IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクノロジーズの特許一覧

特開2024-158687位置決め装置、放射線治療装置及び位置決め方法
<>
  • 特開-位置決め装置、放射線治療装置及び位置決め方法 図1
  • 特開-位置決め装置、放射線治療装置及び位置決め方法 図2
  • 特開-位置決め装置、放射線治療装置及び位置決め方法 図3
  • 特開-位置決め装置、放射線治療装置及び位置決め方法 図4
  • 特開-位置決め装置、放射線治療装置及び位置決め方法 図5
  • 特開-位置決め装置、放射線治療装置及び位置決め方法 図6
  • 特開-位置決め装置、放射線治療装置及び位置決め方法 図7
  • 特開-位置決め装置、放射線治療装置及び位置決め方法 図8
  • 特開-位置決め装置、放射線治療装置及び位置決め方法 図9
  • 特開-位置決め装置、放射線治療装置及び位置決め方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158687
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】位置決め装置、放射線治療装置及び位置決め方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
A61N5/10 M
A61N5/10 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074087
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 孝明
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AA01
4C082AC05
4C082AE03
4C082AJ07
4C082AJ16
4C082AL07
(57)【要約】
【課題】最適化計算の計算時間を低減しながら精度の高い患者の位置決めを行うことが可能な位置決め装置を提供する。
【解決手段】関心領域描画部23は、患者Bを互いに異なる時刻に撮影して得られた複数の透視画像のそれぞれに関心領域を設定する。画像照合部24は、最適化計算により、関心領域描画部23にて設定された関心領域を用いて複数の透視画像の間のずれ量を寝台7を移動させる移動量として算出する。その際、画像照合部24は、関心領域に対応した3次元関心領域の重心を通る軸を、移動量の回転成分を算出する回転軸として使用する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療時に被検者が搭載される寝台の位置を制御する位置決め装置であって、
前記被検者を互いに異なる時刻に撮影して得られた複数の画像のそれぞれに関心領域を設定する設定部と、
最適化計算により、前記関心領域を用いて前記複数の画像の間のずれ量を前記寝台を移動させる移動量として算出する照合部と、を有し、
前記照合部は、前記関心領域に対応した3次元関心領域の重心を通る軸を、前記移動量の回転成分を算出する回転軸として使用する、位置決め装置。
【請求項2】
前記画像は、複数の光源のそれぞれからの光を前記被検者を介して各光源に対応する検出面で検出することで前記被検者を撮影した複数の2次元透視画像と、3次元撮影装置にて前記被検者を撮影した3次元画像を前記検出面に投影した複数の2次元疑似透視画像とを含む、請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記照合部は、前記複数の光源のそれぞれに対応する、当該光源と当該光源からの光を検出する検出面に投影された2次元疑似透視画像に設定された前記関心領域の重心とを結ぶ線の共通垂線の中点を前記3次元関心領域の重心とする、請求項2に記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記照合部は、前記3次元関心領域の重心を通り、前記複数の光源のそれぞれと当該光源からの光を検出する検出面とを結ぶ複数の撮影軸のそれぞれに沿った複数の軸を前記回転軸として使用する、請求項2に記載の位置決め装置。
【請求項5】
前記複数の透視画像のそれぞれは、3次元撮影装置にて前記被検者を撮影した3次元画像であり、
前記設定部は、前記関心領域として前記3次元画像内の3次元領域を設定し、
前記照合部は、前記設定部が設定した関心領域を前記3次元関心領域とする、請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項6】
前記透視画像と前記透視画像における前記回転軸の位置を示す情報とを表示する画像表示部をさらに有する、請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項7】
前記透視画像は、前記放射線治療の治療計画を作成するために予め撮影した画像と、前記放射線治療時に撮影した画像とを含む、請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項8】
請求項1に記載の位置決め装置と、
前記位置決め装置にて算出された移動量に基づいて前記寝台を移動させる寝台制御装置と、
前記移動された寝台に搭載された被検者に放射線を照射する照射装置と、を有する放射線治療装置。
【請求項9】
被検者が搭載された寝台の位置を制御する位置決め装置による位置決め方法であって、
前記被検者を互いに異なる時刻に撮影して得られた複数の画像のそれぞれに関心領域を設定し、
最適化計算により、前記複数の画像のそれぞれに設定された関心領域のずれ量を前記寝台を移動させる移動量として算出し、
前記移動量の算出では、前記関心領域に応じた3次元関心領域の重心を通る軸を、前記移動量の回転成分を算出する回転軸として使用する、位置決め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位置決め装置、放射線治療装置及び位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がんの治療法の1つとして、放射線を患者に照射する放射線治療が知られている。放射線治療で用いられる放射線は、X線又はガンマ線のような非荷電粒子線と、陽子線又は炭素線のような荷電粒子線とに大別される。後者の荷電粒子線を使用した放射線治療は、一般に粒子線治療と呼ばれている。
【0003】
非荷電粒子線の場合、線量は体内で浅い位置から深い位置にかけて一定の割合で減少する。一方、荷電粒子線の場合、特定の深さにエネルギー損失のピークを有する線量分布(ブラックカーブ)を形成することができる。このため、荷電粒子線のエネルギー損失のピークを腫瘍の位置に合わせることにより、腫瘍よりも深い位置にある正常な組織へ照射される荷電粒子線の線量を大幅に低下させることが可能となる。
【0004】
このため、放射線治療では、所望の線量の放射線を正確に標的となる腫瘍に照射することが治療効果の向上にとって重要である。放射線の腫瘍への正確な照射を実現するためには、予め作成した治療計画によって決められた計画位置と同じ位置に患者の位置を合わせる必要がある。この患者の位置を合わせることを患者の位置決めと呼ぶ。
【0005】
放射線治療における患者の位置決めの方法としては、以下の2つの方法が主に利用されている。1つ目の位置決め方法は、治療日に寝台の上に寝ている患者を2組のX線管と平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)により互いに異なる2方向から撮影した透視X線画像(Digital Radiography:DR)と、治療計画を作成する際に用いた治療計画CT(Computed Tomography)画像から作成した疑似透視X線画像とを比較して、骨のような位置決め対象構造物の位置が透視X線画像と疑似透視X線画像とで一致するように患者を位置決めする3次元-2次元(3D2D)位置合わせである。2つ目の位置決め方法は、治療計画CT画像と治療日に治療室内のCT装置で撮影したCT画像もしくは治療室の回転ガントリーに搭載されたX線撮影装置を使用して撮影するコーンビームCT(Cone Beam CT:CBCT)画像とを合わせる3次元-3次元(3D3D)位置合わせである。
【0006】
3D2D位置合わせでは、透視X線画像に患者の固定具及び軟組織のような位置決め対象構造物以外の構造物が位置決め対象構造物と重ねて写り込んだり、位置決め対象構造物の配置が治療計画の作成時から変化したりすることがある。このような状況では、透視X線画像と疑似透視X線画像とに写された構造が画像全体にわたって一致しないことがある。このような場合、患者の位置決めは、透視X線画像における位置決め対象構造物が存在する領域を位置合わせの対象領域である関心領域(Region of Interest:ROI)として設定して行われる。3D3D位置合わせでも同様に、3次元画像上の位置決め対象構造物が存在する領域を関心体積(Volume of Interest:VOI)として設定して患者の位置決めが行われる。
【0007】
患者の位置決めは、患者が寝ている寝台の移動量をパラメータとし、そのパラメータの最適値を最適化計算により算出することで行われる。移動量は、通常、並進成分と回転成分とを有し、さらに、並進量は、互いに直交する3軸(x、y、z)に沿った3成分を有し、回転量は、その3軸を回転軸とした3成分(Pitch、Roll、Yaw)を有する。このため、最適化計算では、これら6成分のそれぞれに対する最適化プロセスの繰り返しで行われる。また、並進成分を規定する3軸は、患者を計画位置に配置するための寝台の移動軸と一致し、x軸は仰向けに寝台に横たわった患者から見て右から左に向かう方向(Right-Left direction:RL方向)、y軸は足から頭に向かう方向(Superior-Inferior direction:SI方向)、z軸は背中から腹部に向かう方向(Anterior-Posterior:AP方向)を向いている。
【0008】
しかしながら、位置決め開始時の患者位置が治療計画の位置から離れている場合、最適化計算において、判断指標となる透視X線画像に対する疑似透視X線画像の類似度の変化が小さくなり、治療計画の位置に向かって類似度が高くなるという特徴を利用することが難しく、パラメータの最適値に到達できなかったり、最適化計算における繰り返し計算の回数の増加により計算量が増加することがある。
【0009】
これに対して、特許文献1及び2には、より少ない繰り返し計算回数で最適値を到達するための技術が開示されている。これらの技術では、最適化計算において、各成分に対する最適化プロセスが終了した後で透視X線画像を撮影する撮影軸に沿った方向に対する1次元方向の最適化プロセスを追加することで、最適化計算における最適化プロセスを繰り返す計算回数の軽減化が図られている。
【0010】
また、特許文献3には、撮影軸に沿った方向に対する並進量の最適化を、その透視撮影軸に直交する1方向によってのみ評価することで、最適化計算で使用する透視X線画像の枚数を削減して、患者の位置決めに係る時間の短縮化を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第6668902号
【特許文献2】国際公開第2018/225234号
【特許文献3】特開2013―99431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1~3の技術では、最適化計算の開始位置付近で類似度の変化が小さい場合、及び、局所的に類似度が高い箇所が存在する場合などでは、最適な値に向かって類似度が高くなるという傾向が弱まり、6自由度のパラメータを変数とした最適化計算では正しい解に到達できない可能性がある。
【0013】
最適化計算で正しい解に到達できない原因の1つとして、回転成分に対する最適化プロセスによる並進成分の値がずれる並進ずれが生じることが挙げられる。従来、最適化計算では、疑似透視X線画像を作成する際に設定した投影中心を通る軸が回転成分を算出するための回転軸として使用される。この場合、並進成分における透視X線画像と疑似透視X線画像とずれがなく、かつ、関心領域が投影中心から離れている場合、回転成分の位置合わせによって発生する関心領域の並進成分のずれにより、透視X線画像に対する疑似透視X線画像の類似度がかえって低下することがある。このため、回転成分の値が正しい解に到達できず、患者の位置決めの精度が低下してしまう。
【0014】
本開示の目的は、最適化計算の計算時間を低減しながら精度の高い患者の位置決めを行うことが可能な位置決め装置、放射線治療装置及び位置決め方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示の一態様に従う位置決め装置は、放射線治療時に被検者が搭載される寝台の位置を制御する位置決め装置であって、前記被検者を互いに異なる時刻に撮影して得られた複数の透視画像のそれぞれに関心領域を設定する設定部と、最適化計算により、前記複数の透視画像のそれぞれに設定された関心領域のずれ量を前記寝台を移動させる移動量として算出する照合部と、を有し、前記照合部は、前記関心領域に応じた3次元関心領域の重心を通る軸を、前記移動量の回転成分を算出する回転軸として使用する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、最適化計算の計算時間を低減しながら精度の高い患者の位置決めを行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の実施例1に係る粒子線治療システムの全体構成を示す図である。
図2】実施例1の患者位置決め処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図3】粒子線治療システムの撮影体系を示す図である。
図4】粒子線治療システムの撮影体系に対応する仮想的な撮影体系を示す図である。
図5】3次元関心領域の重心を算出する処理を説明するための図である。
図6図5に示された共通垂線付近の領域の拡大図である。
図7】3次元関心領域の重心を通る回転軸の一例を説明するための図である。
図8】ソフトウェア画面の一例を示す図である。
図9】治療時3次元透過画像に設定された3次元関心領域の一例を示す図である。
図10】実施例2の患者位置決め処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施例について図面を参照して説明する。
【0019】
なお、以下の記載及び図面は、本開示を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でもよい。また、実施例を説明する図において、同一の機能を有する箇所には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略することがある。また、図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。また、同一あるいは同様の構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【実施例0020】
図1は、本開示の実施例1に係る粒子線治療システムの全体構成を示す図である。図1に示す粒子線治療システムAは、被検者である患者Bを標的として粒子線を照射するための装置群を有する放射線治療装置である。粒子線治療システムAは、加速器1と、ビーム輸送装置2と、ガントリ3と、照射ノズル4と、FPD5A及び5Bと、X線管6A及び6Bと、寝台7と、ロボットアーム8と、通信装置9と、データサーバ10と、治療計画装置11と、透視X線画像撮影装置12と、寝台制御装置13と、患者位置決め装置20とを備える。
【0021】
加速器1は、患者Bに照射する粒子線を生成する粒子線生成器であり、粒子線を、患者Bの治療に適したエネルギーになるまで加速して出力する。ビーム輸送装置2は、加速器1から出力された粒子線をガントリ3まで輸送する。粒子線の種類は、特に限定されず、例えば、陽子線又は炭素線などである。
【0022】
ガントリ3及び照射ノズル4は、加速器1から輸送された粒子線を患者Bに照射する照射装置である。ガントリ3は、加速器1から輸送された粒子線を患者Bに照射する照射角度を調整する。具体的には、ガントリ3は、患者Bを囲って360°の回転することが可能な回転機構を有し、回転することにより照射角度を調整する。照射ノズル4は、ガントリ3に備わっており、ガントリ3まで輸送された粒子線を患者Bに照射する。照射ノズル4には、粒子線の形状を患者の患部の形状に合うように調整する機構が組み込まれていてもよい。
【0023】
FPD5A及び5BとX線管6A及び6Bとは、患者Bの透視撮影を行う撮影体系を構成する。FPD5A及び5Bは、X線を検出面で検出して患者Bを撮影する平面状の検出器である。X線管6A及び6Bは、光としてX線を出力する光源である。FPD5A及びX線管6Aは、X線管6Aから出力されたX線がFPD5Aにて検出されるように対向して配置され、FPD5B及びX線管6Bは、X線管6Bから出力されたX線がFPD5Bにて検出されるように対向して配置される。FPD5Aの中心とX線管6Aとを結ぶ軸と、FPD5Bの中心とX線管6Bとを結ぶ軸とが患者を撮影する2つの撮影軸となる。2つの撮影軸は、互いに直交することが好ましいが、互いに直交していなくてもよい。また、粒子線治療システムAは、FPD及びX線管をそれぞれ3つ以上備えてもよい。この場合、撮影軸も3つ以上となる。
【0024】
寝台7は、放射線治療時に(つまり、患者Bに粒子線を照射する際に)患者Bを載せる台である。ロボットアーム8は、寝台7を移動させる装置である。具体的には、ロボットアーム8は、寝台7に対して、複数の移動軸のそれぞれに沿った複数の並進方向に対する並進移動と、複数の回転軸を中心とした複数の回転方向に対する回転移動とを行う。本実施例では、寝台7の移動軸と回転軸とは同一であり、移動軸は3つある。また、各移動軸は、寝台7に仰向けに横たわった患者Bから見て左から右に向かう方向(RL方向)、患者Bの足から頭に向かう方向(SI方向)、背中から腹部に向かう方向(AP方向)を向いている。
【0025】
通信装置9は、データサーバ10、治療計画装置11及び患者位置決め装置20を互いに通信可能に接続する。
【0026】
データサーバ10は、患者Bの粒子線治療に関する種々の情報を格納する格納装置である。データサーバ10は、例えば、3次元撮影装置にて患者Bを撮影した3次元画像と、患者Bの治療計画を示す治療計画情報とを格納する。3次元画像は、患者の形状及び電子密度をボクセル単位で示す情報を含む。3次元画像は、例えば、コンピュータ断層(Computed Tomography:CT)装置で撮影されたCT画像などであり、事前(患者Bの治療計画情報を作成する前)に生成される。治療計画情報は、3次元画像に基づいて生成される。また、治療計画情報は、治療時の患者Bの配置である計画配置を示す計画配置情報を含む。患者Bの配置は、患者Bの位置及び角度(姿勢)を示し、寝台7の位置及び角度によって定められる。
【0027】
治療計画装置11は、データサーバ10に格納された3次元画像に基づいて、患者Bの治療計画を作成し、その治療計画を示す治療計画情報をデータサーバ10に格納する。
【0028】
透視X線画像撮影装置12は、FPD5A及びX線管6Aと、FPD5B及びX線管6Bとをそれぞれ制御して、患者Bを互いに異なる角度から撮影した複数の2次元透視画像である透視X線画像を取得して患者位置決め装置20に送信する。透視X線画像は、本実施例では、2つある。
【0029】
寝台制御装置13は、ロボットアーム8を制御して寝台7の配置を調整することで、患者Bの配置を調整する。
【0030】
患者位置決め装置20は、患者Bを互いに異なるタイミング(時刻)で撮影して得られた複数の画像に基づいて、患者Bの位置決めを行う位置決め処理を実行する位置決め装置である。本実施例では、患者位置決め装置20は、画像として、治療計画を作成するために予め撮影されてデータサーバ10に格納された3次元画像(より具体的には、後述する3次元画像から作成された疑似透視X線画像)と、放射線治療時に透視X線画像撮影装置12にて取得された透視X線画像とを用いる。
【0031】
患者位置決め処理は、患者Bに対する粒子線治療の開始前に、寝台7に載せられた患者Bを治療計画情報にて示される計画配置と同じ配置にする処理である。患者位置決め装置20は、寝台制御装置13を介してロボットアーム8を制御して寝台7の位置及び角度を調整することで、患者Bを計画配置と同じ配置にする。
【0032】
患者位置決め処理が終了すると、実際に患者Bの粒子線治療が行われる。具体的には、加速器1にて治療に適したエネルギーまで加速された粒子線がビーム輸送装置2を介してガントリ3に輸送される。粒子線は、ガントリ3にて適切な方向に偏向され、照射ノズル4を通過して患者Bの患部に照射される。
【0033】
以下、患者位置決め装置20についてより詳細に説明する。
【0034】
患者位置決め装置20は、図1に示すように、画像取得部21と、疑似透視X線画像作成部22と、関心領域描画部23と、画像照合部24と、画像表示部25と、制御部26とを有する。
【0035】
画像取得部21は、データサーバ10から通信装置9を介して3次元画像を取得し、透視X線画像撮影装置12から透視X線画像を取得する。
【0036】
疑似透視X線画像作成部22は、画像取得部21にて取得された3次元画像を、透視X線画像を撮影した撮影体系と同じ撮影体系を想定した仮想空間である対応仮想空間上に配置し、その3次元画像を所定の面に投影した2次元疑似透視画像を疑似透視X線画像として作成する。所定の面は、FPD5A及び5Bに対応する、仮想空間上に配置された仮想的なFPDの検出面である。本実施例では、実際のFPDが2つあるため、所定の面も2つあり、疑似透視X線画像も2つ作成される。
【0037】
関心領域描画部23は、疑似透視X線画像における患者の位置決めに使用する関心領域を設定する設定部である。例えば、関心領域描画部23は、疑似透視X線画像を表示して、ユーザに疑似透視X線画像上に関心領域を描画させることで、関心領域を設定する。関心領域は、例えば、骨のような位置決め対象構造物を含むように設定される。
【0038】
画像照合部24は、最適化計算により、透視X線画像と疑似透視X線画像の間のずれ量(つまり、透視X線画像と疑似透視X線画像を一致させるための画像上の移動量)を、寝台7を移動させる移動量であるカウチ移動量として算出する照合部である。関心領域描画部23にて関心領域が設定されている場合、画像照合部24は、関心領域内の情報だけを用いて透視X線画像と疑似透視X線画像とのずれ量をカウチ移動量として算出する。
【0039】
画像表示部25は、種々の情報及び画像を表示する表示部である。例えば、画像表示部25は、位置決め処理に係る情報(透視X線画像及び疑似透視X線画像など)を示すソフトウェア画面(図8参照)などを表示する。
【0040】
制御部26は、寝台制御装置13を制御して、画像照合部24にて算出されたカウチ移動量に基づいて寝台7を移動させることで、患者Bの配置を調整する。
【0041】
以上の機能を有する患者位置決め装置20は、コンピュータ装置のような種々の情報処理が可能な情報処理装置にて実現することができる。情報処理装置は、例えば、演算素子、記憶媒体及び通信インターフェースを有し、さらに、必要に応じてマウス及びキーボードのような入力部と、ディスプレイのような表示部とを有する。
【0042】
演算素子は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサである。記憶媒体は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)などの磁気記憶媒体、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)及びSSD(Solid State Drive)などの半導体記憶媒体などである。また、記憶媒体として、DVD(Digital Versatile Disk)などの光ディスク及び光ディスクドライブの組み合わせが用いられてもよい。さらに、記憶媒体として、磁気テープメディアのような他の高値の記憶媒体が用いられてもよい。
【0043】
記憶媒体には、ファームウェアなどのプログラムが格納されている。患者位置決め装置20の動作開始時(例えば電源投入時)に、演算素子がプログラムを記憶媒体から読み出して実行することにより、患者位置決め装置20の各部21~26が実現され、全体の一連の制御が実行される。また、記憶媒体には、プログラム以外にも、患者位置決め装置20の各処理に必要なデータ等が格納される。
【0044】
なお、本実施例の患者位置決め装置20は、複数の情報処理装置が通信ネットワークを介して通信可能に構成された、いわゆるクラウドコンピューティングにて構成されてもよい。
【0045】
以下、患者位置決め装置20による患者位置決め処理についてより詳細に説明する。
【0046】
図2は、患者位置決め処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0047】
なお、患者Bは、寝台7のセットアップポジションに配置されているものとする。セットアップポジションとは、患者Bを計画配置と同じ配置にするための位置である。例えば、寝台7上の患者Bの体表の位置が治療室内に設置された赤外線レーザを用いて測定され、その体表の位置に基づいて、患者Bが寝台7のセットアップポジションに配置される。
【0048】
患者位置決め処理では、先ず、制御部26は、データサーバ10から治療計画情報を取得し、その治療計画情報に含まれる計画配置情報に基づいて、寝台制御装置13を介してロボットアーム8を制御して、患者Bの配置が計画配置情報にて示される計画配置となるように、患者Bを載せた寝台7を移動させる(ステップS100)。このとき、寝台7に載せられた患者Bの位置決め対象構造物がFPD5A及び5BとX線管6A及び6Bとで形成される撮影領域(X線の照射領域)に含まれる。
【0049】
その後、画像取得部21は、透視X線画像撮影装置12を介して、患者Bを互いに異なる複数の方向から撮影した複数の透視X線画像情報を取得する(ステップS101)。本実施例では、画像取得部21は、2つの撮影軸に沿った2つの方向から撮影した2つ透視X線画像情報を取得する。
【0050】
また、画像取得部21は、データサーバ10から3次元画像を取得する。疑似透視X線画像作成部22は、その3次元画像を対応仮想空間上に配置し、その3次元画像を仮想的なFPDの検出面のそれぞれに投影して2つの疑似透視X画像を作成する(ステップS102)。
【0051】

関心領域描画部23は、2つの透視X線画像と2つの疑似透視X線画像とを用いて、各画像上に関心領域を設定する(ステップS103)。例えば、関心領域描画部23は、ユーザが透視X線画像と疑似透視X線画像とを比較して描画した関心領域を受け付けてもよいし、透視X線画像及び疑似透視X線画像に基づいて自動的に関心領域を設定してもよい。なお、設定した関心領域は画像表示部25にて表示されてもよい。
【0052】
画像照合部24は、最適化計算により、関心領域を用いて透視X線画像及び疑似透視X線画像のずれ量をカウチ移動量として算出する(ステップS104)。本実施例の最適化計算は、多変量の最適化計算であり、並進3成分(x,y,z)及び回転3成分(pitch, roll, yow)の計6つの変数を変化させながら、透視X線画像及び疑似透視X線画像の類似度が最も高くなる変数の値をずれ量として探索する処理である。最適化計算としては、例えば、準ニュートン法に基づく手法であるBFGS法及びPowell法などが用いられる。また、本実施例の最適化計算では、画像照合部24は、関心領域に対応した3次元関心領域の重心を求め、その重心を通る軸を、最適化計算によるカウチ移動量の回転成分を算出する回転軸として使用する。
【0053】
カウチ移動量を算出すると、画像照合部24は、そのカウチ移動量を制御部26に送信する。制御部26は、カウチ移動量を受信すると、寝台制御装置13を介して寝台7をカウチ移動量に応じて移動させて(ステップS105)、処理を終了する。
【0054】
図3及び図4は、図2のステップS102の処理における疑似透視X線画像を作成する作成方法を説明するための図である。具体的には、図3は、粒子線治療システムAの治療室内の実際の撮影体系を示す図であり、図4は、実際の撮影体系に対応する仮想的な撮影体系を示す図である。本実施例では、図3に示すように、寝台7が並進移動する移動軸をx(RL)軸、y(SI)軸及びz(AP)軸としている。
【0055】
疑似透視X線画像作成部22は、疑似透視X線画像を作成する場合、図4に示すように、仮想的な撮影体系(仮想的なFPD5C及び5Dと仮想的なX線管6C及び6D)とを図3に示した実際の撮影体系(FPD5A及び5BとX線管6A及び6B)と同じレイアウトとなるように仮想空間上に配置する。そして、疑似透視X線画像作成部22は、画像取得部211にて取得された3次元画像を、実際の撮影体系上の患者Bの位置に対応する仮想空間上の位置に3次元画像14として配置し、その3次元画像14を仮想的なFPD5C及び5Dの検出面に投影することで、疑似透視X線画像を作成する。
【0056】
次に疑似透視X線画像に設定された関心領域に対応する3次元空間内における関心領域の重心位置を求める算出方法について、図4及び図5を用いて説明する。
【0057】
3次元空間内における空間内における関心領域14Aは、2つの疑似透視X線画像のそれぞれに設定された関心領域16C及び16Dに対応する、3次元画像14内の3次元領域である。理想的には、仮想的なFPD5C及び5D上の関心領域16C及び16DをそれぞれX線管6C及び6Dに向けて逆投影してそれぞれが重なる空間がここでいう3次元空間における関心領域となる。但し、実際にはユーザーにより2次元の疑似透視X線画像上で描画する関心領域16C及び16Dが3次元空間上で同じ領域を描画するのが難しいため図中のような直方体領域にはならないこともあり得る。そのため以下に示す方法により3次元空間上の関心領域の重心を求めることができる。関心領域16Cの重心16C1とX線管6Cとを結ぶ線lと、関心領域16Dの重心16D1とX線管6Dとを結ぶ線lとは、理想的には、仮想空間上の1点で交わり、その点が3次元関心領域14Aの重心となる。しかしながら、実際には、これらの線l及びlは、通常、ユーザの手動による関心領域16C及び16Dの設定によるずれ、及び、各疑似透視X線画像上での位置決め対象構造物の見え方の違いなどのため、1点に交わらない。このため、本実施例では、画像照合部24は、線l及びlが最も近づく位置、つまり線l及びlの両方に垂直に交わる線である共通垂線の中点を、3次元関心領域14Aの重心として求める。
【0058】
図5は、3次元関心領域14Aの重心(共通垂線の中点)を算出する処理を説明するための図であり、図6は、図5に示された共通垂線付近の領域Rの拡大図である。
【0059】
FPD5Cの検出面5C1上の関心領域16Cの重心16C1とX線管6Cとを結ぶ線lと、FPD5Dの検出面5D1上の関心領域16Dの重心16D1とX線管6Dとを結ぶ線lとは、理想的には互いに交わるが、上述したように、実際には、互いに交わらない場合がある。
【0060】
線l及び線lが互いに交わらない場合、画像照合部24は、線l及び線l上における、線lと線lとの距離が最も小さくなる点を点P及び点Qとし、その点Pと点Qとを結ぶ線分lの中点の位置を3次元関心領域の重心として算出する。線分lは互いにねじれ関係にある線lと線lとの両方に垂直な共通垂線である。以下、線分lの長さを共通垂線長と呼ぶ。また、点P及びQは、共通垂線(線分l)の足となる。
【0061】
線lの点Pと線lの点Qは、媒介変数s及びtを用いて以下のようにベクトル表記することができる。
p=a+su
q=c+tv
【0062】
ここで、pは点Pの位置ベクトル(x,y,z)、qは点Qの位置ベクトル(x,y,z)、aは、X線管6C上の点Aの位置ベクトル(x,y,z)、cはX線管6D上の点Cの位置ベクトル(x,y,z)、uは線lの方向ベクトル、vは線lの方向ベクトルである。
【0063】
線分lは方向ベクトルu及びvのそれぞれと直交するため、線分lの方向ベクトルwと方向ベクトルu及びvとの内積はゼロとなる。つまり、w・u=0、w・v=0である。なお、演算子「・」は内積を示す。
【0064】
画像照合部24は、この内積の2式を連立一次方程式として解くことで、媒介変数s及びtの値を求めることができる。これにより、点P及びQの座標、並びに、線分lの長さである共通垂線長LがL=|q-p|=(|p|+|q|-2p・q)1/2={(x-x+(y-y+(z-z1/2と求まる。さらに画像照合部24は、線分lの中点Mの座標(x,y,z)を、3次元関心領域の重心の位置としてM(x,y,z)=((x+x)/2,(y+y)/2,(z+z)/2)と求めることができる。
【0065】
3次元関心領域の重心の位置を求めると、画像照合部24は、最適化計算の回転成分を算出するための回転軸として、3次元関心領域の重心を通る軸を設定する。
【0066】
図7は、3次元関心領域の重心を通る回転軸の一例を説明するための図である。
【0067】
図7(a)の例では、画像照合部24は、3次元関心領域の重心であるROI重心18を通り、寝台7の並進移動が可能な3つの並進方向のそれぞれに平行な3つの軸(移動軸)を、回転軸として設定している。
【0068】
一方、図7(b)の例では、画像照合部24は、3次元関心領域の重心であるROI重心18を通り、透視X線画像を取得する撮影体系の2つの撮影軸のそれぞれに平行な2つの軸と、その2つの軸の両方に直交する軸とを、回転軸として設定している。
【0069】
また、ROI重心18を通る回転軸周りの回転は、例えば、3次元画像14の各ボクセルに対して下記の変換行列TR4×4-1用いた変換処理を行うことで実現できる。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
ここで、点pは各ボクセルの位置に対応する。Tは点pを原点に平行移動する座標変換行列、Rは回転変換行列、T-1は原点から点pに平行移動する座標変換行列である。なお、原点は、X線管6CからFPD5Cの検出面の中心に下した垂線とX線管6DからFPD5Dの検出面の中心に下した垂線との交点である投影中心15である。
【0070】
なお、ROI重心18を通る回転軸周りの回転量は、従来の投影中心を通る回転軸周りの回転に応じたカウチ移動量に換算することができる。具体的には、3次元画像14を、ROI重心18周りの回転の計算で使用した回転量(pitch,roll,yaw)分だけ、投影中心周りに回転させ、その後、下記の並進移動量を加算することで、投影中心を通る回転軸周りの回転に応じたカウチ移動量に換算することができる。並進移動量は、変換行列TR4×4-1を利用して従来の投影中心の位置(x_(org_ctr), y_(org_ctr), z_(org_ctr))をROI重心18周りに回転した場合の回転前後の並進変位量である。
【0071】
図8は、画像表示部25により表示されるソフトウェア画面の一例を示す図である。図8に示すようにソフトウェア画面60は、操作領域61と、カウチ移動量表示領域65と、画像表示領域66~71とを含む。
【0072】
操作領域61は、ユーザにて操作される操作ボタンを含む。図8には、操作ボタンとして、自動計算開始ボタン62、手動並進操作ボタン63及び手動回転操作ボタン64が示されている。カウチ移動量表示領域65は、カウチ移動量を表示する。
【0073】
画像表示領域66~71は、画面中央付近に上下2段に分かれて左右方向に3列並んで配置される。具体的には、上段には左から順に画像表示領域66、68、70が配置され、下段には左から順に画像表示領域67、69、71が配置される。
【0074】
画像表示領域66は、2つの疑似透視X線画像の一方を表示する第1疑似透視X線画像表示領域であり、画像表示領域67は、2つの疑似透視X線画像の他方を表示する第2疑似透視X線画像表示領域である。画像表示領域70は、2つの透視X線画像の一方を表示する第1透視X線画像表示領域であり、画像表示領域71は、2つの透視X線画像の他方を表示する第2透視X線画像表示領域である。画像表示領域68は、疑似透視X線画像の一方と透視X線画像の一方とを重ねて表示する第1重ね合わせ画像表示領域であり、画像表示領域69は、疑似透視X線画像の他方と透視X線画像の他方とを重ねて表示する第2重ね合わせ画像表示領域である。
【0075】
操作領域61に含まれる参照画像読み込みボタン(図示せず)が押下された場合、疑似透視X線画像が作成され、画像表示領域66~69に表示される。また、操作領域61に含まれる透視X線画像読み込みボタンが押下された場合、透視X線画像が読み込まれて、画像表示領域68~71に表示される。
【0076】
また、手動並進操作ボタン63が押下された場合、画像表示領域66及び67に表示されている疑似透視X線画像に対して、例えば、マウスを用いたドラック操作のような所定の操作を行うことで、疑似透視X線画像の画面上の並進方向の移動量が調整可能となる。同様に、手動回転操作ボタン64が押下された場合、画像表示領域66及び67に表示されている疑似透視X線画像に対して、例えば、マウスを用いたドラック操作のような所定の操作を行うことで、疑似透視X線画像の画面上の回転量が調整可能となる。
【0077】
また、画像表示領域66及び67には、疑似透視X線画像内に関心領域72が表示される。また、関心領域72には、ROI重心の位置が関心領域重心73として、実線の十字線で表されている。また、従来の投影中心を回転軸として用いる際の画像上での重心位置は、投影中心15として点線の十字線で表されている。
【0078】
最適化計算に使用される回転軸の選択が手動で行われる場合、操作領域61に含まれる回転軸選択ボタン(図示せず)が押下されて、画像表示領域66及び67に対する所定の操作により回転軸が選択される。一方、最適化計算に使用される回転軸の選択が自動で行われる場合、自動計算開始ボタン62が押下されることにより、自動的に回転軸がROI重心に設定されて最適化計算が行われる。
【0079】
なお、本実施例では、放射線治療装置として、粒子線治療システムAを例示したが、放射線治療装置は、粒子線治療システムAに限らず、X線などの非粒子線を用いた放射線治療システムでもよい。この場合、加速器1は、例えば、X線を出力する電子線加速器で構成される。
【0080】
以上説明した本実施例では、関心領域描画部23は、患者Bを互いに異なる時刻に撮影して得られた複数の透視画像のそれぞれに関心領域を設定する。画像照合部24は、最適化計算により、関心領域描画部23にて設定された関心領域を用いて複数の透視画像の間のずれ量を寝台7を移動させる移動量として算出する。その際、画像照合部24は、関心領域に対応した3次元関心領域の重心を通る軸を、移動量の回転成分を算出する回転軸として使用する。この場合、回転成分の位置合わせによって発生する関心領域の並進成分のずれを抑制することが可能となるため、回転成分の値をより迅速に正しい解に到達させることが可能となる。したがって、適化計算の計算時間を低減しながら精度の高い患者の位置決めを行うことが可能になる。
【0081】
また、本実施例では、透視画像は、X線管6A及び6BのそれぞれからのX線を患者Bを介してFPD5A及び5Bの検出面で検出することで患者Bを撮影した複数の透視X線画像と、3次元撮影装置にて前記被検者を撮影した3次元画像をFPD5A及び5Bの検出面に投影した複数の2次元疑似透視画像とを含む。このため、3D2D位置合わせにおいて、適化計算の計算時間を低減しながら精度の高い患者の位置決めを行うことが可能になる。
【0082】
また、本実施例では、画像照合部24は、X線管6A及び6Bのそれぞれに対応する、X線管とFPDの検出面に投影された2次元疑似透視画像に設定された関心領域の重心とを結ぶ線の共通垂線の中点を3次元関心領域の重心とする。この場合、複数の2次元疑似透視画像に設定された関心領域にずれが生じている場合でも、適化計算の計算時間を低減しながら精度の高い患者の位置決めを行うことが可能になる。
【0083】
また、本実施例では、画像照合部24は、3次元関心領域の重心を通り、透視X線画像の撮影軸のそれぞれに沿った複数の軸を回転軸として使用する。この場合、回転軸周りの回転で透視X線画像上でそれぞれが画像平面上の回転として見えるため、最適化計算をより容易に行うことが可能となる。
【0084】
画像表示部25は、透視画像と透視画像における回転軸の位置を示す情報とを表示する。このため、ユーザは最適化計算における回転軸を把握することが可能となる。
【実施例0085】
実施例1では、患者位置合わせとして3D2D位置合わせが行われる例を説明したが、本実施例では、患者位置合わせとして3D3D位置合わせが行われれる例を説明する。
【0086】
本実施例では、画像取得部21は、放射線治療時に透視X線画像撮影装置12を介して透過画像として透視X線画像として取得する代わりに、3次元撮影装置にて患者Bを撮影して得られた患者Bを写した3次元画像である治療時3次元画像を取得する。3次元撮影装置は、例えば、FPD5A及び5BとX線管6A及び6Bとがガントリ3に固定されたCBCT装置である。この場合、画像取得部21は、ガントリ3の回転とともに撮影された透視X線画像を再構成することでCBCT画像を取得することができる。また、3次元撮影装置は、CBCT装置の代わりに、治療室内に配置されたCT装置などでもよい。
【0087】
治療時3次元画像が取得された場合、関心領域描画部23は、患者の位置決めに使用する関心領域として3次元関心領域を治療時3次元画像に設定する。
【0088】
図9は、治療時3次元透過画像に設定された3次元関心領域の一例を示す図である。図9の例では、治療時3次元透過画像53と、その治療時3次元透過画像内に設定された3次元関心領域54が示されている。
【0089】
また、従来の3D3D位置合わせにおける最適化計算では、カウチ移動量の回転成分を算出する回転軸として、治療時3次元透過画像の重心55又は図示しないアイソセンタを通る軸が設定されていた。これに対して本実施例では、カウチ移動量の回転成分を算出する回転軸として、3次元関心領域54の重心56を通る軸が使用される。
【0090】
図10は、本実施例の患者位置決め処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0091】
なお、患者Bは、実施例1と同様に、寝台7のセットアップポジションに配置されているものとする。
【0092】
患者位置決め処理では、先ず、制御部26は、寝台制御装置13を介してロボットアーム8を制御して、患者Bを載せた寝台7を所定の位置まで移動させる(ステップS200)。所定の位置は、治療室内CTを利用する場合はCT装置内の位置であり、CBCTを使用する場合は、ガントリ中心付近の位置である。
【0093】
その後、画像取得部21は、3次元撮影装置を使用して、治療時3次元画像を取得する(ステップS201)。例えば、画像取得部21は、治療室内CT装置で患者Bを撮影してCT画像を取得する。もしくは画像取得部21は、透視X線画像撮影装置12を介して、ガントリ3を回転させて患者Bを複数の方向から透視X線画像情報を取得して再構成することでCBCT画像を治療時3次元画像として取得する。
【0094】
関心領域描画部23は、データサーバ10から治療計画時の3次元画像を取得し、その3次元画像と治療時3次元透過画像とを用いて、治療時3次元画像上に3次元関心領域を設定する(ステップS202)。関心領域描画部23は、ユーザから受け付けてもよいし、3次元画像と治療時3次元画像に基づいて自動的に関心領域を設定してもよい。
【0095】
画像照合部24は、最適化計算により、3次元関心領域を用いて3次元画像と治療時3次元画像のずれ量をカウチ移動量として算出する(ステップS203)。このとき、画像照合部24は、カウチ移動量の回転成分を算出する回転軸として、3次元関心領域54の重心56を通る軸を使用する。
【0096】
そして、画像照合部24は、最適化計算で算出したカウチ移動量を制御部26に送信する。制御部26は、カウチ移動量を受信すると、寝台制御装置13を介して寝台7をカウチ移動量分だけ移動させて(ステップS204)、処理を終了する。
【0097】
以上説明したように本実施例によれば、3D3D位置合わせにおいても、適化計算の計算時間を低減しながら精度の高い患者の位置決めを行うことが可能になる。
【0098】
上述した本開示の各実施例は、本開示の説明のための例示であり、本開示の範囲をそれらの実施例にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本開示の範囲を逸脱することなしに、他の様々な態様で本開示を実施することができる。
【符号の説明】
【0099】
1:加速器 2:ビーム輸送装置 3:ガントリ 4:照射ノズル 5C1:検出面 5D1:検出面 6A、6B:X線管 6C、6D:X線管 7:寝台 8:ロボットアーム 9:通信装置 10:データサーバ 11:治療計画装置 12:透視X線画像撮影装置 13:寝台制御装置 20:患者位置決め装置 21:画像取得部 22:疑似透視X線画像作成部 23:関心領域描画部 24:画像照合部 25:画像表示部 26:制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10