(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158899
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】レンズアダプター
(51)【国際特許分類】
G03B 17/14 20210101AFI20241031BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20241031BHJP
【FI】
G03B17/14
G02B7/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074520
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】宮川 和典
(72)【発明者】
【氏名】今村 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】堺 俊克
(72)【発明者】
【氏名】為村 成亨
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正英
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘人
【テーマコード(参考)】
2H044
2H101
【Fターム(参考)】
2H044AE10
2H101EE06
2H101EE37
2H101EE95
(57)【要約】
【課題】カメラ本体にレンズ部を接続する際に、種々の既存カメラのレンズマウント部分に容易に接続可能であり、レンズ部の焦点距離に応じて、バックフォーカス長が調整可能であり、レンズ部をカメラ本体の撮像素子に近接配置可能なレンズアダプターを提供する。
【解決手段】カメラ本体7のレンズマウント部3とレンズ部1を接続するレンズアダプター10であって、カメラ本体7のレンズマウント部3に対し、光軸が一致するように接続されて、カメラ本体7との間で、光軸方向に移動可能に配設された中空形状のレンズ部位置調整部材5と、レンズ部位置調整部材5に対し、光軸が一致するように接続され、レンズ部位置調整部材5との間にレンズ部1を保持するようにして、光軸方向に移動可能に配設された中空形状のレンズ部保持部材4と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ本体のレンズマウント部と撮影レンズ部を接続するレンズアダプターであって、
前記カメラ本体のレンズマウント部に対し、光軸が一致するように接続され、前記カメラ本体との間で、光軸方向に移動可能に配設された中空形状のレンズ部位置調整部材と、
該レンズ部位置調整部材に対し、光軸が一致するように接続され、該レンズ部位置調整部材との間に前記撮影レンズ部を保持するようにして、光軸方向に移動可能に配設された中空形状のレンズ部保持部材と、を備えたことを特徴とするレンズアダプター。
【請求項2】
前記カメラ本体のレンズマウント部の光軸と、前記レンズ部位置調整部材の光軸が一致するように接続される構造は、前記カメラ本体のレンズマウント部の内側側面に形成されたカメラ本体のねじ部と、このカメラ本体のねじ部と螺合する、前記レンズ部位置調整部材のねじ部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のレンズアダプター。
【請求項3】
前記カメラ本体のねじ部と前記レンズ部位置調整部材のねじ部の螺合位置を変化させてバックフォーカス量を調整可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載のレンズアダプター。
【請求項4】
前記カメラ本体のねじ部と前記レンズ部位置調整部材のねじ部の螺合状態のゆるみを防止するロックナットが、前記レンズ部位置調整部材の外側側面に形成されたねじ部に螺合されていることを特徴とする請求項2に記載のレンズアダプター。
【請求項5】
前記レンズ部位置調整部材と、前記レンズ部保持部材の光軸が一致するように接続される構造は、前記レンズ部位置調整部材の側面に形成されたレンズ部位置調整部材のねじ部と、このレンズ部位置調整部材のねじ部と螺合する、前記レンズ部保持部材の側面に形成されたレンズ部保持部材のねじ部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載のレンズアダプター。
【請求項6】
前記レンズ部位置調整部材と前記レンズ部保持部材のいずれか一方に、前記撮影レンズ部の光入射側の外周部を支持する光入射側円環状支持部を備え、いずれか他方に、前記撮影レンズ部の光出射側の外周部を支持する光出射側円環状支持部を備え、前記レンズ部位置調整部材のねじ部と前記レンズ部保持部材のねじ部を螺合して、前記レンズ部位置調整部材と前記レンズ部保持部材の相対位置を、該レンズ部位置調整部材および該レンズ部保持部材の光軸方向に変化させることにより、前記光入射側円環状支持部と前記光出射側円環状支持部との間に前記撮影レンズ部を挟持して位置決めすることを特徴とする請求項1に記載のレンズアダプター。
【請求項7】
前記レンズ部位置調整部材の中空部に、絞り用開口部を設けた絞り板部材と、この絞り板部材と前記レンズ部位置調整部材の間隔を調整するスペーサー部材とを配置することを特徴とする請求項1~6のうちいずれか1項に記載のレンズアダプター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ部とレンズ部とを互いの光軸を一致させつつ、焦点を合致させてレンズマウント部に装着されるレンズアダプターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラ付き携帯電話、モバイルパソコンなどの普及と共に、直径10mm以下の小型レンズの需要が高まっており、それとともにそれらの画質等の性能も向上している。
その一方で、このような小型レンズを既存の各種カメラに取り付けようとしても、その取付操作は必ずしも容易ではない。
通常、カメラ本体にレンズを取り付ける場合、カメラ製造メーカの規格に沿ったレンズマウントに適合するレンズ取付け用部品(例えば、鏡筒やレンズマウント受け部等)とレンズは一体化された状態に設定されている必要がある。カメラ製造メーカの規格に沿っていない、特にレンズマウントの径よりも小さいレンズを用いる場合は、レンズをカメラ本体に接続すること自体が困難であり、さらにレンズマウントの規格に合致していないレンズを用いる場合は、前述の接続が困難な事象に加えて、バックフォーカス長が調整できない、との理由から、ピントを合わせることが困難となる。
【0003】
従来より、カメラ本体にレンズ部を装着するためのレンズホルダーが市販されており、その一例として(例えば、株式会社杉藤製の外径5mmレンズ用のレンズホルダー:TS-0101H)は、レンズマウントがCマウントであるカメラ本体に、口径5mmのレンズを装着するためのものとされている。但し、このような従来技術によってはバックフォーカス長の調整範囲に限界があるために、ピントを調整しきれないことも多く、このような場合には、得られた撮影画像にボケが生じていることが問題となっていた。
【0004】
一方、小型レンズは、一般的な写真撮影だけではなく、評価、測定、あるいは光学実験等の用途に用いることが要望されている。
従来の小型レンズをカメラ(撮像デバイス)に接続する技術として、人間の眼球形状に合わせたコンタクトレンズ上にカメラを接続したもの、例えば下記特許文献1には「アクティブなコンタクトレンズ上のイメージ・キャプチャー・コンポーネント」が記載されている。
【0005】
さらに、TOMBOと称される重複像眼方式のカメラに対して、複数の小型レンズからなるレンズ群を隔壁と称されるレンズ保持機構により接続保持する手法が知られている(下記特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US20140098226A1米国特許明細書
【特許文献2】特開2001-61109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術によっては、コンタクトレンズ(外径30mm前後)を、そのレンズサイズよりも小型な撮像デバイスに直接配設した一体構造とされているため、このコンタクトレンズを既存のカメラのレンズマウントに接続することはできない。
また、上記特許文献2に記載の技術によっては、特許文献1に記載のものと同様に、種々の既存カメラのレンズマウント部分に接続することは難しく、また、撮影レンズを焦点距離の異なるものに変更したときに、バックフォーカス長の距離調整を容易に行うことができないという問題がある。
【0008】
本発明は、カメラ本体にレンズ部を接続する際に、種々の既存カメラのレンズマウント部分に容易に接続することが可能であり、レンズ部の焦点距離に応じて、バックフォーカス長の調整を容易に行うことが可能で、レンズ部をカメラ本体の撮像素子に近接配置することが可能なレンズアダプターを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のレンズアダプターは、
カメラ本体のレンズマウント部と撮影レンズ部を接続するレンズアダプターであって、
前記カメラ本体のレンズマウント部に対し、光軸が一致するように接続され、前記カメラ本体との間で、光軸方向に移動可能に配設された中空形状のレンズ部位置調整部材と、
該レンズ部位置調整部材に対し、光軸が一致するように接続され、該レンズ部位置調整部材との間に前記撮影レンズ部を保持するようにして、光軸方向に移動可能に配設された中空形状のレンズ部保持部材と、を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
前記カメラ本体のレンズマウント部の光軸と、前記レンズ部位置調整部材の光軸が一致するように接続される構造は、前記カメラ本体のレンズマウント部の内側側面に形成されたカメラ本体のねじ部と、このカメラ本体のねじ部と螺合する、前記レンズ部位置調整部材のねじ部とを備えたことが好ましい。
【0011】
この場合において、前記カメラ本体のねじ部と前記レンズ部位置調整部材のねじ部の螺合位置を変化させてバックフォーカス量を調整可能に構成されていることが好ましい。
また、前記カメラ本体のねじ部と前記レンズ部位置調整部材のねじ部の螺合状態のゆるみを防止するロックナットが、前記レンズ部位置調整部材の外側側面に形成されたねじ部に螺合されていることが好ましい。
【0012】
また、前記レンズ部位置調整部材と、前記レンズ部保持部材の光軸が一致するように接続される構造は、前記レンズ部位置調整部材の側面に形成されたレンズ部位置調整部材のねじ部と、このレンズ部位置調整部材のねじ部と螺合する、前記レンズ部保持部材の側面に形成されたレンズ部保持部材のねじ部とを備えたことが好ましい。
【0013】
また、前記レンズ部位置調整部材と前記レンズ部保持部材のいずれか一方に、前記撮影レンズ部の光入射側の外周部を支持する光入射側円環状支持部を備え、いずれか他方に、前記撮影レンズ部の光出射側の外周部を支持する光出射側円環状支持部を備え、前記レンズ部位置調整部材のねじ部と前記レンズ部保持部材のねじ部を螺合して、前記レンズ部位置調整部材と前記レンズ部保持部材の相対位置を、該レンズ部位置調整部材および該レンズ部保持部材の光軸方向に変化させることにより、前記光入射側円環状支持部と前記光出射側円環状支持部との間に前記撮影レンズ部を挟持して位置決めすることが好ましい。
【0014】
さらに、前記レンズ部位置調整部材の中空部に、絞り用開口部を設けた絞り板部材と、この絞り板部材と前記レンズ部位置調整部材の間隔を調整するスペーサー部材とを配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のレンズアダプターは、レンズ部位置調整部材とレンズ部保持部材を備えて構成されている。レンズ部位置調整部材は、カメラ本体のレンズマウント部のレンズ部に対し、光軸が一致するように接続されて、カメラ本体との間で、光軸方向に移動可能に配設された中空形状の部材であり、他方、レンズ部保持部材は、レンズ部位置調整部材に対し、光軸が一致するように接続され、光軸方向に移動可能に配設されて、レンズ部位置調整部材との間にレンズ部を挟持するように構成された中空形状の部材である。
【0016】
したがって、カメラ本体にレンズ部を接続する際に、適切なサイズのレンズ部位置調整部材とレンズ部保持部材を共通の光軸方向に各々移動させることにより、レンズ部を種々のサイズの既存カメラレンズマウント部分に容易に接続することが可能である。
また、レンズ部位置調整部材は、カメラ本体のレンズマウント部に対し、光軸方向に移動可能に配設されており、また、レンズ部保持部材は、レンズ部位置調整部材に対し、レンズ部位置調整部材との間にレンズ部を保持するようにして、光軸方向に移動可能に配設されているので、レンズ部を確実に保持しつつレンズ部の焦点距離に応じた、バックフォーカス長の調整を容易に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るレンズアダプターを用いてカメラ本体にレンズ装着を行ったときの概念的な構造を示す側断面図(a)、および従来技術においてカメラ本体にレンズ装着を行ったときの概念的な構造を示す側断面図(b)である。
【
図2】本発明の実施例1に係るレンズアダプターのみを詳細に示す側断面図(a)、およびこのレンズアダプターをカメラ本体に装着した状態を詳細に示す側断面図(b)である。
【
図3】本発明の実施例1に係るレンズアダプターの各部材((a)ロックナット、(b)レンズ部位置調整部材、(c)レンズ部保持部材)および(d)レンズ部、の構造を各々説明するための側断面図である。
【
図4】本発明の実施例2に係るレンズアダプターをカメラ本体に装着した状態の構造を詳細に示す側断面図(a)、およびこのレンズアダプターの絞り関係の各部材を示す側断面図(b)である。
【
図5】本発明の実施例1に係るレンズアダプターを用いた撮像例である。
【
図6】本発明の変形例に係るレンズアダプターを用いてFマウントカメラへのレンズ装着を行ったときの概念的な構造を示す側断面図(a)、および従来技術においてカメラ本体にレンズ装着を行ったときの概念的な構造を示す側断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係るレンズアダプターについて、図面を用いて説明する。
<概念>
まず、本実施形態のレンズアダプターの概念について
図1(a)を用いて説明する。なお、
図1(a)では、レンズアダプター10の機能の理解が容易となるように、このレンズアダプター10がカメラ本体7のレンズマウント部3に組み込まれている状態を示す。
また、比較のため、
図1(b)には、従来技術に係る、レンズ部801のカメラ本体807への装着状態を示す。
【0019】
まず、本実施形態のレンズアダプター10は、レンズ部位置調整部材5とレンズ部保持部材4を備えており、さらにロックナット6を備えている。
上記レンズ部位置調整部材5は、カメラ本体7のレンズマウント部3に対して、光軸が一致するように接続されて、カメラ本体7とは、光軸方向に相対的に移動可能に配設された中空形状の部材である。
なお、上記レンズ部位置調整部材5と、カメラ本体7のレンズマウント部3との接続構造は、具体的には、カメラ本体7のレンズマウント部3の内側壁面に形成されたねじ部110Aと、このねじ部110Aと螺合する、レンズ部位置調整部材5の外側壁面に形成されたねじ部100Aとにより構成されている。
【0020】
また、上記レンズ部保持部材4は、レンズ部位置調整部材5に対して、光軸が一致するように接続され、レンズ部位置調整部材5との間にレンズ部1を保持するようにして、レンズ部位置調整部材5とは、光軸方向に相対的に移動可能に配設された中空形状の部材である。すなわち、このレンズ部保持部材4は、レンズ部1の光軸の中心と、カメラ本体7内に配された撮像素子2の光軸が合致した構造となるようにしつつ、レンズ部1のレンズ部位置調整部材5との、光軸方向への相対移動を可能とした構造とされている。
なお、上記レンズ部保持部材4とレンズ部位置調整部材5との接続構造は、具体的には、レンズ部保持部材4の内側壁面に形成されたねじ部110Bと、このねじ部110Bと螺合する、レンズ部位置調整部材5の外側壁面に形成されたねじ部100Bとにより構成されている。
【0021】
上記レンズ部位置調整部材5は、詳しくは、大径部5Aと小径部5Bの2段円環形状をなしており、光入射側に配される大径部5Aの外側壁面には、カメラ本体7のレンズマウント部3と接合するためのねじ部100Aが形成され、他方、光出射側に配される小径部5Bの外側壁面には、レンズ部保持部材4と接合するためのねじ部100Bが形成されている。また、小径部5Bとレンズマウント部3の間隙にレンズ部保持部材4の側壁部が挿入されるように構成されている。
【0022】
また、レンズ部位置調整部材5の内側には、円環状の光入射側レンズ面支持部11が形成され、レンズ部保持部材4の底部には、円環状の光出射側レンズ面支持部12が形成されており、これらレンズ部位置調整部材5の光入射側レンズ面支持部11と、レンズ部保持部材4の光出射側レンズ面支持部12とによって、レンズ部1を厚み方向に挟持するように構成されている。レンズ部1の厚みに応じて、レンズ部位置調整部材5側のねじ部100Bと、レンズ部保持部材4側のねじ部110Bとの螺合関係を調整する(両者のねじ込み方向および量を調整する)。
【0023】
これにより、レンズ部位置調整部材5側のねじ部100Aと、カメラ本体7のレンズマウント部3側のねじ部110Aとの螺合関係を変更して(両者のねじ込み方向および量を調整して)、バックフォーカス長(レンズ部1の光出射側の面と撮像素子2の受光部表面との距離:一般的にレンズ部1の外径が小さいほど、また焦点距離が小さいほど、小さくなる)aを容易に変更することができる。また、レンズマウント部3と規格が異なるレンズ部を、カメラ本体7側のレンズマウント部3に取り付ける際の他、マウント(鏡筒化)されていないレンズ部あるいはマウントの径よりも小さなレンズ部を、カメラ本体7側のレンズマウント部3に取り付ける際においても、カメラ本体7側のレンズマウント部3やレンズ部1側の接続部の形状を変更することなく装着することができる。
【0024】
また、上記ロックナット6の内側には、レンズ部位置調整部材5側のねじ部100Aに螺合するねじ部(不図示)が設けられ、バックフォーカス長aの調整後において、カメラ本体7のレンズマウント部3の先端部分に接続するように配されている。これにより、カメラ本体7側のねじ部110Aとレンズ部位置調整部材5側のねじ部100Aの螺合状態のゆるみを防止して、バックフォーカス長aを所定値に維持することができる。
【0025】
また、レンズ部1の交換およびバックフォーカス長aの調整はねじ部を回転することのみ(前者については、ねじ部100Aとねじ部110Aの螺合調節、およびねじ部100Bとねじ部110Bの螺合調節、後者については、ねじ部100Aとねじ部110Aの螺合調節)で行うことができるので、調整操作が極めて容易である。
【0026】
なお、一般に、撮像素子の受光部表面は例えば1mm厚程度のカバーガラスで覆われており、撮像素子の実際の受光部は最表面より奥に存在する。また撮像管では、2mm厚程度のフェースプレートと称されるガラス基板が受光面の前側に存在する。本実施形態のレンズアダプター10においては、バックフォーカス長aが1mmを大きく下回るような近接配置が可能であるので、上記のような撮像状況に容易に対応することが可能である。
【0027】
<実施形態の具体的な説明>
以下、
図1(a)に記載されている、本発明の実施形態に係るレンズアダプター10を具体的に説明する。この実施形態では、多くのカメラで採用されているレンズマウントである「Cマウント(内径25.4mm、ネジピッチ0.794mm、バックフォーカス長17.526mm)」を用いたCマウント方式を採用している。
なお、本実施形態について詳細に説明する前に、比較例として、従来技術に係るレンズ装着構造について説明する。
【0028】
従来技術に係るレンズ装着構造においては、
図1(b)に示すように、レンズ部801のマウント部813のねじ部810Aと、カメラ本体807のレンズマウント部803のねじ部810Bとを直接、螺合することにより、レンズ部801をカメラ本体807に接合するようにしている。
すなわち、カメラ本体807のレンズマウント部(Cマウント)803に、レンズ部801のレンズマウント部813を合わせ、ねじ部810Aとねじ部810Bとを互いにスクリュー回転して螺合することで接続する。スクリュー回転ができなくなる状態まで挿入したときに、Cマウントのバックフォーカス長aが17.526mmとなるように設計されている。また、Cマウントと同じ開口径でバックフォーカス長aが12.5mmとなるCSマウントに対応するレンズ部であれば、スクリュー回転ができなくなる状態まで挿入したときに所望の12.5mmのバックフォーカス長aが得られる。
しかしながら、このような従来技術に係るレンズ装着構造(比較例)によっては、カメラ本体807とレンズ部801との光軸方向への相対可動範囲が小さく、レンズ部801をカメラ本体807の撮像素子802に近接配置することが難しい。
【0029】
以上に説明した従来技術(比較例)のレンズ装着構造と比較して、以下、
図1(a)に示す本実施形態について詳しく説明する。
本実施形態に係るレンズアダプター10は、前述したように、レンズ部保持部材4の光出射側レンズ面支持部12にレンズ部1を収納した状態で、レンズ部位置調整部材5をこのレンズ部保持部材4にねじ込み(レンズ部位置調整部材5の光入射側レンズ面支持部11によりレンズ部1の光入射側レンズ面が係止される状態に至るまでねじ込み)、レンズ部1を保持する。
また、特に、小型のレンズかつバックフォーカス長の短いレンズを用いることが望まれていることに鑑み、本実施形態に係るレンズ部1としては口径が、例えば5mmのものを用いている。
すなわち、ここで用いたレンズ部1は、例えば、口径5mm、焦点距離5mm、中心厚さ1.87mm、バックフォーカス長3.96mm、F1.0の平凸レンズ(Edmund Optics社製)である。
【0030】
レンズ部1は、その光学特性を良好なものとするため、平面をカメラ本体7側に向け、凸面を光入射側に向けるように配置している。まず、レンズ部保持部材4にレンズ部1の平面側から装填するようにし、レンズ部保持部材4の内側のねじ部110Bと、レンズ部位置調整部材5の外側のねじ部100Bを螺合して、光入射側レンズ面支持部11と光出射側レンズ面支持部12との間隔を狭めていき、レンズ部1が、光入射側レンズ面支持部11と光出射側レンズ面支持部12とにより挟持されるようにしてレンズ部1の厚み方向に、レンズ部1を固定する。
【0031】
ここで使用するレンズ部1の外径は、前述したように例えば5mmであるが、レンズ部1を装着するためにはレンズ外径の5~20%程度の法面をレンズ部1の保持用位置とすることが好ましい。例えば、光入射側レンズ面の外径に対し最外位置から20%の法面位置までの領域を保持用位置としたとすると、光開口径は4mmとなる。
この保持用位置の光入射側レンズ面の外径に対する、最外位置から法面位置までの距離の割合が小さくなり過ぎ、例えば5%より小さくなると、レンズ部1が傾斜し過ぎた状態で保持され、撮像素子2と、光軸を良好に合致させることが困難となる。他方、上記割合が大きくなり過ぎ、例えば20%を超える程度まで大きくなると、レンズ部1の光出射側レンズ面と撮像素子2の間に絞りがあるように作用することとなるため、光利用率低下に伴う感度低下や、糸巻歪による問題が生じる。
したがって、レンズ部1を、
図1(a)に示す向きの平凸レンズにより構成した場合には、この保持用位置の光入射側レンズ面の外径に対する、最外位置から法面位置までの距離の割合を例えば5~20%とすることが好ましい。
【0032】
以下、実際の使用に係る実施例1、2のレンズアダプターについて説明する。
<実施例1>
実施例1に係るレンズアダプターの基本構造は上述した実施形態のものと同様であるので、
図2、3に示す実施例1の各部材の符号は、上記実施形態の対応する部材の符号に200を加算した符号により表し、対応する部分の説明は省略し、相違する部分について詳しく説明する。
図2(a)は、実施例1に係るレンズアダプター210の構成を示す側断面図であり、
図2(b)は、このレンズアダプター210をカメラ本体207に装着した状態を示す側断面図である。
また、
図3は、実施例1に係るレンズアダプター210の各部材((a)ロックナット206、(b)レンズ部位置調整部材205、(c)レンズ部保持部材204)および(d)レンズ部(平凸レンズ)201、の構造を各々説明するための側断面図である。
【0033】
前述したように、レンズ部保持部材204の内側壁面とレンズ部位置調整部材205の小径部5Bにおける外側壁面には、Cマウント規格に基づくねじ部210Bとねじ部200Bが螺設されており、互いに螺合した状態で、その螺入量(ねじ回転量)を調整することによりバックフォーカス長aの調整が可能とされている。
なお、ねじ部を最後まで螺入した状態においても、バックフォーカス長aが最小値で止まるように設定して、撮像素子(撮像デバイス)202と、レンズ部201およびレンズアダプター210との双方が衝突しない構造に設定することが肝要である。
【0034】
また、バックフォーカス長aの調整手法としては、まず、カメラ本体207に対し、レンズアダプター210を最も奥まで螺入し、次に、撮像素子202からの出力画像を監視しながらねじ部を回転してレンズ部位置調整部材205を光入射側に移動していき、最もピントが合った位置でねじ部の回転を停止する。厳密にはカメラの限界解像度並みの評価用チャートを用いてピント合わせをすることが好ましい。なお、実施例1における画角は、例えば60度に設定される。
【0035】
さらにこの後、ロックナット206を、レンズ部位置調整部材205の外側壁面のねじ部200Aに螺合させ、レンズ部位置調整部材205が回転しなくなる位置まで挿入することでバックフォーカス長aが変化しないように位置固定する。このようにロックナット6を螺合させたことにより、レンズアダプター210に振動などが生じてもバックフォーカス長aを所望の位置に確実に固定することができる。
【0036】
また、カメラ本体7のレンズマウント部203は、レンズ部201を交換する際にも構成を変更することなく、既存のものを用いることができる。
すなわち、レンズアダプター210を用いることにより、レンズマウントの形式に対応するバックフォーカス長とは異なるバックフォーカス長aのレンズ部201を使用しても、良好なピント位置での光学画像が得られる。例えば、バックフォーカス長aを1mm以下と極めて小さく設定することも可能である。
【0037】
なお、レンズ部201を、焦点距離が異なるレンズ部に交換する場合は、挿入しているレンズ部201を取り外し、交換するレンズ部に入れ替え、バックフォーカス長を上述した手法により調整することになる。
一方、レンズ部201とは外形が異なるレンズ部に交換する場合は、その寸法に合わせたレンズ部保持部材204および/またはレンズ部位置調整部材205を製作すれば、カメラ本体207のレンズマウント部203等は変更しないで流用できる構造となっている。
【0038】
<実施例2>
実施例2に係るレンズアダプターの基本構造は、絞り関係の各部材を除いて、上述した実施形態のものと同様であるので、
図4に示す実施例2の各部材の符号は、上記実施形態の対応する部材の符号に300を加算した符号により表し、対応する部分の説明は省略し、相違する部分について詳しく説明する。
図4(a)は、このレンズアダプター310をカメラ本体307に装着した状態を示す側断面図であり、
図4(b)は、このレンズアダプター310に組み込まれる絞り関係の各部材(絞り固定部材308、絞り板309、およびスペーサー320)の構成を示す側断面図である。
【0039】
例えば、
図4(a)に示すように、レンズ部位置調整部材305の内側に、絞り板309、およびスペーサー(必要に応じて設置可能)320を配置することで、レンズ部310の光入射側に、所望の開口径(例えば、2φ)の絞り板309を配置することができる。これにより、実施例2における画角は、例えば31.86度に設定され、実施例1のレンズアダプター210を用いた場合よりも小さく設定することが可能である。
また、レンズ部301の光入射面と絞り板309との距離は、両者の間に、例えばねじやワッシャ等を適宜挿入して変更調整することが可能である。
【0040】
なお、絞り固定部308は円筒状をなし、レンズ部位置調整部材305内に嵌め入れて絞り板309の周辺部を係止することにより、絞り板309を所定位置に固定するように構成されている。勿論、絞り固定部308とレンズ部位置調整部材305とに、互いに螺合するねじ部を設けるか、絞り板309とレンズ部位置調整部材305とに、互いに螺合するねじ部を設けることにより、絞り板309を所定位置に固定するように構成してもよい。
一方、外形が異なるレンズ部に変更する場合は、その寸法に合わせたレンズ部保持部材304および/またはレンズ部位置調整部材305を製作すれば、カメラ本体307のレンズマウント部303等は変更しないで流用できる構造となっている。
【0041】
図5は、上記実施例1に係るレンズアダプター210に前述したレンズ部(平凸レンズ)201を装填し、Cマウントを用い2/3インチモノクロカメラ(オムロンセンテック製)により撮影した際の画像を示すものである。
画像全域に亘り、レンズ部201で結像された光学像が良好であることを確認することができる。
【0042】
なお、画像周辺領域の歪やボケは、レンズアダプター210を用いたことによるものではなく、レンズ部201の特性そのものであり、換言すると、レンズ部201の画像評価に適用することが可能である。
また、この歪やボケを抑制するためには、例えば、装填したレンズ部201の凸面側(光入射側)に、レンズ部201側に凸面を向けた平凸レンズを近接配置してなる2枚レンズ構成のレンズ群を設けるようにすれば大幅な画質改善が見込まれる。このように、本実施例のレンズアダプター210を用いれば、実際の使用に係るレンズによる、レンズ単体評価やレンズ配置に関する光学設計の確認を行うことが可能となる。
【0043】
<変形例>
本発明のレンズアダプターとしては、上記実施形態および上記各実施例のものに限られるものではなく。その他の種々の態様の変更が可能である。例えば、上記では、Cマウント(およびCFマウント)規格のカメラを用いているが、他の種類のマウントを用いることも勿論可能である。
例えば、
図6は、ニコン製Fマウントを使用したカメラについても、本実施形態の変形例に係るレンズアダプターを用いることができることを説明するものである。なお、
図6(a)は、変形例に係るレンズアダプターを用いて、Fマウントを使用したカメラ本体に装着した状態を示す側断面図であり、
図6(b)は、従来技術に含まれるものであって、レンズアダプターを用いずに、レンズ部901とカメラ本体907のレンズマウント部(Fマウント)911を装着した状態を示す側断面図である。
【0044】
なお、
図6(a)の変形例に係るレンズアダプター410の基本構造は、
図1(a)に係る実施形態のものと同様の部分も多いので、変形例の各部材の符号は、上記実施形態の対応する部材の符号に400を加算した符号により表し、対応する部分の説明は省略し、相違する部分について詳しく説明する。
なお、レンズアダプターを用いない場合のレンズ装着構造については、
図1(b)に係る従来技術のものと同様の部分も多いので、
図6(b)に示す各部材の符号は、
図1(b)の従来技術の各部材の符号に100を加算した符号により表し、対応する部分の説明は省略し、必要に応じて適宜、説明を加える。
【0045】
まず、
図6(b)に示すように、レンズアダプターを用いない場合のレンズ装着構造については、レンズ部901のマウント部913をカメラ本体907のFマウントに係るレンズマウント部911に嵌合(接続)し、レンズ部901の光軸が撮像素子902の光軸と合致するように設定する。しかし、このようなレンズ装着構造によっては、マウント形式が異なるレンズ部を用いることが要求される場合や、レンズマウントで決定されるバックフォーカス長aを変更したい場合に対応することが困難である。
【0046】
本変形例のレンズアダプター410を用いることにより、このような問題を解決できる。
すなわち、カメラ本体407に対するレンズアダプター410の装着に関して、Fマウントはねじ構造部がないため、一旦、FマウントからCマウントに変換することで、本変形例に係るレンズアダプター410を装着することが可能となる。また、レンズマウント毎にバックフォーカス長aが異なり、Fマウントでは46.5mmに設計されているため、撮像素子(フィルム等とすることも可能)402は、その受光面がCマウントを用いたカメラ(バックフォーカス長a:17.526mm)に比べると、カメラの内部側に配置されていることになる。
【0047】
具体的には、
図6(a)に示すように、カメラ本体407側のFマウントをCマウントに変換するレンズマウント変換用部材413を用い、レンズアダプター410のレンズ部位置調整部材405の外側壁面に形成されたねじ部500Aと、レンズマウント変換用部材413と接続(または一体化)されたレンズマウント部403の内側壁部に形成されたねじ部510Aとの螺入調整を行うことができる。これにより、Fマウントを用いるカメラ本体407であっても、種々の形態、種々のサイズのレンズ部410と容易に接続することが可能である。
【0048】
本発明のレンズアダプターとしては、上記に説明した形状や構造の部材を組み合わせたものに限られるものではなく、種々の形状や構造の部材を組み合わせたものに変更が可能である。例えば、上記実施形態においては、レンズ部保持部材がレンズ部位置調整部材の外側に装着されるように構成されているが、レンズ部位置調整部材がレンズ部保持部材の内側に装着されるように構成することも可能である。
【0049】
また、上記実施形態においては、レンズ部位置調整部材が大径部と小径部の2段円環形状をなしているが、レンズ部位置調整部材としてはこれに限られるものではなく、例えば、上述したように、レンズ部保持部材をレンズ部位置調整部材の内側に装着するように構成した場合には、レンズ部位置調整部材を、その全長に亘って同一径の円筒形状とすることも可能である。
【符号の説明】
【0050】
1、201、301、401、801、901 レンズ部
2、202、302、402、802、902 撮像素子
3、203、303、403、803、911 レンズマウント部
4、204、304、404 レンズ部保持部材
5、205、305、405 レンズ部位置調整部材
5A、405A 大径部
5B、405B 小径部
6、206、306、406 ロックナット
7、207、307、407、807、907 カメラ本体
10、210、310、410 レンズアダプター
11、411 光入射側レンズ支持部
12、412 光出射側レンズ支持部
100A、100B、110A、110B、200A、200B、210B、220A、500A、500B、510A、510B ねじ部
308 絞り板固定部
309 絞り板
320 スペーサー
413 レンズマウント変換用部材(Fマウント→Cマウント)
813、913 マウント部
a バックフォーカス長