(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158776
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】骨材抽出装置及び骨材抽出方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/11 20170101AFI20241031BHJP
G01N 23/046 20180101ALI20241031BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G06T7/11
G01N23/046
G01N33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074294
(22)【出願日】2023-04-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1) 発行日 2022年9月19日 刊行物名 第47回 複合材料シンポジウム 予稿論文 発行者 一般社団法人 日本複合材料学会 *参加者専用パスワードよりWeb公開 (2) 公開日 2022年9月21日 集会名、開催場所 第47回 複合材料シンポジウム (会期:2022年9月20日~9月21日) 福岡県 二日市温泉 大観荘 (福岡県筑紫野市湯町1-12-1) 主催者 一般社団法人 日本複合材料学会
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】長尾 莉希
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 航圭
【テーマコード(参考)】
2G001
5L096
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001HA07
2G001HA14
2G001KA01
2G001LA03
2G001LA20
5L096AA09
5L096BA18
5L096DA01
5L096FA02
5L096FA06
5L096GA10
5L096MA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】骨材の形状や分布を正確に特定することが可能な骨材抽出装置及び骨材抽出方法を提供する。
【解決手段】骨材抽出装置Aは、X線CT装置が取得する骨材とセメントペースト母材とからなるモルタル・コンクリート試験体のX線CT画像に、k-means法に基づくクラスタリング処理、モルフォロジー変換処理、領域解放処理及び動的輪郭拡張処理を施すことにより骨材抽出画像を生成する画像処理部(記憶部2、操作部3及び演算部4)を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材とセメントとを含むモルタル・コンクリート試験体のX線CT画像を取得する取得部と、
前記X線CT画像にk-means法に基づくクラスタリング処理、モルフォロジー変換処理、領域解放処理及び動的輪郭拡張処理を施すことにより骨材抽出画像を生成する画像処理部と
を備える骨材抽出装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記クラスタリング処理の前処理としてエントロピーフィルタ処理を前記X線CT画像に施す請求項1に記載の骨材抽出装置。
【請求項3】
前記モルフォロジー変換処理は、オープニング処理及びクロージング処理である請求項1又は2に記載の骨材抽出装置。
【請求項4】
骨材とセメントとを含むモルタル・コンクリート試験体のX線CT画像に、k-means法に基づくクラスタリング処理を施す第1工程と、
前記第1工程の処理結果にモルフォロジー変換処理を施す第2工程と、
前記第2工程の処理結果に領域解放処理を施す第3工程と、
前記第3工程の処理結果に動的輪郭拡張処理を施す第4工程と
を有する骨材抽出方法。
【請求項5】
前記クラスタリング処理の前処理としてエントロピーフィルタ処理を前記X線CT画像に施す請求項4に記載の骨材抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨材抽出装置及び骨材抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの圧縮強度とその破壊挙動は、コンクリート内部に存在する骨材の形状や寸法,骨材とセメントペーストの間に形成される脆弱部(遷移体)の影響を大きく受けることが報告されている。骨材の分布やその形状を把握することはコンクリート構造物の破壊挙動を予測する際に重要となるため,コンクリート構造物の内部を可視化することが期待されている。
【0003】
物体の内部を非破壊で可視化する手法として、X線CT(Computed Tomography、コンピュータ断層撮影)法が知られている。X線CT法によれば、物体の内部を非破壊で可視化できるだけではなく、数値データであるCT値(輝度値)を用いた定量的な解析が可能になる。X線CT法を用いることで物体の二次元の断面画像を得ることができる。
【0004】
下記特許文献1には、供試体に中性子線を照射し、供試体を透過して可視化される透過画像を撮影し、撮影した透過画像から読み取れる供試体の含水状態を評価する非破壊検査方法について記載されている。また、下記特許文献2には、セメント質硬化体に対してX線CT法を適用することによりセメント質硬化体の内部における密度の分布を示す画像を取得し、この画像を分析することにより密度が相対的に大きい部分を、白華の発生の可能性が高い部分として評価する評価方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-174255号公報
【特許文献2】特開2021-165722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、X線CT法によって得られるコンクリート構造物の断面画像のうち、骨材が表れる画像領域では、他の画像領域よりも輝度が相対的に高い。そこで、断面画像に対して閾値を設定し、その値を境界として二値化して骨材の領域を分離することが考えられる。そして、骨材の領域を表す断面画像を順次重ね合わせることで、骨材の領域を三次元的に観察することができる。
【0007】
しかしながら、セメント側の領域における輝度値のばらつきや、アーティファクトと呼ばれるノイズのために、単に断面画像を二値化するだけでは、骨材の領域を他の領域から十分に分離できない場合がある。そのため、骨材の形状や分布が正確に特定されないという問題点がある。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、骨材の形状や分布を正確に特定することが可能な骨材抽出装置及び骨材抽出方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、骨材抽出装置に係る第1の解決手段として、骨材とセメントとを含むモルタル・コンクリート試験体のX線CT画像を取得する取得部と、前記X線CT画像にk-means法に基づくクラスタリング処理、モルフォロジー変換処理、領域解放処理及び動的輪郭拡張処理を施すことにより骨材抽出画像を生成する画像処理部とを備える、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、骨材抽出装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記画像処理部は、前記クラスタリング処理の前処理としてエントロピーフィルタ処理を前記X線CT画像に施す、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、骨材抽出装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記モルフォロジー変換処理は、オープニング処理及びクロージング処理である、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、骨材抽出方法に係る第1の解決手段として、骨材とセメントとを含むモルタル・コンクリート試験体のX線CT画像に、k-means法に基づくクラスタリング処理を施す第1工程と、前記第1工程の処理結果にモルフォロジー変換処理を施す第2工程と、前記第2工程の処理結果に領域解放処理を施す第3工程と、前記第3工程の処理結果に動的輪郭拡張処理を施す第4工程とを有する、という手段を採用する。
【0013】
本発明では、骨材抽出方法に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記クラスタリング処理の前処理としてエントロピーフィルタ処理を前記X線CT画像に施す、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、骨材の形状や分布を正確に特定することが可能な骨材抽出装置及び骨材抽出方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る骨材抽出装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る骨材抽出方法を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施形態における画像処理結果を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る骨材抽出装置Aは、骨材抽出プログラム(アプリケーションプログラム)が搭載された汎用コンピュータであり、
図1に示すように通信部1、記憶部2、操作部3、演算部4及び表示部5を備える。
【0017】
なお、これら通信部1、記憶部2、操作部3、演算部4及び表示部5のうち、通信部1は、本発明の取得部に相当する。また、記憶部2、操作部3及び演算部4は、本発明の画像処理部を構成している。詳細については後述するが、記憶部2、操作部3及び演算部4は、協働することにより、X線CT画像にk-means法に基づくクラスタリング処理、モルフォロジー変換処理、領域解放処理及び動的輪郭拡張処理を施すことにより骨材抽出画像Grを生成する。
【0018】
通信部1は、外部のX線CT装置と電気的に接続され、当該X線CT装置と通信を行うことによりX線CT画像G0を取得する。X線CT装置は、周知のX線CT法に基づいて対象物のX線CT画像Gxを生成する。本実施形態における対象物は、砂や石等の骨材を含んだモルタル・コンクリートの試験体である。
【0019】
すなわち、本実施形態におけるX線CT装置は、モルタル・コンクリート試験体の材料(骨材及びセメント等)に応じてX線の吸収量が異なることを利用した撮像装置である。また、本実施形態におけるX線CT画像Gxは、X線CT装置が撮像したモルタル・コンクリート試験体の断面画像であり、モルタル・コンクリート試験体における骨材部とセメント部とで明度(輝度)が異なる白黒画像である。通信部1は、演算部4から入力される画像取得指示に基づいてモルタル・コンクリート試験体のX線CT画像GxをX線CT装置から取得し、このX線CT画像Gxを演算部4に出力する。
【0020】
記憶部2は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等、複数の記憶装置からなり、上述した骨材抽出プログラムを記憶すると共に演算部4から入力されたモルタル・コンクリート試験体のX線CT画像Gxを記憶する。また、この記憶部2は、演算部4による骨材抽出プログラムの実行過程で生成される各種のデータや画像を一時的に記憶すると共に、これらデータや画像を演算部4からの読出要求に応じて当該演算部4に提供する。
【0021】
操作部3は、キーボードやマウス等によって構成されており、操作者の指示(操作指示)を受け付けて演算部4に出力する。この操作指示は、例えば骨材抽出プログラムの実行開始指示や骨材抽出プログラムの実行結果(モルタル・コンクリート試験体の骨材抽出画像Gr)の出力指示である。操作者は、このような操作部3を手動操作することによって、自身の指示を操作部3つまり骨材抽出装置Aに入力する。
【0022】
演算部4は、所定のOS(Operating System:基本ソフト)上で骨材抽出プログラム(アプリケーションプログラム)を実行することによりモルタル・コンクリート試験体の骨材抽出画像Grを生成する。この演算部4は、骨材抽出プログラムの実行過程で生成される各種のデータや画像を記憶部2に出力して一時的に記憶させる。なお、骨材抽出プログラムに基づく演算部4の演算処理については、骨材抽出装置Aの動作として後述する。
【0023】
また、この演算部4は、骨材抽出プログラムの実行結果であるモルタル・コンクリート試験体の骨材抽出画像Grを表示部5に出力する。さらに、この演算部4は、操作部3から骨材抽出画像Grの外部機器への送信指示が入力された場合には、モルタル・コンクリート試験体の骨材抽出画像Grを通信部1に出力して外部機器に送信させる。
【0024】
表示部5は、演算部4から入力されたモルタル・コンクリート試験体の骨材抽出画像Grを表示する。すなわち、表示部5は、演算部4から入力されるモルタル・コンクリート試験体の骨材抽出画像Grを画像表示する。このような表示部5は、例えば液晶表示装置である。
【0025】
次に、本実施形態に係る骨材抽出装置Aの動作つまり骨材抽出装置Aを用いた骨材抽出方法について、
図2及び
図3を参照して詳しく説明する。
【0026】
この骨材抽出装置Aでは、演算部4が骨材抽出プログラムに基づいて
図2に示す一連の処理を実行することにより、最終的な成果物であるモルタル・コンクリート試験体の骨材抽出画像Grを生成する。
【0027】
最初に、演算部4は、操作部3から骨材抽出プログラムの実行指示が入力されると、当該骨材抽出プログラムに基づいてX線CT画像Gxの取得指示を通信部1に出力する。すなわち、演算部4は、X線CT画像Gxの取得指示を通信部1に出力することによってモルタル・コンクリート試験体のX線CT画像Gxを取得する(ステップS1)。
【0028】
通信部1は、演算部4からX線CT画像Gxの取得指示が入力されると、X線CT装置に対してX線CT画像Gxの送信要求を送信する。X線CT装置は、この送信要求に応答じて通信部1に対してモルタル・コンクリート試験体のX線CT画像Gxを送信する。そして、通信部1は、X線CT装置から受信したモルタル・コンクリート試験体のX線CT画像Gxを演算部4に出力する。
【0029】
演算部4は、モルタル・コンクリート試験体のX線CT画像Gxを記憶部2に一旦記憶させた上で記憶部2から読み出し、以下の4つの画像処理を順次施す。すなわち、第1番目の画像処理はフィルタ処理(ステップS2)であり、第2番目の画像処理はk-meansクラスタリング処理(ステップS3)であり、第3番目の画像処理はモルフォロジー変換処理(ステップS4)であり、第4番目の画像処理は領域解放処理(ステップS5)であり、第5番目つまり最後 の画像処理は動的輪郭拡張処理(ステップS6)である。
【0030】
ここで、上記k-meansクラスタリング処理(ステップS3)は、本実施形態に係る骨材抽出方法の第1工程に相当する。また、上記モルフォロジー変換処理(ステップS4)は、本実施形態に係る骨材抽出方法の第2工程に相当する。また、上記領域解放処理(ステップS5)は、本実施形態に係る骨材抽出方法の第3工程に相当する。さらに、上記動的輪郭拡張処理(ステップS5)は、本実施形態に係る骨材抽出方法の第4工程に相当する。
【0031】
すなわち、k-meansクラスタリング処理(第1工程)は、骨材とセメントとを含むモルタル・コンクリート試験体のX線CT画像に、k-means法に基づくクラスタリング処理を施す画像処置工程である。また、モルフォロジー変換処理(第2工程)は、第1工程の処理結果にモルフォロジー変換処理を施す画像処理工程である。また、領域解放処理(第3工程)は、第2工程の処理結果に領域解放処理を施す画像処理工程である。さらに、動的輪郭拡張処理(第4工程)は、第3工程の処理結果に動的輪郭拡張処理を施す画像処理工程である。
【0032】
フィルタ処理(ステップS2)は、entropyfilt関数を用いたエントロピーフィルタ処理、ガウシアンフィルタを用いた高周波ノイズ低減処理及びコントラスト強調処理である。このフィルタ処理では、エントロピーフィルタ処理、高周波ノイズ低減処理及びコントラスト強調処理の順でモルタル・コンクリート試験体のX線CT画像Gxにフィルタ処理(ステップS2)を施した。
【0033】
ここで、上記エントロピーフィルタ処理は、X線CT画像Gxにおける骨材の輝度値のばらつきが少ないこと利用したものである。.エントロピーフィルタでは、画像中のある点に着目した時、その画素の周囲の輝度値のばらつきが大きな場合、その画素を白に変換し、逆に輝度値のばらつきが小さく均質な場合には、その画素は黒に変換される。したがって、モルタル・コンクリート試験体のX線CT画像Gxにエントロピーフィルタ処理を施すと、骨材部は比較的均質なため黒に変換され、セメント部は輝度値のばらつきが比較的大きいため白に変換される。
【0034】
図3(a)は、このようなフィルタ処理(ステップS2)の結果を示す第1中間画像G1である。この第1中間画像G1によれば、フィルタ処理(ステップS2)によって周囲と比較し均一な領域のみを抽出することができるため、骨材を大まかに抽出できていることが分かる。
【0035】
k-meansクラスタリング処理(ステップS3)は、教師なし機械学習に分類されるAI画像処理のひとつであり、与えられた画像データを事前に指定するk個のクラスタに分割する画像処理である。このk-meansクラスタリング処理(ステップS3)は、エントロピーフィルタ処理等のフィルタ処理(ステップS2)が前処理としてモルタル・コンクリート試験体のX線CT画像Gxに施されているので、クラスタリングが容易である。
【0036】
モルフォロジー変換処理(ステップS4)は、形状ベースのイメージ処理の総称であり、イメージ内のオブジェクトの膨張や収縮を組み合わせることにより、構造表面の平滑化や構造内の塗りつぶしを行う画像処理である。上記膨張とは、イメージ内のオブジェクトの境界にpixelを加え、オブジェクトを拡張させる処理である。また、上記収縮は、逆にオブジェクトの境界からpixelを削除する処理である。
【0037】
上記膨張及び収縮の組み合わせによる画像処理として、モルフォロジーオープニングとモルフォロジークロージングが知られている。本実施形態におけるモルフォロジー変換処理(ステップS4)では、k-meansクラスタリング処理(ステップS3)に続いてオープニング処理とクロージング処理とを施すことにより、第1中間画像G1における細かなオブジェクトの除去とオブジェクトの穴埋めを行っている。
【0038】
モルフォロジーオープニングは、収縮後に膨張を行う処理であり、画像内の細かなオブジェクトを除去することができる。例えば、収縮と膨張をそれぞれ2回行うモルフォロジーオープニング(収縮→収縮→膨張→膨張)では、大きさが4 pixel以下のオブジェクトは、初めの2回の収縮処理により消えてしまい、その後2回の膨張処理では復元されないので完全に除去される。
【0039】
これとは逆に、大きさが4 pixel以上のオブジェクトは、オープニング処理を実行しても除去されることはないが,、理後は境界近傍の細かなpixelの配置情報は失われて滑らかな境界となる。すなわち、モルフォロジークロージングは、膨張後に収縮を行う処理であり、オブジェクト内部に穴がある場合の穴埋め効果と境界を滑らかにする効果がある。
【0040】
図3(b)は、このようなモルフォロジー変換処理(ステップS4)の結果を示す第2中間画像G2及び第3中間画像G3である。これらの第2中間画像G2及び第3中間画像G3によれば、モルフォロジー変換処理(ステップS4)によってノイズが効果的に除去されていることが分かる。
【0041】
領域解放処理(ステップS5)は、画像内のオブジェクトの体積を基準として除去を行うイメージ処理の総称である。領域解放処理(ステップS5)は、k-meansクラスタリング処理(ステップS3)の直後に行うこともできるが、この処理は除去したいオブジェクトが多くなるほど計算時間が長くなるため、事前にモルフォロジー変換処理(ステップS4)を行うことで効率的に計算している。
【0042】
図3(c)は、領域解放処理(ステップS5)の結果を示す第3中間画像G3である。モルフォロジー変換処理(ステップS4)の結果に対して2.0×105以下のpixel要素の除去を行っており、この第3中間画像G3によれば、領域解放処理(ステップS5)によってモルフォロジー変換処理(ステップS4)では除去しきれなかったノイズが効果的に除去されていることが分かる。
【0043】
動的輪郭拡張処理(ステップS6)は、動的輪郭拡張法に基づく画像処理である。動的輪郭拡張法は、「snakes」 とも呼ばれ、反復的な領域拡張を行うセグメンテーションアルゴリズムである。この動的輪郭拡張法では、初めにセグメンテーションを行う画像とセグメンテーションに使用する初期輪郭を指定する。
【0044】
そして、初期輪郭を周囲に膨張させる処理を行うが、この膨張の際にセグメンテーションを行う画像内に輝度値の大きな変化がある場合には膨張を行わないようにする。動的輪郭拡張法では、このような処理を指定した回数分だけ反復的に実行することにより、画像内の構造をセグメント化することができる。
【0045】
本実施形態における動的輪郭拡張処理(ステップS5)では、動的輪郭拡張法を用いることにより、第3中間画像G3における骨材部分の輪郭を抽出した。
図3(d)は、動的輪郭拡張処理(ステップS5)の結果として得られた骨材抽出画像Grである。この骨材抽出画像Grによれば、第3中間画像G3における骨材部分のみを高精度に抽出することができた。
【0046】
このような本実施形態によれば、モルタル・コンクリート試験体のX線CT画像Gxに対してフィルタ処理(ステップS2)、k-meansクラスタリング処理(ステップS3)、モルフォロジー変換処理(ステップS4)及び動的輪郭拡張処理(ステップS5)の順で画像処理を順次施すので、モルタル・コンクリート試験体に含まれる骨材を他の材料に対してより明確に抽出することができる。したがって、本実施形態によれば、骨材の形状や分布を正確に特定することが可能な骨材抽出装置A及び骨材抽出方法を提供することが可能である。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、モルタル・コンクリート試験体のX線CT画像Gxに対してフィルタ処理(ステップS2)、k-meansクラスタリング処理(ステップS3)、モルフォロジー変換処理(ステップS4)及び動的輪郭拡張処理(ステップS5)の順で画像処理を順次施したが、本発明はこれに限定されない。例えば、k-meansクラスタリング処理(ステップS3)については必要に応じて省略してもよい。
【0048】
(2)上記実施形態では、フィルタ処理(ステップS2)としてエントロピーフィルタ処理、高周波ノイズ低減処理及びコントラスト強調処理をモルタル・コンクリート試験体のX線CT画像Gxに施したが、本発明はこれに限定されない。例えば、フィルタ処理(ステップS2)としてエントロピーフィルタ処理のみをモルタル・コンクリート試験体のX線CT画像Gxに施してもよい。
【符号の説明】
【0049】
A 骨材抽出装置
1 通信部
2 記憶部
3 操作部
4 演算部
5 表示部