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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158800
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】複合ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H01B7/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074330
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】山田 仁
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 崇範
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 洋一
(72)【発明者】
【氏名】桑原 里空
【テーマコード(参考)】
5G309
【Fターム(参考)】
5G309KA02
(57)【要約】
【課題】少なくとも1対の信号線と2本以上の電源線とを備えた複合ケーブルの可撓性及び耐屈曲性並びに加工性を向上させる。
【解決手段】少なくとも1対の信号線2と、信号線と外径が異なる2本の電源線3とを備える複合ケーブルにおいて、前記信号線及び前記電源線は、各々中心導体21,31が絶縁被覆層22,32で被覆されており、前記少なくとも1対の信号線は対ごとにそれぞれ対撚りされており、前記少なくとも1対の信号線と前記2本の電源線とがシース層で一括して被覆された構造を有しており、前記絶縁被覆層の表面及び前記シース層の内面の十点平均粗さが30μm以下であるようにした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1対の信号線と、前記信号線と外径が異なる2本の電源線と、を備える複合ケーブルにおいて、
前記信号線及び前記電源線は、各々断面形状が円形であり、中心導体が絶縁層で被覆されており、
前記少なくとも1対の信号線は、対ごとにそれぞれ対撚りされており、
前記少なくとも1対の信号線と前記2本の電源線とがシース層で一括して被覆された構造を有しており、
前記絶縁層の表面及び前記シース層の内面の十点平均粗さが30μm以下であることを特徴とする複合ケーブル。
【請求項2】
複合ケーブルの断面形状は長軸と短軸をもつ楕円形であり、長軸と短軸の比が1.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の複合ケーブル。
【請求項3】
前記信号線及び前記電源線の前記絶縁層は、押出成形により前記中心導体の表面に成形されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複合ケーブル。
【請求項4】
前記信号線及び前記電源線は、いずれも、前記中心導体が、複数の素線が撚り合わされて構成されていることを特徴とする請求項3に記載の複合ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線を束ねた複合ケーブルに関し、特に少なくとも1対の信号線と2本以上の電源線とを備えた複合ケーブルに利用して有用な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、近年、車両においては、高度な電子化のため複数のセンサが取り付けられており、バッテリからそれらのセンサ等に電力を供給する電源線や、検出した信号をセンサからECU等に送信する信号線が、車両内に配置されるようになって来ている。
そして、それらの電源線や信号線を車両内に配設する際、従来は、それらの電線をテープで巻いたり結束バンドで束ねたりするなどして、まとめた状態で配設されることが多かった。しかし、そのような結束方式は、製品の製造や品質に難点がある。
【0003】
そこで、近年、それらの電線を1本のケーブルにまとめた複合ケーブルの開発が進められている(例えば特許文献1参照)。
複合ケーブルは、テープや結束バンドによる結束方式に比べて、電線やケーブルが車両内で占めるスペースをより小さくすることが可能になる等のメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6219263号公報
【特許文献2】特開2014-135153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複合ケーブルには、用途等に応じて、種々の特性、例えば、耐摩耗性、可撓性(柔軟性)、耐熱性、低温性(例えば-40℃の低温でもシースが損傷しにくい特性)、更には耐屈曲性(屈曲に対する導体の破断防止特性、屈曲耐久性ともいう。)が求められる。例えば、ABS(Anti-lock Brake System)やEPB(Electric Parking. Brake)においては、車体に搭載された制御デバイスと、タイヤ(サスペンション)側に配設されたセンサとがケーブルで接続されて構成されている。
【0006】
これらの車載装置に用いられるケーブルは、走行中における振動や、車体に対するタイヤ等の位置変動等に晒されるため、上記特性の中でも、車両の走行に伴う車輪の動きに追従して屈曲可能な可撓性及び耐屈曲性が良好であることが求められる。また、ケーブルのシースの皮むき加工性も、製造工程において要求される重要な特性である。
【0007】
従来、複合ケーブルの屈曲耐久性を高めることを目的として、シースの内部空間に面している内面と、内部の複数の電線の外周面との間に、電線とシースとの間における摩擦抵抗を低減するため、粉体からなる潤滑材を介在させるようにした発明が提案されている(特許文献2参照)。
しかし、粉体は取り扱いが面倒で作業工程を増えるとともに、撚られた複数の電線や信号線に均一に粉体を接触させることは困難で、摩擦抵抗にムラが発生する懸念がある。
【0008】
本発明は、上記のような課題に着目してなされたものであり、少なくとも1対の信号線と2本以上の電源線とを備えた複合ケーブルの可撓性及び耐屈曲性並びに加工性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
少なくとも1対の信号線と、前記信号線と外径が異なる2本の電源線と、を備える複合ケーブルにおいて、
前記信号線及び前記電源線は、各々断面形状が円形であり、中心導体が絶縁層で被覆されており、
前記少なくとも1対の信号線は、対ごとにそれぞれ対撚りされており、
前記少なくとも1対の信号線と前記2本の電源線とがシース層で一括して被覆された構造を有しており、
前記絶縁層の表面及び前記シース層の内面の十点平均粗さが30μm以下であることを特徴とする。
【0010】
なお、本明細書において、断面形状の「円形」とは、真円の他、楕円、長円を含む概念である。
また、請求項1では、絶縁層の表面及びシース層の内面の十点平均粗さは30μm以下としているが、十点平均粗さの下限値は、絶縁層を形成する材料の種類や使用する押出機、ヘッド温度、押出し速度等の条件によって決まるゼロでない最小の値となる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の複合ケーブルにおいて、
複合ケーブルの断面形状は長軸と短軸をもつ楕円形であり、長軸と短軸の比が1.5以下であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の複合ケーブルにおいて、
前記信号線及び前記電源線の前記絶縁層は、押出成形により前記中心導体の表面に成形されたものであることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の複合ケーブルにおいて、
前記信号線及び前記電源線は、いずれも、前記中心導体が、複数の素線が撚り合わされて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、少なくとも1対の信号線と2本以上の電源線とを備えた複合ケーブルの可撓性及び耐屈曲性並びに加工性を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る複合ケーブルの利用形態の一例を示すシステム構成図である。
図2】実施形態に係る複合ケーブルの構成例を示す断面図であり、4芯の場合を表す。
図3】実施形態に係る複合ケーブルの構成例を示す断面図であり、6芯の場合を表す。
図4】電源線や信号線の導体が複数の素線を撚り合わせて構成されていることを表す図である。
図5】複合ケーブル内で信号線と電源線が全体的に撚り合わされた状態を表す図である。
図6】屈曲試験に用いる装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る複合ケーブルの実施形態について説明する。
ただし、以下に述べる実施形態においては、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲は以下の実施形態や図示例に限定されるものではない。
例えば以下の記載では、複合ケーブル内の複数の電源線に車両のブレーキ制御用の電源線が含まれている場合について説明するが、本発明は必ずしもその場合に限定されない。
【0017】
図1は、本実施形態に係る複合ケーブルの利用形態を示すシステム構成図である。
図1に示すように、本実施形態の複合ケーブル1は、1対(2本)の信号線2と2本の電源線3を備えている。本実施形態では、信号線2は、アンチロックブレーキシステムのセンサ11から制御デバイス12へ信号を送信し、電源線3は、電動パーキングブレーキの制御デバイス13からアクチュエータ14へ電力を供給するために使用されるが、このような利用形態に限定されるものではない。
【0018】
図2は、本実施形態に係る複合ケーブルの構成例を表す軸と直交する方向の横断面図である。
図2に示すように、本実施形態の複合ケーブル1は、1対の信号線2と2本の電源線3を備えた4芯のケーブルであり、各信号線2と電源線3は、導体21、31の外周がそれぞれ絶縁性の樹脂層22、32により被覆されている。そして、1対の信号線2と2本の電源線3全体が、シース層4によって一括して被覆されている。なお、シース層4は複数の層で構成されていてもよい。
【0019】
また、複合ケーブル1は、複数の信号線と複数の電源線を備えていればよく、図2に示したような4芯の場合に限定されず、図3に示すように、6芯であっても良い。さらに、図2図3ではいずれも電源線3が2本設けられている場合を示しているが、電源線3は3本以上であってもよい。同様に、信号線2も1対や2対に限定されるものでない。
【0020】
また、図2図3において、2本の信号線2に対応する2つの円に外接する破線で示す円は、信号線2が所定本(図では2本)ずつ撚り合わされていることを表している。
このように、複数の信号線2のうち2本以上の信号線同士を撚り合わせるように構成することで、複数の信号線2を撚り合わせない場合に比べて、優れた可撓性を有するようになる。
【0021】
また、それとともに、複合ケーブル1が軸方向に引っ張られると、撚り合わされた信号線2が軸方向に伸びることができるため、複合ケーブル1に繰り返し曲げ力が加わった場合、撚り合わされた信号線2同士が伸びることで断線等が生じにくくなる。
従って、信号線2同士を2本以上撚り合わせるように構成することで、複合ケーブル1の可撓性や繰り返し屈曲性を向上させることが可能となる。
【0022】
さらに、本実施形態では、信号線2は、通常の複合ケーブルと同様に、電源線3よりも小さい径を有する。また、信号線2は、例えば銅合金やアルミニウム合金等の金属線を導体21とし、その外周をポリエステル等の樹脂等からなる絶縁性の樹脂層22で被覆したものを用いることができる。導体21の外周を樹脂層22で被覆した信号線2は、例えば押出機による押出成形で形成することができる。
なお、以下では、信号線2の導体21が金属線であることを前提に説明するが、例えば信号線2の導体21の代わりに光ファイバが使用されたり、導体21に光ファイバが含まれていたりしてもよい。
【0023】
さらに、本実施形態では、図4に示すように、信号線2と電源線3は、その導体21と31が、それぞれ複数の金属線の素線21a、31aが撚り合わされて構成されている。
なお、図4は、信号線2の導体21(素線21a)と電源線3の導体31(素線31a)とが同じ太さであることを表わすものではない。
【0024】
複合ケーブル1を、上記のように構成することで、信号線2の素線21aを撚り合わせない場合に比べて、信号線2自体が良好な可撓性を有するようになる。
また、それとともに、複合ケーブル1が軸方向に引っ張られると、信号線2自体が軸方向に伸びることができるため、複合ケーブル1に繰り返し曲げ力が加わった場合、信号線2自体が伸びて断線等が生じにくくなる。
そのため、信号線2の導体21を、複数の素線21aを撚り合わせて構成することで複合ケーブル1の可撓性や繰り返し屈曲性を向上させることが可能となる。
【0025】
電源線3も同様に、導体31の外周に絶縁性の樹脂層32を有しており、導体31の外周を樹脂層32で被覆した電源線3は、例えば押出機により形成することができる。
そして、電源線3は、導体31が、図4に示すように複数の素線31aを撚り合わせて構成されたロープ撚り導体である。そのため、上記の信号線2の場合と同様に、電源線3自体が良好な可撓性を有するようになるとともに、複合ケーブル1に繰り返し曲げ力が加わった際に電源線3自体が伸びることで断線等が生じにくくなる。従って、電源線3の導体31を、複数の素線31aを撚り合わせて構成することで複合ケーブル1の可撓性や繰り返し屈曲性を向上させることが可能となる。
【0026】
また、電源線3の素線31aの断面形状は、円形(丸線)でもよいが、矩形(平角線)であってもよい。また、素線31aの好ましい径は0.05~0.2mmである。
なお、素線31aの本数は2本以上であればよく、本数に制限はない。
素線31aの引張強度は、350~900MPaであることが好ましい。素線の引張強度はJISC 3002に準拠して測定することができる。
【0027】
さらに、本実施形態では、図5に示すように、複合ケーブル1の内部で、各々が撚合わせ線からなる信号線2と電源線3とが全体的に撚り合わされている。
そのため、撚り合わされた信号線2と電源線3とからなる複合ケーブル1の全体的な可撓性が向上するとともに、ケーブルに繰り返し曲げ力が加わった際に信号線2と電源線3とが全体的に伸びることで信号線2と電源線3に断線等が生じにくくなる。
つまり、信号線2と電源線3とを全体的に更に撚り合わせることで、複合ケーブル1の全体的な可撓性や繰り返し屈曲性を向上させることが可能となる。
【0028】
一方、シース層4は、本実施形態では架橋性の耐熱樹脂で構成されているが、架橋性の耐熱樹脂に限定するものではない。
架橋性の耐熱樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂等の種々の樹脂を用いることが可能であり、それを電子線架橋法や化学架橋法、シラン架橋法等の架橋法で架橋するなどしてシース層4を形成することができる。
【0029】
そして、このように、シース層4を架橋性の耐熱樹脂で構成することで、複合ケーブル1が高温に晒される等しても、熱によりシース層4が溶けるなどして複合ケーブル1が損傷することを防止することが可能となる。
なお、シース層4は外周を樹脂層等で更に被覆するように構成することも可能である。
【0030】
次に、上記実施形態のような構成を有する複合ケーブル1が有する性能(可撓性、耐屈曲性、加工性)について、本発明者らが行った試験およびその結果について説明する。
なお、試験対象の複合ケーブルは、4芯のケーブルであり、信号線2の径をそれぞれ1.5mm、電源線3の径をそれぞれ2.6mm、シース層4の厚みを5~6mm、ケーブル全体の径を18mmとした。また、絶縁性樹脂層22、32の材料としてポリエステルを使用した。
【0031】
さらに、信号線2と電源線3の絶縁性樹脂層22、32の表面粗さRzは、押出機による押出成形時のヘッド温度の条件を変化させることで変化させた。なお、樹脂層の表面粗さは、ヘッド温度の他、押出し速度、材料の種類、ヘッドの金型の形状、精度等によっても変化するが、本試験においてはヘッド温度を変化させた。
なおここで、押出機のヘッドとは、ケーブルを挿通可能な貫通孔を備え、貫通孔の周囲に温度制御可能なヒータが配設された金属製のブロックである。このブロックは、貫通孔の周面の一部に側方から供される溶融樹脂の吐出口を有しており、撚り合わされた信号線と電源線の束が貫通孔内を通過する間に、周囲に樹脂層が形成される。
【0032】
<可撓性試験>
可撓性試験は、製造した各ケーブルを長さ600mmに切り出し、両端部を接合してリング状にし、このリング状の試験体を鉛直姿勢となるように配置して、リング状試験体の最下部にカギ付きの重り(荷重2kgf:19.6N)を引っ掛けて取り付け、楕円形に変形させた。なお、重りを取り付ける際には、リング状試験体の底部(最下端)に初速がかからないようにした。
そして、上記のように重りを取り付けることで楕円形に変形した試験体の短径の値(楕円の短軸径)を測定することで、可撓性を評価した。
【0033】
評価は、短径の値が下記基準のいずれに含まれるかで行い、ランクD以上が本試験の合格であるとした。
A: 7.5mm以下
B: 7.5mmを越え、10.0mm以下
C:10.0mmを越え、12.5mm以下
D:12.5mmを越え、15.0mm以下
E:15.0mmを越える
【0034】
<耐屈曲性試験>
図6は、耐屈曲性試験に用いる装置の概略を、マンドレルの軸方向から見た概略図である。図6に示すように、水平かつ互いに平行に配置された2本のマンドレル51、52間、及び揺れ防止用の押え61、62間に、ケーブル100を鉛直方向に通し、ケーブル100の下端に重り7を取り付けた。
【0035】
この状態で、ケーブル100の上端を左右のマンドレル51又は52の上側外周に交互に接するように(左右交互に繰り返し)屈曲させた。屈曲回数は、ケーブル100を左右のマンドレル51、52のいずれかの外周に接するように屈曲させた場合を1回として、カウントした。なお、試験条件は、マンドレル径10mm、左右曲げ角度90°、速度60屈曲/分で行い、重りは500g、ケーブルとマンドレルとのクリアランスは1mmとし、ケーブル100の上方の側面が各マンドレルの上方外周に接するように、屈曲させる長さを調製して、25℃の雰囲気で、断線が生じるまで試験を行った。また、ケーブルをループ状にして両端に電圧を印加して通電し、断線の有無を監視しながら断線が生じるまでの屈曲回数を測定した。
【0036】
評価は、断線が生じるまでの屈曲回数が下記基準のいずれに含まれるかで行い、ランクC以上を本試験の合格とした。
A:10万回以上
B: 7万回以上、10万回未満
C: 5万回以上、 7万回未満
D: 5万回未満
【0037】
<加工性試験>
複合ケーブル1の端部mmにおいて、シース4を剥ぎ取る際の皮むき加工性を評価した。具体的には、端部100mmの位置にてケーブルの軸と直交する面とケーブル表面とが交差する境界線に沿って周方向に一周する切込みを、複合ケーブルのシースの厚さの90%の深さに入れた。次いで、この切込みを境に一方(端部100mm側)の複合ケーブルのシースの外面を把持して、他方の複合ケーブルを引き抜いた。
【0038】
こうして引き抜いた複合ケーブルの状態に基づいて、シースの皮むき加工性試験を下記基準により評価した。本試験の合格は「△」以上である。
「〇」:引き抜いたケーブルに、引き抜かれるべきシースの残りがなく、引き抜いたケーブルのシース端部の伸びが1.0mm未満である場合
「△」:引き抜いたケーブルに、引き抜かれるべきシースの残りがなく、引き抜いたケーブルのシース端部の伸びが1.0mm以上5mm以下である場合
「×」:引き抜いたケーブルに、引き抜かれるべきシースが残存する場合
【0039】
次の表1は、上記実施形態に係る複合ケーブル1を可撓性、耐屈曲性、加工性の観点から性能評価した結果を示す。
【表1】
【0040】
表1において、Rzは、信号線2と電源線3の絶縁性樹脂層22、32の表面の十点平均粗さである。
なお、十点平均粗さは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、その部分の平均線から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から五番目までの山頂の標高の絶対値の平均値と、最も低い谷底から五番目までの谷底の標高の絶対値の平均値との和を求め、その値をマイクロメートル(μm)で表わしたものである。
【0041】
また、表1において、可撓性と耐屈曲性の欄のA,B,C,Dは4段階評価の結果を表わしており、Aが最も高い評価を意味している。加工性の欄の〇、△、×は、3段階評価の結果を表している。
表1には示されていないが、押出成形の性質から、シース層4の内面は信号線2や電源線3の被覆層である絶縁性樹脂層22、32の表面粗さと同等の表面粗さになる場合がある。
【0042】
なお、表1には、複合ケーブル1の断面形状として、真円の他に楕円が示されているが、この楕円は意図的に付与したものではなく、信号線同士あるいは信号線と電源線とを撚り合わせる際に、自然に生じる変形であり、一般的には、長径と短径の比は1.5以下となる。表1に示されている楕円も比較例1以外はこの条件の範囲内にあった。複合ケーブルの長径と短径の比は1.5を越えると見栄えもよくなく、ケーブルをドラムに巻く際にも巻き取り不良の原因になる。
表1より、断面形状が真円の場合も楕円の場合も、十点平均粗さRzが30μm以下であれば、可撓性も耐屈曲性も加工性も合格水準となることが分かる。
【0043】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
1 複合ケーブル
2 信号線
21 中心導体
21a 素線
22 絶縁性樹脂層(絶縁層)
3 電源線
31 中心導体
31a 素線
32 絶縁性樹脂層(絶縁層)
4 シース層
11 センサ
12 制御デバイス
13 制御デバイス
14 アクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6