(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159941
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】円偏光板およびそれを用いる有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241031BHJP
C08F 20/40 20060101ALI20241031BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G02B5/30
C08F20/40
C08F290/06
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024148113
(22)【出願日】2024-08-30
(62)【分割の表示】P 2020017117の分割
【原出願日】2020-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2019022659
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】幡中 伸行
(72)【発明者】
【氏名】村野 耕太
(57)【要約】
【課題】
本発明は、高温環境下にて色変化の小さい優れた円偏光板並びに円偏光板付き有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、二色性色素を含む偏光膜と厚み10μm以上80μm以下の透明保護フィルムとが積層された偏光板と、重合性液晶化合物Bを含む組成物の硬化物である位相差膜と、を含む円偏光板であって、
前記位相差膜が厚み5μm以下を有し、
前記重合性液晶化合物Bが分子構造中にエステル結合を有する化合物であり、
前記偏光板が温度23℃で湿度50%における平衡含水率1.5質量%以下を有する円偏光板を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二色性色素を含む偏光膜と厚み10μm以上80μm以下の透明保護フィルムとが積層された偏光板と、重合性液晶化合物Bを含む組成物の硬化物である位相差膜と、を含む円偏光板であって、
前記位相差膜が厚み5μm以下を有し、
前記重合性液晶化合物Bが分子構造中にエステル結合を有する化合物であり、
前記偏光板が温度23℃で相対湿度50%における平衡含水率1.5質量%以下を有する円偏光板。
【請求項2】
二色性色素がアゾ色素である請求項1に記載の円偏光板。
【請求項3】
透明保護フィルムが環状オレフィン系樹脂である請求項1または2に記載の円偏光板。
【請求項4】
前記偏光膜は、重合性基としてアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する重合性液晶化合物Aの硬化物を更に含む請求項1~3のいずれかに記載の円偏光板。
【請求項5】
前記偏光膜がX線回折測定においてブラッグピークを示す請求項1~4のいずれかに記載の円偏光板。
【請求項6】
該重合性液晶化合物Aの硬化物が、スメクチック液晶相を示し水平配向状態で硬化されている請求項4に記載の円偏光板。
【請求項7】
前記位相差膜が下記式(1)を満たす請求項1~6いずれかに記載の円偏光板。
100 ≦ Re(550) ≦ 180 (1)
[式中、Re(550)は波長550nmにおける面内位相差値を表す。]
【請求項8】
前記位相差膜が式(2)を満たす、請求項1~7いずれかに記載の円偏光板。
Re(450)/Re(550)<1 (2)
[式中、Re(450)およびRe(550)はそれぞれ波長450nmおよび550nmにおける面内位相差値を表す。]
【請求項9】
前記位相差膜の遅相軸と前記偏光膜の吸収軸との成す角度が実質的に45°である請求項1~8のいずれかに記載の円偏光板。
【請求項10】
前記重合性液晶化合物Bが、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基の少なくとも一方の重合性基を有する請求項1~9のいずれかに記載の円偏光板。
【請求項11】
前記重合性液晶化合物Bが下記式(II)で表される化合物である請求項1~10のいずれかに記載の円偏光板。
【化1】
式(II)中、
Arは置換基を有していてもよい二価の芳香族基を表す。
G
1及びG
2はそれぞれ独立に、二価の芳香族基または二価の脂環式炭化水素基を表す。
L
1及びL
2はそれぞれ独立に、エステル構造を有する二価の連結基である。
T
1及びT
2はそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基である。
h及びiはそれぞれ独立に0~3の整数を表し、1≦h+i関係を満たす。ここで、2≦h+iである場合、T
1及びT
2、G
1及びG
2は、それぞれ互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
E
1及びE
2はそれぞれ独立に、炭素数1~17のアルカンジイル基を表し、ここで、アルカンジイル基に含まれる水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、アルカンジイル基に含まれる-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-で置換されていてもよく、-O-、-S-、-COO-を複数有する場合は互いに隣接しない。
P
1及びP
2は互いに独立に、重合性基又は水素原子を表し、少なくとも1つは重合性基である。
【請求項12】
偏光板は、偏光膜の片面のみに透明保護フィルムを積層している請求項1~11のいずれかに記載の円偏光板。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の円偏光板を含む有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円偏光板およびそれを用いる有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型ディスプレイの普及と共に、有機ELパネルを搭載したディスプレイ(有機EL表示装置)が普及している。有機ELパネルは内部の金属電極で外光が反射されてしまうため明瞭な黒表示が得られないという問題を生じる。この問題に対して、円偏光板を視認面に設けることによって、外光反射防止を抑制することができる。すなわち、視認者からの積層順としては、円偏光板→有機ELディスプレイである。円偏光板は、一般的に偏光板と位相差膜を積層する事で作製することができる。偏光板としては、一般的にPVA(ポリビニルアルコール)を延伸しヨウ素で染色した偏光子に透明保護フィルムを積層したものが、位相差膜としては、延伸フィルムや液晶分子配向させた位相差膜(λ/4板)が用いられる。この際、長波長ほど複屈折性が大きくなる性質(逆波長分散特性)を示すようなλ/4板が好適に用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
有機EL表示装置においては、使用環境によって有機EL層が酸素並びに水分によって劣化し発光しなくなるという課題があり、有機ELパネルの両面をガラス等の透湿度の低い基材によって保護される場合がある。また、パネルの最表面も耐水面から透湿度の低い基材によって保護される場合がある。しかしながら、このような構成時、位相差膜の種類によっては高温環境下で色変化を生じるという問題があることがわかった。鋭意検討した結果、偏光板を形成する保護フィルムやポリビニルアルコール等が有するわずかな水分が系内に残留し、その水分によって位相差膜の加水分解が起こり、これが色変化を引き起こす事がわかった。
【0004】
そこで、本発明においては、高温環境下にて色変化の小さい優れた円偏光板並びに円偏光板付き有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の好適な態様[1]~[12]に関する。
[1]二色性色素を含む偏光膜と厚み10μm以上80μm以下の透明保護フィルムとが積層された偏光板と、重合性液晶化合物Bを含む組成物の硬化物である位相差膜と、を含む円偏光板であって、
前記位相差膜が厚み5μm以下を有し、
前記重合性液晶化合物Bが分子構造中にエステル結合を有する化合物であり、
前記偏光板が温度23℃で相対湿度50%における平衡含水率1.5質量%以下を有する円偏光板。
[2]二色性色素がアゾ色素である[1]に記載の円偏光板。
[3]透明保護フィルムが環状オレフィン系樹脂である[1]または[2]に記載の円偏光板。
[4]前記偏光膜は、重合性基としてアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を有する重合性液晶化合物Aの硬化物を更に含む[1]~[3]のいずれかに記載の円偏光板。
[5]前記偏光膜がX線回折測定においてブラッグピークを示す[1]~[4]のいずれかに記載の円偏光板。
[6]該重合性液晶化合物Aの硬化物が、スメクチック液晶相を示し水平配向状態で硬化されている[4]に記載の円偏光板。
[7]前記位相差膜が下記式(1)を満たす[1]~[6]いずれかに記載の円偏光板。
100 ≦ Re(550) ≦ 180 (1)
[式中、Re(550)は波長550nmにおける面内位相差値を表す。]
[8]前記位相差膜が式(2)を満たす、[1]~[7]いずれかに記載の円偏光板。
Re(450)/Re(550)<1 (2)
[式中、Re(450)およびRe(550)はそれぞれ波長450nmおよび550nmにおける面内位相差値を表す。]
[9]前記位相差膜の遅相軸と前記偏光膜の吸収軸との成す角度が実質的に45°である[1]~[8]のいずれかに記載の円偏光板。
[10]前記重合性液晶化合物Bが、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基の少なくとも一方の重合性基を有する[1]~[9]のいずれかに記載の円偏光板。
[11]前記重合性液晶化合物Bが下記式(II)で表される化合物である[1]~[10]のいずれかに記載の円偏光板。
【化1】
式(II)中、
Arは置換基を有していてもよい二価の芳香族基を表す。
G
1及びG
2はそれぞれ独立に、二価の芳香族基または二価の脂環式炭化水素基を表す。
L
1及びL
2はそれぞれ独立に、エステル構造を有する二価の連結基である。
T
1及びT
2はそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基である。
h及びiはそれぞれ独立に0~3の整数を表し、1≦h+i関係を満たす。ここで、2≦h+iである場合、T
1及びT
2、G
1及びG
2は、それぞれ互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
E
1及びE
2はそれぞれ独立に、炭素数1~17のアルカンジイル基を表し、ここで、アルカンジイル基に含まれる水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、アルカンジイル基に含まれる-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-で置換されていてもよく、-O-、-S-、-COO-を複数有する場合は互いに隣接しない。
P
1及びP
2は互いに独立に、重合性基又は水素原子を表し、少なくとも1つは重合性基である。
[12]偏光板は、偏光膜の片面のみに透明保護フィルムを積層している[1]~[11]のいずれかに記載の円偏光板。
[13][1]~[12]のいずれかに記載の円偏光板を含む有機EL表示装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明の円偏光板は、高温環境下であっても色変化を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
円偏光板は、偏光板と位相差膜とから構成されている。本発明では、偏光板の温度23℃で湿度50%における平衡含水率を1.5質量%以下に制御することが必要である。平衡含水率は、一定の温度、湿度の空気中において材質中の水分量がその雰囲気中で平衡に達した状態における含水率であると定義される。本発明では、偏光板(サイズ:幅4cm長さ10cm)を温度23℃、相対湿度50%のクリーンルームで1日間保持し質量を測定した後、その偏光板を105℃1時間乾燥させ質量を測定し、以下の式で計算した値を平衡含水率とする:
(温度23℃で相対湿度50%での質量-105℃で1時間乾燥後の質量)÷(温度23℃で相対湿度50%での質量)×100
【0008】
本発明では、偏光板の平衡含水率が1.5質量%よりも高いと、高温下での円偏光板の色変化が起こりやすくなり好ましくない。偏光板の平衡含水率は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。偏光板の平衡含水率の下限は、0であってもよい。偏光板の平衡含水率が1.5質量%より高いときは、乾燥することにより、平衡含水率を下げることができる。乾燥は、加熱の他、乾燥環境に静置する等適宜行われる。
【0009】
本発明の円偏光板は、二色性色素を含む偏光膜と厚み10μm以上80μm以下の透明保護フィルムとが積層された偏光板、及び重合性液晶化合物Bを含む組成物の硬化物である位相差膜を含む。
【0010】
<偏光膜>
偏光膜は、光吸収異方性の機能を有する膜である。偏光膜は、二色性色素を吸着させた延伸フィルムであってもよいし、水平配向された重合性液晶化合物と水平配向された二色性色素とを含む組成物の硬化物であってもよい。前記平衡含水率の観点から偏光膜は重合性液晶化合物の重合体からなる偏光膜の方がより好ましい。
【0011】
二色性色素を吸着させた延伸フィルムを偏光膜として含むフィルムは通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造される。
【0012】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体が用いられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
【0013】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールも使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000~10,000程度であり、好ましくは1,500~5,000の範囲である。
【0014】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光膜の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は、例えば、10~150μm程度とすることができる。
【0015】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、または染色の後で行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶媒を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3~8倍程度である。
【0016】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法によって行われる。
【0017】
二色性色素として、具体的には、ヨウ素や二色性の有機染料が用いられる。二色性の有機染料としては、C.I.DIRECT RED 39などのジスアゾ化合物からなる二色性直接染料および、トリスアゾ、テトラキスアゾなどの化合物からなる二色性直接染料等が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理前に、水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0018】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。
この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100質量部あたり、通常、0.01~1質量部程度である。またヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常、0.5~20質量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20~40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20~1,800秒程度である。
【0019】
一方、二色性色素として二色性の有機染料を用いる場合は通常、水溶性二色性染料を含む水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。
この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100質量部あたり、通常、1×10-4~10質量部程度であり、好ましくは1×10-3~1質量部であり、さらに好ましくは1×10-3~1×10-2質量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含んでいてもよい。染色に用いる二色性染料水溶液の温度は、通常、20~80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常、10~1,800秒程度である。
【0020】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬する方法により行うことができる。このホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100質量部あたり、通常2~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。二色性色素としてヨウ素を用いた場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましく、その場合のヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常0.1~15質量部程度であり、好ましくは5~12質量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常60~1,200秒程度であり、好ましくは150~600秒、さらに好ましくは200~400秒である。ホウ酸処理の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50~85℃、さらに好ましくは60~80℃である。
【0021】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬する方法により行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5~40℃程度である。
また浸漬時間は、通常1~120秒程度である。
【0022】
水洗後に乾燥処理が施されて、偏光膜が得られる。乾燥処理は例えば、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30~100℃程度であり、好ましくは50~80℃である。乾燥処理の時間は、通常60~600秒程度であり、好ましくは120~600秒である。乾燥処理により、偏光子の水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、通常5~20質量%程度であり、好ましくは8~15質量%である。水分率が5質量%を下回ると、偏光膜の可撓性が失われ、偏光膜がその乾燥後に損傷したり、破断したりすることがある。また、水分率が20質量%を上回ると、偏光膜の熱安定性が悪くなる可能性がある。
【0023】
こうしてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、ホウ酸処理、水洗および乾燥をして得られる偏光膜の厚さは好ましくは5~40μmである。
【0024】
偏光膜が、水平配向された重合性液晶化合物と水平配向された二色性色素とを含む組成物(以下、重合性液晶組成物(A)という場合がある)の硬化物である偏光膜の場合、重合性液晶化合物はサーモトロピック液晶でもリオトロピック液晶でもよいが、二色性色素と混合する場合にはサーモトロピック液晶が好ましい。サーモトロピック液晶である場合は、ネマチック液晶相を示すサーモトロピック性液晶化合物であってもよいし、スメクチック液晶相を示すサーモトロピック性液晶化合物であってもよい。重合性液晶化合物を重合反応により硬化膜として偏光機能を発現する際には、重合性液晶化合物が示す液晶状態は、スメクチック相であることが好ましい。このような化合物の具体例は後述する。
【0025】
重合性液晶組成物(A)は、少なくとも1つの重合性基を有する液晶化合物であってし、好ましくはスメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物(以下、「重合性液晶化合物(A)」ともいう)を含んでなる。スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物を用いることにより、配向秩序度の高い偏光膜を形成することができる。
重合性液晶化合物(A)の示す液晶状態は、好ましくはスメクチック相(スメクチック液晶状態)であり、より高い配向秩序度を実現し得る観点から、高次スメクチック相(高次スメクチック液晶状態)であることがより好ましい。ここで、高次スメクチック相とは、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相およびスメクチックL相を意味し、これらの中でも、スメクチックB相、スメクチックF相およびスメクチックI相がより好ましい。液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよいが、緻密な膜厚制御が可能な点でサーモトロピック性液晶が好ましい。また、重合性液晶化合物はモノマーであってもよいが、重合性基が重合したオリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0026】
重合性液晶化合物(A)は、少なくとも1つの重合性基を有する液晶化合物である。ここで、重合性基とは、重合開始剤から発生する活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性液晶化合物(A)が有する重合性基としては、例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、ラジカル重合性基が好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基がより好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が更に好ましい。
【0027】
重合性液晶化合物(A)としては、少なくとも1つの重合性基を有する液晶化合物であれば特に限定されず、公知の重合性液晶化合物を用いることができ、例えば、下記式(A1)で表される化合物(以下、「重合性液晶化合物(A1)」ともいう)が挙げられる。
U1-V1-W1-(X1-Y1-)n-X2-W2-V2-U2 (A1)
[式(A1)中、
X1及びX2は、互いに独立して、2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基を表し、ここで、該2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよく、該2価の芳香族基又は2価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子に置換されていてもよい。好ましくは、X1及びX2のうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基又は置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基である。
Y1は、単結合又は二価の連結基である。
nは1~3であり、nが2以上の場合、複数のX1は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。X2は、複数のX1のうちのいずれか又は全てと同じであってもよいし、異なっていてもよい。nが2以上の場合、複数のY1は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。液晶性の観点からnは2以上が好ましい。
U1は、水素原子又は(メタ)アクリロイルオキシ基を表わす。
U2は、(メタ)アクリロイルオキシ基を表わす。
W1及びW2は、互いに独立して、単結合又は二価の連結基である。
V1及びV2は、互いに独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-、-CO-、-S-又はNH-に置き換わっていてもよい。]
【0028】
重合性液晶化合物(A1)において、X1及びX2は、互いに独立して、好ましくは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、X1及びX2のうちの少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、トランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基であることが好ましい。置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は、置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基が任意に有する置換基としては、メチル基、エチル基及びブチル基などの炭素数1~4のアルキル基、シアノ基及び塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子が挙げられる。好ましくは無置換である。
【0029】
重合性液晶化合物(A1)は、式(A1)中、式(A1-1):
-(X1-Y1-)n-X2- (A1-1)
〔式中、X1、Y1、X2及びnはそれぞれ上記と同じ意味を示す。〕
で示される部分〔以下、部分構造(A1-1)と称する。〕が非対称構造であることが、スメクチック液晶性を発現し易い点で、好ましい。
部分構造(A1-1)が非対称構造である重合性液晶化合物(A1)としては、例えば、nが1であり、1つのX1とX2とが互いに異なる構造である重合性液晶化合物(A1)が挙げられる。また、nが2であり、2つのY1が互いに同じ構造である化合物であって、2つのX1が互いに同じ構造であり、1つのX2はこれら2つのX1とは異なる構造である重合性液晶化合物(A1)、2つのX1のうちのW1に結合するX1が、他方のX1及びX2とは異なる構造であり、他方のX1とX2とは互いに同じ構造である重合性液晶化合物(A1)も挙げられる。さらに、nが3であり、3つのY1が互いに同じ構造である化合物であって、3つのX1及び1つのX2のうちのいずれか1つが他の3つの全てと異なる構造である重合性液晶化合物(A1)が挙げられる。
【0030】
Y1は、-CH2CH2-、-CH2O-、-CH2CH2O-、-COO-、-OCOO-、単結合、-N=N-、-CRa=CRb-、-C≡C-、-CRa=N-又は-CO-NRa-が好ましい。Ra及びRbは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表わす。Y1は、-CH2CH2-、-COO-又は単結合であることがより好ましく、複数のY1が存在する場合、X2と結合するY1は、-CH2CH2-又は-CH2O-であることがより好ましい。X1及びX2が全て同一構造である場合、互いに異なる結合方式である2以上のY1が存在することが好ましい。互いに異なる結合方式である複数のY1が存在する場合には、非対称構造となるため、スメクチック液晶性が発現しやすい傾向にある。
【0031】
U2は、(メタ)アクリロイルオキシ基である。U1は、水素原子又は(メタ)アクリロイルオキシ基であり、好ましくは(メタ)アクリロイルオキシ基である。偏光フィルムの層間の密着性及び耐熱性向上の観点から、U1及びU2がともに(メタ)アクリロイルオキシ基であることが好ましい。(メタ)アクリロイルオキシ基は重合している状態であってもよいし、未重合の状態であってもよいが、好ましくは未重合の状態である。
【0032】
V1及びV2で表されるアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基及びイコサン-1,20-ジイル基等が挙げられる。V1及びV2は、好ましくは炭素数2~12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6~12のアルカンジイル基である。
【0033】
該アルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基及びハロゲン原子等が挙げられるが、該アルカンジイル基は、無置換であることが好ましく、無置換の直鎖状アルカンジイル基であることがより好ましい。
【0034】
W1及びW2は、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-又は-OCOO-が好ましく、単結合又は-O-がより好ましい。
【0035】
重合性液晶化合物(A)は、具体的には式(A-a)~(A-i)により示される構造を有する重合性液晶化合物であってスメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物であることがより好ましい。高次スメクチック液晶性を示しやすいという観点から式(A-a)、式(A-b)又は式(A-c)で示される構造を有することがより好ましい。なお、式(A-a)~式(A-i)において、*は結合手(単結合)を表す。
【0036】
【0037】
重合性液晶化合物(A1)としては、具体的には例えば、式(A-1)~式(A-25)で表される化合物が挙げられる。重合性液晶化合物(A1)がシクロヘキサン-1,4-ジイル基を有する場合、そのシクロヘキサン-1,4-ジイル基は、トランス体であることが好ましい。
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
これらの中でも、式(A-2)、式(A-3)、式(A-4)、式(A-5)、式(A-6)、式(A-7)、式(A-8)、式(A-13)、式(A-14)、式(A-15)、式(A-16)および式(A-17)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。重合性液晶化合物(A1)として、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
重合性液晶化合物(A1)は、例えば、Lub等、Recl.Trav.Chim.Pays-Bas、115、321-328(1996)、または特許第4719156号などに記載の公知の方法で製造できる。
【0045】
重合性液晶組成物(A)は、本発明の効果を損なわない限り、重合性液晶化合物(A)以外の他の重合性液晶化合物を含んでいてもよいが、配向秩序度の高い偏光膜を得る観点から、重合性液晶組成物(A)に含まれる全重合性液晶化合物の総質量に対する重合性液晶化合物(A)の割合は、好ましくは51質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0046】
また、重合性液晶組成物(A)が2種以上の重合性液晶化合物(A)を含む場合、そのうちの少なくとも1種が重合性液晶化合物(A1)であってもよく、その全てが重合性液晶化合物(A1)であってもよい。複数の重合性液晶化合物を組み合わせることにより、液晶-結晶相転移温度以下の温度でも一時的に液晶性を保持することができる場合がある。
【0047】
重合性液晶組成物(A)における重合性液晶化合物の含有量は、重合性液晶組成物の固形分に対して、好ましくは40~99.9質量%であり、より好ましくは60~99質量%であり、さらに好ましくは70~99質量%である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向性が高くなる傾向がある。なお、本明細書において、固形分とは、重合性液晶組成物から溶剤を除いた成分の合計量をいう。
【0048】
重合性液晶組成物(A)は二色性色素を含んでなる。ここで、二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素を意味する。二色性色素は、液晶化合物とともに配向して二色性を示す色素であり、二色性色素自身が重合性を有していてもよいし、液晶性を有していてもよい。本発明において用い得る二色性色素は、上記性質を有するものであれば特に制限されず、染料であっても、顔料であってもよい。また、2種以上の染料または顔料をそれぞれ組み合わせて用いてもよいし、染料と顔料とを組み合わせて用いてもよい。
【0049】
二色性色素としては、300~700nmの範囲に極大吸収波長(λMAX)を有するものが好ましい。このような二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素およびアントラキノン色素等が挙げられる。
【0050】
アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素およびスチルベンアゾ色素等が挙げられ、ビスアゾ色素およびトリスアゾ色素が好ましく、例えば、式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」ともいう。)が挙げられる。
K1(-N=N-K2)p-N=N-K3 (I)
[式(I)中、K1およびK3は、互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基または置換基を有していてもよい1価の複素環基を表わす。K2は、置換基を有していてもよいp-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基または置換基を有していてもよい2価の複素環基を表わす。pは1~4の整数を表わす。pが2以上の整数である場合、複数のK2は互いに同一でも異なっていてもよい。可視域に吸収を示す範囲で-N=N-結合が-C=C-、-COO-、-NHCO-、-N=CH-結合に置き換わっていてもよい。]
【0051】
1価の複素環基としては、例えば、キノリン、チアゾール、ベンゾチアゾール、チエノチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾールなどの複素環化合物から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。2価の複素環基としては、前記複素環化合物から2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0052】
K1およびK3におけるフェニル基、ナフチル基および1価の複素環基、並びにK2におけるp-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基および2価の複素環基が任意に有する置換基としては、炭素数1~4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などの炭素数1~4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基などの炭素数1~4のフッ化アルキル基;シアノ基;ニトロ基;ハロゲン原子;アミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジノ基などの置換または無置換アミノ基(置換アミノ基とは、炭素数1~6のアルキル基を1つまたは2つ有するアミノ基、あるいは2つの置換アルキル基が互いに結合して炭素数2~8のアルカンジイル基を形成しているアミノ基を意味する。無置換アミノ基は-NH2である。)等が挙げられる。
【0053】
化合物(I)の中でも、以下の式(I-1)~式(I-6)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【化8】
[式(I-1)~(I-8)中、
B
1~B
30は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換または無置換のアミノ基(置換アミノ基および無置換アミノ基の定義は前記のとおり)、塩素原子またはトリフルオロメチル基を表わす。
n1~n4は、互いに独立に0~3の整数を表わす。
n1が2以上である場合、複数のB
2は互いに同一でも異なっていてもよく、
n2が2以上である場合、複数のB
6は互いに同一でも異なっていてもよく、
n3が2以上である場合、複数のB
9は互いに同一でも異なっていてもよく、
n4が2以上である場合、複数のB
14は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0054】
前記アントラキノン色素としては、式(I-9)で表される化合物が好ましい。
【化9】
[式(I-9)中、
R
1~R
8は、互いに独立して、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
xまたはハロゲン原子を表わす。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0055】
前記オキサゾン色素としては、式(I-10)で表される化合物が好ましい。
【化10】
[式(I-8)中、
R
9~R
15は、互いに独立して、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
xまたはハロゲン原子を表わす。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0056】
前記アクリジン色素としては、式(I-11)で表される化合物が好ましい。
【化11】
[式(I-11)中、
R
16~R
23は、互いに独立して、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
xまたはハロゲン原子を表わす。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
式(I-9)、式(I-10)および式(I-11)において、R
xの炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基等が挙げられ、炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基およびナフチル基等が挙げられる。
【0057】
前記シアニン色素としては、式(I-12)で表される化合物および式(I-13)で表される化合物が好ましい。
【化12】
[式(I-12)中、
D
1およびD
2は、互いに独立に、式(I-12a)~式(I-12d)のいずれかで表される基を表わす。
【化13】
n5は1~3の整数を表わす。]
【化14】
[式(I-13)中、
D
3およびD
4は、互いに独立に、式(I-13a)~式(1-13h)のいずれかで表される基を表わす。
【化15】
n6は1~3の整数を表わす。]
【0058】
重合性液晶組成物(A)における二色性色素の含有量は、用いる二色性色素の種類などに応じて適宜決定し得るが、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.1~50質量部であり、より好ましくは0.1~20質量部であり、さらに好ましくは0.1~12質量部である。二色性色素の含有量が、上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱し難く、高い配向秩序度を有する偏光膜を得ることができる。
【0059】
重合性液晶組成物(A)は、更に重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であり、より低温条件下で、重合反応を開始できる点で、光重合開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカルまたは酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。重合開始剤は単独または二種以上組み合わせて使用できる。
【0060】
重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩等が挙げられる。
【0061】
ベンゾイン化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルおよびベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0062】
ベンゾフェノン化合物としては、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンおよび2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等が挙げられる。
【0063】
アルキルフェノン化合物としては、ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1,2-ジフェニル-2,2-ジメトキシエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマー等が挙げられる。
【0064】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドおよびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0065】
トリアジン化合物としては、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチ_ル)-6-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジンおよび2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0066】
重合開始剤には、市販のものを用いることができる。市販の重合開始剤としては、例えば、“イルガキュア(Irgacure)(登録商標)907”、“イルガキュア(登録商標)184”、“イルガキュア(登録商標)651”、“イルガキュア(登録商標)819”、“イルガキュア(登録商標)250”、“イルガキュア(登録商標)369”(チバ・ジャパン(株));“セイクオール(登録商標)BZ”、“セイクオール(登録商標)Z”、“セイクオール(登録商標)BEE”(精工化学(株));“カヤキュアー(kayacure)(登録商標)BP100”(日本化薬(株));“カヤキュアー(登録商標)UVI-6992”(ダウ社製);“アデカオプトマーSP-152”、“アデカオプトマーSP-170”((株)ADEKA);“TAZ-A”、“TAZ-PP”(日本シイベルヘグナー社);および“TAZ-104”(三和ケミカル社)等が挙げられる。
【0067】
重合性液晶組成物(A)が重合開始剤を含有する場合、その含有量は、重合性液晶組成物(A)に含まれる重合性液晶化合物の種類およびその量に応じて適宜決定すればよいが、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。重合性開始剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができる。
【0068】
重合性液晶組成物(A)が光重合開始剤を含有する場合、光増感剤をさらに含有していてもよい。光増感剤を用いることにより重合性液晶化合物の重合反応をより促進させることができる。光増感剤としては、キサントン、チオキサントンなどのキサントン化合物(例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンなど);アントラセン、アルコキシ基含有アントラセン(例えば、ジブトキシアントラセンなど)などのアントラセン化合物;フェノチアジンおよびルブレン等が挙げられる。光増感剤は単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0069】
重合性液晶組成物(A)における光増感剤の含有量は、光重合開始剤および重合性液晶化合物の種類およびその量に応じて適宜決定すればよいが、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。
【0070】
重合性液晶組成物(A)は、更にレベリング剤を含んでいてもよい。レベリング剤は、重合性液晶組成物(A)の流動性を調整し、重合性液晶組成物(A)を塗布することにより得られる塗膜をより平坦にする機能を有し、具体的には、界面活性剤が挙げられる。レベリング剤としては、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤およびフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。レベリング剤は単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0071】
ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤としては、例えば、“BYK-350”、“BYK-352”、“BYK-353”、“BYK-354”、“BYK-355”、“BYK-358N”、“BYK-361N”、“BYK-380”、“BYK-381”および“BYK-392”(BYK Chemie社)が挙げられる。
【0072】
フッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤としては、例えば、“メガファック(登録商標)R-08”、同“R-30”、同“R-90”、同“F-410”、同“F-411”、同“F-443”、同“F-445”、同“F-470”、同“F-471”、同“F-477”、同“F-479”、同“F-482”および同“F-483”(DIC(株));“サーフロン(登録商標)S-381”、同“S-382”、同“S-383”、同“S-393”、同“SC-101”、同“SC-105”、“KH-40”および“SA-100”(AGCセイミケミカル(株));“E1830”、“E5844”((株)ダイキンファインケミカル研究所);“エフトップEF301”、“エフトップEF303”、“エフトップEF351”および“エフトップEF352”(三菱マテリアル電子化成(株))が挙げられる。
【0073】
重合性液晶組成物(A)におけるレベリング剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.05~5質量部が好ましく、0.05~3質量部がより好ましい。レベリング剤の含有量が前記範囲内であると、重合性液晶化合物を水平配向させやすく、かつ、ムラが生じ難く、より平滑な偏光膜を得られる傾向がある。
【0074】
重合性液晶組成物(A)は、更に重合開始剤、光増感剤およびレベリング剤、以外の他の添加剤を含有してよい。他の添加剤としては、例えば、離型剤、安定剤、ブルーイング剤等の着色剤、難燃剤および滑剤などが挙げられる。重合性液晶組成物(A)が他の添加剤を含有する場合、他の添加剤の含有量は、重合性液晶組成物(A)の固形分に対して、0%を超えて20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0%を超えて10質量%以下である。
【0075】
重合性液晶組成物(A)は、更に溶剤を含んでいてもよい。一般にスメクチック液晶性を示す化合物は粘度が高いため、重合性液晶組成物に溶媒を加えることで塗布が容易であり、結果として偏光膜の形成がし易くなる場合が多い。溶剤は、重合性液晶化合物および二色性色素の溶解性に応じて適宜選択することができ、具体的には例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤、および、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、単独または2種以上組み合わせて使用できる。溶剤の含有量は、重合性液晶組成物を構成する固形成分100質量部に対して、好ましくは100~1900質量部であり、より好ましくは150~900質量部であり、さらに好ましくは180~600質量部である。
【0076】
重合性液晶組成物(A)は、従来公知の重合性液晶組成物の調製方法により製造することができ、通常、重合性液晶化合物および二色性色素、並びに必要に応じて上述の添加剤および溶剤等を混合、撹拌することにより調製することができる。
【0077】
重合性液晶組成物(A)は、スメクチック液晶相を示し水平配向状態で硬化する重合性液晶化合物を含む場合、二色性色素の光劣化に対する抑制効果に優れており、偏光性能の経時的な低下が生じ難い偏光膜を該重合性液晶組成物(A)より得ることができる。特に、スメクチック液晶相を示し水平配向状態で硬化する重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物(A)より偏光膜をする場合、配向秩序度が高い偏光膜を得ることができる。
【0078】
配向秩序度の高い偏光膜は、X線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られる。ブラッグピークとは、分子配向の面周期構造に由来するピークを意味する。したがって、本発明の重合性液晶組成物から形成される偏光膜において、重合性液晶化合物またはその重合体が、X線回折測定において該偏光膜がブラッグピークを示すように配向していることが好ましく、光を吸収する方向に重合性液晶化合物の分子が配向する「水平配向」であることがより好ましい。本発明においては分子配向の面周期間隔が3.0~6.0Åである偏光膜が好ましい。ブラッグピークを示すような高い配向秩序度は、用いる重合性液晶化合物の種類、二色性色素の種類やその量等を制御することにより実現し得る。
【0079】
本発明における偏光膜は、例えば、重合性液晶組成物(A)の塗膜を形成すること、
前記塗膜から溶剤を除去すること、
重合性液晶化合物(A)が液体相に相転移する温度以上まで昇温した後降温して、該重合性液晶化合物をスメクチック相(スメクチック液晶状態)に相転移させること、および、
前記スメクチック相(スメクチック液晶状態)を保持したまま重合性液晶化合物を重合させること
を含む方法により製造することができる。
【0080】
重合性液晶組成物(A)の塗膜の形成は、例えば、基材上や後述する配向膜上などに重合性液晶組成物(A)、特に、溶剤を加えて粘度を調整した重合性液晶組成物(A)(以下、「偏光膜形成用組成物」ともいう)を塗布することにより行うことができる。また、本発明の偏光板を構成する位相差膜やその他の層上に偏光膜形成用組成物を直接塗布してもよい。
【0081】
偏光膜形成用組成物を基材等に塗布する方法としては、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法が挙げられる。
【0082】
次いで、偏光膜形成用組成物から得られた塗膜中に含まれる重合性液晶化合物(A)が重合しない条件で、溶剤を乾燥等により除去することにより、乾燥塗膜が形成される。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0083】
さらに、重合性液晶化合物(A)を液体相に相転移させるため、重合性液晶化合物が液体相に相転移する温度以上まで昇温した後降温し、該重合性液晶化合物をスメクチック相(スメクチック液晶状態)に相転移させる。かかる相転移は、前記塗膜中の溶媒除去後に行ってもよいし、溶媒の除去と同時に行ってもよい。
【0084】
重合性液晶化合物(A)のスメクチック液晶状態を保持したまま、重合性液晶化合物(A)を重合させることにより、重合性液晶組成物(A)の硬化層として偏光膜が形成される。重合方法としては光重合法が好ましい。光重合において、乾燥塗膜に照射する光としては、当該乾燥塗膜に含まれる光重合開始剤の種類、重合性液晶化合物(A)の種類(特に、重合性液晶化合物(A)が有する重合性基の種類)およびその量に応じて適宜選択される。その具体例としては、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線およびγ線からなる群より選択される1種以上の光や活性電子線が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点や、光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって、光重合可能なように、重合性液晶組成物に含有される重合性液晶化合物や光重合開始剤の種類を選択しておくことが好ましい。また、重合時に、適切な冷却手段により乾燥塗膜を冷却しながら、光照射することで、重合温度を制御することもできる。このような冷却手段の採用により、より低温で重合性液晶化合物の重合を実施すれば、基材が比較的耐熱性が低いものを用いたとしても、適切に偏光膜を形成できる。光重合の際、マスキングや現像を行うなどによって、パターニングされた偏光膜を得ることもできる。
【0085】
前記活性エネルギー線の光源としては、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0086】
紫外線照射強度は、通常、10~3,000mW/cm2である。紫外線照射強度は、好ましくは光重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。光を照射する時間は、通常0.1秒~10分であり、好ましくは1秒~5分、より好ましくは5秒~3分、さらに好ましくは10秒~1分である。このような紫外線照射強度で1回または複数回照射すると、その積算光量は、10~3,000mJ/cm2、好ましくは50~2,000mJ/cm2、より好ましくは100~1,000mJ/cm2である。
【0087】
偏光膜は、重合性液晶化合物(A)がスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合して得られる場合、前記二色性色素の作用にも伴い、従来のホストゲスト型偏光フィルム(すなわち、ネマチック相の液晶状態からなる偏光膜)と比較して、偏光性能が高いという利点がある。さらに、二色性色素やリオトロピック液晶のみを塗布したものと比較して、強度に優れるという利点もある。
【0088】
偏光膜の厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択でき、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.3~4μm、さらに好ましくは0.5~3μmである。
【0089】
偏光膜は配向膜上に形成されることが好ましい。該配向膜は、重合性液晶化合物(A)を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。配向膜としては、重合性液晶化合組成物(A)の塗布等により溶解しない溶剤耐性を有し、また、溶剤の除去や重合性液晶化合物(A)の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。かかる配向膜としては、配向性ポリマーを含む配向膜、光配向膜および表面に凹凸パターンや複数の溝を有するグルブ配向膜、配向方向に延伸してある延伸フィルム等が挙げられ、配向角の精度および品質の観点から、光配向膜が好ましい。
【0090】
配向性ポリマーとしては、例えば、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミドおよびその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸エステル類が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。配向性ポリマーは単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0091】
配向性ポリマーを含む配向膜は、通常、配向性ポリマーが溶剤に溶解した組成物(以下、「配向性ポリマー組成物」ということがある)を基材に塗布し、溶剤を除去する、または、配向性ポリマー組成物を基材に塗布し、溶剤を除去し、ラビングする(ラビング法)ことで得られる。溶剤としては、偏光膜を形成する際に用い得る溶剤として先に例示した溶剤と同様のものが挙げられる。
【0092】
配向性ポリマー組成物中の配向性ポリマーの濃度は、配向性ポリマー材料が、溶剤に完溶できる範囲であればよいが、溶液に対して固形分換算で0.1~20%が好ましく、0.1~10%程度がさらに好ましい。
【0093】
配向性ポリマー組成物として、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業(株)製)、オプトマー(登録商標、JSR(株)製)などが挙げられる。
【0094】
配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法としては、偏光膜形成用組成物を基材へ塗布する方法として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0095】
配向性ポリマー組成物に含まれる溶剤を除去する方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0096】
配向膜に配向規制力を付与するために、必要に応じてラビング処理を行うことができる(ラビング法)。
【0097】
ラビング法により配向規制力を付与する方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を基材に塗布しアニールすることで基材表面に形成された配向性ポリマーの膜を、接触させる方法が挙げられる。
【0098】
光配向膜は、通常、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーと溶剤とを含む組成物(以下、「光配向膜形成用組成物」ともいう)を基材に塗布し、偏光(好ましくは、偏光UV)を照射することで得られる。光配向膜は、照射する偏光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御できる点でより好ましい。
【0099】
光反応性基とは、光照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光照射により生じる分子の配向誘起または異性化反応、二量化反応、光架橋反応もしくは光分解反応等の液晶配向能の起源となる光反応に関与する基が挙げられる。中でも、二量化反応または光架橋反応に関与する基が、配向性に優れる点で好ましい。光反応性基として、不飽和結合、特に二重結合を有する基が好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)および炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する基が特に好ましい。
【0100】
C=C結合を有する光反応性基としては、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基およびシンナモイル基等が挙げられる。
C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基、芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、および、アゾキシベンゼン構造を有する基等が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基およびマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリ-ル基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、ハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0101】
中でも、光二量化反応に関与する光反応性基が好ましく、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向膜が得られやすいという点で、シンナモイル基およびカルコン基が好ましい。光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。
【0102】
光配向膜形成用組成物を基材上に塗布することにより、基材上に光配向誘起層を形成することができる。該組成物に含まれる溶剤としては、偏光膜を形成する際に用い得る溶剤として先に例示した溶剤と同様のものが挙げられ、光反応性基を有するポリマーあるいはモノマーの溶解性に応じて適宜選択することができる。
【0103】
光配向膜形成用組成物中の光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの含有量は、ポリマーまたはモノマーの種類や目的とする光配向膜の厚みによって適宜調節できるが、光配向膜形成用組成物の質量に対して、少なくとも0.2質量%とすることが好ましく、0.3~10質量%の範囲がより好ましい。光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲で、光配向膜形成用組成物は、ポリビニルアルコ-ルやポリイミドなどの高分子材料や光増感剤を含んでいてもよい。
【0104】
光配向膜形成用組成物を基材に塗布する方法としては、配向性組成物を基材に塗布する方法と同様の方法が挙げられる。塗布された光配向膜形成用組成物から、溶剤を除去する方法としては例えば、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0105】
偏光を照射するには、基板上に塗布された光配向膜形成用組成物から、溶剤を除去したものに直接、偏光UVを照射する形式でも、基材側から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する形式でもよい。また、当該偏光は、実質的に平行光であると特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲のUV(紫外線)が特に好ましい。当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArFなどの紫外光レ-ザ-などが挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプがより好ましい。これらの中でも、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプが、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため好ましい。前記光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光UVを照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテ-ラ-などの偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
【0106】
なお、ラビングまたは偏光照射を行う時に、マスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
【0107】
グルブ(groove)配向膜は、膜表面に凹凸パターンまたは複数のグルブ(溝)を有する膜である。等間隔に並んだ複数の直線状のグルブを有する膜に重合性液晶化合物を塗布した場合、その溝に沿った方向に液晶分子が配向する。
【0108】
グルブ配向膜を得る方法としては、感光性ポリイミド膜表面にパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光後、現像およびリンス処理を行って凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤に、硬化前のUV硬化樹脂の層を形成し、形成された樹脂層を基材へ移してから硬化する方法、および、基材に形成した硬化前のUV硬化樹脂の膜に、複数の溝を有するロール状の原盤を押し当てて凹凸を形成し、その後硬化する方法等が挙げられる。
【0109】
配向膜(配向性ポリマーを含む配向膜または光配向膜)の厚さは、通常10~10000nmの範囲であり、好ましくは10~1000nmの範囲であり、より好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは10~200nm、特に好ましい50~150nmの範囲である。
【0110】
偏光膜の少なくとも一方の面に、接着剤組成物を介して厚み10μm以上80μm以下の透明保護フィルムを積層することにより本発明における偏光板が得られる。接着剤組成物は特に限定されず、公知の接着剤を使用してよい。本発明における偏光板は、偏光膜の片面のみに透明保護フィルムを積層していることが好ましい。
【0111】
<透明保護フィルム>
透明保護フィルムは、光、特に可視光を透過し得る透明性を有する基材を意味し、透明性とは、波長380~780nmにわたる光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。具体的な透明保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ノルボルネン系ポリマーなどの環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンオキシド等が挙げられる。入手のしやすさや透明性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸エステル、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂またはポリカーボネートが好ましい。セルロースエステルは、セルロースに含まれる水酸基の一部または全部が、エステル化されたものであり、市場から容易に入手することができる。また、セルロースエステル基材も市場から容易に入手することができる。市販のセルロースエステル基材としては、例えば、“フジタックフィルム”(富士写真フィルム(株));“KC8UX2M”、“KC8UY”および“KC4UY”(コニカミノルタオプト(株))などが挙げられる。またこの中でも平衡含水率の観点からは、環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートが好ましく、環状オレフィン系樹脂がより好ましい。
【0112】
透明保護フィルムに求められる特性は、偏光板の構成によって異なるが、通常、位相差性ができるだけ小さいフィルムが好ましい。位相差性ができるだけ小さいフィルムとしては、ゼロタック(コニカミノルタオプト株式会社)、Zタック(富士フィルム株式会社)等の位相差を有しないセルロースエステルフィルム等が挙げられる。また、未延伸の環状オレフィン系樹脂フィルムも好ましい。偏光膜が積層されていない透明保護フィルムの面には、ハードコート処理、反射防止処理、帯電防止処理等がなされてもよい。
【0113】
透明保護フィルムの厚みは、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向があるため、通常10~80μmであり、好ましくは20~60μm、より好ましくは20~40μmである。
【0114】
<位相差膜>
本発明において、位相差膜は、下記式(1):
100 ≦ Re(550) ≦180 (1)
〔式中、Re(550)は波長550nmにおける面内位相差値を表す〕
を満たすことが好ましい。
位相差膜が上記(1)で表される面内位相差値を有すると、いわゆるλ/4板として機能する。前記式(1)は、好ましくは100nm≦Re(550)≦180nm、さらに好ましくは120nm≦Re(550)≦160nmである。なお、Re(550)は実施例に記載の方法により測定できる。
【0115】
さらに、位相差膜が下記式(2):
Re(450)/Re(550) < 1 (2)
〔式中、Re(450)およびRe(550)は、それぞれ波長450nmおよび550nmにおける面内位相差値を表す〕
を満たすことが好ましい。上記式(2)を満たす位相差膜は、いわゆる逆波長分散性を有し、優れた偏光性能を示す。Re(450)/Re(550)の値は、好ましくは0.93以下であり、より好ましくは0.88以下、さらに好ましくは0.86以下、好ましくは0.80以上、より好ましくは0.82以上である。
【0116】
前記位相差膜は、一般的に配向状態の重合性液晶化合物を重合させることにより得られる。位相差膜を形成する重合性液晶化合物(以下、「重合性液晶化合物B」ともいう)は、重合性基、特に光重合性基を有する液晶化合物を意味する。光重合性基とは、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。光重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基およびオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基がより好ましく、アクリロイルオキシ基が更に好ましい。液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよく、相秩序構造としてはネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。重合性液晶化合物Bとして、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
重合性液晶化合物Bとしては、成膜の容易性および前記式(Y)で表される特性を付与するという観点から、下記(ア)~(エ)を全て満たす化合物が挙げられる。
【0118】
(ア)サーモトロピック液晶性を有する化合物である;
(イ)該重合性液晶化合物の長軸方向(a)上にπ電子を有する。
(ウ)長軸方向(a)に対して交差する方向〔交差方向(b)〕上にπ電子を有する。
(エ)長軸方向(a)に存在するπ電子の合計をN(πa)、長軸方向に存在する分子量の合計をN(Aa)として下記式(i)で定義される重合性液晶化合物の長軸方向(a)のπ電子密度:
D(πa)=N(πa)/N(Aa) (i)
と、交差方向(b)に存在するπ電子の合計をN(πb)、交差方向(b)に存在する分子量の合計をN(Ab)として下記式(ii)で定義される重合性液晶化合物の交差方向(b)のπ電子密度:
D(πb)=N(πb)/N(Ab) (ii)
とが、
0≦〔D(πa)/D(πb)〕≦1
の関係にある〔すなわち、交差方向(b)のπ電子密度が、長軸方向(a)のπ電子密度よりも大きい〕。
なお、上記(ア)~(エ)を全て満たす重合性液晶化合物Bは、ラビング処理により形成した配向膜上に塗布し、相転移温度以上に加熱することにより、ネマチック相を形成することが可能である。この重合性液晶化合物Bが配向して形成されたネマチック相では通常、重合性液晶化合物の長軸方向が互いに平行になるように配向しており、この長軸方向がネマチック相の配向方向となる。
【0119】
上記特性を有する重合性液晶化合物Bは、一般に逆波長分散性を示すものであることが多い。上記(ア)~(エ)の特性を満たす化合物として、具体的には、例えば、下記式(II):
【化16】
表される化合物が挙げられる。前記式(II)で表される化合物は単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0120】
式(II)中、Arは置換基を有していてもよい二価の芳香族基を表す。ここでいう芳香族基とは、平面性を有する環状構造の基であり、該環状構造が有するπ電子数がヒュッケル則に従い[4n+2]個であるものをいう。ここで、nは整数を表す。-N=や-S-等のヘテロ原子を含んで環構造を形成している場合、これらヘテロ原子上の非共有結合電子対を含めてヒュッケル則を満たし、芳香族性を有する場合も含む。該二価の芳香族基中には窒素原子、酸素原子、硫黄原子のうち少なくとも1つ以上が含まれることが好ましい。
【0121】
G1およびG2はそれぞれ独立に、二価の芳香族基または二価の脂環式炭化水素基を表す。ここで、該二価の芳香族基または二価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基に置換されていてもよく、該二価の芳香族基または二価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が、酸素原子、硫黄原子または窒素原子に置換されていてもよい。
【0122】
L1およびL2は、それぞれ独立に、エステル構造を有する二価の連結基である。
T1およびT2はそれぞれ独立に、単結合または二価の連結基である。
【0123】
h、iは、それぞれ独立に0~3の整数を表し、1≦h+iの関係を満たす。ここで、2≦h+iである場合、T1およびT2、G1およびG2は、それぞれ互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0124】
E1およびE2はそれぞれ独立に、炭素数1~17のアルカンジイル基を表し、ここで、アルカンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる-CH2-は、-O-、-S-、-Si-、-COO-で置換されていてもよい。P1およびP2は互いに独立に、重合性基または水素原子を表し、少なくとも1つは重合性基である。
【0125】
G1およびG2は、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子および炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-フェニレンジイル基、ハロゲン原子および炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-シクロヘキサンジイル基であり、より好ましくはメチル基で置換された1,4-フェニレンジイル基、無置換の1,4-フェニレンジイル基、または無置換の1,4-trans-シクロヘキサンジイル基であり、特に好ましくは無置換の1,4-フェニレンジイル基、または無置換の1,4-trans-シクロへキサンジイル基である。また、複数存在するG1およびG2のうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、また、L1またはL2に結合するG1およびG2のうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることがより好ましい。
【0126】
L1およびL2は、それぞれ独立に、好ましくは-Ra1COORa2-(Ra1およびRa2はそれぞれ独立に単結合または炭素数1~4のアルキレン基を表す)であり、より好ましくは-COORa2-1-(Ra2-1は単結合、-CH2-、-CH2CH2-のいずれかを表す)であり、さらに好ましくは-COO-または-COOCH2CH2-である。
【0127】
T1およびT2はそれぞれ独立に、好ましくは、単結合、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra9ORa10-、-Ra11COORa12-、-Ra13OCORa14-、またはRa15OC=OORa16-である。ここで、Ra9~Ra16はそれぞれ独立に単結合、または炭素数1~4のアルキレン基を表す。T1およびT2はそれぞれ独立に、より好ましくは単結合、-ORa10-1-、-CH2-、-CH2CH2-、-COORa12-1-、またはOCORa14-1-である。ここで、Ra10-1、Ra12-1、Ra14-1はそれぞれ独立に単結合、-CH2-、-CH2CH2-のいずれかを表す。T1およびT2はそれぞれ独立に、さらに好ましくは単結合、-O-、-CH2CH2-、-COO-、-COOCH2CH2-、-OCO-、またはOCOCH2CH2-である。
【0128】
hおよびiは、逆波長分散性発現の観点から2≦h+i≦6の範囲が好ましく、h+i=4であることが好ましく、h=2かつi=2であることがより好ましい。h=2かつi=2であると対称構造となるためさらに好ましい。
【0129】
E1およびE2はそれぞれ独立に、炭素数1~17のアルカンジイル基が好ましく、炭素数4~12のアルカンジイル基がより好ましい。
【0130】
P1またはP2で表される重合性基としては、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、およびオキセタニル基等が挙げられる。これらの中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基およびオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0131】
Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族複素環、および電子吸引性基から選ばれる少なくとも1つを有することが好ましい。当該芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましい。当該芳香族複素環としては、フラン環、ベンゾフラン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアゾール環、トリアジン環、ピロリン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チエノチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、およびフェナンスロリン環等が挙げられる。これらの中でも、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、またはベンゾフラン環を有することが好ましく、ベンゾチアゾール基を有することがさらに好ましい。また、Arに窒素原子が含まれる場合、当該窒素原子はπ電子を有することが好ましい。
【0132】
式(II)中、Arで表される2価の芳香族基に含まれるπ電子の合計数Nπは8以上が好ましく、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは14以上であり、特に好ましくは16以上である。また、好ましくは30以下であり、より好ましくは26以下であり、さらに好ましくは24以下である。
【0133】
Arで表される芳香族基としては、例えば以下の式(Ar-1)~式(Ar-23)の基が挙げられる。
【0134】
【0135】
式(Ar-1)~式(Ar-23)中、*印は連結部を表し、Z0、Z1およびZ2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルキルスルフィニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1~12のフルオロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~12のアルキルチオ基、炭素数1~12のN-アルキルアミノ基、炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素数1~12のN-アルキルスルファモイル基または炭素数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基を表す。
【0136】
Q1およびQ2は、それぞれ独立に、-CR2’R3’-、-S-、-NH-、-NR2’-、-CO-またはO-を表し、R2’およびR3’は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0137】
J1およびJ2は、それぞれ独立に、炭素原子、または窒素原子を表す。
【0138】
Y1、Y2およびY3は、それぞれ独立に、置換されていてもよい芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
【0139】
W1およびW2は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、メチル基またはハロゲン原子を表し、mは0~6の整数を表す。
【0140】
Y1、Y2およびY3における芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等の炭素数6~20の芳香族炭化水素基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。芳香族複素環基としては、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む炭素数4~20の芳香族複素環基が挙げられ、フリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基が好ましい。
【0141】
Y1およびY2は、それぞれ独立に、置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基または多環系芳香族複素環基であってもよい。多環系芳香族炭化水素基は、縮合多環系芳香族炭化水素基、または芳香環集合に由来する基をいう。多環系芳香族複素環基は、縮合多環系芳香族複素環基、または芳香環集合に由来する基をいう。
【0142】
Z0、Z1およびZ2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルコキシ基であることが好ましく、Z0は、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基がさらに好ましく、Z1およびZ2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、シアノ基がさらに好ましい。
【0143】
Q1およびQ2は、-NH-、-S-、-NR2’-、-O-が好ましく、R2’は水素原子が好ましい。中でも-S-、-O-、-NH-が特に好ましい。
【0144】
式(Ar-1)~(Ar-23)の中でも、式(Ar-6)および式(Ar-7)が分子の安定性の観点から好ましい。
【0145】
式(Ar-17)~(Ar-23)において、Y1は、これが結合する窒素原子およびZ0と共に、芳香族複素環基を形成していてもよい。芳香族複素環基としては、Arが有していてもよい芳香族複素環として前記したものが挙げられるが、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピロリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、インドール環、キノリン環、イソキノリン環、プリン環、ピロリジン環等が挙げられる。この芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。また、Y1は、これが結合する窒素原子およびZ0と共に、前述した置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基または多環系芳香族複素環基であってもよい。例えば、ベンゾフラン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環等が挙げられる。なお、前記式(II)で表される化合物は、例えば、特開2010-31223号公報に記載の方法に準じて製造することができる。
【0146】
位相差膜を構成する重合性液晶組成物(B)中の重合性液晶化合物Bの含有量は、重合性液晶組成物(B)の固形分100質量部に対して、例えば70~99.5質量部であり、好ましくは80~99質量部であり、より好ましくは90~98質量部である。含有量が上記範囲内であると、位相差膜の配向性が高くなる傾向がある。ここで、固形分とは、重合性液晶組成物(B)から溶剤等の揮発性成分を除いた成分の合計量のことをいう。
【0147】
重合性液晶組成物(B)は、重合性液晶化合物Bの重合反応を開始するための重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤としては、重合性液晶組成物(A)において使用し得る重合開始剤として先に例示したものと同様のものが挙げられる。また、重合性液晶組成物(B)は、必要に応じて、光増感剤、レベリング剤、および、重合性液晶組成物(A)に含まれる添加剤として例示した添加剤等を含有してもよい。光増感剤およびレベリング剤としては、重合性液晶組成物(A)において使用し得るものとして先に例示したものと同様のものが挙げられる。
【0148】
位相差膜は、重合性液晶化合物B、および必要に応じて重合開始剤、添加剤等を含む重合性液晶組成物(B)に溶剤を加えて混合および撹拌することにより調製される組成物(以下、「位相差膜形成用組成物」ともいう)を、基材または配向膜上に塗布し、乾燥により溶媒を除去し、得られた塗膜中の重合性液晶化合物Bを加熱および/または活性エネルギー線によって硬化させて得ることができる。位相差膜の作製に用いられる基材および/または配向膜としては、上述の偏光膜を作製する際に用い得るものとして先に例示したものと同様のものが挙げられる。
【0149】
位相差膜形成用組成物に用いる溶剤、位相差膜形成用組成物の塗布方法、活性エネルギー線による硬化条件等は、いずれも、上述の偏光膜の作製方法において採用し得るものと同様のものが挙げられる。
【0150】
位相差膜の厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択できるが、薄膜化および屈曲性等の観点から、0.1~10μmであることが好ましく、1~5μmであることがより好ましく、1~3μmであることがさらに好ましい。
【0151】
<円偏光板>
本発明の円偏光板は、上述の偏光板及び位相差膜を備えてなり、上述の偏光板は、好ましくは、透明保護フィルム、配向膜(特に光配向膜)および偏光膜がこの順に積層されてなる。本発明の円偏光板において、偏光板は、偏光膜の片面のみに透明保護フィルムを積層していることが好ましく、更に該偏光膜と該位相差膜とが積層されていることが好ましい。
本発明の円偏光板は、さらに偏光板及び位相差膜以外の他の層(保護層、粘接着剤層等)を含んでいてもよい。
本発明の円偏光板において、上述の偏光膜と位相差膜とは接着剤層または粘着剤層を介して貼合されていてもよく、位相差膜形成用組成物を上述の偏光膜に直接塗布することにより、位相差膜が本発明の偏光膜上に直接形成されていてもよい。
【0152】
本発明の円偏光板において、位相差膜の遅相軸と偏光膜の吸収軸との成す角度は、好ましくは実質的に45°である。なお、本発明において「実質的に45°」とは、45°±5°を意味する。
【0153】
本発明の円偏光板の厚みは、表示装置の屈曲性や視認性の観点から、好ましくは10~300μm、より好ましくは20~200μm、さらに好ましくは25~100μmである。
【0154】
<表示装置>
本発明は、本発明の円偏光板を備えてなる表示装置を包含する。
本発明の表示装置は、例えば、粘接着剤層を介して本発明の偏光膜または偏光板を表示装置の表面に貼合することにより得ることができる。円偏光板の両面に疎水性基材を有した構成であると本願円偏光板の効果をより発揮する。疎水性基材とは、例えば透湿度が10g/m2・d(40℃・90%RH)(JISK 7129)以下の基材のことを表す。
疎水性基材の種類は特に制限されないが、例えばガラス等が挙げられる。
表示装置とは、表示機構を有する装置であり、発光源として発光素子または発光装置を含む。表示装置としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、タッチパネル表示装置、電子放出表示装置(電場放出表示装置(FED等)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置)、プラズマ表示装置、投射型表示装置(グレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置等)および圧電セラミックディスプレイ等が挙げられる。
液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置および投写型液晶表示装置等の何れをも含む。これら表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。特に、本発明の表示装置としては、有機EL表示装置およびタッチパネル表示装置が好ましく、特に有機EL表示装置が好ましい。
【実施例0155】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。実施例および比較例中の「%」および「部」は、特記しない限り、「質量%」および「質量部」である。
【0156】
[実施例1]
<偏光板の作製>
[偏光板:延伸フィルムから形成される偏光膜を含む偏光板の製造]
厚さ30μmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上)を、乾式延伸により約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、40℃の純水に40秒間浸漬した。その後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の質量比が0.044/5.7/100の染色水溶液に28℃で30秒間浸漬して染色処理を行った。
次に、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の質量比が11.0/6.2/100のホウ酸水溶液に70℃で120秒間浸漬した。引き続き、8℃の純水で15秒間洗浄した後、300Nの張力で保持した状態で、60℃で50秒間、次いで75℃で20秒間乾燥して、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向している厚さ12μmの偏光子を得た。
【0157】
得られた偏光子と、シクロオレフィンフィルム(日本ゼオン株式会社製 ZF14)の間に水系接着剤を注入し、ニップロールで貼り合わせた。得られた貼合物の張力を430N/mに保ちながら、60℃で2分間乾燥して、片面に透明保護フィルムとしてシクロオレフィンフィルムを有する偏光板Iを得た。なお、上記水系接着剤は、水100部に、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(クラレポバール KL318;株式会社クラレ製)3部と、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(スミレーズレジン650;住化ケムテックス株式会社製、固形分濃度30%の水溶液)1.5部とを添加して調製した。
【0158】
<偏光板の23℃50%における平衡含水率>
作製した偏光板の試験片(サイズ:幅4cm長さ10cm)を23℃、相対湿度50%のクリーンルームで1日間保持し重量を測定した後、試験片を105℃1時間乾燥させ重量を測定し、温度23℃、相対湿度50%時の平衡含水率を三菱化学アナリテック製CA-200型で測定した。結果を表1に示す。
【0159】
<位相差膜の作製>
[光配向膜形成用組成物の調製]
下記光配向性材料5部(数平均分子量28000)とシクロペンタノン(溶剤)95部とを混合し、得られた混合物を80℃で1時間撹拌することにより、光配向膜形成用組成物を得た。
【0160】
【0161】
[重合性液晶組成物の調製]
下記構造の重合性液晶化合物B1(86.0部)と、重合性液晶化合物A1(14.0部)と、ポリアクリレート化合物(レベリング剤)(BYK-361N;BYK-Chemie社製)(0.12部)と、光重合開始剤2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバ スペシャルティケミカルズ社製)(3.0部)とを混合し、重合性液晶化合物B1および重合性液晶化合物A1を含む重合性液晶組成物(B1)を得た。
【0162】
【0163】
【0164】
[位相差膜の製造方法]
シクロオレフィンポリマーフィルム(COP;ZF-14;日本ゼオン株式会社製)を、コロナ処理装置(AGF-B10;春日電機株式会社製)を用いて出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回処理した。コロナ処理を施した表面に、前記光配向膜形成用組成物をバーコーター塗布し、80℃で1分間乾燥し、偏光UV照射装置(偏光子ユニット付SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、100mJ/cm2の積算光量で偏光UV露光を実施し、配向膜を形成した。得られた配向膜の厚さをエリプソメータ M-220(日本分光株式会社製)で測定したところ、100nmであった。
【0165】
続いて、前記配向膜上に、重合性液晶組成物B1を、バーコーターのワイヤーを#30に設定して50mm/secの速度で塗布し、120℃で1分間乾燥した。その後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A;ウシオ電機株式会社製)を用いて、重合性液晶組成物B1を塗布した面側から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長313nmにおける積算光量:500mJ/cm2)することにより、位相差膜Aとシクロオレフィンポリマーフィルムとの積層体を形成した。得られた位相差膜Aの厚みをレーザー顕微鏡(LEXT;オリンパス株式会社製)で測定したところ、2.3μmであった。
【0166】
<円偏光板の作製>
【0167】
上記のように作製した偏光板Iのポリビニルアルコール側と、位相差膜Aとシクロオレフィンポリマーフィルムとの積層体の位相差膜A側を、偏光板Iの吸収軸と位相差膜Aの遅相軸の為す角度(θ)が45°となるようにアクリル系感圧式粘着剤(無色透明、無配向)を用いて貼合した後に位相差膜のシクロオレフィンポリマーフィルムを剥離し、円偏光板を作製した。
【0168】
<耐久性試験>
得られた円偏光板の位相差膜側、偏光板側の両側にアクリル系感圧式粘着剤(無色透明、無配向)を介して0.4mm厚のガラス(コーニング社製)に貼合し、位相差膜の位相差値を測定した。その後90℃RHオーブンに500時間投入し、位相差膜の位相差値を再度測定し、差異を求めた。位相差値の差を表1に示した。また、その耐久性評価を以下の基準で表1に示した。
耐久性評価
○:差異が1nm未満。
△:差異が1nm以上10nm未満。
×:差異が10nm以上。
表1には、偏光板の構成材料および位相差膜の主要構成材料を記載した。
【0169】
[実施例2]
<偏光板の作製>
[偏光板:重合性液晶化合物を含む組成物から形成される偏光膜を含む偏光板の製造]
(配向層形成用組成物の製造)
下記に記載のポリマー2部及びo-キシレン 98部を混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、光配向膜形成用組成物である配向層形成用組成物を得た。
【0170】
・下記に示す光反応性基を有するポリマー(数平均分子量28000) 2部
【化21】
【0171】
(偏光層形成用組成物の製造)
下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、偏光層形成用組成物を得た。
【0172】
・式(1-6)で表される重合性液晶化合物 75部
【化22】
【0173】
・式(1-7)で表される重合性液晶化合物 25部
【化23】
【0174】
・下記に示す二色性色素(1) 2.8部
【化24】
【0175】
・下記に示す二色性色素(2) 2.8部
【化25】
【0176】
・下記に示す二色性色素(3) 2.8部
【化26】
【0177】
・下記に示す重合開始剤 6部
2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバスペシャルティケミカルズ社製)
【0178】
・下記に示すレベリング剤 1.2部
ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)
【0179】
・下記に示す溶剤 250部
シクロペンタノン
【0180】
(偏光板の製造)
基材(透明保護フィルム)層としてのトリアセチルセルロースフィルム(TAC;KC2UA;コニカミノルタ株式会社製)の表面にコロナ処理(AGF-B10、春日電機株式会社製)を施した。コロナ処理が施されたフィルム表面に、バーコーターを用いて配向層形成用組成物を塗布した後、120℃に設定した乾燥オーブンで1分間乾燥し、配向層用塗工層を得た。配向層用塗工層上に偏光UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、偏光UVを、50mJ/cm2(313nm基準)の積算光量で照射し配向層を形成した。得られた配向層上に、バーコーターを用いて偏光層形成用組成物を塗布した後、110℃に設定した乾燥オーブンで1分間乾燥した。その後高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより、重合性液晶化合物及び二色性色素が配向した偏光板を得た。
この偏光板を用いたこと以外は実施例1と同様に、円偏光板を作製し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0181】
[実施例3]
基材(透明保護フィルム)層としてトリアセチルセルロースフィルムの代わりにシクロオレフィンポリマーフィルム(COP;ZF-14;日本ゼオン株式会社製)を用いたこと以外は実施例2と同様に、偏光板及び円偏光板を作製し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0182】
[実施例4]
位相差膜について重合性液晶化合物B1の代わりに特開2016-81035号公報に記載の下記重合性化合物B2を用いたこと以外は、実施例2と同様に、偏光板及び円偏光板を作製し、評価を実施した。結果を表1に示す。
重合性化合物B2
【化27】
【0183】
[実施例5]
位相差膜について重合性液晶化合物B1の代わりに下記重合性化合物B3を用いたこと以外は実施例2と同様に、偏光板及び円偏光板を作製し、評価を実施した。結果を表1に示す。
重合性化合物B3
【化28】
【0184】
[比較例1]
偏光板として偏光子の両側にトリアセチルセルロースフィルム(TAC;KC2UA;コニカミノルタ株式会社製)を透明保護フィルムとして用いたこと以外は、実施例1と同様に、偏光板及び円偏光板を作製し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0185】
[比較例2]
偏光板の保護フィルムとして片面にトリアセチルセルロースフィルム(TAC;KC2UA;コニカミノルタ株式会社製)、もう片面にシクロオレフィンポリマーフィルム(COP;ZF-14;日本ゼオン株式会社製)を用い、偏光板のトリアセチルセルロースフィルム側に位相差層を貼合したこと以外は、実施例1と同様に、偏光板及び円偏光板を作製し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0186】
[比較例3]
位相差膜の重合性液晶化合物として実施例4と同様の重合性液晶化合物を用いたこと以外は比較例2と同様に、偏光板及び円偏光板を作製し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0187】
[比較例4]
位相差膜の重合性液晶化合物として実施例5と同様の重合性液晶化合物を用いたこと以外は比較例2と同様に、偏光板及び円偏光板を作製し、評価を実施した。
【0188】
[参考例1]
位相差膜としてシクロオレフィンポリマーフィルム(COP;ZD-12;日本ゼオン株式会社製)を用いたこと以外は比較例1と同様に、偏光板及び円偏光板を作製し、評価を実施した。結果を表1に示す。
【0189】
【0190】
上記表1の結果から明らかなように、偏光板の23℃50%(相対湿度)における平衡含水率が、実施例1~5では1.5%以下であり、その場合の耐久性が○および△であるのに対して、平衡含水率が1.5%を超える比較例1~4の場合耐久性が×であり、結果の差は明らかである。参考例1は、偏光板の平衡含水率が1.5%を超えても、位相差膜を延伸フィルムからなる位相差膜(重合性液晶化合物を含まない位相差膜)にした場合は、耐久性は良好であった。位相差膜が偏光板中の水分により影響を受けないものと考える。