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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160025
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】除菌剤
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/62 20060101AFI20241031BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20241031BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20241031BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20241031BHJP
   C11D 1/66 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C11D1/62
A01P3/00
A01N33/12 101
A01N25/02
C11D1/66
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024151719
(22)【出願日】2024-09-03
(62)【分割の表示】P 2019238772の分割
【原出願日】2019-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】小矢野 大知
(72)【発明者】
【氏名】五味 満裕
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、水道水で低濃度に希釈して使用しても優れた除菌効果を奏する除菌剤を提供することである。
【解決手段】ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩には、水道水で数ppmレベルの低濃度に希釈しても、優れた除菌効果を奏し得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩を有効成分とし、ベンジルアルキル(炭素数8~14)ジメチルアンモニウム塩を含有しない、又はベンジルアルキル(炭素数8~14)ジメチルアンモニウム塩を含有する場合には、ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩とベンジルアルキル(炭素数8~14)ジメチルアンモニウム塩の総量100重量部当たり、ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩は50重量部以上である除菌剤、及び非イオン性界面活性剤を30~60重量%含有する、洗浄剤組成物。
【請求項2】
ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩が、ベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリド、及び/又はベンジルステアリルジメチルアンモニウムクロリドである、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
水道水で希釈して使用される、請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
トイレ便器用の洗浄剤である、請求項1~3のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水で希釈して低濃度で使用しても優れた除菌効果を奏する除菌剤に関する。また、本発明は、当該除菌剤を使用した洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にトイレの便器内部のような一時的に水が流れる環境においては、無機質及び有機質が不溶性の塩を形成し、それらを基質として細菌やカビ等の微生物に由来する黒ずみ汚れが生じ易い。このような微生物の付着や繁殖が生じ易い水廻り製品に使用する洗浄剤組成物は、除菌作用を付与することが一般的に行われている。
【0003】
一方、塩化ベンザルコニウムは、主成分としてベンジルドデシルジメチルアンモニウムクロリド及び/又はベンジルテトラデシルジメチルアンモニウムクロリド含む成分であり、第4級アンモニウムカチオンによって除菌作用を発揮できる化合物であることが知られている。従来、塩化ベンザルコニウムを配合し、除菌作用を付与した洗浄剤組成物について種々報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、従来の塩化ベンザルコニウムを含む洗浄剤組成物では、トイレの洗浄等の実際の使用環境では十分な除菌効果を奏し得ないという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2012-515726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、塩化ベンザルコニウムの除菌性能について種々検討を行ったところ、通常の塩化ベンザルコニウムの主成分は、数ppmレベルの低濃度で使用すると、除菌効果が不十分になるという欠点を知見した。更に、通常の塩化ベンザルコニウムの主成分の中には、精製水で数ppmレベルの低濃度に希釈しても除菌効果を奏するものがあるが、このような特性を有するものであっても、水道水で数ppmレベルの低濃度に希釈すると、除菌効果が著しく低減するという欠点を知見した。通常の塩化ベンザルコニウムには、このような欠点があるが故に、除菌剤として使用しても、トイレの洗浄等の実際の使用環境において、所望の除菌効果を奏し得ないという課題を了得した。
【0007】
そこで、本発明の目的は、水道水で低濃度に希釈して使用しても優れた除菌効果を奏する除菌剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩には、水道水で数ppmレベルの低濃度に希釈しても、優れた除菌効果を奏し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩を有効成分とする、除菌剤。
項2. ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩が、ベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリド、及び/又はベンジルステアリルジメチルアンモニウムクロリドである、項1に記載の除菌剤。
項3. 水道水で希釈して使用される、項1又は2に記載の除菌剤。
項4. 項1~3のいずれかに記載の除菌剤、及び界面活性剤を含有する、洗浄剤組成物。
項5. 水道水で希釈して使用される、項4に記載の洗浄剤組成物。
項6. トイレ便器用の洗浄剤である、項4又は5に記載の洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の除菌剤は、水道水で低濃度に希釈して使用しても優れた除菌効果を奏するので、例えば、トイレのフラッシュ水に希釈して便器に流水させるトイレ便器用の洗浄剤組成物に配合して使用しても優れた除菌効果を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.除菌剤
本発明の除菌剤は、ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩を有効成分とすることを特徴とする。以下、本発明の除菌剤について詳述する。
【0012】
[ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩]
ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩は、ベンジルアンモニウムのアミノ基に炭素数16~18のアルキル基(以下、長鎖アルキル基)と2つのメチル基が結合している化合物の塩であり、従来、除菌効果が知られていない化合物である。除菌成分として塩化ベンザルコニウム塩が公知であるが、塩化ベンザルコニウム塩は主成分としてベンジルドデシルジメチルアンモニウムクロリド及び/又はベンジルテトラデシルジメチルアンモニウムクロリドを含んでおり、本発明で使用されるベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩自体を除菌のための有効成分とするものではない。
【0013】
ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩における長鎖アルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状である。また、ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩における長鎖アルキル基として、好ましくは炭素数16又は18のアルキル基、より好ましくは炭素数18のアルキル基が挙げられる。
【0014】
ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩における塩の形態としては、具体的には、塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物塩が挙げられる。これらの中でも、好ましくは塩化物が挙げられる。
【0015】
ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩としては、具体的には、ベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリド、ベンジルステアリルジメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0016】
本発明の除菌剤において、ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩として、1種のものを単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。例えば、ベンジルセチルジメチルアンモニウム塩とベンジルステアリルジメチルアンモニウム塩を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
[その他の除菌成分]
本発明の除菌剤は、ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩に加えて、他の除菌成分が含まれていてもよい。
【0018】
除菌成分としては、例えば、ベンジルアルキル(炭素数8~14)ジメチルアンモニウム塩(ベンジルアンモニウムのアミノ基に炭素数8~14のアルキル基と2つのメチル基が結合している化合物の塩化物塩等);塩化ベンゼトニウム等のベンゼトニウム塩;塩化セチルピリジニウム等のセチルピリジニウム塩;グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン等のクロルヘキシジン塩;パラオキシ安息香酸エステル、二酸化塩素等が挙げられる。これらの除菌成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
本発明の除菌剤の一態様として、除菌成分としてベンジルアルキル(炭素数8~14)ジメチルアンモニウム塩が含まれていない、又は少量であることが挙げられ、具体的には、ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩とベンジルアルキル(炭素数8~14)ジメチルアンモニウム塩の総量100重量部当たり、ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩が、5重量部以上、好ましくは20重量部以上、より好ましくは30重量部以上、更に好ましくは50重量部以上、より一層好ましくは70重量部以上、特に好ましくは90重量部以上又は100重量部(即ち、ベンジルアルキル(炭素数8~14)ジメチルアンモニウム塩が含まれていない)であることが挙げられる。
【0020】
[用途・使用形態]
本発明の除菌剤は、除菌作用の付与が求められる各種製品に添加して使用される。除菌作用の付与が求められる製品としては、例えば、洗浄剤組成物、漂白剤組成物、衣料用柔軟剤組成物、衣料用仕上げ剤組成物、消臭剤組成物、医薬組成物、化粧料組成物等が挙げられる。これらの中でも、本発明の除菌剤の添加対象として、好ましくは洗浄剤組成物が挙げられる。洗浄剤組成物の具体的態様については、「2.洗浄剤組成物」で詳述する。
【0021】
本発明の除菌剤の添加対象となる各種製品の形態については、特に制限されず、例えば、液状、固体状(粉末状、錠剤状等)、半固形状(ペースト状、ゲル状等)等のいずれであってもよい。
【0022】
本発明の除菌剤の前記各種製品への添加量については、各種製品の種類や使用態様等に応じて、使用時にベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩が後述する濃度を満たすように適宜設定すればよい。
【0023】
本発明の除菌剤の使用時のベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩の濃度としては、例えば、0.1~5.0ppm、好ましくは0.1~3.0ppm、より好ましくは0.1~2.0ppm、更に好ましくは0.1~1.5ppm、特に好ましくは0.25~1.5ppmが挙げられる。ここで、「使用時のベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩の濃度」とは、除菌対象物に接触させる際の使用時のベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩の濃度である。即ち、本発明の除菌剤が添加された各種製品が、使用時に水で希釈した後に除菌対象物に接触させて使用されるものである場合には、当該各種製品中の本発明の除菌剤の濃度は、希釈後のベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩の濃度が前記範囲になるように、設定された希釈倍率に応じて適宜設定すればよい。
【0024】
また、本発明の除菌剤が添加された各種製品が水で希釈して使用される場合、希釈する水は、精製水であってもよいが、水道水であることが好ましい。塩化ベンザルコニウムは、水道水で数ppmにまで希釈すると、十分な除菌効果を奏し得ないという欠点があったが、本発明の除菌剤では、当該欠点が克服されており、水道水で数ppmにまで希釈しても、優れた除菌効果を奏することができる。
【0025】
2.洗浄剤組成物
前述の通り、前記除菌剤の添加対象の好適な例として洗浄剤組成物が挙げられる。従って、本発明は、更に、前記除菌剤及び界面活性剤を含む洗浄剤組成物を提供する。以下、本発明の洗浄剤組成物について詳述する。
【0026】
[除菌剤]
本発明の洗浄剤組成物は、除菌剤としてベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩を含有する。ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩の種類等については、前記「1.除菌剤」の欄に記載の通りである。
【0027】
また、本発明の洗浄剤組成物におけるベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩の含有量については、使用時に水で希釈した後の濃度が前記「1.除菌剤」の欄に示す使用時の濃度となるように適宜設定すればよい。具体的には、本発明の洗浄剤組成物におけるベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩の含有量として、0.5~15重量%、好ましくは0.5~10重量%、より好ましくは1.5~10重量%が挙げられる。
【0028】
また、本発明の洗浄剤組成物は、ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩に加えて、必要に応じて他の除菌成分が含まれていてもよい。他の除菌成分の種類については、前記「1.除菌剤」の欄に記載の通りである。
【0029】
また、本発明の洗浄剤組成物の一態様としてベンジルアルキル(炭素数8~14)ジメチルアンモニウム塩が含まれていない、又は少量であることが挙げられ、具体的には、ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩とベンジルアルキル(炭素数8~14)ジメチルアンモニウム塩の総量100重量部当たり、ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩が、5重量部以上、好ましくは20重量部以上、より好ましくは30重量部以上、更に好ましくは50重量部以上、より一層好ましくは70重量部以上、特に好ましくは90重量部以上又は100重量部(即ち、ベンジルアルキル(炭素数8~14)ジメチルアンモニウム塩が含まれていない)であることが挙げられる。
【0030】
[界面活性剤]
本発明の洗浄剤組成物は、洗浄成分として界面活性剤が含まれる。本発明で使用される界面活性剤の種類については、特に制限されず、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれであってもよい。
【0031】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、アルキル多価アルコールエーテル、ポリオキシアルキレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエ、ポリオキシエチレンアルキルアミン、脂肪酸アルカノールアミド、アシルメチルグルカミド、ポリオキシエチレンアセチレングリコール、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンコレスタノール、ポリオキシエチレンノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物、アルキルグルコシド等が挙げられる。
【0032】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドグルタミン酸塩、ラノリン脂肪酸ジエチルアミノエチルアミドグルタミン酸塩等のアミドアミン塩型界面活性剤;ラウリン酸アミドグアニジン塩酸塩等のアミドグアニジン塩型界面活性剤等が挙げられる。
【0033】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルケニルスルホン酸塩(αオレフィンスルホン酸塩)、アルキルスルホ酢酸塩、アルキル硫酸塩、アルカンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルアミン酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ポリオキシエチレン脂肪酸リン酸エステル塩等が挙げられる。
【0034】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のベタイン型両性界面活性剤;アミノ酸型両性界面活性剤;アミンオキシド型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0035】
これらの界面活性剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
界面活性剤の中でも、好ましくは非イオン性界面活性剤、より好ましくはポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンブロックポリマー、更に好ましくはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが挙げられる。
【0037】
本発明の洗浄剤組成物における界面活性剤の含有量については、使用する界面活性剤の種類、使用時の希釈倍率等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、10~60重量%、好ましくは20~55重量%、更に好ましくは30~50重量%が挙げられる。
【0038】
[その他の成分・形態等]
本発明の洗浄剤組成物は、前記成分以外に、他の添加剤や基剤を含んでいてもよい。このような添加剤や基剤としては、例えば、水、1価低級アルコール、多価アルコール、漂白剤、香料、消臭剤、着色剤、可溶化剤、キレート剤、増量剤、溶解性調整剤、充填剤、pH調整剤、増粘剤、無機系ビルダー、有機系ビルダー、酵素等が挙げられる。
【0039】
また、本発明の洗浄剤組成物の形態については、特に制限されず、液状、固体状(粉末状、錠剤状等)、半固形状(ペースト状、ゲル状等)等のいずれであってもよい。
【0040】
[洗浄対象]
本発明の洗浄剤組成物の洗浄対象については、除菌及び汚れ除去が求められるものであることを限度として特に制限されないが、例えば、トイレ(便器、トイレの床)、浴室、台所、厨房、排水管、貯水設備(プール、人工池等)等の、水との接触が可能な硬質表面が挙げられる。これらの中でも、水洗トイレの便器は、糞便が付着し易く、除菌及び汚れ除去作用が強く求められていので、本発明の洗浄剤組成物は、水洗トイレの便器用の洗浄剤として好適である。
【0041】
[使用方法]
本発明の洗浄剤組成物を用いて硬質表面を洗浄するには、所定の希釈倍率になるように水で希釈して、噴霧、塗布、流水等によって硬質表面に接触させればよい。また、本発明の洗浄剤組成物を硬質表面に接触させる際には、必要に応じてブラシでブラッシングを行ってもよい。
【0042】
本発明の洗浄剤組成物において、使用時に水で希釈する際の希釈倍率としては、使用時(希釈後)のベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩の濃度が前述する範囲になるように適宜設定すればよいが、例えば、1万~100万倍程度、好ましくは2万~50万倍程度、より好ましくは3万~25万倍程度が挙げられる。
【0043】
また、本発明の洗浄剤組成物を希釈する水は、精製水であってもよいが、利便性等の点から、水道水であることが好ましい。塩化ベンザルコニウムは、水道水で数ppmまで希釈すると除菌効果が減弱するという欠点があったが、本発明の洗浄剤組成物では、水道水で、ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩を数ppmまで希釈しても、優れた除菌効果を奏することができる。
【0044】
また、本発明の洗浄剤組成物がトイレ便器用の洗浄剤の場合であれば、トイレのフラッシュ水(便器に流水される水道水)で希釈して使用することが好ましい。このような場合、本発明の洗浄剤組成物は、水洗トイレのオンタンク用、リム部用、便器表面付着用等として使用することができる。オンタンク用とは、水洗トイレの手洗い部の上に設置して使用されるものであって、洗浄剤組成物が収容された容器に、手洗い部に供給された洗浄用のフラッシュ水と接触することにより、当該洗浄剤組成物が容器から流出され、洗浄剤組成物が溶け込んだフラッシュ水が便器内に放出されることによって、便器表面が洗浄される。また、リム部用では、水洗トイレのリム部に取り付けられて使用され、洗浄剤組成物が収容された容器に、便器に放出されるフラッシュ水が接触することにより、当該洗浄剤組成物が容器から流出され、洗浄剤組成物が溶け込んだフラッシュ水が便器内に放出されることによって、便器表面が洗浄される。便器表面付着用では、ゲル状や固形状にした本発明の洗浄剤組成物を便器表面に直接付着させておき、フラッシュ時に便器表面でフラッシュ水と接触し、洗浄剤組成物がフラッシュ水中に溶出することによって、便器表面が洗浄される。
【実施例0045】
以下、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
なお、以下の試験例及び処方例で使用した成分の原料製品の情報等は、以下の通りである。また、以下の試験例及び処方例において示す各成分の含有量は、原料製品の含有量ではなく、各成分自体の含有量である。
・ベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリド:商品名「ベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリド水和物」(ベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリドを97重量%以上含有)、東京化成工業株式会社製
・ベンジルステアリルジメチルアンモニウムクロリド:商品名「カチオンS」(ベンジルステアリルジメチルアンモニウムクロリドを91重量%含有)、三洋化成工業株式会社製・塩化ベンザルコニウム:第4級アンモニウム塩を50重量%含有; 組成分析の結果:含有する第4級アンモニウム塩の殆どが、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムクロリド及びベンジルテトラデシルジメチルアンモニウムクロリドであり、ベンジルステアリルジメチルアンモニウムクロリドは含まれていない。
・ベンジルオクチルジメチルアンモニウムクロリド:商品名「ベンジルジメチルオクチルアンモニウムクロリド」(ベンジルオクチルジメチルアンモニウムクロリドを96重量%以上含有)、シグマアルドリッチ社製
・ベンジルデシルジメチルアンモニウムクロリド:商品名「ベンジルジメチルデシルアンモニウムクロリド」(ベンジルデシルジメチルアンモニウムクロリドを97重量%以上含有)、シグマアルドリッチ社製
・ベンジルドデシルジメチルアンモニウムクロリド:商品名「ベンジルドデシルジメチルアンモニウムクロリド二水和物」(ベンジルドデシルジメチルアンモニウムクロリドを98重量%以上含有)、東京化成工業株式会社製
・ベンジルテトラデシルジメチルアンモニウムクロリド:商品名「ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロリド水和物」(ベンジルテトラデシルジメチルアンモニウムクロリドを98重量%以上含有)、東京化成工業株式会社製
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル:構造式R-(EO)約17-(PO)約3-H
(Rは炭素数10の直鎖状アルキル基、EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイド)の化合物
【0047】
試験例1
被検菌株として黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NB
RC12732)を用いて、以下の方法で除菌効力試験を行った。
【0048】
前培養した被検菌株をSCD培地(Soybean-Casein Digest Broth "DAIGO"、日本製薬株式会社製)に1.0×108~5.0×108cfu/mlとなるように懸濁し、菌液を調製した。50ml容の滅菌遠沈管(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製)に、表1~4に示す組成の各除菌成分希釈液を10ml分注した。その後、各遠沈管に菌液0.1mlをそれぞれ接種し、25℃で5時間静置培養した。培養後に0.1ml採取し、適宜リン酸緩衝生理食塩水(和光純薬工業株式会社)を用いて希釈系列を調製した後、原液及び各希釈液0.1mlをそれぞれSCDLP寒天培地(Soybean-Casein Digest Agar with Lecithin&Polysorbate 80、日本製薬株式会社)に塗抹し、35℃で18~24時
間培養して生菌数をそれぞれ測定した。また、ブランクとして、除菌成分希釈液の代わりに滅菌生理食塩水(大塚製薬株式会社)を使用して、前記と同条件で試験を行った。以下の算出式に従って、抗菌活性値を算出した。
【数1】
【0049】
結果を表1~4に示す。炭素数8~14の長鎖アルキル鎖が混在している塩化ベンザルコニウム、及び長鎖アルキル鎖の炭素数が8~12であるベンジルアルキルジメチルアンモニウムクロリドでは、精製水又は水道水のいずれで希釈した場合でも、1ppmの濃度では除菌効果は殆ど認められなかった(比較例1~8及び11~18)。また、長鎖アルキル鎖の炭素数が14であるベンジルアルキルジメチルアンモニウムクロリド(ベンジルテトラデシルジメチルアンモニウムクロリド)では、精製水で1ppmに希釈すると、除菌効果が認められたものの、水道水で1ppmに希釈すると、除菌効果が著しく減弱していた(比較例9及び10)。
【0050】
これに対して、長鎖アルキル鎖の炭素数が16及び18であるベンジルアルキルジメチルアンモニウムクロリド(ベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリド及びベンジルステアリルジメチルアンモニウムクロリド)では、精製水又は水道水のいずれで希釈した場合でも、1ppmの濃度で優れたな除菌効果を有していた。特に、ベンジルステアリルジメチルアンモニウムクロリドは、水道水で0.25ppmにまで希釈した状態であっても、十分な除菌効果を有していた。
【0051】
以上の結果から、ベンジルアルキル(炭素数16~18)ジメチルアンモニウム塩を有効成分として使用する除菌剤は、例えば、トイレのフラッシュ水で希釈して低濃度で便器に流水させても、十分な除菌効果を奏し得ることが明らかとなった。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】