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特開2024-15914封止用樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015914
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20240130BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240130BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240130BHJP
   C08G 59/18 20060101ALI20240130BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240130BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/36
C08K3/013
C08G59/18
C09K3/10 L
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118297
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 実佳
(72)【発明者】
【氏名】竹内 勇磨
(72)【発明者】
【氏名】内山 千嘉
(72)【発明者】
【氏名】助川 雄太
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 貴大
【テーマコード(参考)】
4H017
4J002
4J036
4M109
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AB08
4H017AC10
4H017AD06
4H017AE05
4J002CD011
4J002CD021
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD071
4J002CD081
4J002CD111
4J002CD141
4J002DE077
4J002DE097
4J002DE107
4J002DE117
4J002DE137
4J002DE147
4J002DF017
4J002DJ007
4J002DJ016
4J002DJ037
4J002DJ047
4J002DJ057
4J002DK007
4J002DL007
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD090
4J002FD130
4J002FD160
4J002GQ00
4J002GQ01
4J036AA01
4J036AA02
4J036AC05
4J036AC18
4J036AD01
4J036AD07
4J036AD08
4J036AD21
4J036AE05
4J036AF01
4J036AF06
4J036DA01
4J036DB06
4J036DB15
4J036DB23
4J036DC02
4J036DC22
4J036DC27
4J036DD02
4J036FA03
4J036FA05
4J036FA06
4J036JA07
4M109AA01
4M109BA01
4M109BA03
4M109BA05
4M109CA04
4M109CA07
4M109CA10
4M109EA02
4M109EB02
4M109EB03
4M109EB04
4M109EB06
4M109EB07
4M109EB08
4M109EB09
4M109EB12
4M109EB13
(57)【要約】
【課題】硬化物の比誘電率及び誘電正接が低い封止用樹脂組成物、これを用いて封止された電子部品装置、及びこれを用いて封止することを含む電子部品装置の製造方法の提供。
【解決手段】本開示の封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、ゾルゲルシリカと、ゾルゲルシリカ以外の無機充填材を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、硬化剤と、ゾルゲルシリカと、ゾルゲルシリカ以外の無機充填材とを含む、封止用樹脂組成物。
【請求項2】
前記ゾルゲルシリカの形状が粒子であり、且つ平均粒径が、0.1μm~20μmである、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
前記封止用樹脂組成物の総質量に対する前記ゾルゲルシリカの含有率が、1質量%~25質量%である、請求項1又は請求項2に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
前記ゾルゲルシリカ及び前記ゾルゲルシリカ以外の無機充填材の含有率の和に対する、前記ゾルゲルシリカの含有率の比が、0.10~0.30である、請求項1又は請求項2記載の封止用樹脂組成物。
【請求項5】
前記ゾルゲルシリカ及び前記ゾルゲルシリカ以外の無機充填材の総体積に対する、平均粒径が1μm~10μmである前記ゾルゲルシリカ及び平均粒径が1μm~10μmである前記ゾルゲルシリカ以外の無機充填材の含有率が55体積%~85体積%となる、粒度分布を有する、請求項1又は請求項2に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項6】
前記ゾルゲルシリカ以外の無機充填材が、シリカフィラーを含む、請求項1又は請求項2に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項7】
前記硬化剤が、活性エステル硬化剤を含む、請求項1又は請求項2に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項8】
支持部材と、
前記支持部材上に配置された素子と、
前記素子を封止している請求項1又は請求項2に記載の封止用樹脂組成物の硬化物と、
を備える、電子部品装置。
【請求項9】
素子を支持部材上に配置する工程と、
前記素子を請求項1又は請求項2に記載の封止用樹脂組成物で封止する工程と、
を含む、電子部品装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、封止用樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂及び硬化剤を含む封止用樹脂組成物は、電子部品用途において広く用いられている。
例えば、特許文献1には、合成シリカと、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂とを含む封止用樹脂組成物が開示されている。
【0003】
ところで、通信のために発信された電波が誘電体において熱変換されることで発生する伝送損失の量は、周波数と比誘電率の平方根と誘電正接との積として表される。つまり伝送信号は周波数に比例して熱に変わりやすいので、伝送損失を抑制するために高周波帯ほど通信部材の材料に低誘電特性が要求される。
近年、封止用樹脂組成物の硬化物には、比誘電率及び誘電正接が低いことが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59-23403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示一実施形態が解決しようとする課題は、硬化物の比誘電率及び誘電正接が低い封止用樹脂組成物、これを用いて封止された電子部品装置、及びこれを用いて封止することを含む電子部品装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1> エポキシ樹脂と、硬化剤と、ゾルゲルシリカと、ゾルゲルシリカ以外の無機充填材とを含む、封止用樹脂組成物。
<2> 上記ゾルゲルシリカの形状が粒子であり、且つ平均粒径が、0.1μm~20μmである、上記<1>に記載の封止用樹脂組成物。
<3> 上記封止用樹脂組成物の総質量に対する上記ゾルゲルシリカの含有率が、1質量%~25質量%である、上記<1>又は<2>に記載の封止用樹脂組成物。
<4> 上記ゾルゲルシリカ及び上記ゾルゲルシリカ以外の無機充填材の含有率の和に対する、上記ゾルゲルシリカの含有率の比が、0.10~0.30である、上記<1>~<3>のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物。
<5> 上記ゾルゲルシリカ及び上記ゾルゲルシリカ以外の無機充填材の総体積に対する、平均粒径が1μm~10μmである上記ゾルゲルシリカ及び平均粒径が1μm~10μmである上記ゾルゲルシリカ以外の無機充填材の含有率が55体積%~85体積%となる、粒度分布を有する上記<1>~<4>のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物。
<6> 上記ゾルゲルシリカ以外の無機充填材が、シリカフィラーを含む、上記<1>~<5>のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物。
<7> 上記硬化剤が、活性エステル硬化剤を含む、上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物。
<8> 支持部材と、
上記支持部材上に配置された素子と、
上記素子を封止している上記<1>~<7>のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物の硬化物と、
を備える、電子部品装置。
<9> 素子を支持部材上に配置する工程と、
上記素子を上記<1>~<7>のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物で封止する工程と、
を含む、電子部品装置の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、硬化物の比誘電率及び誘電正接が低い封止用樹脂組成物、これを用いて封止された電子部品装置、及びこれを用いて封止することを含む電子部品装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明表した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0009】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。 本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい
また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の平均粒径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
本開示において、「ゾルゲルシリカ」とは、ゾルゲル法を利用することにより作製されるシリカを意味する。
【0010】
[封止用樹脂組成物]
本開示の封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、ゾルゲルシリカと、ゾルゲルシリカ以外の無機充填材を含む。
【0011】
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂は、分子中にエポキシ基を有するものであればその種類は特に制限されない。
【0012】
エポキシ樹脂として具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものであるノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等);上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂;上記フェノール化合物及びナフトール化合物と、アルデヒド化合物とを酸性触媒下で共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものである共重合型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のジグリシジルエーテルであるジフェニルメタン型エポキシ樹脂;アルキル置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン系フェノール化合物のジグリシジルエーテルであるスチルベン型エポキシ樹脂;ビスフェノールS等のジグリシジルエーテルである硫黄原子含有エポキシ樹脂;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸化合物のグリシジルエステルであるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アニリン、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したものであるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール化合物の共縮合樹脂をエポキシ化したものであるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;分子内のオレフィン結合をエポキシ化したものであるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるパラキシリレン変性エポキシ樹脂;メタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるメタキシリレン変性エポキシ樹脂;テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるテルペン変性エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルである多環芳香環変性エポキシ樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるナフタレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるアラルキル型エポキシ樹脂;などが挙げられる。さらにはアクリル樹脂のエポキシ化物等もエポキシ樹脂として挙げられる。
これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
エポキシ樹脂のエポキシ当量(分子量/エポキシ基数)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、100g/eq~1000g/eqであることが好ましく、150g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K 7236:2009に準じた方法で測定される値とする。
【0014】
エポキシ樹脂が固体である場合、エポキシ樹脂の軟化点又は融点は特に制限されない。
成形性と耐リフロー性の観点からは40℃~180℃であることが好ましく、封止用樹脂組成物の調製の際の取扱い性の観点からは50℃~130℃であることがより好ましい。
エポキシ樹脂の融点又は軟化点は、示差走査熱量測定(DSC)又はJIS K 7234:1986に準じた方法(環球法)で測定される値とする。
【0015】
封止用樹脂組成物の全質量に対するエポキシ樹脂の含有率は、強度、流動性、耐熱性、成形性等の観点から、0.5質量%~50質量%であることが好ましく、2質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0016】
<硬化剤>
硬化剤の種類は特に限定されるものではなく、活性エステル硬化剤、フェノール硬化剤、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤及びブロックイソシアネート硬化剤からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。硬化物の誘電正接を低下させる観点からは、硬化剤は、活性エステル硬化剤を含むことが好ましい。
また、硬化物中の極性基は硬化物の吸水性を高めるところ、硬化剤として活性エステル硬化剤を用いることによって硬化物の極性基濃度を抑えることができ、硬化物の吸水性を抑制することができる。そして、硬化物の吸水性を抑制すること、つまりは極性分子であるHOの含有量を抑制することにより、硬化物の誘電正接を更に低く抑えることができる。
【0017】
活性エステル硬化剤は、エポキシ基と反応するエステル基を分子中に1個以上有する化合物であればその種類は特に制限されない。
【0018】
活性エステル硬化剤としては、フェノールエステル化合物、チオフェノールエステル化合物、N-ヒドロキシアミンエステル化合物、複素環ヒドロキシ化合物のエステル化物等が挙げられる。
【0019】
活性エステル硬化剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸の少なくとも1種と脂肪族ヒドロキシ化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物の少なくとも1種とから得られるエステル化合物が挙げられる。脂肪族化合物を重縮合の成分とするエステル化合物は、脂肪族鎖を有することによりエポキシ樹脂との相溶性に優れる傾向にある。芳香族化合物を重縮合の成分とするエステル化合物は、芳香環を有することにより耐熱性に優れる傾向にある。
【0020】
活性エステル硬化剤の具体例としては、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基との縮合反応にて得られる芳香族エステルが挙げられる。中でも、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルプロパン、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン酸等の芳香環の水素原子の2~4個をカルボキシ基で置換した芳香族カルボン酸成分と、前記した芳香環の水素原子の1個を水酸基で置換した1価フェノールと、前記した芳香環の水素原子の2~4個を水酸基で置換した多価フェノールとの混合物を原材料として、芳香族カルボン酸とフェノール性水酸基との縮合反応にて得られる芳香族エステルが好ましい。すなわち、上記芳香族カルボン酸成分由来の構造単位と上記1価フェノール由来の構造単位と上記多価フェノール由来の構造単位とを有する芳香族エステルが好ましい。
【0021】
活性エステル硬化剤の具体例としては、特開2012-246367号公報に記載されている、脂肪族環状炭化水素基を介してフェノール化合物が結節された分子構造を有するフェノール樹脂と、芳香族ジカルボン酸又はそのハライドと、芳香族モノヒドロキシ化合物とを反応させて得られる構造を有する活性エステル樹脂が挙げられる。当該活性エステル樹脂としては、下記の構造式(1)で表される化合物が好ましい。
【0022】
【化1】
【0023】
構造式(1)中、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、Xはベンゼン環、ナフタレン環、炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゼン環若しくはナフタレン環、又はビフェニル基であり、Yはベンゼン環、ナフタレン環、又は炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゼン環若しくはナフタレン環であり、kは0又は1であり、nは繰り返し数の平均を表し0.25~1.5である。
【0024】
構造式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の例示化合物(1-1)~(1-10)が挙げられる。構造式中のt-Buは、tert-ブチル基である。
【0025】
【化2】

【0026】
【化3】

【0027】
活性エステル化合物の別の具体例としては、特開2014-114352号公報に記載されている、下記の構造式(2)で表される化合物及び下記の構造式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0028】
【化4】

【0029】
構造式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、Zはベンゾイル基、ナフトイル基、炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゾイル基又はナフトイル基、及び炭素数2~6のアシル基からなる群から選ばれるエステル形成構造部位(z1)、又は水素原子(z2)であり、Zのうち少なくとも1個はエステル形成構造部位(z1)である。
【0030】
構造式(3)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、Zはベンゾイル基、ナフトイル基、炭素数1~4のアルキル基で置換されたベンゾイル基又はナフトイル基、及び炭素数2~6のアシル基からなる群から選ばれるエステル形成構造部位(z1)、又は水素原子(z2)であり、Zのうち少なくとも1個はエステル形成構造部位(z1)である。
【0031】
構造式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の例示化合物(2-1)~(2-6)が挙げられる。
【0032】
【化5】

【0033】
構造式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の例示化合物(3-1)~(3-6)が挙げられる。
【0034】
【化6】

【0035】
活性エステル硬化剤としては、市販品を用いてもよい。活性エステル硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル硬化剤として「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」(DIC株式会社製);芳香族構造を含む活性エステル硬化剤として「EXB9416-70BK」、「EXB-8」、「EXB-9425」(DIC株式会社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル株式会社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル株式会社製);等が挙げられる。
【0036】
活性エステル硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
活性エステル硬化剤のエステル当量は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、150g/eq~400g/eqが好ましく、170g/eq~300g/eqがより好ましく、200g/eq~250g/eqが更に好ましい。
活性エステル硬化剤のエステル当量は、JIS K 0070:1992に準じた方法により測定される値とする。
【0038】
エポキシ樹脂と活性エステル硬化剤との当量比(エステル基/エポキシ基)は、硬化物の誘電正接を低く抑える観点からは、0.9以上が好ましく、0.95以上がより好ましく、0.97以上が更に好ましい。
エポキシ樹脂と活性エステル硬化剤との当量比(エステル基/エポキシ基)は、活性エステル化合物の未反応分を少なく抑える観点からは、1.1以下が好ましく、1.05以下がより好ましく、1.03以下が更に好ましい。
【0039】
フェノール硬化剤として具体的には、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の多価フェノール化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル等とから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂、メタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジシクロペンタジエンとから共重合により合成されるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂及びジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂;これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂などが挙げられる。これらのフェノール硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
活性エステル硬化剤以外の硬化剤の官能基当量(フェノール硬化剤の場合は水酸基当量)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、70g/eq~1000g/eqであることが好ましく、80g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
活性エステル硬化剤以外の硬化剤の官能基当量(フェノール硬化剤の場合は水酸基当量)は、JIS K 0070:1992に準じた方法により測定される値とする。
【0041】
硬化剤の軟化点又は融点は、特に制限されない。成形性と耐リフロー性の観点からは、40℃~180℃であることが好ましく、封止用樹脂組成物の製造時における取扱い性の観点からは、50℃~130℃であることがより好ましい。
硬化剤の融点又は軟化点は、エポキシ樹脂の融点又は軟化点と同様にして測定される値とする。
【0042】
エポキシ樹脂と硬化剤との当量比、すなわちエポキシ樹脂中の官能基数に対する硬化剤中の官能基数の比(硬化剤中の官能基数/エポキシ樹脂中の官能基数)は、特に制限されない。それぞれの未反応分を少なく抑える観点からは、0.5~2.0の範囲に設定されることが好ましく、0.6~1.3の範囲に設定されることがより好ましい。成形性と耐リフロー性の観点からは、0.8~1.2の範囲に設定されることが更に好ましい。
【0043】
硬化剤の総質量に対する活性エステル硬化剤の含有率は、硬化物の誘電正接を低く抑える観点から、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
封止用樹脂組成物の総質量に対する硬化剤の含有率は、強度、流動性、耐熱性、成形性等の観点から、5質量%~20質量%であることが好ましく、7質量%~15質量%であることがより好ましい。
【0044】
<ゾルゲルシリカ>
ゾルゲルシリカの形状は、特に限定されず、粒子状であってもよく、繊維状等の非粒子状であってもよい。流動性の観点からは、粒子状であることが好ましい。
【0045】
ゾルゲルシリカの形状が粒子状である場合、硬化物の比誘電率及び誘電正接、封止用樹脂組成物の流動性等の観点から、その平均粒径は、0.1μm~20μmであることが好ましく、0.3μm~15μmであることがより好ましく、0.5μm~10μmであることが更に好ましく、1μm~10μmであることが特に好ましく、1μm~7μmであることが最も好ましい。
【0046】
硬化物の比誘電率及び誘電正接、封止用樹脂組成物の流動性等の観点から、ゾルゲルシリカの比重は、1.80~2.30であることが好ましく、2.10~2.25であることがより好ましい。
本開示において、ゾルゲルシリカの比重は、アルキメデス法により算出する。具体的には、以下のようにして、ゾルゲルシリカの比重を算出する。
ゾルゲルシリカの質量Aを測定した後、ゾルゲルシリカに対する濡れ性が良好な液体(例えば、水、エタノール)を用いて、ゾルゲルシリカの表面を濡らし、十分に脱気する。脱気後、ゾルゲルシリカの質量Bを測定する。質量A及び質量Bの差から、ゾルゲルシリカの体積を計算し、質量との関係から比重を算出する。
【0047】
ゾルゲルシリカは、従来公知の方法により作製したものを使用してもよく、市販されるものを使用してもよい。
従来公知の方法としては、アルカリ触媒が含まれるアルコールの存在下に、原料であるテトラアルコキシシランを供給しつつ、テトラアルコキシシランを反応させる方法などが挙げられる。
【0048】
封止用樹脂組成物の流動性、並びに硬化物の比誘電率及び誘電正接の観点から、封止用樹脂組成物の総質量に対するゾルゲルシリカの含有率は、1質量%~25質量%であることが好ましく、5質量%~20質量%であることがより好ましく、8質量%~18質量%であることが更に好ましい。
【0049】
流動性の観点から、本開示の封止用樹脂組成物は、ゾルゲルシリカ及びゾルゲルシリカ以外の無機充填材の総体積に対する、平均粒径が1μm~10μmであるゾルゲルシリカ及び平均粒径が1μm~10μmであるゾルゲルシリカ以外の無機充填材の含有率が、好ましくは55体積%~85体積%、より好ましくは60体積%~80体積%、更に好ましくは65体積%~76体積%となる、粒度分布を有する。
【0050】
本開示において、平均粒径及び粒度分布は、以下のようにして測定する。
溶媒(例えば、水)に、測定対象の無機充填材を1質量%~5質量%の範囲内で界面活性剤0.01質量%~8質量%とともに添加し、110Wの超音波洗浄機で30秒~5分間振動し、溶媒中において無機充填材を分散させ、分散液を得る。
約3mLの分散液を測定セルに注入し、25℃の環境において、体積基準の粒度分布を測定する。
測定装置としては、レーザー回折式粒度分布計(例えば、株式会社堀場製作所、LA920)を用いることができる。
平均粒径は、体積基準の粒度分布において小径側からの累積が50%となるときの粒子径(D50%)として求められる。
なお、屈折率はシリカの屈折率(溶媒が水の場合は相対屈折率1.1)を用いる。
【0051】
封止用樹脂組成物の流動性、並びに硬化物の比誘電率及び誘電正接の観点から、ゾルゲルシリカ及びゾルゲルシリカ以外の無機充填材の含有率の和に対する、ゾルゲルシリカの含有率の比は、体積基準で、(ゾルゲルシリカの含有率/ゾルゲルシリカ及びゾルゲルシリカ以外の無機充填材の含有率の和)は、0.10~0.30であることが好ましく、0.11~0.25であることがより好ましく、0.12~0.23であることが更に好ましい。
【0052】
<ゾルゲルシリカ以外の無機充填材>
本開示の封止用樹脂組成物は、ゾルゲルシリカ以外の無機充填材を含む。
ゾルゲルシリカ以外の無機充填材としては、ゾルゲル法以外の方法により作製されるシリカフィラー(例えば、溶融シリカ及び結晶シリカ)、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の無機材料が挙げられる。難燃効果を有する無機充填材を用いてもよい。難燃効果を有する無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛などが挙げられる。
上記した中でも、硬化物の比誘電率の観点からは、無機充填材は、ゾルゲル法以外の方法により作製されるシリカフィラー(以下、単にシリカフィラーともいう。)を含むことが好ましい。
【0053】
無機充填材の形状は、特に限定されず、粒子状であってもよく、繊維状等の非粒子状であってもよい。
本開示の封止用樹脂組成物は、無機充填材を2種以上は含んでいてもよい。
【0054】
無機充填材の形状が粒子状である場合、平均粒径は、0.2μm~100μmであることが好ましく、0.5μm~50μmであることがより好ましく、0.5μm~10μmであることが更に好ましく、1μm~10μmであることが特に好ましく、1μm~7μmであることが最も好ましい。
平均粒径が0.2μm以上であると、封止用樹脂組成物の粘度の上昇が抑制される傾向にある。平均粒径が100μm以下であると、充填性が向上する傾向にある。
【0055】
ゾルゲルシリカ以外の無機充填材の総質量に対するシリカフィラーの含有率は、成形収縮率等の観点から、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
成形収縮率等の観点から、封止用樹脂組成物の総質量に対するゾルゲルシリカ以外の無機充填材の含有率は、50質量%~80質量%であることが好ましく、60質量%~75質量%であることがより好ましい。
【0056】
<硬化促進剤>
本開示の封止用樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤の種類は特に制限されず、エポキシ樹脂又は硬化剤の種類、封止用樹脂組成物の所望の特性等に応じて選択できる。
【0057】
硬化促進剤としては、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)等のジアザビシクロアルケン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等の環状アミジン化合物;前記環状アミジン化合物の誘導体;前記環状アミジン化合物又はその誘導体のフェノールノボラック塩;これらの化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;DBUのテトラフェニルボレート塩、DBNのテトラフェニルボレート塩、2-エチル-4-メチルイミダゾールのテトラフェニルボレート塩、N-メチルモルホリンのテトラフェニルボレート塩等の環状アミジニウム化合物;ピリジン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物;前記三級アミン化合物の誘導体;酢酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、リン酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、酢酸テトラエチルアンモニウム、安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム等のアンモニウム塩化合物;トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p-トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の三級ホスフィン;前記三級ホスフィンと有機ボロン類との錯体等のホスフィン化合物;前記三級ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;前記三級ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と4-ブロモフェノール、3-ブロモフェノール、2-ブロモフェノール、4-クロロフェノール、3-クロロフェノール、2-クロロフェノール、4-ヨウ化フェノール、3-ヨウ化フェノール、2-ヨウ化フェノール、4-ブロモ-2-メチルフェノール、4-ブロモ-3-メチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジメチルフェノール、4-ブロモ-3,5-ジメチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-クロロ-1-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトール、6-ブロモ-2-ナフトール、4-ブロモ-4’-ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる、分子内分極を有する化合物;テトラフェニルホスホニウム等のテトラ置換ホスホニウム、テトラ-p-トリルボレート等のホウ素原子に結合したフェニル基がないテトラ置換ホスホニウム及びテトラ置換ボレート;テトラフェニルホスホニウムとフェノール化合物との塩;テトラアルキルホスホニウムと芳香族カルボン酸無水物の部分加水分解物との塩などが挙げられる。
【0058】
本開示の封止用樹脂組成物が硬化促進剤を含む場合、その量は、樹脂成分100質量部(エポキシ樹脂と硬化剤の合計量)に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましい。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.1質量部以上であると、短時間で良好に硬化する傾向にある。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して30質量部以下であると、硬化速度が速すぎず良好な成形品が得られる傾向にある。
【0059】
<各種添加剤>
本開示の封止用樹脂組成物は、上述の成分に加えて、以下に例示するカップリング剤、イオン交換体、離型剤、難燃剤、着色剤、可塑剤等の各種添加剤を含んでもよい。封止用樹脂組成物は、以下に例示する添加剤以外にも必要に応じて当技術分野で周知の各種添加剤を含んでもよい。
【0060】
<カップリング剤>
封止用樹脂組成物は、カップリング剤を含んでもよい。樹脂成分と無機充填材との接着性を高める観点からは、封止用樹脂組成物はカップリング剤を含むことが好ましい。カップリング剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、ジシラザン等のシラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウム/ジルコニウム系化合物などの公知のカップリング剤が挙げられる。
【0061】
封止用樹脂組成物がカップリング剤を含む場合、カップリング剤の量は、無機充填材100質量部に対して0.05質量部~5質量部であることが好ましく、0.1質量部~2.5質量部であることがより好ましい。カップリング剤の量が無機充填材100質量部に対して0.05質量部以上であると、フレームとの接着性がより向上する傾向にある。カップリング剤の量が無機充填材100質量部に対して5質量部以下であると、パッケージの成形性がより向上する傾向にある。
【0062】
<イオン交換体>
封止用樹脂組成物は、イオン交換体を含んでもよい。封止用樹脂組成物は、封止される素子を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、イオン交換体を含むことが好ましい。イオン交換体は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハイドロタルサイト化合物、並びにマグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の含水酸化物等が挙げられる。イオン交換体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、下記一般式(A)で表されるハイドロタルサイトが好ましい。
【0063】
Mg(1-X)Al(OH)(COX/2・mHO……(A)
(0<X≦0.5、mは正の数)
【0064】
封止用樹脂組成物がイオン交換体を含む場合、その含有量は、ハロゲンイオン等のイオンを捕捉するのに充分な量であれば特に制限はない。例えば、樹脂成分100質量部(エポキシ樹脂と硬化剤の合計量)に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~10質量部であることがより好ましい。
【0065】
<離型剤>
封止用樹脂組成物は、成形時における金型との良好な離型性を得る観点から、離型剤を含んでもよい。離型剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックスなどが挙げられる。離型剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
封止用樹脂組成物が離型剤を含む場合、その量は樹脂成分100質量部(エポキシ樹脂と硬化剤の合計量)に対して0.01質量部~10質量部が好ましく、0.1質量部~5質量部がより好ましい。離型剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.01質量部以上であると、離型性が充分に得られる傾向にある。10質量部以下であると、より良好な接着性が得られる傾向にある。
【0067】
<難燃剤>
封止用樹脂組成物は、難燃剤を含んでもよい。難燃剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む有機又は無機の化合物、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
封止用樹脂組成物が難燃剤を含む場合、その量は、所望の難燃効果を得るのに充分な量であれば特に制限されない。例えば、樹脂成分100質量部(エポキシ樹脂と硬化剤の合計量)に対して1質量部~30質量部であることが好ましく、2質量部~20質量部であることがより好ましい。
【0069】
<着色剤>
封止用樹脂組成物は、着色剤を含んでもよい。着色剤としてはカーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を挙げることができる。着色剤の含有量は目的等に応じて適宜選択できる。着色剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
[封止用樹脂組成物の調製方法]
封止用樹脂組成物の調製方法は、特に制限されない。一般的な手法としては、所定の配合量の成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練し、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。より具体的には、例えば、上述した成分の所定量を均一に攪拌及び混合し、予め70℃~140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練し、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。
【0071】
封止用樹脂組成物は、常温常圧下(例えば、25℃、大気圧下)において固体であることが好ましい。封止用樹脂組成物が固体である場合の形状は特に制限されず、粉状、粒状、タブレット状等が挙げられる。封止用樹脂組成物がタブレット状である場合の寸法及び質量は、パッケージの成形条件に合うような寸法及び質量となるようにすることが取り扱い性の観点から好ましい。
【0072】
[電子部品装置]
本開示の電子部品装置は、支持部材と、支持部材上に配置された素子と、素子を封止している本開示の封止用樹脂組成物の硬化物と、を備える。
【0073】
電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ、有機基板等の支持部材に、素子(半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子など)を搭載して得られた素子部を封止用樹脂組成物で封止したものが挙げられる。
より具体的には、リードフレーム上に素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部とをワイヤボンディング、バンプ等で接続した後、封止用樹脂組成物を用いてトランスファ成形等によって封止した構造を有するDIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC;テープキャリアにバンプで接続した素子を封止用樹脂組成物で封止した構造を有するTCP(Tape Carrier Package);支持部材上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した素子を、封止用樹脂組成物で封止した構造を有するCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール等;裏面に配線板接続用の端子を形成した支持部材の表面に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と支持部材に形成された配線とを接続した後、封止用樹脂組成物で素子を封止した構造を有するBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、MCP(Multi Chip Package)などが挙げられる。また、プリント配線板においても封止用樹脂組成物を好適に使用することができる。
【0074】
[電子部品装置の製造方法]
本開示の電子部品装置の製造方法は、素子を支持部材上に配置する工程と、素子を本開示の封止用樹脂組成物で封止する工程と、を含む。
【0075】
上記各工程を実施する方法は特に制限されず、一般的な手法により行うことができる。また、電子部品装置の製造に使用する支持部材及び素子の種類は特に制限されず、電子部品装置の製造に一般的に用いられる支持部材及び素子を使用できる。
【0076】
本開示の封止用樹脂組成物を用いて素子を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法、インジェクション成形法、圧縮成形法等が挙げられる。これらの中では、低圧トランスファ成形法が一般的である。
【実施例0077】
以下に、本開示を実施例により具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。また、表中の数値は特に断りのない限り「質量部」を意味する。
【0078】
(実施例1~4及び比較例1)
下記に示す成分を表1に示す配合割合(質量部)で混合し、実施例と比較例の封止用樹脂組成物を調製した。この封止用樹脂組成物は、常温常圧下において固体であった。また、実施例及び比較例の封止用樹脂組成物全体に対するゾルゲルシリカ及びゾルゲルシリカ以外の無機充填材の体積割合の和はいずれも72体積%とした。
また、実施例においては、ゾルゲルシリカ及びゾルゲルシリカ以外の無機充填材の含有率の和に対する、ゾルゲルシリカの含有率の比(表1においては、ゾルゲルシリカの含有率/ゾルゲルシリカ及びゾルゲルシリカ以外の無機充填材の含有率の和(体積基準)と記載する。)を求め、表1に示す。
さらに、実施例においては、ゾルゲルシリカ及びゾルゲルシリカ以外の無機充填材の総体積に対する、平均粒径が1μm~10μmであるゾルゲルシリカ及び平均粒径が1μm~10μmであるゾルゲルシリカ以外の無機充填材の含有率(体積%)を求め、表1に示す(表1においては、平均粒径が1μm~10μmであるゾルゲルシリカ及び平均粒径が1μm~10μmであるゾルゲルシリカ以外の無機充填材の含有率(体積%)と記載する。)。
【0079】
・エポキシ樹脂A:トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、エポキシ当量169g/eq
・エポキシ樹脂B:ビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシ当量192g/eq
・硬化剤:活性エステル硬化剤
・ゾルゲルシリカA:平均粒径2.4μm、比重2.20
・ゾルゲルシリカB:平均粒径5.0μm、比重2.20
・ゾルゲルシリカC:平均粒径0.7μm、比重2.20
・ゾルゲルシリカD:平均粒径1.0μm、比重2.20
・ゾルゲルシリカ以外の無機充填材A:シリカフィラー、平均粒径4.0μm、比重2.20、粉砕した原料珪石を高温の溶融炉に投入し、表面張力によって球状化させる溶融法により合成したシリカ
・ゾルゲルシリカ以外の無機充填材B:シリカフィラー、平均粒径0.7μm、比重2.20、金属粉末を酸素下で分散し、酸化させ、その反応熱で金属及び酸化物を蒸気または液体にし、それを冷却することで合成した球状シリカ
・硬化促進剤:トリ-n-ブチルホスフィンとp-ベンゾキノンとの付加物
・カップリング剤A:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン
・カップリング剤B:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
・着色剤:カーボンブラック
・離型剤:モンタン酸エステルワックス
【0080】
<<比誘電率Dk及び誘電正接Dfの測定>>
封止用樹脂組成物を真空ハンドプレス機に仕込み、金型温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間600秒の条件で成形し、後硬化を180℃で6時間行い、板状の硬化物(縦12.5mm、横25mm、厚さ0.2mm)を得た。
この板状の硬化物を試験片として、誘電率測定装置(アジレント・テクノロジー社、品名「ネットワークアナライザN5227A」)を用いて、温度25±3℃下、約60GHzでの比誘電率Dkと誘電正接Dfを測定し、表1にまとめた。
また、誘電損失の計算式には、Dk1/2とDfとの積(表1においては、Dk1/2・Dfと記載する。)が包含されており、上記結果から積を算出し、表1にまとめた。
【0081】
<<成形収縮率測定>>
封止用樹脂組成物を、トランスファ成形機を用い、成形温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で成形し、板状の成形品(縦127mm、横12.7mm、厚さ6.4mm)を得た。
予め測定した25℃における金型のキャビティの長さDと、室温(25℃)における成形品の長さdと、から下記式により成形収縮率A(%)を求めた。結果を表1にまとめた。
成形収縮率A(%)=((D-d)/D)×100
【0082】
封止用樹脂組成物を、トランスファ成形機を用い、成形温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で成形し、175℃で5時間後硬化を行い、板状の硬化物(縦127mm、横12.7mm、厚さ6.4mm)を得た。
予め測定した25℃における金型のキャビティの長さDと、室温(25℃)における硬化物の長さdと、から下記式により成形収縮率B(%)を求めた。結果を表1にまとめた。
成形収縮率B(%)=((D-d)/D)×100
【0083】
<<曲げ強さ測定>>
封止用樹脂組成物を、トランスファ成形機を用い、成形温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で成形し、175℃で5時間後硬化を行い、板状の硬化物(縦127mm、横12.7mm、厚さ4mm)を得た。
上記硬化物を用いオートグラフ(株式会社島津製作所製、曲げ試験機AG-500)により曲げ強さ(MPa)を測定し、結果を表1にまとめた。
【0084】
<<熱時硬度測定>>
封止用樹脂組成物を、トランスファ成形機及び円板金型を用いて、成形温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で成形し、円板の成形物を得た。
上記硬化物について、ショアD硬度計(高分子計器株式会社製)を用いて熱時硬度(25℃)を測定し、結果を表1にまとめた。
【0085】
【表1】

【0086】
表1から明らかなように、実施例の封止用樹脂組成物は、比較例の封止用樹脂組成物に比べて、硬化物の比誘電率及び誘電正接が低いことがわかる。
【0087】
実施例の封止用樹脂組成物について、以下の流動性評価を実施した。
EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、封止用樹脂組成物を金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で成形し、流動距離(cm)を求めた。実施例1~実施例4の封止用樹脂組成物の流動距離は、120cm、128cm、126cm、106cmであり、優れた流動性を示した。