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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158166
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】食品用組成物及び食品用乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20241031BHJP
   A23L 29/244 20160101ALI20241031BHJP
   A23L 29/219 20160101ALI20241031BHJP
   A23J 3/00 20060101ALI20241031BHJP
   A23L 11/00 20210101ALI20241031BHJP
   A23L 17/00 20160101ALN20241031BHJP
【FI】
A23L5/00 N
A23L29/244
A23L29/219
A23J3/00 508
A23L11/00 Z
A23L17/00 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073133
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】松浦 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 俊介
(72)【発明者】
【氏名】駒井 彩
【テーマコード(参考)】
4B020
4B025
4B034
4B035
4B041
【Fターム(参考)】
4B020LB27
4B020LC04
4B020LG04
4B020LK01
4B020LK04
4B020LK05
4B020LK12
4B020LK20
4B020LP06
4B020LP15
4B020LP19
4B025LD03
4B025LG14
4B025LG18
4B025LG32
4B025LG42
4B025LG43
4B034LC05
4B034LC06
4B034LK02X
4B034LK10X
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4B034LK17X
4B034LK20X
4B034LK25X
4B034LK26X
4B034LK29X
4B034LK37X
4B034LK38X
4B034LP01
4B034LP11
4B034LP15
4B034LP20
4B035LG01
4B035LG08
4B035LG12
4B035LG15
4B035LG21
4B035LG24
4B035LG33
4B035LG35
4B035LP01
4B035LP02
4B035LP21
4B035LP24
4B035LP31
4B035LP32
4B035LP43
4B035LP55
4B035LP59
4B041LC10
4B041LD10
4B041LH02
4B041LH08
4B041LK03
4B041LK14
4B041LK18
4B041LK25
4B041LK26
4B041LK28
(57)【要約】
【課題】 卵白代替品として使用できる素材を提供する。具体的には、食品に結着性や弾力性を付与できる素材を提供する。
【解決手段】 マンナン、タンパク質、及び加工澱粉を含有する食品用組成物であって、加工澱粉が油脂加工澱粉及び架橋澱粉からなる群から選択される少なくとも1種である、食品用組成物。マンナン、タンパク質、加工澱粉、食用油脂、及び水を含有する食品用乳化組成物であって、加工澱粉が油脂加工澱粉及び架橋澱粉からなる群から選択される少なくとも1種である、食品用乳化組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンナン、タンパク質、及び加工澱粉を含有する食品用組成物であって、
前記加工澱粉が油脂加工澱粉及び架橋澱粉からなる群から選択される少なくとも1種である、食品用組成物。
【請求項2】
さらに以下の成分(A)を含有する請求項1に記載の食品用組成物。
成分(A):以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が50質量%以上100質量%以下
【請求項3】
前記マンナンの含有量が、前記加工澱粉の含有量に対して、質量比で0.01以上5以下である、請求項1又は2に記載の食品用組成物。
【請求項4】
前記マンナンの含有量が、1質量%以上50質量%以下である、請求項1又は2に記載の食品用組成物。
【請求項5】
卵白代替として用いられる、請求項1又は2に記載の食品用組成物。
【請求項6】
食品に結着性を付与するために用いられる、請求項1又は2に記載の食品用組成物。
【請求項7】
食品に弾力性を付与するために用いられる、請求項1又は2に記載の食品用組成物。
【請求項8】
マンナン、タンパク質、加工澱粉、食用油脂、及び水を含有する食品用乳化組成物であって、
前記加工澱粉が油脂加工澱粉及び架橋澱粉からなる群から選択される少なくとも1種である、食品用乳化組成物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の食品用組成物を含む食品。
【請求項10】
マンナン、タンパク質、加工澱粉、食用油脂、及び水を含有する食品用乳化組成物の製造方法であって、
前記加工澱粉が油脂加工澱粉及び架橋澱粉からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記マンナン、前記タンパク質、前記加工澱粉、前記食用油脂、及び前記水を混合して乳化させる工程を含む、食品用乳化組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法により食品用乳化組成物を得る工程と、
前記食品用乳化組成物と食材を混合する工程を含む、食品の製造方法。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の食品用組成物を食品に配合させることを特徴とする、食品に結着性を付与する方法。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の食品用組成物を食品に配合させることを特徴とする、食品に弾力性を付与する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用組成物、食品用乳化組成物、食品、食品用乳化組成物の製造方法、食品の製造方法、食品に結着性を付与する方法、並びに食品に弾力性を付与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な加工食品において、食品の食感や品質等を改良する目的で、卵白が幅広く使用されている。中でも、畜肉加工食品や水産加工食品では、食品に弾力性を付与させ食感を改良する目的や、食材同士を結着させる目的等で卵白が一般的に使用されている。
【0003】
しかしながら、近年、卵の価格高騰及び供給不安定や、卵はアレルゲン原料のため摂取できる人が制限されるという課題がある。また、近年、人々の健康に対する関心や環境問題に対する関心の高まり等により、動物性食品を摂取しないビーガン食が普及し始めている。ビーガン食は主に大豆を主成分とするタンパク素材が使用されており、タンパク素材同士を結着させることが商品設計上重要であるが、卵白は動物由来原料であるため、ビーガン食を製造する際に使用できないという課題もある。そこで、卵白代替品について種々検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、膨潤抑制澱粉及び小麦蛋白を麺類に添加した場合に、麺類に卵白様の食感を付与でき、卵白代替品として使用できることが開示されている。また、特許文献2には、熱凝固性タンパク質及び澱粉を含む凝固卵白様組成物を、ゆで卵の卵白部の様な食感を有する凝固卵白代替品として使用できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-67336号公報
【特許文献2】特開2004-147536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、卵白代替品として使用できる素材を提供するものである。具体的には、食品に結着性や弾力性を付与できる素材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、マンナン、タンパク質、及び所定の加工澱粉を含有することにより、卵白代替品として使用できること、具体的には食品に結着性や弾力性を付与できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明によれば、食品用組成物、食品用乳化組成物、食品、食品用乳化組成物の製造方法、食品の製造方法、食品に結着性を付与する方法、並びに食品に弾力性を付与する方法が提供される。
[1] マンナン、タンパク質、及び加工澱粉を含有する食品用組成物であって、
前記加工澱粉が油脂加工澱粉及び架橋澱粉からなる群から選択される少なくとも1種である、食品用組成物。
[2] さらに以下の成分(A)を含有する[1]に記載の食品用組成物。
成分(A):以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が50質量%以上100質量%以下
[3] 前記マンナンの含有量が、前記加工澱粉の含有量に対して、質量比で0.01以上5以下である、[1]又は[2]に記載の食品用組成物。
[4] 前記マンナンの含有量が、1質量%以上50質量%以下である、[1]~[3]に記載の食品用組成物。
[5] 卵白代替として用いられる、[1]~[4]に記載の食品用組成物。
[6] 食品に結着性を付与するために用いられる、[1]~[5]に記載の食品用組成物。
[7] 食品に弾力性を付与するために用いられる、[1]~[6]に記載の食品用組成物。
[8] マンナン、タンパク質、加工澱粉、食用油脂、及び水を含有する食品用乳化組成物であって、
前記加工澱粉が油脂加工澱粉及び架橋澱粉からなる群から選択される少なくとも1種である、食品用乳化組成物。
[9] [1]~[7]に記載の食品用組成物、若しくは[8]に記載の食品用乳化組成物を含む食品。
[10] マンナン、タンパク質、加工澱粉、食用油脂、及び水を含有する食品用乳化組成物の製造方法であって、
前記加工澱粉が油脂加工澱粉及び架橋澱粉からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記マンナン、前記タンパク質、前記加工澱粉、前記食用油脂、及び前記水を混合して乳化させる工程を含む、食品用乳化組成物の製造方法。
[11] [10]に記載の製造方法により食品用乳化組成物を得る工程と、
前記食品用乳化組成物と食材を混合する工程を含む、食品の製造方法。
[12] [1]~[7]に記載の食品用組成物、若しくは[8]に記載の食品用乳化組成物を食品に配合させることを特徴とする、食品に結着性を付与する方法。
[13] [1]~[7]に記載の食品用組成物、若しくは[8]に記載の食品用乳化組成物を食品に配合させることを特徴とする、食品に弾力性を付与する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、卵白代替品として使用できる素材を提供することができる。具体的には、食品に結着性や弾力性を付与できる素材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、数値範囲の「~」は、断りがなければ、以上から以下を表し、両端の数値をいずれも含む。また、本明細書において数値範囲の上限値及び下限値を示したときは、上限値及び下限値を適宜組み合わせることができ、それにより得られた数値範囲も開示しているものとする。
【0011】
[1.食品用組成物及びその製造方法]
本実施形態における食品用組成物は、マンナン、タンパク質、及び加工澱粉を含有する。食品用組成物は、粉粒状であることが好ましい。粉粒状とは、粉状または粒状であることをいう。以下、各成分について説明する。
【0012】
(マンナン)
本実施形態におけるマンナンとは、マンノースを主な構成成分とする多糖類である。グルコースとマンノースから構成されるグルコマンナン、ガラクトースとマンノースから構成されるガラクトマンナン、ツクネイモマンナンやヤマイモマンナン等の植物由来のマンナン等が例示される。食品に結着性や弾力性を付与する観点から、マンナンは、好ましくはグルコマンナンであり、より好ましくはこんにゃく芋由来グルコマンナンである。
【0013】
食品用組成物中のマンナンの含有量は、食品に結着性や弾力性を付与する観点から、後述の加工澱粉の含有量に対して、質量比で好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.08以上であり、さらにより好ましくは0.1以上であり、より一層好ましくは0.12以上である。また、同様の観点から、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下であり、さらに好ましくは1以下であり、さらにより好ましくは0.5以下であり、より一層好ましくは0.3以下である。
【0014】
食品用組成物中のマンナンの含有量は、食品に結着性や弾力性を付与する観点から、食品用組成物全体に対して、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上であり、さらにより好ましくは6質量%以上であり、より一層好ましくは7質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下であり、さらにより好ましくは15質量%以下であり、より一層好ましくは10質量%以下である。
【0015】
(タンパク質)
本実施形態におけるタンパク質は、卵タンパク質以外のタンパク質であり、例えば植物タンパク質や動物タンパク質等が挙げられる。植物タンパク質としては、グルテン等の小麦タンパク質、大豆タンパク質、とうもろこしタンパク質、エンドウタンパク質、コメタンパク質、ソラマメタンパク質、ヒヨコマメタンパク質、リョクトウタンパク質、チアシードタンパク質等が挙げられる。動物タンパク質としては、ホエータンパク質やカゼイン等の乳タンパク質、血漿タンパク質や血球タンパク質等の血液タンパク質、食肉タンパク質や魚肉タンパク質等の筋肉タンパク質、ゼラチン、コラーゲン等が挙げられる。本実施形態におけるタンパク質は、ビーガン食として使用する観点及び食品に結着性や弾力性を付与する観点から、好ましくは植物タンパク質であり、より好ましくは大豆タンパク質、エンドウタンパク質及び小麦タンパク質からなる群から選択される1種又は2種以上であり、さらに好ましくは大豆タンパク質である。
【0016】
本実施形態におけるタンパク質は、前述のタンパク質そのものとして食品用組成物に配合されてもよいし、豆乳、大豆粉、豆腐、牛乳、生クリーム、脱脂粉乳等のタンパク質を含む成分(以下、「タンパク質含有素材)とも言う)の形態で食品用組成物に配合されてもよい。
【0017】
食品用組成物中のタンパク質の含有量は、食品に結着性や弾力性を付与する観点から、食品用組成物全体に対して、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらにより好ましくは6質量%以上、より一層好ましくは8質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下であり、さらにより好ましくは40質量%以下であり、より一層好ましくは35質量%以下である。なお、タンパク質含有素材として配合される場合には、前述のタンパク質の含有量は、タンパク質量換算の値である。また、後述の油脂加工澱粉にタンパク質が含まれる場合、油脂加工澱粉中のタンパク質は上記タンパク質の含有量には含まない。
【0018】
(加工澱粉)
本実施形態における加工澱粉は、油脂加工澱粉及び架橋澱粉からなる群から選択される少なくとも1種である。前記加工澱粉は、後述の成分(A)は除かれる。食品に結着性や弾力性を付与する観点から、加工澱粉は、油脂加工澱粉であることが好ましく、油脂加工澱粉及び架橋澱粉の2種を含むことがより好ましい。
【0019】
(油脂加工澱粉)
本実施形態における油脂加工澱粉は、原料澱粉に食用油脂を添加した後、混合、加熱する操作を備えた工程を経て生産される澱粉を指す。
【0020】
油脂加工澱粉に用いられる原料澱粉としては、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ等のとうもろこし澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ハイアミロース小麦澱粉、米澱粉、緑豆澱粉やエンドウ澱粉等の豆澱粉、サゴヤシ澱粉及びこれらの澱粉を化学的、物理的又は酵素的に加工した加工澱粉等が挙げられる。なお、化学的な加工処理としては、酸処理、アルカリ処理、酸化処理、アセチル化等のエステル化処理、ヒドロキシプロピル化等のエーテル化処理、架橋処理などが挙げられる。物理的な加工処理としては、加熱処理、α化処理、湿熱処理、ボールミル処理、微粉砕処理などが挙げられる。酵素的な加工処理としては、α-アミラーゼ処理等を使用した処理などが挙げられる。このような処理は、1種の処理が単独で施されていてもよく、また2種以上の処理が組み合わされて施されていてもよい。食品に結着性や弾力性を付与する観点から、原料澱粉は、好ましくは、とうもろこし澱粉、タピオカ澱粉及びこれらの加工澱粉からなる群から選択される1種又は2種以上であり、より好ましくはリン酸架橋タピオカ澱粉、アセチル化タピオカ澱粉及びコーンスターチからなる群から選択される1種又は2種以上である。
【0021】
油脂加工澱粉中の原料澱粉の含有量は、食品に結着性や弾力性を付与する観点から、油脂加工澱粉全体に対して、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは84質量%以上であり、さらに好ましくは87質量%以上であり、さらにより好ましくは90質量%以上である。また、同様の観点から、油脂加工澱粉中の原料澱粉の含有量は、油脂加工澱粉全体に対して、100質量%未満であり、好ましくは99.9質量%以下であり、より好ましくは99.5質量%以下であり、さらに好ましくは99.0質量%以下である。
【0022】
油脂加工澱粉に用いられる食用油脂の具体例としては、大豆油、ハイリノールサフラワー油等のサフラワー油、コーン油、ナタネ油、エゴマ油、アマニ油、ヒマワリ油、落花生油、綿実油、オリーブ油、コメ油、パーム油、ゴマ油、パーム核油、ヤシ油等が挙げられる。作業性の観点からは、食用油脂として液油が好ましく用いられ、大豆油、ナタネ油、コーン油、ハイリノールサフラワー油、アマニ油、及びエゴマ油からなる群から選択される1種又は2種以上の液油がさらに好ましい。また、食用油脂として、ヨウ素価が100以上の油脂を用いることがより好ましく、さらに135以上の油脂を用いることが好ましい。ヨウ素価が135以上の油脂として、具体的には、ハイリノールサフラワー油、アマニ油、エゴマ油が挙げられる。食用油脂のヨウ素価の上限はないが、例えば、250以下である。
【0023】
油脂加工澱粉中の食用油脂の含有量は、原料澱粉の改質効果をより確実に得る観点から、原料澱粉の合計を100質量部としたとき、好ましくは0.005質量部以上であり、より好ましくは0.01質量部以上であり、さらに好ましくは0.02質量部以上であり、さらにより好ましくは0.05質量部以上である。また、同様の観点から、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは4質量部以下であり、さらに好ましくは2質量部以下であり、さらにより好ましくは1質量部以下である。
【0024】
次に、本実施形態における油脂加工澱粉の製造方法を説明する。
油脂加工澱粉は、上述した原料澱粉、食用油脂、及び適宜他の成分を用いて、例えば、以下の工程を含む製造方法により得られる。
(第一工程)原料澱粉及び食用油脂を混合してこれらを含む組成物を調製する工程、並びに
(第二工程)第一工程で得られた組成物を加熱処理する工程。
【0025】
第二工程における加熱処理については、好ましくは130℃以下でおこない、より好ましくは120℃以下でおこない、さらに好ましくは105℃以下でおこない、さらにより好ましくは90℃以下でおこなう。なお、加熱温度の下限に制限はないが、熟成日数を適度に短縮して生産性を向上させる観点から、例えば40℃以上であり、好ましくは45℃以上であり、より好ましくは55℃以上とする。また、加熱処理の期間は、得られる油脂加工澱粉の状態及び加熱温度に応じて適宜設定される。加熱期間は、例えば0.5時間以上であり、好ましくは5時間以上であり、より好ましくは6時間以上であり、さらにより好ましくは24時間以上である。また、加熱期間の上限は、例えば25日以下であり、好ましくは20日以下であり、より好ましくは18日以下である。
【0026】
(架橋澱粉)
本実施形態における架橋澱粉は、原料澱粉に架橋処理を施すことで得られる。架橋澱粉に用いられる原料澱粉としては、例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ等のとうもろこし澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ハイアミロース小麦澱粉、米澱粉、豆澱粉等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。原料澱粉は、好ましくはタピオカ澱粉、小麦澱粉、とうもろこし澱粉、及び馬鈴薯澱粉から選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはタピオカ澱粉である。架橋澱粉は、好ましくはリン酸架橋澱粉であり、より好ましくはリン酸架橋タピオカ澱粉である。
【0027】
架橋処理は常法により行うことができ、架橋澱粉として市販品を使用することもできる。また、架橋澱粉は、架橋処理に加えて、さらにその他の化学的処理、物理的処理、酵素的処理等を施されていてよい。このような化学的処理としては、例えば、酸処理、アルカリ処理、酸化処理、アセチル化等のエステル化処理、ヒドロキシプロピル化等のエーテル化処理等;物理的処理としては、例えば、油脂加工処理、加熱処理、α化処理、湿熱処理、ボールミル処理、微粉砕処理等が挙げられる。このような処理は、1種の処理が単独で施されていてもよく、また2種以上の処理が組み合わされて施されていてもよい。
【0028】
食品用組成物中の加工澱粉の含有量は、食品に結着性や弾力性を付与する観点から、食品用組成物全体に対して、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上であり、さらにより好ましくは40質量%以上であり、より一層好ましくは45質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下であり、さらにより好ましくは75質量%以下であり、より一層好ましくは70質量%以下である。
【0029】
食品用組成物中の油脂加工澱粉の含有量は、食品に結着性や弾力性を付与する観点から、食品用組成物全体に対して、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、さらにより好ましくは20質量%以上であり、より一層好ましくは30質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下であり、さらにより好ましくは75質量%以下であり、より一層好ましくは70質量%以下である。
【0030】
食品用組成物中の架橋澱粉の含有量は、食品に結着性や弾力性を付与する観点から、食品用組成物全体に対して、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、さらにより好ましくは18質量%以上であり、より一層好ましくは20質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下であり、さらにより好ましくは70質量%以下であり、より一層好ましくは60質量%以下である。
【0031】
本実施形態における食品用組成物は、さらに以下の成分(A)を含有することが好ましい。
(成分(A))
本実施形態において、成分(A)は、以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物である。
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が50質量%以上100質量%以下
【0032】
条件(1)に関し、成分(A)は、成分(A)全体に対して澱粉を75質量%以上含み、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上含む。また、成分(A)中の澱粉の含有量の上限に制限はなく、成分(A)全体に対して100質量%以下であるが、組成物の性状等に応じて99.5質量%以下、99質量%以下等としてもよい。
【0033】
成分(A)において、澱粉は、例えば食品用の澱粉であり、各種由来のものを用いることができる。例えば、澱粉として、とうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、コメ澱粉、豆澱粉などの澱粉;及びこれらの澱粉を化学的、物理的又は酵素的に加工した加工澱粉などから、1種以上を適宜選ぶことができる。食品に結着性や弾力性を付与する観点から、澱粉は、好ましくはタピオカ澱粉、とうもろこし澱粉、コメ澱粉、豆澱粉から選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくは、タピオカ澱粉、とうもろこし澱粉、豆澱粉から選ばれる1種又は2種以上である。同様の観点から、澱粉の由来原料は、好ましくはキャッサバ、とうもろこし、コメ及び豆からなる群から選ばれる1種又は2種以上である。
【0034】
条件(2)に関し、成分(A)は、具体的には、低分子化澱粉と、他の澱粉とを含む。まず、低分子化澱粉について説明する。
低分子化澱粉の原料澱粉中のアミロース含量は、5質量%以上であり、好ましくは12質量%以上、より好ましくは22質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、さらにより好ましくは45質量%以上、より一層好ましくは55質量%以上、さらにまた好ましくは65質量%以上である。なお、低分子化澱粉の原料澱粉中のアミロース含量の上限に制限はなく、100質量%以下であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0035】
低分子化澱粉の原料であるアミロース含量5質量%以上の澱粉として、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ等のとうもろこし澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ハイアミロース小麦澱粉、米澱粉、豆澱粉及び、これらの原料を化学的、物理的又は酵素的に加工した加工澱粉からなる群から選択される1種又は2種以上を用いることができる。アミロース含量5質量%以上の澱粉は、好ましくはハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、タピオカ澱粉及び、豆澱粉から選択される1種又は2種以上であり、より好ましくはハイアミロースコーンスターチである。ハイアミロースコーンスターチとしては、例えばアミロース含量40質量%以上のものが入手可能である。アミロース含量5質量%以上の澱粉は、より好ましくはアミロース含量が40質量%以上のコーンスターチである。
【0036】
成分(A)中の低分子化澱粉の含有量は、3質量%以上であり、好ましくは8質量%以上、より好ましくは13質量%以上である。また、45質量%以下であり、好ましくは35質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0037】
低分子化澱粉のピーク分子量は、3×10以上であり、好ましくは8×10以上である。また、5×10以下であり、好ましくは3×10以下であり、より好ましくは1.5×10以下である。なお、低分子化澱粉のピーク分子量の測定方法については、実施例の項に記載する。
【0038】
ここで、低分子化澱粉は、その製造安定性に優れる観点から、好ましくは、酸処理澱粉、酸化処理澱粉及び酵素処理澱粉からなる群から選択される1種又は2種以上であり、より好ましくは酸処理澱粉である。
【0039】
酸処理澱粉を得る際の酸処理の条件は問わないが、例えば、以下のように処理することができる。
まず、原料であるアミロース含量5質量%以上の澱粉と水を反応装置に投入した後、さらに酸を投入する。あるいは水に無機酸をあらかじめ溶解させた酸水と原料の澱粉を反応装置に投入する。酸処理をより安定的におこなう観点からは、反応中の澱粉の全量が水相内に均質に分散した状態、又はスラリー化した状態にあることが望ましい。そのためには、酸処理をおこなう上での澱粉スラリーの濃度を、例えば10質量%以上50質量%以下、好ましくは20質量%以上40質量%以下の範囲になるように調整する。スラリー濃度が高すぎると、スラリー粘度が上昇し、均一なスラリーの攪拌が難しくなる場合がある。
【0040】
酸処理に用いられる酸として、具体的には塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸が挙げられ、種類、純度などを問わず利用できる。
【0041】
酸処理反応条件については、例えば酸処理時の無機酸濃度は、酸処理澱粉を安定的に得る観点から、0.05規定度(N)以上4N以下が好ましく、0.1N以上4N以下がより好ましく、0.2N以上3N以下がさらに好ましい。また、同様の観点から、反応温度は、30℃以上70℃以下が好ましく、35℃以上70℃以下がより好ましく、35℃以上65℃以下がさらに好ましく、反応時間は、同様の観点から、0.5時間以上120時間以下が好ましく、1時間以上72時間以下がより好ましく、1時間以上48時間以下がさらに好ましい。
【0042】
成分(A)中の低分子化澱粉以外の澱粉としては、例えば前述した澱粉の中から選択して使用することができる。好ましくは、成分(A)中の低分子化澱粉以外の澱粉は、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、豆澱粉及びこれらの加工澱粉からなる群から選択される1種又は2種以上である。
【0043】
条件(3)に関し、成分(A)の25℃における冷水膨潤度は5以上であり、好ましくは6以上であり、さらに好ましくは6.5以上である。また、40以下であり、好ましくは35以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは17以下、さらにより好ましくは13以下、より一層好ましくは12以下である。ここで、成分(A)の冷水膨潤度の測定方法については、実施例の項に記載する。
【0044】
条件(4)に関し、成分(A)中の目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量は、成分(A)全体に対して50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上、より一層好ましくは95質量%以上であり、また、例えば100質量%以下である。
【0045】
成分(A)中の目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.075mmの篩の篩上の画分の含有量は、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、さらにより好ましくは50質量%以上、より一層好ましくは60質量%以上であり、また、例えば100質量%以下であり、好ましくは90質量%以下である。
【0046】
成分(A)中の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量は、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらにより好ましくは25質量%以上、より一層好ましくは30質量%以上であり、また、例えば100質量%以下である。
【0047】
食品用組成物中の成分(A)の含有量は、食品に結着性や弾力性を付与する観点から、食品用組成物全体に対して、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは8質量%以上であり、さらにより好ましくは10質量%以上であり、より一層好ましくは15質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下であり、さらにより好ましくは35質量%以下であり、より一層好ましくは30質量%以下である。
【0048】
本実施形態の食品用組成物には、上述の成分以外の成分を適宜配合してもよい。かかる成分の具体例として、例えば、塩化マグネシウムや硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩、塩化カリウム等のカリウム塩、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等のカルシウム塩、塩化ナトリウム(食塩)などのナトリウム塩等の塩類;グルコノデルタラクトン等の凝固剤;乳糖等の糖類;未加工澱粉;調味料;着色料;乳化剤等が挙げられる。前記成分は粉粒状であることが好ましい。
【0049】
本実施形態における食品用組成物の製造方法は、例えば、前記マンナン、前記タンパク質、及び前記加工澱粉を混合する工程を含む。前記工程における混合方法に制限はない。
【0050】
本実施形態における食品用組成物は、卵白代替として好適に用いられる。
また、本実施形態における食品用組成物は、食品に結着性を付与するために好適に用いられる。ここで結着性とは、食材同士を結着させ食品の形状を保つ性状のことを指し、食品が例えば加熱調理する食品の場合、当該食品は加熱調理後の食品(完成食品)だけでなく、加熱調理前の食品(未完成食品)も指す。食品に結着性が付与されることで、食品の成型性や保形性を向上することができる。
さらに、本実施形態における食品用組成物は、食品に弾力性を付与するために好適に用いられる。ここで弾力性とは、食品に圧を加えたときに、それを跳ね返そうとする力が生じる性状のことを指す。食品に弾力性が付与されることで、好ましい食感の食品を得ることができる。
【0051】
さらにまた、本実施形態における食品用組成物は乳化作用を保持しているため、後述の食品用乳化組成物の調製用として好適に用いられる。
【0052】
[2.食品用乳化組成物及びその製造方法]
本実施形態における食品用乳化組成物は、マンナン、タンパク質、加工澱粉、食用油脂、及び水を含有する。前記マンナン、タンパク質、及び加工澱粉は[1.食品用組成物及びその製造方法]で述べた通りの為、説明は省略する。食品用乳化組成物は、流動性を有するものであってもよいし、固形状であってもよい。また、食品用乳化組成物の乳化型は、水中油滴型及び油中水滴型の何れでもよいが、水中油滴型であることが好ましい。
【0053】
食品用乳化組成物中のマンナンの含有量は、食品に結着性や弾力性を付与する観点から、食品用乳化組成物全体に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、さらにより好ましくは0.7質量%以上であり、より一層好ましくは1質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、さらにより好ましくは3質量%以下であり、より一層好ましくは2.5質量%以下である。
【0054】
食品用乳化組成物中のタンパク質の含有量は、食品に結着性や弾力性を付与する観点から、食品用乳化組成物全体に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、さらにより好ましくは0.8質量%以上であり、より一層好ましくは1質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下であり、さらにより好ましくは10質量%以下であり、より一層好ましくは9質量%以下である。
【0055】
食品用乳化組成物中の加工澱粉の含有量は、食品に結着性や弾力性を付与する観点から、食品用乳化組成物全体に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは1質量%以上であり、さらにより好ましくは3質量%以上であり、より一層好ましくは5質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは22質量%以下であり、さらにより好ましくは20質量%以下であり、より一層好ましくは18質量%以下である。
【0056】
食品用乳化組成物中の油脂加工澱粉の含有量は、食品に結着性や弾力性を付与する観点から、食品用乳化組成物全体に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは1質量%以上であり、さらにより好ましくは3質量%以上であり、より一層好ましくは5質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下であり、さらにより好ましくは18質量%以下であり、より一層好ましくは15質量%以下である。
【0057】
食品用乳化組成物中の架橋澱粉の含有量は、食品に結着性や弾力性を付与する観点から、食品用乳化組成物全体に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは1質量%以上であり、さらにより好ましくは3質量%以上であり、より一層好ましくは5質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下であり、さらにより好ましくは10質量%以下であり、より一層好ましくは8質量%以下である。
【0058】
(食用油脂)
本実施形態における食用油脂は、食用の油であれば制限はなく、例えば、大豆油、菜種油、パーム油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、えごま油、紅花油、ひまわり油、綿実油、こめ油、落花生油、カカオ脂、パーム核油、ヤシ油などの植物油脂;牛脂、豚脂、乳脂、鶏油、魚油等の動物油脂;中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの合成油脂などが挙げられる。また、これらを分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂が挙げられる。また、食用油脂は、野菜等の風味付与剤で油脂を処理したもの、フレーバー等の香料や調味料や天然素材等で油脂に風味付けを行ったものでもよい。さらに、通常食用油脂に配合される成分を、発明の効果を損なわない範囲において含有していてもよい。例えば、トコフェロール、アスコルビン酸パルミテート、ローズマリー抽出物、茶抽出物、甘草抽出物等の酸化防止剤;クエン酸やリンゴ酸等の金属キレート剤;ビタミンA、ビタミンD等のビタミン類;シリコーン;香料;乳化剤等である。
【0059】
食用油脂の上昇融点は、食品に結着性や弾力性を付与する観点から、好ましくは30℃以下であり、より好ましくは20℃以下であり、さらに好ましくは10℃以下であり、さらにより好ましくは5℃以下であり、より一層好ましくは0℃以下である。なお、上昇融点は、基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会)の「2.2.4.2-1996 融点(上昇融点)」により測定した値である。
【0060】
食品用乳化組成物中の食用油脂の含有量は、食品に結着性や弾力性を付与する観点から、食品用乳化組成物全体に対して、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、さらにより好ましくは12質量%以上であり、より一層好ましくは14質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下であり、さらにより好ましくは25質量%以下であり、より一層好ましくは20質量%以下である。なお、食品用乳化組成物中の食用油脂の含有量とは、乳化組成物を得る工程で配合される食用油脂及び他の配合成分に含まれる油脂を合算した量(総油脂含量)である(但し、前述の油脂加工澱粉中の食用油脂の含有量は除く)。
【0061】
(水)
本実施形態における食品用乳化組成物中の水は、通常の水として配合してもよいし、牛乳、豆乳、果汁、野菜ジュース、コーヒー粉末等のフレーバーを溶かした水溶液等のように水を含む液体成分として配合してもよい。
【0062】
食品用乳化組成物中の水の含有量は、食品に結着性や弾力性を付与する観点から、食品用乳化組成物全体に対して、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上であり、さらにより好ましくは40質量%以上であり、より一層好ましくは50質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以下であり、さらにより好ましくは80質量%以下であり、より一層好ましくは75質量%以下である。なお、食品用乳化組成物中の水の含有量とは、乳化組成物を得る工程で配合される水及び他の配合成分に含まれる水を合算した量(総水分含量)である。
【0063】
食品用乳化組成物中の水の含有量は、食品に結着性や弾力性を付与する観点から、食用油脂の含有量に対して、質量比で好ましくは1以上であり、より好ましくは1.5以上であり、さらに好ましくは2以上であり、さらにより好ましくは2.5以上であり、より一層好ましくは2.7以上である。また、同様の観点から、好ましくは20以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは8以下であり、さらにより好ましくは6以下であり、より一層好ましくは5以下である。
【0064】
本実施形態における食品用乳化組成物は、さらに成分(A)を含有することが好ましい。前記成分(A)は[1.食品用組成物及びその製造方法]で述べた通りの為、説明は省略する。
食品用乳化組成物中の成分(A)の含有量は、食品に結着性や弾力性を付与する観点から、食品用乳化組成物全体に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、さらにより好ましくは1質量%以上であり、より一層好ましくは1.5質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、さらにより好ましくは3質量%以下であり、より一層好ましくは2質量%以下である。
【0065】
本実施形態の食品用乳化組成物には、上述の成分以外の成分を適宜配合してもよい。かかる成分の具体例として、例えば、塩化マグネシウムや硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩、塩化カリウム等のカリウム塩、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等のカルシウム塩、塩化ナトリウム(食塩)などのナトリウム塩等の塩類;グルコノデルタラクトン等の凝固剤;乳糖等の糖類;未加工澱粉;調味料;着色料;乳化剤等が挙げられる。
【0066】
本実施形態における食品用乳化組成物の製造方法は、前記マンナン、前記タンパク質、前記加工澱粉、前記食用油脂、及び前記水を混合して乳化させる工程を含む。
【0067】
前記乳化させる工程における乳化方法について制限はなく、食品用乳化組成物が適用される食品の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、マンナン、タンパク質、加工澱粉を混合した後、食用油脂及び水を加え混合して乳化させる方法等が挙げられる。ここで、加える水は事前に氷水として冷却された水であることが好ましい。このときの乳化装置がハンドミキサーの場合、例えば30秒~5分、好ましくは1分~3分混合する。混合時の温度は例えば2~10℃程度とすることができる。但し、攪拌速度や攪拌羽根の形状、攪拌容器形状や各原料の仕込み重量によっても最適な乳化条件は異なるため、前述の方法に限定されるものではない。
【0068】
本実施形態における食品用乳化組成物は、卵白代替として好適に用いられる。
また、本実施形態における食品用乳化組成物は、食品に結着性を付与するために好適に用いられる。ここで結着性とは、[1.食品用組成物及びその製造方法]で述べた通りである。食品に結着性が付与されることで、食品の成型性や保形性を向上することができる。
さらに、本実施形態における食品用乳化組成物は、食品に弾力性を付与するために好適に用いられる。ここで弾力性とは、[1.食品用組成物及びその製造方法]で述べた通りである。食品に弾力性が付与されることで、好ましい食感の食品を得ることができる。
【0069】
[3.食品及びその製造方法]
本実施形態における食品は、前述の食品用組成物又は食品用乳化組成物を含む。食品の具体例として、畜肉加工食品、畜肉様加工食品(畜肉加工食品における畜肉を植物性原料に置換して得られる加工食品のことを指す)、水産加工食品、水産様加工食品(水産加工食品における水産物を植物性原料に置換して得られる加工食品のことを指す)、ベーカリー食品、チルドデザート、麺類、卵様加工食品等が挙げられる。食品は、畜肉加工食品、畜肉様加工食品、水産加工食品、水産様加工食品、及び卵様加工食品からなる群から選択される1種であることが好ましく、畜肉加工食品、畜肉様加工食品、水産加工食品、及び水産様加工食品からなる群から選択される1種であることがより好ましい。
【0070】
畜肉加工食品又は畜肉様加工食品の具体例として、チキンナゲット等のナゲット類;ハンバーグ、ミートボール、ソーセージ、シュウマイ、餃子等の畜肉練り物類;肉饅頭、中華まん等の畜肉フィリング類;及びこれら食品の畜肉様加工食品が挙げられる。畜肉加工食品又は畜肉様加工食品は、ハンバーグ、ソーセージ、ナゲット、及びこれら食品の畜肉様加工食品からなる群から選択される1種であることが好ましい。畜肉加工食品における畜肉として、具体的には、牛、豚、羊、山羊等の哺乳動物の肉;及び鶏、アヒル、七面鳥、ガチョウ、鴨等の家禽類に代表される鳥類の肉からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。好ましくは鶏肉、豚肉及び牛肉からなる群から選択される少なくとも1種である。また、畜肉は好ましくは挽肉、すり身等のミンチ状あるいはペースト状である。
【0071】
水産加工食品又は水産様加工食品の具体例として、つみれ、蒲鉾、魚肉ソーセージ、はんぺん等の水産練り製品;海老かつ等のフライ食品類;及びこれら食品の水産様加工食品が挙げられる。水産加工食品又は水産様加工食品は蒲鉾、つみれ、魚肉ソーセージ、はんぺん等の水産練り製品及びこれら食品の水産様加工食品からなる群から選択される1種であることが好ましい。水産加工食品において対象となる水産物として、具体的には、マグロ、ママカリ、スケソウダラ、タチウオ、エソ、イワシ、サンマ、サバ、ウナギ、サケ、アジ、アナゴ、アンコウ、カツオ、サワラ、ニシン、ブリ、タラ、タイ、カサゴ、ミナミダラ、シロガネダラ、キントキダイ、キンメダイ、イトヨリダイ、ホッケ、ヨシキリザメ、ショモクザメ、アオザメ、アカウオ、コガネガレイ、アブラガレイ、シログチ、レンコダイ、クロカジキ、コノシロ等の魚類;ホタテ等の貝類;イカ、タコ等の頭足類等が挙げられる。また、水産物の形態は好ましくは挽肉、すり身等のミンチ状あるいはペースト状である。
【0072】
本実施形態における食品には、上述の成分以外の成分を適宜配合してもよい。かかる成分の具体例として、例えば、調味料、香辛料、香料、保存料、酸味料、増粘剤、ゲル化剤、酸化防止剤等や、タマネギ、ニンジン、ピーマン、キャベツ等の野菜類の成分等が挙げられる。
【0073】
食品中の食品用組成物の含有量は、食品の種類に応じて適宜選択すればよいが、食品に結着性や弾力性を付与する観点から、食品全体に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、さらにより好ましくは0.5質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下であり、さらにより好ましくは10質量%以下である。
【0074】
食品中の食品用乳化組成物の含有量は、食品の種類に応じて適宜選択すればよいが、食品に結着性や弾力性を付与する観点から、食品全体に対して、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、さらにより好ましくは1.8質量%以上である。また、同様の観点から、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下であり、さらにより好ましくは60質量%以下であり、より一層好ましくは50質量%以下である。
【0075】
本実施形態における食品の製造方法は、上述の本実施形態における食品用乳化組成物の製造方法により食品用乳化組成物を得る工程と、得られた食品用乳化組成物と食材を混合する工程を含む。前記混合方法に制限はなく、所望の食品に応じて適宜選択すればよい。
【0076】
また、食品用乳化組成物を得る工程の後、食品用乳化組成物と食材を混合する工程の前に、食品用乳化組成物を保存する工程を含んでもよい。保存条件に制限はないが、例えば、-100℃以上0℃未満で冷凍保存したり、0℃以上15℃以下で冷蔵保存することができる。
【0077】
また、食品用乳化組成物と食材を混合する工程の後、得られた混合物を加熱調理する工程を含んでもよい。加熱調理の具体例として、オーブン等での加熱調理;マイクロ波加熱調理;スチームコンベクションオーブン等での加熱調理;薄く油をひいたフライパン、鉄板上での加熱調理;フライ調理等が挙げられる。
【0078】
[4.食品に結着性を付与する方法、食品に弾力性を付与する方法]
本実施形態において、前述の食品用組成物又は食品用乳化組成物を食品に配合させることで、食品に結着性を付与することができる。ここで結着性とは、[1.食品用組成物及びその製造方法]で述べた通りである。食品に結着性が付与されることで、食品の成型性や保形性が向上する。
本実施形態において、前述の食品用組成物又は食品用乳化組成物を食品に配合させることで、食品に弾力性を付与することができる。ここで弾力性とは、[1.食品用組成物及びその製造方法]で述べた通りである。食品に弾力性が付与されることで、好ましい食感の食品が得られる。
【0079】
また、本実施形態において、前述の食品用組成物又は食品用乳化組成物を食品に配合させることで、食品の焼成歩留まりを良好なものとすることもできる。
【実施例0080】
以下に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨はこれらに限定されるものではない。
【0081】
原材料として、主に以下のものを使用した。
1.食品用組成物又は食品用乳化組成物の製造原料
(マンナン)
・マンナン:伊那食品工業株式会社製「ウルトラマンナンG5」(こんにゃく芋由来グルコマンナン)
(タンパク質)
・粉末状大豆たん白1:ADMジャパン株式会社製「プロファム781」(タンパク質含量90質量%以上)
・粉末状大豆たん白2:不二製油株式会社「ニューフジプロSEH」(タンパク質含量87質量%以上)
(架橋澱粉、油脂加工澱粉)
・リン酸架橋タピオカ澱粉1:株式会社J-オイルミルズ製「アクトボディーTP-4W」
・リン酸架橋タピオカ澱粉2:株式会社J-オイルミルズ製「アクトボディーTP-1」
・油脂加工澱粉1:後述の製造例3で得られた油脂加工澱粉(油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉)
・油脂加工澱粉2:日本食品化工株式会社製「ねりこみ澱粉K-1」(油脂加工アセチル化タピオカ澱粉)
・油脂加工澱粉3:株式会社J-オイルミルズ製「HB-310」(油脂加工コーンスターチ)
(成分(A))
・粉粒状物1:後述の製造例2で得られた粉粒状物1
(食用油脂)
・菜種油:株式会社J-オイルミルズ製「AJINOMOTOさらさらキャノーラ油」(上昇融点:0℃以下)
・調味油:株式会社J-オイルミルズ製「JOYL PRO グリルオイル」(上昇融点:0℃以下)
(その他)
・食塩:株式会社日本海水製「エバーフローEF40」
【0082】
2.その他原料
・乾燥卵白粉:キューピータマゴ株式会社製「乾燥卵白Kタイプ」
・ビーツ色素:マルハ物産株式会社製「ビーツパウダー」
・粒状大豆たん白:株式会社J-オイルミルズ製「プランテクストM-14」
・ブラックペッパー:株式会社ギャバン製「ブラックペッパー」
・ブドウ糖:栗鷹物産株式会社製「ぶどう糖」
・うまみ調味料:味の素株式会社製「味の素」
・カラメル色素:株式会社紅清製「カラメル」
・ショートニング1:社内調製品(上昇融点:35~41℃)
・ショートニング2:社内調製品(上昇融点:34~40℃)
・円柱状油脂:国際公開第2020/004058号公報に記載の油脂組成13と同じ方法にて製造したもの
・馬鈴薯澱粉:株式会社J-オイルミルズ製「ジェルコールBP-200」
・だしの素:ヤマキ株式会社製「だしの素」
【0083】
<成分(A)の製造>
(製造例1)低分子化澱粉の製造
粉粒状物1の原料となる低分子化澱粉として酸処理ハイアミロースコーンスターチを製造した。
ハイアミロースコーンスターチ(株式会社J-オイルミルズ製「HS-7」、アミロース含量70質量%)を水に懸濁して35.6%(w/w)スラリーを調製し、50℃に加温した。そこへ、攪拌しながら4.25Nに調製した塩酸水溶液をスラリー質量比で1/9倍量加え反応を開始した。16時間反応後、3%NaOHで中和し、水洗、脱水、乾燥し、酸処理ハイアミロースコーンスターチを得た。
得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチのピーク分子量を後述の方法で測定したところ、ピーク分子量は1.2×10であった。
【0084】
(ピーク分子量の測定方法)
ピーク分子量の測定は、東ソー株式会社製HPLCユニットを使用しておこなった(ポンプDP-8020、RI検出器RS-8021、脱気装置SD-8022)。
(1)試料を粉砕し、JIS-Z8801-1規格の篩で、目開き0.15mm篩下の画分を回収した。この回収画分を移動相に1mg/mLとなるように懸濁し、懸濁液を100℃3分間加熱して完全に溶解した。0.45μmろ過フィルター(ADVANTEC社製、DISMIC-25HP PTFE 0.45μm)を用いてろ過を行い、ろ液を分析試料とした。
(2)以下の分析条件で分子量を測定した。
カラム:TSKgel α-M(7.8mmφ、30cm)(東ソー株式会社製)2本
流速:0.5mL/min
移動相:5mM 硝酸ナトリウム含有90%(v/v)ジメチルスルホキシド溶液 カラム温度:40℃
分析量:0.2mL
(3)検出器データを、ソフトウェア(マルチステーションGPC-8020modelIIデータ収集ver5.70、東ソー株式会社製)にて収集し、分子量ピークを計算した。
検量線には、分子量既知のプルラン(Shodex Standard P-82、昭和電工株式会社製)を使用した。
【0085】
(冷水膨潤度の測定方法)
(1)試料を、水分計(研精工業株式会社、型番MX-50)を用いて、125℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から乾燥物質量を算出した。
(2)この乾燥物質量換算で試料1gを25℃の水50mLに分散した状態にし、30分間25℃の恒温槽の中でゆるやかに撹拌した後、3000rpmで10分間遠心分離(遠心分離機:日立工機社製、日立卓上遠心機CT6E型;ローター:T4SS型スイングローター;アダプター:50TC×2Sアダプター)し、沈殿層と上澄層に分けた。
(3)上澄層を取り除き、沈殿層質量を測定し、これをB(g)とした。
(4)沈殿層を乾固(105℃、恒量)したときの質量をC(g)とした。
(5)BをCで割った値を冷水膨潤度とした。
【0086】
(製造例2)粉粒状物1の製造
コーンスターチ79質量%、製造例1で得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチ20質量%、及び、炭酸カルシウム1質量%を充分に均一になるまで袋内で混合した。2軸エクストルーダー(幸和工業社製KEI-45)を用いて、混合物を加圧加熱処理した。処理条件は、以下の通りである。
原料供給:450g/分
加水:17質量%
バレル温度:原料入口から出口に向かって50℃、70℃及び100℃
出口温度:100~110℃
スクリューの回転数250rpm
このようにしてエクストルーダー処理により得られた加熱糊化物を110℃にて乾燥し、水分含量を10質量%に調整した。
次いで、乾燥した加熱糊化物を、卓上カッター粉砕機で粉砕した後、JIS-Z8801-1規格の篩で篩分けした。篩分けした加熱糊化物を、所定の配合割合で混合し、表1に示す粒度分布を有する粉粒状物1を調製した。前述の方法で測定した粉粒状物の25℃における冷水膨潤度を表1にあわせて示す。
【0087】
【表1】
【0088】
(製造例3)油脂加工澱粉1の製造
100質量部のリン酸架橋タピオカ澱粉(膨潤度18.4、株式会社J-オイルミルズ製「アクトボディーTP-1」)に、ハイリノールサフラワー油0.1質量部、ジグリセリンモノオレイン酸エステル0.05質量部、及び、炭酸ナトリウム10質量部に対して水30質量部を加えて炭酸ナトリウムを完全に溶解させた25%炭酸ナトリウム水溶液0.4質量部(炭酸ナトリウム当量として0.1質量部)を加え、混合機(スーパーミキサー、株式会社カワタ製)で3000rpm、3分間均一に混合し、混合物(水分14.8%)を得た。この混合物を棚段式乾燥機にて70℃10日間加熱し、油脂加工澱粉1を得た。
【0089】
<試験例1>
表2に記載の配合で以下の手順にて各実施例の食品用乳化組成物を作製し、評価を行った。
【0090】
(1)菜種油及び水以外の表2に記載の原料を混合した。
(2)水に氷を入れて冷却させた後、表2に記載の分量の水を秤取った。
(3)上記(1)に菜種油及び上記(2)の冷却した水を加え、ハンドミキサー(Panasonic製「ハンドミキサーMK-H4-W」)で約2分混合し乳化させ、食品用乳化組成物(水中油滴型)を得た。
(4)上記(3)の乳化組成物を約70gとなるように丸型に成型し、スチームコンベクションオーブン(RATIONAL製「CombiMaster Plus XS」、加熱条件:200℃、ホットモード)にて、10分焼成した。
【0091】
食品用乳化組成物の成型性及び保形性ついて、3名の専門パネルが以下の基準で評価し、3点以上を合格とした。なお、評点は専門パネル全員の合議である。評価結果を表2に示す。
【0092】
(成型性)焼成前の乳化組成物の成型性を評価した
5点:非常に成型しやすい
4点:成型しやすい
3点:問題なく成型できる
2点:ほとんど成型できない
1点:全く成型できない
(保形性)焼成後の乳化組成物の保形性を評価した
5点:形が保持されている
4点:形がほとんど保持されている
3点:やや崩れているがかろうじて形が保持されている
2点:形が崩れている
1点:非常に形が崩れている
【0093】
【表2】
【0094】
その結果、表2に示されるように、各実施例の食品用乳化組成物の成型性及び保形性が良好だった。特に、実施例1-1の成型性及び保形性が良好だった。
【0095】
<試験例2>
表3及び表4に記載の配合で以下の手順にて大豆ハンバーグを作製し、評価を行った。
【0096】
A.食品用乳化組成物の製造(各実施例のみ)
(1)表3に記載の原料を混合し、調製例1~5の食品用組成物を作製した。
(2)水に氷を入れて冷却させた後、表4に記載の分量の水(乳化組成物用)を秤取った。
(3)上記(1)に表4に記載の菜種油、調味油及び上記(2)の冷却した水(乳化組成物用)を加え、ハンドミキサー(Panasonic製「ハンドミキサーMK-H4-W」)で約2分混合し乳化させ、食品用乳化組成物(水中油滴型)を得た。
【0097】
B.大豆ハンバーグの製造
(1)表4に記載のその他原料をボウルに秤取り、混合した。
(2)上記(1)に、上記A.で作製した乳化組成物を加え、手で混合した(対照例2については当該工程はなし)。
(3)上記(2)を80g秤取り、セルクルで大豆ハンバーグを成型した。
(4)成型した大豆ハンバーグを-40℃で30分急速凍結し、その後、-18℃で24時間冷凍保管した。
(5)冷凍した大豆ハンバーグを解凍後、スチームコンベクションオーブン(RATIONAL製「CombiMaster Plus XS」、加熱条件:180℃、オーブンモード、風速中)にて、14分焼成した。
【0098】
大豆ハンバーグの成型性、保形性、及び食感(弾力性)ついて、5名の専門パネルが以下の基準で評価し、3点以上を合格とした。なお、評点は専門パネル全員の合議である。評価結果を表4に示す。
【0099】
(成形性)焼成前の大豆ハンバーグの成型性を評価した
5点:結着力が非常にあり非常に成型しやすい(対照例2と同等)
4点:結着力があり成型しやすい
3点:結着力がややあり問題なく成型できる
2点:結着力があまりなくほとんど成型できない
1点:結着力がなく全く成型できない
(保形性)焼成後の大豆ハンバーグの保形性を評価した
5点:形を保ち、力を加えても崩れない(対照例2と同等)
4点:ほとんど形を保ち、力を加えても崩れにくい
3点:かろうじて形が保持されるが、力を加えると崩れる
2点:形が崩れている
1点:非常に形が崩れている
(食感(弾力性))焼成後の大豆ハンバーグを喫食し、弾力性を評価した
5点:弾力が非常にある(対照例2と同等)
4点:弾力がある
3点:弾力がややある
2点:弾力がほとんどない
1点:弾力がない
【0100】
焼成前のハンバーグの質量と焼成後のハンバーグの質量とを測定して、焼成歩留まり(%)を求めた。具体的には下記の式を用いて、焼成歩留まりを算出した。結果を表4に示す。
式:焼成歩留まり(%)=(焼成後の質量(g)/焼成前の質量(g))×100
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】
【0103】
その結果、表4に示されるように、各実施例の大豆ハンバーグについて、乾燥卵白を使用した対照例2にはやや劣るものの、十分な成型性、保形性、及び弾力性を有していた。また、実施例2-1、2-2、2-4、2-5、2-6については、対照例2よりも水分量が高いにもかかわらず対照例2に比べて焼成歩留まりが良好だった。
【0104】
<試験例3>
表5及び表6に記載の配合で以下の手順にてかまぼこを作製し、評価を行った。
【0105】
A.食品用乳化組成物の製造(実施例のみ)
(1)水に氷を入れて冷却させた後、表5に記載の分量の水を秤取った。
(2)菜種油及び水以外の表5に記載の原料を混合した。
(3)上記(2)に菜種油を加え、軽く混合した。
(4)上記(3)に上記(1)の冷却した水を加え、ハンドミキサー(Panasonic製「ハンドミキサーMK-H4-W」)で約2分混合し乳化させ(クリーム状で角が立つ状態になったら終了)、食品用乳化組成物(水中油滴型)を得た。
(5)上記(4)の乳化組成物を、後述のB.の工程で使用するまで冷蔵庫にて3℃で冷却した。
【0106】
B.かまぼこの製造
(1)冷凍のスケソウダラすりみを半解凍させ、包丁でサイコロ状にカットし、フードプロセッサー(クイジナート社製「フードプロセッサー」)で細かく粉砕した。
(2)上記(1)に食塩を加え、混合した。
(3)上記(2)に1/3量の氷(クラッシュアイス)を加え、混合した。
(4)上記(3)に上記A.で作製した乳化組成物(実施例のみ)、食塩及び氷以外の表6に記載の原材料、及び1/3量の氷(クラッシュアイス)を加え、混合した。
(5)上記(4)に残りの1/3量の氷(クラッシュアイス)を加え、すりみ温度11℃以下を保ちながら、氷のかけらが無くなるまで混合した。
(6)上記(5)をチャック付きビニール袋に入れ、真空包装機(ニチワ電機株式会社製「ホットテンプ」)で脱気した。
(7)上記(6)をビニールケーシングに充填後、30℃で90分坐り処理を行った。
(8)上記(7)を85℃で20分、湯煎加熱した。
(9)上記(8)を氷水に投入し、0℃で10分冷却した。
(10)上記(9)を冷蔵庫にて3℃で20時間保存した。
【0107】
かまぼこの食感(硬さ)及び食感(弾力性)ついて、4名の専門パネルが以下の基準で評価し、3点以上を合格とした。なお、評点は専門パネル全員の平均点である。評価結果を表6に示す。
【0108】
(食感(硬さ))
5点:非常に硬い(対照例3と同等)
4点:硬い
3点:やや硬い
2点:柔らかい
1点:非常に柔らかい
(食感(弾力性))
5点:弾力が非常にあり歯切れも非常によい(対照例3と同等)
4点:弾力があり歯切れもよい
3点:弾力がややあり歯切れもややよい
2点:弾力があまりなく歯切れも悪い
1点:弾力がなく歯切れも非常に悪い
【0109】
また、テクスチャーアナライザーを用いて、得られたかまぼこの破断強度(g)及び破断距離(cm)を以下の方法で測定した。なお、破断強度は硬さ、破断距離は弾力性を示す指標である。測定結果を表6にあわせて示す。
【0110】
(テクスチャーアナライザーでの測定)
ケーシングに充填されたかまぼこからケーシングを剥ぎ取り、直径30mm円柱状のかまぼこを厚さ25mmにカットしたものを測定試料とした。カット面を上下とした試料を試料台に置き、直径5mmボール状のプローブを装着したテクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems社製「TA-XT Plus」)で、圧縮速度1mm/sec、室温(約20℃)で試料上面から中心部を15mm押し込み、プローブがかまぼこを破断した際の最大応力(破断強度(g))とプローブがかまぼこを破断するまでの距離(破断距離(cm))を測定した。
【0111】
【表5】
【0112】
【表6】
【0113】
その結果、表6に示されるように、実施例のかまぼこについて、乾燥卵白を使用した対照例6にはやや劣るものの、十分な硬さ及び弾力性を有していた。