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  • 特開-窒素製造方法及び装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159249
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】窒素製造方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   F25J 3/04 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
F25J3/04 101
F25J3/04 104
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075112
(22)【出願日】2023-04-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】橘 博志
【テーマコード(参考)】
4D047
【Fターム(参考)】
4D047AA08
4D047AB01
4D047AB02
4D047AB04
4D047BA03
4D047CA16
4D047CA17
4D047DA05
(57)【要約】
【課題】窒素ガスと同時に酸素とアルゴンを生成することができ、酸素やアルゴンの製造設備を停止しても、窒素ガスを停止前同様に生成可能な窒素製造装置を提供する。
【解決手段】窒素製造装置1は、原料空気を高圧窒素ガス/高圧液化空気に分離する第1精留塔6と、分離した原料から高圧液化窒素・中圧空気を生成する第1凝縮器7と、中圧空気を中圧窒素ガス/中圧液化空気に分離する第2精留塔8と、分離した原料から中圧液化窒素・低圧空気を生成する第2凝縮器9と、中圧液化空気を低圧空気/液化酸素/アルゴン富化酸素ガスに分離する酸素塔11と、液化酸素から酸素ガスを生成する酸素蒸発器12と、アルゴン富化酸素ガスをアルゴンガス/アルゴン富化液化酸素に分離するアルゴン塔14と、アルゴンガスから液化アルゴンを生成するアルゴン凝縮器15と、窒素ガス・酸素・アルゴンを製品として導出するラインL6,L20,L21,L29と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素、窒素、及びアルゴンを含む空気を、圧縮、予冷、及び精製することで得られる原料空気を冷却して得られた低温原料空気を低温蒸留して、高圧窒素ガスと高圧液化空気とに分離する第1分離工程と、
前記高圧窒素ガスと前記高圧液化空気を減圧して得られた中圧液化空気とを間接熱交換させて、前記高圧窒素ガスを液化させて高圧液化窒素を生成すると共に、前記中圧液化空気を気化させて中圧空気を生成する第1凝縮工程と、
前記中圧空気を低温蒸留して、中圧窒素ガスと中圧液化空気とに分離する第2分離工程と、
前記中圧窒素ガスと前記中圧液化空気を減圧して得られた低圧液化空気とを間接熱交換させて、前記中圧窒素ガスを液化させて中圧液化窒素を生成すると共に、前記低圧液化空気を気化させて低圧空気を生成する第2凝縮工程と、
前記第2分離工程で生成された中圧液化空気の一部を低温蒸留して、低圧空気と液化酸素とアルゴン富化酸素ガスとに分離する酸素分離工程と、
前記液化酸素を気化させて、酸素ガスを生成する酸素蒸発工程と、
前記酸素分離工程で生成されたアルゴン富化酸素ガスを低温蒸留して、アルゴンガスとアルゴン富化液化酸素とに分離するアルゴン分離工程と、
前記アルゴンガスを液化させて、液化アルゴンを生成するアルゴン凝縮工程と、
前記高圧窒素ガスの一部を製品として導出する製品窒素導出工程と、
少なくとも前記酸素ガスの一部又は前記液化酸素の一部のいずれかを製品として導出する製品酸素導出工程と、
少なくとも前記アルゴンガスの一部又は前記液化アルゴンの一部のいずれかを製品として導出する製品アルゴン導出工程と、を含むことを特徴とする窒素製造方法。
【請求項2】
前記酸素蒸発工程において、前記高圧窒素ガスの一部と前記液化酸素との間接熱交換により、前記高圧窒素ガスを液化させて高圧液化窒素を生成すると共に、前記液化酸素を気化させて酸素ガスを生成し、
前記高圧液化窒素を昇圧後に第1分離工程の原料の一部とする昇圧液化窒素供給工程を含むこと特徴とする請求項1記載の窒素製造方法。
【請求項3】
前記酸素蒸発工程において、前記中圧窒素ガスの一部と前記液化酸素との間接熱交換により、前記中圧窒素ガスを液化させて中圧液化窒素を生成すると共に、前記液化酸素を気化させて酸素ガスを生成し、
前記中圧液化窒素を昇圧後に少なくとも第1分離工程又は第2分離工程のいずれかの原料とする昇圧液化窒素供給工程を含むこと特徴とする請求項1記載の窒素製造方法。
【請求項4】
前記アルゴン凝縮工程において、前記アルゴンガスと前記第2分離工程で生成された中圧液化空気の一部を減圧して得られた低圧液化空気との間接熱交換により、前記アルゴンガスを液化させて液化アルゴンを生成すると共に、前記低圧液化空気を気化させて低圧空気を生成することを特徴とする請求項1記載の窒素製造方法。
【請求項5】
前記第2分離工程において、精留塔内を下降する途中の中圧液化空気の一部を抜き出し、前記酸素分離工程の原料とする中圧液化空気サイドカット工程を含むことを特徴とする請求項1記載の窒素製造方法。
【請求項6】
前記第1分離工程において、精留塔内を下降する途中の高圧液化空気の一部を抜き出し、前記第2分離工程の原料とする高圧液化空気サイドカット工程を含むことを特徴とする請求項5記載の窒素製造方法。
【請求項7】
前記製品酸素導出工程は、少なくとも酸素塔の底部から前記酸素ガスの一部又は前記液化酸素の一部のいずれかを抜き出すと同時に、少なくとも酸素塔内を下降する途中の液化酸素又は酸素塔内を上昇する途中の酸素ガスのいずれかを抜き出すことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の窒素製造方法。
【請求項8】
酸素、窒素、及びアルゴンを含む空気を、圧縮、予冷、及び精製することで得られる原料空気を冷却して得られた低温原料空気を低温蒸留して、高圧窒素ガスと高圧液化空気とに分離する第1精留塔と、
前記高圧窒素ガスと前記高圧液化空気を減圧して得られた中圧液化空気とを間接熱交換させて、前記高圧窒素ガスを液化させて高圧液化窒素を生成すると共に、前記中圧液化空気を気化させて中圧空気を生成する第1凝縮器と、
前記中圧空気を低温蒸留して、中圧窒素ガスと中圧液化空気とに分離する第2精留塔と、
前記中圧窒素ガスと、前記中圧液化空気を減圧して得られた低圧液化空気とを間接熱交換させて、前記中圧窒素ガスを液化させて中圧液化窒素を生成すると共に、前記低圧液化空気を気化させて低圧空気を生成する第2凝縮器と、
前記第2精留塔で生成された中圧液化空気の一部を低温蒸留して、低圧空気と液化酸素とアルゴン富化酸素ガスとに分離する酸素塔と、
前記液化酸素を気化させて、酸素ガスを生成する酸素蒸発器と、
前記酸素塔で生成されたアルゴン富化酸素ガスを低温蒸留して、アルゴンガスとアルゴン富化液化酸素とに分離するアルゴン塔と、
前記アルゴンガスを液化させて、液化アルゴンを生成するアルゴン凝縮器と、
前記高圧窒素ガスの一部を製品として導出する製品窒素導出ラインと、
少なくとも前記酸素ガスの一部又は前記液化酸素の一部のいずれかを製品として導出する製品酸素導出ラインと、
少なくとも前記アルゴンガスの一部又は前記液化アルゴンの一部のいずれかを製品として導出する製品アルゴン導出ラインと、を含むことを特徴とする窒素製造装置。
【請求項9】
前記酸素蒸発器において、前記高圧窒素ガスの一部と前記液化酸素との間接熱交換により、前記高圧窒素ガスを液化させて高圧液化窒素を生成すると共に、前記液化酸素を気化させて酸素ガスを生成し、
前記高圧液化窒素を昇圧後に第1精留塔に供給する昇圧液化窒素供給ラインを含むこと特徴とする請求項8記載の窒素製造装置。
【請求項10】
前記酸素蒸発器において、前記中圧窒素ガスの一部と前記液化酸素との間接熱交換により、前記中圧窒素ガスを液化させて中圧液化窒素を生成すると共に、前記液化酸素を気化させて酸素ガスを生成し、
前記中圧液化窒素を昇圧後に少なくとも第1精留塔又は第2精留塔のいずれかに供給する昇圧液化窒素供給ラインを含むこと特徴とする請求項8記載の窒素製造装置。
【請求項11】
前記アルゴン凝縮器において、前記アルゴンガスと前記第2精留塔で生成された中圧液化空気の一部を減圧して得られた低圧液化空気との間接熱交換により、前記アルゴンガスを液化させて液化アルゴンを生成すると共に、前記低圧液化空気を気化させて低圧空気を生成することを特徴とする請求項8記載の窒素製造装置。
【請求項12】
前記第2精留塔内を下降する途中の中圧液化空気の一部を抜き出し、前記酸素塔に供給する中圧液化空気サイドカットラインを含むことを特徴とする請求項8記載の窒素製造装置。
【請求項13】
前記第1精留塔内を下降する途中の高圧液化空気の一部を抜き出し、前記第2精留塔に供給する高圧液化空気サイドカットラインを含むことを特徴とする請求項12記載の窒素製造装置。
【請求項14】
前記製品酸素導出ラインは、少なくとも前記酸素塔の塔底から前記酸素ガスの一部又は前記液化酸素の一部のいずれかを抜き出すラインと、少なくとも前記酸素塔内を下降する途中の液化酸素又は前記酸素塔内を上昇する途中の酸素ガスのいずれかを抜き出すラインとであることを特徴とする請求項8乃至13のいずれか一項に記載の窒素製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素製造方法及び窒素製造装置に関し、特に酸素及びアルゴンを併産可能な窒素製造方法及び窒素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体工場の現場では、窒素ガスを製造するための装置を用いて、原料空気から、多量かつ比較的高圧力(例えば9barA以上)の窒素ガスに加え、窒素以外の製品を生成したいという要求がある。要求される窒素以外の製品としては、例えば、高純度酸素及びアルゴンがある。このような要求に答えるべく、窒素ガスに加え、空気から窒素以外の製品を生成可能な装置が開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
特許文献1で開示されている空気分離装置によれば、原料空気を第1精留塔で第1窒素富化流体と第1酸素富化流体に分離し、第1酸素富化流体を第2精留塔で第2窒素富化流体と第2酸素富化流体に分離し、第1精留塔又は第2精留塔の中間部から酸素含有液を抜き出して第3精留塔の上部へ導入して分離することにより、製品窒素に加えて高純度酸素を生成することができる。
【0004】
また、特許文献2で開示されている空気分離装置によれば、第1~第4精留塔を用いて、9-12barAの窒素ガスに加えて、アルゴンを生成することができる。第1精留塔により9-12barAの窒素ガスを生成し、第1精留塔の凝縮器で気化した流体を複式精留システム(第2~第4精留塔)に供給して高純度酸素とアルゴンを生成することが可能である。更に複式精留システムに組み込まれた第2精留塔で生成される液化窒素をポンプで昇圧して第1精留塔に戻すことで、第1精留塔で生成される窒素ガスの量を増やす(窒素回収率を改善する)ことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6460373号明細書
【特許文献2】国際公開第2020/169257号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で開示されている空気分離装置は、比較的圧力の高い(例えば7barA以上の)窒素ガスに加えて高純度酸素を生成することが可能であるが、アルゴンを生成することはできない。
【0007】
また、特許文献2で開示されている空気分離装置は、比較的圧力の高い(例えば9barA以上の)窒素ガスを生成しつつ、同時に高純度酸素とアルゴンを生成することが可能であるが、高純度酸素とアルゴンとを生成する複式精留システムは各精留塔の高さが高いため、これらを収納するコールドボックスの高さが高くなり装置コストの大幅な上昇を招いてしまう。さらに、高純度酸素やアルゴンが一時的に不要で窒素ガスのみが必要な場合には、複式精留システムを停止させておくのが好ましいが、停止させると第2精留塔からの液化窒素の供給が無くなり、第1精留塔で生成される窒素ガス量が大幅に低下する、という問題がある。即ち、第1精留塔で窒素ガスを効率的に生成し続けるためには、高純度酸素やアルゴンが不要であっても後段の複式精留システムを停止することができない、という問題がある。
【0008】
また、特許文献2で開示されている空気分離装置は、複式精留システムにトラブルがあった場合、第1精留塔のみで運転を継続して窒素ガスのみを生成することは可能であるが、上記の理由で大幅に窒素ガス回収率が低下する、といった問題もある。
【0009】
そこで、本発明は、シンプルな機器構成で比較的圧力の高い(例えば8barA以上の)窒素ガスを生成しつつ、同時に高純度酸素とアルゴンを生成することができ、且つ、高純度酸素やアルゴンが不要となる場合や機器トラブルによりこれらの製造に係る設備(酸素塔やアルゴン塔)を停止した状態でも、窒素回収率の低下や消費動力の増加を伴うことなく窒素ガスを生成することが可能な窒素製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の窒素製造方法は、酸素、窒素、及びアルゴンを含む空気を、圧縮、予冷、及び精製することで得られる原料空気を冷却して得られた低温原料空気を低温蒸留して、高圧窒素ガスと高圧液化空気とに分離する第1分離工程と、前記高圧窒素ガスと前記高圧液化空気を減圧して得られた中圧液化空気とを間接熱交換させて、前記高圧窒素ガスを液化させて高圧液化窒素を生成すると共に、前記中圧液化空気を気化させて中圧空気を生成する第1凝縮工程と、前記中圧空気を低温蒸留して、中圧窒素ガスと中圧液化空気とに分離する第2分離工程と、前記中圧窒素ガスと、前記中圧液化空気を減圧して得られた低圧液化空気とを間接熱交換させて、前記中圧窒素ガスを液化させて中圧液化窒素を生成すると共に、前記低圧液化空気を気化させて低圧空気を生成する第2凝縮工程と、前記第2分離工程で生成された中圧液化空気の一部を低温蒸留して、低圧空気と液化酸素とアルゴン富化酸素ガスとに分離する酸素分離工程と、前記液化酸素を気化させて、酸素ガスを生成する酸素蒸発工程と、前記酸素分離工程で生成されたアルゴン富化酸素ガスを低温蒸留して、アルゴンガスとアルゴン富化液化酸素とに分離するアルゴン分離工程と、前記アルゴンガスを液化させて、液化アルゴンを生成するアルゴン凝縮工程と、前記高圧窒素ガスの一部を製品として導出する製品窒素導出工程と、少なくとも前記酸素ガスの一部又は前記液化酸素の一部のいずれかを製品として導出する製品酸素導出工程と、少なくとも前記アルゴンガスの一部又は前記液化アルゴンの一部のいずれかを製品として導出する製品アルゴン導出工程と、を含むことを特徴としている。
【0011】
また、本発明の窒素製造方法は、前記酸素蒸発工程において、前記高圧窒素ガスの一部と前記液化酸素との間接熱交換により、前記高圧窒素ガスを液化させて高圧液化窒素を生成すると共に、前記液化酸素を気化させて酸素ガスを生成し、前記高圧液化窒素を昇圧後に第1分離工程の原料の一部とする昇圧液化窒素供給工程を含むことを特徴としている。
【0012】
また、本発明の窒素製造方法は、前記酸素蒸発工程において、前記中圧窒素ガスの一部と前記液化酸素との間接熱交換により、前記中圧窒素ガスを液化させて中圧液化窒素を生成すると共に、前記液化酸素を気化させて酸素ガスを生成し、前記中圧液化窒素を昇圧後に少なくとも第1分離工程又は第2分離工程のいずれかの原料とする昇圧液化窒素供給工程を含むことを特徴としている。
【0013】
また、本発明の窒素製造方法は、前記アルゴン凝縮工程において、前記アルゴンガスと、前記第2分離工程で生成された中圧液化空気の一部を減圧して得られた低圧液化空気との間接熱交換により、前記アルゴンガスを液化させて液化アルゴンを生成すると共に、前記低圧液化空気を気化させて低圧空気を生成することを特徴としている。
【0014】
また、本発明の窒素製造方法は、前記第2分離工程において、精留塔内を下降する途中の中圧液化空気の一部を抜き出し、前記酸素分離工程の原料とする中圧液化空気サイドカット工程を含むことを特徴としている。
【0015】
また、本発明の窒素製造方法は、前記第1分離工程において、精留塔内を下降する途中の高圧液化空気の一部を抜き出し、前記第2分離工程の原料とする高圧液化空気サイドカット工程を含むことを特徴としている。
【0016】
また、本発明の窒素製造方法は、前記製品酸素導出工程において、少なくとも酸素塔の底部から前記酸素ガスの一部又は前記液化酸素の一部のいずれかを抜き出すと同時に、少なくとも酸素塔内を下降する途中の液化酸素又は酸素塔内を上昇する途中の酸素ガスのいずれかを抜き出すことを含むことを特徴としている。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の窒素製造装置は、酸素、窒素、及びアルゴンを含む空気を、圧縮、予冷、及び精製することで得られる原料空気を冷却して得られた低温原料空気を低温蒸留して、高圧窒素ガスと高圧液化空気とに分離する第1精留塔と、前記高圧窒素ガスと前記高圧液化空気を減圧して得られた中圧液化空気とを間接熱交換させて、前記高圧窒素ガスを液化させて高圧液化窒素を生成すると共に、前記中圧液化空気を気化させて中圧空気を生成する第1凝縮器と、前記中圧空気を低温蒸留して、中圧窒素ガスと中圧液化空気とに分離する第2精留塔と、前記中圧窒素ガスと、前記中圧液化空気を減圧して得られた低圧液化空気とを間接熱交換させて、前記中圧窒素ガスを液化させて中圧液化窒素を生成すると共に、前記低圧液化空気を気化させて低圧空気を生成する第2凝縮器と、前記第2精留塔で生成された中圧液化空気の一部を低温蒸留して、低圧空気と液化酸素とアルゴン富化酸素ガスとに分離する酸素塔と、前記液化酸素を気化させて、酸素ガスを生成する酸素蒸発器と、前記酸素塔で生成されたアルゴン富化酸素ガスを低温蒸留して、アルゴンガスとアルゴン富化液化酸素とに分離するアルゴン塔と、前記アルゴンガスを液化させて、液化アルゴンを生成するアルゴン凝縮器と、前記高圧窒素ガスの一部を製品として導出する製品窒素導出ラインと、少なくとも前記酸素ガスの一部又は前記液化酸素の一部のいずれかを製品として導出する製品酸素導出ラインと、少なくとも前記アルゴンガスの一部又は前記液化アルゴンの一部のいずれかを製品として導出する製品アルゴン導出ラインと、を含むことを特徴としている。
【0018】
また、本発明の窒素製造装置は、前記酸素蒸発器において、前記高圧窒素ガスの一部と前記液化酸素との間接熱交換により、前記高圧窒素ガスを液化させて高圧液化窒素を生成すると共に、前記液化酸素を気化させて酸素ガスを生成し、前記高圧液化窒素を昇圧後に第1精留塔に供給する昇圧液化窒素供給ラインを含むことを特徴としている。
【0019】
また、本発明の窒素製造装置は、前記酸素蒸発器において、前記中圧窒素ガスの一部と前記液化酸素との間接熱交換により、前記中圧窒素ガスを液化させて中圧液化窒素を生成すると共に、前記液化酸素を気化させて酸素ガスを生成し、前記中圧液化窒素を昇圧後に少なくとも第1精留塔又は第2精留塔のいずれかに供給する昇圧液化窒素供給ラインを含むことを特徴としている。
【0020】
また、本発明の窒素製造装置は、前記アルゴン凝縮器において、前記アルゴンガスと、前記第2精留塔で生成された中圧液化空気の一部を減圧して得られた低圧液化空気との間接熱交換により、前記アルゴンガスを液化させて液化アルゴンを生成すると共に、前記低圧液化空気を気化させて低圧空気を生成することを特徴としている。
【0021】
また、本発明の窒素製造装置は、前記第2精留塔内を下降する途中の中圧液化空気の一部を抜き出し、前記酸素塔に供給する中圧液化空気サイドカットラインを含むことを特徴としている。
【0022】
また、本発明の窒素製造装置は、前記第1精留塔内を下降する途中の高圧液化空気の一部を抜き出し、前記第2精留塔に供給する高圧液化空気サイドカットラインを含むことを特徴としている。
【0023】
また、本発明の窒素製造装置は、前記酸素導出ラインが、少なくとも前記酸素塔の底部から前記酸素ガスの一部又は前記液化酸素の一部のいずれかを抜き出すラインと、少なくとも前記酸素塔内を下降する途中の液化酸素及び前記酸素塔内を上昇する途中の酸素ガスのいずれかを抜き出すラインとであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明の窒素製造方法及び窒素製造装置によれば、シンプルな機器構成で比較的圧力の高い(例えば8barA以上)の製品窒素ガスを多量に(例えば空気量の40%以上)回収しつつ、同時に少量の製品酸素と少量の製品アルゴンを回収することができ、且つ、製品酸素や製品アルゴンが不要となる場合や機器トラブルによりこれらの製造に係る設備(酸素塔やアルゴン塔)を停止した状態でも、窒素回収率の低下や消費動力の増加を伴うことなく製品窒素ガスを回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の窒素製造方法を適用した第1形態例の窒素製造装置の系統図である。
図2】本発明の窒素製造方法を適用した第2形態例の窒素製造装置の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1形態例)
図1は、本発明の窒素製造方法を適用した第1形態例の窒素製造装置1の系統図である。なお、以下の説明における高圧、中圧、低圧や高温、低温は、各形態例それぞれにおける相対的な圧力や温度の相違を示すものであって、圧力範囲や温度範囲を特定するものではない。また、空気及び液化空気は少なくとも酸素、窒素、アルゴンを含み酸素濃度5%乃至70%の範囲の組成の混合流体であり、窒素ガス及び液化窒素は窒素濃度95%以上の組成の混合流体であり、酸素ガス及び液化酸素は酸素濃度70%以上の組成の混合流体であり、アルゴンガス又は液化アルゴンはアルゴン濃度90%以上の組成の混合流体である。
【0027】
窒素製造装置1は、空気AIRから、第1精留塔6及び第2精留塔8で窒素ガスを生成し、第2精留塔8の底部の中圧液化空気を原料として酸素塔11及びアルゴン塔14でそれぞれ製品液化酸素LO及び製品液化アルゴンLARも生成可能な窒素製造装置である。
【0028】
第1形態例の窒素製造装置1は、酸素、窒素、及びアルゴンを含む空気を圧縮、予冷、及び精製する空気圧縮機2、空気予冷器3、及び空気精製器4と、導入される流体間での熱交換を行い、熱交換後の流体を導出する主熱交換器5と、酸素、窒素、及びアルゴンを含む空気を、圧縮、予冷、及び精製することで得られる原料空気を冷却して得られた低温原料空気を低温蒸留して、高圧窒素ガスと高圧液化空気とに分離する第1精留塔6と、高圧窒素ガスと高圧液化空気を減圧して得られた中圧液化空気とを間接熱交換させて、高圧窒素ガスを液化させて高圧液化窒素を生成すると共に、中圧液化空気を気化させて中圧空気を生成する第1凝縮器7と、中圧空気を低温蒸留して、中圧窒素ガスと中圧液化空気とに分離する第2精留塔8と、中圧窒素ガスと中圧液化空気を減圧して得られた低圧液化空気とを間接熱交換させて、中圧窒素ガスを液化させて中圧液化窒素を生成すると共に、低圧液化空気を気化させて低圧空気を生成する第2凝縮器9と、導入したガスを断熱膨張させる膨張タービン10と、第2精留塔8で生成された中圧液化空気の一部を低温蒸留して、低圧空気と液化酸素とアルゴン富化酸素ガスとに分離する酸素塔11と、前記中圧窒素ガスの一部と前記液化酸素とを間接熱交換させて、中圧窒素ガスを液化させて中圧液化窒素を生成すると共に、液化酸素を気化させて酸素ガスを生成する酸素蒸発器12と、酸素蒸発器12で生成された中圧液化窒素を昇圧するための液化窒素ポンプ13と、酸素塔11で生成されたアルゴン富化酸素ガスを低温蒸留して、アルゴンガスとアルゴン富化液化酸素とに分離するアルゴン塔14と、アルゴンガスと中圧液化空気を減圧して得られた低圧液化空気との間接熱交換により、アルゴンガスを液化させて液化アルゴンを生成すると共に、低圧液化空気を気化させて低圧空気を生成するアルゴン凝縮器15と、を構成機器として備えている。
【0029】
窒素製造装置1においては、高圧窒素ガスの一部を製品として導出する製品窒素導出ラインL6と、液化酸素の一部を製品として導出する製品酸素導出ラインL20と、酸素塔11内を上昇する途中の酸素ガスの一部を製品として導出する製品酸素導出ラインL21と、液化アルゴンの一部を製品として導出する製品アルゴン導出ラインL29と、酸素蒸発器12において生成された中圧液化窒素を液化窒素ポンプ13で昇圧した後に、第1精留塔6に供給する昇圧液化窒素供給ラインL18及び第2精留塔8に供給する昇圧液化窒素供給ラインL19と、を含むラインL1~L30によって、構成機器間及び構成機器と外部と、が連通する。
【0030】
また、窒素製造装置1においては、上記ライン途中の必要な箇所に、ライン内を流れる流体の減圧、閉止、流量調節ためのバルブV1~V8が配置されている。
【0031】
このような構成を含む窒素製造装置1を用いて、空気AIRから各種製品ガス及び製品液化ガスが製造されるプロセスについて、図1を参照して、流れを追って説明する。
【0032】
大気中からラインL1に導入した酸素、窒素、及びアルゴンを含む空気AIRを、空気圧縮機2で圧縮し、空気予冷器3で予冷し、空気精製器4で精製することで得られる原料空気Aを主熱交換器5で冷却して低温原料空気Bを得る。
【0033】
次に、低温原料空気Bを第1精留塔6の底部側に供給し、低温蒸留して、高圧窒素ガスCと高圧液化空気Dとに分離する(第1分離工程)。
【0034】
第1精留塔6底部からラインL2に導出した高圧液化空気Dの一部をラインL3に分岐し、バルブV1で減圧して得られた中圧液化空気Eと、第1精留塔6頂部からラインL4に導出した高圧窒素ガスCとを第1凝縮器7で間接熱交換させ、中圧液化空気Eを気化させて中圧空気Fを生成すると共に、高圧窒素ガスCを液化させて高圧液化窒素Gを生成する(第1凝縮工程)。高圧液化窒素Gは、ラインL5から第1精留塔6の上部に導入され、第1精留塔6の還流液となる。
【0035】
第1精留塔6頂部からラインL4に導出した高圧窒素ガスCの一部を製品窒素導出ラインL6に分岐し、主熱交換器5で常温まで加温した後に製品窒素ガスGNとして回収する(製品窒素導出工程)。
【0036】
第1凝縮器7で気化した中圧空気FをラインL7から第2精留塔8の底部側に供給し、低温蒸留して、中圧窒素ガスHと中圧液化空気Iとに分離する(第2分離工程)。また、第1精留塔6の底部からラインL2に導出した高圧液化空気Dの一部をラインL8に分岐し、バルブV2で減圧した後に第2精留塔8の底部側に供給し、第2分離工程の原料の一部とする。
【0037】
第2精留塔8底部からラインL9に導出した中圧液化空気Iの一部をラインL10に分岐し、バルブV3で減圧して得られた低圧液化空気Jと、第2精留塔8頂部からラインL11に導出した中圧窒素ガスHとを第2凝縮器9で間接熱交換させ、低圧液化空気Jを気化させて低圧空気Kを生成すると共に、中圧窒素ガスHを液化させて中圧液化窒素Lを生成する(第2凝縮工程)。中圧液化窒素Lは、ラインL12から第2精留塔8の上部に導入され、第2精留塔8の還流液となる。
【0038】
第2凝縮器9で気化した低圧空気KをラインL13から主熱交換器5に導入し、主熱交換器5で加温した後に、膨張タービン10で断熱膨張させ、装置の運転に必要な寒冷を発生させる。膨張タービン10での断熱膨張により得られた流体をラインL14から主熱交換器5に導入し主熱交換器5で常温まで加温した後に廃ガスWGとして回収し、空気精製器4の再生等に利用する。
【0039】
第2精留塔8の底部からラインL9に導出した中圧液化空気Iの一部をラインL15に分岐し、バルブV4で減圧し低圧液化空気とした後に、酸素塔11の頂部に供給し、低温蒸留して、低圧空気Rと液化酸素Mとアルゴン富化酸素ガスNとに分離する(酸素分離工程)。
【0040】
第2精留塔8頂部からラインL11に導出しラインL16に分岐した中圧窒素ガスHと、酸素塔11底部に位置する液化酸素Mとを酸素蒸発器12で間接熱交換させ、中圧窒素ガスHを液化させて中圧液化窒素Oを生成すると共に、液化酸素Mを気化させて酸素ガスPを生成する(酸素蒸発工程)。
【0041】
酸素蒸発器12で液化した中圧液化窒素OをラインL17から導出し液化窒素ポンプ13で昇圧して昇圧液化窒素Qとし、昇圧液化窒素Qの一部を昇圧液化窒素供給ラインL18に分岐し、バルブV5を介して第1精留塔6の頂部又は上部に供給し、残りを昇圧液化窒素供給ラインL19に分岐し、バルブV6を介して第2精留塔8の頂部又は上部に供給する(昇圧液化窒素供給工程)。
【0042】
酸素蒸発器12で気化しなかった液化酸素Mを製品酸素導出ラインL20に導出し、製品液化酸素LOとして回収する(製品酸素導出工程)。このとき、前記製品液化酸素LOの代わりに、又は同時に、酸素蒸発器12で気化した酸素ガスPを酸素塔11の底部から製品酸素導出ラインL32に導出し、主熱交換器5で常温まで加温した後に製品酸素ガスGOとして回収することもできる(製品酸素導出工程)。
【0043】
また、酸素蒸発器12で気化し、酸素分離工程において酸素塔11内を上昇する途中の酸素ガスPの一部を製品酸素導出ラインL21に抜き出す(製品酸素導出工程)。これにより、酸素塔11底部から全ての製品酸素を導出する場合に比べて酸素塔11の製品酸素導出ラインL21の導出位置よりも下部における精留条件が改善され、酸素塔11下部での低温蒸留が促進されることにより、酸素塔11底部から導出する製品酸素の酸素純度を高めることができる。
【0044】
また、酸素塔11頂部からラインL22に導出した低圧空気RをラインL14と膨張タービン10出口の位置で合流させ、主熱交換器5で常温まで加温した後に廃ガスWGとして回収する。このとき、ラインL14と合流させることなく、主熱交換器5で常温まで加温した後に廃ガスWGとして回収することもできる。
【0045】
また、酸素塔11内の中間部からアルゴン富化酸素ガスNをラインL23から抜き出し、アルゴン塔14の底部に供給し、低温蒸留して、アルゴンガスSとアルゴン富化液化酸素Tとに分離する(アルゴン分離工程)。アルゴン富化液化酸素Tは、アルゴン塔14の底部からラインL24に抜き出し、酸素塔11の中間部に供給する。
【0046】
アルゴン塔14頂部からラインL25に導出したアルゴンガスSと、ラインL15からラインL26に分岐した中圧液化空気IをバルブV7で減圧して得られた低圧液化空気Uとをアルゴン凝縮器15で間接熱交換させ、アルゴンガスSを液化させて液化アルゴンVを生成すると共に、低圧液化空気Uを気化させて低圧空気Wを生成する(アルゴン凝縮工程)。液化アルゴンVは、ラインL28からアルゴン塔14の上部に導入され、アルゴン塔14の還流液となる。
【0047】
アルゴン凝縮器15で気化しラインL27から導出した低圧空気WをラインL14と膨張タービン10出口の位置で合流させ、主熱交換器5で常温まで加温した後に廃ガスWGとして回収する。このとき、ラインL14と合流させることなく、主熱交換器5で常温まで加温した後に廃ガスWGとして回収することもできる。
【0048】
液化アルゴンVの一部をラインL28から製品アルゴン導出ラインL29に分岐し、製品液化アルゴンLARとして回収する(製品アルゴン導出工程)。
【0049】
製品液化アルゴンLAR若しくは製品液化酸素LOが不要な時、及び、トラブル等により酸素塔11若しくはアルゴン塔14を停止する必要がある時は、ラインL15を介して酸素塔11へ供給している中圧液化空気Iの供給を停止しつつ、製品窒素ガスGNを採取し続けることができる。この場合、バルブV4及びバルブV7を閉止するとともに、ラインL16から導出する中圧窒素ガスHの代わりに第2凝縮器9で液化して得られた中圧液化窒素LをラインL12から図中に破線で示すラインL30に分岐し、バルブV8を介して、ラインL17の液化窒素ポンプ13の上流側に導入し、昇圧液化窒素供給ラインL18からバルブV5を介して第1精留塔6の頂部又は上部に供給する。
【0050】
第1形態例によれば、製品窒素ガスGNを回収しつつ、同時に少量の製品酸素(製品酸素ガスGO及び製品液化酸素LO)や製品液化アルゴンLARを回収することができる。さらに、製品酸素(製品酸素ガスGO及び製品液化酸素LO)や製品液化アルゴンLARが不要な場合には、プロセスの中(第2分離工程)で生成された中圧液化空気の供給を停止することができ、この場合にも窒素回収率の低下や消費動力の増加を伴うことなく高圧窒素ガスを生成し続けることができる。また、製品液化アルゴンLARが不要な場合にはプロセスの中(酸素分離工程)で生成されたアルゴン富化酸素ガスの供給を停止することができ、この場合にも窒素回収率の低下や消費動力の増加を伴うことなく高圧窒素ガスを生成し続けることができる。
【0051】
すなわち、第1形態例によれば、シンプルな機器構成で比較的高い圧力(例えば8barA以上)の製品窒素ガスGNを多量に(例えば空気量の40%以上)回収しつつ、同時に少量の製品酸素(製品酸素ガスGO及び製品液化酸素LO)と少量の製品液化アルゴンLARを回収することができ、且つ、製品酸素(製品酸素ガスGO及び製品液化酸素LO)や製品液化アルゴンLARが不要となる場合や機器トラブルによりこれらの製造に係る設備(酸素塔やアルゴン塔)を停止した状態でも、窒素回収率の低下や消費動力の増加を伴うことなく製品窒素ガスGNを回収することができる。
【0052】
また、第1形態例によれば、そのプロセスにおいて中圧液化窒素を昇圧後に少なくとも第1分離工程又は第2分離工程のいずれかの原料とする昇圧液化窒素供給工程を含むため、製品の回収率を向上させることができる。
【0053】
(第2形態例)
図2は、本発明の窒素製造方法を適用した第2形態例の窒素製造装置101の系統図である。第1形態例の窒素製造装置1では、第2精留塔8の底部の中圧液化空気を原料として酸素塔11及びアルゴン塔14でそれぞれ製品液化酸素LO及び製品液化アルゴンLARも生成可能な窒素製造装置である。一方、第2形態例の窒素製造装置101は、第2精留塔8の中間部の中圧液化空気を原料としている点で異なるものであるが、第1形態例の窒素製造装置1と同様の基本構成を備えるものである。なお、第1形態例の窒素製造装置1と同様の構成については、図2において図1の窒素製造装置1と同じ符号を付して示し、第1形態例の窒素製造装置1と異なるように繋いだライン及び異なる位置に配置したバルブについては、図2において数字の後に「b」を付加した符号を付して示している。
【0054】
窒素製造装置101は、第1形態例の窒素製造装置1の構成機器に加え、さらに、気体と液体とを分離させるための気液分離器16と、液化酸素を昇圧するための液化酸素ポンプ17と、を構成機器として備えている。
【0055】
また、窒素製造装置101においては、第1精留塔6内を下降する途中の高圧液化空気の一部を抜き出してこれを第2精留塔8の中間部に供給する高圧液化空気サイドカットラインL8bと、第2精留塔8内を下降する途中の中圧液化空気の一部を抜き出してこれを酸素塔11の頂部に供給する中圧液化空気サイドカットラインL15bと、酸素蒸発器12において生成した高圧液化窒素を昇圧後に第1精留塔6に供給する昇圧液化窒素供給ラインL18bといった第1形態例の窒素製造装置1のラインに追加又は置き換えたラインも用いられている。また、窒素製造装置101においては、第1形態例の窒素製造装置1とは一部異なる場所に配置されているが、ライン途中の必要な箇所にバルブが配置されている。
【0056】
以下より、図2を参照して、窒素製造装置101を用いて、空気AIRから各種製品ガス及び製品液化ガスが製造されるプロセスについて流れを追って説明する。
【0057】
まず、第1形態例と同様に、大気中からラインL1に導入した酸素、窒素、及びアルゴンを含む空気AIRを、空気圧縮機2で圧縮し、空気予冷器3で予冷し、空気精製器4で精製することで得られる原料空気Aを主熱交換器5で冷却して低温原料空気Bを得る。
【0058】
次に、第1分離工程として、第1形態例と同様、低温原料空気Bを第1精留塔6の底部側に供給し、低温蒸留して、高圧窒素ガスCと高圧液化空気Dとに分離する。
【0059】
第1凝縮工程として、第1形態例と同様、第1精留塔6底部からラインL2に導出した高圧液化空気DをバルブV1で減圧して得られた中圧液化空気Eと、第1精留塔6頂部からラインL4に導出した高圧窒素ガスCとを第1凝縮器7で間接熱交換させ、中圧液化空気Eを気化させて中圧空気Fを生成すると共に、高圧窒素ガスCを液化させて高圧液化窒素Gを生成する。高圧液化窒素Gは、ラインL5から第1精留塔6の上部に導入され、第1精留塔6の還流液となる。
【0060】
製品窒素導出工程として、第1形態例と同様、第1精留塔6頂部からラインL4に導出した高圧窒素ガスCの一部を製品窒素導出ラインL6に分岐し、主熱交換器5で常温まで加温した後に製品窒素ガスGNとして回収する。
【0061】
第2分離工程として、ラインL7から中圧空気Fの一部を第2精留塔8の底部側に供給し、低温蒸留して、中圧窒素ガスHと中圧液化空気Iとに分離する。また、第1形態例では、第1精留塔6の底部からラインL2に導出した高圧液化空気Dの一部を第2分離工程の原料の一部としていたが、第2形態例では、第1精留塔6内を下降する途中の高圧液化空気Dの一部を高圧液化空気サイドカットラインL8bに抜き出してバルブV2bで減圧した後に第2精留塔8の中間部に供給し、これを第2分離工程の原料の一部とする(高圧液化空気サイドカット工程)。
【0062】
中圧空気Fの一部は、ラインL7からラインL31bに分岐して主熱交換器5に導入し主熱交換器5で加温した後に膨張タービン10で断熱膨張させ、装置の運転に必要な寒冷を発生させる。膨張タービン10での断熱膨張により得られた流体をラインL14から主熱交換器5に導入し主熱交換器5で常温まで加温した後に廃ガスWGとして回収し、空気精製器4の再生等に利用する。
【0063】
第2凝縮工程として、第2精留塔8底部からラインL9に導出した中圧液化空気IをバルブV3で減圧して得られた低圧液化空気Jと、第2精留塔8頂部からラインL11に導出した中圧窒素ガスHとを第2凝縮器9で間接熱交換させ、低圧液化空気Jを気化させて低圧空気Kを生成すると共に、中圧窒素ガスHを液化させて中圧液化窒素Lを生成する。中圧液化窒素Lの一部は、ラインL12から第2精留塔8の上部に導入され、第2精留塔8の還流液となる。また、ラインL12からラインL30bに分岐した中圧液化窒素Lの一部を気液分離器16に供給する。
【0064】
第2凝縮器9で気化した低圧空気KをラインL13bから廃ガスWGとして回収するためのラインL14に合流させて、空気精製器4の再生等に利用する。
【0065】
第1形態例では、第2精留塔8の底部からラインL9に導出した中圧液化空気Iの一部を酸素分離工程の原料としていたが、第2形態例では、第2精留塔8内を下降する途中の中圧液化空気Iの一部を中圧液化空気サイドカットラインL15bに抜き出してバルブV4bで減圧した後に酸素塔11の頂部に供給し、これを酸素分離工程の原料とする(中圧液化空気サイドカット工程)。
【0066】
酸素分離工程として、中圧液化空気サイドカット工程を経て供給された中圧液化空気Iを低温蒸留して、低圧空気Rと液化酸素Mとアルゴン富化酸素ガスNとに分離する。
【0067】
酸素蒸発工程として、第1精留塔6頂部からラインL4に導出しラインL16bに分岐した高圧窒素ガスCと、酸素塔11底部に位置する液化酸素Mとを酸素蒸発器12で間接熱交換させ、高圧窒素ガスCを液化させて高圧液化窒素Xを生成すると共に、液化酸素Mを気化させて酸素ガスPを生成する。
【0068】
酸素蒸発器12で液化した高圧液化窒素XをラインL17bから導出しバルブV6bで減圧した後に気液分離器16に供給し、中圧液化窒素Oと中圧窒素ガスQ2とに分離する。昇圧液化窒素供給工程として、気液分離器16で分離した中圧液化窒素Oを昇圧液化窒素供給ラインL18bから導出し液化窒素ポンプ13で昇圧して昇圧液化窒素Qとし、バルブV5を介して第1精留塔6の頂部又は上部に供給する。一方、気液分離器16で分離した中圧窒素ガスQ2をラインL19bに導出し第2精留塔8の頂部又は上部に供給する。
【0069】
製品酸素導出工程として、酸素蒸発器12で気化しなかった液化酸素Mを製品酸素導出ラインL20bに導出し、液化酸素ポンプ17で昇圧して昇圧液化酸素Yを生成し、昇圧液化酸素Yを主熱交換器5で気化させて常温まで加温した後に製品高圧酸素ガスHPGOとして回収する。
【0070】
さらに、製品酸素導出工程として、酸素蒸発器12で気化し、酸素塔11内を上昇する途中の酸素ガスPを酸素塔11から製品酸素導出ラインL21に導出し、主熱交換器5で常温まで加温した後に製品酸素ガスGOとして回収する。
【0071】
酸素塔11内の中間部からアルゴン富化酸素ガスNをラインL23から抜き出し、第1形態例と同様に、アルゴン分離工程、アルゴン凝縮工程、及び製品アルゴン導出工程を経て、液化アルゴンVの一部を製品アルゴン導出ラインL29に分岐し、製品液化アルゴンLARとして回収する。
【0072】
製品液化アルゴンLAR若しくは製品高圧酸素ガスHPGOが不要な時、及び、トラブル等により酸素塔11若しくはアルゴン塔14を停止する必要がある時は、中圧液化空気サイドカットラインL15bを介して酸素塔11へ供給している中圧液化空気Iの供給を停止しつつ、製品窒素ガスGNを採取し続けることができる。この場合、バルブV4b及びバルブV7を閉止するとともに、バルブV6bを閉止してラインL17bから導出する高圧液化窒素Xの流れを停止する。
【0073】
よって、第2形態例によれば、第1形態例と同様、シンプルな機器構成で比較的圧力の高い(例えば8barA以上)の製品窒素ガスGNを多量に(例えば空気量の40%以上)回収しつつ、同時に少量の製品酸素(製品酸素ガスGO及び製品高圧酸素ガスHPGO)と少量の製品液化アルゴンLARを回収することができ、且つ、製品酸素(製品酸素ガスGO及び製品高圧酸素ガスHPGO)や製品液化アルゴンLARが不要となる場合や機器トラブルによりこれらの製造に係る設備(酸素塔やアルゴン塔)を停止した状態でも、窒素回収率の低下や消費動力の増加を伴うことなく製品窒素ガスGNを回収することができる。
【0074】
また、第2形態例においては、中圧液化空気サイドカット工程として、第2精留塔8内を下降する途中の中圧液化空気Iの一部を中圧液化空気サイドカットラインL15bに抜き出してバルブV4bで減圧した後に酸素塔11の頂部に供給している。原料空気A中に含まれ、空気精製器4で除去しきれなかった微量の炭化水素類は、窒素、アルゴン、酸素と比べて沸点が高く(揮発性が低く)、各精留塔での低温蒸留により塔底側に濃縮する性質がある。したがって、第1形態例のように、酸素塔11の原料となる中圧液化空気Iを第2精留塔8底部からラインL9に導出し、これをラインL15に分岐して酸素塔11に供給する場合、第2精留塔8底部に濃縮した炭化水素類が最終的に酸素塔11の底部に濃縮し、製品酸素中の不純物となり得る。しかしながら、第2形態例によれば、中圧液化空気サイドカットラインL15bを用いて中圧液化空気Iを酸素塔11に供給することにより、酸素塔11の原料中に炭化水素類が混入するのを抑制できるため、製品酸素中の炭化水素類の濃度を低減することができる。
【0075】
また、第2形態例においては、高圧液化空気サイドカット工程として、第1精留塔6内を下降する途中の高圧液化空気Dの一部を高圧液化空気サイドカットラインL8bに抜き出して、バルブV2bで減圧した後に第2精留塔8の中間部に供給している。上述の中圧液化空気サイドカット工程では、中圧液化空気サイドカットラインL15bにより中圧液化空気Iを酸素塔11に供給することで酸素塔11底部の液化酸素中への炭化水素類の濃縮は抑えられるが、一方で第2精留塔8内の中圧液化空気サイドカットラインL15bの導出位置よりも下部において下降液が減少するため、中圧液化空気サイドカットラインL15bに導出する中圧液化空気Iの流量がある程度多くなると、第2精留塔8の下部で下降液が不足し、炭化水素類を十分に分離できなくなる。よって、中圧液化空気サイドカットラインL15bから導出する中圧液化空気に炭化水素類が混入する問題が生じるが、上述のように高圧液化空気サイドカットラインL8bを用いて炭化水素類をほとんど含まない高圧液化空気Dを第2精留塔8の中間部に供給することにより、第2精留塔8の下部において十分な下降液量が確保できるようになるため、中圧液化空気サイドカットラインL15bから導出する中圧液化空気Iの流量が増えた場合においても、酸素塔11への炭化水素類の混入を抑制することができる。
【0076】
(その他の実施形態例)
以上、本発明を上記の実施形態例に基づき説明したが、本発明は上記の実施形態例に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0077】
製品酸素導出工程として、上述の形態例においては、酸素塔11内を上昇する途中の酸素ガスPの一部を製品酸素導出ラインL21に抜き出しているが、これに代えて、又はこれに加えて、酸素塔11内を下降する途中の液化酸素の一部を製品酸素導出ラインに抜き出して、製品液化酸素として回収したり、液化酸素ポンプで昇圧し、主熱交換器5で気化させて常温まで加温した後に製品高圧酸素ガスとして回収してもよい。
【0078】
また、第1形態例において、昇圧液化窒素Qの全量を第1精留塔6の頂部又は上部に供給し、第1精留塔6の頂部又は上部から導出した高圧液化窒素Gを減圧後に第2精留塔8の頂部に供給することもできる。
【0079】
さらに、製品アルゴン導出工程として、製品液化アルゴンLARの代わりにアルゴン塔14頂部からアルゴンガスを導出して、主熱交換器5で常温まで加温した後に製品アルゴンガスとして回収することもできる。
【0080】
また、製品液化アルゴンLARの純度を高くするために、アルゴン塔14の長さを長くすることができるが、この場合に一般的な方法としてアルゴン塔14を二分割して並べて配置し、ライン、バルブ、揚液ポンプ等を介して各々を直列に接続することもできる。
【0081】
膨張タービン10に供給する流体に、第1凝縮器7で気化して得られた中圧空気Fの全量を利用することもできる。この場合、膨張タービン10出口の流体を第2分離工程の原料とすることができる。
【0082】
ラインL1を流れる原料空気Aの一部を分岐して膨張タービン10で断熱膨張させ、装置の運転に必要な寒冷を発生させることもできる。この場合、膨張タービン10出口の流体を第2分離工程の原料の一部とすることができる。
【0083】
酸素塔11を第1精留塔6又は第2精留塔8の上部に配置して装置全体の設置面積を削減することができる。
【0084】
少なくとも酸素塔11頂部からラインL22に導出した低圧空気R及びアルゴン凝縮器15で気化して生成された低圧空気Wのいずれかを主熱交換器5で加温した後に、膨張タービン10で断熱膨張させることができる。
【0085】
なお、酸素塔11、アルゴン塔14、酸素蒸発器12、アルゴン凝縮器15は別の第2コールドボックス内に収めることにより、容易にモジュール化できる。
【0086】
製品窒素ガスを生成するのに第2コールドボックスは不要なため、製品アルゴンや製品酸素が不要な期間は第2コールドボックスが無い状態で製品窒素ガスを製造し、製品アルゴンや製品酸素が必要になったときに設備拡張により第2コールドボックスを追加して、製品アルゴンや製品酸素を併産するように、既存の装置を改造することができる。
【実施例0087】
図1に示した窒素製造装置1の構成の実機設計シミュレータを用い、実施例1として、原料空気の流量を100とし、製品窒素ガスGN(酸素濃度10ppb以下、圧力13barA)を最大量回収し、同時に製品液化酸素LO(窒素濃度10ppb以下、アルゴン濃度10ppb以下)を流量0.37、製品液化アルゴンLAR(酸素濃度1.5%以下、窒素濃度0.5%以下)を流量0.17回収する条件で計算し、実施例2として、原料空気の流量を100とし、酸素塔11、アルゴン塔14、酸素蒸発器12、アルゴン凝縮器15への流体の供給を停止した状態で、ラインL30及びバルブV8を使用し、製品窒素ガスGN(酸素濃度10ppb以下、圧力13barA)を最大量回収する条件で計算した結果を次の表に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
実施例1のシミュレーション結果によると、流量100の原料空気から製品窒素ガスGNを流量49回収し、同時に製品液化酸素LOを流量0.37回収し、製品液化アルゴンLARを流量0.17回収することができた。
【0090】
実施例2のシミュレーション結果によると、流量100の原料空気から製品窒素ガスGNを実施例1と同じ流量回収することができ、消費動力の相対値も実施例1と同じであった。
【0091】
これらのシミュレーション結果から、シンプルな機器構成で比較的圧力の高い(例えば8barA以上)の製品窒素ガスを多量に(例えば空気量の40%以上)回収しつつ、同時に少量の製品酸素と少量の製品アルゴンを回収することができ、且つ、製品酸素や製品アルゴンが不要となる場合や機器トラブルによりこれらの製造に係る設備(酸素塔やアルゴン塔)を停止した状態でも、窒素回収率の低下や消費動力の増加を伴うことなく製品窒素ガスを回収することができる、という効果を確認することができた。
【符号の説明】
【0092】
1,101…窒素製造装置、2…空気圧縮機、3…空気予冷器、4…空気精製器、5…主熱交換器、6…第1精留塔、7…第1凝縮器、8…第2精留塔、9…第2凝縮器、10…膨張タービン、11…酸素塔、12…酸素蒸発器、13…液化窒素ポンプ、14…アルゴン塔、15…アルゴン凝縮器、16…気液分離器、17…液化酸素ポンプ、AIR…空気、GN…製品窒素ガス、GO…製品酸素ガス、HPGO…製品高圧酸素ガス、LAR…製品液化アルゴン、LO…製品液化酸素、WG…廃ガス、A…原料空気、B…低温原料空気、C…高圧窒素ガス、D…高圧液化空気、E…中圧液化空気、F…中圧空気、G…高圧液化窒素、H…中圧窒素ガス、I…中圧液化空気、J…低圧液化空気、K…低圧空気、L…中圧液化窒素、M…液化酸素、N…アルゴン富化酸素ガス、O…中圧液化窒素、P…酸素ガス、Q…昇圧液化窒素、Q2…中圧窒素ガス、R…低圧空気、S…アルゴンガス、T…アルゴン富化液化酸素、U…低圧液化空気、V…液化アルゴン、W…低圧空気、X…高圧液化窒素、Y…昇圧液化酸素、L6…製品窒素導出ライン,L8b…高圧液化空気サイドカットライン,L15b…中圧液化空気サイドカットライン,L18…昇圧液化窒素供給ライン,L18b…昇圧液化窒素供給ライン,L19…昇圧液化窒素供給ライン,L20,L20b,L21,L32…製品酸素導出ライン,L29…製品アルゴン導出ライン,L1~L5,L7~L17,L22~L28,L30,L13b,L16b,L17b,L19b,L30b,L31b…ライン,V1~V8,V2b,V4b,V6b…バルブ
図1
図2