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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159397
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20241031BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G01D5/20 110D
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131246
(22)【出願日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2023074358
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白川 洋平
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 宜昭
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】二口 尚樹
【テーマコード(参考)】
2F077
3D333
【Fターム(参考)】
2F077AA12
2F077FF03
2F077FF11
3D333CB02
3D333CB31
3D333CC36
3D333CD10
3D333CD14
3D333CE21
(57)【要約】
【課題】軸方向に進退移動するシャフトの位置を高精度に検出することが可能な位置検出装置を提供する。
【解決手段】ラックシャフト13の位置を検出するストロークセンサ1は、交流磁界を発生させる励磁コイル31と、ラックシャフト13に固定され、交流磁界の磁束が鎖交する検出体2と、交流磁界の磁束が鎖交する検出コイル32,33とを備える。検出コイル32,33は、交流磁界により誘起電圧が発生する第1部分321,331及び第2部分322,332と、第1部分321,331の軸方向一方側の端部と第2部分322,332の軸方向他方側の端部とを接続する接続線路323,333とを有する。第1部分321,331及び第2部分322,332は、それぞれの少なくとも一部が軸方向に対して垂直な並び方向に並び、検出体2は、第1部分321,331に対向する第1検出体部21と、第2部分322,332に対向する第2検出体部32とを有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に進退移動するシャフトの位置を検出する位置検出装置であって、
交流磁界を発生させる励磁コイルと、
前記シャフトに固定され、前記交流磁界の磁束が鎖交する検出体と、
前記交流磁界の磁束が鎖交する検出コイルと、を備え、
前記検出コイルは、前記交流磁界の磁束が鎖交することにより誘起電圧が発生する第1部分及び第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを接続する接続線路とを有し、
前記第1部分及び前記第2部分は、それぞれが前記軸方向に沿って延在すると共に、それぞれの少なくとも一部が前記軸方向に対して垂直な並び方向に並んでおり、
前記検出体は、前記第1部分に対向する第1検出体部と、前記第2部分に対向する第2検出体部とを有し、
前記第1部分に対する前記第1検出体部の位置によって前記第1部分に発生する誘起電圧が変化し、前記第2部分に対する前記第2検出体部の位置によって前記第2部分に発生する誘起電圧が変化する、
位置検出装置。
【請求項2】
前記励磁コイル及び前記検出コイルが前記シャフトと平行に配置された基板に形成されている、
請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記軸方向において、前記検出コイルの前記第1部分と前記第1検出体部とが前記基板に垂直な方向に重なる重なり長さと、前記検出コイルの前記第2部分と前記第2検出体部とが前記基板に垂直な方向に重なる重なり長さとの合計長さが一定となるように、前記第1検出体部と前記第2検出体部とがオフセットしている、
請求項2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
二つの前記検出コイルを備え、前記シャフトが前記軸方向の一方の移動端から他方の移動端まで移動する間に二つの前記検出コイルのそれぞれに誘起される電圧の位相が互いに異なっている、
請求項3に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記励磁コイル及び二つの前記検出コイルが前記基板に形成されており、
二つの前記検出コイルが前記基板の厚さ方向に積層されている、
請求項4に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記励磁コイルの内側に二つの前記検出コイルが形成されている、
請求項5に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記検出コイルは、前記基板の厚さ方向から見た前記第1部分及び前記第2部分のそれぞれの形状が、前記軸方向に延びる対称軸線を挟んで対称となる一対の正弦曲線状の導体線を組み合わせた形状であり、
前記第1部分と前記第2部分とで、前記対称軸線に対する前記一対の導体線の配置が逆である、
請求項2に記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記軸方向における前記第1部分の長さと前記第2部分の長さとが同じであり、
前記第1部分の全体と前記第2部分の全体とが、前記軸方向に対して垂直な並び方向に並んでいる、
請求項7に記載の位置検出装置。
【請求項9】
前記接続線路は、前記並び方向における前記第1部分と前記第2部分との間で前記軸方向に沿って延在する第1乃至第4の接続線を有し、
前記第1の接続線と前記第2の接続線とが前記接続線路の両端部で短絡されており、
前記第3の接続線と前記第4の接続線とが前記接続線路の両端部で短絡されており、
前記第1及び第2の接続線と前記第3及び第4の接続線との極性が逆であり、
前記基板は、複数の配線層を有する多層基板であり、
前記第1の接続線と前記第3の接続線とが前記基板の厚さ方向に並び、
前記第2の接続線と前記第4の接続線とが前記基板の厚さ方向に並び、
前記第1の接続線と前記第4の接続線とが前記基板の同じ層に形成され、
前記第2の接続線と前記第3の接続線とが前記基板の同じ層に形成されている、
請求項2乃至8の何れか1項に記載の位置検出装置。
【請求項10】
前記接続線路に鎖交する磁束を抑制する面状のシールドパターンが前記基板に形成されている、
請求項2乃至8の何れか1項に記載の位置検出装置。
【請求項11】
前記接続線路は、前記第1部分と前記第2部分との間で前記並び方向に延在する一対の接続線を有し、
前記一対の信号線が前記基板の厚さ方向に並んでいる、
請求項2乃至8の何れか1項に記載の位置検出装置。
【請求項12】
前記励磁コイルは、前記軸方向に延在する一対の延在部を有し、前記一対の延在部のうち前記第1部分側の一方の延在部と前記第2部分側の他方の延在部との間に前記検出コイルが設けられており、
前記検出体は、前記交流磁界によって渦電流が発生する導電体からなり、
前記第1検出体部は、前記並び方向における前記第1部分の前記一方の延在部側の端部に対向し、前記並び方向における前記第1部分の前記第2部分側の端部に対向せず、
前記第2検出体部は、前記並び方向における前記第2部分の前記他方の延在部側の端部に対向し、前記並び方向における前記第2部分の前記第1部分側の端部に対向しない、
請求項1乃至8の何れか1項に記載の位置検出装置。
【請求項13】
前記励磁コイルは、前記軸方向に延在する一対の延在部を有し、前記一対の延在部のうち前記第1部分側の一方の延在部と前記第2部分側の他方の延在部との間に前記検出コイルが設けられており、
前記検出体は、高透磁率材料によって形成されており、
前記第1検出体部は、前記並び方向における前記第1部分の前記第2部分側の端部に対向し、前記並び方向における前記第1部分の前記一方の延在部側の端部に対向せず、
前記第2検出体部は、前記並び方向における前記第2部分の前記第1部分側の端部に対向し、前記並び方向における前記第2部分の前記他方の延在部側の端部に対向しない、
請求項1乃至8の何れか1項に記載の位置検出装置。
【請求項14】
前記シャフトが車両のステアリング装置のラックシャフトである、
請求項1に記載の位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向に進退移動するシャフトの位置を検出する位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸方向に進退移動するシャフトの位置を検出する位置検出装置が、例えば車両のステアリング装置におけるラックシャフトの位置の検出のために用いられている。
【0003】
特許文献1に記載の検出ユニットは、電動パワーステアリング装置のラックシャフトの軸方向の位置を検出するものであり、直流電源と、永久磁石と、永久磁石とラックシャフトとの間に配置された第1乃至第4の磁気抵抗素子からなる素子群と、ラックシャフトの位置を演算する演算部とを備えている。素子群は、第1及び第2の磁気抵抗素が直列接続された直列回路と、第3及び第4の磁気抵抗素が直列接続された直列回路とが並列に接続され、ブリッジ回路を構成している。演算部には、第1の磁気抵抗素子と第2の磁気抵抗素子との間に接続された第1端子の電位、及び第3の磁気抵抗素子と第4の磁気抵抗素子との間に接続された第2端子の電位が入力される。ラックシャフトにおける素子群との対向面には、ラックシャフトの軸方向に対して傾斜した方向に延びる複数の溝が形成されている。
【0004】
上記のように構成された検出ユニットにおいて、ラックシャフトに噛み合うピニオンギヤシャフトの回転によってラックシャフトが軸方向に移動して第1乃至第4の磁気抵抗素子と複数の溝との相対位置が変化すると、第1乃至第4の磁気抵抗素子の電気抵抗のバランスが変化して、第1端子及び第2端子の電位が変化する。演算部は、この電位の変化に基づいてラックシャフトの位置を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2021/210125号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された検出ユニットでは、例えば車両の走行に伴う振動等によってラックシャフトが車幅方向に対して傾斜してしまうと、第1乃至第4の磁気抵抗素子とラックシャフトとの間隔が変化し、ラックシャフトの検出位置に誤差が発生してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、軸方向に進退移動するシャフトの位置を高精度に検出することが可能な位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、軸方向に進退移動するシャフトの位置を検出する位置検出装置であって、交流磁界を発生させる励磁コイルと、前記シャフトに固定され、前記交流磁界の磁束が鎖交する検出体と、前記交流磁界の磁束が鎖交する検出コイルと、を備え、前記検出コイルは、前記交流磁界の磁束が鎖交することにより誘起電圧が発生する第1部分及び第2部分と、前記第1部分の軸方向一方側の端部と前記第2部分の軸方向他方側の端部とを接続する接続線路とを有し、前記第1部分及び前記第2部分は、それぞれが前記軸方向に沿って延在すると共に、それぞれの少なくとも一部が前記軸方向に対して垂直な並び方向に並んでおり、前記検出体は、前記第1部分に対向する第1検出体部と、前記第2部分に対向する第2検出体部とを有し、前記第1部分に対する前記第1検出体部の位置によって前記第1部分に発生する誘起電圧が変化し、前記第2部分に対する前記第2検出体部の位置によって前記第2部分に発生する誘起電圧が変化する、位置検出装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る位置検出装置によれば、軸方向に進退移動するシャフトの位置を高精度に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る位置検出装置としてのストロークセンサを備えたステアバイワイヤ式のステアリング装置が搭載された車両の模式図である。
図2図1のA-A線におけるラックシャフト、ハウジング、検出体、及び基板の断面図である。
図3】ラックシャフト、ハウジング本体、検出体、及び基板を示す斜視図である。
図4】(a)は、基板における表面側配線層の配線パターンを示す平面図である。(b)は、裏面側配線層の配線パターンを示す平面図である。(c)は、表面側配線層の配線パターンに、表面側から見た裏面側配線層の配線パターンを重ねて示す平面図である。
図5】(a)~(c)は、表面側配線層及び裏面側配線層の配線パターンを、基材を透視して示す斜視図である。
図6】基板の回路構成を模式的に示す模式図である。
図7】(a)及び(b)は、基板の回路構成の一部を模式的に示す模式図である。
図8】電源部から励磁コイルに供給される供給電圧と、正弦波形状検出コイルに誘起される誘起電圧及び余弦波形状検出コイルに誘起される誘起電圧との関係の一例を示すグラフである。
図9】正弦波形状検出コイルに誘起される誘起電圧のピーク値であるピーク電圧と検出体の位置との関係を模式的に示す説明図である。
図10】余弦波形状検出コイルに誘起される誘起電圧のピーク値であるピーク電圧と検出体の位置との関係を模式的に示す説明図である。
図11】(a)は、基板に対するラックシャフトの傾きと、ラックシャフトの傾きが正弦波形状検出コイルに鎖交する磁束密度に与える影響との関係を模式的に示す説明図である。(b)は、基板に対するラックシャフトの傾きと、ラックシャフトの傾きが余弦波形状検出コイルに鎖交する磁束密度に与える影響との関係を模式的に示す説明図である。
図12】(a)は、基板に対するラックシャフトの傾きと、ラックシャフトの傾きが比較例に係る正弦波形状検出コイルに鎖交する磁束密度に与える影響との関係を模式的に示す説明図である。(b)は、基板に対するラックシャフトの傾きと、ラックシャフトの傾きが比較例に係る余弦波形状検出コイルに鎖交する磁束密度に与える影響との関係を模式的に示す説明図である。
図13】第1の実施の形態の変形例に係る励磁コイル及び二つの検出コイルを有する基板の回路構成を模式的に示す模式図である。
図14】(a)~(e)は、第2の実施の形態に係る基板の構成を示す説明図である。
図15】(a)~(d)は、第2の実施の形態に係る基板の構成を示す説明図である。
図16】(a)~(d)は、第2の実施の形態に係る基板の構成を示す説明図である。
図17】(a)~(d)は、第2の実施の形態に係る基板の構成を示す説明図である。
図18】(a)~(d)は、第2の実施の形態に係る基板の構成を示す説明図である。
図19】第2の実施の形態における位置の検出誤差を示すグラフである。
図20】第2の実施の形態の変形例を示す説明図である。
図21】(a)~(d)は、第3の実施の形態に係る基板の構成を示す説明図である。
図22】(a)~(d)は、第3の実施の形態に係る基板の構成を示す説明図である。
図23】(a)~(d)は、第3の実施の形態に係る基板の構成を示す説明図である。
図24】(a)~(d)は、第3の実施の形態に係る基板の構成を示す説明図である。
図25】(a)~(d)は、第3の実施の形態に係る基板の構成を示す説明図である。
図26図21(a)のI-I線における接続線路の周辺部における配線パターンの斜視断面図である。
図27】第3の実施の形態における位置の検出誤差を示すグラフである。
図28】(a)~(c)は、第4の実施の形態に係る基板の構成を示す説明図である。
図29】(a)は、図28(a)におけるJ部の付近の配線パターンを示す斜視図である。(b)は、図28(a)におけるK部の付近の配線パターンを示す斜視図である。
図30】第4の実施の形態における位置の検出誤差を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る位置検出装置としてのストロークセンサ1を備えたステアバイワイヤ式のステアリング装置10が搭載された車両の模式図である。
【0012】
図1に示すように、ステアリング装置10は、ストロークセンサ1と、転舵輪11(左右の前輪)に連結されたタイロッド12と、タイロッド12に連結されたラックシャフト13と、ラックシャフト13を収容する筒状のハウジング14と、ラックシャフト13のラック歯131に噛み合わされたピニオンギヤ151を有するウォーム減速機構15と、ウォーム減速機構15を介してラックシャフト13に軸方向の移動力を付与する電動モータ16と、運転者が操舵操作するステアリングホイール17と、ステアリングホイール17の操舵角を検出する操舵角センサ18と、操舵角センサ18によって検出された操舵角に基づいて電動モータ16を制御する操舵制御装置19とを備えている。
【0013】
図1では、ハウジング14を仮想線で示している。ラックシャフト13は、例えば炭素鋼等の鋼材からなり、ハウジング14の両端部に取り付けられた一対のラックブッシュ132に支持されている。ウォーム減速機構15は、ウォームホイール152及びウォームギヤ153を有し、ウォームホイール152にピニオンギヤ151が固定されている。ウォームギヤ153は、電動モータ16のモータシャフト161に固定されている。
【0014】
電動モータ16は、操舵制御装置19から供給されるモータ電流によってトルクを発生し、ウォームギヤ153を介してウォームホイール152及びピニオンギヤ151を回転させる。ピニオンギヤ151が回転すると、ラックシャフト13が車幅方向に進退移動して左右の転舵輪11が転舵される。ラックシャフト13は、操舵角がゼロである場合の中立位置から所定の範囲で車幅方向の右側及び左側に移動可能である。図1では、ラックシャフト13が車幅方向に移動可能な範囲Rを両矢印で示している。
【0015】
(ストロークセンサ1の構成)
ストロークセンサ1は、ラックシャフト13に固定された検出体2と、検出体2に対向してラックシャフト13と平行に配置された基板3と、電源部101及び演算部102とを備えている。基板3は、ラックシャフト13と平行に、ハウジング14内に固定されている。ストロークセンサ1は、ハウジング14に対するラックシャフト13の位置を検出体2の位置によって検出し、検出した位置の情報を操舵制御装置19に出力する。操舵制御装置19は、ストロークセンサ1によって検出されたラックシャフト13の位置が操舵角センサ18によって検出されたステアリングホイール17の操舵角に応じた位置となるように、電動モータ16を制御する。
【0016】
図2は、図1のA-A線におけるラックシャフト13、ハウジング14、検出体2、及び基板3の断面図である。図3は、ラックシャフト13、ハウジング14の本体141、検出体2、及び基板3を示す斜視図である。図3では、ラックシャフト13の中心軸線Cを一点鎖線で示している。以下、ラックシャフト13の中心軸線Cに平行な方向を軸方向という。
【0017】
ラックシャフト13は、断面円形状の鋼材からなる棒状体である。ハウジング14は、金属製の本体141と、樹脂製の蓋体142とを有し、蓋体142が本体141に例えば接着によって固定されている。本体141は、ラックシャフト13を収容する収容空間140が形成された断面U字状であり、収容空間140が鉛直方向の上方に向かって開放されている。ラックシャフト13の直径Dは、例えば25mmである。
【0018】
ラックシャフト13の外周面13aと収容空間140の内面140aとの間には、例えば1mm以上の隙間が形成されている。蓋体142は、平板状に形成され、収容空間140を鉛直方向の上方を覆っている。本体141は、非磁性体であり、例えばダイキャスト形成されたアルミニウム合金からなる。なお、蓋体142の材料としては、必ずしも樹脂に限らないが、非磁性かつ非導電性のものを用いることが望ましい。
【0019】
検出体2は、第1検出体部21と第2検出体部22とからなる。本実施の形態では、第1検出体部21と第2検出体部22とが別体であり、第1検出体部21及び第2検出体部22がラックシャフト13の軸方向に離間した位置でラックシャフト13に固定されている。ただし、第1検出体部21と第2検出体部22とを一体にしてもよい。
【0020】
検出体2は、ラックシャフト13よりも透磁率が高い材料、又はラックシャフト13よりも導電率が高い材料からなる。検出体2の材料としてラックシャフト13よりも透磁率が高いものを用いる場合、電気抵抗が高く渦電流が発生しにくいフェライト等の磁性材料を用いることが望ましい。また、ラックシャフト13よりも導電率が高い材料を検出体2に用いる場合、その材料としては、例えばアルミニウムや銅を主成分とする金属を用いることができる。
【0021】
なお、本実施の形態では、第1検出体部21及び第2検出体部22がラックシャフト13の外周面13aから基板3に向かって突出するように設けられているので、ラックシャフト13と透磁率が等しい材料、もしくはラックシャフト13と導電率が等しい材料を検出体2の材料として用いても、後述する作用及び効果を得ることができる。ただし、位置の検出精度を高めるためには、ラックシャフト13の材料よりも透磁率が高い高透磁率材料、もしくはラックシャフト13の材料よりも導電率が等しい高導電率材料を、検出体2の材料として用いることが望ましい。
【0022】
第1検出体部21及び第2検出体部22は、ラックシャフト13の上部に例えば接着や溶接等の固定手段によって固定されている。基板3に対向する第1検出体部21及び第2検出体部22の対向面21a,22aは、平面状に形成され、エアギャップGを介して基板3の表(おもて)面3aと平行に向かい合っている。基板3の裏面3bは、接着剤300によって蓋体142に固定されている。基板3側から見た第1検出体部21及び第2検出体部22の対向面21a,22aの形状は、ラックシャフト13の軸方向に長い長方形状である。
【0023】
エアギャップGの幅Wは、例えば1mmである。対向面21a,22aに対して垂直な方向の第1検出体部21及び第2検出体部22の最小厚みTは、例えば5mmである。なお、本実施の形態では、ラックシャフト13が断面円形状に形成されているが、ラックシャフト13の断面形状は円形に限らず、例えば一部が直線状に形成されたD字状、あるいは多角形状であってもよい。
【0024】
基板3は、FR4(ガラス繊維にエポキシ樹脂をしみ込ませて熱硬化処理を施したもの)等の誘電体からなる平板状の基材30の表(おもて)面3a側に表面側配線層301が形成され、基材30の裏面3b側に裏面側配線層302が形成された2層のプリント基板である。表面側配線層301及び裏面側配線層302は、後述する電極部を除き、電気絶縁性を有するレジスト膜303に覆われている。表面側配線層301の配線パターンと裏面側配線層302の配線パターンとは、基材30をその厚さ方向に貫通する複数のバイア304によって接続されている。基板3は、ラックシャフト13の軸方向が長手方向となる平坦な長方形状である。基板3の短手方向は、軸方向に対して垂直な方向である。
【0025】
次に、基板3における配線の構成について、図4乃至図7を参照して詳細に説明する。図4(a)は、基板3における表面側配線層301の配線パターンを示す表面3aの平面図である。図4(b)は、基板3における裏面側配線層302の配線パターンを表面3a側から見た平面図である。図4(c)は、表面側配線層301の配線パターンに、淡色で示す表面3a側から見た裏面側配線層302の配線パターンを重ねて示す平面図である。図5(a)~(c)は、表面側配線層301及び裏面側配線層302の配線パターンを、基材30を透視して示す斜視図である。図5(a)は、基板3の長手方向の一端部を示している。図5(b)は、基板3の長手方向の中央部を示している。図5(c)は、基板3の長手方向の他端部を示している。図6は、基板3の回路構成を模式的に示す模式図である。図7(a)及び(b)は、基板3の回路構成の一部を模式的に示す模式図である。なお、これら各図面に示す配線パターンは一例に過ぎず、本発明の効果を得られるように基板3が形成されている限り、様々な形態の配線パターンを採用することが可能である。
【0026】
基板3には、交流磁界を発生させる励磁コイル31と、励磁コイル31が発生する交流磁界の磁束が鎖交する二つの検出コイル32,33とが、表面側配線層301及び裏面側配線層302の配線パターンによって形成されている。電源部101は、励磁コイル31に正弦波状の交流電流を供給し、励磁コイル31がこの交流電流の周波数に対応した周波数の交流磁界を発生させる。励磁コイル31は、ラックシャフト13の軸方向に延在する一対の長辺部311,312、及び一対の長辺部311,312の間の一対の短辺部313,314を有する長方形状である。短辺部314には、電源部101との接続のための電極部315,316が設けられている。二つの検出コイル32,33は、励磁コイル31の内側に形成され、基板3の厚さ方向に積層されている。二つの検出コイル32,33には、励磁コイル31が発生する交流磁界によって誘起電圧が発生する。
【0027】
励磁コイル31が発生する交流磁界の磁束は、検出体2の第1検出体部21及び第2検出体部22にも鎖交する。第1検出体部21及び第2検出体部22に鎖交する磁束は、二つの検出コイル32,33に鎖交する磁束の強度分布に影響を与え、励磁コイル31が発生する交流磁界によって二つの検出コイル32,33に発生する誘起電圧の大きさが第1検出体部21及び第2検出体部22の位置によって変化する。ラックシャフト13が軸方向の一方の移動端から他方の移動端まで移動する間に検出コイル32,33のそれぞれに誘起される電圧の位相は、互いに異なっている。本実施の形態では、検出コイル32,33に誘起される電圧の位相が90°異なる。以下、二つの検出コイル32,33のうち、一方の検出コイル32を正弦波形状検出コイル32といい、他方の検出コイル33を余弦波形状検出コイル33という。
【0028】
図6では、励磁コイル31、正弦波形状検出コイル32、及び余弦波形状検出コイル33の形状を示している。図7(a)では、励磁コイル31及び正弦波形状検出コイル32の形状を示している。図7(b)では、励磁コイル31及び余弦波形状検出コイル33の形状を示している。図6ならびに図7(a)及び(b)では、基板3の短手方向(図面上下方向)の幅を、長手方向(図面左右方向)の長さよりも誇張して示している。
【0029】
正弦波形状検出コイル32は、励磁コイル31の交流磁界の磁束が鎖交することにより誘起電圧が発生する第1部分321及び第2部分322と、第1部分321の軸方向一方側の端部と第2部分322の軸方向他方側の端部とを接続する接続線路323とを有している。正弦波形状検出コイル32の第1部分321と第2部分322とは、基板3の短手方向に沿った並び方向に並んでいる。この並び方向は、軸方向(基板3の長手方向)に対して垂直な方向(基板3の短手方向)である。
【0030】
同様に、余弦波形状検出コイル33は、励磁コイル31の交流磁界の磁束が鎖交することにより誘起電圧が発生する第1部分331及び第2部分332と、第1部分331の軸方向一方側の端部と第2部分332の軸方向他方側の端部とを接続する接続線路333とを有している。余弦波形状検出コイル33の第1部分331と第2部分332とは、基板3の短手方向に沿った並び方向に並んでいる。
【0031】
正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33の第1部分321,331及び第2部分322,332は、それぞれ軸方向に延在している。本実施の形態では、正弦波形状検出コイル32の第1部分321及び第2部分322の軸方向の長さ、ならびに余弦波形状検出コイル33の第1部分331及び第2部分332の軸方向の長さが、全て同じである。また、正弦波形状検出コイル32の第1部分321と余弦波形状検出コイル33の第1部分331が基板3の厚さ方向に積層され、正弦波形状検出コイル32の第2部分322と余弦波形状検出コイル33の第2部分332が基板3の厚さ方向に積層されている。
【0032】
正弦波形状検出コイル32は、第1部分321の全体と第2部分322の全体とが上記の並び方向に並んでいる。余弦波形状検出コイル33は、第1部分331の全体と第2部分332の全体とが上記の並び方向に並んでいる。ただし、これに限らず、正弦波形状検出コイル32の第1部分321と第2部分322とが少なくとも一部において基板3の短手方向に沿って並び、余弦波形状検出コイル33の第1部分331と第2部分332とが少なくとも一部において基板3の短手方向に沿って並んでいれば、後述する効果を得ることができる。
【0033】
正弦波形状検出コイル32は、一対の電極部324,325の電位が演算部102に出力される。電極部324,325は、レジスト膜303に覆われておらず、演算部102との接続のための信号線が、例えば半田によって電気的に接続される。また、正弦波形状検出コイル32は、折り返し点326で接続された一対の導体線32a,32bによって構成されている。図6及び図7(a)では、一対の導体線32a,32bのうち一方の導体線32aを実線で示し、他方の導体線32bを破線で示している。折り返し点326は、一対の導体線32a,32bに沿った電極部324,325からの距離が最も遠い位置にある。電極部324,325は、一対の導体線32a,32bにおける、折り返し点326とは反対側の端部である。
【0034】
余弦波形状検出コイル33は、一対の電極部334,335の電位が演算部102に出力される。電極部334,335は、レジスト膜303に覆われておらず、演算部102との接続のための信号線が、例えば半田によって電気的に接続される。また、余弦波形状検出コイル33は、折り返し点336で接続された一対の導体線33a,33bによって構成されている。図6及び図7(b)では、一対の導体線33a,33bのうち一方の導体線33aを実線で示し、他方の導体線33bを破線で示している。折り返し点336は、一対の導体線33a,33bに沿った電極部334,335からの距離が最も遠い位置にある。電極部334,335は、一対の導体線33a,33bにおける、折り返し点336とは反対側の端部である。
【0035】
正弦波形状検出コイル32の第1部分321及び第2部分322は、基板3の厚さ方向から見た形状が軸方向に延びる対称軸線A321,A322を挟んで対称となる一対の導体線32a,32bを組み合わせた形状である。接続線路323では、一対の導体線32a,32bが、第1部分321と第2部分322との間を基板3の長手方向に沿って横断している。第1部分321では、基板3の短手方向において一方の導体線32aが他方の導体線32bよりも接続線路323から遠い位置にあり、第2部分322においても、一方の導体線32aが他方の導体線32bよりも接続線路323から遠い位置にある。つまり、正弦波形状検出コイル32は、第1部分321と第2部分322とで、対称軸線A321,A322に対する一対の導体線32a,32bの配置が逆である。接続線路323における導体線32a,32bは、励磁コイル31が発生する交流磁界によって誘起電圧が発生しないよう、図4に示すように基板3の厚さ方向に重なっている。
【0036】
同様に、余弦波形状検出コイル33の第1部分331及び第2部分332は、基板3の厚さ方向から見た形状が軸方向に延びる対称軸線A331,A332を挟んで対称となる一対の導体線33a,33bを組み合わせた形状である。接続線路333では、一対の導体線33a,33bが第1部分331と第2部分332との間を基板3の長手方向に沿って横断している。第1部分331では、図面左側にあたる軸方向一方側の端部において一方の導体線33aが接続線路333から遠い位置にあり、他方の導体線33bが接続線路333から近い位置にある。第1部分331における軸方向他方側の端部では、一方の導体線33aと他方の導体線33bとの位置関係がこの逆である。第2部分332では、軸方向一方側の端部において一方の導体線33aが接続線路333から遠い位置にあり、他方の導体線33bが接続線路333から近い位置にある。第2部分332における軸方向他方側の端部では、一方の導体線33aと他方の導体線33bとの位置関係がこの逆である。つまり、余弦波形状検出コイル33は、第1部分331と第2部分332とで、対称軸線A331,A332に対する一対の導体線32a,32bの配置が逆である。接続線路333における導体線33a,33bは、励磁コイル31が発生する交流磁界によって誘起電圧が発生しないよう、図4に示すように基板3の厚さ方向に重なっている。
【0037】
正弦波形状検出コイル32の一対の導体線32a,32b、及び余弦波形状検出コイル33の一対の導体線33a,33bは、それぞれ正弦曲線状である。より具体的には、正弦波形状検出コイル32の一方の導体線32aの形状は、第1部分321において、対称軸線A321を位相軸と見做した場合の0°から180°までの範囲の正弦波形状であり、第2部分322において、対称軸線A322を位相軸と見做した場合の180°から360°までの範囲の正弦波形状である。正弦波形状検出コイル32の他方の導体線32bの形状は、第1部分321において、対称軸線A321を位相軸と見做した場合の180°から360°までの範囲の正弦波形状であり、第2部分322において、対称軸線A322を位相軸と見做した場合の0°から180°までの範囲の正弦波形状である。余弦波形状検出コイル33の一方の導体線33aの形状は、第1部分331において、対称軸線A331を位相軸と見做した場合の90°から270°までの範囲の正弦波形状であり、第2部分332において、対称軸線A332を位相軸と見做した場合の270°から360°及び0°から90°までの範囲の正弦波形状である。余弦波形状検出コイル33の他方の導体線33bの形状は、第1部分331において、対称軸線A331を位相軸と見做した場合の270°から360°及び0°から90°までの範囲の正弦波形状であり、第2部分332において、対称軸線A332を位相軸と見做した場合の90°から270°までの範囲の正弦波形状である。
【0038】
なお、余弦波形状検出コイル33の一方の導体線33aの形状は、第1部分331において、対称軸線A331を位相軸と見做した場合の0°から180°までの範囲の余弦波形状であると換言することができ、第2部分332において、対称軸線A332を位相軸と見做した場合の180°から360°までの範囲の余弦波形状であると換言することができる。また、余弦波形状検出コイル33の他方の導体線33aの形状は、第1部分331において、対称軸線A331を位相軸と見做した場合の180°から360°までの範囲の余弦波形状であると換言することができ、第2部分332において、対称軸線A332を位相軸と見做した場合の0°から180°までの範囲の余弦波形状であると換言することができる。
【0039】
検出体2は、ラックシャフト13が軸方向の一方の移動端から他方の移動端まで移動する間に、第1検出体部21が正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33の第1部分321,331に対向し、第2検出体部22が正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33の第2部分322,332に対向する。正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33の第1部分321,331に発生する誘起電圧は、第1部分321,331に対する第1検出体部21の位置によって変化する。正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33の第2部分322,332に発生する誘起電圧は、第2部分322,332に対する第2検出体部22の位置によって変化する。
【0040】
図4(c)では、ラックシャフト13が中立位置にあるときの基板3に対する第1検出体部21及び第2検出体部22の位置及び大きさを破線で示している。また、図4(c)では、正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33の第1部分321,331と第1検出体部21とが基板3に垂直な方向に重なる範囲の軸方向の長さである重なり長さをLで示し、正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33の第2部分322,332と第2検出体部22とが基板3に垂直な方向に重なる範囲の軸方向の長さである重なり長さをLで示している。検出体2は、LとLとを合算した合計長さが常に一定となるように、第1検出体部21と第2検出体部22とが軸方向にオフセットしている。
【0041】
なお、第1検出体部21が正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33が形成された範囲から軸方向にずれた際にはLが0となり、第2検出体部22が正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33が形成された範囲から軸方向にずれた際にはLが0となる。第1検出体部21の軸方向長さL21と第2検出体部22の軸方向長さL22とは同じであり、L及びLの合計長さは、第1検出体部21の軸方向長さL21及び第2検出体部22の軸方向長さL22と同じである。第1検出体部21の軸方向長さL21及び第2検出体部22の軸方向長さL22は、一例として、正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33の第1部分321,331及び第2部分322,332の軸方向の長さの二分の一以下である。
【0042】
第1検出体部21及び第2検出体部22がラックシャフト13よりも透磁率が高い材料からなる場合、第1検出体部21及び第2検出体部22に磁束が集中して流れ、基板3において第1検出体部21及び第2検出体部22と向かい合う部分の磁束密度が他の部分よりも高くなる。また、第1検出体部21及び第2検出体部22がラックシャフト13よりも導電率が高い材料からなる場合、交流磁界によって第1検出体部21及び第2検出体部22に発生する渦電流により正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33に鎖交する磁束の密度が低くなり、基板3において第1検出体部21及び第2検出体部22と向かい合う部分の磁束密度が他の部分よりも低くなる。このため、正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33に誘起される電圧の大きさが、基板3に対する第1検出体部21及び第2検出体部22の位置に応じて変化する。
【0043】
正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33には、電源部101から励磁コイル31に供給される交流電流の周期と同じ周期の電圧が誘起され、この誘起電圧のピーク値が第1検出体部21及び第2検出体部22の位置に応じて変化する。なお、ここで電圧のピーク値とは、励磁コイル31に供給される交流電流の1周期分の期間内における電圧の絶対値の極大値をいう。
【0044】
正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33に誘起される電圧のピーク値は、ラックシャフト13が軸方向の一方の移動端から他方の移動端まで移動する間に、1周期分以下の範囲で変化する。これにより、ストロークセンサ1は、ラックシャフト13が軸方向に移動可能な範囲Rの全体にわたって、ラックシャフト13の絶対位置を検出可能である。
【0045】
(ストロークセンサ1の動作)
次に、基板3に対する検出体2の位置を検出するためのストロークセンサ1の動作について、図8乃至図10を参照して説明する。以下の説明において、検出体2の位置とは、軸方向における第1検出体部21と第2検出体部22との中間点の位置をいう。
【0046】
図8は、第1検出体部21が正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33の第1部分321,331と重なっている場合において、電源部101から励磁コイル31に供給される供給電圧Vと、正弦波形状検出コイル32に誘起される誘起電圧V及び余弦波形状検出コイル33に誘起される誘起電圧Vとの関係の一例を示すグラフである。図8のグラフの横軸は時間軸であり、左右の縦軸に供給電圧V及び誘起電圧V,Vを示している。
【0047】
図8に示す例では、供給電圧Vと誘起電圧V,Vとが同相であるが、第2検出体部22が正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33の第2部分322,332と重なる場合には、正弦波形状検出コイル32に誘起される誘起電圧Vが励磁コイル31に供給される供給電圧Vと逆相となる。また、余弦波形状検出コイル33に誘起される誘起電圧Vは、一方の導体線33aと他方の導体線33bとがクロスする位置を第1検出体部21又は第2検出体部22が通過するたびに同相と逆相とが切り替わる。励磁コイル31には、例えば1MHzから1GHz程度の高周波の交流電圧が供給電圧Vとして供給される。
【0048】
図9は、正弦波形状検出コイル32に誘起される誘起電圧Vのピーク値であるピーク電圧Vsと、検出体2の位置との関係を模式的に示す説明図である。図10は、余弦波形状検出コイル33に誘起される誘起電圧Vのピーク値であるピーク電圧Vcと、検出体2の位置との関係を模式的に示す説明図である。図9及び図10に示すピーク電圧Vs,Vcのグラフでは、横軸に検出体2の位置を示している。また、図9及び図10では、接続線路323,333を省略し、第1部分321,331と第2部分322,332を図面左右方向に並べている。
【0049】
ストロークセンサ1は、LとLとを合算した合計長さが一定である軸方向範囲Rで検出体2の絶対位置を検出可能である。図9及び図10に示すグラフでは、検出体2が軸方向範囲Rの一方の端部にあるときの横軸座標をPとし、検出体2が軸方向範囲Rの他方の端部にあるときの横軸座標をPとして、各位置におけるピーク電圧Vs,Vcを示している。軸方向範囲Rの長さは、ラックシャフト13が軸方向に移動可能な範囲R以上である。
【0050】
また、図9及び図10に示すグラフにおいて、正弦波形状検出コイル32のピーク電圧Vsは、正弦波形状検出コイル32に誘起される誘起電圧Vが励磁コイル31に供給される電圧Vと同相であるときを正値とし、逆相であるときを負値とする。同様に、余弦波形状検出コイル33のピーク電圧Vcは、余弦波形状検出コイル33に誘起される誘起電圧Vが励磁コイル31に供給される電圧Vと同相であるときを正値とし、逆相であるときを負値とする。
【0051】
ここで、ωxを式[1]のように定義すると、ピーク電圧Vs,Vcは、図9,10に示すグラフにおける検出体2の横軸座標の座標値をXpとして、式[2]及び式[3]によってそれぞれ求められる。式[2]及び式[3]において、Aは所定の定数であり、Lは第1検出体部21及び第2検出体部22の軸方向長さの二分の一(L=L21/2,L22/2)である。
【数1】
【数2】
【数3】
式[2]及び式[3]より、図9及び図10に示すグラフにおける検出体2の座標値Xpは、式[4]によって求められる。つまり、演算部102は、ピーク電圧Vs,Vcに基づいて、検出体2の位置を演算によって求めることができる。
【数4】
【0052】
ところで、例えば車両走行時の振動によってラックシャフト13が基板3に対して傾き、基板3とラックシャフト13との間隔が変化すると、ラックシャフト13が励磁コイル31の内側における磁束の強度分布に影響を与える程度の度合いが基板3の長手方向の位置によって変わってしまう。本実施の形態では、ラックシャフト13の傾きが検出体2の位置の検出精度に与える影響を、正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33の第1部分321,331と第2部分322,332とを基板3の短手方向に並べた構成によって抑制している。次に、この構成による作用及び効果を、比較例との比較によって説明する。
【0053】
図11(a)は、基板3に対するラックシャフト13の傾きと、ラックシャフト13の傾きが正弦波形状検出コイル32に鎖交する磁束密度に与える影響との関係を模式的に示す説明図である。図11(b)は、基板3に対するラックシャフト13の傾きと、ラックシャフト13の傾きが余弦波形状検出コイル33に鎖交する磁束密度に与える影響との関係を模式的に示す説明図である。図11(a)及び(b)では、正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33の第1部分321,331及び第2部分322,332の二等分線BLを二点鎖線で示しており、この二等分線BL上のターゲットマークTGで示す点を中心としてラックシャフト13が図面上下方向に傾いた状態を示している。ラックシャフト13は、ターゲットマークTGよりも図面左側の部分が基板3に接近し、ターゲットマークTGよりも図面右側の部分が基板3から離間するように傾斜している。なお、図11(a)及び(b)では、ラックシャフト13の傾きを誇張して示している。
【0054】
ラックシャフト13には、励磁コイル31が発生する交流磁界の磁束が鎖交することにより渦電流が流れる。この渦電流は、正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33に鎖交する磁束を弱めるように作用する。この作用の影響は、ラックシャフト13と基板3との距離が近い部位ほど大きくなる。図11(a)及び(b)では、ラックシャフト13が傾くことによってこの影響が大きくなる正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33の内側の領域を濃色のグレーで示し、ラックシャフト13が傾くことによってこの影響が小さくなる正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33の内側の領域を淡色のグレーで示している。
【0055】
図11(a)に示すように、正弦波形状検出コイル32の第1部分321及び第2部分322における二等分線BLの左側にあたる第1左側部分321A及び第2左側部分322Aでは、ラックシャフト13が図示のように傾くことにより、ラックシャフト13に発生する渦電流の影響が大きくなって磁束密度が低くなる。正弦波形状検出コイル32の第1部分321及び第2部分322における二等分線BLの右側にあたる第1右側部分321B及び第2右側部分322Bでは、ラックシャフト13が図示のように傾くことにより、ラックシャフト13に発生する渦電流の影響が小さくなって磁束密度が高くなる。しかし、第1左側部分321Aの磁束密度の減少が誘起電圧Vに与える影響と第1右側部分321Bの磁束密度の増大が誘起電圧Vに与える影響とは相殺される。また、第2左側部分322Aの磁束密度の減少が誘起電圧Vに与える影響と第2右側部分322Bの磁束密度の増大が誘起電圧Vに与える影響とは相殺される。これにより、ラックシャフト13が基板3に対して傾いても、そのことによって誘起電圧Vは変動しない。
【0056】
図11(b)に示すように、余弦波形状検出コイル33の第1部分331及び第2部分332における二等分線BLの左側にあたる第1左側部分331A及び第2左側部分332Aでは、ラックシャフト13が図示のように傾くことにより、ラックシャフト13に発生する渦電流の影響が大きくなって磁束密度が低くなる。余弦波形状検出コイル33の第1部分331及び第2部分332における二等分線BLの右側にあたる第1右側部分331B及び第2右側部分332Bでは、ラックシャフト13が図示のように傾くことにより、ラックシャフト13に発生する渦電流の影響が小さくなって磁束密度が高くなる。しかし、第1左側部分331Aの磁束密度の減少が誘起電圧Vに与える影響と第2右側部分332Bの磁束密度の増大が誘起電圧Vに与える影響とは相殺される。また、第2左側部分332Aの磁束密度の減少が誘起電圧Vに与える影響と第1右側部分331Bの磁束密度の増大が誘起電圧Vに与える影響とは相殺される。これにより、ラックシャフト13が基板3に対して傾いても、そのことによって誘起電圧Vは変動しない。
【0057】
このように、本実施の形態では、ラックシャフト13が基板3に対して傾いても、誘起電圧V,Vが何れも変動しない。これにより、本実施の形態では、ラックシャフト13の位置を高い精度で検出することが可能となる。また、本実施の形態によれば、正弦波形状検出コイル32の第1部分321と第2部分322とが基板3の短手方向に並び、余弦波形状検出コイル33の第1部分331と第2部分332とが基板3の短手方向に並んでいるので、正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33の第1部分321,331と第2部分322,332とを基板3の長手方向に並べた場合に比較して、基板3の長手方向における正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33の長さが短くなる。これにより、基板3に対してラックシャフト13が図11(a)及び(b)に示すように傾動した場合に、傾動中心であるターゲットマークTGの位置から正弦波形状検出コイル32及び余弦波形状検出コイル33の各部までの平均距離が短くなり、傾動によるラックシャフト13と基板3との距離の変化量が小さくなる。このことによっても、誘起電圧V,Vの変動が抑制され、ラックシャフト13の位置の検出精度が高められる。
【0058】
図12(a)は、基板3に対するラックシャフト13の傾きと、ラックシャフト13の傾きが比較例に係る正弦波形状検出コイル320に鎖交する磁束密度に与える影響との関係を模式的に示す説明図である。図12(b)は、基板3に対するラックシャフト13の傾きと、ラックシャフト13の傾きが比較例に係る余弦波形状検出コイル330に鎖交する磁束密度に与える影響との関係を模式的に示す説明図である。
【0059】
比較例に係る正弦波形状検出コイル320は、上記の実施の形態に係る正弦波形状検出コイル32と同様、一対の導体線32a,32bによって第1部分321及び第2部分322が形成されているが、接続線路323を有しておらず、第1部分321と第2部分322とが二等分線BLを挟んでラックシャフト13の軸方向に沿って並んでいる。また、比較例に係る余弦波形状検出コイル330は、上記の実施の形態に係る余弦波形状検出コイル33と同様、一対の導体線33a,33bによって第1部分331及び第2部分332が形成されているが、接続線路333を有しておらず、第1部分331と第2部分332とが二等分線BLを挟んでラックシャフト13の軸方向に沿って並んでいる。
【0060】
比較例に係る正弦波形状検出コイル320では、ラックシャフト13が図示のように傾くと、第1部分321においてラックシャフト13に発生する渦電流の影響が大きくなって磁束密度が低くなり、第2部分322においてラックシャフト13に発生する渦電流の影響が小さくなって磁束密度が高くなる。ただし、第1部分321と第2部分322とでは、基板3の短手方向における一対の導体線32a,32bの並びが逆であるので、第1部分321において磁束密度が低くなる影響と第2部分322において磁束密度が高くなる影響とが相殺されず、ラックシャフト13が傾くことによって誘起電圧Vのピーク値が変動してしまう。これにより、比較例に係る正弦波形状検出コイル320を用いた場合には、ラックシャフト13の検出位置に誤差が生じてしまう。
【0061】
なお、比較例に係る余弦波形状検出コイル330では、余弦波形状検出コイル330の内側の各領域を、図12(b)に示すように第1左側部分331C、第1右側部分331D、第2左側部分332C、及び第2右側部分332Dとした場合に、ラックシャフト13の傾きが第1左側部分331Cの磁束に与える影響と第2右側部分332Dの磁束に与える影響とが相殺されると共に、ラックシャフト13の傾きが第1右側部分331Dの磁束に与える影響と第2左側部分332Cの磁束に与える影響とが相殺され、ラックシャフト13が基板3に対して傾いても誘起電圧Vは変動しない。
【0062】
[変形例]
図13は、実施の形態の変形例に係る励磁コイル31及び二つの検出コイル32,33を有する基板3Aの回路構成を模式的に示す模式図である。上記の実施の形態では、二つの検出コイル32,33のうち、一方の検出コイル32(正弦波形状検出コイル32)の第1部分321及び第2部分322の形状と、他方の検出コイル33(余弦波形状検出コイル33)の第1部分331及び第2部分332の形状とが異なり、正弦波形状検出コイル32の第1部分321及び第2部分322の全体と余弦波形状検出コイル33の第1部分331及び第2部分332の全体とが基板3の短手方向に並んでいる場合について説明した。本変形例では、二つの検出コイル32,33のうち、一方の検出コイル32の第1部分321及び第2部分322の形状と、他方の検出コイル33の第1部分331及び第2部分332の形状とが同じであり、一方の検出コイル32の第1部分321と他方の検出コイル33の第1部分331とのそれぞれの軸方向の一部が基板3の短手方向に並び、一方の検出コイル32の第2部分322と他方の検出コイル33の第2部分332とのそれぞれの軸方向の一部が基板3の短手方向に並んでいる。
【0063】
この変形例によっても、図12(a)及び(b)に示す比較例のものに比較して、ラックシャフト13の傾きが誘起電圧V,Vに与える影響が緩和され、ラックシャフト13の位置を高い精度で検出することが可能となる。
【0064】
[第2の実施の形態]
次に、図14乃至図18を参照し、本発明の第2の実施の形態に係る基板4について説明する。第1の実施の形態では、基板3が表面側配線層301及び裏面側配線層302を有する2層基板である場合について説明したが、第2の実施の形態では、基板4が第1配線層401、第2配線層402、第3配線層403、及び第4配線層404を有する4層基板である。第1配線層401及び第4配線層404は、基板4の外層にあたり、第2配線層402及び第3配線層403は、基板4の内層にあたる。基板4は、第1の実施の形態に係る基板3と同様、ラックシャフト13の軸方向が長手方向となる長方形状である。
【0065】
図14(a)は、ラックシャフト13側から見た基板4における第1乃至第4配線層401~404の配線パターンを重ね合わせた平面図である。図15(a)は、第1配線層401の配線パターンを示す平面図である。図16(a)は、第2配線層402の配線パターンを示す平面図である。図17(a)は、第3配線層403の配線パターンを示す平面図である。図18(a)は、第4配線層404の配線パターンを示す平面図である。図14(b)、図15(b)、図16(b)、図17(b)、図18(b)は、図14(a)、図15(a)、図16(a)、図17(a)、図18(a)のそれぞれのB部の拡大図である。図14(c)、図15(c)、図16(c)、図17(c)、図18(c)は、図14(a)、図15(a)、図16(a)、図17(a)、図18(a)のそれぞれのC部の拡大図である。図14(d)、図15(d)、図16(d)、図17(d)、図18(d)は、図14(a)、図15(a)、図16(a)、図17(a)、図18(a)のそれぞれのD部の拡大図である。図14(e)は、図14(a)のE-E線における断面を示す断面図である。図14(a)~(d)では、第2配線層402及び第4配線層404の配線パターンをグレーで示している。
【0066】
基板4は、第1の実施の形態の基板3と同様、ラックシャフト13と平行にハウジング14内に固定され、ラックシャフト13に固定された検出体2の第1検出体部21及び第2検出体部22と向かい合う。第1配線層401は、ラックシャフト13に対向する基板4の表面4a側に形成されている。第4配線層404は、表面4aの反対側の面である裏面4b側に形成されている。第2配線層402は、内層における第1配線層401側に形成され、第3配線層403は、内層における第4配線層404側に形成されている。
【0067】
図14(e)に示すように、第1配線層401と第2配線層402との間、第2配線層402と第3配線層403との間、及び第3配線層403と第4配線層404との間には、それぞれ平板状の基材405~407が介在している。第2配線層402と第3配線層403との間の基材406は、第1配線層401と第2配線層402との間の基材405、及び第3配線層403と第4配線層404との間の基材407よりも、厚みが薄く形成されている。
【0068】
基板4は、交流磁界を発生させる励磁コイル41と、励磁コイル41が発生する交流磁界の磁束が鎖交する正弦波形状検出コイル42及び余弦波形状検出コイル43とを有している。また、本実施の形態では、基板4の裏面4bにIC(Integrated Circuit)5及びコネクタ6が実装され、コネクタ6に接続されるケーブルによりIC5と操舵制御装置19とが電気的に接続される。基板4には、IC5とコネクタ6のコネクタピン61~64とを接続するコネクタ接続線路44、正弦波形状検出コイル42及び余弦波形状検出コイル43の出力電圧をIC5に伝達する出力電圧伝送線路45、ならびに励磁コイル41とIC5とを接続する励磁コイル接続線路46が設けられている。
【0069】
励磁コイル41は、ラックシャフト13の軸方向に延在する一対の延在部としての長辺部411,412、及び一対の長辺部411,412の間の一対の短辺部413,414を有する長方形状である。励磁コイル41には、励磁コイル接続線路46を経てIC5から交流電圧が供給される。
【0070】
正弦波形状検出コイル42は、励磁コイル41の交流磁界の磁束が鎖交することにより誘起電圧が発生する第1部分421及び第2部分422と、第1部分421の軸方向一方側の端部と第2部分422の軸方向他方側の端部とを接続する接続線路423とを有している。第1部分421及び第2部分422は、第1の実施の形態に係る正弦波形状検出コイル32の第1部分321及び第2部分322と同様の形状である。
【0071】
正弦波形状検出コイル42は、励磁コイル41における一対の長辺部411,412のうち、第1部分421側の長辺部411と第2部分422側の長辺部412との間に設けられており、第1部分421と第2部分422とが基板4の短手方向に沿った並び方向に並んでいる。接続線路423は、基板4の短手方向における第1部分421と第2部分422との間で、基板4の長手方向に沿って延在している。励磁コイル41が発生する交流磁界の磁束が鎖交することによって正弦波形状検出コイル42に発生する誘起電圧は、正弦波形状検出コイル42の出力電圧としてIC5に入力される。
【0072】
余弦波形状検出コイル43は、励磁コイル41の交流磁界の磁束が鎖交することにより誘起電圧が発生する第1部分431及び第2部分432と、第1部分431の軸方向一方側の端部と第2部分432の軸方向他方側の端部とを接続する接続線路433とを有している。第1部分431及び第2部分432は、第1の実施の形態に係る余弦波形状検出コイル43の第1部分431及び第2部分432と同様の形状である。
【0073】
余弦波形状検出コイル43は、励磁コイル41の長辺部411と長辺部412との間に設けられており、第1部分431と第2部分432とが基板4の短手方向に沿った並び方向に並んでいる。接続線路433は、基板4の短手方向における第1部分431と第2部分432との間で基板4の長手方向に沿って延在している。励磁コイル41が発生する交流磁界の磁束が鎖交することにより余弦波形状検出コイル43に発生する誘起電圧は、余弦波形状検出コイル43の出力電圧としてIC5に入力される。
【0074】
図14(a)では、基板4に対向する第1検出体部21及び第2検出体部22の形状及び大きさを図4(a)と同様に破線で示している。第1検出体部21の軸方向長さL21と第2検出体部22の軸方向長さL22とは同じである。正弦波形状検出コイル42及び余弦波形状検出コイル43の第1部分421,431と第1検出体部21とが基板4に垂直な方向に重なる範囲の軸方向の長さである重なり長さLと、正弦波形状検出コイル42及び余弦波形状検出コイル43の第2部分422,432と第2検出体部22とが基板4に垂直な方向に重なる範囲の軸方向の長さである重なり長さLとの合計長さは、第1検出体部21の軸方向長さL21及び第2検出体部22の軸方向長さL22と同じである。
【0075】
IC5には、正弦波形状検出コイル42及び余弦波形状検出コイル43の出力電圧が出力電圧伝送線路45を経て入力される。IC5は、正弦波形状検出コイル42及び余弦波形状検出コイル43の出力電圧をAD変換により数値化して検出体2の位置を演算によって求め、その演算結果を操舵制御装置19に送信する。出力電圧伝送線路45は、その一部が励磁コイル41の内側に形成されており、励磁コイル41におけるIC5側の短辺部414を横断するように延在している。また、出力電圧伝送線路45は、図14(b)に示すように、正弦波形状検出コイル42の出力電圧を伝送する第1出力電圧伝送線路451と、余弦波形状検出コイル43の出力電圧を伝送する第2出力電圧伝送線路452とからなる。
【0076】
第1出力電圧伝送線路451は、第2配線層402に設けられた導体線451aと第3配線層403に設けられた導体線451bとを有し、導体線451a,451bが基板4の厚さ方向に重なるように布線されている。また、第1出力電圧伝送線路451は、基板4を厚さ方向に見た場合に導体線451a,451bがループ形状を形成する第1キャンセル回路部451cを励磁コイル41の内側に有している。第1キャンセル回路部451cには、励磁コイル41が発生する交流磁界の磁束が鎖交することにより誘起電圧が発生する。第1キャンセル回路部451cに発生する誘起電圧は、ラックシャフト13及び検出体2が存在しない基板4単体の状態で励磁コイル41に交流電圧を供給した場合に正弦波形状検出コイル42の第1部分421及び第2部分422に発生してしまうオフセット電圧を打ち消す大きさである。
【0077】
同様に、第2出力電圧伝送線路452は、第2配線層402に設けられた導体線452aと第3配線層403に設けられた導体線452bとを有し、導体線452a,452bが基板4の厚さ方向に重なるように布線されている。また、第2出力電圧伝送線路452は、基板4を厚さ方向に見た場合に導体線452a,452bがループ形状を形成する第2キャンセル回路部452cを励磁コイル41の内側に有している。第2キャンセル回路部452cには、励磁コイル41が発生する交流磁界の磁束が鎖交することにより誘起電圧が発生する。第2キャンセル回路部452cに発生する誘起電圧は、ラックシャフト13及び検出体2が存在しない基板4単体の状態で励磁コイル41に交流電圧を供給した場合に余弦波形状検出コイル43の第1部分431及び第2部分432に発生してしまうオフセット電圧を打ち消す大きさである。
【0078】
正弦波形状検出コイル42の接続線路423は、第1乃至第4の接続線423a~423dを有し、正弦波形状検出コイル42の第1部分421における一対の導体線421a,421bと、正弦波形状検出コイル42の第2部分422における一対の導体線422a,422bとを接続している。第1の接続線423aと第2の接続線423bとは、接続線路423の両端部で電気的に短絡されており、第1部分421における一対の導体線421a,421bのうち一方の導体線421aと第2部分422における一対の導体線422a,422bのうち一方の導体線422aとを並列に接続している。第3の接続線423cと第4の接続線423dとは、接続線路423の両端部で電気的に短絡されており、第1部分421における一対の導体線421a,421bのうち他方の導体線421bと第2部分422における一対の導体線422a,422bのうち他方の導体線422bとを並列に接続している。
【0079】
第1及び第2の接続線423a,423bと第3及び第4の接続線423c,423dとは、極性が逆であり、第1及び第2の接続線423a,423bと第3及び第4の接続線423c,423dとの間には、正弦波形状検出コイル42の出力電圧に応じた電位差が発生する。励磁コイル41が発生する交流磁界によって正弦波形状検出コイル42の第1部分421と第2部分422との間で電流が流れる場合には、第1及び第2の接続線423a,423bに流れる電流の向きと第3及び第4の接続線423c,423dに流れる電流の向きが、基板4の長手方向において互いに逆向きとなる。
【0080】
第1の接続線423a及び第4の接続線423dは、基板4の第2配線層402に形成され、第2の接続線423b及び第3の接続線423cは、基板4の第3配線層403に形成されている。第1の接続線423aと第3の接続線423cとは、基材406を挟んで基板4の厚さ方向に並んでいる。また、第2の接続線423bと第4の接続線423dとは、基材406を挟んで基板4の厚さ方向に並んでいる。この接続線路423の構成により、基板4における正弦波形状検出コイル42の第1部分421と第2部分422との間の部分に鎖交する磁束によって接続線路423に誘起される電圧が抑制されている。
【0081】
正弦波形状検出コイル42の接続線路423は、第1部分421側の端部に第1接続部424を有し、第2部分422側の端部に第2接続部425を有している。第1接続部424は、第1部分421における一方の導体線421aと第1の接続線423a及び第2の接続線423bとを接続するバイア424aと、第1部分421における他方の導体線421bと第3の接続線423c及び第4の接続線423dとを接続するバイア424bとを有して構成されている。第2接続部425は、第2部分422における一方の導体線422aと第1の接続線423a及び第2の接続線423bとを接続するバイア425aと、第2部分422における他方の導体線422bと第3の接続線423c及び第4の接続線423dとを接続するバイア425bとを有して構成されている。
【0082】
余弦波形状検出コイル43の接続線路433は、正弦波形状検出コイル42の接続線路423と平行に設けられ、正弦波形状検出コイル42の接続線路423と同様に構成されている。すなわち、余弦波形状検出コイル43の接続線路433は、第1乃至第4の接続線433a~433dを有し、余弦波形状検出コイル43の第1部分431における一対の導体線431a,431bと、余弦波形状検出コイル43の第2部分432における一対の導体線432a,432bとを接続している。第1の接続線433aと第2の接続線433bとは、接続線路433の両端部で電気的に短絡されており、第1部分431における一対の導体線431a,431bのうち一方の導体線431aと第2部分432における一対の導体線432a,432bのうち一方の導体線432aとを並列に接続している。第3の接続線433cと第4の接続線433dとは、接続線路433の両端部で電気的に短絡されており、第1部分431における一対の導体線431a,431bのうち他方の導体線431bと第2部分432における一対の導体線432a,432bのうち他方の導体線432bとを並列に接続している。
【0083】
第1及び第2の接続線433a,433bと第3及び第4の接続線433c,433dとは、極性が逆である。第1の接続線433a及び第4の接続線433dは、基板4の第2配線層402に形成され、第2の接続線433b及び第3の接続線433cは、基板4の第3配線層403に形成されている。第1の接続線433aと第3の接続線433cとは、基材406を挟んで基板4の厚さ方向に並んでいる。第2の接続線433bと第4の接続線433dとは、基材406を挟んで基板4の厚さ方向に並んでいる。この接続線路433の構成により、基板4における余弦波形状検出コイル43の第1部分431と第2部分432との間の部分に鎖交する磁束によって接続線路433に誘起される電圧が抑制されている。
【0084】
余弦波形状検出コイル43の接続線路433は、第1部分431側の端部に第1接続部434を有し、第2部分432側の端部に第2接続部435を有している。第1接続部434は、第1部分431における一方の導体線431aと第1の接続線433a及び第2の接続線433bとを接続するバイア434aと、第1部分431における他方の導体線431bと第3の接続線433c及び第4の接続線433dとを接続するバイア434bとを有して構成されている。第2接続部435は、第2部分432における一方の導体線432aと第1の接続線433a及び第2の接続線433bとを接続するバイア435aと、第2部分432における他方の導体線432bと第3の接続線433c及び第4の接続線433dとを接続するバイア435bとを有して構成されている。
【0085】
第1配線層401及び第4配線層404には、図15及び図18に示すように、正弦波形状検出コイル42の接続線路423の第1接続部424及び余弦波形状検出コイル43の接続線路433の第1接続部434を囲むように環状に形成された第1環状導体471,481と、正弦波形状検出コイル42の接続線路423の第2接続部425及び余弦波形状検出コイル43の接続線路433の第2接続部435を囲むように環状に形成された第2環状導体472,482とが形成されている。
【0086】
第1環状導体471,481及び第2環状導体472,482には、励磁コイル41が発生する交流磁界の磁束が鎖交することによって電流が流れ、この電流によって発生する磁界により、正弦波形状検出コイル42の第1接続部424及び第2接続部425ならびに余弦波形状検出コイル43の第1接続部434及び第2接続部435における磁界が弱められる。なお、図14では、正弦波形状検出コイル42及び余弦波形状検出コイル43の回路構成を明確に示すため、第1環状導体471,481及び第2環状導体472,482の図示を省略している。
【0087】
本実施の形態では、検出体2の第1検出体部21及び第2検出体部22が、励磁コイル41が発生する交流磁界によって渦電流が発生する導電体からなる。また、本実施の形態では、第1検出体部21が正弦波形状検出コイル42及び余弦波形状検出コイル43の第1部分421,431の基板4の短手方向の一部のみに対向し、第2検出体部22が正弦波形状検出コイル42及び余弦波形状検出コイル43の第2部分422,432の基板4の短手方向の一部のみに対向する。
【0088】
具体的には、第1検出体部21は、基板4の短手方向において、正弦波形状検出コイル42及び余弦波形状検出コイル43の第1部分421,431における励磁コイル41の長辺部411側の端部に対向すると共に、第1部分421,431における第2部分422,432側(接続線路423,433側)の端部に対向しない。また、第2検出体部22は、基板4の短手方向において、正弦波形状検出コイル42及び余弦波形状検出コイル43の第2部分422,432における励磁コイル41の長辺部412側の端部に対向すると共に、第2部分422,432における第1部分421,431側(接続線路423,433側)の端部に対向しない。
【0089】
この検出体2の構成により、比較的磁界の強度が強い励磁コイル41の長辺部411,412に近い部分では第1検出体部21及び第2検出体部22に流れる渦電流によって磁界が弱められ、比較的磁界の強度が弱い基板4の短手方向の中央部に近い部分では第1検出体部21及び第2検出体部22によって磁界が弱められない。これにより、基板4において第1検出体部21又は第2検出体部22と対向する部分、及び当該部分と基板4の短手方向に並ぶ部分における磁界の強度が均一化され、ラックシャフト13の位置の検出精度が向上する。
【0090】
以上説明した第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態で説明した効果に加え、励磁コイル41が発生する交流磁界によって正弦波形状検出コイル42の接続線路423及び余弦波形状検出コイル43の接続線路433に誘起される電圧が抑制され、ラックシャフト13の位置の検出精度が向上する。また、検出体2の第1検出体部21及び第2検出体部22が正弦波形状検出コイル42及び余弦波形状検出コイル43の第1部分421,431及び第2部分422,432の一部のみに対向する構成によっても、ラックシャフト13の位置の検出精度が向上する。
【0091】
図19は、ラックシャフト13の中立位置からの左右方向への移動量を横軸とし、縦軸にラックシャフト13の位置の検出誤差を示したグラフである。このグラフにおいて、白丸は第1の実施の形態の基板3を用いた場合の検出誤差を示し、黒丸は第2の実施の形態の基板4を用いた場合の検出誤差を示している。図19に示すように、第2の実施の形態の基板4を用いた場合には、第1の実施の形態の基板3を用いた場合よりも検出誤差が平均的に小さい。また、第2の実施の形態の基板4を用いた場合には、第1の実施の形態の基板3を用いた場合よりも検出誤差の最大値が小さくなっている。
【0092】
(第2の実施の形態の変形例)
図20は、第2の実施の形態の変形例を示す説明図である。第2の実施の形態では、検出体2の第1検出体部21及び第2検出体部22が導電体からなる場合について説明したが、図20に示す変形例では、第1検出体部21及び第2検出体部22がフェライト等の高透磁率材料からなる。基板4の構成は、図14等を参照して説明した第2の実施の形態と同様であり、励磁コイル41の一対の長辺部411,412の間に正弦波形状検出コイル42及び余弦波形状検出コイル43が設けられている。
【0093】
図20に示すように、第1検出体部21は、基板4の短手方向における正弦波形状検出コイル42及び余弦波形状検出コイル43の第1部分421,431における第2部分422,432側(接続線路423,433側)の端部に対向し、基板4の短手方向における正弦波形状検出コイル42及び余弦波形状検出コイル43の第1部分421,431の長辺部411側の端部には対向しない。また、第2検出体部22は、基板4の短手方向における正弦波形状検出コイル42及び余弦波形状検出コイル43の第2部分422,432における第1部分421,431側(接続線路423,433側)の端部に対向し、基板4の短手方向における正弦波形状検出コイル42及び余弦波形状検出コイル43の第2部分422,432の長辺部412側の端部には対向しない。
【0094】
この構成により、基板4において第1検出体部21又は第2検出体部22と対向する部分、及び当該部分と基板4の短手方向に並ぶ部分における磁界の強度が均一化され、ラックシャフト13の位置の検出精度が向上する。
【0095】
[第3の実施の形態]
次に、図21乃至図26を参照し、本発明の第3の実施の形態に係る基板4Aについて説明する。基板4Aは、第2の実施の形態に係る基板4と大略同様に構成されているが、正弦波形状検出コイル42の第1部分421と第2部分422とを接続する接続線路426の構成が第2の実施の形態の接続線路423と異なり、余弦波形状検出コイル43の第1部分431と第2部分432とを接続する接続線路436の構成が第2の実施の形態の接続線路433と異なる。図21乃至図25において、第2の実施の形態において説明したものと共通する構成要素については、図14乃至図18に付したものと同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0096】
図21(a)は、基板4Aにおける第1乃至第4配線層401~404の配線パターンを重ね合わせた平面図である。図22(a)は、第1配線層401の配線パターンを示す平面図である。図23(a)は、第2配線層402の配線パターンを示す平面図である。図24(a)は、第3配線層403の配線パターンを示す平面図である。図25(a)は、第4配線層404の配線パターンを示す平面図である。図21(b)、図22(b)、図23(b)、図24(b)、図25(b)は、図21(a)、図22(a)、図23(a)、図24(a)、図25(a)のそれぞれのF部の拡大図である。図21(c)、図22(c)、図23(c)、図24(c)、図25(c)は、図21(a)、図22(a)、図23(a)、図24(a)、図25(a)のそれぞれのG部の拡大図である。図21(d)、図22(d)、図23(d)、図24(d)、図25(d)は、図21(a)、図22(a)、図23(a)、図24(a)、図25(a)のそれぞれのH部の拡大図である。図26は、図21(a)のI-I線における接続線路426,436の周辺部における配線パターンの斜視断面図である。
【0097】
正弦波形状検出コイル42の接続線路426は、基板4Aの短手方向における第1部分421と第2部分422との間で、基板4Aの長手方向に沿って延在している。余弦波形状検出コイル43の接続線路436は、基板4Aの短手方向における第1部分431と第2部分432との間で、基板4Aの長手方向に沿って延在している。
【0098】
正弦波形状検出コイル42の接続線路426は、正弦波形状検出コイル42の第1部分421における一対の導体線421a,421bのうち一方の導体線421aと第2部分422における一対の導体線422a,422bのうち一方の導体線422aとを接続する第1の接続線426aと、正弦波形状検出コイル42の第1部分421における他方の導体線421bと第2部分422における他方の導体線422bとを接続する第2の接続線426bとを有している。
【0099】
正弦波形状検出コイル42の第1部分421と第2部分422との間では、第1の接続線426aが第2配線層402に形成され、第2の接続線426bが第3配線層403に形成されており、第1の接続線426aと第2の接続線426bが基板4Aの厚さ方向に重なるように布線されている。第1の接続線426aと第2の接続線426bとは、極性が逆であり、第1の接続線426aと第2の接続線426bとの間には、正弦波形状検出コイル42の出力電圧に応じた電位差が発生する。
【0100】
余弦波形状検出コイル43の接続線路436は、余弦波形状検出コイル43の第1部分431における一対の導体線431a,431bのうち一方の導体線431aと第2部分432における一対の導体線432a,432bのうち一方の導体線432aとを接続する第1の接続線436aと、余弦波形状検出コイル43の第1部分431における他方の導体線431bと第2部分432における他方の導体線432bとを接続する第2の接続線436bとを有している。
【0101】
余弦波形状検出コイル43の第1部分431と第2部分432との間では、第1の接続線436aが第2配線層402に形成され、第2の接続線436bが第3配線層403に形成されており、第1の接続線436aと第2の接続線436bとが基板4Aの厚さ方向に重なるように布線されている。第1の接続線436aと第2の接続線436bとは、極性が逆であり、第1の接続線436aと第2の接続線436bとの間には、余弦波形状検出コイル43の出力電圧に応じた電位差が発生する。
【0102】
本実施の形態では、励磁コイル41が発生する交流磁界によって正弦波形状検出コイル42の接続線路426及び余弦波形状検出コイル43の接続線路436に誘起される電圧を抑制するため、接続線路426,436に鎖交する磁束を抑制する一対のシールドパターン491,492が基板4Aに形成されている。一方のシールドパターン491は、第1配線層401に形成され、他方のシールドパターン492は、第4配線層404に形成されている。接続線路426,436は、基板4Aの厚さ方向において一対のシールドパターン491,492の間に形成されている。なお、図21では、シールドパターン491,492の輪郭を破線で示している。
【0103】
図26に示すように、一対のシールドパターン491,492は、複数のバイア493によって接続されている。複数のバイア493は、一対のシールドパターン491,492の周縁に沿って列をなすように形成されている。基板4Aの短手方向における正弦波形状検出コイル42及び余弦波形状検出コイル43の第1部分421,431と第2部分422,432との間の部分では、接続線路426,436が、シールドパターン491,492における第1部分421,431側の端部に形成された複数のバイア493と第2部分422,432側の端部に形成された複数のバイア493との間に形成されている。
【0104】
図27は、ラックシャフト13の中立位置から左右方向への移動量を横軸とし、縦軸にラックシャフト13の位置の検出誤差を示したグラフである。このグラフにおいて、白丸は第1の実施の形態の基板3を用いた場合の検出誤差を示し、黒丸は第3の実施の形態の基板4Aを用いた場合の検出誤差を示している。図27に示すように、第3の実施の形態の基板4Aを用いた場合には、第1の実施の形態の基板3を用いた場合よりも検出誤差が平均的に小さい。また、第3の実施の形態の基板4Aを用いた場合には、第1の実施の形態の基板3を用いた場合よりも検出誤差の最大値が小さくなっている。
【0105】
以上説明した第3の実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様に、励磁コイル41が発生する交流磁界によって正弦波形状検出コイル42の接続線路426及び余弦波形状検出コイル43の接続線路436に誘起される電圧が抑制され、ラックシャフト13の位置の検出精度が向上する。なお、第3の実施の形態に係るシールドパターン491,492を第2の実施の形態に係る基板4に設け、基板4の接続線路423,433に鎖交する磁束を抑制してもよい。
【0106】
[第4の実施の形態]
次に、図28及び図29を参照し、本発明の第4の実施の形態に係る基板4Bについて説明する。基板4Bは、第2の実施の形態に係る基板4と大略同様に構成されているが、正弦波形状検出コイル42の第1部分421と第2部分422とを接続する接続線路428の構成、及び余弦波形状検出コイル43の第1部分431と第2部分432とを接続する接続線路438の構成が、第2の実施の形態の接続線路423,433と異なる。図28及び図29において、第2の実施の形態において説明したものと共通する構成要素については、図14乃至図18に付したものと同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0107】
図28(a)は、基板4Bにおける第1乃至第4配線層401~404の配線パターンを重ね合わせた平面図である。図28(b)は、図28(a)におけるJ部の拡大図である。図28(c)は、図27(a)におけるK部の拡大図である。図29(a)は、図28(a)におけるJ部の付近の配線パターンを示す斜視図である。図29(b)は、図28(a)におけるK部の付近の配線パターンを示す斜視図である。
【0108】
第2及び第3の実施の形態では、正弦波形状検出コイル42の接続線路423,426が第1部分421と第2部分422との間を基板4,4Aの長手方向に沿って延在し、余弦波形状検出コイル43の接続線路433,436が第1部分431と第2部分432との間を基板4,4Aの長手方向に沿って延在する場合について説明したが、本実施の形態では、正弦波形状検出コイル42の接続線路428が基板4Bの短手方向に延在して第1部分421と第2部分422とを接続し、余弦波形状検出コイル43の接続線路438が基板4Bの短手方向に延在して第1部分431と第2部分432とを接続している。
【0109】
正弦波形状検出コイル42の接続線路428は、基板4Bの長手方向における正弦波形状検出コイル42の中央部において、第1部分421における第2部分422側の端部と第2部分422における第1部分421側の端部とを接続している。余弦波形状検出コイル43の接続線路438は、基板4Bの長手方向における余弦波形状検出コイル43の端部において、第1部分431における第2部分432側の端部と第2部分432における第1部分431側の端部とを接続している。
【0110】
正弦波形状検出コイル42の接続線路428は、第1及び第2の接続線428a,428bと、第1及び第2のバイア428c,428dとを有して構成され、第1及び第2の接続線428a,428bが正弦波形状検出コイル42の第1部分421と第2部分422との並び方向に延在している。第1の接続線428aは、第2配線層402に形成され、第2の接続線428bは、第3配線層403に形成されている。図28では、第2の接続線428bをグレーで示している。第1の接続線428aと第2の接続線428bとは、極性が逆であり、第1の接続線428aと第2の接続線428bとの間には、正弦波形状検出コイル42の出力電圧に応じた電位差が発生する。
【0111】
正弦波形状検出コイル42の第1部分421は、第1のバイア428cを挟んで基板4Bの長手方向に並ぶ一対の導体線421c,421dを有し、このうち一方の導体線421cが第1のバイア428cによって第2の接続線428bと接続され、他方の導体線421dが第1の接続線428aと直接的に接続されている。正弦波形状検出コイル42の第2部分422は、第2のバイア428dを挟んで基板4Bの長手方向に並ぶ一対の導体線422c,422dを有し、このうち一方の導体線422cが第2のバイア428dによって第2の接続線428bと接続され、他方の導体線422dが第1の接続線428aと直接的に接続されている。
【0112】
第1の接続線428aと第2の接続線428bとは、第1の接続線428a及び第2の接続線428bの間に鎖交する磁束が少なくなるように、第1及び第2のバイア428c,428dの周辺部を除き、基板4Bの厚さ方向に重なるように形成されている。また、第1の接続線428a及び第2の接続線428bは、正弦波形状検出コイル42の第1部分421と第2部分422とを基板4Bの短手方向に最短距離で接続しているので、第1の接続線428a及び第2の接続線428bの間に鎖交する磁束がより少なくなる。
【0113】
同様に、余弦波形状検出コイル43の接続線路438は、第1及び第2の接続線438a,438bと、第1及び第2のバイア438c,438dとを有して構成され、第1及び第2の接続線438a,438bが余弦波形状検出コイル43の第1部分431と第2部分432との並び方向に延在している。第1の接続線438aは、第2配線層402に形成され、第2の接続線438bは、第3配線層403に形成されている。図28では、第2の接続線438bをグレーで示している。第1の接続線438aと第2の接続線438bとは、極性が逆であり、第1の接続線438aと第2の接続線438bとの間には、余弦波形状検出コイル43の出力電圧に応じた電位差が発生する。
【0114】
余弦波形状検出コイル43の第1部分431は、基板4Bの長手方向に延在する導体線431cと基板4Bの短手方向に延在する導体線431dとを有し、導体線431cが第1のバイア438cによって第2の接続線438bと接続され、導体線431dが第1の接続線438aと直接的に接続されている。余弦波形状検出コイル43の第2部分432は、基板4Bの短手方向に延在する導体線432cと基板4Bの長手方向に延在する導体線432dとを有し、導体線432cが第2のバイア438dによって第2の接続線438bと接続され、導体線432dが第1の接続線438aと直接的に接続されている。
【0115】
第1の接続線438aと第2の接続線438bとは、第1の接続線438a及び第2の接続線438bの間に鎖交する磁束が少なくなるように、第1及び第2のバイア438c,438dの周辺部を除き、基板4Bの厚さ方向に重なるように形成されている。また、第1の接続線438a及び第2の接続線438bは、余弦波形状検出コイル43の第1部分431と第2部分432とを基板4Bの短手方向に最短距離で接続しているので、第1の接続線438a及び第2の接続線438bの間に鎖交する磁束がより少なくなる。
【0116】
図30は、ラックシャフト13の中立位置から左右方向への移動量を横軸とし、縦軸にラックシャフト13の位置の検出誤差を示したグラフである。このグラフにおいて、白丸は第1の実施の形態の基板3を用いた場合の検出誤差を示し、黒丸は第4の実施の形態の基板4Bを用いた場合の検出誤差を示している。図30に示すように、第4の実施の形態の基板4Bを用いた場合には、第1の実施の形態の基板3を用いた場合よりも検出誤差が平均的に小さい。また、第4の実施の形態の基板4Bを用いた場合には、第1の実施の形態の基板3を用いた場合よりも検出誤差の最大値が小さくなっている。
【0117】
以上説明した第4の実施の形態によれば、励磁コイル41が発生する交流磁界によって正弦波形状検出コイル42の接続線路428及び余弦波形状検出コイル43の接続線路438に誘起される電圧が抑制され、ラックシャフト13の位置の検出精度が向上する。なお、第3の実施の形態に係るシールドパターン491,492を第4の実施の形態に係る基板4Bに設け、基板4Bの接続線路428,438に鎖交する磁束をさらに抑制してもよい。
【0118】
(実施の形態及び変形例のまとめ)
次に、以上説明した第1乃至第4の実施の形態及び変形例から把握される技術思想について、第1乃至第4の実施の形態及び変形例における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を第1乃至第4の実施の形態及び変形例に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0119】
[1]軸方向に進退移動するシャフト(ラックシャフト13)の位置を検出する位置検出装置(ストロークセンサ1)であって、交流磁界を発生させる励磁コイル(31,41)と、前記シャフト(13)に固定され、前記交流磁界の磁束が鎖交する検出体(2)と、前記交流磁界の磁束が鎖交する検出コイル(32,33,42,43)と、を備え、前記検出コイル(32,33,42,43)は、前記交流磁界の磁束が鎖交することにより誘起電圧が発生する第1部分(321,331,421,431)及び第2部分(322,332,422,432)と、前記第1部分(321,331,421,431)の軸方向一方側の端部と前記第2部分(322,332,422,432)の軸方向他方側の端部とを接続する接続線路(323,333,423,433,426,436,428,438)とを有し、前記第1部分(321,331,421,431)及び前記第2部分(322,332,422,432)は、それぞれが前記軸方向に沿って延在すると共に、それぞれの少なくとも一部が前記軸方向に対して垂直な並び方向に並んでおり、前記検出体(2)は、前記第1部分(321,331,421,431)に対向する第1検出体部(21)と、前記第2部分(322,332,422,432)に対向する第2検出体部(22)とを有し、前記第1部分(321,331,421,431)に対する前記第1検出体部(21)の位置によって前記第1部分(321,331,421,431)に発生する誘起電圧が変化し、前記第2部分(322,332,422,432)に対する前記第2検出体部(22)の位置によって前記第2部分(322,332,421,431)に発生する誘起電圧が変化する、位置検出装置(1)。
【0120】
[2]前記励磁コイル(31)及び前記検出コイル(32,33)が1枚の基板(3,3A,4,4A,4B)に形成されている、上記[1]に記載の位置検出装置(1)。
【0121】
[3]前記軸方向において、前記検出コイル(32,33,42,43)の前記第1部分(321,331,421,431)と前記第1検出体部(21)とが前記基板(3,3A,4,4A,4B)に垂直な方向に重なる重なり長さ(L)と、前記検出コイル(32,33,42,43)の前記第2部分(322,332,422,432)と前記第2検出体部(22)とが前記基板(3,3A,4,4A,4B)に垂直な方向に重なる重なり長さ(L)との合計長さが一定となるように、前記第1検出体部(21)と前記第2検出体部(22)とがオフセットしている、上記[2]に記載の位置検出装置(1)。
【0122】
[4]二つの前記検出コイル(32,33,42,43)を備え、前記シャフト(13)が前記軸方向の一方の移動端から他方の移動端まで移動する間に二つの前記検出コイル(32,33,42,43)のそれぞれに誘起される電圧の位相が互いに異なっている、上記[1]乃至[3]の何れか1項に記載の位置検出装置(1)。
【0123】
[5]前記励磁コイル(31)及び二つの前記検出コイル(32,33,42,43)が1枚の基板(3,3A,4,4A,4B)に形成されており、二つの前記検出コイル(32,33)が前記基板(3,3A,4,4A,4B)の厚さ方向に積層されている、上記[4]に記載の位置検出装置(1)。
【0124】
[6]前記励磁コイル(31)の内側に二つの前記検出コイル(32,33,42,43)が形成されている、上記[5]に記載の位置検出装置(1)。
【0125】
[7]前記検出コイル(32,33,42,43)は、前記基板(3,3A,4,4A,4B)の厚さ方向から見た前記第1部分(321,331,421,431)及び前記第2部分(322,332,422,432)のそれぞれの形状が、前記軸方向に延びる対称軸線(A321,A322,A331,A332)を挟んで対称となる一対の正弦曲線状の導体線(32a,32b,33a,33b)を組み合わせた形状であり、前記第1部分(321,331,421,431)と前記第2部分(322,332,422,432)とで、前記対称軸線(A321,A322,A331,A332)に対する前記一対の導体線(32a,32b,33a,33b)の配置が逆である、上記[1]に記載の位置検出装置(1)。
【0126】
[8]前記軸方向における前記第1部分(321,331,421,431)の長さと前記第2部分(322,332,422,432)の長さとが同じであり、前記第1部分(321,331,421,431)の全体と前記第2部分(322,332,422,432)の全体とが、前記軸方向に対して垂直な並び方向に並んでいる、上記[7]に記載の位置検出装置(1)。
【0127】
[9]前記接続線路(423,433)は、前記並び方向における前記第1部分(421,431)と前記第2部分(422,432)との間で前記軸方向に沿って延在する第1乃至第4の接続線(423a~423d,433a~433d)を有し、前記第1の接続線(423a,433a)と前記第2の接続線(423b,433b)とが前記接続線路(423,433)の両端部で短絡されており、前記第3の接続線(423c,433c)と前記第4の接続線(423d,433d)とが前記接続線路(423,433)の両端部で短絡されており、前記第1及び第2の接続線(423a,423b,433a,433b)と前記第3及び第4の接続線(423c,423d,433c,433d)との極性が逆であり、前記基板(4)は、複数の配線層(401~404)を有する多層基板であり、前記第1の接続線(423a,433a)と前記第3の接続線(423c,433c)とが前記基板(4)の厚さ方向に並び、前記第2の接続線(423b,433b)と前記第4の接続線(423d,433d)とが前記基板(4)の厚さ方向に並び、前記第1の接続線(423a,433a)と前記第4の接続線(423d,433d)とが前記基板の同じ層(402)に形成され、前記第2の接続線(423b,433b)と前記第3の接続線(423c,433c)とが前記基板(4)の同じ層に形成されている、上記[2]乃至[8]の何れか1項に記載の位置検出装置(1)。
【0128】
[10]前記接続線路(426,436)に鎖交する磁束を抑制する面状のシールドパターン(491,492)が前記基板(4A)に形成されている、上記[2]乃至[8]の何れか1項に記載の位置検出装置(1)。
【0129】
[11]前記接続線路(428,438)は、前記第1部分(421,431)と前記第2部分(422,432)との間で前記並び方向に延在する一対の接続線(428a,428b,438a,438b)を有し、前記一対の信号線(428a,428b,438a,438b)が前記基板(4A)の厚さ方向に並んでいる、上記[2]乃至[8]の何れか1項に記載の位置検出装置(1)。
【0130】
[12]前記励磁コイル(41)は、前記軸方向に延在する一対の延在部(411,412)を有し、前記一対の延在部(411,412)のうち前記第1部分(421,431)側の一方の延在部(411)と前記第2部分(422,432)側の他方の延在部(412)との間に前記検出コイル(42,43)が設けられており、前記検出体(2)は、前記交流磁界によって渦電流が発生する導電体からなり、前記第1検出体部(21)は、前記並び方向における前記第1部分(421,431)の前記一方の延在部(411)側の端部に対向し、前記並び方向における前記第1部分(421,431)の前記第2部分(422,432)側の端部に対向せず、前記第2検出体部(22)は、前記並び方向における前記第2部分(422,432)の前記他方の延在部側(412)の端部に対向し、前記並び方向における前記第2部分(422,432)の前記第1部分(421,431)側の端部に対向しない、上記[1]乃至[8]の何れか1項に記載の位置検出装置(1)。
【0131】
[13]前記励磁コイル(41)は、前記軸方向に延在する一対の延在部(411,412)を有し、前記一対の延在部(411,412)のうち前記第1部分(421,431)側の一方の延在部(411)と前記第2部分(422,432)側の他方の延在部(412)との間に前記検出コイル(42,43)が設けられており、前記検出体(2)は、高透磁率材料によって形成されており、前記第1検出体部(21)は、前記並び方向における前記第1部分(421,431)の前記第2部分(422,432)側の端部に対向し、前記並び方向における前記第1部分(421,431)の前記一方の延在部(411)側の端部に対向せず、前記第2検出体部(22)は、前記並び方向における前記第2部分(422,432)の前記第1部分(421,431)側の端部に対向し、前記並び方向における前記第2部分(422,432)の前記他方の延在部(412)側の端部に対向しない、上記[1]乃至[8]の何れか1項に記載の位置検出装置(1)。
【0132】
[14]前記シャフト(13)が車両のステアリング装置のラックシャフトである、上記[1]に記載の位置検出装置(1)。
【0133】
以上、本発明の第1乃至第4の実施の形態及び変形例を説明したが、これらの第1乃至第4の実施の形態及び変形例は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、第1乃至第4の実施の形態及び変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。またさらに、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能であり、例えば次のように変形して実施することができる。
【0134】
上記の第1乃至第4の実施の形態では、第1検出体部21及び第2検出体部22がラックシャフト13から基板3に向かって突出して設けられた場合について説明したが、これに限らず、例えば検出体2をラックシャフト13の軸方向に長い平板状とし、第1検出体部21及び第2検出体部22を凹部又は切り欠きとして形成してもよい。この場合でも、第1検出体部21及び第2検出体部22と対向する部分と対向しない部分とで磁束密度が変わるので、上記の実施の形態と同様にラックシャフト13の位置を検出することができる。
【0135】
また、上記の実施の形態では、検出コイル32,33,42,43が正弦曲線状である場合について説明したが、これに限らず、例えば三角波形状であってもよい。またさらに、励磁コイル31,41及び検出コイル32,33,42,43は、必ずしも基板に形成されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0136】
1…ストロークセンサ(位置検出装置) 2…検出体
21…第1検出体部 22…第2検出体部
3,3A,4,4A,4B…基板 13…ラックシャフト(シャフト)
31,41…励磁コイル 32,33,42,43…検出コイル
321,331,421,431…第1部分 32a,32b…導体線
322,332,422,432…第2部分 33a,33b…導体線
323,333…接続線路 411,412…延在部
401~404…第1乃至第4の配線層 491,492…シールドパターン
423,433,426,436,428,438…接続線路
423a~423d,433a~433d…第1乃至第4の接続線
426a,436a…第1の接続線 426b,436b…第2の接続線
428a,438a…第1の接続線 428b,438b…第2の接続線
321,A322,A331,A332…対称軸線
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