(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157759
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】揚げ菓子の製造方法
(51)【国際特許分類】
A21D 13/60 20170101AFI20241031BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A21D13/60
A23G3/34 108
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072304
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西部 将史
(72)【発明者】
【氏名】岩田 恭一
【テーマコード(参考)】
4B014
4B032
【Fターム(参考)】
4B014GB11
4B014GG02
4B014GG07
4B014GG10
4B014GG11
4B014GG14
4B014GK03
4B014GL01
4B014GL07
4B014GL10
4B014GP02
4B014GP14
4B014GP16
4B014GQ17
4B032DB24
4B032DG02
4B032DK03
4B032DK12
4B032DK42
4B032DK45
4B032DK47
4B032DL06
4B032DP02
4B032DP12
4B032DP13
4B032DP47
(57)【要約】
【課題】変形が少なくかつサクミのある食感を有する揚げ菓子の提供。
【解決手段】原料粉から35~60℃の温度で生地を調製する工程、及び、前記調製した生地を、品温35~60℃の状態で、加熱した油に投入して油ちょうする工程、を含む揚げ菓子の製造方法。原料粉から35~60℃の温度で生地を調製する工程、前記調製した生地を冷凍する工程、及び、前記冷凍した生地を、品温-20~0℃の状態で、加熱した油に投入して油ちょうする工程、を含む揚げ菓子の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料粉から35~60℃の温度で生地を調製する工程、及び、
前記調製した生地を、品温35~60℃の状態で、加熱した油に投入して油ちょうする工程、
を含む、揚げ菓子の製造方法。
【請求項2】
前記生地が、前記原料粉100質量部と、液体原料50~160質量部とを混合することで調製される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
原料粉から35~60℃の温度で生地を調製する工程、
前記調製した生地を冷凍する工程、及び、
前記冷凍した生地を、品温-20~0℃の状態で、加熱した油に投入して油ちょうする工程、
を含む、揚げ菓子の製造方法。
【請求項4】
前記生地が、前記原料粉100質量部と、液体原料50~160質量部とを混合することで調製される、請求項3記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚げ菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
揚げ菓子は、求められる食感や形状などに応じて、様々な生地の組成や製造工程を用いて製造されている。揚げ菓子の生地は、柔らかいと変形や油ちょう中の破裂を起こしやすいが、一方、生地が硬すぎても揚げ菓子の食感が硬くなる。
【0003】
特許文献1には、小麦粉、油脂、卵及び水を主体とする生地材料中にゲル化剤を加えて生地を作製し、成形、冷凍して得られた冷凍生地が、解凍後のベトつきが少なくハンドリングが容易であり、シュー生地やフレンチクルーラー生地等として好適であることが記載されている。特許文献2には、生地を所定の形状に成形する第1成形工程と、成形された生地を油ちょうする油ちょう工程と、油ちょうにより得られた揚げ菓子素体を加熱する加熱工程と、加熱により柔軟化した揚げ菓子素体を所定の形状に成形する第2成形工程とを有することを特徴とする揚げ菓子の製造方法により、揚げ菓子の形状を自在に変更することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-267840号公報
【特許文献2】特開2007-75040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、変形が少なく、かつサクミのある食感を有する揚げ菓子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、揚げ菓子の生地を調製するときの温度、及び油ちょうのための油に投入するときの該生地の温度を、それぞれ特定の範囲に調整することによって、変形が少なく、かつサクミのある食感を有する揚げ菓子を製造することができることを見出した。
【0007】
本発明は、代表的実施形態として、以下を提供する。
〔1〕原料粉から35~60℃の温度で生地を調製する工程、及び、
前記調製した生地を、品温35~60℃の状態で、加熱した油に投入して油ちょうする工程、
を含む、揚げ菓子の製造方法。
〔2〕前記生地が、前記原料粉100質量部と、液体原料50~160質量部とを混合することで調製される、〔1〕記載の方法。
〔3〕原料粉から35~60℃の温度で生地を調製する工程、
前記調製した生地を冷凍する工程、及び、
前記冷凍した生地を、品温-20~0℃の状態で、加熱した油に投入して油ちょうする工程、
を含む、揚げ菓子の製造方法。
〔4〕前記生地が、前記原料粉100質量部と、液体原料50~160質量部とを混合することで調製される、〔3〕記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、変形が少なくかつサクミがある、外観と食感が良好な揚げ菓子を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による揚げ菓子の製造方法(以下、「本発明の方法」ともいう)において、該揚げ菓子の原料には、通常使用される原料を使用することができる。典型的には、該揚げ菓子の生地は、穀粉又は澱粉を含有する原料粉から製造される。
【0010】
前記原料粉に含まれ得る穀粉の例としては、小麦粉、米粉、大麦粉、ライ麦粉、大豆粉などが挙げられる。該小麦粉の例としては、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、小麦全粒粉などが挙げられる。該穀粉類は、乾熱処理、湿熱処理等の加熱処理が施されたものでもよい。また、該原料粉に含まれ得る澱粉の例としては、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、小麦澱粉、豆類由来の澱粉等の未加工澱粉、及びそれらを加工した加工澱粉が挙げられる。該加工澱粉としては、該未加工澱粉に架橋、リン酸化、エーテル化、エステル化、酸化、α化等の処理の1つ以上を施したものが挙げられる。なお本明細書における「澱粉」とは、原料植物から抽出又は精製された澱粉を意味し、前記穀粉に内包される澱粉成分とは区別される。該原料粉は、上記に例示した穀粉及び澱粉のいずれか1種又はいずれか2種以上を組み合わせて含有することができる。
【0011】
前記揚げ菓子の生地は、前記穀粉又は澱粉以外の他の成分を含有してもよい。該他の成分としては、揚げ菓子の製造に通常用いられる成分を特に制限なく用いることができ、例えば、全卵、卵黄、卵白等の卵類;ヤシ油、コーン油、オリーブ油、粉末油脂等の油脂類;ベーキングパウダー等の膨張剤;生クリーム、濃縮乳、牛乳、発酵乳、粉乳等の乳製品;豆乳等の植物性ミルク;大豆蛋白質、小麦蛋白質等の蛋白質類;乳化剤;糖アルコール;デキストリン;調味料;香辛料;酵素剤;香料;増粘剤;食物繊維等が挙げられる。これらの他の成分は、いずれか1種又はいずれか2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの他の成分は、粉体として該揚げ菓子の生地の原料粉に含まれていてもよく、又は後述する液体原料として該生地の調製時に原料粉と混合されてもよい。
【0012】
揚げ菓子の生地の調製では、典型的には、前記原料粉と液体原料を混合する。例えば、該液体原料としては、水のほか、前述した他の成分の液状物、例えば全卵、卵黄液、卵白液等の卵液;乳;液状油脂等が挙げられる。これらの液体原料は、いずれか1種又はいずれか2種以上を組み合わせて用いることができる。該原料粉(粉体原料)と該液体原料との混合割合は、例えば、該原料粉100質量部に対して、該液体原料が、好ましくは50~160質量部、より好ましくは60~140質量部である。
【0013】
本発明による揚げ菓子の製造方法は、原料粉から揚げ菓子の生地を調製する工程、及び、該調製した生地を油ちょうする工程を含み、その際に、該生地を調製するときの温度、及び、該油ちょうのための油に投入するときの該生地の温度が、それぞれ特定の範囲に調整される。
【0014】
原料粉から揚げ菓子の生地を調製する基本的な手順は、前述したとおりである。さらに本発明の方法では、好ましくは35~60℃、より好ましくは40~55℃の温度で生地を調製する。好ましくは、原料粉や液体原料などの生地原料の品温を予め上記範囲に調整するか、及び/又は、生地の調整過程で生地原料又はその混合物の品温が上記範囲になるように調整して、上記品温の生地を調製する。例えば、生地原料を恒温環境下で上記範囲に温度調整し、次いで混合するか、又は、温度調節可能なミキサーを用いて上記範囲に温度調整しながら生地原料を混合するか、又は、これらの組み合わせによって、本発明の方法の生地調製工程を実施することができる。
【0015】
本発明の方法では、前記の手順で調製した揚げ菓子の生地を、加熱した油に投入して油ちょうする。油ちょうする際の油の温度、及び油ちょうの時間は、揚げ菓子の生地の中心部まで加熱が行われるように、生地の配合、生地の大きさ、生地の品温、油の種類などに応じて適宜変更することができる。例えば、油の温度は100~200℃であればよく、好ましくは130~190℃である。また、油ちょうの時間は、例えば30秒~10分間であればよく、好ましくは1分~15分間である。油ちょうに用いる油の種類は、製造する揚げ菓子の種類や風味に応じて適宜選択することができ、例えば、菜種油、サフラワー油、綿実油、パーム油、ラードなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本発明の方法の一実施形態においては、前記調製した生地を、品温35~60℃の状態で、加熱した油に投入して油ちょうする。このとき、該生地は、調製後直ちに油ちょうされてもよく、又は、該調製した生地を、油ちょうの前に、休ませるなど一定時間保管してもよい。該生地の保管の時間は特に限定されないが、乾燥などの生地の品質低下を防止する観点からは、該調製した品温35~60℃の生地は、調製から60分間以内、より好ましくは40分間以内に油ちょうされることが好ましい。保管後の生地は、必要に応じて品温35~60℃に戻され、油ちょうのため油に投入されるときには品温35~60℃である。
【0017】
本発明の方法の別の一実施形態においては、前記調製した生地を冷凍し、凍結した状態で加熱した油に投入して油ちょうする。生地を冷凍することにより、前記保管による生地の品質低下を抑制しながら、揚げ菓子の製造タイミングを調節することができる。生地の冷凍は、常法に従って行うことができ、急速冷凍、緩慢冷凍のいずれも採用することができる。該冷凍した生地を冷凍保管してもよい。該冷凍の温度は、食品の冷凍に通常使用される温度であればよく、例えば-80~-5℃程度であればよい。
【0018】
次いで、前記冷凍した生地を、品温-20~0℃、好ましくは-14~-2℃の状態で加熱した油に投入して油ちょうする。例えば、冷凍した生地を、必要に応じて品温-20~0℃、好ましくは-14~-2℃になるまで常温又は冷蔵温度下で保管した後、油ちょうすればよい。油ちょうの条件は前述のとおりである。
【0019】
本発明の方法で製造される揚げ菓子の種類は、特に限定されないが、好ましくは一般に穀粉又は澱粉を含有する生地を用いて製造されるもの、例えば、ドーナツ、サーターアンダギーなどが挙げられる。
【実施例0020】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0021】
〔試験例1〕
温度調節機能の付いた電磁調理器に鍋をのせ、ここに水60g、牛乳60g、バター20g、食塩2g及びグラニュー糖38gを加え、混合しながら表1の品温になるまで加熱した。ここに、薄力小麦粉120gと全卵液60gを加えて、ハンドミキサーを用いて、低速3分間、中低速3分間、中高速2分間の順で撹拌、混捏して表1の品温のドーナツ生地を調製した。調製した生地を60g/個に分割し、円盤状に成形した。生地は分割と成形の間に温度調整し、油投入時に表1の品温になるようにした。成形した生地を170℃に加熱した菜種油に投入し、30秒毎に該生地を反転させながら2分30秒間油ちょうしてドーナツを製造した。
【0022】
製造したドーナツの外観及び食感を、10名の専門パネラーにより下記評価基準で評価し、その平均点を求めた。結果を表1に示す。
<評価基準>
(外観)
5点:膨張、破裂、折れ曲がった部分が全くなく、非常に良好。
4点:わずかに膨張又は折れ曲がった部分があるが、破裂した部分がなく、良好。
3点:わずかに膨張した部分と折れ曲がった部分があるが、破裂した部分がなく、やや良好。
2点:破裂した部分はないが、膨張した部分と折れ曲がった部分がやや目立ち、不良。
1点:膨張した部分と折れ曲がった部分があり、破裂もあり、非常に不良。
(食感)
5点:硬すぎず、サクミが非常にあり、非常に良好。
4点:硬すぎず、サクミがあり、良好。
3点:やや硬いか又はやや柔らかいが、サクミがあり、やや良好。
2点:やや硬い又はやや柔らかく、サクミが物足りず、不良。
1点:硬い又は柔らかく、サクミが感じにくく、非常に不良。
【0023】
【0024】
〔試験例2〕
生地調製時の温度及び油投入時の温度を表2のように変更した以外は、試験例1と同様の手順でドーナツを製造及び評価した。結果を表2に示す。
【0025】
【0026】
〔試験例3〕
温度調節機能の付いた電磁調理器に鍋をのせ、ここに水60g、牛乳60g、バター20g、食塩2g及びグラニュー糖38gを加え、混合しながら品温45℃まで加熱した。薄力小麦粉120gと全卵液60gを加えてハンドミキサーを用いて、低速3分間、中低速3分間、中高速2分間の順で撹拌、混捏して品温45℃のドーナツ生地を調製した。調製した生地を、品温を維持したまま60g/個に分割し、円盤状に成形した。成形した生地を冷凍耐性のある容器に入れ、-40℃のフリーザーで1週間保管した。冷凍保管後の生地を表3の温度の保冷庫に6時間保管し、表3の品温に調整した。温度調整した生地を170℃に加熱された菜種油に投入し、30秒毎に該生地を反転させながら油ちょうしてドーナツを製造した。油ちょう時間は、生地の品温が-30℃~-8℃のときは3分30秒間、-5℃~5℃のときは3分間であった。製造したドーナツの外観及び食感を試験例1と同様の手順で評価した。結果を表3に示す。
【0027】