(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160363
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20241106BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20241106BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G09F9/00 302
G09F9/00 350Z
B60R11/02 C
C03C21/00 101
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024138403
(22)【出願日】2024-08-20
(62)【分割の表示】P 2023558036の分割
【原出願日】2022-10-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2021180542
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】穂刈 涼
(72)【発明者】
【氏名】井上 淳
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊成
(57)【要約】 (修正有)
【課題】上端付近まで車両側に固定された状態においても、カバー部材の破損を抑制する。
【解決手段】カバー部材2と、表示パネル3と、車両に固定される底部材5とが順に積層され、前記底部材5は、板部、リブ、及び少なくとも2つの固定点を有し、特定の距離を意味するYHとYH
cgとの比YH/YH
cgが0.5以下であり、特定の基準点及び底部材5を通る特定の仮想線Dとし、nを2以上の整数とすると、前記仮想線D上には、カバー部材2を第1層として、底部材5を除いて、第n層までの部材が配置され、式(1)を満たす、車載用の表示装置。
tは前記カバー部材の前記第1方向における厚み(mm)であり、Qは、式(2)で求められる値。
E
Dは前記底部材のヤング率(GPa)、Ecgはカバー部材のヤング率(GPa)、Enは第n層の部材のヤング率(GPa)、等々。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバー部材と、表示パネルと、車両に固定される底部材とが順に積層される車載用の表示装置であって、
前記カバー部材の厚み方向において、前記カバー部材から前記底部材に向かう方向を第1方向とした際に、
前記カバー部材は、前記第1方向とは反対側の第1主面、前記第1方向側の第2主面、前記第1主面と前記第2主面を接続する端面、及び前記第1主面と前記端面とが形成する角部を有し、
前記底部材は、板部、及び前記板部の前記第1方向側の主面から突出するリブを有し、前記第1方向側の主面に、前記車両に対して固定される少なくとも2つの固定点が形成され、
前記固定点のうち2点の中間点を通り、前記2点の固定点どうしを結ぶ線に対して垂直な仮想面を仮想面Rとし、前記カバー部材の主面と前記仮想面Rとの交差線の長さを距離YH
cgとし、前記表示パネルの主面と前記仮想面Rとの交差線のうち、上端から前記中間点に対応する点までの長さを距離YHとした場合に、前記距離YHと前記距離YH
cgとの比YH/YH
cgが、0.5以下であり、
前記カバー部材の前記角部の、前記2点の固定点からの距離が等しくなる位置を等距離点とし、前記角部上において前記等距離点から所定距離範囲内となる位置を基準点とし、前記基準点及び前記底部材を通りつつ前記第1方向に対して30°以上45°以下傾斜する仮想線を、仮想線Dとし、nを2以上の整数とすると、前記仮想線D上には、前記カバー部材を第1層として、前記底部材を除いて、第n層までの部材が配置され、
次の式(1)を満たす、表示装置。
【数1】
式(1)において、
tは前記カバー部材の前記第1方向における厚み(mm)であり、
Qは、次の式(2)で求められる値である。
【数2】
式(2)において、
E
Dは前記底部材のヤング率(GPa)であり、
E
cgは前記カバー部材のヤング率(GPa)であり、
E
nは前記第n層の部材のヤング率(GPa)であり、
t
nは前記第n層の部材の、前記仮想線Dを通る領域の前記第1方向における厚み(mm)であり、
t
Dは次の式(3)で求められる値である。
【数3】
式(3)において、
aは、前記底部材の前記板部の前記第1方向における厚み(mm)であり、
w
2は、前記底部材の前記リブのうち、前記仮想線Dが通る前記板部上の点に最も近い第1リブの幅(mm)であり、
w
1は、前記第1リブと、前記仮想線Dが通る前記板部上の点を通り前記第1リブの中心線に垂直な線の延びる方向に位置する第2リブとの距離(mm)であり、
hは、前記リブの前記第1方向における厚み(mm)であり、
bは、次の式(4)で表される。
【数4】
式(4)において、
aは、前記底部材の前記板部の前記第1方向における厚み(mm)であり、
w
2は、前記底部材の前記リブのうち、前記仮想線Dが通る前記板部上の点に最も近い第1リブの幅(mm)であり、
w
1は、前記第1リブと、前記仮想線Dが通る前記板部上の点を通り前記第1リブの中心線に垂直な線の延びる方向に位置する第2リブとの距離(mm)であり、
hは、前記第1リブ及び前記第2リブの前記第1方向における厚み(mm)である。
【請求項2】
カバー部材と、表示パネルと、車両に固定される底部材とが順に積層される車載用の表示装置であって、
前記カバー部材の厚み方向において、前記カバー部材から前記底部材に向かう方向を第1方向とした際に、
前記カバー部材は、前記第1方向とは反対側の第1主面、前記第1方向側の第2主面、前記第1主面と前記第2主面を接続する端面、及び前記第1主面と前記端面とが形成する角部を有し、
前記底部材は、板部、及び前記板部の前記第1方向側の主面から突出するリブを有し、前記第1方向側の主面に、前記車両に対して固定される1つの固定点が形成され、
前記固定点を通り、前記固定点における前記カバー部材の厚み方向と鉛直方向とを含む仮想面を仮想面Rとし、前記カバー部材の主面と前記仮想面Rとの交差線の長さを距離YH
cgとし、前記表示パネルの主面と前記仮想面Rとの交差線のうち、上端から前記固定点に対応する点までの長さを距離YHとした場合に、前記距離YHと前記距離YH
cgとの比YH/YH
cgが、0.5以下であり、
前記カバー部材の前記角部の、前記固定点からの距離が最短となる位置を等距離点とし、前記角部上において前記等距離点から所定距離範囲内となる位置を基準点とし、前記基準点及び前記底部材を通りつつ前記第1方向に対して30°以上45°以下傾斜する仮想線を、仮想線Dとし、nを2以上の整数とすると、前記仮想線D上には、前記カバー部材を第1層として前記底部材を除いた場合に、第n層までの部材が配置され、
次の式(1)を満たす、表示装置。
【数5】
式(1)において、
tは前記カバー部材の前記第1方向における厚み(mm)であり、
Qは、次の式(2)で求められる値である。
【数6】
式(2)において、
E
Dは前記底部材のヤング率(GPa)であり、
E
cgは前記カバー部材のヤング率(GPa)であり、
E
nは前記第n層の部材のヤング率(GPa)であり、
t
nは前記第n層の部材の、前記仮想線Dを通る領域の前記第1方向における厚み(mm)であり、
t
Dは次の式(3)で求められる値である。
【数7】
式(3)において、
aは、前記底部材の前記板部の前記第1方向における厚み(mm)であり、
w
2は、前記底部材の前記リブのうち、前記仮想線Dが通る前記板部上の点に最も近い第1リブの幅(mm)であり、
w
1は、前記第1リブと、前記仮想線Dが通る前記板部上の点を通り前記第1リブの中心線に垂直な線の延びる方向に位置する第2リブとの距離(mm)であり、
hは、前記第1リブ及び前記第2リブの前記第1方向における厚み(mm)であり、
bは、次の式(4)で表される。
【数8】
式(4)において、
aは、前記底部材の前記板部の前記第1方向における厚み(mm)であり、
w
2は、前記底部材の前記リブのうち、前記仮想線Dが通る前記板部上の点に最も近い第1リブの幅(mm)であり、
w
1は、前記第1リブと、前記仮想線Dが通る前記板部上の点を通り前記第1リブの中心線に垂直な線の延びる方向に位置する第2リブとの距離(mm)であり、
hは、前記第1リブ及び前記第2リブの前記第1方向における厚み(mm)である。
【請求項3】
前記仮想線D上に存在する前記カバー部材と前記底部材との間の部材の少なくとも1つは、基部と、前記基部の前記第1方向と反対方向側の表面から突出するリブとを有し、
前記基部と前記基部から突出する前記リブとを有する前記部材のうちで最も前記第1方向と反対方向側にある部材の、最も前記基準点に近いリブ同士の距離をLとした場合に、次の式(5)で求められるQ’の値が、次の式(1)’をさらに満たす、請求項1又は請求項2に記載の表示装置。
【数9】
【請求項4】
前記式(5)で求められるQ’は、1.5以上である、請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記底部材は、ブラケットを用いて、前記車両に固定される、請求項1又は請求項2に記載の表示装置。
【請求項6】
前記式(2)で求められるQは、1.5以上である、請求項1又は請求項2に記載の表示装置。
【請求項7】
前記カバー部材は、圧縮応力層の厚さが10μm以上ある強化ガラスであり、
前記カバー部材の厚さが、0.5mm以上2.5mm以下であり、
前記カバー部材のヤング率が、60GPa以上90GPa以下であり、
前記表示パネルのヤング率が、2GPa以上90GPa以下であり、
前記底部材のヤング率が、40GPa以上250GPa以下である、請求項1又は請求項2に記載の表示装置。
【請求項8】
前記仮想線Dが通る前記カバー部材の基準点に、衝突時のエネルギーが152Jとなるようにインパクタを衝突させるヘッドインパクト試験において、前記インパクタの減速度が、50G以上である、請求項1又は請求項2に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転時に必要な情報等を表示する車載用の表示装置として、表示パネルと、表示パネルをカバーするカバー部材とを有するものがある。このような表示装置においては、衝撃を受けた場合にもカバー部材の破損を抑制することが求められている。例えば特許文献1には、カバー部材の端部衝撃性を向上可能な車載用の表示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載用の表示装置は、車両側への固定位置に応じて、カバー部材への衝撃の伝わり方が変わる。そのため例えば、表示装置の上端付近まで車両側に固定された状態においても、カバー部材の破損を抑制することが求められている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、上端付近まで車両側に固定された状態においても、カバー部材の破損を抑制可能な表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するための、本実施形態に係る表示装置は以下のとおりである。
カバー部材と、表示パネルと、車両に固定される底部材とが順に積層される車載用の表示装置であって、前記カバー部材の厚み方向において、前記カバー部材から前記底部材に向かう方向を第1方向とした際に、前記カバー部材は、前記第1方向とは反対側の第1主面、前記第1方向側の第2主面、前記第1主面と前記第2主面を接続する端面、及び前記第1主面と前記端面とが形成する角部を有し、前記底部材は、板部、及び前記板部の前記第1方向側の主面から突出するリブを有し、前記第1方向側の主面に、前記車両に対して固定される少なくとも2つの固定点が形成され、前記固定点のうち2点の中間点を通り、前記2点の固定点どうしを結ぶ線に対して垂直な仮想面を仮想面Rとし、前記カバー部材の主面と前記仮想面Rとの交差線の長さを距離YHcgとし、前記表示パネルの主面と前記仮想面Rとの交差線のうち、上端から前記中間点に対応する点までの長さを距離YHとした場合に、前記距離YHと前記距離YHcgとの比YH/YHcgが、0.5以下であり、前記カバー部材の前記角部の、前記2点の固定点からの距離が等しくなる位置を等距離点とし、前記角部上において前記等距離点から所定距離範囲内となる位置を基準点とし、前記基準点及び前記底部材を通りつつ前記第1方向に対して30°以上45°以下傾斜する仮想線を、仮想線Dとし、nを2以上の整数とすると、前記仮想線D上には、前記カバー部材を第1層として、前記底部材を除いて、第n層までの部材が配置され、次の式(1)を満たす表示装置。
式(1)において、tは前記カバー部材の前記第1方向における厚み(mm)であり、Qは、次の式(2)で求められる値である。
式(2)において、EDは前記底部材のヤング率(GPa)であり、Ecgは前記カバー部材のヤング率(GPa)であり、Enは前記第n層の部材のヤング率(GPa)であり、tnは前記第n層の部材の、前記仮想線Dを通る領域の前記第1方向における厚み(mm)であり、tDは次の式(3)で求められる値である。
式(3)において、aは、前記底部材の前記板部の前記第1方向における厚み(mm)であり、w2は、前記底部材の前記リブのうち、前記仮想線Dが通る前記板部上の点に最も近い第1リブの幅(mm)であり、w1は、前記第1リブと、前記仮想線Dが通る前記板部上の点を通り前記第1リブの中心線に垂直な線の延びる方向に位置する第2リブとの距離(mm)であり、hは、前記リブの前記第1方向における厚み(mm)であり、bは、次の式(4)で表される。
式(4)におけるa、w1、w2及びhは前記式(3)と同様である。
【0007】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、別の実施形態に係る表示装置は以下のとおりである。
カバー部材と、表示パネルと、車両に固定される底部材とが順に積層される車載用の表示装置であって、前記カバー部材の厚み方向において、前記カバー部材から前記底部材に向かう方向を第1方向とした際に、前記カバー部材は、前記第1方向とは反対側の第1主面、前記第1方向側の第2主面、前記第1主面と前記第2主面を接続する端面、及び前記第1主面と前記端面とが形成する角部を有し、前記底部材は、板部、及び前記板部の前記第1方向側の主面から突出するリブを有し、前記第1方向側の主面に、前記車両に対して固定される1つの固定点が形成され、前記固定点を通り、前記固定点における前記カバー部材の厚み方向と鉛直方向とを含む仮想面を仮想面Rとし、前記カバー部材の主面と前記仮想面Rとの交差線の長さを距離YHcgとし、前記表示パネルの主面と前記仮想面Rとの交差線のうち、上端から前記固定点に対応する点までの長さを距離YHとした場合に、前記距離YHと前記距離YHcgとの比YH/YHcgが、0.5以下であり、前記カバー部材の前記角部の、前記固定点からの距離が最短となる位置を等距離点とし、前記角部上において前記等距離点から所定距離範囲内となる位置を基準点とし、前記基準点及び前記底部材を通りつつ前記第1方向に対して30°以上45°以下傾斜する仮想線を、仮想線Dとし、nを2以上の整数とすると、前記仮想線D上には、前記カバー部材を第1層として前記底部材を除いた場合に、第n層までの部材が配置され、次の式(1)を満たす表示装置。
式(1)において、tは前記カバー部材の前記第1方向における厚み(mm)であり、Qは、次の式(2)で求められる値である。
式(2)において、EDは前記底部材のヤング率(GPa)であり、Ecgは前記カバー部材のヤング率(GPa)であり、Enは前記第n層の部材のヤング率(GPa)であり、tnは前記第n層の部材の、前記仮想線Dを通る領域の前記第1方向における厚み(mm)であり、tDは次の式(3)で求められる値である。
式(3)において、aは、前記底部材の前記板部の前記第1方向における厚み(mm)であり、w2は、前記底部材の前記リブのうち、前記仮想線Dが通る前記板部上の点に最も近い第1リブの幅(mm)であり、w1は、前記第1リブと、前記仮想線Dが通る前記板部上の点を通り前記第1リブの中心線に垂直な線の延びる方向に位置する第2リブとの距離(mm)であり、hは、前記第1リブ及び前記第2リブの前記第1方向における厚み(mm)であり、bは、次の式(4)で表される。
式(4)におけるa、w1、w2及びhは前記式(3)と同様である。
【0009】
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表示装置の上端付近まで車両側に固定された状態においても、カバー部材の破損を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る表示装置を示す模式図である。
【
図4】
図4は、表示装置を表示面側から見た模式図である。
【
図7A】
図7Aは、カバー部材の他の例の模式的な一部拡大図である。
【
図7B】
図7Bは、カバー部材の他の例の模式的な一部拡大図である。
【
図8】
図8は、表示装置の断面の他の例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、底部材の模式的な一部拡大図である。
【
図10】
図10は、本実施形態の他の例の表示装置の模式的な断面図である。
【
図11】
図11は、本実施形態の他の例に係る表示装置の模式図である。
【
図13】
図13は、本実施形態の他の例に係る表示装置の模式図である。
【
図14】
図14は、本実施形態における底部材のリブの位置を示す模式図である。
【
図15】
図15は、本実施形態の他の例における底部材のリブの位置を示す模式図である。
【
図16】
図16は、本実施形態の他の例における底部材のリブの位置を示す模式図である。
【
図17】
図17は、本実施形態の他の例における底部材のリブの位置を示す模式図である。
【
図18】
図18は、断面形状が台形である場合のリブを示す模式図である。
【
図19】
図19は、本実施形態の他の例に係る表示装置の模式図である。
【
図20】
図20は、実施例における表示装置の模式的な正面図である。
【
図21】
図21は、各例におけるQの値と評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、数値については四捨五入の範囲が含まれる。
【0013】
(1.表示装置の構成)
図1は、本実施形態に係る表示装置を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る表示装置1は、車両に設けられる車載用の表示装置である。表示装置1は、例えばカーナビゲーション装置であるが、用途は任意であり、ディスプレイオーディオなどの車両に搭載される他の表示装置であってもよい。詳しくは後述するが、表示装置1は、表示面とは反対側の背面に形成される固定点Pを介して、車両の内装部10に固定される。内装部10は、車両の内部に設けられる部材であり、例えば、車両のダッシュボードの一部である。
以下、表示装置1の厚み方向であって表示面から背面に向かう方向を、第1方向とする。
図1~17、20においては、第1方向をZ方向とし、表示装置1が車両に取り付けられた状態で、Z方向と直交し水平面に沿った一方の向きに向かう方向(
図1の例では右方向)を、X方向とし、Z方向及びX方向に直交する方向のうち鉛直方向上方に向かう方向をY方向とする。本実施形態では、表示装置1のY方向側の端部が、鉛直方向上側の端部(上端部)となる。
なお、第1方向、Z方向、X方向、Y方向については、「方向」は向きを有する概念として使用される。すなわち、「Z方向」と称した場合、上記で定めた向きを指すものとし、「Z方向反対」と称した場合、上記で定めた向きとは反対の向きを指すものとする。
【0014】
図2は、
図1のA-A断面図である。
図2に示すように、表示装置1は、カバー部材2と、表示パネル3と、バックライトユニット4と、底部材5と、側壁部材8とを有する。表示装置1は、Z方向に向けて、カバー部材2、表示パネル3、バックライトユニット4、底部材5の順で並んで(重なって)配置されており、カバー部材2、表示パネル3、及びバックライトユニット4の周囲に、枠状の側壁部材8が配置されている。すなわち、底部材5と側壁部材8とは、カバー部材2や表示パネル3を収納する筐体を構成しており、底部材5がカバー部材2や表示パネル3の背面(表示側の面と反対側の面)を覆い、側壁部材8がカバー部材2や表示パネル3の側面を覆う。
【0015】
(カバー部材)
カバー部材2は、可視光を透過する透明な板状部材である。カバー部材2は、Z方向と反対側(表示面側)の主面である第1主面2Aと、Z方向側の主面である第2主面2Bと、第1主面2Aと第2主面2Bとを接続する端面2Cとを有する。端面2Cは、カバー部材2の側面ともいえる。以下、第1主面2Aと端面2Cとが形成するカバー部材2のエッジ部分を、角部2Dとする。角部2Dは、第1主面2Aと端面2Cとの境界部分ともいえる。
【0016】
カバー部材2の厚みtは、0.5~2.5mmが好ましく、0.7~2.0mmがより好ましく、1.1~1.3mmがさらに好ましい。ここで、厚みtは0.5mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましく、1.1mm以上が更に好ましい。また、カバー部材2の厚みtは、2.5mm以下が好ましく、2.0mm以下がより好ましく、1.3mm以下が更に好ましい。なお、厚みtは、第1主面2Aから第2主面2BまでのZ方向における長さである。
【0017】
本実施形態の例では、カバー部材2は、Z方向から見て矩形となる平板状である。カバー部材2のサイズは、例えば、カバー部材2が矩形である場合、長手方向(本実施形態の例ではX方向)の長さが100mm以上800mm以下であり、短手方向(本実施形態の例ではY方向)の長さが40mm以上300mm以下であることが挙げられる。ただし、カバー部材2は、Z方向から見て矩形となる平板状に限られず任意の形状であってよく、例えばZ方向から見て楕円状であってもよいし、例えば湾曲した形状であってもよい。また、カバー部材2のサイズも任意であってよい。
【0018】
カバー部材2のヤング率(Ecg)は、60~90GPaが好ましく、70~80GPaがより好ましく、70~75GPaがさらに好ましい。ここで、ヤング率(Ecg)は60GPa以上が好ましく、70GPa以上がより好ましい。また、カバー部材2のヤング率(Ecg)は、90GPa以下が好ましく、80GPa以下がより好ましく、75GPa以下が更に好ましい。カバー部材2を含む各部材のヤング率は、引張試験(JIS K7161-1、2:2014年・JIS K7113:1995年)により求めてよい。
【0019】
カバー部材2は、ガラス製である。カバー部材2がガラスである場合、カバー部材2は、化学強化ガラスなどの強化ガラスであることが好ましい。
カバー部材2が強化ガラスである場合、カバー部材2の圧縮応力層の厚さ(DOL)は、例えば10~180μmが好ましく、15~180μmがより好ましく、25~50μmがさらに好ましく、30~50μmがよりさらに好ましい。ここで、圧縮応力層の厚さ(DOL)は10μm以上であることが好ましく、15μm以上がより好ましく、25μm以上がさらに好ましく、30μm以上がさらに好ましい。また、圧縮応力層の厚さ(DOL)は、例えば180μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
圧縮応力層における表面圧縮応力(CS)は、500MPa以上が好ましく、650MPa以上がより好ましく、750MPa以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、例えば、CSは、1200MPa以下が好ましい。
ガラスに化学強化処理を施して化学強化ガラスを得る方法は、典型的には、ガラスをKNO3溶融塩に浸漬し、イオン交換処理した後、室温付近まで冷却する方法が挙げられる。KNO3溶融塩の温度や浸漬時間などの処理条件は、表面圧縮応力および圧縮応力層の厚さが所望の値となるように設定すればよい。
ガラス種としては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス(SiO2-Al2O3-Na2O系ガラス)等が挙げられる。なかでも、強度の観点からは、アルミノシリケートガラスが好ましい。
ガラス材料としては、例えば、酸化物基準のモル%表示で、SiO2を50%以上80%以下、Al2O3を1%以上20%以下、Na2Oを6%以上20%以下、K2Oを0%以上11%以下、MgOを0%以上15%以下、CaOを0%以上6%以下、および、ZrO2を0%以上5%以下含有するガラス材料が挙げられる。
アルミノシリケートガラスをベースとする化学強化用ガラス(例えば、AGC社製「ドラゴントレイル(登録商標)」)も好適に用いられる。
ただし、カバー部材2はガラスに限られず、例えば透明な樹脂部材であってもよい。
【0020】
(表示パネル)
表示パネル3は、画像を表示するパネルであり、カバー部材2のZ方向側に、カバー部材2と重なるように配置されている。表示パネル3は、Z方向と反対側の面である表示面が、粘着層(図示せず)によって、カバー部材2の第2主面2Bに接着されている。粘着層は、例えば、OCA(Optical Clear Adhesive)フィルムまたはOCAテープであり、その厚さ(Z方向における長さ)は、例えば、5μm以上400μm以下であり、50μm以上200μm以下が好ましい。ここで、粘着層の厚さ(Z方向における長さ)は5μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、また、400μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。
【0021】
表示パネル3は、液晶パネル、有機EL(electro-luminescence)パネル、フレキシブル有機ELパネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)、電子インク型パネル等であり、タッチパネル等を有していてもよい。表示パネル3がガラス基板を有する場合、最も厚いのがガラス基板となり、表示パネル全体の剛性を支配する。このため、ガラス基板のヤング率を表示パネル3のヤング率とみなしてもよい。
表示パネル3のヤング率は、2~90GPaが好ましく、60~90GPaがより好ましく、70~75GPaがさらに好ましい。ここで、ヤング率は2GPa以上が好ましく、60GPa以上がより好ましく、70GPa以上が更に好ましい。表示パネル3のヤング率は、90GPa以下が好ましく、75GPa以下がより好ましい。
表示パネル3の厚みは、0.05~2.0mmが好ましく、1.0~2.0mmがより好ましく、1.1~1.3mmがさらに好ましい。ここで、上記厚みは0.05mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、1.1mm以上が更に好ましい。表示パネルの厚みは、2.0mm以下が好ましく、1.3mm以下がより好ましい。なお、表示パネル3の厚みは、表示パネル3のZ方向と反対側の主面からZ方向側の主面までのZ方向における長さである。
【0022】
図1に示すように、Z方向から見て、カバー部材2のY方向の端部から表示パネル3のY方向の端部までの距離を、距離A1とする。距離A1は、カバー部材2を十分な接着強度で接着して保持する観点から、2mm以上30mm以下であることが好ましく、5mm以上20mm以下であることがより好ましい。ここで、距離A1は2mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、また、30mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましい。なお、距離A1の数値範囲は、カバー部材2のY方向と反対側の端部から表示パネル3のY方向と反対側の端部までの距離にも適用できる。
また、
図1に示すように、Z方向から見て、カバー部材2のX方向の端部から表示パネル3のX方向の端部までの距離を、距離A2とする。距離A2は、接着強度の観点およびデザイン上の観点から、2mm以上200mm以下であることが好ましく、5mm以上150mm以下であることがより好ましい。ここで、距離A2は2mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、また、200mm以下が好ましく、150mm以下がより好ましい。なお、距離A2の数値範囲は、カバー部材2のX方向と反対側の端部から表示パネル3のX方向と反対側の端部までの距離にも適用できる。
【0023】
(バックライトユニット)
バックライトユニット4は、表示パネル3に画像表示用の光を照射する光源であり、表示パネル3のZ方向側に、表示パネル3と重なるように配置されている。
【0024】
バックライトユニット4は、一般に、レンズシート、拡散シート、導光板、ランプ、反射板などの部材で構成される。これらの部材の中で、通常、最も厚いのが導光板であり、導光板が、バックライトユニット4全体の剛性を支配する。このため、導光板のヤング率をバックライトユニット4のヤング率とみなしてよい。
バックライトユニット4のヤング率は、1~90GPaが好ましく、2~85GPaがより好ましく、60~85GPaがさらに好ましい。ここで、上記ヤング率は1GPa以上が好ましく、2GPa以上がより好ましく、60GPa以上が更に好ましい。バックライトユニット4のヤング率は、90GPa以下が好ましく、85GPa以下がより好ましい。
バックライトユニット4の厚みは、1~10mmが好ましく、2~6mmがより好ましく、3~5mmがさらに好ましい。ここで、上記厚みは1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、3mm以上が更に好ましい。バックライトユニット4の厚みは、10mm以下が好ましく、6mm以下がより好ましく、5mm以下が更に好ましい。なお、バックライトユニット4の厚みは、バックライトユニット4のZ方向と反対側の主面からZ方向側の主面までのZ方向における長さである。
【0025】
なお、表示装置1には、バックライトユニット4が設けられなくてもよい。この場合、表示装置1は、Z方向に向けて、カバー部材2、表示パネル3、底部材5の順で並んで(重なって)配置されることになる。バックライトユニット4が設けられない場合には、表示パネル3としては、有機ELパネルやマイクロLEDパネルなどの、バックライトユニット4を必要としない自発光型の表示パネルが選択される。
【0026】
(底部材)
底部材5は、表示パネル3(本実施形態ではバックライトユニット4)のZ方向側に、表示パネル3(本実施形態ではバックライトユニット4)と重なるように配置されており、筐体の底部分といえる。
【0027】
底部材5は、板部6とリブ7とを含む。板部6は、表示パネル3と重なるように配置される板状部材である。リブ7は、板部6のZ方向側の主面6Bから突出するように形成される部材であり、本実施形態では四角柱状となっている。底部材5を、リブ7を有する形状にすることで、リブ7が無い肉厚な板形状にするよりも、表示装置1を軽量化できる。
【0028】
図3は、底部材の模式図である。
図3に示すように本実施形態の底部材5をZ方向から見た場合、底部材5においては、複数本のリブ7が格子状に設けられている。具体的には、
図3においてY方向延びている複数本のリブ7(リブ71、リブ72、リブ73およびリブ74)と、
図3においてX方向に延びている複数本のリブ7と(リブ75、リブ76およびリブ77)とが交差している。ただし、リブ7の形状は、
図3に限られず任意であってよく、例えば、直線的な形状ではなく、湾曲した形状であってもよいし、格子状に設けられていなくてもよい。なお、底部材5は、リブ7を有しなくてもよい。この場合、底部材5は、板部6のみからなる。
【0029】
図5において、底部材5のZ方向側の主面5Aには、固定点Pが形成されている。固定点Pは、底部材5の、車両に(本実施形態では内装部10に)固定されるインターフェースとなる箇所であり、本実施形態では後述のブラケット9が取り付けられる箇所である。
底部材5は、主面5Aが固定部材(ここではブラケット9)と接触した状態で、ブラケット9に固定される。主面5Aのうちの、固定部材と接触する領域を接触領域とすると、固定点Pは、接触領域上の点といえる。固定点Pは、接触領域上の任意の位置であってよく、例えば、接触領域の辺のうち、Y方向反対側に位置する辺の、X方向における中点位置であってもよい。なお、固定点Pは、接触領域毎に1つずつ形成されるといえる。すなわち、固定点Pが複数ある場合には、離れた位置に複数の接触領域が形成されており、それぞれの接触領域に1つずつ固定点Pが形成されているといえる。固定点Pが1つの場合には、接触領域も1つであるといえる。
例えば、ブラケット9に固定される場合には、主面5Aのうちの、ブラケット9の凸面9aの端の一辺の中点と重なる位置(すなわち接触領域のY方向と反対側の辺の、X方向における中点)を、固定点Pとしてもよい。また、底部材5がボルトなどの固定具でブラケット9に固定される場合には、固定点Pは、主面5Aのうちの、固定具が挿入される穴(例えばボルト穴)が開口している箇所であってよいし、複数の固定具でブラケット9に固定される場合には、固定具が挿入される穴(例えばボルト穴)が開口している箇所同士の中央位置であってもよい。また例えば、底部材5が接着剤などでブラケット9に固定される場合には、固定点Pは、主面5Aのうちの、接着剤が塗布される接触領域上の点であってよい。また例えば、底部材5の主面5Aに突起部が形成されて、突起部が車両(本実施形態では内装部10)に形成された凹部に挿入されることで、車両に固定される場合もある。この場合、ブラケット9を別途設けることなく、底部材5の突起部をブラケット9とみなしてよい。この場合、底部材5の突起部のZ方向側の面が接触領域となり、接触領域上の点を、固定点Pとしてよい。また例えば、底部材5の主面5Aに凹部が形成されて、車両(本実施形態では内装部10)に形成された突起部が主面5Aの凹部に挿入されることで、車両に固定される場合もある。この場合、ブラケット9を別途設けることなく、車両の突起部をブラケット9とみなしてよい。この場合、底部材5の凹部のZ方向側の面が接触領域となり、接触領域上の点を、固定点Pとしてよい。固定点Pの位置などについては後述する。
【0030】
底部材5は、リブ7を有する場合には、ヤング率が、1.5GPa以上100GPa以下が好ましく、40GPa以上80GPa以下がより好ましい。ここで、リブ7を有する場合の底部材5のヤング率は1.5GPa以上が好ましく、40GPa以上がより好ましく、また、100GPa以下が好ましく、80GPa以下がより好ましい。
底部材5は、リブ7を有しない場合、ヤング率が、40GPa以上250GPa以下が好ましく、60GPa以上230GPa以下がより好ましい。ここで、リブ7を有さない場合の底部材5のヤング率は40GPa以上が好ましく、60GPa以上がより好ましく、また、250GPa以下が好ましく、230GPa以下がより好ましい。
【0031】
底部材5の材料としては、例えば、アルミニウムやマグネシウムなどの金属元素を含有する金属(単体)または合金が好ましい。また、底部材5の材料としては、樹脂でもよく、樹脂層と金属層との積層であってもよい。
【0032】
(側壁部材)
側壁部材8は、Z方向から見て、カバー部材2、表示パネル3、及びバックライトユニット4を囲うように設けられる枠状の部材であり、筐体の側壁部分であるといえる。
【0033】
図2において、本実施形態の例では、側壁部材8は、側壁部材8a、8bを有している。側壁部材8aは、部材8a1、8a2を含む。部材8a1は、カバー部材2を囲う枠状の部分である。部材8a2は、部材8a1のZ方向側の端部から、Z方向に沿ったカバー部材2の中心軸を軸方向とした場合の径方向内側に突出する部分である。カバー部材2の中心軸とは、Z方向から見てカバー部材2の中心点を通り、かつZ方向に延在する軸である。部材8a2は、部材8a1から突出した、Z方向と反対側の表面で、カバー部材2のZ方向側の第2主面2Bの外周側の領域を支持している。本実施形態では、部材8a2とカバー部材2とは、粘着層を介して接着されている。
側壁部材8bは、側壁部材8aのZ方向側に設けられる枠状の部材であり、本実施形態では、表示パネル3とバックライトユニット4とを囲うように配置される。本実施形態では、側壁部材8bは、Z方向と反対側の表面が粘着層を介して側壁部材8aに接着されている。
【0034】
なお、側壁部材8a、8bの形状は、以上の説明に限られず任意であってよい。また本実施形態では、側壁部材8として、2つの側壁部材8a、8bが設けられているが、側壁部材8の構成はそれに限られず任意であってよい。例えば、側壁部材8は、1つの部材で構成されていてもよいし、3つ以上の部材で構成されていてもよい。
【0035】
側壁部材8は、ヤング率が、1GPa以上250GPa以下が好ましく、2GPa以上20GPa以下がより好ましい。ここで、上記ヤング率は1GPa以上が好ましく、2GPa以上がより好ましく、また、250GPa以下が好ましく、20GPa以下がより好ましい。なお、側壁部材8が複数の部材で構成されている場合、それぞれの部材のヤング率が、上記の範囲となっていることが好ましい。
【0036】
側壁部材8の材料としては、例えば、アルミニウムやマグネシウムなどの金属元素を含有する金属(単体)または合金が好ましい。また、側壁部材8の材料としては、樹脂でもよく、樹脂層と金属層との積層であってもよい。また、側壁部材8が複数の部材で構成されている場合には、部材毎に異なる材料で形成されていてもよい。
【0037】
なお、本実施形態では、側壁部材8は底部材5とは別の部材であるが、それに限られず、側壁部材8と底部材5とは、一体の部材であってもよい。また例えば、側壁部材8を構成する複数の部材のうち、一部が底部材5と一体であり、他の一部が底部材5と別体であってよい。すなわち例えば、側壁部材8bが底部材5と一体であり、側壁部材8aが底部材5と別体であってよい。
【0038】
本実施形態の表示装置1は、以上のような構成になっているが、表示装置1は、以上の説明に限られず任意の構成であってよい。例えば、表示装置1は、後述の仮想線D上に、カバー部材2を第1層として、底部材を除いて第n層までの任意の部材が配置された構成であってよい。また例えば、本実施形態の例では、底部材5は、表示装置1の部材のうちで最もZ方向側に配置されているが、それに限られず、例えば底部材5よりもZ方向側に部材が設けられていてもよい。すなわち、底部材5よりもZ方向側に別の部材があったとしても、固定点Pが形成される層(底部材5)を、本実施形態における底部材として扱う。言い換えれば、固定点Pが形成されて、かつ、最もZ方向にある層を、底部材5として取り扱う。
【0039】
(2.表示装置の固定状態)
次に、表示装置1が車両の内装部10に固定される状態を説明する。以下、表示装置1の固定について説明する。
図4は、表示装置を表示面側から見た模式図であり、
図5は、
図1のB-B断面図である。
【0040】
(固定点)
上述のように、表示装置1の底部材5のZ方向側の主面5Aには、内装部10に対して固定される固定点Pが形成されている。本実施形態においては、固定点Pは、複数設けられており、
図4の例では、固定点P1、P2、P3、P4の4つ設けられている。固定点P1、P2は、X方向(車両に取り付けられた際には車両の幅方向)に並んでいる。固定点P3、P4は、固定点P1、P2に対して、Y方向と反対方向側に(車両に取り付けられた際には鉛直方向下方側)位置しており、X方向に並んでいる。固定点P1および固定点P2を通る線と、固定点P3および固定点P4を通る線とは、互いに平行であり、固定点P1~P4は、長方形の4つの頂点を形成している。
【0041】
図1、
図2、
図4、及び
図5に示すように、固定点Pには、固定部材であるブラケット9が取り付けられてもよい。その場合、底部材5は、ブラケット9を介して内装部10に固定される。本実施形態の例では、
図4に示すように、固定点P1にブラケット91が取りつけられ、固定点P2にブラケット92が取り付けられ、固定点P3にブラケット93が取り付けられ、固定点P4にブラケット94が取り付けられる。
【0042】
図5に示すように、ブラケット9は、長尺の板状部材であり、U字状に屈曲している。ブラケット9は、その板幅方向の中心が固定点Pに位置付けられている。ブラケット9は、U字状の屈曲により形成される凸面9a(
図5におけるY方向と反対側の面)の端の一辺が固定点Pに接している。ブラケット9の凸面9aに垂直な方向は、X方向(車両の幅方向)と垂直に交わる。ブラケット9は、凸面9aに接続する一方の面9bが底部材5と接し、かつ、凸面9aに接続する他方の面9cが内装部10と接している。すなわち、底部材5の主面5Aのうちの、ブラケット9の凸面9aの端の一辺の中点と重なる位置(すなわち接触領域のY方向と反対側の辺の、X方向における中点)が、固定点Pとなる。ブラケット9は、底部材5および内装部10と、例えばネジ(図示せず)によって固定されている。なお、ブラケット9の形状は以上の説明に限られず任意であり、例えばS字状に屈曲していてもよい。
【0043】
表示装置1は、このようにブラケット9を介して車両に取り付けられるため、表示装置1とブラケット9とは、表示装置ユニットを構成しているといえる。
また、底部材5は、ブラケット9を用いることなく、例えば底部材5の一部が変形して、内装部10に固定されてもよい。反対に、内装部10の一部が変形して、底部材5に固定されてもよい。この場合、各固定点Pは、各固定箇所の中心と定義すればよい。
【0044】
固定点Pの位置及び数は、以上の説明に限られない。固定点Pは、任意の複数個形成されていてよく、その場合の各固定点Pの位置も、任意であってよい。
【0045】
(中間点PQ)
以降において表示装置1に対する固定点PのY方向の位置(後述のYH/YHcg)を説明するために、中間点PQを定義する。中間点PQは、固定点P1と固定点P2との中点である。中間点PQと固定点P1との距離(または、中間点PQと固定点P2との距離)を距離Xとすると、振動特性(JIS D 1601:1995年 自動車部品振動試験方法)の観点から、距離Xは、30mm以上200mm以下が好ましく、50mm以上130mm以下がより好ましい。ここで、距離Xは30mm以上が好ましく、50mm以上がより好ましく、また、200mm以下が好ましく、130mm以下がより好ましい。また、Y方向に並ぶ固定点P1と固定点P3との距離(または、固定点P2と固定点P4との距離)を距離Yとすると、距離Yは、同様の理由から、30mm以上200mm以下が好ましく、35mm以上125mm以下がより好ましい。ここで、距離Yは30mm以上が好ましく、35mm以上がより好ましく、また、200mm以下が好ましく、125mm以下がより好ましい。
【0046】
上述のように、固定点Pの数及び位置は任意であるため、固定点Pの位置のバリエーション毎の中間点PQの定義について、以下に説明する。
【0047】
底部材5に設けられる固定点Pのうち、Y方向側(鉛直方向上方)から2つの固定点Pを選択し、選択した2つの固定点Pの中点を、中間点PQとする。例えば、
図1~
図5には、Y方向に2つずつ並んだ4つの固定点P(固定点P1~固定点P4)で底部材5が内装部10に固定される態様を示す。
図1~
図5に示すように、固定点PがY方向に複数ある場合、中間点PQ(ひいては、後述する仮想面R)を規定するための固定点Pとしては、最もY方向側の2つの固定点(
図1~
図4では、固定点P1および固定点P2)を用いる。
【0048】
Y方向の同じ位置(同じ高さ)に3点以上の固定点Pが存在する場合、固定点Pどうしの間隔が最も狭い固定点Pを2つ選択し、その中点を中間点PQとする。Y方向の同じ位置に、等間隔で3点以上の固定点が存在する場合、任意の2つの固定点Pの中点を中間点PQとしてよい。すなわち、中間点PQ(ひいては、後述する仮想面R)の候補が複数ある場合、そのうちいずれか1つが本実施形態の要件を満たせばよいものとする。
【0049】
底部材5は、3つの固定点Pで、内装部10に固定されていてもよい。例えば、
図4を援用して説明すると、固定点P1および固定点P2が無く、その代わりに、固定点P1と固定点P2とを結ぶ線上に、別の固定点P’(
図4等には図示せず)が存在する場合が想定される。この場合、底部材5は、固定点P3、固定点P4および固定点P’の3点で、内装部10に固定される。このとき、固定点P3と固定点P4とにY方向における位置(高さ)の差がなければ、固定点P’に近い方の固定点を選択し、選択した固定点と固定点P’との中点を、中間点PQとする。固定点P’との距離に差がない場合は、任意の一方を選択し、選択した固定点と固定点P’との中点を中間点PQとする。また、固定点P3と固定点P4とがY方向において異なる位置にある場合には、4つの固定点Pでの規定と同様に、Y方向側から2つの固定点P(固定点P’と、固定点P3と固定点P4のうちY方向側の固定点)を選択して、選択した固定点同士の中点を、中間点PQとする。
【0050】
(YH/YH
cg)
図4に示すように、中間点PQを通り、固定点P1と固定点P2とを結ぶ線(中間点PQの定義に用いた2つの固定点P)に対して垂直な面を、仮想面Rとする。また、
図5に示すように、カバー部材2と仮想面Rとの交差線の長さを、距離YH
cgとする。また、
図5に示すように、表示パネル3の主面と仮想面Rとの交差線の、表示パネル3の上端(Y方向側の端部)から中間点PQに対応する点までの長さを、距離YHとする。なお、「中間点PQに対応する点」とは、中間点PQを、表示装置1の厚さ方向(Z方向)に移動させて、表示パネル3の主面上に位置付けた点である。
【0051】
表示装置1は、距離YHと距離YHcgとの比YH/YHcgが0.5以下となるように、固定点Pの位置が設定されている。すなわち、表示装置1は、上端付近も内装部10に固定された、「インダッシュ型またはオンダッシュ型(以下、単に「インダッシュ型」ともいう)」の表示装置であるといえる。表示装置1は、比YH/YHcgが0.1以上0.5以下であることが好ましく、0.3以上0.5以下であることが更に好ましい。ここで、比YH/YHcgが0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましい。
なお、比YH/YHcgが0.5より大きい場合には、底部材の下端のみがダッシュボードに固定された「スタンディング型」に該当するといえる。
【0052】
表示装置1は、以上のようにして車両に固定される。
【0053】
(3.カバー部材の破損を抑制するための構成)
車載用の表示装置は、車両側に固定される状態に応じて、カバー部材への衝撃の伝わり方が変わり、本実施形態のようなインダッシュ型の表示装置1についても、カバー部材2の破損を抑制することが求められている。特に、ヘッドインパクト試験で評価されるような、カバー部材2の端部に優れた耐衝撃性(以下、「端部耐衝撃性」という)を付与することが求められる。以下、カバー部材2の端部耐衝撃性を向上させて破損を抑制するための構成について、説明する。
【0054】
(等距離点H0及び基準点H)
カバー部材2の端部耐衝撃性の向上を説明するために、等距離点H0及び基準点Hを定義する。
図4に示すように、カバー部材2のY方向側の角部2D上において、Z方向から見て、中間点PQの定義に用いた2つの固定点Pのそれぞれからの距離が等しくなる位置を、等距離点H0とする。本実施形態の例では、固定点P1、P2を中間点PQの定義に用いたので、等距離点H0は、Z方向から見て、カバー部材2のY方向側の角部2D上の、固定点P1からの距離と固定点P2からの距離とが等しくなる点であるといえる。すなわち本実施形態の例では、Z方向から見た等距離点H0から固定点P1までの距離L1と、Z方向から見た等距離点H0から固定点P2までの距離L2とが、等しい。
【0055】
また、カバー部材2のY方向側の角部2Dの延在方向(
図4の例ではX方向)において、等距離点H0から所定距離D1だけ離れた角部2D上の位置を、点H1、H2とする。すなわち
図4の例では、等距離点H0からX方向と反対方向に所定距離D1だけ離れた角部2D上の位置が点H1であり、等距離点H0からX方向に所定距離D1だけ離れた角部2D上の位置が点H2である。この場合、カバー部材2のY方向側の角部2D上において、点H1から点H2までの間の任意の位置を、基準点Hとする。すなわち、基準点Hは、等距離点H0から角部2Dの延在方向の一方側(
図4の例ではX方向と反対方向)に所定距離D1離れた位置(
図4の例では点H1)と、角部2Dの延在方向の一方側(
図4の例ではX方向)に所定距離D1離れた位置(
図4の例では点H2)との間の、角部2D上の位置といえる。ここでの所定距離D1は、任意に設定されてよいが、例えば18mmであってよい。
【0056】
基準点Hは、Y方向側の角部2D上の点H1と点H2との間の任意の位置であってよいが、Y方向側の角部2D上の点H1と点H2との間の各位置のうちで、剛性が最小となる位置とされることが好ましい。本実施形態の例では、点H1と点H2との間の各位置のうちで、剛性が最小となる位置は等距離点H0となるため、等距離点H0が、基準点Hとして扱われる。なお、剛性が最小となる位置とは、点H1と点H2との間の各位置のうちで、後述の式(2)における(Ecg・t2+・・・+En・tn
2)が、最小となる位置を指す。
ただし、基準点Hは、点H1と点H2との間で剛性が最小となる位置であることに限られない。例えば、剛性を考慮することなく、等距離点H0を基準点Hとして扱ってもよい。
なお、基準点Hは、例えばヘッドインパクト試験でインパクタを衝突させる打点の位置であってよい。
【0057】
(仮想線D)
次に、仮想線Dを定義する。
図6は、
図4のC-C断面図である。C-C断面は、基準点Hを通りY方向に沿った断面である。
図6に示すように、基準点H及び底部材5を通りつつ、Z方向に対して角度θだけ傾斜する仮想線を、仮想線Dとする。すなわち、仮想線Dは、基準点Hを通り、Z方向に対して径方向内側に角度θだけ傾斜する線といえる。ここでの径方向は、Z方向を通るカバー部材2の中心軸を軸方向とした場合の径方向を指す。なお、カバー部材2の中心軸とは、上述のように、Z方向から見てカバー部材2の中心点を通り、かつZ方向に延在する軸である。また、本実施形態においては、角度θは、30°以上45°以下である。仮想線Dは、ヘッドインパクト試験など、角部2Dに衝撃が加わった場合に高い衝撃が伝わる方向に相当するといえる。
【0058】
図7A及び
図7Bは、カバー部材の他の例の模式的な一部拡大図である。
図7Aのように、カバー部材2は、第1主面2Aと第2主面2Bとの境界部分が面取りされていてもよい。面取り加工されたカバー部材2における端面2Cは、例えば
図7Aに示すように、断面視したときに段階的に屈曲した面である。面取り加工されたカバー部材2においても、第1主面2Aと端面2Cとが形成する角を、角部2Dとし、角部2D上の基準点Hを通る仮想線を、仮想線Dとする。また、
図7Bのように、カバー部材2は、第1主面2Aと第2主面2Bとの境界部分がR面取りされていてもよい。R面取り加工されたカバー部材2における端面2Cは、断面視したときに、所定の曲率半径となる曲線(曲面)形状となっている。R面取り加工されたカバー部材2においても、第1主面2Aと曲面形状の端面2Cとが形成する角を、角部2Dとし、角部2D上の基準点Hを通る仮想線を、仮想線Dとする。なお、R面取り加工されたカバー部材2における端面2Cは、一定の曲率半径であってもよいし、曲率半径が位置毎に異なるスプライン形状であってもよい。
【0059】
(仮想線D上での層構成)
表示装置1は、上記のように規定される仮想線D上に、カバー部材2を第1層として、かつ底部材5を除いて、第n層までの部材が配置されている。なお、nは2以上の整数とする。すなわち、表示装置1は、仮想線D上に沿って、カバー部材2と、カバー部材2及び底部材5以外の(n-1)層の部材と、底部材5とが、並んで配置されているといえる。
図6の例では、表示装置1は、仮想線D上に沿って、第1層であって厚みtのカバー部材2と、第2層であって厚みt
2の側壁部材8aと、第3層であって厚みt
3の側壁部材8bと、底部材5とが、この順で並んでおり、この例ではn=3となっている。
【0060】
ただし、
図6に示した仮想線D上の層構成は一例である。
図8は、表示装置の断面の他の例を示す模式図である。
図8の例では、表示装置1は、仮想線D上に沿って、第1層であるカバー部材2と、第2層である側壁部材8aと、第3層である表示パネル3と、第4層であるバックライトユニット4と、底部材5とが、この順で並んでおり、この例ではn=4となっている。
【0061】
nで表される数、すなわち仮想線D上に存在するカバー部材2と、底部材5以外の部材との合計の数は、2~20が好ましく、3~20がより好ましく、4~10がさらに好ましい。ここで、nで表される数は2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることが更に好ましい。また、nで表される数は、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
【0062】
(仮想線D上の層同士の関係)
本発明者らは、仮想線D上において、仮想線D上の各層が次の式(1)を満たすことにより、カバー部材2の端部耐衝撃性を向上させて破損を抑制できることを見出した。
【0063】
【0064】
式(1)において、tは、カバー部材2のZ方向における厚み(mm)であり、Qは、次の式(2)で求められる値である。
【0065】
【0066】
式(2)において、
E
Dは底部材5のヤング率(GPa)であり、
E
nは第n層の部材のヤング率(GPa)であり、
t
nは第n層の部材の、仮想線Dが通る領域のZ方向における厚み(mm)である。すなわち、t
nは、第n層の部材において仮想線Dが通るZ方向においてカバー部材2側(最もZ方向と反対側)の位置から、第n層の部材において仮想線Dが通るZ方向においてカバー部材2と反対側(最もZ方向側)の位置までの、Z方向における長さといえる。
図6の第2層である側壁部材8aを例にすると、側壁部材8aの厚みt
2は、側壁部材8aの仮想線Dが通る最もZ方向と反対側の点PA1から、側壁部材8aの仮想線Dが通る最もZ方向側の点PA2までの、Z方向における長さとなる。
【0067】
式(2)のtDは、次の式(3)で求められる値である。すなわち、tDは、リブ7を有する底部材5と断面二次モーメントが等しくなる、リブを有さず板部のみを有する仮想の底部材の厚みに相当する値といえる。
【0068】
【0069】
図9は、底部材の模式的な一部拡大図である。
式(3)において、
aは、
図9に示すように、底部材5の板部6のZ方向における厚み(mm)であり、
w
2は、
図9に示すように、第1リブRb1の幅(mm)であり、
w
1は、
図9に示すように、第1リブRb1と、第2リブRb2との距離(mm)であり、
hは、
図9に示すように、第1リブRb1と第2リブRb2のZ方向における厚み(mm)である。
なお、第1リブRb1は、底部材5のリブ7のうち、仮想線Dが通る板部6の主面6B上の点pに最も近いリブ7である。第2リブRb2は、仮想線Dが通る板部6上の点pと第1リブRb1とを結ぶ線上に位置し、かつ第1リブRb1に最も近いリブ7である。言い換えれば、第2リブRb2は、第1リブRb1と、仮想線Dが通る板部6上の点pを通り第1リブRb1の中心線に垂直な線の延びる方向に位置するリブである。
また、第1リブRb1の幅とは、第1リブRb1の延在方向から見た場合の第1リブRb1の幅を指す。また、第1リブRb1と第2リブRb2との距離とは、第1リブRb1の延在方向から見た場合の、第1リブRb1の中心軸と第2リブRb2の中心軸と間の距離を指す。さらに言えば、第1リブRb1と第2リブRb2との距離とは、点pを通る第1リブRb1(リブ73)の垂線上における、第1リブRb1(リブ73)と第2リブRb2(リブ75)との距離(中心線どうしの距離)といえる。また、第1リブRb1と第2リブRb2のZ方向における厚みが異なる場合、hは、第1リブRb1と第2リブRb2のZ方向における厚みの平均値であってよい。
【0070】
式(3)において、bは、次の式(4)で表される。式(4)におけるa、w2、w1、及びhは、式(3)のa、w2、w1、及びhとそれぞれ同様である。
【0071】
【0072】
表示装置1は、以上説明した式(1)を満たすことで、カバー部材2の端部耐衝撃性を向上させることが可能となる。ここで、Qの分子である(ED・tD
2)は、底部材5の剛性に相当し、Qの分母である(Ecg・t2+・・・En・tn
2)は、底部材5を除いた仮想線Dを通る部材の剛性の合計値に相当するといえる。従って、Qは、底部材5を除いた仮想線Dを通る部材の剛性の合計値に対する、底部材5の剛性の比率を指した値といえる。従って、底部材5の剛性の比率を、カバー部材2の厚みtに応じて式(1)のように設定することで、カバー部材2の端部耐衝撃性を向上できると言い換えることができる。
【0073】
式(2)で求められるQは、1.5以上であることが好ましい。Qの下限値がこの範囲となることで、底部材5の剛性を担保して、表示装置1の筐体の破損を好適に抑制できる。
【0074】
また、tDは、1mm以上3mm以下であることが好ましく、1.5mm以上2.5mm以下であることがより好ましく、2mm以上2.5mm以下であることが更に好ましい。
また、カバー部材2及び底部材5以外の仮想線D上の部材を第m層の部材とすると、第m層の部材のヤング率Emは、1GPa以上280GPa以下であることが好ましく、45GPa以上250GPa以下であることがより好ましく、70GPa以上210GPa以下であることが更に好ましい。第m層の部材の厚みtmは、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることが更に好ましい。第m層の部材の厚みtmは、例えば50mm以下である。
これらのパラメータが上記のような数値範囲となることで、Qを適切な値に設定して、カバー部材2の端部耐衝撃性を向上できる。
【0075】
なお、カバー部材2及び底部材5以外の仮想線Dが通る部材も、Z方向側にリブを有する場合がある。この場合でも、その部材のZ方向の厚み(例えば第n層の厚みt
n)については、式(3)や式(4)を適用せずに、t
nにおいて説明したように、仮想線Dが通る最もZ方向と反対側の位置から、仮想線Dが通る最もZ方向側の位置までの、Z方向における長さを用いる。
図10は、本実施形態の他の例の表示装置の模式的な断面図である。すなわち例えば、
図10に示すように、第2層の部材である側壁部材8aのZ方向の表面にリブがあり、仮想線Dにリブが重なる場合には、側壁部材8aのZ方向と反対側の表面と仮想線Dとが重なる点PA1から、側壁部材8aのリブのZ方向側の表面と仮想線Dとが重なる点PA2までの、Z方向における長さが、側壁部材8aの厚みt
2となる。
なお、底部材5については、仮想線Dがリブ7を通る場合でも通らない場合でも、t
Dについては式(3)や式(4)を用いた値となる。
【0076】
また、上述のように、式(2)において第2層から第n層に該当する仮想線D上の部材は、表示装置1内に設けられて仮想線Dに重なる、カバー部材2及び底部材5以外の部材である。ただし、本実施形態においては、ヤング率が低く、かつ厚みが薄い部材については、仮想線D上に存在する場合であっても、式(2)においては、存在しないものとして取り扱ってよい。言い換えれば、ヤング率が低く、かつ厚みが薄い部材については、「En・tn
2」の値を0(ゼロ)とみなしてよい。具体的には、ヤング率が0.5GPa以下であり、かつ、Z方向における厚みが1mm以下となる部材は、仮想線D上に存在する場合であっても、式(2)においては存在しないとみなすことが好ましい。言い換えれば、本実施形態においては、ヤング率が0.5GPaより大きく、Z方向における厚みが1mmより大きく、かつ、仮想線Dに重なる部材を、第2層から第n層に該当する仮想線D上の部材として取り扱う。
【0077】
式(2)においては存在しないとみなす層としては、例えば、表示装置1の部材同士を接着する粘着層、薄膜層および樹脂層などが挙げられる。例えば、カバー部材2の表面には、AR(Anti-Reflection)層、AFP(Anti-Finger-Print)層などの薄膜層が形成される場合や、AR、AFP、AG層などが形成された樹脂フィルムが貼合される場合がある。また、表示パネル3は、TFT、透明導電体などの薄膜層を有する場合がある。しかし、これらの薄膜層は、例えば、カバー部材2そのものや、表示パネル3を構成するガラス基板(ソーダライムガラスなど)と比べて、極めて薄い。また、バックライトユニット4などは樹脂層を有する場合があるが、樹脂層のヤング率は非常に小さい。このため、これらの薄膜層および樹脂層を仮に「第m層」とした場合、「Em・tm
2」の値は0(ゼロ)とみなしてもよい。
【0078】
薄膜層を有する表示装置の構成の一例として、例えば、カバーガラス、OCA、偏光板、カラーフィルター、液晶、TFT基板、偏光板、輝度上昇フィルム、レンズシート、拡散板、導光板、反射フィルム、バックライトユニットケース、プリント配線基板、底部材および筐体樹脂カバーからなる構成が挙げられる。
【0079】
また、
図9中のaは、0.5~6mmが好ましく、1~5mmがより好ましい。ここで、aの値は、生産性の観点から、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましい。aは、軽量化の観点から、6mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。
【0080】
図9中のhは、0mmであってもよいが、1~20mmが好ましく、2~10mmがより好ましい。ここで、hの値は、リブ7による剛性増加効果を得る観点から、1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましい。hは、底部材5の生産しやすさの観点、および、底部材5のサイズが大きくなりすぎることを抑制する観点から、20mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。
【0081】
図9中のw
1は、1~40mmが好ましく、2~30mmがより好ましい。ここで、w
1は底部材5の生産しやすさの観点から、1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましい。w
1は、ヘッドインパクト試験におけるカバー部材2の応力発生を効果的に抑制する観点から、40mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましい。
【0082】
図9中のw
2は、1~20mmが好ましく、3~15mmがより好ましい。ここで、w
2は底部材5の生産しやすさの観点、および、リブ7による剛性増加効果を得る観点から、1mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。w
2は、表示装置1の軽量化効果を得る観点から、20mm以下が好ましく、15mm以下がより好ましい。
【0083】
(4.他の例)
次に、本実施形態の他の例について説明する。
【0084】
(中間部材がZ方向と反対側にリブを有する例)
図11は、本実施形態の他の例に係る表示装置の模式図であり、
図12は、
図11のD-D断面図である。仮想線D上のカバー部材2及び底部材5以外の部材(中間部材)の少なくとも1つは、Z方向と反対側の表面にリブを有していてよい。この場合、カバー部材2の端部耐衝撃性をより適切に向上させるために、Qの値に加え、リブの存在を考慮したQ’の値を好ましい範囲に設定することが好ましい。以下、
図11及び
図12に示すように、側壁部材8として、側壁部材8cが設けられており、側壁部材8cがリブを有する場合を例にして説明する。
【0085】
図12に示すように、側壁部材8cは、基部8c1と、リブ8c2とを有する。基部8c1は、カバー部材2や表示パネル3を囲う枠状の部材である。リブ8c2は、基部8c1のZ方向と反対側の表面から突出する部材である。
図12の例では、リブ8c2は、Y方向に沿って延在しており、X方向に沿って複数並んで設けられている。リブ8c2のZ方向と反対側の表面は、例えば粘着層を介して、カバー部材2のZ方向側の第2主面2Bに接着されている。また、リブ8c2同士の間には、樹脂層8dが充填されているが、それに限られず、何も充填されない空洞であってもよい。なお、粘着層や樹脂層8dは、仮想線D上の部材として扱われなくてよい。
【0086】
ここで、複数のリブ8c2のうち、基準点Hからの距離が最も短くなる2つのリブ8c2を、第1リブ8c2A、第2リブ8c2Bとする。第1リブ8c2Aは、基準点Hに対してX方向と反対方向側にあるリブ8c2のうちで、基準点Hからの距離が最も短くなるリブであり、第2リブ8c2Bは、基準点Hに対してX方向側にあるリブ8c2のうちで、基準点Hからの距離が最も短くなるリブであるといえる。以下、第1リブ8c2Aと第2リブ8c2Bとの間の距離を、距離Lとする。
【0087】
本例のように中間部材のZ方向と反対側の表面にリブがある場合、次の式(5)で求められるQ’の値が、次の式(1)’をさらに満たすことが好ましい。
式中の各符号は、上記式(1)及び式(2)における符号と同義である。
【0088】
【0089】
式(5)は、式(2)に対して、「(L/2)3」が乗じられている点で異なる。すなわち、中間部材のZ方向と反対側の表面にリブがある場合には、カバー部材2は、そのリブに支持されるため、破損のおそれが高くなることが想定される。それに対して、Q’として、Qに「(L/2)3」を乗じて、リブに支持された場合の影響も盛り込んでおき、Q’が式(1)’を満たすことで、リブがある場合にも、カバー部材2の破損を好適に抑制できる。なお、式(5)のLの値を「2」にすることで、式(2)と同じになるため、例えば、リブがある場合でもない場合でも、式(2)を用いずに式(5)を適用して、リブが無い場合には、Lの値を「2」としてもよい。
【0090】
以上の説明では、仮想線D上のカバー部材2及び底部材5以外の部材(中間部材)の1つにリブがあった場合の例を説明していたが、複数の中間部材のZ方向と反対側の表面に、リブが形成される場合もある。この場合、式(5)のLの値としては、リブが形成される複数の中間部材のうちで、最もZ方向側(最もカバー部材2に近い)中間部材のLの値を適用する。
【0091】
なお、
図12の例では、側壁部材8cを例にしたため基部が枠状であったが、基部の形状は枠状に限られず任意であってよく、例えば平板状の部材であってもよい。また、リブの形状、数及び並び方も、
図12の例に限られず任意であってよい。
【0092】
なお、Lは、10mm以上20mm以下であることが好ましく、10mm以上18mm以下であることがより好ましく、13mm以上18mm以下であることが更に好ましい。ここで、Lは10mm以上が好ましく、13mm以上がより好ましく、また、20mm以下が好ましく、18mm以下がより好ましい。
Lが上記のような数値範囲となることで、Q’を適切な値に設定して、カバー部材2の端部耐衝撃性を向上できる。
【0093】
(固定点が1つの例)
また、以上の実施形態の説明では、固定点Pが複数形成されていたが、固定点Pは1つであってもよい。固定点Pが1つである場合、固定点Pが複数である場合に対して、仮想面Rや、基準点Hの規定が異なるため、以下で説明する。
図13は、本実施形態の他の例に係る表示装置の模式図である。
【0094】
図13に示すように、底部材5は、1つの固定点Pで、車両に固定されている。
図13の例では、底部材5は、1つの固定点Pでブラケット9に固定されることで、ブラケット9を介して車両に固定されている。
【0095】
このように固定点Pが1つの場合、1つの固定点Pに配置されるブラケット9の凸面9aの底部材5と接する辺に対して垂直な仮想面を、距離YHと距離YH
cg(
図4参照)を規定するための仮想面Rとする。また、固定点Pを通り、かつ固定点Pにおけるカバー部材2の厚み方向(Z方向)と車両に搭載した際の鉛直方向(Y方向)とに沿う仮想面を、仮想面Rとしてもよい。
【0096】
このように固定点Pが1つの場合、
図13に示すように、カバー部材2のY方向側の角部2D上において、Z方向から見て、固定点Pからの距離が最短となる位置を、等距離点H0とする。等距離点H0に基づいた基準点Hの規定方法は、上述の実施形態と同様であるため説明を省略する。
図13の例では、等距離点H0の位置が基準点Hとなっている。
【0097】
このように、固定点Pが1つの場合は、固定点Pが複数の場合に対して、仮想面Rと基準点Hの規定が異なるが、その他の点は、同じに扱ってよい。すなわち、固定点Pが1つの場合でも、表示装置1は、式(1)~(4)を満たすことが好ましいといえる。また、固定点Pが1つの場合でも、中間部材にリブがある場合は、Qの値に加え、Q’の値として式(5)を用いることが好ましいといえる。
【0098】
(底部材5のリブ7の他の例)
上述の実施形態では、底部材5のZ方向側のリブ7が、Y方向に平行に延在していたが、リブ7の形状や並び方はそれに限られず任意であってよい。以下、リブ7の形状の他の例について説明する。
【0099】
図14は、本実施形態における底部材のリブの位置を示す模式図である。上述の実施形態では、
図9及び
図14に示すように、リブ72およびリブ73は、どちらも、点pから等距離であるから、第1リブRb1は、リブ72およびリブ73のどちらであってもよい。ただし、便宜的に、
図9及び
図14では、リブ72を、第1リブRb1としている。
図9及び
図14では、w
2が、点pに最も近い第1リブRb1の幅であることが分かる。更に、w
1が、第1リブRb1と第2リブRb2との距離(第1リブRb1および第2リブRb2の中心線どうしの距離)であることが分かる。
【0100】
図15は、本実施形態の他の例における底部材のリブの位置を示す模式図である。
図15では、点p(基準点Hに対応する点)が、リブ72とリブ73との間ではなく、リブ72の外側(左側)に位置している。
図15では、点pに最も近いリブ72が第1リブRb1となり、点pと第1リブRb1とを結ぶ線上に位置するリブ73が第2リブRb2となる。
そのうえで、第1リブRb1の幅w
2、および、第1リブRb1と第2リブRb2との距離w
1を求める。更に、点pと第1リブRb1との距離(点pから、第1リブRb1の中心線までの距離)w
3も求める。
そして、距離w
1が距離w
3と同値以上(w
1≧w
3)であれば、w
1およびw
2の値を用いて、式(3)および式(4)を計算して、t
nの値を求める。
しかしながら、距離w
3が距離w
1よりも大きい場合(w
3>w
1)は、w
1およびw
2の値を式(3)および式(4)に適用せず、リブ7が無いものとして計算する。
【0101】
図16は、本実施形態の他の例における底部材のリブの位置を示す模式図である。
図16は、縦方向(Y方向)のリブ7(リブ72およびリブ73)のほかに、横方向(X方向)のリブ7(リブ75およびリブ76)も示す模式図である。
図16では、点pに最も近い第1リブRb1は、横方向のリブ75である。そして、点pと第1リブRb1とを結ぶ線上に位置する第2リブRb2は、リブ75と平行なリブ76である。
このように、複数本のリブ7が存在する場合であっても(例えば、
図3を参照)、そのうち、点pに最も近い第1リブRb1(および、それに対応する第2リブRb2)のみを考慮すればよい。
【0102】
点pとの距離が等しい第1リブRb1が複数本ある場合は、それら全てについて、上述した距離w1と距離w3との関係を検討する。
そして、いずれか1つの第1リブRb1について、距離w1が距離w3と同値以上(w1≧w3)であれば、その第1リブRb1に関するw1およびw2の値を用いて、式(3)および式(4)を計算して、tnの値を求める。
【0103】
図17は、本実施形態の他の例における底部材のリブの位置を示す模式図である。
図17は、並んだリブ7どうしが平行ではない状態を示す模式図である。すなわち、
図17においては、縦方向のリブ72とリブ73とが非平行であり、かつ、横方向のリブ75とリブ76とについても非平行である。
図17においては、点pに最も近い第1リブRb1は、リブ73である。そして、点pを通る第1リブRb1(リブ73)の垂線上に位置する第2リブRb2は、リブ72ではなく、リブ75である。
そして、第1リブRb1(リブ73)の幅w
2、および、点pを通る第1リブRb1(リブ73)の垂線上における、第1リブRb1(リブ73)と第2リブRb2(リブ75)との距離(中心線どうしの距離)w
1を求める。
【0104】
このように、複数本のリブ7が交差して形成される形状は、4つ角が直角の四角形(矩形)でなくてもよく、矩形以外の四角形、その他の多角形であってもよい。
その場合にも、上述した定義であれば、式(3)および式(4)の計算に必要なw1およびw2の値を決定できる。
【0105】
なお、リブ7の断面形状は、例えば長方形や台形である。
図18は、断面形状が台形である場合のリブ7を示す模式図である。上述したw
2およびw
3は、
図18に示すように、底部材5の板部6の表面(リブ7が設けられている側の面)から、h/2の高さの位置における値とする。
【0106】
(表示パネルが複数の例)
上述の実施形態では、表示装置1が1つの表示パネル3を有していたが、これに限定されず、表示パネル3は複数個であってもよい。表示パネル3が複数個ある場合、それぞれの表示パネル3について、上述した式(1)~式(4)、又は、さらに式(1)’及び式(5)に基づく値を算出すればよい。
【0107】
図19は、本実施形態の他の例に係る表示装置の模式図である。
図19は、カバー部材2、表示パネル3およびブラケット9のみを図示している。
図19では、2個の表示パネル3が、1枚のカバー部材2に貼合され、ブラケット9を用いて底部材5(
図19には図示せず)が内装部10(
図19には図示せず)に固定されている。
図19においても、2箇所の固定点P1および固定点P2が設定されている。このため、上述した、仮想面R、比Z/Z
cg、基準点H、仮想線Dなどを決定したうえで、上述した式(1)~式(5)及び式(1)’に基づく値を算出できる。
【0108】
図19では、表示パネル3の外側にブラケット9が配置されている。
図19に示すように、底部材5における、表示パネル3と対向する面に2つの固定点が存在しない場合、表示パネル3の外周に隣接する固定点を考慮する。
例えば、
図19中の左側の表示パネル3(表示パネル3a)については、その外側に存在する4点(固定点P1~固定点P4)を固定点とする。このうち、上から2つの固定点である固定点P1および固定点P2の中点を中間点PQとする。そして、中間点PQを通り、固定点P1と固定点P2とを結ぶ線に垂直な面を仮想面Rとする。そして、固定点P1、P2と等距離にある角部2D上の点を、等距離点H0とする。
一方、
図19中、右側の表示パネル3(表示パネル3b)については、その外側に存在する3点(固定点P2、固定点P4および固定点P5)を固定点とする。このうち、固定点P2および固定点P5の中点を中間点PQとする。そして、固定点P2、P5と等距離にある角部2D上の点を、等距離点H0とする。
【0109】
固定点Pが表示パネル3の外側に存在する場合、位置関係によっては、中間点PQも、表示パネル3の外側に位置することがある。このとき、距離Z(表示パネル3の主面と仮想面Rとの交差線のうち、上端から中間点PQに対応する点までの長さ)はマイナス値となり、比Z/Zcgは0.5以下となるため、インダッシュ型と判断できる。
【0110】
なお、カバー部材2および表示パネル3の形状は、矩形(
図1などを参照)に限定されず、
図19に示すように、矩形以外の四角形、その他の多角形であってもよい。そのほか、円形などであってもよい。また、カバー部材2および表示パネル3は、平板状の部材に限定されず、湾曲した板状の部材であってもよい。カバー部材2が湾曲している場合、その曲率半径は50~10000mmが好ましく、100~5000mmがより好ましく、200~3000mmがさらに好ましい。ここで、上記曲率半径は50mm以上が好ましく、100mm以上がより好ましく、200mm以上が更に好ましい。曲率半径は例えば10000mm以下であり、好ましくは5000mm以下であり、より好ましくは3000mm以下である。
【0111】
(5.効果)
以上説明したように、本実施形態に係る表示装置1は、カバー部材2と、表示パネル3と、車両に固定される底部材5とが、Z方向(第1方向)に沿って重なるように配置される車載用の表示装置である。カバー部材2は、Z方向とは反対側の第1主面2A、Z方向側の第2主面2B、及び第1主面2Aと第2主面2Bとに接続する端面2Cを有する。底部材5は、板部6、及び板部6のZ方向側の主面6Bから突出するリブ7を有し、Z方向側の表面に、車両に対して固定される少なくとも2つの固定点Pが形成される。2点の固定点Pの中間点PQを通り、2点の固定点Pどうしを結ぶ線に対して垂直な仮想面を仮想面Rとし、カバー部材2の第1主面2Aと仮想面Rとの交差線の長さを距離YHcgとし、表示パネル3の主面と仮想面Rとの交差線のうち、上端から中間点PQに対応する点までの長さを距離YHとした場合に、距離YHと距離YHcgとの比YH/YHcgは、0.5以下である。また、カバー部材2の第1主面2Aと端面2Cとが形成する角部2Dの、2つの固定点Pからの距離が等しくなる位置を等距離点H0とし、角部2D上において等距離点H0から所定距離範囲内となる位置を基準点Hとし、基準点H及び底部材5を通りつつZ方向に対して30°以上45°以下傾斜する仮想線を、仮想線Dとし、nを2以上の整数とする。この場合、仮想線D上には、カバー部材2を第1層として、底部材5を除いて、第n層までの部材が配置される。
表示装置1は、式(1)を満たす。式(1)におけるtはカバー部材2のZ方向における厚み(mm)であり、Qは、式(2)で求められる値である。
式(2)において、EDは底部材5のヤング率(GPa)であり、Ecgはカバー部材2のヤング率(GPa)であり、Enは第n層の部材のヤング率(GPa)であり、tnは第n層の部材の、仮想線Dを通る領域のZ方向における厚み(mm)であり、tDは式(3)で求められる値である。
式(3)において、aは、底部材5の板部6のZ方向における厚み(mm)であり、w2は、底部材5のリブ7のうち、仮想線Dが通る板部6上の点pに最も近い第1リブRb1の幅(mm)であり、w1は、第1リブRb1と、仮想線Dが通る板部6上の点pを通り第1リブRb1の中心線に垂直な線の延びる方向に位置する第2リブRb2との距離(mm)であり、hは、リブ7のZ方向における厚み(mm)であり、bは、式(4)で表される。
本実施形態に係る表示装置1は、比YH/YHcgが0.5以上となるインダッシュ型の車載用の表示装置である。このようなインダッシュ型の表示装置においては、端部衝撃性を向上して、カバー部材2の破損を抑制することが求められている。それに対し、本実施形態に係る表示装置1は、式(1)を満たすように設計されるため、端部衝撃性を向上して、カバー部材2の破損を抑制することができる。
【0112】
本実施形態に係る表示装置1は、カバー部材2と、表示パネル3と、車両に固定される底部材5とが、Z方向(第1方向)に沿って重なるように配置される車載用の表示装置である。カバー部材2は、Z方向とは反対側の第1主面2A、Z方向側の第2主面2B、及び第1主面2Aと第2主面2Bとに接続する端面2Cを有する。底部材5は、板部6、及び板部6のZ方向側の主面6Bから突出するリブ7を有し、Z方向側の表面に、車両に対して固定される1つの固定点Pが形成される。固定点Pを通り、固定点Pにおけるカバー部材2の厚み方向(Z方向)と鉛直方向(Y方向)とを含む仮想面を仮想面Rとし、カバー部材2の第1主面2Aと仮想面Rとの交差線の長さを距離YHcgとし、表示パネル3の主面と仮想面Rとの交差線のうち、上端から中間点PQに対応する点までの長さを距離YHとした場合に、距離YHと距離YHcgとの比YH/YHcgは、0.5以下である。また、カバー部材2の第1主面2Aと端面2Cとが形成する角部2Dの、固定点Pからの距離が最短となる位置を等距離点H0とし、角部2D上において等距離点H0から所定距離範囲内となる位置を基準点Hとし、基準点H及び底部材5を通りつつZ方向に対して30°以上45°以下傾斜する仮想線を、仮想線Dとし、nを2以上の整数とする。この場合、仮想線D上には、カバー部材2を第1層として、底部材5を除いて、第n層までの部材が配置される。
表示装置1は、式(1)を満たす。
本実施形態に係る表示装置1は、式(1)を満たすように設計されるため、端部衝撃性を向上して、カバー部材2の破損を抑制することができる。
【0113】
仮想線D上に存在するカバー部材2と底部材5との間の部材(中間部材)の少なくとも1つは、基部と、基部のZ方向と反対方向側の表面から突出するリブとを有することが好ましい。基部とリブとを有する中間部材のうちで最もZ方向と反対方向側にある部材の、最も基準点Hに近いリブ同士の距離をLとした場合、式(5)に基づくQ’は、式(1)’を満たす値であることが好ましい。
中間部材のZ方向と反対側の表面にリブがある場合には、カバー部材2は、そのリブに支持されるため、破損のおそれが高くなることが想定される。それに対して、Qを式(5)の値として、式(1)を満たすように設計することで、リブに支持された場合の影響も盛り込んでおくことで、中間部材にリブがある場合にも、カバー部材2の破損を好適に抑制できる。
【0114】
底部材5は、ブラケット9を用いて車両に固定されることが好ましい。ブラケット9を介して車両に固定されることで、表示装置1を車両に適切に固定できる。
【0115】
式(2)で求められるQは、1.5以上であることが好ましい。式(5)で求められるQ’は、1.5以上であることが好ましい。また、Q及びQ’が共に1.5以上であることも好ましい。QやQ’がこの範囲となることで、底部材5の剛性を担保して、表示装置1の筐体の破損を好適に抑制できる。
【0116】
カバー部材2は、圧縮応力層の厚さが10μm以上ある強化ガラスであることが好ましく、カバー部材2の厚みtが、0.5mm以上2.5mm以下であり、カバー部材2のヤング率Ecgが、60GPa以上90GPa以下であり、表示パネル3のヤング率が、2GPa以上90GPa以下であり、底部材5のヤング率が、40GPa以上250GPa以下であることが好ましい。各部のヤング率などがこの範囲となることで、カバー部材2の破損を抑制することができる。
【0117】
表示装置1は、仮想線Dが通るカバー部材2の基準点Hに、衝突時のエネルギーが152Jとなるようにインパクタを衝突させるヘッドインパクト試験において、インパクタの減速度が、50G以上であることが好ましい。減速度がこの範囲となる場合には、カバー部材2の破損のおそれが高くなるが、式(1)を満たすように設計されることで、カバー部材2の破損を適切に抑制できる。減速度は特に制限されないが、例えば150G以下である。
なお、ヘッドインパクト試験の条件は、後段の実施例においてインパクタを衝突させるシミュレーションでの条件が用いられる。
【実施例0118】
(実施例)
次に、実施例について説明する。なお、発明の効果を奏する限りにおいて実施態様を変更しても構わない。
【0119】
実施例においては、表示装置1のシミュレーションモデルを生成し、表示装置1のシミュレーションモデルに対して基準点Hに衝撃を印加するシミュレーションを実行することで、ヘッドインパクト試験を模擬した。以下、各例のモデルについて説明する。表1は、各例を説明する表である。
【0120】
【0121】
(例1)
図20は、実施例における表示装置の模式的な正面図である。例1においては、
図20に示すような表示装置1のシミュレーションモデルを準備した。
図20に示すように、表示装置1のモデルは、カバー部材2と、表示パネル3と、Z方向と反対側にリブを有する側壁部材8cと、底部材5とを有するものとした。すなわち、表示装置1のモデルは、
図11、
図12で説明した構造を採用した。
【0122】
例1の表示装置1のモデルにおいては、カバー部材2のサイズを、X方向で250mm、Y方向で150mmとし、Z方向の厚みt0.7mmとし、ヤング率Ecgを74GPaとした。カバー部材2の剛性は、Ecg・t2として算出し、表1に示す値とした。
表示装置1のモデルにおいては、表示パネル3のサイズを、X方向で170mm、Y方向で125mm、Z方向の厚みを1.1mmとした。
また、カバー部材2のY方向の端部と表示パネル3のY方向との端部との距離A1を12mmとし、カバー部材2のX方向の端部と表示パネル3のX方向との端部との距離A2を40mmとした。
また、表示装置1のモデルにおいては、底部材5のサイズを、X方向及びY方向はカバー部材2と同じとし、板部6の厚みを2mmとし、リブ7を考慮した場合の厚みに相当する値tDが2mmとなるように、リブ7の形状を設定した。また、底部材5のヤング率EDを70GPaとした。底部材5の剛性は、ED・tD
2として算出し、表1に示す値とした。
また、側壁部材8cの基部8c1のZ方向における厚みを1.5mmとし、基準点Hに最も近いリブ8c2同士の距離Lの半分の値(L/2)を、13mmとした。側壁部材8cのヤング率は2.2GPaとした。側壁部材8cの剛性は、カバー部材2と同様に算出し、表1に示す値とした。
また、表示装置1のモデルにおいては、底部材5のZ方向側の表面に、比YH/YHcgが0.5となるように、固定点Pを設定してブラケット9を配置した。各固定点のX方向における位置は、カバー部材2のX方向(又はX方向と反対側)の端部と表示パネル3のX方向(又はX方向と反対側)との端部との中央位置とした。
基準点Hは、カバー部材2のY方向側の角部2D上で、固定点P1、P2からの距離が等しくなる位置に設定した。
また、仮想線Dは、基準点Hを通り、Z方向に対して30°傾斜するように設定した。
例1においては、仮想線Dを通る底部材5以外の部材は、第1層がカバー部材2、第2層が側壁部材8cとなり、n=2とした。
例1にモデルにおけるQは、表1に示す値となり、式(1)を満たす。
【0123】
(例2~例18)
例2~例18においては、例1に対して、表1に示すパラメータを変更してモデルを生成した。
【0124】
(評価)
各例で生成したモデルの基準点Hに、以下の条件でインパクタを衝突させるシミュレーションを実行した。
・インパクタの衝突エネルギー:152(J)
・インパクタ重量:6.8(kg)
・インパクタ径:165(mm)
・インパクタ衝突角度(Z方向に対するインパクタの衝突方向の傾斜角):30(°)
【0125】
(評価結果)
基準点Hにインパクタを衝突させた際にカバー部材2に発生する応力の解析結果をシミュレーションで取得した。カバー部材2に発生した最大応力が所定の閾値未満である場合に、判定を〇(合格)とし、閾値以上である場合に、判定を×(不合格)とした。また、表1に示すように、シミュレーションにおいて、インパクタの減速度の解析結果も取得した。
【0126】
図21は、各例におけるQの値と評価結果を示すグラフである。
図21の横軸はカバー部材2の厚みであり、縦軸はQ値であり、
図21の各プロットは、各例の結果を示している。線α1は、式(1)を満たす境界線(式(1)の左辺と右辺とが同じ値となる場合のQ値とカバー部材2の厚みとのプロットを結んだ線)である。すなわち、線L1より上のプロットは、式(1)を満たしており、線L1より下のプロットは、式(1)を満たさない。
実施例である例1、3、5、7、8、11、13、14、18のプロットは、
図21において円(○)で表されており、Qが式(1)を満たすことが分かる。実施例においては、判定が〇、すなわち良好であり、カバー部材2の破損を抑制できることが分かる。
一方、比較例である例2、4、6、9、10、12、15~17のプロットは、
図21においてバツ(×)で表されており、Qが式(1)を満たさないことが分かる。比較例においては、判定が×、すなわち不良であり、カバー部材2の破損を抑制できないことが分かる。
【0127】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0128】
本出願は2021年11月4日出願の日本特許出願(特願2021-180542)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。