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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160442
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】研磨方法および研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/30 20120101AFI20241107BHJP
   B24B 37/10 20120101ALI20241107BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20241107BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20241107BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241107BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B24B37/30 E
B24B37/10
B24B41/06 A
B24B49/12
H01L21/304 622L
H01L21/304 622K
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075419
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 央
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 憲一
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
3C034AA07
3C034BB73
3C034BB84
3C034BB93
3C034CA13
3C034CA22
3C034CB14
3C034DD10
3C158AA07
3C158AB03
3C158AB04
3C158AC04
3C158BA02
3C158BA05
3C158BB02
3C158BB04
3C158BC01
3C158BC02
3C158CB01
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EA14
3C158EA23
3C158EB01
5F057AA12
5F057BA11
5F057CA11
5F057CA25
5F057DA03
5F057FA13
5F057FA19
5F057FA32
5F057GB01
5F057GB02
5F057GB30
5F131AA02
5F131BA43
5F131CA09
5F131EA05
5F131EB02
5F131EB57
5F131EB78
5F131KA12
5F131KA54
5F131KB05
5F131KB32
5F131KB55
(57)【要約】
【課題】基板にダメージを与えずに、基板を基板保持部から離脱させて搬送装置に受け渡すことが可能な研磨方法を提供する。
【解決手段】研磨後の基板を保持した研磨ヘッド1を、基板検知位置にある搬送装置50のステージ51の上方に移動させ、搬送装置50に設けられた基板検知センサ52が基板のステージ51への近接を検知するまで、弾性膜4を膨張させる。弾性膜4の膨張が停止された後で、上下動装置58によってステージ51を基板検知位置から基板受け取り位置に移動させ、基板と、該基板に密着している弾性膜4との境界に噴射ノズル53から気体を噴射することで基板を弾性膜4の基板保持面から離脱させる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性膜で構成された基板保持面および少なくとも1つの圧力室を有する研磨ヘッドを用いて基板を研磨する方法であって、
前記圧力室に供給された流体の圧力により前記基板を研磨テーブル上の研磨パッドに押圧し、前記基板と前記研磨パッドとを相対運動をさせながら前記基板の研磨を行い、
研磨後の基板を保持した前記研磨ヘッドを、基板検知位置にある搬送装置のステージ上方に移動させ、
前記搬送装置に設けられた基板検知センサが前記基板の前記ステージへの近接を検知するまで、前記弾性膜を膨張させ、
前記弾性膜の膨張が停止された後で、上下動装置によって前記ステージを前記基板検知位置から基板受け取り位置に移動させ、
前記基板と、該基板に密着している前記弾性膜との境界に噴射ノズルから気体を噴射することで前記基板を前記基板保持面から離脱させ、
前記離脱後の基板を前記ステージで受け取る、研磨方法。
【請求項2】
前記離脱後の基板は、支持ステージに弾性部材を介して支持されたステージに受け取られる、請求項1に記載の研磨方法。
【請求項3】
前記弾性膜を膨張させる行程は、前記基板が前記ステージに接触しないように行われる、請求項1に記載の研磨方法。
【請求項4】
前記基板検知センサは、投光部と、投光部から照射された光を受光する受光部と、を有する光センサであり、
前記弾性膜を膨張させる行程は、前記基板の裏面によって前記投光部から前記受光部に向けて照射された光が遮断されるまで行われる、請求項1に記載の研磨方法。
【請求項5】
研磨パッドを支持する研磨テーブルと、
弾性膜で構成された基板保持面および圧力室を有し、該基板保持面で基板を保持して前記圧力室に供給された流体の圧力により前記基板を前記研磨パッドに押圧する研磨ヘッドと、
前記研磨ヘッドから研磨後の基板を受け取る搬送装置と、
前記研磨ヘッドおよび前記搬送装置の動作を少なくとも制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
研磨後の基板を保持した前記研磨ヘッドを、基板検知位置にある搬送装置のステージ上方に移動させ、
前記搬送装置に設けられた基板検知センサが前記基板の前記ステージへの近接を検知するまで、前記弾性膜を膨張させ、
前記弾性膜の膨張が停止された後で、上下動装置によって前記ステージを前記基板検知位置から基板受け取り位置に移動させ、
前記基板と、該基板に密着している前記弾性膜との境界に噴射ノズルから気体を噴射することで前記基板を前記基板保持面から離脱させ、
前記離脱後の基板を前記ステージで受け取る、研磨装置。
【請求項6】
前記搬送装置は、前記ステージを弾性部材を介して支持する支持ステージを備える、請求項5に記載の研磨装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記基板が前記ステージに接触しないように前記弾性膜を膨張させる、請求項5に記載の研磨装置。
【請求項8】
前記基板検知センサは、投光部と、投光部から照射された光を受光する受光部と、を有する光センサであり、
前記制御装置は、前記基板の裏面によって前記投光部から前記受光部に向けて照射された光が遮断されるまで前記弾性膜を膨張させる、請求項5に記載の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハなどの基板を研磨する研磨方法および研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、半導体デバイス表面の平坦化技術が重要になっている。この平坦化技術のうち、最も重要な技術は、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing)である。この化学機械研磨(以下、CMPという)は、シリカ(SiO)等の砥粒を含んだ研磨液を研磨パッド上に供給しつつ、ウエハなどの基板を研磨パッドに摺接させて研磨を行うものである。
【0003】
CMP装置において、研磨ヘッドまたはトップリングと称される基板保持部の弾性膜から基板を剥がすときは、該弾性膜内に一定圧力のガスを供給して、弾性膜を膨らませる。次に、弾性膜に貼り付いた基板(例えば、ウエハ)と、膨張させた弾性膜との間の境界に窒素ガスなどのリリースガスを吹き付けて基板を弾性膜から剥がしている(例えば、特許文献1参照)。基板保持部から剥がされた基板は、搬送装置のステージに受け渡される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-82586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板と膨張させた弾性膜との間の境界にリリースガスを吹き付けて基板を弾性膜から剥がす際に、基板に下向きの力がかかり、基板(特に、基板の周縁部)が搬送装置のステージに押し付けられることがある。その結果、基板が破損したり、デバイス面に形成されたデバイスが破損したりするおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、基板にダメージを与えずに、基板を基板保持部から離脱させて搬送装置に受け渡すことが可能な研磨方法および研磨装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、弾性膜で構成された基板保持面および少なくとも1つの圧力室を有する研磨ヘッドを用いて基板を研磨する方法であって、前記圧力室に供給された流体の圧力により前記基板を研磨テーブル上の研磨パッドに押圧し、前記基板と前記研磨パッドとを相対運動をさせながら前記基板の研磨を行い、研磨後の基板を保持した前記研磨ヘッドを、基板検知位置にある搬送装置のステージ上方に移動させ、前記搬送装置に設けられた基板検知センサが前記基板の前記ステージへの近接を検知するまで、前記弾性膜を膨張させ、前記弾性膜の膨張が停止された後で、上下動装置によって前記ステージを前記基板検知位置から基板受け取り位置に移動させ、前記基板と、該基板に密着している前記弾性膜との境界に噴射ノズルから気体を噴射することで前記基板を前記基板保持面から離脱させ、前記離脱後の基板を前記ステージで受け取る、研磨方法が提供される。
【0008】
一態様では、前記離脱後の基板は、支持ステージに弾性部材を介して支持されたステージに受け取られる。
一態様では、前記弾性膜を膨張させる行程は、前記基板が前記ステージに接触しないように行われる。
一態様では、前記基板検知センサは、投光部と、投光部から照射された光を受光する受光部と、を有する光センサであり、前記弾性膜を膨張させる行程は、前記基板の裏面によって前記投光部から前記受光部に向けて照射された光が遮断されるまで行われる。
【0009】
一態様では、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、弾性膜で構成された基板保持面および圧力室を有し、該基板保持面で基板を保持して前記圧力室に供給された流体の圧力により前記基板を前記研磨パッドに押圧する研磨ヘッドと、前記研磨ヘッドから研磨後の基板を受け取る搬送装置と、前記研磨ヘッドおよび前記搬送装置の動作を少なくとも制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、研磨後の基板を保持した前記研磨ヘッドを、基板検知位置にある搬送装置のステージ上方に移動させ、前記搬送装置に設けられた基板検知センサが前記基板の前記ステージへの近接を検知するまで、前記弾性膜を膨張させ、前記弾性膜の膨張が停止された後で、上下動装置によって前記ステージを前記基板検知位置から基板受け取り位置に移動させ、前記基板と、該基板に密着している前記弾性膜との境界に噴射ノズルから気体を噴射することで前記基板を前記基板保持面から離脱させ、前記離脱後の基板を前記ステージで受け取る、研磨装置が提供される。
【0010】
一態様では、前記搬送装置は、前記ステージを弾性部材を介して支持する支持ステージを備える。
一態様では、前記制御装置は、前記基板が前記ステージに接触しないように前記弾性膜を膨張させる。
一態様では、前記基板検知センサは、投光部と、投光部から照射された光を受光する受光部と、を有する光センサであり、前記制御装置は、前記基板の裏面によって前記投光部から前記受光部に向けて照射された光が遮断されるまで前記弾性膜を膨張させる。
【発明の効果】
【0011】
基板と、該基板に密着している弾性膜との境界に噴射ノズルから気体を噴射する前に、ステージを基板検知位置から基板受け取り位置に移動させるので、基板に下向きの力が加わっても基板がステージに押し付けられることが防止され、基板とステージとの接触によって基板がダメージを受けることがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態に係る研磨装置を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、噴射ノズルの配置例を模式的に示す上面図である。
図3図3は、図1に示す研磨ヘッドを模式的に示す断面図である。
図4図4は、一実施形態に係る搬送装置を模式的に示す側面図である。
図5図5は、図4に示す搬送装置のステージを示す上面図である。
図6図6は、他の実施形態に係る基板検知センサを模式的に示す側面図である。
図7図7は、一実施形態に係る受け渡し処理を示すフローチャートである。
図8図8(a)乃至図8(e)は、受け渡し処理の各状態をそれぞれ示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る研磨装置を模式的に示す斜視図である。図1に示す研磨装置は、研磨テーブル20と、基板の一例であるウエハWを保持して研磨テーブル20上の研磨パッドに押圧する研磨ヘッド(基板保持部)1と、を備えている。研磨ヘッド1は、「トップリング」と称されることがある。
【0014】
研磨テーブル20は、テーブル軸を介してその下方に配置される研磨テーブルモータ(図示せず)に連結されており、テーブル軸の回りに回転可能になっている。研磨テーブル20の上面には研磨パッド21が貼付されており、研磨パッド21の表面がウエハWを研磨する研磨面21aを構成している。研磨テーブル20の上方には研磨液供給ノズル23が設置されており、この研磨液供給ノズル23から研磨テーブル20上の研磨パッド21に研磨液(例えば、スラリー)が供給されるようになっている。
【0015】
研磨ヘッド1は、ヘッドシャフト11に接続されており、ヘッドシャフト11は、ヘッドアーム12に対して上下動するようになっている。ヘッドシャフト11の上下動により、ヘッドアーム12に対して研磨ヘッド1の全体を上下動させ位置決めするようになっている。ヘッドシャフト11は、シャフト回転モータ(図示せず)の駆動により回転するようになっている。ヘッドシャフト11の回転により、研磨ヘッド1がヘッドシャフト11の回りに回転するようになっている。
【0016】
研磨ヘッド1は、その下面にウエハWを保持できるようになっている。ヘッドアーム12はアームシャフト13を中心として旋回可能に構成されており、下面にウエハWを保持した研磨ヘッド1は、ヘッドアーム12の旋回によりウエハ(基板)Wの受け渡し位置と研磨テーブル20の上方との間で移動可能になっている。研磨ヘッド1は、その下面にウエハWを保持してウエハWを研磨パッド21の表面(研磨面)に押圧する。このとき、研磨テーブル20および研磨ヘッド1をそれぞれ回転させ、研磨テーブル20の上方に設けられた研磨液供給ノズル23から研磨パッド21上に研磨液を供給する。研磨液には砥粒(例えば、シリカ(SiO)および/またはセリア(CeO))を含んだ研磨液が用いられる。このように、研磨液を研磨パッド21上に供給しつつ、ウエハWを研磨パッド21に押圧してウエハWと研磨パッド21とを相対移動させてウエハWの表面上の膜(例えば、絶縁膜や金属膜)を研磨する。
【0017】
図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド21をドレッシングするドレッシングユニット30を備えている。ドレッシングユニット30は、ドレッサヘッド31と、ドレッサヘッド31の一端側に回転自在に取り付けられたドレッサ32と、ドレッサヘッド31の他端側に連結される揺動軸33とを備えている。ドレッサ32の下部はドレッシング部材32aにより構成され、ドレッシング部材32aは円形のドレッシング面を有しており、ドレッシング面には硬質な粒子が固定されている。この硬質な粒子としては、ダイヤモンド粒子やセラミック粒子などが挙げられる。ドレッサヘッド31内には、図示しないモータが内蔵されており、このモータによってドレッサ32が回転するようになっている。
【0018】
図1に示すように、研磨テーブル20の側方には、搬送装置50が位置している。搬送装置50は、研磨後のウエハWを他の装置(例えば、ウエハWの洗浄装置)に搬送するための装置である。搬送装置50の半径方向外側には、後述するリリースガスを噴射するための少なくとも1つの噴射ノズル53が設けられている。
【0019】
噴射ノズル53は、研磨装置内に配置されたガスライン(例えば、窒素ガスライン、または圧縮空気ライン)に連結されており、噴射ノズル53からは、窒素ガス、圧縮空気などの気体がリリースガスとして噴射される。なお、リリースガスの種類は、任意であるが、窒素ガスなどの不活性ガスがリリースガスとして用いられるのが好ましい。図2に示すように、噴射ノズル53は、例えば、搬送装置50を囲むように、円周方向に間隔をおいて複数個(図2では、4個)設けられている。図2に示す例では、各噴射ノズル53には、リリースガスを噴射するための2つの噴射口が形成されている。
【0020】
図3は、図1に示す研磨ヘッドを模式的に示す断面図である。図3においては、研磨ヘッド1を構成する主要構成要素だけを図示している。図3に示すように、研磨ヘッド1は、ウエハWを研磨パッド21に対して押圧する弾性膜(メンブレン)4と、弾性膜4を保持するヘッド本体(キャリアとも称する)2と、研磨パッド21を直接押圧するリテーナリング3とから基本的に構成されている。ヘッド本体2は概略円盤状の部材からなり、リテーナリング3はヘッド本体2の外周部に取り付けられている。ヘッド本体2は、エンジニアリングプラスティック(例えば、PEEK)などの樹脂により形成されている。ヘッド本体2の下面には、ウエハWの裏面に当接する弾性膜4が取り付けられている。弾性膜4は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴムなどの強度および耐久性に優れたゴム材によって形成されている。
【0021】
弾性膜4は同心状の複数の隔壁4aを有し、これら隔壁4aによって、弾性膜4の上面とヘッド本体2の下面との間に複数の圧力室、すなわち、円形状のセンター室5、環状のリプル室6、環状のアウター室7、環状のエッジ室8が形成されている。ヘッド本体2の中心部にセンター室5が形成され、中心から外周方向に向かって、順次、同心状に、リプル室6、アウター室7、エッジ室8が形成されている。
【0022】
ウエハWは弾性膜4の下面の基板保持面4bに保持される。弾性膜4は、リプル室6に対応する位置にウエハ吸着用の複数の孔4hを有している。本実施形態では、孔4hはリプル室6の位置に設けられているが、リプル室6以外の位置に設けても良い。ヘッド本体2内には、センター室5に連通する流路41、リプル室6に連通する流路42、アウター室7に連通する流路43、エッジ室8に連通する流路44がそれぞれ形成されている。そして、流路41,43,44は、ロータリージョイント36を介して流路25,27,28にそれぞれ接続されている。そして、流路25,27,28は、それぞれバルブV1-1,V3-1,V4-1および圧力レギュレータR1,R3,R4を介して圧力調整部33に接続されている。また、流路25,27,28は、それぞれバルブV1-2,V3-2,V4-2を介して真空源34に接続されるとともに、バルブV1-3,V3-3,V4-3を介して大気に連通可能になっている。
【0023】
リプル室6に連通する流路42は、ロータリージョイント36を介して流路26に接続されている。そして、流路26は、気水分離槽35、バルブV2-1および圧力レギュレータR2を介して圧力調整部33に接続されている。また、流路26は、気水分離槽35およびバルブV2-2を介して真空源39に接続されるとともに、バルブV2-3を介して大気に連通可能になっている。
【0024】
リテーナリング3の直上には弾性膜から形成された環状のリテーナリング加圧室9が配置されており、リテーナリング加圧室9は、ヘッド本体2内に形成された流路45およびロータリージョイント36を介して流路29に接続されている。そして、流路29は、バルブV5-1および圧力レギュレータR5を介して圧力調整部33に接続されている。また、流路29は、バルブV5-2を介して真空源34に接続されるとともに、バルブV5-3を介して大気に連通可能になっている。圧力レギュレータR1,R2,R3,R4,R5は、それぞれ圧力調整部33からセンター室5、リプル室6、アウター室7、エッジ室8およびリテーナリング加圧室9に供給する流体(空気または窒素などの気体)の圧力を調整する圧力調整機能を有している。圧力レギュレータR1,R2,R3,R4,R5および各バルブV1-1~V1-3,V2-1~V2-3,V3-1~V3-3,V4-1~V4-3,V5-1~V5-3は、制御部(図示せず)に接続されていて、それらの作動が制御されるようになっている。また、流路25,26,27,28,29にはそれぞれ圧力センサP1,P2,P3,P4,P5および流量センサF1,F2,F3,F4,F5が設置されている。
【0025】
センター室5、リプル室6、アウター室7、エッジ室8、およびリテーナリング加圧室9内の圧力は圧力センサP1,P2,P3,P4,P5によってそれぞれ測定され、センター室5、リプル室6、アウター室7、エッジ室8、およびリテーナリング加圧室9に供給される加圧流体の流量は流量センサF1,F2,F3,F4,F5によってそれぞれ測定される。
【0026】
図3に示すように構成された研磨ヘッド1においては、センター室5、リプル室6、アウター室7、およびエッジ室8に供給する流体の圧力を、圧力調整部33および圧力レギュレータR1,R2,R3,R4,R5によってそれぞれ独立に調整することができる。このような構造により、ウエハWを研磨パッド21に押圧する押圧力をウエハの領域毎に調整でき、かつリテーナリング3が研磨パッド21を押圧する押圧力を調整できる。また、ウエハのリリース時に圧力室5,6,7,8に加圧流体を供給して弾性膜4を膨らませることができる。
【0027】
次に、上述した研磨装置による一連の研磨処理工程について説明する。
研磨ヘッド1は基板受渡し位置でウエハWを受け取り、真空吸着により保持する。ウエハWの真空吸着は真空源39により複数の孔4h内に真空を形成することによって行われる。ウエハWを保持した研磨ヘッド1は、予め設定した研磨ヘッド1の研磨設定位置まで下降する。このとき、研磨テーブル20および研磨ヘッド1は、ともに回転駆動されている。この状態で、ウエハWの裏面側にある弾性膜4を膨らませ、ウエハWの表面を研磨パッド21の研磨面21aに当接させ、研磨パッド21とウエハWとを相対運動させることにより、ウエハWの表面が研磨される。
【0028】
研磨パッド21上でのウエハWの研磨処理が終了した後、ウエハWを研磨ヘッド1により真空吸着により保持する。そして、研磨ヘッド1を上昇させ、ヘッドアーム12を旋回させて研磨ヘッド1を搬送装置50の上方に移動させ、ウエハWを搬送装置50に離脱(リリース)させる受け渡し処理を行う。
【0029】
図4は、一実施形態に係る搬送装置を模式的に示す側面図であり、図5は、図4に示す搬送装置のステージを示す上面図である。図4に示す搬送装置50は、研磨ヘッド1からリリースされたウエハWを受け取るステージ51と、ステージ51へのウエハWの近接を検知可能な少なくとも1つの(図5に示した例では、3つの)基板検知センサ52と、ステージ51を支持する支持ステージ55と、ステージ51を支持ステージ55に連結する複数の弾性部材57と、支持ステージ55に連結された上下動装置58と、を備えている。一実施形態では、弾性部材57と支持ステージ55とを省略してもよい。この場合、上下動装置58は、ステージ51に連結される。
【0030】
支持ステージ55は、ステージ51の下方に配置されており、弾性部材57の一端は、支持ステージ55の上面に固定され、弾性部材57の他端は、ステージ51の下面に固定される。したがって、弾性部材57は、支持ステージ55とステージ51とで挟まれるように配置される。図4では、2つの弾性部材57が描かれているが、実際は、図示された2つ弾性部材57の紙面奥側にさらに2つの弾性部材が存在する。すなわち、本実施形態では、搬送装置50は、4つの弾性部材57を有し、ステージ51は、4つの弾性部材57を介して支持ステージ55に支持される。
【0031】
図5に示すように、ステージ51は、水平視したときに略U字状の形状を有している。より具体的には、ステージ51は、基部51aと、基部51aの両端部から延びる2つのアーム部51b,51bから構成される。アーム部51b,51bは、基部51aから水平に、かつ互いに平行に延びている。ステージ51は、研磨ヘッド1からリリースされたウエハWを受け取るための凹部を有しており、この凹部は基部51aとアーム部51b,51bの内縁部に形成される。凹部は、例えば、ウエハWの外形形状に対応して、略U字形状を有するステージ51の内縁部に形成される。
【0032】
本実施形態では、搬送装置50は、3つの基板検知センサ52を有しているが、基板検知センサ52の数は任意である。但し、搬送装置50が3つの(またはそれ以上の数の)基板検知センサ52を有している場合は、全ての基板検知センサ52がウエハWのステージ51への近接を検知するか否かを監視することで、ステージ51に対するウエハWの位置不良および/または姿勢不良の発生の有無を検知することができる。
【0033】
本実施形態では、支持ステージ55もステージ51とほぼ同様の形状を有する。すなわち、支持ステージ55は、基部55a、および基部55aの両端部から水平にかつ互いに平行に延びる2つのアーム部55b,55bから構成された略U字形状を有する。
【0034】
図4に示す基板検知センサ52は、投光部52aと受光部52bとからなる光検知センサであり、ウエハWがステージ51上に近接したことを投光部52aから受光部52bへ投光される光の遮断により検知できるようになっている。各投光部52aは、ステージ51の上面に取り付けられたセンサ台60の先端(上端)に取り付けられており、受光部52bは、ウエハWを受け取るためにステージ51の内縁部に形成された凹部に取り付けられている。投光部52aは、受光部52bに向けて斜め下方に光を照射する。このような構成により、投光部52aから照射された光は、デバイスが形成されていないウエハWの裏面のみにあたるため、ウエハWの表面に形成されたデバイスが基板検知センサ52の光によってダメージを受けることが防止される。
【0035】
なお、基板検知センサ52の種類および構成は、ウエハWの表面に形成されたデバイスに悪影響を与えることなく、ウエハWのステージ51への接近を検知できる限り任意である。図6は、他の実施形態に係る基板検知センサを模式的に示す側面図である。図6に示す基板検知センサ52は、支持ステージ55の2つのアーム部55b,55bに固定されたセンサ台62に取り付けられた測距離センサである。測距離センサの例としては、超音波センサが挙げられる。超音波センサである基板検知センサ52は、ウエハWの表面に向けて超音波を発し、その反射波を受信することで、センサ台62とウエハWとの間の距離を測定することができる。このような構成でも、基板検知センサ52は、ウエハWのステージ51への近接を間接的に検知することができる。図示はしないが、搬送装置50は、図6に示す基板検知センサ52と、図4に示す基板検知センサ52と、の両者を有していてもよい。
【0036】
図4に示す上下動装置58は、支持ステージ55を鉛直方向に移動させるための装置である。上下動装置58は、例えば、シリンダと、該シリンダに供給される気体によってシリンダ内を上下動可能なピストンとからなる直動エアシリンダ機構であってもよいし、ボールねじを用いたモータ駆動機構であってもよい。上下動装置58を駆動すると、支持ステージ55とともに、該支持ステージ55に弾性部材57を介して連結されたステージ51が上下動する。弾性部材57と支持ステージ55が省略される場合は、上下動装置58は、ステージ51に直接連結される。
【0037】
本実施形態では、各弾性部材57は、支持ステージ55の上面からステージ51の下面まで延びるコイルばねである。一実施形態では、弾性部材57は、板ばねであってもよい。
【0038】
次に、ウエハWの受け渡し処理を説明する。
図7は、一実施形態に係る受け渡し処理を示すフローチャートである。図8(a)乃至図8(e)は、受け渡し処理の各状態をそれぞれ示す模式図である。図8(a)乃至図8(e)では、1つの噴射ノズル53のみが描かれているが、上述したように、噴射ノズル53の数は任意である。さらに、図1に示すように、研磨装置は、後述するウエハWの受け渡し処理だけでなく、上述したウエハWの研磨処理および研磨パッド21のドレッシング処理を含む研磨装置全体の制御を行う制御装置10を備えている。
【0039】
図8(a)に示すように、制御装置10は、研磨後のウエハWを研磨ヘッド1の弾性膜4に真空吸着させ、この状態で、アームシャフト13(図1参照)を旋回させて、研磨ヘッド1を搬送装置50の上方に移動させる(図7のステップ1)。このとき、研磨ヘッド1と搬送装置50のステージ51との距離が所定の距離となるように、制御装置10は、搬送装置50の上下動装置58を動作させて、ステージ51の鉛直方向の位置を調整している。
【0040】
次に、制御装置10は、研磨ヘッド1の圧力室5,6,7,8に所定圧力の流体を供給して、弾性膜4を膨張させる(図7のステップ2)。弾性膜4が膨張されると、研磨ヘッド1の弾性膜4に貼り付いたウエハWがステージ51に徐々に接近していく。制御装置10は、基板検知センサ52を用いて、ウエハWがステージ51に近接したか否かを監視している(図7のステップ3)。そして、図8(b)に示すように、基板検知センサ52がウエハWのステージ51への近接を検知すると(図7のステップ3の「YES」)、制御装置10は、研磨ヘッド1の圧力室5,6,7,8への流体の供給を停止して、弾性膜4の膨張を停止させる(図7のステップ4)。この際、弾性膜4は脱圧されない。言い換えれば、圧力室5,6,7,8への流体の供給を停止しても、膨張した弾性膜4はその形状を維持する。弾性膜4を膨張させていく際に、ウエハWの表面に形成されたデバイスへの影響を考慮すると、ウエハWがステージ51に接触しないのが好ましい。
【0041】
ステップ1で移動される研磨ヘッド1に対するステージ51の鉛直方向の位置は、リリースガスによってウエハWを安定して弾性膜4から剥がすことができる弾性膜4の膨張量に応じてあらかじめ決定されている。基板検知センサ52によってウエハWがステージ51に近接したことが検知されたときに、ウエハWと研磨ヘッド1との距離が離れすぎていると、膨張される弾性膜4に貼り付いているウエハWの姿勢が研磨ヘッド1に対して斜めになるおそれがあるので、研磨ヘッド1に対するステージ51の鉛直方向の位置は適切に設定される。研磨ヘッド1に対するステージ51の鉛直方向の位置は、例えば、予め実験および/またはシミュレーションによって決定される。本明細書では、ステップ1で移動される、研磨ヘッド1に対するステージ51の鉛直方向の位置を、「基板検知位置」と称する。基板検知位置は予め制御装置10に記憶されており、ウエハWや弾性膜4の種類によって変更可能にしてもよい。
【0042】
図8(c)に示すように、ウエハWのステージ51への近接が検知されると、制御装置10は、上下動装置58を用いて、ステージ51を基板検知位置から下降(移動)させて、研磨ヘッド1から遠ざける(図7のステップ5)。ステップ5でステージ51を基板検知位置から下降させる距離は、リリースガスによってウエハWが下向きの力を受けて弾性膜4から剥がれる最中に、ウエハW(特に、ステージ51と接触するウエハWの周縁部)がステージ51に押し付けられてダメージを受けない大きさに予め決定されている。本明細書では、ステップ5で基板検知位置から下降されたステージ51の位置を、「基板受け取り位置」と称する。この基板受け取り位置も、実験および/またはシミュレーションによって予め決定されている。
【0043】
図8(d)に示すように、ステージ51を基板受け取り位置に下降させた後で、制御装置10は、ウエハWと、該ウエハWに密着した弾性膜4との境界に向けてリリースガスを噴射ノズル53から噴射する(図7のステップ6)。噴射ノズル53は、該噴射ノズル53から噴射されるリリースガスがウエハWの表面にあたらずに、ウエハWと、該ウエハWに密着した弾性膜4との境界に適切にあたるように設置される。噴射ノズル53は、例えば、搬送装置50の周囲の壁に固定される。さらに、ステージ51に設けられた基板検知センサ52によって、ウエハWがステージ51に近接したことが検知されると、弾性膜4への流体の供給が停止される。その結果、ウエハWが膨張する弾性膜4によってステージ51に過度に押し付けられることが防止され、ステージ51との接触によってウエハWの表面に形成されたデバイスがダメージを受けることがない。さらに、ステージ51に設けられた基板検知センサ52によって、ウエハWがステージ51に近接したことが検知された後に、噴射ノズル53からリリースガスが噴射される。そのため、リリースガスの噴射が弾性膜4が十分に膨らんでいない間に行われることで、リリースガスがウエハWの表面に当たり、ウエハWが乾燥することで発生するデバイスのダメージあるいはディフェクトの発生を防ぐことができる。加えて、ウエハWのステージ51への近接が検知されると、ステージ51は、基板検知位置から基板受け取り位置に下降(移動)させられる。その結果、ウエハWが弾性膜4によってステージ51に押し続けられることが防止され、ステージ51との接触によってウエハWの表面に形成されたデバイスがダメージを受けることがない。
【0044】
図8(e)に示すように、噴射ノズル53から噴射されたリリースガスによって、ウエハWが研磨ヘッド1の弾性膜4から剥がされてステージ51上に落下する。制御装置10は、基板受け取り位置に移動されたステージ51に取り付けられた基板検知センサ52を用いて基板の受け取りが完了したか否かを監視している。具体的には、ステージ51が基板受け取り位置に移動された後で、基板検知センサ52がウエハWのステージ51への近接を検知すると、制御装置10は、ウエハWが研磨ヘッド1から落下して、ステージ51に受け取られたと決定する(図7のステップ7)。このようにして、研磨ヘッド1から搬送装置50のステージ51へのウエハWの受け渡し処理が行われる。
【0045】
本実施形態では、ステージ51は、弾性部材57を介して支持ステージ55に連結されている。そのため、図8(e)に示すように、ウエハWがステージ51に落下したときに、弾性部材57が収縮し、ウエハWに発生する衝撃が大幅に軽減される。その結果、ウエハWの表面に形成されたデバイスへのダメージが防止される。
【0046】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0047】
1 研磨ヘッド
2 ヘッド本体
3 リテーナリング
4 弾性膜(メンブレン)
10 制御装置
11 ヘッドシャフト
12 ヘッドアーム
13 アームシャフト
20 研磨テーブル
21 研磨パッド
23 研磨液供給ノズル
50 搬送装置
51 ステージ
52 基板検知センサ
52a 投光部
52b 受光部
53 噴射ノズル
55 支持ステージ
57 弾性部材
58 上下動装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8