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特開2024-158114半導体ウェーハの製造方法および半導体デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158114
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】半導体ウェーハの製造方法および半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/26 20060101AFI20241031BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20241031BHJP
   C30B 33/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01L21/26 Q
H01L21/02 B
C30B33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073006
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】312007423
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】早川 兼
(72)【発明者】
【氏名】須藤 治生
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB09
4G077AB10
4G077BA04
4G077CF10
4G077EG03
4G077FE02
4G077FE03
4G077FE13
4G077FG11
4G077HA12
(57)【要約】
【課題】RTA処理の実施によるスリップを抑制する半導体ウェーハの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる半導体ウェーハの製造方法は、RTA処理を行う工程を有し、内側に向かって下方に傾斜する支持面2aを有するウェーハ支持部材2にウェーハを載置した状態でRTA処理を行う半導体ウェーハの製造方法であって、さらに、ウェーハ裏面1aと裏面側ベベル1bとのなす角を鈍角に形成し、RTA処理をする際にこの鈍角の頂部1cが支持面2aに接触するように半導体ウェーハを加工するベベル加工工程を有する。そして、RTA処理の際には、支持面2aとの接触位置において形成されるウェーハ裏面1aと支持面2aとのなす角の角度θ1、および裏面側ベベル1bと支持面2aとのなす角の角度θ2が、それぞれθ1≧5°、θ2≧5°となり、さらに、角度θ1と角度θ2との差分が|θ1-θ2|≦5°となるように、半導体ウェーハ1を生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RTA処理を行う工程を有し、内側に向かって下方に傾斜する支持面を有するウェーハ支持部材にウェーハを載置した状態でRTA処理を行う半導体ウェーハの製造方法であって、
ウェーハ裏面と裏面側ベベルとのなす角を鈍角に形成し、RTA処理をする際に前記鈍角の頂部が前記支持面に接触するように半導体ウェーハを加工するベベル加工工程を有し、
RTA処理を行う工程において、前記鈍角の頂部と前記支持面との接触位置において形成される前記ウェーハ裏面と前記支持面とのなす角の角度θ1、および前記裏面側ベベルと前記支持面とのなす角の角度θ2を、それぞれθ1≧5°、θ2≧5°とし、さらに、角度θ1と角度θ2との差分を|θ1-θ2|≦5°とする、
ことを特徴とする半導体ウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記ベベル加工工程において、前記接触位置における半導体ウェーハの表面粗さを5.0nm≦Ra≦30.0nmとする、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記ベベル加工工程において、前記ウェーハ裏面と前記裏面側ベベルとのなす角の角度θ3を157°≦θ3≦167°とする、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項4】
酸化性雰囲気下において1300℃以上1350℃以下の最高到達温度で1s以上60s以下の時間保持し、1000℃以下まで50℃/s以上120℃/s以下の冷却速度で冷却する条件で、前記RTA処理を実施する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項5】
前記RTA処理を行う半導体ウェーハの直径を300mm以上とする、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項6】
角度θ1と角度θ2との差分を|θ1-θ2|=0°とする、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項7】
RTA処理を行う工程を有し、内側に向かって下方に傾斜する支持面を有する半導体ウェーハ支持部材に半導体ウェーハを載置した状態でRTA処理を行う半導体デバイスの製造方法であって、
前記半導体ウェーハは、ウェーハ裏面と裏面側ベベルとのなす角が鈍角に形成され、RTA処理をする際に前記鈍角の頂部が前記支持面に接触するように加工された半導体ウェーハであり、
RTA処理を行う工程において、前記鈍角の頂部と前記支持面との接触位置において形成される前記ウェーハ裏面と前記支持面とのなす角の角度θ1、および前記裏面側ベベルと前記支持面とのなす角の角度θ2を、それぞれθ1≧5°、θ2≧5°とし、さらに、角度θ1と角度θ2との差分を|θ1-θ2|≦5°とする、
ことを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RTA(Rapid Thermal Annealing)処理を行う工程を有する半導体ウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CZ(チョクラルスキー)法によって育成された半導体単結晶インゴットをスライスして得た半導体ウェーハの表面および表層部には、無数のGrown-in欠陥が存在する。一方で、半導体ウェーハには、表面および表層部がほぼ無欠陥であることが求められるため、従来から、表面および表層部の欠陥を消失させる手法の一つであるRTA処理が行われている。
【0003】
RTAによる急速加熱および急速冷却の熱処理は、半導体ウェーハ表面および表層部の欠陥を消失させるとともに、バルク部にBMD(Bulk Micro Defect)を高密度に形成させる。バルク部のBMDは、半導体デバイス形成工程中に拡散されてデバイス特性に影響を及ぼす金属不純物のゲッタリングサイトとして作用する。
【0004】
たとえば、RTA処理を行う工程を有するシリコンウェーハの製造方法として、下記特許文献1には、シリコンウェーハに対し、酸化雰囲気中において1300℃以上1400℃以下でRTA処理を実施し、点欠陥である空孔をシリコンウェーハのバルク中に多量に残存させることによって、その後の析出熱処理時にBMDを高密度に形成させる方法、が開示されている。
【0005】
また、RTAによる熱処理を実施する前工程として、下記特許文献2、3には、たとえば、チョクラルスキー法により育成されたシリコン単結晶インゴットを内周刃またはワイヤソー等によりウェーハ状にスライスした後、外周部の面取り、ラッピング、エッチング、両面の鏡面研磨等の加工工程を経て、熱処理前のシリコンウェーハを作成すること、が記載されている。
【0006】
また、下記特許文献4、5には、RTA処理の実施によるスリップを抑制するためにウェーハベベルの角度やウェーハ支持部材(サセプタ等)の傾斜角度等を特定する技術が開示されている。
【0007】
また、下記特許文献6には、熱処理中にウェーハ裏面を支持する支持部材の支持面を凸曲面状に形成することによって、スリップだけでなくウェーハ裏面や面取り部のキズの発生も防ぐことができる熱処理用治具、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-204326号公報
【特許文献2】特開2022-050071号公報
【特許文献3】特開2013-201314号公報
【特許文献4】特開2007-036105号公報
【特許文献5】特開2006‐19625号公報
【特許文献6】特開2006-5271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に記載のとおり、半導体ウェーハの表面・表層欠陥の消失およびバルク部のBMD形成には、1300℃以上のRTA処理の実施が望ましいが、RTA処理を実施すると、ウェーハ面内の温度差および半導体ウェーハの自重を原動力とする応力によりスリップが発生する。特に、ウェーハ支持部材が半導体ウェーハを裏面外周側から支持するエッジリングであった場合には、半導体ウェーハとウェーハ支持部材との接触位置において、ウェーハ自重による応力と、半導体ウェーハとウェーハ支持部材との温度差による熱応力が、同時に発生するため、ウェーハ外周でスリップが発生しやすくなる。
【0010】
さらに、上記特許文献2、3に記載のように、熱処理前に半導体ウェーハ(特にウェーハ裏面および裏面側ベベル)が鏡面研磨されていると、RTA処理の実施時に半導体ウェーハとウェーハ支持部材との接触面積が増大するため、溶着起因のスリップが発生しやすくなる。
【0011】
上述したようなスリップは、デバイス不良の原因となるため、スリップを抑制できる熱処理が求められている。
【0012】
一方、上記特許文献4、5には、RTA処理の実施によるスリップを抑制するためにウェーハベベルの角度やウェーハ支持部材の傾斜角度等を特定する技術が記載され、上記特許文献6には、熱処理中にウェーハ裏面を支持するウェーハ支持部材の支持面を凸曲面状に形成することが記載されているが、冷却時において、ウェーハ接触領域(ウェーハ裏面側と裏面側ベベル側)における放熱の影響が考慮されていないので、熱応力によるスリップを抑制する観点でさらなる改善の余地がある。
【0013】
また、半導体ウェーハに限らず、半導体ウェーハから半導体デバイスを製造する工程においても、RTA処理の実施によるスリップを抑制する方法が求められている。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、RTA処理の実施によるスリップを抑制する半導体ウェーハの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、RTA処理の実施によるスリップを抑制する半導体デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明にかかる半導体ウェーハの製造方法は、RTA処理を行う工程を有し、内側に向かって下方に傾斜する支持面を有するウェーハ支持部材にウェーハを載置した状態でRTA処理を行う半導体ウェーハの製造方法であって、ウェーハ裏面と裏面側ベベルとのなす角を鈍角に形成し、RTA処理をする際にこの鈍角の頂部が前記支持面に接触するように半導体ウェーハを加工するベベル加工工程を有し、RTA処理を行う工程において、前記鈍角の頂部と前記支持面との接触位置において形成される前記ウェーハ裏面と前記支持面とのなす角の角度θ1、および前記裏面側ベベルと前記支持面とのなす角の角度θ2を、それぞれθ1≧5°、θ2≧5°とし、さらに、角度θ1と角度θ2との差分を|θ1-θ2|≦5°とすることを特徴とする。
【0016】
本発明にかかる半導体ウェーハの製造方法によれば、金属不純物に対するゲッタリング特性を確保できる1300℃以上でのRTA処理を行う場合であっても、半導体ウェーハとウェーハ支持部材との接触部分から生じるスリップを低減することができる。
【0017】
また、本発明にかかる半導体ウェーハの製造方法においては、上記接触する位置における半導体ウェーハの表面粗さを5.0nm≦Ra≦30.0nmとすることが望ましく、さらに、ウェーハ裏面と裏面側ベベルとのなす角の角度θ3を157°≦θ3≦167°とすることが望ましい。
【0018】
また、本発明にかかる半導体ウェーハの製造方法では、酸化性雰囲気下において1300℃以上1350℃以下の最高到達温度で1s以上60s以下の時間保持し、1000℃以下まで50℃/s以上120℃/s以下の冷却速度で冷却する条件で、RTA処理を実施することが望ましい。また、本発明にかかる半導体ウェーハの製造方法においては、RTA処理を行う半導体ウェーハの直径を300mm以上とすることが望ましい。また、本発明にかかる半導体ウェーハの製造方法においては、角度θ1と角度θ2との差分を|θ1-θ2|=0°とすることが望ましい。
【0019】
本発明にかかる半導体デバイスの製造方法は、RTA処理を行う工程を有し、内側に向かって下方に傾斜する支持面を有する半導体ウェーハ支持部材に半導体ウェーハを載置した状態でRTA処理を行う半導体デバイスの製造方法であって、前記半導体ウェーハは、ウェーハ裏面と裏面側ベベルとのなす角が鈍角に形成され、RTA処理をする際に前記鈍角の頂部が前記支持面に接触するように加工された半導体ウェーハであり、RTA処理を行う工程において、前記鈍角の頂部と前記支持面との接触位置において形成される前記ウェーハ裏面と前記支持面とのなす角の角度θ1、および前記裏面側ベベルと前記支持面とのなす角の角度θ2を、それぞれθ1≧5°、θ2≧5°とし、さらに、角度θ1と角度θ2との差分を|θ1-θ2|≦5°とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる半導体ウェーハの製造方法または半導体デバイスの製造方法によれば、RTA処理の実施によるスリップを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明にかかる半導体ウェーハの製造方法を模式的に示す断面図である。
図2図2は、RTP装置の構成例を示す模式図である。
図3図3は、スリップ発生要因の一例を示す図である。
図4図4は、スリップ発生要因の一例を示す図である。
図5図5は、実施例および比較例1~3の方法で生成した各シリコンウェーハのSIRDによる歪面積率の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明にかかる半導体ウェーハの製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0023】
<製造方法>
図1は、本実施形態の半導体ウェーハ(単にウェーハと呼ぶ場合がある)の製造方法を模式的に示す断面図である。本実施形態の半導体ウェーハの製造方法は、RTA処理を行う工程を有し、内側に向かって下方に傾斜する支持面2aを有するウェーハ支持部材2に半導体ウェーハ1を載置した状態でRTA処理を行う半導体ウェーハの製造方法である。さらに、本実施形態の半導体ウェーハの製造方法は、ウェーハ裏面1aと裏面側ベベル1bとのなす角を鈍角に形成し、RTA処理を実施する際にこの鈍角の頂部1cが支持面2aに接触するようにウェーハを加工するベベル加工工程を有する。そして、RTA処理の際には、支持面2aとの接触位置において形成されるウェーハ裏面1aと支持面2aとのなす角の角度θ1、および裏面側ベベル1bと支持面2aとのなす角の角度θ2が、それぞれθ1≧5°、θ2≧5°となり、さらに、角度θ1と角度θ2との差分が|θ1-θ2|≦5°となるように、半導体ウェーハ1を生成する。
【0024】
また、本実施形態の半導体ウェーハの製造方法では、酸化性雰囲気下において1250℃以上(好ましくは1300℃以上1350℃以下)の最高到達温度で1s以上60s以下の時間保持し、1000℃以下まで50℃/s以上120℃/s以下の冷却速度で冷却する条件で、RTA処理を実施する。これにより、金属不純物に対する十分なゲッタリング特性を有する半導体ウェーハを製造することができる。
【0025】
本実施形態においては、金属不純物に対するゲッタリング特性を確保できる1300℃以上でのRTA処理を行う場合であっても、半導体ウェーハ1とウェーハ支持部材2との接触部分から生じるスリップを低減することができる半導体ウェーハの製造方法を提案する。
【0026】
<RTA処理>
ここで、半導体ウェーハ1を製造する工程におけるRTA処理について説明する。本実施形態において使用されるRTP(Rapid Thermal Process)装置10は、たとえば、図2に示すように、雰囲気ガス導入口20aおよび雰囲気ガス排出口20bを備えたチャンバ(反応管)20と、チャンバ20の上部に離間して配置された複数のランプ30と、チャンバ20内の反応空間25で半導体ウェーハ1を支持するウェーハ支持部40とを備える。
【0027】
ウェーハ支持部40は、半導体ウェーハ1の外周部を支持する環状のウェーハ支持部材40a(上述したウェーハ支持部材2に相当)と、ウェーハ支持部材40aを支持するステージ40bとを備える。また、ウェーハ支持部40は、半導体ウェーハ1をその中心軸周りに所定速度で回転させる回転手段(図示せず)を備えている。
【0028】
図2に示すRTP装置10を用いて半導体ウェーハ1に対しRTA処理を行う場合は、チャンバ20に設けられたウェーハ導入口(図示せず)より、半導体ウェーハ1を反応空間25内に導入し、ウェーハ支持部材40a上に半導体ウェーハ1を載置する。そして、雰囲気ガス導入口20aから雰囲気ガスを導入するとともに、回転手段により半導体ウェーハ1を回転させながら、ランプ30によりウェーハ表面に対してランプ照射を行う。
【0029】
このRTP装置10における反応空間25内の温度制御は、ステージ40bに埋め込まれた複数の放射温度計50によって半導体ウェーハ1下部のウェーハ径方向におけるウェーハ面内多点の温度を測定し、その測定された温度に基づいて複数のランプ30を制御(各ランプの個別のON-OFF制御や、発光する光の発光強度の制御等)することにより行う。
【0030】
<製造方法の詳細>
つづいて、本実施形態の半導体ウェーハの製造方法を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
本実施形態の半導体ウェーハの製造方法においては、まず、CZ法で育成された半導体単結晶インゴットを得た後、その半導体単結晶インゴットをワイヤソー等によりウェーハ状にスライス(Slicing)する。そして、スライスにより得られた半導体ウェーハに対し、ベベル(Beveling)加工を行う。その後、ラッピング(Lapping)工程およびグラインダー(Grinding)工程でスライス時に形成された凹凸層を除去し、平坦度と表面粗さを整える。そして、エッチング(Etching)工程によってラッピング工程およびグラインダー工程で導入された加工ダメージを除去する。
【0032】
本実施形態においては、上述した製造工程(Slicing→Beveling→Lapping→Grinding→Etching)によって、図1に示すように、ウェーハ裏面1aと裏面側ベベル1bとのなす角が鈍角に形成された半導体ウェーハ1を生成する。ここでは、一例として、直径:300mm以上の半導体ウェーハ1を生成する。その際、半導体ウェーハ1をウェーハ支持部材2の支持面2a(内側に向かって下方に傾斜する支持面2a)に載置したときに、ウェーハ裏面1aと裏面側ベベル1bとの境界部分(鈍角の頂部1c)が支持面2aに接触するように、半導体ウェーハ1を加工する。具体的には、図1に示すように、接触位置において形成されるウェーハ裏面1aと支持面2aとのなす角の角度θ1および裏面側ベベル1bと支持面2aとのなす角の角度θ2を、それぞれθ1≧5°、θ2≧5°とし、さらに、角度θ1と角度θ2との差分を|θ1-θ2|≦5°とする。
【0033】
角度θ1および角度θ2の調整は、ウェーハ裏面1aと裏面側ベベル1bのなす角の角度θ3をベベル加工工程の際に制御する方法、およびウェーハ支持部材2の支持面2aの角度を調整する方法、によって行う。なお、本実施形態の半導体ウェーハの製造方法においては、上述した製造工程にて生成した半導体ウェーハ1に対してRTA処理を実施した後、ウェーハ表面に対して鏡面研磨を行う。
【0034】
上述したようにRTA処理を実施するための半導体ウェーハ1を生成することにより、半導体ウェーハ1とウェーハ支持部材2との接触面積が最小限に抑えられるため(図1参照)、溶着を起因とするスリップを抑制することができる。さらに、角度θ1と角度θ2を上記のように規定することにより、半導体ウェーハ1とウェーハ支持部材2との接触位置において、ウェーハ裏面1a側と裏面側ベベル1b側で放熱の差異が抑制され(図1参照)、半導体ウェーハ1とウェーハ支持部材2との接触部分において生じる熱応力が抑制されるため、熱応力によるスリップについても最小限に抑えることができる。
【0035】
たとえば、エッチング工程の後に鏡面研磨を行った半導体ウェーハを用いてRTA処理を行った場合には、ウェーハ裏面と裏面側ベベルとの境界部分が滑らかな面状態となり、半導体ウェーハとウェーハ支持部材2との接触面積が増大傾向となるため(図3参照)、1300℃以上のRTA処理において溶着に起因するスリップが発生する。
【0036】
また、角度θ1が0°の場合にはウェーハ支持部材2とウェーハ裏面が密着している状態となるため(図4(a)参照)、また、角度θ2が0°の場合にはウェーハ支持部材2と裏面側ベベルが密着している状態となるため(図4(b)参照)、たとえば、1300℃以上のRTA処理において溶着に起因するスリップが発生する。
【0037】
また、角度θ1および角度θ2の角度が小さすぎると(たとえば、5°未満の場合)、急速冷却時に半導体ウェーハとウェーハ支持部材2との接触部分が放熱されにくくなるため(図4(c)参照)、熱応力によるスリップが発生する。
【0038】
また、角度θ1と角度θ2の差異が大きいと(たとえば、差異が5°を超えた場合)、半導体ウェーハとウェーハ支持部材2との接触位置において、ウェーハ裏面側と裏面側ベベル側で放熱に差異が生じるため(図4(d)参照)、熱応力によるスリップが発生する。
【0039】
すなわち、本実施形態においては、θ1≧5°、θ2≧5°とすることによって、半導体ウェーハ1とウェーハ支持部材2との接触面積を最小限に抑えながら急速冷却時に放熱できる空間を確保し、さらに、|θ1-θ2|≦5°とすることによって、接触部分のウェーハ裏面1a側と裏面側ベベル1b側で放熱の差異を抑える。これにより、急速冷却時に接触部分から生じるスリップを抑制することができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、RTA処理の実施によるスリップをさらに低減するために、上述した製造工程において、半導体ウェーハ1とウェーハ支持部材2との接触位置周辺における半導体ウェーハ1の表面粗さを5.0nm≦Ra≦30.0nmとすることが好ましい。これにより、半導体ウェーハ1とウェーハ支持部材2との接触面積が小さくなり、溶着を起因とするスリップをさらに抑制することができる。Ra<5.0nmの場合には、半導体ウェーハとウェーハ支持部材2の接触面積が大きくなり、溶着起因のスリップが発生しやすくなるため好ましくない。また、Ra>30.0nmの場合には、半導体ウェーハの表面が粗すぎることによってウェーハ接触領域にばらつきが生じ、自重応力によるスリップが発生しやすくなるため好ましくない。
【0041】
また、本実施形態においては、ウェーハ裏面1aと裏面側ベベル1bのなす角の角度θ3を157°≦θ3≦167°とすることが好ましい。これにより、製造中のウェーハ搬送時に生じるウェーハ端面のチッピングや割れの発生を防ぎつつ、半導体ウェーハ1とウェーハ支持部材2との接触面積を小さくすることができるため、溶着に起因するスリップを抑制できる。θ3<157°の場合には、ウェーハ裏面においてウェーハ搬送時のチッピングや割れが発生しやすくなるため好ましくない。また、θ3>167°の場合には、ウェーハ最端面においてウェーハ搬送時のチッピングや割れが発生しやすくなるため好ましくない。
【0042】
また、本実施形態の半導体デバイスの製造方法においては、ウェーハ裏面と裏面側ベベルとのなす角を鈍角に形成し、RTA処理をする際にこの鈍角の頂部がウェーハ支持部材2の支持面2aに接触するように加工された半導体ウェーハ(上述した半導体ウェーハ1)を用いる。また、半導体デバイスの製造工程としては、従来公知の方法を採用することができ、RTA処理を行う工程において、上記鈍角の頂部と支持面2aとの接触位置において形成されるウェーハ裏面と支持面2aとのなす角の角度θ1、および裏面側ベベルと支持面2aとのなす角の角度θ2を、それぞれθ1≧5°、θ2≧5°とし、さらに、角度θ1と角度θ2との差分を|θ1-θ2|≦5°とする。これにより、上述したように半導体ウェーハ1とウェーハ支持部材2との接触面積が最小限に抑えられるため、半導体デバイスの製造方法においても、溶着を起因とするスリップを抑制することができる。さらに、角度θ1と角度θ2を上記のように規定することにより、半導体ウェーハ1とウェーハ支持部材2との接触位置において、ウェーハ裏面側と裏面側ベベル側で放熱の差異が抑制され、半導体ウェーハ1とウェーハ支持部材2との接触部分において生じる熱応力が抑制されるため、熱応力によるスリップについても最小限に抑えることができる。
【実施例0043】
つづいて、本発明にかかる半導体ウェーハの製造方法を、実施例に基づいてさらに説明する。なお、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
【0044】
<実施例>
酸素濃度:1.0×1018/cm3のシリコン単結晶インゴットをスライスすることにより得られたシリコンウェーハに対して、上述した本実施形態の製造工程(Beveling→Lapping→Grinding→Etching)を実施し、Ra=20nm、かつθ3=160°となるように、直径300mmの第1のシリコンウェーハ(上述した半導体ウェーハ1に相当:図1参照)を10枚生成した。そして、内側に向かって下方に10°傾斜する支持面を有するウェーハ支持部材を有するRTP装置を用い、その支持面に対してθ1=10°、θ2=10°、|θ1-θ2|=0°となるように第1のシリコンウェーハを載置し、下記のRTA処理を実施してシリコンウェーハを生成した(図1参照)。
<RTA処理条件>
酸化性雰囲気下において1350℃の最高到達温度で30s保持し、1000℃以下まで120℃/sの冷却速度で冷却する条件でRTA処理を実施した。
【0045】
<比較例1>
酸素濃度:1.0×1018/cm3のシリコン単結晶インゴットをスライスすることにより得られたシリコンウェーハに対して、比較例1の製造工程(Beveling→Lapping→Grinding→Etching)を実施し、Ra=20nm、かつθ3=170°となるように、直径300mmの第2のシリコンウェーハ(図4(b)参照)を10枚生成した。そして、実施例と同じRTP装置を用い、ウェーハ支持部材の支持面に対してθ1=10°、θ2=0°、|θ1-θ2|=10°となるように第2のシリコンウェーハを載置し、実施例と同じ条件でRTA処理を実施してシリコンウェーハを生成した(図4(b)参照)。
【0046】
<比較例2>
酸素濃度:1.0×1018/cm3のシリコン単結晶インゴットをスライスすることにより得られたシリコンウェーハに対して、比較例2の製造工程(Beveling→Lapping→Grinding→Etching)を実施し、Ra=20nm、かつθ3=150°となるように、直径300mmの第3のシリコンウェーハ(図4(d)参照)を10枚生成した。そして、実施例と同じRTP装置を用い、ウェーハ支持部材の支持面に対してθ1=10°、θ2=20°、|θ1-θ2|=10°となるように第3のシリコンウェーハを載置し、実施例と同じ条件でRTA処理を実施してシリコンウェーハを生成した(図4(d)参照)。
【0047】
<比較例3>
酸素濃度:1.0×1018/cm3のシリコン単結晶インゴットをスライスすることにより得られたシリコンウェーハに対して、従来の製造工程(Beveling→Lapping→Grinding→Etching→鏡面研磨)を実施し、直径300mmの第4のシリコンウェーハ(Ra=5nm、鏡面研磨前の状態でウェーハ支持部材の支持面に対してθ1=10°、θ2=5°、|θ1-θ2|=5°、θ3=165°、図3参照)を10枚生成した。そして、実施例と同じRTP装置を用い、ウェーハ支持部材の支持面に対して第4のシリコンウェーハを載置し、実施例と同じ条件でRTA処理を実施してシリコンウェーハを生成した(図3参照)。
【0048】
<評価方法>
実施例および比較例1~3の方法で生成したシリコンウェーハに対して、SIRD(Scanning Infrared Depolarization)による測定を行い、スリップと歪面積率を評価した。すなわち、シリコンウェーハ全体の面積に対するスリップにより歪み応力が増加した面積の割合(歪面積率)を算出し、評価した。たとえば、歪面積率が大きいほどスリップ品質が悪く、歪面積率が小さいほどスリップ品質が良好となる。
【0049】
図5は、実施例および比較例1~3の方法で生成した各シリコンウェーハのSIRDによる歪面積率の測定結果を示す図である。比較例1の方法で生成したシリコンウェーハは、平均歪面積率が9.7×10-4で、ウェーハ支持部材との溶着に起因するスリップが発生していた。また、比較例2の方法で生成したシリコンウェーハは、平均歪面積率が5.5×10-4で、熱応力によるスリップが発生していた。また、比較例3の方法で生成したシリコンウェーハは、最も平均歪面積率が大きく(7.5×10-3)、ウェーハ支持部材との溶着に起因するスリップおよび熱応力によるスリップが発生していた。
【0050】
一方で、上述したシリコンウェーハ1(図1参照)に相当する実施例のシリコンウェーハは、最も平均歪面積率が小さく(4.1×10-5)、スリップが最も抑えられていることがわかった。さらに、比較例3のシリコンウェーハと比較して外周部の歪面積率が約99%低下していることが確認された。
【符号の説明】
【0051】
1 半導体ウェーハ
1a ウェーハ裏面
1b 裏面側ベベル
1c 頂部
2 ウェーハ支持部材
2a 支持面
10 RTP装置
20 チャンバ(反応管)
20a 雰囲気ガス導入口
20b 雰囲気ガス排出口
25 反応空間
30 ランプ
40 ウェーハ支持部
40a ウェーハ支持部材
40b ステージ
50 放射温度計
図1
図2
図3
図4
図5