(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159337
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】フェノール性水酸基含有樹脂、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08G 61/02 20060101AFI20241031BHJP
C08G 59/62 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C08G61/02
C08G59/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075273
(22)【出願日】2023-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(74)【代理人】
【識別番号】100119079
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 佐保子
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンチャン
(72)【発明者】
【氏名】楊 立宸
(72)【発明者】
【氏名】迫 雅樹
【テーマコード(参考)】
4J032
4J036
【Fターム(参考)】
4J032CA06
4J032CA14
4J032CA16
4J032CB05
4J032CB12
4J032CC01
4J032CE03
4J036AF07
4J036DD07
4J036FB06
4J036JA08
4J036JA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)と高温領域での低弾性率化を高次に両立することができるフェノール性水酸基含有樹脂を提供する。
【解決手段】フルオレン化合物(ただし、9位に置換基を有しないこととする)、フェノール性水酸基含有化合物及び一般式(1)で表される化合物の反応生成物であるフェノール性水酸基含有樹脂。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオレン化合物(ただし、9位に置換基を有しないこととする)、フェノール性水酸基含有化合物及び一般式(1)で表される化合物の反応生成物であるフェノール性水酸基含有樹脂。
【化1】
(ここで、
Arは、置換基を有していてもよい芳香環式基であり、
R
1は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基であり、
Xは、脱離基である。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物1モルに対し、前記フルオレン化合物が0.01~0.99モルである、請求項1に記載のフェノール性水酸基含有樹脂。
【請求項3】
一般式(5)で表される、フェノール性水酸基含有樹脂。
【化2】
(ここで、
Zは、それぞれ独立して、一般式(2A):
【化3】
で表される構造単位又は一般式(3A):
【化4】
で表される構造単位であり、
Z’は、それぞれ独立して、一般式(2A’):
【化5】
で表される構造単位又は一般式(3A’):
【化6】
で表される構造単位であり、
Arは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環式基であり、
R
1は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基であり、
R
2は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、
mは、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
R
3は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であるか、あるいは、2つのR
3は、それらが結合する炭素原子と一緒になって環を形成していてもよく、
nは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
pは、平均値であって、0超の数であり、
R
2’は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、
m’は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
R
3’は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であるか、あるいは、2つのR
3’は、それらが結合する炭素原子と一緒になって環を形成していてもよく、
n’は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
ただし、樹脂は、一般式(2A)及び/又は一般式(2A’)で表される構造単位と、一般式(3A)及び/又は一般式(3A’)で表される構造単位とを含む。)
【請求項4】
一般式(5-1)で表される化合物及び一般式(5-2)で表される化合物の少なくとも1種を含む、請求項3に記載のフェノール性水酸基含有樹脂。
【化7】
(ここで、
Ar、Z、R
1、R
3’及びn’は、請求項3と同義である。)
【請求項5】
水酸基当量が100~2000g/eq.である、請求項1又は3に記載のフェノール性水酸基含有樹脂。
【請求項6】
数平均分子量が100~10000である、請求項1又は3に記載のフェノール性水酸基含有樹脂。
【請求項7】
請求項1又は3に記載のフェノール性水酸基含有樹脂と、硬化剤とを含有する硬化性組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項9】
補強基材及び前記補強基材に含浸した請求項7に記載の硬化性組成物の半硬化物を有するプリプレグ。
【請求項10】
請求項9に記載のプリプレグ及び銅箔の積層体である回路基板。
【請求項11】
請求項7に記載の硬化性組成物を含有するビルドアップフィルム。
【請求項12】
請求項7に記載の硬化性組成物を含有する半導体封止材。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体封止材の硬化物を含む半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール性水酸基含有樹脂、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エポキシ系樹脂及びその硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物は、その硬化物において優れた耐熱性及び絶縁性を発現することから、半導体、多層プリント基板等の電子部品用途で広く用いられている。
しかしながら、近年の各種電子機器における信号の高速化及び高周波数化を背景に、十分に低い誘電率を維持しつつ十分に低い誘電正接を発現する硬化物を形成し得る樹脂組成物の提供が困難となりつつある。
これに対し、ビフェニルアラルキル樹脂が優れた誘電特性をもたらす材料として注目されており、エポキシ樹脂の硬化剤としたり、エポキシ樹脂の原料とする取り組みがなされている(例えば、特許文献1~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-301031号公報
【特許文献2】特開2006-342176号公報
【特許文献3】特開2007-308570号公報
【特許文献4】特開2003-113225号公報
【特許文献5】特開2010-229422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ビフェニルアラルキル構造を有するフェノール樹脂は、フェノール構造を基点としたノボラック型の樹脂を形成するため、それを用いた硬化物は架橋密度が高く、通常、高温領域(例えば、200~280℃)でも高い弾性率を有し、弾性率の点で改善の余地がある。
優れた誘電特性と高温領域における低弾性率化を両立することができる樹脂が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上述した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、フルオレン構造単位の9位の水素原子をアラルキルに変性した構造を有するフェノール性水酸基含有樹脂により、優れた誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)と高温領域における低弾性率化を高次に両立することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]フルオレン化合物(ただし、9位に置換基を有しないこととする)、フェノール性水酸基含有化合物及び一般式(1)で表される化合物の反応生成物であるフェノール性水酸基含有樹脂。
【化1】
(ここで、
Arは、置換基を有していてもよい芳香環式基であり、
R
1は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基であり、
Xは、脱離基である。)
[2]前記一般式(1)で表される化合物1モルに対し、前記フルオレン化合物が0.01~0.99モルである、[1]のフェノール性水酸基含有樹脂。
[3]一般式(5)で表される、フェノール性水酸基含有樹脂。
【化2】
(ここで、
Zは、それぞれ独立して、一般式(2A):
【化3】
で表される構造単位又は一般式(3A):
【化4】
で表される構造単位であり、
Z’は、それぞれ独立して、一般式(2A’):
【化5】
で表される構造単位又は一般式(3A’):
【化6】
で表される構造単位であり、
Arは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環式基であり、
R
1は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基であり、
R
2は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、
mは、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
R
3は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であるか、あるいは、2つのR
3は、それらが結合する炭素原子と一緒になって環を形成していてもよく、
nは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
pは、平均値であって、0超の数であり、
R
2’は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、
m’は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
R
3’は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であるか、あるいは、2つのR
3’は、それらが結合する炭素原子と一緒になって環を形成していてもよく、
n’は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
ただし、樹脂は、一般式(2A)及び/又は一般式(2A’)で表される構造単位と、一般式(3A)及び/又は一般式(3A’)で表される構造単位とを含む。)
[4]一般式(5-1)で表される化合物及び一般式(5-2)で表される化合物の少なくとも1種を含む、[3]のフェノール性性水酸基含有樹脂。
【化7】
(ここで、
Ar、Z、R
1、R
3’及びn’は、[3]と同義である。)
[5]水酸基当量が100~2000g/eq.である、[1]~[4]のいずれかのフェノール性水酸基含有樹脂。
[6]数平均分子量が100~10000である、[1]~[5]のいずれかのフェノール性水酸基含有樹脂。
[7][1]~[6]のいずれかのフェノール性水酸基含有樹脂と、硬化剤とを含有する硬化性組成物。
[8][7]の硬化性組成物の硬化物。
[9]補強基材及び前記補強基材に含浸した[7]の硬化性組成物の半硬化物を有するプリプレグ。
[10][9]のプリプレグ及び銅箔の積層体である回路基板。
[11][7]の硬化性組成物を含有するビルドアップフィルム。
[12][7]の硬化性組成物を含有する半導体封止材。
[13][12]の半導体封止材の硬化物を含む半導体装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)と高温領域における低弾性率化を高次に両立することができるフェノール性水酸基含有樹脂を提供することができ、また、当該フェノール性水酸基含有樹脂を含有する硬化性組成物及びその硬化物を提供することができる。さらに、当該硬化性組成物又はその硬化物を用いることにより、優れた誘電特性と高温領域における低弾性率化が高次に両立した、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1で合成したフェノール性水酸基含有樹脂のGPC測定結果である。
【
図2】実施例1で合成したフェノール性水酸基含有樹脂のFD-MS測定結果である。
【
図3】実施例1で合成したフェノール性水酸基含有樹脂のC
13-NMR測定結果である。
【
図4】実施例2で合成したフェノール性水酸基含有樹脂のGPC測定結果である。
【
図5】実施例2で合成したフェノール性水酸基含有樹脂のFD-MS測定結果である。
【
図6】実施例2で合成したフェノール性水酸基含有樹脂のC
13-NMR測定結果である。
【
図7】実施例3で合成したフェノール性水酸基含有樹脂のGPC測定結果である。
【
図8】実施例3で合成したフェノール性水酸基含有樹脂のFD-MS測定結果である。
【
図9】実施例3で合成したフェノール性水酸基含有樹脂のC
13-NMR測定結果である。
【
図10】実施例4で合成したフェノール性水酸基含有樹脂のGPC測定結果である。
【
図11】実施例4で合成したフェノール性水酸基含有樹脂のFD-MS測定結果である。
【
図12】実施例4で合成したフェノール性水酸基含有樹脂のC
13-NMR測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
[用語]
本明細書における「反応原料」とは、化合又は分解といった化学反応により目的の化合物を得るために用いられ、目的の化合物の化学構造を部分的に構成する化合物をいい、溶媒、触媒といった、化学反応の助剤の役割を担う物質は除外される。本明細書では特に、「反応原料」とは、目的のフェノール性水酸基含有樹脂を化学反応により得るための前駆体をいう。
本明細書における「構造単位」とは、反応又は重合時に形成される化学構造の(繰り返し)単位をいい、換言すると、反応又は重合より形成される生成化合物において、当該反応又は重合に関与する化学結合の構造以外の部分構造をいい、いわゆる残基をいう。
【0011】
本明細書における脂肪族炭化水素基は、直鎖型、分岐型及び環式型のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数1~20のものが挙げられる。
本明細書における一価の脂肪族炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基を包含する。
本明細書におけるアルキル基は、直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、炭素原子数としては1~20のものが挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、クミル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等である。
本明細書におけるアルケニル基は、直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、炭素原子数としては2~20のものが挙げられ、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ブタジエニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等である。
本明細書におけるアルキニル基は、直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、炭素原子数としては2~20のものが挙げられ、例えば、エチニル基、プロパギル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基等である。
本明細書におけるシクロアルキル基は、単環の基であっても、多環の基であってもよく、炭素原子数としては3~30のものが挙げられ、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、アダマンチル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基等である。
本明細書におけるシクロアルケニル基は、単環の基であっても、多環の基であってもよく、炭素原子数としては3~30のものが挙げられ、例えば、シクロヘキセニル基、メチルシクロヘキセニル基、エチルシクロヘキセニル基等である。
本明細書におけるシクロアルキニル基は、単環の基であっても、多環の基であってもよく、炭素原子数としては4~30のものが挙げられ、例えば、シクロヘキシニル基、メチルシクロヘキシニル基、エチルシクロヘキシニル基等である。
本明細書における二価の脂肪族炭化水素基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基を包含する。
本明細書におけるアルキレン基は、直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、炭素原子数としては1~20のものが挙げられ、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基等である。
本明細書におけるアルケニレン基は、直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、炭素原子数としては2~20のものが挙げられ、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ブタジエニレン基、オクテニレン基、デセニレン基、ドデセニレン基等である。
本明細書におけるアルキニレン基は、直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、炭素原子数としては2~20のものが挙げられ、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ブタジニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、ヘプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基等である。
本明細書におけるアルコキシ基は、アルキル-O-の構造を有し、構造中のアルキル部分に関しては、上記アルキル基の記載が適用される。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、アリルオキシ基等である。
本明細書におけるシクロアルキレン基は、単環の基であっても、多環の基であってもよく、炭素原子数としては3~30のものが挙げられ、例えば、シクロアルキル基で例示した基に対応する2価基である。
本明細書におけるシクロアルケニレン基は、単環の基であっても、多環の基であってもよく、炭素原子数としては3~30のものが挙げられ、例えば、シクロアルケニル基で例示した基に対応する2価基である。
本明細書におけるシクロアルキニレン基は、単環の基であっても、多環の基であってもよく、炭素原子数としては4~30のものが挙げられ、例えば、シクロアルキニル基で例示した基に対応する2価基である。
本明細書における芳香環は、芳香族性を有する、単環又は縮合環からなる炭化水素環であり、炭素原子数としては6~20のものが挙げられ、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、インデン環、アントラセン環、アダマンタン等である。芳香環式基は、芳香環の残基である。
本明細書におけるアリール基は、1価の芳香族炭化水素基であり、炭素原子数としては6~20のものが挙げられ、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基等である。
本明細書におけるアリールアルキル基は、アリール基の1個以上、好ましくは1又は2個、特に1個で置換されたアルキル基であり、アリール基及びアルキル基に関しては、上記のアリール基及びアルキル基の記載が適用される。例えば、ベンジル基又はフェネチル基等である。
本明細書におけるハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素である。
【0012】
本明細書における数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)を用いて、後述する実施例に記載の測定条件で測定した値とする。
本明細書における水酸基当量は、滴定法により測定した値とする。ここで、滴定法とはJIS K 0070に準拠した中和滴定法を指す。
【0013】
[フェノール性水酸基含有樹脂の反応原料]
本発明のフェノール性水酸基含有樹脂は、フルオレン化合物(ただし、9位に置換基を有しないこととする)(以下、単に「フルオレン化合物」ともいう。)、フェノール性水酸基含有化合物及び一般式(1)で表される化合物を反応原料とする。
【0014】
<フルオレン化合物>
フルオレン化合物は、フルオレンの9位に置換基を有していないものであれば、特に限定されず、非置換であっても、9位以外の位置で置換されていてもよい。
【0015】
フルオレン化合物としては、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化8】
(ここで、
mは、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
R
2は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子である。)
【0016】
脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数1~4のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等である。
アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、インデニル基、インダニル基が好ましい。
アリールアルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、クミル基が好ましい。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素が好ましい。
【0017】
mは、それぞれ独立して、好ましくは、0~2の整数であり、さらに好ましくは0又は1であり、特に0である。
2つのmは、同じであっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
2つのmがいずれも1以上である場合、フルオレン骨格を構成する2つのベンゼン環に置換するR2は同じであっても異なっていてもよい。
いずれか一方又は両方のmが2以上である場合、フルオレン骨格を構成する同一のベンゼン環に置換する2以上のR2は同じであっても異なっていてもよい。
【0018】
一般式(2)の化合物としては、好ましくはフルオレンが挙げられる。
【化9】
【0019】
一般式(2)の化合物は、1種又は2種以上を任意の比率で併用することができる。
【0020】
<フェノール性水酸基含有化合物>
フェノール性水酸基含有化合物は、分子内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物である。
【0021】
フェノール性水酸基含有化合物としては、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【化10】
(ここで、
nは、0~4の整数であり、
R
3は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であるか、あるいは、2つのR
3’’は、それらが結合する炭素原子と一緒になって環を形成していてもよい。)
【0022】
脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数1~4のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基である。
アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基が好ましい。
アリールアルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、クミル基が好ましい。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素が好ましい。
R3としては、中でも、アルキル基、アリール基が好ましい。
【0023】
あるいは、2つのR3’’は、それらが結合している炭素原子と一緒になって環を形成していてもよい。環としては、例えば環構成原子数6~20の炭化水素環が挙げられ、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、アダマンタン環、インダン環、インデン環等が挙げられる。これらの環は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子が挙げられる。
【0024】
n’’は、好ましくは0、1又は2が好ましい。
n’’が2の場合、2つのR3’’は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、ベンゼン環又はナフタレン環を形成していることが好ましい。
【0025】
一般式(3)の化合物の好ましい例として、以下の化合物が挙げられる。
【化11】
【0026】
一般式(3)の化合物は、1種又は2種以上を任意の比率で併用することができる。
【0027】
<一般式(1)で表される化合物>
一般式(1)で表される化合物は、フルオレン構造単位の9位の水素原子をアラルキルに変性することができ、その一方で、フェノール性水酸基含有化合物とも反応することができ、結合剤として機能する化合物である。
【化12】
(ここで、
Arは、置換基を有していてもよい芳香環式基であり、
R
1は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基であり、
Xは、脱離基である。)
【0028】
Arは、、置換基を有していてもよい芳香環式基である。芳香環式基は、特に限定されず、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基が好ましい。フェニレン基の場合、1,4位に結合手があることが好ましく、ナフチレン基の場合、2,6位に結合手があることが好ましく、アントラセニレン基の場合、9,10位に結合手があることが好ましい。
【0029】
置換基としては、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子等が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数1~4のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピレン基、ブチレン基である。
アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基が好ましい。
アリールアルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、クミル基が好ましい。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素が好ましい。
置換基としては、中でも、アルキル基、アリール基等が好ましい。
【0030】
Xは、脱離基であり、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素が好ましい。
アルコキシ基としては、炭素原子数1~4のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基である。
Xとしては、中でも、塩素、臭素、ヨウ素、水酸基、メトキシ基が好ましい。
2つのXは、同じであっても異なっていてもよい。
【0031】
R1は、水素原子又は炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基である。
炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基は、特に限定されず、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が好ましい。
R1としては、中でも、水素原子、メチルが好ましい。4つのR1は同じであっても、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0032】
一般式(1)の化合物の好ましい例としては、以下が挙げられる。
【化13】
【0033】
[フェノール性水酸基含有樹脂の製造方法]
本発明のフェノール性水酸基含有樹脂は、上記の反応原料の反応生成物であり、具体的には、以下のようにして製造することができる。
【0034】
反応原料であるフルオレン化合物、フェノール性水酸基含有化合物及び一般式(1)の化合物の使用量は以下のとおりである。
フルオレン化合物1モルに対し、一般式(1)の化合物は、一般式(3)の導入の観点から、1モル超過であればよく、1モル超過であれば特に限定されない。
例えば、フルオレン化合物の使用量は、一般式(1)の化合物1モルに対し、0.01モル以上であることができ、好ましくは0.05モル以上であり、また、0.99モル以下であることができ、好ましくは0.9モル以下である。
反応に際し、フルオレン化合物と一般式(1)の化合物は、実質的に全量が反応するため、反応に使用するフルオレン化合物と一般式(1)の化合物のモル比は、得られるフェノール性水酸基含有樹脂におけるフルオレン化合物から誘導される構造単位と一般式(1)の化合物から誘導される構造単位のモル比と実質的に同じである。
【0035】
フェノール性水酸基含有化合物の使用量は、特に限定されないが、一般式(1)の化合物に対し、フェノール性水酸基含有化合物の水酸基が0.1モル以上となる量とすることができ、0.02モル以上となる量が好ましく、また、10モル以下となる量とすることができ、好ましくは9.5モル以下となる量である。
フェノール性水酸基含有化合物については、未反応で残存するフェノール性水酸基含有化合物も発生するが、反応したフェノール性水酸基含有化合物の量は、フェノール性水酸基含有樹脂の水酸基当量から算出することができる。
【0036】
フェノール性水酸基含有樹脂は、例えば、以下の工程1及び工程2により製造することができる。
【0037】
<工程1>
フルオレン化合物全量及び一般式(1)の化合物全量を、フェノール性水酸基含有化合物を加えずに、有機溶媒中、アルカリ触媒を用いて、10~100℃で反応させること、あるいはフルオレン化合物全量及び一般式(1)の化合物全量と、フェノール性水酸基含有化合物の一部の量又は全量を、有機溶媒中、アルカリ触媒を用いて、10~100℃で反応させることが好ましい。
【0038】
フェノール性水酸基含有化合物の使用量は、特に限定しないが、一般式(1)に対し、フェノール性水酸基含有化合物の水酸基が0,1モル以上となる量とすることができ、0.2モル以上となる量が好ましく、また、10モル以下となる量とすることができ、好ましくは9.5モル以下となる量である。このような使用量にすることで副生成物の生成を抑制することができる。
【0039】
有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン性溶媒、トルエン、キシレン、メシチレン、ソルベッソ等の芳香族炭化水素溶媒、メタノール、エタノール、1-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール等のアルコール性溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。溶解性の点から、トルエン、キシレン、メシチレン、ソルベッソ、イソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が好ましい。これらの有機溶媒は、1種又は2種以上を任意の比率で併用することができる。
有機溶媒の使用量は、特に限定されないが、仕込んだ一般式(1)の化合物及びフルオレン化合物の合計量に対して50~500質量%とすることが好ましい。
【0040】
アルカリ触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、メトキシナトリウム、エトキシナトリウム、tert-ブトキシナトリウム、メトキシカリウム、エトキシカリウム、tert-ブトキシカリウム、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。反応性の点から、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましい。アルカリ触媒の使用量は、仕込んだ一般式(1)に対し、10~1000モル%とすることができる。これらの触媒は、1~50質量%の水溶液として用いることができる。
【0041】
反応において相間移動触媒を用いてもよい。相間移動触媒としては、例えば、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムヨージド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウム系、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムヨージド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド等のホスホニウム系、12-クラウン-4-エーテル、15-クラウン-5-エーテル、18-クラウン-6-エーテル、トリベンゾ-18-クラウン-6-エーテル等のクラウンエーテル系が挙げられる。反応性の点から、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムヨージドが好ましい。相間移動触媒は単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0042】
反応促進のために添加剤を使用してもよい。添加剤としては、例えば、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム等のハロゲン化物が挙げられる。中でも、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムが好ましい。添加剤は単独でも、2種以上を併用しても良い。
【0043】
反応温度は、10~100℃とすることができ、反応性の点から、好ましくは20~80℃である。反応時間は、1~72時間とすることができ、好ましくは2~70時間である。
【0044】
反応終了後、適宜、上層と下層に分離させ、水層である下層を除去して反応物を得る。その際、必要に応じて水を添加して不溶の塩を溶解させて下層を除去しても良い。また、その水層は塩基性でも、中和によって中性でも、酸性でもよい。中和に用いる中和剤としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、第一リン酸ソーダ、塩化アンモニウム等の無機酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸等があげられる。これらの酸触媒は単独でも2種以上の併用であってもよい。
【0045】
<工程2>
工程1でフェノール性水酸基化合物を加えずに、あるいは一部を加えて反応させた場合、工程1で得られた反応物に、フェノール性水酸基含有化合物の全量又は残部を加え、酸触媒の存在下で、60~250℃で反応させる。工程1でフェノール性水酸基化合物を全量加えた場合は、工程1で得られた反応物を、酸触媒の存在下で、60~250℃で反応させる。
【0046】
工程2で使用するフェノール性水酸基含有化合物は、工程1で使用するフェノール性水酸基含有化合物と同じであっても異なっていてもよい。
【0047】
酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸等が挙げられる。溶解性の点から、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が好ましい。これらの酸触媒は単独でも2種以上の併用であってもよい。
酸触媒の量は、特に限定はされないが、仕込んだ反応原料の総量に対して0.001~10質量%とすることが好ましい。
【0048】
反応温度は、60~250℃で行うこととし、反応性の点から、好ましくは80~240℃である。反応時間は、1~72時間とすることができ、好ましくは2~70時間である。
【0049】
反応終了後、中和処理及び水洗処理を行い、減圧加熱条件下で未反応の反応原料、有機溶媒等を留去してフェノール性水酸基含有樹脂を得ることができる。
【0050】
本発明のフェノール性水酸基含有樹脂の製造方法は、上記には限定されない。例えば、工程1に代えて、フルオレン化合物と一般式(1)の化合物を、有機溶媒中、触媒の存在下で、10~100℃で反応させ、次いでフェノール性水酸基含有化合物の一部を添加して、10~100℃で反応させたのち、水層を除去し、水洗処理を行い、得られた反応物を工程2に付してもよい。その際、工程1の反応生成物は末端に反応性基を有することができ、反応性基は使用する化合物の種類により、フェノール類が反応したエーテルであっても、ハロゲン化物であっても、水酸基であってもよい。
【0051】
[フェノール性水酸基含有樹脂]
本発明のフェノール性水酸基含有樹脂は、フルオレン化合物、フェノール性水酸基含有化合物及び一般式(1)の化合物の反応生成物である。
【0052】
一般式(2)で表されるフルオレン化合物、一般式(3)で表されるフェノール性水酸基含有化合物及び一般式(1)の化合物は、それぞれ、一般式(2A)又は一般式(2A’)で表される構造単位、一般式(3A)又は一般式(3A’)で表される構造単位及び一般式(1A)で表される構造単位を生成することができる。
【化14】
(ここで、
m及びm’の定義、例示及び好ましい例は、一般式(2)のmと同様であり、
R
2及びR
2’の定義、例示及び好ましい例は、一般式(2)のR
2と同様であり、
*は、それぞれ結合手を表す。)
【化15】
(ここで、
nは0~3の整数であり、好ましくは0、1又は2であり
n’は0~4の整数であり、好ましくは0、1又は2であり、
R
3及びR
3’の定義、例示及び好ましい例は、一般式(3)のR’’と同様であり、
*は、それぞれ結合手を表す。)
【化16】
(ここで、
Ar及びR
1の定義、例示及び好ましい例は、一般式(1)と同様であり、
*は、それぞれ結合手を表す。)
【0053】
本発明のフェノール性水酸基含有樹脂は、一般式(2A)及び/又は(2A’)の構造単位に一般式(1A)の構造単位が結合した構造を含むことができる。
本発明のフェノール性水酸基含有樹脂の少なくとも一方の分子鎖末端は、一般式(3A’)の構造単位であることが好ましく、両方の分子鎖末端は、一般式(3A’)の構造単位であることがより好ましい。
【0054】
本発明のフェノール性水酸基含有樹脂は、一般式(2A)及び/又は(2A’)の構造単位、一般式(3A)及び/又は(3A’)の構造単位ならびに一般式(1A)の構造単位から構成され、ただし、一般式(2A)の構造単位の結合手には一般式(1A)の構造単位の結合手が結合していることができる。一般式(2A’)の構造単位が存在する場合、当該構造単位は分子鎖末端を構成していることになる。
分子鎖末端の少なくとも一方は、一般式(3A)の構造単位であることが好ましく、より好ましくは、両方の分子鎖末端が一般式(3A)の構造単位であることである。
【0055】
一般式(1-1)の化合物の好ましい例としては、以下が挙げられる。
【化17】
【0056】
本発明のフェノール性水酸基含有樹脂としては、以下の一般式(5)で表されるフェノール性水酸基含樹脂が挙げられる。
【化18】
(ここで、
Zは、それぞれ独立して、一般式(2A):
【化19】
で表される構造単位又は一般式(3A):
【化20】
で表される構造単位であり、
Z’は、それぞれ独立して、一般式(2A’):
【化21】
で表される構造単位又は一般式(3A’):
【化22】
で表される構造単位であり、
Arは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環式基であり、
R
1は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基であり、
R
2は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、
mは、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
R
3は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であるか、あるいは、2つのR
3は、それらが結合する炭素原子と一緒になって環を形成していてもよく、
nは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
R
2’は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、
m’は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
R
3’は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子であるか、あるいは、2つのR
3’は、それらが結合する炭素原子と一緒になって環を形成していてもよく、
n’は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
pは、平均値であり、0超の数であり、
ただし、樹脂は、一般式(2A)及び/又は一般式(2A’)で表される構造単位と、一般式(3A)及び/又は一般式(3A’)で表される構造単位を含む。)
【0057】
上記において、Ar、R1
、R2、R3、m、n、R2’、R3’、m’、n’及びpの例示及び好ましい例は、上記と同様である。
【0058】
一般式(5)のフェノール性水酸基含有樹脂は、上記一般式(5)のpが0以上の整数である化合物の混合物(ただし、化合物の全てが、pが0である一般式(5)の化合物ではないこととする。)であり、一般式(2A)及び/又は一般式(2A’)で表される構造単位と一般式(3A)及び/又は一般式(3A’)で表される構造単位との両方を分子内に含有する化合物を含むことが好ましい。
樹脂中、一般式(3A)及び一般式(3A’)の構造単位の合計1モルに対し、一般式(2A)及び一般式(2A’)の構造単位の合計が0.1~10モルであることが好ましく、0.5~9.5モルであることがより好ましい。
【0059】
好ましい例としては、以下の一般式(5-0)で表されるフェノール性水酸基含有樹脂が挙げられる。
【化23】
(式中、Ar、R
1
、R
3’、n’及びpは、一般式(5)と同じである。)
【0060】
ここで、Ar、R1
、R3’、n’及びpの例示及び好ましい例は、上記と同様であるまた、ZにおけるR2、m、R3及びnの例示及び好ましい例も上記と同様である。
【0061】
本発明のフェノール性水酸基含有樹脂のより好ましい例としては、以下の一般式(5-0’)で表されるフェノール性水酸基含有樹脂が挙げられる。
【化24】
(ここで、R
2、m、R
3、n、R
3’及びn’は上記のとおりであり、
Ar’は、
【化25】
であり、
sは、平均値であり、0超の数であり、
tは、平均値であり、0以上の数であり、
sで括った構造単位及びtで括った構造単位の順序は限定されない。)
【0062】
一般式(5)のフェノール性水酸基含有樹脂及び一般式(5-0)のフェノール性水酸基含有樹脂は、それぞれpで括られる構造単位を0以上の整数で有する化合物の混合物であることができるが、化合物の全てが、pが0である一般式(5)の化合物ではないこととする。一般式(5)のフェノール性水酸基含有樹脂は、一般式(5-1)で表される化合物及び一般式(5-2)で表される化合物の少なくとも1種を含むことが好ましい。
【化26】
(ここで、
Ar、Z、R
1、R
3‘及びn’は、上記のとおりであり、
一般式(5-1)のZ及び一般式(5-2)の少なくとも1つのZは、一般式(2A)で表される構造単位である。)
【0063】
本発明のフェノール性水酸基樹脂は、一般式(6)の化合物をその一部に含んでいてもよい。一般式(6)の化合物は、上記一般式(5)においてpが0である化合物に該当する。
【化27】
(ここで、
Ar、R
1、R
3’及びn’は、上記のとおりである。)
【0064】
フェノール性水酸基含有樹脂の数平均分子量(Mn)は、100~10000の範囲であることができ、好ましくは200~8000の範囲である。また、フェノール性水酸基含有樹脂(Mw)は100~50000の範囲であることができ、好ましくは300~4000の範囲である。
フェノール性水酸基含有樹脂の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は1~5の範囲であることができ、好ましくは1~4である。
【0065】
フェノール性水酸基含有樹脂の水酸基当量は、100~2000の範囲であることができ、好ましくは200~1800の範囲である。
【0066】
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂と硬化剤を含有することができる。本発明のフェノール性水酸基含有樹脂を用いることにより、硬化性組成物から得られる硬化物において、優れた誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)と高温領域における低弾性率化を発現させることができる。
【0067】
硬化組成物は、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂以外のその他のフェノール性水酸基含有化合物を含有していてもよい。その他のフェノール性水酸基含有化合物は、例えば、各種のビスフェノール化合物、各種のノボラック樹脂、アラルキレン基含有フェノール樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。本発明のフェノール性水酸基含有樹脂とその他のフェノール性水酸基含有化合物との合計に対する本発明のフェノール性水酸基含有樹脂の割合は、所望の硬化物性能等に応じて適宜調整されるが、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0068】
硬化剤は、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂と反応し得る官能基を有する化合物であれば、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂等が挙げられる。前記エポキシ樹脂は特に限定なく、多種多様なものを用いることができる。一例としては、各種のビスフェノール型エポキシ樹脂、各種のノボラック型エポキシ樹脂、アラルキレン基含有エポキシ樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0069】
フェノール性水酸基含有樹脂と硬化剤との配合比は所望の硬化物性能等に応じて適宜調整されるが、フェノール性水酸基含有樹脂中のフェノール性水酸基1モルに対し、硬化剤中の反応性基が0.5~1.5モルの範囲であることが好ましい。前述のその他のフェノール性水酸基含有化合物を用いる場合には、硬化性組成物中のフェノール性水酸基の合計1モルに対し、硬化剤中の反応性基が0.5~1.5モルの範囲であることが好ましい。
【0070】
前記硬化剤としてエポキシ樹脂を用いる場合、必要に応じて硬化促進剤用いてもよい。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール類、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。中でも、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、トリフェニルホスフィン等のリン系化合物、またはイミダゾール類が好ましい。硬化促進剤の添加量は、例えば、硬化性組成物の総質量(溶媒を除く)100質量部に対して、0.01~10質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0071】
前記硬化性組成物は、その他の樹脂成分を含有していてもよい。その他の樹脂としては、例えば、活性エステル樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
【0072】
硬化性組成物には、硬化促進剤、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤、非ハロゲン系難燃剤、無機充填剤、難燃剤(例えば、無機リン系難燃剤、有機リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤)、溶媒等の種々の配合剤を含有させてもよい。
【0073】
硬化性組成物は、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂、硬化剤及び任意の成分(例えば、硬化触媒、配合剤等)を均一に混合することにより得ることができる。
【0074】
[硬化物]
本発明の硬化物は、本発明の硬化性組成物を硬化させることにより得ることができる。硬化方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。硬化物は、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の形態とすることができる。
【0075】
[半導体封止材]
本発明の半導体封止材は、本発明の硬化性組成物を含有することができる。本発明の硬化性組成物は、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂を含有するため、上記硬化性組成物を含有する半導体封止材は、優れた誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)と高温領域における低弾性率化を発現させることができる。
【0076】
半導体封止材には、本発明の硬化性組成物に無機充填剤を含有させたものを用いることができる。無機充填剤は、特に限定されず、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、ノイブルグ珪土、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等を挙げることができる。
硬化性組成物100質量部に対し、無機充填剤は0.5~1200質量部とすることができる。
【0077】
半導体封止材には、種々の配合剤を配合してもよく、配合剤としては硬化性組成物に関し記載されたものが挙げられる。
【0078】
半導体封止材は、本発明の硬化性組成物及び必要に応じて配合剤を混合することで得ることができ、例えば、押出機、ニ-ダ、ロ-ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法等が挙げられる。
【0079】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明の半導体封止材の硬化物を含むことができる。本発明の半導体装置に用いられる半導体封止材は、本発明のフェノール性水酸基含有樹脂を含有する硬化性組成物を含有する。本発明の半導体装置は、当該半導体封止材の硬化物を含むため、優れた誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)と高温領域における低弾性率化を示す。
【0080】
半導体装置は、本発明の半導体封止材を加熱硬化することで得ることができ、例えば、注型するか、あるいはトランスファー成形機、射出成形機等を用いて成形し、さらに室温(20℃)~250℃の温度範囲で加熱硬化させる方法等が挙げられる。
【0081】
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、補強基材及びこの補強基材に含浸した本発明の硬化性組成物の半硬化物を有することができる。
硬化性組成物からプリプレグを得る方法は、特に限定されず、後述する有機溶媒を配合してワニス化した硬化性組成物を、補強基材(例えば、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布等)に含浸したのち、用いた溶媒種に応じた加熱温度(好ましくは50~170℃)で加熱して、硬化性組成物を半硬化(あるいは未硬化)する方法が挙げられる。
用いられる硬化性組成物と補強基材の質量割合は、特に限定されないが、プリプレグ中の樹脂分が20~60質量%となるように調製することが好ましい。
【0082】
硬化性組成物の半硬化物は、加熱温度及び加熱時間を調整して、硬化反応を完了させずに途中で停止させることによって得ることができる。半硬化物の硬化度は、例えば85%以下5%以上とすることができる。ここで、硬化物は、半硬化物より高い硬化度を有し得る。
半硬化物の硬化度は、硬化性組成物を加熱する際の硬化発熱量と、その半硬化物の硬化発熱量をDSCにより測定し、以下の式から算出できる。
硬化度(%)=[1-(半硬化物の硬化発熱量/硬化性組成物の硬化発熱量)]×100
【0083】
プリプレグの製造に用いる有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。有機溶媒の選択、使用量は、用途によって適宜選択し得、例えば、プリプレグから回路基板を製造する場合には、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶媒が好ましく、使用量としては、不揮発分が40~80質量%となる量が好ましい。
【0084】
[回路基板]
本発明の回路基板は、本発明のプリプレグ及び銅箔の積層体からなる。回路基板を得る方法は、特に限定されず、例えば、本発明のプリプレグを必要に応じて積層し、銅箔を重ねて、1~10MPaの加圧下に170~300℃で10分~3時間、加熱圧着させる方法が挙げられる。
【0085】
[ビルドアップフィルム]
本発明のビルドアップフィルムは、本発明の硬化性組成物を含有することができる。ビルドアップフィルムを製造する方法は、特に限定されず、例えば、本発明の硬化性組成物を、支持フィルム上に塗布し、硬化性組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとする方法が挙げられる。
【0086】
ビルドアップフィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70~140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール、あるいは、スルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが求められるため、硬化性組成物は、このような特性を発現するように、上記各成分を配合することが好ましい。
【0087】
ここで、多層プリント配線板のスルーホールの直径は、通常0.1~0.5mm、深さは通常0.1~1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
【0088】
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の上記硬化性組成物を調製した後、支持フィルム(Y)の表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶媒を乾燥させて硬化性組成物からなる組成物層(X)を形成させることにより製造することができる。
【0089】
形成される組成物層(X)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とすることが好ましい。回路基板が有する導体層の厚さは通常5~70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10~100μmの厚さを有するのが好ましい。
【0090】
なお、組成物層(X)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0091】
上記した支持フィルム(Y)及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
【0092】
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10~150μmであり、好ましくは25~50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1~40μmとするのが好ましい。
【0093】
上記した支持フィルム(Y)は、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルム(Y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【0094】
[用途]
本発明のフェノール性水酸基含有樹脂を含有する硬化性組成物により得られる硬化物は、優れた誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)と高温領域における低弾性率化を示すことから、耐熱部材又は電子部材に好適に使用することができる。特に、プリプレグ、回路基板、半導体封止材、半導体装置、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、導電性ペーストを用いた接着剤やレジスト材料等に好適に使用できる。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用でき、高耐熱性のプリプレグとして特に適している。また、硬化性組成物に含まれるフェノール性水酸基含有樹脂は、各種溶媒への優れた溶解性を示すことから塗料化が可能である。こうして得られる耐熱部材や電子部材は、各種用途に好適に使用可能であり、例えば、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品、宇宙・航空関連部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材等が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例0095】
本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。
【0096】
フェノール性水酸基含有樹脂の物性評価は以下のようにして行った。
【0097】
(1)GPC測定
以下の測定装置、測定条件を用いて、実施例及び比較例で得られたフェノール性水酸基含有樹脂についての、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
「測定装置」
東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」
「測定条件」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料:合成例で得られたフェノール性水酸基含有樹脂の樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0098】
(2)FD-MS測定
実施例で得られたフェノール性水酸基含有樹脂のFD-MSスペクトルは、以下の測定装置、測定条件を用いて測定した。
測定装置:JMS-T100GC AccuTOF
測定条件
測定範囲:m/z=4.00~2000.00
変化率:51.2mA/分
最終電流値:45mA
カソード電圧:-10kV
記録間隔:0.07秒
【0099】
(3)13C-NMR測定
実施例で得られたフェノール性水酸基含有樹脂の13C-NMRスペクトルは以下の測定装置、測定条件にて測定した。
13C-NMR:JEOL RESONANCE製「JNM-ECZ400S」
共鳴周波数:100MHz
積算回数:4000回
溶媒:クロロホルム-d
試料濃度:12質量%
緩和試薬:クロム(III)アセチルアセトネート
【0100】
<実施例1:フェノール性水酸基含有樹脂(A―1)の合成>
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、フルオレン100.0質量部、α,α’-ジクロロ-p-キシレン(以下PXDCと略す)273.4質量部、フェノール147.0質量部、トルエン520.4質量部、ジメチルスルホキシド(以下DMSOと略す)520.4質量部を仕込み、40℃まで昇温して均質化させた。続いて、温度が60℃以下になるように49質量%の水酸化ナトリウム水溶液269.4質量部を発熱に注意しながら滴下にて仕込んだ。滴下後、温度を60℃まで昇温し、同温度で8時間反応させた後、水383.9質量部を仕込み、不溶の塩を溶かし、下層を分液にて除去した。続いて、89質量%のリン酸水溶液6.88質量部にて有機層を中和した後、383.9質量部の水にて3回水洗した。
【0101】
次に、フェノール283.1質量部、p-トルエンスルホン酸1水和物を10.4質量部仕込み、水と溶媒を共沸させながら160℃まで昇温し、同温度で3時間反応させた。反応終了後、冷却し、49質量%の水酸化ナトリウム水溶液4.52質量部にて有機層を中和し、812.8質量部のメチルイソブチルケトンを仕込みながら80℃まで冷却し、同温度で575.8質量部の水により同温度で3回水洗した。得られた有機層を加熱・減圧蒸留にて揮発分をすべて除去することで、フェノール性水酸基含有樹脂(A-1)を得た。
【0102】
得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A-1)のGPCチャートを
図1、
13C-NMRを
図2に、FD-MSのチャートを
図3に示す。
図1のGPCチャートにより、得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A)のMnは587、Mwは879、Mw/Mnは1.497、
図2の
13C-NMRチャートにより、フルオレンの9位から反応していること、
図3のFD-MSチャートにより、m/z558.3、754.4、826.4から、得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A)が本発明のフェノール性水酸基含有樹脂であることが確認できた。また、得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A-1)の水酸基当量は225g/eq、軟化点は56℃であった。
【0103】
<実施例2:フェノール性水酸基含有樹脂(A-2)の合成>
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、フルオレン100.0質量部、PXDCを210.6質量部、オルソクレゾール130.1質量部、トルエン440.7質量部、DMSOを440.7質量部仕込み、40℃まで昇温して均質化させた。続いて、温度が60℃以下になるように49質量%の水酸化ナトリウム水溶液297.7質量部を発熱に注意しながら滴下にて仕込んだ。滴下後、温度を60℃まで昇温し、同温度で8時間反応させた後、水424.2質量部を仕込み、不溶の塩を溶かし、下層を分液にて除去した。続いて、89質量%のリン酸水溶液3.97質量部にて有機層を中和した後、424.2質量部の水にて3回水洗した。
【0104】
次に、オルソクレゾール325.3質量部、p-トルエンスルホン酸1水和物を8.81質量部仕込み、水と溶媒を共沸させながら160℃まで昇温し、同温度で3時間反応させた。反応終了後、冷却し、49質量%の水酸化ナトリウム水溶液3.83質量部にて有機層を中和し、661.1質量部のトルエンを仕込みながら80℃まで冷却し、同温度で424.2質量部の水により同温度で3回水洗した。得られた有機層を加熱・減圧蒸留にて揮発分をすべて除去することで、フェノール性水酸基含有樹脂(A-2)を得た。
【0105】
得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A-2)のGPCチャートを
図4、
13C-NMRを
図5に、FD-MSのチャートを
図6に示す。
図4のGPCチャートにより、得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A-2)のMnは564、Mwは742、Mw/Mnは1.315、
図5の
13C-NMRチャートにより、フルオレンの9位から反応していること、
図6のFD-MSチャートにより、m/z586.4、796.5、1064.7から、得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A-2)が本発明のフェノール性水酸基含有樹脂であることが確認できた。また、得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A-2)の水酸基当量は254g/eq、軟化点は55℃であった。
【0106】
<実施例3:フェノール性水酸基含有樹脂(A-3)の合成>
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、フルオレン75.0質量部、PXDCを158.0質量部、2,6-ジメチルフェノール110.3質量部、トルエン343.2質量部、DMSOを343.2質量部仕込み、40℃まで昇温して均質化させた。続いて、温度が60℃以下になるように49質量%の水酸化ナトリウム水溶液223.3質量部を発熱に注意しながら滴下にて仕込んだ。滴下後、温度を60℃まで昇温し、同温度で8時間反応させた後、水318.2質量部を仕込み、不溶の塩を溶かし、下層を分液にて除去した。続いて、89質量%のリン酸水溶液2.98質量部にて有機層を中和した後、318.2質量部の水にて3回水洗した。
【0107】
次に、2,6-ジメチルフェノール165.4質量部、p-トルエンスルホン酸1水和物を6.86質量部仕込み、水と溶媒を共沸させながら160℃まで昇温し、同温度で3時間反応させた。反応終了後、冷却し、49質量%の水酸化ナトリウム水溶液2.98質量部にて有機層を中和し、343.2質量部のトルエンを仕込みながら80℃まで冷却し、同温度で318.2質量部の水により同温度で3回水洗した。得られた有機層を加熱・減圧蒸留にて揮発分をすべて除去することで、フェノール性水酸基含有樹脂(A-3)を得た。
【0108】
得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A-3)のGPCチャートを
図7、
13C-NMRを
図8に、FD-MSのチャートを
図9に示す。
図7のGPCチャートにより、得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A-3)のMnは699、Mwは1079、Mw/Mnは1.544、
図8の
13C-NMRチャートにより、フルオレンの9位から反応していること、
図9のFD-MSチャートにより、m/z614.4、838.5から、得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A-2)が本発明のフェノール性水酸基含有樹脂であることが確認できた。また、得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A-3)の水酸基当量は271g/eq、軟化点は83℃であった。
【0109】
<実施例4:フェノール性水酸基含有樹脂(A-4)の合成>
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、フルオレン75.0質量部、PXDCを158.0質量部、β-ナフトール130.1質量部、トルエン363.1質量部、DMSOを363.1質量部仕込み、40℃まで昇温して均質化させた。続いて、温度が60℃以下になるように49質量%の水酸化ナトリウム水溶液223.3質量部を発熱に注意しながら滴下にて仕込んだ。滴下後、温度を60℃まで昇温し、同温度で8時間反応させた後、水318.2質量部を仕込み、不溶の塩を溶かし、下層を分液にて除去した。続いて、89質量%のリン酸水溶液2.98質量部にて有機層を中和した後、318.2質量部の水にて3回水洗した。
【0110】
次に、β-ナフトール195.2質量部、p-トルエンスルホン酸1水和物を7.26質量部仕込み、水と溶媒を共沸させながら160℃まで昇温し、同温度で3時間反応させた。反応終了後、冷却し、49質量%の水酸化ナトリウム水溶液3.15質量部にて有機層を中和し、544.6質量部のトルエンを仕込みながら80℃まで冷却し、イソプロピルアルコール435.7質量部と318.2質量部の水により3回水洗した。得られた有機層を加熱・減圧蒸留にて揮発分をすべて除去することで、フェノール性水酸基含有樹脂(A-4)を得た。
【0111】
得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A-4)のGPCチャートを
図10、
13C-NMRを
図11に、FD-MSのチャートを
図12に示す。
図9のGPCチャートにより、得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A-4)のMnは366、Mwは746、Mw/Mnは2.037、
図5の
13C-NMRチャートにより、フルオレンの9位から反応していること、
図6のFD-MSチャートにより、m/z658.4、904.5、1172.7から、得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A-2)が本発明のフェノール性水酸基含有樹脂であることが確認できた。また、得られたフェノール性水酸基含有樹脂(A-3)の水酸基当量は337g/eq、軟化点は81℃であった。
【0112】
合成したフェノール性水酸基含有樹脂の硬化物を作成し、以下のようにして物性評価を実施した。結果を表1に示す。
(1)誘電率及び誘電正接の測定
JIS-C-6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」により、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片の1GHz、10GHzでの誘電率および誘電正接を測定した。
(2)熱時弾性率の測定方法
粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置RSAII、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/min)を用いて、260℃での貯蔵弾性率を熱時弾性率として測定した。
【0113】
<実施例5~8及び比較例1>
(1)試験片の作成
表1に示す質量割合でクレゾールノボラックエポキシ樹脂(DIC株式会社製、EPICLON N-655-EXP-S、エポキシ当量204g/eq)と実施例1のフェノール性水酸基含有樹脂(A)、実施例2のフェノール性水酸基含有樹脂(B)又はビフェニルアラルキルフェノール樹脂(明和化成株式会社製、MEHC-7851SS、水酸基当量:212g/eq)を130~150℃にて加熱溶融し、均一にした後、触媒(トリフェニルホスフィン、以下TPPと略記する。)を加え、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を150℃プレスにて10分間プレスし、硬化、成形した後、さらに175℃にて5時間加熱して試験片を得た。得られた試験片について物性を測定した。結果を表1に示す。
【0114】
【0115】
上記表1に示す結果から、実施例1~4のフェノール性水酸基含有樹脂を用いることにより、優れた誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)が得られ、かつ高温領域での低弾性率化が図れることがわかる。実施例2のフェノール性水酸基含有樹脂組を用いた場合、熱時弾性率においても優れていることがわかる。
本発明によれば、優れた誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)と高温領域での低弾性率化を高次に両立することができるフェノール性水酸基含有樹脂を提供することができ、また、当該フェノール性水酸基含有樹脂を含有する硬化性組成物及びその硬化物を提供することができる。さらに、当該硬化性組成物又はその硬化物を用いることにより、優れた誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)と高温領域での低弾性率化を高次に両立した、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置を提供することができる。