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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158772
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】組成物、繊維製品
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/277 20060101AFI20241031BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20241031BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20241031BHJP
   D06M 13/395 20060101ALI20241031BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20241031BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241031BHJP
   C08K 5/1545 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
D06M15/277
D06M15/263
D06M13/224
D06M13/395
C09K3/18 101
C08L101/00
C08K5/1545
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074286
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】三ツ谷 聖子
(72)【発明者】
【氏名】中村 健史
【テーマコード(参考)】
4H020
4J002
4L033
【Fターム(参考)】
4H020AB01
4H020AB06
4H020BA02
4H020BA07
4J002AA001
4J002BB001
4J002BB061
4J002BB071
4J002BC031
4J002BC071
4J002BD041
4J002BF021
4J002BF031
4J002BG021
4J002BG022
4J002CC031
4J002CC131
4J002CD001
4J002CD013
4J002CD053
4J002CF001
4J002CH011
4J002CK021
4J002CL001
4J002EE019
4J002EG027
4J002EH046
4J002EL086
4J002EN039
4J002EN049
4J002EN138
4J002ER009
4J002EU019
4J002EU189
4J002FD143
4J002FD149
4J002FD202
4J002FD316
4J002FD317
4J002FD318
4J002GC00
4J002GH00
4J002GK01
4J002GK02
4J002HA07
4L033AA07
4L033AB04
4L033AC03
4L033BA21
4L033BA69
4L033CA18
4L033CA22
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、作業性に優れ、コーティング剤として使用した際に繊維材に充分な撥水性および撥油性を付与できる組成物、前記撥水性および撥油性に優れた繊維製品を提供することである。
【解決手段】本発明の組成物は、バインダー樹脂(A)と、非イオン性界面活性剤(B)と、撥水剤(C)とを含む。本発明の組成物においては、バインダー樹脂(A)100質量部に対する非イオン性界面活性剤(B)の質量比が、固形分換算で1.5質量部以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂(A)と、
非イオン性界面活性剤(B)と、
撥水剤(C)と、
を含み、
前記バインダー樹脂(A)100質量部に対する前記非イオン性界面活性剤(B)の質量比が、固形分換算で1.5質量部以上である、組成物。
【請求項2】
前記組成物が、水性分散体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記バインダー樹脂(A)が、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂およびこれらの樹脂を構成する単量体由来の構成単位を有する共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤(B)が、エステル型の非イオン性界面活性剤である、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記撥水剤(C)が、バイオ材料である、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記撥水剤(C)のバイオ化度が、10~100%である、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
アニオン性界面活性剤(D1)を更に含む、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
カチオン性界面活性剤(D2)を更に含む、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
架橋剤(E)を更に含む、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
前記非イオン性界面活性剤(B)のHLB値が、9以下である、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
前記非イオン性界面活性剤(B)が、ショ糖脂肪酸エステルである、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項12】
繊維のコーティング用である、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1または請求項2に記載の組成物から形成された塗膜を有する、繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フッ素系のコーティング剤を塗布することによって、撥水性および撥油性が繊維材に付与されてきた。フッ素系化合物は、撥水性および撥油性に優れる一方、環境や人体に対する影響が懸念される。そのため、フッ素系化合物はその使用が禁止されるか、または避けられている。
そこでフッ素系化合物の使用に伴う懸念を考慮して、フッ素系化合物の使用量を低減させることや、非フッ素系のアクリル系やシリコーン系のコーティング剤を用いて撥水性を付与することが代替策として検討されている。しかし、これらの代替策にあっては、撥油性が劣るため満足のいく性能が得られないという課題がある。加えて、近年では更に環境に配慮したバイオ材料が求められることがある。
【0003】
前記の課題を背景として、例えば、特許文献1では、アクリル系撥水剤、シリコーン系撥水剤およびデンドリマー系撥水剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の非フッ素系撥水剤を、特定の官能基を含む繊維に接触させることが提案されている。特許文献2には、ショ糖脂肪酸エステル、アニオン性界面活性剤、水を含有するショ糖脂肪酸エステルの水分散液が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017―210704号公報
【特許文献2】特開2022-100297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者の検討によれば、特許文献1に記載の非フッ素系撥水剤をコーティング剤として用いても充分な耐油性が得られない。また、本発明者は、特許文献2に記載のショ糖脂肪酸エステルの水分散液を繊維材に適用したときには、撥水性および撥油性の両方を充分に発現させることに改善の余地があることを知見した。
【0006】
本発明の目的は、作業性に優れ、コーティング剤として使用した際に繊維材に充分な撥水性および撥油性を付与できる組成物、撥水性および撥油性に優れた繊維製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]バインダー樹脂(A)と、非イオン性界面活性剤(B)と、撥水剤(C)と、を含み、前記バインダー樹脂(A)100質量部に対する前記非イオン性界面活性剤(B)の質量比が、固形分換算で1.5質量部以上である、組成物。
[2]前記組成物が、水性分散体である、[1]に記載の組成物。
[3]前記バインダー樹脂(A)が、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂およびこれらの樹脂を構成する単量体由来の構成単位を有する共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]または[2]に記載の組成物。
[4]前記非イオン性界面活性剤(B)が、エステル型の非イオン性界面活性剤である、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]前記撥水剤(C)が、バイオ材料である、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]前記撥水剤(C)のバイオ化度が、10~100%である、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]アニオン性界面活性剤(D1)を更に含む、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]カチオン性界面活性剤(D2)を更に含む、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[9]架橋剤(E)を更に含む、[1]~[8]のいずれかに記載の組成物。
[10]前記非イオン性界面活性剤(B)のHLB値が、9以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の組成物。
[11]前記非イオン性界面活性剤(B)が、ショ糖脂肪酸エステルである、[1]~[10]のいずれかに記載の組成物。
[12]繊維のコーティング用である、[1]~[11]のいずれかに記載の組成物。
[13][1]~[12]のいずれかに記載の組成物から形成された塗膜を有する、繊維製品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業性に優れ、コーティング剤として使用した際に繊維材に充分な撥水性および撥油性を付与できる組成物、撥水性および撥油性に優れた繊維製品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書における以下の用語の意味は以下の通りである。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
【0010】
<組成物>
本発明の組成物は、バインダー樹脂(A)と、非イオン性界面活性剤(B)と、撥水剤(C)とを含む。そして、本発明の組成物においては、バインダー樹脂(A)100質量部に対する非イオン性界面活性剤(B)の質量比が、固形分換算で1.5質量部以上である。
【0011】
以下、いくつかの実施形態について詳細に説明するが、以下の実施形態は、発明の代表例に関するものであり、本発明の実施形態は以下の記載に限定されるものではない。
【0012】
(バインダー樹脂(A))
バインダー樹脂(A)としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、オレフィン樹脂、およびこれらの樹脂の単量体を含む共重合体(例えば、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル-ウレタン樹脂、酢酸ビニル-(メタ)アクリル樹脂、エチレン-(メタ)アクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂)が挙げられる。これらの中でも、撥水性および撥油性を向上させやすい点から、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂が好ましい。
バインダー樹脂(A)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
前記(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、「トークリル BCX-8111」、「トークリル W-168」、「トークリル X-4403」、「トークリル W-463」、「トークリル BCX-1160 R-2」、「トークリル BCX-8104」、「トークリル X-4402」、「FILLHARMO NS215」(以上、トーヨーケム社製品);
「PE-1126」、「JE-1056」、「JE-1113」、「KE-1148」、「M-141」、「PE-2273」(以上、星光PMC社製品);
「3401MA」、「MT404-8」、「3MF-320」、「3MF-333」、「SE-1658F」、「SE-2978F」(以上、大成ファインケミカル社製品);
「アクアブリッド 46777」、「アクアブリッド UX-100」、「アクアブリッド UX-110」(以上、ダイセルミライズ社製品);
「ボンコート AB-782-E」、「ボンコート AC-501」、「ボンコート R-3380-E」(以上、DIC社製品);
「モビニール 6520」、「モビニール 710」「モビニール 730L」「モビニール 743N」、酸ビニル-(メタ)アクリル樹脂である「モビニール 760H」、「モビニール 761HG」(以上、ジャパンコーティングレジン社製品)が挙げられる。
【0014】
前記スチレン樹脂としては、例えば、「ボンコート SK-105E」(DIC社製品)が挙げられる。
【0015】
前記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、ビニルアルコール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル共重合体樹脂が挙げられる。
酢酸ビニル樹脂としては、例えば、「ポリゾール S-5J」、「ポリゾール AX-590W」、「ポリゾール AX-751」、「ポリゾール AX-428J」、「ポリゾール AX-510ZL」、「ポリゾール AX-951」、「ポリゾール BX-7057Z」、「ポリゾール AM-200」(以上、昭和電工社製品)が挙げられる。
ビニルアルコール樹脂としては、例えば、「ゴーセノール N-300」、「ゴーセノール NL-05」、「ゴーセノール AL-06R」、「ゴーセノール GH-22」、「ゴーセノール GH-20R」、「ゴーセノール GH-17R」、「ゴーセノール GM-14R」、「ゴーセノール GL-05」、「ゴーセノール GL-03」、「ゴーセノール KH-20」、「ゴーセノール KH-17」、「ゴーセノール KL-17」、「ゴーセノール KL-05」、「ゴーセノール KL-03」、「ゴーセノール NK-05R」、「ゴーセネックス Z-100」、「ゴーセネックス Z-200」、「ゴーセネックス Z-300」、「ゴーセネックス Z-410」、「ゴーセネックス K-434」、「ゴーセネックス L-3266」、「ゴーセネックス CKS-50」、「ゴーセネックス T-330H」、「ゴーセネックス T-350」、「ゴーセネックス LW-100」、「ゴーセネックス LW-200」、「ゴーセネックス WO-320N」(以上、三菱ケミカル社製品);
「エクセバール RS-4104」、「エクセバール RS-2117」、「エクセバール RS-2817」、「エクセバール RS-1113」、「エクセバール RS-1713」、「エクセバール RS-1717」、「エクセバール HR-3010」(以上、クラレ社製品)が挙げられる。
塩化ビニル樹脂としては、例えば、「ビニブラン 985」、「ビニブラン HD-057」、「ビニブラン 871-8」(以上、日信化学工業社製品);
「モビニール 350」、「モビニール 352」(以上、ジャパンコーティングレジン社製品)が挙げられる。
酢酸ビニル共重合体樹脂としては、例えば、「モビニール 358」(以上、ジャパンコーティングレジン社製品)が挙げられる。
【0016】
前記ポリエステル樹脂としては、例えば、「ニチゴーポリエスター WR-901」、「ニチゴーポリエスターWR-905」、「ニチゴーポリエスター WR-961」、「ニチゴーポリエスター W-1031」(以上、三菱ケミカル社製品);
「バイロナール MD-1200」、「バイロナール MD-1500」、「バイロナール MD-2000」、「バイロナール MD-1480」、「バイロナール MD-1985」(以上、東洋紡社製品);
「セポルジョン ES」(以上、住友精化社製品)が挙げられる。
【0017】
前記アミノ樹脂としては、例えば、「BECKOPOX EH 613w/80WA」、「BECKOPOX VEH 2106w/80WA」(以上、ダイセル・オルネクス社製品)が挙げられる。
【0018】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、「BECKOPOX EP 2307w/45WAMP」、「BECKOPOX EP 2384w/57WA」、「BECKOPOX EM 2120w/45WA」(以上、ダイセル・オルネクス社製品);
「アデカレジン EMシリーズ」(以上、アデカ社製品)が挙げられる。
【0019】
前記ウレタン樹脂としては、例えば、「WBR-016U」、「WBR-3004」(以上、大成ファインケミカル社製品);
「DAOTAN VTW 1265/36WA」、「DAOTAN VTW 6450/30WA」、「DAOTAN VTW 6492/35WA」、「DAOTAN VTW 7001/36WA」(以上、ダイセル・オルネクス社製品);
「ハイドラン HW-171」、「ハイドラン HW-350」(以上、DIC社製品)が挙げられる。
【0020】
前記ポリエーテル樹脂としては、例えば、「SN シックナー 601」、「ノパール 710N」、「SN シックナー A-801」、「SN シックナー A-816」(以上、サンノプコ社製品)が挙げられる。
前記ポリエーテル樹脂は、ウレタン変性ポリエーテル樹脂であってもよい。前記ポリエーテル樹脂としては、例えば、「SN シックナー 603」、「SN シックナー 607」、「SN シックナー 612」、「SN シックナー612N」、「SN シックナー 619」、「SN シックナー 621N」、「SN シックナー 621TF」、「SN シックナー 623N」、「SN シックナー 624N」、「SN シックナー 625N」、「SN シックナー 629N」、「ノパール 700N」、「SN シックナー A-814」(以上、サンノプコ社製品)が挙げられる。
【0021】
前記ポリアミド樹脂としては、例えば、「セポルジョン NE205」、「セポルジョン PA」、(以上、住友精化社製品);
「AQナイロン A-90」、「AQナイロン P-70」、「AQナイロン P-95」、「AQナイロン T-70」(以上、東レ社製品)が挙げられる。
【0022】
前記オレフィン樹脂としては、例えば、「AQUACER 532」、「AQUACER 513」、「AQUACER 517」、「AQUACER 552」、「AQUACER 593」、「AQUACER 1547」、「AQUACER 2500」(以上、BYK社製品);
「セポルジョンG」(以上、住友精化社製品);
「アローベース SB-1200」、「アローベース SE-1200」、「アローベース SD-1200」、「アローベース DA-1010」、「アローベース DC-1010」、「アローベース YA-6010」(以上、ユニチカ社製品);
「モビニール AC3100」、「モビニール EC3500」、「モビニール MC3800」、「モビニール EC1200」「モビニール EC1700」「モビニール EC1800」「モビニール EC3700」(以上、ジャパンコーティングレジン社製品)が挙げられる。
【0023】
前記スチレン-(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、「トークリル S-171」、「トークリル BCX-3101」、「トークリル W-172」、「FILLHARMO GS400」、「FILLHARMO GS500」(以上、トーヨーケム社製品);
「ポリゾールTI-3052」、「ポリゾール AM-610」(以上、昭和電工社製品);
「TE-1048」、「PE-1304」、「HE-1335」、「RE-1075」、「NE-2260」(以上、星光PMC社製品);
「モビニール 752」、「モビニール 972」、「モビニール 6720」「モビニール FK479」(以上、ジャパンコーティングレジン社製品)が挙げられる。
【0024】
前記(メタ)アクリル-ウレタン樹脂としては、例えば、「3DR-9057」、「3DR-1000」、「WEM-200U」、「WEM-3000」、「WEM-505C」(以上、大成ファインケミカル社製品)が挙げられる。
【0025】
前記酢酸ビニル-(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、「ポリゾール747L」(以上、昭和電工社製品);
「ビニブラン A68J1」、「ビニブラン A68J1N」、「ビニブラン A70J2M」(以上、日信化学工業社製品);
「モビニール FK479」(以上、ジャパンコーティングレジン社製品)が挙げられる。
【0026】
前記エチレン-(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、「アクアテックス AC-3100」(以上、ジャパンコーティングレジン社製品);
「AQUACER 1061」、「AQUACER 1055」(以上、BYK社製品)が挙げられる。
【0027】
前記エチレン-酢酸ビニル樹脂としては、例えば、「ポリゾール AM-3000」、「ポリゾール EVA AD-21」、「ポリゾール EVA AD-5」、「ポリゾール EVA AD-56」、「ポリゾール HG-600H」、「ポリゾール EVA ADE-107」、「ポリゾール EVA M-260F」(以上、昭和電工社製品);
「アクアテックス EC-1200」、「アクアテックス EC-1700」、「アクアテックス EC-1800」(以上、ジャパンコーティングレジン社製品);
「セポルジョンVA406」(以上、住友精化社製品);
「ビニブラン 3483Y」(以上、日信化学工業社製品);
「スミカフレックス S-201HQ」、「スミカフレックス S-305HQ」、「スミカフレックス S-465HQ」、「スミカフレックス S-752」(以上、住友ケムテックス社製品)が挙げられる。
【0028】
(非イオン性界面活性剤(B))
非イオン性界面活性剤(B)としては、種々の非イオン性界面活性剤から選択して使用可能であるが、水分散性、製膜性、塗膜の撥水性および撥油性向上の観点から、非イオン性界面活性剤(B)はエステル型の非イオン性界面活性剤であることが好ましい。エステル型の非イオン性界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルが挙げられる。
【0029】
前記エステル型の非イオン性界面活性剤としては、公知のショ糖脂肪酸エステルを用いることができる。前記ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖が有する8つの水酸基のうちの少なくとも1つが脂肪酸とエステル構造を形成したものであれば、水分散性、製膜性、塗膜の撥水性および撥油性を向上できる。
すなわち、水分散性、製膜性、塗膜の撥水性および撥油性向上の観点から、前記エステル型の非イオン性界面活性剤がショ糖脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0030】
例えば、前記ショ糖脂肪酸エステルの有する脂肪酸由来の構造部位が、炭素数10~30(好ましくは炭素数12~28、更に好ましくは12~22)の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸由来の構造部位であるショ糖脂肪酸エステルを用いることができる。飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸が挙げられる。
ショ糖脂肪酸エステルの使用目的によって、脂肪酸由来の構造部位として1種のみの脂肪酸由来の構造部位を有するものを用いてもよく、2種以上の脂肪酸を任意の比率で組み合わせて得られる脂肪酸由来の構造部位を有するものを用いてもよい。
【0031】
前記ショ糖脂肪酸エステルとして、例えば、「リョートーシュガーエステルS-370」、「リョートーシュガーエステルS-570」、「リョートーシュガーエステルS-770」、「リョートーシュガーエステルS-970」、「リョートーシュガーエステルS-1170」、「リョートーシュガーエステルS-1570」、「リョートーシュガーエステルS-1670」、「リョートーシュガーエステルP-170」、「リョートーシュガーエステルP-1670」、「リョートーシュガーエステルM-1695」、「リョートーシュガーエステルO-170」、「リョートーシュガーエステルO-1570」、「リョートーシュガーエステルL-195」、「リョートーシュガーエステルL-595」、「リョートーシュガーエステルL-1695」、「リョートーシュガーエステルB-370」、「リョートーシュガーエステルER-190」、「リョートーシュガーエステルPOS-135」「リョートーシュガーエステルS-470P」(以上、三菱ケミカル社製品);
「DKエステルF-160」、「DKエステルF-140」、「DKエステルF-110」、「DKエステルF-70」、「DKエステルF-50」(以上、第一工業製薬社製品)が挙げられる。
【0032】
これらの中でも、組成物を水性分散体として工業的に利用できる観点から、0℃以上で固形のショ糖脂肪酸エステルを用いることが好ましい。前記ショ糖脂肪酸エステルのうち、0℃以上で固形のショ糖脂肪酸エステルとしてとしては、例えば、「リョートーシュガーエステルS-370」、「リョートーシュガーエステルS-570」、「リョートーシュガーエステルS-770」、「リョートーシュガーエステルS-970」、「リョートーシュガーエステルS-1170」、「リョートーシュガーエステルS-1570」、「リョートーシュガーエステルS-1670」、「リョートーシュガーエステルP-170」、「リョートーシュガーエステルP-1670」、「リョートーシュガーエステルM-1695」、「リョートーシュガーエステルL-595」、「リョートーシュガーエステルL-1695」「リョートーシュガーエステルS-470P」(以上、三菱ケミカル社製品);
「DKエステルF-160」、「DKエステルF-140」、「DKエステルF-110」、「DKエステルF-70」、「DKエステルF-50」(以上、第一工業製薬社製品)が挙げられる。
前記ショ糖脂肪酸エステルは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記エステル型の非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステルを使用することもできる。
前記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、公知のソルビタン脂肪酸エステルを用いることができ、ソルビタンの有する4つの水酸基のうちの少なくとも1つが脂肪酸とエステル構造を形成したものであればよい。
【0034】
例えば、ソルビタン脂肪酸エステルの有する脂肪酸由来の構造部位が、炭素数10~30(好ましくは炭素数12~28、更に好ましくは12~22)の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸由来の構造部位であるソルビタン脂肪酸エステルを用いることができる。飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エルカが挙げられる。
ソルビタン脂肪酸エステルの使用目的によって、脂肪酸由来の構造部位として、1種のみの脂肪酸由来の構造部位を有するものを用いてもよく、2種以上の脂肪酸を任意の比率で組み合わせて得られる脂肪酸由来の構造部位を有するものを用いてもよい。
【0035】
前記ソルビタン脂肪酸エステルとして、例えば、「レオドール SP-L10」、「レオドール SP-P10」、「レオドール SP-S10V」、「レオドール SP-S20」、「レオドール SP-S30V」、「レオドール SP-O10V」、「レオドール SP-O30V」、「レオドール SP-L10」、「レオドール AS-10V」、「レオドール AO-10V」、「レオドール AS-15V」、「エマゾール L-10V」、「エマゾール P-10V」、「エマゾール S-10V」、「エマゾール O-10V」、「エマゾール L-120V」、「エマゾール O-120V」、「エマゾール S-120V」、「レオドール TW-L120」、「レオドール TW-L106」、「レオドール TW-P120」、「レオドール TW-S120V」、「レオドール TW-S106V」、「レオドール TW-S320V」、「レオドール TW-O120V」、「レオドール TW-O106V」、「レオドール TW-O320V」、「レオドール TW-IS399C」、「レオドールスーパー TW-L120」(以上、花王社製品);
「リケマール L-250A」、「リケマール S-300W」、「リケマール OV-250」、「リケマール OR-85」、「リケマール B-150」、「ポエム S-60V」、「ポエム S-65V」、「ポエム O-80V」、「ポエム C-250」(以上、理研ビタミン社製品);
「ソルボン S-10E」、「ソルボン S-20」、「ソルボン S-40」、「ソルボン S-60」、「ソルボン S-80」、「ソルボン S-85」(以上、東邦化学工業社製品);
「ノニオン CP-08R」、「ノニオン LP-20R」、「ノニオン PP-40Rペレット」、「ノニオン SP-60Rペレット」、「ノニオン OP-80R」、「ノニオン OP-83RAT」、「ノニオン OP-85R」(以上、日油社製品)が挙げられる。
【0036】
中でも、組成物を水性分散体として工業的に利用できる観点から、0℃以上で固形のソルビタン脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
前記ソルビタン脂肪酸エステルのうち、0℃以上で固形のソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、「レオドール SP-P10」、「レオドール SP-S10V」、「レオドール SP-S20」、「レオドール SP-S30V」、「レオドール AS-10V」、「エマゾール L-10V」、「エマゾール P-10V」、「レオドール TW-L120」、「レオドール TW-S320V」、「レオドール TW-IS399C」(以上、花王社製品);
「リケマール S-300W」、「リケマール B-150」、「ポエム S-60V」、「ポエム S-65V」(以上、理研ビタミン社製品)が挙げられる。
前記ソルビタン脂肪酸エステルは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記エステル型の非イオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステルを使用することもできる。
前記グリセリン脂肪酸エステルとしては、公知のグリセリン脂肪酸エステルを用いることができ、グリセリンの有する3つの水酸基のうちの少なくとも1つが脂肪酸とエステル構造を形成したものであればよい。
【0038】
例えば、グリセリン脂肪酸エステルの有する脂肪酸由来の構造部位が、炭素数10~30(好ましくは炭素数12~28、更に好ましくは12~22)の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸由来の構造部位であるグリセリン脂肪酸エステルを用いることができる。飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸が挙げられる。
グリセリン脂肪酸エステルの使用目的によって、脂肪酸由来の構造部位として、1種のみの脂肪酸由来の構造部位を有するものを用いてもよく、2種以上の脂肪酸を任意の比率で組み合わせて得られる脂肪酸由来の構造部位を有するものを用いてもよい。
【0039】
前記グリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリン有機酸エステル(または有機酸モノグリセリド)、ポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。
前記グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンに脂肪酸が1つ結合したモノグリセリドの水酸基に更に有機酸(例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸)が結合したものである。
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンの平均重合度が、例えば、2~10であってよい。脂肪酸残基は1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0040】
前記グリセリン脂肪酸エステルとして、例えば、「レオドール MS-50」、「レオドール MS-60」、「レオドール MO-60」、「レオドール MS-165V」、「エキセル S-95」、「エキセル VS-95」、「エキセル O-95R」、「エキセル O-95N」、「エキセル 200」、「エキセル 122V」、「エキセル P-40S」、「エキセル 84」、「ステップ SS」、「ホモテックス PT」、「エキセパール G-MB」(以上、花王社製品);
「リケマール S-100」、「リケマール S-100P」、「リケマール S-100A」、「リケマール H-100」、「ポエム V-100」、「ポエム PV-100」、「リケマール B-100」、「リケマール HC-100」、「リケマール OL-100(E)」、「ポエム M-100」、「ポエム M-200」、「ポエム M-300」、「リケマール S-200」、「リケマール HS-200K」、「ポエム V-200」、「ポエム P-200」、「ポエム B-200」、「ポエム OL-200VM」、「ポエム B-10」、「ポエム B-30」、「ポエム K-30」、「ポエム W-60」、「BIOCIZER」、「リケマール PL-004」、「ポエム G-002」、「ポエム J-4081V」、「ポエム PR-100」、「ポエム PR-300」、「リケマール L-71-D」、「リケマール S-71-D」、「リケマール O-71-D(E)」、「ポエム DL-100」、「ポエム DM-100」、「ポエム DS-100A」、「ポエム DO-100V」、「ポエム J-4081V」、「ポエム PR-100」、「ポエム PR-300」(以上、理研ビタミン社製品);
「リョートーポリグリエステル CA-F4」、「リョートーポリグリエステル L-10D」、「リョートーポリグリエステル L-7D」、「リョートーポリグリエステル M-10D」、「リョートーポリグリエステル M-7D」、「リョートーポリグリエステル O-50D」、「リョートーポリグリエステル O-50D」、「リョートーポリグリエステル B-100D」、「リョートーポリグリエステル B-70D」(以上、三菱ケミカル社製品);
「SYグリスター DAS-7S」、「SYグリスター TS-5S」、「SYグリスター PS-5S」、「SYグリスター MS-3S」、「SYグリスター TS-3S」、「SYグリスター PS-3S」、「SYグリスター DAO-7S」、「SYグリスター PO-5S」、「SYグリスター MO-3S」、「SYグリスター PO-3S」、「SYグリスター MCA-150」、「SYグリスター HB-750」、「SYグリスター DDB-750」、「SYグリスター OE-750」、「SYグリスター CV-1L」、「SYグリスター CV-23」、「SYグリスター THL-15」、「SYグリスター THL-17」、「SYグリスター THL-44」、「SYグリスター THL-50」、「SYグリスター THL-55」、「SYグリスター GP-120」、「SYグリスター GP-170」、「SYグリスター GP-450」、「SYグリスター CR-350H」、「SYグリスター CR-310」、「SYグリスター CR-500」、「SYグリスター CR-ED」、「SYグリスター CRS-75」(以上、阪本薬品工業社製品);
「サンソフト Q-123H-C」、「サンソフト A-143E-C」、「サンソフト A-173E-C」、「サンソフト A-186E-C」、「サンソフト Q-175S-C」、「サンソフト Q-185S-C」(以上、太陽化学社製品);
「モノグリ D」、「モノグリ MB」、「モノグリ M-14」、「モノグリ H」、「ユニグリ GL-106」、「ユニグリ GS-106」、「ユニグリ GO-102R」、「ユニグリ GO-106」(以上、日油社製品);
「PGLE ML10」、「PGLAL ML04」(以上、ダイセル社製品)が挙げられる。
【0041】
中でも組成物を水性分散体として工業的に利用できる点から、0℃以上で固形のグリセリン脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
前記グリセリン脂肪酸エステルのうち、0℃以上で固形のグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、「レオドール MS-50」、「レオドール MS-60」、「レオドール MS-165V」、「エキセル S-95」、「エキセル VS-95」、「エキセル O-95N」、「エキセル 200」、「エキセル P-40S」、「エキセル 84」、「ステップ SS」、「エキセパール G-MB」(以上、花王社製品);
「リケマール S-100」、「リケマール S-100P」、「リケマール S-100A」、「リケマール H-100」、「ポエム V-100」、「ポエム PV-100」、「リケマール B-100」、「リケマール HC-100」、「リケマール OL-100(E)」「ポエム V-200」、「ポエム P-200」、「ポエム B-200」、「ポエム B-10」、「ポエム B-30」、「ポエム K-30」、「ポエム W-60」、「ポエム J-4081V」、「リケマール S-71-D」、「ポエム DS-100A」、「ポエム J-4081V」(以上、理研ビタミン社製品);
「リョートーポリグリエステル B-100D」、「リョートーポリグリエステル B-70D」(以上、三菱ケミカル社製品);
「SYグリスター DAS-7S」、「SYグリスター HB-750」、「SYグリスター DDB-750」、「SYグリスター GP-120」、「SYグリスター GP-170」、「SYグリスター GP-450」(以上、阪本薬品工業社製品);
「サンソフト A-186E-C」、「サンソフト Q-185S-C」(以上、太陽化学社製品);
「モノグリ D」、「モノグリ MB」、「モノグリ M-14」、「ユニグリ GL-106」、「ユニグリ GS-106」、(以上、日油社製品)が挙げられる。
前記グリセリン脂肪酸エステルは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記エステル型の非イオン性界面活性剤としては、プロピレングリコール脂肪酸エステルを使用することもできる。
前記プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、公知のプロピレングリコール脂肪酸エステルを用いることができ、プロピレングリコールの有する2つの水酸基のうちの1つが脂肪酸とエステル構造を形成したものであればよい。
【0043】
例えば、プロピレングリコール脂肪酸エステルの有する脂肪酸由来の構造部位が、炭素数10~30(好ましくは炭素数12~28、更に好ましくは12~22)の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸由来の構造部位であるプロピレングリコール脂肪酸エステルを用いることができる。飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸が挙げられる。
【0044】
前記プロピレングリコール脂肪酸エステルとして、例えば、「カオーホモテックスPS-200V」(以上花王社製品);
「Type BP」、「リケマール PP-100」、「リケマール PS-100」、「リケマール PO-100V」、「リケマール PB-100」(以上、理研ビタミン社製品)が挙げられる。
【0045】
これらの中でも、組成物を水性分散体として工業的に利用できる観点から、0℃以上で固形のプロピレングリコール脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
前記プロピレングリコール脂肪酸エステルのうち、0℃以上で固形のプロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えば、「カオーホモテックスPS-200V」(花王社製品);
「リケマール PP-100」、「リケマール PS-100」」、「リケマール PB-100」(以上、理研ビタミン社製品)が挙げられる。
前記プロピレングリコール脂肪酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記エステル型の非イオン性界面活性剤や界面活性剤(B)のHLB値は、9以下が好ましく、7以下がより好ましく、6以下が更に好ましい。前記HLB値が大きすぎると配合液の安定性の問題や、形成されるコーティング膜の耐水性が低下する傾向がある。一方、前記エステル型の非イオン性界面活性剤または界面活性剤(B)のHLB値の下限は撥油向上の観点から1以上が好ましい。
前記HLB値は、2種類以上の高HLB値と低HLB値の非イオン性界面活性剤を混合することによって前記の好ましい範囲のHLB値に調整することも可能である。
【0047】
組成物の安定性、形成されるコーティング膜の耐水性および撥油性向上の観点から、前記エステル型の非イオン性界面活性剤としては、例えば、「リョートーシュガーエステルS-370」、「リョートーシュガーエステルS-570」、「リョートーシュガーエステルS-970」、「リョートーシュガーエステルP-170」、「リョートーシュガーエステルO-170」、「リョートーシュガーエステルL-195」、「リョートーシュガーエステルL-595」、「リョートーシュガーエステルL-1695」、「リョートーシュガーエステルB-370」、「リョートーシュガーエステルER-190」、「リョートーシュガーエステルPOS-135」「リョートーシュガーエステルER-190」「リョートーシュガーエステルS-470P」、「DKエステルF-160」、「DKエステルF-140」、「DKエステルF-110」、「DKエステルF-70」、「DKエステルF-50」が好ましい。
【0048】
前記非イオン性界面活性剤(B)の水性分散体は、前記の各成分以外に本発明の効果を損なわない範囲でワックスを更に含んでもよい。
前記ワックスは、通常室温では固体で加熱すると液状になるものであり、融点が通常0~200℃、好ましくは20~150℃、より好ましくは30~100℃である。融点が低すぎるとコーティング膜にべたつきが生じる傾向があり、融点が高すぎると水に対する分散性が低下する傾向がある。
【0049】
前記ワックスとしては、例えば、固形パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等の炭化水素ワックス、水添ヒマシ油や水添ホホバ油等の硬化油、カルナバワックス、米ぬかワックス、蜜ろう、モンタンワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドが挙げられる。これらの中でも天然ワックスが環境に配慮したバイオ材料となる観点から、脂肪酸由来の構造部位と脂肪族アルコール由来の構造部位とを有するエステル化合物である脂肪酸エステルが好ましい。
【0050】
(撥水剤(C))
環境に配慮したバイオ材料が求められている観点から、撥水剤(C)は、アクリル、ウレタン等の非フッ素系のバイオ素材を使用することが好ましく、市販のバイオ素材の撥水剤を使用することができる。
すなわち、環境に配慮したバイオ材料が求められている観点から、本発明の組成物は、前記撥水剤(C)がバイオ材料であることが好ましい。ここでバイオ材料とは、バイオマス由来の化合物を含む材料、該化合物を反応させて得られた化合物を含む材料を意味する。
【0051】
前記撥水剤(C)としては、例えば、Zelan R3(60%バイオベース;ハンツマン社製品)、Zelan R2PLUS(38%バイオベース、ハンツマン社製品)、ネオシードRSシリーズ(約70%バイオベース、日華化学社製品)、ユニダインXFシリーズ(約50%バイオベース、ダイキン社製品)、ユニダインXF-4100(69%バイオベース、ダイキン社製品)、ユニダインXF-5003(61%バイオベース、ダイキン社製品)、ユニダインXF-5005(53%バイオベース、ダイキン社製品)、ユニダインXF-5007(51%バイオベース、ダイキン社製品)が挙げられる。
【0052】
前記撥水剤(C)のバイオベースは、本発明における撥水剤(C)のバイオ化度に相当する。撥水剤(C)のバイオ化度とは、バイオマス由来の撥水剤(C)の固形分の全炭素数に対するバイオマス由来の原料の炭素数の重量百分率(単位:%)を意味する。
代表的なバイオ化度の指標としてはISO16620-2でバイオベース度の規格が規定されている。撥水剤(C)の固形分の全炭素数に対するバイオマス由来の原料の炭素の重量百分率(単位:質量%)が、撥水剤(C)のバイオ化度と定義される。
例えばバイオマス由来のイソボルニルアクリレートでは原料となる松ヤニから得られるカンフェンに由来する炭素が分子内に10個であることから、分子全体の炭素数13個に対して、76.9%となる。そのため、前記イソボルニルアクリレートの単独重合体のバイオ化度は76.9%となる。
環境持続性を重視する観点から、本発明の組成物は、前記撥水剤(C)のバイオ化度が10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上が更に好ましい。また、100%以下が好ましく、85%以下がより好ましく、70%以下が更に好ましい。
前記撥水剤(C)のバイオ化度が前記数値範囲内であれば、環境に配慮したバイオ材料とすることができる。
【0053】
(アニオン性界面活性剤(D1)、カチオン性界面活性剤(D2))
本発明の組成物は、アニオン性界面活性剤(D1)またはカチオン性界面活性剤(D2)を更に含むことが好ましい。これら成分の含有により、分散液としての安定性が向上する傾向にある。
【0054】
前記アニオン性界面活性剤(D1)としては、例えば、脂肪酸金属塩、スルホン酸金属塩、硫酸エステル塩、リン酸金属塩、アンモニウム塩等の塩類が挙げられる。
これらの中でも、脂肪酸金属塩は水分散安定性が高いことに加えて、水性分散体の低粘度化が容易である点で好ましい。
【0055】
前記脂肪酸金属塩の炭素数としては、6~30が好ましく、10~28がより好ましい。前記炭素数が少なすぎると粘度低下効果が十分に得られない傾向があり、炭素数が大きすぎても、金属塩が入手困難となる傾向がある。
前記肪酸金属塩の脂肪酸は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、水酸基やベンジル基を有していてもよい。
【0056】
本発明の組成物の水分散安定性および低粘度化の観点から、前記脂肪酸金属塩としては、アルカリ金属塩やアンモニウム塩が好ましく、ナトリウム塩や四級アンモニウム塩がより好ましい。
【0057】
アニオン性界面活性剤(D1)が前記脂肪酸金属塩である場合に、前記脂肪酸金属塩として、例えば、メリシン酸ナトリウム、モンタン酸ナトリウム、セロチン酸ナトリウム、リグノセリン酸ナトリウム、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウム、アラキドン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、12-ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム、ヘキサン酸ナトリウムが挙げられる。
これら脂肪酸金属塩の中でも、モンタン酸ナトリウム、ベヘン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、12-ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウムが本発明の組成物の水分散安定性および低粘度化の効果を発揮しやすく好ましい。
【0058】
カチオン性界面活性剤(D2)としては、例えば、ベンザルコニウムクロリド、トリメチルテトラデシルアンモニウムクロリド、n-オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド、ジーn-アルキルジメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。
これらの中でも、ベンザルコニウムクロリド、トリメチルテトラデシルアンモニウムクロリドが、水分散安定性および低粘度化の効果を発揮しやすいため好ましい。
【0059】
アニオン性界面活性剤(D1)やカチオン性界面活性剤(D2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ただし、アニオン性界面活性剤(D1)およびカチオン性界面活性剤(D2)の双方を併用することは分散液の安定性を下げることにつながることはあり得る。
【0060】
本発明の組成物がアニオン性界面活性剤(D1)またはカチオン性界面活性剤(D2)を含む場合において、アニオン系のバインダー樹脂(A)や撥水剤(C)を用いる場合はアニオン性界面活性剤(D1)を用いることが好ましく、カチオン系のバインダー樹脂(A)や撥水剤(C)を用いる場合はアニオン性界面活性剤(D1)を用いることが好ましい。これらの組み合わせにおいては、分散液の安定性が更に向上することがある。ノニオン系またはベタイン系のバインダー樹脂(A)や撥水剤(C)を用いる場合は、アニオン性界面活性剤(D1)またはカチオン性界面活性剤(D2)のいずれも用いることができる。
【0061】
(架橋剤(E))
本発明の組成物は、撥水性と撥油性をより向上させるため、架橋剤(E)を更に含んでいてもよい。繊維材との接着性が良好となる観点から、本発明の組成物は、架橋剤(E)を更に含むことが好ましい。
架橋剤(E)としては水溶液中で架橋効果を損なわず使用できる架橋剤であればよく、反応点となる末端が保護されたものを用いてもよい。架橋剤(E)としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤が挙げられる。これらの中でも繊維材との接着性や、非イオン性界面活性剤(B)、撥水剤(C)の官能基との反応性に優れる点で、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましく、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。
【0062】
前記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート系架橋剤;
1,3-キシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート系架橋剤;
ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート等のジフェニルメタン系架橋剤;
1,5-ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンジイソシアネート系架橋剤等の芳香族系イソシアネート系架橋剤が挙げられる。
他にも、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ジイソシアナトメチルシクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族系イソシアネート系架橋剤;
ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系イソシアネート系架橋剤;
前記イソシアネート系化合物のアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体が挙げられる。
【0063】
これらの中でも、トリレンジイソシアネート系架橋剤がポットライフの点で好ましく、キシリレンジイソシアネート系架橋剤またはイソシアヌレート骨格を有するイソシアネート系架橋剤がキュア時間短縮の点で好ましく、非芳香族系のイソシアネート系架橋剤が耐黄変性の点で好ましい。これらの中で具体的には、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体およびヌレート体が、ポットライフ、キュア速度のバランスに優れている点で好ましい。
【0064】
前記エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0065】
前記アジリジン系架橋剤としては、例えば、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)が挙げられる。
【0066】
前記メラミン系架橋剤としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂が挙げられる。
【0067】
前記アルデヒド系架橋剤としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドが挙げられる。
【0068】
前記アミン系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミドが挙げられる。
【0069】
前記金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセトアセチルエステル配位化合物が挙げられる。
【0070】
前記架橋剤(E)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
(組成)
前記バインダー樹脂(A)100質量部に対する前記非イオン性界面活性剤(B)の質量比は、固形分換算で1.5質量部以上である。そのため、塗膜の撥水性および撥油性が向上する。前記質量比は1.5~2500質量部が好ましく、2.5~2100質量部がより好ましく、4.0~1800質量部が更に好ましい。
前記質量比が前記数値範囲の下限値以上であれば、塗膜の撥水性および撥油性が更に良好となる傾向がある。前記質量比が前記数値範囲内の上限値以下であれば、繊維の風合いが損なわれ難い。
【0072】
撥水剤(C)の含有量は、バインダー樹脂(A)100質量部に対して1~2000質量部が好ましく、5~1800質量部がより好ましく、10~1500質量部が更に好ましい。
撥水剤(C)の含有量が前記数値範囲の下限値以上であれば、塗膜の撥水性が良好となる傾向がある。撥水剤(C)の含有量が前記数値範囲の上限値以下であれば、塗膜の撥油性が損なわれ難い。
【0073】
アニオン性界面活性剤(D1)またはカチオン性界面活性剤(D2)の含有量は、組成物の合計100質量部に対して、0.1~50質量部が好ましく、0.3~40質量部がより好ましく、0.5~30質量部が更に好ましい。前記含有量が前記数値範囲の下限値以上であれば、非イオン性界面活性剤(B)を分散液にした際の分散性が良好となる傾向がある。前記含有量が前記数値範囲の上限値以下であれば、該水性分散体の高粘度化を抑制しやすいため、流動性を確保しやすい。
【0074】
前記架橋剤(E)の含有量は、撥水剤(C)100重量部に対して、0.01~10重量部が好ましく、0.05~8重量部がより好ましく、0.1~6重量部が更に好ましい。前記含有量が前記数値範囲の下限値以上であれば、繊維材との密着性が低下しにくい。前記含有量が前記数値範囲内の上限値以下であれば、繊維の風合いが損なわれ難い。
【0075】
(その他の添加剤)
本発明の水性分散体組成物は、前記の各成分以外に本発明の効果を損なわない範囲において、消泡剤、防腐剤、平滑剤、帯電防止剤、難燃剤、粘着付与剤、充填剤、紫外線吸収剤、着色剤、酸化防止剤、機能性色素、無機粒子、有機溶剤等のその他の添加剤を配合することができる。これらの添加剤の配合量は、添加剤に応じて適宜設定されるが、例えば組成物の合計に対して10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0076】
(性状)
本発明の組成物においては、必要に応じて任意成分として、非イオン性界面活性剤(B)以外のアニオン性界面活性剤(D1)またはカチオン性界面活性剤(D2)、前記その他の添加剤を混合することで水性分散体を調製することが好ましい。該水性分散体を基材に塗工し、乾燥することで塗膜が得られる。基材への組成物の塗工性が良好となる観点から、組成物は水性分散体であることが好ましい。
【0077】
組成物のB型粘度計で測定した25℃における粘度は作業性の観点から、5,000mPa・s以下が好ましく、3,500mPa・s以下がより好ましく、2,000mPa・s以下が更に好ましい。また、10mPa・s以上が好ましい。
【0078】
本発明の組成物が水性分散体である場合のエマルジョンの平均粒子径は、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。前記平均粒子径が大きすぎると分散液の安定性が低下する。
前記平均粒子径は、レーザー回折装置「Partica LA-950V2」(堀場制作所製品)、レーザー回折散乱法を用いて25℃の温度条件下で測定(単位:μm)される値である。
【0079】
組成物の固形分濃度は5~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、15~40質量%が更に好ましい。前記固形分濃度が前記数値範囲内であれば、前記組成物が適度な粘度となって取り扱う際の作業性が良好となる。
【0080】
(製造方法)
本発明の組成物は、公知の水性分散体や乳化液の製法に準じて製造することができる。
例えば、各配合成分の配合順序については、下記の方法が挙げられる。
・非イオン性界面活性剤(B)を水に分散させた後、バインダー樹脂(A)を配合する方法。
・あらかじめ非イオン性界面活性剤(B)とバインダー樹脂(A)を混合した後、水に配合する方法。
・バインダー樹脂(A)を水に分散させた後、非イオン性界面活性剤(B)を配合する方法。
【0081】
例えば各成分の混合方法については、各工程の混合時間は、通常10分~24時間、好ましくは20分~6時間である。混合時間が短すぎると十分に均一な組成物が得られない恐れがあり、長すぎると組成物の生産性が低下する。
【0082】
各工程の混合温度は、通常0~100℃であるが、好ましくは40~90℃である。低温すぎても高温すぎても水が一部凝固もしくは蒸発して十分な分散液が得られない恐れがある。
室温以上に加温した場合の冷却方法については、冷媒に接触させ急冷する方法、空気環境に接触させ自然放冷する方法等一般的な冷却に用いられる手法を用いることができる。これらの方法は、調製したい組成物の生産量や装置効率を勘案しながら種々選択される。
【0083】
各工程の圧力については常圧でもよいし、加圧下または減圧下で行っても良い。これらの方法は、所望の組成物の性状(濃度、粘度、粒子径、生産量等)および後述の分散手法に応じて種々選択される。
【0084】
各成分を混合し、水に分散させる方法としては、攪拌、振盪、超音波、機械押出等、一般に分散液を調製する際の種々のせん断力を与える方法を用いることができる。これらの方法は、調製したい分散液の性状(濃度、粘度、粒子径、生産量等)に応じて種々選択される。
【0085】
繊維の撥水性および撥油性を有するコーティング剤用に好適に使用できる観点から、本発明の組成物は、繊維の撥水性および撥油性を有するコーティング剤用であることが好ましい。
【0086】
(作用機序)
本発明の組成物が繊維材に塗工した際に撥水性と撥油性を向上させるメカニズムは必ずしも明確ではないが、以下の通りと推測される。バインダー樹脂(A)、非イオン性界面活性剤(B)、および撥水剤(C)を必須成分とし、かつ非イオン性界面活性剤(B)がバインダー樹脂(A)に対して特定量以上含まれることが重要である。かかる構成要件を採用することによって、界面活性剤が組成物の分散安定性だけでなく、塗工物の撥水性および撥油性の向上にも寄与する結果、撥水性および撥油性の両方が向上すると考えられる。
【0087】
<繊維製品>
本発明の繊維製品は、前記の組成物から形成された塗膜を有するため、撥水性および撥油性に優れる。典型例において、繊維製品は、繊維材と前記繊維材の表面に組成物の塗膜を有する。
【0088】
繊維材としては、織物、編物、不織布、積層物、フェルト、フィラメント、トウ、ステープル、スライバー等いかなる形態をとってもよく、その素材例としては綿、麻、羊毛、絹、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、アクリル、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、スパンデックス等の有機繊維がある。
【0089】
繊維製品に本発明の組成物を塗布する方法としては、例えば、噴霧、ドクターナイフ法、ロールコート法、スプレー法、あるいは浸漬、含浸法のような加工方法が挙げられる。また、本発明の組成物が水性分散体である場合には水を含有するため、繊維製品に付着させた後に水を除去するために乾燥させることで本発明の繊維製品を最終製品とすることができる。
【0090】
本発明の組成物の繊維製品への付着量は、要求される撥水性の度合いに応じて適宜調整可能であるが、撥水性および撥油性と風合いの観点から、繊維製品100gに対して、組成物の合計付着量を0.01~20gとすることが好ましく、0.05~15gとすることがより好ましい。
【0091】
前記乾燥における温度条件は特に制限はないが、本発明の組成物を用いると、100~140℃の温和な条件により繊維製品に十分良好な撥水性および撥油性を発現させることができる。温度条件は140℃以上(好ましくは170℃まで)の高温処理であってもよい。本発明の繊維製品によれば、熱による繊維製品の変質が抑えられ、繊維製品の風合が柔軟となり、しかも温和な熱処理条件、すなわち低温キュア条件下で繊維製品に十分な撥水性および撥油性を付与できる。
十分な撥水性および撥油性を付与できる観点から、本発明の繊維製品は、本発明の組成物の塗工物であることが好ましい。
【0092】
本発明の組成物を塗布する対象として、例えば、衣類、傘、カバン、靴、カーテンやソファー等の繊維製品が挙げられる。本発明の組成物の塗布は例に挙げられた製品に限られたものではなく、撥水性および撥油性が求められる種々の繊維材に用いることができる。
【実施例0093】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されない。以下の記載において、「部」、「%」とあるのは、特に断りのない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を意味する。
【0094】
<材料>
(バインダー樹脂(A))
・(A-1):アクリルエマルジョン(商品名:mowinyl350、ジャパンコーティングレジン社製品)(固形分:45.00%)
・(A-2):アクリルエマルジョン(商品名:mowinyl6960、ジャパンコーティングレジン社製品)(固形分:44.70%)
・(A-3):アクリルエマルジョン(商品名:アクアテックスAC-3100、ジャパンコーティングレジン社製品)(固形分:45.00%)
【0095】
(非イオン性界面活性剤(B))
・(B-1):ステアリン酸系ショ糖脂肪酸エステル(商品名:リョートーシュガーエステルS-370、三菱ケミカル社製品)
・(B-2):ステアリン酸系ショ糖脂肪酸エステル(商品名:リョートーシュガーエステルS-770、三菱ケミカル社製品)
【0096】
(エステル型の非イオン性界面活性剤(B-3)):
以下の通り、調製した。フラスコに前記エステル型の非イオン性界面活性剤(B-1)8部、エステル型の非イオン性界面活性剤(B-1)以外の界面活性剤(D-2)としてベンザルコニウムクロリド1部、米ぬかワックス1部および超純水90部を混合し、90℃に加温して60分間攪拌した。その後、25℃まで氷浴にて速やかに冷却することにより、エステル型の非イオン性界面活性剤(B-3)の水性分散体組成物[平均粒子径(3.17μm)、(固形分:9.97%)]を得た。
【0097】
(エステル型の非イオン性界面活性剤(B-4)):
以下の通り、調製した。フラスコに前記エステル型の非イオン性界面活性剤(B-2)8部、エステル型の非イオン性界面活性剤(B-2)以外の界面活性剤(D-2)としてベンザルコニウムクロリド1部、米ぬかワックス1部および超純水90部を混合し、90℃に加温して60分間攪拌した。その後、25℃まで氷浴にて速やかに冷却することにより、エステル型の非イオン性界面活性剤(B-4)の水性分散体組成物[平均粒子径(13.67μm)、(固形分:11.70%)]を得た。
【0098】
(エステル型の非イオン性界面活性剤(B-5)):
以下の通り、調製した。フラスコに前記エステル型の非イオン性界面活性剤(B-1)9部、エステル型の非イオン性界面活性剤(B-1)以外の界面活性剤(D-1)としてステアリン酸ナトリウム1部、および超純水90部を混合し、90℃に加温して60分間攪拌した。その後、25℃まで氷浴にて速やかに冷却することにより、エステル型非イオン性界面活性剤(B-5)の水性分散体組成物[平均粒子径(0.34μm)、(固形分:10.00%)]を得た。
【0099】
(撥水剤(C))
・(C-1):商品名:Zelan R3(HUNTSUMAN社製品、バイオ化度60%、固形分:25.00%)
・(C-2):商品名:ユニダインXF-5005(ダイキン社製品、バイオ化度53%、固形分:30.30%)
【0100】
(架橋剤(E))
・(E-1):商品名:PHOBOL EXTENDER XAN(HUNTSUMAN社製品、固形分:10.00%)
【0101】
<実施例1~6、比較例1~7>
(組成物の調製)
表1および表2に示す各成分の組成比で配合することで、水性分散体の組成物を得た。
【0102】
(コーティング布の作製)
ポリエステル布(ポリエステルタフタ生地(縦・横75d・36f、縦密度120本/inch、横密度90本/inch))を用意した。ドデカンスルホン酸ナトリウム0.1%溶液を用いて80℃湯浴にてポリエステル布を10分間洗浄し、120℃で10分乾燥させた。その後、乾燥後の組成物量がポリエステル布に対して5~15%固着するように、各例の水性分散体組成物に浸漬させ、ラミネーター(0.2Mpa圧)で1往復させた。その後120℃で3分間加熱乾燥した後、更に165℃で2分間キュアを行うことでコーティング布を得た。得られたコーティング布について以下の方法で撥水試験および撥油試験を行い、以下の評価基準で撥水性、撥油性を評価した。結果を表1および表2に示す。
【0103】
(撥水性試験)
「AATCC test method118-20102」および「敷物(パイル)撥水・撥油・防汚性品質基準およびその試験方法」に準じて実施した。精製水とイソプロピルアルコール(キシダ化学社製品)を80:20容量比でよく混ぜ合わせた試験液を使用した。固液界面解析装置「DropMaster500」(協和界面科学社製品)を用いてコーティング布面からシリンジ先までが0.5cmとなる様に固定し、約10μLで直径5mm程度の液滴を落下させた。1分後、布上の液滴の形を目視観察して以下の評価基準で撥水性の評価を行った。
以下の目視観察による評価基準は、「AATCC test method118-20102」に記載された液滴形状を用いた評価基準である。
【0104】
(評価基準)
A:クリアな丸みのあるドロップ(液滴)
B:部分的に暗くなる丸みのあるドロップ
C:見た目のウイッキング(吸水)/完全な濡れ
D:完全な濡れ
【0105】
測定数はn=7回とした。n数による評価が異なる場合、多数になった方の評価を記載した。例えば、n=7測定に対し、A-B評価=n数4、A評価=n数3の場合、記載A-B+となり評価点を9点とする。+(プラス)はA-B評価よりも良好な結果があったことを表す。同様にn=7測定に対し、A-B評価=n数4、B評価=n数3の場合、記載の評価はA-B-とし評価点を7点にする。-(マイナス)はA-B評価よりも劣る評価結果があったことを表す。同じA-B評価であってもその中に異なるランクが存在させ優位性の確認ができる様評価点とする。評価結果の記載については、前記形状を元に点数表記する。評価点は以下に記載の通りである。合格基準はB評価の5点以上とした。
A 10点
A-B+ 9点
A-B 8点
A-B- 7点
B+ 6点
B 5点
B- 4点
B-C+ 3点
B-C 2点
B-C- 1点
C以下 0点
【0106】
(撥油性試験)
「AATCC test method118-20102」準じて実施した。試験液;Mineral oil, Nujol(富士フィルム和光社製品)を使用した。固液界面解析装置「DropMaster500」(協和界面科学社製品)を用いてコーティング布面からシリンジ先までが0.5cmとなる様に固定し、約10μLで直径5mm程度の液滴を落下させた。30秒後、布上の液滴の形を目視観察して以下の評価基準で撥油性の評価を行った。
以下の目視観察による評価基準は、「AATCC test method118-20102」に記載された液滴形状を用いた評価基準である。
【0107】
(評価基準)
A:クリアな丸みのあるドロップ(液滴)
B:部分的に暗くなる丸みのあるドロップ
C:見た目のウイッキング(吸水)/完全な濡れ
D:完全な濡れ
【0108】
測定数はn=7回とした。n数による評価が異なる場合、多数になった方の評価を記載した。例えば、n=7測定に対し、A-B評価=n数4、A評価=n数3の場合、記載A-B+となり評価点を9点とする。+(プラス)はA-B評価よりも良好な結果があったことを表す。同様にn=7測定に対し、A-B評価=n数4、B評価=n数3の場合、記載の評価はA-B-とし評価点を7点にする。-(マイナス)はA-B評価よりも劣る評価結果があったことを表す。同じA-B評価であってもその中に異なるランクが存在させ優位性の確認ができる様評価点とする。評価結果の記載については、前記形状を元に点数表記する。評価点を以下に記載の通りであり、合格基準はB評価の5点以上とする。
【0109】
A 10点
A-B+ 9点
A-B 8点
A-B- 7点
B+ 6点
B 5点
B- 4点
B-C+ 3点
B-C 2点
B-C- 1点
C以下 0点
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
表1および表2中、()内の数値は各成分の固形分の重量部を意味する。
【0113】
実施例1~7では、撥水性および撥油性が良好であった。比較例1では、撥水性および撥油性が悪かった。比較例2~5では、撥油性が悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の組成物は、繊維材に対する撥水性および撥油性に優れる。適用例は何ら限定されず、織物、編物、不織布、積層物、フェルト、フィラメント、トウ、ステープル、スライバー等の種々の繊維材等が挙げられる。その素材としては綿、麻、羊毛、絹、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、アクリル、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、スパンデックス等の有機繊維材の撥水性および撥油性を有するコーティング剤として非常に有効であり、産業上きわめて重要である。