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特開2024-158900アライメント装置、アライメント方法、及び成膜装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158900
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】アライメント装置、アライメント方法、及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/68 20060101AFI20241031BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20241031BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20241031BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20241031BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241031BHJP
   H10K 59/00 20230101ALI20241031BHJP
   H10K 77/10 20230101ALI20241031BHJP
   H10K 71/16 20230101ALI20241031BHJP
【FI】
H01L21/68 F
H01L21/68 N
C23C14/50 F
H10K50/00
H10K59/10
H10K59/00
H10K77/10
H10K71/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074523
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長岡 健
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
5F131
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107FF15
3K107GG32
3K107GG33
3K107GG34
3K107GG52
3K107GG54
4K029AA09
4K029AA24
4K029BB03
4K029BD01
4K029CA01
4K029DA03
4K029HA02
4K029HA03
4K029HA04
4K029JA01
4K029JA06
4K029KA01
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131AA33
5F131BA03
5F131EA02
5F131EA10
5F131EA22
5F131EA23
5F131EA24
5F131EB11
5F131EB41
5F131FA10
5F131FA32
5F131FA33
5F131KA03
5F131KA14
5F131KA44
5F131KA54
5F131KB07
5F131KB43
(57)【要約】
【課題】基板とマスクとのアライメント精度の向上を図ることのできるアライメント装置、アライメント方法、及び成膜装置を提供する。
【解決手段】
マスク16を支持するマスク台33と、基板27を支持する静電チャック25と、基板27とマスク16との相対的な位置関係を測定する測定手段と、前記測定手段の測定結果に基づいて、基板27とマスク16との相対的な位置を変更するように、静電チャック25を駆動する磁気浮上ステージ2と、を備えるアライメント装置であって、マスク16及び基板27のうちの少なくともいずれか一方には凸部が設けられており、前記凸部が他方に接触した状態で、前記測定手段による測定、及び磁気浮上ステージ2による駆動動作のうちの少なくともいずれか一方が行われることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクを支持するマスク支持手段と、
基板を支持する基板支持手段と、
前記基板と前記マスクとの相対的な位置関係を測定する測定手段と、
前記測定手段の測定結果に基づいて、前記基板と前記マスクとの相対的な位置を変更するように、前記マスク支持手段及び前記基板支持手段のうちの少なくともいずれか一方を駆動する駆動手段と、
を備えるアライメント装置であって、
前記マスク及び前記基板のうちの少なくともいずれか一方には凸部が設けられており、前記凸部が他方に接触した状態で、前記測定手段による測定、及び前記駆動手段による駆動動作のうちの少なくともいずれか一方が行われることを特徴とするアライメント装置。
【請求項2】
前記凸部を除く領域では、前記マスクと前記基板とが離れた状態で、前記測定手段による測定、及び前記駆動手段による駆動動作のうちの少なくともいずれか一方が行われることを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項3】
前記駆動手段による駆動動作が行われた後に、前記基板と前記マスクとを全面的に接触させる動作が行われることを特徴とする請求項1または2に記載のアライメント装置。
【請求項4】
前記マスクを前記基板に向かって吸引する吸引手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のアライメント装置。
【請求項5】
前記吸引手段は、前記基板を介して前記マスクとは反対側で移動可能に設けられた磁石であり、前記磁石の移動により前記マスクを吸引する吸引力が変化することを特徴とする請求項4に記載のアライメント装置。
【請求項6】
前記吸引手段は、前記基板と前記マスクを静電吸着力により吸着させるための静電チャックであり、前記静電チャックに印加される電圧の変化によって前記マスクを吸引する吸引力が変化することを特徴とする請求項4に記載のアライメント装置。
【請求項7】
前記吸引手段は、
前記凸部を前記他方に接触させるための第1の吸引手段と、
前記基板と前記マスクとを全面的に接触させるための第2の吸引手段と、
を有することを特徴とする請求項4に記載のアライメント装置。
【請求項8】
前記第1の吸引手段は、前記基板を介して前記マスクとは反対側で移動可能に設けられた第1の磁石であり、
前記第2の吸引手段は、前記基板を介して前記マスクとは反対側で移動可能に設けられ、かつ、前記第1の磁石とは独立して移動可能に設けられた第2の磁石であることを特徴とする請求項7に記載のアライメント装置。
【請求項9】
前記第1の吸引手段は、前記基板と前記マスクを静電吸着力により吸着させるための第1の静電チャックであり、
前記第2の吸引手段は、印加される電圧が前記第1の静電チャックとは独立して制御され、かつ、前記基板と前記マスクを静電吸着力により吸着させるための第2の静電チャックであることを特徴とする請求項7に記載のアライメント装置。
【請求項10】
請求項1または2に記載のアライメント装置を用いて、前記基板と前記マスクとのアライメントを行うことを特徴とするアライメント方法。
【請求項11】
前記基板と前記マスクとを接触させない状態で、前記駆動手段によって前記基板と前記マスクとの位置ずれ量が第1の閾値以下となるように前記基板と前記マスクとのアライメントを行う第1のアライメント工程と、
前記凸部を前記他方に接触させた状態で、前記駆動手段によって前記基板と前記マスクとの位置ずれ量が前記第1の閾値よりも値の小さな第2の閾値以下となるように前記基板と前記マスクとのアライメントを行う第2のアライメント工程と、
を有することを特徴とする請求項10に記載のアライメント方法。
【請求項12】
請求項1または2に記載のアライメント装置と、
前記基板に薄膜を形成する成膜源と、
を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項13】
前記成膜源により薄膜が形成された後に、前記基板は切り出されるように構成されており、前記凸部は、前記基板における切り出される範囲外に設けられていることを特徴とする請求項12に記載の成膜装置。
【請求項14】
前記成膜源により薄膜が形成された後に、前記基板は切り出されるように構成されており、前記凸部は、前記マスクのうち前記基板の切り出される範囲外に接触する位置に設けられていることを特徴とする請求項12に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板とマスクとのアライメントを行うためのアライメント装置、アライメント方法、及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置(有機ELディスプレイ)を製造するための成膜装置においては、基板とマスクとのアライメント精度を如何に高めるかが品質上重要である。例えば、特許文献1には、基板とマスクとのアライメント精度を高める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-83311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、増々、基板とマスクとのアライメントの高精度化が求められている。例えば、基板とマスクとの位置関係の測定精度を如何に高めるか、また、基板とマスクとの位置決め動作を終了した後に、基板とマスクとを全面的に接触させる動作の際に発生し得る基板とマスクとの位置ずれを如何に抑制するかが課題となっている。
【0005】
本発明の目的は、基板とマスクとのアライメント精度の向上を図ることのできるアライメント装置、アライメント方法、及び成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0007】
本発明のアライメント装置は、
マスクを支持するマスク支持手段と、
基板を支持する基板支持手段と、
前記基板と前記マスクとの相対的な位置関係を測定する測定手段と、
前記測定手段の測定結果に基づいて、前記基板と前記マスクとの相対的な位置を変更するように、前記マスク支持手段及び前記基板支持手段のうちの少なくともいずれか一方を駆動する駆動手段と、
を備えるアライメント装置であって、
前記マスク及び前記基板のうちの少なくともいずれか一方には凸部が設けられており、前記凸部が他方に接触した状態で、前記測定手段による測定、及び前記駆動手段による駆動動作のうちの少なくともいずれか一方が行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板とマスクとのアライメント精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1に係る成膜装置の概略構成図
図2】実施例1に係る磁気浮上ステージの概略構成図
図3】実施例1に係る磁気浮上ステージの概略平面図
図4】実施例1に係る基板の概略平面図
図5】実施例1に係るマスクの概略平面図
図6】実施例1に係るアライメント説明図
図7】実施例1に係るアライメントのフローチャート図
図8】実施例1に係るアライメント動作説明図
図9】実施例1に係る凸部の説明図
図10】変形例に係るアライメントのフローチャート図
図11】実施例2に係るアライメント動作説明図
図12】実施例3に係る磁気浮上ステージの概略構成図
図13】実施例4に係る磁気浮上ステージの概略構成図
図14】有機EL表示装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
(実施例1)
図1図10を参照して、本発明の実施例1に係るアライメント装置、アライメント方法、及び成膜装置について説明する。
【0012】
<成膜装置>
図1を参照して、本実施例に係るアライメント装置を備える成膜装置1について説明する。図1は実施例1に係る成膜装置1の概略構成図であり、正面から成膜装置1を見た構成を概略的に示している。図1において、点線部で囲われた部分に、駆動手段としての磁気浮上ステージ2が備えられている。磁気浮上ステージ2は、ステージ支持体6によって、真空チャンバの室内の上面角部あるいは側面上部に固定される。真空チャンバは、真空チャンバ側面3、真空チャンバ下面32、真空チャンバ天板11で構成され、全体としては6面体の構成を取るのが一般的である。真空チャンバ下面32に設置された成膜源としての蒸発源5から放出された成膜材料によって、マスク16を介して、基板に薄膜が形成される。マスク16は、磁性を有しており、磁気浮上ステージ2に対して相対的に上下移動可能な吸引手段としての吸引マグネット18によって吸引されるように構成されている。なお、吸引マグネット18は、基板を介してマスク16とは反対側で移動可能に設けられた磁石に相当し、吸引マグネット18の移動によりマスク16を吸引する吸引力が変化する。磁気浮上ステージ2は、マスク支持手段としてのマスク台33上に設置されたレーザ変位計17による測定結果に基づいて、その位置が制御可能に構成される。また、成膜装置1は、制御部35を有する。制御部35は、各種の機構、及び蒸発源5の制御、成膜の制御を行う機能を有する。制御部35は、例えば、プロセッサ、メモリー、ストレージ、I/Oなどを有するコンピューターにより構成可能である。この場合、制御部35の機能は、メモリー又はストレージに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピューターとしては、汎用のパーソナルコンピューターを用いてもよいし、組込型のコンピューター又はPLC(programmable logic controller)を用いてもよい。あるいは、制御部35の機能の一部又は全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。なお、成膜装置1ごとに制御部35が設けられてもよく、1つの制御部35が複数の成膜装置1を制御してもよい。
【0013】
次に、大気側における除振台支持部の構成を説明する。除振台9a,9bは真空チャンバ天板11上に除振台ベース10a,10bを介して配設される。支持フレーム8は、除振台9a,9bに支持されることで、真空チャンバから伝わる振動が抑制される。また、支持フレーム8上に設けられたマスク案内機構12a,12bにより上下に移動するマスク支持支柱13a,13bによって、マスク台33は真空チャンバ内で支持される。マス
クフレーム15は、不図示のロボットハンドによって装置内に搬入され、マスク台33上に載置される。
【0014】
マスクフレーム15や基板を装置内に搬入するために、ロボットハンドが装置に出入りする際には、マスク案内機構12a,12bによりマスク台33はロボットハンドの移動の妨げにならない位置まで下降する。マスク案内機構12a,12bが昇降する際においては、ベローズ14a,14bが伸縮する。これらのベローズ14a,14bによって、室内の真空状態は維持される。
【0015】
なお、ロボットハンドによる位置決め精度やマスク等の載置時の位置ずれが大きい場合には、マスク等をカメラ視野内に入れるために、上下駆動に加え、回転並進機構が必要な場合もある。この点については、公知技術であるので、その説明は省略する。
【0016】
また、アライメントカメラ7a,7bも支持フレーム8により支持されている。これにより、アライメントカメラ7a,7bも真空チャンバから伝わる振動が抑制されるため、高精度での計測が可能である。チャンバ天板11にはアライメント計測用のビューポートが設置されており、大気側からアライメント計測することができる。なお、マスク台33の下面に設置された照明24a,24bの透過光を利用することで、不図示のアライメントマークがアライメントカメラ7a,7bにより撮影される。アライメントカメラ及び照明は不図示のものを含めてそれぞれ4台ずつ設置されており、基板に形成されたアライメントマークの位置を検出できるように構成されている。
【0017】
<磁気浮上ステージ>
図2及び図3を用いて、駆動手段としての磁気浮上ステージ2について説明する。図2図1中の磁気浮上ステージ2を拡大した図であり、図3は磁気浮上ステージ2を上面から見た図である。なお、図3においては、可動子と固定子等との位置関係を明確にするために、ステージ支持体6に設けられた固定子、及び吸引マグネット18についても図示している。
【0018】
磁気浮上ステージ2は、ステージフレーム31と、ステージフレーム31に固定される、自重補償磁石可動子22a,22b,22c,22d及びリニアモータ可動子20a,20b,20c,20dとを備えている。自重補償磁石可動子22a,22b,22c,22dは、磁気浮上ステージ2の自重をキャンセルさせるために、ステージ支持体6に対して非接触の状態で磁気浮上ステージ2を支持する役割を担っている。リニアモータ可動子20a,20b,20c,20dは、ステージ支持体6に対して非接触の状態で、磁気浮上ステージ2を移動させる推力を発揮させる役割を担っている。また、磁気浮上ステージ2の下面には基板支持手段としての静電チャック25が固定されている。この静電チャック25によって、成膜対象である基板27をフェイスダウン状態で吸着することができる。
【0019】
ステージ支持体6の下面には、上記の自重補償磁石可動子22a,22b,22c,22dとそれぞれ対向するように、自重補償磁石固定子23a,23b,23c,23dが固定されている。自重補償磁石の可動子と固定子の間には、磁気浮上ステージ2の自重に相当する磁力が発生するように構成されており、磁気浮上ステージ2は非接触の状態でステージ支持体6に支持される。
【0020】
また、ステージ支持体6の下面には、上記のリニアモータ可動子20a,20b,20c,20dとそれぞれ対向するように、リニアモータ固定子21a,21b,21c,21dが固定されている。これらリニアモータ固定子21a,21b,21c,21dに内蔵されるコイルを流れる電流値の変化によって、磁気浮上ステージ2を移動させる推力が
生ずる。なお、鉛直方向においては、上記の自重補償磁石によって磁気浮上ステージ2の自重はキャンセルされているため、リニアモータにより発生させる推力は微小で済む。従って、通電量は少なくて済むため、通電によって生じる発熱量は微小であり、発熱による各部材の変形や破損の問題は生じない。ただし、必要に応じてコイルごと水冷ジャケットで覆い、冷媒を流して積極的に冷却してもよい。
【0021】
リニアモータ可動子20a,20b,20c,20dはステージフレーム31上面の角部の4か所に配置されている。これにより、磁気浮上ステージ2のXY方向の並進駆動およびZ軸周りの回転駆動が可能である。また、少なくとも3個以上のZ軸方向に推力を発生するリニアモータ(不図示)も配置することで、磁気浮上ステージ2を6自由度で移動させることが可能である。本実施例では、合計7か所に配置されたリニアモータで磁気浮上ステージ2を6自由度で移動させるように構成されている。また、自重補償磁石可動子22a,22b,22c,22dは磁気浮上ステージ2の重心周りに、対称に4か所に配置されている。これによりモーメント力に対しても力を受けることができるので、磁気浮上ステージ2の安定した浮上が可能となっている。
【0022】
<マスク搭載部>
マスク搭載部について説明する。マスク16には、画素パターンに相当する貫通孔が複数個所に等間隔で設けられており、貫通孔を通過する成膜材料が基板27の表面に成膜されるように構成されている。マスク16の材質は、例えばインバー等の熱膨張に強い金属箔やSiウエハを薄く加工したメンブレン膜のようなもので構成される。マスク16はマスクフレーム15に固定されており、フレームごとロボットハンドによって搬送され、マスク台33に載置される。マスク16とマスクフレーム15の固定方法は、例えば架張された状態でスポット溶接によって固定する方法、メカクランプ、接着による固定など各種公知技術を採用できる。固定時において、マスク16が歪まないようにするのが望ましい。
【0023】
基板27は基板支持手段としての静電チャック25に保持される。そして、吸引マグネット18は、静電チャック25における吸着面とは反対側の面に非接触の範囲で接近可能に構成されており、マスク16の吸引に必要な磁束を発生可能に構成されている。静電チャック25及び基板27は非磁性体であり、吸引マグネット18の磁束によって、マスク16を鉛直方向上方に吸引させる吸引力を発生させることが可能である。この吸引力によって、マスク16を基板27に密着させることができる。ここでの密着性が確保されることで、成膜時における成膜材料の回り込み(シャドウ)を防ぐことが可能となる。
【0024】
<アライメント機構>
基板27とマスク16とのアライメント機構(位置決め機構)について説明する。磁気浮上ステージ2のマスク台33に対する相対的な位置は、レーザ変位計17によって計測される。このレーザ変位計17は、X方向に2か所、Y方向に1か所、Z方向に3か所等、合わせて6か所に配置されている。6か所に配置されたレーザ変位計17からの情報を元に幾何学的な座標変換が実施され、磁気浮上ステージ2の重心周りの6自由度の位置に換算される。6自由度の位置情報に基づいて制御演算が行われ、6自由度の推力指令が決定される。6自由度の推力指令に基づいて、7か所に配置された各リニアモータのコイルに電流を流し、磁気浮上ステージ2を移動させることで、この磁気浮上ステージ2をマスク台33に対して高精度に位置決めすることが可能である。
【0025】
また、レーザ変位計17はマスク台33上におけるマスク16の近傍に固定されている。これにより、真空環境内においてアッベ誤差などの影響を受けず直接的にマスク16と基板27との位置決めを行うことができる。さらに、レーザ変位計17はマスク台33を介して支持フレーム8が載置された除振台9a,9bによって真空チャンバからの振動が
抑制されているので安定した計測が可能となっている。また、磁気浮上ステージ2は、非接触かつ低い磁気バネ性の自重補償磁石で支持されており、同様に真空チャンバからの振動が抑制された状態にある。以上のような構成により、磁気浮上ステージ2とマスク台33との相対位置は高精度に位置決め可能であり、その結果、基板27とマスク16の高精度なアライメントが可能となる。
【0026】
<基板とマスクとのアライメント>
基板27とマスク16とのアライメントについて説明する。マスク16と基板27との相対的な位置関係の計測にはアライメントカメラ7a,7bが用いられる。基板27にはアライメントマークである基板マーク28L,28Rが設けられており(図4参照)、アライメントカメラ7a,7bにより撮影された基板マーク28L,28Rの撮像データから基板27の位置が計測される。また、マスク16にはアライメントマークであるマスクマーク29L,29Rが設けられており(図5参照)、アライメントカメラ7a,7bにより撮影されたマスクマーク29L,29Rの撮像データからマスク16の位置が計測される。なお、アライメントカメラ7aによって、基板マーク28Lとマスクマーク29Lが同時に撮影され、アライメントカメラ7bによって、基板マーク28Rとマスクマーク29Rが同時に撮影されるように構成されている。なお、アライメントカメラ7a,7bと、アライメントカメラ7a,7bにより撮影されたデータ(撮像データ)を処理する制御部35によって、基板27とマスク16との相対的な位置関係を測定する測定手段が構成される。なお、図4,5においては、マスク16と基板27の平面形状の外形が円形の場合を示したが、これは一例に過ぎず、例えば、外形が矩形のマスクや基板が用いられることは言うまでもない。
【0027】
図6(a)は、基板27及びマスク16の成膜装置1内への搬送が完了された状態において、基板マーク28とマスクマーク29の位置関係の一例を示している。なお、図6においては、基板27とマスク16におけるアライメントマーク付近を拡大して示している。そして、アライメントカメラ7によりマスクマーク29と基板マーク28が同一視野内で撮影され、撮像データからそれぞれのマークの中心(図心)位置が制御部35による画像処理によって抽出される。このような処理が、基板マーク28Lとマスクマーク29L、及び基板マーク28Rとマスクマーク29Rの両者に対してなされることで、基板27とマスク16との相対的な位置関係が計測される。なお、マスク16及び基板27の搭載時において、設置誤差が大きくカメラ視野から外れた場合には、リトライを行って再度視野に入れる工程がなされる。
【0028】
上記の計測結果に基づいて、基板マーク28Lとマスクマーク29L、及び基板マーク28Rとマスクマーク29Rが一致するように、磁気浮上ステージ2を移動させる制御がなされることで、マスク16に対して基板27が移動する。より具体的には、基板マーク28Lの中心とマスクマーク29Lの中心との距離、及び基板マーク28Rの中心とマスクマーク29Rの中心との距離のいずれもが閾値以下となるように、マスク16に対して基板27が移動して、アライメントが完了する。図6(b)はアライメント完了後の各アライメントマークの位置関係の一例を示している。アライメントが完了すると、マスク16の貫通孔と発光用の回路位置(TFT)が一致するため、基板27に対して所望の位置に成膜することができる。
【0029】
<アライメント動作>
アライメントの動作について、図7及び図8を参照して説明する。図7はアライメントのフローチャート図であり、図8図7に示す各ステップにおける、基板27とマスク16と吸引マグネット18の位置関係を示した図である。
【0030】
<<ステップS1>>
アライメント動作が開始されると、基板27とマスク16が所定の間隔になるまで、基板27が下降する。所定の間隔とは、アライメント完了後において、吸引マグネット18を下降させマスク16を吸引した際に、成膜有効範囲領域でマスク16と基板27とが密着できる間隔である。なお、成膜有効範囲領域でマスク16と基板27とが密着(接触)することについては、以下の説明では、「マスク16と基板27とが全面的に密着(接触)する」といった表現を用いることもある。所定の間隔の最適な数値は、マスク16の材質と厚み、吸引マグネット18の磁気回路の構成とマスク16までの距離によって変化する。ただし、間隔が狭いほど、アライメント精度が向上し、基板27とマスク16も十分に密着することが分かっている。具体的には、上記の間隔は0.1mm以下が望ましい。図8(a)は基板27が所定の位置まで下降した状態を示している。
【0031】
<<ステップS2>>
基板27が所定の位置まで下降した後に、マスク16及び基板27のうちの少なくともいずれか一方に設けられた凸部を他方に接触させる動作が行われる(図8(b)参照)。この動作は、マスク案内機構12a,12bによってマスク台33と共にマスク16を上昇させる動作、及び、吸引マグネット18によるマスク16を吸引させる動作のうちの少なくともいずれか一方により行われる。なお、特に図示はしないが、基板27を6自由度の方向に位置調整する磁気浮上ステージと同様に、マスク台33を磁気的に浮上させた状態で、6自由度の方向に位置調整可能な機構を設けることで、マスク16を上昇させる構成も採用することができる。この場合、おおまかな調整をマスク案内機構12a,12bにより行い、微調整を上記の不図示の機構により行うことができる。
【0032】
ここで、凸部に関する構成について、図9を参照して説明する。ここでは、基板27に複数の凸部27aが設けられる場合を例にして説明する。図9(a)は基板27に設けられた複数の凸部27aとマスク16とが接触した際の様子を側面側から見た概略図である。同図(b)は基板27の平面図である。図9(b)中の多数の矩形27bは成膜工程によって膜が形成される部分を示している。また、同図中の二点鎖線で示す4か所の矩形27cは、成膜工程後に基板27から切り出される部分を示している。すなわち、矩形27cの部分が製品となる部分であり、それ以外の部分は廃棄される部分である。なお、図示の例では、4か所に矩形27cが設けられているが、基板27から製品として切り出される部分は、単数の場合も複数の場合もある。また、この図では、上述の図4で示した基板27とは異なり、平面形状の外形が矩形の基板27を例にして示しているが、外形が円形の基板27の場合にも同様に、多数の膜が形成される部分、及び製品として切り出される部分が設けられる。
【0033】
図示のように、複数の凸部27aは、基板27における切り出される範囲外に設けられている。これら複数の凸部27aの高さは可及的に低い方が望ましく、数十μm以下(可能であれば1μm程度)にするのが望ましい。また、凸部27aは摩擦抵抗が低くなるように、摩擦係数が低くなる材料にするのが望ましい。例えば、基板27に、フッ素系樹脂の薄膜を塗布したり、レジストパターニングしたりすることにより凸部27aを設けることができる。これにより、基板27とマスク16が摺動した際に、パーティクルの発生を抑制することができる。また、凸部27aは耐摩耗性が高いことも好ましく、場合によっては、摩擦係数が高くなっても耐摩耗性が高い材料を採用することもできる。なお、凸部27aは、半導体プロセスで使われる材料(シリコン酸化膜やシリコン窒化膜など)により設けることもできる。
【0034】
また、凸部27aは基板27の端の付近にのみ設けてもよいし、基板27の中央に設けることもできる。図9(b)には中央にも凸部27aが設けられる場合の構成が示されている。なお、基板27とマスク16が摺動してもパーティクルが発生し難い場合や、パーティクルが発生しても品質に支障がなければ、凸部27aを設ける位置は制約されること
はなく、基板27における切り出される範囲内に設けても構わない。
【0035】
なお、ここでは基板27に複数の凸部27aが設けられる場合を示したが、マスク16に凸部を設ける構成を採用することもできる。この場合にも、凸部の高さや材料については上記の通りである。また、マスク16に凸部を設ける場合には、マスク16のうち基板27の切り出される範囲外に接触する位置に凸部を設けるとよい。ただし、基板27とマスク16が摺動してもパーティクルが発生し難い場合や、パーティクルが発生しても品質に支障がなければ、凸部27aを設ける位置が制約されないことについては、上述の通りである。なお、マスク16に凸部を設ける場合には、マスクフレーム15に凸部を設けることもできる。従って、本発明における「マスク」には、マスクフレームも含まれるということができる。また、基板27とマスク16の双方に凸部を設ける構成を採用することもできる。この場合、基板27に設けられた凸部とマスク16に設けられた凸部とが接触するように構成してもよい。
【0036】
凸部が基板やマスクの端の付近にのみ設けられ(マスクフレーム15にのみ設けられる場合も含む)、中央に設けられていない場合には、吸引マグネット18によるマスク16を吸引させる動作を行うことなく、マスク案内機構12a,12b等によるマスク台33を上昇させる動作のみで、マスク16及び基板27のうちの少なくともいずれか一方に設けられた凸部を他方に接触させる動作を行うことができる。勿論、この場合でも、吸引マグネット18によるマスク16を吸引させる動作を併用、又は、吸引マグネット18によるマスク16を吸引させる動作のみで、マスク16及び基板27のうちの少なくともいずれか一方に設けられた凸部を他方に接触させてもよい。これに対して、凸部が基板やマスクの中央に設けられている場合には、吸引マグネット18によるマスク16を吸引させる動作は必要である。この場合、マスク案内機構12a,12b等によるマスク台33を上昇させる動作を併用しても併用しなくても構わない。
【0037】
以上のステップS2の工程においては、凸部を除く領域では、マスク16と基板27とは離れた(隙間が空いた)状態となる。従って、ステップS2において、吸引マグネット18によりマスク16を吸引する場合の吸引力は、以下のステップS5における吸引力よりも小さくなるように設定される。
【0038】
また、マスク16と基板27が接触した状態で、磁気浮上ステージ2が移動すると、マスク16と基板27との接触部には摩擦が生じるため、磁気浮上ステージ2の移動量は極力短くしたほうがよい。そこで、本実施例のように、マスク16と基板27とを接触した状態でアライメントを行う構成を採用する場合には、当該アライメントを行う前に予備のアライメントを行うのが望ましい。この点について、図10に示す変形例に係るアライメントのフローチャート図を参照して説明する。なお、この変形例の場合、ステップS1とステップS2の間に、ステップS12の工程が追加されるが、それ以外の工程は本実施例と同一であるので、その説明は省略する。
【0039】
この変形例の場合には、上述したステップS1の後に、マスク16と基板27とが接触していない状態で、磁気浮上ステージ2によって基板27とマスク16との位置ずれ量が第1の閾値以下となるように基板27とマスク16とのアライメント(第1のアライメント工程)が行われる(ステップS12)。すなわち、まず、アライメントマーク(マスクマーク29と基板マーク28)がアライメントカメラ7により撮影されて、その撮像データに基づいてアライメントマークの位置が検出されて、磁気浮上ステージ2の移動量が算出される。そして、算出された結果に基づいて、磁気浮上ステージ2が移動し、再度、アライメントカメラ7による撮影がなされて、マスクマーク29と基板マーク28との位置ずれ量(誤差)が算出される。この位置ずれ量が第1の閾値以下であるか否かが判定され、第1の閾値以下の場合には、上述のステップS2に移行する。以上の動作は、位置ずれ
量が第1の閾値以下になるまで繰り返される。
【0040】
なお、第1の閾値は、例えば、1μmに設定すると好適である。また、本実施例におけるアライメント(基板27とマスク16とを凸部の部分で接触させた状態で行うアライメント)を行う際に用いる閾値(「第2の閾値」ということができる)は、第1の閾値よりも小さな値に設定される。
【0041】
<<ステップS3>>
マスク16及び基板27のうちの少なくともいずれか一方に設けられた凸部を他方に接触させた(ステップS2)後に、アライメントカメラ7によりマスク16と基板27のアライメントマーク(マスクマーク29と基板マーク28)の撮影がなされる。この撮影により得られた撮像データから、アライメントマークのXY距離が計測される。一般的には、マスクマーク29と基板マーク28はZ方向に離間した状態で撮影されるが、撮影するアライメントカメラ7には被写体深度があるため、離間距離は小さいほど計測誤差は小さくなる。本実施例の場合には、ステップS2でマスク16及び基板27のうちの少なくともいずれか一方に設けられた凸部を他方に接触させた状態で、アライメントカメラ7による撮影が行われるため、離間距離が短く、計測誤差を小さくすることができる。また、その後、マスク16を吸引して、マスク16と基板27とを全面的に密着(接触)させる際に、アライメントマークの位置ずれを抑制できる。
【0042】
<<ステップS4>>
ステップS3において得られた算出結果(計測結果)に基づいて、磁気浮上ステージ2による駆動によって、基板27が移動する(図8(c)参照)。基板27が移動した後に、アライメントカメラ7によって、マスク16のマスクマーク29と基板27の基板マーク28が撮影される。この撮影により得られた撮像データからアライメントマーク間距離(マスクマーク29の中心と基板マーク28の中心との距離)が計測(算出)される。この距離(誤差)が閾値以下であればステップS5に移行する。仮に、閾値以下でない場合には、再度、磁気浮上ステージ2を移動させ、閾値に入るまで同様の動作が繰り返される。なお、上記の通り、図10に示す変形例が採用される場合には、この閾値は第2の閾値に相当する。
【0043】
<<ステップS5>>
ステップS4において、アライメントマーク間距離が閾値以下であれば、吸引マグネット18を下降させて、マスク16と基板27を全面的に密着させる(図8(d)参照)。このように、本実施例においては、吸引マグネット18が下降することで、マスク16を吸引させる吸引力が変化する(大きくなる)。これにより、マスク16の一部(凸部が設けられた部分)が基板27に接触し、他の部分が基板27から離れた状態から他の部分も基板27に接触した状態に変化する。つまり、凸部周囲の近傍を除き、マスク16と基板27が全面的に接触(密着)した状態となる。なお、上記の通り、マスクフレーム15にのみ凸部を設ける構成を採用した場合には、マスク案内機構12a,12b等によるマスク台33を上昇させる動作のみで、凸部を基板27に接触させておき、その後、吸引マグネット18によってマスク16を吸引させて、マスク16と基板27を全面的に接触させることもできる。
【0044】
マスク16と基板27を全面的に密着させる動作を行う際には、これらの位置ずれが発生し得る。すなわち、アライメントマーク間にXY方向の位置ズレが発生し得る。しかしながら、本実施例においては、既にステップS2において、凸部の部分でマスク16と基板27を接触させている。そのため、マスク16と基板27との間に隙間が生じている部分においても、その距離は小さく、マスク16と基板27を全面的に密着させる動作の際に生じるXY方向の位置ズレ量を小さくすることができる。
【0045】
<<ステップS6>>
マスク16と基板27を全面的に密着させた後に、アライメントカメラ7によって、マスク16のマスクマーク29と基板27の基板マーク28が撮影される。この撮影により得られた撮像データからアライメントマーク間距離が計測(算出)される。この距離(誤差)が閾値以下であれば、アライメント完了となり、成膜(蒸着)が開始される。仮に、ステップS5によってXY方向の位置ズレが生じてしまい目標の閾値以下でない場合には、吸引マグネット18を上昇させてマスク16と基板27の全面的な接触状態を解除して、ステップS4に戻り、目標の閾値以下となるまで同様の動作が繰り返される。なお、ここでの閾値は、ステップS4における閾値と同一の値にしてもよいし、ステップS4よりも多少大きな値としてもよい。
【0046】
<本実施例に係るアライメント装置、アライメント方法、及び成膜装置の優れた点>
本実施例によれば、マスク16及び基板27のうちの少なくともいずれか一方には凸部が設けられており、凸部が他方に接触した状態で、測定手段(アライメントカメラ7a,7b、及び制御部35)による測定がなされる。これにより、マスク16と基板27との間に隙間が生じる部分においても、その間隔は短いため、マスクマーク29と基板マーク28とのZ方向の距離が短くなり、測定誤差を小さくすることができる。また、本実施例においては、凸部が他方に接触した状態で、駆動手段としての磁気浮上ステージ2による駆動動作(マスク16と基板27とのアライメント動作)が行われる。そのため、その後、マスク16と基板27とを全面的に密着(接触)させる際において、マスク16と基板27の位置ずれを抑制することができる。従って、基板27とマスク16とのアライメント精度が向上する。
【0047】
なお、本実施例においては、凸部が他方に接触した状態で、測定手段による測定を行い、かつ、駆動手段による駆動動作を行う場合の構成を示した。これにより、基板27とマスク16のアライメント精度を効果的に向上させることができる。しかしながら、凸部が他方に接触した状態で、測定手段による測定を行った後に、凸部を他方から離した状態で駆動手段による駆動動作を行う構成を採用することもできる。この場合でも、測定精度が高まることで、アライメント精度を高めることができる。また、凸部が他方に接触させない状態で、測定手段による測定を行った後に、凸部を他方に接触させた状態で駆動手段による駆動動作を行う構成を採用することもできる。この場合でも、その後、マスク16と基板27とを全面的に密着(接触)させる際において、マスク16と基板27の位置ずれを抑制することができるので、基板27とマスク16とのアライメント精度が向上する。
【0048】
また、本実施例においては、基板27とマスク16との相対的な位置を変更する(アライメント動作を行う)ための駆動手段として、基板27を移動させる磁気浮上ステージ2を採用する場合の構成を示した。しかしながら、本発明の駆動手段は、そのような構成に限定されることはなく、基板とマスクとの相対的な位置を変更するように、マスク支持手段及び基板支持手段のうちの少なくともいずれか一方を駆動する構成を採用すればよい。従って、基板は移動させずに、マスクを移動させる手段(機構)を設ける構成を採用してもよいし、基板を移動させる手段(機構)とマスクを移動させる手段(機構)の双方を採用することもできる。以下の実施例においても同様である。
【0049】
また、上記の通り、図10に示す変形例に係るアライメントのフローチャートに従って、第1のアライメント工程と第2のアライメント工程を行うことも好適である。なお、第1のアライメントは、基板27とマスク16とを接触させない状態で、磁気浮上ステージ2によって基板27とマスク16との位置ずれ量が第1の閾値以下とするためのアライメントである。また、第2のアライメントは、凸部を他方に接触させた状態で、磁気浮上ステージ2によって基板27とマスク16との位置ずれ量が第1の閾値よりも値の小さな第
2の閾値以下とするためのアライメントである。このような工程を採用することで、マスク16と基板27が接触した状態で、これらの位置決めがなされても、これらの相対的な移動量を短くすることができる。これにより、摩擦による損傷の発生を抑制することができる。
【0050】
(実施例2)
図11には、本発明の実施例2が示されている。本実施例においては、吸引手段としての吸引マグネット18の構成が、実施例1と異なる場合の構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0051】
図11は本実施例に係るアライメント動作における基板27とマスク16と吸引マグネット18の位置関係を示した図である。本実施例におけるアライメントのフローについては、実施例1で説明した図7に示すフローチャート図、または図10に示すフローチャート図のうち、ステップS2とステップS5の動作のみが異なっている。そこで、これらのフローチャートも使用して説明する。
【0052】
本実施例においては、吸引手段としての吸引マグネット18は、ステップS2において凸部の部分により基板27とマスク16を接触させるための第1の吸引手段と、ステップS5においてマスク16の他の部分を基板27に接触させるための第2の吸引手段とを有する。より具体的には、第1の吸引手段は、基板27を介してマスク16とは反対側で移動可能に設けられた第1の磁石181であり、第2の吸引手段は、基板27を介してマスク16とは反対側で移動可能に設けられる第2の磁石182である。第2の磁石182は、第1の磁石181とは独立して移動可能に構成されている。
【0053】
本実施例においては、図7または図10に示すステップS1により、基板27が所定の位置まで下降した後に(図11(a)参照)、第1の磁石181が下降する。これにより、マスク16の一部(凸部が設けられた付近)が吸引マグネット18に吸引され、実施例1と同様に、マスク16の一部(凸部が設けられた部分)が基板27に接触し、マスク16の他の部分は基板27から離れた状態となる(図11(b)参照)。その後、ステップS4までは、実施例1と同様であり、磁気浮上ステージ2による駆動によって、基板27が移動し、基板27とマスク16との位置決めがなされる(図11(c)参照)。
【0054】
そして、ステップS5においては、第1の磁石181はそのままの状態を保ちつつ、第2の磁石182が下降することで、マスク16の他の部分も吸引される。これにより、マスク16と基板27が全面的に密着した状態となる(図11(d)参照)。その他のステップについては、上記実施例1で説明した通りである。
【0055】
以上のように、本実施例においても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。また、本実施例の場合には、吸引マグネット18の分割領域(第1の磁石181と第2の磁石182により分割される領域)を適宜設定することができる。つまり、凸部が設けられた部分に対応する位置に第1の磁石181を設けて、凸部から離れた位置に第2の磁石182を設ければよい。これにより、ステップS2において、実施例1に比べて、より確実に凸部のみを他方に接触させることができる。
【0056】
(実施例3)
図12には、本発明の実施例3が示されている。本実施例においては、吸引手段が静電チャックの場合の構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0057】
図12は本発明の実施例3に係る磁気浮上ステージの概略構成図である。上記実施例1においては、吸引手段が吸引マグネット18であったのに対して、本実施例においては、吸引手段が基板27とマスク16を静電吸着力により吸着させるための静電チャック25である点のみが実施例1と異なっている。
【0058】
静電チャック25に印加される電圧の変化によって、静電吸着力は変化する。従って、印加電圧を制御することで、静電チャック25に対して基板27のみが吸着する状態、基板27に加えて凸部の部分において基板27とマスク16が接触する状態、両者が全面的に吸着されて、基板27とマスク16が全面的に密着する状態にすることが可能である。
【0059】
本実施例におけるアライメントのフローについては、実施例1で説明した図7に示すフローチャート図、または図10に示すフローチャート図のうち、ステップS2とステップS5の動作のみが異なっている。そこで、これらのフローチャートを使用して、本実施例に係るアライメントのフローについて説明する。
【0060】
本実施例においては、図7または図10に示すステップS1により、基板27が所定の位置まで下降した後に、静電チャック25に印加する電圧が、基板27のみを吸着する電圧よりも更に高められる。これにより、静電チャック25に基板27が吸着されたまま、マスク16が静電チャック25に吸引される。これにより、実施例1と同様に、凸部の部分でマスク16と基板27が接触し、マスク16の他の部分は基板27から離れた状態となる。その後、ステップS4までは、実施例1と同様であり、磁気浮上ステージ2による駆動によって、基板27が移動し、基板27とマスク16との位置決めがなされる。
【0061】
そして、ステップS5においては、静電チャック25に印加される電圧が更に高められることで、マスク16がより強い力で吸引されて、マスク16と基板27が全面的に密着した状態となる。その他のステップについては、上記実施例1で説明した通りである。以上のように、本実施例においても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0062】
(実施例4)
図13には、本発明の実施例4が示されている。本実施例においては、吸引手段としての静電チャック25の構成が、実施例3と異なる場合の構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0063】
図13は本発明の実施例4に係る磁気浮上ステージの概略構成図である。上記実施例1においては、吸引手段が吸引マグネット18であったのに対して、本実施例においては、実施例3と同様に、吸引手段が基板27とマスク16を静電吸着力により吸着させるための静電チャック25である点のみが実施例1と異なっている。
【0064】
本実施例においては、吸引手段としての静電チャック25は、ステップS2において凸部の部分により基板27とマスク16を接触させるための第1の吸引手段と、ステップS5においてマスク16の他の部分を基板27に接触させるための第2の吸引手段とを有する。より具体的には、第1の吸引手段は、基板27とマスク16を静電吸着力により吸着させるための第1の静電チャック251である。また、第2の吸引手段は、印加される電圧が第1の静電チャック251とは独立して制御され、かつ、基板27とマスク16を静電吸着力により吸着させるための第2の静電チャック252である。
【0065】
本実施例におけるアライメントのフローについては、実施例1で説明した図7に示すフローチャート図、または図10に示すフローチャート図のうち、ステップS2とステップS5の動作のみが異なっている。そこで、これらのフローチャートを使用して、本実施例
に係るアライメントのフローについて説明する。
【0066】
本実施例においては、図7または図10に示すステップS1により、基板27が所定の位置まで下降した後に、第1の静電チャック251に印加する電圧が、基板27のみを吸着する電圧よりも更に高められる。これにより、静電チャック25(第1の静電チャック251及び第2の静電チャック252)に基板27が吸着されたまま、マスク16の一部(凸部が設けられた付近)が第1の静電チャック251に吸引される。これにより、実施例1と同様に、マスク16の一部(凸部が設けられた付近)が基板27に接触し、マスク16の他の部分は基板27から離れた状態となる。その後、ステップS4までは、実施例1と同様であり、磁気浮上ステージ2による駆動によって、基板27が移動し、基板27とマスク16との位置決めがなされる。
【0067】
そして、ステップS5においては、第2の静電チャック252に印加する電圧が、基板27のみを吸着する電圧よりも更に高められる。これにより、マスク16の他の部分も吸引されて、マスク16と基板27が全面的に密着した状態となる。その他のステップについては、上記実施例1で説明した通りである。
【0068】
以上のように、本実施例においても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。また、本実施例の場合には、静電チャック25の分割領域(第1の静電チャック251と第2の静電チャック252により分割される領域)を適宜設定することができる。つまり、凸部が設けられた部分に対応する位置に第1の静電チャック251を設けて、凸部から離れた位置に第2の静電チャック252を設ければよい。これにより、ステップS2において、実施例1に比べて、より確実に凸部のみを他方に接触させることができる。
【0069】
(電子デバイスの製造方法)
上記の実施例に係る成膜装置を用いた電子デバイスの製造装置及び方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。 まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図14(a)は有機EL表示装置50の全体図、図14(b)は1画素の断面構造を表している。
【0070】
図14(a)に示すように、有機EL表示装置50の表示領域51には、発光素子を複数備える画素52がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域51において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例に係る有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子52R、第2発光素子52G、第3発光素子52Bの組合せにより画素52が構成されている。画素52は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0071】
図14(b)は、図14(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素52は、基板53上に、第1電極(陽極)54と、正孔輸送層55と、発光層56R、56G、56Bと、電子輸送層57と、第2電極(陰極)58と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層55、発光層56R、56G、56B、電子輸送層57が有機層に当たる。また、本実施例では、発光層56Rは赤色を発する有機EL層、発光層56Gは緑色を発する有機EL層、発光層56Bは青色を発する有機EL層である。発光層56R、56G、56Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極54は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層55と電子輸送層57と第2電極58は、複数の発光素子52R、52G、52Bと共通で形成されていてもよいし、発
光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極54と第2電極58とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極54間に絶縁層59が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層60が設けられている。
【0072】
図14(b)では正孔輸送層55や電子輸送層57が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を含む複数の層で形成されてもよい。また、第1電極54と正孔輸送層55との間には第1電極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、第2電極58と電子輸送層57の間にも電子注入層が形成されことができる。
【0073】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0074】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および第1電極54が形成された基板53を準備する。
【0075】
第1電極54が形成された基板53の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極54が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層59を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0076】
絶縁層59がパターニングされた基板53を成膜装置に搬入し、基板支持手段にて基板を支持し、正孔輸送層55を、表示領域の第1電極54の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層55は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層55は表示領域51よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0077】
次に、正孔輸送層55までが形成された基板53を別の成膜装置に搬入し、基板支持手段にて支持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板53の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層56Rを成膜する。 発光層56Rの成膜と同様に、別の成膜装置により緑色を発する発光層56Gを成膜し、さらに別の成膜装置により青色を発する発光層56Bを成膜する。発光層56R、56G、56Bの成膜が完了した後、更に別の成膜装置により表示領域51の全体に電子輸送層57を成膜する。電子輸送層57は、3色の発光層56R、56G、56Bに共通の層として形成される。
【0078】
電子輸送層57までが形成された基板をスパッタリング装置に移動し、第2電極58を成膜し、その後プラズマCVD装置に移動して保護層60を成膜して、有機EL表示装置50が完成する。
【0079】
絶縁層59がパターニングされた基板53を成膜装置に搬入してから保護層60の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【符号の説明】
【0080】
1:成膜装置 2:磁気浮上ステージ 5:蒸発源 6:ステージ支持体 7,7a,7b:アライメントカメラ 8:支持フレーム 9a,9b:除振台 10a,10b:除振台ベース 12a,12b:マスク案内機構 13a,13b:マスク支持支柱 15:マスクフレーム 16:マスク 17:レーザ変位計 18:吸引マグネット 25
:静電チャック 27:基板 27a:凸部 28,28L,28R:基板マーク 29,29L,29R:マスクマーク 31:ステージフレーム 33:マスク台 181:第1の磁石 182:第2の磁石 251:第1の静電チャック 252:第2の静電チャック
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