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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159095
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】水性組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20241031BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20241031BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20241031BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241031BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/46
A61K8/02
A61K8/34
A61Q19/00
A23L29/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074860
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古海 誓一
(72)【発明者】
【氏名】服部 美咲
(72)【発明者】
【氏名】荻原 裕己
(72)【発明者】
【氏名】岩田 直人
【テーマコード(参考)】
4B035
4C083
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LE03
4B035LG04
4B035LG08
4B035LK13
4B035LP01
4C083AB051
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC761
4C083CC02
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD44
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】界面活性剤及び水以外の添加剤を加えずともラメラ構造を形成可能な水性組成物を提供する。
【解決手段】モノグリセリド、及びチオグリセロールのチオール基が反応することで疎水基が導入されたチオグリセロール誘導体の少なくとも一方の化合物を含む界面活性剤と、水とを含み、前記界面活性剤の濃度が1質量%~2質量%である水性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノグリセリド、及びチオグリセロールのチオール基が反応することで疎水基が導入されたチオグリセロール誘導体の少なくとも一方の化合物を含む界面活性剤と、水とを含み、前記界面活性剤の濃度が1質量%~2質量%である水性組成物。
【請求項2】
水の含有率が、90質量%超である請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
ラメラ構造を有する請求項1に記載の水性組成物。
【請求項4】
モノグリセリドに含まれるアシル基の炭素数が8~12であるか、又は、チオグリセロール誘導体に含まれる前記疎水基の炭素数が8~12である請求項1に記載の水性組成物。
【請求項5】
前記モノグリセリドを含み、前記モノグリセリドに含まれるアシル基の炭素数が9又は10である請求項1に記載の水性組成物。
【請求項6】
前記チオグリセロール誘導体は、前記チオグリセロールのチオール基と、エチレン系不飽和二重結合を有する化合物のエチレン系不飽和二重結合との反応により得られる化合物である請求項1に記載の水性組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤が、グリセリンを含む請求項1に記載の水性組成物。
【請求項8】
保湿剤、化粧品、食品、色材又は塗料に用いられる請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の水性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は、親水基と疎水基の両方を含む化学構造を有しており、水に界面活性剤を溶解させると、化学構造、濃度等に応じて、球状ミセル、棒状ミセル、ベシクル等の多種多様な形態の分子集合体を自己組織的に形成することが知られている。
【0003】
ラメラ構造は界面活性剤が水中で自己組織的に形成する分子集合体の一種であり、界面活性剤の二分子膜が等間隔で配列した多層構造を有している。ラメラ構造を形成する界面活性剤の水溶液は、光の干渉により分子膜間の隣接間隔に応じた波長の光をブラッグ反射する。このような光の反射現象は構造色とも呼ばれている。
【0004】
例えば、アミン化合物と、1,3-ブチレングリコールと、水とを含み、ラメラ構造を形成する水性皮膚外用剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、成分(A)~成分(E)を含有し、且つ、ラメラ構造を有する、水中油型乳化化粧料が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-022024号公報
【特許文献2】特開2022-072130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2のように界面活性剤及び水以外の添加剤を加えた三成分以上の組成物において、ラメラ構造を形成することが知られている。本発明者らは、添加剤を加えずともラメラ構造を形成する組成について検討し、本発明を完成させた。
【0007】
本開示は、界面活性剤及び水以外の添加剤を加えずともラメラ構造を形成可能な水性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> モノグリセリド、及びチオグリセロールのチオール基が反応することで疎水基が導入されたチオグリセロール誘導体の少なくとも一方の化合物を含む界面活性剤と、水とを含み、前記界面活性剤の濃度が1質量%~2質量%である水性組成物。
<2> 水の含有率が、90質量%超である<1>に記載の水性組成物。
<3> ラメラ構造を有する<1>に記載の水性組成物。
<4> モノグリセリドに含まれるアシル基の炭素数が8~12であるか、又は、チオグリセロール誘導体に含まれる前記疎水基の炭素数が8~12である<1>に記載の水性組成物。
<5> 前記モノグリセリドを含み、前記モノグリセリドに含まれるアシル基の炭素数が9又は10である<1>に記載の水性組成物。
<6> 前記チオグリセロール誘導体は、前記チオグリセロールのチオール基と、エチレン系不飽和二重結合を有する化合物のエチレン系不飽和二重結合との反応により得られる化合物である<1>に記載の水性組成物。
<7> 前記界面活性剤が、グリセリンを含む<1>に記載の水性組成物。
<8> 保湿剤、化粧品、食品、色材又は塗料に用いられる<1>~<7>のいずれか1つに記載の水性組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、界面活性剤及び水以外の添加剤を加えずともラメラ構造を形成可能な水性組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】水性組成物1~5について、モノグリセリド成分の濃度と反射ピークの波長との関係を示すグラフである。
図2】モノグリセリド成分の濃度が1.6質量%である水性組成物1について、反射スペクトルの測定結果を示すグラフである。
図3】モノグリセリド成分の濃度が1.6質量%である水性組成物2について、反射スペクトルの測定結果を示すグラフである。
図4】モノグリセリド成分の濃度が1.6質量%である水性組成物3について、反射スペクトルの測定結果を示すグラフである。
図5】モノグリセリド成分の濃度が1.6質量%である水性組成物4について、反射スペクトルの測定結果を示すグラフである。
図6】モノグリセリド成分の濃度が1.6質量%である水性組成物5について、反射スペクトルの測定結果を示すグラフである。
図7】モノグリセリド成分の濃度が1.25質量%、1.50質量%又は2.00質量%である水性組成物3について、反射スペクトルの測定結果を示すグラフである。
図8】モノグリセリド成分の濃度が1.6質量%である水性組成物7について、反射スペクトルの測定結果を示すグラフである。
図9】モノグリセリド成分の濃度が1.6質量%である水性組成物8について、反射スペクトルの測定結果を示すグラフである。
図10】モノグリセリド成分の濃度が1.6質量%である水性組成物9について、反射スペクトルの測定結果を示すグラフである。
図11】水性組成物1(精製前)と水性組成物7(精製後)について、モノグリセリド成分の濃度と反射ピークの波長との関係を示すグラフである。
図12】水性組成物3(精製前)と水性組成物8(精製後)について、モノグリセリド成分の濃度と反射ピークの波長との関係を示すグラフである。
図13】水性組成物5(精製前)と水性組成物9(精製後)について、モノグリセリド成分の濃度と反射ピークの波長との関係を示すグラフである。
図14】精製前後のモノグリセリド成分をそれぞれ用いたときの反射スペクトルの測定結果を示すグラフである。
図15】アシル基の炭素数が偶数である場合(C8、C10及びC12)に、精製前(図15中の(a))及び精製後(図15中の(b))での各濃度と反射波長との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示において段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の成分の合計量を意味する。
本開示において、置換又は無置換を明記していない化合物については、本開示における効果を損なわない範囲で、任意の置換基を有していてもよい。
なお、本開示において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。本開示において、任意の組み合わせにおいて、2つ以上の好ましい態様を組み合わせてもよい。
【0012】
<水性組成物>
本開示の水性組成物は、モノグリセリド、及びチオグリセロールのチオール基が反応することで疎水基が導入されたチオグリセロール誘導体の少なくとも一方の化合物(以下、「特定の化合物」とも称する。)を含む界面活性剤(以下、「特定の界面活性剤」とも称する。)と、水とを含み、前記界面活性剤の濃度が1質量%~2質量%である。これにより、界面活性剤及び水以外の添加剤を加えずともラメラ構造を形成可能である。
【0013】
(特定の界面活性剤)
本開示の水性組成物は、モノグリセリド、及びチオグリセロールのチオール基が反応することで疎水基が導入されたチオグリセロール誘導体の少なくとも一方の化合物(特定の化合物)を含む界面活性剤(特定の界面活性剤)を含む。水性組成物における特定の界面活性剤の濃度が1質量%~2質量%であることでラメラ構造に由来の反射色を確認することができ、当該濃度、特定の界面活性剤の組成、特定の化合物におけるアシル基の炭素数又は疎水基の炭素数等を調整することで赤色、緑色、青色等の広波長域の反射色を調整することができる。
【0014】
特定の化合物は、モノグリセリド、及びチオグリセロールのチオール基が反応することで疎水基が導入されたチオグリセロール誘導体の少なくとも一方の化合物である。モノグリセリドは,グリセリン1分子に対して脂肪酸1分子が反応した化合物であり、グリセリン由来の2つのヒドロキシ基と、脂肪酸由来の1つのアシル基を有する。
【0015】
モノグリセリドに含まれるアシル基の炭素数の上限、又は、チオグリセロール誘導体に含まれる疎水基の炭素数の上限は、特に限定されず、例えば、水への溶解性の観点から、18以下が好ましく、14以下がより好ましく、12以下がさらに好ましく、10以下が特に好ましい。
モノグリセリドに含まれるアシル基の炭素数の下限、又は、チオグリセロール誘導体に含まれる疎水基の炭素数の下限は、特に限定されず、例えば、反射色の視認性の観点から、6以上が好ましく、8以上がより好ましく、9以上がさらに好ましい。
【0016】
モノグリセリドに含まれるアシル基の炭素数及びチオグリセロール誘導体に含まれる疎水基の炭素数は、それぞれ独立に、6~18であってもよく、8~14であってもよく、8~12であってもよく、9又は10であってもよい。
【0017】
チオグリセロール誘導体は、チオグリセロールのチオール基と、エチレン系不飽和二重結合を有する化合物のエチレン系不飽和二重結合との反応により得られる化合物であってもよい。チオール基と、エチレン系不飽和二重結合との反応(いわゆるエンチオール反応)により、特定の化合物中に疎水基が導入される。エチレン系不飽和二重結合を有する化合物としては、例えば、アリル化合物、アクリル化合物、ビニル化合物等が挙げられる。
【0018】
モノグリセリドに含まれるアシル基の炭素数及びチオグリセロール誘導体に含まれる疎水基の炭素数が8の場合、特定の界面活性剤の濃度は、それぞれ独立に、1.5質量%~2.0質量%であってもよい。
モノグリセリドに含まれるアシル基の炭素数及びチオグリセロール誘導体に含まれる疎水基の炭素数が9~12の場合、特定の界面活性剤の濃度は、それぞれ独立に、1.0質量%~2.0質量%であってもよい。
これにより、本開示の水性組成物の反射色を赤色、緑色、青色等の広波長域の反射色に調整することができる。例えば、特定の界面活性剤の濃度を下げることで反射ピークの波長(以下、「ピーク波長」ともいう。)の長波長シフトが可能であり、特定の界面活性剤の濃度を上げることでピーク波長の短波長シフトが可能となる。
【0019】
特定の界面活性剤は、特定の化合物からなる成分であってもよく、特定の化合物と主成分とし、特定の化合物以外の成分をさらに含んでいてもよい。
【0020】
特定の界面活性剤が特定の化合物を主成分とする場合、特定の化合物の含有率は、特定の界面活性剤全量に対し、80質量%以上100質量%未満であってもよく、90質量%以上100質量%未満であってもよく、90質量%~93質量%又は97質量%以上100質量%未満であってもよい。
【0021】
特定の化合物以外の成分としては、グリセリン、ジグリセリド、トリグリセリド、その他の未反応成分等が挙げられる。
ジグリセリドは、グリセリン1分子に対して脂肪酸2分子(好ましくはモノグリセリドと同じ脂肪酸)が反応した化合物であり、グリセリン由来の1つのヒドロキシ基と、脂肪酸由来の2つのアシル基を有する。
トリグリセリドは、グリセリン1分子に対して脂肪酸3分子(好ましくはモノグリセリドと同じ脂肪酸)が反応した化合物であり、脂肪酸由来の3つのアシル基を有する。このようなトリグリセリドは、いわゆる油脂である。
【0022】
特定の化合物以外の成分は、グリセリンであってもよく、グリセリン及びジグリセリドの組み合わせであってもよい。
【0023】
例えば、モノグリセリドに含まれるアシル基の炭素数は8~12(好ましくは9又は10)であり、さらに、特定の界面活性剤は、当該モノグリセリド及びグリセリンを含んでいてもよく、あるいは、当該モノグリセリド、ジグリセリド及びグリセリンを含んでいてもよい。
これにより、本開示の水性組成物の反射スペクトルを測定した際に、ピーク波長の反射率が高まる傾向にある。
【0024】
特定の化合物以外の成分がグリセリンを含む場合、グリセリンの含有率は、特定の界面活性剤全量に対し、0.1質量%~4.0質量%であってもよく、0.5質量%~3.0質量%であってもよく、1.5質量%~2.5質量%であってもよい。
【0025】
特定の化合物以外の成分がジグリセリドを含む場合、ジグリセリドの含有率は、3.0質量%~10質量%であってもよく、4.0質量%~8.0質量%であってもよく、5.0質量%~7.0質量%であってもよい。
【0026】
(水)
本開示の水性組成物は水を含む。水性組成物中の水の含有率は、90質量%以上であってもよく、90質量%超であってもよく、92質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよい。水性組成物中の水の含有率は、99質量%以下であってもよく、98質量%以下であってもよい。
【0027】
本開示の水性組成物は、水及び特定の化合物(不純物を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい)以外の成分を含んでいなくてもよく、含んでいてもよい。
【0028】
水及び特定の化合物以外の成分としては、特定の界面活性剤以外の界面活性剤、水溶性高分子、油剤、中和剤、pH調整剤、殺菌剤、抗炎症剤、防腐剤、着色剤、キレート剤、美白剤、制汗剤、昆虫忌避剤、生理活性成分、塩類、酸化防止剤、香料、紫外線吸収剤、増粘剤等が挙げられる。
【0029】
本開示の水性組成物の用途は特に限定されず、例えば、保湿剤、化粧品、食品、色材又は塗料が挙げられる。
【実施例0030】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
[モノグリセリド成分の準備]
以下に示すモノグリセリド成分1~6を準備した。
・モノグリセリド成分1(水性組成物1、7の調製に使用):モノカプリリン(アシル基の炭素数8)を主成分とするモノグリセリド(モノカプリリン91.8質量%、ジカプリリン6.6質量%及びグリセリン1.5質量%の混合物)
・モノグリセリド成分2(水性組成物2の調製に使用):モノノナノイン(アシル基の炭素数9)を主成分とするモノグリセリド(モノノナノイン99.5質量%、及びグリセリン0.5質量%の混合物)
・モノグリセリド成分3(水性組成物3、8の調製に使用):モノカプリン(アシル基の炭素数10)を主成分とするモノグリセリド(モノカプリン92.2質量%、ジカプリン6.0質量%及びグリセリン1.8質量%の混合物)
・モノグリセリド成分4(水性組成物4の調製に使用):モノウンデカノイン(アシル基の炭素数11)を主成分とするモノグリセリド(モノウンデカノイン98.9質量%、及びグリセリン1.1質量%の混合物)
・モノグリセリド成分5(水性組成物5、9の調製に使用):モノラウリン(アシル基の炭素数12)を主成分とするモノグリセリド(モノラウリン97.6質量%、及びグリセリン2.4質量%の混合物)
・モノグリセリド成分6(水性組成物6の調製に使用):モノミリスチン(アシル基の炭素数14)を主成分とするモノグリセリド(モノミリスチン97.8質量%、及びグリセリン2.2質量%の混合物)
【0032】
モノグリセリド成分1~6にそれぞれ含まれる主成分の化学構造を以下に示す。なお、括弧中の数字は、アシル基の炭素数を意味する。
【0033】
【化1】
【0034】
[水性組成物1~6の調製]
水に前述のモノグリセリド成分1~6をそれぞれ加え、次いで60℃で加熱することで、水とモノグリセリド成分1~6とを含む水性組成物1~6の調製を試みた。モノグリセリド成分1~5については図1に示す濃度(1質量%~2質量%に含まれる濃度)の水性組成物を調製し、モノグリセリド成分6については1.6質量%の濃度の水性組成物を調製した。モノグリセリド成分1~6のいずれにおいても水性組成物の調製中及び調製直後にラメラ構造による反射色が確認された。モノグリセリド成分6を含む水性組成物6については、調製直後にラメラ構造による反射色が確認できたが、光路長1cmの分光光度計用角型セルに当該組成物を移動させた直後に反射色が消失した。これは、アシル基の鎖長が長いため、モノグリセリドが水に溶解しにくいことが理由と推測される。モノグリセリド成分1~5のそれぞれを含む水性組成物1~5については角型セルに移動させた直後では反射色が消失しなかった。水性組成物5では、角型セルに移動させてから20分経過後に結晶が析出し、60分後に水性組成物は結晶化した。モノグリセリド成分4を含む水性組成物4では、角型セルに移動させてから42時間経過後に水性組成物は結晶化し、モノグリセリド成分1~3を含む水性組成物1~3では、角型セルに移動させてから42時間経過後であっても水性組成物は結晶化しなかった。静置してから42時間経過後、水性組成物1については反射色が消失したが、水性組成物2及び3については反射色が消失しなかった。
水性組成物1~5について、反射スペクトルを測定した。モノグリセリド成分の濃度が1.6質量%である水性組成物1~5について反射スペクトルの測定結果を図2図6に示す。また、各濃度と反射ピークの波長との関係は図1に示す通りである。アシル基の炭素数が増加するにつれてピーク波長での反射率が増加する傾向が確認できた。
安定性及び反射率の観点では、モノカプリン(アシル基の炭素数10)を主成分とする水性組成物3が最適であった。
【0035】
図1に示すように、モノグリセリド成分の濃度が増加するにつれてピーク波長が短波長シフトした。この理由は、モノグリセリド成分の濃度が増加することで二分子膜の隣接間隔が短くなったため、と推測される。例えば、モノグリセリド成分3を含む水性組成物3において、濃度が1.25質量%(wt%)、1.50質量%及び2.00質量%のときの反射スペクトルの測定結果を図7に示す。水性組成物3では、濃度が1.25質量%のときに赤色の反射色を示し、濃度が1.50質量%のときに緑色の反射色を示し、濃度が2.00質量%のときに青色の反射色を示す。
【0036】
さらに、アシル基の炭素数が偶数である場合(C8、C10及びC12)には、アシル基の炭素数が増加するほどピーク波長が短波長シフトした。この理由は、アシル基の炭素数が偶数である場合又は奇数である場合のそれぞれにおいて、当該炭素数が増加することでモノグリセリドの疎水性が向上し、その結果、ラメラ構造中に存在可能な水分量が少なくなり、二分子膜の隣接間隔が縮小したことが原因と推測される。一方、アシル基の炭素数が奇数である場合(C9、及びC11)には、アシル基の炭素数が増加することでピーク波長が短波長シフトする傾向は特にみられなかった。
【0037】
[水性組成物7~9の調製]
モノグリセリド成分1、3及び5について、精製により純度を高めたモノグリセリドをそれぞれ使用し、水性組成物1~6の調製と同様の方法で水性組成物7~9を調製した。
水性組成物7~9について、反射スペクトルを測定した。モノグリセリド成分の濃度が1.6質量%である水性組成物7~9について反射スペクトルの測定結果を図8図10に示す。さらに、水性組成物1、3及び5と水性組成物7~9について、モノグリセリド成分の濃度と反射ピークの波長との関係を図11図13に示す。図11及び図12に示されるように、精製前の純度が比較的低かった水性組成物7及び8では、精製前よりも精製後にてピーク波長が短波長シフトした。一方、図13に示されるように、精製前の純度が比較的高かった水性組成物9では、精製前後にてピーク波長はほぼ変化しなかった。さらに、精製前後でのピーク波長の反射率を比較したところ、図14に示すように、精製後にてピーク波長の反射率は低下する傾向が確認された。さらに、アシル基の炭素数が偶数である場合(C8、C10及びC12)、精製前(図15中の(a))及び精製後(図15中の(b))での各濃度と反射波長との関係を確認すると、精製前では、アシル基の炭素数が増加するとピーク波長が短波長シフトする傾向があったが、精製後では、アシル基の炭素数が増加するとピーク波長が短波長シフトする傾向は無かった。
以上の結果により、モノグリセリド成分におけるモノグリセリド純度によって水性組成物におけるピーク波長及び反射率が変化することが確認できた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15