(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160046
(43)【公開日】2024-11-11
(54)【発明の名称】ワーク検査方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20241101BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241101BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20241101BHJP
【FI】
G01N21/956 A
H01L21/78 B
B23K26/00 P
B23K26/00 Q
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024113254
(22)【出願日】2024-07-16
(62)【分割の表示】P 2020116450の分割
【原出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】對馬 健夫
(57)【要約】
【課題】 レーザー光の散乱等により発生する欠陥を精度よくかつ低コストで検出することが可能なワーク検査方法及び装置を提供する。
【解決手段】 ワーク検査方法は、ワーク(CW)に対するレーザー加工の後のワークの検査範囲の画像を、ワークに対して斜照明を行いながら撮像装置(306)を用いて撮像する撮像工程と、レーザー加工の後のワークの検査範囲の画像に高速フーリエ変換を掛けて高周波成分を抽出し、2値化処理を行う画像処理工程と、画像処理工程において画像処理されたレーザー加工の後のワークの検査範囲の画像からレーザー加工において生じた散乱光又は漏れ光により形成された加工時欠陥を検出する検出工程とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対するレーザー加工の後の前記ワークの検査範囲の画像を、前記ワークに対して斜照明を行いながら撮像装置を用いて撮像する撮像工程と、
前記レーザー加工の後の前記ワークの検査範囲の画像に高速フーリエ変換を掛けて高周波成分を抽出し、2値化処理を行う画像処理工程と、
前記画像処理工程において画像処理された前記レーザー加工の後の前記ワークの検査範囲の画像から前記レーザー加工において生じた散乱光又は漏れ光により形成された加工時欠陥を検出する検出工程と、
を備えるワーク検査方法。
【請求項2】
前記ワークは、ワーク層のみからなる、請求項1記載のワーク検査方法。
【請求項3】
前記レーザー加工の前の前記ワークの検査範囲の画像を、前記ワークに対して斜照明を行いながら前記撮像装置を用いて撮像する工程と、
前記レーザー加工の前の前記ワークの検査範囲の画像に高速フーリエ変換を掛けて高周波成分を抽出し、2値化処理を行う工程とを備え、
前記検出工程は、
前記レーザー加工の前の前記ワークの検査範囲の画像から前記ワークの検査範囲の欠損部を検出する工程と、
前記レーザー加工の後の前記ワークの検査範囲の画像から検出した欠陥から欠陥候補を検出する工程と、
前記欠陥候補から、前記欠損部と、前記レーザー加工により前記ワーク内に形成されたレーザー加工領域及び該レーザー加工領域の影を除外して、前記加工時欠陥を特定する工程と、
を備える請求項1又は2に記載のワーク検査方法。
【請求項4】
ワークに対するレーザー加工の後の前記ワークの検査範囲の画像を、前記ワークに対して斜照明を行いながら撮像する撮像装置と、
前記レーザー加工の後の前記ワークの検査範囲の画像に高速フーリエ変換を掛けて高周波成分を抽出し、2値化処理を行う画像処理部と、
前記画像処理部によって画像処理された前記レーザー加工の後の前記ワークの検査範囲の画像から前記レーザー加工において生じた散乱光又は漏れ光により形成された加工時欠陥を検出する検出部と、
を備えるワーク検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワーク検査方法及び装置並びにワーク加工方法に係り、特にワークの内部にレーザー加工領域を有するワークを割断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウェハ等のワークの内部に集光点を合わせてレーザー光を加工ラインに沿って照射し、加工ラインに沿ってワーク内部に切断の起点となるレーザー加工領域を形成するレーザーダイシング装置が知られている。レーザー加工領域が形成されたワークは、その後、エキスパンドやブレーキングといった割断プロセスによって切断予定ラインで割断されて個々のチップに分断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワークの内部にレーザー加工領域を形成する場合、ワークの内部の構造物(例えば、欠陥(例えば、傷、空隙等)、不純物等のパーティクル、加工痕、レーザー加工に起因して生じるワーク内部の亀裂等)によりレーザー光の一部がスパッタ状に散乱されたり、レーザー光の入射面とは反対の面側に漏れ出したりすることがある。このような散乱光は、ワークの内部に欠陥(例えば、点状の欠陥。以下、スプラッシュダメージという。)を発生させる要因となる(例えば、特許文献1参照)。スプラッシュダメージは、ワーク及びワークの表面に形成されたデバイスを破損させる場合があり、デバイスの品質を低下させる要因となるため、その発生を抑制することが求められている。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、レーザー光の散乱等により発生する欠陥を精度よく検出することが可能なワーク検査方法及び装置並びにワーク加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るワーク検査方法は、ワークに対するレーザー加工の後のワークの検査範囲の画像を、ワークに対して斜照明を行いながら撮像装置を用いて撮像する撮像工程と、レーザー加工の後のワークの検査範囲の画像に高速フーリエ変換を掛け、2値化処理を行う画像処理工程と、画像処理工程において画像処理されたレーザー加工の後のワークの検査範囲の画像からレーザー加工において生じた散乱光又は漏れ光により形成された加工時欠陥を検出する検出工程と、加工時欠陥の検出結果に応じて加工条件を設定する設定工程とを備える。
【0007】
本発明の第2の態様にかかるワーク検査方法は、第1の態様において、ワーク層のみからなるワークを用いる。
【0008】
本発明の第3の態様に係るワーク検査方法は、第1又は第2の態様において、レーザー加工の前のワークの検査範囲の画像を、ワークに対して斜照明を行いながら撮像装置を用いて撮像する工程と、レーザー加工の前のワークの検査範囲の画像に高速フーリエ変換を掛け、2値化処理を行う工程とを備え、検出工程は、レーザー加工の前のワークの検査範囲の画像からワークの検査範囲の欠損部を検出する工程と、レーザー加工の後のワークの検査範囲の画像から検出した欠陥から欠陥候補を検出する工程と、欠陥候補から、欠損部と、レーザー加工によりワーク内に形成されたレーザー加工領域及びレーザー加工領域の影を除外して、加工時欠陥を特定する工程とを備える。
【0009】
本発明の第4の態様に係るワーク加工方法は、第1から第3の態様のいずれかに係るワーク検査方法により設定された加工条件に基づいて、加工対象のワークのレーザー加工を行う。
【0010】
本発明の第5の態様に係るワーク検査装置は、ワークに対するレーザー加工の後のワークの検査範囲の画像を、ワークに対して斜照明を行いながら撮像する撮像装置と、レーザー加工の後のワークの検査範囲の画像に高速フーリエ変換を掛け、2値化処理を行う画像処理部と、画像処理部によって画像処理されたレーザー加工の後のワークの検査範囲の画像からレーザー加工において生じた散乱光又は漏れ光により形成された加工時欠陥を検出する検出部と、加工時欠陥の検出結果に応じて加工条件を設定する設定部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レーザー加工の前後のワークの検査範囲の画像に高速フーリエ変換を掛け、2値化処理を行うことにより、レーザー光の散乱等により発生する微細な欠陥を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、レーザーダイシング装置の概観構成を示す図である。
【
図2】
図2は、斜照明(暗視野照明系)を用いた場合の検査用ワークの平面図及び断面図である。
【
図3】
図3は、同軸落射照明(明視野照明系)を用いた場合の検査用ワークの平面図及び断面図である。
【
図4】
図4は、斜照明(暗視野照明系)で検査用ワークを撮像した画像である。
【
図5】
図5は、同軸落射照明(明視野照明系)で検査用ワークを撮像した画像である。
【
図6】
図6は、検査用ワークCWを撮像して得られる画像である。
【
図7】
図7は、
図6の原画像に対して2値化処理を行った結果を示す画像である。
【
図8】
図8は、
図6の原画像に対して動的閾値処理を行った結果を示す画像である。
【
図9】
図9は、
図6の原画像に対して動的閾値処理を行った結果を示す画像である。
【
図10】
図10は、FFT処理後の検査用ワークの撮像画像である。
【
図11】
図11は、スプラッシュダメージの抽出結果を示す画像である。
【
図12】
図12は、レーザーダイシングの加工条件の設定方法を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、加工時欠陥の検出工程を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、加工時欠陥の評価工程を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、加工条件の設定工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に従って本発明に係るワーク検査方法及び装置並びにワーク加工方法の実施の形態について説明する。
【0014】
本実施形態では、レーザーダイシング装置10を用いて検査用ワークCWのレーザー加工を行う。そして、加工前後の検査用ワークCWの検査範囲(例えば、検査用ワークCWの内部、表面(上面及び下面)等)の画像を用いて、レーザー加工の前から存在する欠損部と、レーザー加工によって発生したスプラッシュダメージを含む加工時欠陥とを区別して検出する。
【0015】
次に、加工時欠陥の検出結果に基づいて加工条件を評価して、加工条件の変更が必要か否かを判定する。そして、加工条件の変更が必要と判定された場合に、加工条件の再設定を行う。これにより、生産対象のワークWの加工条件を適切に設定することが可能になる。
【0016】
(レーザーダイシング装置)
まず、レーザーダイシング装置10について、
図1を参照して説明する。
図1は、レーザーダイシング装置10の概観構成を示す図である。
【0017】
同図に示すように、本実施の形態のレーザーダイシング装置10は、ワーク移動部100、光学系ユニット(レーザーエンジン)400、制御部12等を含んでいる。光学系ユニット400は、レーザー光学部200及び観察光学部300を含んでいる。
【0018】
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、入出力回路部等を含んでおり、レーザーダイシング装置10の各部の動作を制御する。
【0019】
ワーク移動部100は、検査用ワークCW及び生産対象のワークW(以下、ワークWと総称する場合がある。)を吸着保持する吸着ステージ102と、レーザーダイシング装置10の本体ベース106に設けられ、吸着ステージ102をXYZθ方向に精密に移動させるXYZθテーブル104とを含んでいる。このワーク移動部100によって、ワークWが図のXYZθ方向に精密に移動される。
【0020】
ワークWは、表面の一方の面に粘着材を有するバックグラインド(BG)テープBが貼付され、裏面が上向きとなるように吸着ステージ102に載置される。
【0021】
なお、ワークWは、一方の面に粘着材を有するダイシングシートが貼付され、このダイシングシートを介してフレームと一体化された状態で吸着ステージ102に載置されるようにしてもよい。この場合には、表面が上向きとなるように吸着ステージ102に載置される。以下の説明では、ワークWの光学系ユニット400側に露呈する面を上面、BGテープBが貼付される面を下面とする。なお、ワークWは、吸着ステージ102に直接吸着されるようにしてもよい。
【0022】
レーザー光学部200は、レーザー発振器202、コリメートレンズ204、ハーフミラー206、コンデンスレンズ(集光レンズ)208、レーザー光をワークWに対してZ方向に微小移動させる駆動手段210を含んでいる。レーザー発振器202の光源としては、例えば、半導体レーザー励起Nd:YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザーが用いられる。レーザー発振器202から発振されたレーザー光は、コリメートレンズ204、ハーフミラー206、コンデンスレンズ208等の光学系を経てワークWの検査範囲に集光される。集光点のZ方向位置は、コンデンスレンズ208のZ方向微動によって調整される。
【0023】
観察光学部300は、観察用光源302、コンデンスレンズ304、撮像装置(カメラ。例えば、IR(infrared)センサ、CCD(Charge Coupled Device)カメラ等)306、画像処理部308、モニタ310を含んでいる。制御部12及び観察光学部300は、ワーク検査装置の一例である。
【0024】
観察用光源302は、コンデンスレンズ208の光軸AXからずれた位置から、ワークWに対して略円環状(リング状)の斜照明光(偏射照明光)L1を照射する。観察用光源302は、コンデンスレンズ208の周囲に円環状に配置された複数の点灯部を有するリング照明部である。ここで、複数の点灯部としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)、又は指向性を有する砲弾型LED等を用いることができる。
【0025】
なお、本実施形態では、斜照明用の観察用光源302としてリング照明部を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ワークWの周囲にリング照明を配置してワークWに対して斜めに入射する照明光を照射してもよいし、又は円錐レンズ又は円環状の開口を有する遮光板を用いてリング状に変換された光を用いてワークWを斜照明してもよい。
【0026】
観察用光源302を用いてワークWを斜照明すると、ワークWによって散乱された散乱光はコンデンスレンズ208及び304を経由して観察手段としてのカメラ306に入射し、ワークWの画像が撮像される。この撮像データは画像処理部308に入力され、ワークWのアライメントに用いられる。また、この撮像データは、制御部12を経てモニタ310に写し出される。
【0027】
観察光学部300は、ワークWの検査範囲のスプラッシュダメージを含む欠陥を撮像することが可能となっている。この場合、斜照明光L1として、可視光よりも波長が長いものを用いる。ワークWがシリコンウェハの場合には、例えば、赤外光を用いる。ワークWに照射された斜照明光L1は、ワークWの検査範囲を透過し、ワークWの下面のスプラッシュダメージ(
図2参照)により散乱される。この散乱光はコンデンスレンズ208及び304を経由してカメラ306に入射し、ワークWの検査範囲の欠陥を含む画像が撮像される。この撮像画像では、スプラッシュダメージを含む欠陥が形成された領域以外の領域(以下、背景領域という。)が暗く、スプラッシュダメージを含む欠陥が白い領域となる(暗視野照明系)。暗視野照明系については、
図2から
図5を参照して後述する。
【0028】
この撮像データは画像処理部308に入力され、ワークWの検査範囲の欠陥の検出に用いられる。また、ワークWの検査範囲の画像は、欠陥の検出結果とともに、モニタ310に写し出される。これにより、オペレータは、モニタ310を見ながら、欠陥の検出結果の確認及び修正等を行うことが可能となっている。
【0029】
本実施形態では、レーザー光を用いてレーザー加工領域を形成する加工前と加工後にワークWの検査範囲の欠陥を含む画像を撮像する。これにより、レーザー加工の前から存在する欠損部と、レーザー加工によって発生したスプラッシュダメージを含む加工時欠陥とを区別して検出することが可能になる。
【0030】
なお、本実施形態では、レーザー光学部200及び観察光学部300を用いてワークWの画像を撮像するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ワークWのアライメント用に設置された顕微鏡の光学系及びカメラを用いて、ワークWの検査範囲の画像を撮像するようにしてもよい。
【0031】
ワークWにレーザー加工領域を形成する場合、レーザー発振器202からレーザー光Lが出射され、レーザー光Lはコリメートレンズ204、ハーフミラー206、コンデンスレンズ208等の光学系を経由してワークWの検査範囲に照射される。照射されるレーザー光Lの集光点のZ方向位置は、XYZθテーブル104によるワークWのZ方向位置調整、及びコンデンスレンズ208の位置制御によって、ワークWの検査範囲の所定位置に正確に設定される。
【0032】
この状態でXYZθテーブル104がダイシング方向であるX方向に加工送りされる。これにより、ワークWの加工ラインCL1に沿って、ワークWの検査範囲にレーザー加工領域R1が1ライン形成される(
図2参照)。そして、加工ラインCL1に沿ってレーザー加工領域R1が1ライン形成されると、XYZθテーブル104がY方向に1ピッチ割り出し送りされ、次の加工ラインにもレーザー加工領域R1が形成される。次に、すべてのX方向の加工ラインCL1に沿ってレーザー加工領域R1が形成されると、XYZθテーブル104がZ軸回りに90°回転され、回転後のX方向の加工ラインCL1にも同様にしてレーザー加工領域R1が形成される。
【0033】
ここで、レーザー加工領域R1とは、レーザー光の照射によってワークWの内部の密度、屈折率、機械的強度等の物理的特性が周囲と異なる状態となり、周囲よりも強度が低下する領域のことをいう。レーザー加工領域R1は、例えば、クラック領域を含む。レーザー加工領域が形成されたワークWは、不図示の研削装置に搬送され、ワークWの裏面が研削されてレーザー加工領域R1が除去される。そして、ワークWの裏面側にエキスパンドテープが貼付されて伸展されると、レーザー加工領域R1からワークWの表面側に伸展したクラックによりワークWが割断される。これにより、ワークWが個別のチップに離間する。
【0034】
(斜照明(暗視野照明系))
次に、検査用ワークCWについて、
図2を参照して説明する。
図2は、斜照明(暗視野照明系)を用いた場合の検査用ワークの平面図及び断面図である。
図2(A)は検査用ワークの平面図(上面図)であり、
図2(B)は
図2(A)のB-B断面図である。
【0035】
図2(B)に示すように、本実施形態に係る検査用ワークCWは、生産対象のワークWと同じ素材(例えば、シリコン等)からなるワーク層WLを含んでいる。
【0036】
検査用ワークCWは、レーザーダイシング装置10において、表面を下面にして吸着保持される。
図2に示す検査用ワークCWには、不純物(パーティクル)を含む欠損部P1が含まれている。なお、
図2では、図面の簡略化のため、欠損部P1は1つのみ示されている。本実施形態では、観察用光源302を用いて、検査用ワークCWを透過する斜照明光L1により斜照明しながらカメラ306を用いて加工前の検査用ワークCWを撮像する。そして、制御部12は、この画像から欠損部P1を検出する。
【0037】
検査用ワークCWに対してレーザー加工が行われると、ワーク層WLの検査範囲に、加工ラインCL1(
図2(A)参照)に沿って、レーザー加工領域R1(
図2(B)参照)が形成される。
【0038】
レーザー加工時には、ワーク層WLの検査範囲でレーザー光の一部が散乱されたり、ワーク層WLの下面側に漏れだす。この散乱光及び漏れ光がワーク層WLの下面に到達すると、検出層DLが一部溶融される。これにより、検査用ワークCWに照明光(斜照明光(偏射照明光)。例えば、赤外光)を照射したときのワーク層WLと検出層DLとの間の界面の反射率が変化する。この反射率の変化に基づいて、加工後の検査用ワークCWの画像から欠陥を検出することができる。
【0039】
図2に示す例では、散乱光により形成されたスプラッシュダメージSD1からSD3と、レーザー加工領域R1の下面側に漏れ出た漏れ光により形成されたダメージBD(以下、直下ダメージという。)が示されている。スプラッシュダメージSD1からSD3は、ワーク層WLの検査範囲の構造物によりレーザー光の一部がスパッタ状に散乱されることにより形成された点状の欠陥である。直下ダメージBDは、レーザー光の一部がレーザー加工領域R1の下面側に漏れることにより形成された欠陥であり、加工ラインCL1に沿って形成される。
【0040】
本実施形態では、検査用ワークCWを斜照明光L1により斜照明しながら、カメラ306を用いてワーク層WLと検出層DLとの間の界面をフォーカス面FP(合焦面)として、加工後の検査用ワークCWを撮像する。
図2に示すように、加工後の検査用ワークCWの画像には、スプラッシュダメージSD1からSD3以外に、欠損部P1及び直下ダメージBDが含まれている。
【0041】
これらの撮像画像では、背景領域を透過した照明光L1の大部分はカメラ306に戻らず、スプラッシュダメージを含む欠陥に照射された照明光L1は散乱され、散乱光L2の一部がカメラ306に到達する。このため、背景領域がスプラッシュダメージを含む欠陥と比較して暗く、スプラッシュダメージを含む欠陥が白い領域となる。
【0042】
後述するように、斜照明を行った場合、検査用ワークCWの下面側を透過した照明光L1の一部は、吸着ステージ(チャック)102のポーラス(例えば、粒子状のセラミック緻密体)の表面で反射され、カメラ306側に戻ってしまう。このため、撮像画像の背景領域に輝度のむらが生じる(
図6等参照)。本実施形態では、吸着ステージ102のポーラスの表面からの反射光がボケているのに対して、スプラッシュダメージSD1からSD3、欠損部P1及び直下ダメージBD等の微細な欠陥が高周波数成分の特徴を持っていることを利用して、欠陥の抽出を行う。具体的には、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier transform)を利用して、検査用ワークCWの撮像画像から高周波成分のみ抽出することで欠陥の抽出を行う。
【0043】
すなわち、制御部12は、画像処理部308を用いて、加工前の検査用ワークCWの画像に対してFFTを掛けて欠損部P1を検出し、その位置及び形状に関する情報(例えば、座標等)を保存する。次に、制御部12は、画像処理部308を用いて、加工後の検査用ワークCWの画像に対してFFTを掛けてスプラッシュダメージSD1からSD3を含む加工時欠陥の候補(以下、欠陥候補という。)としてすべての欠陥を検出する。この欠陥候補には、スプラッシュダメージSD1からSD3以外に、欠損部P1及び直下ダメージBDが含まれ得る。そして、制御部12は、あらかじめ検出した欠損部P1を欠陥候補から除外する。さらに、制御部12は、加工後の検査用ワークCWの画像から加工ラインCL1に沿う直下ダメージBDを抽出して、欠陥候補から除外する。これにより、スプラッシュダメージSD1からSD3が加工時欠陥として抽出される。
【0044】
本実施形態によれば、レーザー加工の前後のワークの検査範囲の画像にFFTを掛けることにより、レーザー光の散乱等により発生する微細な欠陥を精度よく検出することができる。
【0045】
なお、欠損部P1については、あらかじめ検出した欠損部P1を含む領域をマスクして、欠陥候補の検出対象から除外するようにしてもよい。ここで、マスク領域は、欠損部P1の輪郭により画定される領域に、検査用ワークCWの搬送誤差等の繰り返し精度をマージンとして付加した領域である。このようにマスク領域を定めることにより、マスク領域を最小にすることができるので、加工時欠陥の検出対象となる領域を最大化することができ、加工時欠陥の検出漏れを防止することができる。
【0046】
さらに、検査用ワークCWの検出層DLにパターンを生成し、アライメント用のカメラ等を用いてこのパターンを検出することにより、検査用ワークCWのアライメントを行うことで搬送誤差を補正することも可能である。この場合、検査用ワークCWの搬送誤差をより小さくすることが可能であるため、マスク領域をさらに小さくすることができる。これにより、加工時欠陥の検出対象となる領域をより大きくすることができ、加工時欠陥の検出漏れをより確実に防止することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、ワーク層WLからなる検査用ワークCWを用いたが、本発明はこれに限定されない。
図3に示す検出層DLが形成された検査用ワークCW1を用いることも可能である。
【0048】
(同軸落射照明(明視野照明系))
本実施形態では、斜照明(暗視野照明系)を用いたが、同軸落射照明(明視野照明系)を用いた場合でも、本発明を適用することが可能である。同軸落射照明を用いる場合には、
図3に示す検出層DLを有する検査用ワークCW1を用いる。
【0049】
図3は、同軸落射照明(明視野照明系)を用いた場合の検査用ワークの平面図及び断面図である。
【0050】
図3に示すように、検査用ワークCW1は、ワーク層WLと、ワーク層WLの図中下面(検査対象面(表面)側)に形成された検出層DLとを含んでいる。ワーク層WLは、例えば、シリコン等により形成される。検出層DLは、低融点金属(例えば、錫等)、低融点合金等をワーク層WLに蒸着することにより形成される。なお、検出層DLは、樹脂等の被膜により形成されていてもよい。また、検査用ワークCW1は、検出層DLが形成されたものに限定されるものではなく、例えば、ワーク層WLの下面を鏡面加工等して反射率を高めたもの(例えば、ミラーワーク)を用いてもよい。
【0051】
検査用ワークCW1は、レーザーダイシング装置(不図示)において、検出層DLを下側にして吸着保持される。そして、検査用ワークCW1に対してレーザー加工が行われ、ワーク層WLの内部にレーザー加工領域R1が形成される。なお、
図3の符号R2は、レーザー加工領域R1により照明光L10の一部が遮光されて生じる影である。この影R2は、加工ラインCL1に沿って撮像される。
【0052】
スプラッシュダメージSD1からSD3が形成された領域では、検査用ワークCW1に対して透過率の高い照明光L1(検査用ワークCW1がシリコンウェハの場合には赤外光)を照射したときのワーク層WLと検出層DLとの間の界面FPの反射率が変化する。したがって、照明光L10を用いて同軸落射照明を行い、界面FPからの反射光L12をカメラ306を用いて撮像することにより、スプラッシュダメージSD1からSD3を検出することができる。
【0053】
図3に示す例では、低融点の金属蒸着膜を形成する工程が必要になるが、レーザー加工時における散乱光及び漏れ光に対する感応度を上げることができ、スプラッシュダメージSD1からSD3を容易に検出することができる。そして、検査用ワークCW1におけるスプラッシュダメージの検出結果に基づいて、スプラッシュダメージの発生を抑制可能なレーザー加工の加工条件を得ることができる。これにより、生産対象のワークに対してレーザー加工を行う際に、ワークの表面に形成されたデバイスがスプラッシュダメージの影響を受けないように加工条件を設定することができる。
【0054】
(暗視野照明系及び明視野照明系の場合の撮像画像)
次に、暗視野照明系及び明視野照明系で撮像した検査用ワークの撮像画像について説明する。
図4は、斜照明(暗視野照明系)で検査用ワークを撮像した画像であり、
図5は、同軸落射照明(明視野照明系)で検査用ワークを撮像した画像である。
【0055】
図5に示す例は、検出層DLを有する検査用ワークCW1(
図3参照)に対して同軸落射照明を行って得られた画像である。この場合、スプラッシュダメージを含む欠陥(丸で囲んだ領域)が形成された領域を以外の背景領域では、照明光L1は金属蒸着膜からなる検出層DLによって反射される。一方、スプラッシュダメージを含む欠陥(丸で囲んだ領域)が形成された領域では、照明光L10はスプラッシュダメージSD1からSD3によって拡散されるため、反射光L12が照明光L10の入射側に戻ることはない。このため、
図5では、背景領域が白く発光し、スプラッシュダメージを含む欠陥(丸で囲んだ領域)が暗い領域となっている(明視野照明系)。スプラッシュダメージは微細な欠陥であるため、欠陥の周囲の反射光量が強いと、センサ上において欠陥に対応する画素の周囲の画素からの電荷の漏れ、あるいはレンズ収差等により、背景領域と欠陥との間のコントラストが低下する。このため、明視野照明系の場合、スプラッシュダメージの検出漏れが生じやすい。
【0056】
一方、
図4に示す例では、背景領域が暗く、スプラッシュダメージを含む欠陥(丸で囲んだ領域)が白い領域となっている。欠陥が白く発光していることから、欠陥が形成された箇所は、検査用ワークCWの下面側において局所的に凹凸形状となっているということがわかる。暗視野照明を利用すると、凹凸形状により反射光が生じ、欠陥が形成された箇所がアクティブに光る。その結果、漏れ電荷又はレンズ収差の影響を受けず、欠陥が形成された箇所が大きく写ることになる。したがって、暗視野照明系を用いる場合、欠陥を強調する効果が得られ、ロバスト性の改善効果を得ることができる。
【0057】
(スプラッシュダメージの抽出)
次に、検査用ワークCWを撮像して得られる撮像画像からスプラッシュダメージを抽出する手順について具体的に説明する。
【0058】
図6は、検査用ワークCWを撮像して得られる画像(以下、原画像ともいう。)であり、
図7は、
図6の原画像に対して2値化処理を行った結果を示す画像である。
図6の原画像には、スプラッシュダメージSD1からSD4が含まれている。
【0059】
斜照明を行った場合、検査用ワークCWの下面側を透過した照明光L1の一部は、吸着ステージ(チャック)102のポーラスの表面で反射され、カメラ306側に戻ってしまう。このため、
図6に示すように、撮像画像の背景領域に輝度のむらが生じる。
【0060】
図6の原画像に対して、閾値を一定にして2値化処理を行うと、
図7に示す画像が得られる。
図7に示すように、スプラッシュダメージSD2及びSD3は、背景領域のうち輝度が高い高輝度領域N1に含まれるため、抽出することができない。
【0061】
さらに、高輝度領域N1の周辺部N2では、画素のグレーレベルのバラツキに起因するノイズが発生する。高輝度領域N1の周辺部N2にあるスプラッシュダメージSD4については、このノイズの影響により背景領域から分離することが困難となる。
【0062】
そこで、撮像画像の局所領域ごとに動的閾値処理を行って、欠陥の抽出を行うことが考えられる。動的閾値処理では、例えば、まず、局所平均化フィルタあるいは局所メディアンフィルタ等を利用して平均値画像(=閾値画像)を生成する。次に、この平均値画像を閾値として利用することで輝度ムラを考慮した2値化処理(動的閾値処理)を行う。これにより、画素の微小な輝度変動に起因するノイズに対して閾値を調整する。
【0063】
図8及び
図9は、
図6の原画像に対して動的閾値処理を行った結果を示す画像である。
図8は動的閾値処理により適切な閾値が設定できた例(比較例1)を示しており、
図9は動的閾値処理により適切な閾値が設定できなかった例(比較例2)を示している。
図8に示すように、適切な閾値が設定できた場合には、スプラッシュダメージSD1からSD4を背景から抽出することが可能となる。一方、
図9に示すように、適切な閾値が設定できなかった場合には、輝度のむらに起因するノイズが欠陥候補として多数抽出されてしまう。これらのノイズは、形状及び大きさ等の特徴の点で、スプラッシュダメージSD1からSD4と差が小さく、ノイズとスプラッシュダメージSD1からSD4とを分離することは困難である。
【0064】
図8及び
図9に示すように、動的閾値処理は、視認性の変化に対するロバスト性がなく、生産設備における処理結果の安定性が低い。このため、動的閾値処理の結果に応じて、エラーが頻繁に発生し、生産工程が一時的な停止を繰り返す場合がある(いわゆるチョコ停)。また、一般的な空間フィルタを適用しノイズ除去を行った場合、スプラッシュダメージSD1からSD4も同時に除去される場合がある。
【0065】
そこで、本実施形態では、視認性の変化に対するロバスト性の向上のために下記の手法を用いる。すなわち、ノイズの原因となる吸着ステージ102のポーラスの表面からの反射光がボケているのに対して、抽出対象の欠陥(欠損部P1及びスプラッシュダメージSD1からSD4を含む。)は高周波数成分の特徴を持っていることを利用して、欠陥の抽出を行う。具体的には、FFTを利用して、検査用ワークCWの撮像画像から高周波成分のみ抽出することで欠陥の抽出を行う。
【0066】
図10は、FFT処理後の検査用ワークの撮像画像であり、
図11は、スプラッシュダメージの抽出結果を示す画像である。
【0067】
図6の原画像にFFTを適用すると、原画像の2次元の空間周波数特性マップが得られる。ここで、空間周波数とは、単位長さあたりの明暗の変化の程度を周波数として表したものである。抽出対象の微細な欠陥は単位長さ当たりの明暗の変化の周期が短く、空間周波数が高くなる。これにより、
図10に示すように、抽出対象の欠陥を含む高周波領域のみが抽出され、輝度のむらに起因する背景領域のノイズが除去される。そして、原画像において抽出対象の欠陥のみを強調する効果が得られる。
【0068】
次に、
図10のFFT処理後の画像に対して2値化処理を行うことにより、抽出対象の欠陥の位置、形状及び大きさが特定される。この欠陥の位置、形状及び大きさを原画像に重ね合わせることにより
図11に示す画像が得られる。これにより、スプラッシュダメージSD1からSD4のみを抽出することが可能になる。
【0069】
(加工条件の設定方法)
次に、本実施形態に係る加工条件の設定方法について、
図12から
図15を参照して説明する。
図12は、レーザーダイシングの加工条件の設定方法を示すフローチャートである。
【0070】
まず、検査用ワークCWがレーザーダイシング装置10(加工部)に搬入され、吸着ステージ102に吸着保持される(ステップS10)。そして、観察光学部300により検査用ワークCWに斜照明光L1が照射され、カメラ306により加工前の検査用ワークCWが撮像される(ステップS12:撮像工程)。なお、検査用ワークCWは、BGテープBを介して吸着ステージ102に吸着保持されるようにしてもよいし、吸着ステージ102に直接吸着されるようにしてもよい。
【0071】
次に、レーザーダイシング装置10により検査用ワークCWが加工されて、検査用ワークCWの検査範囲にレーザー加工領域R1が形成される(ステップS14)。そして、観察光学部300により検査用ワークCWに斜照明光L1が照射され、カメラ306により加工後の検査用ワークCWが撮像される(ステップS16:撮像工程)。
【0072】
次に、制御部12は、加工前後の検査用ワークCWの画像を比較して、レーザー加工により形成されたスプラッシュダメージを含む加工時欠陥を検出する(ステップS18)。ここで、制御部12及び画像処理部308は、本発明の検出部として機能する。そして、制御部12は、加工時欠陥の検出結果に応じて検出した加工時欠陥の評価を行う(ステップS20)。制御部12は、加工時欠陥の評価結果に基づいて、加工条件を変更するか否かを判定する。
【0073】
加工条件の再設定を行う場合には(ステップS22のYes)、制御部12は、加工条件の再設定を行う(ステップS24)。一方、加工条件の再設定を行わない場合には(ステップS22のNo)、制御部12は、加工時欠陥の評価結果、及び加工前後の検査用ワークCWの画像を含む加工時欠陥情報を保存する(ステップS26)。ここで、制御部12は、本発明の設定部として機能する。ステップS26において保存した加工時欠陥情報は、品質記録として、オペレータが閲覧可能となる。
【0074】
次に、加工時欠陥の検出工程について説明する。
図13は、加工時欠陥の検出工程を示すフローチャートである。
【0075】
まず、制御部12は、ステップS12及びS16においてそれぞれ撮像した加工前後の検査用ワークCWの画像にFFTを掛けて高周波成分を抽出し、さらに2値化処理を行う(ステップS180:画像処理工程)。そして、制御部12は、ステップS180において画像処理された加工前の検査用ワークCWの画像から欠損部(P1)を検出する(ステップS182)。次に、制御部12は、ステップS180において画像処理された加工後の検査用ワークCWの画像から欠陥候補(BD、R2及びP1並びにSD1からSD3)及び加工ラインCL1を検出する(ステップS184)。そして、制御部12は、加工後の検査用ワークCWの画像から欠陥候補から、欠損部(P1)と、加工ラインCL1に沿う直下ダメージBD及びレーザー加工領域R1の影R2とを除外し、加工時欠陥SD1からSD3を特定する(ステップS186)。
【0076】
なお、本実施形態では、レーザー加工の前後の検査用ワークCWの検査範囲の画像を比較して加工時欠陥を特定するようにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、検査用ワークCWにおける欠損部の位置及びサイズの情報を含むマップデータを事前に取得して制御部12(マップデータ取得部)に記憶しておくようにしてもよい。そして、加工後の検査用ワークCWの画像からマップデータの欠損部を除外することにより、加工時欠陥を特定するようにしてもよい。この場合、レーザー加工前の検査用ワークCWの撮像(ステップS12)及び欠損部の検出(ステップS182)は省略される。
【0077】
ここで、マップデータは、1枚の検査用ワークCW(例えば、シリコンウェハ)を上記と同様の方法で撮像して欠損部を検出することにより作成してもよい。そして、このマップデータは、例えば、マップデータの作成に用いた検査用ワークCWと同じシリコンインゴットから切り出されたシリコンウェハの検査に共通に使用するようにしてもよい。
【0078】
また、上記の実施形態では、レーザー加工の前後の画像又はマップデータを用いて、欠損部と加工時欠陥とを区別するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、レーザー加工の後の画像から検出した欠陥候補の形状、サイズ又は位置等の特徴から、欠損部と加工時欠陥とを区別してもよい。すなわち、少なくともレーザー加工の後の画像だけから加工時欠陥を検出してもよい。
【0079】
次に、加工時欠陥の評価工程について説明する。
図14は、加工時欠陥の評価工程を示すフローチャートである。
【0080】
まず、制御部12は、加工時欠陥の評価値を算出する(ステップS200)。加工時欠陥の評価値は、加工時欠陥の個数、サイズ及び加工ラインCL1からの距離である。加工時欠陥の個数は、例えば、加工ラインCL1によって囲まれた領域(チップ1つ分の領域)における単位面積当たりの加工時欠陥の個数を求めてもよい。また、加工時欠陥の評価値は、例えば、検査用ワークCWにおける平均値で規格化した数値として算出してもよい。
【0081】
次に、制御部12は、加工時欠陥の評価値をエラーリミット値と比較する(ステップS202)。ステップS202からS204では、各種の加工時欠陥の評価値の代表値(例えば、最大値、平均値、中央値等)と、エラーリミット値とを比較して、加工条件の再設定を行うか否かを判定する。
【0082】
そして、加工時欠陥の評価値のいずれかがエラーリミット値以上の場合には(ステップS204のYes)、制御部12は、加工条件の再設定を行う旨の指示を出力する(ステップS206)。一方、加工時欠陥の評価値のいずれかがエラーリミット値未満の場合には(ステップS204のNo)、制御部12は、加工条件の再設定を行わない旨の指示を出力する(ステップS208)。
【0083】
次に、加工条件の設定工程について説明する。
図15は、加工条件の設定工程を示すフローチャートである。
【0084】
まず、制御部12は、エラーリミット値以上の加工時欠陥の評価値の種類を特定する(ステップS240)。次に、制御部12は、エラーリミット値以上の評価値の種類に応じて加工条件を変更する候補をモニタ310に表示する(ステップS242)。
【0085】
次に、制御部12は、オペレータから加工条件の候補の選択の指示入力を受け付けて(ステップS244)、加工条件の再設定を行う(ステップS246)。なお、加工条件の再設定は、オペレータが任意に設定可能としてもよい。
【0086】
ここで、加工条件は、例えば、レーザー光線の波長、スポット径、出力、繰り返し周波数、パルス幅、コンデンスレンズ208の開口数(NA)、集光点の位置、偏光特性、加工送り速度等を含んでいる。レーザー光のスポット径及び集光点の位置は、例えば、コンデンスレンズ208をZ方向に移動させることにより調整可能である。また、コンデンスレンズ208の開口数は、例えば、絞りにより調整可能である。また、偏光特性は、例えば、波長板を用いることにより調整可能である。上記に例示した加工条件を調整することにより、加工時欠陥の個数、サイズ及び加工ラインCL1からの加工時欠陥の距離等の加工時欠陥の評価値がエラーリミット値未満になるように調整される。
【0087】
そして、本実施形態に係るワーク加工方法では、上記の工程により再設定された加工条件に基づいて、加工対象のワークWに対してレーザー加工が行われ、ワークWの研削及び割断が行われる。これにより、ワークWが個別のチップに分割される。
【0088】
本実施形態によれば、暗視野照明系を用いて撮像した検査用ワークCWの画像から高周波成分を抽出することにより、レーザー光の散乱等により発生する加工時欠陥を、低コストで精度よく検出することが可能になる。さらに、本実施形態によれば、加工時欠陥の検出結果に応じて、レーザー加工がデバイスの品質に与える影響を正確に評価し、レーザー加工の加工条件を適切に設定することが可能になる。
【0089】
さらに、本実施形態では、制御部12は、加工ラインCL1(レーザー加工領域)に沿う直下ダメージBD及びレーザー加工領域R1の影R2の位置の検出結果に基づいて、レーザー加工領域が目標位置に形成されているか否かを判定するようにしてもよい。そして、制御部12は、レーザー加工領域が目標位置に形成されていないと判定した場合に、レーザー加工の位置の補正量を算出して、レーザー加工の条件を再設定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
10…レーザーダイシング装置、12…制御部、100…ワーク移動部、102…吸着ステージ、104…XYZθテーブル、106…本体ベース、200…レーザー光学部、202…レーザー発振器、204…コリメートレンズ、206…ハーフミラー、208…コンデンスレンズ(集光レンズ)、210…駆動手段、300…観察光学部、302…観察用光源、304…コンデンスレンズ、306…カメラ、308…画像処理部、310…モニタ、400…光学系ユニット(レーザーエンジン)