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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159488
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20241031BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20241031BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20241031BHJP
   F21S 41/141 20180101ALI20241031BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241031BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20241031BHJP
   F21W 131/00 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
H01L33/50
H01L33/60
F21S2/00 100
F21S41/141
F21Y115:10
F21W102:00
F21W131:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018079
(22)【出願日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2023073321
(32)【優先日】2023-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(72)【発明者】
【氏名】林 達也
(72)【発明者】
【氏名】大倉 信也
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA12
5F142BA32
5F142CD02
5F142CD13
5F142CD15
5F142CD17
5F142CD18
5F142CE04
5F142CG03
5F142CG04
5F142CG05
5F142CG24
5F142DA14
5F142DA36
5F142DB24
5F142FA48
5F142GA29
(57)【要約】
【課題】発光面内に高輝度領域と低輝度領域とを有する発光装置を提供する。
【解決手段】光出射面を有する発光素子と、下面と、下面と反対側の上面とを有し、下面が光出射面に対向するように発光素子上に配置された波長変換層と、を含み、波長変換層は、第1蛍光体粒子を含む第1層と第2蛍光体粒子と光反射粒子を含む第2層とを含み、波長変換層の上面及び下面は、第1層と第2層とを含む。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光出射面を有する発光素子と、
下面と、前記下面と反対側の上面とを有し、前記下面が前記光出射面に対向するように前記発光素子上に配置された波長変換層と、
を含み、
前記波長変換層は、第1蛍光体粒子を含む第1層と第2蛍光体粒子と光反射粒子を含む第2層とを含み、
前記波長変換層の上面及び下面は、前記第1層と前記第2層とを含む、発光装置。
【請求項2】
前記波長変換層上に配置された透光性部材を含む請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1層の第1蛍光体粒子と前記第2層の第2蛍光体粒子は同一の蛍光体材料を含む請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記波長変換層において、前記第1層と前記第2層は接している請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記波長変換層において、前記第1層と前記第2層の境界は、前記波長変換層の上面に対して傾斜している請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光素子の側面と前記波長変換層の側面を被覆する被覆部材をさらに含む請求項1に記載の発光装置。
【請求項7】
前記発光素子は、支持基板と、前記支持基板上に離隔して配置された複数の発光部を含む請求項1に記載の発光装置。
【請求項8】
平面視において、前記第1層と前記第2層の境界は、隣接する発光部の間に位置する請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記複数の発光部は、独立して制御することができる請求項7記載の発光装置。
【請求項10】
前記波長変換層は、第3蛍光体粒子と光反射粒子を含む第3層をさらに備え、
前記第3層における光反射粒子の濃度は前記第2層における光反射粒子の濃度より大きい請求項1に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドライト等の車両用灯具の光源として、LEDが用いられている。例えば、特許文献1には、発光面積の異なる複数の発光素子を組み合わせることで、ヘッドライトに適した配光を有する発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-011259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、発光面内に高輝度領域と低輝度領域とを有する発光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態に係る発光装置は、
光出射面を有する発光素子と、
下面と、前記下面と反対側の上面とを有し、前記下面が前記光出射面に対向するように前記発光素子上に配置された波長変換層と、
を含み、
前記波長変換層は、第1蛍光体粒子を含む第1層と第2蛍光体粒子と光反射粒子を含む第2層とを含み、
前記波長変換層の上面及び下面は、前記第1層と前記第2層とを含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示の実施形態によれば、発光面内に高輝度領域と低輝度領域とを有する発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る発光装置を模式的に示す斜視図である。
図2】実施形態1に係る発光装置を模式的に示す平面図である。
図3A図2のA-A線における断面図である。
図3B図2のA‐A線における変形例の断面図である。
図4A】実施形態1に係る発光装置の製造方法における一工程の一例を模式的に示す平面図である。
図4B図4AのB-B線における断面図である。
図5A】実施形態1に係る発光装置の製造方法における一工程の一例を模式的に示す平面図である。
図5B図5AのC-C線における断面図である。
図6A】実施形態1に係る発光装置の製造方法における一工程の一例を模式的に示す平面図である。
図6B図6AのD-D線における断面図である。
図7A】実施形態1に係る発光装置の製造方法における一工程の一例を模式的に示す平面図である。
図7B図7AのE-E線における断面図である。
図8】実施形態1に係る発光装置の製造方法における一工程の一例を模式的に示す断面図である。
図9】実施形態1に係る発光装置の製造方法における一工程の一例を模式的に示す断面図である。
図10】実施形態1に係る発光装置の製造方法における一工程の一例を模式的に示す断面図である。
図11】実施形態1に係る発光装置の製造方法における一工程の一例を示す模式的に断面図である。
図12】実施形態2に係る発光装置を模式的に示す斜視図である。
図13】実施形態2に係る発光装置を模式的に示す平面図である。
図14図13のF-F線における断面図である。
図15】実施形態2に係る発光装置の発光素子2を模式的に示す平面図である。
図16】実施形態2に係る発光装置の配線基板50を模式的に示す平面図である。
図17】実施形態3に係る発光装置を模式的に示す斜視図である。
図18】実施形態3に係る発光装置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態を、以下に図面を参照しながら説明する。但し、以下に示す形態は、本実施形態の技術思想を具現化するための発光装置及び発光装置の製造方法を例示するものであって、以下に限定するものではない。また、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる例示に過ぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張又は簡略化していることがある。また、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略したり、断面図として切断面のみを示す端面図を用いたりすることがある。更に、「覆う、被覆する」とは直に接する場合に限らず、間接的に、例えば他の部材を介して覆う場合も含む。また、「配置する」とは直接接する場合に限らず、間接的に、例えば他の部材を介して配置する場合も含む。なお、本明細書において「平面図」とは、発光装置の発光面側からの図面であることを意味する。
【0009】
本開示に係る実施形態の発光装置は、
光出射面を有する発光素子と、
下面と、下面と反対側の上面とを有し、下面が発光素子の光出射面に対向するように発光素子上に配置された波長変換層と、
を含む。
そして、波長変換層は、第1蛍光体粒子を含む第1層と第2蛍光体粒子と光反射粒子を含む第2層とを含み、波長変換層の上面及び下面は、第1層と第2層とを含む。
以上のように構成された発光装置は、波長変換層の上面及び下面は、第1蛍光体粒子を含む第1層と第2蛍光体粒子と光反射粒子を含む第2層とを含むので、波長変換層の上面から異なる輝度の光を出射することが可能になる。
すなわち、詳細後述するように、第1層に含まれる第1蛍光体粒子の種類及び含有量等、第2層に含まれる第2蛍光体粒子と光反射粒子の種類及び含有量等に基づき、波長変換層の上面における第1層の上面と第2層の上面から異なる輝度の光を出射することが可能になる。
ここで、本明細書において、特定的な記載がない限り、上面とは発光装置における主たる光の出射側の面をいい、下面とは上面と反対側の面をいう。
【0010】
また、実施形態の発光装置では、第1層に含まれる第1蛍光体粒子の種類及び含有量等、第2層に含まれる第2蛍光体粒子と光反射粒子の種類及び含有量等に基づき、波長変換層の上面における第1層の上面と第2層の上面から発光スペクトルの異なる光を出射することも可能である。
以下、本開示に係る発光装置の具体的な構成を例示しながら実施形態について説明する。
【0011】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る発光装置の斜視図である。図2は、実施形態1に係る発光装置を上方から見た平面図である。図3Aは、図2のA-A線における断面図である。
実施形態1に係る発光装置は、図3A等に示すように、配線基板40と、配線基板40上に配置された発光素子1と、発光素子1上に配置された波長変換層10とを含む。波長変換層10は、下面と下面と反対側の上面とを有し、下面が発光素子の光出射面1aに対向するように発光素子1上に配置されている。実施形態1の発光装置において、波長変換層10は、透光性の接合部材17により下面が発光素子の光出射面1aに接着されている。波長変換層10の上面には、透光性部材15が配置されている。さらに、透光性部材15の上面(発光装置100の光出射面)を除き、配線基板40上で、発光素子1と波長変換層10と透光性部材15の側面は被覆部材60により被覆されている。
【0012】
実施形態1の発光装置100において、波長変換層10は、第1蛍光体粒子を含む第1層11と第2蛍光体粒子と光反射粒子を含む第2層12とを含み、波長変換層10の上面及び下面は、第1層11と第2層12とを含む。すなわち、波長変換層10の下面は、第1層11の下面(以下、第1下面と称することがある)と第2層12の下面(以下、第2下面と称することがある)とを含み、第1下面と第2下面とがそれぞれ発光素子1の光出射面1aに対向するように配置され、第1下面及び第2下面からそれぞれ発光素子1の光が第1層11及び第2層12に入射される。また、波長変換層10の上面は、第1層11の上面(以下、第1上面と称することがある)と第2層12の上面(以下、第2上面と称することがある)とを含み、第1上面と第2上面とからそれぞれ第1層11と第2層12で波長変換した光が出射される。そして、第1上面及び第2上面から出射された光はそれぞれ、透光性部材15の上面(つまり、発光装置100の発光領域R)のそれぞれ一部である第1発光領域R1及び第2発光領域R2から出射される。
【0013】
ここで、第1発光領域R1及び第2発光領域R2から出射される光はそれぞれ、第1層に含まれる第1蛍光体粒子の種類及び含有量等、第2層に含まれる第2蛍光体粒子と光反射粒子の種類及び含有量等に基づく輝度の光を出射することができる。これにより、第1発光領域R1及び第2発光領域R2から異なる輝度の光を出射することが可能になる。
【0014】
例えば、第1下面から第1層11に入射される発光素子1の光は、一部が第1層に含まれる第1蛍光体粒子により波長変換されて第1変換光となり、他の一部は変換されることなく第1上面から出射される。これにより、第1変換光と発光素子1の光とが第1上面から出射される。また、第2層の下面から第2層12に入射される発光素子1の光は、一部が第2層に含まれる第2蛍光体粒子により波長変換されて第2変換光となり、他の一部は変換されることなく第2上面から出射される。このとき第2層12においては、第2変換光及び第2蛍光体粒子により変換されていない光は、第2層12に含まれている光反射粒子により散乱される。第2層において光の散乱が生じることにより第2上面から出射される光の光量を減少させることができるので第2上面の輝度、すなわち第2発光領域R2の輝度を低くできる。また、光反射粒子により散乱された光の一部は例えば第1層11に入射されて第1層11の第1上面から出射される。これにより、第1上面から出射される光の量を多くでき、第1発光領域R1の輝度を高くできる。このようにして、発光装置100において、第1発光領域R1を高輝度領域、第2発光領域R2を第1発光領域R1に比べて低輝度な光を出射する低輝度領域とすることができる。
【0015】
このような発光面に輝度差のある第1発光領域R1と第2発光領域R2とを有する発光装置100を車載のヘッドライトに用いる場合、照射領域の所望の領域に高輝度領域を配置することが可能となる。このため、リフレクタやレンズ等の複雑な光学設計を用いることなく、所望の配光を得ることが容易となる。これにより、ヘッドライトの小型化が可能となり、ヘッドライトのデザイン性を高めることができる。
【0016】
第1層11の第1蛍光体粒子と第2層12の第2蛍光体粒子は同一の蛍光体材料を含むことが好ましい。これにより、第1変換光と第2変換光との発光ピーク波長を同一とすることが可能となり、第1層11の第1上面と第2層12の第2上面から同一の発光色の光を出射することが可能になる。なお、第1蛍光体粒子と第2蛍光体粒子が同一の蛍光体材料を含む場合であっても、それぞれに含有される蛍光体材料の含有量を調整することにより、第1層11の第1上面と第2層12の第2上面から異なる発光色の光を出射するも可能である。第1層11の第1蛍光体粒子と第2層12の第2蛍光体粒子は異なる蛍光体材料を含んでいてもよく、これにより、容易に第1層11の第1上面と第2層12の第2上面から異なる発光色の光を出射することが可能になる。
【0017】
波長変換層10において、第1層11と第2層12は接していてもよいし、離れていてもよい。なかでも、波長変換層10において、第1層11と第2層12は対向する側面同士が接していることが好ましい。
波長変換層10において、第1層11と第2層12は接して配置されることにより、発光装置100の発光領域Rにおいて、異なる輝度及び/又は色度を有する第1発光領域R1と第2発光領域R2とを隣接させて配置することができる。
この際、第1層11と第2層12の界面を波長変換層10の上面に対して略垂直な面とすることで、第1層11と第2層12の境界近傍における、第1上面から出射される光と第2上面から出射される光の輝度差を大きくすることができる。言い換えると第1層11と第2層12の境界近傍における輝度の変化を急峻にできる。
また、図3Bに示すように、波長変換層10において、第1層11と第2層12が接している場合に、第1層11と第2層12の境界を、波長変換層10の上面に対して傾斜させることにより、境界近傍における輝度の急激な変化を低減できる。
すなわち、第1層11と第2層12の境界近傍の構成を仕様に合わせて適宜調整することにより、境界近傍における輝度の変化を設定することができる。ここで、第1層11と第2層12の傾斜する境界は、図3Bに示すように湾曲していてもよいし、平坦な平面であってもよい。
【0018】
以上のように、実施形態1の発光装置は、波長変換層10が第1蛍光体粒子を含む第1層11と第2蛍光体粒子と光反射粒子を含む第2層12とを含んでいるので、第1発光領域R1及び第2発光領域R2から異なる輝度の光を出射することができる。
また、実施形態1の発光装置は、波長変換層10が第1蛍光体粒子を含む第1層11と第2蛍光体粒子と光反射粒子を含む第2層12とを含んでいるので、第1発光領域R1及び第2発光領域R2から同一の発光色の光又は異なる発光色の光を出射することができる。
以下、実施形態1の発光装置の各構成について具体的に説明する。
【0019】
[発光素子1]
発光素子1は、光出射面1aと、光出射面1aの反対側に位置する下面と、光出射面1aと下面とに連なる側面と、を有する。発光素子1は、発光ダイオードを用いることができる。発光素子1は、半導体構造体L1と、少なくとも一対の正負の素子電極1eを備える。本明細書において、素子電極1eという場合には、説明上特段正負の区別をする必要がない場合に使用し、正負の区別をする必要がある場合には、例えば、p電極、n電極という用語を使用する。半導体構造体L1は、n側半導体層と、p側半導体層と、n側半導体層とp側半導体層とに挟まれた活性層とを含み、例えば、支持基板S1上に配置される。活性層は、単一量子井戸(SQW)構造としてもよいし、複数の井戸層を含む多重量子井戸(MQW)構造としてもよい。半導体構造体は、例えば、窒化物半導体からなる複数の半導体層を含む。窒化物半導体は、InAlGa1-x-yN(0≦x、0≦y、x+y≦1)からなる化学式において組成比x及びyをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含む。活性層の発光ピーク波長は、目的に応じて適宜選択することができる。活性層は、例えば可視光または紫外光を発光可能に構成されている。
【0020】
半導体構造体は、実施形態1では、n側半導体層と、活性層と、p側半導体層とを含む1つの発光部を有する形態を例示しているが、後述の実施形態で示すように、それぞれn側半導体層と、活性層と、p側半導体層とを含む複数の発光部を有していてもよい。なお、発光ピーク波長が同じとは、数nm程度のばらつきがある場合も含む。複数の発光部の発光ピーク波長の組み合わせは、適宜選択することができる。例えば、半導体構造体が2つの発光部を含む場合、それぞれの発光部が発する光の組み合わせとして、青色光と青色光、緑色光と緑色光、赤色光と赤色光、紫外光と紫外光、青色光と緑色光、青色光と赤色光、または、緑色光と赤色光などの組み合わせが挙げられる。例えば、半導体構造体が3つの発光部を含む場合、それぞれの発光部が発する光の組み合わせとして、青色光、緑色光、及び赤色光とする組み合わせが挙げられる。各発光部は、他の井戸層と発光ピーク波長が異なる井戸層を1以上含んでいてもよい。発光素子1の形状や大きさ等は目的に応じて種々選択できる。
【0021】
発光素子1は、半導体構造体L1を支持する支持基板S1を備えていてもよい。支持基板S1としては、サファイアやスピネル(MgAl)のような絶縁性基板、InN、AlN、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等の窒化物系の半導体基板が挙げられる。なお、発光部から出射される光を支持基板を介して取り出す場合(つまり支持基板が光出射面1aを構成する場合)、支持基板は、透光性を有する材料を用いることが好ましい。
【0022】
発光素子1は、発光素子の少なくとも下面に配置される素子電極を含む。素子電極は、例えば、一対の正負の素子電極が半導体構造体の同一面側に配置される。正負の素子電極は、配線基板40の配線の位置等を考慮して配置することができる。発光素子1の素子電極は、例えば、導電性接合部材を介して配線基板40の配線に接続される。導電性接合部材としては、共晶はんだ、金属等の導電ペースト、バンプ等を用いることができる。なお、発光素子1の素子電極と配線とは、導電部材を介することなく直接接合により接続してもよい。
【0023】
[波長変換層10]
波長変換層10は上述したように、第1蛍光体粒子を含む第1層11と第2蛍光体粒子と光反射粒子を含む第2層12とを含む。波長変換層10は上面と下面とを有し、波長変換層の上面は第1層11の上面と第2層12の上面とを含み、波長変換層10の下面は第1層11の下面と第2層12の下面とを含む。言い替えると波長変換層10は、第1蛍光体粒子を含む第1層11と、第1層と隣接して配置され、第2蛍光体粒子と光反射粒子を含む第2層12とを含む。第1蛍光体粒子と第2蛍光体粒子は、第1層11及び第2層12において、発光素子1からの光の少なくとも一部を異なる波長に波長変換する。
【0024】
波長変換層10としては、例えば樹脂、ガラス、無機物等の透光性材料をバインダーとして、第1層11には第1蛍光体粒子である蛍光体と透光性材料とを、第2層には第2蛍光体粒子である蛍光体と光反射粒子である光反射部材と透光性材料とを、混合して成形したものを用いることができる。透光性材料としては、例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等の有機樹脂材料、ガラス、セラミック等の無機材料を用いることができる。
【0025】
波長変換層10において、第1層中の第1蛍光体粒子は分散して配置されていてもよく、一部に偏在して配置されていてもよい。例えば、第1層中において、第1蛍光体粒子は下面側(つまり発光装置100における発光素子側)に偏在して配置されていてもよい。同様に、第2層中の第2蛍光体粒子と光反射粒子は分散して配置されていてもよく、偏在して配置されていてもよい。例えば、第2層中において、第2蛍光体粒子は下面側(つまり発光装置100における発光素子側)、光反射粒子は上面側(つまり発光装置100における発光面側)に偏在して配置されていてもよい。
【0026】
蛍光体としては、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、(Y,Gd)(Al,Ga)12:Ce)、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Lu(Al,Ga)12:Ce)、テルビウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Tb(Al,Ga)12:Ce)、CCA系蛍光体(例えば、Ca10(POCl:Eu)、SAE系蛍光体(例えば、SrAl1425:Eu)、クロロシリケート系蛍光体(例えば、CaMgSi16Cl:Eu)、シリケート系蛍光体(例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu)、βサイアロン系蛍光体(例えば、(Si,Al)(O,N):Eu)若しくはαサイアロン系蛍光体(例えば、Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu)等の酸窒化物系蛍光体、LSN系蛍光体(例えば、(La,Y)Si11:Ce)、BSESN系蛍光体(例えば、(Ba,Sr)Si:Eu)、SLA系蛍光体(例えば、SrLiAl:Eu)、CASN系蛍光体(例えば、CaAlSiN:Eu)若しくはSCASN系蛍光体(例えば、(Sr,Ca)AlSiN:Eu)等の窒化物系蛍光体、KSF系蛍光体(例えば、KSiF:Mn)、KSAF系蛍光体(例えば、K(Si1-xAl)F6-x:Mn ここで、xは、0<x<1を満たす。)若しくはMGF系蛍光体(例えば、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn)等のフッ化物系蛍光体、ペロブスカイト構造を有する量子ドット(例えば、(Cs,FA,MA)(Pb,Sn)(F,Cl,Br,I) ここで、FAとMAは、それぞれホルムアミジニウムとメチルアンモニウムを表す。)、II-VI族量子ドット(例えば、CdSe)、III-V族量子ドット(例えば、InP)、又はカルコパイライト構造を有する量子ドット(例えば、(Ag,Cu)(In,Ga)(S,Se))等を用いることができる。
【0027】
光反射性物質としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライト及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。なかでも酸化チタンは、水分等に対して比較的安定でかつ高屈折率であるため好ましい。
【0028】
第1蛍光体粒子及び第2蛍光体粒子として、例えば、以上例示した蛍光体から発光装置100に要求される仕様に応じて適宜選択することができる。
例えば青色発光素子と組み合わせて白色系の混色光を発光させることができる黄色発光の蛍光体として、Yの一部をGdで置換した、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、(Y,Gd)Al12:Ce)を好適に用いることができる。そして、白色に発光可能な発光装置100とする場合、第1層11に含まれる第1蛍光体粒子の種類及び濃度は、第1層11から所望の色温度の白色光が所望の強度で出射されるように調整され、第2層12に含まれる第2蛍光体粒子の種類及び濃度、光反射粒子の種類及び濃度は、第2層12から所望の色温度の白色の光が所望の強度で出射されるように調整される。
【0029】
波長変換層10は、例えば、後述するガラス板等の透光性部材15を支持体として、透光性部材15の表面に配置される構成が挙げられる。波長変換層10は、ポッティング、印刷、スプレー等により透光性部材15に配置することができる。波長変換層10が樹脂を含む場合、透光性部材15で波長変換層10(つまり第1層11及び第2層12)が支持されるため、第1層11と第2層12とを所定の膜厚で隣接して配置することが容易となる。波長変換層10における第1層11及び第2層12の厚さ(つまり上面から下面までの最短長さ)は、同じ厚さであることが好ましい。これにより、1つの波長変換層10としての厚さが略一定となるため、製造工程において、発光素子1上に波長変換層10を配置しやすくなる。波長変換層10の厚さは、第1層11及び第2層12からそれぞれ所望の色度の光が所定の強度で出射されるように、第1蛍光体粒子の種類及び濃度、第2蛍光体粒子の種類及び濃度、光反射粒子の種類及び濃度との関係を考慮して設定される。例えば、波長変換層10の厚さは、発光装置100の小型化、また波長変換層10の機械的強度等を考慮して、20μm以上300μm以下、好ましくは50μm以上150μm以下に設定される。
【0030】
[透光性部材15]
透光性部材15は、例えば樹脂、ガラス、無機物等の透光性材料を板状に成形したものが挙げられる。この透光性部材15は、平面視において波長変換層10と同等の大きさで波長変換層10の上面に下面が当接するように配置されている。ここで、同等の大きさとは、透光性部材15の下面と波長変換層10の上面との面積の差が、一方又は他方の±5%以内であることを意味する。ガラスとしては、例えばホウ珪酸ガラス、石英ガラス等を用いることができ、樹脂としては、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。なかでも、光により劣化しにくいこと、機械的強度等を考慮して、透光性部材15はガラスを用いることが好ましい。なお、透光性部材15には、光拡散部材を含有させてもよい。透光性部材15に光拡散部材を含有させることで、色度ムラ、輝度ムラを抑制することができる。光拡散部材としては、例えば酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等を用いることができる。
なお、透光性部材15は、透光性の接着層等の他の部材を介して波長変換層10上に配置されていてもよい。また、透光性部材15は、誘電体多層膜等の光学層を介して波長変換層10上に配置されていてもよい。誘電体多層膜は、例えば、DBR(Distributed Bragg Reflector:分布ブラッグ反射膜)である。
【0031】
[配線基板40]
配線基板40は、基材41と、基材41の上面に配置された配線42と、を備える板状の部材である。
基材41は、例えば、ガラスエポキシ、樹脂、セラミックス等の絶縁性材料、シリコン等の半導体材料、金属等の導電性材料により構成することができる。なかでも、耐熱性及び耐光性の高いセラミックスを好適に用いることができる。セラミックスとしては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、LTCC等が挙げられる。また、これらの絶縁性材料、半導体材料、導電性材料の複合材料を用いることもできる。基材41として半導体材料、金属等の導電性材料を用いる場合は、配線42は、絶縁層を介して基材41の上面及び下面に配置することができる。
【0032】
配線42は、少なくとも基材41の上面に配置される第1配線421と第2配線422とを含む。配線42は、更に、上面と反対側の下面に配置される外部接続端子を備えていてもよい。この場合、基材41の上面に配置された第1配線421及び第2配線422は、例えば、基材41の内部や側面に配置された中継配線を介して外部接続端子に接続されていてもよい。配線42の材料としては、例えば、Fe、Cu、Ni、Al、Ag、Au、Pt、Ti、W、Pd等の金属又は、これらの少なくとも1種を含む合金等が挙げられる。
【0033】
[電子部品30]
電子部品30は、例えば、保護素子である。保護素子は、例えば、ツェナーダイオードである。電子部品30は、例えば、導電部材により第1配線421及び第2配線422に接続される。尚、発光装置100は、電子部品30を備えないものであってもよい。
【0034】
[被覆部材60]
被覆部材60は、配線基板40上で、透光性部材15の上面を露出し、透光性部材15の側面、波長変換層10の側面、発光素子1の側面を被覆する。発光装置100が電子部品30を備える場合、被覆部材60は、電子部品30を被覆することが好ましい。
【0035】
被覆部材60は、遮光性(具体的には光反射性及び/又は光吸収性)を有することが好ましく、なかでも、光反射性を有することが好ましい。また、被覆部材60は、絶縁性材料を用いることが好ましい。被覆部材60としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。具体的には、被覆部材60としては、光反射性物質の粒子を含む樹脂が挙げられる。樹脂としては、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリフタルアミド樹脂、の1種以上を含む樹脂又はハイブリッド樹脂が挙げられる。なかでも、耐熱性、電気絶縁性に優れ、柔軟性のあるシリコーン樹脂をベースポリマーとして含有する樹脂が好ましい。光反射性物質としては、波長変換層10の材料として例示した材料の中から選択した材料を用いることができる。また、被覆部材60は、顔料、カーボンブラック、チタンブラック、グラファイト等の光吸収性物質の粒子をさらに含んでいてもよい。光反射性及び/又は光吸収性を有する被覆部材60においては、光反射性物質及び/又は光吸収性物質の粒子が樹脂中に分散して配置されていることが好ましい。
【0036】
被覆部材60の光反射性物質の濃度は、例えば60質量%以上70質量%以下とすることが好ましい。光反射性物質の濃度は、光反射性物質を含む被覆部材60における光反射性物質の割合を示す。被覆部材60の反射率は、例えば、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。反射率とは、発光素子1から出射される光の発光ピーク波長における反射率を意味するものとする。
【0037】
以下、実施形態1の発光装置の製造方法について説明する。
実施形態1の発光装置の製造方法は、
(1)発光素子1を準備する工程ST1と、
(2)集合基板を準備する工程ST2と、
(3)波長変換層10を準備する工程ST3と、
(4)発光素子1を配置する工程ST4と、
(5)波長変換層10を配置する工程ST5と、
(6)被覆部材を配置する工程ST6と、
(7)発光装置ごとに個片化する工程ST7と、
を含む。
また、波長変換層10を準備する工程ST3は、
第1樹脂及び第2樹脂を準備する工程ST31と、
透光性部材の上に、第1層を配置する工程ST32と、
透光性部材の上に、第2層を配置するST33と、
波長変換層10ごとに個片化する工程ST34と、
を含む。
以下、各工程について説明する。
【0038】
(1)発光素子1を準備する工程ST1
発光素子1を準備する工程ST1では、支持基板と、少なくとも1つの発光部を含む半導体構造体と、少なくとも一対の正負の素子電極と、を有する発光素子1を準備する。具体的には、発光素子1において、半導体構造体は支持基板上に配置されており、半導体構造体の支持基板側と反対側の面に少なくとも一対の正負の素子電極が配置されている。ここで、発光素子の光出射面は、支持基板側の表面であり、後述の波長変換層は、支持基板上に配置される。尚、発光素子1は、半導体成長等の工程を経るなど、製造工程の一部又は全てを経ることで準備することができる。あるいは、発光素子1は購入、譲渡等により準備してもよい。
【0039】
(2)集合基板を準備する工程ST2
集合基板を準備する工程ST2では、発光装置100の配線基板となる複数の基板領域を含む集合基板を準備する。複数の基板領域は、例えば行列状に配置される。集合基板の準備は、まず、例えば、ガラスエポキシ、樹脂、セラミックス等の板状の基材(つまり基材41の集合体)を準備する。次に、基材の各基板領域にそれぞれ第1配線及び第2配線を形成する。第1配線及び第2配線は、めっき、蒸着、スパッタ等の公知の方法によって形成することができる。なお、集合基板は、予め配線が配置されたものを購入、譲渡等により準備してもよい。
【0040】
(3)波長変換層10を準備する工程ST3
波長変換層10を準備する工程ST3では、第1樹脂を用いた第1層と第2樹脂を用いた第2層とが配置された波長変換層を準備する。ここでは、波長変換層10として、透光性部材上に配置された波長変換層10を準備する。
例えば、波長変換層10を準備する工程ST3は、上述したように、第1樹脂及び第2樹脂を準備する工程ST31と、透光性部材の上に第1層を配置する工程ST32と、透光性部材の上に第2層を配置するST33と、波長変換層ごとに個片化する工程ST34と、を含む。
【0041】
第1樹脂及び第2樹脂を準備する工程ST31では、第1蛍光体粒子を含む第1樹脂と第2蛍光体粒子と光反射粒子を含む第2樹脂とを準備する。
【0042】
透光性部材の上に第1層を配置する工程ST32では、図4A図4Bに示すように、平板状の透光性部材M15の上に、第1層M11を、例えばストライプ状に形成する。ここで、透光性部材M15は、個片化後に個々の発光装置100の透光性部材15となる領域を複数含む集合体をいう。第1層M11は、個片化後に個々の発光装置100の波長変換層を構成する第1層11を複数含む。第2層M12も同様である。ここでは、第1層M11をストライプ状に形成する例により示しているが、ストライプ状に限定されるものではなく、格子状等であってもよく、また、島状に形成してもよい。透光性部材M15上への第1層の形成は、例えば、マスクを用いて印刷することにより行うことができる。
【0043】
透光性部材の上に第2層を配置する工程ST33では、例えば、上述した第1層を形成する工程S32と同様に、マスクを用いて印刷することにより第1層M11の間に第2層M12をストライプ状に形成する。本工程も印刷に限定されるものではなく、例えば、図5A図5Bに示すように、透光性部材M15上に、第1層M11を囲む枠体F12を形成した後に、図6A図6Bに示すように、ポッティング等により第1層M11の間に第2層M12を形成するようにしてもよい。また第2層M12は、島状に形成してもよい。
【0044】
次に、波長変換層10ごとに個片化する工程ST34では、図7A図7Bに示すように、個片化後の波長変換層10が第1層11及び第2層12を含むように(例えば図7Bにおいて破線DL1で示す分離ラインに沿って)、第1層M11と第2層M12と透光性部材15とを分割して、透光性部材15上に配置された波長変換層10が得られる。
【0045】
以上の工程を経て、透光性部材15上に配置され、それぞれ第1層11と第2層12とを含む波長変換層10を準備する。
【0046】
(4)発光素子1を配置する工程ST4
発光素子1を配置する工程ST4では、集合基板の各基板領域にそれぞれ発光素子1を配置する。発光素子1の配置は例えば、図8に示すように、基板領域においてそれぞれ配線42に素子電極1eが対向するように所定の位置に発光素子1を配置する。配線42と素子電極1eとは例えば導電性接合部材により接合される。また、必要に応じて電子部品30も同様に所定の位置に配置する。
尚、図8等において符号M40を付して示す部材は、被覆部材60から配線42を露出させるために設けたマスクである。
【0047】
(5)波長変換層10を配置する工程ST5
波長変換層10を配置する工程ST5では、図9に示すように、集合基板上に配置された発光素子1の光出射面にそれぞれ波長変換層10を対向させて配置する。発光素子1と波長変換層10とは、例えば、透光性を有する接合部材等により接合される。ここでは、透光性部材15とともに波長変換層10を配置した例を示しているが、波長変換層10を単独で発光素子1上に配置してもよい。また、透光性部材15とともに波長変換層10を配置した後に、透光性部材15を除去してもよい。以下の説明では、透光性部材15を含む発光装置の例を説明する。
【0048】
(6)被覆部材を配置する工程ST6
被覆部材を配置する工程ST6では、図10に示すように、集合基板上に配置された発光素子1、波長変換層10及び透光性部材15の側面を覆い、発光装置の発光面となる透光性部材15の上面を露出させるように被覆部材60を配置する。被覆部材60は、例えば、光反射性物質を含む未硬化の樹脂を発光素子1、波長変換層10及び透光性部材15の側面を覆うように塗布した後に硬化させることにより配置する。透光性部材15の上面は、例えば、未硬化の樹脂を透光性部材15の上面を除く領域に塗布することにより、被覆部材から露出させることができる。
そして、被覆部材60を配置した後(硬化させた後)、図11に示すように、マスクM40を除去する。マスクM40は、後述の個片化後に除去してもよい。
なお、被覆部材を配置する工程では、マスクM40を用いずに、集合基板上に被覆部材を保持する壁を配置してもよい。壁は例えば被覆部材を形成する樹脂よりも硬度の高い樹脂を用いることができる。また、壁は基材の一部であってもよく、例えば、配線基板は発光素子が配置される凹部を有する構造であってもよい。
【0049】
(7)発光装置ごとに個片化する工程
発光装置ごとに個片化する工程では、個々の基板領域の外縁(例えば図11において破線DL2で示す分離ライン)に沿って、ブレード等により集合基板を個々の発光装置100ごとに分離する。
以上のような工程を経て、実施形態1の発光装置100は作製される。
【0050】
実施形態1の発光装置100の製造方法において、第1層11の上面から出射される光の色度及び発光スペクトル、第2層12の上面から出射される光の色度及び発光スペクトル、第1発光領域R1における輝度、第2発光領域R2における輝度は、発光素子1の種類、波長変換層の材料等それぞれ適切な材料を選択しさらに波長変換層の膜厚等種々のパラメータを適宜設定することにより設定される。
以下、実施形態1の発光装置100の製造方法における、材料を選択及び関連するパラメータの設定例について説明する。
【0051】
実施形態1の発光装置100の製造方法において、発光装置100の第1発光領域R1及び第2発光領域R2からそれぞれ所定の発光スペクトルの光が出射されるように発光素子1、第1蛍光体粒子及び第2蛍光体粒子の材料が選択される。
例えば、第1発光領域R1及び第2発光領域R2から同一の発光スペクトルの光を出射させる場合には、例えば、第1蛍光体粒子と第2蛍光体粒子は同一の材料を選択することが好ましい。尚、第1蛍光体粒子と第2蛍光体粒子は同一の材料を選択した場合でも、第1層11及び第2層12に含有させる蛍光体粒子の含有量等により出射される光の発光スペクトルは影響を受けるが、第1蛍光体粒子及び第2蛍光体粒子として異なる材料を選択した場合に比較すると、第1層11及び第2層12に含有させる蛍光体粒子の含有量等を比較的容易に設定することができる。以上の説明から理解されるように、第1蛍光体粒子及び第2蛍光体粒子として同一の材料を選択した場合でも、第1層11及び第2層12に含有させる蛍光体粒子の含有量等を適宜調整することにより、第1発光領域R1から出射される光の発光スペクトルと第2発光領域R2から出射される光の発光スペクトルを異ならせることも可能である。
【0052】
また、実施形態1の発光装置100の製造方法において、第1層11の上面の輝度及び第2層12の上面の輝度をそれぞれ所定の輝度に設定する場合には、例えば、第1樹脂における第1蛍光体粒子の含有量、第2樹脂における第2蛍光体粒子と光反射粒子の含有量、第1層11の厚さ及び第2層12の厚さ等を、第1層11の上面の輝度及び第2層12の上面の輝度がそれぞれ所定の輝度になるように設定する。
【0053】
例えば、第1蛍光体粒子と第2蛍光体粒子とを同一の蛍光体材料により構成した場合、第1層に含まれる第1蛍光体粒子の含有量、第2層に含まれる第2蛍光体粒子と光反射粒子の種類及び含有量等を適宜調整することにより、第1発光領域R1及び第2発光領域R2から異なる輝度で光を出射することが可能になる。例えば、第2層12に含まれている光反射粒子の含有量を多くすると、第2層12で波長変換された光及び発光素子から第2層12に入射された光のより多くが散乱されるため、第2上面から出射される光の光量を少なくできる。また、第2層12で散乱された光が第1層11に入射することにより、第1層11の第1上面から出射される光が増え、第1上面から出射される光の量を多くできる。
また、第1層11における第1蛍光体粒子、第2層12における第2蛍光体粒子と光反射粒子の配置を調整してもよい。例えば第2層12において光反射粒子を上面側に偏在させて配置することにより、第2層12で波長変換された光及び発光素子から第2層12に入射された光が第1層11に入射される割合を調整することができ、第1発光領域R1と第2発光領域R2の輝度差を調整することができる。このような各層における各粒子の配置位置の調整は、各粒子の種類や粒子径を適宜調整することで設定できる。
【0054】
以上のように、実施形態1の発光装置100の製造方法によれば、発光素子1の種類、蛍光体材料を適宜選択し、第1層11及び第2層12の蛍光体粒子等の含有量、膜厚等の関連するパラメータを適宜設定することにより、第1発光領域R1及び第2発光領域R2からそれぞれ所定の発光色の光を所定の輝度で出射させることができる発光装置を製造することができる。実施形態1の発光装置100の製造方法では、発光素子1の種類、蛍光体材料の種類、第1層11及び第2層12の蛍光体粒子等の含有量及び膜厚等と、第1発光領域R1及び第2発光領域R2からそれぞれ出射される光の発光色及び輝度との関係を記憶したデータベースを用いて各工程におけるパラメータを設定することも可能である。
【0055】
実施形態2
本開示に係る実施形態2の発光装置200は、発光素子2が第1発光部21と第2発光部22を備え、第1発光部21から出射される光が波長変換層10の第1層11に入射され、第2発光部22から出射される光が波長変換層10の第2層12に入射されるように構成されている点が実施形態1の発光装置100とは異なっている。また、発光素子2が第1発光部21と第2発光部22を備えることにより、配線基板の配線構造も異なっている。
以下、実施形態2の発光装置200について、実施形態1の発光装置100とは異なっている点を中心に説明する。
ここで、図12は、実施形態2に係る発光装置200の斜視図である。図13は、実施形態2に係る発光装置を上方から見た平面図である。図14は、図13のF-F線における断面図である。また、図15は、発光素子2の電極配置を示す平面図であり、図16は、配線基板50の配線を示す平面図である。
【0056】
実施形態2に係る発光装置200において、発光素子2は、支持基板S2上に第1発光部21と第2発光部22を備えている。第1発光部21は、支持基板S2上に配置された第1半導体構造体L21と、第1半導体構造体L21上に設けられた素子電極2e11を備えている。第2発光部22は、支持基板S2上に設けられた第2半導体構造体L22と、第2半導体構造体L22上に設けられた素子電極2e21を備えている。ここで、第1半導体構造体L21と第2半導体構造体L22とは、例えば、支持基板S2上に分離して設けられている。
【0057】
ここで、例えば、第1発光部と第2発光部、言い換えると第1半導体構造体L21と第2半導体構造体L22とが同一の半導体構造を有していてもよく、異なる半導体構造を有していてもよい。第1半導体構造体L21と第2半導体構造体L22にそれぞれ分離して素子電極を設けることにより、独立して点灯させることが可能である。また、第1発光部と第2発光部のそれぞれの素子電極を直列に接続することで一括して点灯させることも可能である。第1半導体構造体L21と第2半導体構造体L22とが同一の発光色の光を発光する場合であっても、波長変換層10における第1層11と第2層12における蛍光体材料、第1蛍光体粒子、第2蛍光体粒子及び光反射材粒子等の含有量を調整することにより異なる発光色の光を第1発光領域R1及び第2発光領域R2から出射させることが可能である。
【0058】
実施形態2に係る発光装置200において、発光素子2の電極は、例えば、図15に示すように、第1半導体構造体L21及び第2半導体構造体L22にそれぞれ、中央部にp電極2e12p、2e22pを設け、n電極2e11n、2e21nをそれぞれp電極2e12p、2e22pの両側に設けることができる。ここで、図15では、第1半導体構造体L21と第2半導体構造体L22とを分離した例で示しているが、第1半導体構造体L21と第2半導体構造体L22とは、それぞれ活性層は分離するが、p側半導体層又はn側半導体層が繋がった構成を有していてもよい。
【0059】
実施形態2に係る発光装置200において、配線基板50における配線52は、例えば、図16に示すように、第1発光部21に接続される第1配線521、第2配線522及び第3配線523と、第2発光部22に接続される第4配線524、第5配線525及び第6配線526とを含む。
【0060】
第3配線523は、第1発光部21が実装される領域において、p電極2e12pに対向する位置に配置される。第1配線521は、第1発光部21のn電極2e11nに対向する位置、すなわち第3配線523の両側に位置する内部接続部と該実装部から端部に延在する第1外部接続部とを含むように設けられる。第2配線522は、配線基板の一端部において第1外部接続部に並置して設けられる。ここで、第2配線522と第3配線523は、例えば、ワイヤ等の導電部材又は基材に設けられた中継配線等により第1配線521と導通しないように接続される。
第4配線524、第5配線525及び第6配線526もそれぞれ、第2発光部22が実装される領域において第1配線521、第2配線522及び第3配線523と同様に設けられる。
以上、第1配線521と第4配線524及び第3配線523と第6配線526がいずれも電気的に分離して基材上に配置される例を示したが、第1配線521と第4配線524又は第3配線523と第6配線526がいずれか一方は電気的に接続するように設けられていてもよい。
【0061】
以上のように構成された配線基板50上に、発光素子2は、第1半導体構造体L21のp電極2e12pが第3配線523に接続され、n電極2e11nが第1配線521に接続され、第2半導体構造体L22のp電極2e22pが第6配線526に接続され、n電極2e21nが第4配線524に接続されるように実装される。
【0062】
尚、実施形態2の発光装置200において、波長変換層は、実施形態1の発光装置100と同様に構成され、支持基板S2を挟んで第1発光部21の上方に第1層11が位置し、支持基板S2を挟んで第2発光部22の上方に第2層12が位置するように配置される。
【0063】
以上のように構成された実施形態2の発光装置200は、波長変換層10が第1蛍光体粒子を含む第1層11と第2蛍光体粒子と光反射粒子を含む第2層12とを含んでいるので、第1発光領域R1及び第2発光領域R2から異なる輝度の光を出射することができる。
また、実施形態2の発光装置200は、波長変換層10が第1蛍光体粒子を含む第1層11と第2蛍光体粒子と光反射粒子を含む第2層12とを含んでいるので、実施形態1の発光装置100と同様、第1発光領域R1及び第2発光領域R2から同一の発光色の光又は異なる発光色の光を出射することができる。
【0064】
特に、実施形態2の発光装置200は、第1発光部21及び第2発光部22の発光色及び発光強度を所望に応じて選択することができるので、容易に第1発光領域R1と第2発光領域R2の輝度差、及び発光色の差を大きくできる。
さらに、第1発光部21と第2発光部22とを独立して点灯させることができるので、きるので、第1発光領域R1または第2発光領域R2の輝度を実質的にゼロにできる。
また、第1発光部21の発光色及び発光強度、第2発光部22の発光色及び発光強度を種々選択することが可能であることから、所望の発光色および発光強度の第1領域R1及び第2領域R2を有する発光装置とすることができる。
【0065】
実施形態3
本開示に係る実施形態3の発光装置300は、波長変換層70が第1層71、第2層72に加え、第1層71及び第2層72の間に第3層73を備えている点で実施形態1の発光装置100とは異なっている。
ここで、第3層73は、第3蛍光体粒子と光反射粒子を含み、第3層73における光反射粒子の濃度は第2層72における光反射粒子の濃度より小さい。
また、第3層73に含まれる第3蛍光体粒子は、第1蛍光体粒子及び第2蛍光体粒子のいずれかと同一であっても異なっていてもよい。
第3層73に含まれる光反射粒子は、第2層72に含まれる光反射粒子と同一であっても異なっていてもよい。
これにより、発光装置300は、第1発光領域R1(高輝度領域)と第2発光領域R2
(低輝度領域)との間に第3発光領域R3(中輝度領域)とを有する発光装置300とすることができる。発光装置300において、中輝度領域の輝度は、低輝度領域の輝度より大きく、高輝度領域の輝度より小さい。
発光装置300が中輝度領域を含むことにより、高輝度領域と低輝度領域との間の輝度差を緩やかにすることができる。
【0066】
本開示の実施形態に係る発光装置は、例えば、以下の態様を含む。
[項1]
光出射面を有する発光素子と、
下面と、前記下面と反対側の上面とを有し、前記下面が前記光出射面に対向するように前記発光素子上に配置された波長変換層と、
を含み、
前記波長変換層は、第1蛍光体粒子を含む第1層と第2蛍光体粒子と光反射粒子を含む第2層とを含み、
前記波長変換層の上面及び下面は、前記第1層と前記第2層とを含む、発光装置。
[項2]
前記波長変換層上に配置された透光性部材を含む項1に記載の発光装置。
[項3]
前記第1層の第1蛍光体粒子と前記第2層の第2蛍光体粒子は同一の蛍光体材料を含む項1又は2に記載の発光装置。
[項4]
前記波長変換層において、前記第1層と前記第2層は接している項1~3のいずれか1項に記載の発光装置。
[項5]
前記波長変換層において、前記第1層と前記第2層の境界は、前記波長変換層の上面に対して傾斜している項4に記載の発光装置。
[項6]
前記発光素子の側面と前記波長変換層の側面を被覆する被覆部材をさらに含む項1~5のいずれか1項に記載の発光装置。
[項7]
前記発光素子は、支持基板と、前記支持基板上に離隔して配置された複数の発光部を含む項1~6のいずれか1項に記載の発光装置。
[項8]
平面視において、前記第1層と前記第2層の境界は、隣接する発光部の間に位置する項7に記載の発光装置。
[項9]
前記複数の発光部は、独立して制御することができる項7又は8に記載の発光装置。
[項10]
前記波長変換層は、第3蛍光体粒子と光反射粒子を含む第3層をさらに備え、
前記第3層における光反射粒子の濃度は前記第2層における光反射粒子の濃度より大きい項1~9のいずれか1項に記載の発光装置。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本開示の実施形態に係る発光装置は、ヘッドライト等の車両用照明に好適に利用することができる。その他、本開示の実施形態に係る発光装置は、液晶ディスプレイのバックライト光源、各種照明器具、大型ディスプレイ、広告や行き先案内等の各種表示装置、更には、デジタルビデオカメラ、ファクシミリ、コピー機、スキャナ等における画像読取装置、プロジェクタ装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
100、200,300 発光装置
R 発光領域
R1 第1発光領域
R2 第2発光領域
1、2 発光素子
1a 発光素子の光出射面
1e、2e11、e221 素子電極
L1 半導体構造体
L21 第1半導体構造体
L22 第2半導体構造体
S1、S2 支持基板
21 第1発光部
22 第2発光部
2e12p、2e22p p電極
2e11n、2e21n n電極
10、70 波長変換層
11、71、M11 第1層
12、72、M12 第2層
73 第3層
15、M15 透光性部材
17 接合部材
40 配線基板
41 基材
42、52 配線
421、521 第1配線
422、522 第2配線
523 第3配線
524 第4配線
525 第5配線
526 第6配線
30 電子部品
60 被覆部材
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18