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特開2024-158796加熱装置、定着装置及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158796
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】加熱装置、定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074325
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】山口 嘉紀
(72)【発明者】
【氏名】吉永 洋
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 隆
(72)【発明者】
【氏名】松田 諒平
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA03
2H033BA05
2H033BA11
2H033BA12
2H033BB06
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB29
2H033BB30
2H033BE00
(57)【要約】
【課題】遮蔽部材の温度上昇を抑制する。
【解決手段】第一回転体21と、第一回転体21に対向するように配置される第二回転体22と、第一回転体21を加熱する加熱源23と、第一回転体21の内側に設けられ、第一回転体21と第二回転体22との間にニップ部Nを形成するニップ形成部材24と、加熱源23から放射される輻射熱を第一回転体21へ反射する反射部材27と、加熱源23から第一回転体21への輻射熱を遮蔽する遮蔽部材28と、を備える加熱装置であって、ニップ形成部材24は、第一回転体21のニップ部Nにおける内周面に対して加圧されるニップ加圧面240を有し、遮蔽部材28は反射部材27に接触し、反射部材27はニップ加圧面240に接触する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一回転体と、
前記第一回転体に対向するように配置される第二回転体と、
前記第一回転体を加熱する加熱源と、
前記第一回転体の内側に設けられ、前記第一回転体と前記第二回転体との間にニップ部を形成するニップ形成部材と、
前記加熱源から放射される輻射熱を前記第一回転体へ反射する反射部材と、
前記加熱源から前記第一回転体への輻射熱を遮蔽する遮蔽部材と、
を備える加熱装置であって、
前記ニップ形成部材は前記第一回転体の前記ニップ部における内周面に対して加圧されるニップ加圧面を有し、
前記遮蔽部材は前記反射部材に接触し、
前記反射部材は前記ニップ加圧面に接触することを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
第一回転体と、
前記第一回転体に対向するように配置される第二回転体と、
前記第一回転体を加熱する加熱源と、
前記第一回転体の内側に設けられ、前記第一回転体と前記第二回転体との間にニップ部を形成するニップ形成部材と、
前記ニップ部における前記第一回転体の内周面と前記ニップ形成部材との間に配置され、前記ニップ形成部材よりも熱伝導率が高い高熱伝導部材と、
前記加熱源から放射される輻射熱を前記第一回転体へ反射する反射部材と、
前記加熱源から前記第一回転体への輻射熱を遮蔽する遮蔽部材と、
を備える加熱装置であって、
前記遮蔽部材は前記反射部材に接触し、
前記反射部材は前記高熱伝導部材に接触することを特徴とする加熱装置。
【請求項3】
前記加熱源は、前記第一回転体の長手方向中央部側を加熱する中央加熱源と、前記第一回転体の長手方向両端部側を加熱する端部加熱源とを有し、
前記遮蔽部材は、前記中央加熱源よりも前記端部加熱源に対して近い部分において前記反射部材に接触する請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記反射部材の熱伝導率が200W/m・k以上である請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記反射部材及び前記遮蔽部材の一方は他方の一部を挿入可能な孔部を有し、
前記孔部に前記他方の一部が挿入されて、前記反射部材と前記遮蔽部材が互いに接触する請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記第一回転体の長手方向両端部の内周面を回転可能に保持する回転体保持部材と、
前記回転体保持部材に付着する液状又は半固体状の潤滑性を有する物質を備える請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の加熱装置を用いて未定着画像を担持する記録媒体を加熱し、前記未定着画像を前記記録媒体に定着させることを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の加熱装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機又はプリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱装置の一例として、用紙などの記録媒体に転写された未定着画像を加熱して未定着画像を記録媒体に定着させる定着装置が知られている。
【0003】
一般的に、定着装置は、互いに接触してニップ部を形成する一対の回転体と、これらの回転体のうちの少なくとも一方を加熱する加熱源を備えている。未定着画像を担持する用紙が回転体同士の間(ニップ部)に進入すると、用紙上の未定着画像が一対の回転体によって加熱及び加圧されて定着される。
【0004】
用紙がニップ部を通過する際、回転体の熱が用紙に奪われて消費される。一方で、用紙が通過しない非通紙領域においては、回転体の熱が用紙によって奪われないため、連続通紙した場合などに、非通紙領域における熱が消費されず、回転体の温度が過剰に昇温するといった課題がある。
【0005】
このような温度上昇を改善するため、従来では、加熱源から回転体へ放射される輻射熱を遮蔽する遮蔽部材を配置する構成が提案されている(例えば、特許文献1:特開2013-164473号公報参照)。遮蔽部材によって非通紙領域における輻射熱を遮蔽することにより、回転体の温度が上昇しにくくなるので、過剰な温度上昇を抑制することができる。
【0006】
しかしながら、遮蔽部材は加熱源からの輻射熱に曝されるため、遮蔽部材自体が温度上昇するといった課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、遮蔽部材の温度上昇を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、第一回転体と、前記第一回転体に対向するように配置される第二回転体と、前記第一回転体を加熱する加熱源と、前記第一回転体の内側に設けられ、前記第一回転体と前記第二回転体との間にニップ部を形成するニップ形成部材と、前記加熱源から放射される輻射熱を前記第一回転体へ反射する反射部材と、前記加熱源から前記第一回転体への輻射熱を遮蔽する遮蔽部材と、を備える加熱装置であって、前記ニップ形成部材は、前記第一回転体の前記ニップ部における内周面に対して加圧されるニップ加圧面を有し、前記遮蔽部材は前記反射部材に接触し、前記反射部材は前記ニップ加圧面に接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、遮蔽部材の温度上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る定着装置の斜視図である。
図4】本発明の第一実施形態に係るニップ形成部材、高熱伝導部材、反射部材及び遮蔽部材を分離した状態を示す斜視図である。
図5】ハロゲンヒータの発熱部と遮蔽部材との配置を説明するための図である。
図6】反射部材と遮蔽部材の接触部の配置を説明するための図である。
図7】本発明の第二実施形態に係るニップ形成部材、高熱伝導部材、反射部材及び遮蔽部材を分離した状態を示す斜視図である。
図8】本発明の第二実施形態に係る反射部材と遮蔽部材とが組み付けられた状態を示す斜視図である。
図9】本発明の第三実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
図10】潤滑剤の温度上昇と、潤滑剤から生じる微粒子の発生濃度との関係を示すグラフである。
図11】サンプル容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付し、一度説明した後ではその説明を省略する。
【0012】
<画像形成装置の全体構成>
図1は、本発明の第一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。ここで、本明細書中における「画像形成装置」には、プリンタ、複写機、ファクシミリ、印刷機、又は、これらのうちの二つ以上を組み合わせた複合機などが含まれる。また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字及び図形などの意味を持つ画像を形成するだけでなく、パターンなどの意味を持たない画像を形成することも意味する。まず、図1を参照して、本発明の第一実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
【0013】
図1に示されるように、本発明の第一実施形態に係る画像形成装置1000は、画像形成部100と、定着部200と、記録媒体供給部300と、記録媒体排出部400を備えている。
【0014】
(画像形成部)
画像形成部100は、用紙などのシート状の記録媒体に画像を形成する部分である。画像形成部100には、4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkと、露光装置6と、転写装置8が設けられている。
【0015】
各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどの異なる色のトナー(現像剤)を収容している以外、基本的に同じ構成である。具体的に、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、静電潜像担持体2と、帯電部材3と、現像装置4と、クリーニング部材5などを備えている。
【0016】
静電潜像担持体2は、表面に静電潜像を担持する回転体である。静電潜像担持体2としては、例えば、図1に示されるようなドラム状の感光体のほか、無端ベルト状の感光体などが用いられる。
【0017】
帯電部材3は、静電潜像担持体2の表面を帯電させる部材である。帯電部材3としては、静電潜像担持体2の表面に電圧を印加して一様に帯電させることができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択可能である。具体的には、導電性又は半導電性の帯電ローラ、磁気ブラシ、ファーブラシ、フィルム、ゴムブレードなど接触式の帯電部材のほか、コロナ放電を利用した非接触式の帯電部材が挙げられる。
【0018】
現像装置4は、静電潜像担持体2の静電潜像に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する装置である。現像装置4は、静電潜像担持体2に対して接触又は近接して配置されるトナー担持体などを備えている。トナー担持体が、表面にトナーを担持しながら回転することにより、トナー担持体から静電潜像担持体2へトナーが供給される。
【0019】
クリーニング部材5は、静電潜像担持体2上に残留するトナー及びその他の異物を除去する部材である。クリーニング部材5としては、例えば、静電潜像担持体2の表面に接触するように配置されるクリーニングブレードなどが用いられる。静電潜像担持体2が回転すると、静電潜像担持体2上の残留トナー及び異物がクリーニング部材5によって除去される。
【0020】
露光装置6は、静電潜像担持体2の帯電面を露光して静電潜像を形成する装置である。露光装置6としては、静電潜像担持体2の帯電面に対して露光できる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択可能である。具体的には、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、LED光学系などの各種露光装置が挙げられる。
【0021】
転写装置8は、記録媒体に画像を転写する装置である。転写装置8は、中間転写ベルト11と、一次転写ローラ12と、二次転写ローラ13を備えている。中間転写ベルト11は、無端状のベルト部材であり、複数の支持ローラによって張架されている。一次転写ローラ12は、中間転写ベルト11の内側に4つ設けられている。各一次転写ローラ12が中間転写ベルト11を介して各静電潜像担持体2に接触することにより、中間転写ベルト11と各静電潜像担持体2との間に一次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11の外周面に接触し、二次転写ニップを形成している。
【0022】
(定着部)
定着部200は、記録媒体に画像を定着させる部分である。定着部200には、記録媒体を加熱して画像を記録媒体に定着させる定着装置20が設けられている。定着装置20は、互いに接触してニップ部を形成する一対の回転体19A,19Bなどを備えている。
【0023】
(記録媒体供給部)
記録媒体供給部300は、記録媒体を画像形成部100へ供給する部分である。記録媒体供給部300には、記録媒体としての用紙Pを収容する給紙カセット14と、給紙カセット14から用紙Pを送り出す給紙ローラ15が設けられている。以下、「記録媒体」を「用紙」として説明するが、「記録媒体」は紙(用紙)に限定されない。「記録媒体」は、紙(用紙)だけでなくOHPシート又は布帛、金属シート、プラスチックフィルム、あるいは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含む。また、「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙及びアート紙など)、トレーシングペーパなども含まれる。
【0024】
(記録媒体排出部)
記録媒体排出部400は、用紙Pを装置外へ排出する部分である。記録媒体排出部400には、用紙Pを排出する一対の排紙ローラ17と、排紙ローラ17によって排出された用紙Pを載置する排紙トレイ18が設けられている。
【0025】
<画像形成動作>
次に、図1を参照しつつ本実施形態に係る画像形成装置1000の画像形成動作について説明する。
【0026】
画像形成動作が開始されると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkの静電潜像担持体2及び転写装置8の中間転写ベルト11が回転を開始する。また、給紙ローラ15が、回転を開始し、給紙カセット14から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、一対のタイミングローラ16に接触することにより静止し、用紙Pに転写される画像が形成されるまで用紙Pの搬送が一旦停止される。
【0027】
各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、まず、帯電部材3によって、静電潜像担持体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント画像情報に基づいて、露光装置6が、各静電潜像担持体2の表面(帯電面)を露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して各静電潜像担持体2の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4がトナーを供給することにより、静電潜像がトナー画像として現像される。その後、各静電潜像担持体2上のトナー画像は、静電潜像担持体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に到達し、回転する中間転写ベルト11上に順次重なり合うように転写される。かくして、中間転写ベルト11上にフルカラーのトナー画像が形成される。なお、画像形成は、4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkを全て用いてフルカラー画像を形成する場合に限らず、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkのうち、いずれか一つを使用して単色画像を形成したり、いずれか2つ又は3つの作像ユニットを用いて2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。また、中間転写ベルト11へトナー画像が転写された後は、クリーニング部材5によって静電潜像担持体2上の残留トナーなどが除去される。
【0028】
中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、タイミングローラ16によって搬送されてきた用紙P上に転写される。そして、用紙Pは、定着装置20へと搬送され、互いに接触する一対の回転体19A,19Bの間(ニップ部)を通過する。このとき、用紙P及びトナー画像が一対の回転体19A,19Bによって加熱及び加圧されることにより、トナー画像が用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、記録媒体排出部400へ搬送され、排紙ローラ17によって排紙トレイ18へ排出される。以上のようにして一連の画像形成動作が終了する。
【0029】
<定着装置の基本構成>
続いて、本発明の第一実施形態に係る定着装置20の基本構成について説明する。
【0030】
図2に示されるように、本発明の第一実施形態に係る定着装置20は、一対の回転体19A,19Bのほか、ハロゲンヒータ23、ニップ形成部材24、支持部材25、高熱伝導部材26、反射部材27、遮蔽部材28、回転体保持部材29を備えている。
【0031】
一対の回転体19A,19Bは、第一回転体である定着ベルト21と、第二回転体である加圧ローラ22により構成される。
【0032】
定着ベルト21は、用紙Pの未定着画像担持面側(トナー画像T側)に配置される。定着ベルト21は、内側から順に、基材、弾性層、離型層などを有する無端状のベルトにより構成される。基材は、例えば、層厚が30~50μmであって、ニッケル、ステンレスなどの金属材料、あるいはポリイミドなどの樹脂材料により形成される。弾性層は、層厚が100~300μmであって、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴムなどのゴム材料により形成される。定着ベルト21が弾性層を有することにより、定着ベルト21の表面に微小な凹凸が形成されにくくなるため、用紙P上のトナー画像Tに熱が均一に伝わりやすくなる。離型層は、層厚が10~50μmであって、PFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)などの材料により構成される。定着ベルト21が、離型層を有していることにより、用紙P上のトナー画像Tに対する離型性が確保される。また、小型化及び低熱容量化を図る場合は、定着ベルト21の全体の厚さが1mm以下で、直径が30mm以下であることが好ましい。
【0033】
加圧ローラ22は、定着ベルト21の外周面に対向するように配置される。加圧ローラ22は、芯材と、芯材の外周面に設けられる弾性層と、弾性層の外周面に設けられる離型層などを有するローラにより構成される。芯材は、例えば、鉄などの金属材料により形成される。また、芯材は、中実の部材であるほか、中空の部材であってもよい。弾性層の材料としては、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。離型層は、例えば、PFA又はPTFEなどのフッ素樹脂により形成される。
【0034】
ハロゲンヒータ23は、赤外線(赤外光)を放射して輻射熱により定着ベルト21を加熱する輻射熱式の加熱源である。ハロゲンヒータ23から輻射熱が放射されると、定着ベルト21が内側から加熱される。なお、加熱源として、ハロゲンヒータ以外に、カーボンヒータなどの他の輻射熱式のヒータを用いてもよい。
【0035】
ニップ形成部材24は、定着ベルト21と加圧ローラ22との間にニップ部Nを形成する部材である。ニップ形成部材24は、定着ベルト21の内側に配置され、加圧ローラ22との間に定着ベルト21を挟んでニップ部Nを形成する。ニップ形成部材24は、耐熱温度が200℃以上の耐熱性部材により構成されることが好ましい。例えば、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、又は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの一般的な耐熱性樹脂が挙げられる。このような耐熱性材料を用いることにより、ニップ形成部材24の熱による変形を防止でき、ニップ部Nの形状を安定させることができる。なお、ニップ部Nの形状は、図2に示されるような平面状のほか、曲面状、あるいはそれ以外の形状であってもよい。
【0036】
支持部材25は、ニップ形成部材24を支持する部材である。支持部材25が、ニップ形成部材24を加圧ローラ22側とは反対側から支持することにより、加圧ローラ22からの加圧力によるニップ形成部材24の撓みが抑制され、均一な幅のニップ部Nが得られる。支持部材25の材料としては、剛性を確保するため、SUS又はSECCなどの鉄系金属材料が好ましい。
【0037】
高熱伝導部材26は、ニップ部Nにおける定着ベルト21の内周面とニップ形成部材24との間に介在し、熱の伝達を補助する部材である。高熱伝導部材26は、ニップ形成部材24よりも熱伝導率が高い部材により構成される。高熱伝導部材26がニップ形成部材24と定着ベルト21との間に介在することにより、ニップ部Nの長手方向に渡って熱を伝達し、ニップ部Nにおける温度ムラを抑制できる。一般的に、ニップ形成部材24は、定着ベルト21から支持部材25への熱伝達を抑制し、定着ベルト21の加熱を効果的に行えるようにするため、断熱性を有する樹脂材料などによって構成される。一方で、ニップ形成部材24が断熱性を有する部材により構成されると、ニップ部Nの熱が逃げにくくなるため、連続通紙した場合に非通紙領域における温度上昇が顕著になる虞がある。そのため、ニップ形成部材24と定着ベルト21との間に高熱伝導部材26を介在させ、非通紙領域の熱を通紙領域などに分散させることにより、非通紙領域における温度上昇を回避できるようになる。また、高熱伝導部材26によって非通紙領域における熱を通紙領域に移動させることができるため、加熱効率の向上も期待できる。
【0038】
高熱伝導部材26の材料としては、アルミニウム、銅などの熱伝導率の高い材料が好ましい。また、高熱伝導部材26に対する定着ベルト21の摺動性を向上させるため、高熱伝導部材26の定着ベルト21側の面に摺動性に優れる被覆層を形成してもよい。被覆層の材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、又は飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。また、このような樹脂に、ガラス繊維、カーボン、グラファイト、フッ化グラファイト、炭素繊維、二硫化モリブデン、フッ素樹脂などを混合してもよい。また、被覆層の材料として、二硫化モリブデン、ニッケル、ニッケルとフッ素樹脂の複合めっき、アルマイト、アルマイトに樹脂や金属を含浸したものを用いることも可能である。さらに、被覆層の材料として、炭化ケイ素セラミック、窒化ケイ素セラミック、アルミナセラミック、又はこれらと二硫化モリブデン、フッ素樹脂を混合したものを用いてもよい。また、アルミニウム又はアルミニウム合金により構成される高熱伝導部材26の表面に、被覆層としてアルマイト層を形成し、アルマイト層の微細孔に二次電界にて生成された二硫化モリブデンを充填してもよい。
【0039】
反射部材27は、ハロゲンヒータ23から放射される輻射熱を定着ベルト21に向けて反射する部材である。反射部材27は、輻射熱を反射するため、定着ベルト21の内側でハロゲンヒータ23に対向するように配置される。ハロゲンヒータ23から放射された輻射熱が反射部材27によって定着ベルト21へ反射されると、反射された輻射熱により定着ベルト21が効果的に加熱される。また、本実施形態においては、反射部材27が、ハロゲンヒータ23と支持部材25との間に配置されているため、支持部材25への不要な輻射熱の付与も抑制され、省エネルギー化も図れる。
【0040】
反射部材27は、支持部材25、遮蔽部材28に比べて、反射率の高い部材によって構成される。具体的に、反射部材27の反射率は、70%以上であり、90%以上であることが好ましい。なお、反射部材27の反射率の値は、分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製の紫外可視赤外分光光度計UH4150)を用いて、入射角を5°として測定した値である。
【0041】
遮蔽部材28は、ハロゲンヒータ23と定着ベルト21との間に介在し、ハロゲンヒータ23から定着ベルト21への輻射熱を遮蔽する部材である。遮蔽部材28は、遮蔽部28aと、遮蔽部28aの両側に配置される2つの固定部28cを有している。遮蔽部28aは、ハロゲンヒータ23と対向するように配置され、ハロゲンヒータ23から定着ベルト21への輻射熱を遮蔽する部分である。一方、2つの固定部28cは、定着ベルト21の回転方向における遮蔽部28aの上流側及び下流側に配置され、支持部材25に対して固定される部分である。このように、遮蔽部材28が上流側及び下流側の二箇所において支持部材25に固定されることにより、遮蔽部材28が安定して支持される。遮蔽部材28の材料としては、輻射熱を遮蔽できる材料であればよく、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレスなどの金属材料、又はセラミックなどの耐熱性を有する材料が好ましい。また、遮蔽部材28は、輻射熱を吸収又は反射する部材であってもよい。
【0042】
図3に示されるように、本実施形態においては、遮蔽部材28が、通紙可能な最大幅の用紙Pが通過する領域(最大記録媒体通過領域)W1よりも外側の非通紙領域W2にそれぞれ配置されている。これにより、非通紙領域W2における定着ベルト21への輻射熱が遮蔽されるため、非通紙領域W2における定着ベルト21の温度上昇を抑制できる。一方、遮蔽部材28が配置されていない通紙領域W1においては、定着ベルト21に対して輻射熱が放射されるため、定着ベルト21の良好な加熱が確保される。
【0043】
ハロゲンヒータ23は、その特性上、発熱領域の端部において発熱量が低下する傾向にあるため、発熱量の低い発熱領域の端部が通紙領域内に配置されていると、通紙領域の幅方向端部において用紙に付与される熱量が不足する虞がある。そのため、従来から、発熱領域の端部を通紙領域よりも外側に配置し、通紙領域の幅方向端部における熱量不足を解消する対策が採られている。しかしながら、発熱領域の端部が通紙領域よりも外側の非通紙領域にあると、連続通紙時に発熱領域の端部から生じる輻射熱によって定着ベルト21の非通紙領域が過剰に温度上昇する虞がある。そこで、本実施形態のように、非通紙領域において輻射熱を遮蔽する遮蔽部材28を設けることにより、非通紙領域における定着ベルト21の過剰な温度上昇を抑制できるようになる。また、通紙領域においては、定着ベルト21の良好な加熱が確保されるようになる。なお、遮蔽部材28は、輻射熱を完全に遮蔽する場合のほか、輻射熱の一部を遮蔽する場合であってもよい。
【0044】
また、図3に示されるように、定着ベルト21は、その長手方向Xの両端部側に配置される一対の回転体保持部材29によって回転可能に保持される。なお、ここでいう「長手方向」とは、定着ベルト21の回転方向に対して直交し、かつ、定着ベルト21の外周面に沿った方向を意味する。すなわち、「長手方向」は、図3中の矢印Xにて示される方向であり、加圧ローラ22の長手方向又は回転軸方向、あるいは、ニップ部Nを通過する用紙の幅方向(用紙搬送方向とは交差する方向)と同じ方向ある。
【0045】
回転体保持部材29は、断面C字状の保持部29aと、規制部29bと、固定部29cを有する。保持部29aは、定着ベルト21の端部内に挿入される部分である。保持部29aが定着ベルト21の内に挿入されることにより、定着ベルト21が保持部29aによって回転可能に保持される。規制部29bは、保持部29a及び定着ベルト21よりも大きい外径に形成されている。これにより、定着ベルト21に長手方向Xの寄りが生じた場合は、定着ベルト21の端部が規制部29bに突き当たることによって、定着ベルト21の長手方向Xの寄りが規制される。固定部29cは、定着装置20の側板などのフレーム部材に固定される部分である。固定部29cがフレーム部材に固定されることにより、定着ベルト21が回転体保持部材29を介して回転可能に支持される。
【0046】
本発明の第一実施形態に係る定着装置20は、次のように動作する。
【0047】
画像形成動作が開始されると、加圧ローラ22が図2中の矢印方向へ回転を開始し、これに伴って定着ベルト21が従動回転する。また、ハロゲンヒータ23から輻射熱が放射され、定着ベルト21が加熱される。そして、定着ベルト21の温度が画像を定着可能な温度になると、未定着画像(トナー画像T)を担持する用紙Pが、定着ベルト21と加圧ローラ22との間(ニップ部N)へ搬送される。これにより、用紙P及び未定着画像が加熱及び加圧され、未定着画像が用紙Pに定着される。その後、用紙Pは、ニップ部Nを通過し、定着装置20から排出される。
【0048】
<遮蔽部材の温度上昇による課題>
ここで、遮蔽部材28が温度上昇することによる課題について説明する。
【0049】
遮蔽部材28は、ハロゲンヒータ23からの輻射熱を遮蔽して定着ベルト21の温度上昇を抑制する一方で、遮蔽部材28自体がハロゲンヒータ23からの輻射熱に曝されるため高温になる。また、遮蔽部材28が温度上昇すると、遮蔽部材28の近くに配置される回転体保持部材29が遮蔽部材28の温度上昇の影響を受けるため、回転体保持部材29が温度上昇する。
【0050】
そして、回転体保持部材29が温度上昇すると、回転体保持部材29に付着する潤滑剤が温度上昇し、微粒子が発生する虞がある。この潤滑剤は、回転体保持部材29に対する定着ベルト21の摺動性を向上させるために、回転体保持部材29に付与されたものである。潤滑剤としては、シリコーンオイル、シリコーングリース、フッ素オイル、フッ素グリースなどの液状又は半固体状の潤滑性を有する物質が用いられる。このような潤滑剤が温度上昇すると、潤滑剤の低分子の一部の成分が揮発し、揮発した成分が大気で冷やされて凝集することにより、微粒子が発生する。
【0051】
近年、環境問題に対する意識の高まりから、製品から放出される微粒子の発生を抑制する対策が望まれており、画像形成装置においても微粒子の発生が少ない製品の開発が求められている。特に、欧州においては、環境への関心が非常に高く、電子写真プロセスを用いた複写機、複合機、プリンタなどの画像形成装置においても、画像形成時に発生する揮発性有機化合物(VOC)、オゾン、ダスト、微粒子などに対する様々な認定基準が存在する。例えば、ドイツ政府の研究機関においては、「ブルーエンジェルマーク」というエコラベル制度があり、認証を受けた製品及びサービスにのみラベルの使用が認められる。「ブルーエンジェルマーク」の認証には、様々な試験をクリアする必要があるが、特に微粒子の試験が非常に厳しい。具体的には、画像形成装置から発生する5.6nm以上560nm以下の微粒子を粒子計測器FMPS(Fast Mobility Particle Sizer)で計測した際に得られる微粒子の数が、3.5×1011個/10分より少ないことが求められ、将来的にはさらに厳しい基準値になることが予想される。なお、本明細書中の「微粒子」は、ブルーエンジェルの微粒子基準に準拠した装置及び条件により測定される微粒子及び超微粒子であって、粒径が5.6nm以上560nm以下の粒子を意味する。以下、「微粒子」を「FP/UFP」と称する。
【0052】
図10は、潤滑剤の温度上昇と、潤滑剤から生じるFP/UFPの発生濃度(1cmあたりの微粒子の発生個数)との関係を示すグラフである。図10中、実線がフッ素グリースから生じるFP/UFPの個数濃度を示し、一点鎖線がシリコーンオイルから生じるFP/UFPの個数濃度を示す。
【0053】
図10に示されるFP/UFPの発生濃度は、フッ素グリース及びシリコーンオイルをJIS A 1901に準拠した1立米チャンバー(換気回数:5回)内で加熱することにより得られた値である。フッ素グリース及びシリコーンオイルを収容するサンプル容器としては、図11に示される50mm×50mm×5mmのアルミ板90に、φ22mmで深さ2mmの窪み90aが形成されたものを用いた。そして、フッ素グリース及びシリコーンオイルを36μlずつ別々のサンプル容器の窪み90a内に収容し、各サンプル容器を加熱装置(アズワン製クリーンホットプレートMH-180CS、アズワン製コントローラMH-3CS)のホットプレート上に設置した。そして、フッ素グリース及びシリコーンオイルを設定温度250℃で加熱し、ホットプレートの温度をモニターしながら、チャンバー内のFP/UFP個数濃度を測定装置(高速応答型パーティクルサイザーFMPS : Fast Mobility Particle Sizer, TSI; Model 3091)を用いて測定した(Export時のUse Averaging Interval:30秒)。フッ素グリース及びシリコーンオイルの温度はホットプレートの温度とほぼ同期して変化するため、図10においては、フッ素グリース及びシリコーンオイルの温度として、横軸にホットプレートの温度を表示している。
【0054】
図10に示されるように、実線にて示されるフッ素グリースにおいては、温度が185℃に達したあたりからFP/UFPが発生し始め、温度が194℃を超えたあたりからFP/UFPの個数濃度が急激に上昇した。一方、一点鎖線にて示されるシリコーンオイルにおいては、温度が200℃に達したあたりからFP/UFPが発生し始め、温度が210℃を超えたあたりからFP/UFPの個数濃度が急激に上昇した。
【0055】
このように、フッ素グリースにおいては温度が185℃に達するとFP/UFPが発生し、シリコーンオイルにおいては温度が200℃に達するとFP/UFPが発生した。このことから、200℃を超える定着装置においては、潤滑剤からFP/UFPが発生する虞がある。従って、定着装置においてFP/UFPの発生を抑制するには、遮蔽部材28の温度上昇を抑制し、潤滑剤が付着する回転体保持部材29の温度上昇を抑制することが重要である。
【0056】
<反射部材の温度上昇による課題>
続いて、反射部材27が温度上昇することによる課題について説明する。
【0057】
反射部材27は、遮蔽部材28と同じように、ハロゲンヒータ23からの輻射熱に曝されるため、輻射熱により温度上昇しやすい。例えば、連続通紙して定着処理を大量に行った場合は、反射部材27の温度が300℃を超えて400℃程度まで上昇することがある。
【0058】
反射部材27は、耐熱性を有する材料によって構成されるが、反射部材27の温度が過剰に上昇すると、反射部材27の反射面を構成するアルミ層又は銀層が変色する虞がある。反射面が変色すると、反射率が低下するため、定着ベルト21への輻射熱の反射を良好に行えなくなり、加熱効率の低下を招く。従って、通常は、反射部材27の過剰な温度上昇を抑制するため、反射部材27の温度が所定の閾値以上になると、単位時間あたりの通紙枚数を制限し、ハロゲンヒータ23の発熱を停止又は低下させる制御が行われる。しかしながら、通紙枚数の制限は画像形成装置の生産性の低下につながるため、反射部材27の温度上昇は、画像形成装置の生産性向上の妨げとなっている。
【0059】
以上のように、定着装置においては、反射部材27及び遮蔽部材28の温度上昇に伴う課題が存在する。そこで、本発明の第一実施形態に係る定着装置においては、反射部材27及び遮蔽部材28の温度上昇を抑制するため、次のような構成を採用している。以下、本発明の第一実施形態に係る定着装置の特徴部分の構成について説明する。
【0060】
<定着装置の特徴部分の構成>
図2に示されるように、本発明の第一実施形態においては、反射部材27が、反射部27aと伝熱部27bを有している。反射部27aは、ハロゲンヒータ23と対向するように配置され、ハロゲンヒータ23からの輻射熱を定着ベルト21へ反射する機能を主に奏する部分である。一方、伝熱部27bは、反射部27aからニップ部N側へ伸びるように配置され、反射部27aの熱を高熱伝導部材26へ伝達する機能を主に奏する部分である。
【0061】
伝熱部27bは、ニップ形成部材24と熱伝導部材26との間に進入するように配置されている。このため、伝熱部27bは、ニップ形成部材24のニップ加圧面240に接触すると共に、高熱伝導部材26のニップ部N側とは反対側の面260にも接触する。ニップ加圧面240は、ニップ形成部材24の表面のうち、定着ベルト21のニップ部Nにおける内周面に対し高熱伝導部材26を介して加圧される面である。このように、伝熱部27bがニップ加圧面240に接触していることにより、伝熱部27bはニップ加圧面240と高熱伝導部材26との間において加圧されている。
【0062】
また、本発明の第一実施形態においては、遮蔽部材28が、反射部材27に対して接触するように配置されている。具体的に、遮蔽部材28は、反射部27aの先端に設けられた接触部27cに対して接触している。すなわち、遮蔽部材28は、反射部27aの先端に設けられる接触部27cと接触する接触部28bを有する。遮蔽部材28の接触部28bは、遮蔽部28aと上流側の固定部28cとの間に設けられている。
【0063】
図4は、本発明の第一実施形態に係るニップ形成部材24、高熱伝導部材26、反射部材27及び遮蔽部材28を分離した状態を示す斜視図である。
【0064】
図4に示されるように、反射部材27は、長手方向両端側に各遮蔽部材28の接触部28bと接触する一対の接触部27cを有する。各接触部27cは、反射部27aの長手方向両端部側から遮蔽部材28側へ突出し、折れ曲がるように形成されている。
【0065】
また、図4に示されるように、反射部材27の伝熱部27bは、通紙領域W1の全体に渡って連続して配置されている。このため、伝熱部27bは、高熱伝導部材26に対して通紙領域W1の全体に渡って連続して接触する。
【0066】
このように、本発明の第一実施形態においては、反射部材27の伝熱部27bが高熱伝導部材26に対して通紙領域W1の全体に渡って連続して接触するため、伝熱部27bを介して反射部27aの熱を高熱伝導部材26へ効果的に伝達することができる。これにより、反射部27aがハロゲンヒータ23からの輻射熱を受けて温度上昇しても、反射部27aの熱が高熱伝導部材26へ伝達されるため、反射部27aの温度上昇を抑制できるようになる。
【0067】
また、本発明の第一実施形態においては、遮蔽部材28が反射部材27に接触しているため、遮蔽部材28の接触部28bを介して遮蔽部材28の熱が反射部材27へ移動する。これにより、遮蔽部材28の温度上昇を抑制できるようになる。
【0068】
以上のように、本発明の第一実施形態によれば、反射部材27及び遮蔽部材28の温度上昇を抑制できるので、これらの温度上昇に伴う課題を解決できる。
【0069】
すなわち、反射部材27の温度上昇を抑制できるため、熱による反射面の変色を回避でき、反射面が変色することによる反射率の低下を防止できるようになる。また、反射部材27の温度上昇を抑制できるため、短時間あたりの通紙枚数の制限を緩和もしくは無くすことができ、画像形成装置の生産性を向上できるようになる。
【0070】
また、遮蔽部材28の温度上昇を抑制できるため、遮蔽部材28の温度上昇に伴う回転体保持部材29の温度上昇も抑制できるようになる。その結果、回転体保持部材29に付着する潤滑剤の温度上昇が抑制されるため、FP/UFPの発生も抑制できるようになる。
【0071】
遮蔽部材28から反射部材27を介して高熱伝導部材26へ移動した熱、及び、反射部材27から高熱伝導部材26へ移動した熱は、ニップ部Nにおいて定着ベルト21を加熱するための熱として利用される。このため、定着ベルト21を効率良く加熱することができ、省エネルギー化も図れる。
【0072】
また、反射部材27の伝熱部27bは、ニップ形成部材24のニップ加圧面240に接触しているため、高熱伝導部材26に対する伝熱部27bの密着性を確保できる。これにより、伝熱部27bから高熱伝導部材26への熱の移動が効率良く行われるので、反射部材27及び遮蔽部材28のそれぞれの温度上昇を効果的に抑制できる。
【0073】
なお、反射部材27は、高熱伝導部材26に対して直接接触する場合のほか、熱伝導性の良い部材などを介して間接的に接触する場合であってもよい。同様に、遮蔽部材28も、反射部材27に対して直接接触する場合のほか、熱伝導性の良い部材などを介して間接的に接触する場合であってもよい。また、反射部材27は、高熱伝導部材26を介さずに定着ベルト21の内周面に対して直接接触してもよい。すなわち、反射部材27と高熱伝導部材26が一体の部材であってもよい。このような場合でも、反射部材27の伝熱部27bがニップ形成部材24のニップ加圧面240に接触することにより、定着ベルト21に対する密着性が確保されるため、伝熱部27bから定着ベルト21への熱の移動を効率良く行うことができ、反射部材27及び遮蔽部材28のそれぞれの温度上昇を効果的に抑制できる。また、ニップ部Nにおいて反射部材27から定着ベルト21へ熱の移動が効率的に行われるため、定着ベルト21の加熱効率の向上も期待できる。
【0074】
ここで、本発明の第一実施形態においては、定着ベルト21を加熱する加熱源として2つのハロゲンヒータ23A,23Bが設けられている。図5に示されるように、2つのハロゲンヒータ23Aのうち、一方のハロゲンヒータ23Aは、定着ベルト21の長手方向中央部を加熱する中央加熱源としての中央ヒータであり、他方のハロゲンヒータ23Bは、定着ベルト21の長手方向両端部側を加熱する端部加熱源としての端部ヒータである。
【0075】
中央ヒータ23Aは、定着ベルト21の長手方向中央部Xmを含む中央部側の範囲に配置される発熱部231を有する。一方、端部ヒータ23Bは、中央ヒータ23Aの発熱部231よりも定着ベルト21の長手方向両端部側に配置される2つの発熱部231を有する。中央ヒータ23A及び端部ヒータ23Bは、それぞれ独立して発熱制御可能に構成されている。
【0076】
幅の小さい小サイズ用紙が通紙される場合は、中央ヒータ23Aのみを発熱させることにより、小サイズ用紙の幅に応じた加熱を行うことができる。一方、小サイズ用紙よりも幅の大きい大サイズ用紙が通紙される場合は、中央ヒータ23Aに加えて、端部ヒータ23Bも発熱させることにより、大サイズ用紙の幅に応じた加熱を行うことができる。
【0077】
しかしながら、大サイズ用紙を連続通紙した場合、通紙領域よりも外側の非通紙領域においては、通紙による熱の消費がされないため、定着ベルト21の温度が過剰に上昇する虞がある。そのため、端部ヒータ23Bの各発熱部232の外側端部及びその近傍には、遮蔽部材28が配置されている。これにより、非通紙領域における定着ベルト21への輻射熱を遮蔽できるため、定着ベルト21の過剰な温度上昇を抑制できる。
【0078】
このように、各遮蔽部材28は、主に端部ヒータ23Bから放射される輻射熱を遮蔽するように配置されているため、特に端部ヒータ23Bの発熱部232に対して近い部分が加熱されやすい。すなわち、図6に示されるように、遮蔽部材28は、中央ヒータ23Aと端部ヒータ23Bの両方に対して対向するように配置されているが、中央ヒータ23Aに対して近い部分281よりも端部ヒータ23Bに対して近い部分282の方が加熱されやすい。このことから、本発明の第一実施形態においては、遮蔽部材28が、中央ヒータ23Aよりも端部ヒータ23Bに対して近い部分282において反射部材27に接触するようにしている。これにより、遮蔽部材28の接触部28bと反射部材27の接触部27cとの間の温度勾配が大きくなるため、遮蔽部材28の熱を反射部材27へ効率良く移動させることができ、遮蔽部材28の温度上昇を効果的に抑制できる。
【0079】
なお、遮蔽部材28の接触部28bは、必ずしも端部ヒータ23Bに対して近い位置に配置されていなくてもよい。例えば、部品レイアウトの都合などにより、遮蔽部材28の接触部28bを端部ヒータ23Bに対して近い位置に配置できない場合は、接触部28bは中央ヒータ23Aに対して近い位置に配置されてもよい。
【0080】
本発明において、遮蔽部材28の接触部28bが端部ヒータ23Bに対して近いか否かの判断は、中央ヒータ23Aと端部ヒータ23Bのそれぞれの中心からの距離L1,L2を比較して行われる。例えば、中央ヒータ23Aの中心からの距離L1よりも端部ヒータ23Bの中心からの距離L2が小さければ(L1>L2)、端部ヒータ23Bに対して近いと判断される。また、遮蔽部材28の接触部28bが、中央ヒータ23Aの中心と端部ヒータ23Bの中心から等しい距離(L1=L2)にある境界線283を跨いで両側に配置される場合は、接触部28bのうち、中央ヒータ23Aから近い部分と端部ヒータ23Bから近い部分との割合により判断する。すなわち、接触部28bのうち、端部ヒータ23Bに近い部分が多い場合は、接触部28bが端部ヒータ23Bに対して近い位置に配置されていると判断する。
【0081】
反射部材27及び遮蔽部材28の熱を高熱伝導部材26へ効率良く伝達するには、反射部材27が熱伝導性の良い材料により構成されることが好ましい。具体的に、反射部材27の熱伝導率は、200W/m・k以上であることが好ましく、300W/m・k以上、さらには400W/m・k以上であることがより好ましい。
【0082】
<熱伝導率の測定方法>
熱伝導率は、下記式(1)により求められる。式(1)中、λは熱伝導率、ρは密度、Cは比熱、αは熱拡散率である。
【0083】
【数1】
【0084】
また、熱伝導率(λ)を算出するための密度(ρ)、比熱(C)及び熱拡散率(α)の各値には、次の測定装置及び方法により求められる値が用いられる。
【0085】
密度(ρ)は、株式会社島津製作所製の乾式自動密度計(商品名:Accupyc1330)を用いて測定される値としている。比熱(C)は、株式会社島津製作所製の示差走査型熱量測定装置(商品名:DSC-60)を用いて測定される値である。より詳しくは、基準物質としてサファイヤを用い、比熱を5回測定した際の50℃における平均値を用いている。熱拡散率(α)は、1mm以下となるように切り出された加圧ローラの弾性層を測定試料とし、株式会社アイフェイズ製の熱拡散率・熱伝導率測定装置(商品名:ai-Phase Mobile 1u)を用いて測定される値としている。
【0086】
<その他の実施形態の構成>
続いて、本発明の第一実施形態とは異なる他の実施形態について説明する。以下、主に本発明の第一実施形態とは異なる部分について説明し、同じ部分については適宜説明を省略する。
【0087】
図7及び図8に、本発明の第二実施形態に係る構成を示す。
【0088】
図7に示される本発明の第二実施形態においては、反射部材27の接触部27cが、反射部材27の長手方向両端部側から遮蔽部材28へ向かって突出する突起271により構成されている。この場合、接触部27cは、折り曲げられるようには形成されていない。一方、遮蔽部材28には、反射部材27の突起271が挿入される孔部284が設けられている。
【0089】
図8に示されるように、反射部材27と遮蔽部材28とが組み付けられた状態においては、反射部材27の突起271が遮蔽部材28の孔部284に挿入されることにより、突起271が孔部284の縁に接触する。このように、突起271と孔部284が接触することにより、これらの接触部を介して遮蔽部材28から反射部材27へ熱を移動させることができる。すなわち、孔部284は、反射部材27と接触する遮蔽部材28の接触部28bとして機能する。
【0090】
また、突起271が孔部284に挿入された際、突起271の側面271aが孔部284の縁に接触することにより、反射部材27と遮蔽部材28の位置ずれにも対応できる。すなわち、反射部材27と遮蔽部材28とが、孔部284に対する突起271の挿入方向又はその反対方向に多少ずれたとしても、孔部284と突起271との接触状態を確保できる。
【0091】
なお、図8に示される構成とは反対に、突起が遮蔽部材28に設けられ、孔部が反射部材27に設けられてもよい。すなわち、反射部材27及び遮蔽部材28の一方が、他方の一部を挿入可能な孔部を有していればよい。
【0092】
図9に、本発明の第三実施形態に係る構成を示す。
【0093】
図9に示される本発明の第三実施形態においては、遮蔽部材28が、定着ベルト21内の二点鎖線にて示される遮蔽位置と実線にて示される退避位置との間で移動可能に構成されている。
【0094】
遮蔽部材28が実線の遮蔽位置へ移動すると、遮蔽部材28がハロゲンヒータ23に対向するように配置されるため、ハロゲンヒータ23から放射される輻射熱が遮蔽部材28によって遮蔽される。一方、遮蔽部材28が二点鎖線の退避位置へ移動すると、遮蔽部材28がハロゲンヒータ23と対向しないように配置されるため、ハロゲンヒータ23から放射される輻射熱が遮蔽部材28によって遮蔽されず定着ベルト21へ付与される。
【0095】
このように、遮蔽部材28は、可動式の遮蔽部材であってもよい。この場合、遮蔽部材28が遮蔽位置に移動した際に、遮蔽部材28の接触部28bが反射部材27の接触部27cに対して接触することにより、遮蔽部材28から反射部材27への熱の移動が可能となる。これにより、遮蔽部材28の熱を反射部材27へ移動させて、遮蔽部材28の温度上昇を抑制することが可能である。
【0096】
以上、本発明の各実施形態について説明した。本発明の各実施形態においては、加熱源として2つのハロゲンヒータ23A,23Bを備える構成を例に説明したが、本発明は、加熱源が1つ又は3つ以上である構成にも適用可能である。
【0097】
また、本発明は、電子写真方式の画像形成装置に搭載される定着装置に適用される場合に限らない。例えば、本発明は、インクジェット方式の画像形成装置に搭載され、用紙に塗布されたインクなどの液体を乾燥させる乾燥装置、フィルムなどの被覆部材を用紙などのシートの表面に熱圧着させるラミネータ、あるいは包材のシール部を熱圧着するヒートシーラーなどの他の加熱装置に対しても適用可能である。
【0098】
また、本発明の態様をまとめると、本発明には、少なくとも下記の態様が含まれる。
【0099】
[第1の態様]
第1の態様は、第一回転体と、前記第一回転体に対向するように配置される第二回転体と、前記第一回転体を加熱する加熱源と、前記第一回転体の内側に設けられ、前記第一回転体と前記第二回転体との間にニップ部を形成するニップ形成部材と、前記加熱源から放射される輻射熱を前記第一回転体へ反射する反射部材と、前記加熱源から前記第一回転体への輻射熱を遮蔽する遮蔽部材と、を備える加熱装置であって、前記ニップ形成部材は、前記第一回転体の前記ニップ部における内周面に対して加圧されるニップ加圧面を有し、前記遮蔽部材は前記反射部材に接触し、前記反射部材は前記ニップ加圧面に接触する加熱装置である。
【0100】
[第2の態様]
第2の態様は、第一回転体と、前記第一回転体に対向するように配置される第二回転体と、前記第一回転体を加熱する加熱源と、前記第一回転体の内側に設けられ、前記第一回転体と前記第二回転体との間にニップ部を形成するニップ形成部材と、前記ニップ部における前記第一回転体の内周面と前記ニップ形成部材との間に配置され、前記ニップ形成部材よりも熱伝導率が高い高熱伝導部材と、前記加熱源から放射される輻射熱を前記第一回転体へ反射する反射部材と、前記加熱源から前記第一回転体への輻射熱を遮蔽する遮蔽部材と、を備える加熱装置であって、前記遮蔽部材は前記反射部材に接触し、前記反射部材は前記高熱伝導部材に接触する加熱装置である。
【0101】
[第3の態様]
第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記加熱源は、前記第一回転体の長手方向中央部側を加熱する中央加熱源と、前記第一回転体の長手方向両端部側を加熱する端部加熱源とを有し、前記遮蔽部材は、前記中央加熱源よりも前記端部加熱源に対して近い部分において前記反射部材に接触する加熱装置である。
【0102】
[第4の態様]
第4の態様は、第1から第3のいずれか1つの態様において、前記反射部材の熱伝導率が200W/m・k以上である加熱装置である。
【0103】
[第5の態様]
第5の態様は、第1から第4のいずれか1つの態様において、前記反射部材及び前記遮蔽部材の一方は他方の一部を挿入可能な孔部を有し、前記孔部に前記他方の一部が挿入されて、前記反射部材と前記遮蔽部材が互いに接触する加熱装置である。
【0104】
[第6の態様]
第6の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様において、前記第一回転体の長手方向両端部の内周面を回転可能に保持する回転体保持部材と、前記回転体保持部材に付着する液状又は半固体状の潤滑性を有する物質を備える加熱装置である。
【0105】
[第7の態様]
第7の態様は、第1から第6のいずれか1つの態様の加熱装置を用いて未定着画像を担持する記録媒体を加熱し、前記未定着画像を前記記録媒体に定着させる定着装置である。
【0106】
[第8の態様]
第8の態様は、第1から第6のいずれか1つの態様の加熱装置、あるいは、第7の態様の定着装置を備える画像形成装置である。
【符号の説明】
【0107】
20 定着装置(加熱装置)
21 定着ベルト(第一回転体)
22 加圧ローラ(第二回転体)
23 ハロゲンヒータ(加熱源)
23A 中央ヒータ(中央加熱源)
23B 端部ヒータ(端部加熱源)
24 ニップ形成部材
26 高熱伝導部材
27 反射部材
28 遮蔽部材
29 回転体保持部材
240 ニップ加圧面
284 孔部
N ニップ部
P 用紙(記録媒体)
1000 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0108】
【特許文献1】特開2013-164473号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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