(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158620
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】粉体充填装置、覆い板、および流下部材付き覆い板
(51)【国際特許分類】
B65B 39/12 20060101AFI20241031BHJP
B65B 1/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B65B39/12
B65B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073973
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116297
【氏名又は名称】ヱスビー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小久保 陽太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 央
【テーマコード(参考)】
3E055
3E118
【Fターム(参考)】
3E055AA03
3E055BB01
3E055CA01
3E055CA04
3E055CB04
3E055DA06
3E055DA15
3E055FA10
3E118AA01
3E118BB02
3E118BB05
3E118BB14
3E118DA02
3E118EA10
(57)【要約】
【課題】粉体防止装置からの粉垂れを防止する。
【解決手段】上記課題は、収容容器5に充填される粉体が内部の中空空間を流下する管状の流下部材3と、前記流下部材3の外周壁から径方向外側に突出する、前記流下部材3の外周壁を取り囲むように設けられた覆い板7と、上方USに開口4Aを有し、下方DSに前記粉体の排出口4Bを有し、前記流下部材3から排出された前記粉体を受け入れ、前記排出口4Bから当該粉体を前記収容容器5に排出する管状の充填部材4と、前記充填部材4の内部の空気を吸引して前記充填部材4の外へ排気する排気口4Cと、前記充填部材4を上下方向HDに移動させる移動機構6と、を有する、粉体充填装置1により解決される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容容器の上方から前記収容容器の内部に粉体を充填する粉体充填装置であって、
前記収容容器に充填される前記粉体が内部の中空空間を流下する管状の流下部材と、
前記流下部材の外周壁から径方向外側に突出する、前記流下部材の外周壁を取り囲むように設けられた覆い板と、
上方に開口を有し、下方に前記粉体の排出口を有し、前記流下部材から排出された前記粉体を受け入れ、前記排出口から当該粉体を前記収容容器に排出する管状の充填部材と、
前記充填部材の内部の空気を吸引して前記充填部材の外へ排気する排気口と、
前記充填部材または前記流下部材を上下方向に移動させる移動機構と、
を有することを特徴とする粉体充填装置。
【請求項2】
前記移動機構は前記充填部材を上下方向に移動させるものであり、
前記粉体を前記収納容器に充填するために前記充填部材を下方へ移動させた状態で、前記充填部材の上端部と前記覆い板の下面の間に空隙が形成され、
前記粉体の粉垂れを防止するために前記充填部材を上方へ移動させた状態で、前記充填部材の上端部が前記覆い板と直接または間接に当接し、前記流下部材以外の部分において、前記充填部材の上方の開口が前記覆い板によって覆われる、請求項1記載の粉体充填装置。
【請求項3】
前記移動機構は前記流下部材を上下方向に移動させるものであり、
前記粉体を前記収納容器に充填するために前記流下部材を上方へ移動させた状態で、前記充填部材の上端部と前記覆い板の下面の間に空隙が形成され、
前記粉体の粉垂れを防止するために前記流下部材を下方へ移動させた状態で、前記充填部材の上端部が前記覆い板と直接または間接に当接し、前記流下部材以外の部分において、前記充填部材の上方の開口が前記覆い板によって覆われる、請求項1記載の粉体充填装置。
【請求項4】
前記覆い板は耐摩耗性の緩衝部材からなる請求項1~3のいずれか1項に記載の粉体充填装置。
【請求項5】
前記覆い板の少なくとも前記充填部材と当接する部分は平面であり、前記覆い板と前記充填部材の間の内角が75~105度である請求項1~3のいずれか1項に記載の粉体充填装置。
【請求項6】
前記充填部材は、上部の開口が広く、下方に向かって径が次第に小さくなり、排出口が細く狭まった形状であり、
前記排気口は前記充填部材の上部壁面に設けられている請求項1~3のいずれか1項に記載の粉体充填装置。
【請求項7】
前記流下部材は前記充填部材の上部開口を通って前記充填部材の内部まで延出しており、
前記排気口は、前記流下部材の下端よりも上方に位置し、かつ前記充填部材の壁面に設けられている請求項1~3のいずれか1項に記載の粉体充填装置。
【請求項8】
前記流下部材は前記充填部材の上部開口を通って前記充填部材の内部まで延出しており、
前記排気口は前記覆い板に設けられている請求項1~3のいずれか1項に記載の粉体充填装置。
【請求項9】
前記充填部材を上方へ移動させた状態で、前記充填部材の上端部が前記覆い板と間接に当接する場合において、
前記充填部材の上端部と前記覆い板の間に耐摩耗性の緩衝部材が挟まれる請求項1~3のいずれか1項に記載の粉体充填装置。
【請求項10】
収容容器の上方から前記収容容器の内部に粉体を充填する粉体充填装置に用いる覆い板であって、
前記粉体充填装置は、
前記収容容器に充填される前記粉体が内部の中空空間を流下する管状の流下部材と、
上方に開口を有し、下方に前記粉体の排出口を有し、前記流下部材から排出された前記粉体を受け入れ、前記排出口から当該粉体を前記収容容器に排出する管状の充填部材と、
前記充填部材の内部の空気を吸引して前記充填部材の外へ排気する排気口と、
前記充填部材または前記流下部材を上下方向に移動させる移動機構と、を有し、
前記覆い板は、
前記流下部材の外周壁から径方向外側に突出する、前記流下部材の外周壁を取り囲むように設けられるものである、
ことを特徴とする覆い板。
【請求項11】
収容容器の上方から前記収容容器の内部に粉体を充填する粉体充填装置に用いる流下部材付き覆い板であって、
前記粉体充填装置は、
上方に開口を有し、下方に前記粉体の排出口を有し、前記開口から前記粉体を受け入れ、前記排出口から当該粉体を前記収容容器に排出する管状の充填部材と、
前記充填部材の内部の空気を吸引して前記充填部材の外へ排気する排気口と、
前記充填部材または前記流下部材を上下方向に移動させる移動機構と、を有し、
前記流下部材付き覆い板は、
前記充填部材の上方に設けられ、
前記収容容器に充填される前記粉体が内部の中空空間を流下する管状の流下部材と、
前記流下部材の外周壁から径方向外側に突出する、前記流下部材の外周壁を取り囲むように設けられた覆い板を有する、
ことを特徴とする流下部材付き覆い板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は収容容器の上方から前記収容容器の内部に粉体を充填する粉体充填装置に関するものである。また、粉体充填装置に対して取り付けることができる覆い板や流下部材付き覆い板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
収容容器の上方から前記収容容器の内部に粉体を充填する粉体充填装置としては、様々な構造のものがある。
【0003】
例えば、下記特許文献1に開示された粉体充填装置は、略逆截頭円錐体の形をしたホッパー上部と、該ホッパー上部の下端から下方へ延びる筒状のホッパー下部とを備え、内部に上方から下方へと粉体が流れる粉体流路を備えた下側ホッパー本体と、該下側ホッパー本体の外周面から側方へ延びる取付け部を備え、該取付け部において駆動源に連結されて昇降する下側ホッパーと、前記下側ホッパーの前記取付け部に固定され、垂直へ延びるロッドを備えたエアーシリンダーと、前記下側ホッパーの上方に配置され、略逆截頭円錐体の形をした上側ホッパー本体と、該上側ホッパー本体の外周面から側方へ延びる取付け部とを供え、該取付け部において前記エアーシリンダーのロッドの先端に取付けられた上側ホッパーと、前記上側ホッパーに取付けられ、前記上側ホッパーの下側開口を通って下方へ延びる軸部と、該軸部の下端に設けられた弁体とを備え、前記下側ホッパーの前記粉体流路を開閉する開閉弁と、を備えることを特徴とする。
【0004】
この「容器への粉体充填装置」には、次のような効果があるとされている。(1)ホッパーを上側ホッパーと下側ホッパーの2分割で構成するとともに、上側ホッパーに下側ホッパーの粉体流路を開閉する開閉弁を設け、さらに前記上側ホッパーの外側方に前記開閉弁を昇降させるエアーシリンダーを配置したため、従来に比して粉体供給装置のレイアウトの自由度を増大することができる。(2)エアーシリンダーのロッドを囲繞して配置されるパッキンが磨耗しても、その摩耗片がホッパー内の粉体に異物として混入することが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来からある粉体充填装置を用いて収容容器の上方から前記収容容器の内部に粉体を充填する際、粉垂れが発生するという問題があった。
【0007】
例えば、スーパーマーケット等の店舗では、シナモンや赤唐辛子などの粉体の食品が包装袋(収容容器)に充填されて封をされた状態で陳列されている。このような製品を製造する現場では、まず粉体充填装置の粉体排出口の下方に任意の包装袋の上部を開いた状態でセットし、セットした包装袋の内部に粉体を充填した後、粉体を充填した包装袋を次工程が行われる別の場所へ移動させる。そして、新たな別の包装袋を粉体充填装置の粉体排出口の下方にセットし、新たな包装袋の内部に粉体を充填する。以上のような作業を繰り返すことにより、複数の包装袋の内部に粉体が充填されることになる。このような粉体の充填工程において、粉体を充填した包装袋を次工程が行われる別の場所へ移動させ、新たな別の包装袋を粉体充填装置の粉体排出口の下方にセットするまでの間に、粉体充填装置の内部に残存していた粉体が粉体充填装置の粉体排出口から垂れ落ちてしまうという問題があった。
【0008】
粉体充填装置の粉体排出口から垂れ落ちた粉体は粉体充填装置の下方の床面に積み重なって堆積するとともに、粉体充填装置の下方の周辺にも飛散するため、粉体充填装置の設置場所の一帯が粉まみれになるという問題が生じていた。また、床面に積み重なった粉体の一部は舞い上がって包装袋の外面に付着し、その後の工程の場所(例えば製品排出シュートなど)にまで粉体が付着してしまうという問題があった。以上のことから、粉体充填装置とその周辺の機器を清掃する際に、労力がかかるという問題があった。
【0009】
さらに、最終製品の包装袋の外面に粉体が付着したままで出荷することはできないため、最終製品を検品する工程や検品後の最終製品を箱詰めする工程などの複数の工程に亘って、包装袋の外面に付着した粉体を人手によって何度も拭き取る必要があり、製造コストが上昇する原因となっていた。
【0010】
また、粉体充填装置やその後工程の装置の周辺に粉体が散在した状態になると、その散在した粉体が舞い上がり、各装置の可動部などに付着して、各装置の故障の原因になるおそれがあった。
【0011】
以上のように、製造現場において粉垂れを防止することは非常に重要であるが、このような粉垂れを防止することができる粉体充填装置は市場に存在しないという現状がある。
【0012】
なお、前述の特許文献1に開示された粉体充填装置は、上記のような粉垂れを防止するために設けられたものではない。また、この粉体充填装置の下側ホッパーの内面の弁体着座部と弁体が何度も衝突する機構であるため、次第に弁体の外面が削れ、削れた部分が異物となって収納容器の内部に混入するおそれがあった。特に、収納容器の内部に充填する粉体が食品のような人体の内部に取り込まれるものである場合、異物の混入を避けることが非常に重要である。
【0013】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、本発明の主たる課題は、粉垂れを防止することができる粉体充填装置を提供することにある。また、粉垂れを防止することができる覆い板を提供することにある。さらに、粉垂れを防止することができる流下部材付き覆い板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
(第1の態様)
収容容器の上方から前記収容容器の内部に粉体を充填する粉体充填装置であって、
前記収容容器に充填される前記粉体が内部の中空空間を流下する管状の流下部材と、
前記流下部材の外周壁から径方向外側に突出する、前記流下部材の外周壁を取り囲むように設けられた覆い板と、
上方に開口を有し、下方に前記粉体の排出口を有し、前記流下部材から排出された前記粉体を受け入れ、前記排出口から当該粉体を前記収容容器に排出する管状の充填部材と、
前記充填部材の内部の空気を吸引して前記充填部材の外へ排気する排気口と、
前記充填部材または前記流下部材を上下方向に移動させる移動機構と、
を有することを特徴とする粉体充填装置。
【0015】
(作用効果)
本態様によれば、収容容器に粉体を充填させる段階において、充填部材の上端部と前記覆い板の下面の間に空隙が生じている。すなわち、充填部材の上方の開口が覆い板によって覆われず、開放された状態になっている。このような状態では、充填部材の内部の空気を吸引して排気口から排気する力が弱くなる。よって、収容容器に粉体を充填させる段階で、充填部材の内部の空気を吸引して排気口から排気するようにしていたとしても、その排気力が弱いため、収容容器に充填されるべき粉体のうち空気とともに排気口から排出される量が少なくなり、所望の量の粉体を収容容器に充填することができる。
【0016】
他方、収容容器に粉体を充填しない段階では、前述の粉垂れの発生を防ぐ必要がある。そのため、本態様の粉体充填装置では、収容容器に粉体を充填しない段階において、充填部材の上端部を覆い板と直接または間接に当接させ、流下部材以外の部分において、充填部材の上方の開口を覆い板によって覆う状態にしている。このように充填部材の上方の開口部が覆われることにより、充填部材の内部の空気が吸引されて排気口から排気されやすくなるため、たとえ充填部材の内部に粉体が残存していたとしても、その残存した粉体は排気口から排気され、充填部材の排出口から充填部材の下方の床面に落下することが少なくなる。
【0017】
その結果、従前のように最終製品の収納容器の外面に粉体が付着することがほとんどないため、最終製品の外観を清潔に保つことができる。また、最終製品の収納容器の外面に付着した粉体を人が拭き取る作業が要らなくなるため、製造の際の人的労力の低減と製造コスト(労務費)の低減を図ることができる。また、粉体充填装置の下方とその周辺部や、粉体充填後の工程を行う場所に粉体が散在することも無くなるため、清掃の手間を低減することもできる。さらに、粉体充填装置やその後工程の装置に粉体が付着することもほとんどないため、散在した粉体が原因となって各装置の故障が発生するということを防ぐこともできる。
【0018】
なお、前記特許文献1のように、下側ホッパーの内部に弁体を設け、その弁体が下側ホッパーの内面の弁体着座部と何度も衝突する機構でもないため、弁体の摩耗によって生じた異物(弁体の外面が削れた摩耗片)が収納容器の内部に混入する自体の発生を防ぐこともできる。
【0019】
(第2の態様)
前記移動機構は前記充填部材を上下方向に移動させるものであり、
前記粉体を前記収納容器に充填するために前記充填部材を下方へ移動させた状態で、前記充填部材の上端部と前記覆い板の下面の間に空隙が形成され、
前記粉体の粉垂れを防止するために前記充填部材を上方へ移動させた状態で、前記充填部材の上端部が前記覆い板と直接または間接に当接し、前記流下部材以外の部分において、前記充填部材の上方の開口が前記覆い板によって覆われる、前記第1の態様の粉体充填装置。
【0020】
(作用効果)
移動機構を用いて充填部材を上下方向に繰り返し移動させることで、前記第1の態様と同様の効果を得ることができる。
【0021】
(第3の態様)
前記移動機構は前記流下部材を上下方向に移動させるものであり、
前記粉体を前記収納容器に充填するために前記流下部材を上方へ移動させた状態で、前記充填部材の上端部と前記覆い板の下面の間に空隙が形成され、
前記粉体の粉垂れを防止するために前記流下部材を下方へ移動させた状態で、前記充填部材の上端部が前記覆い板と直接または間接に当接し、前記流下部材以外の部分において、前記充填部材の上方の開口が前記覆い板によって覆われる、前記第1の態様の粉体充填装置。
【0022】
(作用効果)
移動機構を用いて流下部材を上下方向に繰り返し移動させることで、前記第1の態様と同様の効果を得ることができる。
【0023】
(第4の態様)
前記覆い板は耐摩耗性の緩衝部材からなる前記第1~第3のいずれか1つの態様の粉体充填装置。
【0024】
(作用効果)
覆い板が耐摩耗性の部材からなるため、充填部材が何度も上下動して、充填部材が覆い板と何度も当たったとしても、覆い板が摩耗して削れる可能性が低い。そのため、覆い板が摩耗して異物(摩耗片)が生じ、それが収納容器の内部に混入することを防ぐことができる。
【0025】
また、覆い板が緩衝部材からなるため、充填部材が覆い板と当たったときの衝撃を和らげることができる。そのため、覆い板が充填部材と当たった時の衝撃によって覆い板が摩耗して削れる可能性を低減することができる。さらに、充填部材が上下移動を繰り返し、充填部材が覆い板と何度も当たることになるため、その衝突時の衝撃によって充填部材が故障する可能性もある。そこで、本態様のように覆い板を緩衝部材で構成することで、衝突時に充填部材が受ける衝撃を低減させることができ、充填部材が故障することを防止することができる。
【0026】
(第5の態様)
前記覆い板の少なくとも前記充填部材と当接する部分は平面であり、前記覆い板と前記充填部材の間の内角が75~105度である前記第1~第3のいずれか1つの態様の粉体充填装置。
【0027】
(作用効果)
前記特許文献1では、弁体が下側ホッパーの内面の弁体着座部と衝突するが、この弁体着座部が屈曲しているため、弁体が弁体着座部に衝突したときに弁体の外面が削れやすい。
【0028】
前記特許文献1のような形態とは異なり、本態様では、覆い板の少なくとも充填部材と当接する部分が平面であり、覆い板と充填部材の間の内角が75~105度であるため、覆い板が削れにくくなる。そのため、充填部材が覆い板に当たった衝撃で、覆い板が破損する可能性を低減することができる。
【0029】
(第6の態様)
前記充填部材は、上部の開口が広く、下方に向かって径が次第に小さくなり、排出口が細く狭まった形状であり、
前記排気口は前記充填部材の上部壁面に設けられている前記第1~第3のいずれか1つの態様の粉体充填装置。
【0030】
(作用効果)
収容容器に粉体を充填する際にも充填部材の内部の空気を排気するようにした場合、細く狭まった充填部材の下部に排気口を設けると、充填部材の内部の空気とともに、収容容器に充填したい多くの粉体を排気口から排出してしまうおそれがある。本態様のように収容容器の上部壁面に排気口を設けることで、充填部材の中心軸から排気口までの距離が長くなるため、充填部材の中心部を流下する粉体を吸引しづらくなり、収容容器に充填すべき粉体が排気口から排出される可能性が低くなる。
【0031】
また、覆い板が摩耗して摩耗片が落下するようなことがあった場合でも、覆い板の下方近くに排気口が設けられているため、落下した摩耗片が排気口から排出することができ、商品に異物が混入することを防ぐことができる。
【0032】
(第7の態様)
前記流下部材は前記充填部材の上部開口を通って前記充填部材の内部まで延出しており、
前記排気口は、前記流下部材の下端よりも上方に位置し、かつ前記充填部材の壁面に設けられている前記第1~第3のいずれか1つの態様の粉体充填装置。
【0033】
(作用効果)
本態様によれば、粉体は流下部材の内部を通って充填部材の排出口まで辿り着きやすくなる。すなわち、排気口が流下部材の下端よりも上方に位置するため、充填部材の内部の空気を排気口から吸引したとしても、流下部材の内部を流下する粉体は排気口まで辿り着きにくい。そのため、収容容器に粉体を充填する際に充填部材の内部の空気を排気するようにした場合であっても、排気口から排出される粉体の量を低減する、または無くすことができる。
【0034】
(第8の態様)
前記流下部材は前記充填部材の上部開口を通って前記充填部材の内部まで延出しており、
前記排気口は前記覆い板に設けられている前記第1~第3のいずれか1つの態様の粉体充填装置。
【0035】
(作用効果)
第7の態様と同様の作用効果を奏する。なお、第8の態様で排気口が設けられた位置は、第7の態様で排気口が設けられた位置よりも上方に位置するため、流下部材の下端から排出された粉体が排気口から吸引されたときに、排気口まで到達する距離が第7の態様よりも第8の態様のほうが長くなる。よって、第7の態様に比べて第8の態様のほうが、粉体が排気口から排出されにくく、収容容器に充填すべき粉体が排気口から排出される粉体の量をより低減する、または無くすことができる。
【0036】
(第9の態様)
前記充填部材を上方へ移動させた状態で、前記充填部材の上端部が前記覆い板と間接に当接する場合において、
前記充填部材の上端部と前記覆い板の間に耐摩耗性の緩衝部材が挟まれる前記第1~第3のいずれか1つの態様の粉体充填装置。
【0037】
(作用効果)
充填部材の上端部と覆い板の間に耐摩耗性の緩衝部材を設けることで、充填部材が上下移動を繰り返したときに、充填部材と覆い板が当たったときの衝撃を和らげることができる。その結果、充填部材が繰り返し衝撃を受けることにより故障する確率を低減することができる。
【0038】
また、緩衝部材の存在により、充填部材の上端部が直接覆い板に当たることがなくなるため、覆い板が摩耗してその摩耗片が収容容器の内部に混入するような事態の発生を防ぐことができる。
【0039】
(第10の態様)
収容容器の上方から前記収容容器の内部に粉体を充填する粉体充填装置に用いる覆い板であって、
前記粉体充填装置は、
前記収容容器に充填される前記粉体が内部の中空空間を流下する管状の流下部材と、
上方に開口を有し、下方に前記粉体の排出口を有し、前記流下部材から排出された前記粉体を受け入れ、前記排出口から当該粉体を前記収容容器に排出する管状の充填部材と、
前記充填部材の内部の空気を吸引して前記充填部材の外へ排気する排気口と、
前記充填部材または前記流下部材を上下方向に移動させる移動機構と、を有し、
前記覆い板は、
前記流下部材の外周壁から径方向外側に突出する、前記流下部材の外周壁を取り囲むように設けられるものである、
ことを特徴とする覆い板。
【0040】
(作用効果)
覆い板のない粉体充填装置がある場合に、その粉体充填装置に対して本態様の覆い板を取り付けることにより、前記第1の態様と同様の作用効果を奏することができる。
【0041】
(第11の態様)
収容容器の上方から前記収容容器の内部に粉体を充填する粉体充填装置に用いる流下部材付き覆い板であって、
前記粉体充填装置は、
上方に開口を有し、下方に前記粉体の排出口を有し、前記開口から前記粉体を受け入れ、前記排出口から当該粉体を前記収容容器に排出する管状の充填部材と、
前記充填部材の内部の空気を吸引して前記充填部材の外へ排気する排気口と、
前記充填部材または前記流下部材を上下方向に移動させる移動機構と、を有し、
前記流下部材付き覆い板は、
前記充填部材の上方に設けられ、
前記収容容器に充填される前記粉体が内部の中空空間を流下する管状の流下部材と、
前記流下部材の外周壁から径方向外側に突出する、前記流下部材の外周壁を取り囲むように設けられた覆い板を有する、
ことを特徴とする流下部材付き覆い板。
【0042】
(作用効果)
流下部材付き覆い板のない粉体充填装置がある場合に、その粉体充填装置に対して本態様の流下部材付き覆い板を取り付けることにより、前記第1の態様と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0043】
以上のとおり本発明によれば、粉垂れを防止することができる粉体充填装置を提供することができる。また、粉垂れを防止することができる覆い板を提供することができる。さらに、粉垂れを防止することができる流下部材付き覆い板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明に係る粉体充填装置の第一実施例において、粉体を充填している状態を示した側面図である。
【
図2】本発明に係る粉体充填装置の第一実施例において、粉体を充填していない状態を示した側面図である。
【
図4】流下部材と覆い板を組み合わせた状態のもの(流下部材付き覆い板)を示す斜視図である。
【
図5】流下部材と覆い板をバラバラにした状態を示す斜視図である。
【
図6】
図3の変形例を示した平面図である。(6A)が好ましい形態、(6B)が好ましくない形態である。
【
図7】本発明に係る粉体充填装置の第二実施例において、粉体を充填している状態を示した側面図である。
【
図8】本発明に係る粉体充填装置の第二実施例において、粉体を充填していない状態を示した側面図である。
【
図9】本発明に係る粉体充填装置の第三実施例において、粉体を充填している状態を示した側面図である。
【
図10】本発明に係る粉体充填装置の第四実施例において、粉体を充填している状態を示した側面図である。
【
図11】本発明に係る粉体充填装置の第四実施例において、粉体を充填していない状態を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明に係る粉体充填装置について添付図面を参照しつつ詳説する。
【0046】
(粉体充填装置1)
図1と
図2は本発明に係る粉体充填装置の第一実施例を示したものである。
図1が粉体を充填している状態を示し、
図2が粉体を充填していない状態を示している。
【0047】
粉体充填装置1は、粉体が内部の中空空間を流下する流下部材3と、流れ落ちた粉体を受け入れて排出口4Bから排出する充填部材4と、充填部材4を上下移動させる移動機構6と、充填部材4が上方に移動したときに充填部材4の開口4Aに蓋をする覆い板7と、を有する。以下、これらの構造について詳説する。
【0048】
(ホッパー2)
収容容器5に充填される粉体は、図示しない前段の装置から
図1のホッパー2に供給され、ホッパー2の内部に一時的に貯留される。ホッパー2は、上部の開口2Aが広く、下方DSに向かって径が次第に小さくなり、排出口2Bが細く狭まった、漏斗のような形状をしている。このホッパー2の内部にはスクリュー(図示しない)が備えられている。そして、収容容器5に粉体を充填する際は、このスクリューが回転することにより、ホッパー2の内部に貯留されている粉体の一部が排出口2Bから落下するようになっている。
【0049】
ホッパー2の排出口2Bから落下する粉体の量はスクリューの回転によって制御することができる。例えば、スクリューを1/4回ほど回転させると、1個の収納容器に充填する所定量の粉体(例えば10gのシナモン)を落下させることができるように設定した場合を想定する。この場合、まず充填部材4の下方に収容容器5をセットした後に、スクリューを1/4回ほど回転させて収容容器5に所定量の粉体を充填し、粉体を充填した収容容器5を後段の装置へと送り、その後充填部材4の下方に新たな収容容器5をセットし、さらにスクリューを1/4回ほど回転させて新たな収容容器5に所定量の粉体を充填する、ということを繰り返すことにより、次々に複数の収容容器5に所定量の粉体を充填することができる。
【0050】
なお、ホッパー2内に粉体が貯留された状態においては、流下部材3の上部が貯留された粉体によって蓋されたような状態になる。そのため、後述の覆い板7を流下部材3の内部に設けなくても、あたかも覆い板7が流下部材3の内部に設けられているような効果が奏される。収容容器5に粉体を充填しないときに、充填部材4の排出口4Bから粉垂れすることを防止するため、充填部材4の内部を吸引して排気口4Cから排気するが、流下部材3の上部が蓋されたような状態になっていることで、この排気を効果的に行うことができ、粉垂れの防止効果を高めることができる。
【0051】
なお、前述の説明では、ホッパー2内にスクリューを設け、このスクリューの回転によって粉体を流下させる形態を示したが、このような形態に限られるものではない。例えば、スクリューの回転の代わりに、横方向に左右に移動するシャッター(図示しない)を設けても良い。シャッターを設けた場合、このシャッターの開閉によってホッパー2の排出口2Bから落下する粉体の量を調節することができる。また、収容容器5に粉体を充填しないときは、シャッターを閉じることにより、流下部材3の上部が蓋された状態にすることができる。
【0052】
(流下部材3)
ホッパー2の排出口2Bに流下部材3が取り付けられている。この流下部材3の上端部はホッパー2の排出口2Bの外周壁を隙間なく覆うようにシールし、ホッパー2の排出口2Bから排出された粉体が流下部材3の上端部から漏れ出ないようにすることが好ましい。ホッパー2の排出口2Bに取り付けられた流下部材3は下方DSへ向かって延出している。
図1や
図2に示した流下部材3は、その下端部が充填部材4の内部まで延出している。流下部材3の下端部を充填部材4の内部まで延出させることで、流下部材3の排出口3Aと充填部材4の排出口4Bの間の距離が短くなる。そのため、収容容器5に粉体を充填する際に、流下部材3の排出口3Aから排出された粉体が充填部材4の排出口4Bから排出されやすくなり、意図せずに充填部材4の排気口4Cから排出される粉体の量を減らすことができる。
【0053】
流下部材3は筒のような形状をしており、その内部の中空空間を粉体が重力によって落下するようになっている。
図1、
図2に示した流下部材3は円筒管からなるが、円筒管に限られるものではなく、例えば横断面が三角形、四角形、六角形などの多角形からなる各筒管などにしてもよい。
【0054】
流下部材3の上下方向HDの距離は特に限定されず、任意に定めることができる。図示形態のように流下部材3の外周に金属探知機11を設け、流下部材3の内部を流下する粉体中に金属が含まれていないかをチェックする構造にする場合は、金属探知機11の設置スペースを確保するため、金属探知機11の上下方向HDの長さよりも流下部材3の上下方向HDの長さを長くすることが好ましい。このような意図がない場合は、流下部材3の上下方向HDの距離を図示した形態よりも短くしてもよい。
【0055】
流下部材3の素材は特に限定されないが、衛生面、帯電防止性能、耐摩耗性などを総合的に考慮した上で素材を決定することが好ましい。
【0056】
例えば、流下部材3の内壁面に粉体が付着し、付着した粉体がいつ落下するか分からない状態になると、粉垂れが生じかねない。そのため、帯電防止性能が高い素材、すなわち、流下部材3の内壁面に粉体が付着しづらい素材や、流下部材3の内壁面に粉体が付着したとしてもその粉体がすぐに滑り落ちるような素材を用いることが好ましい。
【0057】
また、流下部材3が比較的脆い素材からなる場合、流下部材3の一部が摩耗して落下し、その落下物が製品に混入するリスクがある。そのため、流下部材3の素材として耐摩耗性に優れた素材を用いることが好ましい。
【0058】
以上のような各事項を総合的に考慮すると、流下部材3を構成する具体的な素材としてシリコンやバンコラン等を用いることが好ましい。
【0059】
なお、流下部材3の外周に金属探知機11を設けない場合は、流下部材3の素材としてステンレスを用いてもよい。勿論、流下部材3の外周に金属探知機11を設ける場合に、流下部材3の素材としてステンレスを用いると、金属探知機11が常に反応しつづけてしまうため好ましくない。
【0060】
なお、
図1や
図2に示す流下部材3は、上方USから下方DSにかけてすべての横断面の直径がほぼ同じものを用いているが、このような形態に限られるものではない。例えば
図1や
図2に示す充填部材4のような漏斗形状にしてもよい。
【0061】
(充填部材4)
流下部材3の下方に管状の充填部材4が設けられている。この充填部材4は、上方USに開口4Aを有し、下方DSに粉体の排出口4Bを有しており、流下部材3の排出口3Aから排出された粉体を受け入れ、受け入れた粉体を排出口4Bから排出する。排出口4Bから排出された粉体は収容容器5の内部に充填される。
【0062】
図1と
図2に示した充填部材4は、上方USの開口4Aが広く、下方DSに向かって直径が次第に小さくなり、排出口4Bが細く狭まった形状をしている。このような形状にすることで、収容容器5の上部の開口が小さい場合であっても、滞りなく粉体を充填することができる。
【0063】
なお、充填部材4の形状は
図1や
図2に示した形態に限定されるものではない。例えば上方USから下方DSにかけてすべての横断面の直径がほぼ同じものを用いても良い。ただし、収容容器5の上部の開口が小さい場合は、
図1や
図2に示した漏斗のような形状のもののほうが優れている。
【0064】
また、
図1や
図2に示した充填部材4の横断面の形状は、上下方向HDにおけるすべての断面で円形になっているが、横断面の形状は円形に限られるものではない。例えば、横断面が三角形、四角形、六角形などの多角形からなる各筒管などにしてもよい。
【0065】
充填部材4の素材は特に限定されないが、衛生面や耐破損性を考慮することが好ましい。具体的な素材としては、ステンレス等を用いることが好ましい。
【0066】
図1や
図2に示す充填部材4の上部壁面には排気口4Cが設けられている。この排気口4Cには排気ダクト8が取り付けられており、この排気ダクトには図示しない排気ブロワが取り付けられている。そして、排気ブロワを作動させて、充填部材4の内部空間の空気を排気口4Cから吸引排気するようになっている。
【0067】
図1や
図2の実施形態ではこの吸引排気を常時行うようにしている。しかし、このような実施形態に限られるものではなく、収容容器5に粉体を充填するときには吸引排気を行わず、収容容器5に粉体を充填しないときにのみ吸引排気を行うようにしてもよい。ただし、収容容器5に粉体を充填するときは、高速で次々に粉体を収容容器5に充填するため、間欠的に排気ブロワを作動させて、収容容器5に粉体を充填しないときにのみ吸引排気を行うよう制御することは難しい。したがって、収容容器5に粉体を充填する時か充填しないか時かに関わらず、排気ブロワを常時作動させて、充填部材4の内部の空気を常に排気するようにすることが現実的である。
【0068】
なお、充填部材4に排気口4Cを設ける場合、
図1や
図2に示すように、その排気口4Cを充填部材4の上部に設けることが好ましい。排気口4Cを充填部材の下方DSに設けた場合、排出口4Bの位置と排気口4Cの位置が近くなる。また
図1や
図2に示すように、充填部材4の形状を漏斗のような形状にした場合、充填部材4の下方に粉体が一時的に滞留することがあり得る。さらに、前述のように、充填部材4の内部の空気を常に排気することが現実的である。そのため、排気口4Cを充填部材4の下方DSに設けた場合、本来収容容器5に充填したい粉体の多くが、充填部材4の内部の空気とともに排気口4Cから排出されてしまうおそれがあるからである。
【0069】
(移動機構6)
図1や
図2に示す粉体充填装置1は、充填部材4を上下方向HDに繰り返し移動させる移動機構6を備えている。
図1や
図2に示した移動機構6は、一端側ONS端部が充填部材4の中ほどに取り付けられ、横方向WDに延出するアーム6Aと、前記アーム6Aの他端側OTS端部に取り付けられ、上下方向HDに延出する従動節6Bと、前記従動節6Bの下端部に取り付けられたフォロア6Cと、前記フォロア6Cと接触しながら回転するカム6Dを有している。カム6Dの回転軸6Dcは、カム6Dの中心位置からズレた場所に設けられている。
図1や
図2において、このカム6Dが回転軸6Dcを中心として時計回りまたは反時計回りに回転することにより、従動節6Bが上下に移動し、結果的に従動節6Bとアーム6Aを介して接続された充填部材4が上下に移動する構造になっている。
【0070】
なお移動機構6は前述のカム6Dを用いる構造に限られるものではない。例えば、シリンダーや油圧モーターによって、アーム6Aを介して、充填部材4を上下方向HDに繰り返し移動させる構造にしてもよい。
【0071】
(覆い板7)
図1と
図2に示す第一実施形態では、流下部材3の外周壁から径方向外側に突出する覆い板7が設けられている。覆い板7は流下部材3の外周壁を取り囲むようにして設けられている。この覆い板7は、収容容器5に粉体を充填しないときに、充填部材4の開口4Aを覆う板状の部材であり、充填部材4の内部空間の粉塵を排気口から排気しやすくするために設けられたものである。
【0072】
この第一実施形態では、覆い板7の直径が充填部材4の開口4Aの直径よりも長くなっており、流下部材3の外周壁から径方向RD外側OSに突出する覆い板7の外側端部7Aが、充填部材4の上端部4Dの位置よりもさらに外側OSに位置している。覆い板7の外側端部7Aの位置は、
図1や
図2に示す第一実施形態よりも径方向RD内側ISにしてもよいが、充填部材4の開口4Aを密閉できるようにするために、覆い板7の外側端部7Aの位置が充填部材4の上端部4Dの位置よりも径方向RD内側ISとなるようにすることは好ましくない。
【0073】
覆い板7の平面視における外形形状は特に限定されず、任意の形状にすることができる。
図1や
図2に示した第一実施形態では、覆い板7の平面視における外形形状は真円形であり、充填部材4の開口4Aの平面視における外形形状も真円形であり、覆い板7の外径が充填部材4の開口4Aの直径よりも長くなっている。
【0074】
平面視において、流下部材3のある部分を除いた部分において(流下部材3のある部分は覆い板7で覆うことができないため当該部分を除く)、充填部材4の開口4Aのすべての部分が覆い板7で覆われた状態にすることが好ましい。したがって、充填部材4の開口4Aの直径よりも覆い板7の外径を少なくとも約30~50mm程度長くすることが好ましい。
【0075】
なお、平面視において、充填部材4の開口4Aの形状が覆い板7の形状と異なる場合がある。例えば、
図6に示すように、充填部材4の開口4Aの形状が正四角形であるのに対し、覆い板7の形状が正六角形である場合などである。このような場合は、
図6の(6A)に示すように、充填部材4の開口4Aの上に覆い板7が重なった状態で、平面視において、覆い板7の径方向RD外側OSに開口4Aの一部が見えない状態にすることが好ましい。
図6の(6B)に示すように、充填部材4の開口4Aの上に覆い板7が重なった状態で、平面視において、覆い板7の径方向RD外側OSに開口4Aの一部が見えてしまうと、その見えている部分4E、すなわち覆い板7と充填部材4の上端部4Dとの隙間4Eを通じて外気が充填部材4の内部に入り込んでしまい、粉垂れを防止する効果が弱まるため好ましくない。
【0076】
覆い板7は、内部に貫通孔が設けられた板状の覆い板7を流下部材3と別に製造した後、覆い板7の貫通孔の内部に流下部材3を嵌め込むようにして組み立ててもよいし、流下部材3と覆い板7を一体成型してもよい。
【0077】
充填部材4の開口4Aを密閉できるようにするため、流下部材3と覆い板7との間に隙間を設けないようにすることが好ましい。流下部材3と覆い板7を一体成型する場合は、そのような隙間が生じない、または生じにくいという利点がある。
【0078】
それに対して、流下部材3と覆い板7を別々に製造し、その後に覆い板7の中心部の貫通孔に流下部材3を挿通する場合においては、流下部材3と覆い板7との間に隙間を設けないようにするため、流下部材3の横断面の外周壁の形状と覆い板7の中心部の貫通孔の形状をほぼ同じにするとともに、流下部材3の横断面の外径と覆い板7の貫通孔の直径もほぼ同じにすることが好ましい。
【0079】
例えば、流下部材3の横断面の外周壁の形状が真円形である場合、覆い板7の中心部の貫通孔の形状も真円形に近い形状にすることが好ましく、当該形状を真円形にすることが最も好ましい。また、例えば流下部材3の横断面の外径が100mmである場合、覆い板7の貫通孔の直径を100mmにするか、100mmよりも若干(1~3mm程度)長くすることが好ましい。覆い板7の貫通孔の直径を流下部材3の横断面の外径よりも若干長くすることにより、覆い板7の中心部の貫通孔に流下部材3を挿通するときに挿通しやすいという利点がある。
【0080】
なお、流下部材3の外周壁と覆い板7の中心部の貫通孔に若干の隙間が生じるような場合は、その隙間を埋めるように、両者の間にパッキン等を挟み込むとよい。
【0081】
覆い板7の素材は特に限定されるものではないが、収容容器5に充填する粉体が食品である場合などには、異物混入を防ぎやすい素材を用いることが好ましい。
【0082】
また、繰り返し上下方向HDに移動する充填部材4の上端部が覆い板7の下面に当たるため、繰り返される衝突時の衝撃により、充填部材4や移動機構6に故障が生じる可能性がある。そこで、充填部材4や移動機構6に故障を防止するため、覆い板7の素材は緩衝部材であることが好ましい。
【0083】
以上のことから、覆い板7の素材としては、摩耗に強く、緩衝作用を有する素材(緩衝部材)を用いることが好ましい。具体的には、バンコラン(登録商標)などの素材を用いることが好ましい。反対に、粉体が食品である場合は、コンタミを防ぐ観点から、金属や、摩耗しやすい素材(シリコン、低強度のプラスチック)は用いないほうがよい。なお、覆い板7の素材としてステンレスなどの金属を用いる場合は、後述する中間部材9を配することが好ましい。
【0084】
また、覆い板7の少なくとも充填部材4の上端部4Dと当接する部分は平面にすることが好ましい。そして、覆い板7と充填部材4の上端部4Dとの間の内角αを75~105度にすることが好ましく、80~100度にすることがより好ましい。前記内角αを前記角度にすることで、充填部材4の上端部4Dが覆い板7に衝突した際に覆い板7が削れにくくなり、覆い板7の摩耗片が落下して収容容器5内に混入することを防ぐことができる。なお、
図2では、前記角度αを90度にした例を示している。
【0085】
なお、
図1および
図2に示す第一実施形態では、覆い板7を流下部材3の径方向外側OSに設けており、流下部材3の内部空間には覆い板7を設けていない。なぜならば、流下部材3の内部空間の一部分に流下部材3の中心軸へ向かって延出する覆い板7を設けたような場合、粉体が流下部材3の内部空間を流下する際に流下部材3の内壁からがあると、覆い板7の上部に粉体が堆積してしまう可能性があるからである。
【0086】
(粉体)
粉体充填装置1に充填される粉体は特に限定されるものではない。ただし、この粉体充填装置1は異物の混入を防ぐことができるものであるため、食品などの粉体を充填する際にも有益である。粉体の具体例としては、シナモンや赤唐辛子のパウダー、ココナッツミルクパウダー、花椒パウダーなどを挙げることができる。
【0087】
(収容容器5)
粉体を充填する収容容器5も特に限定されるものではない。例えば、プラスチック製の袋、瓶、缶などを挙げることができる。
【0088】
(粉体充填装置1の動作)
次に、
図1、
図2に示した粉体充填装置1の動作について説明する。
【0089】
まず充填部材4を下方DSへ移動し、
図1に示すように、収容容器5の上部の開口の内部に充填部材4の排出口4Bが挿入された状態にする。この状態では、充填部材4の上端部4Dが覆い板7と直接または間接に当接しておらず、両者の間に隙間4Eが生じている。この状態で、ホッパー2のスクリューを多少回転させて、1個の充填容器5に充填する分の粉体をホッパー2から落下させる。落下した粉体は重力によって流下部材3の内部空間を落下し、充填部材4の内部に入った後、充填部材4の下部に一時的に溜まり、その後に収容容器5の内部に充填される。なお、収容容器5に充填する粉体の量が少ない場合、粉体は充填部材4の下部に溜まることなく直ぐに収容容器5の内部へ流下する。
【0090】
収容容器5に粉体を充填している間も、充填部材4の上部壁面に設けた排気口4Cから、充填部材4の内部の空気が吸引されて排気される。ただし、収容容器5に粉体を充填している間は、充填部材4の上端部4Dと覆い板7の間に隙間4Eが生じているため、排気ブロワが充填部材4の内部の空気を吸引して排気する力はそれほど強く働かない。すなわち、排気ブロワは前記隙間4Eを通じて充填部材4の外側の空気も吸引するため、充填部材4の内部の空気を吸引する力が弱まる。そのため、粉体が流下部材3から充填部材4の内部に流下したときに、粉体の一部が充填部材の内壁に当たって一時的に舞い上がり、その舞い上がった粉体の一部が空気とともに排気口4Cから排出されることがあったとしても、そのような粉体の量は微量であり、大部分の粉体は排気口4Cから排出されずに充填部材4の内部に充填される。
【0091】
以上のようにして収容容器5に所定量の粉体が充填されると、
図2に示すように、充填部材4は上方USへ移動し、充填部材4の上端部4Dが覆い板7と直接または間接に当接された状態になる。そして、充填部材4の下方DSに新たな収容容器5が運ばれてくるまで、この当接状態が維持される。充填部材4の上端部4Dが覆い板7と直接または間接に当接された状態では、充填部材4の上端部4Dと覆い板7の間に隙間4Eが生じないため、排気ブロワは前記隙間4Eを通じて充填部材4の外側の空気を吸引しなくなる。その結果、排気ブロワが充填部材4の内部の空気を吸引して排気する力が強く働く。したがって、充填部材4の下方の排気口4Bから粉体が排出されてしまう現象(いわゆる粉垂れ)が生じることを防ぐことができる。
【0092】
このようにして粉垂れを防いでいる間に、粉体を充填した収容容器5は次工程を行う装置(例えばシール装置)へ送られ、充填部材4の下部に新たな収容容器5が運ばれる。そして、新たな収容容器5が充填部材4の下方にセットされると、充填部材4が再び下方DSへ移動し、再び粉体が充填される。
【0093】
以上の説明では、排気ブロワの吸引力をずっと一定に保った状態で、粉体充填装置1を運転する形態を示した。しかし、このような形態に限られるものではなく、収容容器5に粉体を充填するときには排気ブロワの吸引力を弱くし(または排気ブロワで吸引しないようにし)、収容容器5に粉体を充填しないときには排気ブロワの吸引力を強くするような制御をしてもよい。ただし、実際の製造現場においては、複数の収容容器5に対して粉体を次々と高速で充填するため、このような制御を行うことは容易でない。
【0094】
また、
図2に示す実施形態では、充填部材4が上方USへ移動した後の状態において、充填部材4の上端部4Dと覆い板7の下面がピッタリと触れているような状態になっているが、必ずしもこのような状態でなくてもよい。すなわち、覆い板7が可撓性を備えている場合、充填部材4の上方USへの移動距離を
図2の場合よりも長くして、覆い板7の端部が下から上に押されて上方に湾曲したような形態にしてもよい。反対に、充填部材4の上方USへの移動距離を短くして、覆い板7と充填部材4の上端部4Dが直接または間接に当接せず、隙間4Eが生じるような形態にすることは、粉垂れの防止という観点から、あまり望ましくない。
【0095】
なお、覆い板7と充填部材4の上端部4Dが直接に当接しているとは、
図2に示すように、覆い板7と充填部材4が直接的に接触した状態になっていることを指す。覆い板7と充填部材4の上端部4Dが間接に当接しているとは、
図8に示すように、覆い板7と充填部材4の上端部4Dの間に中間部材9が挟まれた状態で、覆い板7と充填部材4の上端部4Dが間接的に接触した状態になっていることをいう。
【0096】
(第二実施形態)
図7と
図8に第二実施形態に係る粉体充填装置1を示した。
第二実施形態では第一実施形態と異なり、覆い板7と充填部材4の上端部4Dの間に中間部材9が位置している。そして、充填部材4が上方USへ移動したときに、この中間部材9を介して、覆い板7と充填部材4の上端部4Dが間接的に当接する構造となっている。
【0097】
この中間部材9は、充填部材4が上方USへ移動したときに、覆い板7と充填部材4の間の隙間4Eを無くすことを目的として設けられたものであるため、充填部材4の上端部4Dとほぼ同じ形状にすることが好ましく、かつ充填部材4の上端部4Dとほぼ同じ範囲に設けることが好ましい。
図7と
図8に示す第二実施形態では、平面視において、充填部材4の上端部4Dの形状が真円形であるため、中間部材9の形状も真円形にしている。また充填部材4の上端部4Dの直径と中間部材9の直径をほぼ同じ長さにしている。さらに、中間部材9を設ける位置を充填部材4の上端部4Dの位置とほぼ同じ位置とし、充填部材4が上方USへ移動したときに、充填部材4の上端部4Dの上端面すべてが中間部材9の下面と接触するようにしている。
【0098】
中間部材9の素材は特に限定されるものではないが、収容容器5に充填する粉体が食品である場合などには、異物混入を防ぎやすい素材を用いることが好ましい。
【0099】
また、繰り返し上下方向HDに移動する充填部材4の上端部4Dが中間部材9の下面に当たるため、繰り返される衝突時の衝撃により、充填部材4や移動機構6に故障が生じる可能性がある。そこで、充填部材4や移動機構6に故障を防止するため、中間部材9の素材は緩衝部材であることが好ましい。
【0100】
以上のことから、中間部材9としては、摩耗に強く、緩衝作用を有する素材(緩衝部材)を用いることが好ましい。具体的には、バンコラン(登録商標)などの素材を用いることが好ましい。反対に、粉体が食品である場合は、コンタミを防ぐ観点から、金属や、摩耗しやすい素材(シリコン、低強度のプラスチック)は用いないほうがよい。なお、中間部材9を覆い板7などに取り付ける際は、コンタミを防ぐため、中間部材9が覆い板7から剥離しないような方法で取り付けることが好ましい。
【0101】
(第三実施形態)
図7の第二実施形態では中間部材9が覆い板7の下面に取り付けられているが、このような形態に限られるものではない。例えば、
図9に示す第三実施形態のように、中間部材9が充填部材4の上端部4Dの上面に取り付けられている形態にしてもよい。なお、
図9に示す第三実施形態において、充填部材4が上方へ移動すると、
図8に示す第二実施形態と同じ状態になる。
【0102】
(第四実施形態)
第一~第三の実施形態は充填部材4が上下方向HDに移動するものであるが、必ずしもこのような形態に限られるものではない。例えば、
図10及び
図11に示す第四実施形態のように、充填部材4ではなく、流下部材3が上下方向HDに移動する形態にしてもよい。
【0103】
第四実施形態では、流下部材3の上方USに流下部材3の一部が折り畳まれたバッファー部3Aが設けられている。移動機構6のアーム6Aが下方DSに移動すると、流下部材3のバッファー部3Aが下方に延びる。そうすると、バッファー部3Aよりも下方DSに位置する流下部材3が下方DSに移動し、それに伴って流下部材3に連結されていた覆い板7も下方DSに移動する。その結果、充填部材4の上端部と覆い板7の下面が接触するようになり、充填部材4と覆い板7の間に形成されていた隙間4Eが消失する。収容容器5の内部に粉体を供給しないときに、上記のようにして隙間4Eをなくすことで、粉垂れを防止することができる。
【0104】
他方、収容容器5の内部に粉体を供給するときは、流下する粉体が吸引されて排気ダクト8から排出されないようにするため、隙間4Eを再び形成することが好ましい。この隙間4を形成するために、移動機構6のアーム6Aを上方USに移動させ、流下部材3と覆い板7を上方USに移動させるようにする。そして、流下部材3を上方USに移動させると、バッファー部3Aが再び形成される。
【0105】
このように、粉体を供給するタイミングに合わせて、覆い板7を上下移動させることにより、第一~第三実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0106】
なお、第四実施形態では流下部材3と覆い板7を上下に移動させるために流下部材3の一部にバッファー部3Aを設けた形態を例示したが、このような形態に限られるものではない。例えば、ホッパー2の外面と流下部材3の内面の間に僅かな隙間を設けて両者が擦れ合わないようにした上で、流下部材3全体が上下方向HDに移動するようにしてもよい。
【0107】
このように流下部材3が上下方向HDに移動する形態が様々考えられるが、コンタミを防ぐ観点からは、ホッパー2や流下部材3等の部材が相互に擦れ合わない形態にすることが好ましい。また、バッファー部3Aを設ける位置を
図10や
図11のようにホッパー2の外側とし、流下部材3の内面に粉体が付着しにくい形態にすることが好ましい。
【符号の説明】
【0108】
1…粉体充填装置、2…ホッパー、2A…開口、2B…排出口、3…流下部材、3A…バッファー部、4…充填部材、4A…開口、4B…排出口、4C…排気口、4D…上端部、4E…隙間、5…収容容器、6…移動機構、6A…アーム、6B…従動節、6C…フォロア、6D…カム、6Dc…回転軸、7…覆い板、7A…外側縁部、8…排気ダクト、9…中間部材、10…(ホッパー支持用)フランジ、11…金属検出器、HD…上下方向、US…上方、DS…下方、WD…横方向、ONS…一端側、OTS…他端側、RD…径方向、OS…外側、α…充填部材の上端部と覆い板の間の内角、