(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158573
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電池集電体用ポリエステルフィルム、電池集電体用フィルム箔及び電池集電体
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20241031BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20241031BHJP
B32B 15/09 20060101ALI20241031BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241031BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M4/66 A
B32B27/36
B32B15/09 Z
C08J5/18 CFD
C08J7/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073878
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】千田 凌我
(72)【発明者】
【氏名】今井 祐輝
【テーマコード(参考)】
4F006
4F071
4F100
5H017
【Fターム(参考)】
4F006AA35
4F006AB24
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5H017AA03
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5H017EE05
5H017EE07
5H017HH00
5H017HH01
5H017HH08
(57)【要約】
【課題】銅やアルミニウム等の金属層を蒸着等により設けた場合でも、カールを抑制し得る電池集電体用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【解決手段】少なくとも片面の算術平均粗さ(Ra)が90nm以下であり、示差走査熱量測定(DSC)による結晶融解温度(Tm)が258℃以下である、電池集電体用ポリエステルフィルムである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面の算術平均粗さ(Ra)が90nm以下であり、示差走査熱量測定(DSC)による結晶融解温度(Tm)が258℃以下である、電池集電体用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
少なくとも片面の算術平均高さ(Sa)が40nm以下であり、示差走査熱量測定(DSC)による結晶融解温度(Tm)が258℃以下である、電池集電体用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
少なくとも片面の最大高さ粗さ(Rz)が470nm以下であり、示差走査熱量測定(DSC)による結晶融解温度(Tm)が258℃以下である、電池集電体用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
少なくとも片面の最大断面高さ(Rt)が1400nm以下であり、示差走査熱量測定(DSC)による結晶融解温度(Tm)が258℃以下である、電池集電体用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
少なくとも片面の最大断面高さ(St)が2800nm以下であり、示差走査熱量測定(DSC)による結晶融解温度(Tm)が258℃以下である、電池集電体用ポリエステルフィルム。
【請求項6】
120℃、5分間熱処理したときの収縮率が、長手方向(MD)及び幅方向(TD)ともに1%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電池集電体用ポリエステルフィルム。
【請求項7】
150℃、15分間熱処理したときの収縮率が、長手方向(MD)及び幅方向(TD)ともに2%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電池集電体用ポリエステルフィルム。
【請求項8】
ポリエチレンナフタレート系共重合体(A)を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の電池集電体用ポリエステルフィルム。
【請求項9】
ポリエステルフィルムにおける前記ポリエチレンナフタレート系共重合体(A)の含有量が50質量%以上である、請求項8に記載の電池集電体用ポリエステルフィルム。
【請求項10】
前記ポリエチレンナフタレート系共重合体(A)が、ジカルボン酸成分(a-1)としてナフタレンジカルボン酸を含み、ジオール成分(a-2)としてビスフェノール-エチレンオキサイド付加物とエチレングリコールとを含む、請求項8に記載の電池集電体用ポリエステルフィルム。
【請求項11】
前記ジカルボン酸成分(a-1)中に、ナフタレンジカルボン酸を80モル%以上含有する、請求項10に記載の電池集電体用ポリエステルフィルム。
【請求項12】
前記ジオール成分(a-2)中に、ビスフェノール-エチレンオキサイド付加物を1モル%以上49モル%以下含有する、請求項10に記載の電池集電体用ポリエステルフィルム。
【請求項13】
厚みが1μm以上12μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電池集電体用ポリエステルフィルム。
【請求項14】
塗布層を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の電池集電体用ポリエステルフィルム。
【請求項15】
電池がリチウムイオン電池である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電池集電体用ポリエステルフィルム。
【請求項16】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電池集電体用ポリエステルフィルムに金属層を備える、電池集電体用フィルム箔。
【請求項17】
前記金属層が、銅又はアルミニウムからなる、請求項16に記載の電池集電体用フィルム箔。
【請求項18】
前記金属層が、蒸着、メッキ又はスパッタのいずれかにより設けられる、請求項16に記載の電池集電体用フィルム箔。
【請求項19】
前記金属層が、二層構成である、請求項16に記載の電池集電体用フィルム箔。
【請求項20】
電池がリチウムイオン電池である、請求項16に記載の電池集電体用フィルム箔。
【請求項21】
請求項16に記載の電池集電体用フィルム箔の金属層上に電極層を備える、電池集電体。
【請求項22】
電池がリチウムイオン電池である、請求項21に記載の電池集電体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池集電体用ポリエステルフィルム、電池集電体用フィルム箔及び電池集電体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルフィルムは、透明性、寸法安定性、機械的特性、耐熱性、耐薬品性を有しており、包装用、電子部品用、電気絶縁用、金属ラミネート用、フレキシブルディスプレイ等のディスプレイ構成部材用、タッチパネル用、反射防止用、ガラス飛散防止用など、各種用途に用いられている。
【0003】
近年、リチウムイオン電池等の二次電池は、車両やポータブル機器などの各種製品で広く使用されている。かかる二次電池の電極は、例えば、電極活物質を含む電極活物質層が電極集電体の表面に付与されることで形成される。この電極集電体は、シート状の導電部材であり、電極活物質層から電極端子に至る導電経路の一部を形成する。
二次電池用の電極集電体には、樹脂基材の表面を金属薄膜で覆った積層構造の電極集電体から構成されることがある。かかる積層構造の電極集電体は、内部短絡などによる異常発熱が生じたときに樹脂基材が溶融変形して金属薄膜が破断する電流遮断機能を有しているため、異常発熱の進行防止に貢献できる利点を有する(特許文献1参照)。
【0004】
例えば、特許文献2には、耐熱性に優れ、薄膜化されたことにより電池容量、寿命が改良され、かつまた基材にフィルムを用いたことにより従来品より軽量化された二次電池用電極及びこれに用いるフィルムが開示されている。
また、特許文献3には、耐熱寸法安定性に優れ、電極剤基材を薄膜化したことにより電池容量が向上し、かつまたフィルムを用いることにより従来品より軽量化された二次電池用電極及びこれに用いるフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-311146号公報
【特許文献2】特開平10-40919号公報
【特許文献3】特開平10-40920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2及び3のフィルムは、銅やアルミニウム等の金属層を蒸着等により設けた場合、得られる蒸着フィルムがカールするという問題が発生することが、本発明者らの検討で明らかとなった。また、特許文献2及び3のフィルムは、溶融による短絡時電流遮断機能が不十分な場合があることも、本発明者らの検討で明らかとなった。
【0007】
そこで、本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、銅やアルミニウム等の金属層を蒸着等により設けた場合でもカールを抑制でき、溶融による短絡時電流遮断機能を向上させることで暴走反応の停止、防止に寄与できる電池集電体用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、次の構成を有することで、上記課題を解決できることを
見出した。本発明は、以下の態様を有する。
【0009】
[1]少なくとも片面の算術平均粗さ(Ra)が90nm以下であり、示差走査熱量測定(DSC)による結晶融解温度(Tm)が258℃以下である、電池集電体用ポリエステルフィルム。
[2]少なくとも片面の算術平均高さ(Sa)が40nm以下であり、示差走査熱量測定(DSC)による結晶融解温度(Tm)が258℃以下である、電池集電体用ポリエステルフィルム。
[3]少なくとも片面の最大高さ粗さ(Rz)が470nm以下であり、示差走査熱量測定(DSC)による結晶融解温度(Tm)が258℃以下である、電池集電体用ポリエステルフィルム。
[4]少なくとも片面の最大断面高さ(Rt)が1400nm以下であり、示差走査熱量測定(DSC)による結晶融解温度(Tm)が258℃以下である、電池集電体用ポリエステルフィルム。
[5]少なくとも片面の最大断面高さ(St)が2800nm以下であり、示差走査熱量測定(DSC)による結晶融解温度(Tm)が258℃以下である、電池集電体用ポリエステルフィルム。
[6]120℃、5分間熱処理したときの収縮率が、長手方向(MD)及び幅方向(TD)ともに1%以下である、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の電池集電体用ポリエステルフィルム。
[7]150℃、15分間熱処理したときの収縮率が、長手方向(MD)及び幅方向(TD)ともに2%以下である、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の電池集電体用ポリエステルフィルム。
[8]ポリエチレンナフタレート系共重合体(A)を含む、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の電池集電体用ポリエステルフィルム。
[9]ポリエステルフィルムにおける前記ポリエチレンナフタレート系共重合体(A)の含有量が50質量%以上である、上記[8]に記載の電池集電体用ポリエステルフィルム。
[10]前記ポリエチレンナフタレート系共重合体(A)が、ジカルボン酸成分(a-1)としてナフタレンジカルボン酸を含み、ジオール成分(a-2)としてビスフェノール-エチレンオキサイド付加物とエチレングリコールとを含む、上記[8]又は[9]に記載の電池集電体用ポリエステルフィルム。
[11]前記ジカルボン酸成分(a-1)中に、ナフタレンジカルボン酸を80モル%以上含有する、上記[10]に記載の電池集電体用ポリエステルフィルム。
[12]前記ジオール成分(a-2)中に、ビスフェノール-エチレンオキサイド付加物を1モル%以上49モル%以下含有する、上記[10]又は[11]に記載の電池集電体用ポリエステルフィルム。
[13]厚みが1μm以上12μm以下である、上記[1]~[12]のいずれか1つに記載の電池集電体用ポリエステルフィルム。
[14]塗布層を有する、上記[1]~[13]のいずれか1つに記載の電池集電体用ポリエステルフィルム。
[15]電池がリチウムイオン電池である、上記[1]~[14]のいずれか1つに記載の電池集電体用ポリエステルフィルム。
[16]上記[1]~[15]のいずれか1つに記載の電池集電体用ポリエステルフィルムに金属層を備える、電池集電体用フィルム箔。
[17]前記金属層が、銅又はアルミニウムからなる、上記[16]に記載の電池集電体用フィルム箔。
[18]前記金属層が、蒸着、メッキ又はスパッタのいずれかにより設けられる、上記[16]又は[17]に記載の電池集電体用フィルム箔。
[19]前記金属層が、二層構成である、上記[16]~[18]のいずれか1つに記載の電池集電体用フィルム箔。
[20]
電池がリチウムイオン電池である、請求項16~19のいずれか1つに記載の電池集電体用フィルム箔。
[21]上記[16]~[20]のいずれか1つに記載の電池集電体用フィルム箔の金属層上に電極層を備える、電池集電体。
[22]電池がリチウムイオン電池である、上記[21]に記載の電池集電体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、銅やアルミニウム等の金属層を蒸着等により設けた場合でもカールを抑制でき、溶融による短絡時電流遮断機能を向上させることで暴走反応の停止、防止に寄与できる電池集電体用ポリエステルフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフィルム箔の構造を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る金属層が二層構成である場合を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る金属層が二層構成である場合のフィルム箔の構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態の一例について説明する。ただし、本発明は、次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
<<ポリエステルフィルム>>
本発明の電池集電体用ポリエステルフィルム(以下、「本フィルム」とも称する。)は、示差走査熱量測定(DSC)による結晶融解温度(Tm)が258℃以下であり、以下の(1)~(5)の少なくともいずれかの要件を満足することが好ましい。これらの要件は、それぞれ一つを満足すればよく、複数の要件を重複して満足してもよい。
(1)少なくとも片面の算術平均粗さ(Ra)が90nm以下である。
(2)少なくとも片面の算術平均高さ(Sa)が40nm以下である。
(3)少なくとも片面の最大高さ粗さ(Rz)が470nm以下である。
(4)少なくとも片面の最大断面高さ(Rt)が1400nm以下である。
(5)少なくとも片面の最大断面高さ(St)が2800nm以下である。
【0014】
また、本フィルムは、120℃、5分間熱処理したときの収縮率が長手方向(MD)及び幅方向(TD)ともに1%以下であることが好ましい。
【0015】
なお、フィルムの長手方向(MD)とは、フィルムの製造工程でフィルムが進行する方向、すなわちフィルムロールの巻き方向をいい、機械方向や縦方向とも称する。
フィルムの幅方向(TD)とは、フィルム面に平行かつ長手方向と直交する方向をいい、すなわち、フィルムロール状としたときロールの中心軸と平行な方向をいい、横方向とも称する。
【0016】
本フィルムは、上述の要件を満たすものであれば、特に限定されず、本フィルムは単層構造であっても積層(多層)構造であってもよい。本フィルムが積層構造の場合、本フィルムは2層構造、3層構造などでもよいし、本発明の要旨を逸脱しない限り、4層又はそれ以上の多層であってもよい。積層する層数は、特に限定されないが、10層以下であることが好ましい。10層以下であれば、各層の厚みが十分となるため、製膜時の積層性が十分となり、フローマーク等が発生しにくくなり、フィルムの品質が十分保たれる。
なお、本フィルムが2層以上の積層構造である場合、2種3層、3種3層が好ましく、2種3層であることがより好ましい。
【0017】
また、本フィルムは、無延伸フィルム(シート)であっても延伸フィルムであってもよい。中でも、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムであることが好ましい。その中でも、力学特性のバランスや平面性に優れる点で、二軸延伸フィルムであることがより好ましい。
【0018】
本フィルムは、ポリエステルを主成分樹脂とすることが好ましい。また、本フィルムが積層構造の場合にあっては、各層の主成分樹脂がポリエステルであることが好ましい。
なお、「主成分樹脂」とは、各層を構成する樹脂のうち最も含有割合の多い樹脂を意味し、例えば各層を構成する樹脂のうち50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上(100質量%を含む)を占める樹脂である。
【0019】
<ポリエステル>
本フィルムの原料であるポリエステルは、特に限定されず、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。具体的には、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合してなるポリエステルが挙げられる。
【0020】
上記ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、3,3’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0021】
上記ジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ダイマージオール、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF若しくはビスフェノールS等のビスフェノール化合物若しくはその誘導体又はそれらのエチレンオキサイド付加物)等が挙げられる。
【0022】
代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等が例示される。
【0023】
共重合ポリエステルとしては、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分の主成分となる化合物、及び、ジオール成分の主成分となる化合物以外の第3成分を共重合成分として含む、共重合ポリエステルを挙げることができる。
【0024】
中でも、本フィルムは、上記結晶融解温度(Tm)及び上記収縮率を所望の値へと調整しやすい観点から、ポリエステルとしてポリエチレンナフタレート(以下、「PEN」とも称する。)又はポリエチレンナフタレート系共重合体(A)(以下、「PEN系共重合体(A)」とも称する。)を含むことが好ましく、PEN系共重合体(A)を含むことがより好ましい。
本フィルムにおける前記PEN又はPEN系共重合体(A)の含有量は、本フィルムを構成する樹脂中、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上(100質量%を含む)である。
なお、本フィルムが積層構造の場合にあっては、各層中に含まれるPEN又はPEN系共重合体(A)の含有量が、いずれも上記を満たすことが好ましい。また、PENとPEN系共重合体(A)の混合物であってもよい。
【0025】
前記PEN系共重合体(A)とは、具体的には、ジカルボン酸成分(a-1)及びジオール成分(a-2)を含み、より具体的には、前記ジカルボン酸成分(a-1)として2,6-ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、前記ジオール成分(a-2)としてエチレングリコールを含み、ジカルボン酸成分(a-1)及びジオール成分(a-2)の少なくともいずれかに共重合成分を含有する。
【0026】
前記PEN系共重合体(A)は、ジカルボン酸成分(a-1)中に、2,6-ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸を80モル%以上含有することが好ましく、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくはジカルボン酸成分(a-1)の95モル%以上、よりさらに好ましくはジカルボン酸成分(a-1)の全て(100モル%)が2,6-ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸である。
ジカルボン酸成分(a-1)中のナフタレンジカルボン酸の含有量を80モル%以上とすることにより、上記収縮率を所望の範囲へと調整しやすくなる。
なお、上記ナフタレンジカルボン酸としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸が最も好ましい。
【0027】
前記PEN系共重合体(A)は、ジオール成分(a-2)中に、エチレングリコールを51モル%以上含有することが好ましく、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上、とりわけ好ましくは90モル%以上である。一方、ジオール成分(a-2)中のエチレングリコールは、好ましくは99モル%以下、より好ましくは98モル%以下、さらに好ましくは97モル%以下、特に好ましくは96モル%以下、とりわけ好ましくは95モル%以下である。
ジオール成分(a-2)中のエチレングリコールの含有量をかかる範囲とすることにより、上記結晶融解温度(Tm)を所望の範囲へと調整しやすくなる。
【0028】
前記PEN系共重合体(A)は、ジカルボン酸成分(a-1)中に共重合成分を好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下含有し、さらに好ましくはジカルボン酸成分(a-1)の全てが2,6-ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、すなわち共重合成分は0モル%であることがよりさらに好ましい。
また、前記PEN系共重合体(A)は、ジオール成分(a-2)中に共重合成分を49モル%以下含有することが好ましく、より好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下、特に好ましくは20モル%以下、とりわけ好ましくは10モル%以下含有する。一方、ジオール成分(a-2)中の共重合成分は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは2モル%以上、さらに好ましくは3モル%以上、特に好ましくは4モル%以上、とりわけ好ましくは5モル%以上である。
ジカルボン酸成分(a-1)及び/又はジオール成分(a-2)中の共重合成分の含有量をかかる範囲とすることにより、上記結晶融解温度(Tm)及び上記収縮率を所望の範囲へと調整しやすくなる。
【0029】
前記ジカルボン酸成分(a-1)に加えられる共重合成分としては、主成分を2,6-ナフタレンジカルボン酸とした場合には、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、3,3’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。成形性の観点から、イソフタル酸、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸が好ましい。これらの共重合成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
また、前記ジオール成分(a-2)に加えられる共重合成分としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ダイマージオール、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF若しくはビスフェノールS等のビスフェノール化合物若しくはその誘導体又はそれらのエチレンオキサイド付加物)等が挙げられる。フィルム強度保持の観点から、ビスフェノール類がより好ましく、ビスフェノール類としては、ビスフェノール-エチレンオキサイド付加物を用いることが好ましく、特にビスフェノールA-エチレンオキサイド付加物を用いることが好ましい。これらの共重合成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
すなわち、前記PEN系共重合体(A)は、ジカルボン酸成分(a-1)として2,6-ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸を含み、ジオール成分(a-2)としてビスフェノールA-エチレンオキサイド付加物等のビスフェノール-エチレンオキサイド付加物とエチレングリコールとを含むことが最も好ましい。
このPEN系共重合体(A)において、ジカルボン酸成分(a-1)中に、2,6-ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸を好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、よりさらに好ましくは100モル%含有する。
また、このPEN系共重合体(A)において、ジオール成分(a-2)中に、ビスフェノールA-エチレンオキサイド付加物等のビスフェノール-エチレンオキサイド付加物を好ましくは1モル%以上49モル%以下、より好ましくは2モル%以上40モル%以下、さらに好ましくは3モル%以上30モル%以下、特に好ましくは4モル%以上20モル%以下、とりわけ好ましくは5モル%以上10モル%以下含有し、エチレングリコールを好ましくは51モル%以上99モル%以下、より好ましくは60モル%以上98モル%以下、さらに好ましくは70モル%以上97モル%以下、特に好ましくは80モル%以上96モル%以下、とりわけ好ましくは90モル%以上95モル%以下含有する。
【0032】
なお、通常、エチレングリコールを原料の1つとしてポリエステルを製造(重縮合)する場合、エチレングリコールからジエチレングリコールが副生する。本明細書においては、このジエチレングリコールを副生ジエチレングリコールと称する。エチレングリコールからのジエチレングリコールの副生量は、重縮合の様式等によっても異なるが、エチレングリコールのうち5モル%以下程度である。本発明においては、5モル%以下のジエチレングリコールを副生ジエチレングリコールとした上で、前記副生ジエチレングリコールもエチレングリコールに包含されるものとし、共重合成分とは区別される。一方、ジエチレングリコールの含有量によっては、より具体的にはジエチレングリコールが5モル%を超えて含有されている場合には、ジエチレングリコールは副生ジエチレングリコールとしてではなく、共重合成分として扱う。
【0033】
なお、本フィルムが多層構造である場合には、いずれかの層、好ましくは各層中に含まれるPEN系共重合体(A)を構成する共重合成分の種類と含有量は、上記と同様であればよく、各層を構成する樹脂や各層中のPEN系共重合体(A)は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
<重合触媒>
ポリエステルを重縮合する際の重縮合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができ、例えばチタン化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物等が挙げられる。なかでも、生産性の観点から、チタン化合物、アンチモン化合物であることが好ましい。
【0035】
<粒子>
本フィルム中には、粒子を含有させることも可能である。ポリエステルフィルムは、粒子を含有することで、易滑性が付与され、かつ各工程での傷発生を防止して、取扱い性が良好となる。
本フィルム中に含有させる粒子の種類は、易滑性を付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子の他、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン-アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子等の架橋高分子、シュウ酸カルシウム及びイオン交換樹脂等の有機粒子を挙げることができる。
さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0036】
使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。
また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0037】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01~5μm以下、好ましくは0.03~4μm、より好ましくは0.05~3.5μm、よりさらに好ましくは0.1~3μmの範囲である。平均粒径がかかる範囲であれば、本フィルムの取り扱い性と透明性を両立させることができる。
なお、粒子の平均粒径は、粒子が粉体の場合には、遠心沈降式粒度分布測定装置(例えば株式会社島津製作所製、「SA-CP3型」)を用いて粉体を測定した等価球形分布における積算体積分率50%の粒径(d50)を平均粒径とすることができる。フィルム、層又は樹脂中の粒子の平均粒径については、10個以上の粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)観察して粒子の直径を測定し、その平均値として求めることができる。その際、非球状粒子の場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子の直径として測定することができる。
【0038】
本フィルムに粒子を含有させる場合、例えば、表層と中間層を設けて、表層に粒子を含有させることが好ましい。また、3種3層構造などにより表裏異設計とする場合は、少なくとも一方の表層のみに粒子を含有させることも可能である。
粒子の含有量は、平均粒径にも依存するが、粒子を含有する層において、0.0003質量%以上5質量%以下が好ましく、より好ましくは0.001質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以上1質量%以下、よりさらに好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下である。かかる範囲であれば、本フィルムの滑り性と透明性を良好なものとすることができる。
【0039】
本フィルム中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、エステル化又はエステル交換反応終了後、添加するのが好ましい。
【0040】
<その他>
オリゴマー成分の析出量を抑えるために、オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステルを原料としてフィルムを製造してもよい。オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステルの製造方法としては、種々公知の方法を用いることができ、例えばポリエステル製造後に固相重合する方法等が挙げられる。
また、本フィルムを3層以上の構成とし、本フィルムの表層を、オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステル原料を用いた層とすることで、オリゴマー成分の析出量を抑えてもよい。
また、ポリエステルは、エステル化又はエステル交換反応をした後に、さらに反応温度を高くして減圧下で溶融重縮合して得てもよい。
【0041】
なお、本フィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0042】
本フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲において、ポリエステル以外のその他の樹脂を含むことができる。
その他の樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、及び、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0043】
本フィルムの厚みは、1μm以上12μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以上10μm以下、さらに好ましくは2μm以上8μm以下、特に好ましくは2μm以上6μm以下である。
当該厚みを1μm以上とすることで、フィルム強度が実用範囲内に保たれやすい。一方、当該厚みを12μm以下とすることで、例えば、リチウムイオン電池集電体用フィルム箔としたときに、フィルム箔、ひいてはリチウムイオン電池集電体の薄膜化・軽量化に寄与できる。当該厚みは、製膜条件によって調整することができる。
なお、本フィルムの厚みについては、1/1000mmのダイヤルゲージにて、面内を不特定に5箇所測定しその平均を厚みとした。
【0044】
<塗布層>
本フィルムは、コーティング等により塗布層を設けてもよい。塗布層を形成する樹脂組成物をポリエステルフィルムに塗布し、必要に応じて、塗布した樹脂組成物に対して乾燥、硬化、熱処理等などの処理を行って形成すればよく、少なくとも熱処理を行うことが好ましい。
塗布層に用いる樹脂組成物は特に限定されるものではない。樹脂組成物を塗布する方法は、特に限定されず、例えば、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0045】
また、塗布層の形成方法としては、インラインコーティング及びオフラインコーティング法も用いることができる。塗布した樹脂組成物を熱処理する方法は、特に限定されるわけではなく、例えばオフラインコーティングにより樹脂層を設ける場合、通常、80~200℃で3~40秒間、好ましくは100~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。一方、インラインコーティングにより樹脂層を設ける場合、通常、70~280℃で3~200秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
熱処理は、上記温度範囲内において温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。熱処理の少なくとも一部は、延伸時の加熱により行ってもよい。また、乾燥及び硬化は、上記熱処理における加熱により合わせて行うとよい。
【0046】
塗布層は、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより形成されるのが好ましい。インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押し出ししてから延伸後、熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻き上げ前のフィルムのいずれかにコーティングする。
【0047】
以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と樹脂層形成を同時に行うことができるため、製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、樹脂層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングフィルムに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。
【0048】
<ポリエステルフィルムの製造方法>
次に、本フィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。
例えば二軸延伸フィルムを製造する場合、先に述べたポリエステルの乾燥したペレットを、押出機などの溶融押出装置を用いてダイから溶融シートとして押し出し、回転冷却ドラムなどの冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。ここで、冷却は、例えばポリマーのガラス転移点以下の温度となるように行い、実質的に非晶状態の未配向シート(未延伸シート)を得るとよい。また、シートの平面性を向上させるためシートと冷却ロールとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法及び/又は液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0049】
次に、得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロール又はテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70~120℃、好ましくは80~110℃であり、延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは3~6倍である。
【0050】
次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70~170℃、好ましくは75~160℃であり、延伸倍率は通常3~7倍、好ましくは3.5~6倍である。
【0051】
そして、引き続き、通常180~270℃の温度、好ましくは190~260℃の温度で、緊張下又は30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸延伸フィルムを得る。この熱処理は、熱固定工程とも呼ばれる。熱処理は、温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。
また、熱処理の後に冷却ゾーンにて冷却を行ってもよい。冷却温度は、フィルムを構成するポリエステルのガラス転移温度(Tg)より高い温度であることが好ましく、より具体的には、100~160℃の範囲であることが好ましい。この冷却は、温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。
上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0052】
また、本フィルムの製造に同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70~120℃、好ましくは80~110℃で温度コントロールされた状態で機械方向(縦方向)及び幅方向(横方向)に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で好ましくは4~50倍、より好ましくは7~35倍、さらに好ましくは10~25倍である。
そして、引き続き、通常170~250℃の温度で、緊張下又は30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式及びリニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0053】
<ポリエステルフィルムの表面粗さと静摩擦係数>
本フィルムの少なくとも片面の算術平均粗さ(Ra)は90nm以下であることが好ましく、70nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましく、40nm以下であることがよりさらに好ましく、30nm以下であることが特に好ましく、25nm以下であることが最も好ましい。本フィルムの少なくとも片面の算術平均粗さ(Ra)は、1nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましく、6nm以上であることがさらに好ましく、10nm以上であることがよりさらに好ましく、14nm以上であることがよりさらに好ましく、17nm以上であることがよりさらに好ましく、22nm以上であることがよりさらに好ましい。
【0054】
本フィルムの少なくとも片面の算術平均高さ(Sa)は40nm以下であることが好ましく、25nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましく、15nm以下であることがよりさらに好ましく、10nm以下であることがよりさらに好ましく、8nm以下であることがよりさらに好ましく、6nm以下であることが特に好ましく、4nm以下であることが最も好ましい。
本フィルムの少なくとも片面の算術平均高さ(Sa)は、0.2nm以上であることが好ましく、0.4nm以上であることがより好ましく、0.7nm以上であることがさらに好ましく、1nm以上であることがよりさらに好ましく、1.5nm以上であることがよりさらに好ましく、2nm以上であることが特に好ましく、2.5nm以上であることが最も好ましい。
【0055】
本フィルムの少なくとも片面の最大高さ粗さ(Rz)は470nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましく、350nm以下であることがさらに好ましく、300nm以下であることがよりさらに好ましく、250nm以下であることが特に好ましく、200nm以下であることが最も好ましい。
本フィルムの少なくとも片面の最大高さ粗さ(Rz)は、20nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましく、40nm以上であることがさらに好ましく、70nm以上であることがよりさらに好ましく、100nm以上であることが特に好ましく、140nm以上であることが最も好ましい。
【0056】
本フィルムの少なくとも片面の最大断面高さ(Rt)は1400nm以下であることが好ましく、1000nm以下であることがより好ましく、800nm以下であることがさらに好ましく、600nm以下であることがよりさらに好ましく、500nm以下であることが特に好ましく、400nm以下であることが最も好ましい。
本フィルムの少なくとも片面の最大断面高さ(Rt)は、50nm以上であることが好ましく、80nm以上であることがより好ましく、130nm以上であることがさらに好ましく、180nm以上であることがよりさらに好ましく、240nm以上であることがよりさらに好ましく、280nm以上であることが特に好ましく、320nm以上であることが最も好ましい。
【0057】
本フィルムの少なくとも片面の最大断面高さ(St)は2800nm以下であることが好ましく、2000nm以下であることがより好ましく、1500nm以下であることがさらに好ましく、1000nm以下であることがよりさらに好ましく、700nm以下であることがよりさらに好ましく、400nm以下であることが特に好ましく、200nm以下であることが最も好ましい。
本フィルムの少なくとも片面の最大断面高さ(St)は、20nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、80nm以上であることがさらに好ましく、100nm以上であることがよりさらに好ましく、130nm以上であることが特に好ましく、150nm以上であることが最も好ましい。
【0058】
本フィルムの算術平均粗さ(Ra)、算術平均高さ(Sa)、最大高さ粗さ(Rz)、最大断面高さ(Rt)又は最大断面高さ(St)が前記下限値以上であれば、本フィルムの表面が平滑すぎず適度な粗さを有しているため滑り性が良好となり、ロールとの適切な密着性が得られやすくなり、ロール走行性に優れる傾向となる。
また、算術平均粗さ(Ra)が前記上限値以下であれば、蒸着やスパッタ等により金属層を設ける際のフィルム搬送中に、搬送ロール上で滑り、ずれ、捻じれ、しわ等が発生しにくくなる等の利点がある。加えて、蒸着やスパッタ等によるエネルギーのかかり方がフィルム表面に対して全体的に均一になりやすいため、金属層のより均一な膜厚制御が容易となったり、蒸着後のフィルムのカール抑制にも効果があったりする。さらに加えて、部分的な熱収縮も抑制でき、ひいては蒸着後フィルムのカールやシワ発生の抑制につながりやすくなる。
【0059】
なお、本フィルムが積層体構造である場合は、最表裏層のいずれかの表面が、より好ましくは両方の表面の粗さが、上記範囲であることが好ましい。
【0060】
当該算術平均粗さ(Ra)、最大高さ粗さ(Rz)、最大断面高さ(Rt)は、JIS B0601:2013に準拠し接触式表面粗さ計を用いて、実施例に記載の方法によって測定できる。算術平均高さ(Sa)、最大断面高さ(St)は、非接触表面・層断面形状計測システムを用いて、実施例に記載の方法によって測定できる。
【0061】
本フィルムの一方の面(a)の表面粗さ(Raa、Saa、Rza、Rta、Sta)と他方の面(b)の表面粗さ(Rab、Sab、Rzb、Rtb、Stb)は、同程度であることが好ましい。具体的には、下記(1)又は(2)の条件を満たすことが好ましい。
1≦Saa/Sab<1.2・・・(1)
1≦Sta/Stb≦8・・・(2)
ただし、上記式において、Saa≧Sabであり、Sta≧Stbである。
【0062】
Saa/Sabは、1.16以下であることがより好ましく、1.13以下であることがさらに好ましく、1.1以下であることがよりさらに好ましく、1.08以下であることが特に好ましく、1.06以下であることが最も好ましい。Saa/Sabは、1.01以上であることがより好ましく、1.02以上であることがさらに好ましく、1.025以上であることがよりさらに好ましく、1.03以上であることが特に好ましく、1.035以上であることが最も好ましい。
Sta/Stbは、6以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましく、3以下であることがよりさらに好ましく、2以下であることがよりさらに好ましく、1.7以下であることが特に好ましく、1.5以下であることが最も好ましい。Sta/Stbは、1.03以上であることがより好ましく、1.07以上であることがさらに好ましく、1.1以上であることがよりさらに好ましく、1.14以上であることがよりさらに好ましく、1.18以上であることが特に好ましく、1.2以上であることが最も好ましい。
【0063】
また、本フィルムの一方の面と他方の面の静摩擦係数は、0.76以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.65以下であることがさらに好ましく、0.6以下であることがよりさらに好ましく、0.55以下であることが特に好ましい。
また、本フィルムの一方の面と他方の面の静摩擦係数は0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.35以上であることがよりさらに好ましく、0.4以上であることがよりさらに好ましい。
【0064】
上記一方の面と他方の面の表面粗さが上記範囲であることで、上記一方の面と他方の面の静摩擦係数が上記範囲であることで、さらには上記一方の面と他方の面の表面粗さと静摩擦係数がともに上記範囲であることで、上記と同様の効果が得られやすくなり好ましい。
なお、当該静摩擦係数は、実施例に記載の方法によって測定できる。
【0065】
当該表面粗さRa、Sa、Rz、Rt、St及び静摩擦係数を調整する方法としては、特に制限はないが、例えば、エンボスロール転写、エンボスベルト転写、エンボスフィルム転写等の転写処理、サンドブラスト処理、ショットブラスト処理、エッチング処理、彫刻処理、表面結晶化等種々の方法を用いることができる。溶融樹脂をフィルム状に押し出しながら連続的に均一に表面凹凸を形成しやすい点から、キャストロール上にフィルム状の溶融樹脂をキャスティングすることにより粗面化する方法が好ましい。この場合、キャストロールの算術平均粗さを調整することにより、樹脂フィルムの表面粗さを調整することができる。また、樹脂に含有させる粒子の粒径、形状、含有量を適宜調整したり、延伸温度、延伸倍率等のフィルム製膜条件を調整したりすることによっても可能である。
また、コーティング等により塗布層や離型層等の機能層を別途設ける場合は、使用する塗布液の配合や塗布厚み、塗布条件、塗布のタイミング(インラインかオフラインか等)等を適宜使用することによっても可能である。
【0066】
<ポリエステルフィルムの物性>
本フィルムの120℃、5分間熱処理したときの収縮率は、長手方向(MD)及び幅方向(TD)のいずれかが1%以下であることが好ましい。当該収縮率(120℃、5分)が1%以下であると、高温処理時の十分な寸法安定性が得られる。高温処理としては、後述する金属層を設ける処理が挙げられ、金属層を設ける際の収縮が小さければ、金属層との密着性低下やフィルムの変形を抑制することができる。
かかる観点から、当該収縮率(120℃、5分)は、長手方向(MD)及び幅方向(TD)のいずれかが0.7%以下であることがより好ましく、0.6%以下であることがさらに好ましく、特に好ましくは0.5%以下である。当該収縮率(120℃、5分)の下限値は、特に制限されないが、通常-0.5%程度であり、好ましくは-0.3%である。
当該収縮率(120℃、5分)は、長手方向(MD)及び幅方向(TD)ともに上記範囲であることが特に好ましい。
【0067】
高温処理時の寸法安定性を向上させる観点から、本フィルムの150℃、15分間熱処理したときの収縮率は、長手方向(MD)及び幅方向(TD)のいずれかが2%以下であることが好ましく、より好ましくは1.7%以下であり、さらに好ましくは1.6%以下であり、よりさらに好ましくは1.5%以下であり、よりさらに好ましくは1.4%以下である。当該収縮率(150℃、15分)の下限値は、特に制限されないが、通常-0.5%程度であり、好ましくは-0.1%である。
当該収縮率(150℃、15分)は、長手方向(MD)及び幅方向(TD)ともに上記範囲であることが特に好ましい。
また、同様の観点から、本フィルムの180℃、5分間熱処理したときの収縮率は、長手方向(MD)及び幅方向(TD)ともに4%以下であることが好ましく、より好ましくは3.5%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは2.5%以下である。当該収縮率(180℃、5分)の下限値は、特に制限されないが、通常-0.5%程度であり、好ましくは0%である。
当該収縮率(180℃、5分)は、長手方向(MD)及び幅方向(TD)ともに上記範囲であることが特に好ましい。
【0068】
上記収縮率(120℃、5分)、収縮率(150℃、15分)及び収縮率(180℃、5分)は、本フィルムを構成するポリエステルの種類や含有量、粒子を含む場合は粒子の粒径や含有量、本フィルムの製膜条件等によって調整することができる。
なお、これらの収縮率は、実施例に記載の方法によって測定できる。
【0069】
また、本フィルムの示差走査熱量測定(DSC)による結晶融解温度(Tm)は、262℃以下であることが好ましい。当該結晶融解温度(Tm)が262℃以下であると、後述する電池に用いた際の短絡時の溶融絶縁の開始温度が低くなるため、短絡による暴走反応の停止・防止の開始が速やかに行われる。すなわち、短絡時の溶融絶縁の開始温度を低くすることで、溶融による短絡時電流遮断機能を向上させることができる。
かかる観点から、当該結晶融解温度(Tm)は、258℃以下であることが好ましく、256℃以下であることがより好ましく、さらに好ましくは254℃以下、特に好ましくは252℃以下である。
一方、高温処理時の成形性及び強度保持の観点から、当該結晶融解温度(Tm)は、200℃以上であることが好ましく、より好ましくは220℃以上、さらに好ましくは240℃以上である。
【0070】
当該結晶融解温度(Tm)は、本フィルムを構成するポリエステルの種類や含有量等によって調整することができる。
なお、当該結晶融解温度(Tm)は、実施例に記載の方法によって測定できる。
【0071】
<<フィルム箔>>
本発明の電池集電体用フィルム箔(以下、「本フィルム箔」とも称する。)は、本フィルムの表面に金属層を備えることが好ましい。該金属層は、本フィルムの少なくとも片面に備えられていればよいが、両面に金属層を備えることがより好ましい。
より具体的には、
図1に示したとおり、本フィルム箔1は、ポリエステルフィルム11の両面に金属層12を備えることが好ましい。
【0072】
<金属層>
前記金属層を形成する金属としては、導電性を有する金属であれば特に限定されず、例えばアルミニウム、ニッケル、金、銀、銅、カドミウム、チタンなどが挙げられる。中でも、例えば、リチウムイオン電池の正極に使用する電極集電体(正極集電体)や負極に使用する電極集電体(負極集電体)として汎用的に用いられている観点から、前記金属層は、銅又はアルミニウムからなることが好ましい。ここで、「からなる」とは、銅又はアルミニウムを主成分として含有していることを意味する。
なお、前記金属層は、導電性を有する金属以外の元素を含有していてもよい。
【0073】
前記金属層は、蒸着、メッキ又はスパッタのいずれかにより設けられることが好ましく、より具体的には、真空蒸着法、エレクトロプレーティング法、スパッタリング法等の従来公知の方法を用いることができる。
【0074】
中でも、前記金属層は二層構成であることが好ましい。
かかる態様の一例として、金属層12は、蒸着又はスパッタにより設けられた金属層21と、メッキにより設けられた金属層22との二層構成が挙げられる(
図2参照)。かかる場合、本フィルム箔1は、ポリエステルフィルム11の両面に、蒸着又はスパッタにより設けられた金属層21と、メッキにより設けられた金属層22をこの順に備えることとなる(
図3参照)。
このような二層構成とすることで、従来の性能を保ちながら、従来の金属箔よりもさらに薄膜化・軽量化することができたり、従来の金属箔に比べてコストを削減したりすることができる。
【0075】
<<電池集電体>>
本発明の電池集電体(以下、「本集電体」とも称する)は、前記金属層上に電極層を備えることが好ましい。
前記電極層は、前記金属層表面に、従来公知の電極剤を積層することにより形成され、電池用電極とすることができる。
さらに、本集電体を用い、従来から知られている方法で、リチウムイオン電池等の電池を製造することができる。
【0076】
<<用途>>
本フィルム及び本フィルム箔は、電池集電体用に用いることができる。電池としては、蓄電池、二次電池、リチウムイオン電池等が挙げられ、リチウムイオン電池に好ましく用いられ、特にリチウムイオン二次電池に好適に用いられる。
したがって、本集電体は、正極集電体としては電極層(正極)/金属層/ポリエステルフィルム/金属層/電極層(正極)、負極集電体としては電極層(負極)/金属層/ポリエステルフィルム/金属層/電極層(負極)で例示される構成を備えることが好ましい。
本集電体が、かかる構成を備えることで、従来の金属箔を使用したリチウムイオン電池等の電池集電体、より具体的には電極層(正極)/金属層/電極層(正極)や電極層(負極)/金属層/電極層(負極)に比べて、短絡による暴走反応の停止・防止が可能となり、それでいて薄膜化・軽量化やコスト削減に寄与できる利点を有する。
【0077】
本フィルム、本フィルム箔及び本集電体が、短絡による暴走反応の停止・防止の寄与に貢献できる理由は、短絡部位の電流遮断機能を有するためである。電流遮断は、異常発熱時にフィルムが溶融変形して金属薄膜(金属層)が破断することにより、あるいはフィルム基材(ポリエステルフィルム)が溶融して短絡部位を絶縁することにより、その機能が発揮される。特に、本発明では、ポリエステルフィルムの結晶融解温度(Tm)が特定範囲であることにより、短絡時の溶融絶縁の開始温度を低くすることができ、溶融絶縁による暴走反応の停止・防止に対してより早い段階から寄与することができる。
また、本フィルム、本フィルム箔及び本集電体が、薄膜化・軽量化やコスト削減に寄与できる理由は、上述のとおり、金属層の一部をポリエステルフィルムに置き換えることにより、金属の使用を削減することができるためである。
【0078】
<<語句の説明>>
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」あるいは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例0079】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
ただし、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0080】
<評価方法>
(1)固有粘度(IV)
ポリエステルに非相溶な成分を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mLを加えて溶解させ、粘度測定装置「VMS-022UPC・F10」(株式会社離合社製)を用いて、30℃で測定した。
【0081】
(2)粒子の平均粒径
株式会社島津製作所製の遠心沈降式粒度分布測定装置(SA-CP3型)を用いて測定した等価球形分布における積算体積分率50%の粒径を平均粒径d50とした。
【0082】
(3)結晶融解温度(Tm)
株式会社パーキンエルマー製の示差走査熱量測定装置(DSC 8500)を用いてJIS K7121(2012年)に準じて20℃から300℃まで分速10℃にて昇温した際に現れる結晶融解温度(Tm)を測定した。最大吸熱ピークの極値を結晶融解温度(Tm)とした。内蔵ソフトにおける「解析」メニュー内の「ピーク面積」から該当最大吸熱ピーク範囲を選択して解析を行った。
【0083】
(4)収縮率
1.5cm×15cmの試料フィルムを無張力状態で所定の温度(120℃、150℃、180℃)に保った熱風式オーブン中、5分間熱処理を施し、その前後の試料フィルムの長さを測定して下記式にて算出した。なお、フィルムの長手方向(MD)と幅方向(TD)のそれぞれについて測定した。
収縮率(%)={(熱処理前のサンプル長)-(熱処理後のサンプル長)}÷(熱処理前のサンプル長)×100
【0084】
(5)算術平均粗さ(Ra)、最大高さ粗さ(Rz)、最大断面高さ(Rt)
銅蒸着前のフィルムの銅を蒸着する側の面について、株式会社小坂研究所製の接触式表面粗さ計(Surf Coder SE3500)を用いて、触針先端半径0.5mm、評価長さ任意、任意2.5mm、縦倍率20000、横倍率20、カットオフ値0.08mm、測定速度0.1mm/秒の条件でフィルム長手方向(MD)に測定を行い、算術平均粗さ(Ra)、最大高さ粗さ(Rz)、最大断面高さ(Rt)を求めた。なお、測定は12回行い、最大値と最小値を除した後の10点の平均値を測定値とした。
【0085】
(6)算術平均高さ(Sa)、最大断面高さ(St)
銅蒸着前のフィルムの銅を蒸着する側の面について、株式会社菱化システム製非接触表面・層断面形状計測システム(VertScan(登録商標)R550GML)を用いて、接眼レンズ倍率1.0倍、対物レンズ倍率50倍、計測エリア縦178μm×横238μmの条件で測定を行い、4次多項式面補正とメディアンフィルター(3×3)処理を実施した後に算術平均高さ(Sa)、最大断面高さ(St)を求めた。なお、測定は10回行い、その平均値とした。
【0086】
(7)蒸着フィルムのカール
日本真空技術株式会社製真空蒸着機(MH59-0133)を用いて14cm角の金型に貼り付けた二軸延伸ポリエステルフィルムの一方の面に対して、真空度2×10-5Torr以下で30秒間銅を蒸着した。実施例1については、塗布液A面側に蒸着した蒸着フィルムと、塗布液B面側に蒸着した蒸着フィルムの両方を準備した。実施例2については、塗布液A面側に蒸着したフィルムを準備した。
得られた蒸着フィルムから銅が蒸着された面を下に向けて大きさ11×11cmのサンプルを切り出し、フィルムのカールの度合いを目視で確認した。
×:大きくカールする
〇:端部が若干カールする
◎:カールなし
【0087】
(8)静摩擦係数
銅蒸着前のフィルムから大きさ15×160mmの試験片を切り出し、試験片の一方の面と他方の面との静摩擦係数を測定した。具体的には、試験片の一方の面と他方の面とを試験開始前に15秒間接触保持させたのち、以下の条件で縦方向(MD)に測定を行った。サンプルは測定前に6時間以上調湿した。
・装置:株式会社横浜システム研究所製平行移動型摩擦試験機(MCS-300)
・滑り片:全質量104g(接触面積が一辺12mmの正方形)
・試験速度:20mm/min
・温度:23℃±2℃
・相対湿度:50%±10%
【0088】
<使用した原料>
原料A:ジカルボン酸成分(a-1):2,6-ナフタレンジカルボン酸=100モル%、ジオール成分(a-2):エチレングリコール=95モル%、ビスフェノールA-エチレンオキサイド付加物=5モル%のポリエチレンナフタレート系共重合体(A)(固有粘度=0.62dL/g)
原料B:ホモポリエチレンナフタレート(固有粘度=0.62dL/g)
原料C:ホモポリエチレンテレフタレート(固有粘度=0.65dL/g)
原料D:ホモポリエチレンテレフタレート(固有粘度=0.85dL/g)
原料E:ホモポリエチレンテレフタレート(固有粘度=0.63dL/g)
原料F:ホモポリエチレンテレフタレートに、平均粒径2.5μmのシリカ粒子を0.6質量%配合したマスターバッチ(固有粘度=0.61dL/g)
原料G:ホモポリエチレンテレフタレートに、平均粒径3.5μmのシリカ粒子を0.9質量%配合したマスターバッチ(固有粘度=0.70dL/g)
原料H:ホモポリエチレンテレフタレート(固有粘度=0.59dL/g)
【0089】
<使用した塗布液>
[化合物I]
下記組成で重合したアクリル樹脂の水分散体
エチルアクリレート/n-ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N-メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(質量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
[化合物II]
メラミン化合物:ヘキサメトキシメチロールメラミン
[化合物III]
平均粒径0.5μmのシリカ粒子
[化合物IV]
平均粒径0.06μmのシリカ粒子
【0090】
【0091】
(実施例1)
原料Cを二軸スクリュー押出機に投入し、300℃で押出をして、静電印加密着法を用いて37℃に設定した冷却ロール上で冷却固化させることで、未延伸シートを得た。
次いで、得られた未延伸シートをロール延伸機で長手方向(MD)に86℃で3.8倍に延伸し、一軸延伸フィルムとした。この一軸延伸フィルムの片面(A面)に、上記表1に示す組成を有する塗布液Aを塗布量(乾燥延伸後)が0.10g/m2となるように塗布し、反対側の面(B面)に、上記表1に示す組成を有する塗布液Bを塗布量(乾燥延伸後)が0.03g/m2となるように塗布した。次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、テンター内にて90℃で予熱した後、幅方向(TD)に115℃で4.2倍に延伸した。最後に225℃で熱固定処理を施し、厚み4μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0092】
(実施例2)
原料Aを二軸スクリュー押出機に投入し、300℃で押出をして、静電印加密着法を用いて50℃に設定した冷却ロール上で冷却固化させることで、未延伸シートを得た。
次いで、得られた未延伸シートをロール延伸機で長手方向(MD)に125℃で3.8倍に延伸し、得られた一軸延伸シートの一方の面に実施例1と同様に塗布液Aを塗布量(乾燥延伸後)が0.10g/m2となるように塗布した。次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、テンター内にて120℃で予熱した後、幅方向(TD)に130℃で4.7倍に延伸した。最後に230℃で熱固定処理を施し、厚み4μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0093】
(参考例1)
原料Bを二軸スクリュー押出機に投入し、300℃で押出をして、静電印加密着法を用いて50℃に設定した冷却ロール上で冷却固化させることで、未延伸シートを得た。
次いで、得られた未延伸シートをロール延伸機で長手方向(MD)に130℃で3.8倍に延伸し、得られた一軸延伸シートの一方の面に実施例1と同様に塗布液Aを塗布量(乾燥延伸後)が0.10g/m2となるように塗布し、反対側の面に、塗布液Aを塗布量(乾燥延伸後)が0.10g/m2となるように塗布した。次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、テンター内にて120℃で予熱した後、幅方向(TD)に130℃で4.7倍に延伸した。最後に230℃で熱固定処理を施し、厚み4μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0094】
(実施例3)
原料E及び原料Fをそれぞれ77.5質量%、22.5質量%の割合で混合した混合原料を二軸スクリュー押出機に投入し、300℃で押出をして、静電印加密着法を用いて36℃に設定した冷却ロール上で冷却固化させることで未延伸シートを得た。
次いで、得られた未延伸シートをロール延伸機で長手方向(MD)に87℃で3.8倍に延伸した。さらに、テンター内にて82℃で予熱した後、幅方向(TD)に108℃で4.1倍に延伸した。最後に227℃で熱固定処理を施し、厚み6μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0095】
(比較例1)
原料C、原料D、原料G、及び原料Hをそれぞれ21質量%、12質量%、20質量%、47質量%の割合で混合した混合原料を二軸スクリュー押出機に投入し、300℃で押出をして、静電印加密着法を用いて28℃に設定した冷却ロール上で冷却固化させることで未延伸シートを得た。
次いで、得られた未延伸シートをロール延伸機で長手方向(MD)に100℃で2.7倍に延伸し、続けて長手方向(MD)に87℃で倍に延伸した。さらに、テンター内にて78℃で予熱した後、幅方向(TD)に115℃で4.2倍に延伸した。最後に226℃で熱固定処理を施し、厚み4μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0096】
【0097】
なお、表中の※は、実施例1と同じ塗布液Aを用い、かつ同条件で塗布しているため、表面粗さは実施例1のA面側と同程度と推定される。
【0098】
表1の結果から分かるように、実施例のポリエステルフィルムは、銅蒸着後のフィルムのカールを抑制できるフィルムであった。また、示差走査熱量測定(DSC)による結晶融解温度(Tm)が258℃以下であることから、溶融による短絡時電流遮断機能を向上させることで暴走反応の停止・防止に寄与できるフィルムである。したがって、本発明のポリエステルフィルムは、電池集電体用として好適に使用できる。
【0099】
一方、比較例1のポリエステルフィルムは、特定の表面粗さを有しないフィルムであることから、銅蒸着後のフィルムにカールが発生した。
本発明の電池集電体用ポリエステルフィルムは、金属層を設けた場合でもカールを抑制でき、溶融による短絡時電流遮断機能を向上させることで暴走反応の停止・防止に寄与できる。
また、本発明の電池集電体は、本発明の電池集電体用フィルム箔を備えることで、従来の金属箔を使用した電池集電体に比べて、カールが抑制され、短絡による暴走反応の停止・防止が可能となり、それでいて薄膜化・軽量化やコスト削減に寄与できる利点を有するため、その工業的価値は高い。