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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159235
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】融着機
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/255 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G02B6/255
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075088
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】田邉 明夫
【テーマコード(参考)】
2H036
【Fターム(参考)】
2H036JA00
2H036JA03
2H036LA03
2H036LA08
2H036MA12
2H036NA03
2H036NA07
2H036NA16
2H036NA17
(57)【要約】
【課題】 回転調心に対して精度良く時間短縮が可能な融着機を提供する。
【解決手段】 互いに異なる方向から、光ファイバ21の側方へ光を照射する一対の光源が配置され、光ファイバ21を挟んでそれぞれの光源と対向配置されるように、一対の光ファイバ21の側方からの像を撮像可能な一対の第1側方撮像部19a及び第2側方撮像部19bが配置される。制御部30は、回転駆動部32によってそれぞれの光ファイバ21をΔθ回転させ、それぞれの角度における光ファイバ21の画像を取得する工程を繰り返し、光ファイバ21の略全周方向の画像を得て、この全周方向の画像から光ファイバ21の回転方向の位置を算出可能である。この際、制御部30は、光ファイバ21の略全周方向からの画像として、一対の第1側方撮像部19aと、第2側方撮像部19bでそれぞれ撮像された両方の画像を利用して光ファイバ21の回転方向の位置を算出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ同士を接続する融着機であって、
一対の光ファイバを対向して保持する光ファイバ保持部と、
一対の前記光ファイバの対向方向に対して略垂直な方向に配置される電極と、
互いに異なる方向から、前記光ファイバの側方へ光を照射する複数の光源と、前記光ファイバを挟んでそれぞれの前記光源と対向配置され、一対の前記光ファイバの側方からの像を撮像可能な複数の撮像部と、
複数の前記撮像部によって取得された画像から、前記光ファイバを軸方向に対して垂直な方向に移動させることで、一対の前記光ファイバ同士の軸を調心することが可能な移動駆動部と、
前記光ファイバを、前記光ファイバの軸方向を回転軸として回転させることで、一対の前記光ファイバ同士の回転調心をすることが可能な回転駆動部と、
前記回転駆動部と前記撮像部を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記回転駆動部によってそれぞれの前記光ファイバを所定角度回転させ、それぞれの角度における前記光ファイバの画像を取得する工程を繰り返し、前記光ファイバの略全周方向の画像から、前記光ファイバの回転方向の位置を算出可能であり、
前記制御部は、前記光ファイバの略全周方向からの画像として、複数の前記撮像部でそれぞれ撮像された両方の画像を利用して、前記光ファイバの回転方向の位置を算出することを特徴とする融着機。
【請求項2】
前記光ファイバの軸に対する周方向角度であって、所定の周方向位置を基準として、基準位置からの一の前記撮像部の配置角度をθ1、他の前記撮像部の配置角度をθ2とし、前記一の撮像部と前記他の撮像部のなす角度θ2-θ1=θとすると、
前記制御部は、前記一の撮像部によるθ1~θ1+θの範囲における所定範囲の画像と、前記他の前記撮像部によるθ2~θ2+θの範囲における所定範囲の画像を合わせて、
前記他の撮像部によるθ2~θ2+θの範囲の画像を、前記一の撮像部によるθ1+θ~θ1+2θの範囲における所定範囲の画像として利用することを特徴とする請求項1記載の融着機。
【請求項3】
前記光ファイバの撮像毎のステップ角度をΔθとした際に、θ/Δθ=ステップ数nとすると、
前記制御部は、それぞれの前記撮像部によるn個×2の画像を合わせてθ1+θ~θ1+2θの画像とすることを特徴とする請求項2記載の融着機。
【請求項4】
前記光ファイバの撮像毎のステップ角度をΔθとした際に、θ/Δθ=ステップ数nとすると、
前記制御部は、それぞれの前記撮像部によるn+1個×2の画像を合わせてθ1+θ~θ1+2θの画像とすることを特徴とする請求項2記載の融着機。
【請求項5】
前記制御部は、前記一の撮像部による画像と、前記他の撮像部による画像を比較して、境界部の画像が同一の輝度となるように少なくとも一方の画像について画像調整を行うことを特徴とする請求項2記載の融着機。
【請求項6】
前記一の撮像部と前記他の撮像部のなす角度θが、360°の約数であることを特徴とする請求項2記載の融着機。
【請求項7】
前記光ファイバの軸に対する周方向角度であって、所定の周方向位置を基準として、基準位置からの前記一の撮像部の配置角度をθ1、前記他の撮像部の配置角度をθ2とし、前記一の撮像部と前記他の撮像部のなす角度θ2-θ1=θとすると、
前記制御部は、前記光ファイバの全周について、少なくとも前記一の撮像部と前記他の撮像部によってそれぞれ画像を取得し、少なくとも前記一の撮像部によるθ1~θ1+360°の範囲における所定範囲の画像と、前記他の前記撮像部によるθ2~θ2+360°の範囲における所定範囲の画像を合わせて、前記他の撮像部によるθ2-θ~θ2-θ+360°の範囲の画像を、前記一の撮像部によるθ1~θ1+360°の画像に対応させて平均化することで、θ1~θ1+360°の画像として利用することを特徴とする請求項1記載の融着機。
【請求項8】
前記光ファイバの軸に対する周方向角度であって、所定の周方向位置を基準として、基準位置からの前記一の撮像部の配置角度をθ1、前記他の撮像部の配置角度をθ2とし、前記一の撮像部と前記他の撮像部のなす角度θ2-θ1=θとすると、
前記一の撮像部によるθ1~θ1+θの範囲における所定範囲の画像と、前記他の撮像部によるθ2~θ2+θの範囲における所定範囲の画像を合わせて、前記他の撮像部によるθ2~θ2+θの範囲における所定範囲の画像を、前記一の撮像部によるθ1+θ~θ1+2θの範囲における所定範囲の画像として利用する第1モードと、
前記光ファイバの全周について、複数の前記撮像部によってそれぞれ画像を取得し、少なくとも前記一の撮像部によるθ1~θ1+360°の範囲の画像と、前記他の撮像部によるθ2-θ~θ2+360°-θの範囲の画像を対応させて平均化することで、θ1~θ1+360°の画像として利用する第2モードと、
を有し、
前記制御部は、前記第1モードと前記第2モードを切り替えることが可能であることを特徴とする請求項1記載の融着機。
【請求項9】
前記撮像部が二つ配置されることを特徴とする請求項1記載の融着機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率よく調心作業を行うことが可能な融着機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ同士の接続には、融着機が用いられる。融着機は、一対のホルダに保持された光ファイバ同士を突き合わせて、電極間に配置し、アークによって光ファイバ同士の先端を融着して、光ファイバ同士を接続するものである。
【0003】
光ファイバ同士の融着時には、光ファイバの先端位置を合わせる調心作業が必要である。このため、従来は、光ファイバ同士を対向して配置した状態で、側方(光ファイバの軸方向に対して垂直な方向)から、撮像部によって光ファイバの先端位置を撮像して調心を行っていた。
【0004】
一方、一般的な単心の光ファイバではなく、いわゆる偏波保持ファイバやマルチコアファイバのように、断面形態に対して周方向の方向性を有する場合、先端位置のみではなく、回転方向の調心も必要である。すなわち、光ファイバのX-Y方向の調心のみではなく、光ファイバの軸方向を中心軸とした周方向の回転調心が必要となる。
【0005】
このような光ファイバの回転調心を行うためには、例えば、光ファイバの対向部の間に反射部材を配置し、光ファイバの端面を撮像部に反射させて撮像し、端面観察によって回転調心を行う方法がある(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-53625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の方法では、光ファイバ同士の間に反射部材を移動させる機構や、反射像を得るための撮像部が必要となる。これに対し、光ファイバの側方から光を照射し、その透過光(屈折光)を従来のX-Y調心を行うための撮像部で撮像して、周方向位置を調心する方法が提案されている。
【0008】
図14は、この方法を示す概念図である。なお、光ファイバ101は簡単のため単心で図示する。光ファイバ101の側方から光源100によって光を当て、光ファイバ101を挟んで光源100と対向する位置に配置される撮像素子105で受光(撮像)すると、光の通過ルートによって撮像素子105には光の濃淡が生じる。
【0009】
例えば、ルートAは、光ファイバ101に入射せずに、レンズ103で撮像素子105に集光されるものであり、ルートBは、光ファイバ101のクラッドに入射するがレンズ103を外れてしまうものであり、ルートCは、光ファイバ101のクラッドに入射した後にレンズ103で集光されるものであり、ルートDは、光ファイバ101のコアを通過して、レンズ103で集光されるものである。空気とクラッドとコアとで屈折率が異なるため、光のルートによって、撮像素子105には光の濃淡の縞模様が確認できる。
【0010】
図示した例では、コアが中央に一つであるが、例えばマルチコアファイバのように、コアが複数配置される場合、光ファイバの回転位置によって、コアの配置が異なる。このため、光ファイバ101の回転位置に応じて、屈折率の異なるコアを通過する光のルートが変わり、撮像素子105では、光ファイバの回転に応じて濃淡の縞模様が周期的に変化する。
【0011】
このように、光ファイバ101の回転角度毎の縞模様の変化から光ファイバ101のコア配置(断面構造)を把握することができる。このため、一対の光ファイバ101の側方から光を照射して、それぞれ全周からの透過光を受光することで、それぞれの光ファイバ101に対して断面構造を把握することができ、互いのコア位置が合うように、回転調心を行うことができる。
【0012】
しかし、光ファイバ101の全周からの透過光について把握するためには、光ファイバ101を所定角度回転させて停止し、その状態で光を受光して撮像し、再度光ファイバを所定角度回転させるという作業を繰り返す必要がある。特に、光ファイバ101の先端位置を一定にするためにクランプで押さえる場合には、クランプの解放→回転→停止→クランプ→撮像という工程を繰り返すことになる。このため、全周からの撮像を行うためには時間を要するという問題がある。
【0013】
これに対し、例えば1°回転させるごとに撮像するのと比べて、ステップ角度を大きくして、例えば5°回転するごとに撮像すれば、撮像数を減らすことができるため、時間短縮とはなるが、精度が悪くなる。このため、精度と時間短縮を両立することが望まれる。
【0014】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、回転調心に対して精度良く時間短縮が可能な融着機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達するために本発明は、光ファイバ同士を接続する融着機であって、一対の光ファイバを対向して保持する光ファイバ保持部と、一対の前記光ファイバの対向方向に対して略垂直な方向に配置される電極と、互いに異なる方向から、前記光ファイバの側方へ光を照射する複数の光源と、前記光ファイバを挟んでそれぞれの前記光源と対向配置され、一対の前記光ファイバの側方からの像を撮像可能な複数の撮像部と、複数の前記撮像部によって取得された画像から、前記光ファイバを軸方向に対して垂直な方向に移動させることで、一対の前記光ファイバ同士の軸を調心することが可能な移動駆動部と、前記光ファイバを、前記光ファイバの軸方向を回転軸として回転させることで、一対の前記光ファイバ同士の回転調心をすることが可能な回転駆動部と、前記回転駆動部と前記撮像部を制御する制御部と、を具備し、前記制御部は、前記回転駆動部によってそれぞれの前記光ファイバを所定角度回転させ、それぞれの角度における前記光ファイバの画像を取得する工程を繰り返し、前記光ファイバの略全周方向の画像から、前記光ファイバの回転方向の位置を算出可能であり、前記制御部は、前記光ファイバの略全周方向からの画像として、複数の前記撮像部でそれぞれ撮像された両方の画像を利用して、前記光ファイバの回転方向の位置を算出することを特徴とする融着機である。
【0016】
前記光ファイバの軸に対する周方向角度であって、所定の周方向位置を基準として、基準位置からの一の前記撮像部の配置角度をθ1、他の前記撮像部の配置角度をθ2とし、前記一の撮像部と前記他の撮像部のなす角度θ2-θ1=θとすると、前記制御部は、前記一の撮像部によるθ1~θ1+θの範囲における所定範囲の画像と、前記他の前記撮像部によるθ2~θ2+θの範囲における所定範囲の画像を合わせて、前記他の撮像部による画像を、前記一の撮像部によるθ1+θ~θ1+2θの範囲における所定範囲の画像として利用してもよい。
【0017】
前記光ファイバの撮像毎のステップ角度をΔθとした際に、θ/Δθ=ステップ数nとすると、前記制御部は、それぞれの前記撮像部によるn個×2の画像を合わせてθ1+θ~θ1+2θの画像としてもよい。
【0018】
前記光ファイバの撮像毎のステップ角度をΔθとした際に、θ/Δθ=ステップ数nとすると、前記制御部は、それぞれの前記撮像部によるn+1個×2の画像を合わせてθ1+θ~θ1+2θの画像としてもよい。
【0019】
前記制御部は、前記一の撮像部による画像と、前記他の撮像部による画像を比較して、境界部の画像が同一の輝度となるように少なくとも一方の画像について画像調整を行ってもよい。
【0020】
前記一の撮像部と前記他の撮像部のなす角度θが、360°の約数であることが望ましい。
【0021】
前記光ファイバの軸に対する周方向角度であって、所定の周方向位置を基準として、基準位置からの前記一の撮像部の配置角度をθ1、前記他の撮像部の配置角度をθ2とし、前記一の撮像部と前記他の撮像部のなす角度θ2-θ1=θとすると、前記制御部は、前記光ファイバの全周について、少なくとも前記一の撮像部と前記他の撮像部によってそれぞれ画像を取得し、少なくとも前記一の撮像部によるθ1~θ1+360°の範囲における所定範囲の画像と、前記他の前記撮像部によるθ2~θ2+360°の範囲における所定範囲の画像を合わせて、前記他の撮像部によるθ2-θ~θ2-θ+360°の範囲の画像を、前記一の撮像部によるθ1~θ1+360°の画像に対応させて平均化することで、θ1~θ1+360°の画像として利用してもよい。
【0022】
前記光ファイバの軸に対する周方向角度であって、所定の周方向位置を基準として、基準位置からの前記一の撮像部の配置角度をθ1、前記他の撮像部の配置角度をθ2とし、前記一の撮像部と前記他の撮像部のなす角度θ2-θ1=θとすると、前記一の撮像部によるθ1~θ1+θの範囲における所定範囲の画像と、前記他の撮像部によるθ2~θ2+θの範囲における所定範囲の画像を合わせて、前記他の撮像部によるθ2~θ2+θの範囲における所定範囲の画像を、前記一の撮像部によるθ1+θ~θ1+2θの範囲における所定範囲の画像として利用する第1モードと、前記光ファイバの全周について、複数の前記撮像部によってそれぞれ画像を取得し、少なくとも前記一の撮像部によるθ1~θ1+360°の範囲の画像と、前記他の撮像部によるθ2-θ~θ2+360°-θの範囲の画像を対応させて平均化することで、θ1~θ1+360°の画像として利用する第2モードと、を有し、前記制御部は、前記第1モードと前記第2モードを切り替えることが可能であってもよい。
【0023】
前記撮像部が二つ配置されてもよい。
【0024】
本発明によれば、複数の撮像部によって、同時に異なる角度からの撮像を行い、これらを合成して周方向の画像として利用するため、撮像時間の短縮効果や、撮像精度の向上効果を得ることができる。
【0025】
例えば、基準位置からの一の撮像部の配置角度θ1、他の撮像部の配置角度θ2から、それぞれの撮像部のなす角度θ2-θ1=θとした際、一の撮像部によるθ1~θ1+θの範囲における所定範囲の画像を利用するとともに、他の撮像部によるθ2~θ2+θの範囲における所定範囲の画像を一の撮像部によるθ1+θ~θ1+2θの範囲における所定範囲の画像として利用することで、θの角度範囲の撮像によって、2θ分の画像を取得することができる。このため、撮像時間を半減することができる。
【0026】
この際、光ファイバの撮像毎のステップ角度をΔθ、θ/Δθ=ステップ数nとすると、それぞれの撮像部によるn個×2の画像を合わせてθ1+θ~θ1+2θの画像とすることで、効率よく複数の撮像部の画像を合わせることができる。
【0027】
一方、光ファイバの撮像毎のステップ角度をΔθ、θ/Δθ=ステップ数nとすると、それぞれの撮像部によるn+1個×2の画像を合わせてθ1+θ~θ1+2θの画像とすることで、同一の角度で二つの撮像部による重複する画像を得ることができる。このため、これらの画像を比較して輝度調整等を行うことで、それぞれの撮像部による画像の機差を打ち消すことができ、精度を向上させることができる。
【0028】
このように、一の撮像部による画像と、他の撮像部による画像を比較して、一の撮像部の画像と他の撮像部の画像とを切り替える境界部の画像が同一の輝度となるように少なくとも一の画像について画像調整を行うことで、精度を向上させることができる。
【0029】
また、それぞれの撮像部のなす角度θが、360°の約数であれば、複数の撮像部の画像を合わせて、全周(360°)の画像とするのに効率が良い。
【0030】
また、基準位置からの一の撮像部の配置角度をθ1、他の撮像部の配置角度をθ2とし、それぞれの撮像部のなす角度θ2-θ1=θとし、少なくとも一の撮像部によるθ1~θ1+360°の範囲の画像と、他の撮像部によるθ2-θ~θ2+360°-θの範囲の画像を同じ角度の画像を対応させて平均化して、θ1~θ1+360°の画像として利用することで、撮像時のノイズ等を除去して精度を向上させることができる。
【0031】
また、複数の撮像部で異なる角度の画像を合わせて全周の画像とする速度向上効果の大きなモードと、複数の撮像部で同一の角度の画像を平均化して全周の画像とする精度向上効果が大きなモードとを切り替えることで、対象の光ファイバや仕様等に応じて適切なモードで作業を行うことができる。
【0032】
このような融着機としては、撮像部が二つ配置されていれば効率が良い。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、回転調心に対して精度良く時間短縮が可能な融着機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】融着機1を示す斜視図。
図2】融着部近傍の拡大概略図。
図3】(a)は光ファイバ21の軸方向から見た図、(b)は電極7の軸方向から見た図。
図4】融着機1の構成図。
図5】(a)~(c)は、光ファイバ21の調心動作を示す概念図。
図6】光ファイバ21の撮像角度を示す図。
図7】第1側方撮像部19a、第2側方撮像部19bの配置を示す概念図。
図8】(a)~(d)は、撮像工程を示す図。
図9】(a)は、第1側方撮像部19a、第2側方撮像部19bのそれぞれの角度での撮像範囲を示す概念図、(b)は、第2側方撮像部19bの撮像範囲を第1側方撮像部19aの角度に置き換えた場合の撮像範囲を示す概念図。
図10】(a)~(d)は、他の撮像工程を示す図。
図11】(a)は、第1側方撮像部19a、第2側方撮像部19bのそれぞれの角度での撮像範囲を示す概念図、(b)は、第2側方撮像部19bの撮像範囲を第1側方撮像部19aの角度に置き換えた場合の撮像範囲を示す概念図。
図12】(a)は光ファイバ21の軸方向から見た図、(b)は、第1側方撮像部19a、第2側方撮像部19b、第3側方撮像部19cのそれぞれの角度での撮像範囲を示す概念図、(c)は、第2側方撮像部19b、第3側方撮像部19cの撮像範囲を第1側方撮像部19aの角度に置き換えた場合の撮像範囲を示す概念図。
図13】(a)は、第1側方撮像部19a、第2側方撮像部19b、第3側方撮像部19cのそれぞれの角度での撮像範囲を示す概念図、(b)は、第2側方撮像部19b、第3側方撮像部19cの撮像範囲を第1側方撮像部19aの角度に置き換えた場合の撮像範囲を示す概念図。
図14】従来の側方からの撮像方法を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、融着機1を示す斜視図である。融着機1は、光ファイバを保持するホルダが載置されるホルダ載置部11と、光ファイバが配置される光ファイバ保持部5と、蓋部3と、融着機1の操作を行う操作部15と、各種情報を表示する表示部17等を具備する。なお、表示部17をタッチパネルとすることで、操作部15と表示部17とを一体化してもよい。
【0036】
光ファイバは光ファイバ保持部5上のV溝に保持される。また、一対の光ファイバの対向方向に対して略垂直な方向には、一対の電極7が対向配置される。蓋部3は本体部に対して開閉可能である。蓋部3の裏面には、クランプ13が設けられ、蓋部3を閉じた際に、クランプ13の先端は、光ファイバ保持部5上の光ファイバの位置に対応する部位に位置する。すなわち、蓋部3の裏面に設けられたクランプ13によって、一対の光ファイバを、光ファイバ保持部5において対向して保持することができる。
【0037】
融着機1は、一対の光ファイバを融着によって接続するものである。図示を省略した一対のホルダによって光ファイバを保持し、ホルダをホルダ載置部11に載置する。この状態で蓋部3を閉じ、光ファイバの先端を突き合わせた状態で、一対の電極7の間にアークを発生させることで、光ファイバの先端部を溶融して接合することができる。
【0038】
図2は、光ファイバを設置した状態における、融着部近傍の概略図であり、図3(a)は、光ファイバ21の軸方向(図2のZ方向)から見た側面図、図3(b)は、電極7の軸方向から見た側面図である。
【0039】
ここで、以下の説明において、図2に示すように、第1側方撮像部19aの撮像方向をY方向とし、第2側方撮像部19bの撮像方向をX方向とする。ここで、本実施形態では、第1側方撮像部19aの撮像方向と第2側方撮像部19bの撮像方向との角度(図3(a)のθ)が90°であるものとして説明するが、必ずしもθ=90°でなくてもよい。また、X方向及びY方向に垂直な方向であって、光ファイバ21同士の対向方向をZ方向とし、Z方向を回転軸とした回転方向をR方向とする。また、以下の図においては、説明に不要な構成については、図示を省略する。
【0040】
前述したように、一対の光ファイバ21同士が互いに対向して配置される。また、一対の電極7が光ファイバ21の対向方向(Z方向)とは垂直な方向に対向配置される。光ファイバ21の先端位置を合わせて、電極7同士の間にアークを発生させることで、光ファイバ同士を融着することができる。
【0041】
光ファイバ21の対向部の下方には、第1側方撮像部19a及び第2側方撮像部19bが配置される。第1側方撮像部19a、第2側方撮像部19bは、光ファイバ21の対向方向に対して略垂直な方向(側面)から一対の光ファイバ21の先端位置の撮像が可能である。また、前述したように、第1側方撮像部19aと第2側方撮像部19bは、例えば互いに直交する異なる2方向から光ファイバ21の先端位置を撮像することができる。
【0042】
また、第1側方撮像部19aのY軸上には、光ファイバ21を挟んで対向する位置に図示を省略した光源が配置される。同様に、第2側方撮像部19bのX軸上には、光ファイバ21を挟んで対向する位置に図示を省略した光源が配置される。
【0043】
図3(b)に示すように、第1側方撮像部19aは、一対の光ファイバ21の先端部を一括して撮像可能である。同様に、第2側方撮像部19bは、一対の光ファイバ21の先端部を一括して撮像可能である。すなわち、互いに異なる方向から、光ファイバ21の側方へ光を照射する一対の光源が配置され、光ファイバ21を挟んでそれぞれの光源と対向配置されるように、一対の光ファイバ21の側方からの像を撮像可能な一対の第1側方撮像部19a及び第2側方撮像部19bが配置される。
【0044】
次に、融着機1の構成について説明する。図4に示すように、融着機1は、撮像部(第1側方撮像部19a、第2側方撮像部19b)、調心駆動部(X方向移動駆動部34、Y方向移動駆動部35、回転駆動部32)、搬送駆動部33及び、これらを制御する制御部30、表示部17等からなる。なお、本実施形態の説明に不要な放電制御等の構成は省略する。
【0045】
制御部30は、回転駆動部32、搬送駆動部33、X方向移動駆動部34、Y方向移動駆動部35、第1側方撮像部19a、第2側方撮像部19b等の制御を行うことができる。操作部15(図1参照)は、制御部30が行う各種制御内容及び設定条件等を入力することができる。表示部17は、撮像部で撮像した画像や、融着条件等の情報を表示することができる。
【0046】
調心駆動部は、図2に示したX、Y、R方向に光ファイバ21(光ファイバ保持部5やホルダ載置部11)をそれぞれ動かすことができる。例えば、X方向移動駆動部34とY方向移動駆動部35は、一対の光ファイバのうち、少なくとも一方を、軸心方向(Z方向)に垂直なそれぞれ異なる方向に移動させて、光ファイバ21の調心が可能である。すなわち、X方向移動駆動部34とY方向移動駆動部35によって、X方向及びY方向の調心が可能である。
【0047】
また、さらに、回転駆動部32は、一対の光ファイバのうち、少なくとも一方を、一対の光ファイバの対向方向を軸としてR方向に回転させることで、一対の光ファイバ同士の周方向の調心を行うことができる。なお、それぞれの調心駆動部は、一方の光ファイバ保持部5に対してのみ配置されてもよく、一対の光ファイバ保持部5の両方に配置されてもよい。例えば、X方向移動駆動部34とY方向移動駆動部35(すなわち、X、Y方向調心)は、一方の光ファイバに対してのみ配置し、回転駆動部32は、両方の光ファイバに対して配置してもよい。
【0048】
また、搬送駆動部33は、対向するそれぞれの光ファイバ21を、光ファイバ21の軸方向(Z方向)に対して個別に搬送可能である。融着時には、対向する光ファイバ21を搬送して突き合わせることで融着を行うことができる。
【0049】
次に、光ファイバ21の調心方法について説明する。光ファイバ21の先端位置(X-Y方向)の調心作業は、従来の方法で行うことができる。例えば、第1側方撮像部19a及び第2側方撮像部19bによって、各方向から光ファイバ21の先端位置を撮像して表示部17に表示し、両者の位置が合うように、操作部15を用いてX方向移動駆動部34及びY方向移動駆動部35を動作させ(光ファイバ保持部5や、ホルダ載置部11の位置や向きを動作させ)、互いのX-Y位置を合わせることで光ファイバ21のX方向及びY方向の調心が可能である。
【0050】
図5(a)は、X-Y方向の調心方法を示す概念図である。第1側方撮像部19aで撮像した光ファイバ21の先端位置のずれは、X方向のずれであるため、一方又は両方の光ファイバ21について、X方向移動駆動部34で位置調整を行うことができる。同様に、第2側方撮像部19bで撮像した光ファイバ21の先端位置のずれは、Y方向のずれであるため、一方又は両方の光ファイバ21について、Y方向移動駆動部35で位置調整を行うことができる。すなわち、一対の第1側方撮像部19a及び第2側方撮像部19bによって取得された画像から、X方向移動駆動部34及びY方向移動駆動部35によって、光ファイバ21を軸方向に対して垂直な方向に移動させることで、一対の光ファイバ21同士の軸を調心することが可能である。
【0051】
単心の光ファイバ同士の接続であれば、X-Y調心のみで調心作業が完了する。一方、前述したように、断面におけるコア等の配置に対して周方向に対する方向性があるようなマルチコアファイバ、偏波保持ファイバ又はホローコアファイバ等の調心においては、光ファイバ21のX-Y方向の調心のみではなく、回転方向Rの調心も必要となる。このため、本発明では、次に、光ファイバ21の回転調心を行う。
【0052】
なお、以下の各部の動作の制御は、操作部15からの入力又は自動で、制御部30によって行われる。図5(b)は、X-Y調心が終わった状態の光ファイバ21の側方画像の概念図である。前述したように、光源からの光ファイバ21の透過光による像には、コアの配置による(回転位置による)縞模様が形成される。図5(c)に示すように、それぞれの光ファイバ21をR方向に回転させることで、この縞模様が変化し、全周からの像から、断面におけるコアの配置を把握することができる。
【0053】
図6は、光ファイバ21の全周から撮像する場合の概念図である。前述したように、各撮像部による撮像は、光ファイバ21を所定角度回転させて行われる。ここで、光ファイバ21の撮像毎のステップ角度をΔθとする。すなわち、全周の像を得るためには、少なくとも360°/Δθの数の像を撮像することとなる。
【0054】
図7は、第1側方撮像部19aと第2側方撮像部19bの位置関係を示す図である。ここで、光ファイバ21の軸に対する周方向角度であって、所定の周方向位置を基準Eとすると、基準位置Eからの第1側方撮像部19aの配置角度をθ1、第2側方撮像部19bの配置角度をθ2とする。前述したように、第1側方撮像部19aと第2側方撮像部19bのなす角度はθ(図3(a))であるため、一対の第1側方撮像部19aと第2側方撮像部19bのなす角度は、θ2-θ1=θ(但しθ2>θ1)となる。
【0055】
図8(a)から図8(d)は、周方向の画像を取得する方法を示す図である。なお、図8においては、光ファイバを固定して撮像方向を時計回りに回転させているが、実際には、撮像方向が固定され、光ファイバが反時計回りに回転する。図中の角度は、光ファイバの回転角度である。
【0056】
まず、図8(a)に示すように、回転角度0°(撮像開始)において、第1側方撮像部19a及び第2側方撮像部19bは、互いに異なる2方向からの像を取得する。この際、取得される像の角度差はθとなる。次に、図8(b)に示すように、Δθごとに回転駆動部32によって光ファイバを回転させて、0°~θ(図では90°)の範囲について、第1側方撮像部19a及び第2側方撮像部19bで撮像を行う。
【0057】
なお、図8(b)では、第1側方撮像部19aによる撮像範囲を黒矢印で示し、第2側方撮像部19bによる撮像範囲を白矢印で示す。また、以下の説明において、0°=360°として、全ての角度範囲は0°~360°の範囲で示し、例えば、計算結果による角度が360°を超えた場合には、角度-360°をその角度として扱い、角度が0°を下回った場合には、角度+360°をその角度として扱うものとする。
【0058】
次に、図8(c)に示すように、θ~2θ(図では90°~180°)の範囲では、撮像を行わずに光ファイバの回転のみを行う。次に、図8(d)に示すように、Δθごとに光ファイバを回転させて、2θ~3θ(図では180°~270°)の範囲について、第1側方撮像部19a及び第2側方撮像部19bで撮像を行う。なお、図8(d)でも、第1側方撮像部19aによる撮像範囲を黒矢印で示し、第2側方撮像部19bによる撮像範囲を白矢印で示す。
【0059】
図9(a)は、第1側方撮像部19a(上段)と、第2側方撮像部19b(下段)における、光ファイバの回転角度と撮像範囲を示す概念図である。前述したように、第1側方撮像部19a及び第2側方撮像部19bともに、光ファイバの回転角度0°~θ(90°)と、2θ~3θ(180°~270°)について、Δθ毎に撮像を行う。
【0060】
ここで、前述したように、制御部30は、回転駆動部32によってそれぞれの光ファイバ21をΔθ回転させ、それぞれの角度における光ファイバ21の画像を取得する工程を繰り返し、光ファイバ21の略全周方向の画像を得て、この全周方向の画像から光ファイバ21の回転方向の位置を算出可能である。この際、本実施形態では、制御部30は、光ファイバ21の略全周方向からの画像として、一対の第1側方撮像部19aと、第2側方撮像部19bでそれぞれ撮像された両方の画像を利用して光ファイバ21の回転方向の位置を算出する。
【0061】
より詳細には、図9(b)に示すように、第2側方撮像部19bで撮像された回転角度0°~90°の画像を第1側方撮像部19aによる90°~180°の画像として利用する。同様に、第2側方撮像部19bで撮像された回転角度180°~270°の画像を第1側方撮像部19aによる270°~360°の画像として利用する。このようにすることで、実際に撮像している回転範囲は0°~90°と180°~270°の合計180°の角度範囲であり、その他の範囲は撮像を行っていないが、画像としては360°方向の画像として得ることができる。
【0062】
このように、制御部30は、第1側方撮像部19aによるθ1~θ1+θの範囲における所定範囲の画像と、第2側方撮像部19bによるθ2~θ2+θの範囲における所定範囲の画像を合わせて、第2側方撮像部19bによるθ2~θ2+θの範囲における所定範囲の画像を、第1側方撮像部19aによるθ1+θ~θ1+2θの範囲における所定範囲の画像として利用する。このため、実際に撮像する角度範囲を半減させることができ、撮像時間を短縮することができる。
【0063】
なお、この際、制御部30は、θ/Δθ=ステップ数nとすると、それぞれの第1側方撮像部19a及び第2側方撮像部19bによるn個×2の画像を合わせてθ1+θ~θ1+2θの画像とすることができる。例えば、θ=90°、Δθ=1°の場合、第1側方撮像部19a及び第2側方撮像部19bのそれぞれについて、ステップ数n=90の画像を得ることができる。このため、合計90×2=180の画像(0°~179°)の画像を得ることができる。この場合、この工程を2回繰り返すことで、360の画像(0°~359°)の画像を得ることができる。
【0064】
制御部30は、このようにして得られた光ファイバの全周からの側方画像に基づいて、回転駆動部32によって光ファイバ21の軸方向を回転軸(Z方向)として光ファイバ21を回転(R方向)させて、コアの周方向の位置合わせ、一対の光ファイバ21同士の回転調心をすることが可能である。
【0065】
なお、この場合において、第1側方撮像部19aと第2側方撮像部19bの画像の切り替えを行う境界部の画像(第1側方撮像部19aの89°における画像と、第2側方撮像部19bの0°(=第1側方撮像部19aの90°に対応))の画像を比較して、輝度調整を行ってもよい。
【0066】
例えば、それぞれの撮像部に対応する光源の輝度や、撮像部の受光感度が完全に一致しないと、撮像された画像の輝度が異なることとなる。このため、全周の画像の明暗の縞模様に基づいてコアの配置等を算出する際の誤差となりうる。このため、制御部30は、第1側方撮像部19aによる画像と、第2側方撮像部19bによる画像を比較して、境界部の画像が同一の輝度となるように少なくとも一方の画像について画像調整を行うことで、このような機差による影響を抑制することができる。
【0067】
また、制御部30は、θ/Δθ=ステップ数nとすると、それぞれの撮像部によるn+1個×2の画像を合わせてθ1+θ~θ1+2θの画像としてもよい。例えば、θ=90°、Δθ=1°の場合、第1側方撮像部19a及び第2側方撮像部19bのそれぞれについて、n+1=91(0°~90°)の画像を得ることができる。このため、1工程で、合計91×2=182の画像(0°~180°)の画像を得ることができ、この工程を2回繰り返すことで、360の画像(0°~360°)の画像を得ることができる。
【0068】
なお、この場合において、第1側方撮像部19aと第2側方撮像部19bの画像の切り替えを行う境界部においては、例えば第1側方撮像部19aの90°における画像と、第2側方撮像部19bの0°(=第1側方撮像部19aの90°に対応)の画像が重複する。この場合にはこれらの画像を比較して、輝度調整を行ってもよい。このように、重複する画像によって輝度調整を行うことで、より精度よく、第1側方撮像部19aと第2側方撮像部19bの画像の輝度調整を行うことができる。
【0069】
なお、前述したように、第1側方撮像部19aと第2側方撮像部19bのなす角度θは、90°でなくてもよいが、一対の撮像部のなす角度θは、360°の約数であることが望ましい。このようにすることで、無駄なく全周の画像を得ることができる。
【0070】
以上、本実施の形態によれば、全周からの側方画像を得るための時間を短縮することができる。例えば、Δθ=1°である場合には、従来は、一方の撮像部を用いて、光ファイバを360°回転させて、360枚の画像を取得して、コア配置等を算出していた。しかし、本実施形態では、180°の範囲において、回転と画像取得とを繰り返せば、残りの180°は画像を取得する必要が無いため、回転停止-画像取得の工程が不要となる。このため、撮像時間をほぼ半減することができる。
【0071】
また、二つの第1側方撮像部19aと第2側方撮像部19bの画像の輝度をあわせるように輝度調整を行うことで、光源の強度や撮像素子の感度の違い等の影響を抑制することができる。
【0072】
次に、第2の実施形態について説明する。図10は、第2の実施形態にかかる撮像工程を示す図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同様の機能を発揮する構成については、図1図9と同一の符号を用いて、重複する説明を省略する。
【0073】
本実施形態は、図10に示すように、0°~360°までを連続して撮像を行う。すなわち、従来と同様に、360°の範囲において、光ファイバの回転と撮像の工程を繰り返す。このため、本実施形態では、従来と同等の撮像時間を要する。この際、図10(d)に示すように、第1側方撮像部19aと第2側方撮像部19bのそれぞれが全周の画像を取得する。
【0074】
図11(a)は、図9(a)に対応する図であり、第1側方撮像部19a(上段)と、第2側方撮像部19b(下段)における、光ファイバの回転角度と撮像範囲を示す概念図である。本実施形態では、第1側方撮像部19a及び第2側方撮像部19bともに、0°~360°について、Δθ毎に撮像を行う。
【0075】
この場合、第2側方撮像部19bで撮像された回転角度0°~360°の画像を第1側方撮像部19aの90°~450°の画像として扱う。この際、前述したように、全ての角度は0~360°の範囲とするため、図11(b)に示すように、第2側方撮像部19bで撮像された回転角度0°~270°の画像を第1側方撮像部19aによる90°~360°の画像として利用し、第2側方撮像部19bで撮像された回転角度270°~360°の画像を第1側方撮像部19aによる0°~90°の画像として利用する。制御部30は、同じ角度で重複する二つの画像の輝度(濃淡)を平均化して当該角度の画像として扱う。
【0076】
すなわち、本実施形態では、制御部30は、光ファイバ21の全周について、一対の第1側方撮像部19a及び第2側方撮像部19bによってそれぞれ画像を取得し、第1側方撮像部19aによるθ1~θ1+360°の範囲の画像と、第2側方撮像部19bによるθ2~θ2+360°の範囲の画像を合わせて、第2側方撮像部19bによるθ2-θ~θ2+360°-θの範囲の画像を第1側方撮像部19aによるθ1~θ1+360°の範囲の画像に対応させて(言い換えれば、第2側方撮像部19bによるθ2~θ2+360°の範囲の画像を、第1側方撮像部19aによるθ1+θ~θ1+θ+360°の画像に対応させて)平均化することで、θ1~θ1+360°の画像として利用する。このようにすることで、画像のノイズの影響を抑制し、より精度の高い画像を得ることができる。
【0077】
第2の実施形態によれば、同一の角度での重複する画像を用いて平均化することでより高い精度で画像を取得し、回転調心を行うことができる。この際、従来の方法で360°×2周分の画像を得ようとすると、720°の回転及び撮像の工程を繰り返す必要があるが、本実施形態では、360°の回転(撮像)で同様の効果を得ることができるため、同一の精度を得るのに必要な時間を短縮することができる。
【0078】
なお、前述した、主に時間短縮効果の大きな第1の実施形態と、主に精度向上効果の大きな第2の実施形態とを切り替えて使用することができてもよい。例えば、第1の実施形態を第1モードとする。すなわち、第1モードは、第1側方撮像部19aによるθ1~θ1+θの範囲における所定範囲の画像と、第2側方撮像部19bによるθ2~θ2+θの範囲における所定範囲の画像を合わせて、第2側方撮像部19bによるθ2~θ2+θの範囲における所定範囲の画像を、第1側方撮像部19aによるθ1+θ~θ1+2θの範囲における所定範囲の画像として利用する。
【0079】
また、第2の実施形態を第2モードとする。すなわち、第2モードは、光ファイバ21の全周について、一対の第1側方撮像部19a及び第2側方撮像部19bによってそれぞれ画像を取得し、一方の第1側方撮像部19aによるθ1~θ1+360°の範囲の画像と、第2側方撮像部19bによるθ2-θ~θ2+360°-θの範囲の画像を対応させて平均化することで、θ1~θ1+360°の画像として利用する。
【0080】
この場合、操作部15による操作によって、制御部30は、回転調心を行う際に、第1モードと第2モードのいずれかを利用するか選択し、第1モードと第2モードと切り替えて使用することが可能であってもよい。
【0081】
また、上述した各実施形態では、第1側方撮像部19a、第2側方撮像部19bの二つの撮像部を用いた例を説明したが、撮像部の個数は3つ以上であってもよい。すなわち、互いに異なる方向から、光ファイバの側方へ光を照射する複数の光源と、光ファイバを挟んでそれぞれの光源と対向配置され、一対の光ファイバの側方からの像を撮像可能な複数の撮像部とを有すればよい。
【0082】
図12(a)は、3つの撮像部を用いた例を示す、光ファイバ21の軸方向から見た図である。本実施形態では、第1側方撮像部19a、第2側方撮像部19b、第3側方撮像部19cの三つの撮像部が、所定の間隔(例えば図示した例ではθ=30°)の間隔で配置される。
【0083】
図12(b)は、第1側方撮像部19a(上段)と、第2側方撮像部19b(中段)と、第3側方撮像部19c(下段)における、光ファイバの回転角度と撮像範囲を示す概念図であり、前述した第1の実施形態への適用例を示す。前述したように、第1側方撮像部19a、第2側方撮像部19b及び第3側方撮像部19cともに、光ファイバの回転角度0°~θ(30°)について、Δθ毎に撮像を行う。
【0084】
同様に、光ファイバの回転角度3θ(90°)~4θ(120°)、6θ(180°)~7θ(210°)、9θ(270°)~10θ(300°)について、Δθ毎に撮像を行う。なお、光ファイバの回転角度4θ~6θ、7θ~9θについては、撮像を行わずに回転のみが行われる。
【0085】
制御部30は、図12(c)に示すように、第2側方撮像部19b及び第3側方撮像部19cで撮像された回転角度0°~30°の画像を、それぞれ、第1側方撮像部19aによる30°~60°、60°~90°の画像として利用する。同様に、第2側方撮像部19bで撮像された回転角度90°~120°、180°~210°、270°~300の画像を、それぞれ第1側方撮像部19aによる120°~150°、210°~240°、300°~330°の画像として利用する。同様に、第3側方撮像部19cで撮像された回転角度90°~120°、180°~210°、270°~300の画像を、それぞれ第1側方撮像部19aによる150°~180°、240°~270°、330°~360°の画像として利用する。
【0086】
このように、制御部30は、第1側方撮像部19aによるθ1~θ1+θの範囲における所定範囲の画像と、第2側方撮像部19bによるθ2~θ2+θの範囲における所定範囲の画像と、第3側方撮像部19cによるθ3~θ3+θの範囲における所定範囲の画像を合わせて、第2側方撮像部19bによるθ2~θ2+θの範囲における所定範囲の画像を、第1側方撮像部19aによるθ1+θ~θ1+2θの範囲における所定範囲の画像として利用し、第3側方撮像部19cによるθ3~θ3+θの範囲における所定範囲の画像を、第1側方撮像部19aによるθ1+2θ~θ1+3θの範囲における所定範囲の画像として利用する。このため、実際に撮像する角度範囲を低減させることができ、撮像時間を短縮することができる。
【0087】
このように、n個の撮像部が角度θの間隔で配置される場合には、0°~θまでの範囲をΔθ毎に撮像し、θ~n×θの範囲は撮像せずに回転させるステップを繰り返すことで、光ファイバ21の全周に対して効率よく撮像を行うことができる。
【0088】
なお、この場合でも、各撮像部で撮影された回転角度範囲の境界における画像を重複させてもよく、又は、各撮像部で撮影された回転角度範囲の境界における画像を重複させずにΔθ毎に連続させてもよい。
【0089】
また、上述した第2の実施形態に対しても同様にして適用してもよい。図13(a)は、図12(b)に対応する図であり、第1側方撮像部19a(上段)と、第2側方撮像部19b(中段)と、第3側方撮像部19c(下段)における、光ファイバの回転角度と撮像範囲を示す概念図である。本実施形態では、第1側方撮像部19a、第2側方撮像部19b及び第3側方撮像部19cともに、0°~360°について、Δθ毎に撮像を行う。
【0090】
この場合、第2側方撮像部19bで撮像された回転角度0°~360°の画像を第1側方撮像部19aの30°~390°の画像として扱い、第3側方撮像部19cで撮像された回転角度0°~360°の画像を第1側方撮像部19aの60°~420°の画像として扱う。
【0091】
この際、前述したように、全ての角度は0~360°の範囲とするため、図13(b)に示すように、第2側方撮像部19bで撮像された回転角度0°~330°の画像を第1側方撮像部19aによる30°~360°の画像として利用し、第2側方撮像部19bで撮像された回転角度330°~360°の画像を第1側方撮像部19aによる0°~30°の画像として利用する。
【0092】
同様に、第3側方撮像部19cで撮像された回転角度0°~300°の画像を第1側方撮像部19aによる60°~360°の画像として利用し、第3側方撮像部19cで撮像された回転角度300°~360°の画像を第1側方撮像部19aによる0°~60°の画像として利用する。制御部30は、同じ角度で重複する三つの画像の輝度(濃淡)を平均化して当該角度の画像として扱う。このようにすることで、画像のノイズの影響を抑制し、より精度の高い画像を得ることができる。
【0093】
このように、3つ以上の撮像部を用いても、本実施形態では有効である。このように、n個(i=1、2、・・・n)の撮像部が角度θの間隔で配置される場合には、0°~360°までの範囲をΔθ毎に撮像した後、i番目の撮像部における0°~360°までの画像を、それぞれ、1番目の撮像部におけるi×θ~360°及び0°~i×θの範囲の画像として利用することで、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0094】
なお、三つ以上の撮像部を有する場合でも、少なくとも二つの撮像部において上記の通り制御を行うことで、効果を得ることができる。すなわち、複数の撮像部において、一の撮像部と他の撮像部とのなす角度をθとし、一の撮像部によるθ1~θ1+θの範囲における所定範囲の画像と、他の前記撮像部によるθ2~θ2+θの範囲における所定範囲の画像を合わせて、一の撮像部によるθ1~θ1+2θの範囲における所定範囲の画像として利用すればよい。
【0095】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0096】
1………融着機
3………蓋部
5………光ファイバ保持部
7………電極
11………ホルダ載置部
13………クランプ
15………操作部
17………表示部
19a………第1側方撮像部
19b………第2側方撮像部
19c………第3側方撮像部
21………光ファイバ
30………制御部
32………回転駆動部
33………搬送駆動部
34………X方向移動駆動部
35………Y方向移動駆動部
100………光源
101………光ファイバ
103………レンズ
105………撮像素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14