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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160416
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】非感光性絶縁膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/08 20060101AFI20241107BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20241107BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
C08L71/08
C08G65/40
C08K5/3415
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021153373
(22)【出願日】2021-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】菅原 峻
(72)【発明者】
【氏名】安達 勲
(72)【発明者】
【氏名】澤田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 雅久
【テーマコード(参考)】
4J002
4J005
【Fターム(参考)】
4J002CH061
4J002EU026
4J002FD146
4J002GP00
4J002GQ00
4J002GQ01
4J005AA24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低比誘電率化や低誘電正接化を達成できる非感光性絶縁膜形成組成物、及び該組成物から得られる非感光性樹脂膜を提供する。
【解決手段】下記式(1):

[式(1)において、基A、基Aは、特定の芳香族複素環を表し、基A、基Aは架橋性置換基を有してもよく、基Bは、架橋性置換基を有する有機基を表し、基Bは、架橋性置換基を有さない有機基を表す。]
で表される繰り返し単位構造を有するポリマー、及び溶媒を含む非感光性絶縁膜形成組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
[式(1)において、
基Aは、
【化2】

で表される5乃至8員芳香族複素環を表し、
当該芳香族複素環は架橋性置換基を有してもよく、
基Aは、
【化3】
で表される5乃至8員芳香族複素環を表し、
当該芳香族複素環は架橋性置換基を有してもよく、
基Bは、N、S及びOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでもよく、ハロゲン原子を含んでもよい、架橋性置換基を有する炭素原子数6乃至40の有機基を表し、
基Bは、N、S及びOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでもよく、ハロゲン原子を含んでもよい、架橋性置換基を有さない炭素原子数6乃至40の有機基を表し、
、nはそれぞれ独立に0以上、1以下の数であり、
、mはそれぞれ独立に0以上、1以下の数であり、
nは1以上の数であり、
mは0以上の数であり、
10≦n+m≦500であり、
但し、基A、基Aが共に架橋性置換基を有しないとき、
m≠0であればn及びmの少なくとも一方は1であり、
m=0であればnは1である。]
で表される繰り返し単位構造を有するポリマー、及び
溶媒
を含む非感光性絶縁膜形成組成物。
【請求項2】
架橋剤をさらに含む、請求項1に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
【請求項3】
前記架橋剤がビスマレイミド化合物である、請求項2に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
【請求項4】
基Aが、
【化4】

で表される芳香族複素環を表し、当該芳香族複素環は架橋性置換基を有してもよい、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
【請求項5】
基Aが、
【化5】

【化6】

及び
【化7】

で表される芳香族複素環からなる群より選択される少なくとも一種の芳香族複素環を表し、これらの芳香族複素環はいずれも架橋性置換基を有してもよい、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
【請求項6】
基Bが、下記から選択される少なくとも1種である、
【化8】

(式中、Gは直接結合、又は下記式のいずれかを表す。
【化9】

L、Mはそれぞれ独立に水素原子、フェニル基、又はC1-3アルキル基を表す。)
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
【請求項7】
基Bが、
【化10】

で表される
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
【請求項8】
基Bが、下記から選択される少なくとも1種である、
【化11】

(式中、Gは直接結合、又は下記式のいずれかを表す。
【化12】

L、Mはそれぞれ独立に水素原子、フェニル基、又はC1-3アルキル基を表す。)
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
【請求項9】
基Bが、下記から選択される少なくとも1種である、
【化13】

(式中、G1及びG2はそれぞれ独立に、直接結合、又は下記式のいずれかを表す。
【化14】

L、Mはそれぞれ独立に水素原子、フェニル基、又はC1-3アルキル基を表す。)
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
【請求項10】
架橋性置換基がラジカル架橋性基を含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
【請求項11】
架橋性置換基が、(メタ)アクリレート基、マレイミド基、又はアリル基を含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
【請求項12】
m=0である、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
【請求項13】
前記溶媒の沸点が、230℃以下である、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
【請求項14】
前記溶媒の沸点が200℃以下である、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れか1項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物の塗布膜の硬化物であることを特徴とする非感光性樹脂膜。
【請求項16】
誘電正接が0.01未満である、請求項15に記載の非感光性樹脂膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非感光性絶縁膜形成組成物、及び該組成物から得られる非感光性樹脂膜に関する。
【背景技術】
【0002】
シアン酸エステル化合物と、ビスマレイミド化合物とを併用する熱硬化性樹脂(例えば、特許文献1)は「BTレジン」と呼ばれ、加工性、耐熱性、電気特性に優れた熱硬化性樹脂として、高機能のプリント配線基板用材料等の絶縁材料として幅広く使用されている。しかし、近年の通信機器の高速通信化に伴い、伝送周波数の高周波数化に対応するために、BTレジンの低比誘電率化や低誘電正接化が求められている。かかる課題に対して、特許文献2では、BTレジンと、ガラス転移温度が260℃以上310℃以下である環状オレフィン系樹脂と、硬化触媒とを含む熱硬化性樹脂組成物により、低比誘電率化や低誘電正接化の課題を解決できたとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭54-30440号公報
【特許文献2】特開2017-88647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、BTレジンを含む組成物の改良だけでは、電気特性の改善に限界がある。
【0005】
従って、本発明は、BTレジンに縛られることなく、低比誘電率化や低誘電正接化を達成できる非感光性絶縁膜形成組成物、及び該組成物から得られる非感光性樹脂膜を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の芳香族複素環と架橋性置換基とを含む繰り返し単位構造を有するポリマーを採用することにより、低比誘電率で、低誘電正接の硬化膜を与える非感光性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は以下を包含する。
[1] 下記式(1):
【化1】
[式(1)において、
基Aは、
【化2】

で表される5乃至8員芳香族複素環を表し、
当該芳香族複素環は架橋性置換基を有してもよく、
基Aは、
【化3】
で表される5乃至8員芳香族複素環を表し、
当該芳香族複素環は架橋性置換基を有してもよく、
基Bは、N、S及びOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでもよく、ハロゲン原子を含んでもよい、架橋性置換基を有する炭素原子数6乃至40の有機基を表し、
基Bは、N、S及びOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでもよく、ハロゲン原子を含んでもよい、架橋性置換基を有さない炭素原子数6乃至40の有機基を表し、
、nはそれぞれ独立に0以上、1以下の数であり、
、mはそれぞれ独立に0以上、1以下の数であり、
nは1以上の数であり、
mは0以上の数であり、
10≦n+m≦500であり、
但し、基A、基Aが共に架橋性置換基を有しないとき、
m≠0であればn及びmの少なくとも一方は1であり、
m=0であればnは1である。]
で表される繰り返し単位構造を有するポリマー、及び
溶媒
を含む非感光性絶縁膜形成組成物。
[2] 架橋剤をさらに含む、[1]に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
[3] 前記架橋剤がビスマレイミド化合物である、[2]に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
[4] 基Aが、
【化4】

で表される芳香族複素環を表し、当該芳香族複素環は架橋性置換基を有してもよい、
[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
[5] 基Aが、
【化5】

【化6】

及び
【化7】

で表される芳香族複素環からなる群より選択される少なくとも一種の芳香族複素環を表し、これらの芳香族複素環はいずれも架橋性置換基を有してもよい、
[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
[6] 基Bが、下記から選択される少なくとも1種である、
【化8】

(式中、Gは直接結合、又は下記式のいずれかを表す。
【化9】

L、Mはそれぞれ独立に水素原子、フェニル基、又はC1-3アルキル基を表す。)
[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
[7] 基Bが、
【化10】

で表される
[1]乃至[6]のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
[8] 基Bが、下記から選択される少なくとも1種である、
【化11】

(式中、Gは直接結合、又は下記式のいずれかを表す。
【化12】

L、Mはそれぞれ独立に水素原子、フェニル基、又はC1-3アルキル基を表す。)
[1]乃至[7]のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
[9] 基Bが、下記から選択される少なくとも1種である、
【化13】

(式中、G1及びG2はそれぞれ独立に、直接結合、又は下記式のいずれかを表す。
【化14】

L、Mはそれぞれ独立に水素原子、フェニル基、又はC1-3アルキル基を表す。)
[1]乃至[7]のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
[10] 架橋性置換基がラジカル架橋性基を含む、[1]乃至[9]のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
[11] 架橋性置換基が、(メタ)アクリレート基、マレイミド基、又はアリル基を含む、[1]乃至[10]のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
[12] m=0である、[1]乃至[11]のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
[13] 前記溶媒の沸点が、230℃以下である、[1]乃至[12]のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
[14] 前記溶媒の沸点が200℃以下である、[1]乃至[13]のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
[15] [1]乃至[14]の何れか1項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物の塗布膜の硬化物であることを特徴とする非感光性樹脂膜。
[16] 誘電正接が0.01未満である、[15]に記載の非感光性樹脂膜。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低比誘電率で、低誘電正接の硬化物を与える非感光性樹脂組成物、該組成物から得られる非感光性樹脂膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[非感光性絶縁膜形成組成物]
本発明の非感光性絶縁膜形成組成物は、
下記式(1):
【化15】
[式(1)において、
基Aは、
【化16】

で表される5乃至8員芳香族複素環を表し、
当該芳香族複素環は架橋性置換基を有してもよく、
基Aは、
【化17】
で表される5乃至8員芳香族複素環を表し、
当該芳香族複素環は架橋性置換基を有してもよく、
基Bは、N、S及びOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでもよく、ハロゲン原子を含んでもよい、架橋性置換基を有する炭素原子数6乃至40の有機基を表し、
基Bは、N、S及びOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでもよく、ハロゲン原子を含んでもよい架橋性置換基を有さない炭素原子数6乃至40の有機基を表し、
、nはそれぞれ独立に0以上、1以下の数であり、
、mはそれぞれ独立に0以上、1以下の数であり、
nは1以上の数であり、
mは0以上の数であり、
10≦n+m≦500であり、
但し、基A、基Aが共に架橋性置換基を有しないとき、
m≠0であればn及びmの少なくとも一方は1であり、
m=0であればnは1である。]
で表される繰り返し単位構造を有するポリマー、及び
溶媒
を含む。
ここで、非感光性絶縁膜形成組成物にいう「非感光性」とは、光重合開始剤を含まない組成物を意味する。
各成分を以下に順に説明する。
【0010】
<ポリマー>
本発明に係るポリマーは、上記式(1)で表される繰り返し単位構造を有する。
【0011】
基Aは、二つの結合手の間の最短の一連の共有結合中にヘテロ原子を含まない5乃至8員芳香族複素環を表し、当該芳香族複素環は架橋性置換基を有してもよい。
【0012】
好ましくは、基Aは、
【化18】

で表される芳香族複素環を表し、当該芳香族複素環は架橋性置換基を有してもよい。
【0013】
基Aは1種でも2種以上の組み合わせでもよい。
【0014】
上記式(1)において、基Aは、二つの結合手の間の最短の一連の共有結合中に窒素原子を含む5乃至8員芳香族複素環を表し、当該芳香族複素環は架橋性置換基を有してもよい。
【0015】
好ましくは、基Aは、
【化19】

【化20】

及び
【化21】

で表される芳香族複素環からなる群より選択される少なくとも一種の芳香族複素環を表し、これらの芳香族複素環はいずれも架橋性置換基を有してもよい。
【0016】
基Aは1種でも2種以上の組み合わせでもよい。
【0017】
好ましくは、架橋性置換基はラジカル架橋性基を含む。
【0018】
好ましくは、架橋性置換基は、(メタ)アクリレート基、マレイミド基、又はアリル基を含む。
【0019】
(メタ)アクリレート基を含む架橋性置換基としては、下記一般式(2):
【化22】

(式中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1~3の1価の有機基であり、mは1~10の整数である。*は、一般式(1)の基A、基A、又は基Bとの結合部位である。)で表される基が挙げられる。
【0020】
上記一般式(2)中のRは、水素原子又は炭素原子数1~3の1価の有機基であれば限定されないが、ラジカル反応の反応性の観点から、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0021】
上記一般式(2)中のR及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3の1価の有機基であれば限定されないが、水素原子であることが好ましい。
【0022】
上記一般式(2)中のmは1以上10以下の整数であり、好ましくは1以上4以下の整数である。
【0023】
炭素原子数1~3の1価の有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基等の分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル基等の脂環式アルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;エチニル基等のアルキニル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;アセチル基等のアシル基;メトキシカルボニル基等のエステル基;ホルミル基;ハロホルミル基;カルバモイル基;シアノ基;オキシラニル基、アジリジニル基、チエタニル基、トリアジニル基、オキサチオラニル基、ジヒドロアゼチル基、ジヒドロチアゾリル基等の複素環式基等が挙げられる。
【0024】
上記式(1)において、基Bは、N、S及びOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでもよく、ハロゲン原子を含んでもよい、架橋性置換基を有する炭素原子数6乃至40の有機基を表す。
【0025】
好ましくは、基Bは、下記から選択される少なくとも1種である、
【化23】

(式中、Gは直接結合、又は下記式のいずれかを表す。
【化24】

L、Mはそれぞれ独立に水素原子、フェニル基、又はC1-3アルキル基を表す。)
【0026】
好ましくは、基Bは、
【化25】

で表される。
【0027】
上記式(1)において、基Bは、N、S及びOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでもよく、ハロゲン原子を含んでもよい、架橋性置換基を有さない炭素原子数6乃至40の有機基を表す。
【0028】
好ましくは、基Bは、下記から選択される少なくとも1種である、
【化26】

(式中、Gは直接結合、又は下記式のいずれかを表す。
【化27】

L、Mはそれぞれ独立に水素原子、フェニル基、又はC1-3アルキル基を表す)。
【0029】
また、基Bは、下記から選択される少なくとも1種であることも好ましい。
【化28】

(式中、G1及びG2はそれぞれ独立に、直接結合、又は下記式のいずれかを表す。
【化29】

L、Mはそれぞれ独立に水素原子、フェニル基、又はC1-3アルキル基を表す。)
【0030】
基A、基Aが共に架橋性置換基を有しないとき、m≠0であればn及びmの少なくとも一方は1であり、m=0であればnは1である。すなわち、式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマーにおいて、基A、基Aが共に架橋性置換基を有しない場合であっても、架橋性置換基を有する基Bが存在する。
【0031】
式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマーにおいて、基Aは必ずしも存在する必要はない。その場合は、式(1)においてm=0である。
【0032】
[式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマーの調製方法]
式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマーは、公知の方法によって調製することができる。例えば、X-A-Xで表される化合物、X-A-Xで表される化合物、HO-B-OHで表される化合物、及びHO-B-OHで表される化合物を適宜選択して縮合させることにより調製することができる(式中、A、A、B、Bは上記と同義であり、Xはハロゲン原子である)。X-A-Xで表される化合物、及びX-A-Xで表される化合物、並びにHO-B-OHで表される化合物、及びHO-B-OHで表される化合物はそれぞれ1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この縮合反応においては、X-A-Xで表される化合物とX-A-Xで表される化合物の合計1モルに対して、HO-B-OHで表される化合物とHO-B-OHで表される化合物の合計を通常0.1乃至10モル、好ましくは0.1乃至2モルの割合に設定して用いることができる。
【0033】
縮合反応で用いられる触媒としては、塩基性又は酸性の触媒を用いることが出来るが、塩基性の触媒を用いることが好ましい。
塩基性の触媒としては、固体塩基触媒が挙げられ、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム八水和物、水酸化バリウム八水和物、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
酸性の触媒としては、例えば硫酸、リン酸、過塩素酸等の鉱酸類、p-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸一水和物、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸類、蟻酸、シュウ酸等のカルボン酸類を使用することができる。
触媒の使用量は、使用する触媒の種類によって異なるが、X-A-Xで表される化合物とX-A-Xで表される化合物の合計100質量部に対して、通常0.001乃至10,000質量部、好ましくは0.01乃至1,000質量部、より好ましくは0.05乃至100質量部である。
【0034】
縮合反応は無溶剤でも行われるが、通常は溶剤を用いて行われる。溶剤としては反応基質を溶解することができ、反応を阻害しないものであれば特に限定されない。例えば、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。縮合反応温度は通常40℃乃至200℃、好ましくは50℃乃至180℃である。反応時間は反応温度によって異なるが、通常5分乃至500時間、好ましくは5分乃至200時間である。
【0035】
式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマーの重量平均分子量は、通常500~100,000、好ましくは600~80,000、800~60,000、又は1,000~50,000である。
【0036】
[溶媒]
溶媒としては、式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマーに対する溶解性の点から、有機溶媒を用いることが好ましい。具体的には、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、メチルラクテート、エチルラクテート、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン、トルエン、メチルエチルケトン等が挙げられ、これらは単独又は2種以上の組合せで用いることができる。好ましくは沸点230℃以下の溶媒が望ましく、より好ましくは沸点200℃以下の溶媒が望ましい。
【0037】
上記溶媒は、非感光性絶縁膜形成組成物の所望の塗布膜厚及び粘度に応じて、式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー100質量部に対し、例えば、30質量部~1500質量部の範囲、好ましくは40質量部~1000質量部、より好ましくは50質量部~300質量部の範囲で用いることができる。
【0038】
[その他の成分]
実施の形態では、非感光性絶縁膜形成組成物は、上記式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー、溶媒以外の成分をさらに含有してもよい。その他の成分としては、例えば、式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー以外の樹脂成分、熱重合開始剤、ヒンダードフェノール化合物、架橋剤、フィラーなどが挙げられる。
【0039】
[式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー以外の樹脂成分]
実施の形態では、非感光性絶縁膜形成組成物は、前記式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー以外の樹脂成分をさらに含有してもよい。非感光性絶縁膜形成組成物に含有させることができる樹脂成分としては、例えば、ポリイミド、ポリオキサゾール、ポリオキサゾール前駆体、フェノール樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂、シロキサン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
このような樹脂を配合する場合、樹脂成分の配合量は、式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー100質量部に対して、好ましくは0.01質量部~20質量部の範囲である。
【0040】
[熱重合開始剤]
実施の形態では、熱重合を促進し硬化性を高めるために、非感光性絶縁膜形成組成物に熱重合開始剤を配合することができる。熱重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド類(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ジアシルパーオキサイド類(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド類(過酸化水素、tert-ブチルハイドパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド類(ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシケタール類(ジブチルパーオキシシクロヘキサン等)、アルキルパーエステル類(パーオキシネオデカン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシピバリン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシ-2-エチルシクロヘキサン酸-tert-アミルエステル等)、過硫酸塩類(過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、および2,2’-ジ(2-ヒドロキシエチル)アゾビスイソブチロニトリル等)が挙げられるが、これらに限定されない。また、前記熱重合開始剤としては、市販品を使用することができる。このような熱重合開始剤は、1種を単独で使用することもできるし、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0041】
熱重合開始剤の配合量は、式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー100質量部に対し、好ましくは1質量部~10質量部であり、より好ましくは1質量部~5質量部である。
【0042】
[架橋剤]
実施の形態では、架橋密度を上げて硬化性を高めるために、非感光性絶縁膜形成組成物に架橋剤を配合することができる。このような架橋剤としては、熱重合開始剤によりラジカル重合反応する多官能ビニルエーテル化合物、多官能アリルエーテル化合物、及びビスマレイミド化合物が好ましい。
多官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ビニルベンジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、4-メトキシビニルベンジルエーテル、2-メトキシビニルベンジルエーテル、1,4-ジビニルオキシメチルベンゼン、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
多官能アリルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ブチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタアリルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、アリルベンジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、4-メトキシアリルベンジルエーテル、2-メトキシアリルベンジルエーテル、1,4-ジアリルオキシメチルベンゼン、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル等の化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
ビスマレイミド化合物としては、例えば、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ケトン、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)スルホン、4,4’-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、等の化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0043】
架橋剤の配合量は、式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー100質量部に対し、好ましくは1質量部~200質量部であり、より好ましくは1質量部~100質量部である。
【0044】
[フィラー]
フィラーとしては、例えば無機フィラーが挙げられ、具体的にはシリカ、窒化アルミ二ウム、窒化ボロン、ジルコニア、アルミナなどのゾルが挙げられる。
【0045】
[ヒンダードフェノール化合物]
実施の形態では、ラジカル架橋部位の重合禁止剤として、ヒンダードフェノール化合物を任意に非感光性絶縁膜形成組成物に配合することができる。ヒンダードフェノール化合物としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-t-ブチル-ハイドロキノン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネ-ト、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4、4’-メチレンビス(2、6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオ-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサンジオール-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2-チオ-ジエチレンビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレイト、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5-トリス(3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル-4-イソプロピルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-s-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[4-(1-エチルプロピル)-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[4-トリエチルメチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル-4-フェニルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,5,6-トリメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-5-エチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-6-エチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-6-エチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-5,6-ジエチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-5-エチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの中でも、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオンが特に好ましい。
【0046】
ヒンダードフェノール化合物の配合量は、式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー100質量部に対し、0.1質量部~20質量部であることが好ましく、ラジカル架橋部位の反応性の観点から0.5質量部~10質量部であることがより好ましい。ヒンダードフェノール化合物の式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー100質量部に対する配合量が0.1質量部以上である場合、例えば溶液中での望まないラジカル架橋反応が防止され、一方、20質量部以下である場合には架橋反応に好ましい。
【0047】
本発明の非感光性絶縁膜形成組成物は、半導体装置への適用の他、多層回路の層間絶縁膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、及び液晶配向膜等の用途にも有用である。
【実施例0048】
以下、本発明の非感光性絶縁膜形成組成物の具体例を、下記実施例を用いて説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0049】
本明細書の下記合成例に示す重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、本明細書ではGPCと略称する。)による測定結果である。測定に用いた装置及び測定条件等は次のとおりである。
装置:日本分光(株)製GPCシステム
カラム:Shodex(登録商標)KF-804L及びKF-803L
カラムオーブン:40℃
流量:1mL/分
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:10mg/mL
試料注入量:20μL
標準物質:単分散ポリスチレン
検出器:示差屈折計
【0050】
<合成例1>(ポリマー(1)の合成)
2000ミリリットル容量の四口フラスコに4,6-ジクロロピリミジン50.00g(0.329mol)、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(小西化学工業株式会社)114.51g(0.366mol)、炭酸カリウム109.32g(0.839mol)、N-エチル-2-ピロリドン548.71gを入れて100℃に昇温し42時間攪拌した。30℃以下に降温した後、テトラヒドロフラン382.80gを入れて希釈し、反応液に生じた沈殿物をろ過により取り除き反応混合物を得た。得られた反応混合物を6N塩酸/N-エチル-2-ピロリドン(1:9)溶液でpH4に調整した後、メタノール3241.81gと純水648.36gに滴下してポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を濾別し、ろ物をメタノール259.35gで二回洗浄し、真空乾燥してポリマーを得た。このポリマーの分子量をGPC(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は13,968であり、収率は71.91%であった。このポリマーは、下記式(1)で表される繰り返し単位構造を有する。
【0051】
【化31】
【0052】
<合成例2>(ポリマー(2)の合成)
1000ミリリットル容量の四口フラスコに4,6-ジクロロピリミジン25.00g(0.165mol)、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(小西化学工業株式会社)27.63g(0.086mol)、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン30.28g(0.086mol)、炭酸カリウム54.66g(0.420mol)、N-エチル-2-ピロリドン194.10gを入れて100℃に昇温し、100℃で46時間攪拌した。30℃以下に降温した後、テトラヒドロフラン275.43gを入れて希釈し、反応液に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応混合物を得た。得られた反応混合物を6N塩酸/N-エチル-2-ピロリドン(1:9)溶液でpH4に調整した後、メタノール819.83gと純水1168.00gに滴下してポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を濾別し、ろ物をメタノール130.60gで二回洗浄し、真空乾燥してポリマーを得た。このポリマーの分子量をGPC(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は11,778であり、収率は88.62%であった。このポリマーは、下記式(2)で表される繰り返し単位構造を有する。
【0053】
【化32】
【0054】
<合成例3>(ポリマー(3)の合成)
1000ミリリットル容量の四口フラスコに4,6-ジクロロピリミジン20.00g(0.132mol)、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(小西化学工業株式会社)22.34g(0.069mol)、スピロビクロマン23.81g(0.069mol)、炭酸カリウム43.73g(0.336mol)、N-エチル-2-ピロリドン154.73gを入れて100℃に昇温し44時間攪拌した。30℃以下に降温した後、テトラヒドロフラン219.86gを入れて希釈し、反応液に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応混合物を得た。得られた反応混合物を6N塩酸/N-エチル-2-ピロリドン(1:9)溶液でpH4に調整した後、メタノール667.22gと純水911.75gに滴下してポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を濾別し、ろ物をメタノール104.20gで二回洗浄し、真空乾燥してポリマーを得た。このポリマーの分子量をGPC(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は14,313であり、収率は68.00%であった。このポリマーは、下記式(3)で表される繰り返し単位構造を有する。
【0055】
【化33】
【0056】
<合成例4>(ポリマー(4)の合成)
100ミリリットル容量の四口フラスコに4,6-ジクロロピリミジン3.00g(0.020mol)、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(小西化学工業株式会社)3.42g(0.011mol)、報告例(Polym.Chem.2012,3,2892)と同様に合成した4,4’-(ブタン-1,4-ジイルビス(オキシ))ジフェノール3.00g(0.011mol)、炭酸カリウム6.56g(0.050mol)、N-エチル-2-ピロリドン21.71gを入れて100℃に昇温し49時間攪拌した。30℃以下に降温した後、テトラヒドロフラン28.15gを入れて希釈し、反応液に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応混合物を得た。得られた反応混合物を6N塩酸/N-エチル-2-ピロリドン(1:9)溶液でpH4に調整した後、メタノール146.46gと純水208.11gに滴下してポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を濾別し、ろ物をメタノール11.82gで二回洗浄し、真空乾燥してポリマーを得た。このポリマーの分子量をGPC(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は27,735であり、収率は80.01%であった。このポリマーは、下記式(4)で表される繰り返し単位構造を有する。
【0057】
【化34】
【0058】
<合成例5>(ポリマー(5)の合成)
100ミリリットル容量の四口フラスコに4,6-ジクロロピリミジン3.00g(0.020mol)、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(小西化学工業株式会社)3.32g(0.010mol)、報告例(Polym.Chem.2012,3,2892)と同様に合成した4,4’-(ヘキサン-1,6-ジイルビス(オキシ))ジフェノール3.20g(0.010mol)、炭酸カリウム6.56g(0.050mol)、N-エチル-2-ピロリドン22.00gを入れて100℃に昇温し49時間攪拌した。30℃以下に降温した後、テトラヒドロフラン89.00gを入れて希釈し、反応液に生じた沈殿物をろ過により取り除き反応混合物を得た。得られた反応混合物を6N塩酸/N-エチル-2-ピロリドン(1:9)溶液でpH4に調整した後、メタノール151.14gと純水216.36gに滴下してポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を濾別し、ろ物をメタノール11.92gで二回洗浄し、真空乾燥してポリマーを得た。このポリマーの分子量をGPC(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は16,016であり、収率は71.34%であった。このポリマーは、下記式(5)で表される繰り返し単位構造を有する。
【0059】
【化35】
【0060】
<合成例6>(ポリマー(6)の合成)
100ミリリットル容量の四口フラスコに4,6-ジクロロピリミジン3.00g(0.020mol)、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(小西化学工業株式会社)3.35g(0.010mol)、報告例(Polym.Chem.2012,3,2892)と同様に合成した4,4’-(オクタン-1,8-ジイルビス(オキシ))ジフェノール3.54g(0.010mol)、炭酸カリウム6.56g(0.050mol)、N-エチル-2-ピロリドン23.11gを入れて100℃に昇温し30時間攪拌した。30℃以下に降温した後、テトラヒドロフラン89.00gを入れて希釈し、反応液に生じた沈殿物をろ過により取り除き反応混合物を得た。得られた反応混合物を6N塩酸/N-エチル-2-ピロリドン(1:9)溶液でpH4に調整した後、メタノール156.17gと純水215.31gに滴下してポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を濾別し、ろ物をメタノール12.29gで二回洗浄し、真空乾燥してポリマーを得た。このポリマーの分子量をGPC(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は28,607であり、収率は70.57%であった。このポリマーは、下記式(6)で表される繰り返し単位構造を有する。
【0061】
【化36】
【0062】
<実施例1>
合成例1で得られたポリマー6.32g、2,2-ビス-[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイ・アイ化成株式会社製)6.32gをシクロヘキサノン18.96gに溶解させ、組成物を調製した。その後、孔径5μmのポリテトラフルオロエチレン(以下、本明細書ではPTFEと略称する。)製マイクロフィルターを用いてろ過して、非感光性樹脂組成物を調製した。
【0063】
<実施例2>
合成例2で得られたポリマー15.80g、2,2-ビス-[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイ・アイ化成株式会社製)15.80gをシクロヘキサノン47.39gに溶解させ、組成物を調製した。その後、孔径5μmのPTFE製マイクロフィルターを用いてろ過して、非感光性樹脂組成物を調製した。
【0064】
<実施例3>
合成例3で得られたポリマー6.32g、2,2-ビス-[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイ・アイ化成株式会社製)6.32gをシクロヘキサノン18.96gに溶解させ、組成物を調製した。その後、孔径5μmのPTFE製マイクロフィルターを用いてろ過して、非感光性樹脂組成物を調製した。
【0065】
<実施例4>
合成例4で得られたポリマー2.53g、2,2-ビス-[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイ・アイ化成株式会社製)2.53gをシクロヘキサノン7.58gに溶解させ、組成物を調製した。その後、孔径5μmのPTFE製マイクロフィルターを用いてろ過して、非感光性樹脂組成物を調製した。
【0066】
<実施例5>
合成例5で得られたポリマー2.53g、2,2-ビス-[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイ・アイ化成株式会社製)2.53gをシクロヘキサノン7.58gに溶解させ、組成物を調製した。その後、孔径5μmのPTFE製マイクロフィルターを用いてろ過して、非感光性樹脂組成物を調製した。
【0067】
<実施例6>
合成例6で得られたポリマー2.53g、2,2-ビス-[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイ・アイ化成株式会社製)2.53gをシクロヘキサノン7.58gに溶解させ、組成物を調製した。その後、孔径5μmのPTFE製マイクロフィルターを用いてろ過して、非感光性樹脂組成物を調製した。
【0068】
<比較例1>
テトラヒドロフラン10.00gに2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン9.00gと4,4’-ビスマレイミドフェニルメタン1.00gを溶解して、さらに硬化触媒のアセチルアセトン鉄0.10gを溶解して溶液を調製した。調製した溶液を、シリコンウェハに積層させたアルミ箔上にスピンコーターを用いて塗布し、75℃、5分プリベークし、更に真空下で100℃、1時間、さらに160℃4時間ベークして厚さ10-30μm程度のBTレジン膜を形成した。
【0069】
[電気特性試験]
実施例1~6で調製した非感光性樹脂組成物を、シリコンウェハに積層させたアルミ箔上にスピンコーターを用いて塗布し、100℃、5分プリベークし、さらに窒素下で230℃、4時間ベークし、膜厚10-20μm程度の膜を形成した。その後6N塩酸中に浸漬させた。アルミが溶解し、膜が浮き上がったところを回収し、縦7.5cm、横6.3cmにカットし自立膜を得た。この自立膜を用いてスプリットシリンダー式空洞共振法にて、自立膜取得直後の、10GHzにおける比誘電率及び誘電正接を算出した。比較例1についても同様に塩酸処理・カッティングを行い、スプリットシリンダー式空洞共振法にて測定を行った。測定方法の詳細は以下の通りである。
(測定方法)
スプリットシリンダー式空洞共振法
(装置構成)
ベクトルネットワークアナライザ: N5227A PNAネットワークアナライザー(キーサイト・テクノロジーズ・インク製)
共振器: CR-710(EMラボ株式会社製)
測定周波数:約10GHz(サンプルの共振周波数に依存)
【0070】
測定結果を以下の表1に示す。
【0071】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る非感光性絶縁膜形成組成物によれば、BTレジンに対して低比誘電率及び低誘電正接を示す硬化膜が提供される。