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特開2024-158047処理装置及び学習済みモデルの生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158047
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】処理装置及び学習済みモデルの生成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241031BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20241031BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALI20241031BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20241031BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20241031BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01L21/78 N
H01L21/68 A
H01L21/78 F
B23Q7/04 K
B23Q17/24 Z
B24B41/06 A
B24B49/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072887
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】根岸 克治
(72)【発明者】
【氏名】辻脇 優一
(72)【発明者】
【氏名】梅本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】藤村 忠義
【テーマコード(参考)】
3C029
3C033
3C034
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
3C029EE01
3C029EE20
3C033BB04
3C033HH28
3C033HH30
3C033PP07
3C033PP08
3C033PP20
3C034AA07
3C034BB73
3C034BB93
3C034CA22
3C034CA30
3C034DD10
3C034DD18
5F063AA35
5F063AA37
5F063AA48
5F063BA32
5F063BA33
5F063BA43
5F063BA44
5F063BA45
5F063BA47
5F063BA48
5F063CA04
5F063DE11
5F063DE33
5F063DE34
5F063FF49
5F063FF57
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA21
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5F131AA23
5F131BA31
5F131BA32
5F131BA37
5F131BA39
5F131BA52
5F131CA32
5F131DA13
5F131DA32
5F131DA33
5F131DA36
5F131DA42
5F131DB12
5F131DB22
5F131DB62
5F131DB72
5F131DB88
5F131EA05
5F131EA06
5F131EA07
5F131EA22
5F131EA24
5F131EB01
5F131KA14
5F131KA72
5F131KB06
5F131KB09
5F131KB12
5F131KB32
5F131KB45
5F131KB46
(57)【要約】
【課題】構成要素の状態を簡易且つ高精度に判定することが可能な処理装置を提供する。
【解決手段】対象物を処理する処理装置であって、処理装置を構成する所定の構成要素を撮像する撮像ユニットと、撮像ユニットによって取得された構成要素の画像が入力されると構成要素の状態を示す判定結果を出力するように機械学習によって構成された学習済みモデルを含むコントローラと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を処理する処理装置であって、
該処理装置を構成する所定の構成要素を撮像する撮像ユニットと、
該撮像ユニットによって取得された該構成要素の画像が入力されると該構成要素の状態を示す判定結果を出力するように機械学習によって構成された学習済みモデルを含むコントローラと、を備えることを特徴とする処理装置。
【請求項2】
該構成要素は、該対象物を搬送する搬送ユニットであることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
該学習済みモデルは、該構成要素の画像が入力される入力層と、該判定結果を出力する出力層と、を含むニューラルネットワークであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
該判定結果が該構成要素の状態が異常であることを示す場合に該判定結果を報知する報知ユニットをさらに備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の処理装置。
【請求項5】
対象物を処理する処理装置の状態を判定する学習済みモデルの生成方法であって、
該処理装置を構成する所定の構成要素の状態ごとの画像を学習用画像として収集する画像収集ステップと、
該学習用画像を用いた機械学習によって、該構成要素の画像が入力されると該構成要素の状態を示す判定結果を出力する学習済みモデルを生成する学習ステップと、を含むことを特徴とする学習済みモデルの生成方法。
【請求項6】
該画像収集ステップでは、該構成要素を撮像することにより、正常な状態の該構成要素の画像に相当する複数の第1学習用画像と、異常な状態の該構成要素の画像に相当する複数の第2学習用画像と、を該学習用画像として収集することを特徴とする請求項5に記載の学習済みモデルの生成方法。
【請求項7】
該構成要素は、該対象物を搬送する搬送ユニットであることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の学習済みモデルの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に加工等の処理を施す処理装置、及び、該処理装置の状態を判定する学習済みモデルの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のデバイスが形成されたウェーハを分割して個片化することにより、デバイスをそれぞれ備える複数のチップ(デバイスチップ)が製造される。また、所定の基板上に複数のデバイスチップを実装し、実装されたデバイスチップを樹脂層(モールド樹脂)で被覆して封止することにより、パッケージ基板が形成される。パッケージ基板を分割して個片化することにより、パッケージ化された複数のデバイスチップをそれぞれ備える複数のチップ(パッケージデバイス)が製造される。デバイスチップやパッケージデバイスは、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の様々な電子機器に組み込まれる。
【0003】
ウェーハ、パッケージ基板等の対象物(被加工物)をチップ化する際には、対象物が各種の処理装置によって処理される。例えば、切削装置、レーザー加工装置等の加工装置によって対象物が加工され、複数のチップに分割される。また、対象物の分割前に、研削装置、研磨装置等の加工装置によって対象物を加工して薄化しておくことにより、薄型のチップが得られる。さらに、対象物の加工の前後には、洗浄装置を用いた対象物の洗浄や、検査装置を用いた対象物の検査が実施されることもある。
【0004】
加工装置、洗浄装置、検査装置等の処理装置は、対象物を保持する保持テーブル、対象物を搬送する搬送ユニット、対象物に所定の処理を施す処理ユニット等の様々な構成要素によって構成される。そして、処理装置の各構成要素の動作をコントローラで制御することにより、対象物に対して所定の処理が施される。例えば特許文献1には、稼働部の位置を画像に基づいて検出し、その検出結果に基づいて稼働部を駆動制御する半導体製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-167020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加工装置、洗浄装置、検査装置等の処理装置でウェーハ、パッケージ基板等の対象物を処理する際には、処理装置による対象物の一連の処理が適切に進行するように、処理装置を構成する構成要素の状態が監視されることがある。例えば、処理装置は対象物を搬送する搬送ユニットを備えており、搬送ユニットの状態(損傷の有無、設定の適否等)が所定のタイミングで検査される。これにより、搬送ユニットが対象物を適切に搬送可能な状態に維持され、対象物の誤搬送が防止される。
【0007】
処理装置の構成要素の状態は、例えば、構成要素を撮像ユニット(カメラ)で撮像することによって取得された画像に基づいて判定される。しかしながら、撮像時における構成要素の位置及び角度のばらつき、撮像ユニットの撮像特性のばらつき、構成要素を照らす照明の光量及び色彩のばらつき等に起因して、構成要素の画像に含まれる像のパターン、濃淡等にもばらつきが生じ得る。また、構成要素の経年劣化(傷、変色等)によって、構成要素の画像が変化することもある。
【0008】
上記のように、構成要素が様々な撮像条件下で撮像される処理装置においては、取得される構成要素の画像も一様でないことが多く、画一的な画像処理によって構成要素の状態を高精度で判定することは難しい。一方、撮像条件に応じて個別の画像処理を実施しようとすると、画像処理のアルゴリズムの再構成やパラメータの最適化等に費やされる手間とコストが増大する。また、実際に構成要素の状態を判定する際、画像処理に要する時間が長期化し、処理装置による対象物の円滑な処理が阻害される。
【0009】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、構成要素の状態を簡易且つ高精度に判定することが可能な処理装置及び学習済みモデルの生成方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、対象物を処理する処理装置であって、該処理装置を構成する所定の構成要素を撮像する撮像ユニットと、該撮像ユニットによって取得された該構成要素の画像が入力されると該構成要素の状態を示す判定結果を出力するように機械学習によって構成された学習済みモデルを含むコントローラと、を備える処理装置が提供される。
【0011】
なお、好ましくは、該構成要素は、該対象物を搬送する搬送ユニットである。また、好ましくは、該学習済みモデルは、該構成要素の画像が入力される入力層と、該判定結果を出力する出力層と、を含むニューラルネットワークである。また、好ましくは、該処理装置は、該判定結果が該構成要素の状態が異常であることを示す場合に該判定結果を報知する報知ユニットをさらに備える。
【0012】
また、本発明の他の一態様によれば、対象物を処理する処理装置の状態を判定する学習済みモデルの生成方法であって、該処理装置を構成する所定の構成要素の状態ごとの画像を学習用画像として収集する画像収集ステップと、該学習用画像を用いた機械学習によって、該構成要素の画像が入力されると該構成要素の状態を示す判定結果を出力する学習済みモデルを生成する学習ステップと、を含む学習済みモデルの生成方法が提供される。
【0013】
なお、好ましくは、該画像収集ステップでは、該構成要素を撮像することにより、正常な状態の該構成要素の画像に相当する複数の第1学習用画像と、異常な状態の該構成要素の画像に相当する複数の第2学習用画像と、を該学習用画像として収集する。また、好ましくは、該構成要素は、該対象物を搬送する搬送ユニットである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係る処理装置は、処理装置の構成要素の画像が入力されると構成要素の状態を示す判定結果を出力するように機械学習によって構成された学習済みモデルを備える。これにより、複雑な画像処理を行うことなく様々な構成要素の画像から特徴を適切に抽出し、構成要素の状態を簡易且つ高精度に判定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】切削装置を示す斜視図である。
図2】対象物を示す斜視図である。
図3】搬送ユニットを示す斜視図である。
図4】コントローラを示すブロック図である。
図5】学習済みモデルの生成方法を示すフローチャートである。
図6図6(A)は通常の撮像条件で正常な状態の搬送ユニットを撮像することによって取得される画像を示す画像図であり、図6(B)は通常の撮像条件とは異なる角度から正常な状態の搬送ユニットを撮像することによって取得される画像を示す画像図であり、図6(C)は通常の撮像条件とは異なる環境下で正常な状態の搬送ユニットを撮像することによって取得される画像を示す画像図である。
図7図7(A)は搬送パッドの位置が不適切な状態の搬送ユニットを撮像することによって取得される画像を示す画像図であり、図7(B)は搬送パッドが欠損した状態の搬送ユニットを撮像することによって取得される画像を示す画像図であり、図7(C)は搬送パッドに個片が付着した状態の搬送ユニットを撮像することによって取得される画像を示す画像図である。
図8】機械学習によって生成される学習済みモデルを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態に係る処理装置の構成例について説明する。図1は、切削装置2を示す斜視図である。切削装置2は、環状の切削ブレードで対象物を切削する加工装置である。なお、図1において、X軸方向(加工送り方向、前後方向、第1水平方向)とY軸方向(割り出し送り方向、左右方向、第2水平方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z軸方向(高さ方向、上下方向、鉛直方向)は、X軸方向及びY軸方向と垂直な方向である。
【0017】
切削装置2は、切削装置2を構成する各構成要素を支持又は収容する直方体状の基台4を備える。基台4の前端側の角部には、矩形状の開口4aが設けられている。開口4aの内側には、昇降機構(不図示)によって昇降するカセット支持台6が設けられている。
【0018】
カセット支持台6の上面上には、切削装置2によって処理される複数の対象物(被処理物)11を収容可能なカセット8が配置される。対象物11は、切削装置2による切削加工が施される被加工物に相当する。なお、図1ではカセット8の輪郭のみを破線で示している。
【0019】
図2は、対象物11を示す斜視図である。例えば対象物11は、単結晶シリコン等の半導体材料でなる円盤状の基板(ウェーハ)であり、互いに概ね平行な表面(第1面)11a及び裏面(第2面)11bを備える。対象物11は、互いに交差するように格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)13によって、複数の矩形状の領域に区画されている。
【0020】
ストリート13によって区画された複数の領域の表面11a側にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス等のデバイス15が形成されている。対象物11をストリート13に沿って分割することにより、デバイス15をそれぞれ備える複数のチップ(デバイスチップ)が製造される。
【0021】
切削装置2で対象物11を処理する際には、対象物11の取り扱い(搬送、保持等)の便宜のため、対象物11がフレーム17によって支持される。フレーム17は、SUS(ステンレス鋼)等の金属でなる環状の部材であり、フレーム17の中央部にはフレーム17を厚さ方向に貫通する円形の開口17aが設けられている。なお、開口17aの直径は対象物11の直径よりも大きい。
【0022】
対象物11及びフレーム17には、円形のシート19が固定される。例えばシート19として、円形に形成されたフィルム状の基材と、基材上に設けられた粘着層(糊層)とを含むテープが用いられる。基材は、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート等の樹脂でなる。また、粘着層は、エポキシ系、アクリル系、又はゴム系の接着剤等でなる。なお、粘着層は、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化型樹脂であってもよい。
【0023】
対象物11をフレーム17の開口17aの内側に配置した状態で、シート19の中央部を対象物11の裏面11b側に貼付してシート19の外周部をフレーム17に貼付すると、対象物11がシート19を介してフレーム17によって支持される。そして、対象物11はフレーム17によって支持された状態でカセット8(図1参照)に収容される。
【0024】
なお、対象物11の種類、材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば対象物11は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、サファイア、ガラス(石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等)、セラミックス、樹脂、金属等でなる基板(ウェーハ)であってもよい。また、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はなく、対象物11にはデバイス15が形成されていなくてもよい。
【0025】
さらに、対象物11は、CSP(Chip Size Package)基板、QFN(Quad Flat Non-leaded package)基板等のパッケージ基板であってもよい。例えばパッケージ基板は、所定の基板上に複数のデバイスチップを実装し、実装されたデバイスチップを樹脂層(モールド樹脂)で被覆して封止することによって形成される。パッケージ基板を分割して個片化することにより、パッケージ化された複数のデバイスチップをそれぞれ備える複数のチップ(パッケージデバイス)が製造される。
【0026】
図1に示すように、開口4aの側方には、長手方向がX軸方向に沿うように形成された矩形状の開口4bが設けられている。開口4bの内側には、対象物11を保持する保持テーブル(チャックテーブル)10が設けられている。保持テーブル10には、保持テーブル10をX軸方向に沿って移動させる移動機構12が連結されている。
【0027】
移動機構12は、例えばボールねじ式の移動機構であり、X軸方向に沿って配置されたX軸ボールねじ(不図示)と、X軸ボールねじを回転させるX軸パルスモータ(不図示)とを備える。また、移動機構12は、保持テーブル10を囲むように設けられた平板状のテーブルカバー14を備える。テーブルカバー14の前後には、X軸方向に沿って伸縮可能な蛇腹状の防塵防滴カバー16が設けられている。テーブルカバー14及び防塵防滴カバー16は、開口4bの内部に配置された移動機構12の構成要素(X軸ボールねじ、X軸パルスモータ等)を覆うように設定される。
【0028】
保持テーブル10の上面は、水平面(XY平面)と概ね平行な平坦面であり、対象物11を保持する保持面10aを構成している。保持面10aは、保持テーブル10の内部に設けられた流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続される。
【0029】
保持テーブル10には、保持テーブル10をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。また、保持テーブル10は、保持面10aの周囲に設けられた複数のクランプ18を備える。複数のクランプ18は、対象物11を支持しているフレーム17を把持して固定する。
【0030】
開口4bの前端部の上方には、一対のガイドレール20が設けられている。一対のガイドレール20は、Y軸方向に沿って互いに概ね平行に配置され、X軸方向に沿って互いに接近及び離隔する。また、一対のガイドレール20はそれぞれ、フレーム17の下面側を支持する支持面と、支持面から上方に突出してフレーム17の外周縁と接触する挟持面とを備える。一対のガイドレール20は、支持面上に載置されたフレーム17を挟持面で挟み込むことにより、対象物11及びフレーム17の位置合わせを行う。
【0031】
基台4の上面上には、門型の第1支持構造22が開口4bを跨ぐように配置されている。第1支持構造22の表面(前面)側には、レール24がY軸方向に沿って固定されている。レール24には、対象物11を搬送する搬送ユニット(搬送機構、搬送装置)26が装着されている。
【0032】
搬送ユニット26は、レール24に装着された移動部(移動機構)28と、移動部28に連結され対象物11を保持する保持部(保持機構)30とを備える。搬送ユニット26は、カセット8と一対のガイドレール20との間、及び、一対のガイドレール20と保持テーブル10との間で、対象物11を搬送する。
【0033】
移動部28は、レール24に沿って移動することにより、保持部30をY軸方向に移動させる。また、移動部28はエアシリンダを備える。エアシリンダは、シリンダケースと、シリンダケースに収容され柱状のピストンロッドとを備える。ピストンロッドはZ軸方向に沿って配置され、ピストンロッドの下端部に保持部30が固定される。エアシリンダを作動させると、ピストンロッドが保持部30とともにZ軸方向に沿って移動(昇降)する。
【0034】
例えば保持部30は、フレーム17を保持する複数の吸引パッドを備える。吸引パッドの下面は、フレーム17の上面側を吸引保持する保持面を構成している。吸引パッドの保持面は、保持部30の内部に形成された流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。また、保持部30の開口4a側(カセット8側)の端部には、フレーム17を把持する把持部(把持機構)30aが設けられている。
【0035】
また、第1支持構造22の表面(前面)側には、レール32がY軸方向に沿って固定されている。レール32には、対象物11を搬送する搬送ユニット(搬送機構、搬送装置)34が装着されている。
【0036】
搬送ユニット34は、レール32に装着された移動部(移動機構)36と、移動部36に連結され対象物11を保持する保持部(保持機構)38とを備える。搬送ユニット34は、保持テーブル10と洗浄ユニット50との間、及び、洗浄ユニット50と一対のガイドレール20との間で、対象物11を搬送する。なお、移動部36、保持部38の構成はそれぞれ、搬送ユニット26の移動部28、保持部30の構成と同様である。搬送ユニット34の構成の詳細については後述する(図3参照)。
【0037】
第1支持構造22の後方には、門型の第2支持構造40が開口4bを跨ぐように配置されている。第2支持構造40の表面(前面)側の両端部には、ボールねじ式の移動機構42A,42Bが設けられている。移動機構42A,42Bの下部にはそれぞれ、対象物11に切削加工を施す処理ユニット(加工ユニット、切削ユニット)44A,44Bが固定されている。
【0038】
処理ユニット44A,44Bはそれぞれ、Y軸方向に沿って配置された円柱状のスピンドル(不図示)を備える。スピンドルの先端部には環状の切削ブレード46が装着され、スピンドルの基端部にはモータ等の回転駆動源が連結される。回転駆動源でスピンドルを回転させることにより、切削ブレード46がY軸方向と概ね平行な回転軸の周りを回転する。
【0039】
切削ブレード46としては、例えばハブタイプの切削ブレード(ハブブレード)が用いられる。ハブブレードは、アルミニウム合金等の金属でなる環状のハブ基台と、ハブ基台の外周縁に沿って形成された環状の切刃とを備える。ハブブレードの切刃は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(cBN:cubic Boron Nitride)等でなる砥粒と、砥粒を固定するニッケルめっき層等の結合材とを含む電鋳砥石によって構成される。
【0040】
ただし、切削ブレード46としてワッシャータイプの切削ブレード(ワッシャーブレード)を用いることもできる。ワッシャーブレードは、砥粒と、金属、セラミックス、樹脂等でなり砥粒を固定する結合材とを含む環状の切刃のみによって構成される。
【0041】
移動機構42Aは、処理ユニット44AをY軸方向及びZ軸方向に沿って移動させる。これにより、処理ユニット44Aに装着された切削ブレード46のY軸方向及びZ軸方向における位置が調整される。同様に、移動機構42Bは、処理ユニット44BをY軸方向及びZ軸方向に沿って移動させる。これにより、処理ユニット44Bに装着された切削ブレード46のY軸方向及びZ軸方向における位置が調整される。
【0042】
処理ユニット44A,44Bに隣接する位置にはそれぞれ、撮像ユニット48が設けられている。撮像ユニット48は、CCD(Charged-Coupled Devices)センサ、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)センサ等のイメージセンサを備え、保持テーブル10によって保持された対象物11を撮像する。撮像ユニット48の種類に制限はなく、例えば可視光カメラや赤外線カメラが用いられる。撮像ユニット48によって取得された画像は、対象物11と切削ブレード46との位置合わせ(アライメント)等に用いられる。
【0043】
開口4bの側方には、円形の開口4cが設けられている。開口4cの内側には、対象物11を洗浄する洗浄ユニット(洗浄機構、洗浄装置)50が設けられている。洗浄ユニット50は、対象物11を保持して回転する保持テーブル(スピンナテーブル)52と、保持テーブル52によって保持された対象物11に洗浄用の液体(洗浄液)を供給するノズル54とを備える。
【0044】
保持テーブル52の上面は、水平面(XY平面)と概ね平行な平坦面であり、対象物11を保持する保持面52aを構成している。保持面52aは、保持テーブル52の内部に設けられた流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。また、保持テーブル52には、保持テーブル52をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0045】
ノズル54は、保持テーブル52に向かって洗浄液を供給する。洗浄液としては、純水等の液体や、液体(純水等)と気体(エアー等)とが混合された混合流体等を用いることができる。
【0046】
また、切削装置2には、切削装置2を構成する構成要素(基台4~洗浄ユニット50等)の中から選択された1又は複数の構成要素を撮像する監視用の撮像ユニットが搭載される。撮像ユニットで所定の構成要素を撮像することによって構成要素の画像が取得され、構成要素の画像に基づいて構成要素の状態が監視される。
【0047】
例えば、第1支持構造22の表面(前面)側の上端角部に、柱状の支持部材56を介して撮像ユニット58が設置される。支持部材56の基端部は第1支持構造22の表面に固定され、支持部材56の先端部に撮像ユニット58が装着される。撮像ユニット58の構成及び種類の例は、撮像ユニット48と同様である。
【0048】
撮像ユニット58は、搬送ユニット34を上側から撮像して、搬送ユニット34の一部又は全体の画像を取得する。そして、撮像ユニット58によって取得された搬送ユニット34の画像に基づいて、搬送ユニット34の状態が判定される。搬送ユニット34の状態の判定の詳細については後述する(図4参照)。
【0049】
なお、撮像ユニット58は、撮像領域及び倍率を変更可能なカメラであることが好ましい。また、撮像ユニット58には、撮像ユニット58を移動させる移動機構が連結されていてもよい。これにより、搬送ユニット34の任意の箇所を任意の角度及び倍率で撮像することが可能になる。また、撮像ユニット58は、撮像時に被写体を照らす照明(光源)を備えていてもよい。搬送ユニット34を照明で照らしつつ撮像することにより、鮮明な搬送ユニット34の画像を取得できる。
【0050】
ただし、切削装置2に搭載される撮像ユニットの構成、個数、撮像対象、設置場所等に制限はない。例えば切削装置2は、搬送ユニット34を異なる角度から撮像する複数の撮像ユニットを備えていてもよい。また、切削装置2は、搬送ユニット34以外の構成要素を撮像する撮像ユニットを備えていてもよい。
【0051】
基台4の上側には、切削装置2の構成要素を覆うカバー60が設けられている。図1では、カバー60の輪郭のみを破線で示している。カバー60の側部には、切削装置2に関する各種の情報を表示する表示ユニット(表示部、表示装置)62が設けられている。また、カバー60の上部には、オペレータに情報を報知する報知ユニット(報知部、報知装置)64が設けられている。
【0052】
表示ユニット62としては、例えばタッチパネル式のディスプレイが用いられる。この場合、表示ユニット62は切削装置2に情報を入力するための入力ユニット(入力部、入力装置)としても機能し、オペレータは表示ユニット62のタッチ操作によって切削装置2に加工条件等の情報を入力できる。ただし、入力ユニットは、表示ユニット62とは別途独立して設けられたキーボード、マウス、送受信器等の電子機器であってもよい。
【0053】
報知ユニット64としては、例えば表示灯(警告灯)が用いられる。この場合、切削装置2で異常が発生すると、報知ユニット64が点灯又は点滅してオペレータに異常を知らせる。ただし、報知ユニット64の種類に制限はない。例えば報知ユニット64は、音又は音声でオペレータに情報を報知するスピーカーであってもよいし、切削装置2の外部に情報を有線又は無線で送信する送信器であってもよい。また、表示ユニット62にオペレータに報知されるべき情報が表示される場合には、表示ユニット62が報知ユニットとしても機能する。
【0054】
切削装置2は、切削装置2を制御するコントローラ(制御ユニット、制御部、制御装置)66を備える。コントローラ66は、切削装置2を構成する各構成要素(カセット支持台6、保持テーブル10、移動機構12、クランプ18、搬送ユニット26、搬送ユニット34、移動機構42A,42B、処理ユニット44A,44B、撮像ユニット48、洗浄ユニット50、撮像ユニット58、表示ユニット62、報知ユニット64等)に接続されている。コントローラ66は、切削装置2の構成要素に制御信号を出力することにより、各構成要素の動作を制御する。
【0055】
例えばコントローラ66は、コンピュータによって構成される。具体的には、コントローラ66は、切削装置2の稼働に必要な演算等の処理を行う処理部と、切削装置2の稼働に用いられる各種の情報(データ、プログラム等)を記憶する記憶部とを含む。処理部は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成される。また、記憶部は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリを含んで構成される。
【0056】
切削装置2で対象物11を切削する際は、複数の対象物11を収容したカセット8がカセット支持台6上にセットされ、カセット8から対象物11が1枚ずつ搬出される。具体的には、搬送ユニット26が、カセット8に収容されているフレーム17を把持部30aで把持し、カセット8から離れるようにY軸方向に沿って移動する。これにより、フレーム17が対象物11とともにカセット8から搬出され、一対のガイドレール20上に配置される。その後、フレーム17が一対のガイドレール20によって挟み込まれ、対象物11及びフレーム17の位置合わせが行われる。
【0057】
次に、搬送ユニット26が複数の吸引パッドでフレーム17の上面側を吸引保持し、フレーム17を対象物11とともに保持テーブル10へ搬送する。これにより、対象物11がシート19を介して保持テーブル10の保持面10a上に配置される。また、フレーム17が複数のクランプ18によって把持される。この状態で、保持面10aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、対象物11がシート19を介して保持テーブル10によって吸引保持される。
【0058】
保持テーブル10で保持された対象物11は、処理ユニット44A又は処理ユニット44Bに装着された切削ブレード46によって切削される。例えば、処理ユニット44Aに装着された切削ブレード46で対象物11を切削することにより、対象物11が複数のチップに分割される。
【0059】
具体的には、まず、保持テーブル10を回転させ、所定のストリート13(図2参照)の長さ方向をX軸方向に合わせる。また、切削ブレード46が所定のストリート13の延長線上に配置されるように、処理ユニット44AのY軸方向における位置を調整する。さらに、切削ブレード46の下端が対象物11の裏面11b(シート19の上面)よりも下方に配置されるように、処理ユニット44Aの高さを調整する。
【0060】
そして、切削ブレード46を回転させつつ、保持テーブル10をX軸方向に沿って移動させる。これにより、保持テーブル10と切削ブレード46とがX軸方向に沿って相対的に移動し(加工送り)、切削ブレード46がストリート13に沿って対象物11に切り込む。その結果、対象物11がストリート13に沿って切削される。その後、同様の手順を繰り返し、全てのストリート13に沿って対象物11を切削する。これにより、対象物11がデバイス15(図2参照)をそれぞれ備える複数のチップに分割される。
【0061】
対象物11の切削が完了すると、対象物11は搬送ユニット34によって洗浄ユニット50に搬送され、保持テーブル52によって吸引保持される。そして、保持テーブル52を回転させつつノズル54から対象物11に向かって洗浄液を供給することにより、対象物11が洗浄される。
【0062】
対象物11の洗浄が完了すると、対象物11は搬送ユニット34によって一対のガイドレール20上に配置される。そして、フレーム17が一対のガイドレール20によって挟み込まれ、フレーム17の位置合わせが行われる。その後、搬送ユニット26が、フレーム17を把持部30aで把持し、カセット8に近づくようにY軸方向に沿って移動する。これにより、フレーム17が対象物11とともにカセット8に搬入、収容される。
【0063】
なお、前述の通り、切削装置2の稼働中は、切削装置2を構成する構成要素(基台4~洗浄ユニット50等)の中から選択された1又は複数の構成要素の状態が監視される。これにより、切削装置2の構成要素に生じた異常が速やかに検知され、対象物11に不適切な処理が施されることを防止できる。監視の対象とされる構成要素は、異常発生の可能性等を考慮しつつ適宜設定できる。以下では一例として、搬送ユニット34が撮像ユニット58によって監視される場合について説明する。
【0064】
図3は、搬送ユニット34を示す斜視図である。前述の通り、搬送ユニット34は移動部36及び保持部38を備える。保持部38によって対象物11(図2参照)を保持した状態で、移動部36によって保持部38をY軸方向及びZ軸方向に沿って移動させることにより、対象物11が搬送される。
【0065】
移動部36は、柱状の支持部材70を備える。支持部材70の基端部はレール32(図1参照)に装着され、支持部材70の先端部にはエアシリンダ72が装着されている。エアシリンダ72は、シリンダケース74と、シリンダケース74に収容された柱状のピストンロッド76とを備える。ピストンロッド76はZ軸方向に沿って配置され、ピストンロッド76の下端部に保持部38が固定される。エアシリンダ72を作動させると、ピストンロッド76が保持部38とともにZ軸方向に沿って移動(昇降)する。
【0066】
保持部38は、平面視でH字状に形成された板状の基台80を備える。基台80は、第1支持板82と、第1支持板82に装着された一対の第2支持板84とによって構成される。第1支持板82は、矩形状に形成された板状の部材であり、長手方向がX軸方向に沿うように配置される。また、一対の第2支持板84はそれぞれ、矩形状に形成された板状の部材であり、長手方向がY軸方向に沿うように第1支持板82の両端部に装着される。
【0067】
一対の第2支持板84の下面の両端部にはそれぞれ、フレーム17(図2参照)を保持する一対の吸引パッド86が装着されている。吸引パッド86の下面は、フレーム17の上面側を吸引保持する保持面を構成している。吸引パッド86の保持面は、保持部38の内部に形成された流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。吸引パッド86の保持面をフレーム17の上面側に接触させた状態で、保持面に吸引源の吸引力(負圧)を作用させることにより、フレーム17が吸引パッド86によって吸引保持される。
【0068】
一対の第2支持板84は、第1支持板82に沿ってスライド可能に装着されており、互いに接近又は離隔するようにX軸方向に移動する。また、一対の吸引パッド86は、第2支持板84に沿ってスライド可能に装着されており、互いに接近又は離隔するようにY軸方向に移動する。一対の第2支持板84の間隔と一対の吸引パッド86の間隔とを変更することにより、吸引パッド86の位置が調節され、吸引パッド86によって保持可能なフレーム17のサイズを変更することができる。なお、吸引パッド86の位置は、作業者の手作業によって手動で調節されてもよいし、搬送ユニット34に搭載されたアクチュエータ(不図示)によって自動で調節されてもよい。
【0069】
本実施形態においては、搬送ユニット34を撮像ユニット58(図1参照)で撮像することによって取得された画像に基づいて、搬送ユニット34の状態が判定される。しかしながら、撮像時における搬送ユニット34の位置及び角度のばらつき、撮像ユニット58の撮像特性のばらつき、搬送ユニット34を照らす照明の光量及び色彩のばらつき等に起因して、搬送ユニット34の画像に含まれる像のパターン、濃淡等にもばらつきが生じ得る。また、搬送ユニット34の経年劣化(傷、変色等)によって、搬送ユニット34の画像が変化することもある。
【0070】
上記のように、搬送ユニット34が様々な撮像条件下で撮像される切削装置2においては、取得される搬送ユニット34の画像も一様でないことが多く、画一的な画像処理によって搬送ユニット34の状態を高精度で判定することは難しい。一方、撮像条件に応じて個別の画像処理を実施しようとすると、画像処理のアルゴリズムの再構成やパラメータの最適化等に費やされる手間とコストが増大する。また、実際に搬送ユニット34の状態を判定する際、画像処理に要する時間が長期化し、切削装置2による対象物11の円滑な処理が阻害される。
【0071】
そこで、本実施形態においては、搬送ユニット34の画像が入力されると搬送ユニット34の状態を示す判定結果を出力するように機械学習によって構成された学習済みモデルを用いる。これにより、複雑な画像処理を行うことなく様々な搬送ユニット34の画像から特徴を適切に抽出し、搬送ユニット34の状態を簡易且つ高精度に判定することが可能になる。
【0072】
図4は、コントローラ66を示すブロック図である。図4には、コントローラ66の機能的な構成を示すブロックに加えて、搬送ユニット34、撮像ユニット58、表示ユニット62及び報知ユニット64を模式的に図示している。搬送ユニット34の状態の判定は、コントローラ66によって実行される。
【0073】
コントローラ66は、搬送ユニット34の画像(撮像画像)90に基づいて搬送ユニット34の状態を判定する判定部92を含む。撮像ユニット58で搬送ユニット34を撮像すると、搬送ユニット34の一部又は全体を示す画像90が取得され、判定部92に入力される。そして、判定部92は、画像90に基づいて搬送ユニット34の状態を判定し、判定結果を出力する。
【0074】
また、コントローラ66は、各種の情報(データ、プログラム等)を記憶可能な記憶部94と、表示ユニット62及び/又は報知ユニット64による情報の報知を制御する報知制御部96とを含む。なお、記憶部94は、ROM、RAM等のメモリを含んで構成される、コンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体に相当する。判定部92の判定結果は、記憶部94及び報知制御部96に出力される。
【0075】
判定部92は、搬送ユニット34の状態を判定する学習済みモデル100を備える。学習済みモデル100は、画像90が入力されると搬送ユニット34の状態を示す判定結果を出力するように、機械学習によって構成されている。学習済みモデル100の種類に制限はなく、サポートベクタマシン(SVM)、ロジスティック回帰、k近傍法、決定木、ニューラルネットワーク等を用いることができる。以下では一例として、学習済みモデル100がニューラルネットワークNNである場合について説明する。
【0076】
ニューラルネットワークNNは、階層型のニューラルネットワークであり、データが入力される入力層102と、データを出力する出力層104と、入力層102と出力層104との間に設けられた複数の隠れ層(中間層)106とを含む。入力層102、出力層104、隠れ層106はそれぞれ、複数のニューロン(ユニット、ノード)を含む。入力層102のニューロンは第1層目の隠れ層106のニューロンに接続され、出力層104のニューロンは最終層の隠れ層106のニューロンに接続されている。また、隠れ層106のニューロンは、入力層102又は前層の隠れ層106のニューロンと、出力層104又は後層の隠れ層106のニューロンとに接続されている。
【0077】
入力層102、出力層104、隠れ層106に含まれるニューロンの数、各ニューロンの活性化関数、各ニューロン間の接続関係等に制限はない。また、隠れ層106の層数にも制限はない。2層以上の隠れ層106を含むニューラルネットワークNNは、ディープニューラルネットワーク(DNN)と呼ぶことができる。また、ディープニューラルネットワークの学習は、深層学習と呼ぶことができる。
【0078】
ニューラルネットワークNNは、入力層102に画像90が入力されると出力層104から搬送ユニット34の状態を示す判定結果を出力するように学習されている。ニューラルネットワークNNの学習方法に制限はない。ニューラルネットワークNNの学習方法の具体例については後述する(図8参照)。
【0079】
搬送ユニット34の状態を判定する際には、搬送ユニット34が撮像ユニット58によって撮像され、画像90が取得される。そして、画像90がニューラルネットワークNNに入力され、ニューラルネットワークNNの推論によって搬送ユニット34の状態が判定される。具体的には、画像90を入力データとして用いた演算が、入力層102、隠れ層106、出力層104において順次実行され、画像90を搬送ユニット34の状態によって分類した結果に対応するデータが出力層104から出力される。これにより、搬送ユニット34の状態が自動で判定される。
【0080】
なお、上記のようにニューラルネットワークNNは画像90の分類問題を扱うため、ニューラルネットワークNNとして畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)を用いることが好ましい。この場合には、隠れ層106として、畳み込み層、プーリング層、局所コントラスト正規化(LCN)層、全結合層等が設けられる。そして、畳み込み層における畳み込み演算(特徴マップの生成)と、プーリング層におけるプーリング処理とによって、画像90の特徴抽出が行われる。また、全結合層において画像90を分類する演算が行われる。そして、出力層104から画像90の分類結果に対応する数値が出力される。
【0081】
例えば、判定部92によって搬送ユニット34の状態が正常であるか異常であるかの判定(2クラス分類)が行われる場合、出力層104は、活性化関数としてソフトマックス関数が適用された2個のニューロンによって構成できる。そして、出力層104の2個のニューロンはそれぞれ、搬送ユニット34が正常である確率に対応する数値(正常出力値)と、搬送ユニット34が異常である確率に対応する数値(異常出力値)とを出力する。
【0082】
学習済みモデル100は、ソフトウェアとハードウェアのいずれによって実現されてもよい。例えば、ニューラルネットワークNNの入力層102、出力層104、隠れ層106における演算がプログラムによって記述され、このプログラムが記憶部94に記憶される。そして、プログラムが記憶部94から読み出されてコントローラ66によって実行されると、学習済みモデル100に搬送ユニット34の画像90を入力する処理と、学習済みモデル100の演算を実行する処理と、がコンピュータによって実行される。これにより、搬送ユニット34の状態が判定される。
【0083】
また、判定部92は、学習済みモデル100による判定の結果を処理する判定結果処理部108を含む。例えば判定結果処理部108は、ニューラルネットワークNNの出力層104から出力される正常出力値と異常出力値とを比較する。そして、正常出力値が異常出力値よりも大きい場合には、判定結果処理部108は搬送ユニット34の状態が正常である旨を示す信号(正常判定信号)を出力する。一方、異常出力値が正常出力値よりも大きい場合には、判定結果処理部108は搬送ユニット34の状態が異常である旨を示す信号(異常判定信号)を出力する。正常判定信号及び異常判定信号が、判定部92による判定の結果に相当する。
【0084】
ただし、判定結果処理部108による処理の内容に制限はない。例えば判定結果処理部108は、正常出力値及び異常出力値と、予め記憶部94に記憶されている基準値(下限値)とを比較することによって、搬送ユニット34の状態を判定してもよい。具体的には、正常出力値が基準値以上である場合には、判定結果処理部108は正常判定信号を出力する。一方、異常出力値が基準値以上である場合には、判定結果処理部108は異常判定信号を出力する。なお、正常出力値及び異常出力値と比較される基準値は、要求される判定精度に応じて適宜設定できる。例えば閾値は、0.6以上(60%以上)、0.8以上(80%以上)、又は0.9以上(90%以上)に設定される。
【0085】
正常出力値及び異常出力値がいずれも閾値未満である場合には、判定に用いる画像90を取得し直してもよい。具体的には、搬送ユニット34の撮像条件(搬送ユニット34の位置、角度、撮像ユニット58の撮像領域、倍率等)を変更した後、改めて撮像ユニット58で搬送ユニット34を撮像し、画像90を再取得する。そして、判定部92は、新たに取得された画像90に基づいて搬送ユニット34の状態を判定する。
【0086】
また、判定結果処理部108は、学習済みモデル100から入力された正常出力値と異常出力値の一方又は両方を、そのまま判定結果として出力してもよい。この場合、判定結果処理部108は正常出力値及び異常出力値に対して所定の正規化処理を施してもよい。
【0087】
画像90と、判定部92から出力された判定結果の情報とは、互いに紐づけられた状態で記憶部94に記憶される。これにより、搬送ユニット34の状態の判定結果が記憶部94に蓄積される。
【0088】
また、判定部92による判定の結果が報知制御部96に入力されると、報知制御部96は必要に応じて判定結果を表示ユニット62及び/又は報知ユニット64に報知させる。具体的には、報知制御部96は、判定部92の判定結果を表示ユニット62に表示させるための制御信号を生成し、表示ユニット62に出力する。また、報知制御部96は、判定部92の判定結果を報知ユニット64に報知させるための制御信号を生成し、報知制御部96に出力する。これにより、判定部92の判定結果がオペレータに報知される。
【0089】
例えば表示ユニット62は、搬送ユニット34の状態(正常又は異常)を、文字列(メッセージ)、コード、図形、記号等で表示する。また、表示ユニット62は、搬送ユニット34の状態(正常又は異常)の確率を、数字、グラフ等で表示してもよい。例えば、学習済みモデル100から出力された正常出力値に対応する値が、搬送ユニット34が正常である確率として表示ユニット62に百分率で表示される。また、学習済みモデル100から出力された異常出力値に対応する値が、搬送ユニット34が異常である確率として表示ユニット62に百分率で表示される。
【0090】
さらに、表示ユニット62は、搬送ユニット34の状態又はその確率に加えて、判定の対象とされた画像90を表示してもよい。この場合、オペレータは画像90と判定結果とを同時に確認して見比べることができる。これにより、学習済みモデル100による判定が妥当であるか否かをオペレータが自己の判断に基づいて確認することが可能になる。
【0091】
判定部92の判定結果が搬送ユニット34の状態が正常であることを示す場合には、コントローラ66から切削装置2の各構成要素に制御信号が出力され、切削装置2による対象物11の処理(搬送、加工、洗浄等)が続行される。また、報知制御部96から表示ユニット62に制御信号が入力され、表示ユニット62に搬送ユニット34が正常である旨を知らせる情報が表示される。
【0092】
一方、判定部92の判定結果が搬送ユニット34の状態が異常であることを示す場合には、コントローラ66から切削装置2の各構成要素に制御信号が出力され、切削装置2による対象物11の処理が中断される。また、報知制御部96から表示ユニット62及び報知ユニット64に制御信号が入力され、表示ユニット62に搬送ユニット34が異常である旨を知らせる情報が表示されるとともに、報知ユニット64が搬送ユニット34の異常を知らせる色又はパターンで点灯する。これにより、搬送ユニット34の異常がオペレータに報知され、オペレータは異常の内容に応じた措置をとることができる。
【0093】
なお、搬送ユニット34の状態を判定するタイミングに制限はない。例えば、撮像ユニット58による搬送ユニット34の撮像は、切削装置2の稼働中、搬送ユニット34が対象物11を搬送している間に行ってもよいし、搬送ユニット34が対象物11を搬送せず待機している間に行ってもよい。また、切削装置2のメンテナンスが行われる場合には、メンテナンス中に搬送ユニット34を撮像ユニット58で撮像してもよい。そして、搬送ユニット34の撮像によって取得された画像90が判定部92に入力され、搬送ユニット34の状態が判定される。
【0094】
以上のように、本実施形態に係る切削装置2には、搬送ユニット34の画像90に基づいて搬送ユニット34の状態を判定可能な学習済みモデル100が搭載される。これにより、搬送ユニット34の状態を監視することが可能になり、対象物11が異常な状態の搬送ユニット34によって搬送されることを防止できる。また、学習済みモデル100は機械学習によって構成されているため、様々な撮像条件で撮像された搬送ユニット34の画像90から特徴を適切に抽出して搬送ユニット34の状態を判定できる。
【0095】
切削装置2に学習済みモデル100を搭載する方法に制限はない。例えば、切削装置2の製造者(メーカー)は、学習済みモデル100を生成してコントローラ66に組み込んだ後、切削装置2を使用者に提供する。
【0096】
また、切削装置2の製造者は、使用者が使用している従来型の切削装置(学習済みモデル100を未搭載の切削装置)に学習済みモデル100を配信することにより、学習済みモデル100を搭載した切削装置2を使用者に事後的に提供することもできる。例えば、切削装置2の製造者は、使用者が使用する切削装置2に接続されたネットワークを介して、学習済みモデル100を記述するプログラムを切削装置2に配信してもよい。また、切削装置2の製造者は、コンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体である記録メディア(光ディスク、フラッシュメモリ等)に学習済みモデル100を記述するプログラムを記憶し、その記録メディアを切削装置2の使用者に提供してもよい。
【0097】
上記のようにネットワーク又は記録メディアを用いてプログラムを配信することにより、使用者が使用中の切削装置2に学習済みモデル100を事後的に導入することができる。また、学習済みモデル100が更新された場合、切削装置2の製造者は、更新後の学習済みモデル100を記述するプログラム、又は、更新後の学習済みモデル100のパラメータに相当するデータを、ネットワーク又は記録メディアを用いて配信してもよい。これにより、最新の学習済みモデル100を搭載した切削装置2が使用者に提供される。
【0098】
次に、本実施形態に係る学習済みモデルの生成方法の具体例について説明する。図5は、学習済みモデルの生成方法を示すフローチャートである。本実施形態に係る学習済みモデルの生成方法は、学習用画像を収集する画像収集ステップS1と、学習用画像を用いた機械学習によって学習済みモデルを生成する学習ステップS2とを含む。
【0099】
画像収集ステップS1では、搬送ユニット34の状態ごとの画像を学習用画像として収集する。例えば、搬送ユニット34の状態を正常と異常の2分類で判定する場合には、搬送ユニット34を撮像ユニット58で撮像することにより、正常な状態の搬送ユニット34の画像に相当する複数の第1学習用画像と、異常な状態の搬送ユニット34の画像に相当する複数の第2学習用画像とを学習用画像として収集する。
【0100】
第1学習用画像は、正常な状態の搬送ユニット34を撮像ユニット58で複数回撮像することによって収集される(第1学習用画像収集ステップ)。正常な状態の搬送ユニット34の画像(第1撮像画像、第1学習用画像)110の例を、図6(A)~図6(C)に示す。
【0101】
図6(A)は、通常の撮像条件で正常な状態の搬送ユニット34を撮像することによって取得される画像110(画像110A)を示す画像図である。通常の撮像条件で正常な状態の搬送ユニット34を撮像ユニット58で撮像すると、搬送ユニット34(移動部36及び保持部38)の一部又は全体を示す画像110Aが取得される。
【0102】
図6(B)は、通常の撮像条件とは異なる角度から正常な状態の搬送ユニット34を撮像することによって取得される画像110(画像110B)を示す画像図である。例えば、振動や装着誤差等が原因で搬送ユニット34又は撮像ユニット58の角度が僅かに変動することがある。この場合、搬送ユニット34(移動部36及び保持部38)の一部又は全体を画像110Aとは異なる角度で示す画像110Bが取得される。
【0103】
図6(C)は、通常の撮像条件とは異なる環境下で正常な状態の搬送ユニット34を撮像することによって取得される画像110(画像110C)を示す画像図である。例えば、撮像時に環境光や搬送ユニット34を照らす照明の光量や色彩が変化すると、画像110Aとは明るさが異なる画像110Cが取得される。
【0104】
第1学習用画像収集ステップでは、撮像条件を変えつつ搬送ユニット34を撮像ユニット58によって複数回撮像する。これにより、図6(A)~図6(C)に示すような、正常な状態の搬送ユニット34を示す複数の異なる画像110が取得される。
【0105】
なお、搬送ユニット34の撮像条件に制限はない。例えば、移動部36によって保持部38を移動又は昇降させつつ、撮像ユニット58で搬送ユニット34を複数回撮像してもよい。また、移動部36には、保持部38をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が内蔵されていることがある。この場合には、回転駆動源で保持部38を回転させつつ、撮像ユニット58で搬送ユニット34を複数回撮像してもよい。これにより、位置及び/又は角度が異なる搬送ユニット34を示す複数の画像110が取得される。
【0106】
また、撮像ユニット58の倍率又は焦点位置を変化させつつ、搬送ユニット34を複数回撮像してもよい。これにより、倍率やぼかしの程度が異なる複数の画像110が取得される。さらに、撮像ユニット58が被写体を照らす照明を備える場合には、照明から搬送ユニット34に照射される光の光量又は色彩を変えつつ搬送ユニット34を複数回撮像してもよい。これにより、明度又は彩度が異なる複数の画像110が取得される。
【0107】
上記のように、第1学習用画像収集ステップでは、正常な状態の搬送ユニット34を複数回撮像することにより、複数の画像110(例えば1000枚以上)が取得される。そして、複数の画像110は、正常な搬送ユニット34の画像として分類(ラベリング)され、第1学習用画像として所定のデータベースに記憶される。
【0108】
第2学習用画像は、異常な状態の搬送ユニット34を撮像ユニット58で複数回撮像することによって取得される(第2学習用画像収集ステップ)。異常な状態の搬送ユニット34の画像(第2撮像画像、第2学習用画像)120の例を、図7(A)~図7(C)に示す。
【0109】
図7(A)は、吸引パッド86の位置が不適切な状態の搬送ユニット34を撮像することによって取得される画像120(画像120A)を示す画像図である。前述のように、一対の第2支持板84及び一対の吸引パッド86の間隔は、搬送ユニット34によって保持される対象物のサイズに応じて調節される。しかしながら、搬送ユニット34の誤作動や設定ミス等が原因で、複数の吸引パッド86が本来配置されるべき位置とは異なる位置に配置されることがある。この状態の搬送ユニット34を撮像すると、吸引パッド86が画像110A(図6(A)参照)とは異なる位置に示された画像120Aが取得される。
【0110】
図7(B)は、吸引パッド86が欠損した状態の搬送ユニット34を撮像することによって取得される画像120(画像120B)を示す画像図である。搬送ユニット34による対象物の保持を繰り返すと、何らかの原因で吸引パッド86が脱落して欠損することがある。この状態の搬送ユニット34を撮像すると、吸引パッド86が欠損した搬送ユニット34を示す画像120Bが取得される。
【0111】
図7(C)は、吸引パッド86に個片88が付着した状態の搬送ユニット34を撮像することによって取得される画像120(画像120C)を示す画像図である。搬送ユニット34による対象物の保持を繰り返すと、何らかの原因で対象物の一部である個片88が吸引パッド86から離れずに付着することがある。この状態の搬送ユニット34を撮像すると、個片88が付着した搬送ユニット34を示す画像120Cが取得される。
【0112】
上記のように、第2学習用画像収集ステップでは、異常な状態の搬送ユニット34を複数回撮像する。これにより、図7(A)~図7(C)に示すような、異常な状態の搬送ユニット34を示す複数の異なる画像120(例えば1000枚以上)が取得される。なお、第2学習用画像収集ステップでは、第1学習用画像収集ステップと同様、撮像条件を変えつつ搬送ユニット34を撮像ユニット58によって複数回撮像してもよい。そして、複数の画像120は、異常な搬送ユニット34の画像として分類(ラベリング)され、第2学習用画像として所定のデータベースに記憶される。
【0113】
第1学習用画像収集ステップで取得された複数の画像110は、正常な状態の搬送ユニット34の画像に分類された第1学習用画像に相当する。また、第2学習用画像収集ステップで取得された複数の画像120は、異常な状態の搬送ユニット34の画像に分類された第2学習用画像に相当する。すなわち、画像収集ステップS1を実施することにより、搬送ユニット34の状態によって分類された複数の学習用画像が収集される。
【0114】
なお、上記では撮像ユニット58で搬送ユニット34を撮像することによって学習用画像を取得する場合について説明したが、学習用画像の収集方法に制限はない。例えば、撮像ユニット58とは別途設けられた他の撮像ユニットで搬送ユニット34を撮像することにより、学習用画像を収集してもよい。また、画像110,120に所定の画像処理を施すことにより、新たな学習用画像を生成してもよい。さらに、切削装置2の製造者は、切削装置2を使用者から搬送ユニット34の画像を提供してもらうことによって学習用画像を収集してもよい。
【0115】
次に、画像収集ステップS1で収集された学習用画像を用いた機械学習によって、搬送ユニット34の画像が入力されると搬送ユニット34の状態を示す判定結果を出力する学習済みモデル100を生成する(学習ステップS2)。図8は、機械学習によって生成される学習済みモデル100を示すブロック図である。
【0116】
学習ステップS2では、学習用画像と、学習用画像の分類結果(搬送ユニット34の状態)とを教師データとして用いた教師あり学習が行われる。具体的には、画像110,120が画像データとして、搬送ユニット34の状態(正常・異常)が正解ラベルとして、それぞれニューラルネットワークNNに入力される。
【0117】
そして、ニューラルネットワークNNの出力と正解ラベルとの誤差が小さくなるように、ニューラルネットワークNNのパラメータ(ニューロンの重み及びバイアス等)が更新される。これにより、ニューラルネットワークNNは、入力層102に搬送ユニット34の画像が入力されると出力層104から搬送ユニット34の状態の判定結果を出力するように再構成される。学習のアルゴリズムとしては、例えば誤差逆伝播法を用いることができる。なお、ニューラルネットワークNNとしてCNNが用いられる場合には、画像110,120と搬送ユニット34の状態とを教師データとして用いた学習によって、畳み込み層のフィルタ値、全結合層のニューロンの重み及びバイアス等が更新される。
【0118】
上記のように、搬送ユニット34の画像に基づいて搬送ユニット34の状態を判定可能なニューラルネットワークNNが生成される。そして、学習済みのニューラルネットワークNNが切削装置2のコントローラ66(図4参照)に記憶される。これにより、学習済みモデル100を搭載した切削装置2が得られる。
【0119】
ニューラルネットワークNNの学習のための演算は、コントローラ66によって実行されてもよいし、切削装置2の外部に設けられた大規模で高性能な計算機によって実行されてもよい。後者の場合には、切削装置2の外部で生成された学習済みのニューラルネットワークNN(又は学習済みのニューラルネットワークNNのパラメータ)が、コントローラ66に入力され、記憶される。
【0120】
なお、上記では学習済みモデル100が搬送ユニット34の状態を2段階(正常又は異常)で判定する場合について説明したが(図4参照)、学習済みモデル100の判定内容はこれに限定されない。例えば学習済みモデル100は、搬送ユニット34の状態を3段階以上で判定してもよい。
【0121】
また、学習済みモデル100は、搬送ユニット34の状態を、異常の種類(異常の部位、内容等)ごとに分類してもよい。この場合には、学習済みモデル100の出力層104に、搬送ユニット34が正常である確率を出力する1のニューロンと、搬送ユニット34が異常である確率を異常の種類ごとに出力する複数のニューロンとが設定される。これにより、搬送ユニット34の異常をより詳細に判定することが可能になる。
【0122】
また、コントローラ66の判定部92(図4参照)は、複数の学習済みモデル100を含んでいてもよい。この場合には、複数の学習済みモデル100に同一の画像90が入力されてもよいし、異なる画像90が入力されてもよい。
【0123】
例えば、異なる種類の異常の判定に特化した複数の学習済みモデル100が判定部92に搭載される。この場合には、1枚の画像90が複数の学習済みモデル100にそれぞれ入力され、複数の学習済みモデル100によって搬送ユニット34の状態が異常の種類ごとに判定される。また、撮像条件(搬送ユニット34の位置、角度、撮像ユニット58の撮像領域、倍率等)が異なる複数の種類の画像90が取得される場合には、画像90の種類ごとに学習済みモデル100が設けられてもよい。
【0124】
さらに、上記では搬送ユニット34の状態が判定される場合について説明したが、コントローラ66の判定部92(図4参照)は、切削装置2を構成する構成要素(基台4~洗浄ユニット50等)のうち搬送ユニット34以外の構成要素の状態を判定することもできる。この場合には、搬送ユニット34以外の所定の構成要素を撮像する撮像ユニットが切削装置2に搭載されるとともに、所定の構成要素の状態を判定する学習済みモデルが判定部92に搭載される。そして、学習済みモデルは、撮像ユニットによって取得された所定の構成要素の画像に基づいて、所定の構成要素の状態を判定する。なお、判定部92には、それぞれ異なる構成要素の状態を判定する複数の学習済みモデルが搭載されてもよい。
【0125】
以上の通り、本実施形態に係る切削装置2は、切削装置2の構成要素の画像が入力されると構成要素の状態を示す判定結果を出力するように機械学習によって構成された学習済みモデル100を備える。これにより、複雑な画像処理を行うことなく様々な構成要素の画像から特徴を適切に抽出し、構成要素の状態を簡易且つ高精度に判定することが可能になる。
【0126】
なお、上記実施形態では学習済みモデル100が搭載された切削装置2について説明したが、本発明に係る学習済みモデルは切削装置以外の加工装置に搭載することもできる。本発明に係る学習済みモデルを搭載可能な他の加工装置の例としては、研削装置、研磨装置、レーザー加工装置、プラズマ処理装置等が挙げられる。
【0127】
研削装置は、対象物(被加工物)を研削する処理ユニット(研削ユニット)を備える。研削ユニットはスピンドルを備えており、スピンドルの先端部には複数の研削砥石を含む環状の研削ホイールが装着される。研削ホイールを回転させつつ研削砥石を対象物に接触させることにより、対象物が研削される。
【0128】
研磨装置は、対象物(被加工物)を研磨する処理ユニット(研磨ユニット)を備える。研磨ユニットはスピンドルを備えており、スピンドルの先端部には円盤状の研磨パッドが装着される。研磨パッドを回転させつつ対象物に接触させることにより、対象物が研磨される。
【0129】
レーザー加工装置は、対象物(被加工物)にレーザー加工を施す処理ユニット(レーザー照射ユニット)を備える。例えばレーザー照射ユニットは、レーザー発振器と、レーザー発振器から出射したレーザービームを集光させる集光器とを備える。レーザー照射ユニットから照射されたレーザービームを対象物の表面、裏面又は内部で集光させることにより、対象物にレーザー加工が施される。
【0130】
プラズマ処理装置は、対象物(被加工物)にプラズマ状態のガスを供給する処理ユニット(ガス供給ユニット)を備える。ガス供給ユニットから対象物にプラズマ状態のガスを供給することにより、対象物に対してプラズマエッチングや成膜処理等のプラズマ処理が施される。
【0131】
また、本発明に係る学習済みモデルは、上記の加工装置以外の処理装置に搭載することもできる。他の処理装置の例としては、対象物(被洗浄物)を洗浄する洗浄装置、対象物(被検査物)を検査する検査装置、対象物にシートを貼着するシート貼着装置、対象物に貼着されたシートを拡張して対象物に外力を付与するシート拡張装置等が挙げられる。
【0132】
上記のような各種の処理装置は、複数の構成要素(保持テーブル、搬送ユニット、処理ユニット等)によって構成される。そして、処理装置に、所定の構成要素を撮像する撮像ユニットと、撮像ユニットによって取得された構成要素の画像に基づいて構成要素の状態を判定する1又は複数の学習済みモデルが搭載される。
【0133】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0134】
11 対象物(被処理物)
11a 表面(第1面)
11b 裏面(第2面)
13 ストリート(分割予定ライン)
15 デバイス
17 フレーム
17a 開口
19 シート
2 切削装置
4 基台
4a,4b,4c 開口
6 カセット支持台
8 カセット
10 保持テーブル(チャックテーブル)
10a 保持面
12 移動機構
14 テーブルカバー
16 防塵防滴カバー
18 クランプ
20 ガイドレール
22 第1支持構造
24 レール
26 搬送ユニット(搬送機構、搬送装置)
28 移動部(移動機構)
30 保持部(保持機構)
30a 把持部(把持機構)
32 レール
34 搬送ユニット(搬送機構、搬送装置)
36 移動部(移動機構)
38 保持部(保持機構)
40 第2支持構造
42A,42B 移動機構
44A,44B 処理ユニット(加工ユニット、切削ユニット)
46 切削ブレード
48 撮像ユニット
50 洗浄ユニット(洗浄機構、洗浄装置)
52 保持テーブル(スピンナテーブル)
52a 保持面
54 ノズル
56 支持部材
58 撮像ユニット
60 カバー
62 表示ユニット(表示部、表示装置)
64 報知ユニット(報知部、報知装置)
66 コントローラ(制御ユニット、制御部、制御装置)
70 支持部材
72 エアシリンダ
74 シリンダケース
76 ピストンロッド
80 基台
82 第1支持板
84 第2支持板
86 吸引パッド
88 個片
90 画像(撮像画像)
92 判定部
94 記憶部
96 報知制御部
100 学習済みモデル
102 入力層
104 出力層
106 隠れ層(中間層)
108 判定結果処理部
110,110A,110B,110C 画像(第1撮像画像、第1学習用画像)
120,120A,120B,120C 画像(第2撮像画像、第2学習用画像)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8