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特開2024-159137アライメント装置、アライメント方法、成膜方法、マスク及び成膜装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159137
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】アライメント装置、アライメント方法、成膜方法、マスク及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20241031BHJP
   H10K 71/16 20230101ALI20241031BHJP
   H10K 71/20 20230101ALI20241031BHJP
   H10K 50/10 20230101ALN20241031BHJP
   H10K 59/10 20230101ALN20241031BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H10K71/16
H10K71/20
H10K50/10
H10K59/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023074930
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市原 正浩
(72)【発明者】
【氏名】長岡 健
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC33
3K107GG04
3K107GG28
3K107GG33
3K107GG54
4K029AA02
4K029AA09
4K029AA11
4K029AA24
4K029BA01
4K029BA43
4K029BA62
4K029BB03
4K029CA01
4K029CA02
4K029DA03
4K029HA01
4K029HA04
4K029JA05
4K029KA01
4K029KA09
(57)【要約】
【課題】光透過性の低い基板を用いる場合であっても、アライメントマークの検出精度が低下することを抑制し、アライメント精度を向上させること。
【解決手段】基板に形成された基板側マークと、マスクに形成されたマスク側マークとを検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づいて、前記基板と前記マスクとの相対的な位置を調整する位置調整手段と、を備えたアライメント装置であって、前記マスクは、第1の部分と、前記第1の部分よりも光透過性が高い第2の部分と、を有し、前記マスク側マークは、前記第2の部分に形成され、前記アライメント装置は、前記第2の部分に光を照射する照射手段を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された基板側マークと、マスクに形成されたマスク側マークとを検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記基板と前記マスクとの相対的な位置を調整する位置調整手段と、
を備えたアライメント装置であって、
前記マスクは、第1の部分と、前記第1の部分よりも光透過性が高い第2の部分と、を有し、
前記マスク側マークは、前記第2の部分に形成され、
前記アライメント装置は、
前記第2の部分に光を照射する照射手段を備える、
ことを特徴とするアライメント装置。
【請求項2】
前記第2の部分は、前記第1の部分よりも厚みが薄い部分である、
ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項3】
前記マスクは、前記基板に対向する第1の面と、前記第1の面の反対側の第2の面とを有し、
前記第2の部分は、前記第2の面よりも前記第1の面側に位置し、
前記マスク側マークは、前記第2の部分の前記第1の面側に形成される、
ことを特徴とする請求項2に記載のアライメント装置。
【請求項4】
前記第2の部分は、前記マスクを厚み方向に貫通する穴であり、
前記マスク側マークは前記穴の形状により表されたマークである、
ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項5】
前記第2の部分は、前記基板側マークよりも大きい領域を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項6】
前記マスクは、
所定のパターンが設けられたパターン部と、
前記パターン部を支持するフレーム部と、を備え、
前記第1の部分及び前記第2の部分は、前記フレーム部に設けられ、
前記第1の部分の厚みは、前記パターン部の厚みよりも厚い、
ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項7】
前記照射手段の光は、赤外波長領域の光であり、
前記検出手段は、赤外波長領域の光に対して検出感度を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項8】
前記光透過性とは、赤外波長領域の光に対する透過性である、
ことを特徴とする請求項7に記載のアライメント装置。
【請求項9】
前記検出手段は、前記基板と前記マスクとを重ね合わせた状態で、前記基板側から前記基板側マークと前記マスク側マークとを検出し、
前記照射手段の光は、前記マスク側から前記第2の部分に照射される、
ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント装置。
【請求項10】
前記検出手段と前記照射手段とは、対向した位置に配置される、
ことを特徴とする請求項9に記載のアライメント装置。
【請求項11】
基板に形成された基板側マークとマスクに形成されたマスク側マークとを検出する検出工程と、
前記検出工程の検出結果に基づいて、前記基板と前記マスクとの相対的な位置を調整する位置調整工程と、
を備えたアライメント方法であって、
前記マスクは、第1の部分と、前記第1の部分よりも光透過性が高い第2の部分と、を有し、
前記マスク側マークは、前記第2の部分に形成され、
前記検出工程では、
前記第2の部分に光を照射する、
ことを特徴とするアライメント方法。
【請求項12】
請求項11に記載されたアライメント方法を用いてマスクとの相対的な位置が調整された基板に成膜を行う、
ことを特徴とする成膜方法。
【請求項13】
基板に所定のパターンを形成するためのマスクであって、
第1の部分と、前記第1の部分よりも光透過性が高い第2の部分と、を有し、
前記第2の部分に、前記基板と前記マスクとの位置調整用のアライメントマークが設けられる、
ことを特徴とするマスク。
【請求項14】
基板とマスクとの相対的な位置を調整する請求項1に記載のアライメント装置と、
前記基板に前記マスクを介して蒸着物質を成膜する成膜手段と、を備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アライメント装置、アライメント方法、成膜方法、マスク及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マスクを介して基板にパターンを形成する成膜装置において、成膜精度を高めるためにマスクと基板との位置を調整するアライメント機構が知られている。例えば、特許文献1では、成膜装置において、基板とマスクとにそれぞれ設けられたアライメントマークを検出して、基板とマスクの相対位置を調整することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/222009号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、基板の光透過性が低い場合、検出感度の低下により、アライメントマークの検出精度に影響を与えることがある。アライメントマークの検出精度が低いと、アライメント精度が低下することがある。
【0005】
本発明の目的は、光透過性の低い基板を用いる場合であっても、アライメントマークの検出精度が低下することを抑制し、アライメント精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
基板に形成された基板側マークと、マスクに形成されたマスク側マークとを検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記基板と前記マスクとの相対的な位置を調整する位置調整手段と、
を備えたアライメント装置であって、
前記マスクは、第1の部分と、前記第1の部分よりも光透過性が高い第2の部分と、を有し、
前記マスク側マークは、前記第2の部分に形成され、
前記アライメント装置は、
前記第2の部分に光を照射する照射手段を備える、
ことを特徴とするアライメント装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光透過性の低い基板を用いる場合であっても、アライメントマークの検出精度が低下することを抑制し、アライメント精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電子デバイスの製造ラインの一部の模式図。
図2】本発明の一実施形態に係る成膜装置の概略図。
図3図2の一部拡大図。
図4】基板の平面図。
図5】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図6】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図7】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図8】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図9】(A)及び(B)は図2の成膜装置の動作説明図。
図10】マスクの別の構成例の説明図。
図11】マスクの別の構成例の説明図。
図12】(A)及び(B)は、基板の平面図。
図13】照射ユニットの別の配置例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第1実施形態>
<電子デバイスの製造ライン>
図1は、本発明の成膜装置が適用可能な電子デバイスの製造ライン100の構成の一部を示す模式図である。各図において、矢印X及びYは互いに直交する水平方向を示し、矢印Zは上下方向(重力方向)を示す。図1の製造ラインは、例えば、有機EL表示装置の発光素子の製造に用いられる。製造ライン100は、平面視で八角形の形状を有する搬送室101aを備える。搬送室101aには搬送路103aから基板2が搬入され、また、成膜済みの基板2は搬送室101aから搬送路103bへ搬出される。
【0011】
搬送室101aの周囲には、基板2に対する成膜処理が行われる複数の成膜装置1が配置されている。各成膜装置1には搬送室101bが隣接して配置されている。平面視で八角形の形状を有する搬送室101bの周囲には、マスク3が収納される格納室102が配置されている。
【0012】
搬送室101aには、基板2を搬送する搬送ユニット104aが配置されている。本実施形態の搬送ユニット104aは、水平多関節型のロボットであり、そのハンド部に基板2を水平姿勢で搭載して搬送する。搬送ユニット104aは、搬送路103aから搬入される基板2を成膜装置1へ搬送する搬入動作と、成膜装置1で成膜済みの基板2を成膜室1から搬送路103bへ搬送する搬出動作とを行う。
【0013】
各搬送室101bには、マスク3を搬送する搬送ユニット104bが配置されている。本実施形態の搬送ユニット104bは、水平多関節型のロボットであり、そのハンド部にマスク3を水平姿勢で搭載して搬送する。搬送ユニット104bは、格納室102から成膜装置1へマスク3を搬送する動作、成膜装置1から格納室102へマスク3を搬送する動作を行う。
【0014】
<成膜装置>
図2は本発明の一実施形態に係る成膜装置1の概略図である。成膜装置1は、基板2に蒸着物質を成膜する装置であり、マスク3を用いて所定のパターンの蒸着物質の薄膜を形成する。成膜装置1で成膜が行われる基板2の材質は、ガラス、樹脂、金属等の材料を適宜選択可能である。
【0015】
蒸着物質としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの物質である。成膜装置1は、例えば表示装置(フラットパネルディスプレイなど)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)等の電子デバイスや、光学部材等を製造する製造装置に適用可能であり、特に、有機ELパネルを製造する製造装置に適用可能である。以下の説明においては成膜装置1が真空蒸着によって基板2に成膜を行う例について説明するが、本発明はこれに限定はされず、スパッタやCVD等の各種成膜方法を適用可能である。
【0016】
成膜装置1は、箱型の真空チャンバ10を有する。真空チャンバ10の内部空間は、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。本実施形態では、真空チャンバ10は不図示の真空ポンプに接続されている。真空チャンバ10の内部空間には、蒸着ユニット16が配置されている。蒸着ユニット16は、蒸着物資を上方に放出する蒸着源を備える。蒸着ユニット16の上方には蒸着物質の放出の規制と規制解除を行うシャッタ16aが配置されている。シャッタ16aは不図示の開閉機構により開閉される。図2はシャッタ16aが閉状態の場合を示しており、蒸着ユニット16による蒸着物質の放出が規制される。蒸着ユニット16の上方には、また、防着板10cが配置されている。防着板10cは、真空チャンバ10の内部空間の上部に配置される以下の構成に、蒸着物質が不必要に付着することを防止する。
【0017】
真空チャンバ10の内部空間には、基板2を水平姿勢で支持する基板支持プレート11が設けられている。本実施形態の場合、基板支持プレート11は静電チャックであり、その下面に静電気力により基板2を吸着し、保持する。基板支持プレート11上には冷却プレート4が固定されている。冷却プレート12は例えば水冷機構等を備えており、基板支持プレート11を介して成膜時に基板2を冷却する。
【0018】
基板支持プレート11と冷却プレート12とは、支持部130を介してZ方向に変位可能に磁石プレート13に吊り下げられている。磁石プレート11は、磁力によってマスク3を引き寄せるプレートである。成膜時に基板2は磁石プレート13とマスク3との間に磁力によって挟まれるので、基板2とマスク3の密着性を向上することができる。
【0019】
成膜装置1は、成膜時にマスク3を支持するマスク支持ユニット14を備える。マスク支持ユニット14は、本実施形態の場合、搬送ユニット104aと基板支持プレート11との間の基板2の移載動作も行う。マスク支持ユニット14は、X方向に離間した一対の支持部材140を備える。各支持部材140は対応するアクチュエータ141により昇降される。本実施形態ではアクチュエータ141を支持部材140毎に設けたが、一対の支持部材140を一つのアクチュエータ141で昇降してもよい。アクチュエータ141は例えば電動シリンダや、電動ボールねじ機構である。支持部材140は、その下端部に爪部F1を備えている。基板2やマスク3は、その周縁部が爪部F1上に載置される。図2の例ではマスク3が爪部F1上に載置されている。一対の支持部材140は同期的に昇降され、基板2やマスク3を昇降する。
【0020】
成膜装置1は、基板2とマスク3とのアライメントを行うアライメント装置15を備える。アライメント装置15は、駆動機構150と、複数の検出ユニットSRと、複数の照射ユニットLSとを備える。駆動機構150は、距離調整ユニット151と、支持軸152と、架台153と、位置調整ユニット154とを備える。
【0021】
距離調整ユニット151は、支持軸152をZ方向に昇降する機構であり、例えば、電動シリンダや、電動ボールねじ機構を備える。支持軸152の下端部には磁石プレート13が固定されており、支持軸152の昇降によって、磁石プレート13を介して基板支持プレート11が昇降される。基板支持プレート11を昇降することで、基板2とマスク3との距離を調整し、基板支持プレート11に支持された基板2とマスク3とを基板2の厚み方向(Z方向)に接近及び離隔(離間)させる。換言すれば、距離調整ユニット151は、基板2とマスク3とを重ね合わせる方向に接近させたり、その逆方向に離隔させたりする。なお、距離調整ユニット151によって調整する「距離」はいわゆる垂直距離(又は鉛直距離)であり、距離調整ユニット151は、基板2の垂直位置を調整するユニットであるとも言える。距離調整ユニット151は、架台153を介して位置調整ユニット154に搭載されている。
【0022】
位置調整ユニット154は、基板支持プレート11をX-Y平面上で変位することにより、マスク3に対する基板2の相対位置を調整する。すなわち、位置調整ユニット80は、マスク3と基板2の水平位置を調整するユニットであるとも言える。位置調整ユニット80は、基板支持プレート6をX方向、Y方向及びZ方向の軸周りの回転方向(θ方向)に変位することができる。本実施形態では、マスク3の位置を固定し、基板2を変位してこれらの相対位置を調整するが、マスク3を変位させて調整してもよく、或いは、基板2とマスク3の双方を変位させてもよい。
【0023】
位置調整ユニット154は、固定プレート154aと、可動プレート154bとを備える。固定プレート154aと、可動プレート154bは矩形の枠状のプレートであり、固定プレート154aは真空チャンバ10の上壁部10a上に固定されている。固定プレート154aと、可動プレート154bとの間には、固定プレート154aに対して可動プレート154bをX方向、Y方向、及び、Z方向の軸周りの回転方向に変位させるアクチュエータが設けられている。
【0024】
可動プレート154b上には、フレーム状の架台153が搭載されており、架台153には距離調整ユニット151が支持されている。可動プレート84bが変位すると、架台153及び距離調整ユニット151が一体的に変位する。これにより基板2をX方向、Y方向、及び、Z方向の軸周りの回転方向に変位させることができる。上壁部10aには、支持軸152、支持部材140が通過する開口部が形成されている。これらの開口部は不図示のシール部材(ベローズ等)によってシールされ、真空チャンバ10内の気密性が維持される。
【0025】
検出ユニットSRは、基板2とマスク3とを重ね合わせた状態で基板2とマスク3とに形成された各アライメントマークを検出し、基板2とマスク3との位置ずれを計測する。検出ユニットSRは、画像を撮像する撮像装置を有する。撮像装置は、例えば、光を検出する光学センサなどを備えるカメラである。本実施形態の撮像装置は、赤外波長領域の光に検出感度を有するカメラである。本実施形態において、赤外波長領域の光とは、例えば、波長が750nm~1000μmの光である。検出ユニットSRは、上壁部10aに配置され、真空チャンバ10内の画像を撮像可能である。検出ユニットSRは、基板2とマスク3の各アライメントマークを撮像する。各アライメントマークの位置により基板2とマスク3との位置ずれ量を演算し、位置調整ユニット154によって位置ずれ量を解消するように基板2とマスク3との相対位置を調整する。
【0026】
照射ユニットLSは、検出ユニットSRが基板2とマスク3とに形成された各アライメントマークを撮像し、位置調整ユニット154によって基板2及びマスク3の位置調整を行う間、マスク3の一部に光を照射する。本実施形態の場合、照射ユニットLSは、防着板10cの上部に設けられている。照射ユニットLSは、基板2とマスク3とを介して検出ユニットSRと対向した位置に配置されている。照射ユニットLSが後述するマスク3の一部に向けて光を照射することで、検出ユニットSRは、基板2とマスク3とに形成された各アライメントマークの検出感度を高めることができる。
【0027】
照射ユニットLSは、光を発する光源155を有する。光源155は、例えば、ハロゲンランプや、LD、SLD、LED、OLED光源などであってもよい。また、照射ユニットLSは、例えば、光の強度や照射位置を調整する調整部や、光が照射される対象物との距離を測定する測定部、光の波長の範囲を選択するフィルタ部材、光を集光させる集光部材、後述する光を反射させる反射部材156などを備えてもよい。
【0028】
本実施形態では、照射ユニットLSから照射される光は、赤外波長領域の光である。照射ユニットLSが赤外波長領域の光を照射することで、後述するようにシリコンウエハのような可視光に対する光透過性が低い基板2を用いる場合であっても、検出ユニットSRは基板2とマスク3とに形成された各アライメントマークを検出することができる。
【0029】
制御装置4は、成膜装置1の全体を制御する。制御装置4は、処理部40、記憶部41、入出力インタフェース(I/O)42及び通信部43を備える。処理部40は、CPUに代表されるプロセッサであり、記憶部42に記憶されたプログラムを実行して成膜装置1を制御する。記憶部41は、ROM、RAM、HDD等の記憶デバイスであり、処理部40が実行するプログラムの他、各種の制御情報を記憶する。I/O42は、処理部40と外部デバイスとの間の信号を送受信するインタフェースである。通信部43は通信回線を介して上位装置又は他の制御装置等と通信を行う通信デバイスである。
【0030】
<マスク及び照射ユニットの構成>
マスク3及び照射ユニットLSの構成について説明する。上述したように、基板2が可視光に対して光透過性が低い場合であっても、照射ユニットLSから赤外波長領域の光を照射することで、検出ユニットSRは基板2とマスク3とに形成された各アライメントマークを検出することができる。
【0031】
本実施形態ではマスク3は、シリコン(Si)等の材料からなる。マスク3は、例えばシリコンウエハであってもよい。マスク3としてシリコンウエハを用いることで半導体製造技術の応用により微細で精密なパターンを形成することができる。一方、マスク3の厚みによっては、赤外波長領域の光に対して光透過性が低下することがある。マスク3の厚みは、剛性の観点から基板2よりも厚みを有する場合がある。そのため、可視光に対して光透過性が低い基板2を用いる場合に、マスク3側から透過する赤外領域の光が減少し、検出ユニットSRの検出感度が低下することがある。検出感度が低下すると、検出ユニットSRの基板2とマスク3とに形成された各アライメントマークの検出精度に影響を与える場合がある。検出ユニットSRの検出精度が低下する場合、アライメント精度が低下することがある。
【0032】
本実施形態では、照射ユニットLSがマスク3の赤外波長領域の光に対して光透過性の高い部分に光を照射することにより、可視光に対して光透過性の低い基板2を用いる場合であっても、基板2とマスク3とに設けられた各アライメントマークの検出精度が低下することを抑制し、アライメント精度を向上させる構成を開示している。図3は、図2のマスク3及び照射ユニットLSとその周辺を拡大した図である。図3は、アライメント動作時に照射ユニットLSがマスク3に向けて光を照射している状態を示す。以下の説明では、基板2側に設けられたアライメントマークを基板側マーク20、マスク3側に設けられたアライメントマークをマスク側マーク32と呼ぶ。
【0033】
基板2は、マスク3と対向する面S2に基板側マーク20が形成されている。基板2は、例えば、シリコンウエハであってもよい。マスク3は、パターン部30と、パターン部30を支持するフレーム部31とを有する。パターン部30は、所定のパターンが形成されている。所定のパターンとは、マスク3の厚み方向に貫通する複数の微細な孔であって、蒸着物質が通過する部分である。パターン部30の配置や形状によって基板2上の成膜パターンが規定される。パターン部30の表面には、例えば、ニッケル(Ni)等の磁性材料の薄膜が形成されていてもよい。
【0034】
フレーム部31は、パターン部30の厚みよりも厚い。すなわち、フレーム部31は、パターン部30よりも剛性が高い部分である。フレーム部31がパターン部30を支持しているため、マスク3全体の剛性を大きく低下させることなく、パターン部30を薄く形成することができる。
【0035】
本実施形態のフレーム部31は、肉厚部31aと、肉薄部31bとを有する。肉薄部31bの厚みT2は、肉厚部31aの厚みT1よりも薄い部分である。すなわち、肉薄部31bは、肉厚部31aよりも赤外波長領域に対して光透過性が高い部分である。肉薄部31bは、マスク3の厚み方向に窪んだ凹形状の底部分に相当する。
【0036】
肉薄部31bは、マスク3の下面M2側よりも上面M1側に位置している。下面M2は、マスク3の蒸着ユニット16側の面であり、照射ユニットLS側の面でもある。上面M1は、マスク3が基板2と対向する側の面である。本実施形態の場合、肉薄部31bは後述するようにマスク3の平面視で直径D1の円形の部分である。なお、肉薄部31bの形状はこれに限らず、適宜変更してもよい。
【0037】
肉薄部31bには、マスク側マーク32が形成されている。マスク側マーク32は、マスク3の上面M1側に位置している。マスク側マーク32がマスク3の上面M1側に位置していることで、基板側マーク20との距離が近くなる。すなわち、検出ユニットSRが基板側マーク20とマスク側マーク32とを検出する際に焦点を合わせやすくなり、アライメント精度を高めることができる。
【0038】
本実施形態の場合、照射ユニットLSは、マスク3の下面M2側から赤外波長領域の光に対して光透過性の高い部分である肉薄部31bに光を照射する。図4も参照する。図4は、図3のA1方向矢視図に相当し、照射ユニットLSが肉薄部31bに光を照射している際の基板2の平面図の一例を示す。直径D1の円形部分は、基板2がマスク3の肉薄部31bと重なっている部分である。円形部分は、換言すると肉薄部31bの形状に相当する。円形部分の外側は、基板2がマスク3の肉厚部31aと重なっている部分である。図4は、赤外波長領域の光に対して光透過性が高い肉薄部31bに光を照射することで、円形部分は明るく、円形部分の外側は円形部分よりも暗い状態を示している。
【0039】
円形部分の領域は基板側マーク20よりも大きい。円形部分の領域は、換言すると肉薄部31bの面積である。アライメント時には、基板側マーク20とマスク側マーク32とが円形部分の内側で所定の位置になるように調整される。
【0040】
以上の構成により、本実施形態では、可視光に対して光透過性の低い基板2を用いる場合であっても、マスク側マーク32が設けられた赤外波長領域の光に対して光透過性の高い肉薄部31bに照射ユニットLSから赤外領域の光が照射されることで、検出ユニットSRの基板側マーク20及びマスク側マーク32の検出感度を上げることができる。したがって、検出ユニットSRの基板側マーク20及びマスク側マーク32の検出精度が低下することを抑制し、アライメント精度を向上させることができる。
【0041】
<制御例>
制御ユニット9の処理部40が実行する成膜装置1の制御例について説明する。図5(A)~図8(B)は成膜装置1の動作説明図であり、基板2の搬入から、成膜し、搬出するまでの例を示す。
【0042】
図5(A)は基板2を真空チャンバ10内に搬入した状態を示す。基板2は搬送ロボット104aにより基板支持プレート11の下方に搬送される。基板支持プレート11の下面の基板吸着面11aは水平である。次にマスク支持ユニット14によって搬送ロボット104aから基板支持プレート11へ基板2を移載する。図5(B)はその動作を示している。支持部材140を上昇することにより、基板2の周縁が爪部F1に載置され、基板2は搬送ロボット104aから上昇し、かつ、基板支持プレート11の基板吸着面11aに押し付けられる。基板支持プレート11の静電チャックを作動して基板2を吸着し、保持する。
【0043】
続いてマスク3を真空チャンバ10内に搬入する。図6(A)はマスク3を真空チャンバ10内に搬入した状態を示す。マスク3は搬送ロボット104bによって格納室102から真空チャンバ10内に搬入される。マスク3は基板2の真下に位置する。次にマスク3を搬送ロボット104bからマスク支持ユニット14に移載し、アライメント位置に位置させる。図6(B)はその動作を示している。支持部材140を上昇することにより、マスク3の周縁が爪部F1に載置され、マスク3は搬送ロボット104bから上昇する。マスク3は支持部材140に支持された状態となり、かつ、更に上昇することでアライメント位置に位置する。本実施形態ではマスク3を上昇してアライメント位置に位置させるが、基板2を降下して基板2をアライメント位置に位置させる構成でもよい。
【0044】
次にアライメント動作を行う。アライメント動作は、基板2とマスク3とが重ね合わせた状態で行われる。重ね合わせた状態とは、基板2とマスク3とが上下に配置され、互いに離間した状態である。図7(A)に示すように検出ユニットSRにより、基板2のアライメントマークとマスク3のアライメントマークとが検出され、検出結果に基づいて基板2とマスク3との相対位置が計測される。計測結果(基板2とマスク3の位置ずれ量)が許容範囲内であればアライメント動作を終了する。計測結果が許容範囲外であれば、計測結果に基づいて位置ずれ量を許容範囲内に収めるための制御量(基板2の変位量)が設定される。
【0045】
検出ユニットSRの動作時には、防着板10cの上部に設けられている照射ユニットLSから光がマスク3の下面側から照射される。本実施形態によれば、マスク3の光透過性が高い部分(図3参照)に光が照射されることで基板2の光透過性が低い場合であっても、検出ユニットSRの基板2のアライメントマークとマスク3に形成された各アライメントマークに対する検出感度を高めることができる。したがって、検出ユニットSRの検出精度が低下することを抑制しつつ、アライメント精度を向上することができる。
【0046】
「位置ずれ量」とは、位置ずれの距離と方向(X、Y、θ)で定義される。設定された制御量に基づいて、図7(B)に示すように位置調整ユニット80が作動される。これにより、基板支持プレート11がX-Y平面上で変位され、マスク3に対する基板2の相対位置が調整される。
【0047】
計測結果が許容範囲内であるか否かの判定は、例えば、アライメントマーク間の距離をそれぞれ算出し、その距離の平均値や二乗和を、予め設定された閾値と比較することで行うことができる。
【0048】
相対位置の調整後、再度、検出ユニットSRにより、基板2のアライメントマークとマスク3のアライメントマークの相対位置が計測される。計測結果が許容範囲内であればアライメント動作を終了する。計測結果が許容範囲外であれば、マスク3に対する基板2の相対位置が再度調整される。以降、計測結果が許容範囲内となるまで、計測と相対位置調整が繰り返される。
【0049】
次に、成膜動作を行う。まず、基板2をマスク3と重ね合わせる。図8(A)はその動作を示している。基板支持プレート11を降下させると、基板2はマスク3上に載置され、基板2は基板2の被処理面の全体がマスク3と接触する。磁石プレート13が冷却プレート12上に当接し、上から順に磁石プレート13、冷却プレート12、基板支持プレート11、基板2及びマスク3が密着した状態になる。磁石プレート13の磁力によりマスク3を引き寄せ、マスク3と基板2とを全体的に密着させることができる。
【0050】
以上により成膜の準備が整い、次に図8(B)に示すように、シャッタ16aを開状態とし、蒸着ユニット16から蒸着物質を放出する。蒸着物質はマスク3を介して基板2に蒸着される。
【0051】
こうした成膜が完了すると、マスク3及び基板2をそれぞれ搬出する動作を行う。図9(A)はマスク3を搬出する動作を示している。まず、磁石プレート13を上昇し、基板2とマスク3とが離間される。搬送ロボット104bのハンド部をマスク3の下方に進入させた後、マスク支持ユニット14の支持部材140を降下して、マスク3を支持部材140から搬送ロボット104bへ移載する。搬送ロボット104bはマスク3を格納室102へ搬送する。
【0052】
続いて成膜済みの基板2を搬出する。マスク支持ユニット14の支持部材140を上昇して、基板2を爪部F1によって下側から支持する。基板2に対する基板支持ユニット3の吸着を解除して基板2が支持部材140に移載される。搬送ロボット104aのハンド部を基板2の下方に進入させた後、図9(B)に示すようにマスク支持ユニット14の支持部材140を降下して、基板2を支持部材140から搬送ロボット104aへ移載する。搬送ロボット104aは基板2を搬送路103bへ搬送する。以上により基板2の搬入から、成膜し、搬出するまでの動作が完了する。
【0053】
<第2実施形態>
第1実施形態では、マスク3の肉薄部31bに照射ユニットLSが赤外波長領域の光を照射する例について説明した。照射ユニットLSがマスク3の一部に照射する光は、赤外波長領域の光に限られず可視光であってもよい。図10及び図11はその一例を示す。また、第1実施形態では、マスク3がシリコンからなる材料である例を示したが、マスク3を構成する材料はこれに限らない。マスク3は、例えば、金属、ガラス、樹脂などの材料から構成されてもよい。以下の説明では、光透過性は可視光に対する透過性を示す。
【0054】
図10は、マスク3のフレーム部31に形成された貫通孔31cに照射ユニットLSが可視光を照射している例を示している。貫通孔31cは、マスク3の厚み方向に貫通した穴である。貫通孔31cは、フレーム部31の肉厚部31aよりも光透過性が高い部分である。すなわち、基板2の光透過性が低い場合であっても、照射ユニットLSが貫通孔31cに可視光を照射することで基板側マーク20の形状が明確になる。したがって、検出ユニットSRは基板側マーク20を検出しやすくなる。
【0055】
図12(A)を参照する。図12(A)は、基板2の平面図を示し、かつ、図10のA2方向矢視図に相当する。図12(A)に示される直径D2の円形部分は、基板2がマスク3の貫通孔31cと重なる部分に相当する。貫通孔31cは、基板側マーク20よりも大きい領域を有する。領域とは、換言すると面積である。貫通孔31cに照射ユニットLSから可視光が照射される場合、基板側マーク20が貫通孔31cと重なる位置になるようにアライメントが行われてもよい。言い換えると、貫通孔31cの形状によって表された円形部分をマスク側マーク32’として、検出ユニットSRは検出してもよい。
【0056】
図11は、マスク3のフレーム部31に形成された肉薄部31b’に照射ユニットLSが可視光を照射している例を示している。肉薄部31b’には、肉薄部31b’の厚み方向に貫通する貫通孔31c’が形成されている。肉薄部31b’は、肉厚部31aよりも光透過性が高い部分である。貫通孔31c’は、肉薄部31b’よりも光透過性が高い部分である。
【0057】
図12(B)を参照する。図12(B)は、基板2の平面図を示し、かつ、図11のA3方向矢視図に相当する。図12(B)の直径D3の円形部分は、基板2が肉薄部31b’と重なる部分であり、直径D4の円形部分は、基板2が貫通孔31c’と重なる部分である。貫通孔31c’の形状が基板側マーク20の大きさに応じて形成されている。このように、貫通孔31c’が形成された肉薄部31bに照射ユニットLSが光を照射することで、基板2の光透過性が低い場合であっても、検出ユニットSRの基板側マーク20及びマスク側マーク32’に対する検出感度が低下することを抑制し、アライメント精度を向上することができる。なお、本実施形態では、貫通孔31c’がマスク3の平面視で円形に形成されている例を示したが、例えば、四角形、十字形状などの多角形状であってもよい。
【0058】
<第3実施形態>
第1実施形態では、照射ユニットLSの光源155が防着板10cに設けられている例を示したが、光源155の配置可能な位置はこれに限られない。例えば、光源155は、真空チャンバ10の側壁部10bや、上壁部10aに配置されてもよい。図13(A)及び(B)は、光源155の別の配置例を示す。
【0059】
図13(A)は、光源155を真空チャンバ10の側壁部10bに配置した例を示している。図12(B)は、光源155を真空チャンバ10の上壁部10aに配置した例を示す。照射ユニットLSは、上述したように反射部材156を備えてもよい。反射部材156は、例えば、金属薄膜などが形成されたミラーなどであってもよい。照射ユニットLSの光源155は、防着板10cに設けられた反射部材156を介してマスク3の一部に光を照射する。このように、光源155を真空チャンバ10の側壁部10bや上壁部10a等に配置することで、成膜装置1やアライメント装置15の設計の自由度を高めることができる。
【0060】
<他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0061】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0062】
1 成膜装置、2 基板、 3 マスク、15 アライメント装置、20 基板側マーク、31 フレーム部、31a 肉厚部、31b 肉薄部、31c 貫通孔、32 マスク側マーク、SR 検出ユニット、LS 照射ユニット
図1
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