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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160411
(43)【公開日】2024-11-13
(54)【発明の名称】基板洗浄装置、基板の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241106BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01L21/304 643A
H01L21/304 643D
H01L21/304 644C
H01L21/304 647Z
H01L21/304 648G
B08B3/02 D
B08B3/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024146524
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2020218355の分割
【原出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】及川 文利
(72)【発明者】
【氏名】深谷 孝一
(72)【発明者】
【氏名】馬場 枝里奈
(72)【発明者】
【氏名】末政 秀一
(72)【発明者】
【氏名】中野 央二郎
(57)【要約】
【課題】超音波洗浄による基板への負荷を軽減しつつ基板に付着した異物を効率よく除去できる基板洗浄装置、基板の洗浄方法の提供。
【解決手段】基板洗浄装置31は、基板Wを回転させる回転機構60と、基板Wの表面W1に、超音波振動が印加された洗浄液を吐出する洗浄液供給ノズル70と、洗浄液供給ノズル70を、基板Wの回転中心Cの近傍から基板Wの外周端W3に向かって、基板Wの半面D1より狭い範囲で揺動させる揺動機構80と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を回転させる回転機構と、
前記基板の表面に、超音波振動が印加された洗浄液を吐出する洗浄液供給ノズルと、 前記洗浄液供給ノズルを、前記基板の回転中心の近傍から前記基板の外周端に向かって、前記基板の半面より狭い範囲で揺動させる揺動機構と、を備える、ことを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項2】
基板を回転させる回転機構と、
前記基板の表面に、超音波振動が印加された洗浄液を吐出する洗浄液供給ノズルと、 前記基板の回転中心を通る位置で、前記基板の表面に接触して回転することで、前記基板を洗浄するロール洗浄部材と、
前記ロール洗浄部材が前記基板を洗浄中に、前記洗浄液供給ノズルを、前記基板の半面より狭い範囲で揺動させる揺動機構と、を備える、ことを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄液供給ノズルは、前記基板の回転中心から離れる方向に前記洗浄液を吐出する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄液は、アルカリ性水溶液、または、アニオン系の界面活性剤である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄液供給ノズルの揺動範囲から離れた位置に設置され、前記基板の表面に洗浄液を吐出する第2の洗浄液供給ノズルを備える、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
前記揺動機構は、前記基板の回転中心の近傍、及び/または、前記基板の外周端において、前記洗浄液供給ノズルの揺動を減速、及び/または、一時停止させる、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
前記基板の回転中心の近傍において前記洗浄液供給ノズルを前記基板の回転中心に向かって傾動させ、及び/または、前記基板の外周端の近傍において前記洗浄液供給ノズルを前記基板の外周端に向かって傾動させる傾動機構を備える、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項8】
基板を回転させ、
前記基板の表面に、洗浄液供給ノズルから超音波振動が印加された洗浄液を吐出させ、 前記洗浄液供給ノズルを、前記基板の回転中心の近傍から前記基板の外周端に向かって、前記基板の半面より狭い範囲で揺動させる、ことを特徴とする基板の洗浄方法。
【請求項9】
基板を回転させ、
前記基板の表面に、洗浄液供給ノズルから超音波振動が印加された洗浄液を吐出させ、 前記基板の回転中心を通る位置に配置したロール洗浄部材を、前記基板の表面に接触させて回転させることで、前記基板を洗浄し、
前記ロール洗浄部材が前記基板を洗浄中に、前記洗浄液供給ノズルを、前記基板の半面より狭い範囲で揺動させる、ことを特徴とする基板の洗浄方法。
【請求項10】
前記洗浄液供給ノズルから前記基板の回転中心から離れる方向に前記洗浄液を吐出させる、ことを特徴とする請求項8または9に記載の基板の洗浄方法。
【請求項11】
前記洗浄液は、アルカリ性水溶液、または、アニオン系の界面活性剤である、ことを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の基板の洗浄方法。
【請求項12】
前記洗浄液供給ノズルの揺動範囲から離れた位置に第2の洗浄液供給ノズルを設置し、前記基板の表面に洗浄液を吐出させる、ことを特徴とする請求項8~11のいずれか一項に記載の基板の洗浄方法。
【請求項13】
前記基板の回転中心の近傍、及び/または、前記基板の外周端において、前記洗浄液供給ノズルの揺動を減速、及び/または、一時停止させる、ことを特徴とする請求項8~12のいずれか一項に記載の基板の洗浄方法。
【請求項14】
前記基板の回転中心の近傍において前記洗浄液供給ノズルを前記基板の回転中心に向かって傾動させ、及び/または、前記基板の外周端の近傍において前記洗浄液供給ノズルを前記基板の外周端に向かって傾動させる、ことを特徴とする請求項8~13のいずれか一項に記載の基板の洗浄方法。
【請求項15】
前記超音波振動が印加された洗浄液を吐出する前記洗浄液供給ノズルを揺動させることで、前記基板を一次洗浄し、
前記一次洗浄の後、前記基板の回転中心を通る位置に配置したロール洗浄部材を、前記基板の表面に接触させて回転させることで、前記基板を二次洗浄し、
前記二次洗浄の後、さらに前記超音波振動が印加された洗浄液を吐出する前記洗浄液供給ノズルを揺動させることで、前記基板を三次洗浄する、ことを特徴とする請求項8に記載の基板の洗浄方法。
【請求項16】
前記基板の回転中心を通る位置に配置したロール洗浄部材を、前記基板の表面に接触させて回転させることで、前記基板を一次洗浄し、
前記一次洗浄の後、前記超音波振動が印加された洗浄液を吐出する前記洗浄液供給ノズルを揺動させることで、前記基板を二次洗浄する、ことを特徴とする請求項8に記載の基板の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板洗浄装置、基板の洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、基板の表面に、洗浄液供給ノズルから超音波振動を印加された洗浄液を吐出する基板洗浄装置が開示されている。洗浄液供給ノズルは、超音波振動子と一体的に形成されると共に、そのノズル先端が、基板の外周端から該基板の半径方向外側に所定の距離だけ離間して配置されている。洗浄液供給ノズルは、基板の厚みよりもノズル直径が大きく、基板の表裏両面を同時洗浄することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4481394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような超音波洗浄では、その洗浄原理の一部を構成しているキャビテーションが、基板へのピット(微細な穴欠陥)を発生させる例があることが知られている。従来では、キャビテーションが発生し基板へのピットを発生させても実質的に半導体基板製品の性能や歩留まりへの悪影響が無かったが、昨今の微細化された配線寸法の半導体基板製品に対しては、その微細化された配線寸法の構造に対し相対的に大きなピットとなることで、半導体基板製品の性能や歩留まりへの悪影響が懸念される例が出てきている。
【0005】
また、昨今の微細化された配線寸法の半導体基板製品に対して、その微細化された配線寸法に応じた欠陥検査装置で検査をすると、基板端縁には成膜やエッチング時の残渣が非常に不安定な状態で付着しており、これらの異物が、基板端縁から基板の中心に向かう超音波洗浄の洗浄液の流れによって、基板表面に再付着し残留して、最終的な表面欠陥として検出される例があることが判ってきた。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、超音波洗浄による基板への負荷を軽減しつつ基板に付着した異物を効率よく除去できる基板洗浄装置、基板の洗浄方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る基板洗浄装置は、基板を回転させる回転機構と、前記基板の表面に、超音波振動が印加された洗浄液を吐出する洗浄液供給ノズルと、前記洗浄液供給ノズルを、前記基板の回転中心の近傍から前記基板の外周端に向かって、前記基板の半面より狭い範囲で揺動させる揺動機構と、を備える。
【0008】
また、本発明の一態様に係る基板洗浄装置は、基板を回転させる回転機構と、前記基板の表面に、超音波振動が印加された洗浄液を吐出する洗浄液供給ノズルと、前記基板の回転中心を通る位置で、前記基板の表面に接触して回転することで、前記基板を洗浄するロール洗浄部材と、前記ロール洗浄部材が前記基板を洗浄中に、前記洗浄液供給ノズルを、前記基板の半面より狭い範囲で揺動させる揺動機構と、を備える。
【0009】
上記基板洗浄装置においては、前記洗浄液供給ノズルは、前記基板の回転中心から離れる方向に前記洗浄液を吐出してもよい。
【0010】
上記基板洗浄装置においては、前記洗浄液は、アルカリ性水溶液、または、アニオン系の界面活性剤であってもよい。
【0011】
上記基板洗浄装置においては、前記洗浄液供給ノズルの揺動範囲から離れた位置に設置され、前記基板の表面に洗浄液を吐出する第2の洗浄液供給ノズルを備えてもよい。
【0012】
上記基板洗浄装置においては、前記揺動機構は、前記基板の回転中心の近傍、及び/または、前記基板の外周端において、前記洗浄液供給ノズルの揺動を減速、及び/または、一時停止させてもよい。
【0013】
上記基板洗浄装置においては、前記基板の回転中心の近傍において前記洗浄液供給ノズルを前記基板の回転中心に向かって傾動させ、及び/または、前記基板の外周端の近傍において前記洗浄液供給ノズルを前記基板の外周端に向かって傾動させる傾動機構を備えてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様に係る基板洗浄方法は、基板を回転させ、前記基板の表面に、洗浄液供給ノズルから超音波振動が印加された洗浄液を吐出させ、前記洗浄液供給ノズルを、前記基板の回転中心の近傍から前記基板の外周端に向かって、前記基板の半面より狭い範囲で揺動させる。
【0015】
また、本発明の一態様に係る基板洗浄方法は、基板を回転させ、前記基板の表面に、洗浄液供給ノズルから超音波振動が印加された洗浄液を吐出させ、前記基板の回転中心を通る位置に配置したロール洗浄部材を、前記基板の表面に接触させて回転させることで、前記基板を洗浄し、前記ロール洗浄部材が前記基板を洗浄中に、前記洗浄液供給ノズルを、前記基板の半面より狭い範囲で揺動させる。
【0016】
上記基板洗浄方法においては、前記洗浄液供給ノズルから前記基板の回転中心から離れる方向に前記洗浄液を吐出させてもよい。
【0017】
上記基板洗浄方法においては、前記洗浄液は、アルカリ性水溶液、または、アニオン系の界面活性剤であってもよい。
【0018】
上記基板洗浄方法においては、前記洗浄液供給ノズルの揺動範囲から離れた位置に第2の洗浄液供給ノズルを設置し、前記基板の表面に洗浄液を吐出させてもよい。
【0019】
上記基板洗浄方法においては、前記基板の回転中心の近傍、及び/または、前記基板の外周端の近傍において、前記洗浄液供給ノズルの揺動を減速、及び/または、一時停止させてもよい。
【0020】
上記基板洗浄方法においては、前記基板の回転中心の近傍において前記洗浄液供給ノズルを前記基板の回転中心に向かって傾動させ、及び/または、前記基板の外周端の近傍において前記洗浄液供給ノズルを前記基板の外周端に向かって傾動させてもよい。
【0021】
上記基板洗浄方法においては、前記超音波振動が印加された洗浄液を吐出する前記洗浄液供給ノズルを揺動させることで、前記基板を一次洗浄し、前記一次洗浄の後、前記基板の回転中心を通る位置に配置したロール洗浄部材を、前記基板の表面に接触させて回転させることで、前記基板を二次洗浄し、前記二次洗浄の後、さらに前記超音波振動が印加された洗浄液を吐出する前記洗浄液供給ノズルを揺動させることで、前記基板を三次洗浄してもよい。
【0022】
上記基板洗浄方法においては、前記基板の回転中心を通る位置に配置したロール洗浄部材を、前記基板の表面に接触させて回転させることで、前記基板を一次洗浄し、前記一次洗浄の後、前記超音波振動が印加された洗浄液を吐出する前記洗浄液供給ノズルを揺動させることで、前記基板を二次洗浄してもよい。
【発明の効果】
【0023】
上記本発明の態様によれば、超音波洗浄による基板への負荷を軽減しつつ基板に付着した異物を効率よく除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一実施形態に係る基板処理装置の全体構成を示す平面図である。
図2】一実施形態に係る基板洗浄装置の構成を示す平面図である。
図3図2の矢視A-A図である。
図4】比較例1として、洗浄液供給ノズルの揺動を基板の回転中心であるセンター位置から開始した超音波洗浄の様子を示す平面図である。
図5】実施例として、洗浄液供給ノズルの揺動を基板の回転中心の近傍であるニアセンター位置から開始した超音波洗浄の様子を示す平面図である。
図6】比較例2として、洗浄液供給ノズルの揺動を基板の外周端の近傍のニアエッジ位置から開始した超音波洗浄の様子を示す平面図である。
図7】比較例1,2及び実施例における超音波洗浄による基板Wへのダメージ数(負荷)とパーティクル除去性能(洗浄性能)を比較したグラフである。
図8】一実施形態の変形例に係る基板洗浄装置の洗浄液供給ノズルの半径方向位置と移動速度の説明図である。
図9】一実施形態の変形例に係る基板洗浄装置の要部構成を示す正面である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。以下では、基板洗浄装置及び基板の洗浄方法の適用例として、基板を研磨する研磨部と、基板を洗浄する洗浄部と、を備える基板処理装置を例示する。
【0026】
図1は、一実施形態に係る基板処理装置1の全体構成を示す平面図である。
図1に示す基板処理装置1は、シリコンウェハ等の基板Wの表面を平坦に研磨する化学機械研磨(CMP)装置である。この基板処理装置1は、矩形箱状のハウジング2を備える。ハウジング2は、平面視で略長方形に形成されている。
【0027】
ハウジング2は、その中央に長手方向に延在する基板搬送路3を備える。基板搬送路3の長手方向の一端部には、ロード/アンロード部10が配設されている。基板搬送路3の幅方向(平面視で長手方向と直交する方向)の一方側には、研磨部20が配設され、他方側には、洗浄部30が配設されている。基板搬送路3には、基板Wを搬送する基板搬送部40が設けられている。また、基板処理装置1は、ロード/アンロード部10、研磨部20、洗浄部30、及び基板搬送部40の動作を統括的に制御する制御部50(制御装置)を備える。
【0028】
ロード/アンロード部10は、基板Wを収容するフロントロード部11を備える。フロントロード部11は、ハウジング2の長手方向の一方側の側面に複数設けられている。複数のフロントロード部11は、ハウジング2の幅方向に配列されている。フロントロード部11は、例えば、オープンカセット、SMIF(Standard Manufacturing Interface)ポッド、またはFOUP(Front Opening Unified Pod)を搭載する。SMIF、FOUPは、内部に基板Wのカセットを収納し、隔壁で覆った密閉容器であり、外部空間とは独立した環境を保つことができる。
【0029】
また、ロード/アンロード部10は、フロントロード部11から基板Wを出し入れする2台の搬送ロボット12と、各搬送ロボット12をフロントロード部11の並びに沿って走行させる走行機構13と、を備える。各搬送ロボット12は、上下に2つのハンドを備えており、基板Wの処理前、処理後で使い分けている。例えば、フロントロード部11に基板Wを戻すときは上側のハンドを使用し、フロントロード部11から処理前の基板Wを取り出すときは下側のハンドを使用する。
【0030】
研磨部20は、基板Wの研磨(平坦化)を行う複数の基板研磨装置21(21A,21B,21C,21D)を備える。複数の基板研磨装置21は、基板搬送路3の長手方向に配列されている。基板研磨装置21は、研磨面を有する研磨パッド22を回転させる研磨テーブル23と、基板Wを保持しかつ基板Wを研磨テーブル23上の研磨パッド22に押圧しながら研磨するためのトップリング24と、研磨パッド22に研磨液やドレッシング液(例えば、純水)を供給するための研磨液供給ノズル25と、研磨パッド22の研磨面のドレッシングを行うためのドレッサ26と、液体(例えば純水)と気体(例えば窒素ガス)の混合流体または液体(例えば純水)を霧状にして研磨面に噴射するアトマイザ27と、を備える。
【0031】
基板研磨装置21は、研磨液供給ノズル25から研磨液を研磨パッド22上に供給しながら、トップリング24により基板Wを研磨パッド22に押し付け、さらにトップリング24と研磨テーブル23とを相対移動させることにより、基板Wを研磨してその表面を平坦にする。ドレッサ26は、研磨パッド22に接触する先端の回転部にダイヤモンド粒子やセラミック粒子などの硬質な粒子が固定され、当該回転部を回転しつつ揺動することにより、研磨パッド22の研磨面全体を均一にドレッシングし、平坦な研磨面を形成する。アトマイザ27は、研磨パッド22の研磨面に残留する研磨屑や砥粒などを高圧の流体により洗い流すことで、研磨面の浄化と、機械的接触であるドレッサ26による研磨面の目立て作業、すなわち研磨面の再生を達成する。
【0032】
洗浄部30は、基板Wの洗浄を行う複数の基板洗浄装置31(31A,31B)と、洗浄した基板Wを乾燥させる基板乾燥装置32と、を備える。複数の基板洗浄装置31及び基板乾燥装置32は、基板搬送路3の長手方向に配列されている。基板洗浄装置31Aと基板洗浄装置31Bとの間には、第1搬送室33が設けられている。第1搬送室33には、基板搬送部40、基板洗浄装置31A、及び基板洗浄装置31Bの間で基板Wを搬送する搬送ロボット35が設けられている。また、基板洗浄装置31Bと基板乾燥装置32との間には、第2搬送室34が設けられている。第2搬送室34には、基板洗浄装置31Bと基板乾燥装置32との間で基板Wを搬送する搬送ロボット36が設けられている。
【0033】
基板洗浄装置31は、後述する洗浄モジュールを備え、基板Wを洗浄する。なお、基板洗浄装置31A及び基板洗浄装置31Bは、同一のタイプであっても、異なるタイプの洗浄モジュールであってもよい。基板乾燥装置32は、例えば、ロタゴニ乾燥(IPA(Iso-Propyl Alcohol)乾燥)を行う乾燥モジュールを備える。乾燥後は、基板乾燥装置32とロード/アンロード部10との間の隔壁に設けられたシャッタ1aが開かれ、搬送ロボット12によって基板乾燥装置32から基板Wが取り出される。
【0034】
基板搬送部40は、リフター41と、第1リニアトランスポータ42と、第2リニアトランスポータ43と、スイングトランスポータ44と、を備える。基板搬送路3には、ロード/アンロード部10側から順番に第1搬送位置TP1、第2搬送位置TP2、第3搬送位置TP3、第4搬送位置TP4、第5搬送位置TP5、第6搬送位置TP6、第7搬送位置TP7が設定されている。
【0035】
リフター41は、第1搬送位置TP1で基板Wを上下に搬送する機構である。リフター41は、第1搬送位置TP1において、ロード/アンロード部10の搬送ロボット12から基板Wを受け取る。また、リフター41は、搬送ロボット12から受け取った基板Wを第1リニアトランスポータ42に受け渡す。第1搬送位置TP1とロード/アンロード部10との間の隔壁には、シャッタ1bが設けられており、基板Wの搬送時にはシャッタ1bが開かれて搬送ロボット12からリフター41に基板Wが受け渡される。
【0036】
第1リニアトランスポータ42は、第1搬送位置TP1、第2搬送位置TP2、第3搬送位置TP3、第4搬送位置TP4の間で基板Wを搬送する機構である。第1リニアトランスポータ42は、複数の搬送ハンド45(45A,45B,45C,45D)と、各搬送ハンド45を複数の高さで水平方向に移動させるリニアガイド機構46と、を備える。搬送ハンド45Aは、リニアガイド機構46によって、第1搬送位置TP1から第4搬送位置TP4の間を移動する。この搬送ハンド45Aは、リフター41から基板Wを受け取り、それを第2リニアトランスポータ43に受け渡すためのパスハンドである。
【0037】
搬送ハンド45Bは、リニアガイド機構46によって、第1搬送位置TP1と第2搬送位置TP2との間を移動する。この搬送ハンド45Bは、第1搬送位置TP1でリフター41から基板Wを受け取り、第2搬送位置TP2で基板研磨装置21Aに基板Wを受け渡す。搬送ハンド45Bには、昇降駆動部が設けられており、基板Wを基板研磨装置21Aのトップリング24に受け渡すときは上昇し、トップリング24に基板Wを受け渡した後は下降する。なお、搬送ハンド45C及び搬送ハンド45Dにも、同様の昇降駆動部が設けられている。
【0038】
搬送ハンド45Cは、リニアガイド機構46によって、第1搬送位置TP1と第3搬送位置TP3との間を移動する。この搬送ハンド45Cは、第1搬送位置TP1でリフター41から基板Wを受け取り、第3搬送位置TP3で基板研磨装置21Bに基板Wを受け渡す。また、搬送ハンド45Cは、第2搬送位置TP2で基板研磨装置21Aのトップリング24から基板Wを受け取り、第3搬送位置TP3で基板研磨装置21Bに基板Wを受け渡すアクセスハンドとしても機能する。
【0039】
搬送ハンド45Dは、リニアガイド機構46によって、第2搬送位置TP2と第4搬送位置TP4との間を移動する。搬送ハンド45Dは、第2搬送位置TP2または第3搬送位置TP3で、基板研磨装置21Aまたは基板研磨装置21Bのトップリング24から基板Wを受け取り、第4搬送位置TP4でスイングトランスポータ44に基板Wを受け渡すためのアクセスハンドとして機能する。
【0040】
スイングトランスポータ44は、第4搬送位置TP4と第5搬送位置TP5との間を移動可能なハンドを有しており、第1リニアトランスポータ42から第2リニアトランスポータ43へ基板Wを受け渡す。また、スイングトランスポータ44は、研磨部20で研磨された基板Wを、洗浄部30に受け渡す。スイングトランスポータ44の側方には、基板Wの仮置き台47が設けられている。スイングトランスポータ44は、第4搬送位置TP4または第5搬送位置TP5で受け取った基板Wを上下反転して仮置き台47に載置する。仮置き台47に載置された基板Wは、洗浄部30の搬送ロボット35によって第1搬送室33に搬送される。
【0041】
第2リニアトランスポータ43は、第5搬送位置TP5、第6搬送位置TP6、第7搬送位置TP7の間で基板Wを搬送する機構である。第2リニアトランスポータ43は、複数の搬送ハンド48(48A,48B,48C)と、各搬送ハンド45を複数の高さで水平方向に移動させるリニアガイド機構49と、を備える。搬送ハンド48Aは、リニアガイド機構49によって、第5搬送位置TP5から第6搬送位置TP6の間を移動する。搬送ハンド45Aは、スイングトランスポータ44から基板Wを受け取り、それを基板研磨装置21Cに受け渡すアクセスハンドとして機能する。
【0042】
搬送ハンド48Bは、第6搬送位置TP6と第7搬送位置TP7との間を移動する。搬送ハンド48Bは、基板研磨装置21Cから基板Wを受け取り、それを基板研磨装置21Dに受け渡すためのアクセスハンドとして機能する。搬送ハンド48Cは、第7搬送位置TP7と第5搬送位置TP5との間を移動する。搬送ハンド48Cは、第6搬送位置TP6または第7搬送位置TP7で、基板研磨装置21Cまたは基板研磨装置21Dのトップリング24から基板Wを受け取り、第5搬送位置TP5でスイングトランスポータ44に基板Wを受け渡すためのアクセスハンドとして機能する。なお、説明は省略するが、搬送ハンド48の基板Wの受け渡し時の動作は、上述した第1リニアトランスポータ42の動作と同様である。
【0043】
図2は、一実施形態に係る基板洗浄装置31の構成を示す平面図である。図3は、図2の矢視A-A図である。
図2に示す基板洗浄装置31は、回転機構60と、洗浄液供給ノズル70と、揺動機構80と、ロール洗浄部材90と、第2の洗浄液供給ノズル100と、を備えている。
【0044】
回転機構60は、基板Wの外周端W3を保持して鉛直方向に延びる軸回りに回転する複数の保持ローラ61を備える。複数の保持ローラ61は、モータ等の電気駆動部と接続されて水平回転する。
【0045】
洗浄液供給ノズル70は、図示しない超音波振動子を備え、基板Wの表面W1に、超音波振動が印加された洗浄液を吐出する。洗浄液に印加する超音波振動の振動周波数は、900kHz~5MHzであることが好ましい。また、洗浄液供給ノズル70から吐出される洗浄液の流量は、洗浄液供給ノズル70のノズル径に依存するが、数100cc/min~数リットル/minであることが望ましい。なお、基板Wの裏面W2にも、洗浄液供給ノズル70を設けて、基板Wの裏面W2に洗浄液を吐出しても構わない。
【0046】
洗浄液としては純水、化学洗浄薬品としては塩酸、アンモニア、フッ酸、過酸化水素水、オゾン水、電解イオン水(酸性水、アルカリ性水)等の酸若しくはアルカリ性水溶液、酸化力もしくは還元性を有する薬液、又はアニオン系、アニヨン系若しくはノニオン系の界面活性剤等を用いる。特に望ましくは、pHが7以上のアルカリ性水溶液又はアニヨン系の界面活性剤である。また、洗浄液は、溶解窒素濃度8~16ppmの範囲の窒素溶解水であってもよい。
【0047】
揺動機構80は、アーム本体81と、揺動軸82と、を備えている。アーム本体81は、平面視において、長尺状を呈し、揺動軸82から該揺動軸82の中心軸線Oの径方向に略水平に延びている。アーム本体81の先端には、上述した洗浄液供給ノズル70が支持されている。
【0048】
揺動軸82は、円柱状に形成されると共に、モータ等の電気駆動部と接続されて、鉛直方向に延びる中心軸線O回りに回転する。これにより、アーム本体62が、中心軸線O回りに揺動(水平回転)する。
【0049】
洗浄液供給ノズル70は、中心軸線O回りの揺動によって、退避位置P1、センター位置P2、ニアセンター位置P3、エッジ位置P4、反対側の退避位置P5まで移動可能である。退避位置P1,P5は、基板Wの表面W1上から退避した位置である。つまり、退避位置P1,P5に位置する洗浄液供給ノズル70は、基板Wの外周端W3から該基板Wの半径方向外側に所定の距離だけ離間している。
【0050】
センター位置P2は、基板Wの回転中心Cの直上の位置である。ニアセンター位置P3は、基板Wの回転中心Cから離れた基板Wの回転中心Cの近傍の位置である。エッジ位置P4は、基板Wの外周端W3の直上の位置である。つまり、センター位置P2、ニアセンター位置P3、エッジ位置P4に位置する洗浄液供給ノズル70は、平面視で、基板Wの表面W1の少なくとも一部と重なっている。
【0051】
ロール洗浄部材90は、基板Wの回転中心Cを通る洗浄位置P6で、基板Wの表面W1に接触して回転することで、基板Wを洗浄する。ロール洗浄部材90は、円筒状のスポンジ体であって、例えばPVA(ポリビニルアルコール)製スポンジあるいはウレタン製スポンジなどから形成されている。なお、ロール洗浄部材90は、周面にブラシ毛を有するブラシ体であっても構わない。
【0052】
ロール洗浄部材90は、図示しないホルダーに軸支され、水平方向に延びる軸線L回りに回転する。ホルダーは、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などから形成されている。ホルダーは、図示しないアームに支持され、モータ等の電気駆動部と接続されている。ロール洗浄部材90は、図示しないアームによって、上述した洗浄位置P6と、基板Wの表面W1上から退避した退避位置P7との間で移動可能とされている。
【0053】
第2の洗浄液供給ノズル100は、洗浄液供給ノズル70の揺動範囲から離れた位置に設置され、基板Wの表面W1に対し斜め上方から洗浄液(超音波振動の印加無し)を吐出する。第2の洗浄液供給ノズル100から吐出する洗浄液は、例えば、ゼータ電位制御の効果を活用して洗浄効果を得るような、上述した洗浄液供給ノズル70から吐出される洗浄液よりも高価なものであることが望ましい。すなわち、洗浄液供給ノズル70は、その構造上、超音波振動子の空焚き防止の目的で洗浄液の最低流量を比較的高く設定する必要があるためである。
【0054】
揺動機構80は、洗浄液供給ノズル70による超音波洗浄中、洗浄液供給ノズル70を、基板Wの回転中心Cの近傍から基板Wの外周端W3に向かって、基板Wの半面D1より狭い範囲で揺動させる。基板Wの半面D1とは、基板Wの回転中心Cを通る上述したロール洗浄部材90の軸線Lを境界線として、基板Wの表面W1を平面視で2分した半面D1,D2のうちの片側である。
【0055】
具体的に、基板Wの半面D1において、揺動機構80は、洗浄液供給ノズル70を、ニアセンター位置P3と、ニアセンター位置P3から最も近い基板Wの外周端W3であるエッジ位置P4との間で揺動させる。ニアセンター位置P3からエッジ位置P4までの距離は、基板Wの半径よりも小さい。また、ニアセンター位置P3は、洗浄液供給ノズル70が洗浄位置P6に位置するロール洗浄部材90と干渉しない位置であり、ロール洗浄部材90との同時洗浄も可能である。
【0056】
また、洗浄液供給ノズル70は、上述したニアセンター位置P3からエッジ位置P4までの揺動範囲において、基板Wの回転中心Cから離れる方向(基板Wの外周端W3に向かう方向)に洗浄液を吐出するように傾いている(図3参照)。図3に示すように、洗浄液供給ノズル70の先端の吐出口71の中心軸線C1は、基板Wの表面W1に対する垂直軸O1(中心軸線Oと平行軸)に対し、角度θで傾いている。角度θは、0°より大きく30°以下の範囲で設定することが望ましい。
【0057】
図2に戻り、第2の洗浄液供給ノズル100は、洗浄液供給ノズル70が揺動する基板Wの半面D1において、洗浄液供給ノズル70の揺動範囲よりも基板Wの回転方向の上流側の第1供給位置P8に設置されている。これにより、第2の洗浄液供給ノズル100から吐出する洗浄液が、洗浄液供給ノズル70から吐出する洗浄液と混合され易くなり、より高い洗浄効果が得られる。
【0058】
なお、第2の洗浄液供給ノズル100は、洗浄液供給ノズル70が揺動しない基板Wの半面D2において、第2供給位置P9、第3供給位置P10、第4供給位置P11、第5供給位置P12、第6供給位置P13に設置しても構わない。但し、基板Wの回転による遠心力による洗浄液の飛散を考慮すると、第2の洗浄液供給ノズル100は、第4供給位置P11よりも第3供給位置P10の方が好ましく、また、第3供給位置P10よりも第2供給位置P9の方が好ましく、最も好ましいのは、上述した基板Wの半面D1の第1供給位置P8である。なお、第1供給位置P8と同じ基板Wの半面D1に位置する、第5供給位置P12、第6供給位置P13に、第2の洗浄液供給ノズル100を配置するのもよい。
【0059】
続いて、上記構成の基板洗浄装置31の動作(基板の洗浄方法)について説明する。
【0060】
先ず、洗浄液供給ノズル70の揺動単体による超音波洗浄について説明する。つまり、以下の説明では、ロール洗浄部材90は退避位置P7に位置するものとする。
この超音波洗浄では、回転機構60の保持ローラ61によって基板Wの外周端W3を保持すると共に、基板Wを水平回転させる。
【0061】
この状態で、洗浄液供給ノズル70は、超音波振動が印加された洗浄液を基板Wの表面W1に吐出する。また、揺動機構80は、この洗浄液供給ノズル70を、基板Wの回転中心Cの近傍のニアセンター位置P3と、基板Wの外周端W3の直上のエッジ位置P4との間で揺動させる。このように、洗浄液供給ノズル70を基板W上で揺動させることにより、基板Wの外周端W3に付着している成膜やエッチング時の残渣などの異物が、洗浄液供給ノズル70を基板Wの半径方向外側に配置するよりも、洗浄液によって基板Wの回転中心Cに向かって流れ込み難くなり、基板Wの表面W1に異物が再付着することを抑制できる。
【0062】
また、ニアセンター位置P3とエッジ位置P4との間の揺動は、基板Wの半面D1より狭い範囲で揺動となり、基板Wの半径よりも小さいストロークとなるので、回転する基板Wの一部の領域に対して重複して洗浄液が吐出され難くなる。このため、超音波洗浄の洗浄原理の一部を構成しているキャビテーションによる、基板Wへの負荷(ピット(微細な穴欠陥)の発生)を軽減できる。
【0063】
つまり、超音波振動が印加された洗浄液は、基板Wの表面W1に対しある程度の範囲(広がり)をもって吐出されるので、基板Wの回転中心Cを越えて吐出された洗浄液は、その吐出先の領域を、基板Wの1回転当たり重複して洗浄することとなり、負荷を蓄積させる。このため、上述したように、洗浄液供給ノズル70の揺動を、基板Wの回転中心Cではなく、その近傍のニアセンター位置P3から開始することにより、洗浄液の広がりを考慮した低負荷の超音波洗浄(洗浄液の吐出範囲のラップが殆ど無い超音波洗浄)が可能となる。
【0064】
図4は、比較例1として、洗浄液供給ノズル70の揺動を基板Wの回転中心Cであるセンター位置P2から開始した超音波洗浄の様子を示す平面図である。図5は、実施例として、洗浄液供給ノズル70の揺動を基板Wの回転中心Cの近傍であるニアセンター位置P3から開始した超音波洗浄の様子を示す平面図である。図6は、比較例2として、洗浄液供給ノズル70の揺動を基板Wの外周端W3の近傍のニアエッジ位置P31から開始した超音波洗浄の様子を示す平面図である。
【0065】
図7は、比較例1,2及び実施例における超音波洗浄による基板Wへのダメージ数(負荷)とパーティクル除去性能(洗浄性能)を比較したグラフである。
なお、図5及び図6においては、目安として、揺動軸82の中心軸線Oと、センター位置P2からエッジ位置P4までの揺動ストロークの半分を通る基準線L1を示している。
【0066】
ニアセンター位置P3とは、センター位置P2からエッジ位置P4までの揺動ストロークの、センター位置P2側から2/3よりも、センター位置P2寄りの位置である。具体的に、実施例のニアセンター位置P3は、基板Wの半径を150mm、洗浄液供給ノズル70のノズル直径を6mmとした場合、基板Wの回転中心Cであるセンター位置P2から75mm離れた位置に設定されている。
また、ニアエッジ位置P31とは、センター位置P2からエッジ位置P4までの揺動ストロークの、センター位置P2側から2/3よりもエッジ位置P4寄りの位置である。具体的に、比較例のニアエッジ位置P31は、基板Wの回転中心Cであるセンター位置P2から120mm離れた位置に設定されている。なお、ニアエッジ位置P31は、基板Wのエッジ位置P4から30mm離れた位置に設定されている。
【0067】
図7に示すように、基板Wへのダメージ数(負荷)で比較すると、洗浄液供給ノズル70の揺動をニアセンター位置P3若しくはニアエッジ位置P31から開始する超音波洗浄の方が好ましいことが分かる。また、この両者の超音波洗浄をパーティクル除去性能(洗浄性能)で比較すると、洗浄液供給ノズル70の揺動をニアセンター位置P3から開始する超音波洗浄の方が好ましいことが分かる。よって、洗浄液供給ノズル70の揺動をニアセンター位置P3から開始する超音波洗浄が最良である。
【0068】
このニアセンター位置P3は、基板Wの半径を150mm、洗浄液供給ノズル70のノズル直径を6mmとした場合、ダメージの観点からは、基板Wの回転中心Cであるセンター位置P2から50mm以上離れることが好ましく、一方で、センター位置P2から離れすぎるとパーティクル洗浄性能が落ちるため、基板Wの回転中心Cであるセンター位置P2から100mm以上離れないことが好ましい。つまり、ニアセンター位置P3は、センター位置P2に対し50mm以上且つ100mm以下の範囲で設定するとよい。
【0069】
このように、上述した本実施形態によれば、基板Wを回転させる回転機構60と、基板Wの表面W1に、超音波振動が印加された洗浄液を吐出する洗浄液供給ノズル70と、洗浄液供給ノズル70を、基板Wの回転中心Cの近傍から基板Wの外周端W3に向かって、基板Wの半面D1より狭い範囲で揺動させる揺動機構80と、を備える、という構成を採用することによって、超音波洗浄による基板Wへの負荷を軽減しつつ基板Wに付着した異物を効率よく除去できる。
【0070】
また、洗浄液供給ノズル70の揺動は、基板Wの半面D1より狭い範囲で行われるため、基板Wの回転中心Cを通る洗浄位置P6に配置したロール洗浄部材90を、基板Wの表面W1に接触させて回転させることで基板Wを洗浄しているときに、洗浄液供給ノズル70の揺動による超音波洗浄をすることもできる。つまり、揺動機構80が、ロール洗浄部材90が基板Wを洗浄中に、洗浄液供給ノズル70を、基板Wの半面D1より狭い範囲で揺動させることで、ロール洗浄部材90のスクラブ洗浄と、洗浄液供給ノズル70の揺動による超音波洗浄とを同時に行うことができる。
【0071】
この構成によれば、異なる方式の洗浄が一個所で行われるため、図1に示す基板洗浄装置31の台数追加を不要とするのみならず、その間の搬送ロボット35,36の追加が不要となり、その分の装置の床面積が増大や装置の大型化を防ぎ、装置の原価や装置価格が高価になることを防ぐ効果がある。また、ロール洗浄部材90の押し付けによっても十分に変形して接触できない箇所、例えば製品パターンが刻まれた凹部分や細かなシーム内部にも超音波が伝播し洗浄する効果が得られる。このような洗浄性能が高い基板洗浄装置31は、最も汚染レベルの高い一段目の洗浄チャンバーに設置することが好ましい。
【0072】
また、ロール洗浄部材90のスクラブ洗浄と、洗浄液供給ノズル70の揺動による超音波洗浄と、を分けて行ってもよい。例えば、基板Wの回転中心Cを通る位置に配置したロール洗浄部材90を、基板Wの表面W1に接触させて回転させることで、基板Wを一次洗浄し、この一次洗浄の後、超音波振動が印加された洗浄液を吐出する洗浄液供給ノズル70を揺動させることで、基板Wを二次洗浄してもよい。
【0073】
上記一次洗浄のロール洗浄部材90のスクラブ洗浄によって基板Wを粗洗浄し、その後、二次洗浄によって超音波振動を印加した洗浄液で微細な異物を洗い流すことで、スクラブ洗浄後の基板W上への逆汚染を低減し、次の洗浄段への汚染負荷を低減すると共に、全ての洗浄段を経た最終的な洗浄性能を向上させる効果がある。
【0074】
また、例えば、超音波振動が印加された洗浄液を吐出する洗浄液供給ノズル70を揺動させることで、基板Wを一次洗浄し、この一次洗浄の後、基板Wの回転中心Cを通る位置に配置したロール洗浄部材90を、基板Wの表面W1に接触させて回転させることで、基板Wを二次洗浄し、この二次洗浄の後、さらに超音波振動が印加された洗浄液を吐出する洗浄液供給ノズル70を揺動させることで、基板Wを三次洗浄してもよい。
【0075】
このようにロール洗浄部材90によるスクラブ洗浄(ここでは二次洗浄)の前に、超音波振動を印加された洗浄液を供給して超音波洗浄する工程(ここでは一次洗浄)を追加することで、スクラブ洗浄前の基板W上の汚染量を低減し、ロール洗浄部材90の汚染負荷を低減してロール洗浄部材90の寿命延長の効果が得られる。
【0076】
また、本実施形態では、図3に示すように、洗浄液供給ノズル70は、基板Wの回転中心Cから離れる方向に洗浄液を吐出するので、基板Wの外周端W3を洗浄した洗浄液が基板Wの表面W1の回転中心C側に戻ることを抑制できる。特に基板Wの外周端W3から除去された異物が基板Wの表面W1に再付着し残留して、最終的な欠陥となるおそれを抑制する効果がある。
【0077】
また、洗浄液供給ノズル70から吐出される洗浄液は、アルカリ性水溶液、または、アニオン系の界面活性剤であるとよい。洗浄液は、アルカリ性水溶液、または、アニオン系の界面活性剤であることで、洗浄液中の異物表面のゼータ電位を制御し、基板Wと異物との付着力を弱め、除去され易く且つ再付着し難くして、パーティクルの除去性能の向上に効果がある。
【0078】
また、本実施形態では、図2に示すように、洗浄液供給ノズル70の揺動範囲から離れた位置に設置され、基板Wの表面W1に洗浄液を吐出する第2の洗浄液供給ノズル100を備えている。このような第2の洗浄液供給ノズル100を備えることで、高価な洗浄液を第2の洗浄液供給ノズル100から供給し、超音波を印加する機能を備えた洗浄液供給ノズル70の洗浄液を相対的に安価な洗浄液とすることができ、超音波振動子の空焚き防止の目的で最低流量を比較的高く設定する必要があっても、ランニングコストを低く抑えることができる。
【0079】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【0080】
以上の例では、洗浄液供給ノズル70の揺動ストロークを、基板Wの回転中心C側を狭めることで、基板Wの回転中心C付近への超音波洗浄の負荷を軽減しつつ基板Wに付着した異物を効率よく除去する構成・方法について述べたが、これに限らない。
例えば、第2の洗浄液供給ノズル100の基板Wへの着水位置を、センター位置P2とすることで、洗浄液供給ノズル70からの超音波が付加された洗浄液がセンター位置P2に影響を及ぼすことを適度に減少させて、基板Wの回転中心C付近の超音波洗浄による基板Wへの負荷を軽減しつつ基板Wに付着した異物を効率よく除去できる構成・方法もある。
【0081】
また、第2の洗浄液供給ノズル100の基板Wへの着水位置をセンター位置P2とし、更に第2の洗浄液の温度を常温よりも高い温度で供給することで、基板Wの回転中心C付近での洗浄液温度を高く維持し、超音波洗浄のメカニズムである液中の気泡の発生・崩壊を抑制することで(液中の気泡の崩壊は気泡の蒸気圧と廻りの液体の圧力の差で発生するため、温度が高い状態では蒸気圧が高く、気泡の崩壊が抑制される)、洗浄液供給ノズル70からの超音波が付加された洗浄液がセンター位置P2に影響を及ぼすことを適度に減少させて、基板Wの回転中心C付近の超音波洗浄による基板Wへの負荷を軽減しつつ基板Wに付着した異物を効率よく除去できる構成・方法もある。
【0082】
また、例えば、図8及び図9に示すような変形例を採用することができる。
【0083】
図8は、一実施形態の変形例に係る基板洗浄装置31の洗浄液供給ノズルの半径方向位置と移動速度の説明図である。
図8に示す基板洗浄装置31のように、揺動機構80(図8では不図示)は、基板Wの回転中心Cの近傍、及び/または、基板Wの外周端W3において、洗浄液供給ノズル70の揺動を減速、及び/または、一時停止させてもよい。なお、図8中、符号V1は加速、符号V2は定速、符号V3は減速を示している。
【0084】
この構成によれば、ロール洗浄部材90によるスクラブ洗浄で相対速度が低いことから汚染の集中しやすい基板Wの回転中心Cの近傍や、元々汚染量が多く且つ基板Wの回転周長が長いことから単位時間当たりの洗浄時間の短い基板Wの外周端W3の近傍における洗浄時間を増加させることで、基板Wの表面W1全体を均一な洗浄レベルにできる効果がある。
【0085】
なお、基板Wの回転中心Cの近傍や、基板Wの外周端W3の近傍洗浄時間を増加させるために、洗浄液供給ノズル70の揺動を定速V2から減速V3に切り替える切替位置P32は、基準線L1とニアセンター位置P3との間の半分よりも基準線L1寄りに設定してもよい。また、洗浄液供給ノズル70の揺動を定速V2から減速V3に切り替える切替位置P34は、基準線L1とエッジ位置P4との間の半分よりも基準線L1寄りに設定してもよい。
また、減速V3(ないし一時停止)する時間T1,T3は、定速V2で揺動する時間T2よりも長く(例えば2倍以上に)設定してもよい。
【0086】
図9は、一実施形態の変形例に係る基板洗浄装置31の要部構成を示す正面図である。 図9に示す基板洗浄装置31のように、基板Wの回転中心Cの近傍において洗浄液供給ノズル70を基板Wの回転中心Cに向かって傾動させ、及び/または、基板Wの外周端W3の近傍において洗浄液供給ノズル70を基板Wの外周端W3に向かって傾動させる傾動機構110を備えてもよい。なお、傾動機構110は、図2に示す揺動軸82に支持されたモータ等の電気駆動部を備え、基板Wの半径方向外側からアーム本体81をその長手方向に延びる軸回りに回転させる構成であるとよい。これにより、洗浄液供給ノズル70に可動部が増えることによる基板Wの汚染を抑制できる。
【0087】
この構成によれば、基板Wの回転中心C側のニアセンター位置P3より手前の第1傾斜位置P35において、洗浄液供給ノズル70を更に回転中心C側に傾斜させて、基板W上の着水位置を基板Wの回転中心C側に近付けることができる。また、この構成によれば、基板Wの外周端W3側のエッジ位置P4より手前の第2傾斜位置P36において、洗浄液供給ノズル70を更に外周端W3側に傾斜させて、基板W上の着水位置を基板Wの外周端W3側に近付けることができる。これにより、洗浄液供給ノズル70の揺動範囲を短縮しつつ、洗浄液供給ノズル70から供給される洗浄液で基板Wの表面W1を充分に洗浄することが可能になる。
【0088】
なお、基板Wの外周端W3に付着した異物が基板Wの表面W1に再付着することを防止するために、第1傾斜位置P35における洗浄液供給ノズル70の傾斜角度よりも、第2傾斜位置P36における洗浄液供給ノズル70の傾斜角度の方が、その傾斜角度の絶対値を大きくしてもよい。これにより、基板Wの回転中心Cからより離れる方向に洗浄液が吐出されるので、基板Wの外周端W3を洗浄した洗浄液が基板Wの表面W1の回転中心C側に戻ることをより確実に防止できる。
【符号の説明】
【0089】
1 基板処理装置
31 基板洗浄装置
60 回転機構
70 洗浄液供給ノズル
80 揺動機構
90 ロール洗浄部材
100 第2の洗浄液供給ノズル
110 傾動機構
C 回転中心
D1 半面
W 基板
W1 表面
W3 外周端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨部で研磨された後の基板を受け取って洗浄する基板洗浄装置であって、
前記基板を保持して回転させる回転機構と、
前記基板の表面に、超音波振動が印加された洗浄液を吐出する洗浄液供給ノズルと、
前記洗浄液供給ノズルを揺動させる揺動機構と、
前記基板の回転中心を通る位置で前記基板の表面に接触して回転することで前記基板を洗浄する洗浄位置と、前記基板の表面から退避した退避位置と、の間で移動可能なロール洗浄部材と、を備え、
前記基板を回転させ、前記ロール洗浄部材を前記基板の表面に接触させて回転させることで前記基板をスクラブ洗浄し、前記ロール洗浄部材を前記基板の表面から退避させた後、前記超音波振動が印加された洗浄液を吐出する前記洗浄液供給ノズルを揺動させて前記基板を超音波洗浄する、ことを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項2】
前記ロール洗浄部材で前記基板を洗浄する前にも、前記超音波洗浄を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記揺動機構は、前記基板の半面において、前記基板の回転中心の近傍のニアセンター位置と、前記基板の外周端のエッジ位置と、の間で前記洗浄液供給ノズルを揺動させる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記超音波振動の振動周波数は、900kHz~5MHzであり、
前記洗浄液供給ノズルから吐出される洗浄液の液量は、数100cc/min~数リットル/minである、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄液供給ノズルから吐出される洗浄液は、溶解窒素濃度8~16ppmの窒素溶解水である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄液供給ノズルの揺動範囲から離れた位置から、前記基板の表面に第2の洗浄液を供給する第2の洗浄液供給ノズルを備え、
前記第2の洗浄液供給ノズルは、前記洗浄液供給ノズルから前記超音波振動が印加された洗浄液を吐出するのと同時に、前記第2の洗浄液を前記基板の表面に供給する、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
前記超音波振動が印加された洗浄液は、純水であり、
前記第2の洗浄液は、アルカリ性水溶液またはアニオン系の界面活性剤である、ことを特徴とする請求項6に記載の基板洗浄装置。
【請求項8】
前記揺動機構は、前記基板の回転中心の近傍、及び/または、前記基板の外周端において、前記洗浄液供給ノズルの揺動を減速、及び/または、一時停止させる、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項9】
研磨部で研磨された後の基板を受け取って洗浄する基板洗浄方法であって、
前記基板を保持して回転させ、
前記基板の回転中心を通る位置に配置したロール洗浄部材を、前記基板の表面に接触させて回転させることで、前記基板をスクラブ洗浄し、
前記ロール洗浄部材を前記基板の表面から退避させた後、
超音波振動が印加された洗浄液を吐出する洗浄液供給ノズルを揺動させて前記基板を超音波洗浄する、ことを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項10】
前記ロール洗浄部材で前記基板を洗浄する前にも、前記超音波洗浄を行う、ことを特徴とする請求項9に記載の基板洗浄方法。
【請求項11】
前記基板の半面において、前記基板の回転中心の近傍のニアセンター位置と、前記基板の外周端のエッジ位置と、の間で前記洗浄液供給ノズルを揺動させる、ことを特徴とする請求項9または10に記載の基板洗浄方法。
【請求項12】
前記超音波振動の振動周波数は、900kHz~5MHzであり、
前記洗浄液供給ノズルから吐出される洗浄液の液量は、数100cc/min~数リットル/minである、ことを特徴とする請求項9~11のいずれか一項に記載の基板洗浄方法。
【請求項13】
前記洗浄液供給ノズルから吐出される洗浄液は、溶解窒素濃度8~16ppmの窒素溶解水である、ことを特徴とする請求項9~12のいずれか一項に記載の基板洗浄方法。
【請求項14】
前記基板の表面に前記超音波振動が印加された洗浄液を吐出するのと同時に、前記洗浄液供給ノズルの揺動範囲から離れた位置から第2の洗浄液を前記基板の表面に供給する、ことを特徴とする請求項9~13のいずれか一項に記載の基板洗浄方法。
【請求項15】
前記超音波振動が印加された洗浄液は、純水であり、
前記第2の洗浄液は、アルカリ性水溶液またはアニオン系の界面活性剤である、ことを特徴とする請求項14に記載の基板洗浄方法。
【請求項16】
前記基板の回転中心の近傍、及び/または、前記基板の外周端において、前記洗浄液供給ノズルの揺動を減速、及び/または、一時停止させる、ことを特徴とする請求項9~15のいずれか一項に記載の基板洗浄方法。