(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160298
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】電気メッキのための幅広リップシール
(51)【国際特許分類】
C25D 17/08 20060101AFI20241106BHJP
C25D 17/06 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C25D17/08 S
C25D17/06 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024130518
(22)【出願日】2024-08-07
(62)【分割の表示】P 2018034439の分割
【原出願日】2018-02-28
(31)【優先権主張番号】15/446,631
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カリ・ソルケルソン
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・バーク
(72)【発明者】
【氏名】サントシュ・クマル
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ラッシュ
(72)【発明者】
【氏名】リー・ペン・チュア
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・バカレウ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電気メッキ中に半導体基板と係合して電流を半導体基板に供給する、電気メッキクラムシェルのリップシールアセンブリで用いるリップシール、およびリップシールを用いて半導体基板を電気メッキする方法を提供する。
【解決手段】リップシール212は、リップシールアセンブリのカップ201と係合するよう構成された外側部分と、半導体基板の周囲領域と係合するよう構成された内側部分とを有するエラストマ本体を備え、内側部分は、電気メッキ中に用いられる電気メッキ溶液中の酸の拡散を抑制する半導体基板との接触面積を提供するのに十分な半径方向の幅を有する突起を備え、突起は、リップシールの内周に配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気メッキ中に半導体基板と係合して電流を前記半導体基板に供給する電気メッキクラムシェルのリップシールアセンブリで用いるリップシールであって、
前記リップシールアセンブリのカップと係合するよう構成された外側部分と、前記半導体基板の周囲領域と係合するよう構成された内側部分とを有するエラストマ本体を備え、
前記内側部分は、前記電気メッキ中に用いられる電気メッキ溶液中の酸の拡散を抑制するのに十分な半径方向の幅を有する突起を備え、前記突起は、前記リップシールの内周の周りに完全に伸びる環状リムを備えるリップシール。
【請求項2】
請求項1に記載のリップシールであって、前記幅は、前記突起の内壁と外壁との間の幅であり、前記幅は、少なくとも約0.8128ミリ(0.032インチ)であるリップシール。
【請求項3】
請求項2に記載のリップシールであって、前記幅は、約0.8636ミリ(0.034インチ)であるリップシール。
【請求項4】
請求項1に記載のリップシールであって、前記外側部分は、前記カップの凹部に受け入れられるよう構成された下向きに伸びるリムを備えるリップシール。
【請求項5】
請求項1に記載のリップシールであって、前記突起の内面が、前記リップシールの内径を規定するリップシール。
【請求項6】
請求項1のリップシールを用いて半導体基板を電気メッキする方法であって、前記リップシールの前記突起が前記半導体基板の外周と接触するように、電気メッキクラムシェル内でプリウェット済みの半導体基板を支持する工程と、前記突起の内側の前記半導体基板の露出面を電気メッキ溶液と接触させる工程とを備える方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記突起は、約0.8636ミリ(0.034インチ)の幅を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路のためのダマシン相互接続の形成と、集積回路加工中に用いられる電気メッキ装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
電気メッキは、導電性金属の1または複数の層を堆積させるために集積回路(IC)加工で用いられる一般的な技術である。一部の加工処理では、様々な基板フィーチャの間に単一レベルまたは複数レベルの銅相互接続を堆積させるために用いられる。電気メッキのための装置は、通例、電解液のプール/浴を有する電気メッキセルと、電気メッキ中に半導体基板を保持するよう設計されたクラムシェルとを備える。
【0003】
電気メッキ装置の動作中、半導体基板は、基板の1表面が電解液に暴露されるように、電解液プールに浸漬される。電気メッキセルを通して電流を駆動し、電解液中で利用可能な金属イオンから基板表面上に金属を析出させるために、基板表面と確立された1または複数の電気接点が用いられる。通例、電気接点要素は、基板と、電流源として機能するバスバーとの間の電気接続を形成するために用いられる。しかしながら、一部の構成では、電気接続が接触する基板上の導電シード層が、基板の縁部に向かって薄くなり、基板との最適な電気接続を確立するのをより困難にする場合がある。
【0004】
電気メッキにおいて生じる別の問題は、電気メッキ溶液の潜在的な腐食性である。したがって、多くの電気メッキ装置において、電解液の漏れと、電気メッキセルの内部および電気メッキするように指定された基板の面以外の電気メッキ装置の要素と電解液の接触とを防ぐ目的で、リップシールが、クラムシェルおよび基板の界面で用いられる。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、電気メッキ中に半導体基板と係合して電流を半導体基板に供給する電気メッキクラムシェルのリップシールアセンブリで用いるリップシールが開示されている。リップシールは、リップシールアセンブリのカップと係合するよう構成された外側部分と、半導体基板の周囲領域と係合するよう構成された内側部分とを有するエラストマ本体を備える。内側部分は、電気メッキ中に用いられる電気メッキ溶液中の酸の拡散を抑制するのに十分な半径方向の幅を有する突起を備える。突起は、リップシールの内周の周りに完全に伸びる環状リムを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】酸が接点要素に到達することを防止するために本明細書に記載のリップシールを利用できる電気メッキ装置を示す図。
【0007】
【
図2】
図1に示した装置で利用できるリップシールアセンブリの詳細を示す図。
【0008】
【
図3】
図2に示したリップシールアセンブリの詳細を示す図。
【0009】
【
図4】
図3に示したリップシールアセンブリの詳細を示す図。
【0010】
【
図5】リップシール領域での酸濃度対リップシール幅を示すグラフ。
【0011】
【
図6a】乾燥したウエハを電気メッキした後の銅シード層を示す電気メッキ後の銅シード層の写真。
【
図6b】0.028インチ(1インチ=25.4ミリ、以下同じ)幅のリップシールを用いて湿ったウエハを電気メッキした後の深刻な腐食を示す電気メッキ後の銅シード層の写真。
【
図6c】0.034インチ幅のリップシールを用いて湿ったウエハを電気メッキした後の銅シード層の軽微な腐食を示す電気メッキ後の銅シード層の写真。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明では、提示した概念の完全な理解を促すために、数多くの具体的な詳細事項が示されている。提示された概念は、これらの具体的な詳細事項の一部またはすべてがなくとも実施可能である。また、記載した概念が不必要に不明瞭となることを避けるため、周知の処理動作の詳細な説明は省略した。いくつかの概念が、具体的な実施形態との関連で説明されているが、これらの実施形態は限定を意図していないことを理解されたい。
【0013】
本明細書に開示の様々なリップシールおよび接点要素に文脈を提供するために、電気メッキ装置の一例を
図1に示す。具体的には、
図1は、半導体ウエハを電気化学的に処理するためのウエハ保持/位置決め装置100の斜視図である。装置100は、ウエハ係合構成要素を備えており、それらの構成要素は、「クラムシェル構成要素」、「クラムシェルアセンブリ」、または、単に「クラムシェル」とも呼ばれる。クラムシェルアセンブリは、カップ101およびコーン103を備える。後続の図面に示すように、カップ101はウエハを保持し、コーン103はウエハをカップ内にしっかりとクランプする。本明細書で具体的に図示したもの以外のその他のカップおよびコーンの設計が用いられてもよい。共通の特徴は、カップがウエハの収まる内部領域を有しており、コーンがウエハをカップに押しつけてウエハを所定の位置に保持することである。
【0014】
図の実施形態において、クラムシェルアセンブリ(カップ101およびコーン103を備える)は、支柱104によって支持されており、支柱104は、上部プレート105に結合されている。このアセンブリ(101、103、104、および、105)は、上部プレート105に接続されたスピンドル106を介してモータ107によって駆動される。モータ107は、取り付けブラケット(図示せず)に取り付けられる。スピンドル106は、(モータ107から)クラムシェルアセンブリにトルクを伝達して、メッキ中にそこに保持されたウエハ(この図では図示せず)を回転させる。スピンドル106内のエアシリンダ(図示せず)が、さらに、カップ101をコーン103と係合させるための垂直力を提供する。クラムシェルが係合されていない時(図示せず)、エンドエフェクタアームを備えたロボットが、カップ101とコーン103との間にウエハを挿入できる。ウエハが挿入された後、コーン103はカップ101と係合されて、装置100内でウエハを固定し、ウエハの片側の作業面を電気メッキ溶液との接触のために露出させる(しかし、他方の側は露出させない)。
【0015】
特定の実施形態において、クラムシェルアセンブリは、はねた電解液からコーン103を保護するスプレースカート109を備える。図の実施形態において、スプレースカート109は、垂直周囲スリーブおよび円形キャップ部分を備える。スペーサ部材110が、スプレースカート109とコーン103との間の分離を維持する。
【0016】
この議論のために、構成要素101~110を備えたアセンブリを、集合的に「ウエハホルダ」(または「基板ホルダ」)111と呼ぶこととする。しかしながら、「ウエハホルダ」/「基板ホルダ」の概念は、一般に、ウエハ/基板と係合してその移動および位置決めを可能にする様々な組みあわせおよび部分的な組みあわせの構成要素にまで及ぶことに注意されたい。
【0017】
傾斜アセンブリ(図示せず)が、(平坦な水平浸漬とは対照的に)ウエハに角度を付けてメッキ溶液内に浸漬することを可能にするために、ウエハホルダに接続されてもよい。プレートおよびピボットジョイントの駆動メカニズムおよび配列が、いくつかの実施形態において、弧状の経路(図示せず)に沿ってウエハホルダ111を移動させ、結果として、ウエハホルダ111の近位端(すなわち、カップおよびコーンのアセンブリ)を傾斜させるために用いられる。
【0018】
さらに、ウエハホルダ111全体が、アクチュエータ(図示せず)によって、ウエハホルダの近位端をメッキ溶液に浸漬するために、上下のいずれかへ垂直にリフトされる。したがって、2構成要素の位置決めメカニズムが、電解液面に垂直な軌道に沿った垂直移動と、水平の向き(すなわち、電解液面と平行な向き)からの逸脱を可能にする傾斜移動との両方をウエハに提供する(傾斜ウエハ浸漬機能)。
【0019】
ウエハホルダ111は、アノードチャンバ157およびメッキ溶液を収容するメッキチャンバ117を有するメッキセル115と共に用いられることに注意されたい。チャンバ157は、アノード119(例えば、銅アノード)を保持しており、アノードコンパートメントおよびカソードコンパートメント内に異なる電解液化学物質を維持するよう設計された膜またはその他のセパレータを備えてよい。図の実施形態において、拡散器153が、均一な前面で、回転するウエハに向かって上向きに電解液を方向付けるために用いられる。特定の実施形態において、フロー拡散器は、高抵抗仮想アノード(HRVA)プレートであり、これは、中実な絶縁材料(例えば、プラスチック)片で形成され、多数(例えば、4,000~15,000)の一次元の小さい孔(直径0.01~0.050インチ)を有し、プレート上方のカソードチャンバに接続される。孔の総断面積は、総投影面積の約5パーセント未満であり、したがって、メッキセル内に実質的な流れ抵抗を導入して、システムのメッキ均一性を改善するのを助ける。高抵抗仮想アノードプレートと、半導体ウエハを電気化学的に処理するための対応する装置とについてのさらなる記載が、米国特許出願公開第2010/0032310号に提供されており、この出願は、参照によって全ての目的で本明細書にその全体が組み込まれる。メッキセルは、別個の電解液の流れパターンを制御および生成するための別個の膜を備えてもよい。別の実施形態では、膜が、アノードチャンバを規定するために用いられ、そのチャンバは、抑制剤、促進剤、または、その他の有機メッキ添加剤を実質的に含まない電解液を収容する。
【0020】
メッキセル115は、メッキセルを通して、ひいては、メッキ中のワークピースに対して、電解液を循環させるための配管または配管接点も備えてよい。例えば、メッキセル115は、アノード119の中心の穴を通してアノードチャンバ157の中心へ垂直に伸びる電解液流入管131を備える。別の実施形態において、セルは、チャンバの周壁において拡散器/HRVAプレートの下方でカソードチャンバに流体を導入する電解液流入マニホルドを備える(図示せず)。一部の例において、流入管131は、膜153の両側(アノード側およびカソード側)に流出ノズルを備える。この構成は、電解液をアノードチャンバおよびカソードチャンバの両方に供給する。別の実施形態において、アノードチャンバおよびカソードチャンバは、流れ抵抗膜153によって分離されており、各チャンバは、分離された電解液の別個の流れのサイクルを有する。
図1の実施形態に示すように、流入ノズル155は、膜153のアノード側に電解液を供給する。
【0021】
さらに、メッキセル115は、リンスドレーンライン159およびメッキ溶液回収ライン161を備えており、各々がメッキチャンバ117に直接接続されている。また、リンスノズル163が、通常動作中にウエハおよび/またはカップを洗浄するために、脱イオンリンス水を供給する。メッキ溶液は、通常、チャンバ117の大部分を満たす。泡の跳ねおよび発生を緩和するために、チャンバ117は、メッキ溶液回収のための内側堰165およびリンス水回収のための外側堰167を備える。図の実施形態において、これらの堰は、メッキチャンバ117の壁にある周縁の垂直スロットである。
【0022】
上述のように、電気メッキクラムシェルは、通例、シーリング機能と電気接続機能とを提供するために、リップシールと1または複数の接点要素とを備える。リップシールは、エラストマ材料で形成されてよい。リップシールは、半導体基板の表面とシールを形成し、基板の周囲領域から電解液を排除する。この周囲領域では析出は起こらず、ICデバイス形成には用いられない、すなわち、周囲領域は、作業面の一部ではない。時に、この領域は、電解液が領域から排除されるので、縁部除外領域とも呼ばれる。周囲領域は、処理中に基板を支持およびシールするため、ならびに、接点要素と電気接続するために用いられる。一般に、作業面を広くすることが望ましいので、周囲領域は、上述の機能を維持しつつ可能な限り小さい必要がある。特定の実施形態において、周囲領域は、基板の縁部から約0.5ミリメートル~3ミリメートルの間である。
【0023】
設置の際、リップシールおよび接点要素は、クラムシェルの他の構成要素と組み立てられる。当業者であれば、特に周囲領域が小さい場合に、この動作が困難であるとわかる。このクラムシェルによって提供される開口部全体が、基板のサイズに相当する(例えば、200mmウエハ、300mmウエハ、450mmウエハなどを収容するための開口部)。さらに、基板は、独自の寸法公差を有する(例えば、SEMI仕様に従った典型的な300mmウエハについては、+/-0.2ミリメートル)。特定の困難なタスクは、両方とも比較的柔軟な材料で製造されることから、エラストマリップシールおよび接点要素のアライメントである。これら2つの構成要素は、非常に正確な相対位置を有する必要がある。リップシールのシーリング縁部と接点要素とが、互いにあまりに離れて配置されると、クラムシェルの動作中に、接点と基板との間の電気接続が不十分になるかまたは全くなくなる場合がある。同時に、シーリング縁部が、接点のあまりに近くに配置されると、接点がシールと干渉して、周囲領域への漏れを引き起こす場合がある。例えば、従来の接点リングは、しばしば、
図2のクラムシェルアセンブリ(カップ201、コーン203、および、リップシール212)に示したように電気接続を確立するために、基板上にバネ様の動作で押しつけられる複数の柔軟な「フィンガ」を備えるように形成される。これらの柔軟なフィンガ208は、リップシール212に対して整列するのが非常に困難であるだけでなく、設置中に容易に損傷し、電解液が周囲領域に入った場合に洗浄が困難である。
【0024】
上で説明したように、電気メッキセル内で、ウエハ縁部の周りでウエハへの電気的接触がなされ、ウエハの残りの部分で電気メッキが実行される。しかしながら、メッキ溶液が接点に達すると、メッキ溶液中の酸が、接点領域におけるウエハ上の金属シード層を腐食させる場合があり、その結果、ウエハ周囲に不規則に分布する抵抗が増大し、それに対応して、メッキ性能が低下し、ウエハ内不均一性が増大する。溶液中の金属イオンも、接点上に析出して、メッキ効率を低下させる可能性がある。シード腐食と、接点へのメッキとを防ぐために、接触がなされる領域は、リップシールによってメッキ溶液から分離される。以前は、リップシールに対する全体的な損傷(ひび割れ、裂け目など)がない限りは、メッキ溶液から接点を完全に分離するのに十分であると考えられていた。しかしながら、最近の研究では、(例えば、Sabre 3Dの先進的前処理プロセスのように)湿ったウエハがリップシール上に配置された時に、薄い水の層がリップシールとウエハとの間に残ることで、メッキ溶液中の酸がそれを通して拡散して、接点領域に達しうることが示された。高温および/または長いメッキ時間では、この拡散は、十分な酸が接点領域に達して、金属シード層の腐食(シード腐食)を引き起こす程度まで起こりうる。この課題に対処するために、酸が拡散しなければならない距離を長くし、それに応じて酸が接点領域に到達する速度を遅くするために、幅広いリップシールが設計された。このように、ウエハの縁部でのシード腐食が低減され、メッキの均一性が改善される。
【0025】
電気メッキセル内で、メッキされるウエハはカップ内に保持され、これにより、リップシールによって囲まれた領域でウエハの縁部との電気的接触がなされると同時に、ウエハの残り部分はメッキ溶液に暴露される。カップは、メッキ中にメッキセル内でメッキ溶液に部分的に浸漬される。しかしながら、上で説明したように、酸は、接点領域においてウエハ上の金属シード層を損傷するのに十分速く、ウエハとリップシールとの間の液膜にわたって拡散しうる。
【0026】
一実施形態によると、ウエハとリップシールとの間の液層を通して酸が拡散する速度を低減するために、リップシールの幅(ウエハをシールするリップシール上の突起の幅)を増大させるように、ハードウェア設計の変更を実施した。リップシールの幅の増大は、拡散距離を長くして、その結果、接点領域に達する酸を減少させることで、金属シード層のエッチングを低減する。
【0027】
リップシール幅は、リップシールの突起の外径を大きくすることによって、または、突起の内径を小さくすることによって、増大されうる。好ましい実施例は、メッキに利用可能な領域を削減しないことから、突起の外径を大きくすることである。
【0028】
リップシール上の突起の形状は、以前の設計と同様の形状の断面を備えたリップシールを形成するように拡大されてもよく、ここで、突起は、単に半径方向の寸法が延長される。これは、好ましい実施例である。リップシールは、円筒形の壁を備えた環状リムの形態の単一の接触面と、ウエハに接触する平坦または角度の付いた面とを備えてよい。
【0029】
以前には、Sabre 3Dのためのリップシール設計は、過去の標準的な動作条件(35℃以下、1リットルの酸あたり140グラム以下)の際に存在するよりも高い温度または高いメッキ溶液酸濃度では、接点領域へのかなりの量の酸拡散を防がなかった。幅広のリップシールの利点は、35℃より高い温度および/または1リットルの酸あたり140グラムより高い酸濃度など、より需要のある動作条件で、十分なシーリングを提供できることである。
【0030】
ウエハの処理において、湿ったウエハがリップシール上に配置された時、薄い水の層が残り、酸が、この層を通して拡散し、接点領域に到達して、ウエハ上の金属シード層を損傷する場合がある。この問題を回避するために、リップシールは、より長い拡散経路を酸に提供し、したがって、エッチングが接点領域で起きるのに必要な時間を実質的に長くするよう構成される。より長い拡散経路は、より広いリップシール(より長い直線的な長さ)によって達成できる。
【0031】
リップシールを越える拡散は、一定の供給源を持つ一次元拡散としてモデル化でき、これは以下の式を有する:C/Cs=erfc(z/2√Dt)、ここで、zはリップシールの幅、Dは酸の拡散定数、tは時間、Csは供給源での酸の濃度、Cはzでの酸の濃度、erfcは相補誤差関数である。したがって、2√Dt(拡散長さ)は、所与の条件に対するC、Cs、および、zを知ることによって推定可能であり、zおよびCsの関数としてのCを見つけることができ、2√Dtは、時間、温度、および、拡散種が同じままである限りは、おおよそ一定のままと予測できる。
【0032】
例えば、z=0.020インチおよび”C
s=180g/L硫酸である場合を考えると:これらの条件下で、Cは、1.5時間のメッキ時間後に約8~9g/Lになると推定され、2√Dt≒0.014“となり、2√Dtは、
図5のグラフに示すように、他のリップシール幅でのメッキ後の硫酸濃度を推定するために利用できる。Cは、約0.028インチのリップシール幅で、1g/L(1.5時間でごくわずかな腐食が起きるおおよそのレベル)に達し、それ以降は急速に低下する。好ましいリップシール幅は、少なくとも0.032インチであり、より好ましくは、少なくとも0.034インチである。
【0033】
図3は、カップ201に取り付けられたリップシール212の一実施形態を示しており、電気接点208が半導体基板(ウエハWなど)の下側に係合している。
図4に示すように、リップシール212は、ウエハWの下側に接触する上面220aを有する突起220を有する内側部分218と、カップ201の凹部201aに係合するリム232を有する外側部分230とを備える。突起220は、軸方向上向きに伸びており、メッキ溶液中の酸の拡散が電気接点208とウエハWとの間の接触点に到達するのを防ぐのに十分な幅(突起の内側および外側の円筒壁の間で半径方向に測定された幅)を有する。300mm直径のウエハを処理するために、突起220の幅は、少なくとも約0.032インチであってよく、少なくとも約0.034インチであることが好ましい。リップシール212は、カップ201とかみ合うよう構成された完全にエラストマ材料製の一体部品であることが好ましい。したがって、リップシール212は、必要な時に容易に交換できる別個の消耗部品である。
【0034】
図6a~cは、異なる条件下で処理されたウエハの外縁部の写真である。
図6aは、プリウェッティングなしでメッキされたウエハを示しており、リップシールがそれを越える酸の拡散を防ぐ十分なシールを提供したので、ウエハの縁部における銅シード層は腐食していない。電気メッキ中に用いられた電気接点に起因したひっかき傷が銅シード層上に見られる。
図6bは、プリウェッティングありで、十分なシールを提供しない0.028インチ幅のリップシールを用いてメッキされたウエハを示す。プリウェッティングは、ウエハとリップシールとの間に水の膜を形成し、リップシールは、それを越えて酸が拡散して、ウエハの縁部の銅シード層を腐食させることを許容した。
図6bでは、銅シード層が深刻に腐食されており、薄い酸化銅(黒)およびタンタルバリア層(銀)しか見えない。
図6cは、プリウェッティングありで、十分なシールを提供する0.034インチ幅のリップシールを用いてメッキされたウエハを示す。画像内で、銅シード層が見え、銅シード層の表面上の非常に薄い酸化銅の層が小さいシミを作っていることから、より長い拡散経路を作り出した幅の広いリップシールによって、銅シード層は、小さい腐食しか受けていない。
【0035】
本明細書では、しばしば、数値と共に「約」という用語を用いて、かかる値の数学的正確さが意図されていないことを示唆している。したがって、数値と共に「約」という用語を用いている場合には、その数値に対して±10%の公差が想定される。
【0036】
本発明の実施形態および応用例が本明細書に図示および記載されているが、本発明の概念、範囲、および、精神の範囲内にある多くの変更例および変形例が可能であり、これらの変更例は、本願を熟読すれば当業者にとって明らかになるものである。したがって、これらの実施形態は、例示的なものであって、限定的なものではないとみなされ、本発明は、本明細書に示した詳細に限定されず、添付の特許請求の範囲および等価物の範囲内で変形されてよい。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気メッキ中に半導体基板と係合して電流を前記半導体基板に供給する電気メッキクラムシェルのリップシールアセンブリで用いるリップシールであって、
エラストマ材料の単一の一体部品からなる本体であって、前記リップシールアセンブリのカップと係合するよう構成された外側部分と、前記半導体基板の周囲領域と係合するよう構成された内側部分とを有する本体を備え、
前記内側部分は、前記電気メッキ中に用いられる電気メッキ溶液中の酸の拡散を抑制するのに十分な半径方向の幅を有する上向きに突出した突起を備え、前記上向きに突出した突起の上面は、前記半導体基板に接触するように角度の付いた面を有し、前記上向きに突出した突起は、前記リップシールの内周の周りに完全に伸びる環状リムを備え、
前記幅は、前記上向きに突出した突起の内壁と外壁との間の幅であり、前記幅は、拡散距離を長くすることで化学的拡散の速度を遅くするように、前記リップシールの動作条件が35℃より高い温度、または1リットルの酸あたり140グラムより高い酸濃度であるときに、±10%を規定する「約」を付して、約0.8128ミリ(0.032インチ)であり、
前記本体の前記外側部分は、前記カップの凹部に係合し、前記リップシールと前記カップとのアライメントを助けるように下向きに突出したリムを有し、前記下向きに突出したリムは、前記外側部分の前記リップシールの前記周囲領域の周りに完全に伸びる、
リップシール。
【請求項2】
電気メッキ中に半導体基板と係合して電流を前記半導体基板に供給する電気メッキクラムシェルのリップシールアセンブリで用いるリップシールであって、
エラストマ材料の単一の一体部品からなる本体であって、前記リップシールアセンブリのカップと係合するよう構成された外側部分と、前記半導体基板の周囲領域と係合するよう構成された内側部分とを有する本体を備え、
前記内側部分は、前記電気メッキ中に用いられる電気メッキ溶液中の酸の拡散を抑制するのに十分な半径方向の幅を有する上向きに突出した突起を備え、前記上向きに突出した突起の上面は、前記半導体基板に接触するように角度の付いた面を有し、前記上向きに突出した突起は、前記リップシールの内周の周りに完全に伸びる環状リムを備え、
前記幅は、前記上向きに突出した突起の内壁と外壁との間の幅であり、前記幅は、拡散距離を長くすることで化学的拡散の速度を遅くするように、前記リップシールの動作条件が35℃より高い温度、または、1リットルの酸あたり140グラムより高い酸濃度であるときに、±10%を規定する「約」を付して、約0.8636ミリ(0.034インチ)であり、
前記本体の前記外側部分は、前記カップの凹部に係合し、前記リップシールと前記カップとのアライメントを助けるように下向きに突出したリムを有し、前記下向きに突出したリムは、前記外側部分の前記リップシールの前記周囲領域の周りに完全に伸びる、リップシール
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のリップシールであって、前記上向きに突出した突起の内面が、前記リップシールの内径を規定するリップシール。
【請求項4】
請求項1または請求項2のリップシールを用いて半導体基板を電気メッキする方法であって、
前記リップシールの前記上向きに突出した突起が前記半導体基板の外周と接触するように、電気メッキクラムシェル内でプリウェット済みの半導体基板を支持する工程と、
前記上向きに突出した突起の内側の前記半導体基板の露出面を電気メッキ溶液と接触させる工程と、
を備える方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
本発明の実施形態および応用例が本明細書に図示および記載されているが、本発明の概念、範囲、および、精神の範囲内にある多くの変更例および変形例が可能であり、これらの変更例は、本願を熟読すれば当業者にとって明らかになるものである。したがって、これらの実施形態は、例示的なものであって、限定的なものではないとみなされ、本発明は、本明細書に示した詳細に限定されず、添付の特許請求の範囲および等価物の範囲内で変形されてよい。例えば、以下の各適用例として実施可能である。
[適用例1]電気メッキ中に半導体基板と係合して電流を前記半導体基板に供給する電気メッキクラムシェルのリップシールアセンブリで用いるリップシールであって、
前記リップシールアセンブリのカップと係合するよう構成された外側部分と、前記半導体基板の周囲領域と係合するよう構成された内側部分とを有するエラストマ本体を備え、
前記内側部分は、前記電気メッキ中に用いられる電気メッキ溶液中の酸の拡散を抑制するのに十分な半径方向の幅を有する突起を備え、前記突起は、前記リップシールの内周の周りに完全に伸びる環状リムを備えるリップシール。
[適用例2]適用例1に記載のリップシールであって、前記幅は、前記突起の内壁と外壁との間の幅であり、前記幅は、少なくとも約0.8128ミリ(0.032インチ)であるリップシール。
[適用例3]適用例2に記載のリップシールであって、前記幅は、約0.8636ミリ(0.034インチ)であるリップシール。
[適用例4]適用例1に記載のリップシールであって、前記外側部分は、前記カップの凹部に受け入れられるよう構成された下向きに伸びるリムを備えるリップシール。
[適用例5]適用例1に記載のリップシールであって、前記突起の内面が、前記リップシールの内径を規定するリップシール。
[適用例6]適用例1のリップシールを用いて半導体基板を電気メッキする方法であって、前記リップシールの前記突起が前記半導体基板の外周と接触するように、電気メッキクラムシェル内でプリウェット済みの半導体基板を支持する工程と、前記突起の内側の前記半導体基板の露出面を電気メッキ溶液と接触させる工程とを備える方法。
[適用例7]適用例6に記載の方法であって、前記突起は、約0.8636ミリ(0.034インチ)の幅を有する方法。
【外国語明細書】