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特開2024-159737試験測定装置及び被試験適応型システムの試験方法
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  • 特開-試験測定装置及び被試験適応型システムの試験方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159737
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】試験測定装置及び被試験適応型システムの試験方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/00 20150101AFI20241031BHJP
【FI】
H04B17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024073799
(22)【出願日】2024-04-30
(31)【優先権主張番号】63/462,511
(32)【優先日】2023-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/643,943
(32)【優先日】2024-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・エヌ・ホワイト
(72)【発明者】
【氏名】アレキサンダー・クラウスカ
(72)【発明者】
【氏名】アレハンドロ・シー・ブリティカ
(57)【要約】
【課題】悪影響を与える試験信号を受信したときの適応型システムの応答信号の選択が適切なものか評価できるようにする。
【解決手段】試験測定装置10は、試験信号を生成する信号生成部12と、試験信号の送信を可能にする通信ポート14と、試験対象の適応型システム(SUT)20からの応答信号を受信する信号分析部16と、応答信号の受信を可能にする通信ポート18と、1つ以上のプロセッサとを有する。プロセッサは、信号生成部12に信号データを送信して、信号生成部12に第1試験信号を生成させ、信号分析部16から応答信号を受けて、試験信号の観点から応答信号の性能を測定し、その性能をSUT20及び試験測定装置10上のユーザ・ワークスペースのうちの少なくとも1つに報告する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験測定装置であって、
被試験適応型システム(SUT)に送信される試験信号を生成する信号生成部と、
上記SUTからの応答信号を受信する信号分析部と、
上記試験信号を上記SUTへ送信するとともに上記応答信号の受信するための1つ以上の通信ポートと、
1つ以上のプロセッサと
を具え、
該1つ以上のプロセッサが、
上記信号生成部に上記試験信号を生成させるための設定データを上記信号生成部へ送信する処理と、
上記試験信号を上記SUTへ送信する処理と、
上記信号分析部から上記応答信号の応答信号データを受信する処理と、
上記試験信号に対する上記応答信号の性能を測定する処理と、
上記SUT及び上記試験測定装置のユーザ・ワークスペースの少なくとも1つに上記性能を報告する処理と
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成される試験測定装置。
【請求項2】
上記試験信号は、上記SUTが上記応答信号を送信する前に送信していた信号に悪影響を与える信号である請求項1の試験測定装置。
【請求項3】
上記試験信号に対する上記応答信号の性能を測定する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムは、上記試験信号と上記応答信号の特性を比較する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせる請求項1の試験測定装置。
【請求項4】
上記試験信号に対する上記応答信号の性能を測定する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムは、上記応答信号について、電力、帯域幅、周波数、パルス形状及び符号化方式の中の1つ以上を測定する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせる請求項1の試験測定装置。
【請求項5】
上記1つ以上のプロセッサは、上記応答信号を分析する処理と、第2試験信号の設定を決定する処理とを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう更に構成される請求項1の試験測定装置。
【請求項6】
被試験適応型システム(SUT)の試験方法であって、
試験測定装置の信号生成部で試験信号を生成して上記SUTへ送信する処理と、
上記試験測定装置の信号分析部において上記SUTからの応答信号を受信する処理と、
上記試験信号に対する上記応答信号の性能を測定する処理と、
上記SUT及び上記試験測定装置上のユーザ・ワークスペースの少なくとも1つに上記性能を報告する処理と
を具える被試験適応型システムの試験方法。
【請求項7】
上記試験信号は、上記SUTが上記応答信号を送信する前に送信していた信号に悪影響を与える信号である請求項6の被試験適応型システムの試験方法。
【請求項8】
上記試験信号に対する上記応答信号の性能を測定する処理が、上記応答信号について、電力、帯域幅、パルス幅、周波数及び符号化方式の中の1つ以上を測定する処理を含む請求項6の被試験適応型システムの試験方法。
【請求項9】
第2試験信号を要求する上記SUTからのメッセージを受信する処理を更に具える請求項6の被試験適応型システムの試験方法。
【請求項10】
上記応答信号を分析する処理と、
上記試験測定装置の上記ユーザ・ワークスペース内で第2試験信号の設定を決定する処理と
を更に具える請求項6の被試験適応型システムの試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験システムに関し、より詳細には、機械学習ベースの適応型送受信システムの動作を検証するための試験測定装置及び被試験適応型システムの試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信システムやレーダ(radar)を含む無線周波数(RF)システムなど、多くの送受信システムでは、アプリケーション固有の機能要件と性能指標を最大化するために、信号環境の現在の状態にダイナミック(動的)に適応又は応答する機能が必要である。例としては、通信データのスループット、レーダ妨害の有効性、ダイナミックなスペクトル割り当て、干渉回避などがある。
【0003】
これらの送受信システムは、しばしば「適応型」又は「コグニティブ型(cognitive:経験的な事実認識に基づく)」と呼ばれ、既知及び未知の両方の動作条件下で意思決定するための統計的に堅牢なモデルを提供する機械学習(ML)アルゴリズム(広義には「人工知能(AI)/ML」)によって実現されることが非常に多い。
【0004】
これらの送信及び受信システムの1つの具体例は、適応型送受信システムであっても良く、これは、この適応型送受信システムが動作する周波数レンジ内で干渉トラフィック又は妨害信号を感知し、十分なデータ・レートを維持する方法で応答する。適応型システムは、動作周波数を空いているチャンネルに調整したり、電力を調整したり、信号対ノイズ比(SNR)を最大化するように異なる変調方式を利用したり、エラー訂正により高い比率でパケット・データを割り当てるなどようなもっとプロトコル・レベルよりの適応を行うことで応答しても良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第11,047,957号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「電子攻撃」の記事、特に「電子対抗手段(electronic countermeasure:ECM)」の説明、Wikipedia(日本語版)、[online]、[2024年4月28日検索]、インターネット<https://ja.wikipedia.org/wiki/電子攻撃>
【非特許文献2】「任意波形ジェネレータ」の紹介サイト、テクトロニクス、[online]、[2024年4月30日検索]、インターネット<https://www.tek.com/ja/products/arbitrary-waveform-generators>
【非特許文献3】「スペクトラムアナライザ(スペアナ)/シグナルアナライザ」の紹介サイト、テクトロニクス、[online]、[2024年4月30日検索]、インターネット<https://www.tek.com/ja/products/spectrum-analyzers>
【非特許文献4】「6シリーズ B MSOミックスド・シグナル・オシロスコープ」の紹介サイト、スペクトラム解析が可能な点に言及、テクトロニクス、[online]、[2024年4月30日検索]、インターネット<https://www.tek.com/ja/products/oscilloscopes/6-series-mso>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
米国特許第11,047,957号は、RFシステムにおいて、機械学習の判断ロジックを試験及び検証する1つのアプローチを説明している。このアプローチは、受信デバイスの応答性能の評価にのみ適用される。しかし、このアプローチでは、応答を生じさせた受信信号の電磁気的な状況において、その応答を適用することの有効性については評価していない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
適応型機能を有する双方向システム(送信と受信の双方向)の有効性については、2つの主要なレベルで検証する必要がある。これは特に、深層学習ニューラル・ネットワーク(DNN)などの機械学習から適応型機能が生じるシステムに当てはまる。本願の説明では、送信システムと受信システムを「適応型システム」と呼び、試験システムは、適応型システムが、入力信号と、適応型システムが動作する環境とに適応する能力を評価する。適応型システムは、無線周波数(RF)システムのような通信システム、レーダ・システム、LIDAR(light detection and ranging:光検出及び測距、ライダー)、イーサネット(登録商標)環境での組み込み物理(PHY)層モデルを使用する通信システムなど、様々な形態をとることができる。
【0009】
検証の第1レベルでは、受信システム及び機械学習システムが信号を適切に検出し、入力信号の種類と特性を特定(識別)する能力を検証する。受信環境からの信号障害を除去すると、適応型システムが入力信号の特性を正しく認識する能力が向上する。入力信号の特性を認識する能力は、信号特性と、受信環境による障害と、適応型システムの受信チェーンに由来するの障害との組み合わせを克服するアルゴリズムの能力に依存する。この第1レベル内のこれら3つのサブ・ステップは、「検出」、「パラメータの特定」、「障害の除去又は回避」と考えることができる。この第1ステップは、これら3つのサブ・ステップのいずれか又は全てから構成されても良い。
【0010】
検証の第2レベルでは、適応型システムの動作ロジックの応答選択部分の有効性を検証する。この動作ロジックには、応答に対する最も効果的なパラメータの選択が含まれ、これは、適応型システムの動作の性能指数(データ・レート、ジャミングの有効性など)を最大化する適応型システムの能力によって測定される。つまり、この検証レベルは、人工知能(AI)/機械学習(ML)ベースの適応型システム(被試験システム(SUT:System Under Test)とも呼ぶ)の適用の有効性「インテリジェンス(知力、知性)」を検証する方法である。検証結果の形式は、行列、実数値又は複素数値のベクトル、スカラー又は単純な「合格」/「不合格」の結果である。
【0011】
これらの適応型送受信システムの双方向性の特性のために、適応型システムの判断ロジックを訓練(トレーニング)し、SUTの性能品質を検証するには、上記両方の段階の有効性を判断するために、SUTを刺激する能力と、SUT応答を受信する能力の両方が必要である。この能力が、米国特許第11,047,957号とは異なる点である。即ち、米国特許第11,047,957号は、レーダ物体検出に焦点を当て、受信デバイスの機械学習アルゴリズムの出力における分類を性能の最終的な判断要因として使用している。しかし、動作において、これらの適応型システムにおける適応機能の性能の品質には、SUTの応答の品質が含まれ、このために、SUTの応答を受信し、SUTの応答の適用に特化した性能の特性を評価する能力が必要となる。この評価には、刺激と応答の両方の機能を含む訓練(トレーニング)及び検証システムが必要である。
【0012】
無線、通信、レーダ、電子対抗手段(electronic countermeasure:ECM)又は他のタイプのSUTによる応答は、SUTが動作する環境の特定の特性に依存し、これを、本願では、「電磁気的(EM:electromagnetic)な状況」と呼ぶ。SUTの客観的な有効性には、応答信号の送信が含まれ、これは、この信号が意図的に生成された物理的(又はシミュレートされた)ポイントで測定される。この測定には、応答の現在の電磁気的状況の特性を克服する能力が含まれる。このSUTの応答は、このSUTの応答が配信されるポイントであって、応答する伝送信号が受信されるポイントで検証され、また、適切な応答を決定するアルゴリズムの動作を検証することによって検証される。第1レベルの「障害の除去又は回避」ステップの一部として、障害自体をパラメータ(例えば、行列、ベクトル、スカラーの実数値又は複素数値の形式)として抽出し、第2レベルの有効性評価に提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、適応型送信及び受信システムのための試験システムの実施形態を示す。
図2図2は、送信及び受信システムの性能を試験及び評価するために使用される試験装置の実施形態を示す。
図3図3は、送信及び受信システムを試験する実施形態のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本開示技術の実施形態による試験システム100の構成の一例を示す。この例では、送受信システム100は、RFシステムである。試験システム100は、試験測定装置10と、被試験システム(SUT:system under test)としての適応型RFシステム20から構成される。試験測定装置10は、RF信号生成部12、RF信号分析部16、信号処理及びシステム制御ユニット22を有する。試験測定装置10は、1つ以上の別々の試験測定装置で具現化されても良いし、単一の筐体内に上記の要素を含む1つの試験測定装置から構成されても良い。なお、説明を簡単にするため、これらの実施形態のいずれかを、本願では、試験測定装置10と呼ぶ。
【0015】
試験測定装置10を1つ以上の別々の試験測定装置を用いて具現化する場合、RF信号生成部12は、例えば、テクトロニクス社製の任意波形ジェネレータ(非特許文献2参照)であっても良い。RF信号生成部12は、RF信号生成部内に予め記憶させたデジタル形式の波形データや、信号処理及びシステム制御ユニット22から受信するデジタル形式の波形データや波形データの設定パラメータなどに基づいて、内蔵のデジタル・アナログ・コンバータ(DAC)を用いて、アナログの信号を生成できる。また、RF信号分析部16は、例えば、テクトロニクス社製のスペクトラム・アナライザ又はシグナル・アナライザ(非特許文献3参照)であっても良いし、若しくは、テクトロニクス社製の6シリーズ B MSOミックスド・シグナル・オシロスコープ(非特許文献4参照)のように、時間領域と周波数領域から信号を分析できるオシロスコープであっても良い。RF信号分析部16は、SUTから受信した応答信号から、内蔵のアナログ・デジタル・コンバータ(ADC)を用いて、デジタル形式の波形データを生成し、これを用いて、時間領域、周波数領域など、様々な観点から応答信号を分析できる。そして、例えば、応答信号の時間領域の波形データや、応答信号の周波数領域の波形データ(即ち、スペクトラム)、付随する分析データなどを信号処理及びシステム制御ユニット22に供給できる。
【0016】
試験測定装置10は、通信ポート14及び18などの1つ以上の通信ポートを含んでもよい。RF信号生成部12及び信号分析部16は、共通の通信ポートを使用しても良いし、又は、図1に例示するように、それぞれが独自のポートを有していても良い。RFシステムの場合、通信ポート14及び18が、無線通信用に、アンテナ15及び19を夫々別個に備えても良し、又は、SUTと有線(ケーブルなど)で接続するための有線接続用コネクタを有していても良い。
【0017】
SUT20は、多くの形態をとることができ、試験測定装置10は、多くの異なるタイプのSUTと相互に通信しても良い。これら実施形態は、適応型システムについて、何らの限定をするものではなく、示唆するものでもない。以下の説明では、説明を簡潔にするために、被試験システム20を適応型RFシステムと呼ぶことがあるが、実施形態は、全てのタイプの適応型送信及び受信システムに適用される。図1では、例示的なSUT20が、送信機26及び受信機28を有し、信号調整ユニット32を介して通信ポート24に接続される。通信ポート24は、アンテナ23を介し、更にアンテナ15及び19を介して、通信ポート14及び18との間で、RF信号を無線で送受信しても良い。なお、図1では、通信ポート14及び18と、通信ポート24との間が、無線で接続される例を示しているが、通信ポート14及び18と、通信ポート24との間の通信には、有線(ケーブルなど)を利用しても良い。また、有線による通信では、電気信号、光信号などが利用されても良い。送信機26及び受信機28は、深層学習ネットワーク等の機械学習システム30に接続されている。
【0018】
図2は、試験測定装置10の信号処理システム及び制御ユニット22の実施形態を示す。信号処理システム及び制御ユニット22は、メモリ42と、プロセッサ40と、1つ以上の通信ポート44とを含む。通信ポート44は、信号分析部16及び信号生成部12と接続されても良く、図1に示すSUT20への直接接続があってもよい。試験測定装置10は、ユーザ・ワークスペース46を含んでもよい。ユーザ・ワークスペース46は、アンテナ間の無線通信とは別に、被試験適応型システム20への接続を有していても良い。ユーザ・ワークスペース46は、メモリ42のパーティション又は他のセグメント、専用メモリ、又は、メモリ42といくつかの処理リソースと組み合わされたものを含む、多くの形態があり得る。このようなユーザ・ワークスペース46の例では、試験測定装置上で実行されるVisual Studio(登録商標)、LabVIEW(登録商標)、MATLAB(登録商標)などの開発環境を、ユーザ・ワークスペース46内で動作させるようにしても良い。これらによって、ユーザ又は試験測定装置の提供者は、試験実行の合否判定を判断するためのロジックとパラメータを開発することができる。
【0019】
図3は、この試験システムを使用して、訓練(トレーニング)又は検証プロセスを実行する方法の一実施形態を示す。図1の試験測定装置10は、工程50において、「試験信号」を生成する。この試験信号は、例えば、レーダ、通信信号(例えば、周波数が競合する信号)、又は、ジャミング信号(jamming signal:妨害信号)など、SUT20が現在送信している信号に悪影響又はストレスを与える信号であっても良い。これに応答して、SUT20は、試験信号のパラメータ及び特性を検出して特定し、工程52において、適切な応答信号を選択する。レーダ信号の場合、SUT20からの応答信号は、対抗手段(countermeasure)又は電子対抗手段(ECM:electronic countermeasure)信号から構成されてもよい。SUT20は、試験信号を打ち消すためのジャミング信号又は干渉を回避するための他の回避メカニズムに基づく信号のような応答信号を送信することによって、試験信号に応答する。このため、試験信号は、SUT20が応答信号を送信する前に送信していた信号に悪影響又はストレスを与える信号ということもできる。なお、破線で示した方法内の処理は、SUT20によって行われる処理、又は、SUT20及び試験測定装置10の両方又はいずれかが関与する処理を示す。
【0020】
次に、試験測定装置10は、信号分析部16で応答信号54を捕捉し、その波形データを生成し、これに基づいて、上述のように様々な観点のデータを生成する。次いで、試験測定装置10は、工程56において、試験測定装置10内又は信号分析部16内の1つ以上のプロセッサ40によって、SUT20の送信信号に対して悪影響又はストレスを与える試験信号に対する対抗手段として選択された応答信号の選択を検証する。工程56におけるこの検証は、応答信号の適切性を判断するために、応答信号を試験信号と比較する処理を有していても良い。
【0021】
この比較処理は、例えば、応答信号と試験信号を、周波数(利用しているチャンネル)、電力(パワー)、利用する符号化方式などの観点で比較しても良い。これにより、例えば、試験信号を受けて、それまでSUT20が送信していた信号の周波数(チャンネル)が、試験信号の周波数(チャンネル)と競合しないよう変更する応答をしたり、それまで送信信号の電力を、試験信号の電力よりも高いものに変更する応答をしたり、試験信号に比較して符号化方式を周囲の電磁気的状況が悪くても、より確実にデータを送信できる方式に変更する応答をしたり、といった応答が行われたかが検証できる。
【0022】
更に、試験測定装置10は、工程58において、応答信号に基づいて、SUT20の性能を評価する。測定される性能パラメータとしては、電力、帯域幅、周波数、パルス形状などがあり、これらパラメータは、所望の性能パラメータと比較して評価される。これによって、試験信号による悪影響に対して、SUT20が的確に応答(対抗)できているかどうかが判断できる。工程60において、SUT20が性能測定値を満たしている場合、システムは、合格となり、工程62に進んで、試験は終了する。
【0023】
試験測定装置10は、SUT20に又は試験測定装置10上のユーザ・ワークスペース46に、評価結果について、レポートを送信しても良い(工程58)。次に、試験測定装置10又はSUT20は、応答信号を分析し、試験信号の観点から応答信号が十分なものであったかどうかを判断しても良い。この判断には、図2の機械学習システム30が、更なる訓練(トレーニング)を必要とするか、又は、工程64において、異なる試験信号に関する追加の試験が必要かという知見が含まれていても良い。更に、この判断には、試験測定装置10がユーザに推奨を行うか、又は、ユーザ・ワークスペース46に直接働きかけて、訓練(トレーニング)及び検証シーケンスを管理する処理が含まれても良い。試験測定装置10又はSUT20は、新しい試験信号の設定を指定しても良い。次に、試験測定装置10は、信号生成部12が、工程66において、新しい試験信号を生成するように、必要に応じて設定を調整する。
【0024】
このようにして、被試験適応型システムの性能は、受信性能だけでなく、送信された試験信号の観点から評価される。これにより、試験信号に対する応答信号を提供する機械学習システムが、最も正確な応答を可能にするのに十分な情報を得られるようになる。
【0025】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0026】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0027】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Versatile Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0028】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含んでも良い。

実施例
【0029】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0030】
実施例1は、試験測定装置であって、被試験適応型システム(SUT)に送信される試験信号を生成する信号生成部と、上記SUTからの応答信号を受信する信号分析部と、上記試験信号を上記SUTへ送信するとともに上記応答信号の受信するための1つ以上の通信ポートと、1つ以上のプロセッサとを具え、該1つ以上のプロセッサが、上記信号生成部に上記試験信号を生成させるための設定データを上記信号生成部へ送信する処理と、上記試験信号を上記SUTへ送信する処理と、上記信号分析部から上記応答信号の応答信号データを受信する処理と、上記試験信号に対する上記応答信号の性能を測定する処理と、上記SUT及び上記試験測定装置のユーザ・ワークスペースの少なくとも1つに上記性能を報告する処理とを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成される。なお、上記試験信号は、SUTが応答信号を送信する前に送信していた信号に悪影響を与える信号であっても良い。
【0031】
実施例2は、実施例1の試験測定装置であって、上記試験信号に対する上記応答信号の性能を測定する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムは、上記試験信号と上記応答信号の特性を比較する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせる。
【0032】
実施例3は、実施例1の試験測定装置であって、上記設定データが、電力レベル、パルス幅、パルス・レート、周波数及び符号化方式の中の1つ以上のデータを含む。
【0033】
実施例4は、実施例1から3のいずれかの試験測定装置であって、上記性能を測定する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムは、電力、帯域幅、周波数及びパルス形状の中の1つ以上を測定する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせる。
【0034】
実施例5は、実施例1から4のいずれかの試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサは、第2試験信号を要求するとともに上記SUTが上記第2試験信号を受信する準備ができていることを伝えるメッセージを上記SUTから受信する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成される。
【0035】
実施例6は、実施例4の試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサは、上記第2試験信号を送信する前に、上記信号生成部の設定を調整するように更に構成される。
【0036】
実施例7は、実施例1から6のいずれかの試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサは、上記応答信号を分析する処理と、第2試験信号の設定を決定する処理とを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう更に構成される。
【0037】
実施例8は、実施例1から7のいずれかの試験測定装置であって、上記1つ以上の通信ポートは、上記SUTへの制御インタフェースを含む。
【0038】
実施例9は、実施例8の試験測定装置であって、上記ユーザ・ワークスペースは、上記制御インタフェースからアクセス可能である。
【0039】
実施例10は、実施例1から9のいずれかの試験測定装置であって、上記1つ以上の通信ポートに接続された1つ以上のアンテナを更に有する。
【0040】
実施例11は、被試験適応型システム(SUT)の試験方法であって、試験測定装置の信号生成部で試験信号を生成して上記SUTへ送信する処理と、上記試験測定装置の信号分析部において上記SUTからの応答信号を受信する処理と、上記試験信号に対する応答信号の性能を測定する処理と、上記SUT及び上記試験測定装置上のユーザ・ワークスペースの少なくとも1つに上記性能を報告する処理とを具える。
【0041】
実施例12は、実施例11の方法であって、上記信号生成部による上記試験信号を生成及び送信する処理は、上記信号生成部の設定を決定する処理を含む。
【0042】
実施例13は、実施例12の方法であって、上記設定は、電力レベル、パルス幅、パルス・レート、周波数及び符号化方式の中の1つ以上を含む。
【0043】
実施例14は、実施例11から13のいずれかの方法であって、上記性能を測定する処理は、電力レベル、パルス幅、周波数及び符号化方式の中の1つ以上を測定する処理を含む。
【0044】
実施例15は、実施例11から15のいずれかの方法であって、第2試験信号を要求する上記SUTからのメッセージを受信する処理を更に具える。
【0045】
実施例16は、実施例15の方法であって、上記メッセージは、上記第2試験信号に関する新しい設定を含む。
【0046】
実施例17は、実施例11から16のいずれかの方法であって、上記応答信号を分析する処理と、上記試験測定装置の上記ユーザ・ワークスペース内で第2試験信号の設定を決定する処理とを更に具える。
【0047】
実施例18は、実施例11から17のいずれかの方法であって、上記応答信号を受信する処理は、無線により上記応答信号を受信する処理又は上記SUTに接続された有線を通して上記応答信号を受信する処理を含む。
【0048】
実施例19は、実施例11の方法であって、上記試験信号に対する応答信号の性能を測定する処理は、上記試験信号と上記応答信号の特性を比較する処理を含む。
【0049】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0050】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0051】
明細書、特許請求の範囲、要約書及び図面に開示される全ての機能、並びに開示される任意の方法又はプロセスにおける全てのステップは、そのような機能やステップの少なくとも一部が相互に排他的な組み合わせである場合を除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。明細書、要約書、特許請求の範囲及び図面に開示される機能の夫々は、特に明記されない限り、同じ、等価、又は類似の目的を果たす代替の機能によって置き換えることができる。
【0052】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0053】
10 試験測定装置
12 RF信号生成部
14 通信ポート
15 アンテナ
18 通信ポート
19 アンテナ
20 適応型RFシステム(被試験システム:SUT)
22 信号処理及びシステム制御ユニット
23 アンテナ
24 通信ポート
26 送信機
28 受信機
30 機械学習システム
32 信号調整ユニット
40 プロセッサ
42 メモリ
44 ポート
46 ユーザ・ワークスペース
100 試験システム
図1
図2
図3