(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158618
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ベクター、形質転換放線菌、タンパク質の製造方法、およびプロモーター
(51)【国際特許分類】
C12N 15/74 20060101AFI20241031BHJP
C12N 15/76 20060101ALI20241031BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241031BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20241031BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C12N15/74 Z ZNA
C12N15/76 Z
C12N1/21
C12N1/20 A
C12P21/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073970
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 健史
(72)【発明者】
【氏名】町田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】川端 孝博
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA04
4B064CA19
4B065AA50X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】放線菌の細胞で目的遺伝子の発現量を向上させ、多くの量の目的タンパク質を生産できる技術を提供すること。
【解決手段】プロモーターに発現可能に連結された目的遺伝子を含む、ベクターであって、該プロモーターが、特定の塩基配列を有するポリヌクレオチド、またはその相補配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、放線菌細胞においてプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロモーターに発現可能に連結された目的遺伝子を含む、ベクターであって、
該プロモーターが、配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の塩基配列を有するポリヌクレオチド、または
配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の塩基配列の相補配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、放線菌細胞においてプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項2】
前記プロモーター活性を有するポリヌクレオチドが、配列番号1の塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列、配列番号2の塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列、または配列番号3の塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を有するポリヌクレオチドである、請求項1に記載のベクター。
【請求項3】
請求項1に記載のベクターで形質転換された、形質転換放線菌。
【請求項4】
ストレプトマイセス(Streptomyces)属細菌である、請求項3に記載の形質転換放線菌。
【請求項5】
前記ストレプトマイセス(Streptomyces)属細菌がストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)である、請求項4に記載の形質転換放線菌。
【請求項6】
前記目的遺伝子が外来遺伝子である、請求項3に記載の形質転換放線菌。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか一項に記載の形質転換放線菌を培養し、該形質転換放線菌により、目的遺伝子によってコードされるタンパク質を蓄積させることを特徴とする、タンパク質の製造方法。
【請求項8】
配列番号3の塩基配列を有するポリヌクレオチド、または
配列番号3の塩基配列の相補配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、放線菌細胞においてプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含む、プロモーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放線菌を利用した遺伝子組み換え技術に関する。
【背景技術】
【0002】
放線菌等の微生物が生産する二次代謝物質の多くは生理活性を有し、抗生物質等として我々の生活の中で活用されている(非特許文献1)。一般に、天然に存在する微生物の菌株では目的の二次代謝産物の生産性が低いため、生産性向上のための育種が行われてきた。従来の育種方法では、突然変異源を与え、目的物の生産性が上昇した菌株を選抜するような手法が主であったが、近年は遺伝子組換え技術を活用した目的物の生産性向上が多く試みられている。
【0003】
遺伝子組換え微生物において外来遺伝子を発現させるためには、外来遺伝子を転写プロモーターと連結して微生物に導入する必要があるが、このプロモーターの選択により遺伝子発現レベルが大きく異なるため、転写プロモーターの選択が非常に重要となる。
【0004】
例えば、遺伝子組換え放線菌において汎用される高発現プロモーターとして、SF14プロモーター(非特許文献2)、ermEpプロモーター(非特許文献3、特許文献1)、kasOプロモ
ーター(非特許文献4、特許文献2)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第105420266号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第103421778号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Lacey et al., Molecules, 2022, 27, 887
【非特許文献2】Labes et al., Microbiology, 1997, 143, 1503-1512
【非特許文献3】Bibb et al., Gene, 1985, 38, 215-226
【非特許文献4】Wang et al., Applied and Environmental Microbiology, 2013, 79, 4484-4492
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、放線菌の宿主細胞で機能し得るプロモーターは知られていたが、公知のプロモーターでは、放線菌の種によっては外来遺伝子などの目的遺伝子の高発現が達成されない場合があり、より効率よく目的遺伝子を発現させることのできるプロモーターが求められていた。
したがって、本発明は、放線菌の細胞で目的遺伝子の発現量を向上させ、多くの量の目的タンパク質を生産できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、放線菌の有する特定のプロモーター領域が、遺伝子組換え放線菌において汎用される公知のプロモーターを用いる場合よりも、外来遺伝子などの目的遺伝子を高発現し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。また、トランスクリプトーム解析により、放線菌細胞において目的遺伝子を発現させるためのプロモーター候補を選出し、該プロモーター候補の中から、目的遺伝子を高発現し得る新規なプロモーター領域を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は以下を提供する。
[1]プロモーターに発現可能に連結された目的遺伝子を含む、ベクターであって、
該プロモーターが、配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の塩基配列を有するポリヌクレオチド、または
配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の塩基配列の相補配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、放線菌細胞においてプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含む、ベクター。
[2]前記プロモーター活性を有するポリヌクレオチドが、配列番号1の塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列、配列番号2の塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列、または配列番号3の塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を有するポリヌクレオチドである、[1]に記載のベクター。
[3][1]または[2]に記載のベクターで形質転換された、形質転換放線菌。
[4]ストレプトマイセス(Streptomyces)属細菌である、[3]に記載の形質転換放線菌。
[5]前記ストレプトマイセス(Streptomyces)属細菌がストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)である、[4]に記載の形質転換放線菌。
[6]前記目的遺伝子が外来遺伝子である、[3]~[5]のいずれかに記載の形質転換放線菌。
[7][3]~[6]のいずれかに記載の形質転換放線菌を培養し、該形質転換放線菌により、目的遺伝子によってコードされるタンパク質を蓄積させることを特徴とする、タンパク質の製造方法。
[8]配列番号3の塩基配列を有するポリヌクレオチド、または
配列番号3の塩基配列の相補配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、放線菌細胞においてプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含む、プロモーター。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、放線菌の細胞で目的遺伝子を高効率に発現させることができ、多くの量の目的タンパク質を生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】各プロモーター(pmiプロモーター、phpRプロモーター、SF14プロモーター、若しくはermEpプロモーター)を含むベクターまたは空ベクターで形質転換された形質転換放線菌における、単位タンパク質量あたりのルシフェラーゼの発光量(Relative Light Unit)を示す図。実験は複数クローンを用いて行い、それぞれの結果を示す。
【
図2】各候補プロモーターを含むベクターまたは空ベクターで形質転換された形質転換放線菌における、単位タンパク質量あたりのルシフェラーゼの発光量(Relative Light Unit)を示す図。実験は複数クローン(WP_003988467.1は1クローンのみ)を用いて行い、それぞれの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、JCMとの文言から始まる菌株の受託番号は、Japan Collection of Microorganisms(国立研究開発法人理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発
室、郵便番号:305-0074、住所:茨城県つくば市高野台3-1-1)に保存されている微生物
に付与された番号であり、同機関から入手することができる。
【0013】
本明細書において、ATCCとの文言から始まる受託番号の菌株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(Address: 10801 Uni
versity Boulevard Manassas, VA 20110, United States of America)から入手することができる。
【0014】
本明細書において、NBRCとの文言から始まる受託番号の菌株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)(郵便番号:292-0818、住所:千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)
に保存されている微生物に付与された番号であり、同機関から入手することができる。
【0015】
ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)は放線菌の一種であり、非選択性除草剤であるビアラホスを生産する微生物の一種である。ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネスはビアラホス合成酵素遺伝子クラスターを有し、該ビアラホス合成酵素遺伝子クラスターには、複数のプロモーター領域が存在することが知られている。
本発明者らは、この複数のプロモーター領域のうち特定のプロモーター領域が、外来遺伝子などの目的遺伝子の発現量を向上させるために有用であり、遺伝子組換え放線菌で汎用される公知のプロモーターを用いる場合よりも目的遺伝子を高発現させることができるとの新たな知見を得た。
【0016】
本発明のベクターは、プロモーターに発現可能に連結された目的遺伝子を含む、ベクターであって、該プロモーターが、配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の塩基配列を有するポリヌクレオチド、または配列番号1、配列番号2、若しくは配列番号3の塩基配列の相補配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、放線菌細胞においてプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含むことを特徴とする。
【0017】
配列番号1の塩基配列は、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(S. viridochromogenes)の有するビアラホス合成酵素遺伝子クラスター中のpmi遺伝子(GenBankアクセッション番号:AY632421.1)上流に存在する、プロモーター(pmiプロモーター)の全塩基
配列である。
【0018】
配列番号2の塩基配列は、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネスの有するビアラホス合成酵素遺伝子クラスター中の転写制御因子phpR(GenBankアクセッション番号:AY632421.1)上流に存在する、プロモーター(phpRプロモーター)の全塩基配列である。
【0019】
また、本発明者らは、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネスのトランスクリプトーム解析により、放線菌細胞において目的遺伝子の発現量の向上に有用なプロモーター活性を有し得る新規なプロモーターを見出した。配列番号3の塩基配列は、この新規なプロモーターの全塩基配列であり、GenBankアクセッション番号 WP_003988467.1のタンパク質
をコードする遺伝子の上流領域である。
【0020】
「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、同一性が高い二つのDNA同士、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有する2つのDNAがハイブリダイズするが、それより同一性の低い2つのDNAがハイブリダイズしない条件が挙げられる。例えば60℃、0.1×SSC、0.1% SDS、より好ましくは、68℃、0.1× SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度および温度で、1回、好ましくは2~
3回洗浄する条件を挙げることができる。すなわち、本発明のベクターに含まれるプロモーターは、放線菌細胞においてプロモーター活性を有する限り、配列番号1、配列番号2、または配列番号3の塩基配列と80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有する塩基配列を有するものであってもよい。
【0021】
さらに、プロモーターは、放線菌細胞においてプロモーター活性を有する限り、配列番号1、配列番号2、または配列番号3の塩基配列において、1若しくは数個の塩基の置換、欠失、挿入、または付加を含む塩基配列を有するものであってもよい。ここで、1若しくは数個とは、例えば、1~50個、1~30個、1~10個、または1~5個であることを意味する。本発明のベクターに含まれるプロモーターは、放線菌細胞においてプロモーター活性を有する限り、配列番号1、配列番号2、または配列番号3の塩基配列において、その5’末端側および/または3’末端側が欠失した部分配列であってもよい。
【0022】
プロモーター活性は、プロモーター配列の3’末端側に目的遺伝子を連結し、宿主細胞である放線菌細胞に導入して目的遺伝子の発現を調べることによって検出することができる。
【0023】
本発明のプロモーターに目的タンパク質をコードする遺伝子(目的遺伝子)を発現可能な状態で連結し、ベクターなどを利用して宿主細胞に導入することにより、目的タンパク質を宿主細胞で発現させることができる。目的遺伝子は、宿主細胞で発現しうるものであれば特に制限されないが、外来遺伝子であることが好ましい。
【0024】
目的タンパク質の種類は宿主細胞で発現しうるものであれば特に制限されないが、成長因子、ホルモン、サイトカイン、血液タンパク質、酵素、抗原、抗体、転写因子、受容体またはそれらの部分ペプチドなどが挙げられる。タンパク質の由来は特に制限されず、例えば、ヒトなどの哺乳動物由来でもよいし、植物由来でもよいし、細菌や酵母由来でもよい。
【0025】
酵素としては、例えば、抗生物質合成酵素、リパーゼ、プロテアーゼ、ステロイド合成酵素、キナーゼ、フォスファターゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、酸化酵素、還元酵素、セルラーゼ、アロマターゼ、コラゲナーゼ、トランスグルタミナーゼ、グリコシダーゼ、キチナーゼなどが挙げられる。
【0026】
抗生物質合成酵素としては、例えば、ビアラホス合成酵素(Blodgett et al. 2016, J Antibiot (Tokyo). 69, 15-25)、L-グルホシネート合成酵素、デヒドロフォス合成酵素
(Circello BT et al., 2010. Chemistry & Biology 17, 402-411)、フォスフォマイシ
ン合成酵素(Kim SY et al., 2012. Antimicrobial Agents and Chemotherapy 56, 4175-4183)、FR900098合成酵素(Eliot AC et al., 2012, Chem Biol. 15, 765-770)などが
挙げられる。
【0027】
成長因子としては、例えば、上皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロ
ファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、血小板由来成長因子(PDGF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝細胞増殖因子(HGF)などが挙げられる。
【0028】
ホルモンとしては、例えば、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、プロラクチン、レプチン、カルシトニンなどが挙げられる。
【0029】
サイトカインとしては、例えば、インターロイキン、インターフェロン(IFNα、IFNβ、IFNγ)、腫瘍壊死因子(TNF)などが挙げられる。
【0030】
血液タンパク質としては、例えば、トロンビン、血清アルブミン、VII因子、VIII因子、IX因子、X因子、組織プラスミノゲン活性化因子などが挙げられる。
【0031】
抗体としては、例えば、完全抗体、Fab、F(ab')、F(ab')2、Fc、Fc融合タンパク
質、重鎖(H鎖)、軽鎖(L鎖)、単鎖Fv(scFv)、sc(Fv)2、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、Diabodyなどが挙げられる。
【0032】
ワクチンとして使用される抗原タンパク質は、免疫応答を惹起できるものであれば特に制限されず、想定する免疫応答の対象に応じて適宜選択すればよいが、例えば、病原性細菌由来のタンパク質や病原性ウイルス由来のタンパク質が挙げられる。
【0033】
目的タンパク質は、分泌生産用に、宿主細胞で機能する分泌シグナルペプチドが付加されていてもよい。分泌シグナルペプチドは、キシラナーゼ、サブチリシンプロテアーゼインヒビター、ホスホリパーゼ D、エンドグルカナーゼ、ラッカーゼ、キチナーゼ、アルカリホスファターゼなどの分泌シグナルが挙げられる。
【0034】
さらに、目的タンパク質は、特定の細胞区画で発現させるために、小胞体残留シグナルペプチド、液胞移行シグナルペプチド等の輸送シグナルペプチドが付加されていてもよい。また、検出や精製の目的でHisタグ、FLAGタグ、GSTタグなどのタグ配列が付加されていてもよい。
【0035】
目的タンパク質をコードするDNA(目的遺伝子)は、例えば、公知の塩基配列に基づい
て、一般的な遺伝子工学的な手法により得ることができる。また、目的タンパク質をコードするDNAは、該タンパク質を生産させる宿主細胞に応じて、タンパク質の翻訳量が増大
するように、タンパク質を構成するアミノ酸を示すコドンが適宜改変されてもよい。コドン改変の方法としては、例えばKang et al. (Protein Expr Purif. 2004 Nov;38(1):129-35.)の方法を参考にすることができる。また、宿主細胞において使用頻度の高いコドンを選択したり、GC含量が高いコドンを選択したり、宿主細胞のハウスキーピング遺伝子において使用頻度の高いコドンを選択したりする方法が挙げられる。
【0036】
また、宿主細胞における遺伝子発現を向上させるために、宿主細胞において翻訳開始の認識配列として機能するリボソームバインディングサイト(Ribosome binding site:RBS)を付加する必要がある。RBSは翻訳開始の機能を持っていれば特に配列を制限されるも
のではないが、例えばBai et al., 2015, PNAS 112, 12181-12186で開示される配列が使
用できる。
【0037】
本発明のベクターに含まれるプロモーターとそれを含む組換えDNAは、一般的な遺伝子
工学的手法により取得・作製することができ、例えば、本発明のベクターに含まれるプロモーターをコードするDNAを放線菌ゲノムDNA等からPCR等の手法で取得し、及び有用タン
パク質をコードするDNA等をPCRやDNAリガーゼ等を用いて連結することでプロモーターを
含む組換えDNAを構築することができる。
【0038】
本発明のベクターは、前述したようなプロモーターを含み、目的遺伝子を宿主細胞で発現させるために使用される。本発明のベクターは、好ましくは、前述したような目的遺伝子を含む。また、必要に応じ、ターミネーター配列も宿主細胞に応じて含めることができる。また、ベクターは薬剤耐性遺伝子等の選択マーカーを含んでもよい。
【0039】
本発明のベクター作製に用いる発現ベクターとしては、宿主細胞である放線菌内で複製増殖可能であれば特に制限されるものではないが、プラスミドベクター、シャトルベクターなどが挙げられる。
【0040】
プラスミドベクターとしては、pGM1190、pSET152、pKC1139、SCP2、SLP1.2、pIJ101な
どのように細胞内で自律複製可能なプラスミドベクターが挙げられる。
【0041】
本発明のベクターは、例えば、本発明のプロモーター、好ましくは本発明のプロモーターとそれに連結された目的遺伝子を適当な制限酵素で切断またはPCRによって制限酵素部
位を付加し、ベクターの制限酵素部位またはマルチクローニングサイトに挿入することによって作製することができる。
【0042】
本発明の形質転換放線菌は、上述したようなベクターで形質転換されていることを特徴とする。形質転換に用いられる宿主細胞は放線菌であれば特に制限されないが、例えば、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces
lividans)、ストレプトマイセス・セリカラ
ー(Streptomyces
coelicolor)、ストレプトマイセス・カナマイセチカス(Streptomyces
kanamyceticus)などのストレプトマイセス(Streptomyces)属細菌;サッカロポリス
ポラ・スピノサ(Saccharopolyspora
spinosa)、サッカロポリスポラ・エリスレア(Saccharopolyspora
erythraea)などのサッカロポリスポラ(Saccharopolyspora)属細菌が
例示される。中でも、ストレプトマイセス(Streptomyces)属細菌が好ましく、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネスがより好ましい。
【0043】
ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネスとしては、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネスJCM4977株、Tue57株(Weitnauer, G. et. al.,(2002). Microbiology, 148(2), 373-379.)、subsp. Komabensis(ATCC29814株)株、subsp. sulfomycini(NBRC13830)
株などが挙げられる。
【0044】
本発明の形質転換放線菌(形質転換体とも称する)は、一般的な遺伝子工学的手法を用いて、本発明のベクターを宿主細胞に導入することにより作製することができる。例えば、エレクトロポレーション法(Tada, et al., 1990, Theor. Appl. Genet, 80: 475)、接合伝達法(Flett, et al., 1997, FEMS Microbiol. Lett, 155:223-229)、プロトプラスト法(Gene,39, 281-286(1985))、ポリエチレングリコール法(Lazzeri, et al., 1991, Theor. Appl. Genet. 81: 437)、アグロバクテリウムを利用した導入方法(Hood, et al., 1993, Transgenic, Res. 2: 218, Hiei, et al., 1994 Plant J. 6: 271)、パーティクルガン法(Sanford, et al., 1987, J. Part. Sci.tech. 5: 27)、ポリカチオン法(Ohtsuki, etal., FEBS Lett. 1998 May 29;428(3):235-40.)などの方法を用い
ることが可能である。なお、遺伝子発現は一過的発現でもよく、染色体に組み込まれる安定的発現でもよい。
【0045】
本発明のベクターを宿主細胞に導入した後、選択マーカーの表現型等を指標として形質転換体を選抜することができる。また、選抜した形質転換体を培養することにより、タンパク質を生産することができる。培養に用いる培地及び条件は、形質転換体の種に応じて適宜選択することができる。
【0046】
培地や細胞内に蓄積した目的タンパク質は、当業者によく知られた方法に従って分離精製することができる。例えば、塩析、エタノール沈殿、限外濾過、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、アフィニーティークロマトグラフィー、中高圧液体クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー等の既知の適切な方法、またはこれらを組み合わせることにより分離精製することができる。
【実施例0047】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0048】
[実施例1:pmiプロモーターおよびphpRプロモーターのFluc活性の比較]
実施例1では、ホタル(Photinus
pyralis)由来のルシフェラーゼ(Fluc)をレポータータンパク質とし、pmiプロモーターおよびphpRプロモーターによるタンパク質の発現向
上効果を検討した。
【0049】
(1)プロモーターの合成
pmiプロモーター(配列番号1)およびphpRプロモーター(配列番号2)それぞれの断
片を、各断片の5’末端側にNsiIサイト、3’末端側にAatIIサイトを付加するように設計
し、ファスマック社の人工遺伝子合成サービスを利用して化学合成した。
【0050】
以下の手順で、公知の各プロモーターのNsiI-AatII断片を得た。
比較対象として、公知のプロモーターであるストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)のkasOプロモーター、ストレプトマイセス・ガナエンシス(Streptomyces ghanaensis)のSF14プロモーター、およびストレプトマイセス・エリスラエアス(Streptomyces erythraeus)のermEpプロモーターを用いた。kasOプロモーター(配列番号5)、SF14プロモーター(配列番号6)およびermEpプロモーター(配列番号7)それぞ
れの塩基配列を、データベース(GenBank:[www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/])
から取得した。そして、配列番号5~7の各塩基配列を、ファスマック社の人工遺伝子合成サービスを利用して化学合成した。
化学合成した前記各塩基配列をそれぞれ、NsiI-AatIIで切断し、精製した。
【0051】
(2)プラスミドの作製
以下の手順により、pSET152(Creative Biogene, Cat. No. OVT2796)をベースに、各
プロモーターの断片とホタル(Photinus
pyralis)由来のルシフェラーゼ(Fluc)(配列番号4)レポーターに連結した。
【0052】
まず、pSET152をHindIII-EcoRVで切断し、リン酸化オリゴヌクレオチドA(配列番号8)およびリン酸化オリゴヌクレオチドB(配列番号9)をアニーリングした後にライゲーシ
ョンすることでXbaIサイトおよびNsiIサイトを導入した。これをXbaI-NsiIで切断するこ
とで、pSET152のXbaI-NsiI断片を得た。
【0053】
次に、Fluc(配列番号4)にrrnBターミネーター(配列番号10)を融合した。具体的には、まず、ホタル(Photinus
pyralis)由来のFlucを、Fluc-HSPT(Matsui et al., 2015, Plant Biotech 32, 309-16)を鋳型として、Fluc-Fプライマー(配列番号13)とFluc-Rプライマー(配列番号14)を用いたPCR法にて作製した。次に、二種類のオリゴDNAであるrrnB-F(配列番号11)とrrnB-R(配列番号12)を混合し、熱水中でインキュべートした後、室温に静置してアニーリングした。T4 DNAポリメラーゼ処理を行って、rrnBターミネーターに相当する二本鎖DNAを合成した。そして、SacIを介してFlucとrrnBターミ
ネーターを連結し、得られた断片をAatIIおよびSpeIで切断することで、rrnBターミネー
ターを融合したFlucのAatII-SpeI断片を得た。
【0054】
各プロモーターのNsiI-AatII断片、rrnBターミネーターを融合したFlucのAatII-SpeI断片、およびpSET152のXbaI-NsiI断片を3者ライゲーションすることで、各プロモーターとルシフェラーゼが連結されたプラスミドをそれぞれ構築した。
【0055】
【表1】
表中、配列は、左から右へ5’末端から3’末端の向きである。
【0056】
用いたプライマーの塩基配列を、表2に示す。
【0057】
【表2】
表中、配列は、左から右へ5’末端から3’末端の向きである。
【0058】
(3)接合用大腸菌の形質転換
構築した各プラスミドを用いて、以下の手順により、大腸菌をエレクトロポレーション法にて形質転換させた。
まず、以下の手順により、大腸菌S17-1株のコンピテントセルを作製した。
グリセロールストックの大腸菌S17-1株をLBプレートに画線後、37℃で16~20時間培養
し、シングルコロニーを取得した。シングルコロニーを2.5 mLのLB培地に植菌し、37 ℃
、200 rpmで16時間、前培養した。前培養液200 μlを20 mLのLB培地に植菌し、37 ℃、200 rpmでOD600=0.5~0.8になるまで培養した。遠心(4℃、3000 x g、10分)による集菌
後、上清を捨て、氷冷しておいた滅菌水20 mLを加え、ペレットをピペットで優しく懸濁
(洗浄)した。集菌および洗浄の工程をもう一度繰り返した後、再び遠心(4℃、3000 x g、10分)による集菌を行い、上清を捨て、ペレットを200 μlの氷冷しておいた10% グリセロールにピペットで優しく懸濁した。この懸濁液を50μlずつチューブ(エッペンドル
フ社製)に分注することでS17-1株のコンピテントセルを作製した。
【0059】
作製したコンピテントセルへ、構築したプラスミド(~2 μL)を添加し、エレクトロ
ポレーション用セル(バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社製)に移した後、氷上で10分間静置した。1.8 kV、25 μF、200 Ωの電気パルスを与えた後、1 mLのLB培地を添加
し、37 ℃で2時間の回復培養を行った。その後、20000 x g、1分の条件で集菌を行い、上清を除いてから適当量の培地に再懸濁し、50 μg/mLのアプラマイシンを含む2×YT寒天培地に塗布し、37 ℃で一晩培養した。
また、構築したプラスミドの代わりに空ベクター(pSET152)を用いたこと以外は同様
の手順により大腸菌を形質転換させて培養し、これをネガティブコントロールとした。
【0060】
(4)形質転換放線菌の作製
形質転換させた大腸菌を用いて、以下の手順により、放線菌を接合伝達法にて形質転換させた。
上記培養により得られた、形質転換用プラスミドを持つ大腸菌S17-1株を、50 μg/mLのアプラマイシンを含む2 mLのLB培地に植菌し、37 ℃、200 rpmで一晩前培養した。前培養液100 μLを新たな10 mLのLB培地(50 μg/mLのアプラマイシンを含む)に植菌し、OD600=0.4~0.8になるまで37 ℃、200 rpmで培養した。8000 x g、10分の条件で集菌し、上清を捨て、集菌した菌体を10 mLのLB培地にピペッティングで懸濁(洗浄)し、集菌および
洗浄の工程を2回繰り返して培養液中に含まれる抗生物質を除去した。その後、再び集菌した菌体ペレットを1 mLのLB培地に再懸濁した。この大腸菌懸濁液のうち500 μLを同じ
く500 μlの2×YT培地に懸濁し、50℃で10 分間ヒートショックを与えた後、氷上で静置
しておいたストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(S. viridochromogenes)JCM4977
株の胞子に混ぜ合わせ、軽く遠心した。なお、胞子は20 mlのISP4平板培地(2 重量% 寒
天、1 重量% デンプン、0.2 重量% 炭酸カルシウム、0.2 重量% 硫酸アンモニウム、0.1 重量% リン酸水素二カリウム、0.1 重量% 硫酸マグネシウム7水和物、0.1 重量% 塩化ナ
トリウム、0.1 重量% 酵母エキス、0.0001 重量% 硫酸鉄(II)7水和物、0.0001 重量%
塩化マンガン7水和物、0.0001 重量% 硫酸亜鉛7水和物)に放線菌をプレーティングし、28℃で二週間程度培養することで取得した。
上記遠心後、50 μL程残して上清を捨て、残した上清に菌体ペレットを再懸濁した後、滅菌水で希釈系列を作製し、20 mlのISP4平板培地に100 μL塗布して、28℃で一晩培養した。1 ml 滅菌水に0.5 mg ナリジクス酸と抗生物質溶液(20μlの50 mg/mLアプラマイシン)を加え、培地に重層し、28℃でさらに3~5日培養して放線菌の形質転換体をそれぞれ取得した。
【0061】
(5)形質転換体の培養
得られた形質転換体を、それぞれ、50 mg/Lアプラマイシンを含むYS培地(1 重量% 可
溶性デンプン、0.2 重量% 酵母エキス) 150 mlの入った500 ml容のバッフル付フラスコ
に植菌し、140 rpm、28℃で3日間、前培養した。前培養液1 mlを、50 mg/Lアプラマイシ
ンを含むMYG培地(1 重量% 麦芽エキス、0.4 重量% 酵母エキス、0.4 重量% グルコース
) 150 mlの入った500 ml容のバッフル付フラスコに植菌し、28℃で、3日目までは140 rpm、それ以降は85 rpmで培養した。
【0062】
(6)ルシフェラーゼの発光量の測定
培養6日目の培養液2 mlを15,000 rpmで15分間遠心した後、上清を除き、菌体を回収し
た。菌体にガラスビーズ(ビーエム機器社製、0.5 mmガラスビーズ、Cat.No.15-340-152
)を添加し、Passive lysis bufferを添加した後、Tissue Lyser II(Qiagen)で25回/秒、1分間往復振とうすることで振動破砕した。その後、15,000 rpm、4℃で15分間遠心分離した後、上清を回収した。回収した上清と、ONE-Glo(商標)Luciferase Assay System(Promega、No. E8130)を用いて、ルシフェラーゼの発光量を測定した。また、ブラッドフォード法によりタンパク質濃度を測定し、単位タンパク質量あたりのルシフェラーゼの発光量を算出した。
図1にその結果を示す。
【0063】
(7)結果
pmiプロモーターとphpRプロモーターを用いた場合は、放線菌において高発現が可能で
あることが報告されている3つのプロモーター(SF14プロモーター、ermEpプロモーター
およびkasOプロモーター)を用いた場合よりも、ルシフェラーゼ活性が高いことが示された(
図1)。なお、kasOプロモーターを用いた場合は検出限界以下であった(データ非掲
載)。
【0064】
[実施例2:トランスクリプトーム解析、およびプロモーター候補のFluc活性の比較]
さらなる高発現プロモーターの取得のために、放線菌の培養サンプルについてトランスクリプトーム解析を行い、解析結果から高発現プロモーター候補を選び、ホタル(Photinus
pyralis)由来のルシフェラーゼ(Fluc)をレポータータンパク質として、プロモーター候補によるタンパク質の発現向上効果を検討した。
【0065】
(1)トランスクリプトーム解析
ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)JCM4977株のRNAを抽出し、シーケンス解析を実施した。その結果、約7,000個の遺伝子の発現デ
ータを取得した。
得られた発現データをもとに、高発現プロモーター候補遺伝子(GenBankアクセッショ
ン番号WP_003988028.1、WP_003991794.1、WP_003988467.1、およびWP_039931923.1のタンパク質をコードする各遺伝子の上流領域)をプロモーター候補として選んだ。
【0066】
(2)プロモーターを連結したルシフェラーゼの構築
[pmiプロモーター連結Flucの構築およびプラスミドの作製]
まず、pGM1190(addgene, #69994)のアプラマイシン耐性遺伝子をハイグロマイシン耐性遺伝子に置き換えることで、自律複製型プラスミド(pGH)を構築した。具体的には、pGM1190を鋳型としてI-44プライマー(配列番号20)とI-45プライマー(配列番号21)を用いてインバースPCRを行い、薬剤耐性マーカーを入れかえるためにアプラマイシン耐
性遺伝子を削除しつつNsiIサイトおよびSpeIサイトを導入した。得られたDNA断片をNsiI
とSpeIで処理し、ハイグロマイシン耐性遺伝子のNsiI-NheI断片を挿入した。なお、ハイ
グロマイシン耐性遺伝子は、ファスマック社にて人工遺伝子合成サービスを利用して化学合成したハイグロマイシン耐性遺伝子断片(配列番号15)を鋳型として、I-17プライマー(配列番号22)とI-47プライマー(配列番号23)を用いてPCR法にて増幅すること
により、作製した。
【0067】
ポジティブコントロールとして、pmiプロモーターを連結したFlucを構築した。純粋な
転写活性を比較するため、SD配列を含む開始コドンATGから上流8塩基は、後に示す他の候補プロモーターと共通の配列(GGTACCGCGAATG、ATGは開始コドンを示す)に置き換えた。なお、後に示す他の候補プロモーター断片の増幅においても同様である。
具体的には、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(S.
viridochromogenes)JCM4977株のゲノムDNAを鋳型として、I-48プライマー(配列番号24)とI-49プライマー(配
列番号25)を用いて、PCR法にてpmiプロモーター断片を増幅した。
【0068】
また、pSET152を鋳型として、I-54プライマー(配列番号26)とI-55プライマー(配
列番号27)を用いて、PCR法にて転写ターミネーター領域(配列番号16)を増幅した
。
【0069】
ホタル(Photinus
pyralis)のゲノムを鋳型として、I-61プライマー(配列番号28)とI-62プライマー(配列番号29)を用いて、Fluc(配列番号4)をPCR法にて増幅した
。
【0070】
増幅したpmiプロモーターのEcoRI-KpnI断片、FlucのKpnI-SpeI断片、転写ターミネーター領域のXbaI-HindIII断片を、pGHのEcoRI-HindIIIギャップに挿入することで、pmiプロ
モーター、Fluc、および転写ターミネーター領域が挿入されたプラスミドを作製した。
【0071】
[候補プロモーター連結Flucの構築およびプラスミドの作製]
候補プロモーターとして、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(S. viridochromogenes)JCM4977株のゲノムDNAを鋳型として、PCR法にてGenBankアクセッション番号 WP_003988028.1のタンパク質をコードする遺伝子の上流領域(配列番号17)、WP_003991794.1のタンパク質をコードする遺伝子の上流領域(配列番号18)、WP_003988467.1のタンパク質をコードする遺伝子の上流領域(配列番号3)、WP_039931923.1のタンパク質をコードする遺伝子の上流領域(配列番号19)をそれぞれ増幅した。プライマーは、I-63プライマー(配列番号30)とI-64プライマー(配列番号31)、I-65プライマー(配列番号32)とI-66プライマー(配列番号33)、I-67プライマー(配列番号34)とI-68プライマー(配列番号35)、I-69プライマー(配列番号36)とI-70プライマー(配列番号37)をそれぞれ用いた。
上記[pmiプロモーター連結Flucの構築およびプラスミドの作製]において作製したプ
ラスミドにおいて、EcoRIとKpnIを用いてpmiプロモーターから各候補プロモーターに置き換えることで、各候補プロモーター、Fluc、および転写ターミネーター領域が挿入されたプラスミドをそれぞれ作製した。
【0072】
【表3】
表中、配列は、左から右へ5’末端から3’末端の向きである。
【0073】
用いたプライマーの塩基配列を、表4に示す。
【0074】
【表4】
表中、配列は、左から右へ5’末端から3’末端の向きである。
【0075】
(3)接合用大腸菌の形質転換
抗生物質として50 μg/mLのアプラマイシンの代わりに200 μg/mLのハイグロマイシン
を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で、作製した各プラスミドを用いて接合用大腸菌の形質転換を行った。また、ネガティブコントロールの空ベクターとして、pGHを用
いた。
【0076】
(4)形質転換放線菌の作製
抗生物質として50 μg/mLのアプラマイシンの代わりに200 μg/mLのハイグロマイシン
を用い、抗生物質溶液として20μlの50 mg/mLアプラマイシンの代わりに4μlの200 mg/mLハイグロマイシンを用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で、得られた接合用大腸菌を用いて放線菌を形質転換させた。
【0077】
(5)形質転換体の培養
抗生物質として50 mg/Lアプラマイシンの代わりに50 mg/Lハイグロマイシンを用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で、形質転換体の培養を行った。
【0078】
(6)ルシフェラーゼの発光量の測定
実施例1と同様の手順で、各形質転換体における、単位タンパク質量あたりのルシフェラーゼの発光量を算出した。
図2にその結果を示す。
【0079】
(7)結果
pmiプロモーターを超えるルシフェラーゼ活性を示すプロモーターは得られなかったも
のの、WP_003988467.1のタンパク質をコードする遺伝子の上流のプロモーター領域では、比較的高いルシフェラーゼ活性が示されたことから、新規プロモーターとして使用可能であることが示唆された。なお、WP_003988028.1、WP_039931923.1、およびWP_003991794.1のタンパク質をコードする遺伝子の上流のプロモーター領域では、ルシフェラーゼ活性が示されなかった(WP_003991794.1に関するデータは非掲載)。