(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160422
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物、並びにそれを用いた5,13,17-トリメチルアルカン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 19/01 20060101AFI20241107BHJP
C07C 1/32 20060101ALI20241107BHJP
C07C 9/22 20060101ALI20241107BHJP
C07C 17/263 20060101ALI20241107BHJP
C07C 17/16 20060101ALI20241107BHJP
C07C 29/36 20060101ALI20241107BHJP
C07C 31/125 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
C07C19/01 CSP
C07C1/32
C07C9/22
C07C17/263
C07C17/16
C07C29/36
C07C31/125
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075366
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】三宅 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】菅原 有真
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 武
(72)【発明者】
【氏名】金生 剛
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB05
4H006AB84
4H006AC24
4H006BA05
4H006BA48
4H006BB15
4H006BB23
4H006BM10
4H006BM72
4H006BN10
4H006EA02
4H006FE11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】5,13,17-トリメチルアルカン化合物を効率良く製造するための合成中間体である新規な化合物、および該化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される化合物を提供する。さらに、化合物(1)を一般式(2)で表される求核試薬に変換し、一般式(3)で表されるアルキル求電子試薬とのカップリング反応により、一般式(4)で表される5,13,17-トリメチルアルカン化合物を得る工程を少なくとも含む、(4)の製造方法を提供する。
(式中、X
1はハロゲン原子;M
1はLi又はMgZ
1;Z
1はハロゲン原子又は2,6,14-トリメチルオクタデシル基;X
2はハロゲン原子又はCH
3-C
6H
4-SO
2-O(TsO)基;nは14~18の整数)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
(式中、X
1はハロゲン原子を表す。)
で表される1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物。
【請求項2】
下記一般式(1):
【化2】
(式中、X
1はハロゲン原子を表す。)
で表される1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)を下記一般式(2):
【化3】
(式中、M
1はLi又はMgZ
1を表し、Z
1はハロゲン原子又は2,6,14-トリメチルオクタデシル基を表す。)
で表される2,6,14-トリメチルオクタデシル求核試薬に変換し、その後、該2,6,14-トリメチルオクタデシル求核試薬(2)と、下記一般式(3):
CH
3(CH
2)
nX
2 (3)
(式中、X
2はハロゲン原子又は
p-トルエンスルホニルオキシ基を表し、nは14~18の整数を表す。)
で表されるアルキル求電子試薬(3)とのカップリング反応により、下記一般式(4):
【化4】
(式中、nは上記で定義した通りである。)
で表される5,13,17-トリメチルアルカン化合物を得る工程
を少なくとも含む、前記5,13,17-トリメチルアルカン化合物(4)の製造方法。
【請求項3】
下記一般式(5):
【化5】
(式中、X
3はハロゲン原子を表す。)
で表される1-ハロ-3,11-ジメチルペンタデカン化合物下記を一般式(6):
【化6】
(式中、M
2はLi又はMgZ
1を表し、Z
1はハロゲン原子又は3,11-ジメチルペンタデシル基を表す。)
で表される3,11-ジメチルペンタデシル求核試薬に変換し、その後、該3,11-ジメチルペンタデシル求核試薬と、下記一般式(7):
【化7】
(式中、X
4及びX
5は互いに同じであっても異なっていてもよいハロゲン原子を表す。)
で表される1、3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物とのカップリング反応により、下記一般式(1):
【化8】
(式中、X
1はハロゲン原子を表す。)
で表される1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物を得る工程
を少なくとも含む、前記1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)の製造方法。
【請求項4】
下記式(8):
【化9】
で表される3,11-ジメチルペンタデカノールをハロゲン化して、前記1-ハロ-3,11-ジメチルペンタデカン化合物(5)を得る工程
を更に含む、請求項3に記載の、1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)の製造方法。
【請求項5】
下記一般式(9):
【化10】
(式中、X
6はハロゲン原子を表す。)
で表される2-ハロ-10-メチルテトラデカン化合物を下記一般式(10):
【化11】
(式中、M
3はLi又はMgZ
1を表し、Z
1はハロゲン原子又は1,9-ジメチルトリデシル基を表す。)
で表される1,9-ジメチルトリデシル求核試薬に変換し、その後、該1,9-ジメチルトリデシル求核試薬と、エチレン=オキシドとの付加反応により、前記3,11-ジメチルペンタデカノール(8)を得る工程
を更に含む、請求項4に記載の、1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)の製造方法。
【請求項6】
下記式(11):
【化12】
で表される10-メチル-2-テトラデカノールをハロゲン化して、前記2-ハロ-10-メチルテトラデカン化合物(9)を得る工程
を更に含む、請求項5に記載の、1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物に、並びにそれを用いた、Linepithema humileの巣仲間認識フェロモンである5,13,17-トリメチルアルカン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界の侵略的外来種ワースト100選定種であるアルゼンチンアリ(Linepithema humile)は世界各国に侵入し、スーパーコロニーを形成して在来アリを駆逐するため生態系に及ぼす影響が大きい。また、アルゼンチンアリは、農業害虫であるアブラムシ及びカイガラムシの甘露を得る代わりに、これらの害虫を天敵から守るという共生関係を形成するため、アルゼンチンアリの密度が高い地域では天敵を用いた生物学的防除の防除効果が上がらないことが多い。さらに、僅かな隙間から人家に侵入することから、衛生害虫としての側面も併せ持つ。これまでアルゼンチンアリを防除するために殺虫剤散布による防除が行われてきたが、この様な従来型の殺虫剤散布はアルゼンチンアリに対しては防除効果が低いだけでなく、環境面からも望ましくない。そのため、殺虫剤使用を極力減らした生物学的防除方法が検討されており、その中でも巣仲間認識フェロモンを用いた防除が防除方法の一つとして期待されている(下記の非特許文献1及び2)。
【0003】
アルゼンチンアリ(Linepithema humile)の巣仲間認識フェロモンとしては、15-メチルペンタトリアコンタン;17-メチルペンタトリアコンタン;17-メチルヘプタトリアコンタン;5,13,17-トリメチルトリトリアコンタン、5,13,17-トリメチルペンタトリアコンタン及び5,13,17-トリメチルヘプタトリアコンタン等の5,13,17-トリメチルアルカン化合物が知られている。その中でも、特に、5,13,17-トリメチルトリトリアコンタン、5,13,17-トリメチルペンタトリアコンタン及び5,13,17-トリメチルヘプタトリアコンタン等の5,13,17-トリメチルアルカン化合物、並びに17-メチルペンタトリアコンタン及び17-メチルヘプタトリアコンタン等の17-メチルアルカン化合物の活性が高いことが明らかとなっている(非特許文献1、2及び3)。
【0004】
上記5,13,17-トリメチルアルカン化合物の合成方法としては、下記に述べるように、全11工程0.84~3.17%の収率で製造する方法が報告されている(下記の非特許文献2)。例えば、8-ブロモオクタン酸に2当量のメチルチリウムを反応させて9-ブロモ-2-ノナノンを合成し、該得られた9-ブロモ-2-ノナノンを、酸触媒であるp-トルエンスルホン酸の存在下、エチレングリコールで9-ブロモ-2-ノナノン中のカルボニル基をアセタール化して、2-(7-ブロモヘプチル)-2-メチル-1,3-ジオキソランを合成する。続いて、該得られた2-(7-ブロモヘプチル)-2-メチル-1,3-ジオキソランをテトラヒドロフラン中でマグネシウムと反応させて[7-(2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)ヘプチル]マグネシウム=ブロミドに変換し、その後、該得られた[7-(2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)ヘプチル]マグネシウム=ブロミドを2-ヘキサノンに求核付加反応させてα-ブチル-α,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オクタノールを合成する。次に、該得られたα-ブチル-α,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オクタノールを、酸触媒であるp-トルエンスルホン酸の存在下、ベンゼン中で脱水反応に付し、続いて、酸触媒であるp-トルエンスルホン酸の存在下、水及びアセトンでアセタールの脱保護を行い、10-メチル-9-テトラデセン-2-オンを合成する。次に、別途合成した[3-(2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)プロピル]マグネシウム=クロリドを10-メチル-9-テトラデセン-2-オンに求核付加反応させて、α,2-ジメチル-α-(8-メチル-7-ドデセン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-2-ブタノールを合成する。該得られたα,2-ジメチル-α-(8-メチル-7-ドデセン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-2-ブタノールを、酸触媒であるp-トルエンスルホン酸の存在下、ベンゼン中で脱水反応に付し、続いて、酸触媒であるp-トルエンスルホン酸の存在下、水及びアセトンでアセタールの脱保護を行い、6,14-ジメチル-5,13-オクタデカジエン-2-オンを合成する。次に別途、アルキルトリフェニルホスホニウム=ブロミド化合物をn-ブチルリチウムで脱プロトン化反応させて、トリフェニルホスホニウム=アルキリド化合物を調製する。上記トリフェニルホスホニウム=アルキリド化合物と上記6,14-ジメチル-5,13-オクタデカジエン-2-オンとをウィッティヒ(Wittig)反応させて5,13,17-トリメチルアルカトリエン化合物を合成する。次に、該得られた5,13,17-トリメチルアルカトリエン化合物を、パラジウム炭素触媒の存在下、水素添加反応に付して、上記5,13,17-トリメチルアルカン化合物を製造する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Neil D Tsutsui et al.,BMC Biology,2009,7,71.
【非特許文献2】Neil D Tsutsui et al.,J.Chem.Ecol.,2010,36,751-758.
【非特許文献3】E.Sunamura et al.,Insectes Sociaux,2009,56,143-147.
【非特許文献4】Dennis H. Burns et al.,J. Am. Chem. Soc.,1997,119,2125-2133.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献2における5,13,17-トリメチルアルカン化合物の製造方法において、人体への毒性が極めて高いベンゼンを溶媒として使用していることから工業的でない。さらに、発火性のあるn-ブチルリチウム及びパラジウム炭素を用いているため、工業化が難しい。加えて、各工程の収率は総じて低く、特にグリニャール(Grignard)試薬の付加反応とウィッティヒ反応の収率が収率22~45%と極めて低い。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、5,13,17-トリメチルアルカン化合物を効率良く製造するための合成中間体である新規な化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、該新規な化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明に従う1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物が新規な化合物であり、かつ、該1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物が5,13,17-トリメチルアルカン化合物の製造において有用な中間体であることを見出した。そして、該1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物を用いることにより、アルゼンチンアリ(Linepithema humile)の巣仲間認識フェロモンである5,13,17-トリメチルアルカン化合物を短工程で、かつ効率良く製造することができる製造方法を見出し、本発明を為すに至った。また、該製造方法は、5,13,17-トリメチルアルカン化合物を製造する上で、経済的であり、また工業的に見合うことが判った。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、下記一般式(1):
【化01】
(式中、X
1はハロゲン原子を表す。)
で表される1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物が提供される。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、上記1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)を下記一般式(2):
【化02】
(式中、M
1はLi又はMgZ
1を表し、Z
1はハロゲン原子又は2,6,14-トリメチルオクタデシル基を表す。)
で表される2,6,14-トリメチルオクタデシル求核試薬に変換し、その後、該2,6,14-トリメチルオクタデシル求核試薬(2)と、下記一般式(3):
CH
3(CH
2)
nX
2 (3)
(式中、X
2はハロゲン原子又は
p-トルエンスルホニルオキシ基(CH
3-C
6H
6-SO
2-O(TsO)基)を表し、nは14~18の整数を表す。)
で表されるアルキル求電子試薬(3)とのカップリング反応により、下記一般式(4):
【化03】
(式中、nは上記で定義した通りである。)
で表される5,13,17-トリメチルアルカン化合物を得る工程
を少なくとも含む、上記5,13,17-トリメチルアルカン化合物(4)の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、
下記一般式(5):
【化04】
(式中、X
3はハロゲン原子を表す。)
で表される1-ハロ-3,11-ジメチルペンタデカン化合物を下記一般式(6):
【化05】
(式中、M
2はLi又はMgZ
1を表し、Z
1はハロゲン原子又は3,11-ジメチルペンタデシル基を表す。)
で表される3,11-ジメチルペンタデシル求核試薬に変換し、その後、該3,11-ジメチルペンタデシル求核試薬と、下記一般式(7):
【化06】
(式中、X
4及びX
5は互いに同じであっても異なっていてもよいハロゲン原子を表す。)
で表される1、3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物とのカップリング反応により、下記一般式(1):
【化07】
(式中、X
1はハロゲン原子を表す。)
で表される上記1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物を得る工程
を少なくとも含む、上記1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)の製造方法が提供される。
【0012】
本発明の第4の態様によれば、
下記式(8):
【化08】
で表される3,11-ジメチルペンタデカノールをハロゲン化して、上記1-ハロ-3,11-ジメチルペンタデカン化合物(5)を得る工程
を更に含む、上記1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)の製造方法が提供される。
【0013】
本発明の第5の態様によれば、
下記一般式(9):
【化09】
(式中、X
6はハロゲン原子を表す。)
で表される2-ハロ-10-メチルテトラデカン化合物を下記一般式(10):
【化10】
(式中、M
3はLi又はMgZ
1を表し、Z
1はハロゲン原子又は1,9-ジメチルトリデシル基を表す。)
で表される1,9-ジメチルトリデシル求核試薬に変換し、その後、該1,9-ジメチルトリデシル求核試薬と、エチレン=オキシドとの付加反応により、上記3,11-ジメチルペンタデカノール(8)を得る工程
を更に含む、上記1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)の製造方法が提供される。
【0014】
本発明の第6の態様によれば、
下記式(11):
【化11】
で表される10-メチル-2-テトラデカノールをハロゲン化して、上記2-ハロ-10-メチルテトラデカン化合物(9)を得る工程
を更に含む、上記1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高価な原料を用いることなく、5,13,17-トリメチルアルカン化合物を短工程で、かつ収率良く製造することができる。また、本発明によれば、5,13,17-トリメチルアルカン化合物を製造するにあたって有用な新規合成中間体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の項Aにおいて、新規な化合物である1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物について説明する。
【0017】
<A> 下記一般式(1)で表される1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物について
【化12】
(式中、X
1はハロゲン原子を表す。)
【0018】
ハロゲン原子X1として、具体的には、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられ、汎用性の観点から、塩素原子及び臭素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。
【0019】
1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)の具体例としては、1-クロロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン、1-ブロモ-2,6,14-トリメチルオクタデカン及び1-ヨード-2,6,14-トリメチルオクタデカン等が挙げられる。
【0020】
1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)は例えば、下記に示す化学反応式に従って製造することができる。
【0021】
【0022】
まず、1-ハロ-3-メチルヘプタン化合物(16)と6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=ハライド化合物(15)とのカップリング反応により、1,1-ジアルコキシ-9-メチルトリデカン化合物(14)を製造する。続いて、該得られた1,1-ジアルコキシ-9-メチルトリデカン化合物(14)の加水分解反応により、9-メチルトリデカナール(13)を製造する。次に、該得られた9-メチルトリデカナール(13)をメチル求核試薬(12)との付加反応に付すことにより、10-メチル-2-テトラデカノール(11)を製造する。該得られた10-メチル-2-テトラデカノール(11)をハロゲン化することにより、2-ハロ-10-メチルテトラデカン化合物(9)を製造する。続いて、該得られた2-ハロ-10-メチルテトラデカン化合物(9)を1,9-ジメチルトリデシル求核試薬(10)に変換し、その後、該得られた1,9-ジメチルトリデシル求核試薬(10)をエチレン=オキシドと反応させることにより、3,11-ジメチルペンタデカノール(8)を製造する。次に、該得られた3,11-ジメチルペンタデカノール(8)をハロゲン化することにより、1-ハロ-3,11-ジメチルペンタデカン化合物(5)を製造する。該得られた1-ハロ-3,11-ジメチルペンタデカン化合物(5)を3,11-ジメチルペンタデシル求核試薬(6)に変換し、その後、該得られた3,11-ジメチルペンタデシル求核試薬を1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物とカップリング反応させることにより、1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)を製造することができる。
【0023】
次に、以下の項Bにおいて、1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)の製造に有用な中間体である1,1-ジアルコキシ-9-メチルトリデカン化合物(14)の製造について説明する。
【0024】
<B-1> 1,1-ジアルコキシ-9-メチルトリデカン化合物(14)について
【0025】
【0026】
一般式(14)において、R1及びR2は互いに同じであっても異なっていてもよい炭素数1~15、好ましくは炭素数1~10の一価の炭化水素基、より好ましくは炭素数1~5の一価の炭化水素基、又はR1とR2が互いに結合したR1-R2として炭素数2~10、好ましくは2~5の二価炭化水素基を表す。
炭素数1~15の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基及びn-ドデシル基等の直鎖状の飽和炭化水素基;イソプロピル基、2-メチルプロピル基及び2-メチルブチル基等の分岐状の飽和炭化水素基;2-プロペニル基等の直鎖状の不飽和炭化水素基;2-メチル-2-プロペニル基等の分岐状の不飽和炭化水素基;シクロプロピル基等の環状の飽和炭化水素基等が挙げられ、これらと異性体の関係にある炭化水素基でもよい。また、これらの炭化水素基の水素原子中の一部がメチル基又はエチル基等で置換されていてもよい。
一価の炭化水素基としては、取扱いの観点から、メチル基、エチル基、n-プロピル基及びn-ブチル基が好ましい。
R1とR2が互いに結合したR1-R2として炭素数2~10の二価炭化水素基としては、エチレン基、1,3-プロピレン基及び1,4-ブチレン基等の直鎖状の飽和炭化水素基;1,2-プロピレン基、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基、1,2-ブチレン基、1,3-ブチレン基、2,3-ブチレン基及び2,3-ジメチル-2,3-ブチレン基等の分岐状の飽和炭化水素基;1-ビニルエチレン基等の直鎖状の不飽和炭化水素基;2-メチレン-1,3-プロピレン基等の分岐状の不飽和炭化水素基;1,2-シクロプロピレン基及び1,2-シクロブチレン基等の環状炭化水素基等が挙げられ、これらと異性体の関係にある炭化水素基でもよい。また、これらの炭化水素基の水素原子中の一部がメチル基又はエチル基等で置換されていてもよい。
二価の炭化水素基は、脱保護における反応性及び/又は精製の容易さ、入手の容易さを考慮すると、反応性が高く、脱保護により生成する副生物が水洗又は濃縮によって容易に除去可能な低級(好ましくは炭素数2~4)の炭化水素基が好ましい。
これらを考慮すると、二価の炭化水素基の特に好ましい例として、エチレン基、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、1,2-ブチレン基、1,3-ブチレン基及び2,3-ジメチル-2,3-ブチレン基等が挙げられる。
1,1-ジアルコキシ-9-メチルトリデカン化合物(14)の具体例としては、下記の化合物等が挙げられる:1,1-ジメトキシ-9-メチルトリデカン、1,1-ジエトキシ-9-メチルトリデカン、1,1-ジプロピルオキシ-9-メチルトリデカン、1,1-ジブチルオキシ-9-メチルトリデカン、1,1-ジペンチルオキシ-9-メチルトリデカン、1,1-ジヘキシルオキシ-9-メチルトリデカン、1,1-ジヘプチルオキシ-9-メチルトリデカン、1,1-ジオクチルオキシ-9-メチルトリデカン、1,1-ジノニルオキシ-9-メチルトリデカン、1,1-ジデシルオキシ-9-メチルトリデカン、2-(8-メチルドデシル)-1,3-ジオキソラン及び2-(8-メチルドデシル)-1,3-ジオキサン。
【0027】
<B-2> 1-ハロ-3-メチルヘプタン化合物(16)と6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=ハライド化合物(15)とのカップリング反応により、1,1-ジアルコキシ-9-メチルトリデカン化合物(14)を製造する方法
【0028】
<B-2-1> 1-ハロ-3-メチルヘプタン化合物(16)について
【0029】
【0030】
一般式(16)において、X8はハロゲン原子を表す。
ハロゲン原子X8として、具体的には、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられ、反応性の観点から、臭素原子及びヨウ素原子が好ましい。
【0031】
1-ハロ-3-メチルヘプタン化合物(16)の具体例としては、1-クロロ-3-メチルヘプタン、1-ブロモ-3-メチルヘプタン及び1-ヨード-3-メチルヘプタン等が挙げられる。
1-ハロ-3-メチルヘプタン化合物(16)として、反応性の観点から、1-ブロモ-3-メチルヘプタン及び1-ヨード-3-メチルヘプタンが好ましい。
【0032】
1-ハロ-3-メチルヘプタン化合物(16)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
1-ハロ-3-メチルヘプタン化合物(16)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
【0033】
<B-2-2> 6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=ハライド化合物(15)について
【0034】
【化16】
一般式(15)におけるR
1及びR
2は、上記一般式(14)において定義した通りである。
一般式(15)において、X
7はハロゲン原子を表す。ハロゲン原子X
7として、具体的には、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられ、取扱いの観点から塩素原子及び臭素原子が好ましく、固化防止の観点から塩素原子が特に好ましい。
【0035】
6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=ハライド化合物(15)の具体例としては、下記の化合物等が挙げられる:
6,6-ジメトキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジエトキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジプロピルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジブチルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジペンチルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジヘキシルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジヘプチルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジオクチルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジノニルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド及び6,6-ジデシルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド、並びに5-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ペンチル]マグネシウム=クロリド及び5-(1,3-ジオキサン-2-イル)ペンチル]マグネシウム=クロリド等の6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=クロリド化合物(15:X7=塩素原子);
6,6-ジメトキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジエトキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジプロピルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジブチルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジペンチルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジヘキシルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジヘプチルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジオクチルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジノニルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド及び6,6-ジデシルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、並びに[5-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ペンチル]マグネシウム=ブロミド及び5-(1,3-ジオキサン-2-イル)ペンチル]マグネシウム=ブロミド等の6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=ブロミド化合物(15:X7=臭素原子);並びに、
6,6-ジメトキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジエトキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジプロピルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジブチルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジペンチルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジヘキシルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジヘプチルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジオクチルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジノニルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド及び6,6-ジデシルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、並びに[5-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ペンチル]マグネシウム=ヨージド及び5-(1,3-ジオキサン-2-イル)ペンチル]マグネシウム=ヨージド等の6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=ヨージド化合物(15:X7=ヨウ素原子)。
【0036】
該カップリング反応における該6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=ハライド化合物(15)の使用量は、反応性の観点から、1-ハロ-3-メチルヘプタン化合物(16)1モル(mol)に対して、好ましくは0.6~2.0モル、より好ましくは0.8~1.4モルである。
【0037】
6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=ハライド化合物(15)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=ハライド化合物(15)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
【0038】
該カップリング反応には、必要に応じて溶媒を用いてもよい。該溶媒としては、一般的な溶媒、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン(MTHP)、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチル=スルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル、N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒が挙げられるが、反応性の観点から、トルエン及びキシレン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒;並びにアセトニトリルが好ましく、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、トルエン及びキシレンがより好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、反応性の観点から、1-ハロ-3-メチルヘプタン化合物(16)1モルに対して、好ましくは30~8000g、より好ましくは50~5000gである。
【0039】
6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=ハライド化合物(15)を1-ハロ-3-メチルヘプタン化合物(16)とカップリング反応させる為には、必要に応じて触媒を用いてもよい。
該触媒としては、塩化第一銅、臭化第一銅及びヨウ化第一銅等の一価のハロゲン化銅、並びに、塩化第二銅、臭化第二銅及びヨウ化第二銅等の二価のハロゲン化銅等の銅化合物;塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、ヨウ化鉄(II)、ヨウ化鉄(III)及びアセチルアセトン鉄(III)等の鉄化合物;塩化銀、硝酸銀及び酢酸銀等の銀化合物;四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)=メトキシド、チタン(IV)=エトキシド、チタン(IV)=イソプロポキシド及び酸化チタン(IV)等のチタン化合物;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム及びジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム等のパラジウム(II)化合物;並びに、塩化ニッケル、ジクロロ[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)及びジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)等のニッケル化合物が挙げられ、反応性及び/又は経済性の観点から、銅化合物が好ましく、塩化第一銅、臭化第一銅及びヨウ化第一銅等のハロゲン化第一銅がより好ましい。
該触媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該触媒は、市販されているものを用いることができる。
該触媒の使用量は、反応速度及び後処理の観点から、1-ハロ-3-メチルヘプタン化合物(16)1モルに対して、好ましくは0.0001~1.00モル、より好ましくは0.001~0.300モルである。
【0040】
該カップリング反応に触媒を用いる場合は、必要に応じて補触媒を用いてもよい。該補触媒としては、亜リン酸トリエチル等の炭素数3~9の亜リン酸トリアルキル化合物;並びに、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン及び2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(BINAP)等の炭素数18~44のアリールホスフィン化合物等が挙げられるが、反応性の観点から、亜リン酸トリアルキル化合物が好ましく、亜リン酸トリエチルが特に好ましい。
該補触媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該補触媒は、市販されているものを用いることができる。
該補触媒の使用量は、1-ハロ-3-メチルヘプタン化合物(16)1モルに対して、好ましくは0.0001~1.00モル、より好ましくは0.001~0.300モルである。
【0041】
該カップリング反応に触媒を用いる場合は、必要に応じてリチウム塩を添加してもよい。該リチウム塩としては、塩化リチウム、臭化リチウム及びヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウム;並びに、硝酸リチウム及び炭酸リチウム等が挙げられるが、反応性の観点から、塩化リチウム等のハロゲン化リチウム、及び硝酸リチウムが好ましい。
該リチウム塩は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該リチウム塩は、市販されているものを用いることができる。
該カップリング反応におけるリチウム塩の使用量は、反応性の観点から、1-ハロ-3-メチルヘプタン化合物(16)1モルに対して、好ましくは0.0001~1.00モル、より好ましくは0.001~0.300モルである。
【0042】
該カップリング反応における反応温度は、用いる6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=ハライド化合物(15)によって異なるが、反応性の観点から、好ましくは-78~100℃、より好ましくは-25~60℃である。
該カップリング反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0043】
次に、以下の項Cにおいて、9-メチルトリデカナール(13)の製造について説明する。
【0044】
<C> 1,1-ジアルコキシ-9-メチルトリデカン化合物(14)の加水分解反応により、9-メチルトリデカナール(13)を製造する方法
【0045】
【0046】
<C-1> 加水分解反応について
上記加水分解反応において、1,1-ジアルコキシ-9-メチルトリデカン化合物(14)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
【0047】
該加水分解反応は例えば、酸と水を用いて行うことができる。
上述の酸としては、塩酸及び臭化水素酸等の無機酸類;並びに、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、ギ酸、しゅう酸、ヨードトリメチルシラン及び四塩化チタン等が挙げられるが、反応性の観点から、酢酸、ギ酸及びしゅう酸が好ましい。
該酸は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該酸は、市販されているものを用いることができる。
該酸の使用量は、1,1-ジアルコキシ-9-メチルトリデカン化合物(14)1モルに対して、好ましくは0.01~10.0モルである。
上述の水の使用量は、1,1-ジアルコキシ-9-メチルトリデカン化合物(14)1モルに対して、反応性の観点から、好ましくは18~7000g、より好ましくは18~3000gである。
【0048】
該加水分解反応には、上述の酸又は水とともに、必要に応じて溶媒を更に用いてもよい。
該溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン(MTHP)、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチル=スルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル、アセトン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル及び酢酸n-ブチル等のエステル系溶媒;並びに、メタノール及びエタノール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
用いる酸により最適な溶媒は異なるが、例えば、酸として、しゅう酸を用いる場合は、反応性の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトン及びγ-ブチロラクトンが好ましい。
該溶媒の使用量は、1,1-ジアルコキシ-9-メチルトリデカン化合物(14)1モルに対して、反応性の観点から、好ましくは0~7000g、より好ましくは18~3000gである。
【0049】
該加水分解反応における反応温度は、用いる酸及び/又は溶媒により異なるが、反応性の観点から、好ましくは-15~180℃、より好ましくは5~120℃である。
該加水分解反応における反応時間は、用いる酸、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、好ましくは0.5~100時間である。
【0050】
次に、以下の項Dにおいて、10-メチル-2-テトラデカノール(11)の製造について説明する。
【0051】
<D> 9-メチルトリデカナール(13)をメチル求核試薬(12)との付加反応に付すことにより、10-メチル-2-テトラデカノール(11)を製造する方法
【0052】
【0053】
<D-1> メチル求核試薬(12)について
上記一般式(12)におけるM4は、Li、MgZ4を表し、ここで、Z4はハロゲン原子又はメチル基を表す。ハロゲン原子Z4としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
メチル求核試薬(12)の具体例としては、メチルリチウム;並びに、メチルマグネシウム=クロリド、メチルマグネシウム=ブロミド及びメチルマグネシウム=ヨージド等のメチルマグネシウム=ハライド試薬(グリニャール試薬)等が挙げられ、調製のしやすさ(汎用性)の観点から、メチルマグネシウム=ハライド試薬が好ましい。
メチル求核試薬(12)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、メチル求核試薬(12)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
【0054】
<D-2> メチル求核試薬(12)の9-メチルトリデカナール(13)への付加反応について、以下に説明する。
該付加反応において、メチル求核試薬(12)の使用量は、9-メチルトリデカナール(13)1モルに対して、経済性の観点から、好ましくは0.8~1.2モルである。
【0055】
該付加反応には、必要に応じて溶媒を用いてもよい。該溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン(MTHP)、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;並びに、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチル=スルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル、N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒等が挙げられるが、反応性の観点から、トルエン及びキシレン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒;並びにアセトニトリルが好ましく、テトラヒドロフラン及び2-メチルテトラヒドロフランがより好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、9-メチルトリデカナール(13)1モルに対して、反応性の観点から、好ましくは30~5000g、より好ましくは50~3000gである。
【0056】
該付加反応における反応温度は、用いるメチル求核試薬(12)によって異なるが、反応収率の観点から、好ましくは-5~120℃、より好ましくは20~100℃、更に好ましくは40~80℃である。
該付加反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0057】
次に、以下の項Eにおいて、2-ハロ-10-メチルテトラデカン化合物(9)の製造について説明する。
【0058】
<E> 10-メチル-2-テトラデカノール(11)のハロゲン化することにより、2-ハロ-10-メチルテトラデカン化合物(9)を製造する方法
【0059】
【0060】
<E-1>ハロゲン化反応について
該ハロゲン化反応は、例えば、p-トルエンスルホニル=ハライド化合物を用いて水酸基をトシル化し、その後に金属塩であるリチウム=ハライド化合物を用いてハロゲン化する方法、又はハロゲン化剤を用いて、水酸基を直接的にハロゲン化する方法によって行われることができる。
該ハロゲン化剤としては、塩素、臭素及びヨウ素等のハロゲン;塩化水素、臭化水素及びヨウ化水素等のハロゲン化水素化合物;メタンスルホニル=クロリド、メタンスルホニル=ブロミド及びメタンスルホニル=ヨージド等のメタンスルホニル=ハライド化合物;ベンゼンスルホニル=クロリド、ベンゼンスルホニル=ブロミド及びベンゼンスルホニル=ヨージド等のベンゼンスルホニル=ハライド化合物;p-トルエンスルホニル=クロリド、p-トルエンスルホニル=ブロミド及びp-トルエンスルホニル=ヨージド等のp-トルエンスルホニル=ハライド化合物;塩化チオニル、臭化チオニル及びヨウ化チオニル等のハロゲン化チオニル化合物;三塩化リン、五塩化リン及び三臭化リン等のハロゲン化リン化合物;四塩化炭素、四臭化炭素及び四ヨウ化炭素等の四ハロゲン化炭素化合物;トリメチルシリル=クロリド、トリメチルシリル=ブロミド、トリメチルシリル=ヨージド、トリエチルシリル=クロリド、トリエチルシリル=ブロミド、トリエチルシリル=ヨージド、トリイソプロピルシリル=クロリド、トリイソプロピルシリル=ブロミド、トリイソプロピルシリル=ヨージド、tert-ブチルジメチルシリル=クロリド、tert-ブチルジメチルシリル=ブロミド及びtert-ブチルジメチルシリル=ヨージド等のアルキルシリル=ハライド化合物;オキサリル=クロリド、オキサリル=ブロミド及びオキサリル=ヨージド等のオキサリル=ハライド化合物;並びに、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド及びN-ヨードスクシンイミド等のN-ハロスクシンイミド化合物等が挙げられるが、副反応抑制の観点から、メタンスルホニル=ハライド化合物、ベンゼンスルホニル=ハライド化合物及びp-トルエンスルホニル=ハライド化合物、並びにハロゲン化チオニル化合物が好ましく、メタンスルホニル=ハライド化合物、ベンゼンスルホニル=ハライド化合物及びハロゲン化チオニル化合物が特に好ましい。
該ハロゲン化剤は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該ハロゲン化剤は、市販されているものを用いることができる。
該ハロゲン化剤の使用量は、反応性の観点から、10-メチル-2-テトラデカノール(11)1モルに対して、好ましくは0.8~5.0モル、より好ましくは1.0~2.5モルである。
【0061】
該ハロゲン化反応には、必要に応じて、塩基を用いてもよい。
該塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウム等の水酸化物類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩類;並びに、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピペリジン、ピロリジン、ピリジン、ルチジン、4-ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)等のアミン類等を挙げることができる。
該ハロゲン化剤としてメタンスルホニル=ハライド化合物、ベンゼンスルホニル=ハライド化合物及びp-トルエンスルホニル=ハライド化合物等を用いる場合は、塩基としてアミン類を用いることが好ましく、ピリジン、ルチジン及び4-ジメチルアミノピリジン等のピリジン類を用いることがより好ましい。
該ハロゲン化剤としてハロゲン化チオニル化合物を用いる場合は、塩基としてアミン類を用いることが好ましく、トリエチルアミン等のトリアルキルアミンを用いることがより好ましい。
該塩基は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該塩基は、市販されているものを用いることができる。
該塩基の使用量は、収率及び/又は経済性の観点から、10-メチル-2-テトラデカノール(11)1モルに対して、好ましくは0~8.0モル、より好ましくは0~3.0モルである。
【0062】
該ハロゲン化反応には、必要に応じて、金属塩を添加してもよい。
該金属塩としては、塩化リチウム、臭化リチウム及びヨウ化リチウム等のリチウム塩;塩化ナトリウム、臭化ナトリウム及びヨウ化ナトリウム等のナトリウム塩;塩化カリウム、臭化カリウム及びヨウ化カリウム等のカリウム塩;塩化カルシウム、臭化カルシウム及びヨウ化カルシウム等のカルシウム塩;並びに、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム及びヨウ化マグネシウム等のマグネシウム塩が挙げられる。
例えば、トシル化した後に金属塩であるリチウム=ハライド化合物を用いてハロゲン化する場合は、塩化リチウム、臭化リチウム及びヨウ化リチウム等のリチウム塩を用いて反応を行う。
該金属塩は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該金属塩は、市販されているものを用いることができる。
該金属塩の使用量は、反応性の観点から、10-メチル-2-テトラデカノール(11)1モルに対して、好ましくは0~30.0モル、より好ましくは0~5.0モルである。
該金属塩を添加することで、反応系中のハロゲン化物濃度を高めて反応性を上げることができるが、経済性及び/又は環境を加味すると金属塩を用いずに反応することが好ましい。
【0063】
該ハロゲン化反応には、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。
該溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン(MTHP)、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチル=スルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル、アセトン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒;並びに、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル及び酢酸n-ブチル等のエステル系溶媒等が挙げられ、反応性の観点から、2-メチルテトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン、ジクロロメタン、クロロホルム、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びアセトニトリルが好ましく、安全性の観点から、2-メチルテトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン及びアセトニトリルが特に好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該ハロゲン化反応に用いる溶媒の使用量は、10-メチル-2-テトラデカノール(11)1モルに対して、好ましくは0~3000g、より好ましくは0~800gである。
該溶媒を用いることによって仕込み量が減り、生産性が低下するため、上記の溶媒を用いずに塩基を溶媒として反応を行ってもよい。
【0064】
該ハロゲン化反応における反応温度は、用いるハロゲン化剤により異なるが、反応性の観点から、好ましくは5~180℃、より好ましくは20~120℃である。
該ハロゲン化反応における反応時間は、用いるハロゲン化剤及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0065】
<E-2> 2-ハロ-10-メチルテトラデカン化合物(9)について
【0066】
【化20】
式中、X
6は、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子X
6としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0067】
2-ハロ-10-メチルテトラデカン化合物(9)の具体例としては、2-クロロ-10-メチルテトラデカン、2-ブロモ-10-メチルテトラデカン及び2-ヨード-10-メチルテトラデカン等が挙げられる。
【0068】
次に、以下の項Fにおいて、3,11-ジメチルペンタデカノール(8)の製造について説明する。
【0069】
<F> 2-ハロ-10-メチルテトラデカン化合物(9)を1,9-ジメチルトリデシル求核試薬(10)に変換し、その後、1,9-ジメチルトリデシル求核試薬(10)をエチレン=オキシドとの増炭反応に付すことにより、3,11-ジメチルペンタデカノール(8)を製造する方法
【0070】
【0071】
<F-1> 1,9-ジメチルトリデシル求核試薬(10)について
1,9-ジメチルトリデシル求核試薬(10)は、常法に従い、又は下記で説明する方法に従って調製することができる。
【0072】
<F-2> 例として、1,9-ジメチルトリデシル求核試薬(10)のうち、1,9-ジメチルトリデシルマグネシウム=ハライド試薬(10:M3=MgZ3)の場合の製造方法について、以下に説明する。1,9-ジメチルトリデシルマグネシウム=ハライド試薬(10:M3=MgZ3)は、例えば、下記の化学反応式で示される通り、上記2-ハロ-10-メチルテトラデカン化合物(9)を溶媒中、マグネシウムと反応させることにより調製することができる。
【0073】
【0074】
1,9-ジメチルトリデシルマグネシウム=ハライド試薬(10:M3=MgZ3)はグリニャール試薬である。ここで、Z3はX6と同じであり、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子X6としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0075】
2-ハロ-10-メチルテトラデカン化合物(9)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
【0076】
マグネシウムの使用量は、2-ハロ-10-メチルテトラデカン化合物(9)1モルに対して、反応完結の観点から、好ましくは1.0~2.0グラム原子である。
上記溶媒としては、一般的な溶媒、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン(MTHP)、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;並びに、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチル=スルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル、N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒等が挙げられるが、上記グリニャール試薬生成の反応速度の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒が好ましく、テトラヒドロフラン及び2-メチルテトラヒドロフランがより好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、2-ハロ-10-メチルテトラデカン化合物(9)1モルに対して、反応性の観点から、好ましくは30~5000g、より好ましくは50~3000gである。
【0077】
上記マグネシウムとの反応における反応温度は、用いる溶媒により異なるが、反応性の観点から、好ましくは30~120℃である。
上記マグネシウムとの反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0078】
<F-2> 1,9-ジメチルトリデシル求核試薬(10)をエチレン=オキシドとの増炭反応に付すことにより、3,11-ジメチルペンタデカノール(8)を製造する方法
エチレン=オキシドの使用量は、反応性の観点から、2-ハロ-10-メチルテトラデカン化合物(9)1モルに対して、好ましくは1.0~10.0モル、より好ましくは1.0~5.0モルである。
【0079】
上述の増炭反応には、必要に応じて溶媒を用いてもよい。該溶媒としては、一般的な溶媒、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン(MTHP)、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;並びに、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチル=スルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル、N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒等が挙げられるが、反応性の観点から、ジエチル=エーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒;並びに、トルエン及びキシレン等の炭化水素系溶媒が好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、2-ハロ-10-メチルテトラデカン化合物(9)1モルに対して、反応性の観点から、好ましくは20~7000g、より好ましくは50~3000gである。
【0080】
該増炭反応における反応温度は、用いる1,9-ジメチルトリデシル求核試薬(10)及び/又は溶媒により異なるが、反応性の観点から、好ましくは-40~180℃、より好ましくは-25~100℃、更に好ましくは-10~70℃である。
該増炭反応における反応時間は、用いる求核試薬、溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0081】
次に、以下の項Gにおいて、1-ハロ-3,11-ジメチルペンタデカン化合物(5)の製造について説明する。
【0082】
<G> 3,11-ジメチルペンタデカノール(8)のハロゲン化することにより、1-ハロ-3,11-ジメチルペンタデカン化合物(5)を製造する方法
【0083】
【0084】
<G-1> ハロゲン化反応について
3,11-ジメチルペンタデカノール(8)のハロゲン化反応は、前記E-1と同様である。なお、項Gにおけるハロゲン化剤、塩基、金属塩及び溶媒の使用量は、3,11-ジメチルペンタデカノール(8)1モルに対する量である。
【0085】
次に、以下の項Hにおいて、1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)の製造について説明する。
【0086】
<H> 1-ハロ-3,11-ジメチルペンタデカン化合物(5)を3,11-ジメチルペンタデシル求核試薬(6)に変換し、その後、3,11-ジメチルペンタデシル求核試薬を1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(7)とのカップリング反応させることにより、1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)を製造する方法
【0087】
【0088】
<H-1> 3,11-ジメチルペンタデシル求核試薬(6)について
3,11-ジメチルペンタデシル求核試薬(6)は、常法に従い、又は下記で説明する方法に従って調製することができる。
【0089】
例として、3,11-ジメチルペンタデシル求核試薬(6)のうち、3,11-ジメチルペンタデシルマグネシウム=ハライド試薬(6:M2=MgZ2)の場合の製造方法について、以下に説明する。3,11-ジメチルペンタデシルマグネシウム=ハライド試薬(6:M2=MgZ2)は、例えば、下記の化学反応式で示される通り、下記一般式(5)で表される上記の1-ハロ-3,11-ジメチルペンタデカン化合物を溶媒中、マグネシウムと反応させることにより調製することができる。
【0090】
【0091】
3,11-ジメチルペンタデシルマグネシウム=ハライド試薬(6:M2=MgZ2)はグリニャール試薬である。ここで、Z2はX3と同じであり、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子X6としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0092】
1-ハロ-3,11-ジメチルペンタデカン化合物(5)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、1-ハロ-3,11-ジメチルペンタデカン化合物(5)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
【0093】
マグネシウムの使用量は、1-ハロ-3,11-ジメチルペンタデカン化合物(5)1モルに対して、反応完結の観点から、好ましくは1.0~2.0グラム原子である。
上記溶媒、該溶媒の使用量、反応温度及び反応時間は、前記F-1に記載の溶媒、該溶媒の使用量、反応温度及び反応時間と同様である。
【0094】
<H-2> 1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(7)について
上記一般式(7)におけるX4及びX5は互いに同じであっても異なっていてもよいハロゲン原子を表す。ハロゲン原子X4及びX5としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
X4及びX5の組み合わせとしては、塩素原子と塩素原子、臭素原子と塩素原子、塩素原子とヨウ素原子、臭素原子と臭素原子、臭素原子とヨウ素原子、及びヨウ素原子とヨウ素原子等が挙げられる。
1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(7)の具体例としては、1,3-ジクロロ-2-メチルプロパン、1,3-ジブロモ-2-メチルプロパン、1,3-ジヨード-2-メチルプロパン、1-ブロモ-3-クロロ-2-メチルプロパン、1-クロロ-3-ヨード-2-メチルプロパン及び1-ブロモ-3-ヨード-2-メチルプロパンが挙げられる。
収率の観点から、1-ブロモ-3-クロロ-2-メチルプロパン、1-クロロ-3-ヨード-2-メチルプロパン及び1-ブロモ-3-ヨード-2-メチルプロパンが特に好ましい。
1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(7)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(7)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
【0095】
1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(7)は、例えば、2-メチル-1,3-プロパンジオールのハロゲン化で合成することができる。
【0096】
<H-3> 3,11-ジメチルペンタデシル求核試薬(6)と、1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(7)とのカップリング反応について
該カップリング反応において、3,11-ジメチルペンタデシル求核試薬(6)の使用量は、1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(7)1モルに対して、経済性の観点から、好ましくは0.8~1.4モルである。
【0097】
該カップリング反応には、必要に応じて溶媒を用いてもよい。該溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン(MTHP)、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;並びに、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチル=スルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル、アセトン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒等が挙げられ、反応性の観点から、トルエン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン及びアセトニトリルが好ましく、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピランがより好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(7)1モルに対して、反応性の観点から、好ましくは30~5000g、より好ましくは50~3000gである。
【0098】
該カップリング反応には、必要に応じて触媒を用いてもよい。該触媒としては、塩化第一銅、臭化第一銅及びヨウ化第一銅等の一価のハロゲン化銅、並びに、塩化第二銅、臭化第二銅及びヨウ化第二銅等の二価のハロゲン化銅等の銅化合物;塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、ヨウ化鉄(II)、ヨウ化鉄(III)及びアセチルアセトン鉄(III)等の鉄化合物;塩化銀、硝酸銀及び酢酸銀等の銀化合物;四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)=メトキシド、チタン(IV)=エトキシド、チタン(IV)=イソプロポキシド及び酸化チタン(IV)等のチタン化合物;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム及びジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム等のパラジウム(II)化合物;並びに、塩化ニッケル、ジクロロ[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)及びジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)等のニッケル化合物が挙げられ、反応性及び/又は経済性の観点から、銅化合物が好ましく、塩化第一銅、臭化第一銅及びヨウ化第一銅等のハロゲン化第一銅がより好ましく、ヨウ化第一銅が特に好ましい。
該触媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該触媒は、市販されているものを用いることができる。
該触媒の使用量は、1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(7)1モルに対して、反応速度及び/又は後処理の観点から、好ましくは0.0001~1.00モル、より好ましくは0.001~0.300モルである。
該カップリング反応に触媒を用いる場合は、必要に応じて補触媒を用いてもよい。該補触媒としては、亜リン酸トリエチル等の炭素数3~9の亜リン酸トリアルキル化合物;並びに、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン及び2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(BINAP)等の炭素数18~44のアリールホスフィン化合物等が挙げられるが、反応性の観点から、亜リン酸トリアルキルが好ましく、亜リン酸トリエチルが特に好ましい。
該補触媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該補触媒は、市販されているものを用いることができる。
該補触媒の使用量は、1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(7)1モルに対して、反応性の観点から、好ましくは0.0001~1.00モル、より好ましくは0.001~0.300モルである。
該カップリング反応に触媒を用いる場合は、必要に応じてリチウム塩を添加してもよい。リチウム塩としては、塩化リチウム、臭化リチウム及びヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム等が挙げられるが、反応性の観点から、塩化リチウム等のハロゲン化リチウム、硝酸リチウムが好ましい。
リチウム塩は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該リチウム塩は、市販されているものを用いることができる。
該カップリング反応におけるリチウム塩の使用量は、反応性の観点から、1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(7)1モルに対して、好ましくは0.005~0.250モルである。
【0099】
該カップリング反応における反応温度は、用いる3,11-ジメチルペンタデシル求核試薬(6)によって異なるが、反応性の観点から、好ましくは-78~70℃、より好ましくは-20~35℃である。
該カップリング反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0100】
上記一般式(7)におけるX4及びX5が互いに異なる場合は、上記触媒又は反応温度を適宜選択することにより、反応性の高いハロゲン原子の方を優先的に反応させながらカップリング反応を行うことができる。例えば、互いに異なるX4及びX5の組み合わせが塩素原子と臭素原子である又は塩素原子とヨウ素原子である1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(7)を用いれば、1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)におけるX1を塩素原子とすることができる。また、互いに異なるX4及びX5の組み合わせが臭素原子とヨウ素原子である1,3-ジハロ-2-メチルプロパン化合物(7)を用いれば、1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)におけるX1を臭素原子とすることができる。
【0101】
次に、以下の項Iにおいて、1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)を用いた5,13,17-トリメチルアルカン化合物(4)の製造方法について説明する。
<I-1> 5,13,17-トリメチルアルカン化合物(4)は、1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)を2,6,14-トリメチルオクタデシル求核試薬(2)に変換し、その後、該2,6,14-トリメチルオクタデシル求核試薬(2)とアルキル求電子試薬(3)とのカップリング反応により製造できる。
【0102】
【0103】
<I-2> 2,6,14-トリメチルオクタデシル求核試薬(2)の製造方法
2,6,14-トリメチルオクタデシル求核試薬(2)は、常法に従い、又は下記で説明する方法に従って調製することができる。
【0104】
<I-3> 例として、2,6,14-トリメチルオクタデシル求核試薬(2)のうち、2,6,14-トリメチルオクタデセニルマグネシウム=ハライド試薬(2:M1=MgZ1)の場合の製造方法について、以下に説明する。
2,6,14-トリメチルオクタデセニルマグネシウム=ハライド試薬(2:M1=MgZ1)は、例えば、下記の化学反応式で示される通り、上記1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)を溶媒中、マグネシウムと反応させることにより調製することができる。
【0105】
【0106】
2,6,14-トリメチルオクタデセニルマグネシウム=ハライド試薬(2:M1=MgZ1)はグリニャール試薬である。ここで、Z1はX1と同じであり、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子X1としては、上述の通り、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0107】
1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)は、例えば、上記の項B~Hの方法によって製造することができる。
【0108】
マグネシウムの使用量は、1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)1モルに対して、反応完結の観点から、好ましくは1.0~2.0グラム原子である。
上記溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン(MTHP)、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチル=スルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル、N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒等が挙げられ、上記グリニャール試薬生成の反応速度の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒が好ましく、テトラヒドロフラン及び2-メチルテトラヒドロフランがより好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)1モルに対して、反応性の観点から、好ましくは30~5000g、より好ましくは50~3000gである。
【0109】
上記マグネシウムとの反応における反応温度は、用いる溶媒により異なるが、反応性の観点から、好ましくは30~120℃である。
上記マグネシウムとの反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0110】
<I-4> 上記のアルキル求電子試薬(3)について
上記一般式(3)におけるX2はハロゲン原子又はp-トルエンスルホニルオキシ基(CH3-C6H6-SO2-O(TsO)基)を表し、nは14~18の整数を表す。ハロゲン原子X2としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられ、臭素原子及びヨウ素原子が特に好ましい。
アルキル求電子試薬(3)の具体例としては、下記の化合物等が挙げられる:
1-クロロペンタデカン、1-ブロモペンタデカン及び1-ヨードペンタデカン等の1-ハロペンタデカン化合物;
ペンタデシル=p-トルエンスルホネート等のペンタデシル=p-トルエンスルホネート化合物;
1-クロロヘキサデカン、1-ブロモヘキサデカン及び1-ヨードヘキサデカン等の1-ハロヘキサデカン化合物;
ヘキサデシル=p-トルエンスルホネート等のヘキサデシル=p-トルエンスルホネート化合物;
1-クロロヘプタデカン、1-ブロモヘプタデカン及び1-ヨードヘプタデカン等の1-ハロヘプタデカン化合物;
ヘプタデシル=p-トルエンスルホネート等のヘプタデシル=p-トルエンスルホネート化合物;
1-クロロオクタデカン、1-ブロモオクタデカン及び1-ヨードオクタデカン等の1-ハロオクタデカン化合物;
オクタデシル=p-トルエンスルホネート等のオクタデシル=p-トルエンスルホネート化合物;
1-クロロノナデカン、1-ブロモノナデカン及び1-ヨードノナデカン等の1-ハロノナデカン化合物;並びに、
ノナデシル=p-トルエンスルホネート等のノナデシル=p-トルエンスルホネート化合物。
アルゼンチンアリの巣仲間認識フェロモン合成の観点から、1-ハロペンタデカン化合物、1-ハロヘプタデカン化合物及び1-ハロノナデカン化合物が好ましい。
アルキル求電子試薬(3)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、アルキル求電子試薬(3)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
【0111】
アルキル求電子試薬(3)は、例えば、1-アルカノールのハロゲン化又は1-アルカノールを塩基の存在下、p-トルエンスルホニル=クロリドでトシル化することで合成することができる。
【0112】
<I-5> 2,6,14-トリメチルオクタデシル求核試薬(2)と、アルキル求電子試薬(3)とのカップリング反応について
X2がp-トルエンスルホニルオキシ基であるアルキル求電子試薬(3)は、X2がハロゲン原子であるアルキル求電子試薬(3)と同様に、上記のカップリング反応に使用することが可能である。これは、p-トルエンスルホニルオキシ基が臭素原子等のハロゲン原子と同様に良い脱離基となるからである(例えば、上記の非特許文献4の第2127頁、「Table 1」及びそれに関連する記載を参照されたい)。
【0113】
該カップリング反応において、2,6,14-トリメチルオクタデシル求核試薬(2)の使用量は、アルキル求電子試薬(3)1モルに対して、経済性の観点から、好ましくは0.8~1.4モルである。
【0114】
該カップリング反応には、必要に応じて溶媒を用いてもよい。該溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン(MTHP)、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチル=スルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル、N,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒等が挙げられ、反応性の観点から、トルエン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン及びアセトニトリルが好ましく、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピランがより好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、アルキル求電子試薬(3)1モルに対して、反応性の観点から、好ましくは30~5000g、より好ましくは50~3000gである。
【0115】
該カップリング反応には、必要に応じて触媒を用いてもよい。該触媒としては、塩化第一銅、臭化第一銅及びヨウ化第一銅等の一価のハロゲン化銅、並びに、塩化第二銅、臭化第二銅及びヨウ化第二銅等の二価のハロゲン化銅等の銅化合物;塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、ヨウ化鉄(II)、ヨウ化鉄(III)及びアセチルアセトン鉄(III)等の鉄化合物;塩化銀、硝酸銀及び酢酸銀等の銀化合物;四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)=メトキシド、チタン(IV)=エトキシド、チタン(IV)=イソプロポキシド及び酸化チタン(IV)等のチタン化合物;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム及びジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム等のパラジウム(II)化合物;並びに、塩化ニッケル、ジクロロ[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)及びジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)等のニッケル化合物が挙げられ、反応性及び/又は経済性の観点から、銅化合物が好ましく、塩化第一銅、臭化第一銅及びヨウ化第一銅等のハロゲン化第一銅がより好ましく、塩化第一銅が特に好ましい。
該触媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該触媒は、市販されているものを用いることができる。
該触媒の使用量は、アルキル求電子試薬(3)1モルに対して、反応速度及び/又は後処理の観点から、好ましくは0.0001~1.00モル、より好ましくは0.001~0.300モルである。
該カップリング反応に触媒を用いる場合は、必要に応じて補触媒を用いてもよい。該補触媒としては、亜リン酸トリエチル等の炭素数3~9の亜リン酸トリアルキル化合物;並びに、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン及び2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(BINAP)等の炭素数18~44のアリールホスフィン化合物等が挙げられるが、反応性の観点から、亜リン酸トリアルキルが好ましく、亜リン酸トリエチルが特に好ましい。
該補触媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該補触媒は、市販されているものを用いることができる。
該補触媒の使用量は、アルキル求電子試薬(3)1モルに対して、反応性の観点から、好ましくは0.0001~1.00モル、より好ましくは0.001~0.300モルである。
【0116】
該カップリング反応に触媒を用いる場合は、必要に応じてリチウム塩を添加してもよい。リチウム塩としては、塩化リチウム、臭化リチウム及びヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム等が挙げられるが、反応性の観点から、塩化リチウム等のハロゲン化リチウム、硝酸リチウムが好ましい。
リチウム塩は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該リチウム塩は、市販されているものを用いることができる。
該カップリング反応におけるリチウム塩の使用量は、反応性の観点から、アルキル求電子試薬(3)1モルに対して、好ましくは0.0001~1.00モル、より好ましくは0.001~0.300モルである。
【0117】
該カップリング反応における反応温度は、用いる2,6,14-トリメチルオクタデシル求核試薬(2)によって異なるが、反応性の観点から、好ましくは-78~100℃、より好ましくは-20~70℃、生成物である5,13,17-トリメチルアルカン化合物(4)の融点の観点から、更に好ましくは15~50℃である。
該カップリング反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0118】
5,13,17-トリメチルアルカン化合物(4)の具体例としては、5,13,17-トリメチルトリトリアコンタン(n=14)、5,13,17-トリメチルテトラトリアコンタン(n=15)、5,13,17-トリメチルペンタトリアコンタン(n=16)、5,13,17-トリメチルヘキサトリアコンタン(n=17)及び5,13,17-トリメチルヘプタントリアコンタン(n=18)が挙げられる。
【0119】
5,13,17-トリメチルアルカン化合物(4)は、上記Iの製造方法の他に、炭素数15~19の直鎖アルキル求核試薬、具体的には、ペンタデカリチウム、ヘプタデカリチウム及びノナデカリチウム等のアルキルリチウム化合物;ペンタデカマグネシウム=クロリド、ヘプタデカマグネシウム=クロリド及びノナデカマグネシウム=クロリド等のアルキルマグネシウム=クロリド化合物;ペンタデカマグネシウム=ブロミド、ヘプタデカマグネシウム=ブロミド及びノナデカマグネシウム=ブロミド等のアルキルマグネシウム=ブロミド化合物;並びに、ペンタデカマグネシウム=ヨージド、ヘプタデカマグネシウム=ヨージド及びノナデカマグネシウム=ヨージド等のアルキルマグネシウム=ヨージド化合物と1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)とのカップリング反応によっても製造することができる。
【0120】
以上のようにして、合成中間体である1-ハロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン化合物(1)から、アルゼンチンアリの巣仲間認識フェロモンである5,13,17-トリメチルアルカン化合物(4)を短工程で、かつ効率良く製造することができる。
【0121】
[実施例]
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
なお、以下において、「純度」は、特に明記しない限り、ガスクロマトグラフィー(GC)分析によって得られた面積百分率を示し、「生成比」はGC分析によって得られた面積百分率の相対比を示す。また、「収率」はGC分析によって得られた面積百分率を基に算出した。
各実施例において、反応のモニタリング及び収率の算出は、次のGC条件に従って行った。
GC条件:GC:島津製作所 キャピラリガスクロマトグラフ GC-2014,カラム:DB-5又はDB-WAX,0.25μmx0.25mmφx30m,キャリアーガス:He(1.55mL/分)、検出器:FID,カラム温度:150℃ 5℃/分昇温 230℃。
【0122】
収率は、原料及び生成物の純度(%GC)を考慮して、以下の式に従い計算した。
収率(%)={[(反応によって得られた生成物の重量×%GC)/生成物の分子量]
÷[ (反応における出発原料の重量×%GC)/出発原料の分子量]}×100
なお、THFはテトラヒドロフラン、GBLはγ-ブチロラクトン、Msはメタンスルホニル基(CH3SO2)及びEtはエチル基を表す。
【0123】
実施例1
<1,1-ジエトキシ-9-メチルトリデカン(14:R1=R2=Et)の製造>
【0124】
【0125】
室温で、反応器に、塩化第一銅(3.04g、0.031モル(mol))、亜リン酸トリエチル(P(OEt)3)(30.46g、0.18モル)、塩化リチウム(2.11g、0.050モル)、テトラヒドロフラン(271.60g)及び1-ブロモ-3-メチルヘプタン(16:X8=Br)(492.02g、2.47モル)を加えて、-5~10℃にて、6,6-ジエトキシヘキシルマグネシウム=クロリド(15:R1=R2=Et,X7=Cl)のテトラヒドロフラン溶液(1447.76g、6,6-ジエトキシヘキシルマグネシウム=クロリドとして2.72モル)を滴下した。滴下終了後、10~20℃にて1.5時間撹拌した。次に、反応液に酢酸水溶液(酢酸(339.50g)と水(1018.50g))を加えて分液し、そして、得られた有機層をそのまま減圧蒸留することにより、1,1-ジエトキシ-9-メチルトリデカン(14:R1=R2=Et)(622.23g、2.08モル、純度95.63%、b.p.=143.2~151.9℃/0.4kPa(3.0mmHg))が収率84.03%で得られた。
【0126】
上記で得られた1,1-ジエトキシ-9-メチルトリデカン(14:R1=R2=Et)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕1H-NMR(500MHz,CDCl3):0.83(3H,d,J=6.9Hz),0.88(3H,t,J=6.9Hz),1.01-1.13(2H,m),1.20(6H,t,J=6.9Hz),1.18-1.37(17H,m),1.60(2H,dt,J=9.0Hz,6.1Hz)、3.48(2H,dq,J=9.4Hz,6.9Hz)、3.63(2H,dq,J=9.4Hz,6.9Hz)、4.50(1H,t,J=5.80Hz);13C-NMR(125MHz,CDCl3):δ=14.15,15.34,19.69,23.03,24.76,27.03,29.32,29.49,29.60,29.91,32.70,33.58,36.76,37.05,60.77,102.95
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 241(M+-45),194,155,103,85,71,57,43,29
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=2954,2926,2856,1485,1376,1126,1063,1001
【0127】
実施例2
<9-メチルトリデカナール(13)の製造>
【0128】
【0129】
室温で、反応器に、実施例1で製造された1,1-ジエトキシ-9-メチルトリデカン(14:R1=R2=Et)(622.23g、2.08モル、純度95.63%)、しゅう酸二水和物((COOH)2)(785.54g、6.23モル)、テトラヒドロフラン(2077.00g)及び水(2077.00g)を加えて、60~65℃にて1.5時間撹拌した。そして、ヘキサン(610.85g)を加えて、30分間撹拌した。撹拌終了後、反応液を静置して分液し、そして、水層を除去して、有機層を得た。そして、該得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物を減圧蒸留することにより、9-メチルトリデカナール(13)(451.53g、2.03モル、純度95.51%)が、収率97.77%で得られた。
【0130】
上記で得られた9-メチルトリデカナール(13)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ=0.83(3H,d,J=6.5Hz),0.88(3H,t,J=6.9Hz),1.01-1.13(2H,m),1.16-1.39(15H,m),1.62(2H,quin-like,J=7.3Hz),2.41(2H,dt,J=1.9Hz,7.3Hz),9.76(1H,t,J=1.9Hz);13C-NMR(125MHz,CDCl3):δ=14.14,19.67,22.07,23.02,26.96,29.16,29.31,29.38,29.75,32.68,36.74,37.01,43.90,202.93
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 212(M+),197,184,155,137,124,109,95,81,69,55,43,29
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=2955,2926,2856,2713,1728,1465,1378,727
【0131】
実施例3
<10-メチル-2-テトラデカノール(11)の製造>
【0132】
【0133】
室温で、反応器に、メチルマグネシウム=クロリド(12:M4=MgCl)のテトラヒドロフラン溶液(765.82g、メチルマグネシウム=クロリドとして1.98モル)を加えて、60~65℃にて、実施例2で製造された9-メチルトリデカナール(13)(372.89g、1.68モル、純度95.51%)を滴下した。滴下終了後、60~65℃にて2時間撹拌した。次に、反応液にテトラヒドロフラン水溶液(テトラヒドロフラン(23.63g)と水(2.36g))を加え、続いて酢酸水溶液(酢酸(95.92g)と水(489.62g))を加えて分液し、そして、水層を除去して、有機層を得た。そして、該得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物を減圧蒸留することにより、10-メチル-2-テトラデカノール(11)(391.02g、1.64モル、純度95.74%、b.p.=145.1~150.0℃/0.4kPa(3.0mmHg))が収率97.74%で得られた。
【0134】
上記で得られた10-メチル-2-テトラデカノール(11)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ=0.83(3H,d,J=6.5Hz),0.88(3H,t,J=6.9Hz),1.02-1.13(2H,m),1.18(3H,d,J=6.5Hz),1.20-1.32(19H,m),1.56(1H,br.s),3.78(1H,sext-like,J=6.1Hz);13C-NMR(125MHz,CDCl3):δ=14.15,19.69,23.03,23.44,25.77,27.04,29.32,29.65,29.93,32.70,36.76,37.05,39.35,68.17
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 227(M+-1),213,182,168,153,140,125,111,97,83,69,57,45,29
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=3350,2958,2926,2855,1465,1376,1119,940,725
【0135】
実施例4
<2-クロロ-10-メチルテトラデカン(9:X6=Cl)の製造>
【0136】
【0137】
室温で、反応器に、実施例3で製造された10-メチル-2-テトラデカノール(11)(391.02g、1.64モル、純度95.74%)、ピリジン(194.47g、2.46モル)、GBL(245.85g)を加えて、40℃にて11分間撹拌した。
続いて、40~60℃にて、メタンスルホニル=クロリド(CH3SO2Cl)(225.30g、1.67モル)を滴下した。滴下終了後、60~65℃に昇温し、そして、9時間撹拌した。撹拌終了後、水(409.75g)とヘキサン(245.85g)を加えて分液し、そして、水層を除去して、有機層を得た。そして、該得られた有機層を酢酸水溶液(酢酸(18.63g)と水(232.81g))で洗浄し、その後、炭酸水素ナトリウム水溶液(炭酸水素ナトリウム(9.31g)と水(232.81g))で洗浄し、そして、得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物を減圧蒸留することにより、2-クロロ-10-メチルテトラデカン(9:X6=Cl)(359.37g、1.30モル、純度89.52%、b.p.=118.8~120.0℃/0.4kPa(3.0mmHg))が収率79.54%で得られた。
【0138】
上記で得られた2-クロロ-10-メチルテトラデカン(9:X6=Cl)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ=0.84(3H,d,J=6.5Hz),0.89(3H,t-like,J=6.9Hz),1.04-1.14(2H,m),1.18-1.32(17H,m),1.50(3H,d,J=6.5Hz),1.63-1.76(2H,m),4.02(1H,tq,J=6.5Hz,6.5Hz);13C-NMR(125MHz,CDCl3):δ=14.16,19.70,23.04,25.34,26.68,27.03,29.14,29.33,29.54,29.91,32.71,36.77,37.05,40.38,58.93
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 231(M+-15),210,188,153,139,111,97,83,69,55,41,29
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=2955,2926,2856,1465,1378,911,726,675,616
【0139】
実施例5
<3,11-ジメチルペンタデカノール(8)の製造>
【0140】
【0141】
室温で、反応器に、マグネシウム(25.33g、1.04モル)及びテトラヒドロフラン(297.84g)を加えて、60~65℃で14分間撹拌した。撹拌終了後、該反応器に、実施例4で製造された2-クロロ-10-メチルテトラデカン(9:X6=Cl)(273.77g、0.99モル、純度89.52%)を60~75℃にて滴下した。滴下終了後、75~80℃にて2.5時間撹拌することにより、1,9-ジメチルトリデシルマグネシウム=クロリド(10:M3=MgCl)を調製した。
続いて、上記反応器に、0~10℃で塩化第一銅(0.21g、0.002モル)を加えた後、エチレン=オキシド(54.67g、1.24モル)を0~30℃で滴下した。滴下終了後、反応混合物を0~10℃において2時間撹拌した。撹拌終了後、反応液に酢酸水溶液(酢酸(124.10g)と水(372.30g))、ヘキサン(88.25g)を加えて分液し、そして、水層を除去して、有機層を得た。そして、該得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物を減圧蒸留することにより、3,11-ジメチルペンタデカノール(8)(213.50g、0.74モル、純度88.76%、b.p.=135.0~142.0℃/0.4kPa(3.0mmHg))が収率74.43%で得られた。
【0142】
上記で得られた3,11-ジメチルペンタデカノール(8)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ=0.83(3H,d,J=6.9Hz),0.85-0.91(6H,m),1.03-1.15(3H,m),1.16-1.38(22H,m),3.62-3.73(2H,m);13C-NMR(125MHz,CDCl3):δ=14.15,19.62,19.69,23.03,26.95,27.07,29.32,29.47,29.73,29.94,30.00,32.71,36.76,37.07,37.13,39.96,61.22
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 238(M+-18),224,210,196,182,168,153,125,111,97,83,69,55,41
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=3334,2956,2925,2855,1485,1377,1058,724
【0143】
実施例6
<1-クロロ-3,11-ジメチルペンタデカン(5:X3=Cl)の製造>
【0144】
【0145】
室温で、反応器に、実施例5で製造された3,11-ジメチルペンタデカノール(8)(65.00g、0.23モル、純度88.76%)、ピリジン(26.70g、0.34モル)及びGBL(33.75g)を加えて、40℃にて26分間撹拌した。
続いて、40~60℃にて、メタンスルホニル=クロリド(CH3SO2Cl)(30.93g、0.27モル)を滴下した。滴下終了後、60~65℃に昇温し、そして、18時間撹拌した。撹拌終了後、水(56.25g)とヘキサン(33.75g)を加えて分液し、そして、水層を除去して、有機層を得た。そして、該得られた有機層を酢酸水溶液(酢酸(2.37g)と水(29.61g))で洗浄し、その後、炭酸水素ナトリウム水溶液(炭酸水素ナトリウム(1.18g)と水(29.61g))で洗浄し、そして、得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物を減圧蒸留することにより、1-クロロ-3,11-ジメチルペンタデカン(5:X3=Cl)(54.64g、0.18モル、純度90.06%、b.p.=125.1~138.0℃/0.4kPa(3.0mmHg))が収率79.56%で得られた。
【0146】
上記で得られた1-クロロ-3,11-ジメチルペンタデカン(5:X3=Cl)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ=0.84(3H,d,J=6.5Hz),0.86-0.91(6H,m),1.12-1.17(3H,m),1.17-1.40(19H,m)1.53-1.62(1H,m),1.75-1.83(1H,m),3.50-3.62(1H,m),4.03(1H,dt,J=6.5Hz,13.2Hz);13C-NMR(125MHz,CDCl3):δ=14.17,19.08,19.71,23.05,26.83,27.08,29.34,29.70,29.87,30.00,30.37,32.72,36.60,36.78,37.08,39.78,43.37
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 274(M+),259,245,231,217,203,189,175,161,147,133,119,99,85,71,57,43,29
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=2957,2925,2855,1465,1378,1288,728,660
【0147】
実施例7
<1-クロロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン(1:X1=Cl)の製造>
【0148】
【0149】
室温で、反応器に、マグネシウム(4.22g、0.17グラム原子)及びテトラヒドロフラン(49.62g)を加えて、60~65℃にて22分間撹拌した。次に、該反応器に、実施例6で製造された1-クロロ-3,11-ジメチルペンタデカン(5:X3=Cl)(50.49g、0.17モル、純度90.06%)を60~75℃にて滴下した。滴下終了後、75~80℃にて2時間撹拌することにより、3,11-ジメチルペンタデシルマグネシウム=クロリド(6:M2=MgCl)を調製した。
続いて、別の反応器に、ヨウ化第一銅(0.31g、0.0017モル)、亜リン酸トリエチル(0.66g、0.0040モル)、テトラヒドロフラン(49.62g)及び1-ブロモ-3-クロロ-2-メチルプロパン(7:X4=Br、X5=Cl)(28.36g、0.17モル)を加えて、5~15℃にて、上記調製した3,11-ジメチルペンタデシルマグネシウム=クロリド(6:M2=MgCl)を滴下した。滴下終了後、10~20℃にて2時間撹拌した。次に、反応液に塩化アンモニウム水溶液(塩化アンモニウム(1.65g)と水(45.57g))、続いて20質量%塩酸(1.58g)、最後に25質量%水酸化ナトリウム水溶液(0.84g)を加えて分液し、そして、得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物を減圧蒸留することにより、1-クロロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン(1:X1=Cl)(48.56g、0.14モル、純度92.17%、b.p.=144.4~160.0℃/0.4kPa(3.0mmHg))が収率81.74%で得られた。
【0150】
上記で得られた1-クロロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン(1:X1=Cl)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ=0.82-0.86(6H,m),0.89(3H,t-like,J=6.9Hz),1.00(3H,dd,J=6.5Hz,1.2Hz),1.04-1.13(4H,m),1.16-1.47(24H,m),1.81(1H,oct-like,J=6.5Hz),3.38-3.43(1H,m),3.48(1H,qd,J=5.4Hz,1.9Hz);13C-NMR(125MHz,CDCl3):δ=14.17,17.75,17.82,19.64,19.67,19.71,23.05,24.24,24.26,27.08,27.09,29.34,29.77,30.02,30.04,32.67,32.68,32.73,34.27,34.29,35.53,36.78,37.02,37.08,37.10,37.12,51.28,51.32
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 301(M+-29)273,211,153,127,111,85,57,41
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=2956,2925,2854,1463,1378,1261,730,688
【0151】
実施例8
<5,13,17-トリメチルペンタトリアコンタン(4:n=16)の製造>
【0152】
【0153】
室温で、反応器に、マグネシウム(3.31g、0.14グラム原子)及びテトラヒドロフラン(86.50g)を加えて、60~65℃にて25分間撹拌した。次に、該反応器に、実施例7で製造された1-クロロ-2,6,14-トリメチルオクタデカン(1:X1=Cl)(46.64g、0.13モル、純度92.17%))を60~75℃にて滴下した。滴下終了後、75~80℃にて4時間撹拌することにより、2,6,14-トリメチルオクタデシルマグネシウム=クロリド(2:M1=MgCl)を調製した。
続いて、別の反応器に、塩化第一銅(0.15g、0.0015モル)、亜リン酸トリエチル(1.46g、0.0088モル)、塩化リチウム(0.10g、0.0024モル)、テトラヒドロフラン(100.00g)及び1-ブロモヘプタデカン(3:n=16、X2=Br)(41.49g、0.13モル)を加えて、15~25℃にて、上記調製した2,6,14-トリメチルオクタデシルマグネシウム=クロリド(2:M1=MgCl)を滴下した。滴下終了後、20~30℃にて2時間撹拌した。次に、反応液に酢酸水溶液(酢酸(1.30g)と水(35.79g))、20質量%塩酸(2.72g)、及び25質量%水酸化ナトリウム水溶液(2.72g)を加えて分液し、そして、得られた有機層を減圧下で濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン100%)により精製することにより、5,13,17-トリメチルペンタトリアコンタン(4:n=16)(63.05g、0.11モル、純度92.24%)が収率83.68%で得られた。
【0154】
上記で得られた5,13,17-トリメチルペンタトリアコンタン(4:n=16)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕1H-NMR(500MHz,CDCl3):δ=0.84(9H,d,J=6.9Hz),0.86-0.92(6H,m),1.01-1.14(6H,m),1.16-1.34(57H,m);13C-NMR(125MHz,CDCl3):δ=14.12,14.18,19.70,19.72,19.77,22.71,23.06,24.47,27.11,29.35,29.38,29.68,29.72,29.75,29.79,30.06,31.94,32.74,32.76,32.78,36.80,37.08,37.12,37.18,37.39,37.44
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 519(M+-15),477,351,281,252,211,169,141,113,85,57,29
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):ν=2955,2923,2853,1465,1379,721
【手続補正書】
【提出日】2024-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
上記5,13,17-トリメチルアルカン化合物の合成方法としては、下記に述べるように、全11工程0.84~3.17%の収率で製造する方法が報告されている(下記の非特許文献2)。例えば、8-ブロモオクタン酸に2当量のメチルリチウムを反応させて9-ブロモ-2-ノナノンを合成し、該得られた9-ブロモ-2-ノナノンを、酸触媒であるp-トルエンスルホン酸の存在下、エチレングリコールで9-ブロモ-2-ノナノン中のカルボニル基をアセタール化して、2-(7-ブロモヘプチル)-2-メチル-1,3-ジオキソランを合成する。続いて、該得られた2-(7-ブロモヘプチル)-2-メチル-1,3-ジオキソランをテトラヒドロフラン中でマグネシウムと反応させて[7-(2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)ヘプチル]マグネシウム=ブロミドに変換し、その後、該得られた[7-(2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)ヘプチル]マグネシウム=ブロミドを2-ヘキサノンに求核付加反応させてα-ブチル-α,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オクタノールを合成する。次に、該得られたα-ブチル-α,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オクタノールを、酸触媒であるp-トルエンスルホン酸の存在下、ベンゼン中で脱水反応に付し、続いて、酸触媒であるp-トルエンスルホン酸の存在下、水及びアセトンでアセタールの脱保護を行い、10-メチル-9-テトラデセン-2-オンを合成する。次に、別途合成した[3-(2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル)プロピル]マグネシウム=クロリドを10-メチル-9-テトラデセン-2-オンに求核付加反応させて、α,2-ジメチル-α-(8-メチル-7-ドデセン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-2-ブタノールを合成する。該得られたα,2-ジメチル-α-(8-メチル-7-ドデセン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-2-ブタノールを、酸触媒であるp-トルエンスルホン酸の存在下、ベンゼン中で脱水反応に付し、続いて、酸触媒であるp-トルエンスルホン酸の存在下、水及びアセトンでアセタールの脱保護を行い、6,14-ジメチル-5,13-オクタデカジエン-2-オンを合成する。次に別途、アルキルトリフェニルホスホニウム=ブロミド化合物をn-ブチルリチウムで脱プロトン化反応させて、トリフェニルホスホニウム=アルキリド化合物を調製する。上記トリフェニルホスホニウム=アルキリド化合物と上記6,14-ジメチル-5,13-オクタデカジエン-2-オンとをウィッティヒ(Wittig)反応させて5,13,17-トリメチルアルカトリエン化合物を合成する。次に、該得られた5,13,17-トリメチルアルカトリエン化合物を、パラジウム炭素触媒の存在下、水素添加反応に付して、上記5,13,17-トリメチルアルカン化合物を製造する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=ハライド化合物(15)の具体例としては、下記の化合物等が挙げられる:
6,6-ジメトキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジエトキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジプロピルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジブチルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジペンチルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジヘキシルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジヘプチルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジオクチルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジノニルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド及び6,6-ジデシルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド、並びに[5-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ペンチル]マグネシウム=クロリド及び[5-(1,3-ジオキサン-2-イル)ペンチル]マグネシウム=クロリド等の6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=クロリド化合物(15:X7=塩素原子);
6,6-ジメトキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジエトキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジプロピルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジブチルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジペンチルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジヘキシルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジヘプチルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジオクチルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジノニルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド及び6,6-ジデシルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、並びに[5-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ペンチル]マグネシウム=ブロミド及び[5-(1,3-ジオキサン-2-イル)ペンチル]マグネシウム=ブロミド等の6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=ブロミド化合物(15:X7=臭素原子);並びに、
6,6-ジメトキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジエトキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジプロピルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジブチルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジペンチルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジヘキシルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジヘプチルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジオクチルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジノニルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド及び6,6-ジデシルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、並びに[5-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ペンチル]マグネシウム=ヨージド及び[5-(1,3-ジオキサン-2-イル)ペンチル]マグネシウム=ヨージド等の6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=ヨージド化合物(15:X7=ヨウ素原子)。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
例として、1,9-ジメチルトリデシル求核試薬(10)のうち、1,9-ジメチルトリデシルマグネシウム=ハライド試薬(10:M3=MgZ3)の場合の製造方法について、以下に説明する。1,9-ジメチルトリデシルマグネシウム=ハライド試薬(10:M3=MgZ3)は、例えば、下記の化学反応式で示される通り、上記2-ハロ-10-メチルテトラデカン化合物(9)を溶媒中、マグネシウムと反応させることにより調製することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0118
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0118】
5,13,17-トリメチルアルカン化合物(4)の具体例としては、5,13,17-トリメチルトリトリアコンタン(n=14)、5,13,17-トリメチルテトラトリアコンタン(n=15)、5,13,17-トリメチルペンタトリアコンタン(n=16)、5,13,17-トリメチルヘキサトリアコンタン(n=17)及び5,13,17-トリメチルヘプタトリアコンタン(n=18)が挙げられる。