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特開2024-158935シリコン単結晶の製造方法、および、シリコン単結晶製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158935
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】シリコン単結晶の製造方法、および、シリコン単結晶製造装置
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20241031BHJP
   C30B 15/20 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C30B29/06 502E
C30B29/06 502G
C30B29/06 502C
C30B15/20
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074578
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉村 渉
(72)【発明者】
【氏名】横山 竜介
(72)【発明者】
【氏名】坂本 英城
(72)【発明者】
【氏名】松島 直輝
(72)【発明者】
【氏名】村松 祐
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF10
4G077EG18
4G077EG19
4G077EH07
4G077EJ02
4G077HA12
4G077PE12
4G077PE27
4G077PF55
(57)【要約】
【課題】従来の装置構成を大きく変更することなく、酸素濃度が安定したシリコン単結晶を製造することができるシリコン単結晶の製造方法を提供すること。
【解決手段】シリコン単結晶の製造方法は、坩堝を囲む円筒状のヒータと、ヒータを支持する第1~第4支持電極とを備え、ヒータは、第1~第4発熱部を備え、第1支持電極は、第1,第2発熱部を電源の正極に接続し、第2支持電極は、第2,第3発熱部を電源の負極に接続し、第3支持電極は、第3,第4発熱部を正極に接続し、第4支持電極は、第4,第1発熱部を負極に接続し、第1~第4支持電極のうち少なくとも1本の支持電極は、少なくとも一部の太さが残りの支持電極よりも細い細径支持電極により構成されたシリコン単結晶製造装置を用い、回転している坩堝をヒータの発熱分布が不均一の状態で加熱してシリコン融液を生成し、シリコン融液への水平磁場の印加を開始し、シリコン単結晶を育成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン単結晶製造装置を用いてシリコン融液に水平磁場を印加しながらシリコン単結晶を引き上げるシリコン単結晶の製造方法であって、
前記シリコン単結晶製造装置は、
前記シリコン融液を収容する坩堝と、
前記坩堝を囲む円筒状に形成され、前記円筒状の中心軸が前記坩堝の中心軸と同一軸上に位置するように配置されたヒータと、
導電性を有する材料により棒状に形成され、前記ヒータを支持する第1支持電極、第2支持電極、第3支持電極および第4支持電極と、を備え、
前記ヒータは、互いに同じ発熱特性を有し、前記坩堝の外周方向に並ぶ第1発熱部、第2発熱部、第3発熱部および第4発熱部を備え、
前記第1支持電極は、前記第1発熱部と前記第2発熱部を電源の正極に接続し、
前記第2支持電極は、前記第2発熱部と前記第3発熱部を前記電源の負極またはアースに接続し、
前記第3支持電極は、前記第3発熱部と前記第4発熱部を前記正極に接続し、
前記第4支持電極は、前記第4発熱部と前記第1発熱部を前記負極または前記アースに接続し、
前記第1支持電極、前記第2支持電極、前記第3支持電極および前記第4支持電極のうち少なくとも1本の支持電極は、少なくとも一部の太さが残りの支持電極よりも細い細径支持電極により構成され、
前記シリコン単結晶の製造方法は、
回転している前記坩堝内のシリコン原料を前記ヒータの発熱分布が不均一の状態で加熱して前記シリコン融液を生成するシリコン融液生成工程と、
前記シリコン融液への前記水平磁場の印加を開始する磁場印加工程と、
前記水平磁場の中心磁力線に直交する仮想平面における前記シリコン融液の対流の方向が一方向に固定されたら、前記シリコン融液に着液させた種結晶を引き上げることにより、前記シリコン単結晶を育成する育成工程と、を備える、シリコン単結晶の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記シリコン単結晶製造装置は、前記ヒータを囲む円筒状に形成され、前記ヒータに対する抜熱分布が不均一になるように構成された断熱材を備える、シリコン単結晶の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記断熱材は、全体の熱伝導率が均一になるように構成され、前記断熱材の中心軸が前記坩堝の前記中心軸と同一軸上に位置しないように配置されている、シリコン単結晶の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記断熱材は、一部分の熱伝導率が他部分の熱伝導率と異なるように構成され、前記断熱材の中心軸が前記坩堝の前記中心軸と同一軸上に位置するように配置されている、シリコン単結晶の製造方法。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記第1支持電極、前記第2支持電極、前記第3支持電極、前記第4支持電極および前記断熱材は、
前記シリコン融液に前記水平磁場が印加されるときの前記坩堝の回転速度をR(rpm)、
前記水平磁場の印加を開始してから、前記対流の方向が固定される磁場強度の前記水平磁場が前記シリコン融液に作用するまでの時間をT(分)とした場合、
平面視における前記坩堝に対する加熱温度が最も高い最高加熱温度位置が、前記中心磁力線に直交しかつ前記坩堝の前記中心軸を含む第1水平仮想線に対して前記坩堝の回転方向の反対方向側に位置し、かつ、前記坩堝の前記中心軸と前記最高加熱温度位置とを結ぶ第2水平仮想線と前記第1水平仮想線とのなす角度θ(°)が、以下の式(1)を満たすように構成されている、シリコン単結晶の製造方法。
θ=360×R×T … (1)
【請求項6】
シリコン融液に水平磁場を印加しながらシリコン単結晶を引き上げるシリコン単結晶製造装置であって、
前記シリコン融液を収容する坩堝と、
前記坩堝を囲む円筒状に形成され、前記円筒状の中心軸が前記坩堝の中心軸と同一軸上に位置するように配置されたヒータと、
導電性を有する材料により棒状に形成され、前記ヒータを支持する第1支持電極、第2支持電極、第3支持電極および第4支持電極と、を備え、
前記ヒータは、互いに同じ発熱特性を有し、前記坩堝の外周方向に並ぶ第1発熱部、第2発熱部、第3発熱部および第4発熱部を備え、
前記第1支持電極は、前記第1発熱部と前記第2発熱部を電源の正極に接続し、
前記第2支持電極は、前記第2発熱部と前記第3発熱部を前記電源の負極またはアースに接続し、
前記第3支持電極は、前記第3発熱部と前記第4発熱部を前記正極に接続し、
前記第4支持電極は、前記第4発熱部と前記第1発熱部を前記負極または前記アースに接続し、
前記第1支持電極、前記第2支持電極、前記第3支持電極および前記第4支持電極のうち少なくとも1本の支持電極は、少なくとも一部の太さが残りの支持電極よりも細い細径支持電極により構成されている、シリコン単結晶製造装置。
【請求項7】
請求項6に記載のシリコン単結晶製造装置において、
前記ヒータを囲む円筒状に形成され、前記ヒータに対する抜熱分布が不均一になるように構成された断熱材を備える、シリコン単結晶製造装置。
【請求項8】
請求項7に記載のシリコン単結晶製造装置において、
前記断熱材は、全体の熱伝導率が均一になるように構成され、前記断熱材の中心軸が前記坩堝の前記中心軸と同一軸上に位置しないように配置されている、シリコン単結晶製造装置。
【請求項9】
請求項7に記載のシリコン単結晶製造装置において、
前記断熱材は、一部分の熱伝導率が他部分の熱伝導率と異なるように構成され、前記断熱材の中心軸が前記坩堝の前記中心軸と同一軸上に位置するように配置されている、シリコン単結晶製造装置。
【請求項10】
請求項7から請求項9のいずれか一項に記載のシリコン単結晶製造装置において、
前記第1支持電極、前記第2支持電極、前記第3支持電極、前記第4支持電極および前記断熱材は、
前記シリコン融液に前記水平磁場が印加されるときの前記坩堝の回転速度をR(rpm)、
前記水平磁場の印加を開始してから、前記対流の方向が固定される磁場強度の前記水平磁場が前記シリコン融液に作用するまでの時間をT(分)とした場合、
平面視における前記坩堝に対する加熱温度が最も高い最高加熱温度位置が、前記水平磁場の中心磁力線に直交しかつ前記坩堝の前記中心軸を含む第1水平仮想線に対して前記坩堝の回転方向の反対方向側に位置し、かつ、前記坩堝の前記中心軸と前記最高加熱温度位置とを結ぶ第2水平仮想線と前記第1水平仮想線とのなす角度θ(°)が、以下の式(2)を満たすように構成されている、シリコン単結晶製造装置。
θ=360×R×T … (2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン単結晶の製造方法、および、シリコン単結晶製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶の製造方法として、シリコン融液に水平磁場を印加するMCZ(磁場印加チョクラルスキー)法が用いられる場合がある。MCZ法を用いてシリコン融液に水平磁場を印加した場合、シリコン融液内の水平磁場の印加方向に直交する仮想平面における対流の方向が、右回り(以下、「右渦モード」と言う場合がある)になる場合と左回り(以下、「左渦モード」と言う場合がある)になる場合がある。
【0003】
対流モードが右渦モードとなるか左渦モードとなるかはランダムであり、対流モードと炉内環境によってシリコン単結晶に取り込まれる酸素の濃度がばらついてしまう。安定した酸素濃度を有するシリコン単結晶を得るためには、引き上げ中のシリコン融液の対流モードを制御することが重要となる。このため、坩堝内のシリコン融液の対流モードを制御する手法について様々な検討が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、製造装置の炉内の熱環境を、坩堝の中心軸に対して非軸対称とすることによって、対流モードを右渦モードおよび左渦モードのうち一方に固定し、対流モードに起因する酸素濃度のばらつきを排除する方法が開示されている。その具体的な方法として、特許文献1には、シリコン融液内の水平磁場の印加方向に直交する仮想平面における左右方向一方側の第1加熱領域の発熱量と、他方側の第2加熱領域の発熱量とが異なる値に設定された加熱部を用いる方法が開示されている。
【0005】
特許文献1には、第1加熱領域と第2加熱領域の発熱量を異ならせる1つの方法として、第1,第2加熱領域のそれぞれの発熱部に電力を供給する電力供給部の接触抵抗値を異ならせる方法が開示されている。
そして、接触抵抗値を異ならせる方法として、第1,第2加熱領域のそれぞれの発熱部に接続される端子と電極との間に介挿される電気抵抗調整部材の合計枚数を異ならせる方法と、第1,第2加熱領域のそれぞれの発熱部に接続される端子と電極とを締結する締結手段の締結力を異ならせる方法と、第1,第2加熱領域のそれぞれの発熱部に接続される端子と電極とを接合する接着層の材質または厚さを異ならせる方法とが開示されている。
【0006】
また、特許文献1には、第1加熱領域と第2加熱領域の発熱量を異ならせる別の方法として、第1,第2加熱領域に設けられたスリットの長さおよび総数のうち少なくとも一方を異ならせる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-102247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された接触抵抗値を異ならせる方法では、接触抵抗値を所望の値にするに際し、作業バラツキや部材の劣化などの影響で、シリコン融液の対流モードが所望の状態から変化する可能性がある。また、特許文献1に開示されたスリットの長さおよび総数のうち少なくとも一方を異ならせる方法では、特別な形状の加熱部が必要となってしまう。
【0009】
本発明は、従来の装置構成を大きく変更することなく、酸素濃度が安定したシリコン単結晶を製造することができるシリコン単結晶の製造方法、および、シリコン単結晶製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のシリコン単結晶の製造方法は、シリコン単結晶製造装置を用いてシリコン融液に水平磁場を印加しながらシリコン単結晶を引き上げるシリコン単結晶の製造方法であって、前記シリコン単結晶製造装置は、前記シリコン融液を収容する坩堝と、前記坩堝を囲む円筒状に形成され、前記円筒状の中心軸が前記坩堝の中心軸と同一軸上に位置するように配置されたヒータと、導電性を有する材料により棒状に形成され、前記ヒータを支持する第1支持電極、第2支持電極、第3支持電極および第4支持電極と、を備え、前記ヒータは、互いに同じ発熱特性を有し、前記坩堝の外周方向に並ぶ第1発熱部、第2発熱部、第3発熱部および第4発熱部を備え、前記第1支持電極は、前記第1発熱部と前記第2発熱部を電源の正極に接続し、前記第2支持電極は、前記第2発熱部と前記第3発熱部を前記電源の負極またはアースに接続し、前記第3支持電極は、前記第3発熱部と前記第4発熱部を前記正極に接続し、前記第4支持電極は、前記第4発熱部と前記第1発熱部を前記負極または前記アースに接続し、前記第1支持電極、前記第2支持電極、前記第3支持電極および前記第4支持電極のうち少なくとも1本の支持電極は、少なくとも一部の太さが残りの支持電極よりも細い細径支持電極により構成され、前記シリコン単結晶の製造方法は、回転している前記坩堝内のシリコン原料を前記ヒータの発熱分布が不均一の状態で加熱して前記シリコン融液を生成するシリコン融液生成工程と、前記シリコン融液への前記水平磁場の印加を開始する磁場印加工程と、前記水平磁場の中心磁力線に直交する仮想平面における前記シリコン融液の対流の方向が一方向に固定されたら、前記シリコン融液に着液させた種結晶を引き上げることにより、前記シリコン単結晶を育成する育成工程と、を備える。
【0011】
本発明のシリコン単結晶の製造方法において、前記シリコン単結晶製造装置は、前記ヒータを囲む円筒状に形成され、前記ヒータに対する抜熱分布が不均一になるように構成された断熱材を備える、ことが好ましい。
【0012】
本発明のシリコン単結晶の製造方法において、前記断熱材は、全体の熱伝導率が均一になるように構成され、前記断熱材の中心軸が前記坩堝の前記中心軸と同一軸上に位置しないように配置されている、ことが好ましい。
【0013】
本発明のシリコン単結晶の製造方法において、前記断熱材は、一部分の熱伝導率が他部分の熱伝導率と異なるように構成され、前記断熱材の中心軸が前記坩堝の前記中心軸と同一軸上に位置するように配置されている、ことが好ましい。
【0014】
本発明のシリコン単結晶の製造方法において、前記第1支持電極、前記第2支持電極、前記第3支持電極、前記第4支持電極および前記断熱材は、前記シリコン融液に前記水平磁場が印加されるときの前記坩堝の回転速度をR(rpm)、前記水平磁場の印加を開始してから、前記対流の方向が固定される磁場強度の前記水平磁場が前記シリコン融液に作用するまでの時間をT(分)とした場合、平面視における前記坩堝に対する加熱温度が最も高い最高加熱温度位置が、前記中心磁力線に直交しかつ前記坩堝の前記中心軸を含む第1水平仮想線に対して前記坩堝の回転方向の反対方向側に位置し、かつ、前記坩堝の前記中心軸と前記最高加熱温度位置とを結ぶ第2水平仮想線と前記第1水平仮想線とのなす角度θ(°)が、以下の式(1)を満たすように構成されている、ことが好ましい。
θ=360×R×T … (1)
【0015】
本発明のシリコン単結晶製造装置は、シリコン融液に水平磁場を印加しながらシリコン単結晶を引き上げるシリコン単結晶製造装置であって、前記シリコン融液を収容する坩堝と、前記坩堝を囲む円筒状に形成され、前記円筒状の中心軸が前記坩堝の中心軸と同一軸上に位置するように配置されたヒータと、導電性を有する材料により棒状に形成され、前記ヒータを支持する第1支持電極、第2支持電極、第3支持電極および第4支持電極と、を備え、前記ヒータは、互いに同じ発熱特性を有し、前記坩堝の外周方向に並ぶ第1発熱部、第2発熱部、第3発熱部および第4発熱部を備え、前記第1支持電極は、前記第1発熱部と前記第2発熱部を電源の正極に接続し、前記第2支持電極は、前記第2発熱部と前記第3発熱部を前記電源の負極またはアースに接続し、前記第3支持電極は、前記第3発熱部と前記第4発熱部を前記正極に接続し、前記第4支持電極は、前記第4発熱部と前記第1発熱部を前記負極または前記アースに接続し、前記第1支持電極、前記第2支持電極、前記第3支持電極および前記第4支持電極のうち少なくとも1本の支持電極は、少なくとも一部の太さが残りの支持電極よりも細い細径支持電極により構成されている。
【0016】
本発明のシリコン単結晶製造装置において、前記ヒータを囲む円筒状に形成され、前記ヒータに対する抜熱分布が不均一になるように構成された断熱材を備える、ことが好ましい。
【0017】
本発明のシリコン単結晶製造装置において、前記断熱材は、全体の熱伝導率が均一になるように構成され、前記断熱材の中心軸が前記坩堝の前記中心軸と同一軸上に位置しないように配置されている、ことが好ましい。
【0018】
本発明のシリコン単結晶製造装置において、前記断熱材は、一部分の熱伝導率が他部分の熱伝導率と異なるように構成され、前記断熱材の中心軸が前記坩堝の前記中心軸と同一軸上に位置するように配置されている、ことが好ましい。
【0019】
本発明のシリコン単結晶製造装置において、前記第1支持電極、前記第2支持電極、前記第3支持電極、前記第4支持電極および前記断熱材は、前記シリコン融液に前記水平磁場が印加されるときの前記坩堝の回転速度をR(rpm)、前記水平磁場の印加を開始してから、前記対流の方向が固定される磁場強度の前記水平磁場が前記シリコン融液に作用するまでの時間をT(分)とした場合、平面視における前記坩堝に対する加熱温度が最も高い最高加熱温度位置が、前記水平磁場の中心磁力線に直交しかつ前記坩堝の前記中心軸を含む第1水平仮想線に対して前記坩堝の回転方向の反対方向側に位置し、かつ、前記坩堝の前記中心軸と前記最高加熱温度位置とを結ぶ第2水平仮想線と前記第1水平仮想線とのなす角度θ(°)が、以下の式(2)を満たすように構成されている、ことが好ましい。
θ=360×R×T … (2)
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係るシリコン単結晶製造装置の概略構成を示す縦断面図である。
図2】実施形態に係るヒータ、断熱材および磁場印加部を示す平面模式図である。
図3】実施形態に係るヒータの斜視図である。
図4】実施形態に係る低抵抗支持電極および高抵抗支持電極を示す側面図である。
図5】実施形態に係るヒータおよび電力供給部の等価回路図である。
図6】実施形態に係る第1~第4支持電極および断熱材の好ましい構成の説明図であり、(A)は最高加熱温度位置を示す平面図であり、(B)は水平磁場の印加開始からの経過時間と磁場強度との関係を示すグラフである。
図7】実施形態に係るシリコン単結晶製造装置の要部のブロック図である。
図8】実施形態に係るシリコン単結晶の製造方法を示すフローチャートである。
図9】実施例に係る融液高温領域の位置を示す平面図である。
図10】実施例に係る各対流モードの発生率を示すグラフであり、(A)は比較例および実施例1~8における各対流モードの発生率を示し、(B)は比較例および実施例9~16における各対流モードの発生率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施形態]
〔シリコン単結晶製造装置の構成〕
まず、本発明の実施形態に係るシリコン単結晶製造装置の構成について説明する。
図1は、シリコン単結晶製造装置の概略構成を示す縦断面図である。図2は、ヒータ、断熱材および磁場印加部を示す平面模式図である。図3は、ヒータの斜視図である。図4は、低抵抗支持電極および高抵抗支持電極を示す側面図である。図5は、ヒータおよび電力供給部の等価回路図である。図6は、第1~第4支持電極および断熱材の好ましい構成の説明図であり、(A)は最高加熱温度位置を示す平面図であり、(B)は水平磁場の印加開始からの経過時間と磁場強度との関係を示すグラフである。図7は、シリコン単結晶製造装置の要部のブロック図である。
【0022】
図1に示すシリコン単結晶製造装置1は、MCZ法によりシリコン単結晶SMを製造する装置であり、シリコン融液Mに水平磁場を印加しながら、ネック部SM1、肩部SM2、直胴部SM3および図示しないテール部を有するシリコン単結晶SMを引き上げる。シリコン単結晶製造装置1は、外郭を構成するチャンバ2と、チャンバ2の中心部に配置される坩堝3と、坩堝3内の周囲に配置されるヒータ4と、温度計測部15と、を備える。
【0023】
坩堝3は、外側の黒鉛坩堝3Aと、内側の石英坩堝3Bとから構成される二重構造とされ、石英坩堝3B内にはシリコン融液Mが収容される。黒鉛坩堝3Aおよび石英坩堝3Bは、有底円筒形状の容器であり、鉛直上方から見る平面視で円形形状とされている。坩堝3は、回転および昇降が可能な支持軸5の上端部に固定されている。
【0024】
ヒータ4は、略円筒状に形成されて坩堝3の周囲に配置されるグラファイトヒータである。ヒータ4の外側には、チャンバ2の内面に沿って円筒状の断熱材6が設けられている。断熱材6は、全体の熱伝導率が均一になるように構成されている。
【0025】
坩堝3の上方には、支持軸5と同軸上に引き上げ軸7が配置されている。引き上げ軸7は、ワイヤなどで形成されている。引き上げ軸7の下端には種結晶SCが取り付けられている。
【0026】
チャンバ2内には、坩堝3内のシリコン融液Mの上方で育成中のシリコン単結晶SMを囲む筒状の熱遮蔽体8が配置されている。
熱遮蔽体8は、育成中のシリコン単結晶SMに対して、シリコン融液M、坩堝3の側壁およびヒータからの輻射熱を遮断することにより、シリコン単結晶SMの温度上昇を抑制する。
【0027】
チャンバ2の上部には、アルゴンガスなどの不活性ガスをチャンバ2内に導入するガス導入口2Aが設けられている。チャンバ2の下部には、図示しない真空ポンプの駆動により、チャンバ2内の気体を吸引して排出する排気口2Bが設けられている。
【0028】
温度計測部15は、第1計測点P1および第2計測点P2の温度を計測する。第1計測点P1および第2計測点P2の径方向の位置は、育成予定のシリコン単結晶SMの外周面と、熱遮蔽体8の開口内周面との間である。後述するように、第1計測点P1および第2計測点P2の温度を測定することで、シリコン融液Mの対流モードを確認できる。例えば、ヒータ4によるシリコン融液Mの加熱によって、シリコン融液Mの対流の向きが図1において右回り固定された場合、つまりシリコン融液Mの対流モードが右渦モードになった場合は、第1計測点P1の測定温度は第2計測点P2の測定温度よりも高くなる。また、ヒータ4によるシリコン融液Mの加熱によって、シリコン融液Mの対流の向きが左回に固定された場合、つまり対流モードが左渦モードになった場合は、第1計測点P1の測定温度は第2計測点P2の測定温度よりも低くなる。
【0029】
温度計測部15は、一対の反射部15Aと、一対の放射温度計15Bとを備える。
反射部15Aは、チャンバ2内部に設置されている。反射部15Aは、反射面15Cと水平面とのなす角度が40°以上50°以下となるように設置されていることが好ましい。
放射温度計15Bは、チャンバ2の外部に設置されている。放射温度計15Bは、チャンバ2に設けられた石英窓2C(図1参照)を介して入射される輻射光Lを受光して、第1計測点P1および第2計測点P2の温度を非接触で計測する。
【0030】
図2に示すように、シリコン単結晶製造装置1は、磁場印加部16をさらに備える。
磁場印加部16は、それぞれ電磁コイルで構成された第1磁性体16Aおよび第2磁性体16Bを備える。第1磁性体16Aおよび第2磁性体16Bは、チャンバ2の外側において坩堝3を挟んで対向するように設けられている。磁場印加部16は、平面視で、コイル中心軸を通る中心磁力線16Cが、坩堝3の中心軸3C(以下、「坩堝中心軸3C」と言う場合がある)と交差し、第2磁性体16Bから第1磁性体16Aに向かう方向(図2における中心磁力線16Cを示す矢印で示される上方向であり、図1における紙面手前から奥に向かう方向)となるように、水平磁場を印加する。
【0031】
ヒータ4は、その中心軸4C(以下、「ヒータ中心軸4C」と言う場合がある)が坩堝中心軸3Cと同一軸上に位置するように配置されている。一方、断熱材6は、その中心軸6C(以下、「断熱材中心軸6C」と言う場合がある)が坩堝中心軸3Cおよびヒータ中心軸4Cと同一軸上に位置しないように配置されている。つまり、ヒータ4は、坩堝3との隙間が、坩堝3の円周方向で均一になるように配置されている。また、断熱材6は、ヒータ4との隙間が、ヒータ4の円周方向で不均一になるように配置されている。このようなヒータ4および断熱材6の配置により、断熱材6によるヒータ4からの抜熱分布は、坩堝3の円周方向で不均一になる。
【0032】
図2および図3に示すように、ヒータ4は、円筒状に形成されたグラファイトヒータである発熱部40を備える。発熱部40は、円周方向の全体にわたって均一な厚さで形成されている。発熱部40には、上端から下方向へ伸びる複数の上スリット41および下端から上方向へ伸びる複数の下スリット42が、円周方向に交互に並ぶように形成されている。各上スリット41および各下スリット42は、幅寸法が互いに等しく、上下方向に沿った切り込み深さも互いに等しい。また、上スリット41と下スリット42との間隔も、ヒータ4の全周にわたって等しい。
【0033】
発熱部40は、ヒータ中心軸4Cを含み互いに直交する第1鉛直仮想平面VF1および第2鉛直仮想平面VF2により4分割され、互いに同じ発熱特性を有する第1発熱部40A、第2発熱部40B、第3発熱部40Cおよび第4発熱部40Dを備える。同じ発熱特性とは、同じ大きさの電力が供給された場合、同じ部位が同じ温度で発熱することを意味する。
第1発熱部40A~第4発熱部40Dは、上スリット41および下スリット42の総数が等しい。本実施形態では、第1発熱部40A~第4発熱部40Dには、それぞれ2本ずつの上スリット41と3本ずつの下スリット42が形成されており、上スリット41および下スリット42の総数は、5本ずつである。
このように、互いに同じ形状を有する第1発熱部40A~第4発熱部40Dの抵抗値は、同じ値である。
ヒータ4は、ヒータ中心軸4Cが坩堝中心軸3Cと同一軸上に位置し、かつ、平面視で中心磁力線16Cが第1鉛直仮想平面VF1に重なるように配置されている。なお、ヒータ4は、平面視で中心磁力線16Cが第1鉛直仮想平面VF1に重ならないように配置されても良い。
【0034】
シリコン単結晶製造装置1は、発熱部40に電力を供給する電力供給部9を備える。電力供給部9は、第1端子91A、第2端子91B、第3端子91Cおよび第4端子91Dと、第1支持電極92A、第2支持電極92B、第3支持電極92Cおよび第4支持電極92Dと、4つのナット93A,93B,93C,93Dとを備える。第1端子91A~第4端子91Dは、発熱部40の円周方向に沿って90°間隔で配置されている。
第1端子91A~第4端子91Dは、発熱部40において2本の下スリット42で区画される部分の下端から下方に延長され、発熱部40と一体に形成されている。また、第1端子91A~第4端子91Dは、下端から内側に向かって直角に屈曲された接続部911A~911Dを備えており、接続部911A~911Dには貫通孔912A~912Dが形成されている。
つまり、ヒータ4は、ヒーターエレメントである円筒状の発熱部40と、ヒータ足部である第1端子91A~第4端子91Dとが一体成形されたグラファイトヒータを用いて構成されている。
【0035】
図3に示すように、第1支持電極92A~第4支持電極92Dは、導電性を有するカーボン製の棒状の電極である。第1支持電極92A~第4支持電極92Dのうち1本以上3本以下の支持電極は、図4の上側の図に示す低抵抗支持電極92Lにより構成され、残りの支持電極は、図4の下側の図に示す細径支持電極としての高抵抗支持電極92Hにより構成されている。
低抵抗支持電極92Lは、電極本体921Lと、挟持部922と、雄ねじ部923と、電源接続部924と、を備える。電極本体921Lは、円柱状に形成されている。挟持部922は、電極本体921Lよりも直径が大きくかつ高さが低い円柱状に形成され、電極本体921Lの軸方向一端に設けられている。雄ねじ部923は、挟持部922から電極本体921Lと反対側に伸びるように設けられている。電源接続部924は、電極本体921Lの軸方向他端に設けられている。
高抵抗支持電極92Hは、電極本体921Lの代わりに細径電極本体921Hを備える構成を有する。細径電極本体921Hは、少なくとも一部の直径が電極本体921Lの直径よりも小さい略円柱状に形成され、高抵抗支持電極92Hの抵抗値が低抵抗支持電極92Lの抵抗値よりも高くなるように構成されている。細径電極本体921Hにおける最も細い部位の直径は、ヒータ4を支持するという観点から50mm以上であることが好ましい。
低抵抗支持電極92Lおよび高抵抗支持電極92Hの抵抗値は、周知のように、電極本体921Lおよび細径電極本体921Hの直径または長さを調整することにより、所望の値に設定することができる。
高抵抗支持電極92Hまたは低抵抗支持電極92Lにより構成された第1支持電極92A~第4支持電極92Dは、端子91A~91Dの貫通孔912A~912Dに挿通された雄ねじ部923にカーボン製のナット93A~93Dが螺合され、ナット93A~93Dと挟持部922とにより端子91A~91Dを挟むことにより、端子91A~91Dに電気的に接続されるとともに、ヒータ4を支持する。
【0036】
図5に示すように、電力供給部9は、電源94と、第1陽極配線95Aと、第1陰極配線95Bと、第2陽極配線95Cと、第2陰極配線95Dと、をさらに備える。
第1,第2陽極配線95A,95Cの一端は、例えば図示しないコネクタを介して、第1,第3支持電極92A,92Cの電源接続部924に接続され、他端は電源94の陽極に接続されている。第1,第2陰極配線95B,95Dの一端は、例えば図示しないコネクタを介して、第2,第4支持電極92B,92Dの電源接続部924に接続され、他端は電源94の陰極に接続されている。なお、第1,第2陰極配線95B,95Dの他端は、アースに接続されても良い。
【0037】
図5に示すようなヒータ4および電力供給部9の構成において、例えば第4支持電極92Dを高抵抗支持電極92Hにより構成し、第1支持電極92A~第3支持電極92Cを低抵抗支持電極92Lにより構成した場合、電源94から第4支持電極92Dに流れる電流は、電源94から第2支持電極92Bに流れる電流よりも小さくなる。その結果、第1,第2発熱部40A,40Bが第3,第4発熱部40C,40Dよりも高い温度で発熱し、発熱分布は、当該坩堝3の円周方向で不均一になる。
このように、第1支持電極92A~第4支持電極92Dのうち1本以上3本以下の支持電極を高抵抗支持電極92Hにより構成することにより、平面視での坩堝3に対する加熱温度が最も高くなる位置(以下、「最高加熱温度位置」と言う場合がある)を所望の位置に設定することができる。
また、上述したように、断熱材6は、断熱材中心軸6Cが坩堝中心軸3Cおよびヒータ中心軸4Cと同一軸上に位置しないように配置され、ヒータ4からの抜熱分布が坩堝3の円周方向で不均一になるように構成されている。
したがって、坩堝3に対する高抵抗支持電極92Hの位置と、断熱材6とヒータ4との隙間が最も小さくなる位置とを調整することにより、坩堝3の最高加熱温度と、最高加熱温度位置とをより細かく調整することができる。
なお、以下において、ヒータ4の発熱分布および断熱材6によるヒータ4からの抜熱分布を調整して、最高加熱温度位置が存在するように坩堝3を加熱する状態を、「不均一加熱状態」と言う場合がある。一方、最高加熱温度位置が存在しないように坩堝3を加熱する状態、つまり坩堝3の加熱分布が当該坩堝3の円周方向で均一になるように坩堝3を加熱する状態を、「均一加熱状態」と言う場合がある。
【0038】
ここで、坩堝3の熱伝導率が大きく、かつ、坩堝3全体の肉厚が均一であるため、ヒータ4により不均一加熱状態で加熱された坩堝3の温度は、連続的に変化する。このため、シリコン融液Mにおける最高加熱温度位置において最も高い温度に加熱された領域(以下、「融液高温領域」と言う場合がある)と、最も低い温度に加熱された領域(以下、「融液低温領域」と言う場合がある)は、シリコン融液Mの中心を挟んで対向する。
坩堝3に対する高抵抗支持電極92Hおよび断熱材6の位置は、融液高温領域の温度から融液低温領域の温度を減じた融液温度差が、3℃以上になるように設定されていることが好ましく、5℃以上になるように設定されていることがより好ましい。融液温度差を3℃以上にすることにより、水平磁場の印加タイミングに関係なく、対流モードを1つのモードに固定しやすくなり、5℃以上にすることにより、水平磁場の印加タイミングに関係なく、対流モードを1つのモードにより固定しやすくなるからである。
【0039】
第1支持電極92A~第4支持電極92Dおよび断熱材6は、図1および図2に示す、第1鉛直仮想平面VF1に対して両側にそれぞれ位置する坩堝3の第1部分31Aおよび第2部分31Bの加熱量が互いに異なるように、構成されていることが好ましい。第1支持電極92A~第4支持電極92Dおよび断熱材6は、図6(A)に示すように、平面視における坩堝3に対する加熱温度が最も高い最高加熱温度位置3MAが、坩堝中心軸3Cに対して右側に位置し、中心磁力線16Cに直交しかつ坩堝中心軸3Cを含む第1水平仮想線VL1に対して坩堝3の回転方向D1の反対方向側に位置し、かつ、坩堝中心軸3Cと最高加熱温度位置3MAを結ぶ第2水平仮想線VL2と、第1水平仮想線VL1とのなす角度θ(°)が、以下の式(3)を満たすように構成されていることがより好ましい。
または、第1支持電極92A~第4支持電極92Dおよび断熱材6は、平面視における坩堝3に対する加熱温度が最も高い最高加熱温度位置3MBが、坩堝中心軸3Cに対して左側に位置し、第1水平仮想線VL1に対して回転方向D1の反対方向側に位置し、かつ、坩堝中心軸3Cと最高加熱温度位置3MBを結ぶ第2水平仮想線VL3と、第1水平仮想線VL1とのなす角度θ(°)が、以下の式(3)を満たすように構成されていることがより好ましい。
θ=360×R×T … (3)
なお、式(3)において、Rは、シリコン融液Mに水平磁場が印加されるときの坩堝3の回転速度(rpm)である。Tは、水平磁場の印加を開始してから、対流の方向が固定される磁場強度(以下、「対流方向固定磁場強度K1」と言う場合がある)の水平磁場がシリコン融液Mに作用するまでの時間(分)である。対流方向固定磁場強度K1は、0.05テスラ(500ガウス)以上、0.15テスラ(1500ガウス)以下である。
【0040】
ここで、最高加熱温度位置3MA,3MBが図6(A)に示す位置になるように、第1支持電極92A~第4支持電極92Dおよび断熱材6を構成する理由について説明する。
仮に、均一加熱状態で坩堝3が加熱されると、坩堝3内のシリコン融液Mは、坩堝3の円周方向の全域にわたって均一に加熱される。
この場合、シリコン融液Mには、坩堝3の側面近傍で上昇し中央付近で下降する対流が発生する。シリコン融液Mに水平磁場が印加されていない状態では、対流の不安定により、下降流の位置は、無秩序に変化して坩堝3の中心からずれたりする。
このような状態のシリコン融液Mに対し、磁場強度が所定の磁場強度K2になるように水平磁場の印加を開始すると、図6(B)に示すように、シリコン融液Mに作用する磁場の大きさは、印加開始からの経過時間に比例して大きくなる。そして、対流方向固定磁場強度K1の水平磁場がシリコン融液Mに作用すると、下降流の回転方向D1への回転が拘束され、やがて水平磁場の印加方向に直交する仮想平面における対流の方向が固定される。
このように均一加熱状態で坩堝3が加熱される場合、下降流の位置が無秩序に変化している状態で水平磁場が印加されるため、印加のタイミングによって、対流モードが右渦モードになったり、左渦モードになったりする。
【0041】
一方、不均一加熱状態で坩堝3が加熱されると、シリコン融液Mに水平磁場が印加されていない状態でも、シリコン融液Mで上昇流が坩堝3の右側に安定して発生するとともに、下降流が坩堝3の左側に安定して発生し、または、上昇流が坩堝3の左側に安定して発生するとともに、下降流が坩堝3の右側に安定して発生し、均一加熱状態で坩堝3を加熱する場合のように下降流の位置が無秩序に変化しない。
また、融液高温領域は、坩堝3の回転速度R(rpm)での回転に伴い回転方向D1に回転する。つまり、シリコン融液Mにおける上昇流が発生している領域は、最高加熱温度位置3MA,3MBの近傍から回転速度R(rpm)で回転方向D1に移動する。
上述したように、最高加熱温度位置3MAは上記式(3)を満たすように設定されているため、水平磁場の印加のタイミングに関係なく、水平磁場の印加開始からT分後に対流方向固定磁場強度K1の水平磁場がシリコン融液Mに作用すると、平面視で融液高温領域が第1水平仮想線VL1に重なる状態で、上昇流の回転方向D1への回転が拘束され、やがて対流が左回りに固定されて左渦モードになる。また、最高加熱温度位置3MBも上記式(3)を満たすように設定されているため、水平磁場の印加のタイミングに関係なく、水平磁場の印加開始からT分後に対流方向固定磁場強度K1の水平磁場がシリコン融液Mに作用すると、平面視で融液高温領域が第1水平仮想線VL1に重なる状態で、上昇流の回転方向D1への回転が拘束され、やがて対流が右回りに固定されて右渦モードになる。
このように、融液高温領域が第1水平仮想線VL1に重なる状態で、シリコン融液Mに対流方向固定磁場強度K1の水平磁場を作用させることにより、融液高温領域が第1水平仮想線VL1に重ならない状態で、シリコン融液Mに対流方向固定磁場強度K1の水平磁場を作用させる場合と比べて、左渦モードまたは右渦モードを安定的に発生させることができる。
【0042】
図7に示すように、シリコン単結晶製造装置1は、原料供給部18と、坩堝回転駆動部19と、引き上げ駆動部20と、入力部21と、記憶部22と、制御部23と、をさらに備える。制御部23には、電源94、放射温度計15B、磁場印加部16、原料供給部18、坩堝回転駆動部19、引き上げ駆動部20、入力部21および記憶部22が各種情報を送受信可能に接続されている。
【0043】
電源94は、制御部23の制御に基づいて、電力供給部9を介して発熱部40に電力を供給する。
放射温度計15Bは、計測結果に対応する信号を制御部23に出力する。
磁場印加部16は、制御部23の制御に基づいて、所定の強さの水平磁場をシリコン融液Mに印加する。
原料供給部18は、制御部23の制御に基づいて、坩堝3にシリコン原料を投入する。
坩堝回転駆動部19は、制御部23の制御に基づいて、坩堝3を所定速度で所定方向に回転させる。
引き上げ駆動部20は、制御部23の制御に基づいて、引き上げ軸7を昇降させる。また、引き上げ駆動部20は、制御部23の制御に基づいて、引き上げ軸7を支持軸5の回転方向と逆方向または同一方向に所定の速度で回転させる。
【0044】
入力部21は、例えばタッチパネルまたは物理ボタンにより構成されている。入力部21は、各種設定の入力操作に用いられ、入力操作に対応する信号を制御部23へ出力する。
【0045】
記憶部22は、例えばHDD(Hard Disk Drive)などの周知の記憶装置により構成されている。記憶部22は、シリコン単結晶SMの引き上げ制御に必要な各種情報を記憶している。
【0046】
制御部23は、CPU(Central Processing Unit)を備える。制御部23は、記憶部22に記憶されたプログラムをCPUが実行することにより、シリコン単結晶SMの引き上げを制御する。
【0047】
〔シリコン単結晶の製造方法〕
次に、シリコン単結晶製造装置1を用いるシリコン単結晶SMの製造方法について説明する。図8は、シリコン単結晶の製造方法を示すフローチャートである。なお、本実施形態では、最高加熱温度位置が図6(A)に示す最高加熱温度位置3MAになるように、第1支持電極92A~第4支持電極92Dおよび断熱材6が構成されている場合について説明する。
【0048】
まず、作業者は、入力部21を操作して製造対象のシリコン単結晶SMの引き上げ条件を入力する。
制御部23は、図8に示すように、入力された引き上げ条件を取得する(ステップS1)。
この後、制御部23は、取得した引き上げ条件に基づいて、シリコン単結晶SMの製造工程を行う。
具体的に、制御部23は、チャンバ2内を減圧下の不活性ガス雰囲気に維持し、ヒータ4をオフにした(ヒータ4に電力を供給しない)状態で、かつ、水平磁場を印加しない状態で、原料供給部18を制御してシリコン原料を坩堝3に投入した後、坩堝回転駆動部19を制御して、坩堝3を回転速度Rで回転方向D1に回転させる(ステップS2)。
【0049】
次に、制御部23は、電源94を制御して、ヒータ4の発熱部40により不均一加熱状態で坩堝3を加熱し、シリコン原料を溶融させてシリコン融液Mを生成する(ステップS3:シリコン融液生成工程)。ステップS3において、全てのシリコン原料が溶融すると、シリコン融液Mにおける上昇流が発生している領域は、最高加熱温度位置3MAの近傍の位置から回転速度R(rpm)で回転方向D1に移動する。
【0050】
この後、制御部23は、磁場印加部16を制御して、磁場強度が所定の磁場強度K2(例えば、0.3テスラ)になるように、シリコン融液Mへの水平磁場の印加を開始する(ステップS4:磁場印加工程)。ステップS4の処理により、シリコン融液Mに対流方向固定磁場強度K1(例えば、0.1テスラ)の水平磁場が作用すると、シリコン融液Mの対流が左回りに固定されて左渦モードになる。
【0051】
次に、制御部23は、放射温度計15Bからの計測結果に対応する信号に基づいて、シリコン融液Mの対流モードが左渦モードに固定されたか否かを判定する(ステップS5:対流方向確認工程)。
制御部23は、対流モードが左渦モードに固定されていないと判定した場合(ステップS5:NO)、所定時間経過後に、ステップS5の処理を再度行う。
一方、制御部23は、対流モードが左渦モードに固定されたと判定した場合(ステップS6:YES)、水平磁場の印加を継続しながら、引き上げ駆動部20を制御して、シリコン単結晶SMを育成する(ステップS6:育成工程)。ステップS6において、引き上げ駆動部20は、制御部23の制御に基づいて、シリコン融液Mに種結晶SCを着液してから種結晶SCを引き上げるように、引き上げ軸7を昇降させることにより、シリコン単結晶SMを育成する。
【0052】
〔実施形態の効果〕
シリコン単結晶製造装置1では、ヒータ4の第1発熱部40A~第4発熱部40Dと電源94とを電気的に接続するとともに、ヒータ4を支持する第1支持電極92A~第4支持電極92Dのうち少なくとも1本の支持電極は、高抵抗支持電極92Hにより構成されている。
このように第1支持電極92A~第4支持電極92Dを構成することにより、高抵抗支持電極92Hに流れる電流を低抵抗支持電極92Lに流れる電流よりも小さくすることができ、第1発熱部40A~第4発熱部40Dの発熱温度を不均一にすることができる。このため、坩堝3を不均一加熱状態で加熱することができ、シリコン融液Mの下降流を安定した位置に発生させることができる。したがって、下降流が安定した位置に発生しているシリコン融液Mに水平磁場を印加することにより、シリコン融液Mの対流モードを所望の状態に固定することができ、酸素濃度が安定したシリコン単結晶SMを製造することができる。また、酸素濃度が安定したシリコン単結晶SMを製造することができるため、シリコン単結晶SMの歩留まりが向上し、エネルギー効率の改善と、生産効率の向上および廃棄物の削減とを実現することができる。
また、第1支持電極92A~第4支持電極92Dのうち少なくとも1本の支持電極として、高抵抗支持電極92Hを用いるだけで不均一加熱状態を実現できるため、従来のヒータ4を用いることができ、従来の装置構成を大きく変更する必要がない。
さらに、細径電極本体921Hの直径を調整するだけの簡単な方法で、高抵抗支持電極92Hの抵抗値を大きく調整することができ、所望の不均一加熱状態の実現を容易に行うことができる。
【0053】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の種々の改良並びに設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0054】
第1支持電極92A~第4支持電極92Dのうち複数本の支持電極を高抵抗支持電極92Hで構成する場合、少なくとも1本の高抵抗支持電極92Hの抵抗値は、他の高抵抗支持電極92Hの抵抗値よりも高くても良い。
【0055】
断熱材6を、断熱材中心軸6Cが坩堝中心軸3Cおよびヒータ中心軸4Cと同一軸上に位置するように配置して、坩堝3に対する抜熱分布が均一になるように構成しても良い。
全体の熱伝導率が均一の断熱材6を用いる構成を例示したが、一部分の熱伝導率が他部分の熱伝導率と異なるように構成された円筒状の断熱材を、当該断熱材の中心軸が坩堝中心軸3Cおよびヒータ中心軸4Cと同一軸上に位置するように配置して、坩堝3に対する抜熱分布が不均一になるように構成しても良く、この場合、断熱材の熱伝導率は、上記式(3)を満たすように設定されても良いし、満たさないように設定されても良い。
【実施例0056】
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0057】
[実験条件]
〔融液高温領域の位置の定義〕
平面視における融液高温領域の位置を表す位置A~位置Hを、図9に示すように定義した。位置Aは、平面視におけるシリコン融液Mの中心から中心磁力線16Cの印加方向前方に伸びる基準線と、シリコン融液Mの中心から位置Aまで伸びる水準線とのなす角度が0°となる位置である。位置B、位置C、位置D、位置E、位置F、位置G、位置Hは、位置Aから時計回り方向に45°、90°、135°、180°、225°、270°、315°だけ回転した位置である。
【0058】
〔比較例〕
まず、上記実施形態のシリコン単結晶製造装置1を準備した。
そして、第1支持電極92A~第4支持電極92Dの全ての太さを同じにし、かつ、断熱材中心軸6Cが坩堝中心軸3Cおよびヒータ中心軸4Cと同一軸上に位置するように断熱材6を配置した。
比較例の場合、坩堝3が均一加熱状態で加熱されるため、シリコン融液Mに融液高温領域および融液低温領域が発生しない。つまり、比較例の条件では、融液温度差は0℃になる。
そして、上記シリコン単結晶SMの製造方法におけるステップS1~ステップS6の処理を行うことにより、直径が300mm、長さが2000mmの直胴部SM3を有するシリコン単結晶SMを育成した。なお、坩堝3の回転方向D1は、図9における反時計回り方向である。
【0059】
〔実施例1~16〕
実施例1~8では、断熱材中心軸6Cが坩堝中心軸3Cおよびヒータ中心軸4Cと同一軸上に位置するように断熱材6を配置した。そして、融液高温領域がそれぞれ位置A、位置B、位置C、位置D、位置E、位置F、位置G、位置Hに位置し、かつ、融液温度差がそれぞれ3℃になるように、第1支持電極92A~第4支持電極92Dの太さを調整して、比較例と同じ条件でシリコン単結晶SMを育成した。
実施例9~16では、融液高温領域がそれぞれ位置A、位置B、位置C、位置D、位置E、位置F、位置G、位置Hに位置し、かつ、融液温度差がそれぞれ5℃になるように、坩堝3およびヒータ4に対する断熱材6の位置を調整したこと以外は、実施例1~8と同じ条件でシリコン単結晶SMを育成した。
【0060】
[評価]
比較例および実施例1~16のシリコン単結晶SMの育成を開始する前に、水平磁場の印加をシリコン融液Mの生成後のランダムなタイミングで行い対流モードを観察し、各対流モードの発生率と、発生した渦の安定性とを評価した。
各対流モードの発生率を以下の表1および図10(A),(B)に示し、渦の安定性の評価結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
比較例では、表1および図9(A),(B)に示すように、右渦モードの発生率と左渦モードの発生率とがほぼ同じであった。また、比較例では、一度固定された渦の向きが10%以上の確率で反転した。
このような結果が出た理由は、坩堝3が均一加熱状態で加熱されており、下降流の位置が無秩序に変化するため、水平磁場の印加タイミングによって、右渦モードになったり、左渦モードになったりしたためと考えられる。
【0063】
一方、実施例1~8では、表1および図9(A)に示すように、右渦モードの発生率と左渦モードの発生率との差が10%以上になり、比較例と比べて、水平磁場の印加タイミングに関係なく、対流モードを1つのモードに固定しやすいことが確認できた。
このような結果が得られた理由は、坩堝3が不均一加熱状態で加熱されており、下降流の位置が固定されるため、水平磁場の印加タイミングに関係なく、対流モードが1つのモードに固定される確率が高まったためと考えられる。
【0064】
特に、実施例3,4,6,7では、右渦モードの発生率と左渦モードの発生率との差が30%以上になり、実施例1,2,5,8と比べて、水平磁場の印加タイミングに関係なく、対流モードを1つにより固定しやすいことが確認できた。また、実施例1,2,5では、一度固定された渦の向きが10%以上の確率で反転したが、実施例3,4,6~8では、一度固定された渦の向きが反転する確率は10%未満であった。
【0065】
比較例と実施例1~8との比較から、融液温度差が3℃以上になるように、第1支持電極92A~第4支持電極92Dの太さと断熱材6の配置位置のうち、少なくとも第1支持電極92A~第4支持電極92Dの太さを調整することにより、対流モードを1つのモードに固定しやすくすることができ、従来の装置構成を大きく変更することなく、酸素濃度が安定したシリコン単結晶を製造することができることが確認できた。
【0066】
また、実施例9~16では、表1および図9(B)に示すように、右渦モードの発生率と左渦モードの発生率との差が40%以上になり、比較例および実施例1~8と比べて、水平磁場の印加タイミングに関係なく、対流の方向を一方向により固定しやすいことが確認できた。さらに、実施例9~16では、一度固定された渦の向きが反転する確率は10%未満であった。
このような結果が得られた理由は、融液温度差が実施例1~8よりも大きいため、実施例1~8よりも強い下降流が発生して、当該下降流の位置が固定されるため、水平磁場の印加タイミングに関係なく、対流の方向が一方向に固定される確率がより高まったためと考えられる。
【0067】
特に、実施例10~12,14~16では、右渦モードの発生率と左渦モードの発生率との差が70%以上になり、実施例9,13と比べて、水平磁場の印加タイミングに関係なく、対流の方向を一方向にさらに固定しやすいことが確認できた。
このような結果が得られた理由は、実施例9,13では、平面視で融液高温領域が中心磁力線16C上に位置しているため、シリコン融液Mの中心に対して融液降温領域の反対側に発生する下降流が中心磁力線16C近傍に発生するのに対し、実施例10~12,14~16では、平面視で融液高温領域が中心磁力線16Cに対して右側または左側に位置しており、下降流が中心磁力線16Cから離れた領域に発生するため、実施例9,13と比べて、水平磁場の印加タイミングに関係なく、対流の方向が一方向に固定される確率がさらに高まったためと考えられる。
【0068】
また、実施例11,12,15,16では、右渦モードの発生率と左渦モードの発生率との差が100%になり、実施例10,14と比べて、水平磁場の印加タイミングに関係なく、対流の方向を一方向にさらに固定しやすいことが確認できた。
このような結果が得られた理由は、以下のように考えられる。上述したように、融液高温領域は、坩堝3の回転に伴い回転方向D1に回転する。また、実施例10の融点高温領域は、実施例11,12の融点高温領域に対して回転方向D1の前方側に位置し、実施例14の融点高温領域は、実施例15,16の融点高温領域に対して回転方向D1の前方側に位置する。このため、実施例11,12,15,16における対流方向固定磁場強度K1である0.1テスラの水平磁場が作用するときの融点高温領域の位置は、実施例10,14と比べて第1水平仮想線VL1に近くなり、水平磁場の印加タイミングに関係なく、対流の方向が一方向に固定される確率がさらに高まったためと考えられる。
【0069】
また、実施例12,16では、一度固定された渦の向きが反転することはなく、実施例11,15と比べて、水平磁場の印加タイミングに関係なく、右渦モードまたは左渦モードを安定的に発生させやすいことが確認できた。
このような結果が得られた理由は、実施例11の融点高温領域は、実施例12の融点高温領域に対して回転方向D1の前方側に位置し、実施例15の融点高温領域は、実施例16の融点高温領域に対して回転方向D1の前方側に位置するため、実施例12,16における0.1テスラの水平磁場が作用するときの融点高温領域の位置は、実施例11,15と比べて第1水平仮想線VL1に近くなり、水平磁場の印加タイミングに関係なく、右渦モードまたは左渦モードを安定的に発生させやすくなったためと考えられる。
【0070】
実施例1~8と実施例9~16との比較から、融液温度差が5℃以上になるように、第1支持電極92A~第4支持電極92Dの太さと断熱材6の配置位置を調整することにより、対流モードを1つのモードにより固定しやすくすることができ、従来の装置構成を大きく変更することなく、酸素濃度がより安定したシリコン単結晶を製造することができることが確認できた。
なお、全体の熱伝導率が均一の断熱材6の代わりに、一部分の熱伝導率が他部分の熱伝導率と異なるように構成された円筒状の断熱材を用いても、本実施例と同様の結果が得られると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のシリコン単結晶の製造方法、および、シリコン単結晶製造装置は、従来の装置構成を大きく変更することなく、酸素濃度が安定したシリコン単結晶を製造することができるため、シリコン単結晶の歩留まりが向上し、エネルギー効率の改善と、生産効率の向上および廃棄物の削減とを実現することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…シリコン単結晶製造装置、3…坩堝、3C…坩堝中心軸、3MA,3MB…最高加熱温度位置、4…ヒータ、40A…第1発熱部、40B…第2発熱部、40C…第3発熱部、40D…第4発熱部、4C…ヒータ中心軸、6…断熱材、6C…断熱材中心軸、92A…第1支持電極、92B…第2支持電極、92C…第3支持電極、92D…第4支持電極、92H…高抵抗支持電極(細径支持電極)、94…電源、M…シリコン融液、SM…シリコン単結晶、VL1…第1水平仮想線、VL2,VL3…第2水平仮想線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-04-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
比較例では、表1および図10(A),(B)に示すように、右渦モードの発生率と左渦モードの発生率とがほぼ同じであった。また、比較例では、一度固定された渦の向きが10%以上の確率で反転した。
このような結果が出た理由は、坩堝3が均一加熱状態で加熱されており、下降流の位置が無秩序に変化するため、水平磁場の印加タイミングによって、右渦モードになったり、左渦モードになったりしたためと考えられる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
一方、実施例1~8では、表1および図10(A)に示すように、右渦モードの発生率と左渦モードの発生率との差が10%以上になり、比較例と比べて、水平磁場の印加タイミングに関係なく、対流モードを1つのモードに固定しやすいことが確認できた。
このような結果が得られた理由は、坩堝3が不均一加熱状態で加熱されており、下降流の位置が固定されるため、水平磁場の印加タイミングに関係なく、対流モードが1つのモードに固定される確率が高まったためと考えられる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
また、実施例9~16では、表1および図10(B)に示すように、右渦モードの発生率と左渦モードの発生率との差が40%以上になり、比較例および実施例1~8と比べて、水平磁場の印加タイミングに関係なく、対流の方向を一方向により固定しやすいことが確認できた。さらに、実施例9~16では、一度固定された渦の向きが反転する確率は10%未満であった。
このような結果が得られた理由は、融液温度差が実施例1~8よりも大きいため、実施例1~8よりも強い下降流が発生して、当該下降流の位置が固定されるため、水平磁場の印加タイミングに関係なく、対流の方向が一方向に固定される確率がより高まったためと考えられる。