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特開2024-159984加熱部材、加熱装置、定着装置及び画像形成装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159984
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】加熱部材、加熱装置、定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20241031BHJP
   H05B 3/03 20060101ALI20241031BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20241031BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G03G15/20 515
H05B3/03
H05B3/10 A
H05B3/00 335
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024150792
(22)【出願日】2024-09-02
(62)【分割の表示】P 2023074328の分割
【原出願日】2019-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2018139243
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
(72)【発明者】
【氏名】足立 知哉
(72)【発明者】
【氏名】染矢 幸通
(57)【要約】
【課題】面状ヒータの厚みのばらつきが大きくなると、これに伴ってコンタクト端子と電極部との接点位置が厚み方向に変化するため、これらの接触圧が変化して、電極部に必要以上の接触圧がかかったり、反対に接触力不足となったりする問題があった。
【解決手段】複数の層を含む板状部材に電極部62と発熱部とが設けられている加熱部材22において、複数の層のうち、第1の層40は、電極部62が設けられている面とは反対側に設けられており、第1の層40は、電極部62が設けられている部分に対応する少なくとも一部が除かれている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層を含む板状部材に電極部と発熱部とが設けられている加熱部材において、
前記複数の層のうち、第1の層は、前記電極部が設けられている面とは反対側に設けられており、
前記第1の層は、
前記電極部が設けられている部分に対応する少なくとも一部が除かれている、
もしくは、
前記電極部が設けられている部分に対応する少なくとも一部が前記発熱部が設けられている部分に対応する部分に比して薄い
ことを特徴とする加熱部材。
【請求項2】
前記発熱部に対応する部分における前記電極部が設けられている面とこれとは反対側の面との間の積層方向の総厚よりも、前記電極部に対応する部分における前記電極部が設けられている面とこれとは反対側の面との間の積層方向の総厚を、薄くした請求項1又は2に記載の加熱部材。
【請求項3】
前記発熱部に対応する部分の前記総厚と前記電極部に対応する部分における前記総厚との差が、50μm以上である請求項2に記載の加熱部材。
【請求項4】
前記電極部が設けられている面側は、記録媒体に画像を定着させる定着部材に対して加熱部材が接触する側である請求項1から3のいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項5】
前記複数の層は、基材層と、前記基材層とは熱伝導率が異なる層と、を有し、
前記基材層とは熱伝導率が異なる層は、前記電極部に対応する部分を除いて、少なくとも前記発熱部に対応する部分に設けられている請求項1に記載の加熱部材。
【請求項6】
前記複数の層は、基材層と、前記基材層とは熱伝導率が異なる層と、前記基材層と前記基材層とは熱伝導率が異なる層との間に設けられると共に前記基材層よりも熱伝導率の高い高熱伝導層と、を有し、
前記高熱伝導層は、前記電極部の少なくとも一部に対応する部分を除いて設けられている請求項1に記載の加熱部材。
【請求項7】
前記複数の層は、基材層を有し、
前記基材層の厚みを、前記発熱部に対応する部分よりも前記電極部に対応する部分で薄くした請求項1に記載の加熱部材。
【請求項8】
前記基材層の前記電極部が設けられている面とは反対側の面を厚み方向に変化させて、前記発熱部に対応する部分よりも前記電極部に対応する部分で前記基材層の厚みを薄くした請求項7に記載の加熱部材。
【請求項9】
前記基材層の前記電極部が設けられている面とは反対側の面を厚み方向の複数の段差から成る階段状に形成して、前記発熱部に対応する部分よりも前記電極部に対応する部分で前記基材層の厚みを薄くした請求項8に記載の加熱部材。
【請求項10】
前記基材層の前記電極部が設けられている面とは反対側の面を厚み方向に対して傾斜させて、前記発熱部に対応する部分よりも前記電極部に対応する部分で前記基材層の厚みを薄くした請求項8に記載の加熱部材。
【請求項11】
接触部材に接触可能であって、
複数の層を含む板状部材に電極部と発熱部とが設けられている加熱部材において、
前記接触部材は、前記電極部が設けられている面とは反対側から前記加熱部材に接触する接触部を有し、
前記複数の層のうち、第1の層は、前記電極部が設けられている面とは反対側に設けられており、
前記接触部が接触する部分の少なくとも一部は、前記第1の層が除かれている、
もしくは、前記接触部が接触する部分の少なくとも一部は、前記接触部が接触しない部分の少なくとも一部に比して薄い
ことを特徴とする加熱部材。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の加熱部材と、前記加熱部材の前記電極部が設けられている面とは反対側から前記加熱部材に接触する接触部を有する接触部材とを備える加熱装置であって、
前記接触部材は、前記加熱部材の前記第1の層の除かれている部分、又は前記第1の層の薄い部分を支持する凸部を有することを特徴とする加熱装置。
【請求項13】
前記凸部と前記第1の層との間に隙間を設けた請求項12に記載の加熱装置。
【請求項14】
前記加熱部材は、複数の前記電極部を有し、
前記接触部材は、複数の前記電極部のそれぞれに対応する部分に配置された複数の前記凸部を有する請求項12又は13に記載の加熱装置。
【請求項15】
前記接触部材は、三角形の頂点を成すように配置された3つの前記凸部を有する請求項12から14のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項16】
前記接触部材は、前記加熱部材を保持する保持部材であって、
前記発熱部に電力を供給するために前記電極部に接触するコンタクト端子を有し、前記加熱部材と前記保持部材とを一緒に挟むようにして取り付けられるコネクタを備える請求項12から15のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項17】
請求項12から16のいずれか1項に記載の加熱装置と、
前記加熱装置によって加熱されて記録媒体に画像を定着させる定着部材と、
前記定着部材に対して接触してニップ部を形成する対向部材と、を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項18】
請求項1から11のいずれか1項に記載の加熱部材、又は請求項12から16のいずれか1項に記載の加熱装置、あるいは請求項17に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱部材、加熱部材を備える加熱装置、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の画像形成装置において、用紙上のトナーを熱により定着させる定着装置や用紙上のインクを乾燥させる乾燥装置などに用いられる加熱部材として、面状の抵抗発熱体を有する面状ヒータが知られている。
【0003】
面状ヒータは、抵抗発熱体に電力が供給されることで発熱する。そのため、面状ヒータには、電源からの電力を供給するためのコネクタが電気的に接続される電極部が設けられている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2014-109754号公報)には、面状ヒータの電極部に接続されるコネクタとして、面状ヒータをその表側と裏側とから挟むことで、面状ヒータの電極部に対してコネクタが有するコンタクト端子を圧接させる構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、面状ヒータにおいては、電極部に対するコンタクト端子の接触圧にばらつきがあると、電極部に必要以上の接触圧がかかったり、反対に接触圧不足となったりする問題がある。
【0006】
斯かる課題に対する解決策の1つとして、上記特許文献1においては、コンタクト端子を、コネクタのハウジングに対して移動自在にした構成が提案されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、複数の層を含む板状部材に電極部と発熱部とが設けられている加熱部材において、前記複数の層のうち、第1の層は、前記電極部が設けられている面とは反対側に設けられており、前記第1の層は、前記電極部が設けられている部分に対応する少なくとも一部が除かれている、もしくは、前記電極部が設けられている部分に対応する少なくとも一部が前記発熱部が設けられている部分に対応する部分に比して薄いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電極部に対するコンタクト端子の接触圧の変動を抑制することができ、接触圧を適切な値(範囲内)に設定することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】定着装置の概略構成図である。
図3】ヒータの平面図である。
図4】ヒータの分解斜視図である。
図5】コネクタの斜視図である。
図6】ヒータにコネクタが接続された状態を示す斜視図である。
図7】本発明の第1実施形態に係るヒータ及びヒータホルダの斜視図である。
図8】ヒータを裏側から見た底面図である。
図9】ヒータがヒータホルダに保持された状態で、これらを長手方向に切断した断面図である。
図10図9におけるA-A断面図である。
図11】ヒータがヒータホルダに保持され、さらにコネクタが取り付けられた状態を示す断面図である。
図12】電極部に対応する箇所に断熱層が設けられた比較例を示す断面図である。
図13】コンタクト端子と電極部との接点に対する凸部の配置を示す平面図である。
図14】凸部と断熱層との間に所定の隙間が設けられていない例を示す断面図である。
図15】凸部と断熱層との間に所定の隙間が設けられている例を示す断面図である。
図16】凸部と断熱層との間に所定の隙間が設けられていない例を示す断面図である。
図17】凸部と断熱層との間に所定の隙間が設けられている例を示す断面図である。
図18】凸部が各電極部に対応する部分にそれぞれ設けられた例を示す断面図である。
図19】凸部が三角形の頂点を成すように設けられた例を示す斜視図である。
図20】孔部が各電極部に対応する部分にそれぞれ形成された例を示す断面図である。
図21図20に示すヒータを保持するヒータホルダとして図18に示すヒータホルダを用いた例を示す断面図である。
図22】断熱層が発熱部及びその近傍部分にのみ対応して設けられている例を示す斜視図である。
図23】本発明の第2実施形態に係るヒータの断面図である。
図24】基材層の表側の面を厚み方向に変化させて薄くした例を示す断面図である。
図25】基材層の段差部を複数の段差から成る階段状に形成した例を示す断面図である。
図26】基材層の段差部を傾斜させた例を示す図である。
図27】本発明の第3実施形態に係るヒータ及びヒータホルダの断面図である。
図28】本発明の第4実施形態に係るヒータ及びコネクタの断面図である。
図29】他のヒータの例を示す図である。
図30】別のヒータの例を示す図である。
図31】さらに別のヒータの例を示す図である。
図32】他の定着装置の概略構成図である。
図33】別の定着装置の概略構成図である。
図34】さらに別の定着装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【0012】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成装置本体に対して着脱可能な4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkを備える。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。具体的には、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、像担持体としてのドラム状の感光体2と、感光体2の表面を帯電する帯電装置3と、感光体2の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング装置5とを備える。
【0013】
また、画像形成装置100は、各感光体2の表面を露光し静電潜像を形成する露光装置6と、記録媒体としての用紙Pを供給する給紙装置7と、各感光体2に形成されたトナー画像を用紙Pに転写する転写装置8と、用紙Pに転写されたトナー画像を定着する定着装置9と、用紙Pを装置外に排出する排紙装置10とを備える。
【0014】
転写装置8は、複数のローラによって張架された中間転写体としての無端状の中間転写ベルト11と、各感光体2上のトナー画像を中間転写ベルト11へ転写する一次転写部材としての4つの一次転写ローラ12と、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像を用紙Pへ転写する二次転写部材としての二次転写ローラ13とを有する。複数の一次転写ローラ12は、それぞれ、中間転写ベルト11を介して感光体2に接触している。これにより、中間転写ベルト11と各感光体2とが互いに接触し、これらの間に一次転写ニップが形成されている。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架するローラの1つに接触している。これにより、二次転写ローラ13と中間転写ベルト11との間には二次転写ニップが形成されている。
【0015】
また、画像形成装置100内には、給紙装置7から送り出された用紙Pが搬送される用紙搬送路14が形成されている。この用紙搬送路14における給紙装置7から二次転写ニップ(二次転写ローラ13)に至るまでの途中には、一対のタイミングローラ15が設けられている。
【0016】
次に、図1を参照して上記画像形成装置の印刷動作について説明する。
【0017】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、感光体2が図1の時計回りに回転駆動され、帯電装置3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面を露光することで、露光された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。
【0018】
各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、図1の反時計回りに回転駆動する中間転写ベルト11に順次重なり合うように転写される。そして、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、二次転写ニップにおいて搬送されてきた用紙Pに転写される。この用紙Pは、給紙装置7から供給されたものである。給紙装置7から供給された用紙Pは、タイミングローラ15によって一旦停止された後、中間転写ベルト11上のトナー画像が二次転写ニップに至るタイミングに合わせて二次転写ニップへ搬送される。かくして、用紙P上にフルカラーのトナー画像が担持される。また、トナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーは各クリーニング装置5によって除去される。
【0019】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙装置10によって装置外に排出されて、一連の印刷動作が完了する。
【0020】
続いて、定着装置9の構成について説明する。
【0021】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、定着部材としての無端状の定着ベルト20と、定着ベルト20の外周面に接触してニップ部Nを形成する対向部材としての加圧ローラ21と、定着ベルト20を加熱する加熱装置19とを備えている。また、加熱装置19は、加熱部材としての面状のヒータ22と、ヒータ22を保持する保持部材としてのヒータホルダ23と、ヒータホルダ23を支持する支持部材としてのステー24等で構成されている。
【0022】
定着ベルト20は、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有している。定着ベルト20の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。また、定着ベルト20の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト20の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
【0023】
加圧ローラ21は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金21aと、この芯金21aの表面に形成された弾性層21bと、弾性層21bの外側に形成された離型層21cとで構成されている。弾性層21bはシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。弾性層21bの表面は離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層による離型層21cを形成するのが望ましい。
【0024】
ヒータ22は、定着ベルト20の幅方向に渡って長手状に設けられている。また、ヒータ22は、ヒータホルダ23側から定着ベルト20側(ニップ部N側)に向かって、断熱層40、基材層30、第1絶縁層51、発熱部61を有する導体層60、第2絶縁層52が、順次積層されて構成されている。
【0025】
ヒータホルダ23及びステー24は、定着ベルト20の内周側に配置されている。ステー24は、金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が定着装置9の両側板に支持されている。ステー24によってヒータホルダ23及びこれに保持されるヒータ22が支持されていることで、加圧ローラ21が定着ベルト20に加圧された状態で、ヒータ22が加圧ローラ21の押圧力を確実に受けとめてニップ部Nを安定的に形成する。
【0026】
ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で形成されることが望ましい。例えば、ヒータホルダ23をLCPなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成した場合は、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制され効率的に定着ベルト20を加熱することが可能である。
【0027】
加圧ローラ21は、バネ等の付勢手段によって定着ベルト20側へ付勢されている。これにより、加圧ローラ21は定着ベルト20を介してヒータ22に圧接され、定着ベルト20と加圧ローラ21との間にニップ部Nが形成される。また、加圧ローラ21は駆動手段によって回転駆動されるように構成されており、加圧ローラ21が図2の矢印方向に回転すると、これに伴って定着ベルト20が従動回転する。
【0028】
印刷動作が開始されると、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。また、ヒータ22に電力が供給されることで、定着ベルト20が加熱される。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、図2に示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(ニップ部N)に搬送されることで、未定着トナー画像が加熱及び加圧されて用紙Pに定着される。
【0029】
図3は、ヒータ22を表側から見た平面図、図4は、ヒータ22の分解斜視図である。
なお、以下の本実施形態に係る説明において、ヒータ22に対する、定着ベルト20側(ニップ部N側)を「表側」と称し、ヒータホルダ23側を「裏側」と称して説明する。
【0030】
図4に示すように、本実施形態に係るヒータ22は、複数の層を含む平板状の板状部材に電極部と電極部に接続された発熱部とが設けられている加熱部材である。ヒータ22が有する複数の層とは、一体に形成されたものをいう。層を一体に形成する方法としては、例えば、基材層30に塗布(コーティング)することによって形成する方法がある。本実施形態において、ヒータ22が有する複数の層としては、以下のようなものが挙げられる。具体的に、ヒータ22は、板状の基材層30と、基材層30の表側に設けられた第1絶縁層51と、第1絶縁層51の表側に設けられた導体層60と、導体層60の表側を被覆する第2絶縁層52と、基材層30の裏側に設けられた断熱層40との、複数の構成層が積層されて構成されている。導体層60は、面状の抵抗発熱体で構成された一対の発熱部61と、各発熱部61の長手方向一端部側に設けられた一対の電極部62と、電極部62と発熱部61との間及び発熱部61同士を接続する複数の給電線63とで構成されている。また、図3に示すように、導体層60のうち、各電極部62は、後述のコネクタとの接続を確保するため、少なくとも一部が第2絶縁層52に被覆されておらず露出した状態となっている。
【0031】
各発熱部61は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により基材層30に塗工し、その後、当該基材層30を焼成することによって形成することができる。発熱部61の材料として、これら以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO)の抵抗材料を用いてもよい。本実施形態では、各発熱部61が互いに平行に基材層30の長手方向に延びるように設けられている。各発熱部61の一端部(図3における右端部)同士は、給電線63を介して互いに電気的に接続され、各発熱部61の他端部(図3における左端部)は、それぞれ別の給電線63を介して電極部62に対して電気的に接続されている。給電線63は、発熱部61よりも小さい抵抗値の導体で構成されている。給電線63や電極部62の材料としては、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)等を用いることができ、このような材料をスクリーン印刷するなどによって給電線63や電極部62が形成されている。
【0032】
本実施形態では、発熱部61が基材層30の表側に設けられているが、反対に、発熱部61を基材層30の裏側に設けてもよい。その場合、発熱部61の熱が基材層30を介して定着ベルト20に伝達されることになるため、基材層30は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。また、基材層30を熱伝導率の良い材料で構成することで、発熱部61を基材層30の裏側に配置しても、定着ベルト20を十分に加熱することが可能である。また、基材層30が窒化アルミニウムである場合も、基材層30にそれ以外の各層の材料を塗布することで、各層を一体に形成することができる。
【0033】
基材層30は、ステンレス(SUS)や鉄、アルミニウム等の金属材料で構成されている。また、基材層30の材料として、金属材料のほか、セラミック、ガラス等を用いることも可能である。各絶縁層51,52及び断熱層40は、絶縁性、熱伝導性、耐熱性を有する材料で構成されている。特に、絶縁性及び耐熱性の高い材料が好ましい。具体的には、これらの材料として、ガラス、セラミックあるいはポリイミド(PI)等の耐熱性樹脂が挙げられる。各絶縁層51,52の厚さを厚くすれば絶縁性が高められるが、発熱部61から定着ベルト20に伝熱しにくくなったり、コストが高くなったりするので、各絶縁層51,52の厚さは10μm~300μmが好ましく、30μm~150μmがより好ましい。本実施形態では、熱伝導率を高めるために、各絶縁層51,52をセラミックのフィラーを添加した厚さ100μmのガラスで構成した。断熱層40は、耐熱性と断熱性とが求められるので、ガラス、セラミック、ポリイミド等の耐熱性樹脂で構成される。断熱層40の厚さを厚くすれば断熱性が高められるが、コストが高くなるので、断熱層40の厚さは10μm~300μmが好ましく、30μm~150μmがより好ましい。本実施形態では、熱伝導率を高めるために、断熱層40を厚さ100μmのガラスで構成した。
【0034】
図5は、ヒータ22に接続されるコネクタ70の斜視図である。
【0035】
本実施形態に係る加熱装置19は、上記ヒータ22の発熱部61に電力を供給するためのコネクタ70を備えている。図5に示すように、コネクタ70は、樹脂製のハウジング71と、ハウジング71に固定された板バネのコンタクト端子72とで構成されている。コンタクト端子72はヒータ22の各電極部62に接触する一対の接点部72aを有する。また、コネクタ70には、給電用のハーネス80が接続されている。
【0036】
図6に示すように、コネクタ70は、ヒータ22とヒータホルダ23とを表側と裏側とから一緒に挟むようにして取り付けられる。これにより、コンタクト端子72の各接点部72aがヒータ22の電極部62に対して弾性的に接触(圧接)することで、コネクタ70を介して発熱部61と画像形成装置に設けられた電源とが電気的に接続され、電源から発熱部61へ電力が供給可能な状態となる。
【0037】
ところで、本実施形態のように、コンタクト端子72が電極部62に対して圧接されることにより接続される構成においては、ヒータ22の各構成層の積み上げ公差によってヒータ22全体の厚み(積層方向寸法)にばらつきが生じると、コンタクト端子72と電極部62との接点位置がヒータ22の厚み方向に変化する。その結果、電極部62に対するコンタクト端子72の接触圧も変動する。従って、ヒータ22の厚みのばらつきが大きくなると、これに伴ってコンタクト端子72の接触圧の変動も大きくなるため、接触圧を適切な値(範囲内)に管理することが難しくなる。仮に、コンタクト端子72の接触圧が適切な範囲を下回った場合は、接触圧不足により導通を確保することができなくなり、ヒータ22への給電が良好に行えなくなる。反対に、コンタクト端子72の接触圧が適切な範囲を超えると、駆動時の振動によってヒータ22が微小に移動した際にコンタクト端子72とヒータ22の電極部62との間で摩耗が生じ、ひいてはヒータ22への給電が良好に行えなくなってしまう。また、ヒータが微小に移動する要因としては、加圧ローラと噛み合っているギアが外れた場合の速度変動により定着ベルトが振動した際のヒータの振動や、熱によるヒータの長手方向への伸縮などがある。また、ヒータやヒータホルダが微小に移動する要因としては、定着ベルトがヒータ及びヒータホルダに対して摺動することによる摺動抵抗などがある。
【0038】
そこで、本実施形態に係る構成においては、ヒータ22の厚みのばらつきに起因するコンタクト端子72の接触圧不良(接触圧不足又は接触圧過剰)を防止するため、次のような対策を講じている。以下、本実施形態の特徴的な構成について説明する。
【0039】
図7は、本実施形態に係るヒータ22及びヒータホルダ23の斜視図、図8は、本実施形態に係るヒータ22を裏側から見た底面図である。
【0040】
図7及び図8に示すように、本実施形態においては、ヒータ22の裏側(導体層60が設けられている側とは反対側)に設けられた断熱層40に矩形の孔部40aが形成されており、この孔部40aは、基材層30の表側に設けられた各電極部62に対応する位置に配置されている。すなわち、断熱層40は、電極部62に対応する基材層30の裏側部分を除いて設けられており、その部分では基材層30の裏側の面が露出している。
【0041】
一方、ヒータ22が収容されるヒータホルダ23の凹部230内には、凸部23fが設けられている。凹部230は、ヒータ22とほぼ同等のサイズの矩形(長方形)状に形成された底面部23aと、底面部23aの各辺(4辺)に設けられた4つの側面部23b,23c,23d,23eとで構成されている。そして、この凹部230において、上記断熱層40に形成された孔部40aに対応する位置に、凸部23fが底面部23aから突出するように設けられている。
【0042】
図9は、ヒータ22がヒータホルダ23に保持された状態で、これらを長手方向に切断した断面図、図10は、図9におけるA-A断面図である。
【0043】
図9及び図10に示すように、ヒータ22がヒータホルダ23の凹部230内に収容されて保持された状態では、ヒータホルダ23の凸部23fが、断熱層40の孔部40a内に挿入され、凸部23fの先端が基材層30の裏側の面に接触した状態となる。このように、凸部23fの先端が基材層30の裏側の面に接触していることで、基材層30が凸部23fによって支持される。ここで、ヒータホルダ23の凸部23fは、基材層30に対して接触する接触部であるが、ヒータホルダ23の底面部23aと断熱層40との間には僅かに隙間を有しており、底面部23aはヒータ22の裏面に対して接触しない部分である。すなわち、本実施形態では、ヒータホルダ23の接触部(凸部23f)がヒータ22の裏面に接触する部分の少なくとも一部で、断熱層40が除かれ孔部40aが設けられている。
【0044】
図11は、ヒータ22がヒータホルダ23に保持され、さらにコネクタ70が取り付けられた状態を示す断面図である。
【0045】
図11に示すように、コネクタ70が取り付けられた状態では、ヒータ22とヒータホルダ23とがコンタクト端子72によって表側と裏側とから一緒に挟まれて保持される。また、この状態で、コンタクト端子72の一対の接点部72aが、ヒータ22の電極部62に対して圧接される。
【0046】
ここで、特にコンタクト端子72が電極部62に対して圧接されている接点において、ヒータ22の厚みにばらつきがあると、上述のように、電極部62に対するコンタクト端子72の接触圧が変動する。また、このようなヒータ22の厚みのばらつきは、ヒータ22を構成する構成層の数が多くなるほど大きくなる傾向にある。従って、反対に、ヒータ22の構成層の数が少なくなれば、ヒータ22の厚みのばらつきを低減することが可能である。
【0047】
斯かる点に着目し、本実施形態においては、図8図11に示すように、電極部62に対応する基材層30の裏側において断熱層40を設けないようにすることで、電極部62とコンタクト端子72との接点における構成層の数を減らしている。これにより、図12に示すような電極部62に対応する箇所に断熱層40が設けられているものに比べて、電極部62に対応する箇所でのヒータ22の構成層の数が少ない分、各構成層の積み上げ公差が小さくなるので、電極部62とコンタクト端子72との接点におけるヒータ22の厚みのばらつきを低減することができる。その結果、コンタクト端子72の接触圧の変動が抑制され、当該接触圧の管理を行いやすくなるので、接触圧不足や接触圧過剰を防止し、接触圧を適切な値(範囲内)に設定することができるようになる。
【0048】
このように、本実施形態では、断熱層40が、電極部62に対応する部分において省略されているため、図9に示すように、電極部62に対応する部分における導体層60の表側の面からヒータ22の裏側の面(図9に示す例では基材層30の裏側の面)までの積層方向の総厚T2は、発熱部61に対応する部分における導体層60の表側の面からヒータ22の裏側の面(図9に示す例では断熱層40の裏側の面)までの積層方向の総厚T1よりも、断熱層40の分だけ薄くなっている。言い換えれば、導体層60からこれよりも基材層30側に積層される各構成層を含む部分の積層方向の総厚が、発熱部61に対応する部分(T1)よりも、電極部62に対応する部分(T2)で薄くなっている。ここで、一般的に厚みのばらつきは、1つの部材の厚みが増すほど大きくなる傾向にある。この観点からすれば、断熱層40が厚いものであるほど、これを部分的に省略することによるヒータ厚みのばらつき低減の効果は大きくなると言える。従って、断熱層40の厚みは、例えば50μm以上であることが望ましい。また、同様の観点から、断熱層40の厚みは、100μm以上であることがより好ましく、さらに好ましくは120μm以上である。また、定着装置に用いられる面状のヒータにおいて、断熱層40の厚みの上限値が一般的に175μm以下であることからすると、最も好ましい断熱層40の厚みの範囲は、120μm以上175μm以下である。また、本実施形態において、断熱層40の厚みは、発熱部61に対応する部分における上記総厚T1と電極部62に対応する部分における上記総厚T2との差に相当するので、言い換えれば、これらの層厚の差は、50μm以上、100μm以上、120μm以上となるにつれて好ましく、最も好ましい範囲は120μm以上175μm以下である。
【0049】
また、本実施形態では、電極部62に対応する部分において断熱層40を設けないようにしたことから、当該部分において基材層30を裏側から支持できるように、ヒータホルダ23に凸部23fを設けている。このように、ヒータホルダ23に設けられた凸部23fによって基材層30を裏側から支持することで、ヒータ22の撓みが抑制されるので、電極部62に対するコンタクト端子72の接触圧を安定させることができる。また、ヒータ22の撓みが抑制されることで、撓みによるヒータ22の破損も防止できる。
【0050】
また、このような凸部23fの機能から、凸部23fは、電極部62に対するコンタクト端子72の接触圧を効果的に受けることができる位置に配置されることが好ましい。具体的には、図13に示すように、凸部23fは、平面視して少なくともコンタクト端子72と電極部62との接点Cに対応した位置に配置されることが好ましい。このような位置に凸部23fが配置されることで、凸部23fによってコンタクト端子72の接触圧を効果的に受けることができ、接触圧の安定化及びヒータ22の破損防止の確実性が向上する。
【0051】
また、凸部23fの高さ(突出量)は、ヒータ22を撓ませずに確実に支持できるように、断熱層40の厚みと同じになるように設定されていることが望ましい。しかしながら、ヒータホルダ23や断熱層40の厚みの誤差を完全に回避することは現実的に困難である。仮に、凸部23fの高さが断熱層40の厚みよりも大きくなった場合は、図14に示す例のように、ヒータ22の裏側の面(断熱層40)がヒータホルダ23から浮いてしまうことが考えられる。この場合、ヒータ22に対して加圧ローラの加圧力Fが加わることによってヒータ22に撓みが生じるため、ガラス等の脆性材料で構成されている断熱層40が撓みにより破損する虞がある。なお、基材層30についても同様に撓みが生じることになるが、本実施形態に係る基材層30は多少の撓みが生じても破損しにくい延性材料で構成されているため、特に問題はない。
【0052】
上記のような断熱層40の撓みを抑制するには、図15に示すように、加圧ローラによる加圧側で(図15における凸部23fの右側で)、凸部23fと断熱層40との間に厚み方向と交差する方向の隙間Dを設けるのがよい。このように、凸部23fと断熱層40との間に隙間Dを設けることで、断熱層40が撓みの生じない領域に配置されるようになるため、断熱層40を撓ませることなく(浮かせることなく)ヒータホルダ23に対して接触させることができる。これにより、撓みに起因する断熱層40の破損を防止できるようになる。一方、上記図14に示す例では、このような隙間Dが十分に設けられていないので、加圧ローラによる加圧側で(図14における凸部23fの右側で)、断熱層40が凹部230の底面部23aから浮いてしまい、断熱層40の撓みが大きくなる。
【0053】
また、上述の例(図14に示す例)とは反対に、図16に示すように、断熱層40が狙いの厚み(凸部23fの高さと同じ厚み)よりも厚くなることも考えられる。この場合、ヒータ22がヒータホルダ23の凹部230内に収容された状態では、図16に示すように、ヒータ22の裏側の面(基材層30)がヒータホルダ23の凸部23fから浮いてしまう。しかしながら、図17に示すように、凸部23fと断熱層40との間に厚み方向と交差する方向の隙間Dが設けられている場合は、ヒータ22に対してコネクタ70が接続された状態となることで、電極部62に対するコンタクト端子72の圧接力Gによりヒータ22が図の下方へ撓むため、凸部23fに対してヒータ22の裏側の面が接触するようになる。このように、断熱層40が狙いの厚みよりも大きくなった場合でも、上記のような隙間Dが設けられていることで、コンタクト端子72の圧接力Gによりヒータ22の撓みを許容し、ヒータ22の裏側の面を凸部23fに対して接触させることができる。これにより、凸部23fによってヒータ22を裏側から支持することができ、電極部62に対するコンタクト端子72の接触圧を安定させることが可能となる。
【0054】
また、図15及び図17に示す例のように、凸部23fと断熱層40との間に厚み方向と交差する方向の隙間Dが設けられていることで、凸部23f又は断熱層40に寸法公差(厚み方向と交差する方向の寸法公差)が生じたとしても、凸部23fと断熱層40(孔部40aの縁)との干渉を回避することができる。また、本実施形態のように、凸部23fが断熱層40の孔部40a内に挿入される構成においては、これらの干渉を回避するために、孔部40aの全周に渡って凸部23fと断熱層40との間に隙間Dが設けられていることが望ましい。
【0055】
凸部23fの個数は、1つに限らず、複数個であってもよい。例えば、図18に示す例のように、凸部23fを2つ設け、これらの凸部23fを各電極部62に対応する部分にそれぞれ配置してもよい。このように、2つの凸部23fが各電極部62に対応して個別に設けられることで、各凸部23fによって各電極部62に対応する部分を確実に支持することができる。また、各凸部23fは、各電極部62における少なくとも接点Cに対応して配置されることが望ましい。また、上記図9に示すような1つの凸部23fによって各電極部62に対応する部分を支持する構成に比べて、寸法精度を確保する必要のある凸部23fの先端面積を小さくすることができるので、製造コストの削減を図ることができる。
【0056】
さらに、図19に示す別の例のように、三角形の頂点を成すように配置された3つの凸部23fを設け、これらの凸部23fによって基材層30の裏側の面を支持するようにしてもよい。この場合、各凸部23fの先端面積をさらに小さくすることができるので(例えば基材層30に対して点接触する球面形状にできるので)、製造コストをより一層低減できる。
【0057】
また、図20に示すヒータ22のように、断熱層40の孔部40aを、各電極部62に対応する部分に個別に形成してもよい。このように、孔部40aを各電極部62に対応する部分に個別に形成することで、断熱層40を省略する領域を必要最小限にすることができ、断熱層40が省略されることによる剛性の低下を抑制できるようになる。この場合、ヒータホルダ23としては、上記図18に示すヒータホルダ23を適用するのがよい。その図を、図21に示す。図21に示すように、ヒータホルダ23に設けられた複数の凸部23fが、断熱層40に形成された複数の孔部40a内に挿入されることで、各凸部23fによって基材層30の裏側の面が支持される。
【0058】
また、図22に示す例のように、断熱層40を、発熱部61及びその近傍部分にのみ対応して設けてもよい。この場合、断熱層40のサイズを小さくすることができ、製造コストの削減を図れる。
【0059】
続いて、本発明の他の実施形態について説明する。
【0060】
上述の実施形態(第1実施形態)では、ヒータ22の構成層の1つである断熱層40を電極部62に対応する部分において省略する(設けない)ようにしているが、本発明の第2実施形態では、一部の構成層の厚みを部分的に薄くしている。
【0061】
具体的には、図23に示すように、ヒータ22の構成層の1つである基材層30の厚みを、発熱部61に対応する部分よりも電極部62に対応する部分で薄くしている。このように、電極部62に対応する部分において基材層30の厚みを薄くすることで、当該部分における基材層30の厚みのばらつきが小さくなる。従って、電極部62に対応する部分における各構成層の積み上げ公差も小さくなり、ヒータ22の厚みのばらつきも小さくなる。これにより、電極部62に対するコンタクト端子72の接触圧の変動を抑制できるようになり、接触圧の管理がしやすくなるので、接触圧不足や接触圧過剰を防止し、接触圧を適切な値(範囲内)に設定することができるようになる。なお、本実施形態においても、ヒータホルダ23の凸部23fは、基材層30に対して接触する接触部であるが、ヒータホルダ23の底面部23aと基材層30との間には僅かに隙間を有しており、底面部23aはヒータ22の裏面に対して接触しない部分である。従って、本実施形態に係る基材層30は、ヒータホルダ23の接触部(凸部23f)がヒータ22の裏面に接触する部分において、その接触部(凸部23f)が接触しない部分に比して薄くなっている。
【0062】
また、図23に示すように、本実施形態では、基材層30の薄く形成された部分を裏側から支持する凸部23fが、ヒータホルダ23の凹部230に設けられている。
【0063】
ここで、本実施形態において用いられる通電用のコネクタは、上述の実施形態(第1実施形態)と同様の構成である(図5参照)。すなわち、コネクタは、ヒータ22とヒータホルダ23とを表側と裏側とから一緒に挟んで保持するコンタクト端子72を有しており、ヒータ22とヒータホルダ23とがコンタクト端子72によって保持された状態で、コンタクト端子72の一対の接点部72aがヒータ22の電極部62に対して圧接される。このように、コンタクト端子72がヒータ22だけでなくヒータホルダ23も挟んで保持する構成の場合、電極部62に対するコンタクト端子72の接触圧は、ヒータ22の厚みのばらつきだけでなく、ヒータホルダ23の厚みのばらつきの影響も受ける。この点に関して、本実施形態では、上記のように基材層30の厚みを電極部62に対応する部分で薄くしている一方、反対に、ヒータホルダ23の厚みは凸部23fが設けられていることで増加している。しかしながら、本実施形態では、ヒータホルダ23が金型により成形される樹脂成形品であるため、厚みの誤差が生じにくい。従って、凸部23fを設けることで厚みが増すことによるヒータホルダ23の厚みのばらつきは、コンタクト端子72の接触圧に関してほとんど影響を与えることがなく、問題ない程度となっている。
【0064】
また、基材層30が薄く形成される範囲は、少なくともコンタクト端子72と電極部62との接点C(図13参照)に対応した位置を含む範囲であることが好ましい。従って、接点Cに対応する部分及びその近傍のみで基材層30を凹ませて薄くしてもよい。また、基材層30の薄く形成される部分と同様に、その部分を支持するヒータホルダ23の凸部23fも、少なくともコンタクト端子72と電極部62との接点Cに対応した位置に配置されるのが望ましい。また、基材層30の薄く形成される部分やその部分を支持するヒータホルダ23の凸部23fの数は、電極部62の数に対応して複数であってもよい。また、上記図19に示す例のように、凸部23fは、三角形の頂点を成すように配置されてもよい。
【0065】
また、図23に示すように、本実施形態では、凸部23fと基材層30との間に、厚み方向と交差する方向の隙間Eを設けている。このような隙間Eを設けることで、凸部23f又は基材層30に寸法公差(厚み方向と交差する方向の寸法公差)が生じたとしても、凸部23fと基材層30とが干渉するのを回避することができる。
【0066】
図23に示す例では、基材層30の裏側の面(図23における下面、あるいは電極部62が設けられている面とは反対側の面)を厚み方向に変化させて、部分的に薄く形成しているが、反対に、図24に示す例のように、基材層30の表側の面(図24における上面)を厚み方向に変化させて部分的に薄く形成することも可能である。ただし、図24に示す例では、表側の導体層60に段差が生じ、形状が複雑化するため、特に導体層60をスクリーン印刷によって形成する方法では、導体層60の形成が行いにくくなる。従って、導体層60の形成のしやすさの観点から言えば、図23に示すように、基材層30の裏側の面を厚み方向に変化させる方が好ましい。
【0067】
図25及び図26は、それぞれ第2実施形態の変形例を示す断面図である。
図25及び図26に示す各例では、上記図23に示す例と比較して、基材層30の厚みが変化する段差部の形状が異なっている。
【0068】
具体的に、図25に示す例では、基材層30の段差部を、厚み方向の複数の段差から成る階段状に形成し(階段状部66とし)、発熱部61に対応する部分から電極部62に対応する部分へ段階的に薄くなるようにしている。このように、基材層30を複数の段差から成る階段状に形成することで、上記図23に示すような段差が一段である場合に比べて、一段分の段差(高さ)を低くすることができる。従って、斯かる構成を採用することで、金属粉等の材料ペーストをマスキング処理しながら階段状に重ねて塗布する方法で段差部(階段状部66)を形成することができるようになり、切削加工により大きな段差部を形成する場合(図23に示す例のような場合)に比べて低コストで製造することができるようになる。
【0069】
また、図26に示す例では、基材層30の裏側の面を厚み方向に対して傾斜させ(傾斜部67とし)、発熱部61に対応する部分から電極部62に対応する部分へ徐々に薄くなるようにしている。この例では、傾斜部67を平面としているが、曲面であってもよい。このように、基材層30を傾斜させて段差部を形成することで、上記図23に示すような段差を直角に形成した例に比べて、段差部における熱応力などの応力集中を回避することができ、基材層30の耐久性を向上させることが可能である。
【0070】
以上のように、本発明の第2実施形態においては、構成層の1つである基材層30の厚みを電極部62に対応する部分において薄くすることで、ヒータ22の厚みのばらつきを低減し、ひいてはコンタクト端子の接触圧変動の抑制を図っている。ここで、図23図26に示す例では、上述の実施形態(第1実施形態)で言うところの、断熱層40と、第1絶縁層51とが省略されているが、これらを設けた構成としてもよく、ヒータ22の構成層の数や構成層の種類(材質)は問わない。従って、電極部62に対応する部分において薄く形成される構成層は、ヒータ22の構成層のうち、基材層30以外の任意に選択された1つであってもよい。また、基材層30を含む構成層のうちから、任意に選択された複数の構成層の厚みを薄くしてもよい。要するに、構成層の少なくとも1つの厚みを部分的に薄くすることで、電極部62に対応する部分における導体層60の表側の面からヒータ22の裏側の面(図23に示す例では基材層30の裏側の面)までの積層方向の総厚T4が、発熱部61に対応する部分における導体層60の表側の面からヒータ22の裏側の面(図23に示す例では基材層30の裏側の面)までの積層方向の総厚T3よりも、薄くなればよい。言い換えれば、導体層60からこれよりも基材層30側に積層される各構成層を含む部分の積層方向の総厚が、発熱部61に対応する部分(T3)よりも、電極部62に対応する部分(T4)で薄くなっていればよい。
【0071】
図27は、本発明の第3実施形態に係るヒータ22及びヒータホルダ23の断面図である。
【0072】
図27に示すように、第3実施形態では、基材層30と断熱層40との間に、高熱伝導層50を設けている。この高熱伝導層50は、基材層30や断熱層40よりも熱伝導率の高い材料で構成されており、ヒータ22の長手方向のほぼ全域に渡って設けられている。
【0073】
一般的に、定着装置においては、ヒータ22の発熱領域よりも小さい幅の用紙が連続して通紙されると、発熱領域の端部側の温度(通紙領域よりも外側の温度)が過度に高くなる問題がある。そこで、このような端部側の過度な温度上昇を抑制するため、本実施形態では、上記のような高熱伝導層50を設け、温度が高くなった端部側の熱をヒータ22の長手方向(紙幅方向)に渡って均すようにしている。このように、高熱伝導層50によってヒータ22の熱を長手方向に渡って均一にすることで、小サイズ用紙を連続通紙する際の端部温度上昇を抑制できるようになる。その結果、端部温度上昇を回避するために、通紙待ち時間を設定したり、通紙速度を遅くしたりする必要がなくなり、小サイズ用紙の印刷生産性を高めることができる。
【0074】
そして、本実施形態では、このような高熱伝導層50を設けた構成において、さらにヒータ22に対するコネクタ70の接触圧不良(接触圧不足又は接触圧過剰)を防止するため、図27に示すように、高熱伝導層50が電極部62に対応する部分で省略されている(電極部62に対応する部分を除いて設けられている。)。また、断熱層40も同様に、電極部62に対応する部分を除いて設けられている。
【0075】
このように、本実施形態では、電極部62に対応する部分において断熱層40と高熱伝導層50とを部分的に省略することで、ヒータ22における各構成層の積み上げ公差を小さくし、電極部62に対するコンタクト端子72の接触圧の変動を抑制するようにしている。また、斯かる作用効果を奏するため、高熱伝導層50及び断熱層40は、電極部62に対応する部分のうち、少なくともコンタクト端子72との接点C(図13参照)に対応した位置を除いて配置されている。なお、本実施形態において用いられる通電用のコネクタは、上述の実施形態(第1実施形態)と同様の構成である(図5参照)。
【0076】
図27に示すように、本実施形態では、高熱伝導層50と断熱層40の電極部62に対応する部分に各孔部50a,40aが設けられており、各孔部50a,40aを通してヒータホルダ23に設けられた凸部23fが基材層30の裏側の面を支持している。また、本実施形態に係るヒータホルダ23の構成は、上記図18に示すような2つの凸部23fを有する構成であってもよいし、上記図19に示すような3つの凸部23fを有する構成であってもよい。
【0077】
また、上記図20に示す断熱層40と同様に、高熱伝導層50の孔部50aは、各電極部62に対応する部分にそれぞれ個別に設けられていてもよい。この場合、高熱伝導層50を省略する領域を最小限にして、広い範囲に渡って高熱伝導層50を設けることができる。また、反対に、高熱伝導層50を設ける領域を必要最小限にしてもよい。高熱伝導層50は、少なくとも端部温度上昇の生じ得る範囲に設けられていればよいので、例えば、上記図22に示す断熱層40と同様に、発熱部61及びその近傍部分にのみ対応して高熱伝導層50を設けてもよい。この場合、高熱伝導層50を設ける領域が少なくなって低コスト化を図れると共に、熱が高熱伝導層50を介して電極部62に伝達されるのを抑制することができるので、電極部62の材料として耐熱性の低い安価な材料を使用することができるようになる。
【0078】
図28は、本発明の第4実施形態に係るヒータ22及びコネクタ70の断面図である。
【0079】
図28に示すように、第4実施形態では、ヒータ22の裏面にコネクタ70が直接接触している。上述の実施形態では、ヒータホルダ23がヒータ22の裏面に直接接触する接触部材であるが、本実施形態では、コネクタ70がヒータ22の裏面に直接接触する接触部材である。図28に示す例では、コネクタ70のハウジング71をヒータ22の長手方向(図28における右方向)に伸ばし、さらにヒータ22の厚さ方向(図28における上方向)に屈曲させた屈曲部の先端71aを、基材層30の裏面に接触させている。すなわち、この場合、ハウジン部71の屈曲部の先端71aが、ヒータ22の裏面に接触する接触部となる。また、この先端71aが接触する部分では、断熱層40が除かれて孔部40aが設けられている。これにより、先端71aが接触する部分で断熱層40に孔部40aが設けられていない構成に比べて、電極部62に対するコンタクト端子72の接触圧がヒータ22の厚みのばらつきの影響を受けにくくなるため、コンタクト端子72の接触圧の変動を抑制できるようになる。また、本実施形態では、上述の実施形態とは異なり、断熱層40の除かれている部分(孔部40a)が電極部62と対応する位置からヒータ22の長手方向にずれているが、斯かる構成においても、コンタクト端子72の接触圧の変動を抑制することが可能である。また、断熱層の除かれている部分が電極部と対応する位置からずれていると、電極部と対応する位置で接触する部分を設けることが難しい場合、例えば、電極部と対応する部分に他の部材が設けられている場合などであっても、接触圧の変動を抑制することが可能になり、設計の自由度が増すなどが考えられる。また、図28に示すような構成において、図23に示す実施形態の構成を適用し、コネクタ70の接触部(先端71a)がヒータ22の裏面に接触する部分において、それ以外の部分に比べて層を薄くしてもよい。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。従って、上述の各実施形態やその変形例を適宜組み合わせてもよい。上述の実施形態は、ヒータの構成層のうちの少なくとも1つの層(第1の層)の一部を省略する構成、あるいは、ヒータの構成層のうちの少なくとも1つの層(第1の層)の厚みを部分的に薄くする構成のいずれかであるが、これらを組み合わせて、構成層の一部を省略すると共にそれとは別の構成層の厚みを部分的に薄くしてもよい。また、ヒータ22を構成する複数の層は、基材層と、基材層とは熱伝導率が異なる層であってもよい。さらに、基材層とは熱伝導率が異なる層の反対側に第1絶縁層を設けてもよいし、電極部と電極部に接続された発熱部とが設けられた面上に第2絶縁層を設けてもよい。また、基材層とは熱伝導率が異なる層とは、基材層より熱伝導率が高い層であってもよいし、基材層より熱伝導率が低い層であってもよい。
【0081】
上述の実施形態では、断熱層40の一部に矩形の孔部40aを形成し、断熱層40を部分的に省略するようにしているが、このような一部が省略される構成層は、上記断熱層40のような、基材層30よりも熱伝導率の低い低熱伝導層である場合に限らない。斯かる構成層として、例えば、断熱層40とは反対に、基材層30よりも熱伝導率の高い材料(銅、アルミニウム、銀、青銅等)で構成された均熱層(熱伝導金属層)を用いてもよい。すなわち、一部が省略される構成層は、基材層30よりも熱伝導率が高い層(均熱層又は熱伝導金属層)であってもよいし、熱伝導率が低い層(断熱層又は低熱伝導層)であってもよく、基材層30とは熱伝導率が異なる層であれば広く含まれる。
【0082】
また、図29に示す例のように、ヒータ22は、第1絶縁層51及び第2絶縁層52が省略され、断熱層40と、基材層30と、導体層60の各層で構成されたものであってもよい。また、図30に示す例のように、ヒータ22は、断熱層40、基材層30、第1絶縁層51、導体層60、第2絶縁層52に加え、断熱層40の裏側に最下層41を備える構成であってもよい。図29及び図30に示す各例では、いずれも、断熱層40の電極部62が設けられている部分に対応する部分が除かれている。
【0083】
要するに、本発明に係る加熱部材において、電極部62及び発熱部61が設けられている板状部材101は、図4に示す例のように、断熱層40と、基材層30と、第1絶縁層51で構成されるものでもよいし、図29に示す例のように、断熱層40と、基材層30で構成されるものでもよいし、図30に示す例のように、最下層41と、断熱層40と、基材層30と、第1絶縁層51で構成されるものでもよい。また、少なくとも一部が、除かれたり、薄く形成されたりする層(第1の層)は、板状部材101を構成するこれら複数の層のうち、電極部62が設けられている面とは最も反対側に設けられた層でもよいし(図4図29参照)、電極部62が設けられている面とこれとは最も反対側に設けられた層との間に設けられた途中の層であってもよい(図30参照)。すなわち、一部が除かれたり、薄く形成されたりする層(第1の層)の位置は問わない。例えば、図30に示す例において、一部が除かれる層(第1の層)は、断熱層40のほか、最下層41でもよいし、基材層30でもよい。
【0084】
また、上述の実施形態では、2つの発熱部61が、基材層30の長手方向に渡って互いに平行に配置され、かつ、電気的に直列接続されているが、図31に示す例のように、ヒータ22は、基材層30の長手方向(ベルト幅方向)に間隔をあけて配置された複数の発熱部61を有するものであってもよい。また、この例のように、各発熱部61は、複数の折り返し部分を有する形状に形成され、基材層30の長手方向両端部に設けられた一対の電極部62に対して電気的に並列に接続されていてもよい。このような複数の発熱部61を有するヒータ22においては、互いに隣り合う発熱部61同士の隙間は、発熱部61間の絶縁性を確保する観点から、0.2mm以上が好ましく、0.4mm以上がさらに好ましい。また、互いに隣り合う発熱部61同士の隙間は、大きすぎると、その隙間の部分で温度低下が生じやすくなるため、長手方向に渡る温度ムラを抑制する観点から、5mm以下が好ましく、1mm以下がさらに好ましい。
【0085】
また、上述の実施形態では、ヒータ22の電極部62が発熱部61に接続されているが、本発明は、電極部62が発熱部61に接続されているものに限らず、例えばサーミスタなどの温度センサに電極部が接続されている構成においても適用可能である。
【0086】
また、本発明は、図2に示す定着装置のほか、例えば、図32図34に示すような定着装置にも適用可能である。以下、図32図34に示す各定着装置の構成について簡単に説明する。
【0087】
まず、図32に示す定着装置9は、定着ベルト20に対して加圧ローラ21側とは反対側に、押圧ローラ90が配置されており、この押圧ローラ90とヒータ22とによって定着ベルト20を挟んで加熱するように構成されている。一方、加圧ローラ21側では、定着ベルト20の内周にニップ形成部材91が配置されている。ニップ形成部材91は、ステー24によって支持されており、ニップ形成部材91と加圧ローラ21とによって定着ベルト20を挟んでニップ部Nを形成している。
【0088】
次に、図33に示す定着装置9では、前述の押圧ローラ90が省略されており、定着ベルト20とヒータ22との周方向接触長さを確保するために、ヒータ22が定着ベルト20の曲率に合わせて円弧状の板状部材で構成されている。その他は、図32に示す定着装置9と同じ構成である。
【0089】
最後に、図34に示す定着装置9では、定着ベルト20のほかに加圧ベルト92が設けられ、加熱ニップ(第1ニップ部)N1と定着ニップ(第2ニップ部)N2とを分けて構成している。すなわち、加圧ローラ21に対して定着ベルト20側とは反対側に、ニップ形成部材91とステー93とを配置し、これらニップ形成部材91とステー93を内包するように加圧ベルト92を回転可能に配置している。そして、加圧ベルト92と加圧ローラ21との間の定着ニップN2に用紙Pを通紙して加熱及び加圧して画像を定着する。その他は、図2に示す定着装置9と同じ構成である。
【0090】
以上のように、本発明においては、電極部の少なくとも一部(接点C)に対応する箇所において、ヒータの構成層を部分的に省略する、又は構成層を薄くする、あるいはこれらの両方を行うことで、ヒータの厚みのばらつきを抑制し、ヒータに対するコネクタの接触圧不良を防止することが可能である。また、斯かる本発明の構成を採用することで、特許文献1で提案されているような構成(コンタクト端子をハウジングに対して移動自在にした構成)を採用しなくても、ヒータに対するコネクタの導通性を良好に確保することができるようになり、コネクタの構成を簡素化することができ、コストアップや大型化を回避することができる。
【0091】
また、図6に示すような、コネクタ70がヒータ22の厚み方向の片側のみ(図6ではヒータ22の上面側のみ)に弾性的に接触する構成は、ヒータに対して厚み方向の両側から弾性的に接触するコネクタに比べて(例えば、特許文献1参照)、ヒータの厚みのばらつきが大きくなると、ヒータに対するコネクタの接触圧の変動が顕著になる傾向にある。しかしながら、このようなコネクタ70がヒータ22の厚み方向の片側のみに弾性的に接触する構成においても、本発明を適用することで、ヒータに対するコネクタの接触圧を安定させることができる。すなわち、本発明によれば、ヒータに対して厚み方向の両側から弾性的に接触するコネクタを採用しなくても、ヒータに対するコネクタの接触圧不良を効果的に防止できるので、構成を簡素化でき低コスト化を図れるようになる。
【0092】
また、本発明に係るヒータ(加熱部材)及び加熱装置は、上記のような定着装置のほか、用紙に塗布されたインクを乾燥させる乾燥装置や、被覆部材としてのフィルムを用紙等のシートの表面に熱圧着する被覆装置(ラミネータ)などにも適用可能である。また、本発明に係る画像形成装置は、プリンタのほか、複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機であってもよい。さらに、本発明は、電子写真方式の画像形成装置に限らず、インクジェット方式の画像形成装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
9 定着装置
19 加熱装置
20 定着ベルト(定着部材)
21 加圧ローラ(対向部材)
22 ヒータ(加熱部材)
23 ヒータホルダ(保持部材)
23f 凸部
30 基材層
40 断熱層
41 最下層
50 高熱伝導層
51 第1絶縁層
52 第2絶縁層
60 導体層
61 発熱部
62 電極部
66 階段状部
67 傾斜部
70 コネクタ
72 コンタクト端子
101 板状部材
N ニップ部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0094】
【特許文献1】特開2014-109754号公報
図1
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図4
図5
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図27
図28
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図30
図31
図32
図33
図34
【手続補正書】
【提出日】2024-09-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層を含む板状部材に電極部と発熱部とが設けられている加熱部材において、
前記複数の層は、基材層と、前記基材層とは熱伝導率が異なる層と、前記基材層と前記基材層とは熱伝導率が異なる層との間に設けられると共に前記基材層よりも熱伝導率の高い高熱伝導層と、を有し、
前記基材層とは熱伝導率が異なる層及び前記高熱伝導層は、前記基材層を基準として前記電極部の側とは反対側であって、前記発熱部が設けられる部分に対応して設けられることを特徴とする加熱部材。
【請求項2】
前記電極部と前記基材層との間、及び、前記発熱部と前記基材層との間に、前記基材層とは別の層を備える請求項1に記載の加熱部材。
【請求項3】
前記発熱部を基準として前記別の層の側とは反対側に、前記別の層とは異なる層を備える請求項2に記載の加熱部材。
【請求項4】
前記基材層を基準として前記電極部の側は、記録媒体に画像を定着させる定着部材に対して加熱部材が接触する側である請求項1から3のいずれか1項に記載の加熱部材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の加熱部材を備える加熱装置
【請求項6】
請求項5に記載の加熱装置を備える定着装置
【請求項7】
請求項6に記載の定着装置を備える画像形成装置
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、複数の層を含む板状部材に電極部と発熱部とが設けられている加熱部材において、前記複数の層は、基材層と、前記基材層とは熱伝導率が異なる層と、前記基材層と前記基材層とは熱伝導率が異なる層との間に設けられると共に前記基材層よりも熱伝導率の高い高熱伝導層と、を有し、前記基材層とは熱伝導率が異なる層及び前記高熱伝導層は、前記基材層を基準として前記電極部の側とは反対側であって、前記発熱部が設けられる部分に対応して設けられることを特徴とする。