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特開2024-157917DC/DCコンバータ及びスイッチング制御回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157917
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】DC/DCコンバータ及びスイッチング制御回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H02M3/155 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072587
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】下本 晃平
(72)【発明者】
【氏名】森尻 敬治
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB57
5H730BB83
5H730BB88
5H730DD04
5H730EE13
5H730EE58
5H730EE59
5H730EE60
5H730FD01
5H730FD51
5H730FF02
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】出力電圧が安定したDC/DCコンバータ及びスイッチング制御回路を提供する。
【解決手段】DC/DC制御部61は、誤差信号Verrと降圧用のこぎり波Vsp1との比較に応じたデューティでトランジスタMN1,MN2をオンオフする。DC/DC制御部62は、誤差信号Verrと昇圧用のこぎり波Vsp2との比較に応じたデューティでトランジスタMN3,MN4をオンオフする。昇圧用のこぎり波Vsp2は、降圧用のこぎり波Vsp1をレベルシフトした波形である。降圧用のこぎり波Vsp1と、昇圧用のこぎり波Vsp2とは位相が異なる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を降圧した出力電圧を出力するための降圧用トランジスタと、
前記入力電圧を昇圧した前記出力電圧を出力するための昇圧用トランジスタと、
前記降圧用トランジスタ及び前記昇圧用トランジスタのオンオフを制御するスイッチング制御回路とを備え、
前記スイッチング制御回路が、
降圧用のこぎり波と、前記降圧用のこぎり波を電圧シフトした波形の昇圧用のこぎり波とを出力するのこぎり波生成回路と、
前記出力電圧に応じた電圧信号と第1の基準電圧との差分となる誤差信号を出力するエラーアンプと、
前記誤差信号と前記降圧用のこぎり波とを比較する降圧用コンパレータと、
前記誤差信号と前記昇圧用のこぎり波とを比較する昇圧用コンパレータと、
前記降圧用コンパレータの比較結果に応じたデューティで前記降圧用トランジスタをオンオフする降圧用DC/DC制御部と、
前記昇圧用コンパレータの比較結果に応じたデューティで前記昇圧用トランジスタをオンオフする昇圧用DC/DC制御部とを有する、
DC/DCコンバータであって、
前記降圧用のこぎり波と、前記昇圧用のこぎり波とは位相が異なる、
DC/DCコンバータ。
【請求項2】
請求項1に記載のDC/DCコンバータにおいて、
前記のこぎり波生成回路は、
位相が180°異なる第1のクロック信号及び第2のクロック信号を出力する発振器を有し、
前記第1のクロック信号及び前記第2のクロック信号各々に同期したのこぎり波を生成して、前記昇圧用のこぎり波及び前記降圧用のこぎり波を生成し、
前記発振器は、
コンデンサと、
前記コンデンサを充電する充電スイッチと、
前記コンデンサを放電する放電スイッチと、
前記コンデンサの両端電圧が第2の基準電圧を超えたか否かを判定する第1のコンパレータと、
前記コンデンサの両端電圧が第3の基準電圧を下回ったか否かを判定する第2のコンパレータと、
前記第1のコンパレータが前記コンデンサの両端電圧が前記第2の基準電圧を超えたと判定したタイミングを遅延させる第1の遅延回路と、
前記第2のコンパレータが前記コンデンサの両端電圧が前記第3の基準電圧を下回ったと判定したタイミングを遅延させる第2の遅延回路と、
前記第1の遅延回路及び前記第2の遅延回路により遅延させたタイミングごとに前記充電スイッチ及び前記放電スイッチのオンオフを切り替えるスイッチ制御部とを有し、
前記第1の遅延回路及び前記第2の遅延回路の出力を前記第1のクロック信号及び前記第2のクロック信号として出力する、
DC/DCコンバータ。
【請求項3】
請求項1に記載のDC/DCコンバータにおいて、
前記のこぎり波生成回路は、
クロック信号を出力する発振器と、
前記発振器が出力した前記クロック信号の位相をシフトする位相シフト回路とを有し、
前記発振器から出力された前記クロック信号及び前記位相シフト回路により位相シフトされた前記クロック信号各々に同期したのこぎり波を生成して、前記昇圧用のこぎり波及び前記降圧用のこぎり波を生成する、
DC/DCコンバータ。
【請求項4】
請求項3に記載のDC/DCコンバータにおいて、
前記位相シフト回路による位相シフト量を調整するための調整用入力部を備えた、
DC/DCコンバータ。
【請求項5】
入力電圧を降圧した出力電圧を出力するための降圧用トランジスタと、前記入力電圧を昇圧した前記出力電圧を出力するための昇圧用トランジスタとのオンオフを制御するスイッチング制御回路であって、
降圧用のこぎり波と、前記降圧用のこぎり波を電圧シフトした波形の昇圧用のこぎり波とを出力するのこぎり波生成回路と、
前記出力電圧に応じた電圧信号と第1の基準電圧との差分となる誤差信号を出力するエラーアンプと、
前記誤差信号と前記降圧用のこぎり波とを比較する降圧用コンパレータと、
前記誤差信号と前記昇圧用のこぎり波とを比較する昇圧用コンパレータと、
前記降圧用コンパレータの比較結果に応じたデューティで前記降圧用トランジスタをオンオフする降圧用DC/DC制御部と、
前記昇圧用コンパレータの比較結果に応じたデューティで前記昇圧用トランジスタをオンオフする昇圧用DC/DC制御部とを有し、
前記降圧用のこぎり波と、前記昇圧用のこぎり波とは位相が異なる、
スイッチング制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC/DCコンバータ及びスイッチング制御回路、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DC/DCコンバータとして、入力電圧を昇圧、降圧できる昇降圧型DC/DCコンバータが提案されている(特許文献1)。特許文献1の昇降圧型DC/DCコンバータは、誤差電圧(=誤差信号)と昇圧側のこぎり波(=昇圧用のこぎり波)、降圧側のこぎり波(=降圧側のこぎり波)との比較に基づいて、昇圧動作、降圧動作を行っている。昇圧側のこぎり波は、降圧側のこぎり波を電圧シフトした波形であり、昇圧側のこぎり波と降圧側のこぎり波とは同位相である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-166223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の昇降圧DC/DCコンバータは、出力電圧が安定しない、という課題があった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、出力電圧が安定したDC/DCコンバータ及びスイッチング制御回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るDC/DCコンバータ及びスイッチング制御回路は、下記[1]~[5]を特徴としている。
[1]
入力電圧を降圧した出力電圧を出力するための降圧用トランジスタと、
前記入力電圧を昇圧した前記出力電圧を出力するための昇圧用トランジスタと、
前記降圧用トランジスタ及び前記昇圧用トランジスタのオンオフを制御するスイッチング制御回路とを備え、
前記スイッチング制御回路が、
降圧用のこぎり波と、前記降圧用のこぎり波を電圧シフトした波形の昇圧用のこぎり波とを出力するのこぎり波生成回路と、
前記出力電圧に応じた電圧信号と第1の基準電圧との差分となる誤差信号を出力するエラーアンプと、
前記誤差信号と前記降圧用のこぎり波とを比較する降圧用コンパレータと、
前記誤差信号と前記昇圧用のこぎり波とを比較する昇圧用コンパレータと、
前記降圧用コンパレータの比較結果に応じたデューティで前記降圧用トランジスタをオンオフする降圧用DC/DC制御部と、
前記昇圧用コンパレータの比較結果に応じたデューティで前記昇圧用トランジスタをオンオフする昇圧用DC/DC制御部とを有する、
DC/DCコンバータであって、
前記降圧用のこぎり波と、前記昇圧用のこぎり波とは位相が異なる、
DC/DCコンバータ。
[2]
[1]に記載のDC/DCコンバータにおいて、
前記のこぎり波生成回路は、
位相が180°異なる第1のクロック信号及び第2のクロック信号を出力する発振器を有し、
前記第1のクロック信号及び前記第2のクロック信号各々に同期したのこぎり波を生成して、前記昇圧用のこぎり波及び前記降圧用のこぎり波を生成し、
前記発振器は、
コンデンサと、
前記コンデンサを充電する充電スイッチと、
前記コンデンサを放電する放電スイッチと、
前記コンデンサの両端電圧が第2の基準電圧を超えたか否かを判定する第1のコンパレータと、
前記コンデンサの両端電圧が第3の基準電圧を下回ったか否かを判定する第2のコンパレータと、
前記第1のコンパレータが前記コンデンサの両端電圧が前記第2の基準電圧を超えたと判定したタイミングを遅延させる第1の遅延回路と、
前記第2のコンパレータが前記コンデンサの両端電圧が前記第3の基準電圧を下回ったと判定したタイミングを遅延させる第2の遅延回路と、
前記第1の遅延回路及び前記第2の遅延回路により遅延させたタイミングごとに前記充電スイッチ及び前記放電スイッチのオンオフを切り替えるスイッチ制御部とを有し、
前記第1の遅延回路及び前記第2の遅延回路の出力を前記第1のクロック信号及び前記第2のクロック信号として出力する、
DC/DCコンバータ。
[3]
[1]に記載のDC/DCコンバータにおいて、
前記のこぎり波生成回路は、
クロック信号を出力する発振器と、
前記発振器が出力した前記クロック信号の位相をシフトする位相シフト回路とを有し、
前記発振器から出力された前記クロック信号及び前記位相シフト回路により位相シフトされた前記クロック信号各々に同期したのこぎり波を生成して、前記昇圧用のこぎり波及び前記降圧用のこぎり波を生成する、
DC/DCコンバータ。
[4]
[3]に記載のDC/DCコンバータにおいて、
前記位相シフト回路による位相シフト量を調整するための調整用入力部を備えた、
DC/DCコンバータ。
[5]
入力電圧を降圧した出力電圧を出力するための降圧用トランジスタと、前記入力電圧を昇圧した前記出力電圧を出力するための昇圧用トランジスタとのオンオフを制御するスイッチング制御回路であって、
降圧用のこぎり波と、前記降圧用のこぎり波を電圧シフトした波形の昇圧用のこぎり波とを出力するのこぎり波生成回路と、
前記出力電圧に応じた電圧信号と第1の基準電圧との差分となる誤差信号を出力するエラーアンプと、
前記誤差信号と前記降圧用のこぎり波とを比較する降圧用コンパレータと、
前記誤差信号と前記昇圧用のこぎり波とを比較する昇圧用コンパレータと、
前記降圧用コンパレータの比較結果に応じたデューティで前記降圧用トランジスタをオンオフする降圧用DC/DC制御部と、
前記昇圧用コンパレータの比較結果に応じたデューティで前記昇圧用トランジスタをオンオフする昇圧用DC/DC制御部とを有し、
前記降圧用のこぎり波と、前記昇圧用のこぎり波とは位相が異なる、
スイッチング制御回路。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、出力電圧が安定したDC/DCコンバータ及びスイッチング制御回路を提供することができる。
【0008】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態における本発明のDC/DCコンバータを示す回路図である。
図2図2は、図1に示す降圧用,昇圧用のこぎり波Vsp1,Vsp2、誤差信号Verr、PWM信号Vpwm1,Vpwm4、入力電圧Vin及び出力電圧Voutのタイムチャートである。
図3図3は、従来のDC/DCコンバータから昇降圧モード中に出力される降圧用,昇圧用のこぎり波Vsp1,Vsp2、誤差信号Verr、PWM信号Vpwm1~Vpwm4のタイムチャートである。
図4図4は、図1に示すDC/DCコンバータから昇降圧モード中に出力される降圧用,昇圧用のこぎり波Vsp1,Vsp2、誤差信号Verr、PWM信号Vpwm1~Vpwm4のタイムチャートである。
図5図5は、第1実施形態における図1に示す、のこぎり波生成回路を示すブロック図である。
図6図6は、図5に示す発振器を示す回路図である。
図7図7は、図5に示す発振器の各部から出力される信号のタイムチャートである。
図8図8は、図6に示す発振器を構成する遅延回路の詳細を示す回路図である。
図9図9は、図8に示す遅延回路の各部から出力される信号のタイムチャートである。
図10図10は、図5に示す昇圧用,降圧用のこぎり波生成回路を示す回路図である。
図11図11は、図10に示す昇圧用,降圧用のこぎり波生成回路の各部から出力される信号のタイムチャートである。
図12図12は、第2実施形態におけるDC/DCコンバータを示す回路図である。
図13図13は、第2実施形態におけるDC/DCコンバータの、のこぎり波生成回路を示すブロック図である。
図14図14は、図13に示す発振器の一部を示す回路である。
図15図15は、図13に示す位相シフト回路の詳細を示す回路図である。
図16図16は、図15に示す位相シフト回路の各部から出力される信号のタイムチャートである。
図17図17は、図13に示す昇圧用,降圧用のこぎり波生成回路の各部から出力される信号のタイムチャートである。
図18図18は、図15に示すワンショット回路の詳細を示す回路図である。
図19図19は、図17に示すワンショット回路の各部から出力される信号のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態のDC/DCコンバータ1について図1を参照して説明する。第1実施形態のDC/DCコンバータ1は、入力端子Tinから入力された入力電圧Vinを昇圧または降圧した出力電圧Voutを出力端子Toutから出力する。DC/DCコンバータ1は、トランジスタMN1~MN4と、コイルLと、コンデンサC1,C2と、トランジスタMN1~MN4を制御する制御IC2(=スイッチング制御回路)とを備えている。
【0012】
トランジスタMN1~MN4は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタMN1,MN2(=降圧用トランジスタ)は、入力端子Tinとグランドとの間に直列接続されている。詳しく説明すると、トランジスタMN1のドレインが入力端子Tinに接続され、トランジスタMN2のソースがグランドに接続されている。トランジスタMN1のソースとトランジスタMN2のドレインとが接続されている。
【0013】
トランジスタMN3,MN4(=昇圧用トランジスタ)は、出力端子Toutとグランドとの間に直列接続されている。詳しく説明すると、トランジスタMN3のドレインが出力端子Toutに接続され、トランジスタMN4のソースがグランドに接続されている。トランジスタMN3のソースとトランジスタMN4のドレインとが接続されている。
【0014】
コイルLは、トランジスタMN1のソースとトランジスタMN2のドレインの接続点と、トランジスタMN3のソースとトランジスタMN4のドレインの接続点との間に接続されている。コンデンサC1は、入力端子Tinとグランドの間に接続されている。コンデンサC2は、出力端子Toutとグランドの間に接続されている。
【0015】
トランジスタMN3をオン、トランジスタMN4をオフした状態で、トランジスタMN1,MN2を交互にオンすると、DC/DCコンバータ1は、降圧型として機能し、入力電圧Vinを降圧した出力電圧Voutを出力する。トランジスタMN1をオン、トランジスタMN2をオフした状態で、トランジスタMN3,MN4を交互にオンすると、DC/DCコンバータ1は、昇圧型として機能し、入力電圧Vinを昇圧した出力電圧Voutを出力する。
【0016】
DC/DCコンバータ1はさらに、コイルLに流れるインダクタ電流を検出するためのセンス抵抗Rsと、出力電圧Voutを検出する電圧検出用の抵抗R1,R2とを備えている。センス抵抗Rsは、トランジスタMN1のソースとトランジスタMN2のドレインの接続点と、コイルLとの間に接続されている。制御IC2の入力端子Tinp,Tinnには、センス抵抗Rsの両端が接続される。抵抗R1,R2は、出力端子Toutとグランドとの間に直列接続される。制御IC2のフィードバック端子Tfbには、抵抗R1,R2の接続点が接続され、抵抗R1,R2により検出された電圧信号Vfbが入力される。
【0017】
制御IC2は、入力電圧Vinが所望の出力電圧Voutよりも大きい場合、入力電圧Vinを降圧し、入力電圧Vinが所望の出力電圧Voutよりも小さい場合、入力電圧Vinを昇圧して、一定の出力電圧Voutが出力されるように、トランジスタMN1~MN4のオンオフを制御する。
【0018】
制御IC2は、電流センス回路3と、エラーアンプAp1と、のこぎり波生成回路4と、電流加算部51,52と、コンパレータCp1,Cp2と、DC/DC制御部61,62と、ドライバ回路71~74とを有している。電流センス回路3は、入力端子Tinp,Tinnに接続され、センス抵抗Rsに流れる電流を増幅した電流信号Visを出力する。
【0019】
エラーアンプAp1は、反転入力にフィードバック端子Tfbが接続され、非反転入力に基準電圧Vref1(=第1の基準電圧)を出力する電源が接続されている。エラーアンプAp1は、電圧信号Vfbと基準電圧Vref1との差に応じた誤差信号VerrをコンパレータCp1,Cp2にそれぞれ供給する。
【0020】
のこぎり波生成回路4は、図2に示す、降圧用のこぎり波Vsp1,昇圧用のこぎり波Vsp2を生成する。降圧用のこぎり波Vsp1及び昇圧用のこぎり波Vsp2は、最小電圧から最大電圧、最大電圧から最小電圧への電圧変動を周期的に繰り返す同一周期の、のこぎり波形状の電圧信号である。昇圧用のこぎり波Vsp2は、降圧用のこぎり波Vsp1をレベルシフト(シフトアップ)した波形となっている。昇圧用のこぎり波Vsp2の最小電圧が、降圧用のこぎり波Vsp1の最大電圧よりも低くなるように、レベルシフトされている。
【0021】
降圧用のこぎり波Vsp1及び昇圧用のこぎり波Vsp2の位相は異なる。本実施形態では、降圧用のこぎり波Vsp1及び昇圧用のこぎり波Vsp2の位相は180°異なる。のこぎり波生成回路4の詳細については後述する。図1に示すように、電流加算部51,52は、降圧用のこぎり波Vsp1,昇圧用のこぎり波Vsp2に電流信号Visを加算して、コンパレータCp1,Cp2に供給する。
【0022】
コンパレータCp1(=降圧用コンパレータ)は、降圧用のこぎり波Vsp1と誤差信号Verrとを比較した比較結果を示す比較信号Vcp1をDC/DC制御部61(=降圧用DC/DC制御部)に出力する。コンパレータCp2(=昇圧用コンパレータ)は、昇圧用のこぎり波Vsp2と誤差信号Verrとを比較した比較結果を示す比較信号Vcp2をDC/DC制御部62(=昇圧用DC/DC制御部)に出力する。DC/DC制御部61は、コンパレータCp1から供給された比較信号Vcp1に応じたデューティのPWM信号Vpwm1,Vpwm2を生成してドライバ回路71,72にそれぞれ出力する。PWM信号Vpwm1,Vpwm2はHi、Loが互いに反転した信号である。
【0023】
DC/DC制御部62は、コンパレータCp2から供給された比較信号Vcp2に応じたデューティのPWM信号Vpwm3,Vpwm4を生成して、ドライバ回路73,74に出力する。PWM信号Vpwm3,Vpwm4はHi、Loが互いに反転した信号である。ドライバ回路71~74は、PWM信号Vpwm1~Vpwm4に応じた駆動信号をトランジスタMN1~MN4のゲートに対して出力して、トランジスタMN1~MN4のオンオフを制御する。
【0024】
次に、上述したDC/DCコンバータ1の動作について図2を参照して以下説明する。図2に示すように、入力電圧Vinが出力電圧Voutよりも高い降圧モードにおいては、誤差信号Verrは、昇圧用のこぎり波Vsp2の最小値よりも小さくなる。このため、DC/DCコンバータ1は、トランジスタMN3をオン、トランジスタMN4をオフした状態で、トランジスタMN1,MN2を交互にオンして、入力電圧Vinを降圧する。
【0025】
入力電圧Vinと出力電圧Voutがほぼ等しい昇降圧モードにおいては、誤差信号Verrは、昇圧用のこぎり波Vsp2の最小値よりも大きく、降圧用のこぎり波Vsp1の最大値よりも小さくなる。このため、DC/DCコンバータ1は、トランジスタMN1,MN2を交互にオンすると共に、トランジスタMN3,MN4を交互にオンして、入力電圧Vinを昇圧すると同時に降圧する。
【0026】
入力電圧Vinが出力電圧Voutよりも低い昇圧モードにおいては、誤差信号Verrは、降圧用のこぎり波Vsp1の最大値よりも大きくなる。このため、DC/DCコンバータ1は、トランジスタMN1をオン、トランジスタMN2をオフした状態で、トランジスタMN3,MN4を交互にオンして、入力電圧Vinを昇圧する。以上の動作により、DC/DCコンバータ1は、一定の出力電圧Voutを出力できる。
【0027】
次に、降圧用のこぎり波Vsp1と昇圧用のこぎり波Vsp2との位相を異ならせたことによる効果について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3及び図4に示す降圧用,昇圧用のこぎり波Vsp1,Vsp2は電流信号Visが加算された後の信号である。同図に示すように、センス抵抗Rsの影響により、トランジスタMN1がオンオフするタイミングで、昇圧用のこぎり波Vsp2にスイッチングノイズが発生する。
【0028】
図3に示すように、降圧用のこぎり波Vsp1と昇圧用のこぎり波Vsp2とが同位相の場合、トランジスタMN1がオンするタイミングで、昇圧用のこぎり波Vsp2が誤差信号Verrを下回り、トランジスタMN3がオン,トランジスタMN4がオフする。すなわち、昇圧用のこぎり波Vsp2が誤差信号Verrを下回ってから誤差信号Verrを超えるまでの間に、昇圧用のこぎり波Vsp2にスイッチングノイズが発生してしまう。このため、トランジスタMN3,MN4をオンするPWM信号Vpwm3,Vpwm4のパルス幅が安定しないため、出力電圧Voutも不安定となる。
【0029】
これに対して、本実施形態では、降圧用のこぎり波Vsp1と昇圧用のこぎり波Vsp2との位相が180°異なる。このため、図4に示すように、トランジスタMN1がオンオフするタイミングと、昇圧用のこぎり波Vsp2が誤差信号Verrを下回るタイミングとをずらすことができる。すなわち、昇圧用のこぎり波Vsp2が誤差信号Verrを下回ってから誤差信号Verrを超えるまでの間に、昇圧用のこぎり波Vsp2にスイッチングノイズが発生しない。このため、トランジスタMN3,MN4をオンするPWM信号Vpwm3,Vpwm4のパルス幅が安定し、出力電圧Voutも安定する。
【0030】
次に、のこぎり波生成回路4の詳細について図5を参照して説明する。同図に示すように、のこぎり波生成回路4は、発振器8と、降圧用のこぎり波生成回路9と、昇圧用のこぎり波生成回路10と、レベルシフト回路11とを有している。
【0031】
発振器8は、クロック信号Sc1(=第1のクロック信号)と、クロック信号Sc1と180°位相が異なるクロック信号Sc2(=第2のクロック信号)とを出力する。降圧用のこぎり波生成回路9は、クロック信号Sc1に同期した降圧用のこぎり波Vsp1を生成する。昇圧用のこぎり波生成回路10は、クロック信号Sc2に同期した、のこぎり波を生成する。レベルシフト回路11は、昇圧用のこぎり波生成回路10が生成した、のこぎり波をレベルシフト(シフトアップ)して昇圧用のこぎり波Vsp2として出力する。
【0032】
次に、発振器8の詳細について図6を参照して説明する。図6に示すように、発振器8は、電流源12と、トランジスタMP1~MP3と、トランジスタMN5,MN6と、スイッチSW1(=充電スイッチ),スイッチSW2(=放電スイッチ)と、コンデンサC3と、コンパレータCp3(=第1のコンパレータ),コンパレータCp4(=第2のコンパレータ)と、遅延回路13(=第1の遅延回路),遅延回路14(=第2の遅延回路)と、フリップフロップ15(=スイッチ制御部)とを有している。
【0033】
電流源12は、グランドとトランジスタMP1との間に接続され、電流Iref1を供給する。トランジスタMP1~MP3は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタMP1は、ソースが電源ラインLLに接続され、ドレインが電流源12に接続され、ドレイン及びゲートが接続されている。電源ラインLLには電源電圧が供給される。即ち、トランジスタMP1は、電流源12と直列接続され、電流源12からの電流Iref1が供給される。
【0034】
トランジスタMP2,MP3は、ソースが電源ラインLLに接続され、ゲートがトランジスタMP1のゲート及びドレインに接続される。即ち、トランジスタMP2,MP3は、トランジスタMP1にカレントミラー接続され、トランジスタMP1に流れる電流Iref1をN倍(本実施形態では1倍)した電流を折り返す。
【0035】
トランジスタMN5,MN6は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタMN5は、ソースがグランドに接続され、ドレインがトランジスタMP2のドレインに接続されている。即ち、トランジスタMN5は、トランジスタMP2に直列接続され、トランジスタMP2が折り返した電流Iref1が供給される。
【0036】
トランジスタMN6は、ソースがグランドに接続され、ゲートがトランジスタMN5のゲート及びドレインに接続されている。即ち、トランジスタMN6は、トランジスタMN5にカレントミラー接続され、トランジスタMN5に流れる電流Iref1をN倍(本実施形態では1倍)した電流を折り返す。
【0037】
スイッチSW1,SW2は、トランジスタMP3のドレインと、トランジスタMN6のドレインとの間に直列接続されている。コンデンサC3は、スイッチSW1,SW2の接続点とグランドとの間に接続されている。スイッチSW1がオン,スイッチSW2がオフすると、コンデンサC3は電流Iref1により充電される。スイッチSW2がオン,スイッチSW1がオフすると、コンデンサC3は電流Iref1により放電される。
【0038】
スイッチSW1,SW2は交互にオンオフするように制御される。これにより、コンデンサC3の両端電圧であるノードAの電圧は、充電による増加と放電による減少とを繰り返した波形となる(図7(A)参照)。
【0039】
コンパレータCP3は、非反転入力がノードAに接続され、反転入力が基準電圧Vref2(=第2の基準電圧)を出力する電源に接続され、ノードAの電圧が基準電圧Vref2を超えたタイミングを判定する。コンパレータCP3は、ノードAの電圧が基準電圧Vref2を越えている間、Hiレベルとなるパルス信号をノードBから出力する(図7(B))。コンパレータCP4は、反転入力がノードAに接続され、非反転入力が基準電圧Vref3(=第3の基準電圧)を出力する電源に接続され、ノードAの電圧が基準電圧Vref3を下回ったタイミングを判定する。コンパレータCP4は、ノードAの電圧が基準電圧Vref3を下回っている間、Hiレベルとなるパルス信号をノードCから出力する(図7(D))。
【0040】
遅延回路13は、ノードBから出力されるパルス信号の立ち上がり(=コンパレータCP3がノードAの電圧が基準電圧Vref2を超えたと判定したタイミング)を遅延時間tdだけ遅延させたクロック信号Sc1をノードDから出力させる(図7(C))。クロック信号Sc1の立下りは、ノードBから出力されるパルス信号の立下りタイミングと同じである。遅延回路14は、ノードCから出力されるパルス信号の立ち上がり(=コンパレータCP4がノードAの電圧が基準電圧Vref3を下回ったと判定したタイミング)を遅延時間tdだけ遅延させたクロック信号Sc2をノードEから出力させる(図7(E))。クロック信号Sc2の立下りは、ノードCから出力されるパルス信号の立下りタイミングと同じである。遅延回路13,14の詳細については後述する。
【0041】
フリップフロップ15は、S端子がノードDに接続され、R端子がノードEに接続されている。これにより、Q端子からは、ノードAの信号が基準電圧Vref2を越えてから遅延時間td経過したタイミングでHiレベルに立ち上がり、ノードAの信号が基準電圧Vref3を下回ってから遅延時間td経過したタイミングでLoレベルに立ち下がるパルス信号が出力される(図7(F))。QB端子からは、Q端子から出力されるパルス信号を反転した反転パルス信号が出力される(図7(G))。
【0042】
Q端子から出力される信号がスイッチSW2に供給され、QB端子から出力される信号がスイッチSW1に供給される。スイッチSW1,SW2は、QB端子,Q端子から出力される信号がHiレベルの場合にオンし、QB端子,Q端子から出力される信号がLoレベルの場合にオフする。
【0043】
次に、遅延回路13,14の詳細について図8及び図9を参照して説明する。図8に示すように、遅延回路13,14は各々、インバータ16と、電流源17と、トランジスタMP7,MN7と、コンデンサC4と、インバータ18,19とを有している。遅延回路13のインバータ16は、入力がノードBに接続されている。遅延回路14のインバータ16は、ノードCに接続されている。インバータ16の出力がノードFとなる。電流源17は、電源ラインLLと後述するトランジスタMP7,MN7との間に接続され、電流Iref2を供給する。
【0044】
トランジスタMP7は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタMN7は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタMP7,MN7は、ゲートがインバータ16の出力であるノードFに接続されている。また、トランジスタMP7,MN7は、電流源17とグランドとの間に直列接続されている。
【0045】
詳しく説明すると、トランジスタMP7は、ソースが電流源17に接続され、ドレインがトランジスタMN7のドレインに接続される。トランジスタMN7は、ソースがグランドに接続される。コンデンサC4は、トランジスタMP7,MN7のドレイン同士の接続点とグランドとの間に接続される。トランジスタMP7がオンされ、トランジスタMN7がオフされると、コンデンサC4が電流Iref2により充電される。トランジスタMN7がオンされ、トランジスタMP7がオフされると、コンデンサC4の両端がグランドに接続され、コンデンサC4が急速に放電される。
【0046】
インバータ18は、入力にコンデンサC4とトランジスタMP7,MN7のドレインとの接続点であるノードGが接続される。インバータ19は、入力にインバータ18の出力であるノードHに接続される。遅延回路13のインバータ19の出力がノードDとなる。遅延回路14のインバータ19の出力がノードEとなる。
【0047】
以上の構成によれば、インバータ16は、遅延回路13,14の入力に接続されるノードB,Cから出力されるパルス信号を反転したパルス信号をノードFから出力する(図9(A),(B))。ノードFのパルス信号がHiレベルの間、トランジスタMP7がオフ、トランジスタMN7がオンするため、コンデンサC4は急速に放電され、ノードHの電圧はグランド電圧となる。これに対して、ノードFのパルス信号がLoレベルの間、トランジスタMP7がオン、トランジスタMN7がオフするため、コンデンサC4は電流Iref2により充電され、ノードHの電圧は上昇する(図9(C))。
【0048】
インバータ18は、ノードGの電圧が閾値Vth18を上回っている間、Loレベルとなり、閾値Vth18を下回っている間、Hiレベルとなる信号をノードHから出力する(図9(D))。遅延回路13のインバータ19は、ノードHからの出力された信号を反転させたクロック信号Sc1をノードDから出力する。遅延回路14のインバータ19は、ノードHから出力された信号を反転させたクロック信号Sc2をノードEから出力する(図9(E))。
【0049】
ノードB,Cのパルス信号が立ち上がってからノードD,Eのクロック信号Sc1,Sc2が立ち上がるまでの遅延時間tdは下記の式(1)に示すように、コンデンサC4の容量C4と、インバータ18の閾値Vth18と、電流Iref2によって設定される。
td=(C4×Vth18)/Iref2 …(1)
【0050】
次に、降圧用,降圧用のこぎり波生成回路9,10について図10及び図11を参照して以下説明する。図10に示すように、降圧用、昇圧用のこぎり波生成回路9,10は、電流源20と、トランジスタMP8,MP9と、コンデンサC5とを有している。
【0051】
電流源20は、電源ラインLLとトランジスタMP8との間に接続され、電流Iref3を供給する。トランジスタMP8は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタMN8は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタMP8,MN8は、ゲートが降圧用,昇圧用のこぎり波生成回路9,10の入力となり、クロック信号Sc1,Sc2が入力される。また、トランジスタMP8,MN8は、電流源20とグランドとの間に直列接続されている。
【0052】
詳しく説明すると、トランジスタMP8は、ソースが電流源20に接続され、ドレインがトランジスタMN8のドレインに接続される。トランジスタMN8は、ソースがグランドに接続される。コンデンサC5は、トランジスタMP8,MN8のドレイン同士の接続点とグランドとの間に接続される。トランジスタMP8がオンされ、トランジスタMN8がオフされると、コンデンサC5が電流Iref3により充電される。トランジスタMN8がオンされ、トランジスタMP8がオフされると、コンデンサC5の両端がグランドに接続され、コンデンサC5が急速に放電される。
【0053】
以上の構成によれば、図11に示すように、クロック信号Sc1,Sc2がHiレベルのときにコンデンサC5が放電されて、昇圧用,降圧用のこぎり波生成回路9,10の出力はLoレベルとなる。クロック信号Sc1,Sc2がLoレベルときにコンデンサC5が電流Iref3により充電されて、昇圧用,降圧用のこぎり波生成回路9,10の出力は徐々に増加する。クロック信号Sc1,Sc2は180°位相が異なっているため、昇圧用,降圧用のこぎり波生成回路9,10から出力されるのこぎり波は、位相が180°異なる(図11(B),(D))。
【0054】
降圧用のこぎり波生成回路9から出力されるのこぎり波は、降圧用のこぎり波Vsp1として電流加算部51に供給される。昇圧用のこぎり波生成回路10から出力されるのこぎり波は、レベルシフト回路11によりシフトアップされた後、昇圧用のこぎり波Vsp2として電流加算部52に供給される。レベルシフト回路11としては、周知のレベルシフト回路を用いることができる。
【0055】
上述した実施形態によれば、降圧用,昇圧用のこぎり波Vsp1,Vsp2の位相を180°異ならせる。このため、トランジスタMN1のオンオフにより昇圧用のこぎり波Vsp2に発生するスイッチングノイズに対して、最も離れたタイミングでトランジスタMN3をオンすることができ、スイッチングノイズの影響を受けにくくすることができる。しかも、位相が180°異なるクロック信号Sc1,Sc2を用いている。クロック信号Sc2は、クロック信号Sc1を生成する発振器8で生成することができるため、コンデンサなどを用いて位相シフトする回路が必要なく、回路構成を簡素にすることができる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のDC/DCコンバータ1Bについて、図12などを参照して説明する。なお、図12において、上述した第1実施形態で既に説明した図1などに示す、DC/DCコンバータ1と同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0057】
第2実施形態のDC/DCコンバータ1Bは、入力端子Tinから入力された入力電圧Vinを昇圧または降圧した出力電圧Voutを出力端子Toutから出力するとともに、入力端子Vinを降圧した出力電圧Vout2を出力端子Tout2から出力する。
【0058】
DC/DCコンバータ1Bは、第1実施形態と同様にトランジスタMN1~MN4、コイルL、コンデンサC1,C2、センス抵抗Rs、抵抗R1,R2を備えている。これらについては第1実施形態と同等であるため詳細な説明を省略する。DC/DCコンバータ1Bはさらに、トランジスタMN9,MN10と、コイルL2と、コンデンサC6を備えている。
【0059】
トランジスタMN9,MN10は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタMN9,MN10は、入力端子Tinとグランドとの間に直列接続されている。詳しく説明すると、トランジスタMN9のドレインが入力端子Tinに接続され、トランジスタMN10のソースがグランドに接続されている。トランジスタMN9のソースとトランジスタMN10のドレインとが接続されている。
【0060】
コイルL2は、トランジスタMN9のソースとトランジスタMN10のドレインの接続点と、出力端子Tout2との間に接続されている。コンデンサC6は、出力端子Tout2とグランドとの間に接続されている。トランジスタMN9,MN10を交互にオンすると、入力電圧Vinを降圧した出力電圧Vout2が出力端子Tout2から出力される。
【0061】
また、DC/DCコンバータ1Bは、トランジスタMN1~MN4のオンオフを制御する制御IC(図12には不図示)を備えている。第1実施形態の制御IC2と第2実施形態の制御ICとで異なる点は、のこぎり波生成回路4Bの構成である。図13を参照して第2実施形態の、のこぎり波生成回路4Bについて説明する。なお、図13においては、上述した第1実施形態で既に説明した図5に示す、のこぎり波生成回路4と同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0062】
第1実施形態の、のこぎり波生成回路4では、降圧用のこぎり波Vsp1と、昇圧用のこぎり波Vsp2との位相を180°ずらし、位相の調整はできなかった。第2実施形態の、のこぎり波生成回路4Bでは、降圧用のこぎり波Vsp1と、昇圧用のこぎり波Vsp2との位相シフト量を自由に調整できる構成となっている。
【0063】
第2実施形態のDC/DCコンバータ1Bは、図12に示すように、入力電圧Vinを昇降圧する回路に加えて、入力電圧Vinを降圧する回路が加えられている。このため、トランジスタMN1のオンオフに加えて、トランジスタMN9がオンオフするタイミングで、昇圧用のこぎり波Vsp2にスイッチングノイズが発生する虞がある。そこで、本実施形態のように、位相シフト量を自由に調整することにより、スイッチングノイズが発生しないタイミングで、昇圧用のこぎり波Vsp2が誤差信号Verrを下回ってトランジスタMN3がオンするように調整することができる。
【0064】
図13に示すように、のこぎり波生成回路4Bは、発振器8Bと、降圧用のこぎり波生成回路9と、位相シフト回路21と、昇圧用のこぎり波生成回路10と、レベルシフト回路11とを有している。
【0065】
発振器8Bは、クロック信号Sc1と、ノードBから出力されるパルス信号の立ち上がりのタイミングで立ち上がり、クロック信号Sc1の立ち上がりタイミングで立ち下がるクロック信号Sc3とを出力する(図7(H))。降圧用のこぎり波生成回路9は、第1実施形態と同様に、クロック信号Sc1に同期した降圧用のこぎり波Vsp1を生成する。位相シフト回路21は、クロック信号Sc3を位相シフトしたクロック信号Sc4を生成する。昇圧用のこぎり波生成回路10は、クロック信号Sc4に同期した昇圧用のこぎり波Vsp2を生成する。レベルシフト回路11は、第1実施形態と同様に、昇圧用のこぎり波Vsp2をレベルシフト(シフトアップ)する。
【0066】
次に、発振器8Bの詳細について説明する。発振器8Bは、第1実施形態と同様に、図6に示す電流源12と、トランジスタMP1~MP3と、トランジスタMN5,MN6と、スイッチSW1,SW2と、コンデンサC3と、コンパレータCp3,Cp4と、遅延回路13,14と、フリップフロップ15とを有している。これらは第1実施形態で既に説明したため詳細な説明を省略する。
【0067】
また、図14に示すように、発振器8Bは、インバータ22と、NAND回路23と、インバータ24とをさらに有している。インバータ22は、入力がノードD(図6)に接続され、クロック信号Sc1が入力される。NAND回路23は、第1入力にノードB(図6)が接続され、第2入力にインバータ22の出力が接続されている。インバータ24は、入力にNAND回路23の出力が接続されている。インバータ24の出力であるノードIからは、ノードBから出力されるパルス信号が立ち上がったタイミングでHiレベルに立ち上がり、その後、遅延時間td経過してクロック信号Sc1が立ち上がったタイミングでLoレベルに立ち下がるクロック信号Sc3を出力する(図7(H))。
【0068】
次に、位相シフト回路21の詳細について図15を参照して説明する。位相シフト回路21は、クロック信号Sc3の位相をシフトしたクロック信号Sc4を出力する。同図に示すように、位相シフト回路21は、トランジスタMN11と、可変抵抗Rpsと、調整用入力部25と、アンプAp2と、トランジスタMP12,MP13と、トランジスタMP14,MN14と、コンデンサC7と、インバータ26,27と、ワンショット回路28とを有している。
【0069】
トランジスタMN11は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。可変抵抗Rpsは、トランジスタMN11のソースとグランドとの間に接続され、抵抗値が可変に設けられている。調整用入力部25は、ユーザが位相シフト量を調整するために設けられている。ユーザが調整用入力部25を用いて入力した位相シフト量に応じた抵抗値に可変抵抗Rpsを設定できる。アンプAp2は、非反転入力に基準電圧Vref4を出力する電源が接続され、反転入力が可変抵抗RpsとトランジスタMN11のソースとの接続点に接続され、出力がトランジスタMN11のゲートに接続されている。
【0070】
以上の構成により、アンプAp2は反転入力と非反転入力が同電位となるようにトランジスタMN11を制御し、可変抵抗Rpsに下記の式(2)に示す電流Irpsが流れる。
Irps=Vref4/Rps …(2)
【0071】
トランジスタMP12,MP13は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成される。トランジスタMP12は、ソースが電源ラインLLに接続され、ドレインがトランジスタMN11のドレインに接続され、ゲート及びドレインが接続されている。トランジスタMP13は、ソースが電源ラインLLに接続され、ゲートがトランジスタMP12のゲート及びドレインに接続されている。すなわち、トランジスタMP13は、トランジスタMP12にカレントミラー接続され、トランジスタMP12に流れる電流IrpsのM倍の電流を電流Ichgとして折り返す。電流Ichgは下記の式(3)で表すことができる。
Ichg=Irps×M …(3)
【0072】
トランジスタMP14は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成され、トランジスタMN14は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成される。トランジスタMP14,MN14は、トランジスタMP13のドレインとグランドとの間に直列接続される。詳しく説明すると、トランジスタMP14のソースがトランジスタMP13のドレインに接続され、トランジスタMN14のソースがグランドに接続され、トランジスタMP14,MN14のドレイン同士が接続されている。また、トランジスタMP14,MN14のゲート同士も接続され、クロック信号Sc3が入力されている。コンデンサC7は、トランジスタMP14,MN14のドレイン同士の接続点とグランドとの間に接続されている。
【0073】
以上の構成によれば、クロック信号Sc3がLoレベルとなると、トランジスタMP14がオン、トランジスタMN14がオフして、コンデンサC7が電流Ichgで充電され、ノードJの電位が上昇する。クロック信号Sc3がHiレベルとなると、トランジスタMP14がオフ、トランジスタMN14がオンして、コンデンサC7の両端がグランドに接続され放電され、ノードJの電位がグランドとなる(図16(A)、(B))。
【0074】
インバータ26は、入力がノードJに接続されている。インバータ26は、ノードJの電位がインバータ26の閾値Vth26を超えている間、Loレベルとなり、閾値Vth26を下回っている間、Hiレベルとなるパルス信号を出力する。インバータ27は、入力がインバータ26の出力に接続され、インバータ26の出力を反転させたパルス信号をノードKから出力する(図16(C))。ワンショット回路28は、インバータ27の出力が入力され、インバータ27の出力(ノードK)がHiレベルに立ち上がる毎に所定時間Hiレベルとなるワンショットパルスを出力する。このワンショット回路28から出力されるワンショットパルスがクロック信号Sc4となる(図16(D))。クロック信号Sc3が立ち下がってからクロック信号Sc4が立ち上がるまでの位相シフト量dは下記の式(4)で表すことができる。
d=(C7×Vth26)/Ichg …(4)
【0075】
上記式(2)~(4)により可変抵抗Rpsの抵抗値を調整することにより、位相シフト量dを調整することができる。そして、クロック信号Sc1を降圧用のこぎり波生成回路9に入力すると、クロック信号Sc1に同期した、のこぎり波が生成される(図17(A)、(B))。クロック信号Sc4を昇圧用のこぎり波生成回路10に入力すると、クロック信号Sc4に同期した、のこぎり波が生成される(図17(C)~(E))。よって、降圧用のこぎり波生成回路9から出力される、のこぎり波と、昇圧用のこぎり波生成回路10から出力される、のこぎり波とは、位相シフト量dだけ位相が異なる。
【0076】
次に、ワンショット回路28の詳細について図18を参照して説明する。ワンショット回路28は、インバータ29と、電流源30と、トランジスタMP15,MN15と、コンデンサC8と、インバータ31,32と、NOR回路33とを有している。インバータ29は、入力がノードK(図15)に接続されている。
【0077】
電流源30は、電源ラインLLとトランジスタMP15との間に接続され、電流Iref4を供給する。トランジスタMP15は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタMN15は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタMP15,MN15は、ゲートがインバータ29の出力に接続されている。また、トランジスタMP15,MN15は、電流源30とグランドとの間に直列接続されている。詳しく説明すると、トランジスタMP15のソースが電流源30に接続され、トランジスタMN15のソースがグランドに接続され、トランジスタMP15,MN15のドレイン同士が接続されている。
【0078】
コンデンサC8は、トランジスタMP15,MN15のドレイン同士の接続点とグランドとの間に接続されている。インバータ31は、入力がトランジスタMP15,MN15のドレインとコンデンサC8の接続点が接続されている。インバータ32は、入力がインバータ31の出力に接続されている。NOR回路33は、第1入力にインバータ32の出力が接続され、第2入力にインバータ29の出力が接続されている。
【0079】
以上の構成によれば、ノードKがHiレベルとなるとトランジスタMP15がオン、トランジスタMN15がオフして、コンデンサC8が電流Iref4により充電され、ノードMの電位が徐々に上昇する。ノードKがLoレベルとなるとトランジスタMP15がオフ、トランジスタMN15がオンして、コンデンサC8の両端がグランドに接続されて放電され、ノードMの電位がグランドとなる(図19(A)、(B))。
【0080】
インバータ31は、ノードMの電位がインバータ31の閾値Vth31を超えている間Loレベル,閾値Vth31を下回っている間Hiレベルとなるパルス信号を出力する。インバータ32は、インバータ31の出力を反転させた信号をノードNから出力する(図19(C))。NOR回路33は、ノードKの信号が立ち上がるタイミングで立ち上がり、ノードNの信号が立ち上がるタイミングで立ち下がる信号をクロック信号Sc4として出力する(図19(D))。
【0081】
上述した第2実施形態によれば、降圧用,昇圧用のこぎり波Vsp1,Vsp2の位相シフト量を自由に調整できる。このため、第2実施形態のように、複数のトランジスタのオンオフにより昇圧用のこぎり波Vsp2にスイッチングノイズを発生させる虞がある回路においても、安定した出力電圧Voutを出力することができる。
【0082】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0083】
上述した第2実施形態では、昇圧または降圧した出力電圧Voutと、降圧した出力電圧Voutの2つを出力するDC/DCコンバータ1Bにおいて、位相シフト量dを可変抵抗Rpsにより調整できる構成としていたが、これに限ったものではない。位相シフト量dの調整は、トランジスタMN1のオンオフタイミングとは別のタイミングで昇圧用のこぎり波Vsp2にスイッチングノイズが乗ってしまう他の構成のDC/DCコンバータにも有効である。
【0084】
上述した第2実施形態では、位相シフト量dを可変抵抗Rpsにより調整できる構成としていたが、これに限ったものではない。可変抵抗Rpsに代えて固定抵抗を用いて、位相シフト量dが調整できない構成であってもよい。
【0085】
上述した第1,第2実施形態では、クロック信号Sc1,Sc2,Sc4の位相をずらすことにより、降圧用のこぎり波Vsp1,昇圧用のこぎり波Vsp2の位相をずらしていたが、これに限ったものではない。のこぎり波の位相をシフトして、昇降用のこぎり波Vsp1,昇圧用のこぎり波Vsp2の位相をずらしてもよい。
【0086】
上述した第1,第2実施形態では、降圧用のこぎり波Vsp1をシフトアップして昇圧用のこぎり波Vsp2としていたが、これは降圧用のこぎり波Vsp1、昇圧用のこぎり波Vsp2の生成法を限定したものではない。例えば、昇圧用のこぎり波Vsp2をシフトダウンして降圧用のこぎり波Vsp1を生成してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1,1B DC/DCコンバータ
2 制御IC(スイッチング制御回路)
4,4B のこぎり波生成回路
8,8B 発振器
13 遅延回路(第1の遅延回路)
14 遅延回路(第2の遅延回路)
15 フリップフロップ(スイッチ制御部)
21 位相シフト回路
25 調整用入力部
61 DC/DC制御部(降圧用DC/DC制御部)
62 DC/DC制御部(昇圧用DC/DC制御部)
Ap1 エラーアンプ
C3 コンデンサ
Cp1 コンパレータ(降圧用コンパレータ)
Cp2 コンパレータ(昇圧用コンパレータ)
Cp3 コンパレータ(第1のコンパレータ)
Cp4 コンパレータ(第2のコンパレータ)
MN1,MN2 トランジスタ(降圧用トランジスタ)
MP1,MP2 トランジスタ(昇圧用トランジスタ)
SW1 スイッチ(充電スイッチ)
SW2 スイッチ(放電スイッチ)
Sc1 クロック信号(第1のクロック信号)
Sc2 クロック信号(第2のクロック信号)
Verr 誤差信号
Vfb 電圧信号
Vin 入力電圧
Vout 出力電圧
Vsp1 降圧用のこぎり波
Vsp2 昇圧用のこぎり波
Vref1 基準電圧(第1の基準電圧)
Vref2 基準電圧(第2の基準電圧)
Vref3 基準電圧(第3の基準電圧)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19