(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160023
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】シラノール基を有するシロキサンポリマー及び架橋体
(51)【国際特許分類】
C08G 77/44 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
C08G77/44
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024151686
(22)【出願日】2024-09-03
(62)【分割の表示】P 2020057548の分割
【原出願日】2020-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 和也
(72)【発明者】
【氏名】木谷 綾花
(57)【要約】
【課題】50℃~180℃の温度範囲において低い熱膨張係数を有する架橋体を提供し得るシロキサンポリマーおよび、50℃~180℃の温度範囲において低い熱膨張係数を有する架橋体を提供する。
【解決手段】式(1)で表される繰り返し単位を含む、シロキサンポリマー。
上記式中、R
0は、独立して、炭素数6~20のアリール又は炭素数5~6のシクロアルキルを表し;R
1は、独立して、水素原子、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し;R
2およびR
3は、それぞれ独立して、炭素数6~20のアリール炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し;pは1以上の実数を表し;xは、1~30の実数を表し;y1+y2は、1~30の実数を表し、y2は、0以上30未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される繰り返し単位を含み、重量平均分子量が30,000を超える、シロキサンポリマー。
【化1】
上記式中、R
0は、独立して、フェニル又はシクロヘキシルであり;
R
1は、独立して、水素原子、フェニル、シクロヘキシル、又は炭素数1~5のアルキルであり;
R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル、シクロヘキシル、又は炭素数1~5のアルキルであり;
pは1であり;
xは、1~8の実数を表し;
y1+y2は、1~8の実数を表し、y1は0.25以上であり、y2は、0以上8未満である。
【請求項2】
請求項1に記載のシロキサンポリマー、架橋剤及び遷移金属触媒を含むシロキサンポリマー組成物。
【請求項3】
50℃から10℃毎に180℃までの範囲で算出した線膨張係数の最大値が200ppm/K未満である架橋体を与える、請求項2に記載のシロキサンポリマー組成物。
【請求項4】
ガラス転移温度が0℃以上である架橋体を与える、請求項2又は3に記載のシロキサンポリマー組成物。
【請求項5】
下記式(α)より求められる架橋密度nが150mol/m3以上である架橋体を与える、請求項2~4のいずれか1項に記載のシロキサンポリマー組成物。
n=E’/3RT・・・(α)
n:架橋密度(mol/m3)、E’:貯蔵弾性率(Pa)、R:気体定数((Pa・m3)/(K・mol))、T:温度(K)
【請求項6】
請求項2~5のいずれか1項に記載のシロキサンポリマー組成物を架橋して得られる、架橋体。
【請求項7】
50℃から10℃毎に180℃までの範囲で算出した線膨張係数の最大値が200ppm/K未満である、請求項6に記載の架橋体。
【請求項8】
ガラス転移温度が0℃以上である、請求項6又は7に記載の架橋体。
【請求項9】
下記式(α)より求められる架橋密度nが150mol/m3以上である、請求項6~8のいずれか1項に記載の架橋体。
n=E’/3RT・・・(α)
n:架橋密度(mol/m3)、E’:貯蔵弾性率(Pa)、R:気体定数((Pa・m3)/(K・mol))、T:温度(K)
【請求項10】
遷移金属触媒の存在下で、式(1’)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーのヒドロシリル基を、シラノール基に変換する工程を含む、式(1)で表される繰り返し単位を含み、重量平均分子量が30,000を超える、シロキサンポリマーの製造方法。
【化2】
上記式中、R
0は、独立して、フェニル又はシクロヘキシルであり;
R
1は、独立して、水素原子、フェニル、シクロヘキシル、又は炭素数1~5のアルキルであり;
R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル、シクロヘキシル、又は炭素数1~5のアルキルであり;
pは1であり;
xは、1~8の実数を表し;
y1+y2は、1~8の実数を表し、y1は0.25以上であり、y2は、0以上8未満である。
【請求項11】
前記遷移金属触媒が、パラジウム触媒である、請求項10に記載の式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラノール基を有するシロキサンポリマー及び架橋体に関する。
【背景技術】
【0002】
籠型構造を有するシルセスキオキサンを含むポリマーは、特異な構造を有し、またそれによる特異な効果が期待されるため、様々な分野から注目されている。このようなシルセスキオキサン骨格を含むポリマーには、シルセスキオキサン骨格を主鎖に含むケイ素系重合体が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、籠型構造を有するシルセスキオキサン骨格を主鎖に含むケイ素化合物に架橋性官能基を導入して架橋ポリマーとすることにより耐熱性に優れるシリコーン膜が開発されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-33307号公報
【特許文献2】特開2010-116464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、50℃~180℃の温度範囲において低い熱膨張係数を有する架橋体を提供し得るシロキサンポリマーおよび、50℃~180℃の温度範囲において低い熱膨張係数を有する架橋体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、シルセスキオキサン化合物と鎖状シロキサン構造を含む化合物とを反応させ主鎖にヒドロキシル基を含むシロキサンポリマーを生成し、該シロキサンポリマーのヒドロシリル基をシラノール基に変換することで、新規なシラノール基を有するシロキサンポリマーの合成に成功した。さらに、このシラノール基を有するシロキサンポリマーを架橋することで、50℃~180℃の温度範囲において200ppm/K未満の熱膨張係数を有する架橋体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明の実施形態には、以下の構成が含まれる。
[1] 式(1)で表される繰り返し単位を含む、シロキサンポリマー。
【化1】
上記式中、R
0は、独立して、炭素数6~20のアリール又は炭素数5~6のシクロアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール及び前記炭素数5~6のシクロアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく;
R
1は、独立して、水素原子、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40の
アリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
R
2およびR
3は、それぞれ独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
pは1以上の実数を表し;
xは、1~30の実数を表し;
y1+y2は、1~30の実数を表し、y2は、0以上30未満である。
【0007】
[2] [1]に記載のシロキサンポリマー、架橋剤及び遷移金属触媒を含むシロキサンポリマー組成物。
[3] 50℃から10℃毎に180℃までの範囲で算出した線膨張係数の最大値が200ppm/K未満である架橋体を与える、[2]に記載のシロキサンポリマー組成物。
[4] ガラス転移温度が0℃以上である架橋体を与える、[2]又は[3]に記載のシロキサンポリマー組成物。
[5] 下記式(α)より求められる架橋密度nが150mol/m3以上である架橋体を与える、請求項[1]~[4]のいずれかに記載のシロキサンポリマー組成物。
n=E’/3RT・・・(α)
n:架橋密度(mol/m3)、E’:貯蔵弾性率(Pa)、R:気体定数((Pa・m3)/(K・mol))、T:温度(K)
[6] [2]~[5]のいずれかに記載のシロキサンポリマー組成物を架橋して得られる、架橋体。
[7] 50℃から10℃毎に180℃までの範囲で算出した線膨張係数の最大値が200ppm/K未満である、[6]に記載の架橋体。
[8] ガラス転移温度が0℃以上である、[6]又は[7]に記載の架橋体。
[9] 下記式(α)より求められる架橋密度nが150mol/m3以上である、[6]~[8]のいずれかに記載の架橋体。
n=E’/3RT・・・(α)
n:架橋密度(mol/m3)、E’:貯蔵弾性率(Pa)、R:気体定数((Pa・m3)/(K・mol))、T:温度(K)
【0008】
[10] 遷移金属触媒の存在下で、式(1’)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーのヒドロシリル基をシラノール基に変換する工程を含む、式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーの製造方法。
【化2】
上記式中、R
0は、独立して、炭素数6~20のアリール又は炭素数5~6のシクロアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール及び前記炭素数5~6のシクロアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく;
R
1は、独立して、水素原子、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
R
2およびR
3は、それぞれ独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
pは1以上の実数を表し;
xは、1~30の実数を表し;
y1+y2は、1~30の実数を表し、y2は、0以上30未満である。
[11] 前記遷移金属触媒が、パラジウム触媒である、[10]に記載の式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、50℃~180℃の温度範囲において低い熱膨張係数を有する架橋体を
提供し得るシロキサンポリマーおよび、50℃~180℃の温度範囲において低い熱膨張係数を有する架橋体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に何ら限定されない。また、本発明の実施態様は適宜組み合わせることもできる。
なお、本明細書で用いる用語は、次のように定義される。アルキルおよびアルキレンは、いずれの場合も直鎖の基であってもよく、分岐された基であってもよい。このことは、これらの基において任意の水素がハロゲンや環式の基などと置き換えられた場合も、任意の-CH2-が-O-、-CH=CH-、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、フェニレンなどで置き換えられた場合も同様である。本発明で用いる「任意の」は、位置のみならず個数も任意であることを示す。そして、個数が複数であるときには、それぞれ異なる基で置き換えられてもよい。例えば、アルキルにおいて2個の-CH2-が-O-と-CH=CH-で置き換えられる場合には、アルコキシアルケニル又はアルケニルオキシアルキルを示すことになる。この場合のアルコキシ、アルケニレン、アルケニルおよびアルキレンのいずれの基も、直鎖の基であってもよく、分岐された基であってもよい。但し、任意の-CH2-が-O-で置き換えられると記述するときには、連続する複数の-CH2-が-O-で置き換えられることはない。すなわち、例えば、-CH2-CH2-が-O-O-に置き換えられることはない。
【0011】
1.シロキサンポリマー
本発明の一実施形態であるシロキサンポリマー(以下、「本発明のシロキサンポリマー」ともいう。)は、式(1)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする。
【化1】
上記式中、R
0は、独立して、炭素数6~20のアリール又は炭素数5~6のシクロアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール及び前記炭素数5~6のシクロアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく;
R
1は、独立して、水素原子、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
R
2およびR
3は、それぞれ独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
pは1以上の整数を表し;
xは、1~30の整数を表し;
y1+y2は、1~30の整数を表し、y2は、0以上30未満である。
【0012】
(R0)
R0は、独立して、炭素数6~20のアリール又は炭素数5~6のシクロアルキルを表す。
炭素数6~20のアリールとしては、例えば、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ペリレニルなどがあげられる。これらの中では、フェニル、ナフチル、アントリル、およびフェナントリルが好ましく、フェニル、ナフチルおよびアントリルがより好ましい。
炭素数5~6のシクロアルキルとしては、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。
前記炭素数6~20のアリール及び前記炭素数5~6のシクロアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよい。
R0は、好ましくは、フェニル又はシクロヘキシルである。
【0013】
(R1)
R1は、独立して、水素原子、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表す。
炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキルは、R0で説明したものと同様のものが挙げられる。
炭素数7~40のアリールアルキルとしては、例えば、例えば、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチル、2,2-ジフェニルエチル、3-フェニルプロピル、4-フェニルブチル、5-フェニルペンチルが挙げられる。
炭素数1~40のアルキルとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、iso-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、ドデシル、オクタデシルが挙げられる。
前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH2-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH2-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよい。
R1は、好ましくは、水素原子、フェニル、シクロヘキシル、及び炭素数1~5のアルキルから選ばれ、より好ましくは、炭素数1~5のアルキルから選ばれる。
【0014】
(R2、R3)
R2及びR3は、それぞれ独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表す
。
炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキルは、R0で説明したものと同様のものが挙げられる。
炭素数7~40のアリールアルキルとしては、R1で説明したものと同様のものが挙げられる。
炭素数1~40のアルキルとしては、R1で説明したものと同様のものが挙げられる。
前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH2-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH2-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられもよい。
R2は、好ましくは、フェニル、シクロヘキシル、及び炭素数1~5のアルキルから選ばれ、より好ましくは、炭素数1~5のアルキルから選ばれる。
R3は、好ましくは、フェニル、シクロヘキシル、及び炭素数1~5のアルキルから選ばれ、より好ましくは、炭素数1~5のアルキルから選ばれる。
【0015】
(p、x、y1、y2)
式(1)で表される繰り返し単位において、pは1以上の実数を表し;xは、1~30の実数を表し;y1+y2は、1~30の実数を表し、y2は、0以上30未満である。
p、x、y1、y2を調整することで、本発明のシロキサンポリマーを架橋してなる架橋体の物性を制御し得る。
pは1以上の実数を表す。製造、取り扱いの観点から、pは好ましくは20以下、より好ましくは8以下である。シロキサンポリマーを架橋してなる架橋体の製造やハンドリングを容易にする観点からは1以上であり、好ましくは4以下、より好ましくは2以下である。
xは、1~30の実数を表す。製造、取り扱いの観点から、xは好ましくは20以下、より好ましくは8以下である。シロキサンポリマーを架橋してなる架橋体のガラス転移温度をより高くする場合は、好ましくは1上、より好ましくは2以上であり、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。また、架橋密度をより高くする場合は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上である。
y1+y2は、1~30の実数を表し、y2は、0以上30未満である。製造、取り扱いの観点から、y1+y2は好ましくは20以下、より好ましくは8以下である。後述する通り、本発明のシロキサンポリマーはヒドロシリル基をシラノール基に変換して製造できる。したがって、ヒドロシリル基のシラノール基への変換割合を調整することで、ガラス転移温度、架橋密度、熱線膨張係数、粘弾性、機械特性等を制御し得る。ヒドロシリル基を全てシラノール基に変換すると、y2=0となる。シロキサンポリマーを架橋してなる架橋体のガラス転移温度、架橋密度をより高くする場合は、y1、すなわちシラノール基の割合を増加させることが好ましく、y1は好ましくは1以上、より好ましくは2以上である。
ここで、本発明の一実施形態に係るシロキサンポリマーにおいて、式(1)で表される繰り返し単位は、1種類に限定されず、複数の異なる繰り返し単位が含まれ得る。後述するシロキサンポリマーの合成方法は平衡重合であり、p、x、y1、y2は平均値として表現される。pを1とすると、x、y1+y2の値は小数で表現されてもよい。
なお、x、y1+y2の割合は、後述する製造方法において、重合時の原料の仕込み比により制御することができる。例えば、後述の実施例においては、シルセスキオキサンユニットを増やしたければ化合物αを、鎖状シロキサンユニットを増やす場合はD4あるいはD’4を多く仕込めばよい。また、反応液の濃度、触媒の濃度や種類、温度条件、反応
時間により、x、y1+y2の割合を制御することができる。
また、シルセスキオキサンユニット(p)が増加することで、架橋体は硬くなるが、シルセスキオキサンユニットが多すぎると、もろくなる。一方で、鎖状シロキサンユニット(x、y1、y2)が増加すると、柔軟性が増加しフレキシブルな架橋体が得られる。一方、鎖状シロキサンユニットが多すぎると、架橋体の表面がべたついたり、強度が低下したりする。
【0016】
本発明に係る式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーの末端は、特に限定されない。また、本発明のシロキサンポリマーにおいて、式(1)で表される繰り返し単位が占める質量%は、通常10%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上であり、通常100未満、好ましくは99%以下である。すなわち、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、式(1)で表される繰り返し単位以外のユニットを含んでいてもよい。そのようなユニットとしては、例えば、-(CH2-CH2)-、-(CH=CH)-、-(O-SiMe2-C6H4-SiMe2)-が挙げられる。
本発明に係る式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーの重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、好ましくは2,000以上、より好ましくは10,000以上であり、好ましくは10,000,000以下、より好ましくは1,000,000以下である。重量平均分子量は、後述の実施例に記載されるように、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて得られたクロマトグラムを、分子量標準サンプルにて得られた検量線により計算して求める。
【0017】
2.シロキサンポリマーの製造方法
本発明の一実施形態に係る式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーは、シルセスキオキサン化合物と鎖状シロキサン構造を含む化合物とを反応させ、主鎖にヒドロキシル基を含む式(1’)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーを生成し、式(1’)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーのヒドロシリル基を、例えば、遷移金属触媒の存在下でシラノール基に変換することで得られる。
【化2】
上記式(1’)において、R
0~R
3、p、x、y1、y2はそれぞれ式(1)のR
0~R
3、p、x、y1、y2に対応する。
【0018】
式(1’)で表されるシロキサンポリマーを製造する方法は特に限定されないが、例え
ば、以下の方法(I)又は(II)の工程を含む製造方法により好適に製造することができ
る。
(I):式(a)で表される化合物と式(b)で表される化合物と、式(c)で表される
化合物とを反応させる工程。
(II):式(a)で表されるケイ素化合物と式(b)で表されるケイ素化合物と、ヒドロシリル基を有する式(d)で表される化合物とを反応させる工程。
また、上記工程(I)又は(II)において、式(e)で表される化合物を添加して反応
させることにより、末端を封止してもよい。
上記工程(I)又は工程(II)においては、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチ
ル等の溶媒を用いてもよい。硫酸のような酸の存在下で反応を行うことが好ましい。窒素(N2)等の不活性雰囲気下で反応を行うことが好ましい。また、攪拌しながら反応を行うことが好ましい。
【0019】
【0020】
(式(a)で表される化合物)
シロキサンポリマー中、シルセスキオキサンユニットは式(a)で表される化合物に由来する。
【化4】
上記式中、R
0は、独立して、炭素数6~20のアリール又は炭素数5~6のシクロアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール及び前記炭素数5~6のシクロアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく;R
1は、独立して、水素原子、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよい。
具体的なR
0、R
1は、「1.シロキサンポリマー」の(R
0)、(R
1)の項で説明したものが挙げられる。
式(a)で表される化合物は、例えば、特開2006-022207号公報の記載を参照して合成することができ、以下に示される化合物が好ましい。
【0021】
【0022】
(式(b)で表される化合物)
式(b)で表される化合物を用いて、シロキサンポリマーに鎖状シロキサンユニットを導入することができる。
【化6】
上記式中、R
2は、独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-
が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよい。
aは3~30の整数を表す。シロキサンポリマーの製造の観点から、好ましくは、3~20であり、より好ましくは3~10である。
具体的なR
2は、「1.シロキサンポリマー」の(R
2、R
3)の項で説明したものが挙げられる。また、好ましい態様も同様である。
式(b)で表される化合物としては、例えば、2,2,4,4,6,6-ヘキサメチルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリエチル-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサエチルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリプロピルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリエチル-2,4,6-トリプロピルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサプロピルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(1-メチルエチル)シクロトリシロキサン、2,4,6-トリエチル-2,4,6-トリス(1-メチルエチル)シクロトリシロキサン2,2,4,4,6,6-ヘキサキス(1-メチルエチル)シクロトリシロキサン、2,4,6-トリブチル-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリブチル-2,4,6-トリエチルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサブチルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(1,1-ジメチルエチル)シクロトリシロキサン、2,46-トリエチル-2,4,6-トリス(1,1-ジメチルエチル)シクロトリシロキサン、2,4,6-トリス(1,1-ジメチルエチル)-2,4,6-トリプロピルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,66-ヘキサキス(1,1-ジメチルエチル)シクロトリシロキサン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(トリフルオロメチル)シクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサキス(トリフルオロメチル)シクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサキス(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)シクロトリシロキサン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(3,3,3-トリフルオロプロピル)シクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサキス(3,3,3-トリフルオロプロピル)シクロトリシロキサン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリフェニルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリシクロへキシル-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサシクロへキシルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサビニルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリビニルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラエチル-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタエチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラプロピルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラエチル-2,4,6,8-テトラプロピルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタプロピルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラキス(1-メチルエチル)シクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラエチル-2,4,6,8-テトラキス(1-メチルエチル)シクロテトラシロキサン2,2,4,4,6,6,8,8-オクタキス(1-メチルエチル)シクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラブチル-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラブチル-2,4,6,8-テトラエチルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタブチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)シクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラエチル-2,4,6,8-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)シクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)-2,4,6,8-テトラプロピルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタキス(1,1-ジメチルエチル)シクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラキス(トリフルオロメチル)シクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタキス(トリフルオロメチル)シクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタキス(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)シクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラキス(3,3,3-トリフルオロプロピル)シクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタキス(3,3,3-トリフルオロプロピル)シクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラフェニルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタフェニルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラシクロへキシル-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタシクロへキシルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタビニルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン、2,6-ジエチニル-2,4,4,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタエチル-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカエチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8.10-ペンタメチル-2,4,6,8-ペンタプロピルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタエチル-2,4,6,8,10-ペンタプロピルシクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカプロピルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタメチル-2,4,6,8,10-ペンタキス(1-メチルエチル)シクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタエチル-2,4,6,8,10-ペンタキス(1-メチルエチル)シクロペンタシロキサン2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカキス(1-メチルエチル)シクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタブチル-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタブチル-2,4,6,8,10-ペンタエチルシクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカブチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10,10-ペンタメチル-2,4,6,8,10,10-ペンタキス(1,1-ジメチルエチル)シクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタエチル-2,4,6,8,10-ペンタキス(1,1-ジメチルエチル)シクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタキス(1,1-ジメチルエチル)-2,4,6,8,10-ペンタプロピルシクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカキス(1,1-ジメチルエチル)シクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタメチル-2,4,6,8-ペンタキス(トリフルオロメチル)シクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10.10-デカキス(トリフルオロメチル)シクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカキス(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)シクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10,10-ペンタメチル-2,4,6,8-ペンタキス(3,3,3-トリフルオロプロピル)シクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカキス(3,3,3-トリフルオロプロピル)シクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタメチル-2,4,6,8-ペンタフェニルシクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカフェニルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタシクロへキシル-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカシクロへキシルシクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカビニルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタメチル-2,4,6,8,10-ペンタビニルシクロペンタシロキサンが挙げられ、中でも、R
2が炭素数1~40のアルキルである低分子環状シロキサンが好ましく、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)等の環状シロキサンがより好ましく、入手の容易さ、コスト面、取扱いの観点から、オクタメチルシクロテトラシロキサンが特に好ましい。
【0023】
(式(c)で表される化合物)
式(c)で表される化合物を用いて、シロキサンポリマー(1’)にヒドロシリル基を導入することができる。
【化7】
式(c)中、R
3は、独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
bは1~40の整数を表す。
R
3は、「1.シロキサンポリマー」の(R
2、R
3)の項と同様の説明が適用される。
式(c)で表される化合物としては、例えば、2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリエチルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリス(1-メチルエチル)シクロトリシロキサン、トリプロピルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリス(1,1-ジメチルエチル)シクロトリシロキサン、2,4,6-トリス(1,1-ジメチルエチル)シクロトリシロキサン、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラエチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタエチルシクロペンタシロキサンが挙げられる。
【0024】
(式(d)で表される化合物)
例えば、式(d)で表される化合物を用いてシロキサンポリマー(1’)にヒドロシリル基を導入することができる。
【化8】
式(d)中、R
2、R
3及びR
4は、独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5
~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
c及びdは1~40の整数を表す。
R
2、R
3及びR
4は、「1.シロキサンポリマー」の(R
2、R
3)の項と同様の説明が適用される。
式(d)で表される化合物としては、例えば、1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,7,7,7-ノナメチルテトラシロキサン、1,1,1,3,5,5,5-ヘプタフェニルトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,7,7,7-ノナフェニルテトラシロキサン、Gelest製 HMS-031、HMS-071、HMS-151、HMS-301、HMS-501、HAM-301、(d=1の場合):Gelest製 HMS-991、HMS-992、HMS-993、が挙げられる。
【0025】
(式(e)で表される化合物)
式(e)で表される化合物を用いて、シロキサンポリマー(1)の末端を封止することができる。
【化9】
式(e)中、R
2及びR
4は、それぞれ独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH
2-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
eは1~1000の整数を表す。
R
2及びR
4は、「1.シロキサンポリマー」の(R
2、R
3)の項と同様の説明が適用される。
式(e)で表される化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン、オクタフェニルトリシロキサン、デカフェニルテトラシロキサン、Gelest製 DMA-T07Rが挙げられる。
【0026】
(式(1’)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーのヒドロシリル基をシラ
ノール基に変換する工程)
遷移金属触媒の存在下で、式(1’)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーのヒドロシリル基をシラノール基に変換する工程を含む、式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーの製造方法も本発明の一態様である。
本工程により、ヒドロシリル基の全てあるいは一部の水素が水酸基に変換され、シラノール基を含む式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーを得ることができる。ヒドロシリル基を全てシラノール基に変換すると、式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーにおいて、y2=0となる。ヒドロシリル基のシラノール基への変換割合は、例えば、本工程の時間、溶液濃度、触媒濃度を調整することにより行うことができる。
本工程では、例えば、次のようにして式(1’)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーのヒドロシリル基をシラノール基に変換する。ヒドロシリル基を含む式(1’)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーを溶媒中に溶解し、それを溶媒、水、触媒の混合液中に撹拌しながら滴下する。水素の発生が終了後、反応液を熟成する。その後、ろ過助剤等を使用して、触媒を除去したのち、酢酸エチル等の有機溶媒を加え、分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥する。次に、硫酸ナトリウムを除去し、溶液を減圧濃縮後、ヘプタンで再沈殿させ、得られた沈殿を真空乾燥し、目的物を取得する。
遷移金属触媒としては、パラジウム触媒、白金触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒、銅触媒、及びレニウム触媒が挙げられ、好ましくはパラジウム触媒である。パラジウム触媒としては、例えば、水酸化パラジウム/炭素触媒、パラジウム/炭素触媒が挙げられ、好ましくは、反応効率の観点から水酸化パラジウム/炭素触媒である。触媒量は特に限定さないが、反応性、収率の観点から、基質に対して1~30mol%が好ましい。
本工程に用いられる反応溶媒としては、反応に関与しない溶媒であれば特に限定はされず、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒;THF、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;が挙げられる。中でも、水と混和する溶剤が好ましく、特にTHFが好ましい。用いられる溶媒の量は特に限定されないが、反応性、作業性の観点から、固形分濃度(固形分濃度=100×溶剤以外の重量/反応液全体の重量)が1質量%以上50質量%以下となるように用いることが好ましい。
添加する水の量は特に限定さないが、溶媒との混和性の観点から溶媒に対して1質量%~15質量%の添加が好ましい。
反応時間は特に限定されないが、反応時間が長すぎると、シラノール基(-SiOH)同士の縮合や、ヒドロシリル基(SiH)とシラノール基(SiOH)とでHとOHが交換反応を起こしてしまう場合があるため、収率の確保や高分子量化等を防止する観点から、好ましくは15分以上24時間以下である。
反応温度は特に限定されないが、好ましくは1℃以上、より好ましくは5℃以上であり、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下である。
本工程としては、具体的には、例えば、ヒドロシリル基を含む式(1’)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーを、テトラヒドロフラン及び水の混合溶媒中で、水酸化パラジウム/炭素触媒を用い、不活性雰囲気下で攪拌することで、ヒドロシリル基の全てあるいは一部の水素が水酸基に変換され、シラノール基を含む式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーを得ることができる。
【0027】
3.架橋体
本発明の一実施形態に係る架橋体は、上述の式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーを架橋してなる架橋体(以下、「本発明の架橋体」ともいう。)である。以下、本発明の架橋体について説明する。
【0028】
3.1 架橋体の製造方法
本発明の一実施形態に係る式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマー
の架橋体の製造方法(以下、「本発明の架橋体の製造方法」ともいう。)は、式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーのシラノール基を架橋反応させ、架橋体が得られる方法であれば特に限定されないが、加熱処理工程を含むことが好ましい。このような製造方法としては、例えば、式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマー、架橋剤及び触媒を含むシロキサンポリマー組成物を調製し、シロキサンポリマー組成物を基材に塗工し、加熱して架橋させる方法が挙げられる。より具体的には、式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーをトルエン等の溶媒に溶解し、そこに架橋剤及び触媒を加え、攪拌してシロキサンポリマー組成物を調製する。シロキサンポリマー組成物を脱泡後、基材に塗工し、オーブンを用いて70℃20分間、100℃で1時間、200℃2時間で加熱する。放冷後、基材上に形成されたフィルムを剥がし、架橋体を自立膜(フィルム)として得ることができる。
【0029】
(シロキサンポリマー組成物)
本発明の架橋体の製造方法は、式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマー、架橋剤及び触媒を含むシロキサンポリマー組成物(以下、「シロキサンポリマー組成物」ともいう。)を調製して用いることが好ましい。シロキサンポリマー組成物は、溶媒を含んでいてもよい。組成物は、式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマー、架橋剤、及び触媒を混合して調製すればよい。例えば、式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーを溶媒に溶解し、そこに架橋剤及び触媒を加え、攪拌してシロキサンポリマー組成物である溶液が得られる。得られる架橋体の均一性の観点から、シロキサンポリマー組成物を塗工に供する前に脱泡することが好ましい。
【0030】
(架橋剤)
本実施形態で用いられる架橋剤としては、シラノール基と反応するものであれば特に限定されないが、取り扱い、入手容易性の観点から、好ましくは、アルコキシシリル基を含むシロキサン化合物が挙げられる。
架橋剤としては、具体的には、メチルシリケート、エチルシリケート、メチルシリケートとエチルシリケートの混合物;等が挙げられる。メチルシリケートは、下記式で表される。
【化10】
上記式中、mは2~100であり、好ましくは2~50であり、より好ましくは4~10であり、さらに好ましくは4~5である。
市販品としては、例えば、MKC(登録商標)シリケート MS51、MS56、MS57、MS56S(三菱ケミカル株式会社製);エチルシリケート28、エチルシリケート40、エチルシリケート48、EMS-485、メチルシリケート51、メチルシリケート53(コルコート株式会社製)が挙げられる。
架橋剤は1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
架橋剤の添加量は、シロキサンポリマーに対して、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。架橋剤を2種以上使用する場合は、合計含有量が上記範囲内にあることが好ましい。
【0031】
(触媒)
本実施形態で用いられる触媒は、架橋剤に応じて、適宜選択すればよい。例えば、架橋剤としてアルコキシシリル基を含むシロキサン化合物を用いる場合、スズ、チタン、ジルコニウム、亜鉛およびビスマスなどの金属を含有する有機金属化合物;酸性化合物;塩基性化合物等を用いることができる。
このような金属化合物としては、好ましくは、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクタノエート、ジブチルスズアセチルアセトネート、ジブチルスズオキシド、オクタン酸スズ等の有機スズ触媒;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、及びチタンテトラアセチルアセトネート等のアルコキシチタン;が挙げられる。
酸性化合物としては、例えば、リン酸、トルエンスルホン酸、硫酸、硝酸、酢酸及び安息香酸が挙げられる。
塩基性化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、N,N-ビス(N,N-ジメチル-2-アミノエチル)メチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルフェニルアミン及びN-エチルモルホリニンが挙げられる。
触媒は1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
触媒の添加量は、シロキサンポリマーに対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。触媒を2種以上使用する場合は、合計含有量が上記範囲内にあることが好ましい。
【0032】
(溶媒)
本実施形態で用いられるシロキサンポリマー組成物は、溶媒を含んでいてもよい。シロキサンポリマー組成物のハンドリングの観点からは、溶媒を用いてシロキサンポリマー組成物の粘度を調整することが好ましい。
シロキサンポリマー組成物に使用される溶媒としては、式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーを溶解可能であれば、特に限定されない。好ましい溶媒は、ブタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アニソールなどの芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、塩化メチレン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素系溶媒;酢酸エチルなどのエステル系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのグリコールエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン(NMP)、ピリジンなどの含窒素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒などである。好ましくは、トルエン、メシチレン、アニソール、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸2-(2-エトキシエトキシ)エチルであり、より好ましくはトルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)である。溶媒は1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。また、溶媒は脱水して用いてもよい。溶媒の使用量は、特に限定されないが、式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーに対して、通常10質量%以上、好ましくは20質量%以上であり、通常1000質量%以下、好ましくは500質量%以下で用いることができる。
【0033】
(加熱工程)
式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーを架橋する方法としては、加熱処理が挙げられる。
加熱処理工程は、具体的には、シロキサンポリマー組成物を基材に塗工した後、オーブン等を用いて加熱すればよい。
加熱処理工程の温度、時間は、式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーを所望の架橋体にとすることができれば特に限定されない。加熱処理により架橋硬化したシロキサンポリマーは、放冷後、フィルム状の架橋体として基材から剥離することができる。
基材は、加熱処理工程の温度に耐え、基材上に形成した架橋体を基材から引き剥がして自立膜として取り出せるものであれば特に限定されず、例えば、石英、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板;フッ化カルシウム基板、;ITO(酸化インジウム・スズ)などの金属酸化物基板;セラミック基板;ポリカーボネート(PC)フィルム、シリコーン系フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、アクリルポリマーフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリイミド(PI)フィルム等のプラスチックフィルム;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)等のフッ素樹脂基板;ガラス等にフッ素樹脂を塗布した積層基板;SUS、銅等の金属基板等を用いることができる。
【0034】
3.2 架橋体の物性
式(1)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーを架橋してなる架橋体は、シラノール基を含まないシロキサンポリマーに比較して、低い熱膨張係数を有し、高い架橋密度および高いガラス転移温度(Tg)を実現することができる。
【0035】
3.2.1 ガラス転移温度
DMAによる動的粘弾性測定において、損失弾性率(E”)のピークトップの温度とする。本実施形態の架橋体は、ガラス転移温度が0℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましい。
DMAによる動的粘弾性測定の測定は、例えば日立ハイテクサイエンス DMS6100を用い、以下の測定条件で行えばよい。
1℃/min、サンプル面積10mm×1mm
荷重10mN、測定周波数10 Hz
【0036】
3.2.2 架橋密度
一般的に架橋高分子のゴム状平坦領域の貯蔵弾性率は、架橋密度が高いほど高弾性率側に観測される。この現象を利用してゴム状平坦領域の貯蔵弾性率からみかけの架橋密度nを以下の式より近似できる。
n≒E’/3RT
n:架橋密度(mol/m3)、E’:貯蔵弾性率(Pa)、R:気体定数((Pa・m3)/(K・mol))、T:温度(K)
耐熱性の観点から、架橋密度の高いシロキサンポリマーフィルムが求められている。本実施形態の架橋体は、上記式(α)より求められる架橋密度nが150mol/m3以上であることが好ましく、250mol/m3がより好ましい。
【0037】
3.2.3 線膨張係数(CTE)
線膨張係数は、熱機械分析(TMA)により測定する。式(1)で表される繰り返し単位を有する本実施形態の架橋体は、50℃~180℃の温度範囲の1stスキャン(1回目の昇温、昇温速度:5℃/min)において、50℃から10℃毎に180℃までの範囲(すなわち、50℃~60℃、60℃~70℃、70℃~80℃、80℃~90℃、90℃~100℃、100℃~110℃、110℃~120℃、120℃~130℃、130℃~140℃、140℃~150℃)で算出した線膨張係数の最大値が、200ppm/K未満であることが好ましく、より好ましくは190ppm/K以下である。
TMAによる線膨張係数の測定は、例えば日立ハイテクサイエンス SS/TMA6100を用い、以下の測定条件で行えばよい。
引張モード、5℃/min、長さ20mm、断面積0.3mm2
荷重9.8 mN
【実施例0038】
以下において、実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明するが、これらの記載により本発明の範囲が限定されることはない。
【0039】
実施例で用いた試薬を以下に示す。
トルエン(特級): 富士フィルム和光純薬(株)製
トルエン(超脱水): 富士フィルム和光純薬(株)製
テトラヒドロフラン(一級): 富士フィルム和光純薬(株)製
D
4(オクタメチルシクロテトラシロキサン):東京化成工業(株)製
D’
4 (2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン):東京化成工業(株)製
キョーワード(登録商標)500 SN(合成ハイドロタルサイト):協和化学工業(株)製
へプタン(一級):富士フィルム和光純薬(株)製
酢酸エチル(超脱水):富士フィルム和光純薬(株)製
硫酸(特級): 関東化学(株)製
水酸化パラジウム/炭素(約50%水湿潤品):東京化成工業(株)製
硫酸ナトリウム(無水):富士フィルム和光純薬(株)
MKC(登録商標)シリケート MS51: 三菱ケミカル(株)製
ジブチルスズジジラウレート(DBTL):東京化成工業(株)製
PDMS: Gelest製 DMS-S42
【化11】
化合物(α)は、以下の化合物(4)と化合物(5)とを反応させ、さらに加水分解することにより合成した(例えば、特開2006-022207号公報の0032段落参照。)。
【化12】
【0040】
GPC ゲル浸透クロマトグラフィー
<測定条件>
カラム:昭和電工(株)製Shodex KF-804L 300×8.0mm
昭和電工(株)製Shodex KF-805L 300×8.0mm 2本直列
移動相:THF
流速:1.0ml/min
温度:40℃
検出器:RI
分子量標準サンプル:分子量既知のポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)
【0041】
DMA 動的粘弾性測定
<測定条件>
日立ハイテクサイエンス DMS6100
1℃/min、サンプル面積10mm×1mm
荷重10mN、測定周波数10 Hz
【0042】
TMA 熱機械的分析
<測定条件>
日立ハイテクサイエンス SS/TMA6100
引張モード、5℃/min、長さ20mm、断面積0.3mm2
荷重9.8 mN
【0043】
【0044】
化合物(α) 50g、D415.6g、D’4 2.54g、トルエン104.6gを500 mL4つ口丸底フラスコに加え、温度計、還流管、メカニカルスターラー、オイ
ルバスをセットし、窒素をフローした。撹拌しながら硫酸1.6gを加えた。還流温度で1時間程度撹拌後、80℃以下まで放冷し、80℃で3時間熟成した。加熱・撹拌を停止し、水を加え反応溶液を数回水洗後、キョーワード500で処理することで酸の除去を行い、ろ過後50℃でろ液を濃縮した。ろ液の濃縮液をヘプタンで再沈殿後、沈澱を真空乾燥し、44.6gの白色固体(A)を得た。分子量はGPCで測定し、重量平均分子量Mwは123,000、多分散度Mw/ Mn = 3.8であった。1H-NMRよりSiH
基の存在が確認され、29Si-NMR測定により求めた(x, x’)は、平均3.1、(y, y’)は、平均1.0であった。
(1H-NMR結果)
1H-NMR(400MHz, CO(CD3)2)δ: 7.18~7.66(Ph)、
4.77~4.86(Si-H)、0.28~0.43(O3SiMe)、-0.02~0.13(O2SiMe2)。
(29Si-NMR結果)
29Si-NMR(99MHz, THF-d8)δ: 7.35~10.1(Me3M1
)、-18.3~-21.9(Me2D2)、-34.8~-36.2(H,MeD2)
、-64.0~-65.2(MeT3)、-78.7~-79.9(PhT3)。
【0045】
【0046】
50mLの三つ口丸底フラスコにTHF34mL、純水7mL、水酸化パラジウム/炭
素69mgを加え、温度計をセットし、マグネチックスターラーで撹拌し、窒素をフローした。ポリマー(A)10gのTHF 20 mL溶液を滴下し、室温で一晩撹拌した。
反応液に酢酸エチルを加え、セライトを用いて水酸化パラジウム/ 炭素をろ過した。分液後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。へプタンで再沈殿後、沈澱を真空乾燥し9.8gの白色固体(B)を得た。分子量はGPCで測定し、重量平均分子量Mwは113,600、多分散度Mw/ Mn = 3.5であった。
1H-NMRよりSiOH基のシグナルの出現を、29Si-NMR測定よりH,MeD2のシグナル(-35ppm付近)の出現を確認し、SiHからSiOHへの変換率は25%であった。
(1H-NMR測定結果)
1H-NMR(400MHz, CO(CD3)2)δ: 7.15~7.64(Ph)、
4.73~4.82(Si-H)、6.27(Si-OH、broad)、0.25~0.39(O3SiMe)、-0.04~0.12(O2SiMe2)。
(29Si-NMR測定結果)
29Si-NMR(99MHz, CO(CD3)2)δ: -17.8~-21.6(M
e2D2)、-34.3~-35.9(H,MeD2)、-55.5~-56.8(MeT2)、-63.5~-64.7(MeT3)、-78.4~-79.2(PhT3)。
【0047】
[合成例2]
側鎖にOHを有さず、末端SiOHのみを有するシロキサンポリマーを合成した。
【化15】
【0048】
化合物(α)20g、D47.5g、トルエン44.4gを200mL4つ口丸底フラスコに加え、温度計、還流管、メカニカルスターラー、オイルバスをセットし、窒素をフローした。撹拌しながら硫酸2.07gを加えた。還流温度で1時間撹拌後、80℃まで放冷し、80℃4時間熟成した。加熱・撹拌を停止し、水を加え反応溶液を数回水洗後、キョーワード500で処理することで酸の除去を行い、ろ過後50℃程度でろ液を濃縮した。ろ液をヘプタンで再沈後、真空乾燥し、10.3gの白色固体(C)を得た。分子量はGPCで測定し、重量平均分子量Mwは30,000、多分散度 Mw/Mn=1.7であった。1H-NMRより(x,x’)は、平均3.9であった。
(1H-NMR測定結果)
1H-NMR(400MHz, CO(CD3)2)δ: 7.11~7.63(Ph)、
5.03~5.05(Si-OH)、0.25~0.38(O3SiMe)、-0.07~0.12(O2SiMe2)。
(29Si-NMR測定結果)
29Si-NMR(99MHz, CO(CD3)2)δ: -12.2~-13.7(M
e2D1)、-18.1~-21.6(Me2D2)、-55.1(MeT2)、-64.2~-64.7(MeT3)、-78.6~-79.3(PhT3)。
【0049】
[実施例2-1、比較例2-1~2-2]
表1に記載の組成にて、実施例1-1で得られたポリマーB、合成例2で得られたポリマーC、市販品のPDMSであるポリマーDのそれぞれを脱水トルエンに溶解し、MS-51、ジブチルスズジラウレートを加え、撹拌し、実施例2-1、比較例2-1~2-2の組成物を調製した。得られたシロキサンポリマー組成物を脱泡後、溶液を基材にキャストし、オーブンで70℃20分間、100℃1時間、200℃2時間で加熱・架橋させた。放冷後、基材よりフィルムを剥がし架橋体を得た。
【0050】
各物性は次の通り求めた。
ガラス転移温度:DMAによる動的粘弾性測定において、損失弾性率(E”)のピークトップの温度。
みかけの架橋密度:ゴム状平坦領域の貯蔵弾性率からみかけの架橋密度を以下の式より算出した。
n=E’/3RT
n:架橋密度(mol/m3)、E’:貯蔵弾性率(Pa)、R:気体定数((Pa・m
3)/(K・mol))、T:温度(K)
線膨張係数(CTE):TMAにより測定。50℃~180℃の温度範囲の1stスキャン(1回目の昇温、昇温速度:5℃/min)のTMAの結果から、50℃から10℃毎に180℃までの範囲で算出した熱膨張係数の最大値。
【0051】
【0052】
ポリマーのペンダント位に水酸基を有するシロキサンポリマーを架橋剤を用いてフィルムとすることで、比較例よりもガラス転移温度、みかけの架橋密度を上昇させることができ、熱線膨張係数を著しく低下させることが可能である。シリコーンの熱線膨張係数は通常200ppm/Kより高く、それより低いということは、通常のシリコーンフィルムより膨張を抑制できているということになる。したがって、配線を載せた基材として用いたときに、工程で熱がかかっても膨張を抑制でき、配線が切れることを回避できる。