久化することを見出してきた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2019/221156号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引用文献1において使用されるメラミン化合物やそのポリマーとして、例えば、繰り返し単位中にスルホン酸基を有するポリマーは、酸素還元活性の耐久性は十分とは言えない。また、引用文献1において使用されるメラミン化合物やそのポリマーとして、繰り返し単位中にフェニレン基等の2価芳香族基を有するポリマーは、初期の酸素還元活性が十分とは言えない。
【0008】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、酸素還元活性及びその耐久性に優れる電気化学的酸素還元用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねてきた。その結果、炭素数2以上のアルキレン鎖を有するアルキルメラミンポリマーによれば、上記課題を解決することができ、酸素還元活性及びその耐久性に優れる電気化学的酸素還元用触媒を提供できることを見出した。本発明は、このような知見に基づきさらに研究を重ね完成されたものである。すなわち、本発明は、以下の構成を包含する。
【0010】
項1.白金を含むナノ粒子と炭素数2以上のアルキレン鎖を有するアルキルメラミンポリマーとを含有する、電気化学的酸素還元用触媒。
【0011】
項2.前記アルキルメラミンポリマーが、一般式(1):
【0012】
【化1】
[式中、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、水酸基、置換若しくは非置換アルキル基、又は置換若しくは非置換アルコキシ基を示す。Rは炭素数が2以上である置換若しくは非置換アルキレン基を示す。]
で表される繰り返し単位を有するアルキルメラミンポリマーである、項1に記載の電気化学的酸素還元用触媒。
【0013】
項3.前記白金を含むナノ粒子の上に、前記アルキルメラミンポリマーが担持されている、項1又は2に記載の電気化学的酸素還元用触媒。
【0014】
項4.導電性担体上に担持されている、項1~3のいずれか1項に記載の電気化学的酸素還元用触媒。
【0015】
項5.前記導電性担体が炭素質材料である、項4に記載の電気化学的酸素還元用触媒。
【0016】
項6.燃料電池用カソード触媒である、項1~5のいずれか1項に記載の電気化学的酸素還元用触媒。
【0017】
項7.項1~6のいずれか1項に記載の電気化学的酸素還元用触媒を用いた燃料電池又は金属空気電池用空気極。
【0018】
項8.項7に記載の空気極を正極として用いた、燃料電池。
【0019】
項9.項7に記載の空気極を正極として用いた、金属空気電池。
【0020】
項10.一般式(1):
【0021】
【化2】
[式中、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、水酸基、置換若しくは非置換アルキル基、又は置換若しくは非置換アルコキシ基を示す。Rは炭素数が2以上である置換若しくは非置換アルキレン基を示す。]
で表される繰り返し単位を有するアルキルメラミンポリマー。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、酸素還元活性及びその耐久性に優れる電気化学的酸素還元用触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例1で得られたエチルメラミンポリマーの質量分析チャートを示す。
図2】実施例2の結果(エチルメラミンポリマーを使用する耐久試験(電位範囲0.6~1.0V)前後の酸素還元活性)の結果を示すリニアスイープボルタモグラムである。
図3】比較例1の結果(アルキルメラミンポリマーを使用しない耐久試験(電位範囲0.6~1.0V)前後の酸素還元活性)の結果を示すリニアスイープボルタモグラムである。
図4】実施例2の結果(エチルメラミンポリマーを使用する耐久試験(電位範囲0.6~0.95V)前後の酸素還元活性)の結果を示すリニアスイープボルタモグラムである。
図5】比較例1の結果(アルキルメラミンポリマーを使用しない耐久試験(電位範囲0.6~0.95V)前後の酸素還元活性)の結果を示すリニアスイープボルタモグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。
【0025】
また、本明細書において、数値範囲をA~Bで表記する場合、A以上B以下を示す。
【0026】
1.電気化学的酸素還元用触媒
本発明の電気化学的酸素還元用触媒は、電気化学的に酸素還元するために用いられる触媒であり、白金を含有するナノ粒子と、炭素数2以上のアルキレン鎖を有するアルキルメラミンポリマーとを含有する。より詳細には、過電圧をより低減し酸素還元活性を向上させやすいとともに、酸素還元活性の耐久性も向上させやすい観点から、白金を含有するナノ粒子上に、炭素数2以上のアルキレン鎖を有するアルキルメラミンポリマーが担持されていることが好ましい。本発明の電気化学的酸素還元用触媒は、当該アルキルメラミンポリマーを単独で含むこともできるし、2種類以上含むこともできる。
【0027】
(1-1)白金を含有するナノ粒子
白金を含有するナノ粒子としては、従来から燃料電池用空気極又は金属空気電池用空気極に用いられる触媒を使用することができる。例えば、白金ナノ粒子、白金合金ナノ粒子、白金を含むコアシェル型ナノ粒子等が挙げられる。
【0028】
白金合金ナノ粒子を使用する場合、例えば、鉄、ニッケル、マンガン、銅、コバルト、クロム、チタン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、金等の少なくとも1種と白金との合金が好ましい。この場合、白金合金中の白金の含有量は、過電圧をより低減し酸素還元活性を向上させやすいとともに、酸素還元活性の耐久性も向上させやすい観点から、50~95質量%が好ましい。
【0029】
白金を含むコアシェル型ナノ粒子を使用する場合、過電圧をより低減し酸素還元活性を向上させやすいとともに、酸素還元活性の耐久性も向上させやすい観点から、コア部は白金より安価な金属を含む合金からなり、シェル部が白金からなることが好ましい。コア部の白金合金としては、上記した白金合金を採用することができる。
【0030】
以上のような白金を含有するナノ粒子の平均粒子径は特に制限されない。活性表面積を向上させやすい観点からは、極力平均粒子径の小さいナノ粒子を使用することが好ましいため、白金を含有するナノ粒子の平均粒子径は、2~40nmが好ましく、2.4~30nmがより好ましく、3~20nmがさらに好ましい。また、白金を含むコアシェル型ナノ粒子を使用する場合は、シェル部の平均厚みは1~3原子層が好ましい。
【0031】
(1-2)アルキルメラミンポリマー
アルキルメラミンポリマーとしては、炭素数2以上のアルキレン鎖を有するアルキルメラミンポリマーを使用する。
【0032】
アルキルメラミンポリマーが有する炭素数2以上のアルキレン鎖は、つまり、炭素数2以上のアルキレン基を意味する。
【0033】
炭素数2以上のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等の低級アルキレン基(特に炭素数2~10、さらに2~6の直鎖又は分岐鎖アルキレン基)が挙げられる。また、このアルキレン基は、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、水酸基、後述のアルキル基、後述のアルコキシ基等の置換基を1~6個(特に1~3個)有することもできる。
【0034】
なお、アルキルメラミンポリマーが有するアルキレン鎖の炭素数が1、つまり、置換若しくは非置換メチレン基である場合は、酸素還元活性の耐久性が十分ではない。
【0035】
このようなアルキルメラミンポリマーとしては、特に制限されるわけではないが、一般式(1):
【0036】
【化3】
[式中、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、水酸基、置換若しくは非置換アルキル基、又は置換若しくは非置換アルコキシ基を示す。Rは炭素数が2以上である置換若しくは非置換アルキレン基を示す。]
で表される繰り返し単位を有するアルキルメラミンポリマーが好ましい。
【0037】
一般式(1)において、R、R、R及びRで示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等の低級アルキル基(特に炭素数1~10、さらに1~6の直鎖又は分岐鎖アルキル基)が挙げられる。また、このアルキル基は、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、水酸基、後述のアルコキシ基等の置換基を1~6個(特に1~3個)有することもできる。
【0038】
一般式(1)において、R、R、R及びRで示されるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基等の低級アルコキシ基(特に炭素数1~10、特に1~6の直鎖又は分岐鎖アルコキシ基)が挙げられる。また、このアルコキシ基は、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、水酸基、上記アルコキシ基等の置換基を1~6個(特に1~3個)有することもできる。
【0039】
一般式(1)において、R、R、R及びRとしては、過電圧をより低減し酸素還元活性を向上させやすいとともに、酸素還元活性の耐久性も向上させやすい観点から、水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換アルコキシ基等であることが好ましく、水素原子、置換若しくは非置換アルキル基等であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
【0040】
一般式(1)において、Rで示される炭素数が2以上であるアルキレン基としては、上記したものを採用できる。置換基の種類及び数も同様である。
【0041】
上記のような条件を満たす繰り返し単位としては、例えば、
【0042】
【化4】
等が挙げられる。
【0043】
上記のような条件を満たすアルキルメラミンポリマーとしては、例えば、一般式(1)で表される繰り返し単位のみからなるポリマーとして、一般式(2):
【0044】
【化5】
[式中、R、R、R、R及びRは前記に同じである。nは2~100の整数を示す。]
で表されるアルキルメラミンポリマーとすることもできる。
【0045】
つまり、このようなアルキルメラミンポリマーとしては、
【0046】
【化6】
[式中、nは前記に同じである。]
等が挙げられる。
【0047】
アルキルメラミンポリマーの重合度(一般式(2)で表されるアルキルメラミンポリマーの場合はnに相当する)は、特に限定はないが、過電圧をより低減し酸素還元活性を向上させやすいとともに、酸素還元活性の耐久性も向上させやすい観点から、その平均的(代表的)重合度は2~100が好ましく、3~50がより好ましい。
【0048】
なお、アルキルメラミンポリマーの末端基は特に制限されない。通常、水素原子、水酸基、上記アルキル基、上記アルコキシ基等とすることができる。
【0049】
以上のようなアルキルメラミンポリマーは、単独で使用することもでき、2種以上のアルキルメラミンポリマーの混合物とすることもできる。また、アルキルメラミンポリマーは、同じ繰り返し単位のみからなる場合であっても、重合度の異なるアルキルメラミンポリマーの混合物とすることもできる。
【0050】
このようなアルキルメラミンポリマーの合成方法については、後述する。
【0051】
上記アルキルメラミンポリマーの量については、特に限定はない。例えば、過電圧をより低減し酸素還元活性を向上させやすいとともに、酸素還元活性の耐久性も向上させやすい観点から、白金を含むナノ粒子100質量部に対して、アルキルメラミンポリマーを0.1~50質量部、特に1~30質量部含有する(特に担持させる)ことが好ましい。また、過電圧をより低減し酸素還元活性を向上させやすいとともに、酸素還元活性の耐久性も向上させやすい観点から、白金表面からの水素脱着に起因する電気量から評価される、白金を含むナノ粒子の電気化学的有効表面積(ECSA)の10~70%、特に20~50%が上記アルキルメラミンポリマーで覆われていることが好ましい。なお、アルキルメラミンポリマーを複数使用する場合は、その総量が上記範囲となるように調整することが好ましい。また、過電圧をより低減し酸素還元活性を向上させやすいとともに、酸素還元活性の耐久性も向上させやすい観点から、白金を含むナノ粒子の表面に対するアルキルメラミンポリマーの吸着量は、0.5~100μmol/gが好ましく、1~50μmol/gがより好ましい。
【0052】
(1-3)アルキルメラミンポリマーの製造方法
本発明のアルキルメラミンポリマーの製造方法は、特に制限されるわけではないが、
一般式(3):
【0053】
【化7】
[式中、R、R及びRは前記に同じである。]
で表される化合物と、一般式(4):
【0054】
【化8】
[式中、R及びRは前記に同じである。X及びXは同一又は異なって、ハロゲン原子を示す。]
で表される化合物とを反応させることで合成することができる。
【0055】
一般式(3)において、R、R及びRは前記したものを採用することができる。
【0056】
このため、一般式(3)で表される化合物としては、具体的には、
【0057】
【化9】
等が挙げられる。
【0058】
一般式(4)において、R及びRは前記したものを採用することができる。
【0059】
また、一般式(4)において、X及びXで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0060】
このため、一般式(4)で表される化合物としては、具体的には、
【0061】
【化10】
等が挙げられる。
【0062】
本発明のアルキルメラミンポリマーの製造方法において、一般式(3)で表される化合物及び一般式(4)で表される化合物の使用量は特に制限されるわけではないが、アルキルメラミンポリマーの収率等の観点から、一般式(4)で表される化合物の使用量は、一般式(3)で表される化合物1モルに対して0.5~2.0モルが好ましく、0.7~1.5モルがより好ましい。
【0063】
本発明のアルキルメラミンポリマーの製造方法においては、塩基を使用することもできる。
【0064】
使用できる塩基としては、特に制限はなく、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物;トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアミン;アンモニア等が挙げられる。これらは、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。このうち、アルキルメラミンポリマーの収率等の観点から、アルカリ金属炭酸塩が好ましく、炭酸カリウムがより好ましい。
【0065】
本発明のアルキルメラミンポリマーの製造方法において、塩基を使用する場合、塩基の使用量は特に制限されるわけではないが、アルキルメラミンポリマーの収率等の観点から、塩基の使用量は、一般式(3)で表される化合物1モルに対して1.0~5.0モルが好ましく、1.5~3.0モルがより好ましい。
【0066】
本発明のアルキルメラミンポリマーの製造方法は、通常、反応溶媒の存在下で行うことができる。使用できる反応溶媒は、特に制限されるわけではないが、例えば極性溶媒を使用することができ、例えば、アミド(ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等)、ニトリル(アセトニトリル、プロピオニトリル等)、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等を使用することができる。これらの溶媒は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0067】
本発明のアルキルメラミンポリマーの製造方法における反応の雰囲気は、特に制限されるわけではないが、通常、不活性ガス雰囲気(窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等)で行うことができる。
【0068】
本発明のアルキルメラミンポリマーの製造方法における反応温度は、特に制限されるわけではないが、アルキルメラミンポリマーの収率等の観点から、80~250℃が好ましく、100~200℃がより好ましい。
【0069】
本発明のアルキルメラミンポリマーの製造方法における反応時間は、特に制限されるわけではないが、アルキルメラミンポリマーの収率等の観点から、1~200時間が好ましく、2~150時間がより好ましい。
【0070】
反応終了後、必要に応じて常法により精製を行い、アルキルメラミンポリマーを得ることができる。
【0071】
(1-4)導電性担体
上記の白金を含むナノ粒子は導電性担体に担持させることにより、過電圧を低減し酸素還元活性を向上させるとともに、酸素還元活性の耐久性も向上させることができ、白金使用量を減少させることもできる。導電性担体としては、従来から酸素を電気化学的に還元するための触媒の導電性担体に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、カーボンブラック(ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック等)、活性炭、黒鉛、グラッシーカーボン等の導電性炭素材料;酸化スズ、酸化チタン等の導電性酸化物等を挙げることができる。これらのなかでは、導電性と表面積の観点から、導電性炭素材料が好ましく、カーボンブラックがより好ましい。
【0072】
導電性担体の形状等については特に限定はなく、空気極の形状に沿った形状とすることが好ましい。
【0073】
(1-5)電気化学的酸素還元用触媒
本発明の電気化学的酸素還元用触媒の形状は特に制限はなく、空気極の形状に沿った形状とすることが好ましい。
【0074】
このような本発明の電気化学的酸素還元用触媒は、酸素を水に還元する酸素還元活性を有し、酸素還元活性の耐久性にも優れるため、酸素を活物質として使用する電池の電極用触媒として好適に使用され得る。具体的には、燃料電池(特に固体高分子形燃料電池、リン酸形燃料電池等)又は金属空気電池の空気極触媒として好適に使用され得る。
【0075】
2.電気化学的酸素還元用触媒の製造方法
本発明の電気化学的酸化還元用触媒の製造方法は特に制限されない。例えば、溶解乾燥法、気相法等の方法により、白金を含むナノ粒子上に上記アルキルメラミンポリマーを担持させることができる。
【0076】
例えば、溶解乾燥法では、白金を含むナノ粒子(特に白金触媒)と上記アルキルメラミンポリマーとをあらかじめ溶媒に溶解又は分散(懸濁)させ、必要に応じて撹拌することにより、白金を含むナノ粒子(特に白金触媒)に上記アルキルメラミンポリマーを吸着させた後、得られた懸濁液をろ過して粉末を回収することにより、本発明の電気化学的酸素還元用触媒を得ることができる。なお、白金を含むナノ粒子を導電性担体上に担持させる場合には、常法により担持させることができる。また、導電性担体上に白金を含むナノ粒子が担持された触媒にも、上記と同様の手法で上記アルキルメラミンポリマーを担持することができる。
【0077】
上記の溶媒としては、白金を含むナノ粒子とアルキルメラミンポリマーとを溶解又は分散(懸濁)できるものであれば、特に限定なく使用できる。例えば、アセトン、トルエン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒の他、水も好適に用いることができる。これらの有機溶媒及び水は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0078】
白金を含むナノ粒子(特に白金触媒)とアルキルメラミンポリマーとの濃度は特に制限されず、上記した使用量となるように調整することができる。このため、各成分の使用量は、例えば、仕込み量として、白金を含むナノ粒子(特に白金触媒)の濃度は0.1~10.0g/Lが好ましく、0.5~5.0g/Lがより好ましい。また、仕込み量として、溶媒中のアルキルメラミンポリマーの濃度は、0.01~3.0g/Lが好ましく、0.01~1.5g/Lがより好ましい。
【0079】
3.空気極及び電池
本発明の空気極は、上記した本発明の電気化学的酸素還元用触媒を用いた燃料電池(特に固体高分子形燃料電池、リン酸形燃料電池等)又は金属空気電池用空気極である。
【0080】
このような空気極は、触媒として本発明の電気化学的酸素還元用触媒を用いること以外は従来の空気極と同様とすることができるが、例えば、本発明の空気極は、空気極触媒層を有し得る。
【0081】
空気極触媒層の厚さについては特に限定的ではなく、通常、0.1~100μm程度とすることができる。また、触媒量としても特に制限はなく、例えば、0.01~20mg/cm程度とすることができる。
【0082】
このような空気極触媒層の形成方法としては、特に制限されず、ガス拡散層、集電体等に、本発明の電気化学的酸素還元用触媒と樹脂溶液とを混合して作製した触媒インクを塗布及び乾燥する方法等によって空気極触媒層を作製し得る。
【0083】
その他の空気極の構成については公知の空気極と同様にし得る。例えば、空気極の触媒層側にカーボンペーパー、カーボンクロス、金属メッシュ、金属焼結体、発泡金属板、金属多孔体等の集電材を配置し、撥水性膜、拡散膜、空気分配層等を配置した構造ともし得る。
【0084】
電解質としては、本発明の電気化学的酸素還元用触媒と高分子電解質膜とを公知の方法により一体化させて使用することができる。本発明の電気化学的酸素還元用触媒と電解質材料、炭素材料等を水や溶剤等で分散させたものを、電解質膜に塗布したり、基材に塗布した触媒層を電解質膜に転写させたり等により電解質膜に触媒層を形成したりすることもできる。
【0085】
高分子電解質膜としては、パーフルオロカーボン系、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体系、ポリベンズイミダゾール系をはじめとする各種イオン交換樹脂膜、無機高分子イオン交換膜、有機-無機複合体高分子イオン交換膜等を使用することができる。
【0086】
燃料極の構造についても特に限定はなく、公知の固体高分子形燃料電池の構造と同様とすることができる。燃料極用の触媒としても、従来から知られている種々の金属、金属合金、金属錯体等を使用することができる。使用できる金属種としては、従来の固体高分子形燃料電池(PEFC)で使用される白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、金等の貴金属の他、ニッケル、銀、コバルト、鉄、銅、亜鉛等の卑金属等も挙げられる。これらの金属のなかから選ばれた単一の金属触媒若しくは金属錯体、二種以上の金属の任意の組合せからなる合金若しくは金属錯体の複合体を使用し得る。また、上記から選ばれる金属触媒と別の金属酸化物との複合触媒、触媒微粒子を炭素質材料、金属酸化物等の担体上に分散させた担持触媒として使用することもできる。
【0087】
得られた膜-電極接合体の両面をカーボンペーパー、カーボンクロス等の集電体で挟んでセルに組み込むことによって、固体高分子形燃料電池セルを作製することも可能である。
【0088】
一方、固体高分子形燃料電池(PEFC)ではなく、リン酸形燃料電池に適用する場合は、高分子電解質膜ではなく、電解液としてリン酸水溶液を各種セパレータに含浸させて用いることができる。その他の部材については上記固体高分子形燃料電池と同様である。
【0089】
また、本発明の電気化学的酸素還元用触媒を金属空気電池の空気極に用いる場合は、金属空気電池における金属負極としては、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、鉄等の金属を使用し得る。具体的な金属負極の構造は、公知の金属空気電池と同様とすることができる。その他の部材は固体高分子形燃料電池と同様である。
【0090】
上記した構造の電池では、いずれの場合においても、空気極側には酸素又は空気を供給又は自然拡散させ得る。また、燃料電池(特に固体高分子形燃料電池、リン酸形燃料電池等)には、燃料極側に燃料となる物質を供給し得る。燃料物質としては、水素ガスの他、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類、ギ酸、水素化ホウ素塩、ヒドラジン、糖等の溶液を使用し得る。
【0091】
なお、本発明の電池が燃料電池(特に固体高分子形燃料電池、リン酸形燃料電池等)である場合の作動温度は、使用する電解質によって異なるが、通常0~250℃程度であり、好ましくは10~80℃程度である。
【実施例0092】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0093】
実施例1
反応器を窒素置換した後、エチレンジアミン(東京化成工業(株)製 0.601g;10.0mmol)及びN-メチルピロリドン(15mL)を添加して攪拌溶解し、次いで2-アミノ-4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン(Combi-Block製 1.65g;10.0mmol)及び-メチルピロリドン(15mL)を添加して80℃で撹拌分散させ、次いで炭酸カリウム(関東化学(株)製;微粉末 3.04g;22.0mmol)を添加して15分間撹拌分散させるとともに120℃まで加熱した。
【0094】
120℃で71時間撹拌し、次いで150℃で23.5時間攪拌し、次いで室温まで冷却した後、アンモニア水(28%;30mL)を含む精製水(3000mL)に滴下して1時間攪拌した。
【0095】
析出物をろ別して精製水(150mL)で3回洗浄し、次いでメタノール(450mL)に添加して16時間撹拌分散させた後、ろ別してメタノール(150mL)で3回洗浄し、次いで60℃の減圧下で乾固することにより、エチルメラミンポリマーを淡褐色固体として得た(0.862g;収率56.7%)。
【0096】
[合成物の特性評価]
得られた淡褐色固体のH NMR(DMSO-d,400MHz,80℃)の測定によって、3.36ppmにエチレン基に由来する、また5.58-6.37ppmにアミノ基に由来するそれぞれブロードなピークを1:1の積分比で確認した。
【0097】
質量分析によって一定間隔(m/z=152)で信号が認められ、目的物の繰り返し単位を確認した。エチルメラミンポリマーの質量分析チャートを図1に示す。
【0098】
【化11】
【0099】
実施例2及び比較例1
実施例2では、アルキルメラミンポリマーとして、実施例1で得られたエチルメラミンポリマーを使用した。
【0100】
[活性評価]
白金触媒(田中貴金属工業(株)製,TEC10E50E;平均粒子径2-3nm)5mgを超純水5.14mLと2-プロパノール1.62mLの混合溶媒に懸濁し、この懸濁液3.6μLをビー・エー・エス(株)製のグラッシーカーボン電極(表面積:0.0707cm)に滴下して、60℃で7分間乾燥させ、触媒修飾電極を得た。
【0101】
得られた触媒修飾電極を作用極として使用し、可逆水素電極を参照極、白金コイルを対極として、25℃において三電極式で電気化学測定を行った。電解液は0.1mol/Lの過塩素酸水溶液を用いた。まず、アルゴン雰囲気下でサイクリックボルタモグラムの測定を行った後、ガス雰囲気を酸素に変えて、高電位側から、リニアスイープボルタモグラムの測定を行った。これにより、アルキルメラミンポリマーを含まない触媒を用いた場合の酸素還元活性を評価した。
【0102】
次に、0.1mol/Lの過塩素酸水溶液にアルキルメラミンポリマーをモノマー単位で0.7mmol/L(106mg/L)溶解させた溶液に上記白金触媒修飾電極を10分間浸漬させて白金触媒にエチルメラミンポリマーを吸着させた後に、アルキルメラミンポリマーがない時と同じ測定を行った。これにより、白金にエチルメラミンポリマーが吸着した触媒の酸素還元活性が評価できる。この時、ECSAから算出されるエチルメラミンポリマーの被覆率は52.4%であった。
【0103】
上記のエチルメラミンポリマー吸着後の修飾電極を取りだし、0.1mol/Lの過塩素酸水溶液を電解液として以下の耐久試験を行った。なお、比較例1では、アルキルメラミンポリマーを吸着させていない修飾電極を用いた。
【0104】
この修飾電極を作用極とし、可逆水素電極を参照極、白金コイルを対極とし、0.1mol/L過塩素酸溶液を電解液とし、三電極式で、80℃において作用電極を0.6Vに3秒保持、1.0Vに3秒保持の矩形波電位サイクルを10000サイクル印可する耐久試験(燃料電池実用化推進協議会「固体高分子形燃料電池の目標・研究開発課題と評価方法の提案」)を行った。この耐久試験後に、もう一度、電極を新しい0.1mol/L過塩素酸溶液に移し替え、当該電解液中で、高電位側から、リニアスイープボルタモグラムの測定を行った。これにより、エチルメラミンポリマーを含む触媒を用いた場合の耐久試験後の酸素還元活性が評価できる。
【0105】
結果を図2に示す。
【0106】
図2から、実施例2では、白金触媒にエチルメラミンポリマーを吸着(担持)させることにより、0.90V及び0.95Vにおける還元電流が増加した。このとき、質量あたりの活性は、アルキルメラミンポリマーを含まない触媒は、0.90Vでは299A/gPt、0.95Vでは44A/gPtであるのに対し、アルキルメラミンポリマーを担持させた触媒は、0.90Vでは379A/gPt、0.95Vでは101A/gPtと増大していた。
【0107】
また、図2から、実施例2では、白金触媒にエチルメラミンポリマーを吸着(担持)させることにより、耐久試験後にも、0.90V及び0.95Vにおける還元電流(-j)が大幅には低下せず、エチルメラミンポリマーを吸着(担持)させない状態の初期の酸素還元活性よりも向上していた。このとき、質量あたりの活性は、耐久試験前は、0.90Vでは379A/gPt、0.95Vでは101A/gPtであるのに対し、耐久試験後は、0.90Vでは326A/gPt、0.95Vでは60A/gPtであり、エチルメラミンポリマーを吸着(担持)させない状態の初期の酸素還元活性よりも増大していた。
【0108】
それに対して、図3から、アルキルメラミンポリマーを使用しない比較例1においては、耐久試験後には、0.9V及び0.95Vにおける還元電流が大幅に低下していた。このとき、質量あたりの活性は、耐久試験前は、0.90Vでは291A/gPt、0.95Vでは43A/gPtであるのに対し、耐久試験後は、0.90Vでは120A/gPt、0.95Vでは19A/gPtと大幅に低下していた。
【0109】
このため、白金触媒にアルキルメラミンポリマーを吸着(担持)させることで酸素還元活性が上昇し、過電圧が小さくなるとともに、耐久性も向上し、白金の使用量を低減できることが示された。
【0110】
次に、耐久試験条件を0.6Vに3秒保持、0.95Vに3秒保持の矩形波電位サイクルを10000サイクル印可する条件にかえ、他の条件は同様にして、耐久試験前(エチルメラミンポリマーを吸着させる前後)の酸素還元活性、耐久試験後(エチルメラミンポリマーを吸着させる前後)の酸素還元活性を評価した。
【0111】
結果を図4~5に示す。
【0112】
図4から、実施例2では、白金触媒にエチルメラミンポリマーを吸着(担持)させることにより、0.9V及び0.95Vにおける還元電流が増加した。このとき、質量あたりの活性は、アルキルメラミンポリマーを含まない触媒は、0.90Vでは366A/gPt、0.95Vでは49A/gPtであるのに対し、アルキルメラミンポリマーを担持させた触媒は、0.90Vでは490A/gPt、0.95Vでは111A/gPtと増大していた。
【0113】
また、図4から、実施例2では、白金触媒にエチルメラミンポリマーを吸着(担持)させることにより、耐久試験後にも、0.9V及び0.95Vにおける還元電流(-j)が大幅には低下せず、エチルメラミンポリマーを吸着(担持)させない状態の初期の酸素還元活性よりも向上していた。このとき、質量あたりの活性は、耐久試験前は、0.90Vでは490A/gPt、0.95Vでは111A/gPtであるのに対し、耐久試験後は、0.90Vでは414A/gPt、0.95Vでは90A/gPtであり、エチルメラミンポリマーを吸着(担持)させない状態の初期の酸素還元活性よりも増大していた。
【0114】
それに対して、図5から、アルキルメラミンポリマーを使用しない比較例1においては、耐久試験後には、0.90V及び0.95Vにおける還元電流が大幅に低下していた。このとき、質量あたりの活性は、耐久試験前は、0.90Vでは384A/gPt、0.95Vでは53A/gPtであるのに対し、耐久試験後は、0.90Vでは214A/gPt、0.95Vでは35A/gPtと大幅に低下していた。
【0115】
このため、白金触媒にアルキルメラミンポリマーを吸着(担持)させることで酸素還元活性が上昇し、過電圧が小さくなるとともに、耐久性も向上し、白金の使用量を低減できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の電気化学的酸素還元用触媒は、固体高分子形燃料電池を初めとする各種燃料電池や金属空気電池の空気極(カソード極)に使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5