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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159179
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】変形計測方法及びそのセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/22 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G01L1/22 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075011
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】金澤 周介
(72)【発明者】
【氏名】武居 淳
(72)【発明者】
【氏名】植村 聖
(72)【発明者】
【氏名】駒▲崎▼ 友亮
【テーマコード(参考)】
2F049
【Fターム(参考)】
2F049BA04
2F049CA07
(57)【要約】
【課題】 切り紙構造を与えたシート体を用いた変形計測センサを用いて被測定部の大変形による変形状態の計測を精度良く与える測定方法及びそのセンサの提供。
【解決手段】 センサは、可撓性を有する略矩形の樹脂フィルムからなり長手方向の両端部の間で幅方向に伸びる切り込みを長手方向に周期的に設けられ、樹脂フィルムの同一面且つ長手方向に隣接する切り込み同士の間部分のそれぞれにひずみ応答性抵抗膜を与えられる。この両端部について被計測部を跨いで固定しておき、被計測部の変形に伴って両端部を長手方向に沿って離間させたときに切り込みが開口し間部分を回転変形させるとともに、間部分の圧縮変形又は引っ張り変形のいずれかとなる位置にのみ与えられたひずみ応答性抵抗膜の抵抗変化から被計測部の変形状態の計測を与える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測部の変形に対応して変形し該被計測部の変形状態の計測を与える変形計測センサを用いた変形計測方法であって、
前記変形計測センサは、可撓性を有する略矩形の樹脂フィルムからなり長手方向の両端部の間において幅方向に伸びる切り込みを前記長手方向に周期的に設けられ、前記樹脂フィルムの同一面且つ前記長手方向に隣接する前記切り込み同士の間部分のそれぞれにひずみ応答性抵抗膜を与えられており、
前記変形計測センサの前記両端部について前記被計測部を跨いで固定しておき、前記被計測部の変形に伴って前記両端部を前記長手方向に沿って離間させたときに前記切り込みが開口し前記間部分を回転変形させるとともに、前記間部分のそれぞれの圧縮変形又は引っ張り変形のいずれかとなる位置にのみ与えられた前記ひずみ応答性抵抗膜の抵抗変化から前記被計測部の変形状態の計測を与えることを特徴とする変形計測方法。
【請求項2】
前記切り込みは、前記幅方向の中心線へ向けて両側端部から切り込んだ2つの切断部からなる第1列と、前記中心線から前記樹脂フィルムの両側端部へ向けて切り込んだ1つの切断部からなる第2列と、を前記長手方向に交互に等間隔で与えてなることを特徴とする請求項1記載の変形計測方法。
【請求項3】
被計測部の変形に対応して変形し該被計測部の変形状態の計測を与える変形計測センサであって、
前記変形計測センサは、可撓性を有する略矩形の樹脂フィルムからなり長手方向の両端部の間において幅方向に伸びる切り込みを前記長手方向に周期的に設けられ、前記樹脂フィルムの同一面且つ前記長手方向に隣接する前記切り込み同士の間部分のそれぞれにひずみ応答性抵抗膜を与えられており、
前記変形計測センサの前記両端部について前記被計測部を跨いで固定しておき、前記被計測部の変形に伴って前記両端部を前記長手方向に沿って離間させたときに前記切り込みが開口し前記間部分を回転変形させるとともに、前記間部分のそれぞれの圧縮変形又は引っ張り変形のいずれかとなる位置にのみ前記ひずみ応答性抵抗膜を与えられていることを特徴とする変形計測センサ。
【請求項4】
前記切り込みは、前記幅方向の中心線へ向けて両側端部から切り込んだ2つの切断部からなる第1列と、前記中心線から前記樹脂フィルムの両側端部へ向けて切り込んだ1つの切断部からなる第2列と、を前記長手方向に交互に等間隔で与えてなることを特徴とする請求項3記載の変形計測センサ。
【請求項5】
前記ひずみ応答性抵抗膜は、前記長手方向に沿って前記第1列から前記第2列への前記間部分であって前記中心線上に、又は、前記長手方向に沿って前記第2列から前記第1列への前記間部分であって前記中心線上に、与えられていることを特徴とする請求項4記載の変形計測センサ。
【請求項6】
それぞれの前記間部分に与えられた前記ひずみ応答性抵抗膜は、並列接続されていることを特徴とする請求項5記載の変形計測センサ。
【請求項7】
前記ひずみ応答性抵抗膜は、前記長手方向に沿って前記第1列から前記第2列への前記間部分であって前記中心線を挟んだ幅方向両側のそれぞれに、又は、前記長手方向に沿って前記第2列から前記第1列への前記間部分であって前記中心線を挟んだ幅方向両側のそれぞれに、与えられていることを特徴とする請求項4記載の変形計測センサ。
【請求項8】
前記ひずみ応答性抵抗膜は、前記長手方向に沿って前記第1列から前記第2列への前記間部分であって前記中心線上に、且つ、前記長手方向に沿って前記第2列から前記第1列への前記間部分であって前記中心線を挟んだ幅方向両側のそれぞれに、与えられていることを特徴とする請求項4記載の変形計測センサ。
【請求項9】
前記間部分で前記中心線を挟んだ幅方向両側のそれぞれに与えられた前記ひずみ応答性抵抗膜は直列接続され、それぞれの前記間部分に与えられた前記ひずみ応答性抵抗膜は並列接続されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の変形計測センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切り紙構造を与えたシート体を用いた変形計測方法及びそのセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
紙に規則的な切り込みを入れて引き延ばすことで切り込みが開くとともに、回転を含む変形が部分的に生じて立体構造を得られる。このような、いわゆる「切り紙構造」と称される構造は、ボトルなどを保護するための緩衝材として用いられている。また、回転を含む立体部分の立ち上がり構造をデバイスに利用することや、切り込みの開口による大変形をばねとして利用した力学センサなども提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、切り紙構造を用いた力学センサが開示されている。幅方向に延びる切り込みをシートの長さ方向に沿って互い違いとなるように与えて、シートに荷重を負荷して切り込みが開口したときの引き延ばし荷重をひずみゲージで測定するとしている。所定の切り込みを与えた場合のシートの変形を荷重に対して求めておくことでシートの特定箇所のひずみの計測値から荷重を求めることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/179716号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
切り込みの開口による大変形をばねとして利用した切り紙構造を与えたシート体からなる力学センサは、被測定部の大変形に対応して変形する。かかる変形を例えば正負いずれのひずみに対しても抵抗値を変化させ得るひずみ応答性抵抗膜の如きひずみセンサをシート体表面に与えておくことで抵抗値変化から該被計測部の変形状態の計測を与え得る。一方で、大変形による切り込みの開口は安定せず、結果として、シート体表面のひずみセンサからの信号も安定せず、十分に被計測部の大変形による変形状態の計測を精度良く得られなかった。
【0006】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、切り紙構造を与えたシート体を用いた変形計測センサを用いて被測定部の大変形による変形状態の計測を精度良く与える測定方法及びそのセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による計測方法は、被計測部の変形に対応して変形し該被計測部の変形状態の計測を与える変形計測センサを用いた変形計測方法であって、前記変形計測センサは、可撓性を有する略矩形の樹脂フィルムからなり長手方向の両端部の間において幅方向に伸びる切り込みを前記長手方向に周期的に設けられ、前記樹脂フィルムの同一面且つ前記長手方向に隣接する前記切り込み同士の間部分のそれぞれにひずみ応答性抵抗膜を与えられており、前記変形計測センサの前記両端部について前記被計測部を跨いで固定しておき、前記被計測部の変形に伴って前記両端部を前記長手方向に沿って離間させたときに前記切り込みが開口し前記間部分を回転変形させるとともに、前記間部分のそれぞれの圧縮変形又は引っ張り変形のいずれかとなる位置にのみ与えられた前記ひずみ応答性抵抗膜の抵抗変化から前記被計測部の変形状態の計測を与えることを特徴とする。
【0008】
かかる特徴によれば、被測定部の大変形による変形状態の計測を精度良く与え得るのである。
【0009】
上記した発明において、前記切り込みは、前記幅方向の中心線へ向けて両側端部から切り込んだ2つの切断部からなる第1列と、前記中心線から前記樹脂フィルムの両側端部へ向けて切り込んだ1つの切断部からなる第2列と、を前記長手方向に交互に等間隔で与えてなることを特徴としてもよい。かかる特徴によれば、被測定部の大変形による変形状態の計測を精度良く与え得るのである。かかる特徴によれば、シート体全体を比較的均一に大変形させ得て、被測定部の大変形による変形状態の計測を精度良く与え得るのである。
【0010】
また、本発明による変形計測センサは、被計測部の変形に対応して変形し該被計測部の変形状態の計測を与える変形計測センサであって、前記変形計測センサは、可撓性を有する略矩形の樹脂フィルムからなり長手方向の両端部の間において幅方向に伸びる切り込みを前記長手方向に周期的に設けられ、前記樹脂フィルムの同一面且つ前記長手方向に隣接する前記切り込み同士の間部分のそれぞれにひずみ応答性抵抗膜を与えられており、前記変形計測センサの前記両端部について前記被計測部を跨いで固定しておき、前記被計測部の変形に伴って前記両端部を前記長手方向に沿って離間させたときに前記切り込みが開口し前記間部分を回転変形させるとともに、前記間部分のそれぞれの圧縮変形又は引っ張り変形のいずれかとなる位置にのみ前記ひずみ応答性抵抗膜を与えられていることを特徴とする。
【0011】
かかる特徴によれば、被測定部の大変形による変形状態の計測を精度良く与え得るのである。
【0012】
上記した特徴において、前記切り込みは、前記幅方向の中心線へ向けて両側端部から切り込んだ2つの切断部からなる第1列と、前記中心線から前記樹脂フィルムの両側端部へ向けて切り込んだ1つの切断部からなる第2列と、を前記長手方向に交互に等間隔で与えてなることを特徴としてもよい。
【0013】
上記した特徴において、前記ひずみ応答性抵抗膜は、前記長手方向に沿って前記第1列から前記第2列への前記間部分であって前記中心線上に、又は、前記長手方向に沿って前記第2列から前記第1列への前記間部分であって前記中心線上に、与えられていることを特徴としてもよい。ここで、それぞれの前記間部分に与えられた前記ひずみ応答性抵抗膜は、並列接続されていることを特徴としてもよい。
【0014】
上記した特徴において、前記ひずみ応答性抵抗膜は、前記長手方向に沿って前記第1列から前記第2列への前記間部分であって前記中心線を挟んだ幅方向両側のそれぞれに、又は、前記長手方向に沿って前記第2列から前記第1列への前記間部分であって前記中心線を挟んだ幅方向両側のそれぞれに、与えられていることを特徴としてもよい。もしくは、前記ひずみ応答性抵抗膜は、前記長手方向に沿って前記第1列から前記第2列への前記間部分であって前記中心線上に、且つ、前記長手方向に沿って前記第2列から前記第1列への前記間部分であって前記中心線を挟んだ幅方向両側のそれぞれに、与えられていることを特徴としてもよい。ここで、前記間部分で前記中心線を挟んだ幅方向両側のそれぞれに与えられた前記ひずみ応答性抵抗膜は直列接続され、それぞれの前記間部分に与えられた前記ひずみ応答性抵抗膜は並列接続されていることを特徴としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による実施例としての変形計測センサの外観写真である。
図2】両端部を離間させて変形を与えた変形計測センサの外観写真である。
図3】変形計測センサ10aの平面図である。
図4】変形計測センサ10aの変形状態を示す斜視図である。
図5】変形計測センサ10aの配線例を示す平面図である。
図6】変形計測センサ10bの変形状態を示す斜視図である。
図7】変形計測センサ10cの平面図である。
図8】変形計測センサ10cの変形状態を示す斜視図である。
図9】変形計測センサ10cの配線例を示す平面図である。
図10】変形計測センサ10dの変形状態を示す斜視図である。
図11】(a)変形計測センサ10e、(b)変形計測センサ10fの配線を含む平面図である。
図12】変形計測センサ10gの平面図である。
図13】製造試験に用いた変形計測センサ(実施例1~3)の平面図である。
図14】製造試験に用いた変形計測センサ(比較例1及び2)の平面図である。
図15】変形計測センサを伸張させたときの伸張率と抵抗変化率との関係を示すグラフである。
図16】(a)実施例及び(b)比較例の変形計測センサを伸張させさらに収縮させたときの伸張率と抵抗変化率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明による1つの実施例である変形計測センサ及び同センサを用いた変形計測方法について、図1乃至図12を用いて説明する。
【0017】
図1に示すように、変形計測センサ10は、可撓性を有する略矩形の樹脂フィルム1からなり、長手方向の両端部2a及び2bの間において幅方向に伸びる切り込み3を長手方向に周期的に設けられる。切り込み3によって、変形計測センサ10は比較的均一に大変形することの可能な切り紙構造を付与される。樹脂フィルム1としては、それ自体での伸縮性は必要なく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリカーボネート、ポリイミドを好適に使用し得る。なお、可撓性を有するものであれば伸縮性を不要とするため、絶縁被覆された金属箔や極薄ガラスなどであってもよい。また、切り込み3は、レーザーカットやパンチング等の樹脂フィルム1の材料に応じた適切な機械加工によって設けることができる。
【0018】
変形計測センサ10は、また、樹脂フィルム1の変形に対応してひずむことで電気抵抗を変化させるひずみ応答性抵抗膜5を備え、ひずみ応答性抵抗膜5の電気抵抗を検出するための配線6や電極7a及び7bが設けられる。ひずみ応答性抵抗膜5としては、ひずみに対する抵抗変化の大きい材料を用いることが好ましく、例えば、ミクロンオーダーの比較的大きな粒径を有する導電粒子を含む導電ペーストによるものが好ましい。配線6については、ひずみに対する抵抗変化の小さな材料を用いることが好ましく、スパッタ、蒸着、めっきなどにより形成された金属薄膜や、金属ナノ粒子を緻密に含有する導電ペーストの印刷膜を好適に用い得る。なお、ひずみ応答性抵抗膜5、配線6及び電極7a、7bの配置については後述する。
【0019】
図2に示すように、変形計測センサ10は、両端部2a及び2bを長手方向に沿って離間させたときに、切り込み3が開口し、長手方向に隣接する切り込み3同士の間部分4を回転変形させる。換言すれば、切り込み3は、両端部2a及び2bに引っ張られて開口したときに、間部分4を回転変形させるように配置されている。ここで、回転変形は、両端部2a及び2bを離間させる前の樹脂フィルム1の平面に垂直で長手方向を含む平面内の回転を生じつつ、さらに、樹脂フィルム1の部分ごとに表及び裏がそれぞれ引張及び圧縮又は圧縮及び引張となる曲げを生じる変形である。
【0020】
また、変形計測センサ10は、樹脂フィルム1の同一面且つ間部分4のそれぞれにひずみ応答性抵抗膜5を与えられている。特に、ひずみ応答性抵抗膜5は、回転変形を生じた間部分4の圧縮変形又は引っ張り変形のいずれか一方となる位置にのみ与えられる。同図の例であれば、引っ張り変形となる部分のみにひずみ応答性抵抗膜5が形成されている。
【0021】
このような変形計測センサ10は、変形状態を計測しようとする対象の被計測部を跨いで両端部2a及び2bで固定される。すると、被計測部の変形によって両端部2a及び2bの離間した距離に対応して間部分4の回転変形を生じる。そして、回転変形による樹脂フィルム1の曲げのうち、表面側(ひずみ応答性抵抗膜5を配置した側)の面の圧縮変形のみ又は引っ張り変形のみをひずみ応答性抵抗膜5の電気抵抗から検出できる。このような変形計測方法によれば、圧縮変形のみ又は引っ張り変形のみを検出することで、圧縮及び引っ張りの両者を混在させるようなひずみ応答性抵抗膜を配置したセンサを用いる方法に比べて、被計測部の変形状態を精度よく計測できる。
【0022】
なお、変形計測センサ10は両端部2a及び2bが離間されることで被計測部の変形状態を計測できる。そのため、被計測部の変形は、単純な1軸方向の延伸だけでなく、ゴム風船の膨張のような変形であってもよい。すなわち、変形計測センサ10は、被計測部の変形に完全に追従せずともよく、長手方向の両端部2a及び2bを固定した部位の変位に追従させつつ、被計測部の変形状態に対応して全体として変形できればよい。
【0023】
さらに、切り込み3とひずみ応答性抵抗膜5のより具体的な配置例について説明する。
【0024】
例えば、図3に示すように、変形計測センサ10aにおいて、切り込み3は2つの切断部3aによる第1列と1つの切断部3bによる第2列とからなる。切断部3aは、幅方向の中心線Cへ向けて幅方向の両側端部から切り込まれている。また、切断部3bは、中心線Cから樹脂フィルムの両側端部へ向けて切り込まれている。切り込み3は、これらの第1列と第2列とを長手方向に交互に等間隔で配置されたものとすることができる。このとき、ひずみ応答性抵抗膜5は、長手方向に沿って紙面上から下へ向けて、第1列から第2列への間部分4aであり、中心線C上の樹脂フィルム1の表側(紙面手前側)に配置させる。一方、第2列から第1列への間部分4bの中心線C上にはひずみ応答性抵抗膜5を配置していない。なお、以降においても第1列から第2列への間部分4aというように、切断部による列の順番は、長手方向に沿って紙面上から下へ(端部2aから端部2bへ)向けて表現するものとする。
【0025】
図4を併せて参照すると、上記したように切り込み3及びひずみ応答性抵抗膜5を配置したときに、両端部2a及び2bを離間させると、例えば、第1列から第2列への間部分4aが幅方向中央で上に盛り上がるように曲がり、その上面に配置したひずみ応答性抵抗膜5が樹脂フィルム1の曲がりの外側に位置している。つまり、このひずみ応答性抵抗膜5は、引っ張り変形を受ける。他方、第2列から第1列への間部分4bでは幅方向中央で下に窪むように曲がる。このように切り込み3及びひずみ応答性抵抗膜5を配置することで、引っ張り変形のみを検出できるようになる。なお、同図において、間部分4a及び4bの回転変形のうち回転については図示を省略している。実際には、間部分4aの紙面左下側端部を上方向に移動させて、ひずみ応答性抵抗膜5を樹脂フィルム1の紙面奥側に隠すように回転する。これによって、樹脂フィルム1によるシート体全体を比較的均一に大変形させ得ることになる。
【0026】
なお、両端部2a及び2bを離間させたときの間部分4a及び4bの回転移動については、上記と逆方向になる場合もあるが、その場合は、ひずみ応答性抵抗膜5は圧縮変形のみを検出するように配置されていることになる。また、この回転移動の方向については、両端部2a及び2bの主面の向きや樹脂フィルムのくせ、配線などによって変化し得るが、回転変形を生じた場合には間部分4a及び4bの全てにおいて同じ方向の回転移動となる。そして、曲げについては、第1列から第2列への間部分4aで中央を上に凸とする場合、第2列から第1列への間部分4bでは中央を下に凸とする。つまり、間部分4aと間部分4bとでは逆方向の曲げとなりこれによって切り込み3が開口する。
【0027】
図5に示すように、上記した切り込み3及びひずみ応答性抵抗膜5の配置に対し、配線6によって全てのひずみ応答性抵抗膜5を並列接続することができる。例えば、変形計測センサ10a-1(同図(a))は、電極7a及び7bを共に端部2aに配置した例である。また、変形計測センサ10a-2(同図(b))は、対となる電極7a及び7bのうち、電極7aを端部2aに、電極7bを端部2bに配置した例である。
【0028】
また、図6に示すように、変形計測センサ10bでは、第2列から第1列への間部分4bであり、中心線C上にひずみ応答性抵抗膜5を配置さている。一方、第1列から第2列への間部分4aの中心線C上にはひずみ応答性抵抗膜5を配置していない。このとき、上記した変形計測センサ10a(図4参照)と同様に回転変形したとすれば、ひずみ応答性抵抗膜5では圧縮変形のみを検出することができる。
【0029】
次に、図7に示すように、ひずみ応答性抵抗膜5の配置をさらに変えることもできる。上記したように、ひずみ応答性抵抗膜5は、回転変形を生じた間部分4の圧縮変形又は引っ張り変形のいずれか一方となる位置にのみ与えられればよい。そこで、変形計測センサ10cでは、第1列から第2列への間部分4aであって、中心線Cを挟んだ幅方向両側のそれぞれにひずみ応答性抵抗膜5を配置している。
【0030】
図8を併せて参照すると、上記したように切り込み3及びひずみ応答性抵抗膜5を配置したときに、両端部2a及び2bを離間させると、例えば、第1列から第2列への間部分4aが幅方向の左右の部分で下に窪むように曲がり、その上面に配置したひずみ応答性抵抗膜5が樹脂フィルム1の曲がりの内側に位置している。つまり、このひずみ応答性抵抗膜5は、圧縮変形を受ける。他方、第2列から第1列への間部分4bでは幅方向の左右の部分で上に盛り上がるように曲がる。このように切り込み3及びひずみ応答性抵抗膜5を配置することで、圧縮変形のみを検出できるようになる。
【0031】
図9に示すように、上記した切り込み3及びひずみ応答性抵抗膜5の配置に対し、配線6によって全てのひずみ応答性抵抗膜5を接続することができる。なお、中心線Cを挟んだ左右のひずみ応答性抵抗膜5は直列接続接続された対となり、これらの対が並列接続されている。例えば、変形計測センサ10c-1(同図(a))は、電極7a及び7bを共に端部2aに配置した例である。また、変形計測センサ10c-2(同図(b))は、対となる電極7a及び7bのうち、電極7aを端部2aに、電極7bを端部2bに配置した例である。
【0032】
また、図10に示すように、変形計測センサ10dでは、第2列から第1列への間部分4bであり、中心線Cを挟んだ幅方向両側のそれぞれにひずみ応答性抵抗膜5を配置している。一方、第1列から第2列への間部分4aの中心線Cを挟んだ幅方向の左右両側にはひずみ応答性抵抗膜5を配置していない。このとき、上記した変形計測センサ10c(図8参照)と同様に回転変形したとすれば、ひずみ応答性抵抗膜5では引っ張り変形のみを検出することができる。
【0033】
さらに図11に示すように、上記したひずみ応答性抵抗膜5の配置を応用した異なる配置とすることもできる。
【0034】
例えば、同図(a)に示すように、変形計測センサ10eにおいて、ひずみ応答性抵抗膜5は、長手方向に沿って第1列から第2列への間部分4aであって中心線C上に、且つ、長手方向に沿って第2列から第1列への間部分4bであって中心線Cを挟んだ幅方向両側のそれぞれに配置されている。つまり、上記した変形計測センサ10a(図4参照)及び10d(図10参照)のひずみ応答性抵抗膜5の配置を合わせたものとなっている。これによっても、変形計測センサ10aと同様に回転変形したとすれば、ひずみ応答性抵抗膜5では引っ張り変形のみを検出することができる。また、回転変形により凹凸が逆になった場合は、圧縮変形のみを検出することができる。
【0035】
一方、同図(b)に示すように、ひずみ応答性抵抗膜5は、第1列から第2列への間部分4aであって中心線C上の一箇所のみに配置されている。これによっても、ひずみ応答性抵抗膜5では、圧縮変形のみ又は引っ張り変形のみを検出することができる。
【0036】
なお、図12に示すように、切り込み3についても他の形態とすることもできる。例えば、変形計測センサ10gでは、上記した変形計測センサ10aを幅方向に2つ並べて接続したような切り込み3を備えている。
【0037】
詳細には、まず、略矩形の樹脂フィルム1の幅方向の中心線C1と、左右のそれぞれからおよそ幅の4等分の距離の位置にある左側中心線CL及び右側中心線CRとを想定する。そして、紙面上側の切り込み3の第1列では、中心線C1へ向けて幅方向の両側端部から切りこまれた切断部3cと中心線C1から両側端部へ向けて切りこまれた切断部3dとを有する。切断部3c及び切断部3dは左側中心線CLと右側中心線CRに対しては一定の距離を空けて設けられる。そして、切り込み3の第2列では、左側中心線CLと右側中心線CRのそれぞれから幅方向の両側端部へ向けて延びる切断部3eを有する。切断部3eは、中心線C1に対して一定の距離を空けるとともに、左右両側端部に対しても一定の距離を空けて設けられる。切り込み3は、これらの第1列と第2列とを長手方向に交互に等間隔で配置されたものとされている。
【0038】
そして、ひずみ応答性抵抗膜5は、第1列から第2列への間部分4aであり左側中心線CL及び右側中心線CR上と、第2列から第1列への間部分4bであり中心線C1上との樹脂フィルム1の表側(紙面手前側)に配置される。
【0039】
このような変形計測センサ10gであっても、両端部2a及び2bを長手方向(紙面上下方向)に離間させると切り込み3が開口し、長手方向に隣接する切り込み3同士の間部分4a及び4bを回転変形させる。そして、間部分4a及び4bを回転変形させたときに上に凸(又は凹)となる部分のみにひずみ応答性抵抗膜5が配置されており、引っ張り変形のみ(又は圧縮変形のみ)を検出することができる。
【0040】
[製造試験]
次に、変形計測センサを実際に製造して行った試験について図13乃至図16を用いて説明する。なお、樹脂フィルムとしては、厚み0.1mmのポリエチレンテレフタラート(PET、東洋紡株式会社製、商品名:コスモシャイン)を用いた。また、ひずみ応答性抵抗膜としては、導電性カーボンを主とする導電膜形成用インク(ナミックス株式会社製、商品コード:XKT10400)、配線としては銀粒子を主とする導電膜形成用インク(東洋インキ株式会社製、商品コード:RAFS059S)をそれぞれスクリーン印刷し、乾燥及び硬化させたものを使用した。
【0041】
図13に示すように、実施例1の変形計測センサ10e-1は、上記した変形計測センサ10eと電極7bを紙面下側の端部2bに配置した点で異なるが、他は同様としたものである。すなわち、変形計測センサ10e-1は、ひずみ応答性抵抗膜5を、長手方向に沿って第1列から第2列への間部分4aであって中心線C上に、且つ、長手方向に沿って第2列から第1列への間部分4bであって中心線Cを挟んだ幅方向両側のそれぞれに配置したものである。
【0042】
また、実施例2の変形計測センサ10a-2は、上記した通り(図5参照)、ひずみ応答性抵抗膜5を、第1列から第2列への間部分4aであり、中心線C上の樹脂フィルムの表側(紙面手前側)に配置したものである。
【0043】
さらに、実施例3の変形計測センサ10d-1は、上記した変形計測センサ10dと同様にひずみ応答性抵抗膜を配置した上で、配線を施したものである。すなわち、変形計測センサ10d-1は、第2列から第1列への間部分4bであり、中心線Cを挟んだ幅方向両側のそれぞれにひずみ応答性抵抗膜5を配置したものである。
【0044】
図14に示すように、比較例1及び比較例2となる変形計測センサも併せて作製した。
【0045】
比較例1の変形計測センサは、間部分4a及び4bの幅方向の両側端部を除いて全面にひずみ応答性抵抗膜5を配置したものである。また、比較例2の変形計測センサは、第1列から第2列への間部分4a及び第2列から第1列への間部分4bのいずれにおいても、中心線C上にひずみ応答性抵抗膜5を配置したものである。
【0046】
図15に示すように、実施例1~3、比較例1及び比較例2について、両端部2a及び2bを互いに離間させたときの変形計測センサとしての伸張率と抵抗変化率との関係を調べた。その結果、実施例1~3は比較例に対して大きな抵抗変化率を示した。実施例の中では、実施例1において抵抗変化率を最大とし、以下、実施例2、実施例3と続いた。比較例1及び比較例2において抵抗変化率が小さいのは、引っ張り変形に伴う伸張ひずみによる抵抗増加と、圧縮変形に伴う圧縮ひずみによる抵抗減少とが混在しているためと考えられる。
【0047】
図16に示すように、実施例1~3、比較例1及び比較例2について、両端部2a及び2bを互いに離間させさらにもとの位置にもどす操作をしたときの変形計測センサとしての伸張率と抵抗変化率との関係を調べた。その結果、実施例1~3は、高い直線性と、小さいヒステリシスを示した(同図(a))が、比較例1及び比較例2は、共に比較的低い直線性を示し、比較例1においては、さらに、比較的大きなヒステリシスを示した(同図(b))。比較例1では、ひずみ応答性抵抗膜を全面に配置したため、局所的に非常に大きなひずみを生じて塑性変形や残留応力の影響を受けたものと考えられる。
【0048】
これらのように、実施例1~3の変形計測センサによれば、伸張に対するリニアな抵抗変化を高精度に高い感度で得ることができる。
【0049】
以上、本発明による代表的な実施例を説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0050】
1 樹脂フィルム
2a、2b 端部
3 切り込み
3a~3e 切断部
4(4a、4b) 間部分
5 ひずみ応答性抵抗膜
6 配線
7a、7b 電極
10 変形計測センサ
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9
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図11
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図15
図16