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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158833
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】補強部除去方法および加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241031BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01L21/304 601Z
H01L21/78 M
H01L21/78 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074393
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】江角 和也
【テーマコード(参考)】
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
5F057AA12
5F057CA16
5F057DA17
5F057EC05
5F057FA13
5F057FA16
5F063AA11
5F063BA03
5F063CA04
5F063CA06
5F063DG17
(57)【要約】
【課題】リング状の補強部を有するウェーハから、分割起点の形成後に素早く補強部を除去する。
【解決手段】リングフレーム(17)の開口(19)を塞いで貼着したテープ(18)にウェーハ(10)の一方の面(12)側の凹部(15)とリング状の補強部(16)とを貼着してワークセット(20)を形成するワークセット形成工程と、チャックテーブル(34)にテープを介してワークセットを保持させる保持工程と、凹部と補強部との境にリング状の分割起点を形成しながら、補強部に貼着したテープの糊の貼着力を低下させる分割起点形成工程と、テープから補強部を離間させ凹部から補強部を除去する除去工程と、からなる補強部除去方法。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面の中央に円形の凹部と該凹部の外周にリング状の補強部とを備えるウェーハから該補強部を除去する補強部除去方法であって、
リングフレームの開口を塞いで貼着したテープに該ウェーハの一方の面側の該凹部と該補強部とを貼着し該リングフレームと該テープと該ウェーハとを一体化させたワークセットを形成するワークセット形成工程と、
チャックテーブルに該テープを介して該ワークセットを保持させる保持工程と、
該凹部と該補強部との境にリング状の分割起点を形成しながら、該補強部に貼着した該テープの糊の貼着力を低下させる分割起点形成工程と、
該テープから該補強部を離間させ該凹部から該補強部を除去する除去工程と、
からなる、補強部除去方法。
【請求項2】
請求項1記載の補強部除去方法において分割起点を形成する加工装置であって、
該テープを介して該ワークセットを保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルを回転させる回転機構と、
該チャックテーブルに保持された該ワークセットの該凹部と該補強部との境にリング状の分割起点を形成する分割起点形成機構と、
該チャックテーブルを囲繞しリング状に形成され、その一部または全部が紫外線を透光する支持部と、
該回転機構によって回転する該ワークセットの該テープに紫外線を照射させる回転しない紫外線照射部と、
を備える加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの補強部の除去方法、およびウェーハの補強部を除去する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ(電子デバイス)の製造においては、ウェーハに格子状の分割予定ライン(ストリート)で区画された複数のデバイス領域を設け、各デバイス領域にデバイスを形成し、分割予定ラインに沿ってウェーハを分割して複数のチップにする。
【0003】
ウェーハが薄い場合、ウェーハの剛性が低くなり、搬送や加工の際に割れ、欠けの破損が生じやすく、取り扱いが難しいという問題がある。その対策として、特許文献1に開示のように、ウェーハの中央を所定の厚みに研削して凹部を形成し、凹部の外側にリング状の補強部を残す方法(TAIKO研削と呼ばれる方法)が知られている。リング状の補強部を備えたウェーハの凹部の底面に金属膜などを形成した後、特許文献2-5に開示のように、ウェーハの補強部を除去し、分割予定ラインに沿ってウェーハを分割してチップにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-019461号公報
【特許文献2】特開2022-180843号公報
【特許文献3】特開2022-090797号公報
【特許文献4】特開2022-059711号公報
【特許文献5】特開2023-033758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1-5に開示のように、リング状の補強部を備えたウェーハは、糊(粘着層)付きのテープを介して、開口を有するリングフレームに支持されて、ウェーハとフレームとテープとからなるワークセットの状態で搬送や加工が行われる。ウェーハの補強部を除去する際には、ウェーハを貼着しているテープの糊の粘着力を低下させてから、補強部の除去に関する工程を行っている。
【0006】
テープの糊は、例えば紫外線硬化型の糊であり、粘着力を低下させる際に、紫外線を照射させて糊を硬化させる。従来は、補強部と凹部との境にリング状に分割起点を形成する工程を行い、その後に糊の貼着力を低下させる紫外線を照射する工程を行い、さらにその後にテープから補強部を離間させる補強部離間工程を実施していたので、補強部の除去に時間がかかるという問題があった。
【0007】
したがって、ウェーハからリング状の補強部を除去する補強部除去方法および加工装置は、分割起点の形成後、素早く補強部を除去するという解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、一方の面の中央に円形の凹部と該凹部の外周にリング状の補強部とを備えるウェーハから該補強部を除去する補強部除去方法であって、リングフレームの開口を塞いで貼着したテープに該ウェーハの一方の面側の該凹部と該補強部とを貼着し該リングフレームと該テープと該ウェーハとを一体化させたワークセットを形成するワークセット形成工程と、チャックテーブルに該テープを介して該ワークセットを保持させる保持工程と、該凹部と該補強部との境にリング状の分割起点を形成しながら、該補強部に貼着した該テープの糊の貼着力を低下させる分割起点形成工程と、該テープから該補強部を離間させ該凹部から該補強部を除去する除去工程と、からなることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様は、上記の補強部除去方法において分割起点を形成する加工装置であって、該テープを介して該ワークセットを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルを回転させる回転機構と、該チャックテーブルに保持された該ワークセットの該凹部と該補強部との境にリング状の分割起点を形成する分割起点形成機構と、該チャックテーブルを囲繞しリング状に形成され、その一部または全部が紫外線を透光する支持部と、該回転機構によって回転する該ワークセットの該テープに紫外線を照射させる回転しない紫外線照射部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の補強部除去方法および加工装置によれば、ウェーハの凹部と補強部との境にリング状の分割起点を形成しながら、補強部に貼着したテープの糊の貼着力を低下させることにより、分割起点の形成と同時にテープから補強部を離間させることができる状態になり、分割起点の形成後、素早く補強部を除去することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】凹部および補強部を備えたウェーハの斜視図である。
図2】ワークセット形成工程を示す図である。
図3】保持工程を示す図である。
図4】分割起点形成工程を示す図である。
図5】分割起点形成工程を示す図である。
図6】除去工程を示す図である。
図7】加工装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態を説明する。図1は、本実施形態の補強部除去方法を適用可能なウェーハ10の構成例を示している。図1の(A)はウェーハ10の表面側を示しており、(B)はウェーハ10の裏面側を示している。
【0013】
ウェーハ10は、例えばシリコンなどで形成された円形の板材であり、表面11(他方の面)と裏面12(一方の面)を有する。ウェーハ10の表面11側は、格子状の分割予定ライン13(ストリート)によって複数のデバイス領域に区画されており、区画された各デバイス領域にはそれぞれデバイス14が形成されている。なお、ウェーハ10の材質はシリコンに限定されない。
【0014】
ウェーハ10は、裏面12側を研削加工して所定の厚みにされる。研削加工を行う研削装置(図示略)では、裏面12を上向きにして保持テーブルにウェーハ10を保持させる。研削砥石が環状に配置された研削ホイールを回転させながら下降させ、研削砥石の下面をウェーハ10の裏面12に接触させることで、ウェーハ10が研削される。
【0015】
研削加工では、研削砥石の下面をウェーハ10の中央部のみに接触させて薄化させて、外周部を研削加工しないことによってリング状の補強部16を形成しウェーハ10の剛性を確保している。詳しくは、ウェーハ10の表面11側は、複数のデバイス14が形成される中央領域の外側(外周側)に、デバイス14が形成されないリング状の余剰領域を有している。そして、裏面12のうち中央領域に対応する部分(中央部のみ)に研削加工を行って円形の凹部15を形成し、外側の余剰領域に対応する部分は研削加工を行わずに残存させてリング状の補強部16を形成する。このように構成されたウェーハ10は、補強部16によって外周部の厚みが確保されて補強されるので、破損や変形が生じにくくなる。
【0016】
ウェーハ10から複数のデバイス14を得る際には、補強部16を除去し、分割予定ライン13に沿って分割する。ウェーハ10から補強部16を除去する本実施形態の補強部除去方法と、補強部除去方法を実施する加工装置について、以下に説明する。
【0017】
本実施形態の補強部除去方法は、ワークセット形成工程(図2)、保持工程(図3)、分割起点形成工程(図4図5)、除去工程(図6)からなる。
【0018】
図2に示すように、ワークセット形成工程では、ウェーハ10とリングフレーム17とテープ18とを一体化させたワークセット20を形成する。リングフレーム17は、中央に円形の開口19を有するリング状の枠部材であり、開口19の内径はウェーハ10の外径よりも大きい。テープ18は、基材上に糊を含む粘着層を積層して構成されている。テープ18の糊は、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化型の糊である。
【0019】
テープ18の面積はウェーハ10および開口19の面積よりも大きく、テープ18は開口19を塞いでリングフレーム17に貼着される。また、テープ18は、ウェーハ10の裏面12側で凹部15と補強部16とに貼着されて、凹部15に沿って凹んだ形状になっている。
【0020】
詳しくは、テープ18は、凹部15の底面に貼着された平面状の中央部181と、補強部16の内周面に貼着された筒状部182と、補強部16の裏面12側およびリングフレーム17に貼着された周縁部183と、を有している。周縁部183は、補強部16とリングフレーム17に貼着された領域の間に、ウェーハ10とリングフレーム17のいずれにも貼着されていない中間領域を有している。このように、テープ18を介してウェーハ10がリングフレーム17に支持されて、ワークセット20が形成される。
【0021】
ワークセット形成工程の後に行う各工程を説明する前に、主に図7を参照して、補強部16を除去するための分割起点を形成する加工装置30の構成を説明する。加工装置30は、ウェーハ10に対して切削加工を行う切削装置であり、切削ユニット32が備える切削ブレード31によって切削する。加工装置30におけるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、互いに直交する方向である。X軸方向とY軸方向は水平方向であり、Z軸方向は上下方向である。Z軸方向は、切削ブレード31がウェーハ10に切り込む際に、切削ブレード31を移動させる切り込み送り方向である。
【0022】
加工装置30は、基台33上にチャックテーブル34を備えている。チャックテーブル34の詳細については後述するが、チャックテーブル34の上面側の保持面35に、テープ18を介してウェーハ10を保持する。また、チャックテーブル34の周囲には複数のクランプ36が設けられており、クランプ36によってウェーハ10の周囲のリングフレーム17を挟持して固定する。
【0023】
加工装置30の基台33上には、チャックテーブル34をX軸方向に移動させるX軸移動機構37が設けられている。X軸移動機構37は、基台33上に配置されてX軸方向に延びる一対のガイドレール38と、一対のガイドレール38の間に設けられてX軸方向に延びるボールネジ39と、ボールネジ39を回転駆動させるモータ40と、チャックテーブル34を支持するX軸移動テーブル41と、を備えている。
【0024】
X軸移動テーブル41は、一対のガイドレール38に対してX軸方向に摺動可能に支持されている。また、X軸移動テーブル41は、ボールネジ39が螺合するナット部(図示略)を備えている。モータ40によってボールネジ39を回転させると、一対のガイドレール38に沿ってX軸移動テーブル41がX軸方向に移動する。
【0025】
X軸移動テーブル41上には、Z軸方向の軸回りにチャックテーブル34を回転可能に支持する回転機構42が設けられている。回転機構42の上部にチャックテーブル34が支持されており、回転機構42が備えるモータ(図示略)によってチャックテーブル34を回転させることができる。
【0026】
基台33の上面には、X軸移動機構37によるチャックテーブル34の移動領域を跨ぐ門型のコラム43が立設されている。コラム43には、切削ユニット32をY軸方向に移動させるY軸移動機構44と、切削ユニット32をZ軸方向に移動させるZ軸移動機構45と、が設けられている。
【0027】
Y軸移動機構44は、コラム43の前面に配置されてY軸方向に延びる一対のガイドレール46と、一対のガイドレール46の間に設けられてY軸方向に延びるボールネジ47と、ボールネジ47を回転駆動させるモータ48と、Y軸移動テーブル49と、を備えている。
【0028】
Y軸移動テーブル49は、一対のガイドレール46に対してY軸方向に摺動可能に支持されている。また、Y軸移動テーブル49は、ボールネジ47が螺合するナット部(図示略)を備えている。モータ48によってボールネジ47を回転させると、一対のガイドレール46に沿ってY軸移動テーブル49がY軸方向に移動する。
【0029】
Z軸移動機構45は、Y軸移動テーブル49の前面に配置されてZ軸方向に延びる一対のガイドレール50と、一対のガイドレール50の間に設けられてZ軸方向に延びるボールネジ51と、ボールネジ51を回転駆動させるモータ52と、Z軸移動テーブル53と、を備えている。
【0030】
Z軸移動テーブル53は、一対のガイドレール50に対してZ軸方向に摺動可能に支持されている。また、Z軸移動テーブル53は、ボールネジ51が螺合するナット部(図示略)を備えている。モータ52によってボールネジ51を回転させると、一対のガイドレール50に沿ってZ軸移動テーブル53がZ軸方向に移動する。
【0031】
Z軸移動テーブル53の下端に切削ユニット32が支持されている。従って、Y軸移動機構44によって切削ユニット32をY軸方向に移動させ、Z軸移動機構45によって切削ユニット32をZ軸方向に移動させることができる。
【0032】
切削ユニット32は、Z軸移動テーブル53に支持されたハウジング55の内部に、Y軸方向に延在するスピンドル54(図4および図5)を備え、スピンドル54の端部に切削ブレード31を取り付けている。ハウジング55の内部に配置したスピンドルモータ(図示略)の駆動力によって、スピンドル54および切削ブレード31を回転させる。
【0033】
続いて、主に図3から図6を参照して、加工装置30においてワークセット20を保持する保持機構60について説明する。保持機構60は、チャックテーブル34と、チャックテーブル34に付随する要素と、によって構成されている。
【0034】
チャックテーブル34は、上面側に凹部を有する枠体61と、枠体61の凹部内に取り付けられた保持板62と、を備えている。保持板62の周囲は枠体61によって囲まれており、保持板62の上面のみが露出している。枠体61はZ軸方向に所定の厚みを有する円板形状であり、枠体61の外周面63は円筒面になっている。Z軸方向における保持板62の厚みは、枠体61の凹部の深さとほぼ同じであり、枠体61の上面と保持板62の上面とが面一になってチャックテーブル34の保持面35を構成する。保持面35は、ウェーハ10の凹部15の底面に対応した形状である。
【0035】
保持板62はポーラスセラミック材などの多孔質部材により形成されており、チャックテーブル34の内部に設けた吸引路を介して、保持板62と吸引源64(図3図4および図6)とが通じている。吸引源64を動作させて、保持面35に吸引力を作用させることができる。
【0036】
チャックテーブル34の周囲には、周方向に位置を異ならせて複数のクランプ36が配置されている。クランプ36は、リングフレーム17の下面を保持可能な台座部65と、台座部65に対して開閉動作が可能な爪部66と、を有している。図3図4および図6では、チャックテーブル34から離間した状態でクランプ36を示しているが、複数のクランプ36はそれぞれ枠体61に接続しており、クランプ36はチャックテーブル34と共にX軸方向への移動と回転とを行う。
【0037】
保持機構60はさらに、チャックテーブル34を囲繞する支持部67と、支持部67を介してワークセット20のテープ18に紫外線UV(図5)を照射させる紫外線照射部68と、を備えている。支持部67および紫外線照射部68は、チャックテーブル34と共にX軸移動機構37によってX軸方向に移動する。
【0038】
支持部67は、ガラス、ポリカーボネートなどの紫外線UVによって劣化しにくく紫外線UVを透光する材料(透明材料)で形成されており、チャックテーブル34の枠体61の外周面63を囲むリング形状である。つまり、リング形状の支持部67の全体が紫外線UVを透光する構成である。支持部67は、昇降機構69によってZ軸方向に移動させることが可能である。また、支持部67は、回転機構42によってチャックテーブル34と共に回転するように支持されている。なお、支持部67は、チャックテーブル34と共に回転しない構成でもよい。支持部67がチャックテーブル34と共に回転しない場合には、支持部67のうち、紫外線照射部68から紫外線UVが照射される一部分だけを、紫外線UVを透光する構成(透明材料)にすることも可能である。
【0039】
紫外線照射部68は、紫外線を発する紫外線発光源70と、紫外線発光源70が発した紫外線を所定の方向に投射する投光部71と、を備えており、投光部71が支持部67の下面に対向して配置されている。紫外線照射部68は下方から支持部67の下面に向けて紫外線UVを照射する(図5参照)。紫外線照射部68から照射された紫外線UVは、支持部67に進入し拡散し支持部67の上面から上方に射出される。紫外線照射部68は、回転機構42による回転は行わず、チャックテーブル34の周方向において特定の位置に固定されている。
【0040】
加工装置30の各部の動作は、制御部72(図7)によって制御される。制御部72は、プロセッサと記憶部とを備え、記憶部に記憶したプログラムに従ってプロセッサが処理を行って加工装置30を制御する。以下に説明する各工程において、制御の主体が明示されていない場合は、制御部72の制御に基づいて動作や判断が行われるものとする。
【0041】
続いて、図3および図4を参照して保持工程を説明する。図3はワークセット20を保持機構60に保持させる前の状態を示しており、図4はワークセット20を保持機構60に保持させた後の状態を示している。図4は、保持工程の次に行う分割起点形成工程を示す図でもある。
【0042】
保持工程では、ワークセット形成工程で形成したワークセット20を、搬送機構75を用いて、チャックテーブル34を含む保持機構60に搬送して保持させる。搬送機構75は、リングフレーム17の上面を吸着して保持する搬送パッド76を備えており、搬送パッド76をY軸方向およびZ軸方向へ移動させることが可能である。ワークセット20は、ウェーハ10の表面11を上向きにし、凹部15が形成された裏面12を下向きにして、リングフレーム17の上面が搬送パッド76によって保持される。
【0043】
制御部72は、X軸移動機構37によってX軸方向でのチャックテーブル34の位置を制御して、搬送機構75からワークセット20を受け取ることが可能な位置にチャックテーブル34を位置づける。そして、制御部72が搬送機構75を動作させて、チャックテーブル34の上方にワークセット20を位置させる。詳しくは、図3に示すように、ウェーハ10の凹部15の底面がチャックテーブル34の保持面35に対向する位置関係に設定する。そして、搬送パッド76を下降させて、保持機構60にワークセット20を保持させる。
【0044】
保持機構60にワークセット20を保持させると、図4に示すように、ウェーハ10の凹部15の内部にチャックテーブル34の保持面35が進入し、枠体61の外周面63の外側に補強部16が位置する(補強部16の内周面が外周面63に対向する)。また、補強部16の下方に支持部67が位置する。
【0045】
ウェーハ10の裏面12側にテープ18が貼着されているため、ウェーハ10はテープ18を介してチャックテーブル34に保持される。詳しくは、チャックテーブル34の保持面35と凹部15の底面との間にテープ18の中央部181が位置し、枠体61の外周面63と補強部16の内周面との間にテープ18の筒状部182が位置し、補強部16の裏面12側と支持部67の上面との間にテープ18の周縁部183が位置する。また、支持部67の上方には、テープ18の筒状部182も位置する(図5参照)。
【0046】
制御部72は、吸引源64を動作させてチャックテーブル34の保持面35に吸引力を作用させる。吸引力によって、テープ18を介してウェーハ10が保持面35に吸引保持される。
【0047】
また、図4に示すように、複数のクランプ36でリングフレーム17の下面が台座部65の上面に載せられ、爪部66が閉じてテープ18の上面に当接して、台座部65と爪部66との間にリングフレーム17が挟持される。
【0048】
以上の保持工程によってチャックテーブル34を含む保持機構60にワークセット20を保持させたら、図4および図5に示す分割起点形成工程に進む。分割起点形成工程では、加工装置30の切削ユニット32を分割起点形成機構として用いて、ウェーハ10における凹部15と補強部16との境にリング状の分割起点を形成しながら、補強部16に貼着したテープ18の糊の貼着力を低下させる。
【0049】
分割起点形成工程の準備段階として、X軸移動機構37によるX軸方向でのチャックテーブル34の移動と、Y軸移動機構44によるY軸方向での切削ユニット32の移動とを用いて、切削ブレード31の下方に凹部15と補強部16との境が位置するように、水平方向でのワークセット20と切削ユニット32との相対的な位置関係を調整する。
【0050】
続いて、制御部72はスピンドルモータを駆動させて切削ブレード31を回転させつつ、Z軸移動機構45を動作させて切削ユニット32を下降させる。切削ユニット32が下降すると、回転する切削ブレード31の下縁部が表面11側からウェーハ10に切り込んで、凹部15と補強部16との境に分割起点が形成される。本実施形態における分割起点の形成は、切削ブレード31をウェーハ10の厚み方向に貫通させるフルカットで実施され、切削ブレード31の外縁は、ウェーハ10を貫通してウェーハ10に貼着されているテープ18まで達する(図5参照)。凹部15と補強部16との境には、補強部16の内周面に沿ってテープ18の筒状部182が貼着されているため、切削ブレード31は筒状部182の箇所に切り込まれる。
【0051】
制御部72は、回転する切削ブレード31を凹部15と補強部16との境に切り込ませつつ、回転機構42を動作させてチャックテーブル34を回転させる。チャックテーブル34の回転によって、保持機構60に保持されたワークセット20が回転し、切削ブレード31がウェーハ10の周方向に沿って円形に分割起点を形成する。
【0052】
制御部72は、切削ブレード31による切削加工で凹部15と補強部16との境に分割起点を形成しながら、紫外線照射部68からの紫外線UVの照射を実施させる。紫外線照射部68から照射された紫外線UVは、支持部67の下面に入射して支持部67の上面から射出される。支持部67の上面にはテープ18が支持されており、特に、筒状部182から周縁部183にかけての領域が支持部67上に支持されている。従って、支持部67の上面から射出された紫外線UVは、分割起点の形成に際して切削ブレード31が切り込む筒状部182と、筒状部182に連続する周縁部183の一部とに照射されて、当該照射箇所でテープ18の糊(紫外線硬化型の糊)を硬化させる。
【0053】
紫外線UVの照射によってテープ18の糊が硬化する領域は、補強部16の内周面および底面に対してテープ18が貼着されている領域であり、糊の硬化によって補強部16に対するテープ18の貼着力が低下する。一方、支持部67および紫外線照射部68は、凹部15の底面に貼着されているテープ18の中央部181に対しては、紫外線を照射しないように配置されているので、凹部15の底面に対するテープ18の貼着力は低下せずに維持される。このように、分割起点形成工程では、補強部16に対してテープ18の貼着力が低下する形態で紫外線の照射を行いながら、凹部15と補強部16との境に分割起点を形成する。
【0054】
分割起点を形成する際に、紫外線照射部68は回転せずにウェーハ10の周方向で固定された位置にあり、ワークセット20が回転を行うと、リング状の補強部16が紫外線照射部68の上方を旋回して通過する状態になる。補強部16を支持して紫外線UVを透過させる支持部67が補強部16に対応したリング形状(チャックテーブル34を囲繞する形状)であるため、ワークセット20の回転に伴って、ウェーハ10の周方向の全体に亘って、紫外線照射部68から発した紫外線UVを、補強部16に貼着されたテープ18(筒状部182、周縁部183の一部)に照射させることができる。
【0055】
凹部15と補強部16との境にリング状の分割起点を形成し、且つ、補強部16に貼着されたテープ18の糊をウェーハ10の周方向全体で硬化させるために、分割起点形成工程では、切削ブレード31及び紫外線照射部68に対してワークセット20を少なくとも一回転(360°)以上回転させる。
【0056】
ウェーハ10に対するリング状の分割起点の形成と、補強部16に貼着されたテープ18の貼着力の低下とを行ったら、分割起点形成工程を完了して、除去工程(図6)に移行する。除去工程では、テープ18から補強部16を離間させ凹部15から補強部16を除去する。
【0057】
図6に示すように、除去工程では、凹部15と補強部16の境に分割起点を形成した後のウェーハ10から、ピックアップ部78を備えた搬送機構77によって補強部16を引き上げて除去する。搬送機構77は、Y軸方向およびZ軸方向へ移動可能な支持板79を有しており、支持板79の下面に、ウェーハ10の周方向に位置を異ならせて複数のピックアップ部78が設けられている。個々のピックアップ部78は、ウェーハ10の径方向に移動可能であり、補強部16を下方から支持可能な皿型の形状を有している。
【0058】
分割起点形成工程が完了したら、制御部72は、X軸移動機構37によってX軸方向でのチャックテーブル34の位置を制御して、搬送機構77が補強部16を除去することが可能な位置にチャックテーブル34を位置づける。制御部72は、搬送機構77を動作させて、チャックテーブル34の上方に支持板79を位置させる。続いて、複数のピックアップ部78の間隔を広げた状態で支持板79を下降させて、各ピックアップ部78が補強部16の周囲でテープ18の周縁部183に接する位置まで下降させる。そして、複数のピックアップ部78の間隔を狭めて、各ピックアップ部78を補強部16の底面側に入り込ませる。この状態で支持板79を上昇させることにより、図6に示すように、補強部16がテープ18から上方へ離間して、凹部15から補強部16が分離される。
【0059】
このようにして、除去工程では凹部15(厳密には、ウェーハ10のうち凹部15によって薄化された部分)から補強部16が除去される。除去工程の前の分割起点形成工程で、凹部15と補強部16の境の分割起点の形成と同時に、紫外線UVの照射によって補強部16に対するテープ18の貼着力を低下させているため、分割起点形成工程の後でテープ18の硬化を待たずに直ちに除去工程を行い、補強部16の除去を実施することができる。
【0060】
除去工程では、制御部72は昇降機構69を動作させて支持部67を上昇させる。図6に示すように、テープ18の周縁部183のうち支持部67が支持する領域が、中央部181とほぼ同じ高さになる位置まで、支持部67を上昇させる。これにより、補強部16を除去した後に、チャックテーブル34の周囲でテープ18の弛みを抑制してテープ18を適切なテンションで支持することができる。
【0061】
保持工程以降の分割起点形成工程および除去工程では、吸引源64の動作による保持面35でのウェーハ10の吸引保持が継続されており、補強部16の除去を実施する前から後にかけて、凹部15に対応するウェーハ10の中央領域がテープ18を介して保持面35に保持され続けている。また、分割起点形成工程では、テープ18の中央部181が紫外線UVの照射範囲から外れているため、テープ18の中央部181はウェーハ10の中央領域(凹部15の底面)に貼着した状態が維持されている。従って、補強部16を除去した後も、ワークセット20の補強部16以外の部分は、チャックテーブル34を含む保持機構60によって安定して保持される。
【0062】
以上に説明した通り、本実施形態の補強部除去方法および加工装置30によれば、ウェーハ10の凹部15と補強部16との境にリング状の分割起点を形成しながら、補強部16に貼着したテープ18の糊の貼着力を低下させており、分割起点の形成と同時に、テープ18から補強部16を離間させることができる状態になっている。従って、分割起点の形成後に、直ちに除去工程を行って素早く補強部16を除去することが可能である。
【0063】
加工装置30では、補強部16の除去後に、分割予定ライン13に沿って切削ブレード31による切削加工を行ってもよい。分割予定ライン13に沿う切削加工は、ウェーハ10の厚みの途中まで切削ブレード31を切り込ませるハーフカットでもよいし、ウェーハ10の厚み全体に切削ブレード31を切り込ませる(貫通させる)フルカットでもよい。ハーフカットの場合は、ウェーハ10において分割予定ライン13に沿う有底溝(ハーフカット溝)が形成される。フルカットの場合は、ウェーハ10において分割予定ライン13に沿う貫通溝(フルカット溝)が形成される。
【0064】
分割予定ライン13に沿う切削加工は、例えば以下のように実施される。制御部72は、X軸移動機構37とY軸移動機構44とによって、X軸方向およびY軸方向でのチャックテーブル34と切削ブレード31との相対的な位置を調整させて、切削の対象である分割予定ライン13の端部の上方に切削ブレード31を位置付ける。
【0065】
続いて、制御部72は、スピンドルモータを駆動して切削ブレード31を回転させながら、Z軸移動機構45によって切削ユニット32を下降させ、チャックテーブル34の保持面35に保持されたウェーハ10に対して切削ブレード31を切り込ませる。
【0066】
制御部72は、切削ブレード31をウェーハ10に切り込ませながら、X軸移動機構37によってチャックテーブル34をX軸方向に移動させることによって、X軸方向に延びる分割予定ライン13に沿って切削加工を行わせる。
【0067】
一本の分割予定ライン13に沿う切削加工が完了したら、制御部72は、Z軸移動機構45によって切削ユニット32を上昇させ、切削ブレード31をウェーハ10から離間させる。続いて、制御部72は、Y軸移動機構44によってY軸移動テーブル49をY軸方向に移動(割り出し送り)させ、次の未切削の分割予定ライン13の端部の上方に切削ブレード31を位置付ける。そして、上記と同様に、Z軸移動機構45によって切削ブレード31をZ軸方向の下方へ移動(切り込み送り)させ、X軸移動機構37によってチャックテーブル34をX軸方向へ移動させ、分割予定ライン13に沿う切削加工を行う。
【0068】
Y軸方向に並ぶ全ての分割予定ライン13に沿う切削が完了したら、制御部72は、回転機構42によってチャックテーブル34を90度回転させる。これにより、チャックテーブル34上のウェーハ10は、未切削の複数の分割予定ライン13がY軸方向に並ぶ(X軸方向に向けて延びる)状態になる。そして、上記と同様にして、未切削の全ての分割予定ライン13に沿って順次切削加工を行わせる。
【0069】
上記実施形態では、加工装置30が分割起点形成機構として切削ユニット32を備えているが、加工装置の構成はこれに限定されない。例えば、分割起点形成機構として、レーザー加工ユニットを適用することも可能である。つまり、ウェーハ10の凹部15と補強部16との境に分割起点を形成するための加工装置として、切削加工を行う切削装置に代えて、レーザー加工を行うレーザー加工装置を適用してもよい。この場合の分割起点の形成は、例えば、レーザー加工による改質層の形成や、レーザー加工によるフルカットである。
【0070】
レーザー加工によるフルカットは、上記実施形態の切削ブレード31によるフルカットと同様に、凹部15と補強部16との境でウェーハ10を厚み方向に貫通する溝を形成する形態の加工である。
【0071】
レーザー加工による改質層の形成は、レーザー光線の照射によって、ウェーハ10の内部の密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲と異なる状態にさせるものであり、改質層は周囲よりも強度が低下した領域になる。従って、凹部15と補強部16との境に改質層を形成することで、除去工程で所定の外力を加えることにより凹部15から補強部16を容易に分離させて除去できる。
【0072】
分割起点形成機構としてレーザー加工ユニットを用いる場合、上記実施形態と同様に、分割起点形成工程において、凹部15と補強部16との境にリング状の分割起点を形成しながら、補強部16に貼着したテープ18の糊の貼着力を低下させる。その際に、レーザー加工ユニットからレーザー光線を照射する箇所と、紫外線照射部68から支持部67を介して紫外線UVを照射する箇所とが、ウェーハ10の周方向で異なる配置になるように構成することが好ましい。これにより、レーザー加工ユニットを用いたレーザー加工と、紫外線照射部68を用いたテープ18の糊の硬化とを、互いに干渉させずに効率的に行うことができる。
【0073】
なお、本発明の実施の形態は上記の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。従って、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上に説明したように、本発明の補強部除去方法および加工装置によれば、ウェーハの凹部から補強部を迅速に除去することが可能であり、補強部を備えたウェーハからデバイスの製造を行う際の生産効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0075】
10 :ウェーハ
11 :ウェーハの表面(他方の面)
12 :ウェーハの裏面(一方の面)
13 :分割予定ライン
14 :デバイス
15 :凹部
16 :補強部
17 :リングフレーム
18 :テープ
19 :開口
20 :ワークセット
30 :加工装置
31 :切削ブレード
32 :切削ユニット(分割起点形成機構)
33 :基台
34 :チャックテーブル
35 :保持面
36 :クランプ
37 :X軸移動機構
41 :X軸移動テーブル
42 :回転機構
43 :コラム
44 :Y軸移動機構
45 :Z軸移動機構
49 :Y軸移動テーブル
53 :Z軸移動テーブル
54 :スピンドル
60 :保持機構
61 :枠体
62 :保持板
63 :外周面
64 :吸引源
65 :台座部
66 :爪部
67 :支持部
68 :紫外線照射部
69 :昇降機構
70 :紫外線発光源
71 :投光部
72 :制御部
75 :搬送機構
76 :搬送パッド
77 :搬送機構
78 :ピックアップ部
79 :支持板
181 :テープの中央部
182 :テープの筒状部
183 :テープの周縁部
UV :紫外線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7