(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159835
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】インク、インクの製造方法、印刷方法、及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
C09D 11/102 20140101AFI20241031BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20241031BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241031BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C09D11/102
C09D11/30
B41J2/01 501
B41M5/00 120
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024138515
(22)【出願日】2024-08-20
(62)【分割の表示】P 2019193658の分割
【原出願日】2019-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2019011633
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019015750
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】後藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】田中 彩加
(72)【発明者】
【氏名】坂口 裕美
(57)【要約】
【課題】定着性と通液性を両立するインク、且つ、画像濃度が高く、通液性、吐出安定性に優れたインクを提供すること。
【解決手段】水、有機溶剤及びポリウレタン樹脂粒子を含むインクにおいて、前記インクは、下記一般式(I)で示される構造を有する環状エステルを含み、前記インクを常温環境(25±5℃)で1ヶ月間静置保管した後に、前記環状エステルの粒径が1μm以上の結晶の含有率が、インク全体の4ppm未満であるインク。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、有機溶剤及びポリウレタン樹脂粒子を含むインクにおいて、前記インクは、下記一般式(I)で示される構造を有する環状エステルを含み、前記インクを常温環境(25±5℃)で1ヶ月間静置保管した後に、前記環状エステルの粒径が1μm以上の結晶の含有率が、インク全体の4ppm未満であるインク。
【化1】
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂が、前記一般式(I)で示される構造を有するポリウレタン樹脂を含有する請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記インクは、着色剤を含む請求項1または2に記載のインク。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂粒子の固形分含有量がインク中3質量%以上であり、且つ、着色剤とポリウレタン樹脂粒子との固形分比率が1.0:(2.0~11.0)である請求項3に記載のインク。
【請求項5】
前記着色剤が顔料である請求項3又は4に記載のインク。
【請求項6】
前記有機溶剤として、ジオール化合物及び溶解度パラメーター(SP値)が8.9~12.0の有機溶剤を含有する請求項1~5のいずれかに記載のインク。
【請求項7】
前記インクは、pH8.5以上である請求項1~6のいずれかに記載のインク。
【請求項8】
前記インク中に強塩基性化合物を含有させた請求項7に記載のインク。
【請求項9】
前記強塩基性化合物が水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである請求項8に記載のインク。
【請求項10】
前記インクが、更に、界面活性剤としてポリエーテル変性シロキサン化合物を含む請求項1~9のいずれかに記載のインク。
【請求項11】
水、有機溶剤及びポリウレタン樹脂粒子を含むインクの製造方法において、水、有機溶剤及びポリウレタン樹脂粒子を混合する工程と、前記工程により得られた混合物を40℃以上70℃未満で6時間以上加温する工程とを有する請求項1~10のいずれかに記載のインクの製造方法。
【請求項12】
インクが更に着色剤を含み、水、有機溶剤、ポリウレタン樹脂粒子、及び着色剤を混合する工程と、前記工程により得られた混合物を40℃以上70℃未満で6時間以上加温する工程とを有する請求項11に記載のインクの製造方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれかに記載のインクを基材上に付着させて印刷する工程を含む印刷方法。
【請求項14】
前記インクを基材上に付着させて印刷する工程が、前記インクを吐出するノズルプレートを有するインク吐出ヘッドから前記インクを吐出して前記基材上に付着させる工程であり、
前記インクは、水、有機溶剤、ポリウレタン樹脂粒子、及び下記一般式(I)で示される構造を有する環状エステルを含み、常温環境(25±5℃)で1ヶ月間静置保管した後に、前記環状エステルの粒径が1μm以上の結晶の含有率が、インク全体の4ppm未満であり、前記ノズルプレートに対する後退接触角が35°以上である、請求項13に記載の印刷方法。
【化1】
【請求項15】
請求項1~10のいずれかに記載のインクを収容するインクカートリッジと、インクを吐出する吐出手段とを有する印刷装置。
【請求項16】
前記インクカートリッジからインクを吐出する吐出手段までのインク流路間にフィルターを有する請求項15に記載の印刷装置。
【請求項17】
前記インクを吐出する吐出手段が、前記インクを吐出するノズルプレートを有するインク吐出ヘッドであり、前記ノズルプレートに対する前記インクの後退接触角が35°以上である請求項15又は16に記載の印刷装置。
【請求項18】
前記ノズルプレートは撥インク膜を有し、該ノズルプレートの撥インク膜が、含フッ素アクリレートエステル重合体を含む請求項17に記載の印刷装置。
【請求項19】
前記含フッ素アクリレートエステル重合体が、下記一般式(II)で表される化合物及び下記一般式(III)で表される化合物の少なくとも一方を重合して得られる重合体を含む請求項18に記載の印刷装置。
【化2】
【化3】
ただし、前記一般式(II)及び(III)中、Xは、水素原子、炭素数1~21の直鎖状又は分岐状のアルキル基、ハロゲン原子、CFX1X2基(ただし、X1及びX2は、それぞれ独立に水素原子、及びハロゲン原子のいずれかである)、シアノ基、炭素数1~21の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基、置換若しくは非置換のベンジル基、及び置換若しくは非置換のフェニル基のいずれかであり、R
1は、炭素数1~18のアルキル基であり、R
2は、炭素数2~6のアルキレン基であり、R
3は、炭素数2~6のアルキレン基であり、Yは、酸基であり、Rfは、炭素数1~21の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基である。mは1~10であり、nは2~90であり、pは1~90であり、qは1~10である。
【請求項20】
前記含フッ素アクリレートエステル重合体が、下記一般式(IV)で表される構造単位及び下記一般式(V)で表される構造単位のうちの少なくとも一方を有する重合体を含む請求項19に記載の印刷装置。
【化4】
【化5】
ただし、前記一般式(IV)及び(V)中、Xは、水素原子、炭素数1~21の直鎖状又は分岐状のアルキル基、ハロゲン原子、CFX1X2基(ただし、X1及びX2は、それぞれ独立に水素原子、及びハロゲン原子のいずれかである)、シアノ基、炭素数1~21の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基、置換若しくは非置換のベンジル基、及び置換若しくは非置換のフェニル基のいずれかであり、R
1は、炭素数1~18のアルキル基であり、R
2は、炭素数2~6のアルキレン基であり、R
3は、炭素数2~6のアルキレン基であり、Yは、酸基であり、Rfは、炭素数1~21の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基である。mは1~10であり、nは2~90であり、pは1~90であり、qは1~10である。
【請求項21】
前記撥インク膜が、主鎖に含フッ素ヘテロ環状構造を有する重合体を含む請求項17~19のいずれか1項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク、インクの製造方法、印刷方法、及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、容易にカラー画像の記録が可能であり、しかもランニングコストが低いなどの理由から、近年、急速に普及してきている。しかし、この方法は、インクと記録媒体との組み合わせによっては文字滲みに代表される画像欠陥が発生し易く、画像品質が大きく低下するという問題を有する。
例えば、サイネージ用非浸透メディア等はインクを吸収しないことから、画像が激しく滲むことや定着しないことが課題になっている。
また、商業印刷用や出版印刷用コート紙のようなコート層材料として炭酸カルシウムやカオリン等のフィラーを用いたコート紙に記録すると、画像が激しく滲んだり、濃度が発現しなくなったりする。
【0003】
そこで、乾燥性、定着性を向上させるため、有機溶剤として疎水性有機溶剤例えばSP値が8.9~12.0の有機溶剤や高蒸気圧の有機溶剤を用い、さらに水分散性樹脂粒子を多く使用する方向にインク組成が変化している。
【0004】
また、サイネージ用非浸透メディアはインク定着性が悪い為、水分散性樹脂粒子の材料を選定する必要があり、また、その添加量が増えている。特に、非浸透メディアのフィルムへのインクの定着性を向上させる為、インク成分として芳香族環を含むポリオール原料から合成されたポリウレタン樹脂粒子を多く用いるケースが増えている。
上記の状況変化により、画像品質は向上するもののインク保存安定性、通液性及び吐出安定性に問題が発生している。
【0005】
また、特許文献1には、疎水性の樹脂媒体の表面に印刷した際の乾燥性や印刷の定着性に優れる上に、樹脂バインダの分散安定性にも優れた水性のインクジェットインクに係る発明が開示されている。そして、請求項1において、特定の構造を有するアミド系溶剤、水性エマルション系ポリマー、及び該ポリマーの架橋剤を含むことが規定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、定着性と通液性とを両立するインクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、次の<1>の発明によって解決される。
<1>水、有機溶剤及びポリウレタン樹脂粒子を含むインクにおいて、前記インクは、下記一般式(I)で示される構造を有する環状エステルを含み、前記インクを常温環境(25±5℃)で1ヶ月間静置保管した後に、前記環状エステルの粒径が1μm以上の結晶の含有率が、インク全体の4ppm未満であるインク。
【化1】
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、定着性と通液性を両立するインクを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の印刷装置の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明のインクを用いる記録装置の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明のインクを収容するメインタンクの斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明で用いられるインク吐出ヘッドの一例を示す分解斜視図である。
【
図5】
図5は、同インク吐出ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図である。
【
図6】
図6は、同インク吐出ヘッドの液室短手方向に沿う断面説明図である。
【
図7】
図7は、インク吐出ヘッドのノズルプレートの平面説明図である。
【
図8】
図8は、
図7に示したノズルプレートの断面説明図である。
【
図9】
図9は、1つのノズル部分の拡大断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、上記本発明<1>について詳しく説明する。また、本発明は次の<1>に係るものであるが、その実施の形態には次の<2>~<21>も含まれるので、これらについても併せて説明する。
<1>
水、有機溶剤及びポリウレタン樹脂粒子を含むインクにおいて、前記インクは、下記一般式(I)で示される構造を有する環状エステルを含み、前記インクを常温環境(25±5℃)で1ヶ月間静置保管した後に、前記環状エステルの粒径が1μm以上の結晶の含有率が、インク全体の4ppm未満であるインク。
【化1】
<2>
前記ポリウレタン樹脂が、前記一般式(I)で示される構造を有するポリウレタン樹脂を含有する上記<1>に記載のインク。
<3>
前記インクは、着色剤を含む上記<1>または<2>に記載のインク。
<4>
前記ポリウレタン樹脂粒子の固形分含有量がインク中3質量%以上であり、且つ、着色剤とポリウレタン樹脂粒子との固形分比率が1.0:(2.0~11.0)である上記<3>に記載のインク。
<5>
前記着色剤が顔料である上記<3>又は<4>に記載のインク。
<6>
前記有機溶剤として、ジオール化合物及び溶解度パラメーター(SP値)が8.9~12.0の有機溶剤を含有する上記<1>~<5>のいずれかに記載のインク。
<7>
前記インクは、pH8.5以上である上記<1>~<6>のいずれかに記載のインク。
<8>
前記インク中に強塩基性化合物を含有させた上記<7>に記載のインク。
<9>
前記強塩基性化合物が水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである上記<8>に記載のインク。
<10>
前記インクが、更に、界面活性剤としてポリエーテル変性シロキサン化合物を含む上記<1>~<9>のいずれかに記載のインク。
<11>
水、有機溶剤及びポリウレタン樹脂粒子を含むインクの製造方法において、水、有機溶剤及びポリウレタン樹脂粒子を混合する工程と、前記工程により得られた混合物を40℃以上70℃未満で6時間以上加温する工程とを有する上記<1>~<10>のいずれかに記載のインクの製造方法。
<12>
インクが更に着色剤を含み、水、有機溶剤、ポリウレタン樹脂粒子、及び着色剤を混合する工程と、前記工程により得られた混合物を40℃以上70℃未満で6時間以上加温する工程とを有する上記<11>に記載のインクの製造方法。
<13>
上記<1>~<10>のいずれかに記載のインクを基材上に付着させて印刷する工程を含む印刷方法。
<14>
前記インクを基材上に付着させて印刷する工程が、前記インクを吐出するノズルプレートを有するインク吐出ヘッドから前記インクを吐出して前記基材上に付着させる工程であり、
前記インクは、水、有機溶剤、ポリウレタン樹脂粒子、及び下記一般式(I)で示される構造を有する環状エステルを含み、常温環境(25±5℃)で1ヶ月間静置保管した後に、前記環状エステルの粒径が1μm以上の結晶の含有率が、インク全体の4ppm未満であり、前記ノズルプレートに対する後退接触角が35°以上である、上記<13>に記載の印刷方法。
【化1】
<15>
上記<1>~<10>のいずれかに記載のインクを収容するインクカートリッジと、インクを吐出する吐出手段とを有する印刷装置。
<16>
前記インクカートリッジからインクを吐出する吐出手段までのインク流路間にフィルターを有する上記<15>に記載の印刷装置。
<17>
前記インクを吐出する吐出手段が、前記インクを吐出するノズルプレートを有するインク吐出ヘッドであり、前記ノズルプレートに対する前記インクの後退接触角が35°以上である上記<15>又は<16>に記載の印刷装置。
<18>
前記ノズルプレートは撥インク膜を有し、該ノズルプレートの撥インク膜が、含フッ素アクリレートエステル重合体を含む上記<17>に記載の印刷装置。
<19>
前記含フッ素アクリレートエステル重合体が、下記一般式(II)で表される化合物及び下記一般式(III)で表される化合物の少なくとも一方を重合して得られる重合体を含む上記<18>に記載の印刷装置。
【化2】
【化3】
ただし、前記一般式(II)及び(III)中、Xは、水素原子、炭素数1~21の直鎖状又は分岐状のアルキル基、ハロゲン原子、CFX1X2基(ただし、X1及びX2は、それぞれ独立に水素原子、及びハロゲン原子のいずれかである)、シアノ基、炭素数1~21の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基、置換若しくは非置換のベンジル基、及び置換若しくは非置換のフェニル基のいずれかであり、R
1は、炭素数1~18のアルキル基であり、R
2は、炭素数2~6のアルキレン基であり、R
3は、炭素数2~6のアルキレン基であり、Yは、酸基であり、Rfは、炭素数1~21の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基である。mは1~10であり、nは2~90であり、pは1~90であり、qは1~10である。
<20>
前記含フッ素アクリレートエステル重合体が、下記一般式(IV)で表される構造単位及び下記一般式(V)で表される構造単位のうちの少なくとも一方を有する重合体を含む上記<19>に記載の印刷装置。
【化4】
【化5】
ただし、前記一般式(IV)及び(V)中、Xは、水素原子、炭素数1~21の直鎖状又は分岐状のアルキル基、ハロゲン原子、CFX1X2基(ただし、X1及びX2は、それぞれ独立に水素原子、及びハロゲン原子のいずれかである)、シアノ基、炭素数1~21の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基、置換若しくは非置換のベンジル基、及び置換若しくは非置換のフェニル基のいずれかであり、R
1は、炭素数1~18のアルキル基であり、R
2は、炭素数2~6のアルキレン基であり、R
3は、炭素数2~6のアルキレン基であり、Yは、酸基であり、Rfは、炭素数1~21の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基である。mは1~10であり、nは2~90であり、pは1~90であり、qは1~10である。
<21>
前記撥インク膜が、主鎖に含フッ素ヘテロ環状構造を有する重合体を含む上記<18>~<20>のいずれかに記載の印刷装置。
【0011】
(インク)
本発明のインクは、水、有機溶剤及びポリウレタン樹脂粒子を含むインクにおいて、前記インクは、下記一般式(I)で示される構造を有する環状エステルを含み、前記インクを常温環境(25±5℃)で1ヶ月間静置保管した後に、前記環状エステルの粒径が1μm以上の結晶の含有率が、インク全体の4ppm未満であるインクである。
【化1】
【0012】
特に、サイネージ用非浸透メディアはインク定着性が悪い為、水分散性樹脂粒子の材料を選定したり、添加量を増やす必要があり、さらに非浸透メディアのフィルムへのインクの定着性を向上させる為、インク成分として下記一般式(I)で示される構造を有する芳香族環を含むポリオール原料から合成されたポリウレタン樹脂粒子を多く用いるケースが増えている。
【化1】
【0013】
しかし、ポリウレタン樹脂粒子の原料に用いられる一般式(I)で示される構造を有する芳香族環を含むポリオール原料には、副生成物として水及び水溶性溶剤に溶解し難い一般式(I)で示される構造を有する環状エステルが含有されており、これが高粘度ポリオール中に含まれている為、取り除けない状態でポリウレタン樹脂粒子となる。
上記のポリウレタン樹脂粒子を用いてインクを製造し、インクをインクパックに入れ常温(25±5℃)で1ヶ月間以上静置保管させた場合、ポリウレタン樹脂粒子より一般式(I)で示される構造を有する環状エステル化合物が溶出し、インク中に一般式(I)で示される構造を有する環状エステル結晶が析出してくる。インク中に前記環状エステル結晶が析出することで通液性が悪化し、さらに吐出も不安定になることが判った。
【0014】
インクに含まれる一般式(I)で示される構造を有する環状エステルとしては、ポリウレタン樹脂の製造に用いる原材料や、原材料の副生成物が含まれると考えられ、例えば、下記構造式Aの環状エステルが挙げられる。
【化6】
上記構造式(A)中、Rは、アルキレンを表し、通常炭素数3~10のアルキレンである。
精製やインクの製造段階で除去されない原材料や副生成物が、インクに含まれることとなり、時間の経過に伴い、インク中に一般式(I)で示される構造を有する環状エステルが結晶化することがわかった。本発明者らはインク中の一般式(I)で示される構造を有する環状エステルの粒径が1μm以上の結晶の含有率が、インク全体の4ppm未満であるインクとすることで、本発明の課題を達成できることを見出した。
また、本発明によれば、サイネージ用非浸透メディア及び商業印刷用紙に対しても定着性、乾燥性が高く、且つ、画像濃度高く、通液性、吐出安定性も良く、保存安定性に優れたインクを提供できる。
【0015】
一般式(I)で示される構造を有する環状エステルは、通常水に不溶である。ウレタン樹脂粒子の水分散体における水分中に、一般式(I)で示される構造を有する環状エステルが確認されない場合であっても、ウレタン樹脂粒子の水分散体と、有機溶剤等の、その他の成分を混合してインクを製造した場合、インク中に、一般式(I)で示される構造を有する環状エステルの結晶が析出することがある。ウレタン樹脂粒子に含まれていた一般式(I)で示される構造を有する環状エステルが、有機溶剤と混合したことで溶出、結晶化するものと推定される。
【0016】
常温(25±5℃)で1ヶ月間以上静置保管させた場合、インク中に前記環状エステルの粒径が1μm以上の結晶が、インク全体の4ppm以上含まれていると通液性に実用上問題が生じ、最終的に吐出不良が生じることが判った。また、前記環状エステルの粒径が1μm以上の結晶が、インク全体の4ppm未満であれば実用上問題ないことも確認された。ここで、インク全体の4ppm未満であるとは、インク全体の質量に対する結晶の含有率が、0.0004質量%未満であることを表す。
また、静置保管とは、意図的に振動を与えることなく保管することを意味する。
さらに、インク中に一般式(I)で示される構造を有する環状エステル化合物を含むインクを40℃以上70℃未満の温度で6時間以上加温することで、前記環状エステル結晶の析出量が減少する。また、インク中に析出していた前記環状エステル結晶が消失することも見出した。
【0017】
しかし、環状エステル結晶の析出量が減少するメカニズム及び環状エステル結晶が消失するメカニズムは明確ではない。40℃加温の場合は、40℃で2週間以上加温することで前記環状エステル結晶の析出が減少する。また、68℃加温の場合は、68℃で6時間加温することで前記環状エステル結晶の析出が無くなり、インク中に析出していた環状エステル結晶も消失する。
加温時間としては、40℃加温の場合は2週間から1ヶ月間が好ましく、68℃加温の場合は、6時間~12時間が好ましい。
40℃未満の加温では環状エステル結晶の析出減少効果が全くない。また、70℃以上の加温ではインク物性が変化したり、インク液分離が生じることがある。
特に好ましくは、55℃~65℃加温で12時間~24時間の保管が効果も大きく、インクに対するダメージが少ない。
【0018】
本発明においては、析出した結晶は、粒子保持能1μmの濾紙(例えば、桐山ロート用濾紙No.5C)を使用してろ過し、ろ過前の濾紙質量とろ過後保持された結晶と濾紙質量の秤量を行い差分をとることで、一般式(I)で示される構造を有する環状エステルの結晶の定量化をしている。従って、ろ過後保持された結晶は、粒径が1μm以上のものであり、一般式(I)で示される構造を有する環状エステルの粒径が1μm以上の結晶が、インク全体の4ppm未満である。
【0019】
前記環状エステル結晶の減少及び消失するメカニズムとしては推定ではあるが、インク中に含まれるpH調整剤(塩基性化合物)の存在中で加温されることで、前記環状エステル化合物が加水分解して、さらに開環したカルボキシル基に塩基化合物が付加して、水溶性化合物となり、最終的にインク中の前記環状エステル結晶の減少及び消失すると考えられる。
上記の状況により、画像品質も向上し、インク保存安定性、通液性及び吐出安定性も良好となった。
【0020】
尚、インクが前記一般式(I)で示される構造を有する環状エステルを含むことは、インク中に析出した結晶をインクから分離し、GC-MS分析及びLC-MS分析+C13-NMR+H1-NMR+FT-IRで定性することができる。
【0021】
また、サイネージ用非浸透メディア及び商業印刷用紙へのインクの濡れ性を充分確保する為、前記インクの25℃最大泡圧法による表面寿命15msecでの動的表面張力が34.0mN/m以下に下げ、かつ前記インクの25℃での静的表面張力を20.0mN/m以上に保つことが好ましい。
上記の状況により、画像品質も向上し、インク保存安定性、通液性及び吐出安定性も良好となった。
【0022】
前記インクの最大泡圧法による表面寿命15msecでの動的表面張力は、例えば、SITA DynoTester(SITA社製)を用いて、25℃で測定することができる。
前記インクの静的表面張力は、例えば、自動表面張力計(DY-300、協和界面科学社製)を用いて、25℃で測定することができる。
前記インクにおける前記動的表面張力と前記静的表面張力とのバランスの最適化を図り、前記ノズルプレートに対する前記インクの後退接触角を35°以上にすることにより、インク吐出ヘッドのノズルプレートの撥インク膜に濡れ難くなり、吐出安定性が確保でき、連続吐出においてノズル抜けが生じない極めて安定かつ理想的な印刷装置となる。
【0023】
前記ノズルプレートに対する前記インクの後退接触角は、35°以上であり、35°以上80°以下が好ましく、40°以上70°以下がより好ましい。
前記後退接触角が、35°以上であれば、インク吐出ヘッドのインク室内壁面にインクが付着しても再度はじくことが容易となる。なお、前記後退接触角の上限は、後退接触角が大きくなればなるほど濡れ難いことになるので、濡れ性に関し特に限定されるものではないが、記録メディアへの濡れ性及び浸透性等を考慮すると80°を超えないようにすること(80°以下)が好ましい。
前記後退接触角は、例えば、自動接触角測定装置_拡張/収縮法を用いて測定できる。
前記自動接触角測定装置としては、例えば、接触角計DMo-501(協和界面科学社製)などが挙げられる。
前記後退接触角は、例えば、本発明に用いるノズルプレートを用い、その外側表面に対して、インクをシリンジから2μL押し出し、前記装置を用いて、収縮法によって測定することができる。本発明における後退接触角は、測定温度25℃での値を意味する。
【0024】
前記インクの25℃での静的表面張力Bは、20.0mN/m以上30.0mN/m以下が好ましい。
前記静的表面張力が20.0mN/m以上30.0mN/m以下であると、インクのサイネージ用非浸透メディア及び商業印刷用紙へ充分インクの濡れ性を高めることができ、コックリング及びカールの低減効果が高くなり、普通紙印字でも浸透乾燥が良好となる。
【0025】
次いで、インク及びインクの製造方法の詳細について説明する。
<インク>
-有機溶剤-
本発明のインクは、有機溶剤として、溶解度パラメーター(SP値)が8.9~12.0の有機溶剤(以下、「有機溶剤X」という)を少なくとも1種含有することが好ましい。これにより、記録媒体への濡れ性が向上し、塗工層を持つ吸インク性の悪いコート紙などの商業印刷用紙にもインク成分が浸透し、ビーディングを抑制することが可能となる。また、非浸透メディアでも濡れ易くなる。
また後述するように本発明のインクは有機溶剤としてジオールを含むことが好ましいが、ジオール化合物が溶解度パラメーター(SP値)が8.9~12.0の有機溶剤を兼ねても良い。これにより、記録媒体への濡れ性が向上し、塗工層を持つ吸インク性の悪いコート紙などの商業印刷用紙にもインク成分が浸透し、ビーディングを抑制することが可能となる。また、非浸透メディアでも濡れ易くなる。
【0026】
SP値が8.9以上の有機溶剤は、一般に水への溶解性が高く分離が発生しにくいため、本発明のような水性インクには好適である。また、SP値が12.0以下の有機溶剤は、乾燥性やビーディングが良くなる。
上記SP値はヒルデブラント(Hildebrand)によって導入された正則溶液論により定義された値であり、二成分系溶液の溶解度の目安となる。また、本発明におけるSP値は、Fedors法で算出した値である。正則溶液理論における凝集エネルギー密度の平方根で示され、単位は(J/cm3)0.5である。一般に普及している簡易ソフトで算出できる。
【0027】
前記有機溶剤Xとしては水溶性のものが好ましく、特に下記一般式(VI)のアミド化合物又は一般式(VII)のオキセタン化合物が好ましい。
【0028】
【化7】
(式中Rは、炭素数1~6のアルキル基を示す。)
【0029】
【化8】
(式中R
1は、炭素数1~2のアルキル基を示す。)
【0030】
前記一般式(VI)で示されるアミド化合物の例としては、次の式(1)~式(4)の化合物が挙げられる。
【化9】
【0031】
また、前記一般式(VII)で示されるオキセタン化合物の例としては、次の式(5)~式(6)の化合物が挙げられる。
【化10】
【0032】
有機溶剤Xの含有量は、インク全体の3質量%以上が好ましく、更に好ましくは5~20質量%である。含有量が5質量%以上であれば、商業印刷用紙にもインク成分が浸透し、ビーディングを抑制することが可能となり、非浸透メディアに濡れ易くなる効果が得られる。また、含有量が20質量%以下であれば、インクの粘度上昇により吐出安定性が悪化するようなことはない。
【0033】
更に、本発明では、有機溶剤として100℃の環境下で蒸気圧が50mmHg以上を示すグリコールエーテル化合物(化合物Z)を含有させることにより乾燥性が良好となり、商業印刷用紙上でも乾燥性を高くすることが可能となる。また、100℃の温風乾燥直後に画像部が搬送ローラーと接触しても画像が転写せず、高速生産性が確保される。
化合物Zとしては高純水に溶解するものが好ましい。その例としては、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(bp150℃,蒸気圧107mmHg)、プロピレングリコールモノエチルルエーテル(bp133℃,蒸気圧252mmHg)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(bp120℃,蒸気圧360mmHg)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(bp170℃,蒸気圧59mmHg)、3-メトキシ-1-ブタノール(bp161℃,蒸気圧76mmHg)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(bp174℃,蒸気圧50mmHg)が挙げられる。
【0034】
インク中の有機溶剤Xと化合物Zの含有量比(質量比)は、1:1~8:1とすることが好ましい。より好ましくは3:1~5:1である。この比が1:1以上の場合、即ち、有機溶剤Xが化合物Zよりも多い場合には、乾燥性が良くなりすぎることがなく、インクジェットヘッド内も乾燥してしまい吐出安定性に問題を生じることがない。また、比が8:1以下の場合には、有機溶剤Xが多すぎることがなく、商業印刷用紙上での乾燥性が向上し生産性が向上する。
有機溶剤X、化合物Zを含むインク中の有機溶剤の合計含有量は、インク全体の5~30質量%とすることが好ましい。5質量%以上であれば、商業印刷用紙上でのビーディング抑制効果が減少することはない。また、30質量%以下であれば、インク粘度が著しく高くなって吐出安定性に問題が生じるようなことはない。
【0035】
また、吐出安定性、インク保存安定性のため、有機溶剤として、多価アルコール類を含有することが好ましい。具体的には、ジエチレングリコール(bp245℃)、トリエチレングリコール(bp285℃)、テトラエチレングリコール(bp324~330℃)、1,3-ブタンジオール(bp203~204℃)、グリセリン(bp290℃)、ジグリセリン(bp270℃/20hPa)、1,2,3-ブタントリオール(bp175℃/33hPa)、1,2,4-ブタントリオール(bp190~191℃/24hPa、)ジプロピレングリコール(bp232℃)、1,5-ペンタンジオール(bp242℃)、プロピレングリコール(bp187℃)、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(bp197℃)、エチレングリコール(bp196~198℃)、トリプロピレングリコール(bp267℃)、ヘキシレングリコール(bp197℃)、ポリエチレングリコール(粘調液体~固体)、1,6-ヘキサンジオール(bp253~260℃)、1,2,6-ヘキサントリオール(bp178℃)、トリメチロールエタン(固体、mp199~201℃)、トリメチロールプロパン(固体、mp61℃)などが挙げられる。
【0036】
有機溶剤としては、炭素数8~11の非湿潤剤性ポリオール化合物又はグリコールエーテル化合物を少なくとも1種含有することが好ましい。ポリオール化合物としては、ジオール化合物を含有することが好ましい。ここで、非湿潤剤性とは、25℃の水中において0.2~5.0質量%の間の溶解度を有することを意味する。これらの化合物の中でも、下記一般式(VIII)で表される1,3-ジオール化合物が好ましく、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール[溶解度:4.2%(25℃)]、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール[溶解度:2.0%(25℃)]が特に好ましい。
【化11】
(上記式中、R'はメチル基又はエチル基、R''は水素又はメチル基、R'''はエチル基又はプロピル基である。)
【0037】
その他の非湿潤剤性ポリオール化合物としては、例えば、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、5-ヘキセン-1,2-ジオールなどの脂肪族ジオールが挙げられる。
炭素数8~11の非湿潤剤性ポリオール化合物及びグリコールエーテル化合物のインク中の含有量は、0.5~4質量%が好ましく、1~3質量%がより好ましい。0.5質量%以上であれば、インクの浸透性効果が得られ、画像品質が向上する。また、4質量%以下であれば、インクに十分に溶解するので、分離したりインク初期粘度が高くなる等の不具合は生じない。
【0038】
-水分散性樹脂粒子-
水分散性樹脂粒子としては、造膜性(画像形成性)に優れ、かつ耐溶剤性、高耐水性、高耐候性を備えたものが、高耐水性で高画像濃度(高発色性)の画像記録に有用であり、例えば、縮合系合成樹脂、付加系合成樹脂、天然高分子化合物などが挙げられる。本発明では、ポリウレタン樹脂粒子を含有する。
また、サイネージ用非浸透メディアはインク定着性が悪い為、水分散性樹脂粒子の材料を選定したり、添加量を増やす必要がある。さらに非浸透メディアのフィルムに定着性を向上させる為、一般式(I)で示される構造を有する芳香族環を含むポリオール原料から合成されたポリウレタン樹脂粒子が多く用いられている。
【化1】
【0039】
前記一般式(I)で示される構造を有する芳香族環を含むポリオール原料としては、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。原材料としてテレフタル酸、イソフタル酸を用いると、環状エステル化合物が生成する。前記二種類の原材料を用いた場合は、二種類のフタル酸が混合した環状エステルが生成することが、GC-MSで確認されている。
本発明では、ポリウレタン樹脂粒子は、ポリウレタン樹脂粒子の原料として一般式(I)で示される構造を有する芳香族環を含むポリオール原料を用い、前記一般式(I)で示される構造を有するポリウレタン樹脂粒子を含有することが好ましい。
前記一般式(I)で示される構造を有するポリウレタン樹脂粒子における前記一般式(I)で示される構造を有する芳香族環を含むポリオール原料の割合は、ポリオール中の半分程度であり、また、ポリウレタン樹脂中、1~3割程度であることが好ましい。前記ポリオール原料の割合が前記の範囲であると、耐アルコール性に優れる。
一般式(I)で示される構造を有するポリウレタン樹脂粒子の含有率の好ましい範囲は、樹脂固形分で2.0~20.0質量%であり、より好ましくは2.8~15.0質量%である。
【0040】
その他の縮合系合成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、アクリル-シリコーン樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。前記付加系合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、不飽和カルボン酸系樹脂などが挙げられる。前記天然高分子化合物としては、例えば、セルロース類、ロジン類、天然ゴムなどが挙げられる。
これらの中でも、インクの定着性を考慮するとポリウレタン樹脂微粒子が好ましい。また、前記水分散性樹脂を2種類以上併用してもよい。
【0041】
水分散性樹脂としては、樹脂自身が親水基を持ち自己分散性を持つもの、樹脂自身は分散性を持たず界面活性剤や親水基を持つ樹脂により分散性を付与したものが使用できる。これらの中でも、ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂のアイオノマーや不飽和単量体の乳化及び懸濁重合によって得られた樹脂粒子のエマルションが最適である。
不飽和単量体の乳化重合の場合には、不飽和単量体、重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、キレート剤、及びpH調整剤などを添加した水中で反応させて樹脂エマルションを得るため、容易に水分散性樹脂を得ることができ、樹脂構成を替えやすく、目的の性質を作りやすい。
【0042】
水分散性樹脂は、強アルカリ性、強酸性下では分散破壊や加水分解などの分子鎖の断裂が引き起こされるため、pHは4~12が好ましく、特に水分散性着色剤との混和性の点から、7~11がより好ましく、8~10.5が更に好ましい。
【0043】
また、水分散性樹脂は、水分散性着色剤をメディアに定着させる働きを有し、常温以上で被膜化して着色剤の定着性を向上させる機能を有する。そのため、水分散性樹脂の最低造膜温度(MFT)は100℃以下であることが好ましい。また、水分散性樹脂のガラス転移温度が-40℃以下になると、樹脂皮膜の粘稠性が強くなり印字物にタックが生じるため、ガラス転移温度は-30℃以上であることが好ましい。
水分散性樹脂のインク中の含有量は、固形分で、0.5~20質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましい。
しかし、サイネージ用非浸透メディアや商用印刷用紙への着色剤の基材定着性を充分考慮するとインク中にポリウレタン樹脂粒子を固形分含有量で3質量%以上含有し、且つ、着色剤とポリウレタン樹脂粒子との固形分比率は1.0:(2.0~12.0)が好ましく、1.0:(2.0~11.0)が特に好ましい。前記ポリウレタン樹脂粒子の含有量は、インクに含まれる固形分であるポリウレタン樹脂粒子の総量である。
【0044】
-着色剤-
本発明のインクは、着色剤を含有しないクリアインクとすることも可能であるが、着色剤を含有するインクとすることもできる。着色剤は、顔料であることが好ましい。
着色剤には、界面活性剤で顔料を分散した界面活性剤分散顔料、樹脂で顔料を分散した樹脂分散顔料、顔料の表面を樹脂で被覆した樹脂被覆分散顔料及び顔料表面に親水基を設けた自己分散顔料などがあるが、水分散性のものが好ましい。中でも前記樹脂被覆顔料又は自己分散顔料であって、顔料表面に少なくとも一つの親水基を有するものが好ましい。
このような親水基としては、-COOM、-SO3M、-PO3HM、-PO3M2、-CONM2、-SO3NM2、-NH-C6H4-COOM、-NH-C6H4-SO3M、-NH-C6H4-PO3HM、-NH-C6H4-PO3M2、-NH-C6H4-CONM2、-NH-C6H4-SO3NM2が挙げられる。これらの親水基は公知の方法で導入することができる。
【0045】
また、上記親水基中のカウンターイオンMは四級アンモニムイオンが好ましい。その具体例としては、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、ベンジルトリメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリエチルアンモニウムイオン及びテトラヘキシルアンモニウムイオンが挙げられ、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン及びベンジルトリメチルアンモニウムイオンが好ましく、テトラブチルアンモニウムイオンが特に好ましい。
上記顔料を用いたインクは、特に経時保存安定性が高く、水分蒸発時の粘度上昇が抑制される。これは、水リッチなインクから水分が蒸発し、有機溶剤リッチとなった際にも、四級アンモニウムイオンを有する親水基により、顔料の分散が安定に保てるためであると推測される。
【0046】
前記親水基を有する顔料以外の着色剤としては、ポリマー微粒子に顔料を含有させたポリマーエマルションが好ましい。顔料はポリマー微粒子中に封入されていても、ポリマー微粒子の表面に吸着されていてもよい。この場合、全ての顔料が封入又は吸着されている必要はなく、一部がエマルション中に分散していてもよい。ポリマー微粒子用のポリマーとしてはビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマーなどが挙げられるが、特に好ましいのは、ビニル系ポリマー及びポリエステル系ポリマーである。
その具体例としては、特開2000-53897号公報、特開2001-139849号公報に開示されたものが挙げられる。
【0047】
また、一般的な有機顔料、又は無機顔料の粒子を有機顔料若しくはカーボンブラックで被覆した複合顔料を用いることもできる。前記複合顔料は、無機顔料の粒子の存在下で有機顔料を析出させる方法や、無機顔料と有機顔料を機械的に混合摩砕するメカノケミカル法等により作製することができる。更に必要に応じて、ポリシロキサン、アルキルシランから生成されるオルガノシラン化合物の層を、無機顔料と有機顔料の中間に設けることにより両者の接着性を向上させることもできる。
前記無機顔料粒子と、色材の有機顔料若しくはカーボンブラックの質量比は、3:1~1:3が好ましく、3:2~1:2がより好ましい。色材の量が上記の範囲であると発色性や着色力が低下することがなく、透明性や色調が悪くなることがない。
上記複合顔料としては、戸田工業社製のシリカ/カーボンブラック複合材料、シリカ/フタロシアニンPB15:3複合材料、シリカ/ジスアゾイエロー複合材料、シリカ/キナクリドンPR122複合材料などが、一次平均粒径が小さいので好適である。
【0048】
ここで、20nmの一次粒子径を持つ無機顔料粒子を等量の有機顔料で被覆した場合、この顔料の一次粒子径は、25nm程度になる。これに適当な分散剤を用いて一次粒子まで分散できれば、分散粒子径が25nmの非常に微細な顔料分散インクを作製することができる。前記複合顔料は、表面の有機顔料が分散に寄与するだけでなく、厚み約2.5nmの有機顔料の薄層を通して中心にある無機顔料の性質も現れてくるため、両者を同時に分散安定化できる顔料分散剤の選択も重要である。
【0049】
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラックなどが挙げられる。これらの中でもカーボンブラックが特に好ましく、例えばコンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたチャンネルブラック、ファーネスブラック、ガスブラック、ランプブラックなどが挙げられる。
【0050】
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などが好ましい。なお、前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
【0051】
前記有機顔料の例としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、408、109、110、117、120、128、139、150、151、155、153、180、183、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63;C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、などが挙げられる。
【0052】
使用する顔料のBET比表面積は、好ましくは約10~約1500m2/g、より好ましくは約20~約600m2/g、更に好ましくは約50~約300m2/gである。
所望の比表面積のものの利用が容易ではない場合には、顔料を比較的小さい粒径にするため、一般的なサイズ減少又は粉砕処理(例えば、ボールミル粉砕、ジェットミル粉砕、超音波処理)を行えば良い。
前記水分散性着色剤のメジアン径(D50)は、インク中において10~200nmが好ましい。
前記水分散性着色剤のインク中の含有量は、固形分で1~15質量%が好ましく、1.5~10質量%がより好ましい。含有量が1質量%以上であれば、インクの発色性及び画像濃度が良くなり、15質量%以下であれば、インクが増粘して吐出性が悪くなることはなく、更に経済的にも好ましい。
なお、本発明では、色調調整の目的で染料を併用しても構わないが、耐候性を劣化させない範囲内で使用する必要がある。
【0053】
-界面活性剤-
本発明では、界面活性剤としてポリエーテル変性シロキサン化合物を用いることが好ましい。これにより、ヘッドノズルプレート撥インク層に濡れ難いインクとなり、インクのノズル付着による吐出不良を防ぎ、吐出安定性が向上する。また、特に問題になりやすいノズル撥インク層面にインクが付着し難く、吐出不良が生じ難いインクとなる。
中でも、下記一般式(IX)~一般式(XII)で示されるものが好ましく、特に、水分散性着色剤の種類や有機溶剤の組合せによって分散安定性を損なわず、動的表面張力が低く、浸透性、レベリング性の高いものが好ましい。
これらの界面活性剤は、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
【化12】
(上記式中、Rは、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、mは0~23の整数、nは1~10の整数、aは1~23の整数、bは0~23の整数を表す。)
【0055】
上記一般式(IX)で示される化合物の例としては、次の式(7)~式(14)の化合物が挙げられる。
【化13】
【0056】
【0057】
【化15】
(上記式中、R
2及びR
3は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、mは1~8の整数、c及びdは1~10の整数を表す。)
【0058】
上記一般式(X)で示される化合物の例としては、次の式(15)の化合物が挙げられる。
【化16】
【0059】
【化17】
(上記式中、R
4は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、eは1~8の整数を表す。)
【0060】
上記一般式(XI)で示される化合物の例としては、次の式(16)の化合物が挙げられる。
【化18】
【0061】
【化19】
〔上記式中、R
5は、下記一般式(A)のポリエーテル基を表し、fは1~8の整数を表す。〕
【0062】
【化20】
(上記式中、R
6は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、gは0~23の整数、hは0~23の整数を表す。但し、g及びhが同時に0の場合を除く。)
【0063】
上記一般式(XII)で示される化合物の例としては、次の式(17)~式(19)の化合物が挙げられる。
【化21】
【0064】
更に、上記化合物と同等の効果を示す市販品のポリエーテル変性シロキサン化合物界面活性剤としては、TORAY ダウ・コーニング社製の、71ADDITIVE,74ADDITIVE,57ADDITIVE,8029ADDITIVE,8054ADDITIVE,8211ADDITIVE,8019ADDITIVE,8526ADDITIVE,FZ-2123,FZ-2191、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の、TSF4440,TSF4441,TSF4445,TSF4446,TSF4450,TSF4452,TSF4460、日信化学工業社製の、シルフェイスSAG002,シルフェイスSAG003,シルフェイスSAG005,シルフェイスSAG503A,シルフェイスSAG008,シルフェイスSJM003、エボニック社製の、TEGO_Wet_KL245,TEGO_Wet_250,TEGO_Wet_260,TEGO_Wet_265,TEGO_Wet_270,TEGO_Wet_280、ビックケミー・ジャパン社製の、BYK-345,BYK-347,BYK-348,BYK-375,BYK-377等が挙げられる。
【0065】
また、必要に応じて、上記ポリエーテル変性シロキサン化合物界面活性剤と、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール又はアセチレンアルコール系界面活性剤を併用しても良い。
界面活性剤のインク中の含有量は、0.001~5質量%が好ましく、0.5~3質量%がより好ましい。0.001質量%以上であれば、界面活性剤の添加効果が得られる。
しかし、5質量を超えると添加効果が飽和するため増量しても意味がない。
【0066】
-その他の成分-
本発明のインクには、前記成分の他に、必要に応じて、公知の種々の添加剤を加えても良い。その例としては、浸透剤、抑泡剤(消泡剤)、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤などが挙げられる。
【0067】
-抑泡剤-
抑泡剤は、インクに微量添加することによって、その発泡を抑えるために用いられる。
ここで、発泡とは液体が薄い膜になって空気を包むことである。この泡の生成にはインクの表面張力や粘度等の特性が関与する。即ち、水のように表面張力が高い液体は、液体の表面積をできるだけ小さくしようとする力が働くため発泡し難い。これに対し、高粘度で高浸透性のインクは、表面張力が低いために発泡し易く、溶液の粘性により生成した泡が維持されやすく消泡し難い。
【0068】
通常、抑泡剤は、泡膜の表面張力を局部的に低下させて泡を破壊するか、発泡液に不溶な抑泡剤を発泡液表面に点在させることにより泡を破壊する。インクに界面活性剤として表面張力を低下させる働きの極めて強いポリエーテル変性シロキサン化合物界面活性剤を用いた場合には、前者の機構による抑泡剤を用いても泡膜の表面張力を局部的に低下させることができない。そこで、後者の発泡液に不溶な抑泡剤を用いるが、この場合、溶液に不溶な抑泡剤によりインクの安定性が低下する。
これに対し、下記一般式(XIII)の抑泡剤は、表面張力を低下させる働きがポリエーテル変性シロキサン化合物界面活性剤ほど強くないものの、該界面活性剤に対する相溶性が高い。このため、抑泡剤が効率的に泡膜に取り込まれ、前記界面活性剤と抑泡剤との表面張力の違いにより泡膜の表面が局部的に不均衡な状態となり、泡が破壊すると考えられる。
【0069】
【化22】
(上記式中、R
7及びR
8は、それぞれ独立に炭素原子3~6個を有するアルキル基、R
9及びR
10は、それぞれ独立に炭素原子1~2個を有するアルキル基を表し、nは1~6の整数を表す。)
【0070】
前記一般式(XIII)で表される化合物の好ましい例としては、2,4,7,9-テトラメチルデカン-4,7-ジオール、2,5,8,11-テトラメチルドデカン-5,8-ジオールが挙げられる。抑泡効果とインクへの相溶性が高いことから、2,5,8,11-テトラメチルドデカン-5,8-ジオールが特に好ましい。
抑泡剤のインク中の含有量は、0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましい。前記含有量が0.01質量%であれば、泡抑効果が得られ、10質量%以下であれば、抑泡効果が頭打ちになったり、粘度、粒径等のインク物性に悪影響が出るようなことはない。
【0071】
-pH調整剤-
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずにpHを7~11に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
その例としては、アルコールアミン類、アルカリ金属元素の水酸化物、アンモニウムの水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、などが挙げられる。
pHが7~11の範囲を外れると、インクジェットのヘッドやインク供給ユニットを溶かし出す量が大きく、インクの変質や漏洩、吐出不良などの不具合が生じることがある。
前記アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-アミノ-2-エチル-1,3プロパンジオール等が挙げられる。
前記アルカリ金属元素の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
前記アンモニウムの水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物などが挙げられる。
前記ホスホニウム水酸化物としては、例えば、第4級ホスホニウム水酸化物などが挙げられる。
前記アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
pH調整剤としては、強塩基性化合物を用いることが好ましい。
【0072】
インク中に、強塩基性化合物を含有させることで、一般式(I)で示される構造を有する環状エステルの結晶の析出を抑制することができる。これにより、インクの定着性が向上し、また、通液性を高めることができる。インクジェット方式でインクを吐出する際も、不吐出を回避でき、安定した印刷が可能となる。
一般式(I)で示される構造を有する環状エステル化合物に強塩基化合物が作用し、加水分解が生じ、結晶析出を抑制する効果が得られるものと推定される。
強塩基化合物は特に限定は無いが、効果的に結晶化を抑制する点から、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを用いることが好ましい。
インク中に含有させる強塩基化合物の含有率は、効果的に結晶化を抑制する点から、0.05質量%以上0.24質量%以下とすることが好ましい。
また、pH調整剤として、2-アミノ-2-エチル-1,3プロパンジオールを用いることも好ましい。
【0073】
-防腐防黴剤-
防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、等が挙げられる。
【0074】
-キレート試薬-
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等がある。
【0075】
-防錆剤-
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
【0076】
-酸化防止剤-
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、などが挙げられる。
【0077】
-紫外線吸収剤-
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
【0078】
-インクの製造-
本発明のインクは、水、有機溶剤、ポリウレタン樹脂粒子及び必要に応じて添加する着色剤、及びその他の成分を水性媒体中に分散又は溶解し、更に必要に応じて攪拌混合し混合する工程と、前記工程により得られた混合物を40℃以上70℃未満で6時間以上加温する工程とにより製造することができる。この攪拌混合は、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェイカー、超音波分散機等により行うことができ、攪拌混合は通常の攪拌羽を用いた攪拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等で行うことができる。
【0079】
-インク物性-
本発明のインクの物性には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。
しかし、インクの静的表面張力が20mN/m以上であり、且つ、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時の動的表面張力が34mN/m以下であると、記録媒体に対し十分な濡れ性を確保することができるにも関わらず、インクジェットヘッドのノズルプレートオプツール撥水膜に濡れ難くなり、吐出安定性も確保でき、極めて安定なインクとなるので好ましい。
また、インクの25℃での粘度は5~25mPa・sが好ましく、6~20mPa・sがより好ましい。5mPa・s以上であれば印字濃度や文字品位の向上効果が得られる。
また25mPa・s以下であれば、インク吐出性を確保することができる。
上記粘度は、例えば粘度計(RE-85L、東機産業社製)を用いて、25℃で測定することができる。
また、インク保存安定性を確保するには、pH8~11が好ましく、更に好ましくはpH8.5~11の範囲が好ましい。
【0080】
本発明のインクは、インクジェットヘッドとして、インク流路内のインクを加圧する圧力発生手段として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの(特開平2-51734号公報参照)、あるいは、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させるいわゆるサーマル型のもの(特開昭61-59911号公報参照)、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで,インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電型のもの(特開平6-71882号公報参照)などのいずれのインクジェットヘッドを搭載するプリンタにも良好に使用できる。
また、本発明のインクは、インクカートリッジ等の容器中に収容して使用しても良い。
【0081】
<記録媒体>
本発明のインクを用いて記録を行うことが可能な記録媒体には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷用紙などが挙げられる。しかし、本発明のインクは、サイネージ用非浸透メディア及び商業印刷用紙に対しても他の用紙と同様に良好な印刷が可能である点で、非常に優れたものである。
本発明のインクを用いて形成された画像を有する印刷物は、高画質で滲みがなく、経時安定性に優れ、各種の印字乃至画像が記録された資料等として各種用途に好適に使用することができる。
【0082】
次に、インク吐出ヘッドについて説明する。
<インク吐出ヘッド>
前記インク吐出ヘッドは、ノズルプレートを有し、更に必要に応じてその他の部材を有する。
【0083】
-ノズルプレート-
前記ノズルプレートは、ノズル基板と、前記ノズル基板上に撥インク膜とを有する。
【0084】
-ノズル基板-
前記ノズル基板には、ノズル孔が設けられており、その数、形状、大きさ、材質、構造などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ノズル基板は、前記ノズル孔からインクが吐出されるインク吐出側の面と、前記インク吐出側の面とは反対側に位置する液室接合面とを有する。
前記撥インク膜は、前記ノズル基板の前記インク吐出側の面に形成されている。
【0085】
前記ノズル基板の平面形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、長方形、正方形、菱形、円形、楕円形などが挙げられる。また、前記ノズル基板の断面形状としては、例えば、平板状、プレート状などが挙げられる。
前記ノズル基板の大きさとしては、特に制限はなく、前記ノズルプレートの大きさに応じて適宜選択することができる。
【0086】
前記ノズル基板の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼、Al、Bi、Cr、InSn、ITO、Nb、Nb2O5、NiCr、Si、SiO2、Sn、Ta2O5、Ti、W、ZAO(ZnO+Al2O3)、Znなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、防錆性の点から、ステンレス鋼が好ましい。
【0087】
前記ステンレス鋼としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
前記ノズル基板の少なくともインク吐出側の面は、前記撥インク膜と前記ノズル基板との密着性を向上させる点から、酸素プラズマ処理を行って水酸基を導入してもよい。
【0089】
-ノズル孔-
前記ノズル孔としては、その数、配列、間隔、開口形状、開口の大きさ、開口の断面形状などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ノズル孔の配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、 例えば、複数の前記ノズル孔が、前記ノズル基板の長さ方向に沿って等間隔に並んで配列されている態様などが挙げられる。
前記ノズル孔の配列は、吐出するインクの種類に応じて適宜選定することができるが、1列~複数列が好ましく、1列~4列がより好ましい。
前記1列当たりの前記ノズル孔の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択されるが、10個以上10,000個以下が好ましく、50個以上500個以下がより好ましい。
隣接する前記ノズル孔の中心間の最短距離である間隔(ピッチ)Pとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、21μm以上169μm以下が好ましい。
前記ノズル孔の開口形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円形、楕円形、四角形などが挙げられる。これらの中でも、インクの液滴を吐出する点から、円形が好ましい。
【0090】
-撥インク膜-
前記撥インク膜は、含フッ素アクリレートエステル重合体、又は主鎖に含フッ素ヘテロ環状構造を有する重合体を含むことが好ましい。
前記撥インク膜が、前記含フッ素アクリレートエステル重合体、又は主鎖に含フッ素ヘテロ環状構造を有する重合体を含むことにより、表面自由エネルギーが非常に小さくなり、本発明で用いる表面張力の低いインクであっても濡れ難い状態を維持できるので好ましい。しかし、他の材料を撥インク膜として用いた場合は、表面自由エネルギーが非常に小さくなり、本発明で用いる表面張力の低いインクでは濡れてしまうことがある。
【0091】
--含フッ素アクリレートエステル重合体--
前記含フッ素アクリレートエステル重合体としては、下記一般式(II)で表される化合物及び下記一般式(III)で表される化合物の少なくともいずれかをモノマー単位として含むことが好ましい。
【化2】
【化3】
ただし、前記一般式(II)及び(III)中、Xは、水素原子、炭素数1~21の直鎖状又は分岐状のアルキル基、ハロゲン原子、CFX1X2基(ただし、X1及びX2は、それぞれ独立に水素原子、及びハロゲン原子のいずれかである)、シアノ基、炭素数1~21の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基、置換若しくは非置換のベンジル基、及び置換若しくは非置換のフェニル基のいずれかであり、R
1は、炭素数1~18のアルキル基であり、R
2は、炭素数2~6のアルキレン基であり、R
3は、炭素数2~6のアルキレン基であり、Yは、酸基であり、Rfは、炭素数1~21の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基である。mは1~10であり、nは2~90であり、pは1~90であり、qは1~10である。
また、前記一般式(II)及び一般式(III)で表される化合物の少なくとも一方を重合して得られる重合体は、前記一般式(IV)で表される構造単位及び前記一般式(V)で表される構造単位のうちの少なくとも一方を有する重合体となる。
【0092】
前記R1は、炭素数が1~18が好ましく、炭素数1~4がより好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基などが挙げられる。
前記R2は、炭素数2~6のアルキレン基であり、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。これらの中でも、エチレン基が好ましい。
前記R3は、炭素数2~6のアルキレン基であり、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。これらの中でも、エチレン基が好ましい。
前記Yは、酸基であり、例えば、スルホン酸基、コハク酸基、酢酸基、フタル酸基、水添フタル酸基、マレイン酸基、などが挙げられる。
【0093】
前記Rfは、炭素数1~21の直鎖状又は分岐状のフルオロアルキル基であり、パーフルオロアルキル基であることが好ましく、Rfの炭素数は、1~10がより好ましい。
前記Rfとしては、例えば、-CF3、-CF2CF3、-CF2CF2CF3、-CF(CF3)2、-CF2CF2CF2CF3、-CF2CF(CF3)2、-C(CF3)3、-(CF2)4CF3、-(CF2)2CF(CF3)2、-CF2C(CF3)3、-CF(CF3)CF2CF2CF3、-(CF2)5CF3、-(CF2)3CF(CF3)2、-(CF2)4CF(CF3)2、-(CF2)7CF3、-(CF2)5CF(CF3)2、-(CF2)6CF(CF3)2、-(CF2)9CF3などが挙げられる。
【0094】
前記mは、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
前記nは、2~90が好ましく、3~50がより好ましく、4~30が更に好ましい。 前記pは、1~90が好ましく、1~30がより好ましい。
前記qは、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
【0095】
前記含フッ素アクリレートエステル重合体としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記一般式(III)で表される含フッ素アクリレートエステル重合体(RfがC6F13である)は、例えば、下記のような反応式によって合成することができる。
【0096】
【0097】
前記一般式(III)で表される含フッ素アクリレートエステル重合体(RfがC6F13である)は、例えば、下記のような反応式によって合成することができる。
【0098】
【0099】
前記含フッ素アクリレートエステル重合体におけるフッ素の含有率は、撥インク(接触角)の点から、10質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
前記市販品としては、例えば、krytoxFSL(デュポン社製)、krytoxFSH(デュポン社製)、FomblinZ(ソルベイソレクシス社製)、FLUOROLINKS10(ソルベイソレクシス社製)、オプツールDSX(ダイキン工業株式会社製)、FLUOROLINKC10(ソルベイソレクシス社製)、モレスコホスファロールA20H(株式会社松村石油研究所製)、モレスコホスファロールADOH(株式会社松村石油研究所製)、モレスコホスファロールDDOH(株式会社松村石油研究所製)、フロロサーフFG5010(フロロテクノロジー社製)、フロロサーフFG5020(フロロテクノロジー社製)、フロロサーフFG5060(フロロテクノロジー社製)、フロロサーフFG5070(フロロテクノロジー社製)などが挙げられる。
【0100】
前記撥インク膜は、前記含フッ素アクリレートエステル重合体骨格を分子中に含む化合物膜で構成されている。ノズル基板と撥インク膜の間には、含フッ素アクリレートエステル重合体骨格を分子中に含む化合物との結合点となる水酸基を多く存在させて密着性を向上させるために、無機酸化物層を設けることもできる。
前記無機酸化物層の材料としては、例えば、SiO2、TiO2などが挙げられる。
前記無機酸化物層の平均厚みとしては、0.001μm以上0.2μm以下が好ましく、0.01μm以上0.1μm以下がより好ましい。
【0101】
前記含フッ素アクリレートエステル重合体骨格を分子中に含む化合物としては、例えば、低分子物質、樹脂などが挙げられる。
前記含フッ素アクリレートエステル重合体骨格を分子中に含む化合物としては、例えば、特公平3-43065号公報、特開平6-210857号公報、特開平10-32984号公報、特開2000-94567号公報、特開2002-145645号公報、特開2003-341070号公報、特開2007-106024号公報、特開2007-125849号公報等に開示されたものが挙げられる。
特に好ましい例としては、変性パーフルオロポリオキセタン(ダイキン工業株式会社製、オプツールDSX)を例示できる。
前記撥インク膜の平均厚みとしては、0.001μm以上0.2μm以下が好ましく、0.01μm以上0.1μm以下がより好ましい。
【0102】
前記含フッ素アクリレートエステル重合体骨格を分子中に含む化合物による撥インク膜の形成方法としては、フッ素系溶媒を用いたスピンコート、ロールコート、ディッピング等の塗布、印刷、真空蒸着等の方法が挙げられる。
前記フッ素系溶媒としては、例えば、ノベック(3M株式会社製)、バートレル(デュポン社製)、ガルデン(ソルベイソレクシス社製)などが挙げられる。
【0103】
--主鎖に含フッ素ヘテロ環状構造を有する重合体--
前記主鎖に含フッ素ヘテロ環状構造を有する重合体は、ヘテロ環状構造を有する含フッ素重合体のうち特に、非晶質な重合体を用いることが好ましい。前記非晶質な重合体は、膜強度、基材への密着性、膜の均一性等が優れているため本発明の効果をより一層発揮することができる。
前記主鎖に含フッ素ヘテロ環状構造を有する重合体としては、例えば、米国特許第3,418,302号明細書、米国特許第3,978,030号明細書、特開昭63-238111号公報、特開昭63-238115号公報、特開平1-131214号公報、特開平1-131215号公報等に記載されている重合体などが好適に用いられる。
これらの中でも、以下のようなヘテロ環状構造を有する重合体が代表的である。ただし、本発明の内容はこれらのみに限定されるものではない。
【0104】
【0105】
【化26】
ただし、前記一般式(i)及び(ii)中、Rf
1、Rf
2、及びRf
3は、それぞれフッ素含有アルキル基を示す。
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
更に、基材との密着性の向上、ガラス転移温度(Tg)、及び溶剤への溶解性をコントロールするためには主鎖中に、下記一般式(iii)で表される構造を導入してもよく、これらの構造は、以下の構造式(vii)から構造式(ix)で表されるコモノマーと共重合することにより得られる。
【0113】
【化33】
ただし、前記一般式(iii)中、R
4、R
5、及びR
6は、それぞれ水素原子、フッ素原子、塩素原子、又はRf
4を示す。ただし、前記Rf
4はフッ素含有アルキル基である。 Xは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、Rf
5、又はRf
6を示す。ただし、前記Rf
5は酸、エステル、アルコール、アミン、アミド等の官能機を末端に有する含フッ素有機置換基であり、前記Rf
6は含フッ素アルキル基、又は含フッ素エーテル基である。
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
以上示したような特定な化学構造を持ち、撥インク処理剤として適しているものとしては、例えば、商品名:サイトップCTX-105(旭硝子株式会社製)、商品名:サイトップCTX-805(旭硝子株式会社製)、商品名:テフロン(登録商標)AF1600、商品名:AF2400(デュポン社製)などが挙げられる。
【0118】
前記主鎖に含フッ素ヘテロ環状構造を有する重合体による撥インク膜形成方法としては、例えば、フッ素系溶媒を用いたスピンコート、ロールコート、ディッピング等の塗布、印刷、又は真空蒸着等の方法などが挙げられる。
前記フッ素系溶媒としては、前記主鎖に含フッ素ヘテロ環状構造を有する重合体を溶解することができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パーフルオロベンゼン、“商品名:アフルード”(商品名:旭硝子株式会社製のフッ素系溶剤)、“フロリナートFC-75”(商品名:3M社製のパーフルオロ(2-ブチルテトラヒドロフラン)を含んだ液体)等の含フッ素溶剤が好適である。これらは、1種単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、混合溶媒の場合、炭化水素系、塩化炭化水素、フッ塩化炭化水素、アルコール、又はその他の有機溶剤も併用できる。
溶液濃度は0.01質量%以上50質量%以下が好ましく、0.01質量%以上20質量%以下がより好ましい。
前記撥インク膜の平均厚みは、0.01μm以上であれば前記目的を十分達成し得るが、0.01μm以上2μm以下が好ましい。
【0119】
前記主鎖に含フッ素ヘテロ環状構造を有する重合体の熱処理条件(温度)は、溶媒の沸点及び前記重合体のガラス転移温度及び基材の耐熱温度によって決定される。即ち、溶媒の沸点及び前記重合体のガラス転移温度より高く、基材の耐熱温度より低い温度を選べばよい。
前記主鎖に含フッ素ヘテロ環状構造を有する重合体のガラス転移温度は、その構造によって異なる。例えば、前記構造式(iv)から前記構造式(vi)の構造のものは、50℃以上110℃以下のものが多いため、熱処理条件は、温度は120℃以上170℃以下、時間は30分間~2時間が好ましい。
【0120】
また、主鎖中に前記一般式(ii)の構造と、下記構造式(x)の構造を有するコポリマーは“テフロン(登録商標)AF”という商標名でデュポン社より出されている。
【0121】
【0122】
前記テフロン(登録商標)AFは、その共重合比を変えることによりさまざまなガラス転移温度を有することができる。即ち、PDD[パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)]成分の比率が高くなるにつれて、ガラス転移温度は上昇する。その成分比により80℃以上330℃以下ぐらいまで存在し、市販されているのは160℃(AF1600)と240℃(AF2400)のものである。例えば、160℃のものの熱処理温度は、基材の耐熱温度も考え、165℃以上180℃以下が好ましい。
【0123】
-その他の部材-
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加圧室、刺激発生手段などが挙げられる。
【0124】
--加圧室--
前記加圧室は、前記ノズルプレートに設けられた複数の前記ノズル孔に個別に対応して配置され、前記ノズル孔と連通する複数の個別流路であり、インク流路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室などと称することもある。
【0125】
--インクを吐出する手段--
インク吐出ヘッドは、インクに印加する刺激を発生する手段を有する。
前記刺激発生手段における刺激としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱(温度)、圧力、振動、光などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱、圧力が好適に挙げられる。
前記刺激発生手段としては、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライトなどが挙げられる。前記刺激発生手段としては、具体的には、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いてインクの膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどが挙げられる。
【0126】
前記刺激が「熱」の場合、前記インク吐出ヘッド内のインクに対し、記録信号に対応した熱エネルギーを、例えば、サーマルヘッド等を用いて付与する。前記熱エネルギーにより前記インクに気泡を発生させ、前記気泡の圧力により、前記ノズルプレートの前記ノズル孔から前記インクを液滴として吐出させる方法などが挙げられる。
前記刺激が「圧力」の場合、例えば、前記インク吐出ヘッド内のインク流路内にある前記圧力室と呼ばれる位置に接着された前記圧電素子に電圧を印加することにより、前記圧電素子が撓む。それにより、前記圧力室の容積が収縮して、前記インク吐出ヘッドの前記ノズル孔から前記インクを液滴として吐出させる方法などが挙げられる。
これらの中でも、ピエゾ素子に電圧を印加してインクを飛翔させるピエゾ方式が好ましい。
【0127】
ここで、本発明で用いられるインク吐出ヘッドの一例について、
図4から
図6を参照して説明する。なお、
図4は同ヘッドの分解斜視説明図、
図5は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)に沿う断面説明図、
図6は同ヘッドのノズル配列方向(液室短手方向)に沿う断面説明図である。
【0128】
前記インク吐出ヘッドは、流路板(液室基板、流路部材)1と、この流路板1の下面に接合した振動板部材2と、流路板1の上面に接合したノズル形成部材であるノズルプレート3とを有し、これらによって液滴(インクの滴)を吐出する複数のノズル孔4がそれぞれノズル連通路5を介して連通する個別流路としての複数の液室(加圧液室、圧力室、加圧室、流路などとも称される。)6、液室6にインクを供給する供給路を兼ねた流体抵抗部7、この流体抵抗部7を介して液室6と連通する連通部8を形成し、連通部8に振動板部材2に形成した供給口19を介してフレーム部材17に形成した共通液室10からインクを供給する。
【0129】
流路板1は、シリコーン基板をエッチングして連通路5、液室6、流体抵抗部7などの開口をそれぞれ形成している。なお、流路板1は、例えば、SUS基板を、酸性エッチング液を用いてエッチング、あるいは打ち抜き(プレス)などの機械加工することで形成することもできる。
【0130】
振動板部材2は各液室6に対応してその壁面を形成する各振動領域(ダイアフラム部)2aを有し、振動領域2aの面外側(液室6と反対面側)に島状凸部2bが設けられ、この島状凸部2bに振動領域2aを変形させ、液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての積層型の圧電素子12、12の各圧電素子柱12A、12Bの上端面(接合面)を接合している。また、積層型圧電素子12の下端面はベース部材13に接合している。
【0131】
ここで、圧電素子12は、PZT等の圧電材料層21と内部電極22a、22bとを交互に積層したものであり、内部電極22a、22bをそれぞれ端面、即ち圧電素子12の振動板部材2に略垂直な側面に引き出して、この側面に形成された端面電極(外部電極)23a、23bに接続し、端面電極(外部電極)23a、23bに電圧を印加することで積層方向の変位を生じる。この圧電素子12は、ハーフカットダイシングによる溝加工を施して1つの圧電素子部材に対して所要数の圧電素子柱12A、12Bを形成したものである。
【0132】
なお、圧電素子12の圧電素子柱12A、12Bは、同じものであるが、駆動波形を与えて駆動させる圧電素子柱を圧電素子柱12A、駆動波形を与えないで単なる支柱として使用する圧電素子柱を圧電素子柱12Bとして区別している。この場合、駆動用圧電素子柱12Aと支柱用圧電素子柱12Bとを交互に使用するバイピッチ構成でも、あるいは、すべての圧電素子柱を駆動用の圧電素子柱12Aとして使用するノーマルピッチ構成のいずれでも採用できる。
【0133】
これにより、ベース部材13上に駆動素子としての複数の駆動用圧電素子柱12Aが並べて配置された駆動素子列(駆動用圧電素子柱12Aの列)が2列設けられた構成としている。
【0134】
また、積層型圧電素子12の圧電方向としてd33方向(圧電材料層の積層方向)の変位を用いて液室6内インクを加圧する構成としているが、積層型圧電素子12の圧電方向としてd31方向(圧電材料層の面方向:電場に直交する方向)の変位を用いて加圧液室6内のインクを加圧する構成とすることもできる。
【0135】
また、圧電素子材料としては、特に制限はなく、一般に圧電素子材料として用いられるBaTiO3、PbTiO3、(NaK)NbO3等の強誘電体などの電気機械変換素子を用いることもできる。更に、圧電素子に積層型のものを用いているが、単板の圧電素子を用いてもよい。単板の圧電素子としては切削加工したものや、スクリーン印刷して焼結した厚膜のものや、スパッタや蒸着、或いはゾルゲル法により形成する薄膜のものでもよい。また、1つのベース部材13に設けられる積層型圧電素子12は1列としても、複数列設けられた構造としてもよい。
【0136】
そして、圧電素子12の各駆動用圧電素子柱12Aの外部電極23aには駆動信号を与えるために半田部材で配線手段としてのFPC15を直接接続し、このFPC15には圧電素子12の各駆動用圧電素子柱12Aに対して選択的に駆動波形を印加するための駆動回路(ドライバIC)16が実装されている。なお、すべての圧電素子柱12Aの外部電極23bは電気的に共通に接続されてFPC15の共通配線に同じく半田部材で接続される。また、ここでは、FPC15の圧電素子12と接合される出力端子部には半田メッキが施されており、半田接合を可能にしているが、FPC15ではなく圧電素子12側に半田メッキを施してもよい。また、接合方法についても半田接合の他に異方導電性膜による接合やワイヤボンディングを用いることもできる。
【0137】
ノズルプレート3は、各液室6に対応して直径10μm以上35μm以下のノズル孔4を構成する孔部が形成されたノズル基材31の液滴吐出側面(吐出方向の表面:吐出面、又は液室6側と反対の面、ノズル形成面)に撥インク膜32を形成して構成している。
【0138】
また、FPC15を実装した(接続した)圧電素子12及びベース部材13などで構成される圧電型アクチュエータユニット100の外周側には、エポキシ系樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成したフレーム部材17を接合している。そして、このフレーム部材17には前述した共通液室10を形成し、更に共通液室10に外部からインクを供給するための供給口19を形成し、この供給口19は更に図示しないサブタンクやインク収容容器などのインク供給源に接続される。
【0139】
このように構成したインク吐出ヘッドにおいては、例えば、駆動用圧電素子柱12Aに印加する電圧を基準電位から下げることによって圧電素子柱12Aが収縮し、振動板部材2の振動領域2aが下降して液室6の容積が膨張することで、液室6内にインクが流入し、その後圧電素子柱12Aに印加する電圧を上げて圧電素子柱12Aを積層方向に伸長させ、振動板部材2をノズル孔4方向に変形させて液室6の容積/体積を収縮させることにより、液室6内のインクが加圧され、ノズル孔4からインクの液滴が吐出(噴射)される。
【0140】
そして、圧電素子柱12Aに印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材2が初期位置に復元し、液室6が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室10から液室6内にインクが充填される。そこで、ノズル孔4のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0141】
なお、前記インク吐出ヘッドの駆動方法については上記の例(引き-押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
【0142】
次に、本発明に係るノズルプレート3の詳細について
図7~
図9を参照して説明する。なお、
図7は同ノズルプレート3の平面説明図、
図8は同じく断面説明図、
図9は1つのノズル部分の拡大断面説明図である。
ノズルプレート3は、例えばNi金属プレートからなるノズル基材31の吐出面31aに、下地層としてのTi層33、SiO
2膜34及び分子内にアルコキシシランを有するパーフルオロポリエーテル膜(この膜を「撥水膜」という。)32の順にノズル基材31表面から成膜されている。そして、ノズル孔4の内壁面4aの出口近傍には、ノズル基材31の液室面31bに形成されたSiO2膜35の上に下地層(Ti層)33が吐出面から連続して成膜されており、かつ、下地層(Ti層)33が最表面に露出している。
【0143】
なお、ノズル基材31としては、Ni金属プレート等を用いることができるがこれに限るものではない。
【0144】
ここで、ノズルプレート3の撥水層32は蒸着によって形成し、ノズル孔4の内壁面の出口近傍には撥水層32を形成する蒸着膜は形成されていない。これにより吐出不良や液体充填性を損なうことがなく、安定した滴吐出を行うことができる。
【0145】
<印刷方法及び印刷装置>
本発明の印刷方法は、本発明のインクを吐出して印刷する印刷方法であり、インク吐出工程を少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、刺激発生工程、制御工程等を含む。
本発明の印刷装置は、本発明のインクを収容するインクカートリッジと、インクを吐出するインク吐出手段を少なくとも有し、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、刺激発生手段、制御手段等を有する。
本発明の印刷方法は、本発明の印刷装置により好適に実施することができ、前記インク吐出工程は前記インク吐出手段により好適に行うことができる。また、前記その他の工程は、前記その他の手段により好適に行うことができる。
【0146】
-インク吐出工程(印刷工程の一例)-
前記インク吐出工程は、インクに刺激(エネルギー)を印加し、記録媒体上にインクを吐出させて印刷する工程である。この工程において、インクを吐出させて記録媒体上に印刷する方法としては、公知のインクジェット記録方法を適用できる。その例としては、ヘッドを走査する方式のインクジェット記録方法や、ライン化されたヘッドを用いて、ある枚葉の記録媒体に画像記録を行うインクジェット記録方法が挙げられる。
インク吐出手段である記録ヘッドの駆動方式には特に限定はなく、PZT等を用いた圧電素子アクチュエータ、熱エネルギーを作用させる方式、静電気力を利用したアクチュエータ等を利用したオンディマンド型のヘッドを用いることもできるし、連続噴射型の荷電制御タイプのヘッドで記録することもできる。
【0147】
本発明の印刷方法では、必要に応じて、インク吐出工程後に、加熱乾燥工程を設けることができ、例えば、赤外線乾燥装置、マイクロ波乾燥装置、ロールヒーター、ドラムヒーター、温風などにより記録媒体を乾燥することができる。
【0148】
上記印刷装置の一例を
図1に示す。
この図は画像形成工程と乾燥工程を有する場合を示しており、1は記録媒体、2はインク吐出部、3は搬送ベルト、4は温風乾燥装置、5は画像形成部、6は乾燥処理部、7は転写ロールである。
【0149】
<記録装置、記録方法>
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について
図2乃至
図3を参照して説明する。
図2は同装置の斜視説明図である。
図3はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0150】
図3におけるインク収容部(インクカートリッジ)411から、吐出ヘッド(インクを吐出する吐出手段)434までのインク流路間にフィルターを有することが好ましい。また、インク排出口413にフィルターを設けても良い。フィルターは、10μm以上の粒子を保持可能なフィルターが好ましく、フィルターを設けることで10μm以上の粒子を除去することができ、吐出安定性に優れる印刷装置を提供することができる。
前記フィルターは、常時インクを接した状態になるため、耐腐食性の観点からステンレス製であることが好ましく、中でも耐腐食性に優れていることからオーステナイト系ステンレス、更に特にはSUS304、SUS316またはSUS316Lであることが望ましい。なお、前記フィルターは、SUS304、SUS316およびSUS316Lから
選ばれるいずれかを含むことが好ましいが、より好ましくはこれらのいずれかからなることである。
【0151】
また、フィルターは、ろ過精度が異なるフィルターが市販されており、例えば、日本ポール株式会社性、アクロ・ラストチャンスフィルターを用いることができる。ろ過精度が10μm以下のフィルターを用いることで、インク中に存在する固形分を除去し、吐出安定性を高めることができ好ましい。ろ過精度が6μm以上10μm以下のフィルターを用いると、吐出手段へのインクの供給が好適に行われる点で好ましい。
具体的な製品としては、例えば10μmディスポフィルター、PALL ACRO25 LCF-12100、ろ過精度:10μm、材質:ポリプロピレンを挙げることができる。
【0152】
水、有機溶剤、ポリウレタン樹脂粒子、一般式(I)で示される構造を有する環状エステルを含むインクであって、常温環境(25±5℃)で1ヶ月間静置保管した後に、一般式(I)で示される構造を有する環状エステルの粒径が1μm以上の結晶の含有率が、インク全体の4ppm未満であるインクを用いることで、サイネージ用非浸透メディア及び商業印刷用紙に対しても定着性、乾燥性が高く、また、画像濃度が高く、通液性、吐出安定性も良く、保存安定性に優れたインクの提供と印刷方法、及び印刷装置を提供することが可能となった。
【化1】
【0153】
インクカートリッジからインクを吐出する吐出手段までのインク流路間にフィルターを設けた印刷装置を用いることで、インク中に存在する、例えば粒子径が10μmを超える結晶を除去することができ、好適に吐出安定性を得られる。
【0154】
水、有機溶剤、ポリウレタン樹脂粒子を少なくとも含むインクの製造工程において、水、有機溶剤及びポリウレタン樹脂粒子を混合する工程の後、得られた混合物を40℃以上70℃未満で6時間以上加温する工程を設けることで、インク中の一般式(I)で示される構造を有する環状エステルの粒径が1μm以上の結晶の含有率を、インク全体の4ppm未満とすることができる。インク中の一般式(I)で示される構造を有する環状エステルの含有率を下げることにより、定着性、乾燥性が高く、且つ、画像濃度高く、通液性、吐出安定性も良く、保存安定性に優れたインクとすることができる。尚、結晶については、粒子径が10μmを超える大きい結晶が残る場合についても、フィルターで大きな結晶を除去することにより、さらに好適に吐出安定性を得られると考えられる。
【0155】
また、本発明に用いられるフィルターの形状は特に限定されることなく、公知のあらゆるフィルターを用いることができる。その中でも、ステンレス繊維をフェルト状に積層して焼結した焼結フィルター、または、ステンレス繊維を綾畳織して形成した綾畳織フィルターを用いると、より長期的な吐出信頼性のあるインクジェット記録装置(インク供給ユニット)が得られるため望ましい。
【0156】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
【0157】
記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
【実施例0158】
以下、調製例、製造例、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、例中の「部」及び「%」は、特に断りのない限り、「質量部」及び「質量%」である。
また、特に記載が無い場合、インクの調製、評価は、室温25℃、湿度60%の条件下で行った。
【0159】
<顔料分散体の調製>
(調製例1)
-表面改質ブラック顔料分散体の調製-
Cabot Corporation社製Black Pearls(登録商標)1000(BET比表面積343m2/g、ジブチルフタレート吸収量(DBPA)105mL/100gのカーボンブラック)100g、スルファニル酸100ミリモル及びイオン交換高純水1Lを、室温でSilversonミキサー(6000rpm)により混合した。次いで、得られるスラリーに硝酸100ミリモルを添加し、更に30分後に10mLのイオン交換高純水に溶解させた亜硝酸ナトリウム(100ミリモル)をゆっくり添加した。更に撹拌しながら60℃に加温し、1時間反応させてカーボンブッラクにスルファニル酸が付加した改質顔料を得た。次いで、10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド溶液(メタノール溶液)でpHを9に調整し、30分後に改質顔料分散体を得た。次いでこの分散体とイオン交換高純水を用いて透析膜による限外濾過を行い、更に超音波分散を行って顔料固形分を20%含む改質顔料分散体を得た。顔料の表面処理レベルは0.75mmol/g、粒度分布測定装置(日機装社製ナノトラックUPA-EX150)で測定したメジアン径(D50)は120nmであった。
【0160】
(調製例2)
-表面改質マゼンタ顔料分散体の調製-
SENSIENT社製顔料分散体SMART Magenta 3122BA(Pigment Red 122表面処理分散体、顔料固形分14.5%)1kgを0.1NのHCl水溶液で酸析した。次いで、10%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液でpHを9に調整し、30分後に改質顔料分散体を得た。少なくとも1つのアミノ安息香酸基又はアミノ安息香酸テトラエチルアンモニウム塩と結合した顔料を含む該改質顔料分散体とイオン交換高純水を用いて透析膜により限外濾過を行い、更に超音波分散を行って顔料固形分を20%含む改質顔料分散体を得た。粒度分布測定装置(日機装社製ナノトラックUPA-EX150)で測定したメジアン径(D50)は104nmであった。
【0161】
(調製例3)
-表面改質シアン顔料分散体の調製-
SENSIENT社製顔料分散体SMART Cyan 3154BA(Pigment Blue 15:4表面処理分散体、顔料固形分14.5%)1kgを0.1NのHCl水溶液で酸析した。次いで、40%ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド溶液(メタノール溶液)でpHを9に調整し、30分後に改質顔料分散体を得た。少なくとも1つのアミノ安息香酸基又はアミノ安息香酸ベンジルトリメチルアンモニウム塩と結合した顔料を含む該改質顔料分散体とイオン交換高純水を用いて透析膜により限外濾過を行い、更に超音波分散を行って顔料固形分を20%含む改質顔料分散体を得た。粒度分布測定装置(日機装社製ナノトラックUPA-EX150)で測定したメジアン径(D50)は116nmであった。
【0162】
(調製例4)
-表面改質イエロー顔料分散体の調製-
SENSIENT社製顔料分散体SMART Yellow 3074BA(Pigment Yellow 74表面処理分散体、顔料固形分14.5%)1kgを、10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド溶液(メタノール溶液)でpH9に調整し、30分後に改質顔料分散体を得た。少なくとも1つのアミノ安息香酸基又はアミノ安息香酸テトラブチルアンモニウム塩と結合した顔料を含む該改質顔料分散体とイオン交換高純水を用いて透析膜により限外濾過を行い、更に超音波分散を行って顔料固形分を20%含む改質顔料分散体を得た。粒度分布測定装置(日機装社製ナノトラックUPA-EX150)で測定したメジアン径(D50)は145nmであった。
【0163】
(調製例5)
-マゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製-
<ポリマー溶液Aの調製>
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー4.0g、及びメルカプトエタノール0.4gを混合し、65℃に昇温した。
次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液Aを800g得た。
【0164】
<顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製>
ポリマー溶液Aを28gと、C.I.ピグメントレッド122を42g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水13.6gを十分に攪拌した後、ロールミルを用いて混練した。得られたペーストを純水200gに投入し、充分に攪拌した後、エバポレータ用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、更に粗大粒子を除くためにこの分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、顔料15質量%含有、固形分20質量%のマゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液を得た。得られたマゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子のメジアン径(D50)を測定したところ127nmであった。なお、メジアン径(D50)の測定は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)を用いた。
【0165】
(調製例6)
-シアン顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製-
調製例5において、顔料としてのC.I.ピグメントレッド122をフタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)に変更した以外は、調製例5と同様にして、シアン顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られたシアン顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定したメジアン径(D50)は93nmであった。
【0166】
(調製例7)
-イエロー顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製-
調製例5において、顔料としてのC.I.ピグメントレッド122をビスアゾイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー155)に変更した以外は、調製例5と同様にして、イエロー顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られたイエロー顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定したメジアン径(D50)は76nmであった。
【0167】
(調製例8)
-カーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製-
調製例5において、顔料としてのC.I.ピグメントレッド122をカーボンブラック(デグサ社製、FW100)に変更した以外は、調製例5と同様にして、カーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られたカーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定したメジアン径(D50)は104nmであった。
【0168】
<樹脂粒子の調製例>
<水分散性ポリウレタン樹脂(A)の調製>
(ポリエステルポリオールP-1の調製)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、テレフタル酸830部、イソフタル酸830部、エチレングリコール374部、ネオペンチルグリコール598部及びジブチル錫オキサイド0.5部を仕込み180~230℃で酸価が1以下になるまで230℃で15時間重縮合反応を行い、水酸基価74.5、酸価0.2、平均分子量1500のポリエステルポリオールP-1を得た。
【0169】
(疎水性ポリエステルポリオールQ-1の調製)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、オルソフタル酸1660部、ジエチレングリコール1637部及びジブチル錫オキサイド0.5部を仕込み180~230℃で酸価が1以下になるまで230℃で15時間重縮合反応を行い、水酸基価190、酸価0.3の芳香族環式構造を有するポリエステルポリオールQ-1を得た。
【0170】
(水分散性ポリウレタン樹脂(A)の調製)
ポリエステルポリオールP-1の1000部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン907部を加え十分に攪拌し溶解させ、2,2’-ジメチロールプロピオン酸80部を加え、次いでイソホロンジイソシアネート281部を加えて75℃で8時間反応させ、ウレタン化工程を実施した。
イソシアネート値が0.1%以下になったのを確認した後、50℃まで冷却し、前記ポリエステルポリオールQ-1を340部加えて均一溶液とした後、トリエチルアミン60部加えて中和した後、水7000部を加えて水溶化した。
得られた透明な反応生成物を減圧下、40~60℃にてメチルエチルケトンを除去した後、水を加えて濃度調節を行い不揮発分25%の安定な半透明コロイド状の水分散液を得た。
【0171】
<水分散性ポリウレタン樹脂(B)の調製>
前記記載のポリエステルポリオールP-1の1000部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン907部を加え十分に攪拌し溶解させ、2,2’-ジメチロールプロピオン酸80部を加え、次いでイソホロンジイソシアネート281部を加えて75℃で8時間反応させ、ウレタン化工程を実施した。
イソシアネート値が0.1%以下になったのを確認した後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン60部加えて中和した後、水7000部を加えて水溶化した。
得られた透明な反応生成物を減圧下、40~60℃にてメチルエチルケトンを除去した後、水を加えて濃度調節を行い不揮発分25%の安定な半透明コロイド状の水分散液を得た。
【0172】
<水分散性ポリウレタン樹脂(C)の調製>
(ポリエステルポリオールP-2の調製)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、テレフタル酸664部、イソフタル酸631部、1,4-ブタンジオール472部、ネオペンチルグリコール447部及びジブチル錫オキサイド0.5部を仕込み180~230℃で5時間エステル化した後、酸価が1以下になるまで230℃で6時間重縮合反応を行った。次いで120℃まで冷却し、アジピン酸321部、2,2’-ジメチロールプロピオン酸268部を加え、再び170℃に昇温しこの温度で20時間反応させ、酸価46.5、水酸基価59.8のカルボキシル基を含有するポリエステルポリオールP-2を得た。
【0173】
(水分散性ポリウレタン樹脂(C)の調製)
ポリエステルポリオールP-2の1000部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン812部を加え十分攪拌溶解し、1,4-ブタンジオール20部を加え、次いでジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水添MDI)198部を加えて75℃で8時間反応させた。
イソシアネート値が0.1%以下になったのを確認した後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン84部加えて中和した後、水7000部を加えて水溶化した。
得られた透明な反応生成物を減圧下、40~60℃にてメチルエチルケトンを除去した後、水を加えて濃度調節を行い不揮発分25%の安定な半透明コロイド状の水分散液を得た。
【0174】
<水分散性ポリウレタン樹脂(D)の調製>
ポリエステルポリオールP-1の1000部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン907部を加え十分に攪拌し溶解させ、2,2’-ジメチロールプロピオン酸80部を加え、次いでイソホロンジイソシアネート281部を加えて75℃で8時間反応させ、ウレタン化工程を実施した。
イソシアネート値が0.1%以下になったのを確認した後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン60部加えて中和した後、水7000部を加えて水溶化した。
得られた透明な反応生成物を減圧下、40~60℃にてメチルエチルケトンを除去した後、水を加えて濃度調節を行い不揮発分25%の安定な半透明コロイド状の水分散液を得た。
【0175】
<アクリル-シリコーンポリマー微粒子Aの調製>
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、イオン交換水350gに、8.0gのラテムルS-180(花王社製、反応性陰イオン性界面活性剤)を加えて混合し、65℃に昇温した。次いで、反応開始剤のt-ブチルパーオキソベンゾエート3.0g、イソアスコルビン酸ナトリウム1.0gを加え、5分後にメタクリル酸メチル45g、メタクリル酸-2-エチルヘキシル160g、アクリル酸5g、メタクリル酸ブチル45g、メタクリル酸シクロヘキシル30g、ビニルトリエトキシシラン15g、ラテムルS-180を8.0g、及びイオン交換水340gの混合物を、3時間かけて滴下した。次いで、80℃で2時間加熱熟成した後、常温まで冷却し、水酸化ナトリウムでpHを7~8に調整した。次いでエバポレータによりエタノールを留去し、水分調節をして、固形分40%のアクリル-シリコーンポリマー微粒子730gを得た。分散体中のポリマー微粒子のメジアン径(D50)を、粒度分布測定装置(日機装社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定したところ125nmであった。
【0176】
(実施例1~26、及び比較例1~21)
<プレインクの製造例>
(プレインク製造例1)
攪拌機を備えた容器に、上記式(1)で表される3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドを7.50部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル5.00部、プロピレングリコール18.00部、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール2.00部、及び2,4,7,9-テトラメチルデカン-4,7-ジオール0.50部、上記式(8)で表されるポリエーテル変性シロキサン化合物1.00部を入れ、30分間混合撹拌した。次いで、防腐防黴剤(アビシア社製Proxel GXL)0.05部、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール0.30部、調製された水分散性ポリウレタン樹脂(A)を56.00部、ポリウレタンディスパーション「三井化学社製タケラック W-6110」1.62部、及び全体が100部となる量の高純水を加え、60分間混合撹拌した。次いで、得られた混合物を、平均孔径1.2μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターで加圧濾過し、粗大粒子及びごみを除去して、プレインク1を得た。
【0177】
(プレインク製造例2)
攪拌機を備えた容器に、上記式(1)で表される3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドを7.50部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル5.00部、プロピレングリコール22.00部、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール2.00部、及び2,4,7,9-テトラメチルデカン-4,7-ジオール0.50部、上記式(8)で表されるポリエーテル変性シロキサン化合物1.50部を入れ、30分間混合撹拌した。次いで、防腐防黴剤(アビシア社製Proxel GXL)0.05部、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール0.30部、調製された水分散性ポリウレタン樹脂(A)を24.00部、ポリウレタンディスパーション「三井化学社製タケラック W-6110」1.62部、調製例1の表面改質ブラック顔料分散体を15.00部、及び全体が100部となる量の高純水を加え60分間混合撹拌した。次いで、得られた混合物を、平均孔径1.2μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターで加圧濾過し、粗大粒子及びごみを除去して、プレインク2を得た。
【0178】
(プレインク製造例3~24)
プレインク製造例1~2と同様にして、下記表1~表3のプレインク製造例3~24の各欄に示す有機溶剤、界面活性剤及び消泡剤を混合撹拌し、次いで、防腐防黴剤、pH調整剤及び着色剤(顔料分散体)を混合撹拌し、更に水分散性ポリウレタン樹脂及び樹脂粒子を混合撹拌した。得られた混合物を平均孔径1.2μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターで加圧濾過し、粗大粒子及びごみを除去して、プレインク3~24を得た。
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
表1~表3中の略号などの詳細は次のとおりである。
・Direct Blue199(水溶性シアン染料):EKTA INTERNATIONAL社製
・スーパーフレックス300:ポリウレタンディスパーション、固形分30.0%、
Tg=-42℃、第一工業製薬社製
・タケラック W-6110:ポリウレタンディスパーション、固形分30.9%、
Tg=-20℃、三井化学社製
・式(1)の化合物:3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド
・式(2)の化合物:3-n-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド
・式(5)の化合物:3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン
・式(6)の化合物:3-メチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン
・TEGO Wet270:ポリエーテル変性シロキサン化合物
(エボニック社製、有効成分100%)
・シルフェイスSAG503A:ポリエーテル変性シロキサン化合物
(日信化学工業社製、有効成分100%)
・ユニダイン DSN403N:ポリオキシエチレンパーフロロアルキルエーテル
(ダイキン工業社製、有効成分100%)
・Proxel GXL:1,2-benzisothiazolin-3-oneを
主成分とした防腐防黴剤
(アビシア社製、成分20%、ジプロピレングリコール含有)
【0183】
プレインク製造例1~24の各インクについて、下記のようにして物性を測定した。結果を表4に示す。
<粘度>
粘度計(RE-85L、東機産業社製)を用いて、25℃で測定した。
<pH>
pHメータ計(HM-30R型、TOA-DKK社製)を用いて、25℃で測定した。
<静的表面張力>
自動表面張力計(DY-300、協和界面科学社製)を用いて、25℃で測定した。
<動的表面張力>
本発明のインクの動的表面張力は、最大泡圧法による表面寿命15msec時の動的表面張力を、SITA_DynoTester(SITA社製)を用いて、25℃で測定した。
【0184】
【0185】
<インクの製造例>
前記プレインク1~24について、表5に記載したとおりの条件で加温してインク1~27を得た。各インクについて、プレインクについて行ったと同様にして物性を測定した。
結果を表5に示す。
【表5】
【0186】
前記プレインク及び各条件で加温したインクをインクパックに充填し、常温環境(25±5℃)で1ヶ月間静置保管したインクを用い、下記のようにして評価すると共に画像を形成し、特性を評価した。結果を表6に示す。
【0187】
-インク中に含有する一般式(I)で示される構造を有する環状エステルの結晶の定性及び定量化-
<定性方法、定量化方法>
インク中に含有する一般式(I)で示される構造を有する環状エステルの結晶の定量化は、簡易的には製造例の各インクをΦ60mmの桐山ロートに桐山ロート用濾紙Φ60mmNo.5C(粒子保持能1μm)をセットしたろ過冶具でろ過を行い、ろ過後保持された結晶および濾紙を高純水で充分洗浄後、ろ過する前の濾紙水分量まで乾燥させる。ろ過前の濾紙質量とろ過後保持された結晶と濾紙質量の秤量を行い差分をとることで、一般式(I)で示される構造を有する環状エステルの結晶の定量化可能となる。
ここでろ過するインク量としては、定量化精度を上げる為に3000gのインクをろ過して、定量化を実施した。
濾紙上の結晶をテトラヒドロフランで全て溶解し、残った濾紙を乾燥後秤量した。また、前記秤量した濾紙質量とろ過前に秤量した濾紙質量との差分を確認したが差がなかった。また、テトラヒドロフランに溶解した溶液をLC-MS分析し、他の成分を含有していないのか確認した。インク中に析出し、ろ過により得られた結晶の構造は、GC-MS分析及びLC-MS分析+C
13-NMR+H
1-NMR+FT-IRにより、定性したところ、すべて下記構造式(B)で示される構造を有する環状エステルであることを確認した。
【化36】
【0188】
-インク吐出工程(画像形成工程)-
23±0.5℃、50±5%RHに調整された環境条件下、インクジェット記録装置(IPSiO GXe-5500、リコー社製)を用い、インクの吐出量が均しくなるようにピエゾ素子の駆動電圧を変動させ、記録媒体(王子製紙社製:OKトップコート+_米坪量104.7g/m2)に同じ付着量のインクが付着するように設定した。また、実施例18、実施例19、比較例18、比較例19は、インク収容部(インクカートリッジ)と、吐出ヘッド(インクを吐出する吐出手段)までのインク流路間にフィルターを設置した。
フィルターは、以下の、日本ポール株式会社性、アクロ・ラストチャンスフィルターを用いた。
10μmディスポフィルター:PALL ACRO25 LCF-12100、ろ過精度:10μm、
材質:ポリプロピレン
【0189】
次にインクジェットヘッドに装着するノズルプレートの作製について、説明する。
(製造例101)
<ノズルプレートAの作製>
<<含フッ素アクリレートエステル重合体Aの合成>>
-エチレンオキサイド鎖含有フッ素モノマー(MPOERfA)の合成-
エチレンオキサイド鎖含有フッ素モノマーの合成反応の反応式を以下に示す。
【化22】
ただし、前記反応式中、nの平均は8~9である。
【0190】
次に、四つ口フラスコに片末端メトキシポリエチレングリコール(平均EO数:8~9、ユニオックスM-400,日油株式会社製)52.13g、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.94gを仕込んだ。窒素気流下、3-パーフルオロヘキシル-1,2-エポキシプロパン50gを30-40分かけて、発熱に注意しながら室温で滴下した。滴下終了後、約2時間、室温で反応を続けた後、ガスクロマトグラフィー(GC)で3-パーフルオロヘキシル-1,2-エポキシプロパンのピークが消滅していることを確認した。これにターシャリーブチルカテコール0.03gを加えてよく攪拌した。更に、トリエチルアミン14.81gを加えてアクリル酸クロリド12.04gを発熱に注意しながら、約20分間かけて滴下した。滴下終了後、約2時間、室温で反応を続けた後、GCでアクリル酸クロリドのピークがほぼ消滅していることを確認した。生成物の同定はIRスペクトル、1H-NMR、19F-NMRスペクトルより行った。
【0191】
-含フッ素アクリレートエステル重合体Aの合成-
200mLの四つ口フラスコに、前記合成したMPOERfAモノマーを10質量%、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート60質量%、ポリエチレングリコールモノアクリレート(EO:10モル、日油株式会社製、AE-400)20質量%、2-ヒドロキシエチルアクリレート5質量%、アセトアセトキシエチルメタクリレート2.5質量%、及びジメチルアミノエチルアクリレート2.5質量%のモノマー組成に対して、イソプロピルアルコール60gを仕込んだ。これに、60分間、窒素を吹き込んで、系内の空気を窒素で置換した。窒素フローを続けながら、内温を75℃~80℃に昇温後、アゾビスイソブチロニトリル0.25gを添加して、8時間、重合反応を行った。ガスクロマトグラフィー(GC)及びゲルパーミエーションクロマトグラフィーで重合液を分析したところ、モノマー由来のピークがほぼ消失し、共重合体由来のピークが発生していることを確認した。また、共重合体の重量平均分子量は17,000(ポリスチレン換算)であった。最後に、酢酸0.42gを加えて中和し、含フッ素アクリレートエステル共重合体Aの20質量%溶液になるように水で希釈した。
【0192】
-ノズルプレートの作製-
次に、縦34mm×横16mm、平均厚み20μmのステンレス鋼(SUS304)製のノズル基板を用意した。なお、前記ノズル基板には、平均孔径が25μmのノズル孔が該ノズル孔の中心間の最短距離であるピッチが85μm(300dpi)で、320個/列に配列したノズル孔列が4列形成されている。
前記ノズル基板のインク吐出側の面に、作製した含フッ素アクリレートエステル重合体Aの20質量%溶液をディッピング法にて塗布し、乾燥することにより、平均厚みが50nmの撥インク膜を形成した。
以上により、製造例101のノズルプレートAを作製した。この際、ノズル孔を水溶性樹脂にて、またノズル基板の裏面はテープにてマスキングし、撥インク膜を形成後、剥離除去した。また、120℃で1時間加熱して撥インク膜を形成した。
【0193】
(製造例102)
<ノズルプレートBの作製>
<<含フッ素アクリレートエステル重合体Bの合成>>
-2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)のRfエポキシ付加体(FAGMA)の合成-
2-ヒドロキシエチルアクリレートのRfエポキシ付加体の合成反応の反応式を以下に示す。
【化37】
【0194】
四つ口フラスコに2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)20g、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.61g、ターシャリーブチルカテコール0.026gを仕込んだ。3-パーフルオロヘキシル-1,2-エポキシプロパン64.83gを30分間~40分間かけて、発熱に注意しながら室温で滴下した。滴下終了後、約2時間、室温で反応を続けた後、ガスクロマトグラフィー(GC)で3-パーフルオロヘキシル-1,2-エポキシプロパンのピークが消滅していることを確認した。反応終了後、1,1-ジクロロ-1,2,2,3,3-ペンタフルオロプロパン(HCFC225)100gに反応物を溶解させ、更に水100gを加えて分液ローとで洗浄、分液後、有機層を取り出した。この洗浄、分液操作をもう一度、繰り返し、有機層を取り出した後、無水硫酸マグネシウムを5g加えて、一晩乾燥した。HCFC225をエバボレートし、HEAのRfエポキシ付加体(FAGMA)を得た。生成物の同定はIRスペクトル、1H-NMR、19F-NMRスペクトルより行った。生成物の分析結果より、3-パーフルオロヘキシル-1,2-エポキシプロパンの1モル付加体(n=1)が約64質量%、2モル付加体(n=2)が約27質量%、3モル付加体が約9質量%の混合モノマーが得られた。
【0195】
-スルホン酸含有フッ素モノマーの合成-
スルホン酸含有フッ素モノマーの合成反応の反応式を以下に示す。
【化38】
【0196】
合成した前記HEAのRfエポキシ付加体(FAGMA)30g、ジクロロメタン30g、トリエチルアミン7.8g、及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.024gを四つ口フラスコに仕込んだ。この混合溶液を0~10℃になるように氷浴で冷却した。これにクロルスルホン酸のジクロロメタン溶液(クロルスルホン酸7.48g+ジクロロメタン15g)を発熱に注意しながら、約30分間かけて、徐々に滴下した。滴下終了後、室温で3時間、反応させた。反応物に水100gを加えて、洗浄、分液操作を2回、繰り返した。有機層を取り出し、無水硫酸マグネシウムを5g加えて、一晩乾燥した。生成物(スルホン酸含有フッ素モノマー)の同定はIRスペクトル、1H-NMR、19F-NMRスペクトルより行った。
【0197】
-含フッ素アクリレートエステル重合体Bの合成-
製造例101において、モノマー組成を、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート60質量%、前記スルホン酸基含有フッ素モノマー20質量%、ポリエチレングリコールモノアクリレート(EO:10モル、日油株式会社製、AE-400)17.5質量%、及びアセトアセトキシエチルメタクリレート2.5質量%に変更した以外は、製造例101と同様にして、含フッ素アクリレートエステル重合体Bを合成した。得られた共重合体の重量平均分子量は17,000(ポリスチレン換算)であった。最後に、酢酸0.42gを加えて中和し、含フッ素アクリレートエステル重合体Bの20質量%溶液になるように水で希釈した。
【0198】
-ノズルプレートの作製-
前記製造例101と同じノズル基板のインク吐出側の面に、作製した含フッ素アクリレートエステル重合体Bの20質量%溶液をディッピング法にて塗布し、乾燥することにより、平均厚みが30nmの撥インク膜を形成した。
以上により、製造例102のノズルプレートBを作製した。この際、ノズル孔を水溶性樹脂にて、またノズル基板の裏面はテープにてマスキングし、撥インク膜形成後、剥離除去した。また、120℃で1時間加熱して撥インク膜を形成した。
【0199】
(製造例103)
<ノズルプレートCの作製>
含フッ素アクリレートエステル重合体溶液(オプツールDSX、ダイキン工業株式会社製)を用意した。
前記製造例101と同じノズル基板のインク吐出側の面に、前記含フッ素アクリレートエステル重合体溶液(オプツールDSX、ダイキン工業株式会社製)をディッピング法にて塗布し、乾燥することにより、平均厚みが20nmの撥インク膜を形成した。
以上により、製造例103のノズルプレートCを作製した。この際、ノズル孔を水溶性樹脂にて、またノズル基板の裏面はテープにてマスキングし、撥インク膜形成後、剥離除去した。また、120℃で1時間加熱して撥インク膜を形成した。
【0200】
(製造例104)
<ノズルプレートDの作製>
シリコーンレジン溶液(SR 2441 RESIN,東レダウコーニング株式会社製)を用意した。
前記製造例101と同じノズル基板のインク吐出側の面に、前記シリコーンレジン溶液をディッピング法にて塗布し、乾燥することにより、平均厚みが100nmの撥インク膜を形成した。以上により、製造例104のノズルプレートDを作製した。この際、ノズル孔を水溶性樹脂にて、またノズル基板の裏面はテープにてマスキングし、撥インク膜形成後、剥離除去した。これを大気下、150℃で2時間加熱硬化させて撥インク膜とした。
【0201】
(製造例105)
<ノズルプレートEの作製>
撥インク処理剤としては、サイトップCTX-105(商品名、旭硝子株式会社製)を、CT-solv.100(旭硝子株式会社製)とCT-solv.180(旭硝子株式会社製)とを体積比率1:1で混合した液で0.2質量%に希釈した液を使用した。
スピナー上にシリコーンゴムを載せ、この液を2mLシリコーンゴム上に滴下した。滴下後スピナー上で回転させ均一な膜を作製した。回転数は1st:1,000rpm,5秒間、2nd:3,000rpm,20秒間に設定した。
前記シリコーンゴム上に製造例101と同じノズル基板表面を押しつけ転写を行った。回数は3回、押しつけ圧は2kg/ヘッドで行った。
転写終了後ヘッドごと、150℃のオーブン中に2時間半投入し熱処理させ、製造例105のノズルプレートEを作製した。
【0202】
(製造例106)
<ノズルプレートFの作製>
撥インク処理剤としては、商品名:AF1600(テフロン(登録商標)AF、デュポン社製)を、商品名:フロリナートFC-75(3M社製)で0.5質量%に希釈した液を使用した。
製造例105と同様にして、スピナー上にシリコーンゴムを載せ、この液を2mLシリコーンゴム上に滴下した。滴下後スピナー上で回転させ均一な膜を作製した。回転数は1st:1,000rpm,5秒間、2nd:3,000rpm,20秒間に設定した。
前記シリコーンゴム上に実施例1と同じノズル基板表面を押しつけ転写を行った。回数は3回、押しつけ圧は2kg/ヘッドで行った。
転写終了後ヘッドごと、165℃のオーブン中に2時間30分間投入し熱処理させ、製造例106のノズルプレートFを作製した。
【0203】
-インク吐出工程(印刷工程)-
23±0.5℃、50±5%RHに調整された環境条件下、インクジェット印刷装置(IPSiO GXe-5500、リコー社製)を用い、インクの吐出量が均しくなるようにピエゾ素子の駆動電圧を変動させ、記録媒体(王子製紙社製:OKトップコート+_米坪量104.7g/m2)に同じ付着量のインクが付着するように設定した。
【0204】
<画像濃度>
各インクを用いて、Microsoft Word2000により作成した64pointのJIS X 0208(1997),2223の一般記号が記載されているチャートをMyPaper(リコー社製)に打ち出し、分光濃度計(X-Rite939、X-Rite社製)により前記記号を測色し、各色の画像濃度を下記の基準で評価した。印字モードはプリンタ添付のドライバで「普通紙-標準はやい」モードを「色補正なし」と改変したモードを使用した。なお、JIS X 0208(1997),2223は、外形が正四方形であって、記号全面がインクにより塗りつぶされている記号である。
〔評価基準〕
A:Black:1.25以上
Yellow:0.80以上
Magenta:1.00以上
Cyan:1.05以上
B:Black:1.20以上、1.25未満
Yellow:0.75以上、0.80未満
Magenta:0.95以上、1.00未満
Cyan:1.00以上、1.05未満
C:Black:1.15以上、1.20未満
Yellow:0.70以上、0.75未満
Magenta:0.90以上、0.95未満
Cyan:0.95以上、1.00未満
D:Black:1.15未満
Yellow:0.70未満
Magenta:0.90未満
Cyan:0.95未満
【0205】
<インク保存安定性>
前記粘度計を用い、保存前の粘度と、密封した容器中で60℃、7日保存後に測定した粘度から保存安定度を次式に従って求め、以下の評価基準に基づいて評価した。
【数1】
〔評価基準〕
A:100±5%以内。
B:100±5%超~10%未満。
C:100±10%以上。
【0206】
<通液性>
孔径が0.8μmのセルロースアセテートメンブランフィルター(アドバンテック東洋株式会社製_28CP)を用いて、空気圧を1kgf/cm2として、加圧濾過し、濾過通液量に対する濾過速度の低下を直線近似した傾き(減衰率)と最大濾過速度から、インクの通液性を評価した。
〔評価基準〕 通液性 良_A <――――――> D_悪い
A:減衰率が1.5×10-3/秒未満で、最大濾過速度が1.0g/秒以上である場合
B:減衰率が1.5×10-3/秒未満で、最大濾過速度が1.0g/秒未満である場合
C:減衰率が1.5×10-3/秒以上2.5×10-3/秒未満である場合
D:減衰率が2.5×10-3/秒以上である場合
【0207】
<吐出安定性-1> -連続吐出評価-
インクジェット印刷装置(IPSiO GXe-5500、リコー社製)のインクカートリッジから各色の吐出ヘッドへ個々に調整されたインクを各1Lずつ通した直後に、Microsoft Word2000により作成したA4サイズ用紙の面積の80%をベタ画像で塗りつぶしたチャートを、連続200枚、MyPaper(リコー社製)に打ち出し、さらに打ち出し後にノズルチェックチャートを打ち出し各ノズルの吐出乱れについて下記の基準で評価した。
印字モードはプリンタ添付のドライバで、普通紙のユーザー設定より「普通紙-標準はやい」モードを「色補正なし」と改変したモードを使用した。
〔評価基準〕
A:吐出乱れなし
B:若干吐出乱れあり
C:吐出乱れあり、又は吐出しない部分あり
D:激しい吐出乱れあり、又は吐出しないノズルが多い
【0208】
<吐出安定性-2> -ノズルプレートの撥インク時間の評価-
温度23℃±0.5℃、相対湿度50%±5%に調整された環境下、50mLのビーカーに表7に示す各インクを50g入れ、画像形成装置(IPSiO GXe-5500、株式会社リコー製)からノズルプレートを取り出して前記で作製したノズルプレートをピンセットで挟み、315mm/minの速度でインクに漬け、同じ速度で取り出した場合のノズルプレートの撥インク膜からの撥インク時間(インクの引け時間)を計測し、下記基準で評価した。
[評価基準]
A:撥インク時間が10秒間未満
B:撥インク時間が10秒間以上30秒間未満
C:撥インク時間が30秒間以上60秒間未満
D:撥インク時間が60秒間以上
前記撥インク時間が長いとノズルプレートがインクで濡れ易いため、連続吐出評価でノズル抜けし易い。
【0209】
<後退接触角>
前記で作製したノズルプレート表面に対し、25℃環境において、内径0.37μm0.18mmのシリンジニードルを装着したシリンジから表4、表5に示す各インクを2.0μL押し出し、収縮法によって、25℃での後退接触角(°)を自動接触角測定装置_DMo-501(協和界面科学社製)により測定した。
【0210】
<乾燥性>
図1に示す画像形成装置を使用し、画像濃度の場合と同じ一般記号を記載したチャートを、王子製紙社製:OKトップコート+ 米坪量104.7g/m
2に印字し、乾燥工程で100℃の温風を10秒間当てて乾燥させた後、転写ロールに画像部のインクが付着するかどうかについて、乾燥させた画像部を目視で観察し、次の基準で評価した。
〔評価基準〕
A:全く転写なし
B:実用上問題ない程度に僅かに転写あり
C:転写あり
D:激しく転写あり
【0211】
<耐アルコール性(定着性)>
各インクを用いて、Microsoft Word2000により作成した64pointのJIS X 0208(1997),2223の一般記号が記載されているチャートを塩ビメディアNIJ-PVCM(パナシア社製)に打ち出した。印字モードはプリンタ添付のドライバで「普通紙-標準きれい」モードを「色補正なし」と改変したモードを使用した。
エタノール0.5mLを綿棒に含ませて、前記で印刷したベタ画像部を10往復擦り、画像を目視観察して、以下の基準で評価した。
〔評価基準〕
A:画像部に変化なし
B:画像の判読は可能だがわずかに傷ができる
C:画像の判読は可能だが傷ができる
D:画像部が剥離し、記録メディア部が目視できる
【0212】