(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158968
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】熱分解装置および再生(メタ)アクリル酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/12 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
C08J11/12 ZAB
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074648
(22)【出願日】2023-04-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 昌利
(72)【発明者】
【氏名】角谷 英則
(72)【発明者】
【氏名】安富 陽一
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA17
4F401BA06
4F401BB20
4F401CA67
4F401CA70
(57)【要約】
【課題】発火爆発を防止する。
【解決手段】(メタ)アクリル系重合体組成物を成形した成形体のスクラップを熱分解してガス化する熱分解部10を備える熱分解装置1であって、熱分解部は、スクラップを投入するための投入部12と、熱分解されたガスを抜き出すためのガス抜き出し部14とを有しており、ガス抜き出し部に連結管20により接続されており、ガス抜き出し部から導出されたガスを精製するための精製器、およびガスを冷却するための冷却器からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むガス処理部30とを含み、連結管は、フランジ接続部またはねじ込み接続部である少なくとも1つの接続部22を有しており、連結管は、接続部から離間して接続部を囲むカバー部材42であって、連結管を貫通させ、かつ連結管と該カバー部材とを離間させる間隙部が設けられている接続部カバー40を備えており、カバー部材には、接続部カバー内に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給口が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系重合体を含む(メタ)アクリル系重合体組成物を成形した成形体のスクラップを熱分解してガス化する熱分解部を備える熱分解装置であって、
前記熱分解部は、前記スクラップを投入するための投入部と、熱分解されたガスを抜き出すためのガス抜き出し部とを有しており、
前記ガス抜き出し部に連結管により接続されており、前記ガス抜き出し部から導出された前記ガスを精製するための精製器、および前記ガスを冷却するための冷却器からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むガス処理部とを含み、
前記連結管は、少なくとも1つの接続部を有しており、
前記連結管は、前記接続部から離間して前記接続部を囲むカバー部材であって、前記連結管を貫通させ、かつ前記連結管と該カバー部材とを離間させる間隙部が設けられている接続部カバーを備えており、
前記カバー部材には、前記接続部カバー内に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給口が設けられている、熱分解装置。
【請求項2】
前記接続部カバーは、前記カバー部材と、該カバー部材と前記連結管の表面とに接触して、該カバー部材と前記連結管との間隙であって、前記連結管を貫通させるための間隙を封止して気密の閉空間を画成することができる封止部材をさらに含む、請求項1に記載の熱分解装置。
【請求項3】
前記カバー部材に、前記閉空間に充満している気体を導出するための気体排出口がさらに設けられている、請求項2に記載の熱分解装置。
【請求項4】
前記接続部カバーが、前記気体排出口に接続されている気体処理部をさらに含む、請求項3に記載の熱分解装置。
【請求項5】
前記接続部カバーが、前記閉空間内の気体に接触して前記接続部から漏出した有害ガスを検知することができる有害ガス検知部をさらに含み、
前記有害ガス検知部が、前記接続部カバー内に設けられているか、または前記気体排出口に接続されている、請求項3に記載の熱分解装置。
【請求項6】
前記連結管が、前記有害ガス検知部が前記接続部からの有害ガスの漏出を検知した場合に前記連結管内におけるガスの流通を調節することができるガス流通調節部をさらに含む、請求項5に記載の熱分解装置。
【請求項7】
前記カバー部材が、耐熱温度が450℃以上である材料を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱分解装置。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の熱分解装置を用いる再生(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、
前記熱分解部の前記投入部にスクラップを投入して、該スクラップを熱分解する熱分解工程と、
前記熱分解部における熱分解により生じたガスを前記ガス抜き出し部から抜き出して前記連結管により導出するにあたり、前記接続部を囲むカバー部材内に、前記不活性ガス供給口から不活性ガスを供給しつつ前記ガスを導出する導出工程と、
前記連結管に導出された前記ガスを前記ガス処理部に導入して処理するガス処理工程と
を含む、再生(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項9】
前記接続部カバーは、前記カバー部材と前記連結管の表面とに接触して該カバー部材と前記連結管との間隙であって、前記連結管を貫通させるための間隙を封止する封止部材をさらに含み、
前記導出工程が、前記接続部を囲む前記カバー部材と封止部材とで画成された気密の閉空間内に、前記不活性ガス供給口から不活性ガスを供給しつつ前記ガスを導出する工程である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記カバー部材には、前記閉空間に充満している気体を導出するための気体排出口がさらに設けられており、
前記導出工程が、前記接続部カバーの前記不活性ガス供給口から不活性ガスを供給し、該不活性ガスを含む気体を前記気体排出口から排出させつつ行われる工程である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記接続部カバーが、前記気体排出口に接続されている前記気体処理部をさらに含み、
前記導出工程が、前記気体排出口から排出させた前記不活性ガスを含む気体を前記気体処理部に導入して処理しつつ行われる工程である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記接続部カバーが、前記閉空間内の気体に接触して前記接続部から漏出した有害ガスを検知することができ、前記閉空間内に設けられているか、または前記気体排出口に接続されている有害ガス検知部をさらに含み、
前記導出工程が、前記有害ガス検知部により前記閉空間への有害ガスの漏出を検知しつつ行われる工程である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
前記連結管が、前記連結管内における前記ガスの流通を調節することができるガス流通調節部をさらに含み、
前記有害ガス検知部が前記接続部からの有害ガスの漏出を検知した場合には、前記連結管に導出されている前記ガスの流通を前記流通調節部により調節する調節工程をさらに含む、請求項12に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステルを再生するための熱分解装置および再生(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸エステルである(メタ)アクリル酸メチル(MMA)を重合した重合体であるポリ(メタ)アクリル酸メチル(PMMA)は、透明性に優れており、さらには耐候性にも優れている。よって、ポリ(メタ)アクリル酸メチルは、自動車用部品、看板標識、表示装置等を構成する部材の材料として、広く用いられている。
【0003】
そして、近年の資源価格の高騰、さらには環境問題に対する意識の高まりに伴って、上記のとおりの種々の用途に用いられたポリ(メタ)アクリル酸メチルを含む製品(成形体)は回収されてリサイクル(再資源化)が図られている。
【0004】
ポリ(メタ)アクリル酸メチルのリサイクルの方法としては、例えば、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、およびサーマルリサイクルが挙げられる。マテリアルリサイクルは、回収された成形体に対し、再度、成形工程を実施して新たな成形体を製造する方法である。ケミカルリサイクルは、回収された成形体を熱処理して、ポリ(メタ)アクリル酸メチルを熱分解(解重合)することにより(メタ)アクリル酸メチルを回収し、回収された(メタ)アクリル酸メチル(再生MMAという場合がある。)を用いて新たな成形体を製造する方法である。サーマルリサイクルは、回収された成形体を燃料として燃焼させ、燃焼エネルギーを直接的に熱源として、さらには燃焼エネルギーを用いて発電して利用する方法である。
【0005】
ポリ(メタ)アクリル酸メチルは、300℃程度の比較的低い温度で加熱することによって、(メタ)アクリル酸メチルを高収率で回収することができ、不純物の低減が可能であるため、ケミカルリサイクルによりリサイクルされることが好ましい。
【0006】
ケミカルリサイクルにおいて、例えば、密閉されたシリンダを有する2軸押出機にアクリル樹脂のスクラップを供給し、400~600℃に加熱して熱分解し、2軸押出機の先端部から吐出される分解ガスを残渣タンクを介してクーラーの負圧効果と真空ポンプによって吸引し、クーラーで分解ガスを凝縮して液状モノマーとする態様が知られている(特許文献1参照。)。また、合成高分子材料をシリンダに供給して、シリンダ内で連続的に加熱することにより得られた低分子量の気体状熱分解物を導出して濃縮する熱処理方法が知られている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-106427号公報
【特許文献2】米国特許第3959357号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようなケミカルリサイクルにおいては、熱分解後にシリンダ外に導出された熱分解により生じたガスをシリンダに連結された連結管により外部に導出する際に連結管から熱分解により生じたガス(有害ガス)が漏出してしまうことが考えられる。特に当該連結管が1以上の例えばフランジ接続部またはねじ込み接続部といった接続部により接続される構成である場合には、この接続部から有害ガスが漏出してしまうおそれがある。ここで、接続部から漏出した有害ガスは、通常、可燃性であるため、場合によっては漏出した有害ガスが発火爆発してしまうおそれもある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を進めたところ、熱分解されて生成したガスを熱分解部から導出する場合に用いられる連結管が所定の構成を備えることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記〔1〕~〔13〕を提供する。
〔1〕 (メタ)アクリル系重合体を含む(メタ)アクリル系重合体組成物を成形した成形体のスクラップを熱分解してガス化する熱分解部を備える熱分解装置であって、
前記熱分解部は、前記スクラップを投入するための投入部と、熱分解されたガスを抜き出すためのガス抜き出し部とを有しており、
前記ガス抜き出し部に連結管により接続されており、前記ガス抜き出し部から導出された前記ガスを精製するための精製器、および前記ガスを冷却するための冷却器からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むガス処理部とを含み、
前記連結管は、少なくとも1つの接続部を有しており、
前記連結管は、前記接続部から離間して前記接続部を囲むカバー部材であって、前記連結管を貫通させ、かつ前記連結管と該カバー部材とを離間させる間隙部が設けられている接続部カバーを備えており、
前記カバー部材には、前記接続部カバー内に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給口が設けられている、熱分解装置。
〔2〕 前記接続部カバーは、前記カバー部材と、該カバー部材と前記連結管の表面とに接触して、該カバー部材と前記連結管との間隙であって、前記連結管を貫通させるための間隙を封止して気密の閉空間を画成することができる封止部材をさらに含む、〔1〕に記載の熱分解装置。
〔3〕 前記カバー部材に、前記閉空間に充満している気体を導出するための気体排出口がさらに設けられている、〔2〕に記載の熱分解装置。
〔4〕 前記接続部カバーが、前記気体排出口に接続されている気体処理部をさらに含む、〔3〕に記載の熱分解装置。
〔5〕 前記接続部カバーが、前記閉空間内の気体に接触して前記接続部から漏出した有害ガスを検知することができる有害ガス検知部をさらに含み、
前記有害ガス検知部が、前記接続部カバー内に設けられているか、または前記気体排出口に接続されている、〔3〕に記載の熱分解装置。
〔6〕 前記連結管が、前記有害ガス検知部が前記接続部からの有害ガスの漏出を検知した場合に前記連結管内におけるガスの流通を調節することができるガス流通調節部をさらに含む、〔5〕に記載の熱分解装置。
〔7〕 前記カバー部材が、耐熱温度が450℃以上である材料を含む、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の熱分解装置。
〔8〕 〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の熱分解装置を用いる再生(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、
前記熱分解部の前記投入部にスクラップを投入して、該スクラップを熱分解する熱分解工程と、
前記熱分解部における熱分解により生じたガスを前記ガス抜き出し部から抜き出して前記連結管により導出するにあたり、前記接続部を囲むカバー部材内に、前記不活性ガス供給口から不活性ガスを供給しつつ前記ガスを導出する導出工程と、
前記連結管に導出された前記ガスを前記ガス処理部に導入して処理するガス処理工程と
を含む、再生(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
〔9〕 前記接続部カバーは、前記カバー部材と前記連結管の表面とに接触して該カバー部材と前記連結管との間隙であって、前記連結管を貫通させるための間隙を封止する封止部材をさらに含み、
前記導出工程が、前記接続部を囲む前記カバー部材と封止部材とで画成された気密の閉空間内に、前記不活性ガス供給口から不活性ガスを供給しつつ前記ガスを導出する工程である、〔8〕に記載の製造方法。
〔10〕 前記カバー部材には、前記閉空間に充満している気体を導出するための気体排出口がさらに設けられており、
前記導出工程が、前記接続部カバーの前記不活性ガス供給口から不活性ガスを供給し、該不活性ガスを含む気体を前記気体排出口から排出させつつ行われる工程である、〔9〕に記載の製造方法。
〔11〕 前記接続部カバーが、前記気体排出口に接続されている前記気体処理部をさらに含み、
前記導出工程が、前記気体排出口から排出させた前記不活性ガスを含む気体を前記気体処理部に導入して処理しつつ行われる工程である、〔10〕に記載の製造方法。
〔12〕 前記接続部カバーが、前記閉空間内の気体に接触して前記接続部から漏出した有害ガスを検知することができ、前記閉空間内に設けられているか、または前記気体排出口に接続されている有害ガス検知部をさらに含み、
前記導出工程が、前記有害ガス検知部により前記閉空間への有害ガスの漏出を検知しつつ行われる工程である、〔10〕に記載の製造方法。
〔13〕 前記連結管が、前記連結管内における前記ガスの流通を調節することができるガス流通調節部をさらに含み、
前記有害ガス検知部が前記接続部からの有害ガスの漏出を検知した場合には、前記連結管に導出されている前記ガスの流通を前記流通調節部により調節する調節工程をさらに含む、〔12〕に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱分解により生成したガスを導出するための連結管における発火爆発、特に連結管の接続部に起因する発火爆発を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、熱分解装置の構成を示す概略的な図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の接続部カバーの構成を示す概略的な図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態の接続部カバーの構成を示す概略的な図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態の接続部カバーの構成を示す概略的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。なお、各図面は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、それぞれの構成要素は本発明の要旨から逸脱しない範囲で改変可能である。また、複数の図面において、同一の符号により示される同一の構成要素については重複する説明を省略する場合がある。
【0014】
1.熱分解装置
図1を参照して、本発明の熱分解装置の概要について説明する。
図1は、熱分解装置の構成例を示す概略的な図である。
【0015】
図1に示されるように、熱分解装置1は、(メタ)アクリル系重合体を含む(メタ)アクリル系重合体組成物を成形した成形体のスクラップを熱分解してガス化する熱分解部10を備える熱分解装置1であって、
前記熱分解部10は、前記スクラップを投入するための投入部12と、熱分解されたガスを抜き出すためのガス抜き出し部14とを有しており、
前記ガス抜き出し部14に連結管20により接続されており、前記ガス抜き出し部14から導出された前記ガスを精製するための精製器、および前記ガスを冷却するための冷却器からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むガス処理部30とを含み、
前記連結管20は、少なくとも1つの接続部22を有しており、
前記連結管20は、前記接続部22から離間して前記接続部22を囲むカバー部材42であって、前記連結管20を貫通させ、かつ前記連結管20と該カバー部材42とを離間させる間隙部43が設けられている接続部カバー40を備えており、
前記カバー部材42には、前記閉空間に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給口42aが設けられている。
【0016】
(1)用語の説明
ここでまず、本明細書において用いられる用語について説明する。
「(メタ)アクリル」には、アクリル、メタクリルおよびこれらの組み合わせが含まれる。
【0017】
「(メタ)アクリル系重合体組成物」は、(メタ)アクリル系重合体を主成分として含み、さらにその他の成分を含みうる組成物である。
【0018】
「(メタ)アクリル系重合体」は、(メタ)アクリル基を有するモノマーに由来する単量体単位を有する重合体である。
【0019】
ここで、(メタ)アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル単独重合体、(メタ)アクリル酸アルキルに由来する単量体単位と、これと共重合可能な他のビニル単量体に由来する単量体単位を有する(メタ)アクリル共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル単独重合体としては、例えば、炭素原子数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルに由来する単量体単位のみを含む(メタ)アクリル単独重合体が挙げられる。また、(メタ)アクリル共重合体としては、炭素原子数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルに由来する単量体単位を、85質量%以上100質量%未満と、炭素原子数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルに由来する単量体単位と共重合可能な他のビニル単量体に由来する単量体単位を0質量%を超えて15質量%以下とを有する(メタ)アクリル共重合体が挙げられる。
【0020】
炭素原子数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル」とは、例えばCH2=C(CH3)COOR(Rは炭素原子数1~4のアルキル基である。)で表される化合物である。
【0021】
炭素原子数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルと共重合可能なビニル単量体とは、炭素原子数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルと共重合可能であり、かつビニル基を有する単量体である。
【0022】
炭素原子数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸sec-ブチル、およびメタクリル酸イソブチルが挙げられる。炭素原子数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルは、好ましくはメタクリル酸メチルである。
【0023】
炭素原子数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルと共重合可能なビニル単量体としては、例えば、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸モノグリセロールなどのメタクリル酸エステル(ただし、炭素原子数1~4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルを除く。);アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸モノグリセロール等のアクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸又はこれらの酸無水物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等の窒素含有モノマー;アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有単量体;スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系単量体が挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリル系重合体の製造方法としては、例えば、炭素原子数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルと、必要に応じて、炭素原子数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルと共重合可能なビニル単量体とを、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の方法で重合されていてよい。
【0025】
(メタ)アクリル系重合体組成物が含みうる「その他の成分」には、例えば、所定の特性を有する成形体を製造するために添加されうる従来公知の任意好適な、離型剤、重合調節剤、重合開始剤、紫外線吸収剤および着色剤が含まれる。
【0026】
「スクラップ」とは、通常、(メタ)アクリル酸メチル系重合体組成物を従来公知の任意好適な射出成形工程などにより種々の形状に成形して製造され、所定の用途に使用された後に廃材として回収された使用済みの成形体であって、本発明にかかる再生システムにおいて原料として用いることができる形状、サイズに調整された成形体である。また「スクラップ」は、成形時の不良品を回収し、本発明にかかる再生システムにおいて原料として用いることができる形状、サイズに調整された成形体であってもよいし、成形時や研磨加工など後工程で発生する端材を回収し、本発明にかかる再生システムにおいて原料として用いることができる形状、サイズに調整された成形体であってもよい。
【0027】
「(メタ)アクリル酸エステル」には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸(2-エチルヘキシル)、(メタ)アクリル酸(tert-ブチルシクロヘキシル)、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸(2,2,2-トリフルオロエチル)が含まれる。
【0028】
「再生(メタ)アクリル酸エステル」とは、ケミカルリサイクルによりスクラップを熱分解して再生され、回収された(メタ)アクリル酸エステルをいう。
【0029】
以下、熱分解装置1を構成しうる構成要素について具体的に説明する。
【0030】
(2)熱分解部
本実施形態の熱分解装置1は、熱分解部10を含む。熱分解部10は、(メタ)アクリル系重合体を含む(メタ)アクリル樹脂組成物を成形した成形体のスクラップを熱分解して、(メタ)アクリル酸エステルを含むガスを生成することができることを条件として、従来公知の任意好適な構成を有する機器を適用することができる。
【0031】
熱分解部10の例としては、押出機、ニーダー、および流動床加熱器が挙げられる。
【0032】
熱分解部10としては、押出機であることが好ましい。熱分解部10である押出機の好適な例としては、二軸同方向回転押出機および二軸異方向回転押出機などの二軸押出機が挙げられる。
【0033】
熱分解部10として好適に適用できるニーダーとしては、例えば、米国特許第10301235号明細書に記載の装置が挙げられる。
【0034】
熱分解部10として好適に適用できる流動床加熱器としては、例えば、特開2009-112902号公報に記載の装置が挙げられる。
【0035】
以下、熱分解部10の構成例について、二軸押出機の構成を例にとって説明する。
二軸押出機である熱分解部10は、原料であるスクラップを加熱処理して熱分解させることができる機能部である。熱分解部10は、例えば、二軸押出機における原料を延在方向に移動させつつ内部において加熱処理を行うためのシリンダと、シリンダの内部に配置されたスクリューとを備えている。
【0036】
熱分解部10である二軸押出機の構成、すなわちシリンダ、スクリューといった構成要素は、従来公知の任意好適な構成を採用することができる。
【0037】
熱分解部10である二軸押出機が備えうるシリンダーの内径の大きさは、後述する連結管20の内径の大きさを考慮して決定することが好ましい(連結管20については後述する。)。
【0038】
熱分解部10には、原料であるスクラップを供給するための投入部12が設けられている。投入部12は二軸押出機におけるホッパー(フィーダー)に相当する構成である。投入部12であるホッパーは、通常、熱分解部10の上流側の端部近傍において、熱分解部10内に原料を供給できるように設けられている。
【0039】
熱分解部10には、熱分解されて生成した(メタ)アクリル酸エステルを含むガスを抜き出すための1以上のガス抜き出し部(ベント)14が設けられている。1以上のガス抜き出し部14の配置(位置)は特に限定されず、設計に対応した任意好適な配置とすることができる。ガス抜き出し部14は、例えば、生成したガスの抜き出し効率を向上させる観点から、既に説明した投入部12とは反対側の熱分解部11の下流側の端部近傍であって、熱分解部11の上端側に設けられていることが好ましい。ガス抜き出し部14が2以上設けられる場合には、熱分解部11の上端側に所定の間隔(例えば等間隔)で整列するように配置することが好ましい。
【0040】
熱分解部10は、空気の系内への漏れ込み防止および分解ガス(熱分解により生成したガス)の系外への漏出防止の観点から、0.005MPa~1.5MPaの圧力下でスクラップを熱分解できる機器であることが好ましい。
【0041】
(3)連結管
熱分解装置1は、既に説明した熱分解部10と、詳細については後述するガス処理部30とを機能的に連結するための連結管20を備えている。
【0042】
連結管20は、(メタ)アクリル酸エステルを含むガスを熱分解部10のガス抜き出し部14から導出してガス処理部30へと導入する(流通させる)機能部である。
【0043】
連結管20は、熱分解部10における熱分解により生成した(メタ)アクリル酸エステルを含むガスを熱分解部10から導出して、ガス処理部30に導入できることを条件として、その形状、材料等は特に限定されない。連結管20としては、従来公知の任意好適なステンレス鋼製の配管等を適用することができる。
【0044】
連結管20の内径の大きさは、熱分解部10である二軸押出機が備えうるシリンダーの内径の大きさを考慮して決定すればよい。
【0045】
熱分解装置10において、連結管20は、連結管20の全長のうちの中途に少なくとも1つの接続部22を有しうる。接続部22は、具体的には例えば、2以上の管状の部材が一体的に1本の管状に接合された場合の接合部分を含む一部領域をいう。
【0046】
接続部22の設置数、態様等は特に限定されない。接続部20は、熱分解装置1の設計に応じた任意好適な態様とすることができる。
【0047】
接続部20としては、具体的には例えば、フランジ接続部またはねじ込み接続部であることが想定される。
【0048】
(4)ガス処理部
熱分解装置1は、熱分解部10のガス抜き出し部14に、既に説明した連結管20により連結されているガス処理部30を備えている。ガス処理部30は、熱分解部10に投入されたスクラップが熱分解されて生成した(メタ)アクリル酸エステル(再生(メタ)アクリル酸エステル)を含むガスであって、ガス抜き出し部14から連結管20を介して抜き出されたガスを処理するための機能部である。
【0049】
ガス処理部30としては、熱分解部10による熱分解によって生成しうるガスの組成、温度等を勘案して決定される必要な処理に対応して選択された従来公知の任意好適な機器を適用することができる。
【0050】
ガス処理部30としては、例えば、熱分解部10から抜き出されたガスを精製するための精製器、熱分解装置10から抜き出されたガスを冷却するための冷却器が挙げられる。ガス処理部30としては、ガス抜き出し部14から導出されたガスを精製するための精製器およびガスを冷却するための冷却器からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むガス処理部30を適用することが好ましい。
【0051】
(5)接続部カバー
図1に示されるように、熱分解装置1が備える連結管20は、接続部22から離間して接続部22を囲む接続部カバー40を備えている。接続部カバー40の具体的な態様には、以下に説明する複数の実施形態が含まれる。本実施形態において接続部カバー40は、カバー部材42を主たる構成要素として含む。
【0052】
接続部カバー40は、接続部22から離間して接続部22を囲むカバー部材42であって、連結管20を貫通させ、かつ連結管20とカバー部材42とを離間させ、連結管20とカバー部材42との間に所定の空隙を画成する機能部である。
以下、
図2、
図3および
図4を参照して、第1実施形態、第2実施形態および第3実施形態それぞれにかかる接続部カバー40の構成例について説明する。
【0053】
(i)第1実施形態
図2を参照して、第1実施形態の接続部カバー40の構成例について説明する。
図2は、第1実施形態の接続部カバー40の構成を示す概略的な図である。
【0054】
図2に示されるように、第1実施形態の熱分解装置1が備える連結管20は、接続部カバー40を備えており、接続部カバー40を構成するカバー部材42には、閉空間に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給口42aが設けられている。接続部カバー40は、接続部22から離間して接続部22を囲むカバー部材42を含み、連結管20がカバー部材42を貫通している。また、カバー部材42には、連結管20とカバー部材42とを離間させる間隙部43が設けられている。
【0055】
カバー部材42の材料としては、接続部カバー40が既に説明した機能を発揮できること、すなわち、ガスが流通する際の連結管20の表面の温度、連結管20の接続部22から漏出しうるガスの温度、接続部22から漏出しうるガスの成分による腐食等に対する耐久性を有する材料が選択される。
【0056】
カバー部材42は、連結管20を流通する(メタ)アクリル酸エステルを含むガスによる連結管20表面の温度に対する耐熱性を確保する観点から、耐熱温度が450℃以上である材料を含むことが好ましく、耐熱温度が450℃以上である材料のみから構成されることがより好ましい。カバー部材42の材料として適用することができる耐熱温度が450℃以上である材料の例としては、ステンレス鋼、炭素鋼、オーステナイト鋼、フェライト鋼、マルテンサイト鋼などの耐熱鋼およびフッ素樹脂などの耐熱樹脂が挙げられる。
【0057】
また、カバー部材42の材料としては、特に静電気に起因する発火爆発を効果的に防止する観点から、導電性を有する材料(導体)を用いることが好ましい。
【0058】
カバー部材42の材料としては導体である金属材料を用いることが好ましい。好適な金属材料の例としては、炭素鋼、ステンレス鋼、オーステナイト鋼、フェライト鋼、マルテンサイト鋼などの耐熱鋼が挙げられる。
【0059】
すなわち、カバー部材42の材料としては、耐熱温度が450℃以上であって、導体である金属材料を用いることが好ましく、具体的には、カバー部材42の材料として、炭素鋼、ステンレス鋼、オーステナイト鋼、フェライト鋼、マルテンサイト鋼などの耐熱鋼を用いることが好ましい。
【0060】
図2に示されるように、第1実施形態の接続部カバー40に含まれるカバー部材42には、連結管20を貫通させ、かつ連結管20とカバー部材42とを離間させるための間隙である間隙部43が設けられている。よって、カバー部材42によって囲まれた連結管20および接続部22の周囲の気体(漏出したガスを含みうる。)は、接続部カバー40(カバー部材42)の間隙部43を通じて、接続部カバー40外に拡散しうる。
【0061】
カバー部材42には、接続部カバー40(カバー部材42)内に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給口42aが設けられている。不活性ガス供給口42aの位置、形状、サイズ等は、特に限定されない。不活性ガス供給口42aの位置、形状、サイズは、例えば、不活性ガス供給部46Aから供給される不活性ガスの流量、カバー部材42により画成される空間の形状、体積(容積)などを勘案して適宜決定することができる。
【0062】
カバー部材42における不活性ガス供給口42aは、接続部22との離間距離が最短となるように配置することが好ましい。具体的には、例えば、接続部22と不活性ガス供給口42aとが最短距離で正対する位置に配置することが好ましい。
【0063】
カバー部材42により画成される空間の形状、体積(容積)は、接続部22から漏出したガスによる発火爆発を効果的に防止できることを条件として、特に限定されない。
【0064】
第1実施形態の接続部カバー40において、カバー部材42により画成される内部の空間の体積(容積)は、100cm3未満であると不活性ガスを供給していても接続部カバー40、すなわちカバー部材42により画成される空間が接続部22から漏出した高温のガスで充満してしまい易く、結果として発火爆発するおそれがあり、体積(容積)が5000cm3より大きいと可燃性ガスが漏洩した場合、漏洩の検知に時間を要するため発見が遅れてしまい、結果として可燃性ガスの大量漏洩のおそれがあることから、漏出したガスを希釈および冷却して発火爆発を効果的に防止するために、100cm3以上5000cm3以下であることが好ましく、500cm3以上3000cm3以下であることがより好ましい。
【0065】
カバー部材42の不活性ガス供給口42aには、不活性ガス供給部46Aが例えば従来公知の任意好適な配管等により接続されている。不活性ガス供給部46Aは、不活性ガス供給口42aを介してカバー部材42内、すなわち接続部カバー40と連結管20の接続部22との間隙に不活性ガスを供給することができる機能部である。不活性ガス供給部46Aは、ボンベ、ポンプ、配管等を含む従来公知の任意好適な機器により構成することができる。
【0066】
不活性ガス供給部46Aにより供給されうる不活性ガスは特に限定されない。かかる不活性ガスの例としては、窒素ガス、ヘリウム、およびアルゴンが挙げられる。不活性ガスとしては、入手性、コスト低減の観点から、窒素ガスを用いることが好ましい。
【0067】
不活性ガス供給部46Aにより供給される不活性ガスの流量(供給量)は、接続部22から漏出したガスによる発火爆発を効果的に防止できることを条件として、特に限定されない。不活性ガス供給部46Aによる不活性ガスの流量(供給量)は、接続部カバー40により画成される空間の形状、体積(容積)などを勘案して、適宜設定することができる。不活性ガスの流量としては内部の酸素濃度が10%以下となるように調整することで可燃性ガスが漏れた場合でも火災・爆発することがなくなる。
【0068】
第1実施形態において、不活性ガス供給部46Aにより供給される不活性ガスの供給量(流量)は、接続部22から漏出したガス((メタ)アクリル酸エステル等を含むガス)を希釈および冷却し、さらには接続部カバー40内の気体を置換することにより、発火爆発を効果的に防止する観点から、0.01Nm3/hr以上1Nm3/hr以下とすることが好ましい。上記供給量(流量)は、0.05Nm3/hr以上0.5Nm3/hr以下とすることがより好ましく、0.1Nm3/hr以上0.3Nm3/hr以下とすることが特に好ましい。
【0069】
第1実施形態において、不活性ガス供給部46Aにより供給される不活性ガスの温度は、接続部22から漏出したガスを効果的に冷却して発火爆発を効果的に防止する観点から、10℃以上70℃以下とすることが好ましい。上記不活性ガスの温度は10℃以上50℃以下とすることがより好ましく、10℃以上30℃以下とすることが特に好ましい。
【0070】
第1実施形態の接続部カバー40は、接続部カバー40(カバー部材42)により画成された空間であって、連結管20の接続部22を囲む空間に存在する気体に接触して接続部22からのガスの漏出、換言すると漏出したガスを検知することができる有害ガス検知部48をさらに含みうる。
【0071】
第1実施形態においては、有害ガス検知部48は、接続部カバー40により画成される空間内、すなわちカバー部材42内に設けられている。有害ガス検知部48は、具体的には例えば、カバー部材42の内壁に固定される態様として設けることが好ましい。
【0072】
有害ガス検知部48は、接続部22からのガスの漏出を精度よく検知する観点から、接続部22との離間距離が最短となるように、具体的に例えば接続部22と有害ガス検知部48とが正対する位置に配置することが好ましい。ここで、「有害ガス」とは、(メタ)アクリル酸エステル等の特に発火性、爆発性を有する成分を含むガスをいう。
【0073】
有害ガス検知部48としては、例えば、接続部22から漏出したガスに含まれる(メタ)アクリル酸エステルなどの成分を検知することができる従来公知の任意好適な機器を適用することができる。有害ガス検知部48の好適な方式の具体例としては、接触燃焼式、ニューセラミック式、半導体式、および、熱線型半導体式が挙げられる。
【0074】
第1実施形態におけるカバー部材42における有害ガス検知部48は、接続部22から漏出したガスに含まれる(メタ)アクリル酸エステルなどの特に発火性、爆発性を有する成分を精度よく検知する観点から、接続部22との離間距離が最短となるように配置することが好ましい。具体的には、例えば、接続部22と有害ガス検知部48とが最短距離で正対する位置に配置することが好ましい。
【0075】
(ii)第2実施形態
図3を参照して、第2実施形態の接続部カバー40の構成例について説明する。
図3は、第2実施形態の接続部カバー40の構成を示す概略的な図である。なお、既に説明した第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0076】
第2実施形態では、接続部カバー40を連結管20が貫通する領域において、接続部カバー40を構成するカバー部材42と連結管20との間に間隙が生じない形態で、連結管20に接続部カバー40が設けられる。また、カバー部材42には、当該閉空間に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給口42aが設けられている。ここで、間隙が生じない形態とは、接続部カバー40における連結管20が貫通する近傍の領域において、これらの間に空隙が生じない態様で連結管20に接続部カバー40を設置する形態であれば、特に限定されない。
【0077】
接続部カバー40を構成するカバー部材42と連結管20との間に間隙が生じない形態には、具体的には例えば(1)空隙が生じず密着するように接続部カバー40を設計する態様、(2)接続部カバー40と連結管20の両方に溝を設けてはめ込む態様、および(3)封止部材を用いて接続部カバー40と連結管20との間の間隙を封止する態様が挙げられる。
【0078】
以下、より具体的な態様として(3)封止部材を用いて接続部カバー40と連結管20との間の間隙を封止する態様について説明する。なお、間隙が生じない形態として他の態様を採用する場合も、閉空間の形状及び体積を含むカバー部材、これに設けられる部材並びに不活性ガスに関する条件としては、後述の条件を適用することができる。
【0079】
図3に示されるように、本実施形態では、接続部22から離間して接続部22を囲むカバー部材42と、カバー部材42と連結管20の表面とに接触してカバー部材42と連結管20との間隙であって、連結管20を貫通させるための間隙を、封止部材44で封止する。このように、この態様では、カバー部材42と封止部材44とで気密の閉空間を画成することができる封止部材44とを含む。また、カバー部材42には、当該閉空間に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給口42aが設けられている。
【0080】
封止部材44の材料は、接続部カバー40が既に説明した機能を発揮できることを条件として特に限定されない。封止部材44は、耐熱温度が450℃以上である材料を含むことが好ましく、耐熱温度が500℃以上である材料のみから構成されることがより好ましい。
【0081】
封止部材44の材料として適用することができる耐熱温度が450℃以上である材料の例としては、炭素鋼、ステンレス鋼、オーステナイト鋼、フェライト鋼、マルテンサイト鋼などの耐熱鋼が挙げられる。
【0082】
また、封止部材44の材料としては、特に静電気に起因する発火爆発を効果的に防止する観点から、導電性を有する材料(導体)を用いることが好ましい。
【0083】
封止部材44の材料としては導体である金属材料を用いることが好ましい。好適な金属材料の例としては、炭素鋼、ステンレス鋼、オーステナイト鋼、フェライト鋼、マルテンサイト鋼などの耐熱鋼が挙げられる。
【0084】
すなわち、封止部材44の材料としては、耐熱温度が450℃以上であって、導体である金属材料を用いることが好ましく、具体的には、カバー部材42の材料として、炭素鋼、ステンレス鋼、オーステナイト鋼、フェライト鋼、マルテンサイト鋼などの耐熱鋼を用いることが好ましい。
【0085】
図3に示されるように、カバー部材42と封止部材44とは一体的に接合されて、気密の閉空間を画成できるように構成される。カバー部材42の材料と封止部材42の材料とは同一としてもよく、カバー部材42の材料と封止部材42の材料とが同一である場合には、カバー部材42と封止部材44とは、一体的に区別できない態様として構成されていてもよい。
【0086】
カバー部材42と封止部材44とで画成される気密の閉空間の形状、体積(容積)は、接続部22から閉空間内に漏出したガス((メタ)アクリル酸エステル等を含む有害ガス)による発火爆発を効果的に防止できることを条件として、特に限定されない。
【0087】
第2実施形態の接続部カバー40において、漏出したガス(有害ガス)による発火爆発を効果的に防止する観点から、カバー部材42と封止部材44とで画成される気密の閉空間の体積(容積)は、100cm3以上2500cm3以下であることが好ましく、300cm3以上1500cm3以下であることがより好ましい。
【0088】
カバー部材42には、接続部カバー40(カバー部材42)内に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給口42aが設けられている。
【0089】
カバー部材42における不活性ガス供給口42aは、接続部22との離間距離が最短となるように、具体的には例えば、接続部22と不活性ガス供給口42aとが正対する位置に配置することが好ましい。
【0090】
カバー部材42の不活性ガス供給口42aには、不活性ガス供給部46Aが、例えば従来公知の任意好適な配管等により接続されている。
【0091】
不活性ガス供給部46Aにより供給される不活性ガスの流量(供給量)は、接続部22から閉空間内に漏出した(メタ)アクリル酸エステル等を含む有害ガスによる発火爆発を効果的に防止できることを条件として、特に限定されない。不活性ガス供給部46A不活性ガスの供給量は、閉空間の体積(容積)などを勘案して、適宜設定することができる。不活性ガス濃度は、可燃性ガスが漏出した場合であっても発火爆発を効果的に防止することができるので、内部の酸素濃度が10%以下となるように不活性ガスを供給することで調整することが好ましい。
【0092】
第2実施形態において、不活性ガス供給部46Aにより供給される不活性ガスの流量(供給量)は、接続部22から漏出した有害ガスを希釈および冷却することにより発火爆発を効果的に防止する観点から、0.001Nm3/hr以上0.1Nm3/hr以下とすることが好ましく、0.001Nm3/hr以上0.05Nm3/hr以下とすることがより好ましく、0.001Nm3/hr以上0.01Nm3/hr以下とすることが特に好ましい。
【0093】
第2実施形態において、不活性ガス供給部46Aにより供給される不活性ガスの温度は、接続部22から漏出した有害ガスを効果的に冷却して発火爆発を効果的に防止する観点から、10℃以上70℃以下とすることが好ましく、10℃以上50℃以下とすることがより好ましく、10℃以上30℃以下とすることが特に好ましい。
【0094】
第2実施形態の接続部カバー40において、不活性ガス供給部46Aによる不活性ガスの供給後の閉空間における圧力は、閉空間内に漏出した有害ガスによる発火爆発を効果的に防止する観点から、0.1MPa以上0.2MPa以下であることが好ましく、0.1MPa以上0.15MPa以下であることがより好ましい。当該圧力は、接続部22から有害ガスが漏出し得る状況になっても、カバー部材42内に外部からの空気の入り込みを防止することができ、不活性ガスにより希釈された可燃性ガスが大気に徐々にパージされることにより可燃性ガスが大量に急速に拡散されることなく、また可燃性ガスの爆発限界濃度を超えることなく発火爆発を防止することができるので、0.1MPa以上とすることが好ましい。
【0095】
第2実施形態の接続部カバー40は、接続部カバー40(カバー部材42および封止部材44)により画成された閉空間内に存在する気体に接触して接続部22から漏出した有害ガスを検知することができる有害ガス検知部48をさらに含みうる。
【0096】
第2実施形態においても、有害ガス検知部48は、接続部カバー40により画成される閉空間内、すなわちカバー部材42内に設けられている。有害ガス検知部48は、接続部22からの(メタ)アクリル酸エステル等を含みうる有害ガスに含まれる成分を精度よく検知する観点から、接続部22との離間距離が最短となるように配置することが好ましい。具体的には、例えば、接続部22と有害ガス検知部48とが正対する位置に配置することが好ましい。
【0097】
(iii)第3実施形態
図4を参照して、第3実施形態の接続部カバー40の構成例について説明する。
図4は、第3実施形態の接続部カバー40の構成を示す概略的な図である。なお、既に説明した第1および第2実施形態と同様の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0098】
第3実施形態では、第2実施形態と同様に、接続部カバー40を連結管20が貫通する領域において、接続部カバー40を構成するカバー部材42と連結管20との間に間隙が生じない形態で、連結管20に接続部カバー40が設けられる。また、カバー部材42には、不活性ガス供給口42a及び気体排出口42bが設けられている。
【0099】
以下、間隙が生じない形態として第2実施形態で既に説明した上記(3)封止部材を用いて接続部カバー40と連結管20との間の間隙を封止する態様を採用した場合の形態について説明する。なお、間隙が生じない形態として他の態様を採用する場合にも、閉空間の形状及び体積を含むカバー部材、これに設けられる部材並びに不活性ガスに関する条件としては、下記の条件を適用することができる。
【0100】
図4に示されるように、封止部材を用いて接続部カバー40と連結管20との間の間隙を封止する態様を採用した第3実施形態では、接続部22から離間して接続部22を囲むカバー部材42と、カバー部材42と連結管20の表面とに接触してカバー部材42と連結管20との間隙であって、連結管20を貫通させるための間隙を封止部材44で封止する。すなわち、この実施形態では、カバー部材42と封止部材44とで気密の閉空間を画成することができる封止部材44とを含む。また、カバー部材42には、当該閉空間に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給口42aが設けられている。
【0101】
図4に示されるように、第3実施形態においてもカバー部材42と封止部材44とは一体的に接合されて、気密の閉空間を画成できるように構成される。カバー部材42の材料と封止部材44の材料とは同一としてもよく、カバー部材42の材料と封止部材44の材料とが同一である場合には、カバー部材42と封止部材44とは、一体的に区別できない態様として構成されていてもよい。
【0102】
カバー部材42には、カバー部材42と封止部材44とで画成された気密の閉空間に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給口42aが設けられている。
【0103】
カバー部材42の不活性ガス供給口42aには、不活性ガス供給部46Aが、例えば従来公知の任意好適な配管等により接続されている。
【0104】
カバー部材42と封止部材44とで画成される気密の閉空間の形状、体積(容積)は、接続部22から閉空間内に漏出した有害ガスによる発火爆発を効果的に防止できることを条件として、特に限定されない。
【0105】
第3実施形態の接続部カバー40において、カバー部材42には、カバー部材42と封止部材44とで画成される閉空間に充満している(有害ガスを含む)気体を導出するための気体排出口42bがさらに設けられている。
【0106】
気体排出口42bの位置、形状、サイズ等は、特に限定されない。気体排出口42bの位置、径の大きさは、例えば、不活性ガス供給部46Aから供給される不活性ガスの流量、不活性ガス供給口42aの径の大きさなどを勘案して決定することができる。
【0107】
カバー部材42における気体排出口42bは、接続部22との離間距離が最短となるように、具体的には例えば、接続部22と気体排出口42bとが最短距離で正対する位置に配置することが好ましい。
【0108】
また、気体排出口42bは、不活性ガス供給口42aと対向するように、具体的には例えば、接続部22を挟んで、不活性ガス供給口42aと気体排出口42bとが対向する位置に配置することが好ましい。
【0109】
カバー部材42の不活性ガス供給口42aには、不活性ガス供給部46Aが、例えば従来公知の任意好適な配管等により接続されている。
【0110】
第3実施形態において、不活性ガス供給部46Aにより供給される不活性ガスの流量(供給量)は、接続部22から漏出した有害ガスを希釈および冷却し、さらには接続部カバー40内の気体を置換することにより、発火爆発を効果的に防止する観点から、0.001Nm3/hr以上0.1Nm3/hr以下とすることが好ましく、0.001Nm3/hr以上0.05Nm3/hr以下とすることがより好ましく、0.001Nm3/hr以上0.01Nm3/hr以下とすることが特に好ましい。
【0111】
第3実施形態の接続部カバー40において、不活性ガス供給口42aを介して供給された不活性ガスと漏出した(メタ)アクリル酸エステルを含むガスを接続部カバー40外に効率的に流通させて、発火爆発を効果的に防止する観点から、カバー部材42と封止部材44とで画成される気密の閉空間の体積(容積)は、100cm3以上2500cm3以下であることが好ましく、300cm3以上1500cm3以下であることがより好ましい。
【0112】
第3実施形態において、不活性ガス供給部46Aにより供給される不活性ガスの温度は、接続部22から漏出した(メタ)アクリル酸エステルを含むガスを効果的に冷却して発火爆発を効果的に防止する観点から、10℃以上70℃以下とすることが好ましく、10℃以上50℃以下とすることがより好ましく、10℃以上30℃以下とすることが特に好ましい。
【0113】
図4に示されるように、第3実施形態の接続部カバー40は、カバー部材42および封止部材44により画成された閉空間から気体排出口42bを介してカバー部材42外に導出された気体に接触して、含まれうる有害ガスを検知することができる有害ガス検知部48をさらに含みうる。
【0114】
すなわち、本発明にかかる熱分解装置1において、接続部カバー40が備える有害ガス検知部48は、接続部カバー40(カバー部材42)内に設けられているか、または気体排出口42bに接続されていることが好ましい。
【0115】
有害ガス検知部48が気体排出口42bに接続される場合には、有害ガス検知部48は、例えば従来公知の任意好適な配管等により気体排出口42bに接続することができる。
【0116】
第3実施形態の接続部カバー40は、気体排出口42bに接続されている気体処理部48をさらに含む。
【0117】
図4に示されるように、図示例の接続部カバー40においては、気体処理部46Bは既に説明した有害ガス検知部48を介して気体排出口42bに接続されている。換言すると、気体処理部46Bは、気体排出口42に接続された有害ガス検知部48に従来公知の任意好適な配管等により接続されている。特に接続部カバー40が有害ガス検知部48を含まない場合には、気体処理部48は気体排出口42bに直接的に接続することができる。すなわち「気体排出口42bに接続されている」には、「有害ガス検知部48を介して気体排出口42bに接続されている」態様が含まれる。
【0118】
気体処理部46Bは、連結管20の接続部22から漏出した有害ガス、具体的には例えば、発火性、爆発性を有する(メタ)アクリル酸エステル等を含みうるガスを接続部カバー40外に導出して処理することにより、無害化するなどすることができる機能部である。
【0119】
気体処理部46Bとしては、従来公知の任意好適な機器を用いることができる。気体処理部46Bの具体的な例としては、局所排気装置、酸処理機、アミン処理機、脱水脱硫機、焼却炉、フレアスタック、および希釈装置が挙げられる。
【0120】
(6)ガス流通調節部24
本発明の熱分解装置1は、
図4に示されるように、既に説明した有害ガス検知部48が接続部22からの有害ガスの漏出を検知した場合に連結管20内におけるガスの流通を調節することができるガス流通調節部24をさらに備えることができる。ガス流通調節部24の設置箇所は、機能を発揮できることを条件として特に限定されない。ガス流通調節部24は、
図4に示されるように連結管20に設置してもよいし、より上流にある連結管または配管に設置してもよい。
【0121】
ガス流通調節部24としては、従来公知の任意好適な機器を用いることができる。ガス流通調節部24の具体例としては、開閉弁が挙げられる。
【0122】
図4に示されるように、ガス流通調節部24が連結管20に設けられる場合には、ガス流通調節部24としては、例えば従来公知の任意好適な開閉弁(バルブ)を採用することができる。ガス流通調節部24としては、例えばステンレス鋼製のボールバルブ、バタフライバルブといった開閉弁を採用することができる。
【0123】
このようにガス流通調節部24を備える構成とすれば、接続部22からの有害ガスの漏出をより短時間で防止することができるので、有害ガスによる発火爆発をより効果的に防止することができる。
【0124】
本発明の熱分解装置1によれば、連結管20の接続部22を覆う接続部カバー40を備えるので、熱分解により生成した(メタ)アクリル酸エステルを含むガスを導出するための連結管20における発火爆発、特に連結管20の接続部22からの漏出に起因する発火爆発を効果的に防止することができる。
【0125】
2.再生(メタ)アクリル酸エステルの製造方法
本発明の再生(メタ)アクリル酸メチルの製造方法は、既に説明した熱分解装置1を用いる再生(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、
前記熱分解部10の前記投入部12にスクラップを投入して、該スクラップを熱分解する熱分解工程と、
前記熱分解部10における熱分解により生じたガスを前記ガス抜き出し部14から抜き出して前記連結管20により導出するにあたり、前記接続部22を囲むカバー部材42内に、前記不活性ガス供給口42aから不活性ガスを供給しつつ前記ガスを導出する導出工程と、
前記連結管20に導出された前記ガスを前記ガス処理部30に導入して処理するガス処理工程とを含む。
【0126】
本発明の製造方法により製造され再生される(メタ)アクリル酸エステル(再生(メタ)アクリル酸エステル)には、イソ酪酸メチル、プロピオン酸メチル、アクリル酸メチルといった不純物が不可避的に含まれうる。このような不純物を含みうる再生(メタ)アクリル酸エステルを(メタ)アクリル酸エステル生成物という場合がある。
【0127】
以下、本発明の再生(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に含まれる工程について具体的に説明する。なお、以下の説明においては、熱分解装置1として押出機を採用した例を想定して説明する。
【0128】
(1)熱分解工程
熱分解工程は、既に説明した熱分解部10の投入部12にスクラップを投入して、該スクラップを熱分解(解重合)する工程である。
【0129】
熱分解工程では、熱分解部10によりスクラップが熱分解されて(メタ)アクリル酸エステル(再生(メタ)アクリル酸エステル)を含むガス(分解ガスという場合がある。)が生成する。
【0130】
熱分解工程の実施条件(例えば、圧力(MPa)、シリンダ温度(℃)、スクリュー回転数(rpm)、スクラップ供給量(原料供給速度)(kg/時間))は特に限定されない。熱分解工程の実施条件は、例えば、処理対象のスクラップの性状、組成等を考慮して、任意好適な実施条件とすることができる。
【0131】
熱分解工程における圧力は、空気の系内への漏れ込みを防止し、分解ガスの系外への漏出を防止する観点から、好ましくは0.005MPa~1.5MPaであり、より好ましくは0.01MPa~0.3MPaである。
【0132】
熱分解工程におけるシリンダ温度は、熱分解の効率を良好にする観点から、通常400℃~500℃とすればよく、例えばスクラップが純粋なポリ(メタ)アクリル酸メチルにより構成される場合には、好ましくは450℃~470℃である。
【0133】
熱分解工程におけるスクリュー回転数は、押出機の安定運転の観点から、通常500rpm~1500rpmとすればよく、例えばスクラップが純粋なポリ(メタ)アクリル酸メチルにより構成される場合には、好ましくは500rpm~1000rpmである。
【0134】
熱分解工程におけるスクラップ供給量は、シリンダー径によって異なり、通常10kg/時間~5000kg/時間とすればよく、例えばシリンダー径が47mmである場合には、好ましくは40kg/時間~90kg/時間である。
【0135】
(2)導出工程
導出工程は、既に説明した熱分解部10における熱分解により生じたガスを、ガス抜き出し部14から抜き出して連結管20により導出する工程である。本工程は、接続部22を囲むカバー部材42内に、不活性ガス供給口42aから不活性ガスを供給しつつガスを導出する工程とされるか、または接続部22を囲むカバー部材42の内部の空隙(閉空間)に不活性ガス供給口42aから不活性ガスを供給し、閉空間に圧力がかかっている状態でガスを導出する工程として行われる。
【0136】
導出工程をこのような工程とすれば、ガスの漏出による発火爆発を効果的に防止することができる。導出工程をこのような工程とすれば、特に、連結管20内を流通する(メタ)アクリル酸エステルを含みうるガスが接続部22から漏出した場合であっても、当該ガスを接続部カバー40内に少なくとも一時的に留めることができる。そのため、接続部カバー40内で当該ガスを冷却および希釈することができるので、当該ガスの漏出による発火爆発を効果的に防止することができる。
【0137】
ここで、接続部カバー40として
図2を参照して既に説明した第1実施形態の接続部カバー40が用いられる場合について説明する。この場合であって、分解ガス(有害ガス)が接続部22から漏出した場合には、接続部カバー40内に留められ、かつ接続部カバー40内で供給された不活性ガスにより冷却および希釈された有害ガスを連結管20と該カバー部材42とを離間させる間隙部43から接続部カバー40外に拡散させることにより発火爆発を防止しつつ導出工程が実施される。なお、接続部カバー40が有害ガス検知部48をさらに含む場合には、導出工程は、有害ガス検知部48により接続部22からの有害ガスの漏出を検知しつつ行われる。
【0138】
導出工程をこのような工程とすれば、特に連結管20内を流通する(メタ)アクリル酸エステルを含みうるガスの接続部22からの漏出を接続部カバー40内に留めることができ、冷却および希釈することができるので、当該ガスの漏出による発火爆発をより効果的に防止することができる。
【0139】
また、接続部カバー40として
図3を参照して既に説明した第2実施形態の接続部カバー40が用いられる場合について説明する。この場合であって分解ガス(有害ガス)が接続部22から漏出した場合には、接続部カバー40内、すなわちカバー部材42と連結管20の表面とに接触してカバー部材42と連結管20との間隙を気密の閉空間として画成することができる封止部材44とにより画成された閉空間内に留められる。この場合には、接続部カバー40内で供給された不活性ガスにより、有害ガスを冷却および希釈することにより発火爆発を防止しつつ導出工程が実施される。なお、接続部カバー40が有害ガス検知部48をさらに含む場合には、導出工程は有害ガス検知部48により接続部22からの有害ガスの漏出を検知しつつ行われる。
【0140】
さらに、接続部カバー40として
図4を参照して既に説明した第3実施形態の接続部カバー40が用いられる場合について説明する。この場合であって、分解ガス(有害ガス)が接続部22から漏出した場合には、導出工程は、接続部カバー40の不活性ガス供給口42aから不活性ガスを供給し、不活性ガスを含む気体を気体排出口42bから排出させつつ行われる工程である。
【0141】
具体的には、不活性ガス供給口42aから不活性ガスを供給し、接続部カバー40内で不活性ガスにより有害ガスを冷却および希釈した後に、不活性ガスを含む気体を気体排出口42bから排出することにより接続部カバー40内の気体を置換しつつ行われる。
【0142】
また、第3実施形態の接続部カバー40が用いられる導出工程においては、気体排出口42bから排出させた不活性ガスを含む気体を気体処理部46Bに導入して処理しつつ行われる。さらに、接続部カバー40が有害ガス検知部48をさらに含む場合には、導出工程は有害ガス検知部48により接続部22からの有害ガスの漏出を検知しつつ行われる。
【0143】
導出工程をこのような工程とすれば、接続部22からの漏出した有害ガスを冷却および希釈しつつ、接続部カバー40外に積極的に排出して、接続部カバー40内の雰囲気を置換し、しかも気体処理部46Bにて無害化することができるので、有害ガスの漏出による発火爆発をより効果的に防止することができる。
【0144】
なお、いずれの実施形態においても、接続部カバー40が有害ガス検知部48をさらに含む場合には、導出工程は有害ガス検知部48により接続部22からの有害ガスの漏出を検知しつつ行われる。
【0145】
(3)調節工程
接続部カバー40が有害ガス検知部48を備えており、連結管20がガス流通調節部24を備えている場合には、製造方法は調節工程をさらに含む。
【0146】
調節工程は、導出工程において、有害ガス検知部48が接続部22からの有害ガスの漏出を検知した場合に、連結管20に導出されているガスの流通を流通調節部24により調節する工程である。
【0147】
調節工程は、具体的には、有害ガスの漏出を有害ガス検知部48を検知した場合に、熱分解装置1の運転を停止させることにより有害ガスの接続部22からの漏出を食い止める工程であることが好ましい。調節工程は、
図4に示されるように、例えば、連結管20がガス流通調節部24を備えており、ガス流通調節部24が開閉弁である場合には、有害ガスの漏出を有害ガス検知部48が有害ガスの漏出を検知した際に、連結管20におけるガスの流通をガス流通調節部24である開閉弁によって遮断することにより有害ガスの接続部22からの漏出を食い止める工程であることがより好ましい。
【0148】
調節工程を実施すれば、接続部22からの有害ガスの漏出を有害ガス検知部48が検知して迅速に食い止めることができ、また漏出する有害ガスの量をより低減することができる。これにより、有害ガスの漏出による発火爆発をより効果的に防止することができる。
【0149】
(4)ガス処理工程
ガス処理工程は、連結管20に導出されたガスをガス処理部30に導入して処理する工程である。
【0150】
ガス処理工程において、ガス処理部30に導入された再生(メタ)アクリル酸エステルを含むガスは、液体状とされる。当該ガスを液体状にする方法としては、例えば、ガス処理部30が精製器である場合には、再生(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするモノマーをさらに精製して液体状とする方法、またはガス処理部30が冷却器である場合には、再生(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするモノマーを冷却して液体状とする方法を採用することができる。
【0151】
本発明の再生(メタ)アクリル酸エステルの製造方法によれば、熱分解により生成した(メタ)アクリル酸エステルを含むガスを導出するための連結管20における発火爆発、特に連結管20の接続部22からの漏出に起因する発火爆発を効果的に防止することができ、より安全にかつ効率的に再生(メタ)アクリル酸エステルの製造を行うことができる。
【符号の説明】
【0152】
1 熱分解装置
10 熱分解部
12 投入部
14 ガス抜き出し部
20 連結管
22 接続部
24 ガス流通調節部
30 ガス処理部
40 接続部カバー
42 カバー部材
42a 不活性ガス供給口
42b 気体排出口
43 間隙部
44 封止部材
46A 不活性ガス供給部
46B 気体処理部
48 有害ガス検知部
【手続補正書】
【提出日】2023-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系重合体を含む(メタ)アクリル系重合体組成物を成形した成形体のスクラップを熱分解してガス化する熱分解部を備える熱分解装置であって、
前記熱分解部は、前記スクラップを投入するための投入部と、熱分解されたガスを抜き出すためのガス抜き出し部とを有しており、
前記ガス抜き出し部に連結管により接続されており、前記ガス抜き出し部から導出された前記ガスを精製するための精製器、および前記ガスを冷却するための冷却器からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むガス処理部とを含み、
前記連結管は、少なくとも1つの接続部を有しており、
前記連結管は、前記接続部から離間して前記接続部を囲むカバー部材であって、前記連結管を貫通させ、かつ前記連結管と該カバー部材とを離間させる間隙部が設けられている接続部カバーを備えており、
前記カバー部材には、前記接続部カバー内に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給口が設けられている、熱分解装置。
【請求項2】
前記接続部カバーは、前記カバー部材と、該カバー部材と前記連結管の表面とに接触して、該カバー部材と前記連結管との間隙であって、前記連結管を貫通させるための間隙を封止して気密の閉空間を画成することができる封止部材をさらに含む、請求項1に記載の熱分解装置。
【請求項3】
前記カバー部材に、前記閉空間に充満している気体を導出するための気体排出口がさらに設けられている、請求項2に記載の熱分解装置。
【請求項4】
前記接続部カバーが、前記気体排出口に接続されている気体処理部をさらに含む、請求項3に記載の熱分解装置。
【請求項5】
前記接続部カバーが、前記閉空間内の気体に接触して前記接続部から漏出した有害ガスを検知することができる有害ガス検知部をさらに含み、
前記有害ガス検知部が、前記接続部カバー内に設けられているか、または前記気体排出口に接続されている、請求項3に記載の熱分解装置。
【請求項6】
前記連結管が、前記有害ガス検知部が前記接続部からの有害ガスの漏出を検知した場合に前記連結管内におけるガスの流通を調節することができるガス流通調節部をさらに含む、請求項5に記載の熱分解装置。
【請求項7】
前記カバー部材が、耐熱温度が450℃以上である材料を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱分解装置。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の熱分解装置を用いる再生(メタ)アクリル酸エステルの製造方法において、
前記熱分解部の前記投入部にスクラップを投入して、該スクラップを熱分解する熱分解工程と、
前記熱分解部における熱分解により生じたガスを前記ガス抜き出し部から抜き出して前記連結管により導出するにあたり、前記接続部を囲むカバー部材内に、前記不活性ガス供給口から不活性ガスを供給しつつ前記ガスを導出する導出工程と、
前記連結管に導出された前記ガスを前記ガス処理部に導入して処理するガス処理工程と
を含む、再生(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項9】
前記接続部カバーは、前記カバー部材と前記連結管の表面とに接触して該カバー部材と前記連結管との間隙であって、前記連結管を貫通させるための間隙を封止する封止部材をさらに含み、
前記導出工程が、前記接続部を囲む前記カバー部材と封止部材とで画成された気密の閉空間内に、前記不活性ガス供給口から不活性ガスを供給しつつ前記ガスを導出する工程である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記カバー部材には、前記閉空間に充満している気体を導出するための気体排出口がさらに設けられており、
前記導出工程が、前記接続部カバーの前記不活性ガス供給口から不活性ガスを供給し、該不活性ガスを含む気体を前記気体排出口から排出させつつ行われる工程である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記接続部カバーが、前記気体排出口に接続されている気体処理部をさらに含み、
前記導出工程が、前記気体排出口から排出させた前記不活性ガスを含む気体を前記気体処理部に導入して処理しつつ行われる工程である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記接続部カバーが、前記閉空間内の気体に接触して前記接続部から漏出した有害ガスを検知することができ、前記閉空間内に設けられているか、または前記気体排出口に接続されている有害ガス検知部をさらに含み、
前記導出工程が、前記有害ガス検知部により前記閉空間への有害ガスの漏出を検知しつつ行われる工程である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
前記連結管が、前記連結管内における前記ガスの流通を調節することができるガス流通調節部をさらに含み、
前記有害ガス検知部が前記接続部からの有害ガスの漏出を検知した場合には、前記連結管に導出されている前記ガスの流通を前記流通調節部により調節する調節工程をさらに含む、請求項12に記載の製造方法。