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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158700
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】液晶性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20241031BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20241031BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20241031BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20241031BHJP
   C08K 7/22 20060101ALI20241031BHJP
   C08K 7/28 20060101ALI20241031BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20241031BHJP
   C08L 77/12 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C08L101/12
C08K7/14
C08L67/04
C08K7/00
C08K7/22
C08K7/28
C08K3/34
C08L77/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074104
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】安住 竜太
(72)【発明者】
【氏名】長永 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】矢上 貴之
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CF161
4J002CF181
4J002CL081
4J002DJ047
4J002DJ057
4J002DL006
4J002DL008
4J002FA017
4J002FA046
4J002FA098
4J002FD017
4J002FD126
4J002FD128
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】低誘電率及び低誘電正接を有し、低そり性及び機械的強度に優れる成形体を与える、流動性が良好な液晶性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る液晶性樹脂組成物は、液晶性樹脂及びガラス繊維を含有し、ガラス繊維の含有量は、液晶性樹脂100質量部に対して、10~100質量部であり、ガラス繊維は、長径/短径が1.5~6.0である扁平な断面形状を有し、ガラス繊維の長径は、10~40μmであり、ガラス繊維を構成するガラスの測定周波数1GHzにおける比誘電率は、6以下であり、ガラス繊維を構成するガラスの測定周波数1GHzにおける誘電正接は、0.003以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液晶性樹脂、及び
(B)ガラス繊維
を含有し、
前記(B)ガラス繊維の含有量は、(A)液晶性樹脂100質量部に対して、10~100質量部であり、
前記(B)ガラス繊維は、短径に対する長径の比が1.5~6.0である扁平な断面形状を有し、
前記(B)ガラス繊維の長径は、10~40μmであり、
前記(B)ガラス繊維を構成するガラスの測定周波数1GHzにおける比誘電率は、6以下であり、
前記(B)ガラス繊維を構成するガラスの測定周波数1GHzにおける誘電正接は、0.003以下である液晶性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)液晶性樹脂は、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位を構成成分として有する芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドである請求項1に記載の液晶性樹脂組成物。
【請求項3】
更に(C)板状充填剤を含有し、
前記(C)板状充填剤の含有量は、(A)液晶性樹脂100質量部に対して、2.5~10質量部である請求項1又は2に記載の液晶性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)板状充填剤は、タルク及びマイカからなる群より選択される1種以上を含む請求項3に記載の液晶性樹脂組成物。
【請求項5】
更に(D)中空フィラーを含有し、
前記(D)中空フィラーの含有量は、(A)液晶性樹脂100質量部に対して、2.5~17.5質量部である請求項1又は2に記載の液晶性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(D)中空フィラーは、ガラスバルーンを含む請求項5に記載の液晶性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶性ポリエステル樹脂に代表される液晶性樹脂は、優れた機械的強度、耐熱性、耐薬品性、電気的性質等をバランス良く有し、優れた寸法安定性も有するため高機能エンジニアリングプラスチックとして広く利用されている。一方、近年、携帯電話;無線LAN;GPS、VICS(登録商標)、ETC等のITS技術等の情報通信分野において著しい技術発達がなされている。これに応じて、マイクロ波、ミリ波等の高周波領域において適用できる高性能な高周波対応電子部品のニーズが強くなっている。このような電子部品を構成する材料は、個々の電子部品の設計に応じて、適切な誘電特性を有することが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、融点320℃以上の全芳香族液晶ポリエステル90~45重量%、アスペクト比が2以下の無機球状中空体10~40重量%、アスペクト比が4以上の無機充填剤0~15重量%を配合した組成物を射出成形して得られる、比誘電率が3.0以下、誘電正接が0.04以下の全芳香族液晶ポリエステル樹脂組成物成形体が、耐ハンダリフロー等の耐熱性を有し、誘電特性に優れ、マイクロ波、ミリ波等の高周波帯域で用いられる情報通信機器の送受信部品の固定あるいは保持部材に用いられる成形体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-27021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような高周波対応電子部品は、誘電特性に優れることに加え、低そり性が求められる。そのような要求を実現するため、例えば、特許文献1の実施例に開示されている、液晶ポリエステルと微小中空球体とタルクとを含む組成物のように、中空フィラーと板状充填剤とを含有する液晶性樹脂組成物を用いることができる。しかし、本発明者らの検討によれば、このような従来の液晶性樹脂組成物は、機械的強度に劣ることが判明した。
【0006】
加えて、液晶性樹脂組成物を成形して成形体を得る場合、該液晶性樹脂組成物には、良好な流動性が求められる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、低誘電率及び低誘電正接を有し、低そり性及び機械的強度に優れる成形体を与える、流動性が良好な液晶性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、液晶性樹脂と、所定の低誘電ガラスからなる扁平断面ガラス繊維とを所定の含有量で含有する液晶性樹脂組成物は、低誘電率及び低誘電正接を有し、低そり性及び機械的強度に優れ、流動性が良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1) (A)液晶性樹脂、及び(B)ガラス繊維を含有し、記(B)ガラス繊維の含有量は、(A)液晶性樹脂100質量部に対して、10~100質量部であり、前記(B)ガラス繊維は、短径に対する長径の比が1.5~6.0である扁平な断面形状を有し、 前記(B)ガラス繊維の長径は、10~40μmであり、前記(B)ガラス繊維を構成するガラスの測定周波数1GHzにおける比誘電率は、6以下であり、前記(B)ガラス繊維を構成するガラスの測定周波数1GHzにおける誘電正接は、0.003以下である液晶性樹脂組成物。
【0010】
(2) 前記(A)液晶性樹脂は、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位を構成成分として有する芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドである(1)に記載の液晶性樹脂組成物。
【0011】
(3) 更に(C)板状充填剤を含有し、前記(C)板状充填剤の含有量は、(A)液晶性樹脂100質量部に対して、2.5~10質量部である(1)又は(2)に記載の液晶性樹脂組成物。
【0012】
(4) 前記(C)板状充填剤は、タルク及びマイカからなる群より選択される1種以上を含む(3)に記載の液晶性樹脂組成物。
【0013】
(5) 更に(D)中空フィラーを含有し、前記(D)中空フィラーの含有量は、(A)液晶性樹脂100質量部に対して、2.5~17.5質量部である(1)~(4)のいずれかに記載の液晶性樹脂組成物。
【0014】
(6) 前記(D)中空フィラーは、ガラスバルーンを含む(5)に記載の液晶性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低誘電率及び低誘電正接を有し、低そり性及び機械的強度に優れる成形体を与える、流動性が良好な液晶性樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例及び比較例で用いた流動直角方向の誘電特性評価用試験片の切り出し位置を示す上面図である。
図2図2は、実施例及び比較例で用いた流動方向の誘電特性評価用試験片の切り出し位置を示す上面図である。
図3図3は、実施例及び比較例で成形したFPCコネクターを示す図である。なお、図中の数値の単位はmmである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0018】
<液晶性樹脂組成物>
本発明に係る液晶性樹脂組成物は、(A)液晶性樹脂及び後述の(B)ガラス繊維を含有する。
【0019】
[(A)液晶性樹脂]
本発明で使用する(A)液晶性樹脂とは、光学異方性溶融相を形成し得る性質を有する溶融加工性ポリマーを指す。異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することが出来る。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージに載せた溶融試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明に適用できる液晶性ポリマーは直交偏光子の間で検査したときに、たとえ溶融静止状態であっても偏光は通常透過し、光学的に異方性を示す。
【0020】
上記のような(A)液晶性樹脂の種類としては特に限定されず、芳香族ポリエステル及び/又は芳香族ポリエステルアミドであることが好ましい。また、芳香族ポリエステル及び/又は芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むポリエステルもその範囲にある。(A)液晶性樹脂としては、60℃でペンタフルオロフェノールに濃度0.1質量%で溶解したときに、好ましくは少なくとも約2.0dl/g、更に好ましくは2.0~10.0dl/gの対数粘度(I.V.)を有するものが好ましく使用される。
【0021】
本発明に適用できる(A)液晶性樹脂としての芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドは、特に好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位を構成成分として有する芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドである。
【0022】
より具体的には、
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位からなるポリエステル;
(2)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、からなるポリエステル;
(3)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(c)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、からなるポリエステル;
(4)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、からなるポリエステルアミド;
(5)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(d)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、からなるポリエステルアミド等が挙げられる。更に上記の構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用してもよい。
【0023】
(A)液晶性樹脂において、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位の含有量は、(A)液晶性樹脂の分子構造が変動するのを低く抑える観点から、全構成単位に対し、好ましくは45モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上であり、更により好ましくは55モル%以上であり、一層更により好ましくは60モル%以上であり、特に好ましくは62モル%以上である。上記含有量の上限は、特に限定されず、全構成単位に対し、100モル%以下でよく、90モル%以下、80モル%以下、75モル%以下、又は70モル%以下でもよい。
【0024】
本発明に適用できる(A)液晶性樹脂を構成する具体的化合物の好ましい例としては、p-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、下記一般式(I)で表される化合物、及び下記一般式(II)で表される化合物等の芳香族ジオール;1,4-フェニレンジカルボン酸、1,3-フェニレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、及び下記一般式(III)で表される化合物等の芳香族ジカルボン酸;p-アミノフェノール、p-フェニレンジアミン、N-アセチル-p-アミノフェノール等の芳香族アミン類が挙げられる。前述の芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体としては、反応性や(A)液晶性樹脂の分子構造の安定性等の観点から、p-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、又はこれらの組み合わせが好ましい。
【化1】
(X:アルキレン(C~C)、アルキリデン、-O-、-SO-、-SO-、-S-、及び-CO-より選ばれる基である)
【化2】
【化3】
(Y:-(CH-(n=1~4)及び-O(CHO-(n=1~4)より選ばれる基である。)
【0025】
本発明に用いられる(A)液晶性樹脂の調製は、上記のモノマー化合物(又はモノマーの混合物)から直接重合法やエステル交換法を用いて公知の方法で行うことができ、通常は溶融重合法、溶液重合法、スラリー重合法、固相重合法等、又はこれらの2種以上の組み合わせが用いられ、溶融重合法、又は溶融重合法と固相重合法との組み合わせが好ましく用いられる。エステル形成能を有する上記化合物類はそのままの形で重合に用いてもよく、また、重合の前段階で前駆体から該エステル形成能を有する誘導体に変性されたものでもよい。これらの重合に際しては種々の触媒の使用が可能であり、代表的なものとしては、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(III)等の金属塩系触媒、1-メチルイミダゾール、4-ジメチルアミノピリジン等の有機化合物系触媒が挙げられる。触媒の使用量は一般にはモノマーの全質量に対して約0.001~1質量%、特に約0.01~0.2質量%が好ましい。これらの重合方法により製造されたポリマーは更に必要があれば、減圧又は不活性ガス中で加熱する固相重合法により分子量の増加を図ることができる。
【0026】
上記のような方法で得られた(A)液晶性樹脂の溶融粘度は特に限定されない。一般には成形温度での溶融粘度が剪断速度1000sec-1で3Pa・s以上500Pa・s以下のものが使用可能である。しかし、それ自体あまり高粘度のものは流動性が非常に悪化するため好ましくない。なお、上記(A)液晶性樹脂は2種以上の液晶性樹脂の混合物であってもよい。
【0027】
[(B)ガラス繊維]
(B)ガラス繊維は、低誘電ガラスからなる扁平断面ガラス繊維である。(B)ガラス繊維の組成は、後述の通りである。本発明に係る液晶性樹脂組成物が(B)ガラス繊維を含むことにより、当該液晶性樹脂組成物は流動性が良好となりやすく、また、低誘電率及び低誘電正接を有し、低そり性及び機械的強度に優れている成形体を得やすい。(B)ガラス繊維は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
(B)ガラス繊維は、短径に対する長径の比が1.5~6.0、好ましくは2.2~5.5、より好ましくは3~5である扁平な断面形状を有する。短径に対する長径の比が上記範囲内であると、得られる組成物からは、低そり性に優れる成形体を得やすい。なお、本明細書において、「断面形状」とは、(B)ガラス繊維の長さ方向と直交する面で切断した断面の形状をいう。
【0029】
(B)ガラス繊維の長径は、10~40μmであり、好ましくは15~37μmであり、より好ましくは20~35μmである。上記長径がこの範囲内にあると、得られる組成物からは、低そり性に優れる成形体を得やすい。
【0030】
(B)ガラス繊維の短径は、好ましくは1.7~27μmであり、より好ましくは2.7~17μmであり、更により好ましくは4~12である。但し、短径は長径よりも短い。上記短径がこの範囲内にあると、得られる組成物からは、低そり性に優れる成形体を得やすい。
【0031】
本明細書において、(B)ガラス繊維の長径及び短径としては、以下の通りにして測定した値を採用する。1000本の(B)ガラス繊維の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、断面の中心を通る最長の径の長さLと、前記最長の径と前記中心で直交する径の長さSとを測定し、Lの平均値を(B)ガラス繊維の長径として採用し、Sの平均値を(B)ガラス繊維の短径として採用する。
【0032】
本明細書において、短径に対する長径の比は、上述の通りにして採用した長径及び短径を用い、式:長径/短径により計算される。
【0033】
(B)ガラス繊維の重量平均繊維長は、5~750μmであり、好ましくは7~700μmであり、より好ましくは9~670μmである。上記重量平均繊維長が上記範囲内であると、液晶性樹脂組成物は流動性が良好となりやすく、液晶性樹脂組成物を含む成形体は、機械的強度が向上しやすい。なお、本明細書において、ガラス繊維の重量平均繊維長としては、ガラス繊維の実体顕微鏡画像10枚をCCDカメラからPCに取り込み、画像測定機によって画像処理手法により、実体顕微鏡画像1枚ごとに100本のガラス繊維、即ち、合計1000本のガラス繊維について繊維長を測定した値の平均を採用する。液晶性樹脂組成物中のガラス繊維の重量平均繊維長は、液晶性樹脂組成物を600℃で2時間の加熱により灰化して残存したガラス繊維について、上記方法を適用することで測定される。
【0034】
前記(B)ガラス繊維を構成するガラスの測定周波数1GHzにおける比誘電率は、誘電特性の観点から、6以下であり、好ましくは5.5以下であり、より好ましくは5以下である。上記比誘電率の下限は、特に限定されず、1.0超でよく、1.5以上でも2.0以上でもよい。
【0035】
前記(B)ガラス繊維を構成するガラスの測定周波数1GHzにおける誘電正接は、誘電特性の観点から、0.003以下であり、好ましくは0.0025以下であり、より好ましくは0.002以下である。上記誘電正接の下限は、特に限定されず、0.0005以上でよく、0.0007以上でも0.001以上でもよい。
【0036】
前記(B)ガラス繊維の組成は、ガラス繊維の全量に対して、SiO 48.0~62.0質量%、B 17.0~26.0質量%、Al 9.0~18.0質量%、CaO 0.1~9.0質量%、MgO 0~6.0質量%、NaO、KO、及びLiO 合計で0.05~0.5質量%、TiO 0~5.0質量%、SrO 0~6.0質量%、F及びCl 合計で0~3.0質量%、並びにP 0~6.0質量%であることが好ましい。前記(B)ガラス繊維の組成が上述の通りであると、前記(B)ガラス繊維は、低誘電率及び低誘電正接を有したものとなりやすい。また、詳細なメカニズムは不明であるが、前記(B)ガラス繊維の組成が上述の通りであると、溶融混練処理の際にガラス繊維が折損しやすく、上記重量平均繊維長が上記範囲内となりやすく、得られる液晶性樹脂組成物は、流動性が良好となりやすい。
【0037】
(B)成分の含有量は、(A)液晶性樹脂100質量部に対して、10~100質量部であり、好ましくは15~80質量部であり、より好ましくは20~60質量部である。(B)成分の含有量が10質量部以上であると、得られる組成物からは、低誘電率及び低誘電正接を有し、低そり性及び機械的強度に優れる成形体を得やすい。(B)成分の含有量が100質量部以下であると、流動性の良好な液晶性樹脂組成物を得やすい。
【0038】
[(C)板状充填剤]
本発明に係る液晶性樹脂組成物は、板状充填剤が含んでもよい。本発明に係る液晶性樹脂組成物が板状充填剤を含むことにより、優れた機械的強度を維持しつつ、異方性が抑制された成形体を得やすい。板状充填剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0039】
(C)成分のメディアン径は、好ましくは10~50μmである。上記メディアン径が上記範囲内であると、得られる組成物からは、優れた機械的強度を維持しつつ、異方性が抑制された成形体を更に得やすい。上記メディアン径は、好ましくは15~40μmであり、より好ましくは20~30μmである。なお、本明細書において、(C)成分のメディアン径とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定法で測定した体積基準の中央値をいう。液晶性樹脂組成物中の(C)成分のメディアン径は、液晶性樹脂組成物を600℃で2時間の加熱により灰化して残存した(C)成分について、上記方法を適用することで測定される。
【0040】
(C)板状充填剤の含有量は、(A)液晶性樹脂100質量部に対して、好ましくは2.5~10質量部である。(C)板状充填剤の含有量が上記範囲内であると、得られる組成物からは、優れた機械的強度を維持しつつ、異方性が抑制された成形体を更に得やすい。(C)板状充填剤の含有量は、(A)液晶性樹脂100質量部に対して、より好ましくは3.5~9質量部であり、更により好ましくは5~8質量部である。
【0041】
本発明における板状充填剤としては、タルク、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔等が挙げられる。液晶性樹脂組成物の流動性を悪化させることなく、液晶性樹脂組成物から得られる成形体の異方性を抑制させるという点で、タルク及びマイカからなる群より選択される1種以上が好ましく、マイカがより好ましい。
【0042】
〔タルク〕
本発明において使用できるタルクとしては、当該タルクの全固形分量に対して、Fe、Al及びCaOの合計含有量が2.5質量%以下であり、Fe及びAlの合計含有量が1.0質量%超2.0質量%以下であり、かつCaOの含有量が0.5質量%未満であるものが好ましい。即ち、本発明において使用できるタルクは、その主成分たるSiO及びMgOの他、Fe、Al及びCaOのうちの少なくとも1種を含有し、各成分が上記の含有量範囲で含有するものであってもよい。
【0043】
上記タルクにおいて、Fe、Al及びCaOの合計含有量が2.5質量%以下であると、液晶性樹脂組成物の成形加工性及び当該液晶性樹脂組成物から成形された成形体の耐熱性が悪化しにくい。そのため、Fe、Al及びCaOの合計含有量は、1.0質量%以上2.0質量%以下が好ましい。
【0044】
また、上記タルクのうち、Fe及びAlの合計含有量が1.0質量%超のタルクは入手しやすい。また、上記タルクにおいて、Fe及びAlの合計含有量が2.0質量%以下であると、液晶性樹脂組成物の成形加工性及び当該液晶性樹脂組成物から成形された成形体の耐熱性が悪化しにくい。そのため、Fe及びAlの合計含有量は、1.0質量%超1.7質量%以下が好ましい。
【0045】
また、上記タルクにおいて、CaOの含有量が0.5質量%未満であると、液晶性樹脂組成物の成形加工性及び当該液晶性樹脂組成物から成形された成形体の耐熱性が悪化しにくい。そのため、CaOの含有量は、0.01質量%以上0.4質量%以下が好ましい。
【0046】
〔マイカ〕
マイカとは、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、鉄等を含んだケイ酸塩鉱物の粉砕物である。本発明において使用できるマイカとしては、白雲母、金雲母、黒雲母、人造雲母等が挙げられるが、これらのうち色相が良好であり、低価格であるという点で白雲母が好ましい。
【0047】
また、マイカの製造において、鉱物を粉砕する方法としては、湿式粉砕法及び乾式粉砕法が知られている。湿式粉砕法とは、マイカ原石を乾式粉砕機にて粗粉砕した後、水を加えてスラリー状態にて湿式粉砕で本粉砕し、その後、脱水、乾燥を行う方法である。湿式粉砕法と比較して、乾式粉砕法は低コストで一般的な方法であるが、湿式粉砕法を用いると、鉱物を薄く細かく粉砕することがより容易である。上記のメディアン径と後述する好ましい厚みとを有するマイカが得られるという理由で、本発明においては薄く細かい粉砕物を使用することが好ましい。したがって、本発明においては、湿式粉砕法により製造されたマイカを使用するのが好ましい。
【0048】
また、湿式粉砕法においては、被粉砕物を水に分散させる工程が必要であるため、被粉砕物の分散効率を高めるために、被粉砕物に凝集沈降剤及び/又は沈降助剤を加えることが一般的である。本発明において使用できる凝集沈降剤及び沈降助剤としては、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化コッパラス、ポリ硫酸鉄、ポリ塩化第二鉄、鉄-シリカ無機高分子凝集剤、塩化第二鉄-シリカ無機高分子凝集剤、消石灰(Ca(OH))、苛性ソーダ(NaOH)、ソーダ灰(NaCO)等が挙げられる。これらの凝集沈降剤及び沈降助剤は、pHがアルカリ性又は酸性である。本発明で使用するマイカは、湿式粉砕する際に凝集沈降剤及び/又は沈降助剤を使用していないものが好ましい。凝集沈降剤及び/又は沈降助剤で処理されていないマイカを使用すると、液晶性樹脂組成物中のポリマーの分解が生じにくく、多量のガス発生やポリマーの分子量低下等が起きにくいため、得られる成形体の性能をより良好に維持するのが容易である。
【0049】
本発明において使用できるマイカの厚みは、電子顕微鏡の観察により実測した厚みが0.01~1μmであることが好ましく、0.03~0.3μmであることが特に好ましい。マイカの厚みが0.01μm以上であると、液晶性樹脂組成物の溶融加工の際にマイカが割れにくくなるため、成形体の剛性が向上しやすい可能性があるため好ましい。マイカの厚みが1μm以下であると、成形体の剛性に対する改良効果が十分となりやすいため好ましい。
【0050】
本発明において使用できるマイカは、シランカップリング剤等で表面処理されていてもよく、かつ/又は、結合剤で造粒し顆粒状とされていてもよい。
【0051】
[(D)中空フィラー]
本発明に係る液晶性樹脂組成物は、(D)中空フィラーを含有してもよい。本発明に係る液晶性樹脂組成物が(D)中空フィラーを含有すると、該液晶性樹脂組成物からなる成形体は、低誘電率及び低誘電正接を有しやすい。
【0052】
(D)中空フィラーは、一般にバルーンと呼ばれているものであり、中空球体の材料としては、例えば、アルミナ、シリカ、ガラス等の無機材料;尿素樹脂、フェノール樹脂、等の有機材料;が挙げられる。中でも、耐熱性や強度の観点からガラスが好ましい。即ち、中空フィラーとしては、ガラスバルーンが好適に用いられる。(D)成分は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0053】
(D)中空フィラーのアスペクト比は、溶融粘度上昇及び流動性悪化の抑制並びに成形性等の観点から、好ましくは1.15以上であり、より好ましくは1.20以上2.00以下であり、更により好ましくは1.22以上1.50以下であり、一層更により好ましくは1.25以上1.30未満である。本明細書において、アスペクト比としては、動的画像解析法/粒子状態分析計を用いて、粒子投影面において最も長い部分の長さである最大長Lと、粒子投影面において最大長Lに対し垂直な方向で最も長い部分の長さである最大垂直長Sとを3000個の粒子について測定し、その測定を数回繰り返して、各粒子について計算された比L/Sの平均の値を採用する。
【0054】
(D)成分のメディアン径は、成形性の観点から、5μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上であり、(D)成分の破壊抑制や成形性の観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下、更により好ましくは50μm以下である。なお、本明細書において、メディアン径とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定法で測定した体積基準の中央値をいう。
【0055】
(D)成分の含有量は、(A)液晶性樹脂100質量部に対して、2.5~17.5質量部であり、好ましくは8~17質量部であり、より好ましくは12~16質量部である。(D)成分の含有量が20質量部以上であると、誘電特性に優れた液晶性樹脂組成物を得やすい。(D)成分の含有量が75質量部以下であると、流動性の良好な液晶性樹脂組成物を得やすい。
【0056】
[その他の成分]
本発明に係る液晶性樹脂組成物には、本発明の効果を害さない範囲で、その他の重合体、その他の充填剤、一般に合成樹脂に添加される公知の物質、即ち、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、帯電防止剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤、離型剤、結晶化促進剤、結晶核剤等も要求性能に応じ適宜添加することができる。
【0057】
その他の重合体とは、(A)液晶性樹脂以外の重合体をいい、例えば、エポキシ基含有共重合体が挙げられる。その他の充填剤とは、(B)ガラス繊維、(C)板状充填剤、及び(D)中空フィラー以外の充填剤をいい、例えば、シリカ等の粒状充填剤;(B)ガラス繊維以外の繊維状充填剤;カーボンブラック等が挙げられる。
【0058】
[液晶性樹脂組成物の調製]
本発明に係る液晶性樹脂組成物の調製は特に限定されない。例えば、(A)成分、(B)成分、任意に(C)成分、任意に(D)成分、及び任意にその他の成分を配合して、これらを1軸又は2軸押出機を用いて溶融混練処理することで、液晶性樹脂組成物の調製が行われる。
【0059】
[液晶性樹脂組成物]
上記のようにして得られた本発明に係る液晶性樹脂組成物の溶融粘度は、流動性の観点から、好ましくは100Pa・sec以下であり、より好ましくは90Pa・sec以下であり、更により好ましくは85Pa・sec以下である。上記溶融粘度の下限は、特に限定されず、5Pa・sec以上でよく、10Pa・sec以上でも20Pa・sec以上でもよい。本明細書において、溶融粘度としては、液晶性樹脂の融点よりも10~30℃高いシリンダー温度、剪断速度1000sec-1の条件で、ISO 11443に準拠した測定方法で得られた値を採用する。
【0060】
本発明に係る液晶性樹脂組成物の測定周波数5GHzにおける比誘電率は、誘電特性の観点から、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.4以下、更により好ましくは3.3以下である。上記比誘電率の下限は、特に限定されず、1.0超でよく、1.5以上でも2.0以上でもよい。
【0061】
本発明に係る液晶性樹脂組成物の測定周波数5GHzにおける誘電正接は、誘電特性の観点から、好ましくは0.0047以下、より好ましくは0.0044以下、更により好ましくは0.004以下である。上記誘電正接の下限は、特に限定されず、0.001以上でよく、0.0015以上でも0.0017以上でもよい。
【実施例0062】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0063】
<液晶性樹脂>
・芳香族ポリエステル
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に360℃まで5.5時間かけて昇温し、そこから30分かけて5Torr(即ち、667Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレットを得た。得られたペレットについて、窒素気流下、300℃で3時間の熱処理を行って、目的のポリマーを得た。得られたポリマーの融点は348℃、370℃における溶融粘度は9Pa・sであった。なお、上記ポリマーの融点は、後述する融点の測定方法の通りに測定し、上記ポリマーの溶融粘度は、後述する溶融粘度の測定方法と同様にして測定した。
6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA);1218g(48モル%)
4-ヒドロキシ安息香酸(HBA);37g(2モル%)
1,4-フェニレンジカルボン酸:560g(TA);(25モル%)
4,4’-ジヒドロキシビフェニル(BP);628g(25モル%)
金属触媒(酢酸カリウム触媒);165mg
アシル化剤(無水酢酸);1432g
【0064】
・芳香族ポリエステルアミド
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に340℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレットを得た。得られたペレットについて、窒素気流下、300℃で2時間の熱処理を行って、目的のポリマーを得た。得られたポリマーの融点は336℃、350℃における溶融粘度は19.0Pa・sであった。なお、上記ポリマーの融点は、後述する融点の測定方法の通りに測定し、上記ポリマーの溶融粘度は、後述する溶融粘度の測定方法と同様にして測定した。
4-ヒドロキシ安息香酸(HBA);1380g(60モル%)
2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸(HNA);157g(5モル%)
1,4-フェニレンジカルボン酸(TA);484g(17.5モル%)
4,4’-ジヒドロキシビフェニル(BP);388g(12.5モル%)
N-アセチル-p-アミノフェノール(APAP);126g(5モル%)
金属触媒(酢酸カリウム触媒);110mg
アシル化剤(無水酢酸);1659g
【0065】
[融点の測定方法]
TAインスツルメント社製DSCにて、液晶性樹脂を室温から20℃/分の昇温条件で加熱した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の測定後、(Tm1+40)℃の温度で2分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度、20℃/分の昇温条件で加熱した際に観測される吸熱ピークの温度(Tm2)を測定し、ポリマーの融点とした。
【0066】
[溶融粘度の測定方法]
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1B型を使用し、液晶性樹脂の融点よりも10~30℃高い温度で、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いて、剪断速度1000/秒で、ISO11443に準拠して、液晶性樹脂の溶融粘度を測定した。なお、具体的な測定温度は、芳香族ポリエステルについては370℃、芳香族ポリエステルアミドについては350℃であった。
【0067】
<液晶性樹脂以外の材料>
・ガラス繊維1:商品名CNG3PA-830(日東紡績株式会社製、低誘電ガラス製ガラス繊維、長径28μm、短径7μm、長径/短径=4、長さ3mm)
・ガラス繊維2:商品名CN3J-941(日東紡績株式会社製、低誘電ガラス製ガラス繊維、長径11μm、短径11μm、長径/短径=1、長さ3mm)
・ガラス繊維3:商品名CSG3PA-830(日東紡績株式会社製、汎用ガラス製ガラス繊維、長径28μm、短径7μm、長径/短径=4、長さ3mm)
・ガラス繊維4:商品名CS3J-257(日東紡績株式会社製、汎用ガラス製ガラス繊維、長径11μm、短径11μm、長径/短径=1、長さ3mm)
・タルク:クラウンタルクPP(松村産業(株)製、タルク、メディアン径14.6μm)
・マイカ:AB-25S((株)ヤマグチマイカ製、マイカ、メディアン径25.0μm)
・ガラスバルーン:Y12000((株)セイシン企業製、アスペクト比(平均)1.264、メディアン径35μm、真比重0.6)
【0068】
[低誘電ガラスの比誘電率及び誘電正接]
低誘電ガラス製ガラス繊維を構成するガラス(即ち、低誘電ガラス)の比誘電率及び誘電正接は、測定周波数1GHzにおいて、それぞれ、4.8及び0.0015である。なお、上記ガラス繊維の組成は、ガラス繊維の全量に対して、SiO 48.0~62.0質量%、B 17.0~26.0質量%、Al 9.0~18.0質量%、CaO 0.1~9.0質量%、MgO 0~6.0質量%、NaO、KO、及びLiO 合計で0.05~0.5質量%、TiO 0~5.0質量%、SrO 0~6.0質量%、F及びCl 合計で0~3.0質量%、並びにP 0~6.0質量%である。
【0069】
[汎用ガラスの比誘電率及び誘電正接]
汎用ガラス製ガラス繊維を構成するガラス(即ち、汎用ガラス)の比誘電率及び誘電正接は、測定周波数1GHzにおいて、それぞれ、6.8及び0.0035である。なお、上記ガラス繊維の組成は、ガラス繊維の全量に対して、SiO 52.0~56.0質量%、Al 12.0~16.0質量%、MgO及びCaO 合計で20.0~25.0質量%、並びにB 5.0~10.0質量%である。
【0070】
<液晶性樹脂組成物の製造>
上記成分を、表1又は表2に示す割合で二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX30α型)を用いて、下記のシリンダー温度で溶融混練し、液晶性樹脂組成物ペレットを得た。
〔製造条件〕
シリンダー温度:
370℃:芳香族ポリエステルを含有する液晶性樹脂組成物の場合
350℃:芳香族ポリエステルアミドを含有する液晶性樹脂組成物の場合
【0071】
<荷重たわみ温度>
実施例及び比較例のペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製 「SE100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、ISO試験片A形を得た。この試験片を切り出し、測定用試験片(80mm×10mm×4mm)を得た。この測定用試験片を用いて、ISO75-1及び2に準拠して荷重たわみ温度を測定した。荷重たわみ温度を成形体の耐熱性を表す指標として用いた。結果を表1及び表2に示す。
[成形条件]
シリンダー温度:
370℃(実施例1~3及び7並びに比較例2~4)
350℃(実施例4~6並びに比較例1及び5)
金型温度:90℃
射出速度:33mm/sec
【0072】
<曲げ試験>
実施例及び比較例のペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製 「SE100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、ISO試験片A形を得た。この試験片を切り出し、測定用試験片(80mm×10mm×4mm)を得た。この測定用試験片を用いて、ISO 178に準拠し、曲げ強度、曲げ弾性率、及び曲げ歪を測定した。結果を表1及び表2に示す。
〔成形条件〕
シリンダー温度:
370℃(実施例1~3及び7並びに比較例2~4)
350℃(実施例4~6並びに比較例1及び5)
金型温度:90℃
射出速度:33mm/sec
【0073】
<誘電特性>
実施例及び比較例のペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製 「SE100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、80mm×80mm×1mmの平板状試験片を作製した。図1に示す通り、平板状試験片の反ゲート側の流動直角方向に沿う一辺から内側に10mmの箇所から、流動直角方向が長手方向になるように80mm×1mm×1mmの試験片を切り出し、これを流動直角方向の誘電特性評価用試験片とした。また、図2に示す通り、平板状試験片の流動方向に沿う一辺から内側に10mmの箇所から、流動方向が長手方向になるように80mm×1mm×1mmの試験片を切り出し、これを流動方向の誘電特性評価用試験片とした。これらの試験片について、(株)関東電子応用開発製の以下の構成の空洞共振器摂動法複素誘電率評価装置を用いて、測定周波数5GHzでの比誘電率及び誘電正接を測定した。比誘電率及び誘電正接の各々について、流動直角方向の値と流動方向の値との平均を算出し、上記平板状試験片の比誘電率及び誘電正接とした。結果を表1及び表2に示す。
スカラーネットワークアナライザー:アジレントテクノロジー8757D
周波数シンセサイザー:アジレントテクノロジー 83650LスイープCWジェネレータ
固定減衰器:アジレントテクノロジー85025Dディテクター
空洞共振器:関東電子応用開発CP431
測定プログラム:関東電子応用開発CPMA-S2/V2
〔成形条件〕
シリンダー温度:
370℃(実施例1~3及び7並びに比較例2~4)
350℃(実施例4~6並びに比較例1及び5)
金型温度:80℃
射出速度:33mm/sec
保圧:60MPa
【0074】
<平面度>
実施例及び比較例のペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製 「SE100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、80mm×80mm×1mmの平板状試験片を5枚作製した。得られた1枚目の平板状試験片を水平面に静置し、(株)ミツトヨ製のCNC画像測定機(クイックビジョン404PRO)を用いて、上記平板状試験片上の9箇所において、上記水平面からの高さを測定し、得られた測定値から平均の高さを算出した。高さを測定した位置は、平板状試験片の主平面上に、この主平面の各辺からの距離が3mmとなるように、一辺が74mmの正方形を置いたときに、この正方形の各頂点、この正方形の各辺の中点、及びこの正方形の2本の対角線の交点に該当する位置である。上記水平面からの高さが上記平均の高さと同一であり、上記水平面と平行な面を基準面とした。上記9箇所で測定された高さの中から、基準面からの最大高さと最小高さとを選択し、両者の差を算出した。同様にして、他の4枚の平板状試験片についても上記の差を算出し、得られた5個の値を平均して、平面度の値とした。結果を表1及び表2に示す。
[成形条件]
シリンダー温度:
370℃(実施例1~3及び7並びに比較例2~4)
350℃(実施例4~6並びに比較例1及び5)
金型温度:80℃
射出速度:33mm/sec
保圧力:60MPa
【0075】
<重量平均繊維長>
液晶性樹脂組成物中のガラス繊維の重量平均繊維長は下記の方法で測定した。
液晶性樹脂組成物ペレット5gを600℃で2時間加熱し灰化した。灰化残渣を5質量%ポリエチレングリコール水溶液に十分分散させた後、スポイトでシャーレに移し、実体顕微鏡でガラス繊維を観察した。ガラス繊維の実体顕微鏡画像10枚をCCDカメラからPCに取り込み、画像測定機((株)ニレコ製LUZEXFS)によって画像処理手法により、実体顕微鏡画像1枚ごとに100本のガラス繊維、即ち、合計1000本のガラス繊維について繊維長を測定した値の平均をガラス繊維の重量平均繊維長として採用した。結果を表1及び表2に示す。
【0076】
[コネクター最小充填圧力]
下記成形条件で、液晶性樹脂組成物を射出成形し(ゲート:トンネルゲート、ゲートサイズ:φ0.4mm)、図3に示すような、全体の大きさ17.6mm×4.00mm×1.16mm、ピッチ間距離0.5mm、ピン孔数30×2ピン、最小肉厚:0.12mmのFPCコネクターを得た。図3のコネクターを射出成形する際に良好な成形品を得られる最小の射出充填圧力を最小充填圧力として測定し、下記の基準で評価した。結果を表1及び表2に示す。
○(良好):最小充填圧力が130MPa以下であった。
×(不良):最小充填圧力が130MPa超であった。
[成形条件]
成形機:住友重機械工業(株)製SE30DUZ
シリンダー温度:
370℃(実施例1及び比較例2~4)
金型温度:90℃
射出速度:33mm/sec
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
表1及び表2に記載の結果から明らかなように、実施例の液晶性樹脂組成物は、流動性が良好であり、該液晶性樹脂組成物が与える成形体は、低誘電率及び低誘電正接を有し、低そり性及び機械的強度に優れていた。
図1
図2
図3