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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024157986
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】SiC基板の加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H01L21/78 B
H01L21/78 Q
H01L21/78 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072719
(22)【出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章文
(72)【発明者】
【氏名】九鬼 潤一
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA35
5F063BA45
5F063CB06
5F063CB28
5F063DD31
5F063DD68
5F063DD81
5F063DG01
5F063EE78
5F063EE81
(57)【要約】
【課題】加工品質の低下を抑制しながらも、加工の所要時間を抑制することができるSiC基板の加工方法を提供すること。
【解決手段】SiC基板の加工方法は、分割予定ラインに沿ってレーザビームを照射して金属膜を分断するとともにSiC基板に分割予定ラインに沿った溝を形成するレーザ加工ステップ1001と、レーザ加工ステップ1001を実施する前または後に、金属膜上にテープを配設するテープマウントステップ1002と、分割すべき分割予定ラインに隣接した領域のデバイスをSiC基板の上下から挟持部材で挟持するとともに、分割すべき分割予定ラインを挟んで挟持部材の反対側で分割すべき分割予定ラインに隣接した領域のSiC基板のデバイスを押圧部材で押圧し分割すべき分割予定ラインに沿ってSiC基板を分割する分割ステップ1003と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分割予定ラインが設定されるとともに裏面に金属膜が積層されたSiC基板の加工方法であって、
該分割予定ラインに沿ってレーザビームを照射して該分割予定ラインに沿って該金属膜を分断するとともに該SiC基板に該分割予定ラインに沿った溝を形成するレーザ加工ステップと、
該レーザ加工ステップを実施する前または後に、該金属膜上にテープを配設するテープマウントステップと、
該レーザ加工ステップと該テープマウントステップとを実施した後、分割すべき分割予定ラインに隣接した領域をSiC基板の上下から挟持部材で挟持するとともに、該分割すべき分割予定ラインを挟んで該挟持部材の反対側で該分割すべき分割予定ラインに隣接した領域のSiC基板を押圧部材で押圧し該分割すべき分割予定ラインに沿ってSiC基板を分割する分割ステップと、を備えたSiC基板の加工方法。
【請求項2】
該テープマウントステップは、該レーザ加工ステップの前に実施し、
該レーザ加工ステップでは、SiC基板の表面側を保持テーブルで保持して該テープ越しに該レーザビームを該金属膜に照射して該金属膜を分断するとともに該SiC基板にレーザ加工溝を形成する、請求項1に記載のSiC基板の加工方法。
【請求項3】
該レーザ加工ステップにおける該レーザビームの集光スポットの形状は楕円形状であり、該レーザ加工ステップでは、該分割予定ラインの伸長方向に該集光スポットの該楕円形状の長軸が位置づけられる、請求項1または請求項2に記載のSiC基板の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の分割予定ラインが設定されるとともに裏面に金属膜が積層されたSiC基板の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板としてSiC基板を利用したSiC半導体デバイスが広く市場に流通しており、SiC半導体デバイスは、SiC基板上に複数形成された後、個々のデバイスへと分割される。
【0003】
難切削材であるSiC基板を個々のチップへ分割するためにSiC基板を切削ブレードで切削するとチッピングと呼ばれる欠けが大きく生じたり、切削ブレードの消耗が激しく生じる。そこで、切削ブレードに超音波振動を付与しつつ切削する切削方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-167046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示された切削方法は、切削スピードを上昇させることが難しく加工に時間を要しており、改善が切望されている。また、裏面に金属膜が形成されたSiC基板の場合は切削ブレードが金属膜を切削することで目潰れして加工品質の悪化を招くという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、加工品質の低下を抑制しながらも、加工の所要時間を抑制することができるSiC基板の加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のSiC基板の加工方法は、複数の分割予定ラインが設定されるとともに裏面に金属膜が積層されたSiC基板の加工方法であって、該分割予定ラインに沿ってレーザビームを照射して該分割予定ラインに沿って該金属膜を分断するとともに該SiC基板に該分割予定ラインに沿った溝を形成するレーザ加工ステップと、該レーザ加工ステップを実施する前または後に、該金属膜上にテープを配設するテープマウントステップと、該レーザ加工ステップと該テープマウントステップとを実施した後、分割すべき分割予定ラインに隣接した領域をSiC基板の上下から挟持部材で挟持するとともに、該分割すべき分割予定ラインを挟んで該挟持部材の反対側で該分割すべき分割予定ラインに隣接した領域のSiC基板を押圧部材で押圧し該分割すべき分割予定ラインに沿ってSiC基板を分割する分割ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
前記SiC基板の加工方法において、該テープマウントステップは、該レーザ加工ステップの前に実施し、該レーザ加工ステップでは、SiC基板の表面側を保持テーブルで保持して該テープ越しに該レーザビームを該金属膜に照射して該金属膜を分断するとともに該SiC基板にレーザ加工溝を形成しても良い。
【0009】
前記SiC基板の加工方法において、該レーザ加工ステップにおける該レーザビームの集光スポットの形状は楕円形状であり、該レーザ加工ステップでは、該分割予定ラインの伸長方向に該集光スポットの該楕円形状の長軸が位置づけられても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、加工品質の低下を抑制しながらも、加工の所要時間を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係る加工方法の加工対象のSiC基板の一例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係るSiC基板の加工方法の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、図2に示されたSiC基板の加工方法のレーザ加工ステップにおいて、SiC基板の表面にテープを貼着し、テープの外縁部にフレームを貼着した状態を模式的に示す斜視図である。
図4図4は、図2に示されたSiC基板の加工方法のレーザ加工ステップにおいて、SiC基板の金属膜に溝を形成する状態を一部断面で模式的に示す側面図である。
図5図5は、図2に示されたSiC基板の加工方法のレーザ加工ステップにおいて照射されるレーザビームのスポット形状等を模式的に示す平面図である。
図6図6は、図2に示されたSiC基板の加工方法のレーザ加工ステップ後のSiC基板の要部を模式的に示す断面図である。
図7図7は、図2に示されたSiC基板の加工方法のテープマウントステップ後のSiC基板の要部を模式的に示す断面図である。
図8図8は、実施形態1に係るワークの加工方法の分割ステップを実施するブレーキング装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
図9図9は、図8に示されたブレーキング装置の挟持ユニットの下側挟持ユニットの構成を模式的に示す斜視図である。
図10図10は、図8に示されたブレーキング装置の挟持ユニットの上側挟持ユニットの構成を示す一部断面で模式的に示す側面図である。
図11図11は、図8に示されたブレーキング装置の押圧部材を一部断面で模式的に示す側面図である。
図12図12は、図11に示された矢印XII方向からみた荷重計測部を一部断面で模式的に示す正面図である。
図13図13は、図2に示されたワークの加工方法の分割ステップにおいて、フレーム固定ユニットにフレームを固定した状態を一部断面で模式的に示す側面図である。
図14図14は、図2に示されたワークの加工方法の分割ステップにおいて、挟持部材間に分割すべき分割予定ラインの隣のデバイスを挟持した状態を一部断面で模式的に示す側面図である。
図15図15は、図2に示されたSiC基板の加工方法の分割ステップにおいて、分割すべき分割予定ラインを分割した状態を一部断面で模式的に示す側面図である。
図16図16は、実施形態2に係るSiC基板の加工方法の流れを示すフローチャートである。
図17図17は、図16に示されたSiC基板の加工方法のテープマウントステップ後のSiC基板等を模式的に示す斜視図である。
図18図18は、図16に示されたSiC基板の加工方法のレーザ加工ステップにおいてレーザ加工装置が保持テーブルに保持したSiC基板を保持テーブルを通して下方撮像カメラで撮像する状態を一部断面で模式的に示す側面図である。
図19図19は、図16に示されたSiC基板の加工方法のレーザ加工ステップにおいてレーザ加工装置がレーザビームを金属膜に照射する状態を一部断面で模式的に示す側面図である。
図20図20は、図16に示されたSiC基板の加工方法のレーザ加工ステップ後のSiC基板の要部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る加工方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る加工方法の加工対象のSiC基板の一例を示す斜視図である。図2は、実施形態1に係るSiC基板の加工方法の流れを示すフローチャートである。
【0014】
(SiC基板)
実施形態1に係るSiC基板の加工方法は、図1に示すSiC基板1の加工方法である。実施形態1では、SiC基板1は、SiC(炭化ケイ素)を基板2とする円板状の半導体ウェーハ等のウェーハである。SiC基板1は、図1に示すように、基板2の表面3に互いに交差する分割予定ライン4が複数設定され、分割予定ライン4によって区画された領域にデバイス5が形成されている。
【0015】
デバイス5は、例えば、IC(Integrated Circuit)、又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、又はメモリ(半導体記憶装置)である。
【0016】
また、実施形態1では、SiC基板1は、基板2の表面3の裏側の裏面6に金属膜7が積層されている。
【0017】
(SiC基板の加工方法)
実施形態1に係るSiC基板の加工方法は、SiC基板1を分割予定ライン4に沿って個々のチップ10に分割する方法である。なお、チップ10は、基板2の一部と、基板2上のデバイス5と、基板2の裏面6側の金属膜7の一部を含む。実施形態1に係る加工方法は、図2に示すように、レーザ加工ステップ1001と、テープマウントステップ1002と、分割ステップ1003とを備える。
【0018】
(レーザ加工ステップ)
図3は、図2に示されたSiC基板の加工方法のレーザ加工ステップにおいて、SiC基板の表面にテープを貼着し、テープの外縁部にフレームを貼着した状態を模式的に示す斜視図である。図4は、図2に示されたSiC基板の加工方法のレーザ加工ステップにおいて、SiC基板の金属膜に溝を形成する状態を一部断面で模式的に示す側面図である。図5は、図2に示されたSiC基板の加工方法のレーザ加工ステップにおいて照射されるレーザビームのスポット形状等を模式的に示す平面図である。図6は、図2に示されたSiC基板の加工方法のレーザ加工ステップ後のSiC基板の要部を模式的に示す断面図である。
【0019】
レーザ加工ステップ1001は、分割予定ライン4に沿ってレーザビーム222(図4に示す)を照射して分割予定ライン4に沿って金属膜7を分断するとともにSiC基板1に分割予定ライン4に沿った溝11(図6に示し、レーザ加工溝に相当)を形成するステップである。実施形態1において、レーザ加工ステップ1001では、まず、図3に示すように、SiC基板1の表面3にSiC基板1よりも大径な円板状のテープ8の中央部を貼着し、テープ8の外縁部に内径がSiC基板1の外径よりも大径な環状のフレーム9を貼着する。
【0020】
なお、実施形態1では、テープ8は、非粘着性と可撓性を有する樹脂により構成された基材と、基材に積層されかつ粘着性と可撓性を有する樹脂により構成された糊層とを備え、糊層がSiC基板1及びフレーム9に貼着される粘着テープ、又は、糊層を備えずに熱可塑性樹脂により構成されかつSiC基板1及びフレーム9に熱圧着される基材のみから構成されるシートである。
【0021】
また、実施形態1では、フレーム9は、非可撓性の硬質な材料により構成され、実施形態1では、磁性を有する金属により構成されている。
【0022】
実施形態1において、レーザ加工ステップ1001では、図4に示すレーザ加工装置20が、開閉弁212を開いて吸引源213によりSiC基板1の表面3をテープ8を介して保持テーブル21の保持面211に吸引保持し、フレーム9を保持テーブル21の周囲に設けられたクランプ部214で挟持する。実施形態1において、レーザ加工ステップ1001では、レーザ加工装置20が、撮像カメラでSiC基板1を撮像し、SiC基板1とレーザビーム照射ユニット22の集光器である集光レンズ221との位置合わせを行なうアライメントを遂行する。なお、本発明において、レーザ加工ステップ1001では、実施形態2と同様に、透明な材料からなる保持テーブル上にSiC基板1を保持し、SiC基板1の下方から保持テーブル越しにSiC基板1を撮像して、アライメントを遂行しても良い。
【0023】
実施形態1において、レーザ加工ステップ1001では、レーザ加工装置20が、図4に示すように、保持テーブル21とレーザビーム照射ユニット22とを分割予定ライン4に沿って相対的に移動させながら、発振器が発振した金属膜7に対して吸収性を有する波長(例えば、355nm)のレーザビーム222を各分割予定ライン4の金属膜7に向かって照射して、アブレーション加工により分割予定ライン4の金属膜7を分断する。なお、実施形態1において、レーザ加工ステップ1001では、レーザビーム222の繰り返し周波数を120kHzとし、SiC基板1の加工送り速度を150mm/sとし、集光レンズ221の開口数(NA)を0.065とし、発振器のレーザビーム222の出力を3.9Wとする。
【0024】
また、レーザ加工装置20は、図5に示すように、レーザ加工ステップ1001におけるレーザビーム222の金属膜7の表面における集光スポット223の形状は楕円形状である。レーザ加工ステップ1001では、レーザ加工装置20は、分割予定ライン4の伸長方向(長手方向ともいう)に集光スポット223の楕円形状の長軸が位置づけられている。なお、レーザ加工装置20は、発振器が発振した円形状のスポット形状のレーザビーム222をレーザビーム照射ユニット22の平凹シリンドリカルレンズ及び平凸シリンドリカルレンズ、マスク、又は複数の直角プリズムにより集光スポット223が楕円形状のレーザビームに形成する。実施形態1において、レーザ加工ステップ1001では、レーザ加工装置80が、図6に示すように、分割予定ライン4に沿った溝11を各分割予定ライン4の全長に亘ってSiC基板1に形成する。なお、溝11は、金属膜7を分断し、基板2の一部を除去して、底に基板2を露出させている。
【0025】
(テープマウントステップ)
図7は、図2に示されたSiC基板の加工方法のテープマウントステップ後のSiC基板の要部を模式的に示す断面図である。テープマウントステップ1002は、レーザ加工ステップ1001を実施した後に、金属膜7上にテープ12を配設するステップである。実施形態1において、テープマウントステップ1002では、図7に示すように、SiC基板1の金属膜7にSiC基板1よりも大径な円板状のテープ12の中央部を貼着し、テープ12の外縁部にフレーム9を貼着する。
【0026】
なお、実施形態1では、テープ12は、テープ8と同様に、非粘着性と可撓性を有する樹脂により構成された基材と、基材に積層されかつ粘着性と可撓性を有する樹脂により構成された糊層とを備え、糊層がSiC基板1及びフレーム9に貼着される粘着テープ、又は、糊層を備えずに熱可塑性樹脂により構成されかつSiC基板1及びフレーム9に熱圧着される基材のみから構成されるシートである。
【0027】
(ブレーキング装置)
次に、分割ステップを実施する図8に示されたブレーキング装置30を説明する。図8は、実施形態1に係るワークの加工方法の分割ステップを実施するブレーキング装置の構成例を模式的に示す斜視図である。図9は、図8に示されたブレーキング装置の挟持ユニットの下側挟持ユニットの構成を模式的に示す斜視図である。図10は、図8に示されたブレーキング装置の挟持ユニットの上側挟持ユニットの構成を示す一部断面で模式的に示す側面図である。図11は、図8に示されたブレーキング装置の押圧部材を一部断面で模式的に示す側面図である。図12は、図11に示された矢印XII方向からみた荷重計測部を一部断面で模式的に示す正面図である。
【0028】
図8に示されたブレーキング装置30は、SiC基板1を分割予定ライン4に沿って分割して、SiC基板1を個々のチップ10に分割する装置である。ブレーキング装置30は、図8に示すように、フレーム固定ユニット40と、検出ユニット45と、挟持ユニット50と、押圧部材70と、制御ユニット75と、表示ユニット76と、図示しない入力ユニットとを備える。
【0029】
フレーム固定ユニット40は、フレーム9を固定するものである。フレーム固定ユニット40は、装置本体31上にX軸移動ユニット32により水平方向と平行なX軸方向に移動自在に設けられた移動フレーム41と、移動フレーム41上に配設されたフレーム固定部材42とを備える。
【0030】
フレーム固定部材42は、内外径がフレーム9の内外径と同等の円環状に形成され、上面がフレーム9がテープ12の外縁部を介して載置される保持面43となっている。保持面43は、水平方向に沿って平坦である。実施形態1では、フレーム固定部材42は、保持面43に図示しない吸引源に接続した吸引孔が開口している。
【0031】
フレーム固定ユニット40は、吸引孔が吸引源により吸引されることで、保持面43に載置されたフレーム9を保持面43にテープ12を介して吸引して固定する。なお、本発明では、フレーム9が磁性体により構成されている場合には、フレーム固定ユニット40は、フレーム固定部材42内に磁石(永久磁石又は電磁石)を配設しておき、保持面43に載置されたフレーム9を磁力で吸着して固定しても良く、フレーム9が非磁性体により構成されている場合には、フレーム固定ユニット40は、保持面43との間にフレーム9を挟持して、フレーム9を固定するクランプ機構を備えても良い。また、フレーム固定ユニット40は、図示しない回転駆動機構によりZ軸方向(鉛直方向ともいう)と平行な軸心回りに回転自在である。
【0032】
なお、X軸移動ユニット32は、装置本体31上に設置され、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させることで移動フレーム41及びフレーム固定部材42をX軸方向に移動させる周知のモータ及び移動フレーム41をX軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレール321を備える。
【0033】
検出ユニット45は、フレーム固定ユニット40でフレーム9が固定されたSiC基板1の分割予定ライン4を検出するものである。検出ユニット45は、装置本体31からX軸移動ユニット32のガイドレール321を跨って立設した門型の門型フレーム33にY軸移動ユニット34により水平方向と平行でかつX軸方向に対して直交するY軸方向に移動される移動テーブル35に設置されている。検出ユニット45は、移動テーブル35に設置されることで、Y軸移動ユニット34によりY軸方向に移動自在に配設されている。
【0034】
検出ユニット45は、対物レンズが鉛直方向と平行なZ軸方向に対向するものを撮像するCCD(Charge Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子等の撮像素子を備えた撮像カメラ46を含む。検出ユニット45は、撮像カメラ46の撮像素子が撮像した画像を取得し、取得した画像を制御ユニット75に出力する。また、検出ユニット45は、フレーム固定ユニット40で固定されたフレーム9の開口に収容されたSiC基板1を撮像して、SiC基板1の分割予定ライン4と押圧部材70等との位置合わせを行うアライメントを遂行するための画像を取得する。
【0035】
なお、門型フレーム33及び移動テーブル35は、両表面が鉛直方向と平行なZ軸方向と平行な平板状でかつ互いに間隔をあけて平行に重ねられている。Y軸移動ユニット34は、門型フレーム33上に設置され、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させることで移動テーブル35をY軸方向に移動させる周知のモータ及び移動テーブル35をY軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレール341を備える。
【0036】
挟持ユニット50は、SiC基板1の分割すべき分割予定ライン4に隣接した領域のSiC基板1のデバイス5をZ軸方向に沿って上下から挟持するものである。挟持ユニット50は、図8に示すように、下側挟持ユニット51と、上側挟持ユニット60とを備える。
【0037】
下側挟持ユニット51は、フレーム固定ユニット40の下方に配置され、フレーム固定ユニット40に固定されたフレーム9の開口に収容されたSiC基板1の分割すべき分割予定ライン4の隣接した領域であるデバイス5を下方から押圧するものである。下側挟持ユニット51は、図9に示すように、Z軸移動ユニット36によりZ軸方向に昇降自在に設けられたブラケット52と、ブラケット52に軸心回りに回転自在に支持された回転体53と、回転体53の外周面から突出した互いに長さの異なる複数の矩形状挟持部材54(挟持部材に相当)とを備える。
【0038】
回転体53は、軸心がY軸方向と平行に配設され、両端がブラケット52により回転自在に支持されている。回転体53は、図示しない回転機構により軸心回りに回転される。複数の矩形状挟持部材54は、それぞれ厚みが一定のY軸方向に直線状の矩形板状に形成され、Y軸方向の長さがそれぞれ異なって様々な長さになるように形成されている。複数の矩形状挟持部材54のうち最も長い矩形状挟持部材54の長さは、SiC基板1の最も長い分割予定ライン4の長さと同等であり、最も短い矩形状挟持部材54の長さは、SiC基板1の最も短い分割予定ライン4の長さと同等である。
【0039】
複数の矩形状挟持部材54は、回転体53の回転によって突出する向きが変更される。複数の矩形状挟持部材54のうち回転体53のからZ軸方向に沿って上向きに配置された矩形状挟持部材54は、Z軸移動ユニット36により下降されると、上端がフレーム固定ユニット40により固定されたフレーム9の開口に収容されたSiC基板1に貼着したテープ12よりも下方に位置し、Z軸移動ユニット36により上昇されると、上端がフレーム固定ユニット40により固定されたフレーム9の開口に収容されたSiC基板1よりも上方に位置する。複数の矩形状挟持部材54のうち回転体53からZ軸方向に沿って上向きに配置された矩形状挟持部材54は、Z軸移動ユニット36により上昇されると、上端でSiC基板1の分割すべき分割予定ライン4の隣のデバイス5を裏面6側から上方に押圧する。
【0040】
即ち、下側挟持ユニット51は、回転体53の軸心回りの向きを変更することで、上向きとなる矩形状挟持部材54の長さを選択でき、その選択した矩形状挟持部材54でSiC基板1の分割すべき分割予定ライン4の隣のデバイス5を裏面6側から上方に押圧する。
【0041】
なお、Z軸移動ユニット36は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させることでブラケット52をZ軸方向に昇降させる周知のモータ及びブラケット52をZ軸方向に昇降自在に支持する周知のガイドレール361を備える。
【0042】
上側挟持ユニット60は、フレーム固定ユニット40の上方に配置され、フレーム固定ユニット40により固定されたフレーム9の開口に収容されたSiC基板1の分割すべき分割予定ライン4の隣でかつ下側挟持ユニット51により下方から押圧されたデバイス5を、下側挟持ユニット51との間に挟持するものである。上側挟持ユニット60は、移動テーブル35に昇降ユニット37よりZ軸方向に移動される移動基台38に設置されている。
【0043】
移動基台38は、両表面がZ軸方向と平行な平板状に形成され、移動テーブル35上に間隔をあけて重ねられている。移動基台38には、両表面3が水平方向と平行な水平部材39が固定されている。
【0044】
昇降ユニット37は、移動テーブル35に設置され、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させることで移動基台38をZ軸方向に昇降させる周知のモータ371及び移動基台38をZ軸方向に昇降自在に支持する周知のガイドレール372を備える。
【0045】
上側挟持ユニット60は、図10に示すように、シリンダユニット61と、上側挟持部材62(挟持部材に相当)と、スライドユニット63とを備える。シリンダユニット61は、水平部材39に固定されたシリンダ611と、Z軸方向と平行な棒状状に形成され、シリンダ611から伸縮自在であるとともに、シリンダ611から伸長すると下端が下降するロッド612とを備える。
【0046】
上側挟持部材62は、厚みが一定のY軸方向に直線状でかつ両表面がZ軸方向と平行な矩形板状に形成され、Y軸方向の長さがSiC基板1の最も長い分割予定ライン4の長さと同等である。上側挟持部材62は、上端にシリンダユニット61のロッド612の下端が固定されて、移動基台38に間隔をあけて重ねられている。上側挟持部材62は、回転体53から上向きの矩形状挟持部材54とZ軸方向に対向する。
【0047】
また、スライドユニット63は、上側挟持部材62を移動基台38に対して相対的にZ軸方向にスライド自在に支持している。スライドユニット63は、移動基台38と上側挟持部材62とのうちの一方である移動基台38に固定されかつZ軸方向と平行な直線状のガイドレール631と、移動基台38と上側挟持部材62とのうちの他方である上側挟持部材62に固定されかつガイドレール631にこのガイドレール631の長手方向即ちZ軸方向にスライド自在に支持されたスライダ632とを備える。
【0048】
上側挟持部材62は、ロッド612が伸長した状態で、昇降ユニット37により上昇されることで、下端がフレーム固定ユニット40により固定されたフレーム9の開口に収容されたSiC基板1よりも上方に位置し、昇降ユニット37により下降されると、下端が回転体53のからZ軸方向に沿って上向きに配置された矩形状挟持部材54により押圧されたSiC基板1の分割すべき分割予定ライン4の隣のデバイス5を矩形状挟持部材54との間に挟持する。
【0049】
押圧部材70は、分割すべき分割予定ライン4を挟んで挟持ユニット50の挟持部材54,62のY軸方向の反対側で分割すべき分割予定ライン4に隣接した領域のSiC基板1のデバイス5を押圧し、分割すべき分割予定ライン4に沿ってSiC基板1をブレーキング(分割ともいう)するものである。押圧部材70は、図10に示すように、水平部材39に第2X軸移動ユニット71によりX軸方向に移動自在に設置された押圧移動基台72に設置されている。
【0050】
押圧移動基台72は、両表面がZ軸方向と平行で、かつ上端側の厚肉部721と下端側の薄肉部722とを一体に備えて形成され、上側挟持部材62上に間隔をあけて重ねられている。実施形態1では、押圧移動基台72は、厚肉部721と薄肉部722の上側挟持部材62から離れた側の表面が同一平面状に形成され、上側挟持部材62側に厚肉部721と薄肉部722との間の段差が形成されている、また、実施形態1では、押圧移動基台72は、薄肉部722を貫通した平面形状が矩形の開口723が設けられている。
【0051】
第2X軸移動ユニット71は、水平部材39に設置され、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させることで押圧移動基台72をX軸方向に移動させる周知のモータ711及び押圧移動基台72をZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレール712を備える。
【0052】
押圧部材70は、Y軸方向に直線状でかつ両表面がZ軸方向と平行な矩形板状に形成され、Y軸方向の長さがSiC基板1の最も長い分割予定ライン4の長さと同等である。押圧部材70は、下端部に下方に向かうにしたがって徐々に厚みを薄くする先程部701が形成されている。実施形態1では、先程部701は、上側挟持部材62側の表面がZ軸方向に沿って平坦に形成され、上側挟持部材62から離れた側の表面が下方に向かうにしたがって徐々に上側挟持部材62に近付く方向に水平方向とZ軸方向との双方に対して傾斜している。
【0053】
また、押圧部材70は、一対のスライドユニット73により押圧移動基台72にZ軸方向にスライド自在に支持されている。一対のスライドユニット73は、Y軸方向に間隔をあけて配置されている。スライドユニット73は、押圧移動基台72と押圧部材70とのうちの一方である押圧移動基台72に固定されかつZ軸方向と平行な直線状のガイドレール731と、押圧移動基台72と押圧部材70とのうちの他方である押圧部材70に固定されかつガイドレール731にこのガイドレール731の長手方向即ちZ軸方向にスライド自在に支持されたスライダ732とを備える。
【0054】
押圧部材70は、昇降ユニット37により上昇されることで、下端がフレーム固定ユニット40により固定されたフレーム9の開口に収容されたSiC基板1よりも上方に位置し、昇降ユニット37により下降されると、Y軸方向に、分割すべき分割予定ライン4を挟持部材54,62との間に位置付けるSiC基板1のデバイス5を下方に押圧する。実施形態1では、押圧部材70は、SiC基板1の上側挟持部材62とのY軸方向の距離がチップ10の幅の75%~85%程度となる位置を下方に押圧する。なお、本発明では、押圧部材70は、SiC基板1の上側挟持部材62とのY軸方向の距離がチップ10の幅の65%~95%程度となる位置を下方に押圧すれば良い。
【0055】
なお、押圧部材70が押圧する位置が上側挟持部材62からのY軸方向の距離が近すぎても割れにくく、遠すぎても押圧部材70がすでに割れた分割予定ライン4側に逃げて割れないので、押圧部材70が、SiC基板1の上側挟持部材62とのY軸方向の距離がチップ10の幅の65%~95%程度となる位置、望ましくはチップ10の幅の75%~85%程度となる位置を下方に押圧するのが望ましい。押圧部材70は、昇降ユニット37により下降されると、Y軸方向に、分割すべき分割予定ライン4を挟持部材54,62との間に位置付けるSiC基板1のデバイス5を下方に押圧して、この分割すべき分割予定ライン4を分割する。
【0056】
また、押圧部材70は、図11に示す荷重測定部74により押圧移動基台72に固定されている。荷重測定部74は、一対のスライドユニット73間に配置されている。荷重測定部74は、図11及び図12に示すように、押圧部材70がSiC基板1を押圧する荷重の値(以下、荷重値と記す)を測定する荷重計741と、保持部材742と、支持部材743と、バネ744と、支持部745(図12のみに示す)とを備える。
【0057】
荷重計741は、Z軸方向の押圧部材70がSiC基板1を押圧する荷重値を測定するものであり、実施形態1では、周知のロードセルであるが、ロードセルに限定されない。荷重計741は計測結果である荷重値を制御ユニット75に出力する。荷重計741は、押圧移動基台72の開口723内に配置されている。
【0058】
保持部材742は、押圧部材70に一端部が固定され、押圧部材70から押圧移動基台72に向かって延在して他端部が押圧移動基台72の開口723内に配置されている。保持部材742は、他端部に荷重計741の下端を支持している。
【0059】
支持部材743は、押圧移動基台72の開口723内に配置され、上端が開口723の上側の内面に固定され、下端が荷重計741の上端を支持している。支持部745は、押圧移動基台72の開口723内に配置され、下端が開口723の下側の内面に固定され、上端が保持部材742の下端部を支持している。
【0060】
バネ744は、開口723の下側の内面と保持部材742の他端部との間に配置され、保持部材742の他端部を介して、押圧移動基台72に対して相対的に押圧部材70を上方に付勢している。実施形態1では、バネ744は、押圧部材70と保持部材742と荷重計741とを合わせた質量に対応した力で、保持部材742及び押圧部材70を上方に付勢している。バネ744が前述した力で付勢することで、押圧部材70と保持部材742と荷重計741とを合わせた質量が相殺されて、荷重計741は、押圧部材70と保持部材742と荷重計741とを合わせた質量よりも小さい荷重値を測定することができる。このように、ブレーキング装置30は、押圧部材70がSiC基板1を押圧する荷重値を測定する荷重計741を備える。
【0061】
制御ユニット75は、ブレーキング装置30の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、SiC基板1の各分割予定ライン4を分割する分割動作をブレーキング装置30に実施させるものである。制御ユニット75は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット75の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、ブレーキング装置30を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介してブレーキング装置30の上述した各ユニットに出力する。また、制御ユニット75は、荷重計741で測定された荷重値に基づいて、分割予定ライン4の分割結果を判定し、分割結果を分割予定ライン4と1対1で紐付けて記憶する。
【0062】
表示ユニット76は、制御ユニット75に接続し、各種の情報を表示する表示画面77を備える。入力ユニットは、オペレータがブレーキング装置30の制御ユニット75に情報などを入力する際に用いられる。入力ユニットは、制御ユニット75に接続し、入力された情報を制御ユニット75に向けて出力する。入力ユニットは、表示ユニット76の表示画面77に重ねられたタッチパネルを備える。
【0063】
(分割ステップ)
次に、分割ステップ1003を説明する。図13は、図2に示されたワークの加工方法の分割ステップにおいて、フレーム固定ユニットにフレームを固定した状態を一部断面で模式的に示す側面図である。図14は、図2に示されたワークの加工方法の分割ステップにおいて、挟持部材間に分割すべき分割予定ラインの隣のデバイスを挟持した状態を一部断面で模式的に示す側面図である。図15は、図2に示されたSiC基板の加工方法の分割ステップにおいて、分割すべき分割予定ラインを分割した状態を一部断面で模式的に示す側面図である。なお、図13図14及び図15は、金属膜7を省略している。
【0064】
分割ステップ1003は、レーザ加工ステップ1001とテープマウントステップ1002とを実施した後、分割すべき分割予定ライン4に隣接した領域であるデバイス5をSiC基板1の上下から挟持部材54,62で挟持するとともに、分割すべき分割予定ライン4を挟んで挟持部材54,62のY軸方向の反対側で分割すべき分割予定ライン4に隣接した領域であるSiC基板1のデバイス5を押圧部材70で押圧し分割すべき分割予定ライン4に沿ってSiC基板1を分割するステップである。
【0065】
実施形態1において、分割ステップ1003では、ブレーキング装置30は、先ず、オペレータ等が入力ユニットを操作して分割条件を入力し、制御ユニット75が分割要件を受け付けて登録する。実施形態1において、分割ステップ1003では、ブレーキング装置30は、制御ユニット75がオペレータ等からの分割動作の開始指示を受け付けると、分割動作、即ち実施形態1では、分割ステップ1003を開始する。
【0066】
実施形態1において、分割ステップ1003では、ブレーキング装置30は、制御ユニット75がZ軸移動ユニット36を制御して下側挟持ユニット51を下降させ、上側挟持ユニット60のシリンダユニット61を制御してロッド612を伸長し、昇降ユニット37を制御して上側挟持ユニット60及び押圧部材70を上昇させる。また、実施形態1において、分割ステップ1003では、ブレーキング装置30は、制御ユニット75が第2X軸移動ユニット71を制御して上側挟持部材62の下端と押圧部材70の下端のX軸方向の距離を、分割条件に含まれるチップ10の幅の75%~85%となるように、押圧部材70のX軸方向の位置を調整する。なお、本発明では、上側挟持部材62の下端と押圧部材70の下端のX軸方向の距離を、チップ10の幅の65%~95%となるように、押圧部材70のX軸方向の位置を調整すれば良い。
【0067】
また、実施形態1において、分割ステップ1003では、ブレーキング装置30は、制御ユニット75がX軸移動ユニット32を制御して、フレーム固定ユニット40を挟持ユニット51,60間から退避させる。実施形態1において、分割ステップ1003では、ブレーキング装置30は、フレーム固定ユニット40の保持面43上に開口にSiC基板1を収容したフレーム9がテープ12の外縁部を介して載置される。実施形態1において、分割ステップ1003では、ブレーキング装置30は、制御ユニット75が吸引源を動作させて、図13に示すように、フレーム固定ユニット40の保持面43にフレーム9をテープ12の外縁部を介して吸引して固定する。
【0068】
実施形態1において、分割ステップ1003では、ブレーキング装置30は、制御ユニット75がX軸移動ユニット32とY軸移動ユニット34とを制御して、分割条件の分割する順番に基づいて、分割すべき分割予定ライン4(図13等に示し、以下、符号4-1で記す)の上方に検出ユニット45を位置付けて、検出ユニット45の撮像カメラ46でSiC基板1の分割予定ライン4-1を含んだ分割予定ライン4-1の周囲を撮像する。実施形態1において、分割ステップ1003では、ブレーキング装置30は、制御ユニット75が検出ユニット45の撮像カメラ46で撮像して得た画像に基づいて、分割予定ライン4-1を検出する。
【0069】
実施形態1において、分割ステップ1003では、ブレーキング装置30は、制御ユニット75が回転機構を制御して、分割予定ライン4に対応した長さの矩形状挟持部材54を回転体53から上向きに配置し、回転駆動機構を制御して、SiC基板1の分割予定ライン4-1をY軸方向と平行に位置付ける。実施形態1において、分割ステップ1003では、ブレーキング装置30は、制御ユニット75がX軸移動ユニット32を制御して、分割予定ライン4-1に図8中X軸方向の奥側に隣接するデバイス5(領域に相当し、以下、図13に示す符号5-1と記す)の上方に上側挟持部材62の下端を位置付け、分割予定ライン4-1に図1中X軸方向の奥側に隣接する図8中X軸方向の奥側のデバイス5-1の下方に矩形状挟持部材54の上端を位置付けるとともに、分割予定ライン4-1に図5中X軸方向の手前側に隣接するデバイス5(領域に相当し、以下、図13に示す符号5-2と記す)の上方に押圧部材70の下端を位置付ける。
【0070】
実施形態1において、分割ステップ1003では、ブレーキング装置30は、制御ユニット75がZ軸移動ユニット36を制御して、回転体53及び矩形状挟持部材54を上昇させて下面側テープ207を介してSiC基板1の分割予定ライン4-1に隣接したデバイス5-1をテープ12を介して上方に押圧させる。すると、SiC基板1が上昇し、シート220を介してデバイス5-1が上側挟持部材62の下端に当接する。こうして、実施形態1において、分割ステップ1003では、ブレーキング装置30は、図14に示すように、SiC基板1の分割予定ライン4-1に隣接したデバイス5-1を、テープ12,8を介して、挟持部材54,62間に挟持する。このとき、実施形態1では、押圧部材70の下端は、SiC基板1の表面3よりも上方に位置している。
【0071】
実施形態1において、分割ステップ1003では、ブレーキング装置30は、分割条件に基づいて、制御ユニット75が昇降ユニット37を制御して、上側挟持ユニット60の移動基台38及び押圧部材70を下降させる。すると、上側挟持部材62が矩形状挟持部材54との間にシート220及び下面側テープ207を介してSiC基板1の分割予定ライン4-1に隣接したデバイス5-1を挟持しているので、上側挟持部材62が下降することなく、シリンダユニット61のロッド612が縮小して、スライドユニット63により移動基台38に対して相対的に上側挟持部材62が上昇する。
【0072】
また、上側挟持ユニット60の移動基台38及び押圧部材70が下降すると、押圧部材70が下降して、押圧部材70の下端がSiC基板1の表面3の挟持ユニット51,60のY軸方向の反対側の分割予定ライン4-1に隣接したデバイス5-2にテープ8を介して当接するとともに、更に押圧部材70が下降して、図15に示すように、押圧部材70の下端が上側挟持部材62の下端よりも下方に位置して、挟持部材54,62と押圧部材70との間の分割予定ライン4-1を分割する。
【0073】
実施形態1において、分割ステップ1003では、ブレーキング装置30は、制御ユニット75が分割条件とおりに移動基台38及び押圧部材70を下降した後、昇降ユニット37を制御して、移動基台38及び押圧部材70を上昇させるとともに、Z軸移動ユニット36を制御して、回転体53及び矩形状挟持部材54を下降させる。また、実施形態1において、分割ステップ1003では、制御ユニット75が、荷重計741が測定した荷重値に基づいて、分割すべき分割予定ライン4-1の分割結果を判定し、判定した分割結果を分割予定ライン4-1と紐付けて記憶する。
【0074】
実施形態1において、分割ステップ1003では、ブレーキング装置30は、分割条件に基づいて、SiC基板1の分割予定ライン4のうち端の分割予定ライン4から順に分割する。実施形態1において、分割ステップ1003では、ブレーキング装置30は、SiC基板1の全ての分割予定ライン4を分割して、SiC基板1を個々のチップ10に分割すると、分割動作即ち分割ステップ1003を終了する。その後、分割されたチップ10は、ピックアップされる。
【0075】
以上説明した実施形態1に係るSiC基板の加工方法は、レーザ加工ステップ1001において、レーザビーム222を照射して金属膜7に溝11を形成した後、分割ステップ1003において押圧部材70でSiC基板1を押圧して分割する。このために、実施形態1に係るSiC基板の加工方法は、シリコン等よりも難切削材であるSiCからなる基板2を切削ブレードで切削することがないとともに、切削ブレードで切削する場合よりもSiC基板1をチップ10に分割するためのかかる所要時間を抑制できる。
【0076】
その結果、実施形態1に係るSiC基板の加工方法は、加工品質の低下を抑制しながらも、加工の所要時間を抑制することができるという効果を奏する。
【0077】
また、実施形態1に係るSiC基板の加工方法は、レーザビーム222の集光スポット223の形状が楕円形状であり集光スポット223の長軸が分割予定ライン4の伸長方向に位置づけられているので、レーザ加工ステップ1001の高い加工速度の実現と、幅の狭い溝11を形成することができる。
【0078】
〔実施形態2〕
実施形態2に係るSiC基板の加工方法を図面に基づいて説明する。図16は、実施形態2に係るSiC基板の加工方法の流れを示すフローチャートである。図17は、図16に示されたSiC基板の加工方法のテープマウントステップ後のSiC基板等を模式的に示す斜視図である。図18は、図16に示されたSiC基板の加工方法のレーザ加工ステップにおいてレーザ加工装置が保持テーブルに保持したSiC基板を保持テーブルを通して下方撮像カメラで撮像する状態を一部断面で模式的に示す側面図である。図19は、図16に示されたSiC基板の加工方法のレーザ加工ステップにおいてレーザ加工装置がレーザビームを金属膜に照射する状態を一部断面で模式的に示す側面図である。図20は、図16に示されたSiC基板の加工方法のレーザ加工ステップ後のSiC基板の要部を模式的に示す断面図である。なお、図16図17図18図19及び図20は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。なお、図18は、金属膜7を省略する。
【0079】
実施形態2に係るSiC基板の加工方法は、図16に示すように、実施形態1と同様に、テープマウントステップ1002と、レーザ加工ステップ1001と、分割ステップ1003とを備えている。また、実施形態2に係るSiC基板の加工方法は、図16に示すように、テープマウントステップ1002は、レーザ加工ステップ1001を実施する前に、金属膜7上にテープ12を配設する。即ち、実施形態2において、テープマウントステップ1002は、レーザ加工ステップ1001の前に実施する。
【0080】
実施形態2において、テープマウントステップ1002では、図17に示すように、SiC基板1の裏面6側の金属膜7にテープ12の中央部を貼着し、テープ12の外縁部にフレーム9を貼着する。
【0081】
実施形態2において、レーザ加工ステップ1001では、レーザ加工装置80がモータ811とプーリ812とプーリ812により鉛直方向(Z軸方向ともいう)と平行な軸心回りに回転されるベルト813とを備えた回転移動ユニット81により軸心回りに回転自在な保持テーブル82の保持板821上にSiC基板1の表面3側が載置され、保持板821の外周に設けられたフレーム固定部823にフレーム9が載置される。なお、保持板821は、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、サファイア、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム等の透明な透明材からなり、上面がSiC基板1を保持する保持面822である。
【0082】
実施形態2において、レーザ加工ステップ1001では、レーザ加工装置80が保持板821の外縁部に設けられた吸引溝824が図示しない吸引源により吸引されて、保持面822にSiC基板1の表面3側を保持面822に吸引保持し、フレーム固定部823の図示しないバキュームパッドが吸引源により吸引されてフレーム固定部823上にフレーム9を吸引保持する。実施形態2において、レーザ加工ステップ1001では、レーザ加工装置80が保持テーブル82を水平方向と平行なX軸方向に移動するX軸移動ユニット83と保持テーブル82を水平方向と平行でかつX軸方向に対して直交するY軸方向に移動するY軸移動ユニット84と下方撮像カメラ85をY軸方向に移動する第2Y軸移動ユニット86とを制御して、図18に示すように、保持テーブル82の保持板821に保持されたSiC基板1の下方に下方撮像カメラ85を位置付ける。
【0083】
実施形態2において、レーザ加工ステップ1001では、レーザ加工装置80が下方撮像カメラ85で保持板821越しに下方からSiC基板1を撮像し、SiC基板1とレーザビーム照射ユニット22(図19に示す)の集光器である集光レンズ221との位置合わせを行なうアライメントを遂行する。実施形態2において、レーザ加工ステップ1001では、レーザ加工装置80が、図19に示すように、移動ユニット81,83,84を制御して保持テーブル82とレーザビーム照射ユニット22とを分割予定ライン4に沿って相対的に移動させながら、テープ12越しに発振器が発振した金属膜7に対して吸収性を有する波長(例えば、355nm)のレーザビーム222を各分割予定ライン4の金属膜7に向かって照射して、アブレーション加工により分割予定ライン4の金属膜7を分断する。
【0084】
また、実施形態2において、レーザ加工ステップ1001では、レーザ加工装置80のレーザビーム照射ユニット22が照射するレーザビーム222の金属膜7の表面における集光スポット223の形状は、実施形態1と同様に、楕円形状であり、分割予定ライン4の伸長方向(長手方向ともいう)に集光スポット223の楕円形状の長軸が位置づけられている。実施形態2において、レーザ加工ステップ1001では、レーザ加工装置80が、図20に示すように、分割予定ライン4に沿った溝11を各分割予定ライン4の全長に亘ってSiC基板1に形成する。なお、溝11は、金属膜7を分断し、基板2の一部を除去して、底に基板2を露出させている。
【0085】
なお、実施形態1では、レーザビーム222は、テープ12に対して透過性を有する波長を有するので、溝11は、SiC基板1のみに形成されて、テープ12には形成されていない。
【0086】
実施形態2に係るSiC基板の加工方法は、SiC基板1の表面3にテープ8の中央部を貼着し、テープ8の外縁部をフレーム9に貼着して、実施形態1と同様に、ブレーキング装置30により分割ステップ1003を実施する。
【0087】
実施形態2に係るSiC基板の加工方法は、レーザ加工ステップにおいて、レーザビーム222を照射して金属膜7に溝11を形成した後、分割ステップ1003において押圧部材70でSiC基板1を押圧して分割するために、SiCからなる基板2を切削ブレードで切削することがないとともに、切削ブレードで切削する場合よりもSiC基板1をチップ10に分割するためのかかる所要時間を抑制でき、加工品質の低下を抑制しながらも、加工の所要時間を抑制することができるという効果を奏する。
【0088】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 SiC基板
3 表面
4 分割予定ライン
4-1 分割すべき分割予定ライン
5 デバイス
5-1 デバイス(隣接した領域)
5-2 デバイス(隣接した領域)
6 裏面
7 金属膜
11 溝(レーザ加工溝)
12 テープ
54 矩形状挟持部材(挟持部材)
62 上側挟持部材(挟持部材)
70 押圧部材
82 保持テーブル
222 レーザビーム
223 集光スポット
1001 レーザ加工ステップ
1002 テープマウントステップ
1003 分割ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20