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特開2024-160513支持体の再使用方法、プリプレグの製造方法、積層体の製造方法、プリント配線板の製造方法及び半導体パッケージの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160513
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】支持体の再使用方法、プリプレグの製造方法、積層体の製造方法、プリント配線板の製造方法及び半導体パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 43/00 20060101AFI20241107BHJP
   B29B 17/02 20060101ALI20241107BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B32B43/00 ZAB
B29B17/02
H05K1/03 610H
H05K1/03 610T
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075599
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】登内 駿介
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 貴代
(72)【発明者】
【氏名】前田 佳英
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大
【テーマコード(参考)】
4F100
4F401
【Fターム(参考)】
4F100AA19B
4F100AA20B
4F100AG00B
4F100AK01B
4F100AK25B
4F100AK42A
4F100AK49B
4F100AK52B
4F100AK53B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DD07A
4F100DE01B
4F100DG11B
4F100DH01B
4F100EH46B
4F100EJ30A
4F100GB41
4F100GB43
4F100JK15A
4F100JL14A
4F100JL16
4F100YY00A
4F401AA22
4F401AC07
4F401AD01
4F401BA13
4F401CA35
4F401FA20Z
(57)【要約】
【課題】支持体付き樹脂フィルムから剥離された支持体の再使用方法を提供すること。さらに、プリプレグの製造方法、積層体の製造方法、プリント配線板の製造方法及び半導体パッケージの製造方法を提供すること。
【解決手段】支持体付き樹脂フィルムを骨材へ貼付した後、前記支持体付き樹脂フィルムから支持体を剥離し、剥離された支持体を再び使用することによる支持体の再使用方法であって、剥離された支持体における樹脂フィルムが接していた側の表面について、任意の5ヵ所の縦1,000μm×横1,000μmの範囲をレーザー顕微鏡で観察したとき、高さ5μm以上の凸部が存在しない、支持体の再使用方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体付き樹脂フィルムを骨材へ貼付した後、前記支持体付き樹脂フィルムから支持体を剥離し、剥離された支持体を再び使用することによる支持体の再使用方法であって、
剥離された支持体における樹脂フィルムが接していた側の表面について、任意の5ヵ所の縦1,000μm×横1,000μmの範囲をレーザー顕微鏡で観察したとき、高さ5μm以上の凸部が存在しない、支持体の再使用方法。
【請求項2】
前記高さ5μm以上の凸部が、前記樹脂フィルム由来の凸部である、請求項1に記載の支持体の再使用方法。
【請求項3】
前記高さ5μm以上の凸部の幅が20μm以上である、請求項1に記載の支持体の再使用方法。
【請求項4】
前記支持体が、離型剤による表面処理がされていないものである、請求項1に記載の支持体の再使用方法。
【請求項5】
剥離された支持体をプリプレグの製造に再使用する、請求項1に記載の支持体の再使用方法。
【請求項6】
支持体付き樹脂フィルムを骨材へ貼付した後、前記支持体付き樹脂フィルムから支持体を剥離し、剥離された支持体へ樹脂ワニスを塗工することによって作製した支持体付き樹脂フィルムを骨材へ貼付することを含むプリプレグの製造方法であって、
剥離された支持体における樹脂フィルムが接していた側の表面について、任意の5ヵ所の縦1,000μm×横1,000μmの範囲をレーザー顕微鏡で観察したとき、高さ5μm以上の凸部が存在しない、プリプレグの製造方法。
【請求項7】
前記高さ5μm以上の凸部が、前記樹脂フィルム由来の凸部である、請求項6に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項8】
前記高さ5μm以上の凸部の幅が20μm以上である、請求項6に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項9】
前記支持体が、離型剤による表面処理がされていないものである、請求項6に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載の製造方法により得られたプリプレグを積層成形することによる、積層体の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の製造方法により得られた積層体に回路を形成することによる、プリント配線板の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の製造方法により得られたプリント配線板に半導体素子を搭載することによる、半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、支持体の再使用方法、プリプレグの製造方法、積層体の製造方法、プリント配線板の製造方法及び半導体パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板用のプリプレグの製造方法として、予め熱硬化性樹脂をフィルム状にした樹脂フィルムを作製しておき、骨材と樹脂フィルムとを加熱及び加圧して接着し、プリプレグにする方法がある(例えば、特許文献1参照)。当該方法で使用する樹脂フィルムには、通常、搬送し易いようにポリエチレンテレフタレート(PET)等の支持体が付いている。そのため、当該方法でプリプレグを作製する場合、この支持体を剥離する必要がある。一方で、プリプレグの製造方法としては、繊維基材を樹脂ワニスに浸漬してから乾燥する方法(レイアップ法)がある(例えば、特許文献2参照)。特許文献1に記載の方法は支持体(例えばPET)が必要となるため、特許文献2に記載のレイアップ法と比較すると製造コストの増大に繋がっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-132535号公報
【特許文献2】特開平01-272416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さらに、近年、企業においてはSDGs(Sustainable Development Goals;持続可能な開発目標)への取り組みとして、資源の有効利用が求められる。そこで、本発明者等は、樹脂フィルムを用いたプリプレグの製造において、樹脂フィルムから剥離された支持体を用いて、再度、プリプレグ製造用の樹脂フィルムの作製を試みた。ところが、支持体が樹脂ワニスを弾いてしまって支持体付き樹脂フィルムの作製が困難となること多いことが判明し、支持体の再使用が容易ではないことが分かった。
【0005】
そこで、本開示の目的は、支持体付き樹脂フィルムから剥離された支持体の再使用方法を提供することにある。さらに、本開示の別の目的は、プリプレグの製造方法、積層体の製造方法、プリント配線板の製造方法及び半導体パッケージの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、剥離された支持体における樹脂フィルムが接していた側の表面状態が特定の状態にあることで前記目的を達成し得ることを見出した。
【0007】
本開示は、下記実施形態[1]~[12]を含む。
[1]支持体付き樹脂フィルムを骨材へ貼付した後、前記支持体付き樹脂フィルムから支持体を剥離し、剥離された支持体を再び使用することによる支持体の再使用方法であって、
剥離された支持体における樹脂フィルムが接していた側の表面について、任意の5ヵ所の縦1,000μm×横1,000μmの範囲をレーザー顕微鏡で観察したとき、高さ5μm以上の凸部が存在しない、支持体の再使用方法。
[2]前記高さ5μm以上の凸部が、前記樹脂フィルム由来の凸部である、上記[1]に記載の支持体の再使用方法。
[3]前記高さ5μm以上の凸部の幅が20μm以上である、上記[1]又は[2]に記載の支持体の再使用方法。
[4]前記支持体が、離型剤による表面処理がされていないものである、上記[1]~[3]のいずれかに記載の支持体の再使用方法。
[5]剥離された支持体をプリプレグの製造に再使用する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の支持体の再使用方法。
[6]支持体付き樹脂フィルムを骨材へ貼付した後、前記支持体付き樹脂フィルムから支持体を剥離し、剥離された支持体へ樹脂ワニスを塗工することによって作製した支持体付き樹脂フィルムを骨材へ貼付することを含むプリプレグの製造方法であって、
剥離された支持体における樹脂フィルムが接していた側の表面について、任意の5ヵ所の縦1,000μm×横1,000μmの範囲をレーザー顕微鏡で観察したとき、高さ5μm以上の凸部が存在しない、プリプレグの製造方法。
[7]前記高さ5μm以上の凸部が、前記樹脂フィルム由来の凸部である、上記[6]に記載のプリプレグの製造方法。
[8]前記高さ5μm以上の凸部の幅が20μm以上である、上記[6]又は[7]に記載のプリプレグの製造方法。
[9]前記支持体が、離型剤による表面処理がされていないものである、上記[6]~[8]のいずれかに記載のプリプレグの製造方法。
[10]上記[6]~[9]のいずれかに記載の製造方法により得られたプリプレグを積層成形することによる、積層体の製造方法。
[11]上記[10]に記載の製造方法により得られた積層体に回路を形成することによる、プリント配線板の製造方法。
[12]上記[11]に記載の製造方法により得られたプリント配線板に半導体素子を搭載することによる、半導体パッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、支持体付き樹脂フィルムから剥離された支持体の再使用方法を提供することができる。さらに、プリプレグの製造方法、積層体の製造方法、プリント配線板の製造方法及び半導体パッケージの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のプリプレグの一態様を示す断面模式図である。
図2】本実施形態のプリプレグの一態様を説明するための断面模式図である。
図3】実施例1で作製したプリプレグにおいて、含浸領域の存在比率の算出の際に用いた表面観察画像を白黒モードへ変換した表面観察画像である。
図4】実施例1において、剥離されたPETフィルム表面をレーザー顕微鏡観察することで得られた表面線粗さ測定画像である。
図5】比較例1において、剥離されたPETフィルム表面をレーザー顕微鏡観察することで得られた表面線粗さ測定画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値又は上限値と任意に組み合わせられる。数値範囲「AA~BB」という表記においては、両端の数値AA及びBBがそれぞれ下限値及び上限値として数値範囲に含まれる。
本開示において、例えば、「10以上」という記載は、10及び10を超える数値を意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。また、例えば、「10以下」という記載は、10及び10を未満の数値を意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。
本開示において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、樹脂組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有量を意味する。
本開示において、「樹脂成分」には、無機充填材及び顔料等の無機化合物は含まれない。また、「固形分」とは、樹脂組成物に含まれる水及び後述する希釈剤を除いた不揮発分のことであり、25℃付近の室温で液状、水飴状及びワックス状のものも含む。
また、本開示中における記載事項を任意に組み合わせた態様も本実施形態に含まれる。
【0011】
[支持体の再使用方法]
本実施形態の一態様は、以下の支持体の再使用方法である。
支持体付き樹脂フィルムを骨材へ貼付した後、前記支持体付き樹脂フィルムから支持体を剥離し、剥離された支持体を再び使用することによる支持体の再使用方法であって、
剥離された支持体における樹脂フィルムが接していた側の表面について、任意の5ヵ所の縦1,000μm×横1,000μmの範囲をレーザー顕微鏡で観察したとき、高さ5μm以上の凸部が存在しない、支持体の再使用方法。
【0012】
支持体付き樹脂フィルムから剥離された支持体において、樹脂フィルムが接していた側の表面について、任意の5ヵ所の縦1,000μm×横1,000μmの範囲をレーザー顕微鏡で観察したとき、高さ5μm以上の凸部が存在しないことで、剥離された支持体の再使用が可能となり、高さ5μm以上の凸部が存在することで、剥離された支持体の再使用が困難になることが分かった。剥離された支持体に高さ5μm以上の凸部が存在する場合、通常、当該凸部は前記樹脂フィルム由来の凸部である。剥離された支持体に高さ5μm以上の凸部(樹脂フィルム由来の凸部)が存在すると、樹脂ワニスを弾くこととなり、剥離された支持体を用いたプリプレグの製造が困難になり、高さ5μm以上の凸部(樹脂フィルム由来の凸部)が存在しないことで、支持体付き樹脂フィルムから剥離された支持体を用いたプリプレグの製造が可能になるものと推察する。本実施形態によれば、前記支持体が離型剤によって表面処理されたものでなくても、支持体の再使用が可能となる。また、本実施形態によれば、支持体付き樹脂フィルムから剥離された支持体をプリプレグ等の製造に再使用することが可能となる。
ここで、本開示における「再使用」は、支持体を溶融することなく再度使用することを意味しており、溶融してから成形して他の用途へ利用する、いわゆるリサイクルは含まれない。
また、「貼付」とは、支持体付き樹脂フィルムの樹脂成分と骨材とが接している状態の他、前記樹脂フィルム中の樹脂成分が骨材中の空隙部へ入り込んでいる状態も含み、特に後者の状態にあることが好ましい。
【0013】
剥離された支持体に高さ5μm以上の凸部(樹脂フィルム由来の凸部)が存在するか否かは、任意の5ヵ所の縦1,000μm×横1,000μmの範囲をレーザー顕微鏡で観察することで判断する。レーザー顕微鏡としては、例えば、株式会社キーエンスのレーザー顕微鏡である「VK-Xシリーズ」を用いればよい。前記「VK-Xシリーズ」としては、具体的には、形状測定レーザマイクロスコープVK-X100等が挙げられる。
剥離された支持体に高さ5μm以上の凸部(樹脂フィルム由来の凸部)が存在しないようにする手段としては、特に制限されるものではないが、後述するように、樹脂フィルムの原料成分にシロキサン化合物を含めること、支持体付き樹脂フィルムを骨材へ貼付(含浸)する際の温度、圧力、真空時間を制御すること等が挙げられる。
【0014】
前記凸部の高さは、7μm以上であってもよいし、10μm以上であってもよいし、20μm以上であってもよいし、50μm以上であってもよいし、80μm以上であってもよいし、100μm以上であってもよい。前記凸部の高さが大きくなるほど、樹脂ワニスを弾き易くなり、支持体付き樹脂フィルムから剥離された支持体を用いたプリプレグの製造が困難になる傾向がある。
前記凸部の高さの上限値に特に制限はなく、400μm以下であってもよいし、300μm以下であってもよいし、200μm以下であってもよいし、150μm以下であってもよいし、120μm以下であってもよい。
以上から、前記凸部の高さは、5~400μmであってもよい。
【0015】
前記高さ5μm以上の凸部の幅は、20μm以上であってもよいし、50μm以上であってもよいし、70μm以上であってもよいし、80μm以上であってもよいし、90μm以上であってもよいし、100μm以上であってもよい。前記凸部の幅が大きくなるほど、樹脂ワニスを弾き易くなり、支持体付き樹脂フィルムから剥離された支持体を用いたプリプレグの製造が困難になる傾向がある。
前記高さ5μm以上の凸部の幅の上限値に特に制限はなく、500μm以下であってもよいし、300μm以下であってもよいし、150μm以下であってもよいし、120μm以下であってもよい。
以上から、前記高さ5μm以上の凸部の幅は、20~500μmであってもよい。
【0016】
なお、本実施形態の支持体の再使用方法において、支持体付き樹脂フィルムを骨材へ貼付する操作は、プリプレグの製造に関するものである。つまり、本実施形態の支持体の再使用方法は、プリプレグの製造の際に樹脂フィルムから剥離されて通常は不要となる支持体の再使用方法に関するものである。支持体の再使用の目的は特に制限されるものではなく、プリプレグ製造の他、回路埋め込み用の樹脂付きフィルムの製造等に用いることができる。
【0017】
[プリプレグの製造方法]
本実施形態の一態様は、以下のプリプレグの製造方法である。
支持体付き樹脂フィルムを骨材へ貼付した後、前記支持体付き樹脂フィルムから支持体を剥離し、剥離された支持体へ樹脂ワニスを塗工することによって作製した支持体付き樹脂フィルムを骨材へ貼付することを含むプリプレグの製造方法であって、
剥離された支持体における樹脂フィルムが接していた側の表面について、任意の5ヵ所の縦1,000μm×横1,000μmの範囲をレーザー顕微鏡で観察したとき、高さ5μm以上の凸部が存在しない、プリプレグの製造方法。
【0018】
本実施形態のプリプレグの製造方法において、各文言については、支持体の再使用方法で説明したとおりである。
【0019】
以下、プリプレグの製造方法の一態様について説明する。
本実施形態の好ましい一態様としては、前記支持体付き樹脂フィルムを骨材へ貼付した後、支持体を剥離し、剥離された支持体を用いて支持体付き樹脂フィルムを作製し、当該支持体付き樹脂フィルムを減圧下又は常圧下で加熱及び加圧して骨材へ貼付する態様が挙げられる。当該製造方法は、支持体を再使用してプリプレグを製造する方法である。
支持体を再使用する前及び後のプリプレグの製造方法はいずれも、特に制限されるものではないが、厚み精度を高める観点から、次の製造方法が好ましい。つまり、骨材に、剥離された支持体を用いて作製した支持体付き樹脂フィルムをラミネートによって含浸させることによるプリプレグの製造方法であって、前記支持体付き樹脂フィルムの樹脂フィルムは熱硬化性樹脂組成物から形成されており、前記骨材中に前記熱硬化性樹脂組成物の含浸領域と未含浸領域とを設け、且つ、前記未含浸領域を断続的に存在させることによるプリプレグの製造方法、が好ましい。前記未含浸領域は、面内方向において断続的に存在させることがより好ましい。
【0020】
図1及び図2に示されるように、樹脂フィルムをガラスクロス等の骨材へ含浸させる際に、骨材中に熱硬化性樹脂組成物が含浸していない領域をあえて設けることで、表面付近の熱硬化性樹脂組成物の層(以下、樹脂層と略称する。)がガラスクロス等の骨材のうねりに沿わずに存在することになる。その結果、金属張り積層板の厚みが不均一になることが抑制されて、金属張り積層板において高い厚み精度を達成できる。
そして、未含浸領域がプリプレグの一端から他端まで連通しておらずに断続的に存在していることで絶縁信頼性が向上する傾向がある。正確な理由は定かではないが、金属張り積層板を作製する際に、骨材の密度が高い部位付近にも熱硬化性樹脂組成物が十分に含浸されたためではないかと推察する。
【0021】
本実施形態において、前記骨材中における熱硬化性樹脂組成物の含浸領域の存在比率は、下記算出方法によって求めたものと定義する。金属張り積層板の厚み精度の観点から、後述の「算出方法」に基づいて求めた前記含浸領域の存在比率は、特に制限されるものではないが、30~98%であってもよく、30~95%であってもよく、35~95%であってもよく、40~95%であってもよく、45~90%であってもよく、50~90%であってもよく、55~90%であってもよく、60~85%であってもよい。前記存在比率が98%以下であるとき、金属張り積層板の厚み精度の向上効果が大きくなる傾向にあり、特に95%以下であるときに、より一層その傾向が大きくなる。また、前記存在比率が30%以上であるとき、プリプレグから熱硬化性樹脂組成物の粉落ちが抑制されるため、ハンドリング性が良好という副効果が得られる傾向にある。なお、前記含浸領域の存在比率が30%以上であれば、未含浸領域が断続的に存在し易く、この観点から、含浸領域の存在比率は50%以上であることが好ましい。
なお、本実施形態では、「剥離された支持体における樹脂フィルムが接していた側の表面について、任意の5ヵ所の縦1,000μm×横1,000μmの範囲をレーザー顕微鏡で観察したとき、高さ5μm以上の凸部が存在しない」という条件を満たす観点から、前記含浸領域の存在比率が30~95%であることが好ましく、30~90%であることがより好ましく、35~90%であってもよい。特に、熱硬化性樹脂組成物がシロキサン化合物を含有する場合、含浸領域の存在比率が前記範囲であることが好ましく、熱硬化性樹脂組成物がシロキサン化合物を含有しない場合は、含浸領域の存在比率は35~95%であることが好ましく、40~90%であることがより好ましく、45~90%であることがさらに好ましい。
【0022】
-算出方法-
光学顕微鏡を用いて倍率50倍でプリプレグの表面を観察することによって、表面観察画像を得る。観察条件は、適度な明るさで撮影するという観点から、詳細には実施例に記載の観察条件を採用する。
得られた表面観察画像を画像編集ソフトによって白黒モードへ変換後、BMP(Microsoft Windows Bitmap Image)形式で保存する。次に、BMP形式で保存した白黒モードの表面観察画像を、画像変換ソフトによって1ピクセル毎にRGB(Red, Green, Blue)値に変換後、CSV(comma-separated values)形式で保存する。CSV形式で保存したRGBデータをMicrosoft Excel(Microsoft Corporation製)に貼り付け、黒色部(RGB値=255)と白色部(RGB値=0)の面積を算出する。それらの値から、黒色部と白色部の合計に対する黒色部の面積比率を求める。こうして得られた黒色部の面積比率を、前記含浸領域の存在比率とする。
前記画像編集ソフトとしては、例えば「Microsoft Paint」(Microsoft Corporation製)等を使用できる。また、前記画像変換ソフトとしては、例えば、フリーソフトである「bmp2csv」等を使用できる。
なお、前記観察において、適度な明るさで撮影した表面観察画像を白黒モードへ変換すると、観察面の下部に熱硬化性樹脂組成物の未含浸領域が存在する面は空隙部分であって光を反射し易いために「白色」で表され、それ以外の面は「黒色」で表される。ここで、表面観察画像を撮影する際には、表面撮影時の露出時間を60~100msの範囲で調整することによって、含浸領域及び未含浸領域を充分に反映できるような適度な明るさでの撮影となるために好ましい。プリプレグの表面観察画像について、有色が強い順に、「樹脂層において骨材が存在しない領域」、「骨材に熱硬化性樹脂組成物が充分に含浸している領域」、「骨材への熱硬化性樹脂組成物の含浸が不十分な領域」、となる。本実施形態においては、前記「樹脂層において骨材が存在しない領域」も前記含浸領域に含まれる。表面観察画像が明る過ぎると、白黒モードの表面観察画像において、骨材への樹脂の含浸が不十分な部分だけでなく、骨材に樹脂が充分に含浸している部分まで白色で表され易くなり、さらに画像が明るい場合には、白黒モードの表面観察画像が全体的に白色になる傾向がある。その一方で、表面観察画像が暗過ぎると、白黒モードの表面観察画像が全体的に黒色となって、未含浸領域の存在が反映され難くなる傾向がある。そのため、適度な明るさでの撮影を行うことが好ましい。適度な明るさで撮影した表面観察画像を白黒モードへ変換した例として、実施例1で得た白黒モードへ変換した表面観察画像を図3に示す。図3では、含浸領域と未含浸領域とが面内方向において交互に存在している様子が観察できる。
また、白色部と黒色部の合計に対する白色部の面積比率は、Microsoft Excel(Microsoft Corporation製)のCOUNTIF関数を用いることで容易に算出できる。
【0023】
前記支持体付き樹脂フィルムは、支持体の一方の面上に熱硬化性樹脂組成物の層(樹脂層)を形成することによって作製することができる。当該樹脂層の形成は、例えば、前記樹脂ワニスを、支持体の一方の面に塗布した後、乾燥することによって行うことができる。
樹脂ワニスを塗布する方法は特に制限されるものではなく、例えば、コンマコーター、バーコーター、キスコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター等の公知の塗工装置を用いて実施することができる。これらの塗工装置は、樹脂層の膜厚によって、適宜選択することが好ましい。
乾燥温度及び乾燥時間は、有機溶媒の使用量、有機溶媒の沸点等によって異なるが、例えば、30~70質量%の有機溶媒を含む樹脂ワニスの場合、50~160℃で1~8分間乾燥させることにより、樹脂フィルムを好適に形成することができる。
【0024】
(樹脂フィルムの厚み)
樹脂フィルムの厚みは、プリプレグの厚み等に応じて適宜決定すればよい。例えば、骨材の厚みが40~120μmの範囲にある場合、樹脂フィルムの厚みは、10~100μmが好ましく、10~70μmがより好ましく、10~50μmがさらに好ましく、15~50μmであってもよいし、20~45μmであってもよい。ここで、樹脂フィルムの厚みは、次のようにして測定した値である。まず、任意の5ヵ所でデジマチックインジケータを用いて、塗工後の樹脂付きフィルムの総厚みを測定する。その測定箇所の樹脂層を接着テープで剥離してからデジマチックインジケータによって支持体の厚みを測定し、総厚みから支持体の厚みを減算することで得られる値の平均値である。
樹脂フィルムの厚みが上記下限値以上であると、例えば厚み40μm以上の厚いガラスクロス等の骨材に含浸させるための樹脂量を充分に確保することができる傾向にある。樹脂フィルムの厚みが上記上限値以下であれば、樹脂フィルムの製造をし易い傾向にある。
【0025】
(支持体)
支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレン、ポリビニルフルオレート、ポリイミド等の有機フィルム;銅、アルミニウム等の金属又は合金フィルムなどが挙げられる。これらの支持体は、離型剤によって表面処理されたものであってもよいし、離型剤によって表面処理されていなくてもよい。
支持体の厚みは制限されるものではなく、熱硬化性樹脂組成物を塗布する際の取り扱い性及び経済性の観点から、10~200μmが好ましく、20~100μmがより好ましく、30~70μmがさらに好ましい。
支持体は、単一の成分である必要はなく、複数層(2層以上)の別材料で形成されていてもよい。
支持体としては、市販品を使用できる。
【0026】
(骨材へ樹脂フィルムを含浸させる方法)
次に、前記骨材に前記樹脂フィルムをラミネートによって含浸させる方法について説明する。
まず、前記支持体付き樹脂フィルムを、前記骨材の少なくとも一方の面に、樹脂フィルムが前記骨材と当接するように配置する。その後、配置された支持体付き樹脂フィルムと前記骨材とを加熱及び加圧することによって、前記樹脂フィルムが前記骨材に含浸される。この際、前記骨材中に、前記熱硬化性樹脂組成物の未含浸領域を断続的に設ける。こうして、支持体付きの本実施形態のプリプレグが得られる。
ここでの加熱及び加圧は、ラミネートによって行うことが好ましい。ラミネートの方法としては、(a)常圧下でのロールラミネート、(b)真空ラミネート法等により減圧下でラミネートする方法、などが挙げられる。
【0027】
(a)常圧下でのロールラミネートの条件は、特に制限されるものではないが、加熱温度は好ましくは80~180℃、圧着圧力は好ましくは0.05~1.0MPa/mである。
(b)減圧下でラミネートする方法の条件は、特に制限されるものではないが、加熱温度は好ましくは50~170℃、より好ましくは110~160℃、加圧時間は好ましくは10~120秒、より好ましくは20~80秒、圧着圧力は好ましくは0.05~1.0MPa、より好ましくは0.1~0.6MPaである。
【0028】
(未含浸領域を断続的に設ける方法)
骨材中に前記熱硬化性樹脂組成物の未含浸領域を断続的に設ける方法は、特に制限されるものではないが、例えば、前記支持体付き樹脂フィルムと前記骨材を加熱及び加圧する際の条件を調整する方法が挙げられる。具体的には、前記ラミネート条件を調整する方法が挙げられる。
加熱及び加圧する条件の具体的な調整方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、次の方法が挙げられる。最初に、所定の加熱及び所定の加圧条件にてプリプレグを作製した後、前記算出方法に基づいた、骨材中における前記熱硬化性樹脂組成物の含浸領域の存在比率を求める。その結果、含浸領域が100%である場合、つまり未含浸領域がない場合には、加熱温度を下げるか若しくは圧着圧力を下げて、又は加熱温度と圧着圧力の両方を下げて、プリプレグを作製し直し、再度、含浸領域の存在比率を求める。必要に応じてさらにこれを繰り返すことで、未含浸領域を断続的に(好ましくは面内方向において断続的に)有するプリプレグを製造する条件を容易に把握することができる。
また、未含浸領域の存在比率を低く調整したい場合には、加熱温度を上げるか若しくは圧着圧力を上げて、又は加熱温度と圧着圧力の両方を上げて、プリプレグを作製し直せばよい。
【0029】
前記加熱温度としては、骨材中に前記熱硬化性樹脂組成物の未含浸領域を断続的に設けるという観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは120~170℃、さらに好ましくは130~160℃である。
また、前記圧着圧力としては、骨材中に前記熱硬化性樹脂組成物の未含浸領域を断続的に設けるという観点から、好ましくは0.2MPa以上、より好ましくは0.2~1.0MPa、さらに好ましくは0.3~0.8MPa、特に好ましくは0.3~0.6MPaである。
なお、減圧下でラミネートする場合には、真空度、真空時間を調整することで未含浸領域の存在比率を調整することも可能である。
さらに、支持体を再使用する「前」のプリプレグの製造方法においては、「剥離された支持体における樹脂フィルムが接していた側の表面について、任意の5ヵ所の縦1,000μm×横1,000μmの範囲をレーザー顕微鏡で観察したとき、高さ5μm以上の凸部が存在しない」という条件を満たす観点からは、前記加熱温度は、好ましくは120~160℃、より好ましくは125~155℃、さらに好ましくは130~150℃であり、前記圧着圧力は、好ましくは0.30~0.70MPa、より好ましくは0.35~0.65MPa、さらに好ましくは0.40~0.60MPaであり、減圧下でラミネートする場合には、真空時間は好ましくは10~55秒、より好ましくは15~50秒、さらに好ましくは20~45秒、特に好ましくは20~40秒である。
【0030】
なお、樹脂フィルムは、骨材の両面にそれぞれ1枚以上ずつ配置してラミネートすることが好ましい。樹脂フィルムの枚数は、骨材の一面当たり、好ましくは1枚又は2枚であり、より好ましくは1枚である。
【0031】
(熱硬化性樹脂組成物)
次に、本実施形態で使用する樹脂フィルムの原料となる熱硬化性樹脂組成物について説明する。
熱硬化性樹脂組成物が含有する熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、マレイミド化合物、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
熱硬化性樹脂組成物中の熱硬化性樹脂の含有量は、低反り性の観点から、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して、1~90質量部が好ましく、10~80質量部がより好ましく、40~80質量部がさらに好ましく、60~80質量部が特に好ましい。
【0033】
前記熱硬化性樹脂組成物は、シロキサン化合物を含有しない熱硬化性樹脂組成物であっても、「剥離された支持体における樹脂フィルムが接していた側の表面について、任意の5ヵ所の縦1,000μm×横1,000μmの範囲をレーザー顕微鏡で観察したとき、高さ5μm以上の凸部が存在しない」という条件を満たすことができる。支持体を再使用する「前」のプリプレグの製造方法においては、熱硬化性樹脂組成物がシロキサン化合物を含有すると、前記条件を満たし易いラミネート条件が拡大する傾向にあるため、好ましい。
前記シロキサン化合物は、シロキサン骨格を含有する化合物であれば、特に限定されず、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
支持体を再使用する「前」のプリプレグの製造方法においては、「剥離された支持体における樹脂フィルムが接していた側の表面について、任意の5ヵ所の縦1,000μm×横1,000μmの範囲をレーザー顕微鏡で観察したとき、高さ5μm以上の凸部が存在しない」という条件を満たす観点から、前記シロキサン化合物は、官能基を有するシロキサン化合物が好ましい。前記官能基としては、アミノ基、水酸基、エポキシ基等が挙げられる。前記シロキサン化合物は、シロキサンジアミンであることがより好ましい。
【0034】
前記シロキサン化合物としては、市販品を用いることができる。
例えば、側鎖にメチル基を有する「1分子中に2個の第一級アミノ基を有するシロキサン化合物」として、「KF-8010」(アミノ基の官能基当量430g/mol)、「X-22-161A」(アミノ基の官能基当量800g/mol)、「X-22-161B」(アミノ基の官能基当量1,500g/mol)、「KF-8012」(アミノ基の官能基当量2,200g/mol)、「KF-8008」(アミノ基の官能基当量5,700g/mol)、「X-22-9409」(アミノ基の官能基当量700g/mol)(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
側鎖にフェニル基を有する「1分子中に2個の第一級アミノ基を有するシロキサン化合物」として、「X-22-1660B-3」(アミノ基の官能基当量2,200g/mol)(信越化学工業株式会社製)、「BY-16-853U」(アミノ基の官能基当量460g/mol)、「BY-16-853」(アミノ基の官能基当量650g/mol)、「BY-16-853B」(アミノ基の官能基当量2,200g/mol)(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。
両末端エポキシ変性シロキサン化合物として、例えば、「X-22-163」(エポキシ基の官能基当量200g/mol)、「X-22-163A」(エポキシ基の官能基当量1,000g/mol)、「X-22-163B」(エポキシ基の官能基当量1,800g/mol)、「KF-105」(エポキシ基の官能基当量490g/mol)等が挙げられる。
側鎖カルビノール変性シロキサン化合物として、例えば、「X-22-4015」(水酸基価30mgKOH/g)、「X-22-4039」(水酸基価58mgKOH/g)等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記シロキサン化合物が末端に官能基を有するシロキサン化合物の場合、官能基当量は、300~3,000g/molが好ましく、400~2,500g/molがより好ましく、600~1,500g/molがさらに好ましく、600~1,100g/molであってもよい。
また、側鎖にヒドロキシル基を有するシロキサン化合物の場合、水酸基価は、20~100mgKOH/gが好ましく、25~70mgKOH/gがより好ましい。
【0036】
支持体を再使用する「前」のプリプレグの製造方法においては、熱硬化性樹脂組成物中におけるシロキサン化合物の含有量は、「剥離された支持体における樹脂フィルムが接していた側の表面について、任意の5ヵ所の縦1,000μm×横1,000μmの範囲をレーザー顕微鏡で観察したとき、高さ5μm以上の凸部が存在しない」という条件を満たす観点から、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して、2~30質量部が好ましく、2~25質量部がより好ましく、3~20質量部がさらに好ましい。
【0037】
熱硬化性樹脂組成物は、さらに、無機充填材、有機充填材、硬化促進剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、接着性向上剤等を含有していてもよい。
なお、熱硬化性樹脂組成物は、アクリル樹脂を含有していてもよいが、「剥離された支持体における樹脂フィルムが接していた側の表面について、任意の5ヵ所の縦1,000μm×横1,000μmの範囲をレーザー顕微鏡で観察したとき、高さ5μm以上の凸部が存在しない」という条件を満たす観点からは、アクリル樹脂の含有量は少ない方が好ましく、例えば、アクリル樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して好ましくは30質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、特に好ましくは1質量部以下、最も好ましくは0質量部である。
【0038】
樹脂フィルムを作製する際、熱硬化性樹脂組成物は、各成分が有機溶媒中に溶解又は分散されたワニスの状態であることが好ましい。
前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
(骨材)
本実施形態で使用し得る骨材は、ガラス、カーボン等の無機繊維基材;アラミド、セルロース等の有機繊維基材;鉄、銅、アルミニウム、これら金属の合金等からなる金属繊維基材などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。特に、誘電特性の観点から、無機物繊維が好ましく、ガラスがより好ましい。
骨材としては、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット又はサーフェシングマット等の形状を有するものを使用できる。これらの中でも、織布が好ましい。
骨材の厚さは、例えば、5μm~0.5mmであり、低反り性及び高密度配線を可能にする観点から、5μm~100μmが好ましく、8μm~60μmがより好ましく、10~30μmがさらに好ましい。これらの骨材は、耐熱性、耐湿性、加工性等の観点から、シランカップリング剤等で表面処理したものであってもよいし、機械的に開繊処理を施したものであってもよい。
【0040】
プリプレグ中における熱硬化性樹脂組成物の固形分の含有量は、好ましくは20~90質量%である。
【0041】
[積層体の製造方法及びプリント配線板の製造方法]
本実施形態では、前記製造方法により得られたプリプレグ(但し、剥離された支持体を再使用することによって製造したプリプレグ)を積層成形することによる、積層体の製造方法も提供する。より具体的には、本実施形態で得たプリプレグを1枚又は2~20枚重ねたものを準備し、必要に応じて、その片面又は両面に、銅、アルミニウム等の金属箔を配置した構成で積層成形することにより、積層体(積層板とも称する)を製造することができる。金属箔は、電気絶縁材料用途で用いるものであれば特に制限されないが、銅箔が好ましい。金属箔が銅箔である場合、得られる積層体(積層板)は、一般的に銅張積層板と称される。
積層体を製造する際の成形条件は、例えば、電気絶縁材料用積層板及び多層板の成形条件を適用できる。具体的には、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100~250℃、圧力0.2~10MPa、加熱時間0.1~5時間という条件で成形することができる。また、FPR前駆体と内層用配線板とを組合せ、積層成形して、積層体を製造することもできる。
さらに、前記積層体に回路を形成すること、具体的には、前記金属箔を回路加工することにより、プリント配線板を製造することができる。
【0042】
[半導体パッケージ]
本実施形態は、前記製造方法により得られるプリント配線板に半導体素子を搭載することによる半導体パッケージの製造方法も提供する。半導体パッケージは、前記プリント配線板の所定の位置に半導体チップ、メモリ等の半導体素子を搭載し、封止樹脂等によって半導体素子を封止することによって製造できる。
【実施例0043】
次に、下記の実施例により本実施形態をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本実施形態を制限するものではない。
なお、以下の実施例で得られたプリプレグ、剥離後のPETフィルムについて、以下の方法で各評価を行った。
【0044】
[1.含浸領域の存在比率]
下記算出方法に基づいて、骨材中における熱硬化性樹脂組成物の含浸領域の存在比率(%)を求めた。
-算出方法-
光学顕微鏡(オリンパス株式会社製、商品名:MX61L-F)を用いて、下記の条件でプリプレグの表面を観察することによって、表面観察画像を得た。
<観察条件>
・倍率:50倍
・観察モード:暗視野
・感度:ISO400
・表面撮影時の露出時間:60~100ms
・観察環境の明るさ:35Wの蛍光灯が2本、観察ステージから2m上部に設置されている。
得られた表面観察画像を画像編集ソフトによって白黒モードへ変換後、BMP(Microsoft Windows Bitmap Image)形式で保存した。次に、BMP形式で保存した白黒モードの表面観察画像を、画像変換ソフトによって1ピクセル毎にRGB(Red, Green, Blue)値に変換後、CSV(comma-separated values)形式で保存した。CSV形式で保存したRGBデータをMicrosoft Excel(Microsoft Corporation製)に貼り付け、黒色部(RGB値=255)と白色部(RGB値=0)の面積を算出した。それらの値から、黒色部と白色部の合計に対する黒色部の面積比率を求めた。こうして得られた黒色部の面積比率を、含浸領域の存在比率(%)とした。
ここで、表面観察画像を撮影する際には、含浸領域及び未含浸領域を充分に反映できるように、前記のとおり、表面撮影時の露出時間を60~100msの間で調整することによって、適度な明るさで撮影した。
なお、前記画像編集ソフトとしては、「Microsoft Paint」(Microsoft Corporation製)を使用した。また、前記画像変換ソフトとしては、フリーソフトである「bmp2csv」を使用した。
【0045】
[2.PETフィルム表面の様子]
(2-1.目視による評価)
各例で剥離されたPETフィルムについて、表面状態を目視にて観察し、下記評価基準に従って評価をした。なお、A評価の場合、骨材に十分に樹脂が転写している状態であり、支持体との剥離性が良好であり、製品として合格である。B評価及びC評価の場合は、いずれも製品として不合格である。
A:支持体に全く樹脂が付いていない。
B:支持体に薄く樹脂が付着している。
C:支持体に多くの樹脂が付着している。
(2-2.レーザー顕微鏡による評価)
目視よりも厳しい評価方法として、レーザー顕微鏡を用いた評価を行った。具体的には、各例で剥離されたPETフィルムについて、株式会社キーエンスのレーザー顕微鏡である「形状測定レーザマイクロスコープVK-X100」を用いて評価を行った。評価方法としては、PETフィルムの任意の5ヵ所の縦1,000μm×横1,000μmの範囲を前記レーザー顕微鏡で観察し、下記評価基準に従って評価した。
A:5μm以上の高さの凸部が観察されなかった。
B:5μm以上の高さの凸部が1~4つ以上観察された。
C:5μm以上の高さの凸部が5つ以上観察された。
【0046】
[3.PETフィルムの再使用可能性]
各例で剥離されたPETフィルムについて、各例で作製した樹脂ワニスを再度塗工したときの様子を下記評価基準に従って評価した。
A:樹脂ワニスがPETから弾かれず、うまく塗工できた。
C:樹脂ワニスがPETから弾かれてしまい、塗工できなかった。
【0047】
製造例1(樹脂ワニスAの作製)
(1-1.変性マレイミド樹脂の作製)
温度計、撹拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2Lの反応容器に、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン595.8gと、4,4’-ジアミノジフェニルメタン54.2g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル350.0gを入れた後、還流させながら5時間反応させることで、変性マレイミド樹脂の溶液を得た。
(1-2.樹脂ワニスAの作製)
前記変性マレイミド樹脂の溶液107質量部、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂「EXA-4710」(DIC株式会社製)30質量部、水酸化アルミニウム(平均粒径:4.0μm)18質量部と球状溶融シリカ(平均粒径:0.5μm)130質量部、イソシアネートマスクイミダゾール0.3質量部、そして溶媒としてメチルイソブチルケトンとシクロヘキサノンを加えて混合し、固形分濃度65質量%の樹脂ワニスAを作製した。
【0048】
製造例2(樹脂ワニスBの作製)
フェノールノボラック型エポキシ樹脂「EPICLON(登録商標)N-770」(DIC株式会社製、エポキシ当量:188g/eq)60質量部、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(UBE株式会社製、商品名:MEH-7700)40質量部、水酸化アルミニウム(平均粒径:4.0μm)18質量部と球状溶融シリカ(平均粒径:0.5μm)86質量部、イソシアネートマスクイミダゾール0.5質量部、そして溶媒としてメチルイソブチルケトンとシクロヘキサノンを加えて混合し、固形分濃度65質量%の樹脂ワニスBを作製した。
【0049】
製造例3(樹脂ワニスCの作製;シロキサン化合物含有)
両末端アミン変性シロキサン(信越化学工業株式会社製、商品名;X-22-161A、アミノ基の官能基当量:800g/mol)10質量部、α-ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名;NC-7000L、エポキシ当量:223~238g/eq)40質量部、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン40質量部、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン9質量部、球状溶融シリカ(平均粒径:0.5μm)200質量部、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート0.2質量部、そして溶媒としてメチルエチルケトンを加えて混合し、固形分濃度65質量%の樹脂ワニスCを作製した。
【0050】
製造例4(樹脂ワニスDの作製)
アクリル樹脂(根上工業株式会社製、商品名;HAN5-M90S、ニトリル基を含有するアクリル樹脂、重量平均分子量:90×10)45質量部、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名;EPICLON 153)45質量部、クレゾールノボラック型樹脂(DIC株式会社製、商品名;KA-1165)10質量部、水酸化アルミニウム(平均粒径:4.0μm)25質量部と球状溶融シリカ(平均粒径:0.5μm)25質量部、2-フェニルイミダゾール0.1質量部、そして溶媒としてメチルエチルケトンを加えて混合し、固形分濃度40質量%の樹脂ワニスDを作製した。
【0051】
実施例1
(1.樹脂フィルムの作製)
製造例1で得た樹脂ワニスAを、PETフィルム(東レ株式会社製、厚み:50μm、離型処理のされていない表面粗さ(Ra)0.04μmのフィルム、商品名:ルミラー(登録商標)S10)上に、コンマコーターを使用して塗布した。この際、乾燥後の厚みが30μmになるように、塗布量を調整した。その後、130℃で2分間加熱乾燥することによって、PETフィルム付き樹脂フィルムを作製した。
(2.プリプレグの作製)
次に、ガラスクロス「IPC#2116」(日東紡績株式会社製、坪量:104g/m、基材幅:530mm、厚み:91μm)の両面に、上記PETフィルム付き樹脂フィルムの樹脂層面がガラスクロスと当接するように配置した。
この「PETフィルム/樹脂フィルム/ガラスクロス/樹脂フィルム/PETフィルム」の積層体を、真空ラミネート装置を用いて真空下で加熱加圧した。こうすることで、ガラスクロスに樹脂フィルムの熱硬化性樹脂組成物が含浸した、PETフィルム付きプリプレグを得た。なお、真空ラミネートの条件は、熱盤温度130℃、圧着圧力0.5MPa、真空度100kPa以下、真空時間30秒とした。得られたPETフィルム付きプリプレグから、ブレードで剥離する機構を有する剥離装置でPETフィルムを剥離して、プリプレグ1を得た。剥離されたPETフィルムは、ロールで巻き取った。
次に、剥離されたPETフィルムについて、前記方法に従って評価した。
(3.剥離されたPETフィルムの再使用;プリプレグの作製)
前記「1.樹脂フィルムの作製」において、PETフィルム「ルミラー(登録商標)S10」の代わりに、「2.プリプレグの作製」で剥離されたPETフィルムを用いたこと以外は同様の操作を行い、続いて「2.プリプレグの作製」と同様の操作を再度行うことにより、プリプレグを得た。
結果を表1に示す。また、レーザー顕微鏡による観察で得られた表面線粗さ測定画像の1つを図4に示す。
【0052】
実施例2
実施例1において、「1.樹脂フィルムの作製」で使用した樹脂ワニスAを製造例2で得た樹脂ワニスBへ変更し、且つ、「2.プリプレグの作製」中の真空ラミネートの条件について、熱盤温度を140℃に変更したこと以外は同様の操作及び評価を行った。
結果を表1に示す。
【0053】
実施例3
実施例1において、「1.樹脂フィルムの作製」で用いるPETフィルムを、PETフィルム(東レ株式会社製、厚み:50μm、離型処理されていない表面粗さ(Ra)0.27μmのマットタイプのフィルム、商品名:ルミラー(登録商標)♯50-X44)に変更し、乾燥後の厚みが35μmになるように樹脂ワニスの塗布量を調整したこと、及び、「2.プリプレグの作製」中の真空ラミネートの条件について、熱盤温度130℃を熱盤温度140℃に変更したこと以外は同様の操作及び評価を行った。
結果を表1に示す。
【0054】
実施例4
実施例1において、「2.プリプレグの作製」中の真空ラミネートの条件について、熱盤温度、圧着圧力及び真空時間を150℃、0.6MPa、40秒に変更したこと以外は同様の操作及び評価を行った。
結果を表1に示す。
【0055】
実施例5
実施例1において、「2.プリプレグの作製」中の真空ラミネート装置を常圧下でのロールラミネート装置へ変更し、且つ、熱盤温度及び圧着圧力を150℃、0.4MPaに変更し、搬送速度を2.0m/分としたこと以外は同様の操作及び評価を行った。
結果を表1に示す。
【0056】
実施例6
実施例1において、「1.樹脂フィルムの作製」で使用した樹脂ワニスAを製造例3で得た樹脂ワニスCへ変更し、且つ、「2.プリプレグの作製」中の真空ラミネートの条件について、熱板温度、圧着圧力及び真空時間を120℃、0.3MPa、20秒に変更したこと以外は同様の操作及び評価を行った。
結果を表1に示す。
【0057】
実施例7
実施例1において、「2.プリプレグの作製」で使用したガラスクロスを「IPC#1078」(日東紡績株式会社製、坪量:47g/m、基材幅:530mm、厚み:44μm)に変更したこと以外は同様の操作及び評価を行った。
結果を表1に示す。
【0058】
実施例8
実施例2において、「1.樹脂フィルムの作製」で乾燥後の厚みが16μmになるように樹脂ワニスの塗布量を調整したこと、及び、「2.プリプレグの作製」で使用したガラスクロスを「IPC#1037」(日東紡績株式会社製、坪量:24g/m、基材幅:530mm、厚み:24μm)に変更し、且つ、真空ラミネートの条件について、熱盤温度及び真空時間を130℃、20秒に変更したこと以外は同様の操作及び評価を行った。
結果を表1に示す。
【0059】
実施例9
実施例1において、「1.樹脂フィルムの作製」で乾燥後の厚みが14μmになるように樹脂ワニスの塗布量を調整したこと、及び、「2.プリプレグの作製」で使用したガラスクロスを「IPC#1027」(日東紡績株式会社製、坪量:20g/m、基材幅:530mm、厚み:21μm)に変更したこと以外は同様の操作及び評価を行った。
結果を表1に示す。
【0060】
比較例1
実施例1において、「1.樹脂フィルムの作製」で使用した樹脂ワニスAを製造例4で得た樹脂ワニスDへ変更したこと以外は同様の操作及び評価を行った。
結果を表1に示す。また、レーザー顕微鏡による観察で得られた表面線粗さ測定画像の1つを図5に示す。
【0061】
比較例2
実施例6において、「2.プリプレグの作製」中の真空ラミネート装置を常圧下でのロールラミネート装置へ変更し、熱盤温度及び圧着圧力を100℃、0.2MPaに変更し、搬送速度を2.0m/分としたこと以外は同様の操作及び評価を行った。
結果を表1に示す。
【0062】
比較例3
実施例1において、「2.プリプレグの作製」中の真空ラミネートの条件について、熱盤温度、圧着圧力及び真空時間を110℃、0.2MPa、20秒に変更したこと以外は同様の操作及び評価を行った。
結果を表1に示す。
【0063】
比較例4
実施例1において、「2.プリプレグの作製」中の真空ラミネートの条件について、熱盤温度及び真空時間を150℃、60秒に変更したこと以外は同様の操作及び評価を行った。
結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1より、プリプレグ製造において使用した支持体付き樹脂フィルムから剥離されたPETフィルムについて、任意の5ヵ所の縦1,000μm×横1,000μmの範囲をレーザー顕微鏡で観察したときに高さ5μm以上の凸部が存在していない場合(実施例1~9)、剥離されたPETフィルムをプリプレグの製造に再使用することができた。
一方、任意の5ヵ所の縦1,000μm×横1,000μmの範囲をレーザー顕微鏡で観察したときに高さ5μm以上の凸部が存在していた比較例1~4では、剥離されたPETフィルムをプリプレグの製造に再使用することはできなかった。特に、比較例2~3では、目視評価では剥離されたPETフィルム表面に樹脂の付着を確認できなかったが、レーザー顕微鏡で観察したときに高さ5μm以上の凸部が存在していたことによって剥離されたPETフィルムをプリプレグの製造に再使用することができなかった点は重要な結果である。
図1
図2
図3
図4
図5