(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158472
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】流体制御弁及び流体制御装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/524 20060101AFI20241031BHJP
F16K 31/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F16K31/524 B
F16K31/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073700
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】近藤 範明
(72)【発明者】
【氏名】宮本 英顕
(72)【発明者】
【氏名】田坂 直也
【テーマコード(参考)】
3H062
3H063
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB05
3H062CC07
3H062DD01
3H062EE06
3H062FF38
3H062FF39
3H062GG06
3H062HH02
3H062HH10
3H063AA01
3H063BB12
3H063BB50
3H063DA14
3H063DB15
3H063GG03
3H063GG11
(57)【要約】
【課題】弁体の変位を拡大する変位拡大機構の位置安定性を向上する。
【解決手段】弁体3を駆動するためのアクチュエータ4と、弁体3及びアクチュエータ4の間に介在し、アクチュエータ4の変位を拡大して弁体3に伝達する変位拡大機構5とを備え、変位拡大機構5は、アクチュエータ4からの駆動力を受けて変位する入力部材51と、入力部材51及び弁体3の間において弁体3の中心軸線3C回りに配置され、入力部材51の変位を拡大して弁体3に伝達する複数の梃子部材52とを有し、複数の梃子部材52は、入力部材51が接触して力点部となる接触面を有し、接触面は、弁体3の中心軸線3Cに向かって下り勾配をなすものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体を駆動するためのアクチュエータと、
前記弁体及び前記アクチュエータの間に介在し、前記アクチュエータの変位を拡大して前記弁体に伝達する変位拡大機構とを備え、
前記変位拡大機構は、
前記アクチュエータからの駆動力を受けて変位する入力部材と、
前記入力部材及び前記弁体の間において前記弁体の中心軸線回りに配置され、前記入力部材の変位を拡大して前記弁体に伝達する複数の梃子部材とを有し、
前記複数の梃子部材は、前記入力部材が接触して力点部となる接触面を有し、
前記接触面は、前記弁体の中心軸線に向かって下り勾配をなすものである、流体制御弁。
【請求項2】
前記接触面は、前記アクチュエータの伸縮に関わらず、前記弁体の中心軸線に向かって下り勾配をなしている、請求項1に記載の流体制御弁。
【請求項3】
前記入力部材は、前記複数の梃子部材それぞれの接触面を押圧する複数の押圧部を有しており、
前記各押圧部は、対応する前記接触面に線接触するものである、請求項1又は2に記載の流体制御弁。
【請求項4】
前記各押圧部は、対応する前記接触面に線接触するように形成された直線状をなす突起である、請求項3に記載の流体制御弁。
【請求項5】
前記入力部材は、前記複数の押圧部よりも内側に形成され、前記各押圧部の頂部に連続した肉厚部を有する、請求項3又は4に記載の流体制御弁。
【請求項6】
前記変位拡大機構は、前記複数の梃子部材及び前記弁体の間に介在し、前記複数の梃子部材の作用点部が接触する出力部材をさらに有している、請求項1乃至5の何れか一項に記載の流体制御弁。
【請求項7】
前記変位拡大機構は、周方向において前記複数の梃子部材それぞれの間に設けられ、前記各梃子部材を周方向において位置決めする位置決め部材をさらに有している、請求項1乃至6の何れか一項に記載の流体制御弁。
【請求項8】
前記入力部材は、前記アクチュエータを向く面が凸形状とされている、請求項1乃至7の何れか一項に記載の流体制御弁。
【請求項9】
前記アクチュエータは、ピエゾスタックを有するものである、請求項1乃至8の何れか一項に記載の流体制御弁。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の流体制御弁と、
前記流体制御弁の上流側又は下流側に設けられた流体センサと、
前記流体センサの出力に基づいて前記流体制御弁を制御する弁制御部とを備える、流体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御弁及び流体制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の流体制御弁としては、特許文献1に示すように、弁体を駆動するアクチュエータにピエゾスタックを用いたものがある。この流体制御弁は、変位量が小さいピエゾスタックを大型化すること無く、弁体である作動対象部の作動量(ストローク)を伸ばすために作動量増幅装置を備えている。
【0003】
この作動量増幅装置は、ピエゾスタックと作動対象部との間に設けられており、ピエゾスタック側に配置された押さえ板体と、作動対象部側に配置された受け板体と、押さえ板体に力点が当接し、受け板体に作用点が当接するように配置された梃子体とを備えている。
【0004】
ここで、ピエゾスタックは、その上端部がケースに固定されており、自由端である下端部が押さえ板体を上下方向に変位させる。また、押さえ板体は平板状をなすものであり、押さえ板体の平面状をなす下面が、梃子体の凸状をなす先端部に接触する構成としてある。
【0005】
しかしながら、ピエゾスタックの下端部が自由端であり、押さえ板体の下面が梃子体の凸状をなす先端部に接触する構成であることから、ピエゾスタックの下端部に連結された押さえ板体が梃子体に対して横方向にずれる恐れがある。その結果、ピエゾスタックの変位量に対して増幅される変位量の再現性が悪くなってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上述した問題を解決すべくなされたものであり、弁体の変位を拡大する変位拡大機構の位置安定性を向上することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る流体制御弁は、弁体を駆動するためのアクチュエータと、前記弁体及び前記アクチュエータの間に介在し、前記アクチュエータの変位を拡大して前記弁体に伝達する変位拡大機構とを備え、前記変位拡大機構は、前記アクチュエータからの駆動力を受けて変位する入力部材と、前記入力部材及び前記弁体の間において前記弁体の中心軸線回りに配置され、前記入力部材の変位を拡大して前記弁体に伝達する複数の梃子部材とを有し、前記複数の梃子部材は、前記入力部材が接触して力点部となる接触面を有し、前記接触面は、前記弁体の中心軸線に向かって下り勾配をなすものであることを特徴とする。
【0009】
このような流体制御弁であれば、弁体の中心軸線回りに配置された複数の梃子部材が入力部材に接触して力点部となる接触面を有しており、この接触面が弁体の中心軸線に向かって下り勾配をなしているので、入力部材が中心軸線から離れる方向に位置ずれしにくくなる。その結果、変位拡大機構の位置安定性を向上することができる。変位拡大機構の位置安定性が向上することによって、アクチュエータの変位量に対して拡大される変位量の再現性を向上することができる。また、変位拡大機構の位置安定性が向上することによって、全閉状態における出流れ(液リーク)を低減することができる。さらに、全開時のマージン(全開状態の設定値)を超えてしまい、制御性が悪くなることを防止できる。その上、変位量の再現性を向上できることから流体制御の応答性を向上することができる。
【0010】
前記接触面は、前記アクチュエータの伸縮に関わらず、前記弁体の中心軸線に向かって下り勾配をなしていることが望ましい。
この構成であれば、入力部材が複数の梃子部材に接触する際は常に接触面が下り勾配であり、入力部材の位置ずれがしにくくなる。その結果、変位拡大機構の位置安定性を向上することができる。
【0011】
前記入力部材は、前記複数の梃子部材それぞれの接触面を押圧する複数の押圧部を有しており、前記各押圧部は、対応する前記接触面に線接触するものであることが望ましい。
この構成であれば、押圧部が接触面に線接触するので、アクチュエータの変位を確実に梃子部材の力点部に入力することができる。
【0012】
各押圧部の具体的な実施の態様としては、前記各押圧部は、対応する前記接触面に線接触するように形成された直線状をなす突起であることが考えられる。
【0013】
前記入力部材は、前記複数の押圧部よりも内側に形成され、前記各押圧部の頂部に連続した肉厚部を有することが望ましい。
この構成であれば、複数の押圧部よりも内側に肉厚部を有しているので、入力部材の機械的強度を向上して、アクチュエータの変位を確実に梃子部材の力点部に入力することができる。
【0014】
前記変位拡大機構は、前記複数の梃子部材及び前記弁体の間に介在し、前記複数の梃子部材の作用点部が接触する出力部材をさらに有していることが望ましい。
この構成であれば、弁体のサイズを複数の梃子部材に合わせて大きくする必要がなく、弁体のサイズを大きくすることに伴う周辺部材の大型化を防ぐことができる。
【0015】
前記変位拡大機構は、周方向において前記複数の梃子部材それぞれの間に設けられ、前記各梃子部材を周方向において位置決めする位置決め部材をさらに有していることが望ましい。
この構成であれば、複数の梃子部材の位置ずれを防ぎ、入力部材からの変位入力を確実に受けて、弁体への変位出力を確実にすることができる。
【0016】
前記入力部材は、前記アクチュエータを向く面が凸形状とされていることが望ましい。
この構成であれば、入力部材の機械的強度を向上して、アクチュエータの変位を確実に梃子部材の力点部に入力することができる。
【0017】
ピエゾスタックをアクチュエータに用いた流体制御弁(ピエゾバルブ)では、ピエゾスタックの変位量が小さいことから、バルブ開度が小さくなってしまう。
このようにピエゾスタックを有するアクチュエータを用いた流体制御弁において、本発明の変位拡大機構を適用することが望ましい。
【0018】
また、本発明に係る流体制御装置は、上述した流体制御弁と、前記流体制御弁の上流側又は下流側に設けられた流体センサと、前記流体センサの出力に基づいて前記流体制御弁を制御する弁制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
このように本発明によれば、弁体の変位を拡大する変位拡大機構の位置安定性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る流体制御装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】同実施形態の流体制御弁の拡大断面図である。
【
図3】同実施形態の変位拡大機構を示す斜視図である。
【
図4】同実施形態の梃子部材及び位置決め部材の位置関係を示す模式図である。
【
図5】同実施形態の変位拡大機構において(a)アクチュエータが縮んだ状態の様子、及び、(b)アクチュエータが伸びた状態の様子を示す模式図である。
【
図6】変形実施形態の流体制御弁の拡大断面図である。
【
図7】変形実施形態の流体制御装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る流体制御弁を用いた流体制御装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0022】
<1.流体制御装置100の基本構成>
本実施形態に係る流体制御装置100は、半導体製造プロセスに使用される所謂マスフローコントローラである。なお、流体制御装置100は、半導体製造プロセスだけでなく、その他のプロセスにおいても使用することができる。
【0023】
ここでの流体制御装置100は、
図1に示すように、圧力式のものである。具体的に流体制御装置100は、その内部に流路Lが設けられた流路ブロックBと、流路ブロックBに設置される流体制御弁Vと、流路ブロックBの流体制御弁Vよりも上流側又は下流側に設置される流体センサである一対の圧力センサPS1、PS2と、一対の圧力センサPS1、PS2で測定される圧力値に基づき算出される流路Lの流量値が予め定められた目標値に近づくように流体制御弁Vをフィードバック制御する弁制御部Cとを備えている。
【0024】
流路ブロックBは、例えば直方体形状のものであり、その所定面に流体制御弁V及び一対の圧力センサPS1、PS2が設置されている。また、流路ブロックBには、その所定面に流体制御弁Vを設置するための凹状の収容部B1が設けられている。この収容部B1によって流路Lが上流側流路L1と下流側流路L2とに分断されている。そして、収容部B1には、その底面に上流側流路L1の一端が開口しているとともに、その側面に下流側流路L2の一端が開口している。
【0025】
一対の圧力センサPS1、PS2は、流路Lに設けられた層流素子等の流体抵抗S1の上流側及び下流側にそれぞれ接続されており、いずれも一対の圧力センサPS1、PS2の出力に基づいて流量を算出する流量算出部S2に接続されている。一対の圧力センサPS1、PS2は、流路ブロックBの所定面に対して流体制御弁Vとともに一列に並べて取り付けてある。
【0026】
弁制御部Cは、CPU、メモリ、A/D・D/Aコンバータ等を備えた所謂コンピュータを有し、前記メモリに格納されているプログラムが実行され、各種機器が協働することによって各機能が実現されるようにしてある。具体的には、流量算出部S2で算出された流量値が予めメモリに記憶された目標値に近づくように流体制御弁Vの弁開度をフィードバック制御するものである。
【0027】
<2.流体制御弁Vの具体的構成>
次に、本実施形態の流体制御弁Vについて説明する。なお、以下では、説明の便宜上、弁体3に対して弁座部材2側を下側とし、弁体3に対してアクチュエータ4側を上側とする。
【0028】
本実施形態の流体制御弁Vは、例えば常時開放型(ノーマルオープンタイプ)のものであり、
図1及び
図2に示すように、弁座21が形成された弁座部材2と、弁座21に対して接離可能に設けられた弁体3と、弁体3を駆動するためのアクチュエータ4とを備えている。
【0029】
弁座部材2は、上流側流路L1及び下流側流路L2を仕切るための弁座21を有するものであり、流路ブロックBの収容部B1に収容されている。本実施形態の弁座部材2は、円環状の弁座21を有している。そして、弁座21の内側に、上流側流路L1に連通する第1内部流路2aが形成されている。また、弁座21の外側に、下流側流路L2に連通する第2内部流路2bが形成されている。
【0030】
弁体3は、弁座部材2の弁座21に着座する着座面31を有するものである。本実施形態の弁体3は、
図2に示すように、アクチュエータ4による進退方向に延びる概略円柱状の弁体本体部32と、弁体本体部32の周囲に設けられた概略円板状のダイアフラム部33とを有している。弁体本体部32の下面が着座面31となる。なお、ダイアフラム部33の外周部は概略円筒状の支持部34に接続されている。この支持部34は、流路ブロックBに図示しないシール部材を介して固定される。本実施形態では、弁体本体部32、ダイアフラム部33及び支持部34が一体形成されている。
【0031】
アクチュエータ4は、ピエゾアクチュエータであり、圧電セラミックス層と電極層が交互に積層された1又は複数のピエゾスタックを有している。また、アクチュエータ4は、ケーシング40に収容されており、ケーシング40において、アクチュエータ4の上端部(弁体3とは反対側の端部)は、ケーシング40に固定されている。つまり、アクチュエータ4が伸縮することにより、アクチュエータ4の下端部(弁体3側の端部)が変位することになる。アクチュエータ4の下端部が変位することにより、後述する変位拡大機構5を介して弁体3が移動する。
【0032】
上記の構成により、アクチュエータ4が伸びることによって、弁体3の着座面31が弁座部材2の弁座21に当接して上流側流路L1及び下流側流路L2が遮断される。また、アクチュエータ4が縮むことによって、弁体3の着座面31が弁座部材2の弁座21から離れて、上流側流路L1及び下流側流路L2が連通する。そして、アクチュエータ4の伸縮に応じて、弁体3の位置が変化し、その結果、弁座21と着座面31との距離が変化して、流量が制御される。
【0033】
<変位拡大機構5>
しかして、本実施形態の流体制御弁Vは、
図2~
図5に示すように、アクチュエータ4の変位を拡大して弁体3に伝達する変位拡大機構5を備えている。
【0034】
変位拡大機構5は、
図2~
図5に示すように、アクチュエータ4から駆動力を受けて変位する入力部材51と、入力部材51の変位を拡大して弁体3に伝達する複数の梃子部材52と、複数の梃子部材52から駆動力を受けて変位する出力部材53とを有している。
【0035】
入力部材51は、アクチュエータ4の自由端である下端部に中間連結体6を介して連結されている。また、入力部材51は、アクチュエータ4を向く面である上面が凸形状とされており、その中央部に中間連結体6が設けられる凹部51cが形成されている。そして、入力部材51は、アクチュエータ4が伸縮すると中間連結体6を介してアクチュエータ4とともに変位する。この入力部材51は、アクチュエータ4とともに変位して複数の梃子部材52に駆動力(アクチュエータ4の変位)を入力する。入力部材51は、弁体3の支持部34に接続された収容ブロック7に収容されている(
図2参照)。
【0036】
複数の梃子部材52は、入力部材51及び弁体3の間において弁体3の中心軸線3C回りに配置されている。弁体3の中心軸線3Cは、具体的には弁体本体部32の中心軸線であり、アクチュエータ4の中心軸線でもある。本実施形態の複数の梃子部材52は、弁体3の中心軸線3C回りにおいて周方向に等間隔に配置されている。ここでは、3つの梃子部材52を配置した例を示しているが、1つ又は2つの梃子部材52を用いた構成であっても良いし、4つ以上の梃子部材52を用いた構成であっても良い。
【0037】
具体的に複数の梃子部材52は、収容ブロック7に収容されている(
図2参照)。収容ブロック7の内部には、入力部材51及び複数の梃子部材52を収容する概略円柱状の空間が形成されている(
図2及び
図4参照)。そして、収容ブロック7の内部に形成された例えば円環状の突出部7aの上面(アクチュエータ4側を向く面)に複数の梃子部材52が周方向に等間隔に配置される。また、複数の梃子部材52は、収容ブロック7の内側周面7bに接触して、径方向の位置が規制される。
【0038】
各梃子部材52は、
図2に示すように、入力部材51が接触して力点部Xとなる接触面52aを有する。具体的には、各梃子部材52の上面(アクチュエータ4側を向く面)に入力部材51が接触して力点部Xとなる接触面52aを有している。また、各梃子部材52は、互いに同一形状をなすものである。
【0039】
また、各梃子部材52の下面(弁体3側を向く面)における外側には支点部Yとなる突起部52bが形成されており、前記下面の内側には作用点部Zとなる先端部52cが形成されている。なお、下面における外側とは、弁体3の中心軸線3Cから離れる側であり、下面における内側とは、弁体3の中心軸線3Cに向かう側である。
【0040】
ここで、各梃子部材52は、
図5に示すように、入力部材51から入力された変位を拡大して出力部材53に出力するために、支点部Y、力点部X及び作用点部Zの位置が設定されている。具体的には、支点部Yと力点部Xとの距離に比べて、支点部Yと作用点部Zとの距離が大きくなるように設定されている。
【0041】
各梃子部材52の接触面52aは、
図2及び
図5に示すように、弁体3の中心軸線3Cに向かって下り勾配をなすものである。ここで、「中心軸線3Cに向かって下り勾配をなす」とは、接触面52aが中心軸線3Cに向かうに連れて弁体側(アクチュエータ4とは反対側)に傾斜していることをいう。接触面52aは、アクチュエータ4の伸縮に関わらず、弁体3の中心軸線3Cに向かって下り勾配をなしている。複数の梃子部材52を収容ブロック7の突出部7aに配置した状態で、弁体3の中心軸線3Cに向かって下り勾配をなしている。本実施形態の接触面52aは、平坦面であるが、湾曲した面又は屈曲した面であっても良い。なお、接触面52aの下り勾配の傾斜角度は、アクチュエータ4が伸びる前の状態において、水平面(中心軸線3Cに直交する平面)に対して、0度よりも大きく、例えば20度以下である。
【0042】
これら複数の梃子部材52に対して入力部材51がアクチュエータ4の変位を入力することになるが、本実施形態の入力部材51は、
図2、
図3及び
図5に示すように、複数の梃子部材52それぞれの接触面52aを押圧する複数の押圧部51aを有している。具体的に入力部材51は、
図3に示すように、それぞれの押圧部51aが形成された複数の分岐部511を有している。つまり、入力部材51は、複数の分岐部511が複数の梃子部材52に対応するように設けられる。
【0043】
各押圧部51aは、対応する接触面52aに線接触するものである。ここで、線接触とは、接触面52aに対して押圧部51aが所定範囲に亘って線状に接触することをいう。また、各押圧部51aは、対応する接触面52aに線接触するように形成された直線状をなす突起である。このように押圧部51aが接触面52aに線接触することで、点接触する場合に比べて、応力集中を低減し、接触面52aの摩耗などを低減することができる。
【0044】
また、入力部材51は、複数の押圧部51aよりも内側に形成され、押圧部51aの頂部に連続した肉厚部51bを有している。この肉厚部51bの梃子部材52側を向く面である下面は平坦面である。この肉厚部51bは、入力部材51の機械的強度を高めるものである。
【0045】
ここで、周方向において複数の梃子部材52それぞれの間には、各梃子部材52を周方向において位置決めする位置決め部材54が設けられている。なお、周方向とは、弁体3の中心軸線3C回りの方向である。
【0046】
位置決め部材54は、
図2及び
図4に示すように、周方向に離れて配置された複数の梃子部材52の間に配置されるものである。この位置決め部材54は、各梃子部材52が支点部を中心に回転できるように、互いに隣接する梃子部材52に若干のガタツキを持って配置される。また、位置決め部材54は、複数の梃子部材52に対する入力部材51の位置決めを行うものである。このため、位置決め部材54は、入力部材51の分岐部511の間にも配置される。
【0047】
出力部材53は、
図2~
図5に示すように、複数の梃子部材52の作用点部Zとなる先端部52cが接触して、作用点部Zから受ける駆動力を弁体3の弁体本体部32に伝達するものである。この出力部材53は、弁体3の弁体本体部32の着座面31とは反対側の端部である上端部に接続されている。本実施形態の出力部材53は、弁体本体部32に螺合して接続されており、弁体本体部32に形成された雌ねじ部に螺合する雄ねじ部531と、当該雄ねじ部531の上端部に設けられた受け部532とを有している。受け部532は、その上面に複数の梃子部材52の作用点部Zが接触するものであり、概略円板状をなすものである。この出力部材53の受け部532により弁体本体部32の径方向のサイズを大きくすること無く、複数の梃子部材52からの力を受けることができる。
【0048】
また、出力部材53は、弾性体55により弁体3を開放する方向(開放方向)に付勢されている。具体的な構成としては、
図2に示すように、支持部34に設けられた支持リング8と出力部材53との間に弾性体55が設けられることにより、出力部材53が開放方向に付勢されている。出力部材53が開放方向に付勢されることにより、弁体3の弁体本体部32も開放方向に付勢されることになる。なお、支持リング8は、中央部に貫通孔を有しており、当該貫通孔の内部を弁体本体部32が移動する。また、弾性体55は、例えば板ばねにより構成されている。弾性体55を板ばねにより構成することで、スプリングばねを用いた場合に比べて、その設置スペースを小型化することができる。
【0049】
なお、上記の構成において、流体制御弁Vを組み上げた状態では、ダイアフラム部33の弾性力及び弾性体55の弾性力によって、出力部材53、複数の梃子部材52、入力部材51及び中間連結体6は、アクチュエータ4の下端部に押圧された状態である。つまり、流体制御弁Vを組み上げた状態では、入力部材51及び複数の梃子部材52とは互いに押圧接触している。この状態で、各梃子部材52の接触面52aは、弁体3の中心軸線3Cに向かって下り勾配をなしている(
図2参照)。また、各梃子部材52は、収容ブロック7の内側周面7bに接触しており、位置が規制されている。
【0050】
<流体制御弁Vの動作>
次に、本実施形態に係る流体制御弁Vの動作について説明する。
【0051】
流体制御弁Vは、アクチュエータ4に電圧が印加されていない状態において、弁開度(弁座部材2の弁座21と弁体3の着座面31との間の距離)が所定値になるように設定されている。なお、この弁開度が所定値になった状態が流体制御弁Vの全開状態となる。
【0052】
次に、アクチュエータ4に電圧が印加された状態になると、アクチュエータ4が伸びる。そして、このアクチュエータ4の伸びに伴う駆動力が変位拡大機構5を介して弁体3の弁体本体部32へと伝達され、弁体本体部32が弁座21に接触する方向(近づく方向)に向かって移動する。これにより、弁開度が所定値よりも小さい値となる。なお、アクチュエータ4は、印加される電圧値が大きくなるほどその伸びが大きくなるため、電圧値の大きさを調節することにより、弁開度を制御できるようになっている。
【0053】
ここで、アクチュエータ4の伸びによる変位は、
図5に示すように、変位拡大機構5により所定の倍率で拡大されて、弁体3の弁体本体部32に伝達される。
【0054】
具体的にアクチュエータ4が伸びると中間連結体6を介して入力部材51が弁座21に接触する方向(近づく方向)に変位する。入力部材51が弁座21に接触する方向に変位すると、入力部材51の各押圧部51aが各梃子部材52の力点部Xである接触面52aを押圧する。
【0055】
ここで、各梃子部材52の接触面52aは、弁体3の中心軸線3Cに向かって下り勾配をなしているので、入力部材51における中心軸線3Cから離れる方向への位置ずれが解消される。なお、各梃子部材52は、収容ブロック7の内側周面7bに接触しているので、各梃子部材52が外側にずれることはない。
【0056】
図5に示すように、各梃子部材52の力点部Xである接触面52aが押圧されると、各梃子部材52は支点部Yとなる突起部52bを回転中心として回転し、作用点部Zとなる先端部52cが出力部材53を弁座21に接触する方向に押圧する。これにより、出力部材53は、弁座21に接触する方向(近づく方向)に向かって移動する。複数の梃子部材52により、入力部材51の変位に対して出力部材53の変位が所定の倍率で拡大される。その結果、弁体3の弁体本体部32に対してアクチュエータ4の変位が拡大されて伝達される。アクチュエータ4に印加される電圧が所定値以上になると、弁座部材2の弁座21と弁体3の着座面31とが接触する。
【0057】
続いて、アクチュエータ4に印加される電圧が小さくなると、アクチュエータ4が縮む。そして、このアクチュエータ4の縮みに伴って弁体3の弁体本体部32が、弾性体55の押圧によって、弁座21と離間する方向(遠ざかる方向)に向かって移動する。これにより、弁開度が大きい値になる。
【0058】
<3.本実施形態の効果>
このように本実施形態における流体制御装置100によれば、弁体3の中心軸線3C回りに配置された複数の梃子部材52が入力部材51に接触して力点部Xとなる接触面52aを有しており、この接触面52aが弁体3の中心軸線3Cに向かって下り勾配をなしているので、入力部材51が中心軸線3Cから離れる方向に位置ずれし難くなる。その結果、変位拡大機構5の位置安定性を向上することができる。変位拡大機構5の位置安定性が向上することによって、アクチュエータ4の変位量に対して拡大される変位量の再現性を向上することができる。また、変位拡大機構5の位置安定性が向上することによって、全閉状態における出流れ(液リーク)を低減することができる。さらに、全開時のマージン(全開状態の設定値)を超えてしまい、制御性が悪くなることを防止できる。その上、変位量の再現性を向上できることから流体制御の応答性を向上することができる。
【0059】
<4.その他の実施形態>
例えば、入力部材51は、複数の分岐部511を有する構成ではなく、例えば円板形状をなすものであっても良い。この場合において、入力部材51の下面に複数の梃子部材52に対応した複数の押圧部51aが形成される構成となる。
【0060】
また、梃子部材52は、支点部Yとなる突起部52bを有する構成であったが、突起部52bを有さない構成としても良い。この場合、収容ブロック7の突出部7aの上面に凸部を形成して、梃子部材52が凸部に接触した支点部Yを介して回転可能とすることが考えられる。
【0061】
さらに、前記実施形態の梃子部材52の接触面52aは、梃子部材52の上面の略全体に形成されているが、入力部材51の押圧部51aが接触しうる領域において形成されていれば良い。ここで、押圧部51aが接触しうる領域とは、アクチュエータ4が縮んだ状態で押圧部51aが接触する部分からアクチュエータ4が伸びた状態で押圧部51aが接触する部分までの範囲であり、かつ、入力部材51が横方向にずれていたとしても押圧部51aが接触する部分を含む。
【0062】
加えて、前記実施形態の入力部材51は、肉厚部51bを有する構成であったが、
図6に示すように、肉厚部51bを有さない構成としても良い。この場合、入力部材51は、下方に突出した押圧部51aを有する構成となる。
【0063】
その上、前記実施形態では、流体制御装置100を差圧式のものとして説明したが、
図7に示すように、熱式のものであっても良い。具体的にこのものは、流路Lを流れる流体のうちの流体抵抗S1により所定割合の流体が導かれるように当該流路Lと並列接続した細管Tと、この細管Tに設けたヒータH及びその前後に設けた流体センサである一対の温度センサTS1、TS2とを具備したものである。そして、前記細管Tに流体が流れると、二つの温度センサTS1、TS2の間にその質量流量に対応した温度差が生じることから、この温度差に基づいて流量を測定するように構成してある。
【0064】
前記実施形態においては、ノーマルオープンタイプの流体制御弁Vを例示して本発明を説明しているが、本発明は、ノーマルクローズタイプの流体制御弁にも適用することができる。
【0065】
前記実施形態においては、流体制御弁Vのアクチュエータ4としてピエゾ素子(ピエゾスタック)を使用しているが、ソレノイド等を使用してもよい。
【0066】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0067】
100・・・流体制御装置
V・・・流体制御弁
PS1、PS2・・・圧力センサ(流体センサ)
C・・・弁制御部
3・・・弁体
3C・・・弁体の中心軸線
4・・・アクチュエータ
5・・・変位拡大機構
51・・・入力部材
51a・・・複数の押圧部
51b・・・肉厚部
52・・・複数の梃子部材
X・・・力点部
Y ・・・支点部
Z・・・作用点部
52a・・・接触面
53・・・出力部材
54・・・位置決め部材