IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

特開2024-159784エッチング方法及びプラズマ処理装置
<>
  • 特開-エッチング方法及びプラズマ処理装置 図1
  • 特開-エッチング方法及びプラズマ処理装置 図2
  • 特開-エッチング方法及びプラズマ処理装置 図3
  • 特開-エッチング方法及びプラズマ処理装置 図4
  • 特開-エッチング方法及びプラズマ処理装置 図5
  • 特開-エッチング方法及びプラズマ処理装置 図6
  • 特開-エッチング方法及びプラズマ処理装置 図7
  • 特開-エッチング方法及びプラズマ処理装置 図8
  • 特開-エッチング方法及びプラズマ処理装置 図9
  • 特開-エッチング方法及びプラズマ処理装置 図10
  • 特開-エッチング方法及びプラズマ処理装置 図11
  • 特開-エッチング方法及びプラズマ処理装置 図12
  • 特開-エッチング方法及びプラズマ処理装置 図13
  • 特開-エッチング方法及びプラズマ処理装置 図14
  • 特開-エッチング方法及びプラズマ処理装置 図15
  • 特開-エッチング方法及びプラズマ処理装置 図16
  • 特開-エッチング方法及びプラズマ処理装置 図17
  • 特開-エッチング方法及びプラズマ処理装置 図18
  • 特開-エッチング方法及びプラズマ処理装置 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159784
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】エッチング方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101B
H01L21/302 101C
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024135436
(22)【出願日】2024-08-14
(62)【分割の表示】P 2022126348の分割
【原出願日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】63/162739
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】P 2020157290
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020185206
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021029988
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】吉村 正太
(72)【発明者】
【氏名】森北 信也
(57)【要約】
【課題】基板の第1の領域を第2の領域に対して選択的に保護しつつ、第2の領域をエッチングする技術を提供する。
【解決手段】開示されるエッチング方法は、基板を提供する工程(a)を含む。基板は、第1の領域及び第2の領域を有する。第2の領域はシリコン及び酸素を含み、第1の領域は第2の領域上のマスクである。エッチング方法は、一酸化炭素ガスを含む第1の処理ガスから生成される第1のプラズマにより第1の領域上に堆積物を形成する工程(b)を更に含む。エッチング方法は、堆積物が形成されたマスクを用いて第2の領域をエッチングする工程(c)を更に含む。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板を提供する工程であり、該基板は第1の領域及び第2の領域を有し、前記第2の領域はシリコン及び酸素を含み、前記第1の領域は前記第2の領域上のマスクである、該工程と、
(b)一酸化炭素ガスと貴ガス又は窒素ガスとを含む第1の処理ガスから生成される第1のプラズマにより前記マスク上に堆積物を形成する工程と、
(c)前記堆積物が形成された前記マスクを用いて前記第2の領域をエッチングする工程と、
を含む、エッチング方法。
【請求項2】
前記マスクは、極端紫外線により形成されるマスクである、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記(c)は、
(c1)フルオロカーボンガスを含む第2の処理ガスからプラズマを生成することにより、フルオロカーボンを含む別の堆積物を前記基板上に形成する工程と、
(c2)前記別の堆積物がその上に形成された前記基板に希ガスから生成されるプラズマからのイオンを供給することにより、前記第2の領域をエッチングする工程と、
を含む、請求項1又は2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記(b)と前記(c)が交互に繰り返される、請求項1~3の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記(b)及び前記(c)は、同一チャンバにおいて実行される、請求項1~4の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記(b)は、第1のチャンバにおいて実行され、
前記(c)は、第2のチャンバにおいて実行される、
請求項1~4の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記(b)と前記(c)との間に、真空環境下で前記第1のチャンバから前記第2のチャンバに前記基板を搬送する工程を更に含む、
請求項6に記載のエッチング方法。
【請求項8】
ガス入口及びガス出口を備えるチャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持器と、
前記基板支持器の上方に設けられた上部電極と、
前記チャンバ内でプラズマを生成するために高周波電力を供給するように構成された高周波電源と、
前記基板支持器に電気バイアスを供給するように構成されたバイアス電源と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
(a)基板を提供する工程であり、該基板は第1の領域及び第2の領域を有し、前記第2の領域はシリコン及び酸素を含み、前記第1の領域は前記第2の領域上のマスクである、該工程と、
(b)一酸化炭素ガスと貴ガス又は窒素ガスとを含む第1の処理ガスから生成される第1のプラズマにより前記マスク上に堆積物を形成する工程と、
(c)前記堆積物が形成された前記マスクを用いて前記第2の領域をエッチングする工程と、
をもたらすように構成されている、
プラズマ処理装置。
【請求項9】
前記高周波電源は前記上部電極に接続され、
前記制御部は、前記(b)のときに、前記高周波電源から前記上部電極に前記高周波電力を供給するように構成されている、
請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記高周波電源は前記基板支持器に接続され、
前記制御部は、前記(b)のときに、前記高周波電源から前記基板支持器に前記高周波電力を供給するように構成されている、
請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記(c)のときに前記バイアス電源から前記基板支持器に前記電気バイアスを供給するように構成されている、請求項8~10の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記制御部は、
(d)前記(b)と前記(c)を交互に繰り返す工程を更にもたらすように構成される、請求項8~11の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
ガス入口及びガス出口を備えるチャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持器と、
前記基板支持器の上方に設けられたアンテナと、
前記チャンバ内でプラズマを生成するために高周波電力を供給するように構成された高周波電源と、
前記基板支持器に電気バイアスを供給するように構成されたバイアス電源と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
(a)基板を提供する工程であり、該基板は第1の領域及び第2の領域を有し、前記第2の領域はシリコン及び酸素を含み、前記第1の領域は前記第2の領域上のマスクである、該工程と、
(b)一酸化炭素ガスと貴ガス又は窒素ガスとを含む第1の処理ガスから生成される第1のプラズマにより前記マスク上に堆積物を形成する工程と、
(c)前記堆積物が形成された前記マスクを用いて前記第2の領域をエッチングする工程と、
をもたらすように構成されている、プラズマ処理装置。
【請求項14】
前記高周波電源は前記アンテナに接続され、
前記制御部は、前記(b)のときに、前記高周波電源から前記アンテナに前記高周波電力を供給するように構成されている、
請求項13に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記(c)のときに前記バイアス電源から前記基板支持器に前記電気バイアスを供給するように構成されている、請求項13又は14に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、エッチング方法、プラズマ処理装置、及び基板処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの製造においては基板に対するエッチングが行われている。エッチングには、選択性が要求される。即ち、基板の第1の領域を保護しつつ、第2の領域を選択的にエッチングすることが求められる。下記の特許文献1及び2は、酸化シリコンから形成された第2の領域を窒化シリコンから形成された第1の領域に対して選択的にエッチングする技術を開示している。これらの文献に開示された技術は、フルオロカーボンを基板の第1の領域及び第2の領域上に堆積させている。第1の領域上に堆積したフルオロカーボンは第1の領域の保護に用いられ、第2の領域上に堆積したフルオロカーボンは第2の領域のエッチングに用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-173240号公報
【特許文献2】特開2016-111177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板の第1の領域を第2の領域に対して選択的に保護しつつ、第2の領域をエッチングする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、エッチング方法が提供される。エッチング方法は、基板を提供する工程(a)を含む。基板は、第1の領域及び第2の領域を有する。第2の領域はシリコン及び酸素を含み、第1の領域は第2の領域上のマスクである。エッチング方法は、一酸化炭素ガスと貴ガス又は窒素ガスとを含む第1の処理ガスから生成される第1のプラズマによりマスク上に堆積物を形成する工程(b)を更に含む。エッチング方法は、堆積物が形成されたマスクを用いて第2の領域をエッチングする工程(c)を更に含む。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、基板の第1の領域を第2の領域に対して選択的に保護しつつ、第2の領域をエッチングすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一つの例示的実施形態に係るエッチング方法の流れ図である。
図2図1に示すエッチング方法が適用され得る一例の基板の部分拡大断面図である。
図3図1に示すエッチング方法が適用され得る別の例の基板の部分拡大断面図である。
図4図4の(a)~図4の(f)の各々は、図1に示すエッチング方法の対応の工程が適用された状態の一例の基板の部分拡大断面図である。
図5】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図6】別の例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図7】一つの例示的実施形態に係る基板処理システムを示す図である。
図8図8の(a)及び図8の(b)は第1の実験の結果を示す図であり、図8の(c)及び図8の(d)は、第1の比較実験の結果を示す図である。
図9図9の(a)及び図9の(b)は第2の実験の結果を示す図であり、図9の(c)及び図9の(d)は、第2の比較実験の結果を示す図である。
図10】第3の実験で得たイオンエネルギーと開口の幅の関係を示すグラフである。
図11】第4~第6の実験において測定した寸法を説明する図である。
図12図12の(a)~(f)はそれぞれ、第7~第12の実験での堆積物DPの形成後のサンプル基板の透過電子顕微鏡(TEM)画像である。
図13図1に示すエッチング方法において採用され得る例示的実施形態に係る工程STcの流れ図である。
図14図14の(a)~図14の(e)の各々は、図1に示すエッチング方法の対応の工程が適用された状態の一例の基板の部分拡大断面図である。
図15】別の例示的実施形態に係るエッチング方法の流れ図である。
図16】別の例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図17図17の(a)~図17の(d)の各々は、図15に示すエッチング方法の対応の工程が適用された状態の一例の基板の部分拡大断面図である。
図18】種々の例示的実施形態に係るエッチング方法が適用され得る更に別の例の基板の部分拡大断面図である。
図19図19の(a)及び図19の(b)の各々は、例示的実施形態に係るエッチング方法の対応の工程が適用された状態の一例の基板の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、エッチング方法が提供される。エッチング方法は、基板を提供する工程(a)を含む。基板は、第1の領域及び第2の領域を有する。第2の領域は酸化シリコンを含み、第1の領域は第2の領域とは異なる材料から形成されている。エッチング方法は、一酸化炭素ガスを含む第1の処理ガスから生成される第1のプラズマにより第1の領域上に優先的に堆積物を形成する工程(b)を更に含む。エッチング方法は、第2の領域をエッチングする工程(c)を更に含む。
【0010】
上記実施形態において第1の処理ガスから形成される炭素化学種は、第1の領域上に優先的に堆積する。酸素を含む第2の領域上では、第1の処理ガスから形成される炭素化学種の堆積は抑制される。したがって、上記実施形態では、堆積物が第1の領域上に優先的に形成された状態で、第2の領域のエッチングが行われる。故に、上記実施形態によれば、基板の第1の領域を第2の領域に対して選択的に保護しつつ、第2の領域をエッチングすることが可能となる。
【0011】
一つの例示的実施形態において、第2の領域は、窒化シリコンから形成されていてもよい。工程(c)は、フルオロカーボンガスを含む第2の処理ガスからプラズマを生成することにより、フルオロカーボンを含む別の堆積物を基板上に形成する工程(c1)を含んでいてもよい。工程(c)は、別の堆積物がその上に形成された基板に希ガスから生成されるプラズマからのイオンを供給することにより、第2の領域をエッチングする工程(c2)を更に含んでいてもよい。
【0012】
一つの例示的実施形態において、工程(b)と工程(c)が交互に繰り返されてもよい。
【0013】
一つの例示的実施形態において、第2の領域は、第1の領域によって囲まれていてもよい。第2の領域は、工程(c)において、自己整合的にエッチングされてもよい。
【0014】
一つの例示的実施形態において、第1の領域は、第2の領域上に形成されたフォトレジストマスクであってもよい。
【0015】
一つの例示的実施形態において、工程(b)及び工程(c)は、同一チャンバにおいて実行されてもよい。
【0016】
一つの例示的実施形態において、工程(b)は、第1のチャンバにおいて実行されてもよく、工程(c)は、第2のチャンバにおいて実行されてもよい。
【0017】
一つの例示的実施形態において、エッチング方法は、工程(b)と工程(c)との間に、真空環境下で第1のチャンバから第2のチャンバに基板を搬送する工程を更に含んでいてもよい。
【0018】
別の例示的実施形態においては、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持器、プラズマ生成部、及び制御部を備える。基板支持器は、チャンバ内に設けられている。プラズマ生成部は、チャンバ内においてプラズマを生成するよう構成されている。制御部は、炭素を含みフッ素を含まない第1の処理ガスから生成される第1のプラズマにより基板の第1の領域上に優先的に堆積物を形成する工程(a)をもたらすように構成されている。制御部は、基板の第2の領域をエッチングする工程(b)を更にもたらすように構成されている。
【0019】
一つの例示的実施形態において、制御部は、工程(a)と工程(b)を交互に繰り返す工程(c)を更にもたらすように構成されていてもよい。
【0020】
一つの例示的実施形態において、工程(b)は、複数のサイクルにより実行されてもよい。複数のサイクルの各々は、フルオロカーボンガスを含む第2の処理ガスからプラズマを生成することにより、フルオロカーボンを含む別の堆積物を基板上に形成する工程(b1)を含む。複数のサイクルの各々は、別の堆積物がその上に形成された基板に希ガスから生成されるプラズマからのイオンを供給することにより、第2の領域をエッチングする工程(b2)を更に含む。
【0021】
一つの例示的実施形態において、第1の処理ガスは、一酸化炭素ガス又は硫化カルボニルガスを含んでいてもよい。
【0022】
一つの例示的実施形態において、第1の処理ガスは、一酸化炭素ガス及び水素ガスを含んでいてもよい。
【0023】
一つの例示的実施形態において、工程(a)は、第1の領域及び第2の領域が画成する凹部のアスペクト比が4以下であるときに少なくとも実行されてもよい。
【0024】
一つの例示的実施形態において、第1の処理ガスは、第1の成分と第2の成分とを含んでいてもよい。第1の成分は、炭素を含みフッ素を含まない。第2の成分は、炭素とフッ素又は水素とを含む。第1の成分の流量は、第2の成分の流量よりも多くてもよい。
【0025】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置は、基板支持器の上方に設けられた上部電極を更に備えていてもよい。上部電極は、チャンバの内部空間に接する天板を含んでいてもよい。天板は、シリコン含有材料から形成されていてもよい。
【0026】
一つの例示的実施形態において、制御部は、工程(a)が行われているときに、上部電極に負の直流電圧を印加する工程を更にもたらすように構成されていてもよい。
【0027】
一つの例示的実施形態において、制御部は、工程(a)の後、工程(b)の前に、シリコンを含む堆積物を基板上に形成する工程を更にもたらすように構成されていてもよい。一つの例示的実施形態において、シリコンを含む堆積物を基板上に形成する工程は、チャンバ内でプラズマが生成されているときに、前記上部電極に負の直流電圧を印加することを含んでいてもよい。
【0028】
更に別の例示的実施形態において、基板を処理する基板処理システムが提供される。基板は第1の領域及び第2の領域を有する。第2の領域はシリコン及び酸素を含む。第1の領域は酸素を含まず第2の領域の材料とは異なる材料から形成されている。基板処理システムは、堆積装置、エッチング装置、及び搬送モジュールを備える。堆積装置は、炭素を含みフッ素を含まない第1の処理ガスから生成される第1のプラズマにより第1の領域上に優先的に堆積物を形成するように構成されている。エッチング装置は、第2の領域をエッチングするように構成されている。搬送モジュールは、堆積装置とエッチング装置との間で、真空環境下で基板を搬送するように構成されている。
【0029】
更に別の例示的実施形態において、エッチング方法が提供される。エッチング方法は、プラズマ処理装置のチャンバ内に設けられた基板支持器上に基板を準備する工程(a)を含む。基板は第1の領域及び第2の領域を有する。第2の領域はシリコン及び酸素を含む。第1の領域は、酸素を含まず、第2の領域の材料とは異なる材料から形成されている。エッチング方法は、炭素を含みフッ素を含まない処理ガスから生成されるプラズマからの化学種を基板に供給することにより、第1の領域上に選択的に堆積物を形成する工程(b)を更に含む。エッチング方法は、第2の領域をエッチングする工程(c)を更に含む。
【0030】
上記実施形態において処理ガスから形成される炭素化学種は、第1の領域上に選択的に堆積する。酸素を含む第2の領域上では、処理ガスから形成される炭素化学種の堆積は抑制される。したがって、上記実施形態では、堆積物が第1の領域上に選択的に存在する状態で、第2の領域のエッチングが行われる。故に、上記実施形態によれば、基板の第1の領域を第2の領域に対して選択的に保護しつつ、第2の領域をエッチングすることが可能となる。
【0031】
一つの例示的実施形態において、処理ガスは水素を含んでいなくてもよい。
【0032】
一つの例示的実施形態において、処理ガスは、酸素を更に含んでいてもよい。処理ガスは、一酸化炭素ガス又は硫化カルボニルガスを含んでいてもよい。
【0033】
一つの例示的実施形態では、工程(b)において基板に供給されるイオンのエネルギーは、0eV以上、70eV以下であってもよい。
【0034】
一つの例示的実施形態において、第1の領域は窒化シリコンから形成されていてもよい。
【0035】
一つの例示的実施形態において、第2の領域は、酸化シリコンから形成されており、第1の領域によって囲まれていてもよい。第2の領域は、工程(c)において、自己整合的にエッチングされてもよい。
【0036】
一つの例示的実施形態において、第1の領域は、第2の領域上に設けられており、マスクを構成していてもよい。第2の領域は、シリコン含有膜を含んでいてもよい。
【0037】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置は、容量結合型のプラズマ処理装置であってもよい。工程(b)においてプラズマを生成するために、プラズマ処理装置の上部電極に高周波電力が供給されてもよい。
【0038】
一つの例示的実施形態において、高周波電力の周波数は、60MHz以上であってもよい。
【0039】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置は、誘導結合型のプラズマ処理装置であってもよい。
【0040】
一つの例示的実施形態において、工程(b)及び工程(c)は、チャンバから基板を取り出すことなく、プラズマ処理装置において実行されてもよい。
【0041】
一つの例示的実施形態では、工程(b)において用いられるプラズマ処理装置は、工程(c)において用いられるエッチング装置とは別の装置であってもよい。工程(b)において用いられるプラズマ処理装置から工程(c)において用いられるエッチング装置に、真空環境のみを介して基板が搬送されてもよい。
【0042】
一つの例示的実施形態において、工程(b)は、第1の領域及び第2の領域が画成する凹部のアスペクト比が4以下であるときに少なくとも実行され得る。
【0043】
一つの例示的実施形態において、工程(b)及び工程(c)が交互に繰り返されてもよい。
【0044】
更に別の例示的実施形態においても、エッチング方法が提供される。エッチング方法は、プラズマ処理装置のチャンバ内に設けられた基板支持器上に基板を準備する工程(a)を含む。基板は第1の領域及び第2の領域を有する。第2の領域はシリコン及び酸素を含む。第1の領域は、酸素を含まず、第2の領域の材料とは異なる材料から形成されている。エッチング方法は、炭素を含みフッ素を含まない第1のガス及び炭素とフッ素又は水素とを含む第2のガスを含む処理ガスから生成されるプラズマからの化学種を基板に供給することにより、第1の領域上に選択的に堆積物を形成する工程(b)を更に含む。エッチング方法は、第2の領域をエッチングする工程(c)を更に含む。工程(b)において、第1のガスの流量は、第2のガスの流量よりも多い。
【0045】
更に別の例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持器、ガス供給部、プラズマ生成部、及び制御部を備える。基板支持器は、チャンバ内に設けられている。ガス供給部は、チャンバ内にガスを供給するように構成されている。プラズマ生成部は、チャンバ内においてガスからプラズマを生成するよう構成されている。制御部は、ガス供給部及びプラズマ生成部を制御するように構成されている。基板支持器は、第1の領域及び第2の領域を有する基板を支持する。第2の領域はシリコン及び酸素を含み、第1の領域は酸素を含まず第2の領域の材料とは異なる材料から形成されている。制御部は、第1の領域上に選択的に堆積物を形成するために、チャンバ内で炭素を含みフッ素を含まない処理ガスからプラズマを生成するよう、ガス供給部及びプラズマ生成部する。制御部は、第2の領域をエッチングするために、チャンバ内でエッチングガスからプラズマを生成するよう、ガス供給部及びプラズマ生成部する。
【0046】
更に別の例示的実施形態において、基板処理システムが提供される。基板処理システムは、プラズマ処理装置、エッチング装置、及び搬送モジュールを備える。プラズマ処理装置は、炭素を含みフッ素を含まない処理ガスから生成されるプラズマからの化学種を基板に供給して、基板の第1の領域上に選択的に堆積物を形成するよう構成されている。基板は第1の領域及び第2の領域を有し、第2の領域はシリコン及び酸素を含み、第1の領域は酸素を含まず第2の領域の材料とは異なる材料から形成されている。エッチング装置は、第2の領域をエッチングするように構成されている。搬送モジュールは、プラズマ処理装置とエッチング装置との間で、真空環境のみを介して基板を搬送するように構成されている。
【0047】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0048】
図1は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法の流れ図である。図1に示すエッチング方法(以下、「方法MT」という)は、工程STaで開始する。工程STaでは、基板Wが提供される。工程STaにおいて、基板Wは、プラズマ処理装置の基板支持器上に準備される。基板支持器は、プラズマ処理装置のチャンバ内に設けられている。
【0049】
基板Wは、第1の領域R1及び第2の領域R2を有する。第1の領域R1は、第2の領域R2とは異なる材料から形成されている。第1の領域R1の材料は、酸素を含んでいなくてもよい。第1の領域R1の材料は、窒化シリコンを含んでいてもよい。第2の領域R2の材料は、シリコン及び酸素を含む。第2の領域R2の材料は、酸化シリコンを含んでいてもよい。第2の領域R2の材料は、シリコン、炭素、酸素、及び水素を含む低誘電率材料を含んでいてもよい。
【0050】
図2は、図1に示すエッチング方法が適用され得る一例の基板の部分拡大断面図である。図2に示す基板Wは、第1の領域R1及び第2の領域R2を有する。基板Wは、下地領域URを更に有していてもよい。図2に示す基板Wの第1の領域R1は、領域R11及び領域R12を含んでいる。領域R11は、窒化シリコンから形成されており、凹部を形成している。領域R11は、下地領域UR上に設けられている。領域R12は、領域R11の両側で延在している。領域R12は、窒化シリコン又は炭化シリコンから形成される。図2に示す基板Wの第2の領域R2は、酸化シリコンから形成されており、領域R11が提供する凹部の中に設けられている。即ち、第2の領域R2は、第1の領域R1によって囲まれている。図2に示す基板Wに方法MTが適用される場合には、第2の領域R2が自己整合的にエッチングされる。
【0051】
図3は、図1に示すエッチング方法が適用され得る別の例の基板の部分拡大断面図である。図3に示す基板WBは、方法MTが適用される基板Wとして用いられ得る。基板WBは、第1の領域R1及び第2の領域R2を有する。第1の領域R1は、基板WBにおいてマスクを構成する。第1の領域R1は、第2の領域R2上に設けられている。基板WBは、下地領域URを更に有していてもよい。第2の領域R2は、下地領域UR上に設けられる。なお、基板WBにおいて、第1の領域R1は、図2に示す基板Wの第1の領域R1の材料と同じ材料から形成され得る。また、基板WBにおいて、第2の領域R2は、図2に示す基板Wの第2の領域R2の材料と同じ材料から形成され得る。
【0052】
以下、それが図2に示す基板Wに適用される場合を例にとって方法MTの工程STaの後の工程について説明する。以下の説明では、図1と共に図4の(a)~図4の(f)を参照する。図4の(a)~図4の(f)の各々は、図1に示すエッチング方法の対応の工程が適用された状態の一例の基板の部分拡大断面図である。
【0053】
方法MTでは、工程STaの後に、工程STb及び工程STcが順に行われる。なお、工程STaの後に、工程STcが行われ、しかる後に、工程STb及び工程STcが順に行われてもよい。工程STcの後には、工程STdが行われてもよい。また、工程STb、工程STc、及び工程STdを各々が含む複数のサイクルが順に実行されてもよい。即ち、工程STbと工程STcは交互に繰り返されてもよい。複数のサイクルのうち幾つかは、工程STdを含んでいなくてもよい。
【0054】
工程STbでは、第1の領域R1上に選択的又は優先的に堆積物DPが形成される。このため、工程STbでは、プラズマ処理装置のチャンバ内で処理ガス、即ち第1の処理ガスからプラズマが生成される。第1の処理ガスは、炭素を含みフッ素を含まない。第1の処理ガスは、炭素を含みフッ素を含まないガスとして、例えば一酸化炭素ガス(COガス)、硫化カルボニルガス(COSガス)、又は炭化水素ガスを含む。炭化水素ガスは、例えば、Cガス、Cガス、CHガス、又はCガスである。第1の処理ガスは、水素を含んでいなくてもよい。第1の処理ガスは、添加ガスとして、水素ガス(Hガス)を更に含んでいてもよい。第1の処理ガスは、アルゴンガス、ヘリウムガスのような希ガスを更に含んでいてもよい。第1の処理ガスは、希ガスに加えて、或いは希ガスの代わりに、窒素ガス(Nガス)のような不活性ガスを更に含んでいてもよい。第1の処理ガスにおいて、炭素を含みフッ素を含まないガスの流量は、30sccm以上、200sccm以下であってもよい。第1の処理ガスにおいて、炭素を含みフッ素を含まないガスの流量は、90sccm以上、130sccm以下であってもよい。第1の処理ガスにおいて、希ガスの流量は、0sccm以上、1000sccm以下であってもよい。第1の処理ガスにおいて、希ガスの流量は、350sccm以下であってもよい。第1の処理ガスにおける各ガスの流量は、チャンバ10内の内部空間10sの容積等により決定され得る。工程STbでは、プラズマからの化学種(炭素化学種)が基板に供給される。供給された化学種は、図4の(a)に示すように第1の領域R1上に選択的又は優先的に堆積物DPを形成する。堆積物DPは、炭素を含む。
【0055】
工程STbにおいて、第1の処理ガスは、第1のガス及び第2のガスを含んでいてもよい。第1のガスは、炭素を含みフッ素を含まないガスであり、例えば、COガス又はCOSガスである。即ち、第1の処理ガスは、炭素を含みフッ素を含まない第1の成分を含んでいてもよい。第1の成分は、例えば、一酸化炭素(CO)又は硫化カルボニルである。第2のガスは、炭素とフッ素又は水素とを含むガスであり、例えば、ハイドロフルオロカーボンガス、フルオロカーボンガス、又は炭化水素ガスである。即ち、第1の処理ガスは、炭素とフッ素又は水素とを含む第2の成分を更に含んでいてもよい。第2の成分は、例えば、ハイドロフルオロカーボン、フルオロカーボン、又は炭化水素である。ハイドロフルオロカーボンガスは、例えばCHFガス、CHFガス、CHガス等である。フルオロカーボンガスは、例えばCガス等である。炭素と水素を含む第2のガスは、例えば、CHガスである。第1のガス又は第1の成分の流量は、第2のガス又は第2の成分の流量よりも多い。第1のガス又は第1の成分の流量に対する第2のガス又は第2の成分の流量の比は、0.2以下であってもよい。この第1の処理ガスを用いる工程STbでは、第1の領域R1上に選択的又は優先的に堆積物DPが形成されることに加えて、凹部を画成する側壁上に薄い保護膜が形成される。したがって、側壁がプラズマから保護される。
【0056】
工程STbにおいて用いられる第1の処理ガスは、COガスと水素ガス(Hガス)を含む混合ガスであってもよい。かかる第1の処理ガスによれば、堆積物DPが、工程STcにおけるエッチングに対して高い耐性を有する保護膜を、選択的又は優先的に第1の領域R1上に形成する。第1の処理ガスにおけるCOガスとHガスの総流量に対するHガスの流量の割合は、1/19以上、2/17以下であってもよい。かかる割合を有する第1の処理ガスが用いられる場合には、第1の領域R1上に形成された堆積物DPの側面の垂直性が高くなる。
【0057】
工程STbにおいて、基板Wに供給されるイオンのエネルギーは、0eV以上、70eV以下であってもよい。この場合には、堆積物DPによる凹部の開口の縮小が抑制される。
【0058】
一実施形態においては、工程STbで用いられるプラズマ処理装置は、容量結合型のプラズマ処理装置であってもよい。容量結合型のプラズマ処理装置が用いられる場合には、プラズマを生成するための高周波電力が、上部電極に供給されてもよい。この場合には、プラズマを基板Wから遠い領域で形成することができる。高周波電力の周波数は、60MHz以上であってもよい。別の実施形態においては、工程STbで用いられるプラズマ処理装置は、誘導結合型のプラズマ処理装置であってもよい。
【0059】
工程STbは、第1の領域R1上に選択的又は優先的に堆積物DPを形成することができるので、工程STbは、基板Wにおいて第1の領域R1及び第2の領域R2が画成する凹部のアスペクト比が4以下であるときに少なくとも実行され得る。
【0060】
続く工程STcでは、第2の領域R2が、図4の(b)に示すように、エッチングされる。一実施形態において、第2の領域R2は、エッチングガスから生成されるプラズマからの化学種を用いてエッチングされる。この場合には、エッチング装置のチャンバ内でエッチングガスからプラズマが生成される。エッチングガスは、第2の領域R2の材料に応じて選択される。エッチングガスは、例えばフルオロカーボンガスを含む。エッチングガスは、アルゴンガスのような希ガス及び酸素ガスのような酸素含有ガスを更に含んでいてもよい。
【0061】
工程STcにおいて用いられるエッチング装置は、工程STbで用いられるプラズマ処理装置であってもよい。即ち、工程STb及び工程STcは、同一のチャンバにおいて行われてもよい。この場合には、工程STbと工程STcは、プラズマ処理装置のチャンバから基板Wを取り出すことなく、行われる。或いは、工程STbで用いられるプラズマ処理装置は、工程STcにおいて用いられるエッチング装置とは別の装置であってもよい。即ち、工程STbは、第1のチャンバにおいて行われ、工程STcは、第2のチャンバにおいて行われてもよい。この場合には、工程STbと工程STcとの間で、工程STbで用いられるプラズマ処理装置から工程STcにおいて用いられるエッチング装置に、真空環境のみを介して基板Wが搬送される。即ち、工程STbと工程STcとの間で、基板Wは、第1のチャンバから第2のチャンバに真空環境下で搬送される。
【0062】
続く工程STdでは、アッシングが行われる。工程STdでは、図4の(c)に示すように、堆積物DPが除去される。一実施形態において、堆積物DPは、アッシングガスから生成されるプラズマからの化学種を用いてエッチングされる。この場合には、アッシング装置のチャンバ内でアッシングガスからプラズマが生成される。アッシングガスは、酸素ガスのような酸素含有ガスを含む。アッシングガスは、Nガス及びHガスを含む混合ガスであってもよい。なお、方法MTは、工程STdを含んでいなくてもよい。
【0063】
工程STdにおいて用いられるアッシング装置は、工程STcで用いられるエッチング装置であってもよい。即ち、工程STc及び工程STdは、同一のチャンバにおいて行われてもよい。この場合には、工程STcと工程STdは、エッチング装置のチャンバから基板Wを取り出すことなく、行われる。或いは、工程STcで用いられるエッチング装置は、工程STdにおいて用いられるアッシング装置とは別の装置であってもよい。即ち、工程STdにおいて利用されるチャンバは、工程STcにおいて利用されるチャンバとは別のチャンバであってもよい。この場合には、工程STcと工程STdとの間で、工程STcで用いられるエッチング装置から工程STdにおいて用いられるアッシング装置に、真空環境のみを介して基板Wが搬送される。即ち、工程STcと工程STdとの間で、基板Wは、工程STc用のチャンバから工程STd用のチャンバに真空環境下で搬送される。なお、工程STdにおいて用いられるアッシング装置は、工程STbで用いられるプラズマ処理装置であってもよい。
【0064】
方法MTにおいて複数のサイクルが順に実行される場合には、次いで、工程STJが行われる。工程STJでは、停止条件が満たされるか否かが判定される。工程STJにおいて、停止条件は、サイクルの実行回数が所定回数に達している場合に満たされる。工程STJにおいて停止条件が満たされていないと判定される場合には、再びサイクルが実行される。即ち、再び工程STbが実行されて、図4の(d)に示すように堆積物DPが第1の領域R1上に形成される。次いで、工程STcが実行されて、図4の(e)に示すように、第2の領域R2がエッチングされる。方法MTでは、図4の(e)に示すように、工程STcにより凹部の底において第1の領域R1が除去されてもよい。次いで、工程STdが実行されて、図4の(f)に示すように、堆積物DPが除去される。一方、工程STJにおいて、停止条件が満たされていると判定される場合には、方法MTは終了する。
【0065】
方法MTの工程STbにおいて第1の処理ガスから形成される炭素化学種は、第1の領域R1上に選択的又は優先的に堆積する。酸素を含む第2の領域R2上では、第1の処理ガスから形成される炭素化学種の堆積は抑制される。したがって、方法MTでは、堆積物DPが第1の領域R1上に優先的に形成された状態で、第2の領域R2のエッチングが行われる。故に、方法MTによれば、第1の領域R1を第2の領域R2に対して選択的に保護しつつ、第2の領域R2をエッチングすることが可能となる。また、方法MTでは、第1の領域R1上に選択的又は優先的に堆積物DPが形成されるので、第1の領域R1及び第2の領域R2によって画成される凹部の開口の閉塞が抑制される。
【0066】
また、工程STbにおいてCOガスから生成される炭素化学種は、イオン性を有する化学種である。一方、CHガス又はCHFガスからは、CH又はCHFのようなラジカルが生成され易い。このようなラジカルは、高い反応性を有しており基板Wの表面上に等方性をもって容易に堆積する。これに対して、イオン性を有する化学種は、異方性をもって基板W上に堆積する。即ち、イオン性を有する化学種は、凹部を画成する壁面よりも第1の領域R1の上面に多く付着する。なお、一酸化炭素は、基板Wの表面から離脱し易い。したがって、一酸化炭素を基板Wの表面に吸着させるためには、イオンを当該表面に衝突させて基板Wの表面から酸素を除去する必要がある。また、一酸化炭素は、単純構造を有するので架橋し難い。したがって、一酸化炭素を基板Wの表面上に堆積させるためには、基板Wの表面上にダングリングボンドを形成する必要がある。工程STbにおいてCOガスから生成される炭素化学種は、イオン性を有する化学種であるので、第1の領域R1の上面から酸素を除去し、当該上面にダングリングボンドを形成し、当該第1の領域R1上に選択的に堆積することができる。
【0067】
以下、図5を参照する。図5は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図5に示すプラズマ処理装置1は、方法MTにおいて用いられ得る。プラズマ処理装置1は、方法MTの全ての工程で用いられてもよく、工程STbにおいてのみ用いられてもよい。
【0068】
プラズマ処理装置1は、容量結合型のプラズマ処理装置である。プラズマ処理装置1は、チャンバ10を備えている。チャンバ10は、その中に内部空間10sを提供している。
【0069】
一実施形態において、チャンバ10は、チャンバ本体12を含んでいてもよい。チャンバ本体12は、略円筒形状を有している。内部空間10sは、チャンバ本体12の内側に提供されている。チャンバ本体12は、アルミニウムといった導体から形成されている。チャンバ本体12は、接地されている。チャンバ本体12の内壁面上には、耐腐食性を有する膜が設けられている。耐腐食性を有する膜は、酸化アルミニウム、酸化イットリウムといったセラミックから形成された膜であり得る。
【0070】
チャンバ本体12の側壁は、通路12pを提供している。基板Wは、内部空間10sとチャンバ10の外部との間で搬送されるときに、通路12pを通過する。通路12pは、ゲートバルブ12gにより開閉可能となっている。ゲートバルブ12gは、チャンバ本体12の側壁に沿って設けられている。
【0071】
プラズマ処理装置1は、基板支持器14を更に備える。基板支持器14は、チャンバ10内、即ち内部空間10sの中で、基板Wを支持するように構成されている。基板支持器14は、チャンバ10内に設けられている。基板支持器14は、支持部13によって支持されていてもよい。支持部13は、絶縁材料から形成されている。支持部13は、略円筒形状を有している。支持部13は、内部空間10sの中で、チャンバ本体12の底部から上方に延在している。
【0072】
一実施形態において、基板支持器14は、下部電極18及び静電チャック20を有していてもよい。基板支持器14は、電極プレート16を更に有していてもよい。電極プレート16は、アルミニウムといった導体から形成されており、略円盤形状を有している。下部電極18は、電極プレート16上に設けられている。下部電極18は、アルミニウムといった導体から形成されており、略円盤形状を有している。下部電極18は、電極プレート16に電気的に接続されている。
【0073】
静電チャック20は、下部電極18上に設けられている。基板Wは、静電チャック20の上面の上に載置される。静電チャック20は、誘電体から形成された本体を有する。静電チャック20の本体は、略円盤形状を有する。静電チャック20は、電極20eを更に有する。電極20eは、静電チャック20の本体の中に設けられている。電極20eは、膜状の電極である。電極20eは、スイッチ20sを介して直流電源20pに接続されている。直流電源20pからの電圧が静電チャック20の電極に印加されると、静電チャック20と基板Wとの間で静電引力が発生する。発生した静電引力により、基板Wは、静電チャック20に引き付けられ、静電チャック20によって保持される。
【0074】
基板支持器14は、その上に配置されるエッジリングERを支持していてもよい。エッジリングERは、限定されるものではないが、シリコン、炭化シリコン、又は石英から形成され得る。チャンバ10内において基板Wの処理が行われるときには、基板Wは、静電チャック20上、且つ、エッジリングERによって囲まれた領域内に、配置される。
【0075】
下部電極18は、その内部において流路18fを提供している。流路18fは、チラーユニット22から配管22aを介して供給される熱交換媒体(例えば冷媒)を受ける。チラーユニット22は、チャンバ10の外部に設けられている。流路18fに供給された熱交換媒体は、配管22bを介してチラーユニット22に戻される。プラズマ処理装置1では、静電チャック20上に載置された基板Wの温度が、熱交換媒体と下部電極18との熱交換により、調整される。
【0076】
基板Wの温度は、基板支持器14の中に設けられた一つ以上のヒータによって調整されてもよい。図5に示す例では、複数のヒータHTが、静電チャック20の中に設けられている。複数のヒータHTの各々は、抵抗加熱素子であり得る。複数のヒータHTは、ヒータコントローラHCに接続されている。ヒータコントローラHCは、複数のヒータHTのそれぞれに調整された量の電力を供給するように構成されている。
【0077】
プラズマ処理装置1は、ガス供給ライン24を更に備えていてもよい。ガス供給ライン24は、伝熱ガス(例えばHeガス)を、静電チャック20の上面と基板Wの裏面との間の間隙に供給する。伝熱ガスは、伝熱ガス供給機構からガス供給ライン24に供給される。
【0078】
プラズマ処理装置1は、上部電極30を更に備えている。上部電極30は、基板支持器14の上方に設けられている。上部電極30は、部材32を介して、チャンバ本体12の上部に支持されている。部材32は、絶縁性を有する材料から形成されている。上部電極30と部材32は、チャンバ本体12の上部開口を閉じている。
【0079】
上部電極30は、天板34及び支持体36を含み得る。天板34の下面は、内部空間10sの側の下面であり、内部空間10sを画成している。即ち、天板34は、内部空間10sに接している。天板34は、シリコン含有材料から形成され得る。天板34は、例えばシリコン又は炭化シリコンから形成されている。天板34は、複数のガス孔34aを提供している。複数のガス孔34aは、天板34をその板厚方向に貫通している。
【0080】
支持体36は、天板34を着脱自在に支持する。支持体36は、アルミニウムといった導電性材料から形成される。支持体36は、その内部においてガス拡散室36aを提供している。支持体36は、複数のガス孔36bを更に提供している。複数のガス孔36bは、ガス拡散室36aから下方に延びている。複数のガス孔36bは、複数のガス孔34aにそれぞれ連通している。支持体36は、ガス導入口36cを更に提供している。ガス導入口36cは、ガス拡散室36aに接続している。ガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0081】
ガス供給管38には、ガスソース群40が、バルブ群41、流量制御器群42、及びバルブ群43を介して接続されている。ガスソース群40、バルブ群41、流量制御器群42、及びバルブ群43は、ガス供給部GSを構成している。
【0082】
ガスソース群40は、複数のガスソースを含んでいる。プラズマ処理装置1が、工程STbにおいて用いられる場合には、複数のガスソースは、工程STbにおいて用いられる第1の処理ガスのための一つ以上のガスソースを含む。プラズマ処理装置1が、工程STcにおいて用いられる場合には、複数のガスソースは、工程STcにおいて用いられるエッチングガスのための一つ以上のガスソースを含む。プラズマ処理装置1が、工程STdにおいて用いられる場合には、複数のガスソースは、工程STdにおいて用いられるアッシングガスのための一つ以上のガスソースを含む。
【0083】
バルブ群41及びバルブ群43の各々は、複数の開閉バルブを含んでいる。流量制御器群42は、複数の流量制御器を含んでいる。流量制御器群42の複数の流量制御器の各々は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。ガスソース群40の複数のガスソースの各々は、バルブ群41の対応の開閉バルブ、流量制御器群42の対応の流量制御器、及びバルブ群43の対応の開閉バルブを介して、ガス供給管38に接続されている。
【0084】
プラズマ処理装置1は、シールド46を更に備えていてもよい。シールド46は、チャンバ本体12の内壁面に沿って着脱自在に設けられている。シールド46は、支持部13の外周にも設けられている。シールド46は、チャンバ本体12にプラズマ処理の副生物が付着することを防止する。シールド46は、例えば、アルミニウムから形成された部材の表面に耐腐食性を有する膜を形成することにより構成される。耐腐食性を有する膜は、酸化イットリウムといったセラミックから形成された膜であり得る。
【0085】
プラズマ処理装置1は、バッフル部材48を更に備えていてもよい。バッフル部材48は、支持部13とチャンバ本体12の側壁との間に設けられている。バッフル部材48は、例えば、アルミニウムから形成された板状部材の表面に耐腐食性を有する膜を形成することにより構成される。耐腐食性を有する膜は、酸化イットリウムといったセラミックから形成された膜であり得る。バッフル部材48は、複数の貫通孔を提供している。バッフル部材48の下方、且つ、チャンバ本体12の底部には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気装置50が、排気管52を介して接続されている。排気装置50は、圧力調整弁及びターボ分子ポンプといった真空ポンプを有している。
【0086】
プラズマ処理装置1は、高周波電源62及びバイアス電源64を更に備えている。高周波電源62は、高周波電力(以下、「高周波電力HF」という)を発生するように構成されている。高周波電力HFは、プラズマの生成に適した周波数を有する。高周波電力HFの周波数は、例えば27MHz以上、100MHz以下である。高周波電力HFの周波数は60MHz以上であってもよい。高周波電源62は、整合器66を介して高周波電極に接続されている。一実施形態において高周波電極は、上部電極30である。整合器66は、高周波電源62の負荷側(上部電極30側)のインピーダンスを、高周波電源62の出力インピーダンスに整合させるための回路を有している。高周波電源62は、一実施形態において、プラズマ生成部を構成し得る。なお、高周波電源62は、整合器66を介して、基板支持器14内の電極(例えば、下部電極18)に接続されていてもよい。即ち、高周波電極は、基板支持器14内の電極(例えば、下部電極18)であってもよい。
【0087】
バイアス電源64は、電気バイアスEBを基板支持器14内のバイアス電極(例えば、下部電極18)に与えるように構成されている。電気バイアスEBは、基板Wにイオンを引き込むのに適したバイアス周波数を有する。電気バイアスEBのバイアス周波数は、例えば100kHz以上、40.68MHz以下である。電気バイアスEBが高周波電力HFと共に用いられる場合には、電気バイアスEBは高周波電力HFの周波数よりも低い周波数を有する。
【0088】
一実施形態において、電気バイアスEBは、高周波バイアス電力(以下、「高周波電力LF」という)であってもよい。高周波電力LFの波形は、バイアス周波数を有する正弦波形状である。この実施形態において、バイアス電源64は、整合器68及び電極プレート16を介してバイアス電極(例えば、下部電極18)に接続されている。整合器68は、バイアス電源64の負荷側(下部電極18側)のインピーダンスを、バイアス電源64の出力インピーダンスに整合させるための回路を有している。別の実施形態において、電気バイアスEBは、電圧のパルスであってもよい。電圧のパルスは、負の電圧のパルスであってもよい。負の電圧のパルスは、負の直流電圧のパルスであってもよい。この実施形態において、電圧のパルスは、バイアス周波数の逆数の時間長を有する時間間隔(即ち、周期)で、周期的に下部電極18に印加される。
【0089】
プラズマ処理装置1は、制御部MCを更に備えている。制御部MCは、プロセッサ、メモリといった記憶部、入力装置、表示装置、信号の入出力インターフェイス等を備えるコンピュータであり得る。制御部MCは、プラズマ処理装置1の各部を制御する。制御部MCでは、オペレータが、プラズマ処理装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を入力装置を用いて行うことができる。また、制御部MCでは、表示装置により、プラズマ処理装置1の稼働状況を可視化して表示することができる。さらに、制御部MCの記憶部には、制御プログラム及びレシピデータが格納されている。制御プログラムは、プラズマ処理装置1で各種処理を実行するために、制御部MCのプロセッサによって実行される。制御部MCのプロセッサが、制御プログラムを実行し、レシピデータに従ってプラズマ処理装置1の各部を制御することにより、方法MTの少なくとも一部の工程又は全ての工程が、プラズマ処理装置1で実行される。
【0090】
制御部MCは、工程STbをもたらしてもよい。工程STbをプラズマ処理装置1において実行する場合には、制御部MCは、第1の処理ガスをチャンバ10内に供給するよう、ガス供給部GSを制御する。また、制御部MCは、チャンバ10内のガスの圧力を指定された圧力に設定するよう、排気装置50を制御する。また、制御部MCは、チャンバ10内で第1の処理ガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部を制御する。具体的に、制御部MCは、高周波電力HFを供給するよう、高周波電源62を制御する。また、制御部MCは、電気バイアスEBを供給するよう、バイアス電源64を制御してもよい。
【0091】
制御部MCは、工程STcを更にもたらしてもよい。工程STcをプラズマ処理装置1において実行する場合には、制御部MCは、エッチングガスをチャンバ10内に供給するよう、ガス供給部GSを制御する。また、制御部MCは、チャンバ10内のガスの圧力を指定された圧力に設定するよう、排気装置50を制御する。また、制御部MCは、チャンバ10内でエッチングガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部を制御する。具体的に、制御部MCは、高周波電力HFを供給するよう、高周波電源62を制御する。また、制御部MCは、電気バイアスEBを供給するよう、バイアス電源64を制御してもよい。
【0092】
制御部MCは、工程STdを更にもたらしてもよい。工程STdをプラズマ処理装置1において実行する場合には、制御部MCは、アッシングガスをチャンバ10内に供給するよう、ガス供給部GSを制御する。また、制御部MCは、チャンバ10内のガスの圧力を指定された圧力に設定するよう、排気装置50を制御する。また、制御部MCは、チャンバ10内でアッシングガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部を制御する。具体的に、制御部MCは、高周波電力HFを供給するよう、高周波電源62を制御する。また、制御部MCは、電気バイアスEBを供給するよう、バイアス電源64を制御してもよい。
【0093】
制御部MCは、上述した複数のサイクルを順に実行することを更にもたらしてもよい。制御部MCは、工程STbと工程STcを交互に繰り返すことを更にもたらしてもよい。
【0094】
以下、図6を参照する。図6は、別の例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。方法MTにおいて用いられるプラズマ処理装置は、図6に示すプラズマ処理装置1Bのように、誘導結合型のプラズマ処理装置であってもよい。プラズマ処理装置1Bは、方法MTの全ての工程で用いられてもよく、工程STbにおいてのみ用いられてもよい。
【0095】
プラズマ処理装置1Bは、チャンバ110を備えている。チャンバ110は、その中に内部空間110sを提供している。一実施形態において、チャンバ110は、チャンバ本体112を含んでいてもよい。チャンバ本体112は、略円筒形状を有している。内部空間110sは、チャンバ本体112の内側に提供されている。チャンバ本体112は、アルミニウムといった導体から形成されている。チャンバ本体112は、接地されている。チャンバ本体112の内壁面上には、耐腐食性を有する膜が設けられている。耐腐食性を有する膜は、酸化アルミニウム、酸化イットリウムといったセラミックから形成された膜であり得る。
【0096】
チャンバ本体112の側壁は、通路112pを提供している。基板Wは、内部空間110sとチャンバ110の外部との間で搬送されるときに、通路112pを通過する。通路112pは、ゲートバルブ112gにより開閉可能となっている。ゲートバルブ112gは、チャンバ本体112の側壁に沿って設けられている。
【0097】
プラズマ処理装置1Bは、基板支持器114を更に備える。基板支持器114は、チャンバ110内、即ち内部空間110sの中で、基板Wを支持するように構成されている。基板支持器114は、チャンバ110内に設けられている。基板支持器114は、支持部113によって支持されていてもよい。支持部113は、絶縁材料から形成されている。支持部113は、略円筒形状を有している。支持部113は、内部空間110sの中で、チャンバ本体112の底部から上方に延在している。
【0098】
一実施形態において、基板支持器114は、下部電極118及び静電チャック120を有していてもよい。基板支持器114は、電極プレート116を更に有していてもよい。電極プレート116は、アルミニウムといった導体から形成されており、略円盤形状を有している。下部電極118は、電極プレート116上に設けられている。下部電極118は、アルミニウムといった導体から形成されており、略円盤形状を有している。下部電極118は、電極プレート116に電気的に接続されている。
【0099】
プラズマ処理装置1Bは、バイアス電源164を更に備える。バイアス電源164は、基板支持器114内のバイアス電極(例えば、下部電極18)に整合器166を介して接続されている。バイアス電源164及び整合器166はそれぞれ、プラズマ処理装置1のバイアス電源64及び整合器66と同様に構成されている。
【0100】
静電チャック120は、下部電極118上に設けられている。静電チャック120は、本体及び電極を有し、プラズマ処理装置1の静電チャック20と同様に構成されている。静電チャック120の電極は、スイッチ120sを介して直流電源120pに接続されている。直流電源120pからの電圧が静電チャック120の電極に印加されると、静電チャック120と基板Wとの間で静電引力が発生する。発生した静電引力により、基板Wは、静電チャック120に引き付けられ、静電チャック120によって保持される。
【0101】
下部電極118は、その内部において流路118fを提供している。流路118fは、プラズマ処理装置1の流路18fと同様に、チラーユニットから配管122aを介して供給される熱交換媒体を受ける。流路118fに供給された熱交換媒体は、配管122bを介してチラーユニットに戻される。
【0102】
基板支持器114は、プラズマ処理装置1の基板支持器14と同様に、その上に配置されるエッジリングERを支持していてもよい。また、基板支持器114は、プラズマ処理装置1の基板支持器14と同様に、その中に設けられた一つ以上のヒータHTを有していてもよい。一つ以上のヒータHTは、ヒータコントローラHCに接続されている。ヒータコントローラHCは、一つ以上のヒータHTに調整された量の電力を供給するように構成されている。
【0103】
プラズマ処理装置1Bは、ガス供給ライン124を更に備えていてもよい。ガス供給ライン124は、プラズマ処理装置1のガス供給ライン24と同様に、伝熱ガス(例えばHeガス)を、静電チャック120の上面と基板Wの裏面との間の間隙に供給する。
【0104】
プラズマ処理装置1Bは、シールド146を更に備えていてもよい。シールド146は、プラズマ処理装置1のシールド46と同様に構成されている。シールド146は、チャンバ本体112の内壁面に沿って着脱自在に設けられている。シールド146は、支持部113の外周にも設けられている。
【0105】
また、プラズマ処理装置1Bは、バッフル部材148を更に備えていてもよい。バッフル部材148は、プラズマ処理装置1のバッフル部材48と同様に構成されている。バッフル部材148は、支持部113とチャンバ本体112の側壁との間に設けられている。バッフル部材148の下方、且つ、チャンバ本体112の底部には、排気口112eが設けられている。排気口112eには、排気装置150が、排気管152を介して接続されている。排気装置150は、圧力調整弁及びターボ分子ポンプといった真空ポンプを有している。
【0106】
チャンバ本体112の天部は、開口を提供している。チャンバ本体112の天部の開口は、窓部材130によって閉じられている。窓部材130は、石英といった誘電体から形成されている。窓部材130は、例えば板状をなしている。一例として、窓部材130の下面と静電チャック120上に載置された基板Wの上面との間の距離は、120mm~180mmに設定される。
【0107】
チャンバ110又はチャンバ本体112の側壁は、ガス導入口112iを提供している。ガス導入口112iには、ガス供給管138を介してガス供給部GSBが接続されている。ガス供給部GSBは、ガスソース群140、流量制御器群142、及びバルブ群143を含んでいる。ガスソース群140は、プラズマ処理装置1のガスソース群40と同様に構成されており、複数のガスソースを含んでいる。流量制御器群142は、プラズマ処理装置1の流量制御器群42と同様に構成されている。バルブ群143は、プラズマ処理装置1のバルブ群43と同様に構成されている。ガスソース群140の複数のガスソースの各々は、流量制御器群142の対応の流量制御器及びバルブ群143の対応の開閉バルブを介して、ガス供給管138に接続されている。なお、ガス導入口112iは、チャンバ本体112の側壁ではなく、窓部材130といった他の箇所に形成されていてもよい。
【0108】
プラズマ処理装置1Bは、アンテナ151及びシールド部材160を更に備えている。アンテナ151及びシールド部材160は、チャンバ110の天部の上、及び、窓部材130の上に設けられている。アンテナ151及びシールド部材160は、チャンバ110の外側に設けられている。一実施形態において、アンテナ151は、内側アンテナ素子153a及び外側アンテナ素子153bを有している。内側アンテナ素子153aは、渦巻き状のコイルであり、窓部材130の中央部の上で延在している。外側アンテナ素子153bは、渦巻き状のコイルであり、窓部材130上、且つ、内側アンテナ素子153aの外側で、延在している。内側アンテナ素子153a及び外側アンテナ素子153bの各々は、銅、アルミニウム、ステンレスといった導体から形成されている。
【0109】
プラズマ処理装置1Bは、複数の挟持体154を更に備えていてもよい。内側アンテナ素子153a及び外側アンテナ素子153bは共に、複数の挟持体154によって挟持されており、これら複数の挟持体154によって支持されている。複数の挟持体154の各々は、棒状の形状を有している。複数の挟持体154は、内側アンテナ素子153aの中心付近から外側アンテナ素子153bの外側まで放射状に延在している。
【0110】
シールド部材160は、アンテナ151を覆っている。シールド部材160は、内側シールド壁162a及び外側シールド壁162bを含んでいる。内側シールド壁162aは、筒形状を有している。内側シールド壁162aは、内側アンテナ素子153aを囲むように、内側アンテナ素子153aと外側アンテナ素子153bとの間に設けられている。外側シールド壁162bは、筒形状を有している。外側シールド壁162bは、外側アンテナ素子153bを囲むように、外側アンテナ素子153bの外側に設けられている。
【0111】
シールド部材160は、内側シールド板163a及び外側シールド板163bを更に含んでいる。内側シールド板163aは、円盤形状を有しており、内側シールド壁162aの開口を塞ぐように内側アンテナ素子153aの上方に設けられている。外側シールド板163bは、環形状を有しており、内側シールド壁162aと外側シールド壁162bとの間の開口を塞ぐように、外側アンテナ素子153bの上方に設けられている。
【0112】
なお、シールド部材160のシールド壁及びシールド板の形状は、上述した形状に限定されるものではない。シールド部材160のシールド壁の形状は、角筒形状といった他の形状であってもよい。
【0113】
プラズマ処理装置1Bは、高周波電源170a及び高周波電源170bを更に備える。高周波電源170a及び高周波電源170bは、プラズマ生成部を構成する。高周波電源170a、高周波電源170bはそれぞれ、内側アンテナ素子153a、外側アンテナ素子153bに接続されている。高周波電源170a、高周波電源170bはそれぞれ、同じ周波数又は異なる周波数を有する高周波電力を、内側アンテナ素子153a、外側アンテナ素子153bに供給する。高周波電源170aからの高周波電力が内側アンテナ素子153aに供給されると、内部空間110sの中で誘導磁界が発生し、内部空間110sの中のガスが当該誘導磁界によって励起される。これにより、基板Wの中央の領域の上方でプラズマが生成される。高周波電源170bからの高周波電力が外側アンテナ素子153bに供給されると、内部空間110sの中で誘導磁界が発生し、内部空間110sの中のガスが当該誘導磁界によって励起される。これにより、基板Wの周縁領域の上方で、環状のプラズマが生成される。
【0114】
なお、高周波電源170a、高周波電源170bのそれぞれから出力される高周波電力に応じて、内側アンテナ素子153a、外側アンテナ素子153bの電気的長さが調整されてもよい。このために、内側シールド板163a、外側シールド板163bのそれぞれの高さ方向の位置は、アクチュエータ168a、アクチュエータ168bによって個別に調整されてもよい。
【0115】
プラズマ処理装置1Bは、制御部MCを更に備えている。プラズマ処理装置1Bの制御部MCは、プラズマ処理装置1の制御部MCと同様に構成されている。制御部MCがプラズマ処理装置1Bの各部を制御することにより、方法MTの少なくとも一部の工程又は全ての工程が、プラズマ処理装置1Bで実行される。
【0116】
制御部MCは、工程STbをもたらしてもよい。工程STbをプラズマ処理装置1Bにおいて実行する場合には、制御部MCは、第1の処理ガスをチャンバ110内に供給するよう、ガス供給部GSBを制御する。また、制御部MCは、チャンバ110内のガスの圧力を指定された圧力に設定するよう、排気装置150を制御する。また、制御部MCは、チャンバ110内で第1の処理ガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部を制御する。具体的に、制御部MCは、高周波電力を供給するよう、高周波電源170a及び高周波電源170bを制御する。また、制御部MCは、電気バイアスEBを供給するよう、バイアス電源164を制御してもよい。
【0117】
制御部MCは、工程STcを更にもたらしてもよい。工程STcをプラズマ処理装置1Bにおいて実行する場合には、制御部MCは、エッチングガスをチャンバ110内に供給するよう、ガス供給部GSBを制御する。また、制御部MCは、チャンバ110内のガスの圧力を指定された圧力に設定するよう、排気装置150を制御する。また、制御部MCは、チャンバ110内でエッチングガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部を制御する。具体的に、制御部MCは、高周波電力を供給するよう、高周波電源170a及び高周波電源170bを制御する。また、制御部MCは、電気バイアスEBを供給するよう、バイアス電源164を制御してもよい。
【0118】
制御部MCは、工程STdを更にもたらしてもよい。工程STdをプラズマ処理装置1Bにおいて実行する場合には、制御部MCは、アッシングガスをチャンバ110内に供給するよう、ガス供給部GSBを制御する。また、チャンバ110内のガスの圧力を指定された圧力に設定するよう、排気装置150を制御する。また、制御部MCは、チャンバ110内でアッシングガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部を制御する。具体的に、制御部MCは、高周波電力を供給するよう、高周波電源170a及び高周波電源170bを制御する。また、制御部は、電気バイアスEBを供給するよう、バイアス電源164を制御してもよい。
【0119】
プラズマ処理装置1Bにおいて、制御部MCは、上述した複数のサイクルを順に実行することを更にもたらしてもよい。制御部MCは、工程STbと工程STcを交互に繰り返すことを更にもたらしてもよい。
【0120】
以下、図7を参照する。図7は、一つの例示的実施形態に係る基板処理システムを示す図である。図7に示す基板処理システムPSは、方法MTにおいて用いられ得る。基板処理システムPSは、台2a~2d、容器4a~4d、ローダモジュールLM、アライナAN、ロードロックモジュールLL1,LL2、プロセスモジュールPM1~PM6、搬送モジュールTM、及び制御部MCを備えている。なお、基板処理システムPSにおける台の個数、容器の個数、ロードロックモジュールの個数は一つ以上の任意の個数であり得る。また、基板処理システムPSにおけるプロセスモジュールの個数は、一つ以上の任意の個数であり得る。
【0121】
台2a~2dは、ローダモジュールLMの一縁に沿って配列されている。容器4a~4dはそれぞれ、台2a~2d上に搭載されている。容器4a~4dの各々は、例えば、FOUP(Front Opening Unified Pod)と称される容器である。容器4a~4dの各々は、その内部に基板Wを収容するように構成されている。
【0122】
ローダモジュールLMは、チャンバを有する。ローダモジュールLMのチャンバ内の圧力は、大気圧に設定される。ローダモジュールLMは、搬送装置TU1を有する。搬送装置TU1は、例えば搬送ロボットであり、制御部MCによって制御される。搬送装置TU1は、ローダモジュールLMのチャンバを介して基板Wを搬送するように構成されている。搬送装置TU1は、容器4a~4dの各々とアライナANとの間、アライナANとロードロックモジュールLL1,LL2の各々との間、ロードロックモジュールLL1,LL2の各々と容器4a~4dの各々との間で、基板Wを搬送し得る。アライナANは、ローダモジュールLMに接続されている。アライナANは、基板Wの位置の調整(位置の較正)を行うように構成されている。
【0123】
ロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2の各々は、ローダモジュールLMと搬送モジュールTMとの間に設けられている。ロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2の各々は、予備減圧室を提供している。
【0124】
搬送モジュールTMは、ロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2の各々にゲートバルブを介して接続されている。搬送モジュールTMは、その内部空間が減圧可能に構成された搬送チャンバTCを有している。搬送モジュールTMは、搬送装置TU2を有している。搬送装置TU2は、例えば搬送ロボットであり、制御部MCによって制御される。搬送装置TU2は、搬送チャンバTCを介して基板Wを搬送するように構成されている。搬送装置TU2は、ロードロックモジュールLL1,LL2の各々とプロセスモジュールPM1~PM6の各々との間、及び、プロセスモジュールPM1~PM6のうち任意の二つのプロセスモジュールの間において、基板Wを搬送し得る。
【0125】
プロセスモジュールPM1~PM6の各々は、専用の基板処理を行うように構成された装置である。プロセスモジュールPM1~PM6のうち一つのプロセスモジュールは、工程STbにおいて用いられるプラズマ処理装置であり、例えばプラズマ処理装置1又はプラズマ処理装置1Bである。工程STbにおいて用いられる基板処理システムPSのプロセスモジュールは、工程STdにおいて用いられてもよい。
【0126】
プロセスモジュールPM1~PM6のうち別の一つのプロセスモジュールは、工程STcにおいて用いられるエッチング装置である。工程STcにおいて用いられるプロセスモジュールは、プラズマ処理装置1又はプラズマ処理装置1Bと同様に構成されていてもよい。工程STcにおいて用いられる基板処理システムPSのプロセスモジュールは、工程STdにおいて用いられてもよい。
【0127】
プロセスモジュールPM1~PM6のうち更に別の一つのプロセスモジュールは、工程STdにおいて用いられるアッシング装置であってもよい。工程STdにおいて用いられるプロセスモジュールは、プラズマ処理装置1又はプラズマ処理装置1Bと同様に構成されていてもよい。
【0128】
制御部MCは、基板処理システムPSの各部を制御するように構成されている。制御部MCは、プロセッサ、記憶装置、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり得る。制御部MCは、記憶装置に記憶されている制御プログラムを実行し、当該記憶装置に記憶されているレシピデータに基づいて基板処理システムPSの各部を制御する。方法MTは、制御部MCによる基板処理システムPSの各部の制御により、基板処理システムPSにおいて実行される。
【0129】
方法MTが基板処理システムPSに用いて行われる場合には、プラズマからの化学種を基板Wに供給して、第1の領域R1上に選択的又は優先的に堆積物DPを形成するよう、制御部MCは、工程STbのためのプロセスモジュール、即ちプラズマ処理装置又は堆積装置を制御する。
【0130】
工程STbと工程STcが異なるプロセスモジュールにて行われる場合には、制御部MCは、工程STb用のプロセスモジュールから工程STc用のプロセスモジュールに搬送チャンバTCを介して基板Wを搬送するよう、搬送モジュールTMを制御する。したがって、基板Wは、工程STb用のプロセスモジュールのチャンバ(第1のチャンバ)から工程STc用のプロセスモジュールのチャンバ(第2のチャンバ)に、真空環境のみを介して搬送される。即ち、工程STbと工程STcとの間で、基板Wは、第1のチャンバから第2のチャンバに真空環境下で搬送される。なお、工程STbと工程STcが同じプロセスモジュールにて行われる場合には、基板Wはそのプロセスモジュールのチャンバ内に継続して配置される。
【0131】
次いで、制御部MCは、第2の領域R2をエッチングするよう、工程STcにおいて用いられるプロセスモジュール、即ちエッチング装置を制御する。
【0132】
工程STcと工程STdが異なるプロセスモジュールにて行われる場合には、制御部MCは、工程STc用のプロセスモジュールのチャンバから工程STd用のプロセスモジュールのチャンバに、搬送チャンバTCを介して基板Wを搬送するよう、搬送モジュールTMを制御する。したがって、基板Wは、工程STc用のプロセスモジュールのチャンバから工程STd用のプロセスモジュールのチャンバに、真空環境のみを介して搬送される。即ち、工程STcと工程STdとの間で、基板Wは、工程STc用のチャンバから工程STd用のチャンバに真空環境下で搬送される。なお、工程STcと工程STdが同じプロセスモジュールにて行われる場合には、基板Wはそのプロセスモジュール内に継続して配置される。
【0133】
次いで、制御部MCは、堆積物DPを除去するよう。工程STdにおいて用いられるプロセスモジュール、即ちアッシング装置を制御する。
【0134】
以下、方法MTの評価のために行った種々の実験について説明する。以下に説明する実験は、本開示を限定するものではない。
【0135】
(第1の実験及び第1の比較実験)
【0136】
第1の実験及び第1の比較実験では、サンプル基板SWを準備した。サンプル基板SWは、第1の領域R1及び第2の領域R2を有し、第1の領域R1及び第2の領域R2によって凹部RCを画成していた(図8の(b)及び図8の(d)を参照)。第1の領域R1は、窒化シリコンから形成されており、第2の領域R2は、酸化シリコンから形成されていた。第1の実験のサンプル基板SWにおいて、凹部RCは、12nmの幅及び13nmの深さを有していた。第1の比較実験のサンプル基板SWにおいて、凹部RCは、12nmの幅及び25nmの深さを有していた。第1の実験では、プラズマ処理装置1においてCOガスとArガスの混合ガスを第1の処理ガスとして用い、サンプル基板SW上に堆積物DPを形成した。第1の比較実験では、プラズマ処理装置1においてCHFガスとArガスの混合ガスを用いてサンプル基板SW上に堆積物DPを形成した。以下、第1の実験と第1の比較実験における堆積物DPの形成条件を示す。
<第1の実験と第1の比較実験における堆積物DPの形成条件>
高周波電力HF:800W
第1の実験における高周波電力LF:0W
第1の比較実験における高周波電力LF:0W
処理時間:第1の実験 120秒、第1の比較実験 30秒
【0137】
図8の(a)及び図8の(b)に第1の実験の結果を示す。図8の(a)は、第1の実験においてその上に堆積物DPが形成されたサンプル基板SWの透過電子顕微鏡(TEM)画像を示している。図8の(b)は、図8の(a)のTEM画像におけるサンプル基板SWを図示している。また、図8の(c)及び図8の(d)に、第1の比較実験の結果を示す。図8の(c)は、第1の比較実験においてその上に堆積物DPが形成されたサンプル基板SWの透過電子顕微鏡(TEM)画像を示している。図8の(d)は、図8の(c)のTEM画像におけるサンプル基板SWを図示している。図8の(c)及び図8の(d)に示すように、CHFガスを用いた第1の比較実験では、堆積物DPが第1の領域R1及び第2の領域R2の双方の上に形成されており、凹部RCの開口の幅が狭くなっていた。一方、図8の(a)及び図8の(b)に示すように、COガスを用いた第1の実験では、堆積物DPが第1の領域R1上に選択的又は優先的に形成されており、凹部RCの開口の幅の縮小が抑制されていた。
【0138】
(第2の実験及び第2の比較実験)
【0139】
第2の実験及び第2の比較実験では、サンプル基板SWを準備した。準備したサンプル基板SWは、第1の領域R1及び第2の領域R2を有し、第1の領域R1及び第2の領域R2によって凹部RCを画成していた。第1の領域R1は、窒化シリコンから形成されており、第2の領域R2は、酸化シリコンから形成されていた。準備したサンプル基板は、第1の実験及び第1の比較実験で用いたサンプル基板の凹部RCのアスペクト比よりも小さいアスペクト比を有していた。具体的に、第2の実験のサンプル基板SWにおいて、凹部RCは、12nmの幅及び7nmの深さを有しており、そのアスペクト比は約0.6であった。第2の比較実験のサンプル基板において、凹部RCは、12nmの幅及び9nmの深さを有しており、そのアスペクト比は、0.8であった。第2の実験では、第1の実験の条件と同じ条件で、サンプル基板SW上に堆積物DPを形成した。第2の比較実験では、第1の比較実験の条件と同じ条件で、サンプル基板SW上に堆積物DPを形成した。
【0140】
図9の(a)及び図9の(b)に第2の実験の結果を示す。図9の(a)は、第2の実験においてその上に堆積物DPが形成されたサンプル基板SWの透過電子顕微鏡(TEM)画像を示している。図9の(b)は、図9の(a)のTEM画像におけるサンプル基板SWを図示している。また、図9の(c)及び図9の(d)に、第2の比較実験の結果を示す。図9の(c)は、第2の比較実験においてその上に堆積物DPが形成されたサンプル基板SWの透過電子顕微鏡(TEM)画像を示している。図9の(d)は、図9の(c)のTEM画像におけるサンプル基板SWを図示している。図9の(c)及び図9の(d)に示すように、CHFガスを用いた第2の比較実験では、堆積物DPが第1の領域R1及び第2の領域R2の双方の上に形成されており、凹部RCの開口の幅が狭くなっていた。一方、図9の(a)及び図9の(b)に示すように、COガスを用いた第2の実験では、堆積物DPが第1の領域R1上に選択的に形成されており、凹部RCの開口の幅の縮小が抑制されていた。第2の実験の結果、COガスを用いることにより、凹部RCのアスペクト比が小さくても、堆積物DPが第1の領域R1上に選択的に形成されることが確認された。
【0141】
(第3の実験)
【0142】
第3の実験では、第1の実験のサンプル基板の構造と同じ構造を有する複数のサンプル基板SWを準備した。第3の実験では、プラズマ処理装置1においてCOガスとArガスの混合ガスを第1の処理ガスとして用い、複数のサンプル基板SW上に堆積物DPを形成した。第3の実験では、堆積物DPの形成時に複数のサンプル基板SWに供給されたイオンのエネルギー(即ち、イオンエネルギー)が互いに異なっていた。第3の実験では、高周波電力LFの電力レベルを変更することによりイオンエネルギーを調整した。第3の実験の他の条件は、第1の実験の対応の条件と同一であった。第3の実験では、堆積物DPの形成後の複数のサンプル基板SWの凹部RCの開口の幅を求めた。そして、イオンエネルギーと開口の幅との関係を求めた。その結果を図10のグラフに示す。図10のグラフにおいて、横軸はイオンエネルギーを示しており、縦軸は開口の幅を示している。図10に示すように、堆積物DPの形成時の基板Wに対するイオンエネルギーが70eV以下であれば、凹部RCの開口の幅の縮小が相当に抑制されていた。
【0143】
(第4~第6の実験)
【0144】
第4~第6の実験の各々では、第1の実験のサンプル基板の構造と同じ構造を有するサンプル基板を準備した。そして、プラズマ処理装置1を用いて、堆積物DPをサンプル基板の表面上に形成し、次いで、第2の領域R2のエッチングを行った。第4の実験では、堆積物DPを形成するための第1の処理ガスとしてCOガスとArガスの混合ガスを用いた。第5の実験では、堆積物DPを形成するための第1の処理ガスとしてCOガスとCHガスの混合ガスを用いた。第6の実験では、堆積物DPを形成するための第1の処理ガスとしてCOガスとHガスの混合ガスを用いた。第4~第6の実験の各々における堆積物DPのその他の形成条件は、第1の実験における堆積物DPの形成条件と同一であった。以下、第4~第6の実験の各々における第2の領域R2のエッチング条件を示す。
<第2の領域R2のエッチング条件>
高周波電力HF:100W
高周波電力LF:100W
エッチングガス:NFガスとArガスの混合ガス
処理時間:6秒
【0145】
図11は、第4~第6の実験において測定した寸法を説明する図である。第4~第6の実験の各々では、第2の領域R2のエッチング前の堆積物DPの膜厚T、第2の領域R2のエッチングによる凹部の深さDの増加量、及び第2の領域R2のエッチングによる堆積物DPの膜厚Tの減少量を求めた。なお、膜厚Tは、凹部の底における堆積物DPの膜厚である。膜厚Tは、第1の領域R1上の堆積物DPの膜厚である。
【0146】
第4~第6の実験において測定された膜厚Tはそれぞれ、1.8nm、3.0nm、1.6nmであった。したがって、第1の処理ガスがCOガスとArガスの混合ガス又はCOガスとHガスの混合ガスである場合には、第1の処理ガスがCHガスを含む場合に比べて、凹部の底における堆積物DPの膜厚は小さかった。また、第4~第6の実験において測定された凹部の深さDの増加量はそれぞれ、1.0nm、0.5nm、0.9nmであった。したがって、第1の処理ガスがCOガスとArガスの混合ガス又はCOガスとHガスの混合ガスである場合には、第1の処理ガスがCHガスを含む場合に比べて、凹部の底で第2の領域R2が多くエッチングされた。また、第4~第6の実験において測定された膜厚Tの減少量はそれぞれ、3.5nm、1.7nm、1.2nmであった。したがって、堆積物DPを形成するための第1の処理ガスがCOガスとHガスの混合ガスである場合には、他の処理ガスが用いられた場合に比較して、膜厚Tの減少量が顕著に抑制されていた。このことから、COガスとHガスの混合ガスを第1の処理ガスとして用いることにより、第2の領域R2のエッチングに対して高い耐性を有する保護膜を、選択的又は優先的に第1の領域R1上に形成することが可能であることが確認された。
【0147】
(第7~第12の実験)
【0148】
第7~第12の実験の各々では、第1の実験のサンプル基板の構造と同じ構造を有するサンプル基板を準備した。そして、プラズマ処理装置1を用いて、堆積物DPをサンプル基板の表面上に形成した。第7~第12の実験において堆積物DPを形成するための処理ガスは、COガスとArガスを含んでいた。第8~第12の実験において、堆積物DPを形成するための第1の処理ガスは、Hガスを更に含んでいた。第7~第12の実験での第1の処理ガスにおけるCOガスとHガスの総流量に対するHガスの流量の割合はそれぞれ、0、1/19、4/49、2/17、1/4、5/14であった。第7~第12の実験の各々における堆積物DPのその他の形成条件は、第1の実験における堆積物DPの形成条件と同一であった。
【0149】
図12の(a)~(f)はそれぞれ、第7~第12の実験での堆積物DPの形成後のサンプル基板の透過電子顕微鏡(TEM)画像を示している。第8~第10の実験で第1の領域R1上に形成した堆積物DPの側面(図12の(b)~図12の(d)を参照)は、他の実験で第1の領域R1上に形成した堆積物DPの側面(図12の(e)~図12の(f)を参照)と比較して高い垂直性を有していた。したがって、第1の処理ガスにおけるCOガスとHガスの総流量に対するHガスの流量の割合が、1/19以上、2/17以下である場合に、第1の領域R1上に形成された堆積物DPの側面の垂直性が高くなることが確認された。
【0150】
以下、図1と共に、図13及び図14の(a)~図14の(e)を参照する。図13は、図1に示すエッチング方法において採用され得る例示的実施形態に係る工程STcの流れ図である。図14の(a)~図14の(e)の各々は、図1に示すエッチング方法の対応の工程が適用された状態の一例の基板の部分拡大断面図である。以下、図13に示す工程STcを含む方法MTについて、それが図2に示す基板Wに適用される場合を例にとって、説明する。
【0151】
図13に示す工程STcは、工程STc1及び工程STc2を含む。工程STc1では、図14の(a)に示すように、堆積物DPCが基板W上に形成される。堆積物DPCは、フルオロカーボンを含む。工程STc1では、堆積物DPCを基板W上に形成するために、エッチング装置のチャンバ内で第2の処理ガスからプラズマが生成される。工程STc1で用いられる第2の処理ガスは、Cガスのようなフルオロカーボンガスを含む。工程STc1で用いられる第2の処理ガスに含まれるフルオロカーボンガスは、Cガス以外のフルオロカーボンガスであってもよい。工程STc1では、第2の処理ガスから生成されたプラズマからフルオロカーボンが基板Wに供給されて、当該フルオロカーボンが基板W上に堆積物DPCを形成する。
【0152】
工程STc2では、希ガスのイオンが基板Wに供給されることにより、第2の領域R2がエッチングされる。工程STc2では、エッチング装置のチャンバ内で希ガスのプラズマが形成される。工程STc2で用いられる希ガスは、例えばArガスである。工程STc2で用いられる希ガスは、Arガス以外の希ガスであってもよい。工程STc2では、プラズマから希ガスのイオンが基板Wに供給される。基板Wに供給された希ガスのイオンは、堆積物DPCに含まれるフルオロカーボンと第2の領域R2の材料とを反応させる。その結果、工程STc2では、図14の(b)に示すように、第2の領域R2がエッチングされる。工程STc2は、第2の領域R2上の堆積物DPCが実質的に消失するまで行われる。一方、第1の領域R1の上方では、堆積物DPCは、堆積物DP上に形成されているので、希ガスのイオンが供給されても除去されない。
【0153】
図13に示す工程STcでは、工程STc1と工程STc2が交互に繰り返されて、図14の(c)示すように、第2の領域R2が更にエッチングされてもよい。この場合に、工程STcは、工程STc3を含む。工程STc3では、停止条件が満たされるか否かが判定される。工程STc3において、停止条件は、工程STc1と工程STc2の交互の繰り返しの回数が所定回数に達している場合に満たされる。工程STc3において停止条件が満たされていないと判定される場合には、再び工程STc1と工程STc2が順に実行される。一方、工程STc3において、停止条件が満たされていると判定される場合には、工程STcは終了する。
【0154】
工程STcの終了後、工程STdが行われてもよい。或いは、工程STcの終了後、工程STdが行われることなく、工程STJにおいて停止条件が満たされるか否かが判定されてもよい。工程STJにおいて停止条件が満たされないと判定されると、工程STbが再び行われる。工程STbでは、図14の(d)に示すように、第1の領域R1上で堆積物DPC上に堆積物DPが形成される。そして、図13に示す工程STcが再び実行されることにより、図14の(e)に示すように、第2の領域R2が更にエッチングされる。
【0155】
図13に示す工程STcによれば、第2の領域R2上に形成された堆積物DPCは、第2の領域R2のエッチングに使用されて、工程STc2において実質的に消失する。したがって、工程STcの後に工程STbが行われる際には、第2の領域R2が露出されているので、堆積物DPは、第1の領域R1上の堆積物DPC上に選択的又は優先的に形成され、第2の領域R2上には形成されない。故に、工程STbの後に行われる工程STcにおいて第2の領域R2のエッチングが停止することが防止される。また、第1の領域R1上に堆積物DPCが残された状態で工程STbが行われるので、堆積物DPは、図2に示す基板Wの第1の領域R1の肩部の上にも十分に形成される。したがって、図13に示す工程STcを含む方法MTによれば、第1の領域R1がより確実に保護される。
【0156】
図13に示す工程STcに用いられるエッチング装置は、プラズマ処理装置1又はプラズマ処理装置1Bであり得る。プラズマ処理装置1及びプラズマ処理装置1Bの何れが用いられる場合にも、制御部MCは、工程STc1及び工程STc2を各々が含む複数のエッチングサイクルをもたらすことにより、工程STcをもたらす。図13に示す工程STcにおいて用いられるエッチング装置がプラズマ処理装置1である場合には、工程STc1において、プラズマ処理装置1の制御部MCは、第2の処理ガスをチャンバ10内に供給するよう、ガス供給部GSを制御する。また、工程STc1において、制御部MCは、チャンバ10内のガスの圧力を指定された圧力に設定するよう、排気装置50を制御する。また、工程STc1において、制御部MCは、チャンバ10内で第2の処理ガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部を制御する。具体的に、制御部MCは、高周波電力HFを供給するよう、高周波電源62を制御する。また、工程STc1において、制御部MCは、電気バイアスEBを供給するよう、バイアス電源64を制御してもよい。なお、工程STc1において、電気バイアスEBは供給されなくてもよい。
【0157】
工程STc2において、プラズマ処理装置1の制御部MCは、希ガスをチャンバ10内に供給するよう、ガス供給部GSを制御する。また、工程STc2において、制御部MCは、チャンバ10内のガスの圧力を指定された圧力に設定するよう、排気装置50を制御する。また、工程STc2において、制御部MCは、チャンバ10内で希ガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部を制御する。具体的に、制御部MCは、高周波電力HFを供給するよう、高周波電源62を制御する。また、工程STc2において、制御部MCは、電気バイアスEBを供給するよう、バイアス電源64を制御する。
【0158】
図13に示す工程STcにおいて用いられるエッチング装置がプラズマ処理装置1Bである場合には、プラズマ処理装置1Bの制御部MCは、フルオロカーボンガスを含む第2の処理ガスをチャンバ110内に供給するよう、ガス供給部GSBを制御する。また、工程STc1において、制御部MCは、チャンバ110内のガスの圧力を指定された圧力に設定するよう、排気装置150を制御する。また、工程STc1において、制御部MCは、チャンバ110内で第2の処理ガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部を制御する。具体的に、制御部MCは、高周波電力を供給するよう、高周波電源170a及び高周波電源170bを制御する。また、工程STc1において、制御部MCは、電気バイアスEBを供給するよう、バイアス電源164を制御してもよい。
【0159】
工程STc2において、プラズマ処理装置1Bの制御部MCは、希ガスをチャンバ110内に供給するよう、ガス供給部GSBを制御する。また、工程STc2において、制御部MCは、チャンバ110内のガスの圧力を指定された圧力に設定するよう、排気装置150を制御する。また、工程STc2において、制御部MCは、チャンバ110内で希ガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部を制御する。具体的に、制御部MCは、高周波電力を供給するよう、高周波電源170a及び高周波電源170bを制御する。また、工程STc2において、制御部MCは、電気バイアスEBを供給するよう、バイアス電源164を制御する。
【0160】
以下、図15を参照して、別の例示的実施形態に係るエッチング方法について説明する。図15は、別の例示的実施形態に係るエッチング方法の流れ図である。図15に示すエッチング方法(以下、「方法MTB」という)は、工程STa、工程STe、及び工程STcを含む。方法MTBにおいては、工程STe及び工程STcを各々が含む複数のサイクルが順に実行されてもよい。方法MTBは、工程STfを更に含んでいてもよい。複数のサイクルの各々は、工程STfを更に含んでいてもよい。方法MTBは、工程STdを更に含んでいてもよい。複数のサイクルの各々は、工程STdを更に含んでいてもよい。
【0161】
方法MTBにおいては、プラズマ処理装置1又はプラズマ処理装置1Bが用いられてもよい。方法MTBにおいては、別のプラズマ処理装置が用いられてもよい。図16は、別の例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。以下、図16に示すプラズマ処理装置1Cとプラズマ処理装置1の相違点の観点から、プラズマ処理装置1Cについて説明する。
【0162】
プラズマ処理装置1Cは、少なくとも一つの直流電源を備えている。少なくとも一つの直流電源は、上部電極30に負の直流電圧を印加するように構成されている。チャンバ10内においてプラズマが生成されているときに、上部電極30に負の直流電圧が印加されると、プラズマ中の正イオンが天板34に衝突する。その結果、二次電子が天板34から放出されて、基板に供給される。また、シリコンが天板34から放出されて、基板に供給される。
【0163】
一実施形態において、上部電極30は内側部分301と外側部分302を含んでいてもよい。内側部分301と外側部分302は、互いから電気的に分離されている。外側部分302は、内側部分301に対して径方向外側に設けられており、内側部分301を囲むように周方向に延在している。内側部分301は、天板34の内側領域341を含んでおり、外側部分302は、天板34の外側領域342を含んでいる。内側領域341は、略円盤形状を有していてもよく、外側領域342は、環形状を有していてもよい。内側領域341及び外側領域342の各々は、プラズマ処理装置1の天板34と同様に、シリコン含有材料から形成される。
【0164】
プラズマ処理装置1Cにおいて、高周波電源62は、内側部分301と外側部分302の双方に高周波電力HFを供給する。プラズマ処理装置1は、少なくとも一つの直流電源として、直流電源71及び直流電源72を備えていてもよい。直流電源71及び直流電源72の各々は、可変直流電源であってもよい。直流電源71は、内側部分301に負の直流電圧を印加するよう、内側部分301に電気的に接続されている。直流電源72は、外側部分302に負の直流電圧を印加するよう、外側部分302に電気的に接続されている。なお、プラズマ処理装置1Cの他の構成は、プラズマ処理装置1の対応の構成と同一であり得る。
【0165】
再び図15を参照する。以下、図2に示す基板Wにそれが適用される場合を例にとって、方法MTBについて説明する。以下の説明では、図17の(a)~図17の(d)を更に参照する。図17の(a)~図17の(d)の各々は、図15に示すエッチング方法の対応の工程が適用された状態の一例の基板の部分拡大断面図である。
【0166】
方法MTBは、工程STaで開始する。方法MTBの工程STaは、方法MTの工程STaと同じ工程である。
【0167】
工程STeは、工程STaの後に行われる。工程STeでは、図17の(a)に示すように、第1の堆積物DP1が、第1の領域R1上に選択的又は優先的に形成される。
【0168】
一実施形態において、工程STeは、工程STbと同じ工程であってもよい。この場合には、工程STeにおいて形成される第1の堆積物DP1は、堆積物DPと同じである。この場合には、工程STeにおいて用いられるプラズマ処理装置は、プラズマ処理装置1、プラズマ処理装置1B、又はプラズマ処理装置1Cであってもよい。
【0169】
別の実施形態において、工程STeは、工程STbと同じ工程が行われているときに、上部電極30に負の直流電圧を印加する工程を含んでいてもよい。この場合には、工程STeにおいて、プラズマ処理装置1Cが用いられる。この場合には、第1の堆積物DP1は、第1の処理ガスから生成されるプラズマからの化学種(例えば、炭素)と天板34から放出されるシリコンから形成されて、緻密な膜となる。この場合において、プラズマ処理装置1Cの制御部MCは、工程STbが行われているときに、上部電極30に負の直流電圧を印加する工程を更にもたらす。
【0170】
工程STeにおいては、制御部MCは、上部電極30に負の直流電圧を印加するよう少なくとも一つの直流電源を制御する。具体的には、制御部MCは、上部電極30に負の直流電圧を印加するよう、直流電源71及び直流電源72を制御する。直流電源71から上部電極30の内側部分301に印加される負の直流電圧の絶対値は、直流電源72から上部電極30の外側部分302に印加される負の直流電圧の絶対値よりも大きくてもよい。工程STeにおいては、直流電源72は、上部電極30の外側部分302に電圧を印加しなくてもよい。
【0171】
上述したように、方法MTBは、工程STfを更に含んでいてもよい。工程STfは、工程STeの後、且つ、工程STcの前に行われる。工程STfでは、図17の(b)に示すように、第2の堆積物DP2が基板W上に形成される。第2の堆積物DP2は、シリコンを含む。工程STfにおいて用いられるプラズマ処理装置の制御部MCは、工程STfをもたらすように構成される。
【0172】
工程STfにおいて、第2の堆積物DP2は、プラズマ支援化学気相成長(即ち、PECVD)により形成されてもよい。PECVDにより第2の堆積物DP2が形成される場合には、工程STfにおいて用いられるプラズマ処理装置は、プラズマ処理装置1、プラズマ処理装置1B、又はプラズマ処理装置1Cであってもよい。
【0173】
工程STfにおいてプラズマ処理装置1又は1Cを用いてPECVDが行われる場合には、制御部MCは、処理ガスをチャンバ10内に供給するよう、ガス供給部GSを制御する。処理ガスは、SiClガスのようなシリコン含有ガスを含む。処理ガスは、Hガスを更に含んでいてもよい。また、制御部MCは、チャンバ10内のガスの圧力を指定された圧力に設定するよう、排気装置50を制御する。また、制御部MCは、チャンバ10内で処理ガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部を制御する。具体的に、制御部MCは、高周波電力HFを供給するよう、高周波電源62を制御する。
【0174】
工程STfにおいてプラズマ処理装置1Bを用いてPECVDが行われる場合には、制御部MCは、処理ガスをチャンバ110内に供給するよう、ガス供給部GSBを制御する。処理ガスは、SiClガスのようなシリコン含有ガスを含む。処理ガスは、Hガスを更に含んでいてもよい。また、制御部MCは、チャンバ110内のガスの圧力を指定された圧力に設定するよう、排気装置150を制御する。また、制御部MCは、チャンバ110内で処理ガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部を制御する。具体的に、制御部MCは、高周波電力を供給するよう、高周波電源170a及び高周波電源170bを制御する。
【0175】
或いは、工程STfは、チャンバ10内でプラズマが生成されているときに、上部電極30に負の直流電圧を印加する工程を含んでいてもよい。チャンバ10内においてプラズマが生成されているときに、上部電極30に負の直流電圧が印加されると、プラズマ中の正イオンが天板34に衝突する。その結果、二次電子が天板34から放出されて、基板Wに供給される。また、シリコンが天板34から放出されて、基板Wに供給される。基板Wに供給されたシリコンは、基板W上で第2の堆積物DP2を形成する。この場合の工程STfでは、プラズマ処理装置1Cが用いられる。
【0176】
この場合において、プラズマ処理装置1Cの制御部MCは、工程STfをもたらすように構成される。工程STfにおいて、制御部MCは、ガスをチャンバ10内に供給するよう、ガス供給部GSを制御する。工程STfにおいてチャンバ10内に供給されるガスは、Arガスのような希ガスを含む。工程STfにおいてチャンバ10内に供給されるガスは、水素ガス(Hガス)を更に含んでいてもよい。また、制御部MCは、チャンバ10内のガスの圧力を指定された圧力に設定するよう、排気装置50を制御する。また、制御部MCは、チャンバ10内でガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部を制御する。具体的に、制御部MCは、高周波電力HFを供給するよう、高周波電源62を制御する。
【0177】
また、工程STfにおいて、制御部MCは、上部電極30に負の直流電圧を印加するよう少なくとも一つの直流電源を制御する。具体的には、制御部MCは、上部電極30に負の直流電圧を印加するよう、直流電源71及び直流電源72を制御する。直流電源71から上部電極30の内側部分301に印加される負の直流電圧の絶対値は、直流電源72から上部電極30の外側部分302に印加される負の直流電圧の絶対値よりも大きくてもよい。
【0178】
次いで、方法MTBでは、工程STcが行われて、図17の(c)に示すように、第2の領域R2がエッチングされる。方法MTBの工程STcは、方法MTの工程STcと同じ工程である。工程STcにおいて用いられるプラズマ処理装置は、プラズマ処理装置1、プラズマ処理装置1B、又はプラズマ処理装置1Cであってもよい。
【0179】
方法MTBでは、第2の領域R2がエッチングされた後に、工程STdが実行されて、図17の(d)に示すように、第1の堆積物DP1及び第2の堆積物DP2が除去されてもよい。方法MTBの工程STdは、方法MTの工程STと同じ工程である。工程STdにおいて用いられるプラズマ処理装置は、プラズマ処理装置1、プラズマ処理装置1B、又はプラズマ処理装置1Cであってもよい。
【0180】
方法MTBによれば、第2の堆積物DP2が第1の堆積物DP1上に形成されるので、基板Wの第1の領域R1の肩部のエッチングが更に抑制され、第1の領域R1が提供する凹部の開口が広がることが抑制される。
【0181】
なお、上述したように、方法MTでは、工程STe、工程STf、工程STc、及び工程STdを各々が含む複数のサイクルが実行されてもよい。複数のサイクルのうち幾つかにおいては、工程STe、工程STf、及び工程STdのうち少なくとも一つが省略されてもよい。また、工程STeを含むサイクルの数は、工程STfを含むサイクルの数よりも少なくてもよい。この場合には、第1の堆積物DP1が消耗する前に、工程STfを行って第2の堆積物DP2を形成することにより、工程STeの回数を削減することが可能となる。
【0182】
以下、図18を参照する。図18は、種々の例示的実施形態に係るエッチング方法が適用され得る更に別の例の基板の部分拡大断面図である。方法MTは、図18に示す基板WCにも適用され得る。
【0183】
基板WCは、第1の領域R1及び第2の領域R2を含む。基板WCは、第3の領域R3及び下地領域URを更に含んでいてもよい。第3の領域R3は、下地領域UR上に設けられている。第3の領域R3は、有機材料から形成されている。第2の領域R2は、第3の領域R3上に形成されている。第2の領域R2は、酸化シリコンを含む。第2の領域R2は、シリコン酸化膜と、当該シリコン酸化膜上に設けられた炭化シリコン膜と、を含んでいてもよい。第1の領域R1は、第2の領域R2上に設けられたマスクであり、パターニングされている。第2の領域R2は、フォトレジストマスクであってもよい。第2の領域R2は、極端紫外線(EUV)マスクであってもよい。
【0184】
図19の(a)及び図19の(b)の各々は、例示的実施形態に係るエッチング方法の対応の工程が適用された状態の一例の基板の部分拡大断面図である。方法MTが基板WCに適用される場合には、工程STbにおいて、堆積物DPが、図19の(a)に示すように、第1の領域R1上に選択的又は優先的に形成される。そして、工程STcにおいて、第2の領域R2が、図19の(b)に示すようにエッチングされる。なお、図18に示す基板WCには、方法MTBが適用されてもよい。
【0185】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0186】
方法MT及び方法MTBにおいて用いられるプラズマ処理装置は、プラズマ処理装置1とは別の容量結合型のプラズマ処理装置であってもよい。また、方法MT及び方法MTBにおいて用いられるプラズマ処理装置は、プラズマ処理装置1Bとは別の誘導結合型のプラズマ処理装置であってもよい。方法MT及び方法MTBにおいて用いられるプラズマ処理装置は、他のタイプのプラズマ処理装置であってもよい。そのようなプラズマ処理装置は、電子サイクロトロン(ECR)プラズマ処理装置又はマイクロ波といった表面波によってプラズマを生成するプラズマ処理装置であってもよい。
【0187】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0188】
W…基板、R1…第1の領域、R2…第2の領域、1…プラズマ処理装置、10…チャンバ、14…基板支持器、MC…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19