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特開2024-157768センサデバイス及びセンシングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157768
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】センサデバイス及びセンシングシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G01N27/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072321
(22)【出願日】2023-04-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「超高密度センサ網の実現に向けた「土に還る」センサデバイス基盤技術の創成」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】春日 貴章
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA14
2G060AC01
2G060AF03
2G060AF10
2G060AG06
2G060HA02
2G060JA03
(57)【要約】
【課題】センシング機能及び情報発信機能と、生分解性とを両立させることである。
【解決手段】センサデバイスは、生分解性を有する基材と、前記基材に設けられるコイルと、前記コイルを通じて供給された電力により、前記コイルの周囲の比誘電率に基づく光及び熱の一方を発するセンサ部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性を有する基材と、
前記基材に設けられるコイルと、
前記コイルを通じて供給された電力により、前記コイルの周囲の比誘電率に基づく光及び熱の一方を発するセンサ部と
を備えるセンサデバイス。
【請求項2】
前記コイルは、錫を含有する、請求項1に記載のセンサデバイス。
【請求項3】
前記基材は、肥料を含有する、請求項1又は2に記載のセンサデバイス。
【請求項4】
前記コイルは、前記基材の表面上に位置し、
前記基材上の前記コイルを覆い、天然由来油脂製の被覆を更に備える、請求項1又は請求項2に記載のセンサデバイス。
【請求項5】
前記被覆は、肥料を含有する、請求項4に記載のセンサデバイス。
【請求項6】
前記センサ部は、炭素製の抵抗発熱体であって、
前記抵抗発熱体は、前記コイルの両端間に電気的に接続され、
前記光及び前記熱の一方は熱である、請求項1又は請求項2に記載のセンサデバイス。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載のセンサデバイスと、
磁界を発生する非接触給電装置と
を備える、センシングシステム。
【請求項8】
前記センサデバイスが配置されるエリアを撮影する撮像装置と、
前記撮像装置による撮影画像に基づいて、前記センサデバイスの位置と、前記光又は前記熱の量を特定する特定部と
を更に備える、請求項7に記載のセンシングシステム。
【請求項9】
前記撮像装置は、赤外線撮像装置であり、
前記撮影画像は、赤外線画像である、請求項8に記載のセンシングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサデバイス及びセンシングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの生分解性センサデバイスが提案されている。
【0003】
背景技術としての生分解性センサデバイスは、センシング機能、情報発信機能及び生分解性を備えている。センシング機能及び情報発信機能では、空間の湿度又は土壌の含水率等の情報は、交流信号に重畳された状態で送信器から外部へと送信される(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kasuga, T.; Yagyu, H.; Uetani, K.; Koga, H.; Nogi, M. "Return to the Soil" Nanopaper Sensor Device for Hyperdense Sensor Networks. ACS Appl. Mater. Interfaces 2019, 11 (46), 43488-43493.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、背景技術では、外部電源回路から有線を通じて発振回路への給電が行われていた。また、送信器は、トランジスタを有している。トランジスタには、非生分解性の金属材料が使用されている。このように、背景技術では、センシング機能及び情報発信機能と、生分解性との両立が不十分であった。
【0006】
本発明は、センシング機能及び情報発信機能と、生分解性とをより両立させたセンサデバイス及びセンシングシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るセンサデバイスは、生分解性を有する基材と、前記基材に設けられるコイルと、前記コイルを通じて供給された電力により、前記コイルの周囲の比誘電率に基づく光及び熱の一方を発するセンサ部とを備える。
【0008】
前記コイルは、好ましくは、錫を含有する。
【0009】
前記基材は、好ましくは、肥料を含有する。
【0010】
前記コイルは、好ましくは、前記基材の表面上に位置する。前記基材上の前記コイルを覆い、天然由来油脂製の被覆を、前記センサデバイスは更に備えることが好ましい。
【0011】
前記被覆は、好ましくは、肥料を含有する。
【0012】
前記センサ部は、好ましくは、炭素製の抵抗発熱体である。前記抵抗発熱体は、好ましくは、前記コイルの両端間に電気的に接続される。前記光及び前記熱の一方は熱であることが好ましい。
【0013】
本発明の他の態様はセンシングシステムに向けられる。前記センシングシステムは、前記センサデバイスと、磁界を発生する非接触給電装置とを備える。
【0014】
前記センシングシステムは、前記センサデバイスが配置されるエリアを撮影する撮像装置と、前記撮像装置による撮影画像に基づいて、前記センサデバイスの位置と、前記光又は前記熱の量を特定する特定部とを更に備えることが好ましい。
【0015】
前記撮像装置は、赤外線撮像装置であり、前記撮影画像は、赤外線画像であることが更に好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、センシング機能及び情報発信機能と、生分解性とをより両立させたセンサデバイス及びセンシングシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態に係るセンシングシステムの構成を示す図である。
図2図2は、図1に示されるセンサデバイスの構成を示す図であって、同図(a)は斜視図、同図(b)は分解図である。
図3図3は、土壌の含水率に対するセンサデバイスのコイルの自己共振周波数の変化を示すグラフである。
図4図4は、土壌の含水率に対する給電効率を示すグラフである。
図5図5は、錫、銅及び銀の生分解性を示すグラフである。
図6図6は、錫、銅及び銀の植害影響を示すグラフである。
図7図7は、肥料を含有する基材の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係るセンシングシステム100を説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0019】
「第1実施形態」
図1は、第1実施形態に係るセンシングシステム100の構成を示す図である。図1に示されるように、センシングシステム100は、土壌A11内の含水率を測定するシステムであって、非接触給電装置1と、撮像装置2と、情報処理装置3と、複数のセンサデバイス4とを備える。
【0020】
「非接触給電装置1」
非接触給電装置1は、交流電源11と、共振回路12とを含む。共振回路12は、送電コイル121、抵抗122及びコンデンサ123を含む。共振回路12は、交流電源11から供給される交流電力により駆動される。その結果、非接触給電装置1は、送電コイル121の周りに交流磁界を発生する。交流磁界は、特定空間A01内で実質的に均一である。均一な交流磁界は、特定空間A01内で磁界強度の勾配が実質的に無い磁界である。この種の交流磁界は、送電コイル121として公知の三軸コイルを用い、三軸コイルで生じる磁界の大きさと向きとを制御することで生成可能である。なお、特定空間A01は、本発明における「エリア」の一例である。特定空間A01には、複数のセンサデバイス4が配置される。また、交流磁界により、複数のセンサデバイス4の各々が給電される。従って、各センサデバイス4は電池を備える必要がない。
【0021】
第1実施形態では、特定空間A01は、土壌A11と、空気A12とを含む。土壌A11と、空気A12との境界には、地面A13が水平方向D01に沿って拡がっている。第1実施形態では、均一な交流磁界は、磁界強度の水平方向D01における勾配が実質的に無い磁界である。
【0022】
「撮像装置2」
撮像装置2は、含水率測定の場合には、赤外線撮像装置であることが好ましい。また、第1実施形態では、撮像装置2は、撮像装置2の画角に特定空間A01が含まれるように、特定空間A01の周囲に固定的に設置される。撮像装置2は、センサデバイス4が配置される特定空間A01を撮影する。撮像装置2は、撮影画像を示す画像データを生成する。撮影画像は、撮像装置2が赤外線撮像装置の場合、赤外線画像である。赤外線画像は、特定空間A01における熱の分布を示す。従って、赤外線画像には、土壌A11に埋設されたセンサデバイス4が発する熱も示されている。よって、土壌A11の含水率が検出可能となる。
【0023】
撮像装置2は、通信ネットワーク5に接続されている。通信ネットワーク5は、インターネット、有線LAN(Local Area Network)、又は無線LANである。通信ネットワーク5は、インターネット、有線LAN、及び無線LANから選ばれた2つ以上の組み合わせでもよい。撮像装置2は、生成した画像データを通信ネットワーク5に送出する。
【0024】
「情報処理装置3」
情報処理装置3は、撮像装置2と通信ネットワーク5を介してデータ通信可能に接続される。情報処理装置3は、典型的には、サーバ装置、パーソナルコンピュータ、タブレット端末又はスマートフォンである。情報処理装置3は、処理部及び記憶部を含む。処理部が記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、情報処理装置3は、特定部31及び検出部32として機能する。特定部31は、撮像装置2からの画像データが示す赤外線画像に基づいて、センサデバイス4の位置と発熱量とを特定する。即ち、情報処理装置3は、熱を媒介としてセンサデバイス4からの情報を取得する。従って、センサデバイス4は、無線信号を送信するための送信器を備える必要がない。なお、発熱量については、後で詳説する。検出部32は、特定部31により特定された発熱量に基づいて含水率を求める。
【0025】
「センサデバイス4」
図2は、図1に示されるセンサデバイスの構成を示す図であって、同図(a)は斜視図、同図(b)は分解図である。図2に示されるように、複数のセンサデバイス4の各々は、基材41と、コイル42を含む共振回路43と、センサ部44と、被覆45とを備える。
【0026】
「基材41」
基材41は、シート状又は板状であり、生分解性を有する材料(以下、「生分解性材料」と記載する。)で作製される。即ち、基材41は、生分解性を有する。基材41の生分解性とは、基材41が微生物により分子レベルまで所定期間内に分解されて自然界へと循環していく性質である。生分解性の有無は、所定の試験方法及び所定の基準により審査される。生分解性材料としては、生分解性プラスチック又は植物紙が典型的である。
【0027】
生分解性プラスチックの原料としては、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリテトラメチレンアジペート・コ・テレフタレート、又はポリエチレンテレフタレートサクシネートが例示される。
【0028】
植物紙の原料としては、わら、麻、コウゾ、ミツマタ、竹、木綿、サトウキビ、ヨシ、ケナフ、又は、バナナが例示される。
【0029】
「コイル42」
コイル42は、基材41の主面(即ち、表面)上に位置する(図2(b)を特に参照)。コイル42は、渦巻き形状の受電コイルである。渦巻き形状は、立体的な螺旋形状とは異なり平面的な形状であって、基材41の主面上で旋回するにつれ旋回中心から遠ざかる形状である。コイル42は、低環境負荷の導電性材料(以下、「特定導電性材料」と記載する。)から作製される。特定導電性材料は、好ましくは、下記(A)~(D)の要件を満たす。
【0030】
(A):基材41の生分解に影響しないこと。
(B):環境を汚染せず、動植物に健康被害を与えないこと。
(C):体積抵抗率が低いこと。
(D):経済的であること。
【0031】
第1実施形態では、特定導電性材料として錫が選ばれる。即ち、コイル42は、錫を含有する。これにより、センサデバイス4が土壌A11に放置されたとしても、環境への影響が比較的少ない。詳細には、土壌A11に錫イオンが溶け出しにくい。また、錫に毒性が認められないため、動植物への健康被害が無い。
【0032】
「共振回路43」
共振回路43は、コイル42に加え、抵抗及びコンデンサを回路素子として含む。抵抗及びコンデンサもまた、コイル42と同様に、基材41の主面上に形成される。抵抗は、炭素から作製される。コンデンサは、セルロースナノペーパーからなる誘電層を2つの電極で挟み込んで作製される。
【0033】
コイル42の自己共振周波数は、送電コイル121の自己共振周波数と実質的に同じになるように選ばれる。これにより、非接触給電装置1が発生した交流磁界の振動は、同一の振動数(周波数)でコイル42に伝わる。その結果、送電コイル121と、コイル42とは、磁界共鳴結合し、コイル42に電流が流れる。即ち、非接触給電装置1は、磁界共鳴方式により、特定空間A01内に配置されたセンサデバイス4に非接触で給電を行うことができる。
【0034】
「センサ部44」
センサ部44は、コイル42を通じて供給された電力により、コイル42の周囲の比誘電率に基づく熱を発する。詳細には、センサ部44は、コイル42の周囲の比誘電率(即ち、土壌A11の含水率)を、熱を媒介として撮像装置2を通じて情報処理装置3に伝達する。従って、無線信号を送信するための送信器がセンサデバイス4に必要ないため、センサ部44によるセンシング機能及び情報発信機能と、生分解性とがより両立する。
【0035】
センサ部44は、炭素製の抵抗発熱体であることが好ましい。抵抗発熱体は、基材41の主面の法線方向に薄いシート形状である。抵抗発熱体は、基材41の主面上に形成され、コイル42の両端間に、共振回路43の構成要素である抵抗及びコンデンサを介して電気的に接続される。センサ部44は、コイル42を通じて供給された電力により、コイル42の周囲の比誘電率に基づく熱を発する。センサ部44は、炭素という低環境負荷の導電性材料のみで作製されるため、センシング機能及び情報発信機能と、生分解性とがより両立する。また、熱を媒介とするため、センサデバイス4を土壌A11に埋設し易くなる。
【0036】
被覆45は、基材41の両主面と、共振回路43とを被覆する(図2(b)を特に参照)。被覆45は、天然由来油脂製である。天然由来油脂としては、キャンデリラワックス、ライスワックス、蜜蝋及びシェラックのいずれかが例示される。被覆45により、基材41が空気から吸湿することが抑制される。よって、センシングシステム100は、土壌A11の含水率を精度良く測定できる。
【0037】
「センサデバイス4の製造方法」
まず、基材41と、インクペーストとが準備される。インクペーストは、特定導電性材料の粉末と、熱硬化性接着剤とを含む。熱硬化性接着剤は、エチルセルロースを主成分とする。
【0038】
次に、ディスペンサは、インクペーストを用いてコイル42、配線及び電極を基材41の主面上に印刷する。他にも、基材41の主面上には、カーボンペーストにより、共振回路43を構成する抵抗と、抵抗発熱体であるセンサ部44とが印刷される。
【0039】
基材41の主面には、共振回路43を構成するコンデンサの誘電層がセルロースナノペーパーを用いて基材41上の電極間に形成される。
【0040】
次に、共振回路43が形成された基材41上に、セルロースナノファイバ及び水分散液を塗布したナノペーパーが積層される。その結果、積層体が作製される。
【0041】
次に、プレス機により、積層体が高温高圧で所定時間の間プレスされる。その結果、積層体の各層が互いに接着された焼結体が作製される。
【0042】
次に、焼結体が、天然由来油脂(例えば、水懸濁液化したセルロースナノファイバ)に浸漬された後、乾燥させられる。その結果、基材41上には被覆45が形成される。これにより、同一仕様のセンサデバイス4が複数生産される。
【0043】
「センシングシステム100による含水率の測定」
図3は、土壌A11の含水率に対するセンサデバイス4のコイル42の自己共振周波数の変化を示すグラフである。図4は、土壌A11の含水率に対する給電効率を示すグラフである。以下、図3及び図4を参照して、センシングシステム100による含水率の測定について説明する。
【0044】
複数のセンサデバイス4は、土壌A11において互いに異なる位置に埋設される。また、基材41が水平方向D01に沿うように、各センサデバイス4は土壌A11内に埋設される。ここで、土壌A11の比誘電率は、大抵の場合、埋設位置における含水率により互いに異なる。比誘電率に応じて、各センサデバイス4におけるコイル42の線間容量が変化する。線間容量の変化により、コイル42の自己共振周波数が変化する。詳細には、コイル42の線間容量が増加すると、コイル42の自己共振周波数は低下する。
【0045】
非接触給電装置1は、交流磁界を発生する。センサデバイス4の埋設前では、コイル42の自己共振周波数は、送電コイル121の自己共振周波数と実質的に同じである。しかし、センサデバイス4が土壌A11に埋設される。また、土壌A11の含水率に応じて、コイル42の自己共振周波数は、図3に示されるように、センサデバイス4の埋設前と比較して低下する。従って、図4に示されるように、非接触給電装置1からセンサデバイス4への給電効率は、含水率に応じて低下する。即ち、センサ部44の発熱量は、センサデバイス4の埋設位置における含水率に応じて変化することになる。
【0046】
撮像装置2は、非接触給電装置1による交流磁界の発生後に、特定空間A01を撮影して、特定空間A01の熱分布を示す赤外線画像を生成する。撮像装置2は、生成した赤外線画像の画像データを、通信ネットワーク5を通じて情報処理装置3に送信する。
【0047】
情報処理装置3において、特定部31は、撮像装置2からの画像データが示す赤外線画像を処理して、各センサデバイス4の位置と発熱量とを特定する。また、検出部32は、特定部31により特定された各発熱量に相関する含水率を求める。
【0048】
「特定導電性材料について」
発明者は、好ましい特定導電性材料を選定するために、2種類の実験、即ち、第1実験と第2実験とを実施した。
【0049】
図5は、錫、銅及び銀の生分解性を示すグラフである。以下、図5を参照して、第1実験について説明する。第1実験において、発明者は、互いに同一面積Soの基材41を4枚作製した。そのうち1枚の基材(以下、「第1基材」と記載する。)41に、発明者は、錫により特定パターンを印刷により形成した。別の1枚の基材(以下、「第2基材」と記載する。)41には、同一特定パターンが銀で形成された。更に別の1枚の基材(以下、「第3基材」と記載する。)41には、同一特定パターンが銅で形成された。発明者は、特定パターン無しの基材(以下、「第4基材」と記載する。)41を含む4種類の基材41を土壌に置いて、60日経過するまでの第1基材41乃至第4基材41の各々の面積S1及び面積比(S1/So)×100[%]を測定した。その結果、図5に示されるように、第4基材41の面積比は、ゼロ[%]であった。第1基材41の面積比は、数%であり、第4基材41の面積比に最も近い値であった。第2基材41及び第3基材41の面積比はいずれも、25[%]を超えていた。即ち、第2基材41及び第3基材41では、特定パターン付近の生分解に遅延が確認された。第1実験により、錫は、生分解性の観点で、銀及び銅よりも優れていることが確認された。
【0050】
図6は、錫、銅及び銀の植害影響を示すグラフである。以下、図6を参照して、第2実験について説明する。第2実験では、発明者は、12個の鉢植えを準備した。そのうち3つの鉢植えの土に、発明者は、0.1[g]の錫粉末、1[g]の錫粉末、及び10[g]の錫粉末をそれぞれ添加した。別の3つには、0.1[g]の銀粉末、1[g]の銀粉末、及び10[g]の銀粉末がそれぞれ添加された。また、更に別の3つには、0.1[g]の銅粉末、1[g]の銅粉末、及び10[g]の銅粉末がそれぞれ添加された。残りの3つには、いずれの金属粉末も添加されなかった。
【0051】
発明者は、添加から21日後の生体重比を測定した。生体重比は、金属粉末添加無しの植物の重量に対する21日経過後の植物の重量の百分率である。測定の結果、図6に示されるように、錫粉末が添加された各鉢植えの生体重比は90[%]を超えていた。それに対し、銀粉末の鉢植え及び銅粉末の鉢植えの生体重比は、錫粉末の鉢植えの生体重比よりも遥かに小さかった。この結果から、錫には植害影響が殆ど無いことが実験により確認された。
【0052】
「センサデバイス4とRFIDタグとの相違点」
周知のように、RFIDは、電波を用いてRFIDタグのデータを非接触でメモリに読み書きする技術である。従って、RFIDでは、データ通信は電波を媒介として行われる。第1実施形態では、センサデバイス4と、撮像装置2との間では、熱を媒介として含水率のデータが通信される。また、RFIDタグは、メモリを備えているが、センサデバイス4は、メモリを備えていない。少なくとも上記2点において、センサデバイス4は、RFIDタグと明確に相違する。
【0053】
「第2実施形態」
第2実施形態におけるセンシングシステム100は、第1実施形態とは異なり、空気中の湿度を計測するシステムである。但し、第2実施形態のセンシングシステム100は、下記の除き、第1実施形態のセンシングシステム100と同様の構成を有する。よって、第2実施形態では、第1実施形態で参照した図1図6が援用される。
【0054】
まず、第2実施形態のセンサデバイス4は、被覆45を備えていない点で、第1実施形態のセンサデバイス4と相違する。これにより、基材41が空気A12中の水分を吸収することが可能となる。複数のセンサデバイス4は、地面A13から鉛直上方向に離れた位置で、水平方向において異なる位置に配置される。
【0055】
センサ部44は、面状発光体であることが好ましい。面状発光体は、有機ELであることが好ましい。水銀等の高環境負荷材料が使用されないためである。面状発光体は、コイル42の両端間に、共振回路43の構成要素である抵抗及びコンデンサを介して電気的に接続される。センサ部44は、コイル42を通じて供給された電力により、コイル42の周囲の比誘電率に基づく光を発する。
【0056】
また、第2実施形態の撮像装置2としては、赤外線撮像装置以外にも、光学撮像装置を採用することができる。撮影画像は、撮像装置2が光学撮像装置の場合、光学画像である。光学画像は、一般的な写真と同様に、可視光線を用いて得られる画像である。
【0057】
情報処理装置3において、特定部31は、撮像装置2からの画像データが示す光学画像に基づいて、センサデバイス4の位置と発光量とを特定する。即ち、情報処理装置3は、光を媒介としてセンサデバイス4からの情報を取得する。検出部32は、特定部31により特定された発光量に基づいて、湿度を求める。
【0058】
(¶追加の請求項3,5の構成)
「変形例」
第1実施形態又は第2実施形態において、基材41は、肥料を含有していてもよい。肥料成分は、例えば、硫酸アンモニウムである。しかし、これに限らず、窒素、りん酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄の6成分が肥料として使用可能である。
【0059】
図7は、肥料を含有する基材41の効果を示すグラフである。以下、図7を参照して、第3実験について説明する。第3実験では、発明者は、3個の鉢植えを準備した。発明者は、そのうち、第1の鉢植えに、肥料を含有しないセンサデバイス4(第1実施形態を参照)を粉砕した状態で埋めた。発明者は、第2の鉢植え、所定成分で所定量の肥料を含有した1個のセンサデバイス4を粉砕した状態で埋めた。発明者は、第3の鉢植えに、上記所定成分で上記所定量の肥料を含有した2個のセンサデバイス4を粉砕した状態で埋めた。
【0060】
発明者は、第1ないし第3の鉢植えを同日に作り、21日後の生体重比を測定した。本変形例で、生体重比は、第1の鉢植えの植物の重量に対する、第1ないし第3の鉢植えの植物の重量の百分率である。測定の結果、図7に示されるように、第3の鉢植えにおける植物の生体重比が約160[%]であり、第2の鉢植えにおける植物の生体重比が約120[%]であった。第3実験により、センサデバイス4の基材41の生分解後に施肥効果が確認された。
【0061】
上記変形例では、基材41が肥料を含有していた。しかし、これに限らず、被覆45が肥料を含有していてもよい。
【0062】
以上、図面を参照して本開示の実施形態について説明した。ただし、本開示は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、又は、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0063】
また、図面は、本開示の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本開示の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0064】
(1)各実施形態では、非接触給電は、磁界共鳴方式であった。しかし、これに限らず、非接触給電方式は、電磁界結合方式、電界結合方式、又はマイクロ波無線方式であってもよい。
【0065】
(2)各実施形態では、撮像装置2は、特定空間A01の周囲に固定的に設置される。しかし、これに限らず、撮像装置2は、特定空間A01の周囲に固定的に設置されなくともよい。具体的には、撮像装置2は、無人航空機(ドローン)に搭載されてもよい。
【0066】
(3)各実施形態では、特定導電性材料は錫であった。しかし、特定導電性材料は、金又はカーボンであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、センサデバイス及びセンシングシステムであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0068】
100:センシングシステム
1 :非接触給電装置
2 :撮像装置
3 :情報処理装置
31 :特定部
4 :センサデバイス
41 :基材
42 :コイル
44 :センサ部
45 :被覆
5 :通信ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7