(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158971
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】移動型X線装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20241031BHJP
【FI】
A61B6/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074656
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前澤 美幸
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093CA15
4C093EC04
4C093EC16
4C093EC53
4C093EE02
4C093FA56
(57)【要約】
【課題】操作者がハンドルを強く押し続けなくても前進または後進を継続させることのできる移動型X線装置を提供することにある。
【解決手段】移動型X線装置は、台車にX線撮影装置が搭載され、操作者はハンドルを押して移動させる。台車の車輪には、駆動モータが連結されている。ハンドル105には、加速度センサ105aと、操作検出器105b,105cとが備えられている。制御装置は、操作検出器105b,105cからハンドル105が押されたか、または、引っ張られたことを示す検出結果を受け取った場合、加速度センサ105aからハンドル105の加速度を取得するとともに、駆動モータの回転数から台車の走行速度を求める。加速度と走行速度とを用いて、駆動モータを制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を備えた台車と、前記台車に搭載されたX線撮影装置と、操作者により手でつかまれて押す操作および引く操作を受けるハンドルと、前記車輪を回転させて前記台車を走行させる駆動モータと、前記駆動モータを制御する制御装置とを有し、
前記ハンドルには、加速度センサと、操作検出器とが備えられ、
前記操作検出器は、前記ハンドルが操作者により押す操作をされたか、引く操作をされたかを検出するものであり、
前記制御装置は、前記操作検出器から前記ハンドルが押されたか、または、引っ張られたことを示す検出結果を受け取った場合、前記加速度センサから前記ハンドルの加速度を取得するとともに、前記駆動モータの回転数から前記台車の走行速度を求め、前記加速度と走行速度とを用いて、前記駆動モータを制御することを特徴とする移動型X線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動型X線装置であって、前記加速度センサは、前記ハンドル内に配置されていることを特徴とする移動型X線装置。
【請求項3】
請求項1に記載の移動型X線装置であって、前記操作検出器は、前記操作者の手が前記ハンドルを押す際に押圧する位置と、前記操作者の手が前記ハンドルを引く際に押圧する位置にそれぞれ配置されたスイッチであることを特徴とする移動型X線装置。
【請求項4】
請求項1に記載の移動型X線装置であって、前記操作検出器は、前記ハンドルの両端に配置されたばねと、前記ばねの伸長および短縮を検出する検出部とを含むことを特徴とする移動型X線装置。
【請求項5】
請求項1に記載の移動型X線装置であって、前記制御装置は、前記加速度および前記速度のうち少なくとも一方が0ではない場合、前記車輪を回転させるように前記駆動モータを制御することを特徴とする移動型X線装置。
【請求項6】
請求項5に記載の移動型X線装置であって、前記制御装置は、現時点で前記加速度センサから取得した前記加速度と、予め定めた時間だけ過去に取得した前記加速度との差分を求め、前記差分に予め定めたゲインを掛けた第1の値を用いて、前記駆動モータを制御することを特徴とする移動型X線装置。
【請求項7】
請求項6に記載の移動型X線装置であって、前記制御装置は、現時点で前記駆動モータの回転数から取得した前記走行速度と、予め定めた時間だけ過去に取得した前記走行速度との差分を求め、前記差分に予め定めたゲインを掛けた第2の値を求め、前記第1の値と第2の値の和から、前記駆動モータの出力の目標値を決定することを特徴とする移動型X線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動型X線撮影装置を操作者が押して移動させる際の補助を行う駆動モータの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
病室や処置室内の患者のX線撮影やX線透視(動画)を行うために、移動型X線装置が用いられる。移動型X線装置は、例えば特許文献1に記載されているように、台車にX線装置を搭載した構造であり、手押しハンドルを操作者が押したり引いたりすることにより走行する。台車には駆動モータ及びバッテリーが搭載され、駆動モータにより車輪の動きを補助(アシスト)する。これにより、搭載されているX線装置の重量が大きいにも関わらず、操作者は、手押しハンドルを軽く押すだけで移動型X線装置を移動させることができる。
【0003】
特許文献1に開示されている移動型X線装置は、操作者が押したり引いたりして生じるハンドルの変位量を制御装置が取得して、車輪の動きを駆動モータでどの程度アシストするかを演算により決定する構成である。操作者が強くハンドルを押しても、駆動モータの駆動量が小さい場合は、操作者には、移動型X線装置の動きが「鈍い」または「重い」と感じられ、弱くハンドルを押しても、駆動モータの駆動量が大きい場合は、移動型X線装置の動きが「敏感」または「軽い」と感じられる。このように操作者がハンドルを操作した際に感じる感覚は、「走行操作感」と呼ばれ、操作者によって好みがある。特許文献1の技術では、制御装置が、ユーザがどのような走行操作感を好むか、或いはどのような走行操作感を必要としているかを、現在から少し遡った時点(期間)の駆動モータの駆動量の変化から判断して、駆動モータの制御に用いるパラメータを変更している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の移動型X線装置は、X線撮影装置の本体部とハンドルとを連結する部位(例えば、ハンドルの両端部)に、ばね部材とスライド抵抗を配置している。操作者がハンドルを押したり引いたりして生じたハンドルの変位により、ばねが伸長・短縮する。ばねの伸長・短縮をスライド抵抗が検出し、スライド抵抗の出力により、ハンドルの変位量と、変位の向きを検出している。
【0006】
しかしながら、ばね部材とスライド抵抗によってハンドルの変位量を検出する構成は、操作者の体格によっては、ハンドルが進行方向にまっすぐに押されないため、検出される変位量が、操作者がハンドルを押している力の大きさとずれてしまうことがある。例えば、背の高い人は、斜め上から押し下げるようにハンドルを押し、背の低い人は斜め下から押し上げるようにハンドルを押すため、ばねの伸長・短縮の量に、操作者が押している力の大きさが一部しか反映されない。そのため、検出された変位量で駆動モータの制御を行うと、操作者の望んでいるのとは異なる駆動モータの駆動量になり、操作者の望む走行操作感が得られない。
【0007】
また、ハンドルには、ハンドルを掴んで歩いている操作者の上下動が伝わって上下する。また、床面に段差がある場合も車輪の上下動に伴ってハンドルも上下動する。ハンドルの上下動によって、ハンドルの変位量を検出するばねも変位し、可変抵抗によって検出される変位量にノイズが乗るという問題もある。
【0008】
また、特許文献1のように、ハンドルの変位量を検出して、駆動モータの制御を行う移動型X線装置は、駆動モータを動かし続けるためには、ハンドルを変位させ続ける必要がある。すなわち、操作者は、ハンドルを押す手を緩めたり、ハンドルから手を離すと、移動型X線装置が減速したり、停止したりするため、操作者は常にハンドルを押し続ける必要がある。
【0009】
そのため、手をハンドルから一瞬離したり、押す力を緩めたりしても、進み続ける移動型X線装置が、操作者の負担軽減のために望まれている。
【0010】
本発明の目的は、操作者がハンドルを強く押し続けなくても前進または後進を継続させることのできる移動型X線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の移動型X線装置は、車輪を備えた台車と、台車に搭載されたX線撮影装置と、操作者により手でつかまれて押す操作および引く操作を受けるハンドルと、車輪を回転させて台車を走行させる駆動モータと、駆動モータを制御する制御装置とを有する。ハンドルには、加速度センサと、操作検出器とが備えられている。操作検出器は、ハンドルが操作者により押す操作をされたか、引く操作をされたかを検出する。制御装置は、操作検出器からハンドルが押されたか、または、引っ張られたことを示す検出結果を受け取った場合、加速度センサからハンドルの加速度を取得するとともに、駆動モータの回転数から台車の走行速度を求め、加速度と走行速度とを用いて、駆動モータを制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、操作者がハンドルを強く押し続けなくても、移動型X線装置の前進または後進を継続させることができ、操作者の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態の移動型X線装置の側面図。
【
図2】実施形態の移動型X線装置のハンドル105の(a)上面図、(b)断面図。
【
図3】実施形態の移動型X線装置の構成を示すブロック図。
【
図4】実施形態の移動型X線装置の制御装置の制御動作を示すフローチャート。
【
図5】実施形態の移動型X線装置の処理を示す説明図。
【
図6】実施形態の移動型X線装置のハンドル105の加速度と、走行速度と、駆動モータの目標回転数の一例を示すグラフ。
【
図7】実施形態の移動型X線装置のハンドルの操作検出器105b,105cの別の構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態の移動型X線装置について図面を用いて説明する。
【0015】
まず、
図1及び
図2を参照して、本実施形態の移動型X線装置1の構成について説明する。
図1は、移動型X線装置1の側面図であり、
図2(a)、(b)は、ハンドル105の上面図と断面図である。
【0016】
図1に示すように、移動型X線装置は、台車108と、台車108に搭載されたX線撮影装置100とを備えて構成される。台車108には、車輪109として、前輪109aおよび一対の後輪109bが備えられている。前輪109aは、一対であってもよいし、一輪であってもよい。以下、台車108が前進する方向を前方と呼び、台車が後進する方向を後方と呼ぶ。
【0017】
台車108には、台車108内には、車輪109(ここでは後輪109b)を回転させて台車108の走行を補助する駆動モータ110と、駆動モータ110に電力を供給するバッテリー111が配置されている。駆動モータ110は、一対の後輪109bにそれぞれ連結されていてもよいし、一対の後輪109bを連結する車軸を一つの駆動モータで回転させてもよい。また、ここでは後輪109bのみを駆動モータ110で回転駆動する構成であるが、前輪109aを回転駆動してもよい。
【0018】
X線撮影装置100は、台車108の後輪109b側に搭載された本体部104と、台車108の前輪109a側に搭載された支柱101と、アーム102と、アーム102の先端に支持されたX線管装置103とを備えて構成される。本体部104内には、駆動モータ110を制御する制御装置107が配置されている。
【0019】
移動型X線装置1は、撮影時には、被検体にX線管装置103からX線を連続的に照射し、被検体の下に配置しておいたX線検出器(FPD:フラットパネルディテクタ等)から無線または有線検出信号で制御装置107内の画像生成部(不図示)が受信する。画像生成部は、動画像からなるX線画像(透視画像)を生成する透視撮影装置でもよいし、静止画像からなるX線画像を生成するするX線撮影装置でもよい。
【0020】
支柱101は、中心軸を鉛直方向に向けている。アーム102は、支柱101の上部に一端が支持されている。アーム102の中心軸は、
図1の例では水平に向けられているが、中心軸を斜め上方に所望の角度に傾斜させることが可能なアームであってもよい。また、アーム102がC型であり、C型アームの一端にX線管装置103支持され、対向する他端にX線検出器が搭載された構造であってもよい。
【0021】
支柱101は、その中心軸を中心に回転可能に台車108に支持されている。移動型X線装置を移動させる際には、操作者は支柱101を回転させて、重量の大きいX線管装置103を本体部104の上部に配置した状態とする。X線撮影を行う際には、操作者は支柱101を回転させて、X線管装置103を台車108の前方の所定の角度範囲内の所望の位置にX線管装置103を配置することができる。なお、アーム102がC型の場合は、移動時も、台車108の前方に配置したままとする。
【0022】
支柱101には、アーム102を支持する位置を昇降させるアーム移動機構(不図示)が設けられている。また、アーム102は、その中心軸方向に伸縮自在にする伸縮機構が備えられていてもよい。
【0023】
X線管装置103は、被検体に向かってX線を照射するX線管の他に、高電圧発生装置を内蔵している。また、X線管装置103にはX線の照射領域を制限するX線絞り103aが設けられる。X線管装置103及びX線絞り103aの動作は、本体部104内に配置される制御装置107により制御される。
【0024】
本体部104は、筐体を有する。筐体の上部の後端には、
図1および
図2(a),(b)のように、円筒形のバー状のハンドル105が配置されている。ハンドル105の中心軸は、後輪109bの回転軸と平行に向けられている。ハンドル105の両端は、ハンドル支持部115に固定されている。ハンドル支持部115は、筐体に固定されている。
【0025】
ハンドル105は、操作者により手でつかまれて押す操作および引く操作を受けることにより、移動型X線装置1を前進および後進させることができる。
【0026】
また、ハンドル105には、加速度センサ105aと、操作検出器105b、105cとが備えられている。加速度センサ105aは、操作者の両手がハンドルを握る位置、すなわちハンドルの左右の端部近くにそれぞれ配置されている。加速度センサ105aは、ハンドル105の移動の加速度を3次元(x、y、z)軸方向について検出する。
【0027】
操作検出器105b、105cは、ハンドルが操作者により押す操作をされたか、引く操作をされたかを検出するものである。ここでは、操作検出器105b、105cとして押圧を検出するスイッチをそれぞれ用いる。操作者の手がハンドル105を押す際にハンドル105を押圧する位置、すなわちハンドル105の後方側の面に、操作検出器105bが配置されている。また、操作者の手がハンドル105を引く際にハンドル105を押圧する位置、すなわちハンドル105の前方側の面に操作検出器105cが配置されている。操作検出器105b、105cは、操作者の両手がハンドル105を握る位置、すなわちハンドルの左右の端部近くにそれぞれ配置されている。なお、
図2(b)では、操作検出器105b、105cが、ハンドル105に沿って湾曲した形状である例を図示しているが、操作検出器105b、105cの形状は湾曲形状に限られるものではなく、平面状であってもよい。
【0028】
本体部104の筐体の上面には、入力部と表示部とを含むタッチパネル等で構成される操作パネル106が配置され、操作パネル106は操作者から撮影条件や、移動の際の走行感モード(軽いまたは重い)の選択等の入力を受け付ける。また、操作パネル106には、撮影したX線画像が表示される。
【0029】
本体部104の内部には、制御装置107が配置されている。制御装置107は、操作検出器105bからハンドル105が押されたか、または、引っ張られたことを示す検出結果を受け取った場合、加速度センサからハンドルの加速度を取得するとともに、駆動モータの出力から前記台車の走行速度を求め、加速度と走行速度とを用いて、駆動モータを制御する。ここでは、制御装置107は、駆動モータ110の駆動トルクの目標値(目標)駆動トルクを演算により求め、駆動モータ110の駆動トルクが目標駆動トルクになるように制御する。なお、駆動トルクに限られず、回転数等の他のパラメータを目標値としてもよい。
【0030】
図3は、制御装置107のブロック図である。制御装置107は、演算部117と、記憶部118と、走行制御部24とを備えている。演算部117は、加速度センサ105aと操作検出器105b,105cの出力を用いて、駆動モータ110の目標駆動トルクを算出する。演算部117は、操作パネル106介して走行感モード(走行感:軽いまたは重い)の選択を操作者から受け付け、目標駆動トルクの算出の際のパラメータとして用いてもよい。
【0031】
演算部117は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサーと、メモリとを備えたコンピュータ等によって構成され、CPUが、メモリに格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、以下説明する
図4のフローの動作を実現する。
【0032】
なお、演算部117は、その一部または全部をハードウエアにより構成することができる。例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のようなカスタムICや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICを用いて、
図4のフローの動作が実現されるように回路設計を行えばよい。
【0033】
記憶部118は、所定の時間だけ過去の加速度を格納する領域118aと、所定の時間だけ過去の速度を格納する領域118bとを含む。
以下、制御装置107の駆動モータの制御について、
図4のフローチャートおよび
図5の説明図を用いて説明する。
【0034】
<ステップS101、S102>
ステップS101において操作者が移動型X線装置1の電源を入れたならば、制御装置107の演算部117は、ハンドル105の操作検出器105b、105cの出力を開始する(ステップS102)。
【0035】
ハンドル105の操作検出器105b、105cから出力がない場合は、演算部117はS101に戻り、監視状態を継続する。操作検出器105bまたは105cから出力があった場合、演算部117はステップS103に進む。
【0036】
<ステップS103>
操作検出器105bまたは105cから出力があった場合、ハンドル105が操作者によって押されているか、または、引っぱられているため、演算部117は、加速度センサ105aから現時点の加速度センサ105aの出力(x、y、z軸方向の加速度)を取り込んで、x軸方向(移動型X線装置の前進方向および後進方向)の出力を抽出し、現在の加速度の値として取得する。なお、ここでは、加速度センサ105aは2つであり、ハンドル105の左右の端近くにそれぞれ配置されている。演算部117は、それぞれの加速度センサ105aのx軸方向の出力を取得してもよいし、x軸方向の出力値が大きい(または小さい)一方の加速度センサ105aの出力のみを取得してもよい。また、演算部117は、2つの加速度センサ105aのx軸方向の出力値から、平均値を算出する等により一つの出力を取得してもよい。
【0037】
<ステップS104>
演算部117は、ステップS103において求めた現在の加速度と、記憶部118の記憶領域118aに格納されている過去の加速度の値のうち、現時点から予め定めた時間だけ過去の時点の加速度の値を読み出して、第1の出力値を決定する。
【0038】
具体的には、演算部117は、
図5のように、ステップS103において求めた現在の加速度の値と、記憶部118の記憶領域118aから読み出した過去の加速度の値との差分を算出し、予め定めた第1ゲイン(定数)を掛け、第1の出力値を算出する。
【0039】
このとき、操作パネル106が操作者から受け付けた走行感モード(重い、または、軽い等)に応じて、予め定めた第1ゲインの値を変更する。
【0040】
<ステップS105>
演算部117は、駆動モータ110の回転数を取り込んで、移動型X線装置の走行速度を算出する。
【0041】
<ステップS106>
演算部117は、ステップS106において求めた現在の走行速度と、記憶部118の記憶領域118bに格納されている過去の走行速度の値のうち、現時点から予め定めた時間だけ過去の時点の走行速度の値を読み出して、第2の出力値を決定する。
【0042】
具体的には、演算部117は、
図5のように、ステップS105において求めた現在の走行速度の値と、記憶部118の記憶領域118bから読み出した過去の走行速度の値との差分を算出し、予め定めた第2ゲイン(定数)を掛け、第2の出力値を算出する。
【0043】
このとき、操作パネル106が操作者から受け付けた走行感モード(重い、または、軽い等)に応じて、予め定めた第2ゲインの値を変更する。
なお、演算部117は、進行方向が、前進か後進かを、操作検出器105bおよび105cのうちいずれが押されたかにより判定する。操作検出器105bが押されている場合は、移動型X線装置は前進しており、操作検出器105cが押されている場合は、移動型X線装置は後進していると判定する。演算部117は、後進と判定した場合、走行速度の値の符号をマイナスにする。
【0044】
<ステップS107>
演算部117は、
図5のように、ステップS104において求めた第1の出力値と、ステップS106において求めた第2の出力値とを加算し、加算後の値を用いて目標駆動トルクを算出する。
【0045】
具体的には、演算部117は、ステップS103で取得した値に基づいて加速目標値を決め、ステップS104において算出した値と、S106で取得した値にそれぞれ定数ゲインを掛け、加速目標値から加算(または減算)して目標駆動トルクを算出する。
【0046】
<ステップS108>
演算部117は、ステップS103で取得した加速度の値とステップS105で取得した走行速度の値を記憶部118の記憶領域118a,118bに保存する。
【0047】
<ステップS109>
制御装置107の走行制御部24は、演算部117から目標駆動トルクに駆動モータ110の駆動トルクが到達するように、駆動モータ110に供給する電力等を制御する。
【0048】
このように、本実施形態では、ステップS107において、加速度から求めた第1の出力値と、走行速度から求めた第2の出力値との和を用いて、目標駆動トルクを算出することにより、制御装置107は、加速度および走行速度のうち少なくとも一方が0ではない場合、車輪を回転させ続けるように駆動モータを制御する。これにより、操作者がハンドルを押す手が一瞬緩んでも、移動型X線装置は、走行し続ける。操作者がハンドル105を強く押し続けなくても、移動型X線装置1を前進(または後進)させ続けることが可能になるため、操作者の負担を軽減することができる。
【0049】
一例として、
図6に、ステップS103、S105において取得された加速度および走行速度と、ステップS107で算出される目標駆動トルクの時系列な変化のグラフを示す。S105において取得された走行速度は、制御によって実現された移動型X線装置の走行速度と同一である。
【0050】
図6に示したハンドル105の加速度において、プラスの加速度は、ハンドル105を前方に押す方向の加速度を示し、マイナスの加速度は、ハンドル105を後方に引く方向の加速を示す。走行速度において、プラスの走行速度は前進していることを示し、マイナスの走行速度は後進していることを示す。プラスの目標駆動トルクは、前進方向の目標駆動トルクを示し、マイナスの目標駆動トルクは、後進方向の目標駆動トルクを示す。
【0051】
図6のように、ハンドル105が操作者によって前方に向かって押されて加速されている場合は、プラスの加速度値となり、操作者がハンドル105を押す手を緩めたり、手を放すと、加速度は減少し、ゼロまたはゼロ付近まで低下する。このとき、加速度値がゼロではない場合、走行速度がゼロであっても、その和はゼロにならないため、目標駆動トルクはゼロにはならず、移動型X線装置は、移動を継続する。また、加速度値がゼロの場合であっても、走行速度がゼロでなければ、その和はゼロにならないため、目標駆動トルクはゼロにはならず、移動型X線装置は、移動を継続する。よって、走行速度の急な変化は、起こらず
図6に示したように緩やかに変化する。
【0052】
よって、操作者は、移動型X線装置を前進または後進させた場合は、最初に押して、または、引いて、加速度を与えれば、ハンドルを押す手を一瞬緩めても前進または後進させ続けることができる。停止させるときには、現在の進行方向とは逆向きに引く、または、押して逆向きの加速を与えながら徐々に速度を低下させていけばよい。
【0053】
しがって、本実施形態の移動型X線装置によれば、操作者はハンドルを移動の間中、強く押し続ける、または、強く引き続ける必要がなく、操作者の負担を軽減することができる。
【0054】
なお、上述の実施形態では、操作者がハンドル105を押したり引いたりする操作を検出する操作検出器105b,105cとしてスイッチを用いる構成であったが、本実施形態は、スイッチ以外の構成を用いることも可能である。
【0055】
例えば、
図7に示すように、ハンドル105を前後方向にわずかに変位可能な構成として、ハンドル105の変位により操作を検出する構成とすることができる。具体的には、ハンドル105の両端を支持するハンドル支持部115内に、ハンドル105を前後方向に変位可能に支持する機構を配置する。例えば、ハンドル105を押したり引いたりする力に応じて伸長/短縮するばね71をハンドル支持部115内に配置し、可変抵抗72によってばね71の変位(伸長/短縮)を検出するように構成する。これにより、演算部117は、ばねの変位(伸長/短縮)を示す電気信号を可変抵抗72から受け取ることにより、ハンドル105が押されたか、引かれたかを検出することができる。他の構成は、上述の実施形態と同様にする。
【符号の説明】
【0056】
1 移動型X線装置
24 走行制御部
71 ばね
72 可変抵抗
100 X線撮影装置
101 支柱
102 アーム
103 X線管装置
104 本体部
105 ハンドル
105a 加速度センサ
105b 操作検出器
105c 操作検出器
106 操作パネル
107 制御装置
108 台車
109 車輪
109a 前輪
109b 後輪
110 駆動モータ
111 バッテリー
115 ハンドル支持部
117 演算部
118 記憶部
118a 記憶領域
118b 記憶領域