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特開2024-160592表面改質層形成用組成物、及びレジストパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160592
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】表面改質層形成用組成物、及びレジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20241107BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/11 502
H01L21/30 563
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075761
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 剛志
(72)【発明者】
【氏名】河野 紳一
(72)【発明者】
【氏名】白木 雄哲
【テーマコード(参考)】
2H225
5F146
【Fターム(参考)】
2H225AE13N
2H225AM22N
2H225AM23N
2H225AM32N
2H225AN39N
2H225AN45N
2H225BA01N
2H225CA12
2H225CB18
2H225CC03
2H225CC15
5F146HA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】支持体に対するレジスト膜の密着性を向上可能な、表面改質層形成用組成物、及び当該表面改質層形成用組成物を用いたレジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】支持体とレジスト膜との間に設けられる表面改質層を形成するための表面改質層形成用組成物であって、下記一般式(g0-1)で表される構成単位(g0)を有する樹脂成分(G)と、下記一般式(p0-1)で表される構成単位(p0)を有する樹脂成分(P)と、を含有する、表面改質層形成用組成物。Rgはエポキシ基含有基;Rpは置換基を有してもよい、炭素原子数2~20の鎖状炭化水素基。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体とレジスト膜との間に設けられる表面改質層を形成するための表面改質層形成用組成物であって、
下記一般式(g0-1)で表される構成単位(g0)を有する樹脂成分(G)と、
下記一般式(p0-1)で表される構成単位(p0)を有する樹脂成分(P)と、
を含有する、表面改質層形成用組成物。
【化1】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基を表し;Ygは、2価の連結基を表し;Rgは、エポキシ基含有基を表す。]
【化2】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基を表し;Ypは、2価の連結基を表し;Rpは、置換基を有してもよい、炭素原子数2~20の鎖状炭化水素基を表す。]
【請求項2】
前記一般式(g0-1)中のRgが、下記一般式(rg-1)で表される基又は脂環式エポキシ基である、請求項1に記載の表面改質層形成用組成物。
【化3】
[式中、Rg01~Rg03は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。*は結合手を表す。]
【請求項3】
前記樹脂成分(P)が、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)を含む、請求項1又は2に記載の表面改質層形成用組成物。
【請求項4】
前記樹脂成分(P)が、2種以上の構成単位(a0)を有する、請求項1又は2に記載の表面改質層形成用組成物。
【請求項5】
前記樹脂成分(P)の含有量が、前記樹脂成分(G)及び前記樹脂成分(P)の合計質量100質量部に対して、5~50質量部である、請求項1又は2に記載の表面改質層形成用組成物。
【請求項6】
支持体上に、請求項1又は2に記載の表面改質層形成用組成物を用いて表面改質層を形成する工程(i)と、
前記支持体上に形成された前記表面改質層上に、レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程(ii)と、
前記レジスト膜を露光する工程(iii)と、
前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程(iv)と、
を有する、レジストパターン形成方法。
【請求項7】
前記表面改質層の膜厚が1~5nmである、請求項6に記載のレジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質層形成用組成物、及びレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速にパターンの微細化が進んでいる。微細化の手法としては、一般に、露光光源の短波長化(高エネルギー化)が行われている。
【0003】
レジスト材料には、これらの露光光源に対する感度、微細な寸法のパターンを再現できる解像性等のリソグラフィー特性が求められる。
このような要求を満たすレジスト材料として、従来、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分と、露光により酸を発生する酸発生剤成分と、を含有する化学増幅型レジスト組成物が用いられている。
【0004】
無機基板上にレジストパターンを形成する際には、シリコンウェーハ等の支持体とレジスト膜との間の密着性が問題となる。支持体とレジスト膜との密着性不足は、レジストパターンのパターン倒れの要因となる。支持体に対するレジスト膜の密着性を高める手段として、支持体とレジスト膜との間に表面改質層を設ける方法が挙げられる。例えば、特許文献1には、質量平均分子量が1000~50000であるエポキシ樹脂を含有する表面改質材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-197425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パターンの微細化がますます進むなか、リソグラフィー技術においては、パターン倒れの耐性等の種々のリソグラフィー特性とパターン解像性の向上がこれまで以上に求められている。従来、パターン倒れを防止するために、シリコンウェーハなどの支持体に、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施したり、有機系反射防止膜を設けたりする方法により、レジストパターンの支持体に対する密着性の向上が図られている。
しかしながら、微細な寸法で孤立ラインのレジストパターンを形成した場合、レジスト膜の支持体に対する密着性不足等により、パターン倒れを十分に抑制できない場合があった。また、レジスト膜の露光及び現像後の残渣を十分に抑制できない場合があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、支持体に対するレジスト膜の密着性を向上可能な、表面改質層形成用組成物、及び当該表面改質層形成用組成物を用いたレジストパターン形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第1の態様は、支持体とレジスト膜との間に設けられる表面改質層を形成するための表面改質層形成用組成物であって、下記一般式(g0-1)で表される構成単位(g0)を有する樹脂成分(G)と、下記一般式(p0-1)で表される構成単位(p0)を有する樹脂成分(P)と、を含有する、表面改質層形成用組成物である。
【0009】
【化1】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基を表し;Ygは、2価の連結基を表し;Rgは、エポキシ基含有基を表す。]
【0010】
【化2】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基を表し;Ypは、2価の連結基を表し;Rpは、置換基を有してもよい、炭素原子数2~20の鎖状炭化水素基を表す。]
【0011】
本発明の第2の態様は、支持体上に、前記第1の態様に係る表面改質層形成用組成物を用いて表面改質層を形成する工程(i)と、前記支持体上に形成された前記表面改質層上に、レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程(ii)と、前記レジスト膜を露光する工程(iii)と、前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程(iv)と、を有する、レジストパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、支持体に対するレジスト膜の密着性を向上可能な、表面改質層形成用組成物、及び当該表面改質層形成用組成物を用いたレジストパターン形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「置換基を有してもよい」と記載する場合、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH-)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【0014】
「酸分解性基」は、酸の作用により、当該酸分解性基の構造中の少なくとも一部の結合が開裂し得る酸分解性を有する基である。
酸の作用により極性が増大する酸分解性基としては、例えば、酸の作用により分解して極性基を生じる基が挙げられる。
極性基としては、例えばカルボキシ基、水酸基、アミノ基、スルホ基(-SOH)等が挙げられる。
酸分解性基としてより具体的には、前記極性基が酸解離性基で保護された基(例えばOH含有極性基の水素原子を、酸解離性基で保護した基)が挙げられる。
【0015】
「酸解離性基」とは、(i)酸の作用により、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る酸解離性を有する基、又は、(ii)酸の作用により一部の結合が開裂した後、さらに脱炭酸反応が生じることにより、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る基、の双方をいう。
酸分解性基を構成する酸解離性基は、当該酸解離性基の解離により生成する極性基よりも極性の低い基であることが必要で、これにより、酸の作用により該酸解離性基が解離した際に、該酸解離性基よりも極性の高い極性基が生じて極性が増大する。その結果、(A1)成分全体の極性が増大する。極性が増大することにより、相対的に、現像液に対する溶解性が変化し、現像液がアルカリ現像液の場合には溶解性が増大し、現像液が有機系現像液の場合には溶解性が減少する。
【0016】
「基材成分」とは、膜形成能を有する有機化合物である。基材成分として用いられる有機化合物は、非重合体と重合体とに大別される。非重合体としては、通常、分子量が500以上4000未満のものが用いられる(以下「低分子化合物」という)。以下「樹脂」、「高分子化合物」又は「ポリマー」という場合は、分子量が1000以上の重合体を示す。重合体の分子量としては、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量を用いるものとする。
【0017】
「誘導される構成単位」とは、炭素原子間の多重結合、例えば、エチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステル」は、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該α位の炭素原子に結合した水素原子を置換する置換基(Rαx)は、水素原子以外の原子又は基である。また、置換基(Rαx)がエステル結合を含む置換基で置換されたイタコン酸ジエステルや、置換基(Rαx)がヒドロキシアルキル基やその水酸基を修飾した基で置換されたαヒドロキシアクリルエステルも含むものとする。なお、アクリル酸エステルのα位の炭素原子とは、特に断りがない限り、アクリル酸のカルボニル基が結合している炭素原子のことである。
以下、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されたアクリル酸エステルを、α置換アクリル酸エステルということがある。
【0018】
「誘導体」とは、対象化合物のα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。それらの誘導体としては、α位の水素原子が置換基に置換されていてもよい対象化合物の水酸基の水素原子を有機基で置換したもの;α位の水素原子が置換基に置換されていてもよい対象化合物に、水酸基以外の置換基が結合したもの等が挙げられる。なお、α位とは、特に断りがない限り、官能基と隣接した1番目の炭素原子のことをいう。
ヒドロキシスチレンのα位の水素原子を置換する置換基としては、Rαxと同様のものが挙げられる。
【0019】
本明細書及び本特許請求の範囲において、化学式で表される構造によっては、不斉炭素が存在し、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るものがある。その場合は一つの化学式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0020】
(表面改質層形成用組成物)
本発明の第1の態様に係る表面改質層形成用組成物は、支持体とレジスト膜との間に設けられる表面改質層を形成するために用いられる。本実施形態の表面改質層形成用組成物は、後述の一般式(g0-1)で表される構成単位(g0)を有する樹脂成分(G)(以下、「(G)成分」ともいう)と、後述の一般式(p0-1)で表される構成単位(p0)を有する樹脂成分(P)(以下、「(P)成分」ともいう)と、を含有する。
【0021】
<樹脂成分(G):(G)成分>
(G)成分は、後述の一般式(g0-1)で表される構成単位(g0)を有する高分子化合物を含む。
【0022】
≪構成単位(g0)≫
構成単位(g0)は、下記一般式(g0-1)で表される構成単位である。
【0023】
【化3】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基を表し;Ygは、2価の連結基を表し;Rgは、エポキシ基含有基を表す。]
【0024】
前記式(g0-1)中、Rにおける炭素原子数1~5のアルキル基は、炭素原子数1~5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素原子数1~5のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、特にフッ素原子が好ましい。
Rとしては、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子又はメチル基が最も好ましい。
【0025】
前記式(g0-1)中、Ygにおける2価の連結基としては、置換基を有してもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が挙げられる。
【0026】
・置換基を有してもよい2価の炭化水素基:
置換基を有してもよい2価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
【0027】
・・脂肪族炭化水素基
脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。該脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
前記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0028】
・・・直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基
該直鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数1~10が好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4がさらに好ましく、炭素原子数1~3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]、ペンタメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。
該分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数2~10が好ましく、炭素原子数3~6がより好ましく、炭素原子数3又は4がさらに好ましく、炭素原子数3が最も好ましい。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-、-C(CH)(CHCHCH)-、-C(CHCH-等のアルキルメチレン基;-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-CH(CHCH)CH-、-C(CHCH-CH-等のアルキルエチレン基;-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-等のアルキルトリメチレン基;-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0029】
前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有してもよく、有していなくてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基、カルボニル基等が挙げられる。
【0030】
・・・構造中に環を含む脂肪族炭化水素基
該構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含んでもよい環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては前記と同様のものが挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数3~20が好ましく、炭素原子数3~12がより好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0031】
環状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有してもよいし、有してなくてもよい。該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、カルボニル基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることがより好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、炭素原子数1~5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基がさらに好ましい。
前記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
前記置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、その環構造を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されてもよい。該ヘテロ原子を含む置換基としては、-O-、-C(=O)-O-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-が好ましい。
【0032】
・・芳香族炭化水素基
該芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でもよいし、多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は5~30であることが好ましく、炭素原子数5~20がより好ましく、炭素原子数6~15がさらに好ましく、炭素原子数6~12が特に好ましい。ただし、該炭素原子数には、置換基における炭素原子数を含まないものとする。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を2つ除いた基(アリーレン基またはヘテロアリーレン基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を2つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基)等が挙げられる。前記アリール基またはヘテロアリール基に結合するアルキレン基の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、炭素原子数1~2であることがより好ましく、炭素原子数1であることが特に好ましい。
【0033】
前記芳香族炭化水素基は、当該芳香族炭化水素基が有する水素原子が置換基で置換されていてもよい。例えば当該芳香族炭化水素基中の芳香環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基であることがより好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基、ハロゲン原子およびハロゲン化アルキル基としては、前記環状の脂肪族炭化水素基が有する水素原子を置換する置換基として例示したものが挙げられる。置換基としてのハロゲン原子は、臭素原子又はヨウ素原子が好ましく、ヨウ素原子がより好ましい。
【0034】
・ヘテロ原子を含む2価の連結基:
ヘテロ原子を含む2価の連結基としては、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-、-NH-C(=NH)-(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。)、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-、一般式-Y21-O-Y22-、-Y21-O-、-Y21-C(=O)-O-、-C(=O)-O-Y21-、-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-、-Y21-O-C(=O)-Y22-または-Y21-S(=O)-O-Y22-で表される基[式中、Y21およびY22はそれぞれ独立して置換基を有してもよい2価の炭化水素基であり、Oは酸素原子であり、m”は0~3の整数である。]等が挙げられる。
前記ヘテロ原子を含む2価の連結基が-C(=O)-NH-、-C(=O)-NH-C(=O)-、-NH-、-NH-C(=NH)-の場合、そのHはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。該置換基(アルキル基、アシル基等)は、炭素原子数が1~10であることが好ましく、1~8であることがさらに好ましく、1~5であることが特に好ましい。
一般式-Y21-O-Y22-、-Y21-O-、-Y21-C(=O)-O-、-C(=O)-O-Y21-、-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-、-Y21-O-C(=O)-Y22-または-Y21-S(=O)-O-Y22-中、Y21およびY22は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい2価の炭化水素基である。該2価の炭化水素基としては、前記と同様のものが挙げられる。
21としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
22としては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基、エチレン基またはアルキルメチレン基がより好ましい。該アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素原子数1~5の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~3の直鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
式-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-で表される基において、m”は0~3の整数であり、0~2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、1が特に好ましい。つまり、式-[Y21-C(=O)-O]m”-Y22-で表される基としては、式-Y21-C(=O)-O-Y22-で表される基が特に好ましい。なかでも、式-(CHa’-C(=O)-O-(CHb’-で表される基が好ましい。該式中、a’は、1~10の整数であり、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。b’は、1~10の整数であり、1~8の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。
【0035】
Ygとしては、エステル結合[-C(=O)-O-、-O-C(=O)-]、エーテル結合(-O-)、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又はこれらの2種以上の組合せが好ましく、エステル結合[-C(=O)-O-、-O-C(=O)-]がより好ましい。
【0036】
一般式(g0-1)中のRgにおけるエポキシ基含有基は、エポキシ環を含有する基であれば、特に限定されない。Rgにおけるエポキシ基含有基としては、例えば、下記一般式(rg-1)で表される基、及び脂環式エポキシ基が挙げられる。
【0037】
【化4】
[式中、Rg01~Rg03は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。*は結合手を表す。]
【0038】
前記式(rg-1)中、Rg01~Rg03におけるアルキル基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよいが、直鎖状アルキル基が好ましい。Rg01~Rg03における直鎖状アルキル基は、炭素原子数1~5が好ましく、炭素原子数1~3がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。Rg01~Rg03における分岐鎖状アルキル基は、炭素原子数3~5が好ましく、炭素原子数3がより好ましい。
Rg01~Rg03は、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。Rg01~Rg03は、いずれも水素原子であることがさらに好ましい。
【0039】
脂環式エポキシ基は、エポキシ基を含む脂環式基である。脂環式エポキシ基としては、例えば、下記一般式(rg-2)で表される基、下記式(rg-3)で表される基、下記式(rg-4)で表される基が挙げられる。
【0040】
【化5】
[式中、Rg04~Rg06は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し;g4及びg5は、それぞれ独立に、1~20の整数を表す。*は結合手を表す。]
【0041】
前記式(rg-2)中、Rg04~Rg06におけるアルキル基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよいが、直鎖状アルキル基が好ましい。Rg04~Rg06における直鎖状アルキル基は、炭素原子数1~5が好ましく、炭素原子数1~3がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。Rg04~Rg06における分岐鎖状アルキル基は、炭素原子数3~5が好ましく、炭素原子数3がより好ましい。
Rg04~Rg06は、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。Rg04~Rg06は、いずれも水素原子であることがさらに好ましい。
【0042】
前記式(rg-2)中、g4は、1~5の整数が好ましく、1~3の整数がより好ましく、1又は2がさらに好ましく、2が特に好ましい。
前記式(rg-2)中、g5は、1~5の整数が好ましく、1~3の整数がより好ましく、1又は2がさらに好ましく、1が特に好ましい。
【0043】
構成単位(g0)は、下記一般式(g0-1-1)で表される基が好ましい。
【0044】
【化6】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基を表し;Yg01は、単結合又は2価の連結基を表し;Rg01は、エポキシ基含有基を表す。]
【0045】
前記式(g0-1-1)中のRは、一般式(g0-1)中のRと同じである。
【0046】
前記式(g0-1-1)中のYg01における2価の連結基としては、前記式(g0-1)中のYgにおける2価の連結基と同様のものが挙げられる。Yg01は、単結合、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基とエステル結合若しくはエーテル結合との組合せが好ましく、単結合又は直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基がより好ましく、単結合がさらに好ましい。前記直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基としては、炭素原子数1~5が好ましく、炭素原子数1~3がより好ましく、エチレン基又はメチレン基がさらに好ましい。
【0047】
前記式(g0-1-1)中のRg01としては、前記式(g0-1)中のRgと同様のものが挙げられる。Rg01としては、前記式(rg-1)~(rg-4)のいずれかで表される基が好ましい。
【0048】
構成単位(g0)の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0049】
【化7】
【0050】
(G)成分が有する構成単位(g0)は、1種でもよく2種以上でもよい。
(G)成分中の構成単位(g0)の割合は、(G)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、40モル%以上がさらにより好ましく、50モル%以上が特に好ましく、100モル%であってもよい。
構成単位(g0)の割合が前記好ましい下限値以上であると、支持体との架橋効率が高まり、レジスト膜と支持体との密着性がより向上する。
(G)成分中の構成単位(g0)の割合は、(G)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、10~90モル%が挙げられ、20~80モル%が好ましく、30~80モル%がより好ましく、40~80モル%がさらに好ましく、50~80モル%が特に好ましい。
構成単位(g0)の割合が前記好ましい上限値以下であると、他の構成単位とのバランスを取ることができ、レジストパターンを形成したときの種々のリソグラフィー特性が良好となる。
【0051】
≪その他の構成単位≫
(G)成分は、上記構成単位(g0)に加えて、他の構成単位を有してもよい。他の構成単位としては、例えば、(α置換)アクリル酸若しくは(α置換)アクリル酸メチルから誘導される構成単位(a11)、下記一般式(a10-1)で表される構成単位(a10)、ラクトン含有環式基を含む構成単位(a2);後述の一般式(a8-1)で表される化合物から誘導される構成単位(a8)等が挙げられる。
なかでも好ましい他の構成単位としては、構成単位(a11)及び構成単位(a10)が挙げられる。
【0052】
構成単位(a11):
(G)成分は、構成単位(a11)を有してもよい。構成単位(a11)は、下記一般式(a11-1)で表される構成単位が好ましい。
【0053】
【化8】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基を表し;Ra11は、水素原子又はメチル基を表す。]
【0054】
前記式(a11-1)中のRは、前記一般式(g0-1)中のRと同じである。Rとしては、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
【0055】
前記式(a11-1)中、Ra11は、水素原子が好ましい。
【0056】
構成単位(a11)の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0057】
【化9】
【0058】
(G)成分が有する構成単位(a11)を有する場合、構成単位(a11)は、1種でもよく2種以上でもよい。(G)成分は、構成単位(a11)を有してもよく、有しなくてもよい。
(G)成分が有する構成単位(a11)を有する場合、(G)成分中の構成単位(a11)の割合は、(G)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、1~50モル%が挙げられ、5~40モル%が好ましく、10~30モル%がより好ましく、10~20モル%がさらに好ましい。
構成単位(a11)の割合が前記好ましい範囲内であると、本実施形態の表面改質層形成用組成物により形成した表面改質層上にレジストパターンを形成したときの種々のリソグラフィー特性が良好となる。
【0059】
構成単位(a10):
(G)成分は、構成単位(a10)を有してもよい。構成単位(a10)は、下記一般式(a10-1)で表される構成単位である。
【0060】
【化10】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。Yax1は、単結合又は2価の連結基である。Wax1は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。nax1は、1以上の整数である。]
【0061】
前記式(a10-1)中のRは、前記一般式(g0-1)中のRと同じである。Rとしては、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
【0062】
前記式(a10-1)中、Yax1における2価の連結基としては、前記一般式(g0-1)中のYgにおける2価の連結基と同様のものが挙げられる。
【0063】
Yax1としては、単結合、エステル結合[-C(=O)-O-、-O-C(=O)-]、エーテル結合(-O-)、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又はこれらの2種以上の組合せが好ましく、単結合、又はエステル結合[-C(=O)-O-、-O-C(=O)-]がより好ましい。
【0064】
前記式(a10-1)中、Wax1は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。
Wax1における芳香族炭化水素基としては、置換基を有してもよい芳香環から(nax1+1)個の水素原子を除いた基が挙げられる。ここでの芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されない。芳香環の炭素原子数は5~30であることが好ましく、炭素原子数5~20がより好ましく、炭素原子数6~15がさらに好ましく、炭素原子数6~12が特に好ましい。該芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
また、Wax1における芳香族炭化水素基としては、2以上の置換基を有してもよい芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から(nax1+1)個の水素原子を除いた基も挙げられる。
上記の中でも、Wax1としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンまたはビフェニルから(nax1+1)個の水素原子を除いた基が好ましく、ベンゼン又はナフタレンから(nax1+1)個の水素原子を除いた基がより好ましく、ベンゼンから(nax1+1)個の水素原子を除いた基がさらに好ましい。
【0065】
Wax1における芳香族炭化水素基は、置換基を有してもよく、有していなくてもよい。前記置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。前記置換基としてのアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基としては、Yax1における環状の脂肪族炭化水素基の置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。前記置換基は、炭素原子数1~5の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~3の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、エチル基又はメチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。Wax1における芳香族炭化水素基は、置換基を有していないことが好ましい。
【0066】
前記式(a10-1)中、nax1は、1以上の整数であり、1~10の整数が好ましく、1~5の整数がより好ましく、1、2又は3がさらに好ましく、1又は2が特に好ましい。
【0067】
構成単位(a10)の具体例を以下に示す。以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す。
【0068】
【化11】
【0069】
【化12】
【0070】
【化13】
【0071】
(G)成分が有する構成単位(a10)を有する場合、構成単位(a10)は、1種でもよく2種以上でもよい。(G)成分は、構成単位(a10)を有してもよく、有しなくてもよい。
(G)成分が構成単位(a10)を有する場合、(G)成分中の構成単位(a10)の割合は、(G)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、20~80モル%が好ましく、25~70モル%がより好ましく、30~60モル%がさらに好ましく、30~50モル%が特に好ましい。
構成単位(a10)の割合が前記好ましい範囲内であると、本実施形態の表面改質層形成用組成物により形成した表面改質層上にレジストパターンを形成したときの種々のリソグラフィー特性が良好となる。
【0072】
本実施形態の表面改質層形成用組成物が含有する(G)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
(G)成分としては、例えば、構成単位(g0)の繰り返し構造からなる高分子化合物;構成単位(g0)と構成単位(a10)との繰り返し構造を含む高分子化合物;構成単位(g0)と構成単位(a11)との繰り返し構造を含む高分子化合物等が挙げられる。
【0074】
構成単位(g0)と構成単位(a10)との繰り返し構造を有する高分子化合物において、構成単位(g0)の割合は、該高分子化合物を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、20~80モル%が好ましく、30~70モル%がより好ましく、40~70モル%がさらに好ましく、50~60モル%が特に好ましい。構成単位(a10)の割合は、該高分子化合物を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、20~80モル%が好ましく、30~70モル%がより好ましく、30~60モル%がさらに好ましく、40~50モル%が特に好ましい。
【0075】
構成単位(g0)と構成単位(a11)との繰り返し構造を有する高分子化合物において、構成単位(g0)の割合は、該高分子化合物を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、20~80モル%が好ましく、30~80モル%がより好ましく、40~80モル%がさらに好ましく、50~80モル%が特に好ましい。構成単位(a11)の割合は、該高分子化合物を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、20~80モル%が好ましく、20~70モル%がより好ましく、20~60モル%がさらに好ましく、20~50モル%が特に好ましい。
【0076】
(G)成分は、各構成単位を誘導するモノマーを重合溶媒に溶解し、ここに、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソ酪酸ジメチル(例えばV-601など)等のラジカル重合開始剤を加えて重合することにより製造することができる。
あるいは、(G)成分は、構成単位(g0)を誘導するモノマーと、任意の構成単位(例えば、構成単位(a10)、構成単位(a11)等を誘導するモノマーと、を重合溶媒に溶解し、ここに、上記のようなラジカル重合開始剤を加えて重合し、その後、脱保護反応を行うことにより製造することができる。
なお、重合の際に、例えば、HS-CH-CH-CH-C(CF-OHのような連鎖移動剤を併用して用いることにより、末端に-C(CF-OH基を導入してもよい。
【0077】
(G)成分の重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算基準)は、例えば、1000~50000が好ましく、2000~40000がより好ましく、3000~30000がさらに好ましく、3000~20000が特に好ましい。
(G)成分の重量平均分子量が前記範囲であると、支持体に対するレジスト膜の密着性がより良好となる。
(G)成分の分散度(Mw/Mn)は、特に限定されず、1.0~4.0が好ましく、1.0~3.0がより好ましい。なお、Mnは数平均分子量を示す。
【0078】
(G)成分の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す。
【0079】
【化14】
【0080】
<樹脂成分(P):(P)成分>
(P)成分は、後述の一般式(p0-1)で表される構成単位(p0)を有する高分子化合物を含む。
【0081】
≪構成単位(p0)≫
構成単位(p0)は、下記一般式(p0-1)で表される構成単位である。
【0082】
【化15】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基を表し;Ypは、2価の連結基を表し;Rpは、置換基を有してもよい、炭素原子数2~20の鎖状炭化水素基を表す。]
【0083】
前記式(p0-1)中のRは、前記一般式(g0-1)中のRと同じである。Rとしては、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
【0084】
前記式(p0-1)中、Ypにおける2価の連結基としては、前記一般式(g0-1)中のYgと同様のものが挙げられる。
Ypとしては、エステル結合[-C(=O)-O-、-O-C(=O)-]、エーテル結合(-O-)、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又はこれらの2種以上の組合せが好ましく、エステル結合[-C(=O)-O-、-O-C(=O)-]がより好ましい。
【0085】
前記式(p0-1)中、Rpにおける鎖状炭化水素基は、飽和でもよく、不飽和でもよいが、飽和が好ましい。Rpにおける鎖状炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、直鎖状アルキル基がより好ましい。
Rpにおける直鎖状アルキル基は、炭素原子数2~16が好ましく、炭素原子数2~14がより好ましく、炭素原子数2~10がさらに好ましく、炭素原子数2~8が特に好ましい。
Rpにおける分岐鎖状アルキル基は、炭素原子数3~16が好ましく、炭素原子数3~16がより好ましく、炭素原子数3~10がさらに好ましく、炭素原子数3~8が特に好ましい。
【0086】
Rpにおける鎖状炭化水素基は、置換基を有してもよい。Rpにおける鎖状炭化水素基が有してもよい置換基は、炭化水素鎖が有する水素原子(-H)を置換する1価の置換基でもよく、炭化水素鎖を構成するメチレン基(-CH-)を置換する2価の置換基でもよい。
水素原子を置換する置換基としては、例えば、フッ素原子、カルボキシ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。Rpにおける鎖状炭化水素基は、水素原子を置換する置換基を有さないことが好ましい。
炭化水素鎖を構成するメチレン基を置換する2価の置換基としては、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-、-NH-C(=NH)-(Hは、アルキル基、アシル基等の置換基で置換されてもよい。)、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-等が挙げられる。2価の置換基としては、-O-が好ましい。
【0087】
Rpとしては、-(CHp2-CH(p2は1~19の整数)、又は-(CHp1-O-CH(p1は1~19の整数)が好ましい。p1及びp2は、1~15が好ましく、1~13がより好ましく、1~9がさらに好ましく、1~7が特に好ましい。
【0088】
構成単位(p0)としては、下記一般式(p0-1-1)で表される構成単位(以下、「構成単位(p01)」ともいう)又は下記一般式(p0-1-2)で表される構成単位(以下、「構成単位(p02)」ともいう)が好ましい。
【0089】
【化16】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基を表し;Yp01及びYp02は、単結合又は2価の連結基を表し;p1及びp2は、それぞれ独立に、1~19の整数を表す。]
【0090】
前記式(p0-1-1)及び(p0-1-2)中のRは、前記一般式(g0-1)中のRと同じである。Rとしては、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基が特に好ましい。
【0091】
前記式(p0-1-1)及び(p0-1-2)中、Yp01及びYp02における2価の連結基としては、前記一般式(g0-1)中のYgと同様のものが挙げられる。
Yp01及びYp02としては、単結合、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、又は直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基とエステル結合若しくはエーテル結合との組合せが好ましく、単結合又は直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基がより好ましく、単結合がさらに好ましい。前記直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基としては、炭素原子数1~5が好ましく、炭素原子数1~3がより好ましく、エチレン基又はメチレン基がさらに好ましい。
【0092】
前記式(p0-1-1)及び(p0-1-2)中、p1及びp2は、1~15が好ましく、1~13がより好ましく、1~9がさらに好ましく、1~7が特に好ましい。
【0093】
構成単位(p0)の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0094】
【化17】
【0095】
【化18】
【0096】
(P)成分が有する構成単位(p0)は、1種でもよく2種以上でもよい。構成単位(p0)は、2種以上であることが好ましい。(P)成分は、1種以上の構成単位(p01)と1種以上の構成単位(p02)とを有することが好ましい。(P)成分が2種以上の構成単位(p0)を含むことにより、支持体に対するレジスト膜の密着性をより向上させることができ、微細なレジストパターンを形成した場合でもパターン倒れが生じにくくなる。
(P)成分が、構成単位(p0)として、構成単位(p01)と構成単位(p02)とを有する場合、構成単位(p01)と構成単位(p02)とのモル比(構成単位(p01):構成単位(p02))としては、10:90~90:10が挙げられ、30:70~90:10が好ましく、40:60~80:20がより好ましく、50:50~80:20がさらに好ましい。構成単位(p01)と構成単位(p02)のモル比が前記好ましい範囲内であると、支持体に対するレジスト膜の密着性をより向上させることができる。
【0097】
(P)成分中の構成単位(p0)の割合は、(P)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましく、40モル%以上がさらにより好ましく、50モル%以上が特に好ましく、100モル%であってもよい。
構成単位(p0)の割合が前記好ましい下限値以上であると、レジスト膜と支持体との密着性がより向上し、レジストパターン形成後の残渣がより低減する。
(P)成分中の構成単位(p0)の割合は、(P)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、10~90モル%が挙げられ、20~90モル%が好ましく、30~90モル%がより好ましく、40~90モル%がさらに好ましく、50~90モル%が特に好ましい。
構成単位(g0)の割合が前記好ましい上限値以下であると、他の構成単位とのバランスを取ることができ、レジストパターンを形成したときの種々のリソグラフィー特性が良好となる。
【0098】
≪その他の構成単位≫
(P)成分は、上記構成単位(p0)に加えて、他の構成単位を有してもよい。他の構成単位としては、例えば、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)、上述の構成単位(a11)、上述の構成単位(a10)、ラクトン含有環式基を含む構成単位(a2);後述の一般式(a8-1)で表される化合物から誘導される構成単位(a8)等が挙げられる。
なかでも好ましい他の構成単位としては、構成単位(a1)及び構成単位(a11)が挙げられる。
【0099】
構成単位(a1):
(P)成分は、構成単位(a1)を有してもよい。構成単位(a1)は、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位である。
【0100】
酸解離性基としては、これまで、化学増幅型レジスト組成物用のベース樹脂の酸解離性基として提案されているものが挙げられる。
化学増幅型レジスト組成物用のベース樹脂の酸解離性基として提案されているものとして具体的には、以下に説明する「アセタール型酸解離性基」、「第3級アルキルエステル型酸解離性基」、「第3級アルキルオキシカルボニル酸解離性基」、「第2級アルキルオキシカルボニル酸解離性基」が挙げられる。
【0101】
アセタール型酸解離性基:
前記極性基のうちカルボキシ基または水酸基を保護する酸解離性基としては、例えば、下記一般式(a1-r-1)で表される酸解離性基(以下「アセタール型酸解離性基」ということがある。)が挙げられる。
【0102】
【化19】
[式中、Ra’、Ra’は水素原子またはアルキル基である。Ra’は炭化水素基であって、Ra’は、Ra’、Ra’のいずれかと結合して環を形成してもよい。]
【0103】
式(a1-r-1)中、Ra’及びRa’のうち、少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、両方が水素原子であることがより好ましい。
Ra’又はRa’がアルキル基である場合、該アルキル基としては、上記α置換アクリル酸エステルについての説明で、α位の炭素原子に結合してもよい置換基として挙げたアルキル基と同様のものが挙げられ、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましい。具体的には、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく挙げられる。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられ、メチル基またはエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0104】
式(a1-r-1)中、Ra’の炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は環状の炭化水素基が挙げられる。
該直鎖状のアルキル基は、炭素原子数が1~5であることが好ましく、炭素原子数が1~4がより好ましく、炭素原子数1または2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基またはn-ブチル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
【0105】
該分岐鎖状のアルキル基は、炭素原子数が3~10であることが好ましく、炭素原子数3~5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられ、イソプロピル基であることが好ましい。
【0106】
Ra’が環状の炭化水素基となる場合、該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0107】
Ra’の環状の炭化水素基が芳香族炭化水素基となる場合、該芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は5~30であることが好ましく、炭素原子数5~20がより好ましく、炭素原子数6~15がさらに好ましく、炭素原子数6~12が特に好ましい。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
Ra’における芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基の炭素原子数は、1~4であることが好ましく、炭素原子数1~2であることがより好ましく、炭素原子数1であることが特に好ましい。
【0108】
Ra’における環状の炭化水素基は、置換基を有してもよい。この置換基としては、例えば、上述したRax5等が挙げられる。
【0109】
Ra’が、Ra’、Ra’のいずれかと結合して環を形成する場合、該環式基としては、4~7員環が好ましく、4~6員環がより好ましい。該環式基の具体例としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。
【0110】
第3級アルキルエステル型酸解離性基:
上記極性基のうち、カルボキシ基を保護する酸解離性基としては、例えば、下記一般式(a1-r-2)で表される酸解離性基が挙げられる。
なお、下記式(a1-r-2)で表される酸解離性基のうち、アルキル基により構成されるものを、以下、便宜上「第3級アルキルエステル型酸解離性基」ということがある。
【0111】
【化20】
[式中、Ra’~Ra’はそれぞれ炭化水素基であって、Ra’、Ra’は互いに結合して環を形成してもよい。]
【0112】
Ra’の炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、鎖状もしくは環状のアルケニル基、又は、環状の炭化水素基が挙げられる。
Ra’における直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、環状の炭化水素基(単環式基である脂肪族炭化水素基、多環式基である脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基)は、前記Ra’と同様のものが挙げられる。
Ra’における鎖状もしくは環状のアルケニル基は、炭素原子数2~10のアルケニル基が好ましい。
Ra’、Ra’の炭化水素基としては、前記Ra’と同様のものが挙げられる。
【0113】
Ra’とRa’とが互いに結合して環を形成する場合、下記一般式(a1-r2-1)で表される基、下記一般式(a1-r2-2)で表される基、下記一般式(a1-r2-3)で表される基が好適に挙げられる。
一方、Ra’~Ra’が互いに結合せず、独立した炭化水素基である場合、下記一般式(a1-r2-4)で表される基が好適に挙げられる。
【0114】
【化21】
[式(a1-r2-1)中、Ra’10は、一部がハロゲン原子又はヘテロ原子含有基で置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数1~12のアルキル基を示す。Ra’11はRa’10が結合した炭素原子と共に脂肪族環式基を形成する基を示す。式(a1-r2-2)中、Yaは炭素原子である。Xaは、Yaと共に環状の炭化水素基を形成する基である。この環状の炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Ra101~Ra103は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基又は炭素原子数3~20の1価の脂肪族環状飽和炭化水素基である。この鎖状飽和炭化水素基及び脂肪族環状飽和炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Ra101~Ra103の2つ以上が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。式(a1-r2-3)中、Yaaは炭素原子である。Xaaは、Yaaと共に脂肪族環式基を形成する基である。Ra104は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。式(a1-r2-4)中、Ra’12及びRa’13は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基である。この鎖状飽和炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Ra’14は、置換基を有してもよい炭化水素基である。*は結合手を示す(以下、同様)。]
【0115】
上記の式(a1-r2-1)中、Ra’10は、一部がハロゲン原子もしくはヘテロ原子含有基で置換されていてもよい直鎖状もしくは分岐鎖状の炭素原子数1~12のアルキル基である。
【0116】
Ra’10における、直鎖状のアルキル基としては、炭素原子数1~12であり、炭素原子数1~10が好ましく、炭素原子数1~5が特に好ましい。
Ra’10における、分岐鎖状のアルキル基としては、前記Ra’と同様のものが挙げられる。
【0117】
Ra’10におけるアルキル基は、一部がハロゲン原子もしくはヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。例えば、アルキル基を構成する水素原子の一部が、ハロゲン原子又はヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。また、アルキル基を構成する炭素原子(メチレン基など)の一部が、ヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。
ここでいうヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が挙げられる。ヘテロ原子含有基としては、(-O-)、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-等が挙げられる。
【0118】
式(a1-r2-1)中、Ra’11(Ra’10が結合した炭素原子と共に形成する脂肪族環式基)は、式(a1-r-1)におけるRa’の単環式基又は多環式基である脂肪族炭化水素基(脂環式炭化水素基)として挙げた基が好ましい。その中でも、単環式の脂環式炭化水素基が好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基がより好ましい。
【0119】
式(a1-r2-2)中、XaがYaと共に形成する環状の炭化水素基としては、前記式(a1-r-1)中のRa’における環状の1価の炭化水素基(脂肪族炭化水素基)から水素原子1個以上をさらに除いた基が挙げられる。
XaがYaと共に形成する環状の炭化水素基は、置換基を有してもよい。この置換基としては、上記Ra’における環状の炭化水素基が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
式(a1-r2-2)中、Ra101~Ra103における、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。
Ra101~Ra103における、炭素原子数3~20の1価の脂肪族環状飽和炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等の単環式脂肪族飽和炭化水素基;ビシクロ[2.2.2]オクタニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカニル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカニル基、アダマンチル基等の多環式脂肪族飽和炭化水素基等が挙げられる。
Ra101~Ra103は、中でも、合成容易性の観点から、水素原子、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基が好ましく、その中でも、水素原子、メチル基、エチル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0120】
上記Ra101~Ra103で表される鎖状飽和炭化水素基、又は脂肪族環状飽和炭化水素基が有する置換基としては、例えば、上述のRax5と同様の基が挙げられる。
【0121】
Ra101~Ra103の2つ以上が互いに結合して環状構造を形成することにより生じる炭素-炭素二重結合を含む基としては、例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、メチルシクロペンテニル基、メチルシクロヘキセニル基、シクロペンチリデンエテニル基、シクロへキシリデンエテニル基等が挙げられる。これらの中でも、合成容易性の観点から、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロペンチリデンエテニル基が好ましい。
【0122】
式(a1-r2-3)中、XaaがYaaと共に形成する脂肪族環式基は、式(a1-r-1)におけるRa’の単環式基又は多環式基である脂肪族炭化水素基として挙げた基が好ましい。
式(a1-r2-3)中、Ra104における芳香族炭化水素基としては、炭素原子数5~30の芳香族炭化水素環から水素原子1個以上を除いた基が挙げられる。中でも、Ra104は、炭素原子数6~15の芳香族炭化水素環から水素原子1個以上を除いた基が好ましく、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン又はフェナントレンから水素原子1個以上を除いた基がより好ましく、ベンゼン、ナフタレン又はアントラセンから水素原子1個以上を除いた基がさらに好ましく、ベンゼン又はナフタレンから水素原子1個以上を除いた基が特に好ましく、ベンゼンから水素原子1個以上を除いた基が最も好ましい。
【0123】
式(a1-r2-3)中のRa104が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、アルキルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0124】
式(a1-r2-4)中、Ra’12及びRa’13は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基である。Ra’12及びRa’13における、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基としては、上記のRa101~Ra103における、炭素原子数1~10の1価の鎖状飽和炭化水素基と同様のものが挙げられる。この鎖状飽和炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
Ra’12及びRa’13は、中でも、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
上記Ra’12及びRa’13で表される鎖状飽和炭化水素基が置換されている場合、その置換基としては、例えば、上述のRax5と同様の基が挙げられる。
【0125】
式(a1-r2-4)中、Ra’14は、置換基を有してもよい炭化水素基である。Ra’14における炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は環状の炭化水素基が挙げられる。
【0126】
Ra’14における直鎖状のアルキル基は、炭素原子数が1~5であることが好ましく、1~4がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基又はn-ブチル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
【0127】
Ra’14における分岐鎖状のアルキル基は、炭素原子数が3~10であることが好ましく、3~5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられ、イソプロピル基であることが好ましい。
【0128】
Ra’14が環状の炭化水素基となる場合、該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、多環式基でも単環式基でもよい。
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0129】
Ra’14における芳香族炭化水素基としては、Ra104における芳香族炭化水素基と同様のものが挙げられる。中でも、Ra’14は、炭素原子数6~15の芳香族炭化水素環から水素原子1個以上を除いた基が好ましく、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン又はフェナントレンから水素原子1個以上を除いた基がより好ましく、ベンゼン、ナフタレン又はアントラセンから水素原子1個以上を除いた基がさらに好ましく、ナフタレン又はアントラセンから水素原子1個以上を除いた基が特に好ましく、ナフタレンから水素原子1個以上を除いた基が最も好ましい。
Ra’14が有していてもよい置換基としては、Ra104が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0130】
式(a1-r2-4)中のRa’14がナフチル基である場合、前記式(a1-r2-4)における第3級炭素原子と結合する位置は、ナフチル基の1位又は2位のいずれであってもよい。
式(a1-r2-4)中のRa’14がアントリル基である場合、前記式(a1-r2-4)における第3級炭素原子と結合する位置は、アントリル基の1位、2位又は9位のいずれであってもよい。
【0131】
前記式(a1-r2-1)で表される基の具体例を以下に挙げる。
【0132】
【化22】
【0133】
【化23】
【0134】
【化24】
【0135】
前記式(a1-r2-2)で表される基の具体例を以下に挙げる。
【0136】
【化25】
【0137】
【化26】
【0138】
【化27】
【0139】
前記式(a1-r2-3)で表される基の具体例を以下に挙げる。
【0140】
【化28】
【0141】
前記式(a1-r2-4)で表される基の具体例を以下に挙げる。
【0142】
【化29】
【0143】
第3級アルキルオキシカルボニル酸解離性基:
前記極性基のうち水酸基を保護する酸解離性基としては、例えば、下記一般式(a1-r-3)で表される酸解離性基(以下便宜上「第3級アルキルオキシカルボニル酸解離性基」ということがある)が挙げられる。
【0144】
【化30】
[式中、Ra’~Ra’はそれぞれアルキル基である。]
【0145】
式(a1-r-3)中、Ra’~Ra’は、それぞれ炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基がより好ましい。
また、各アルキル基の合計の炭素原子数は、3~7であることが好ましく、炭素原子数3~5であることがより好ましく、炭素原子数3~4であることが最も好ましい。
【0146】
第2級アルキルエステル型酸解離性基:
上記極性基のうち、カルボキシ基を保護する酸解離性基としては、例えば、下記一般式(a1-r-4)で表される酸解離性基が挙げられる。
【0147】
【化31】
[式中、Ra’10は、炭化水素基である。Ra’11a及びRa’11bは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基である。Ra’12は、水素原子又は炭化水素基である。Ra’10とRa’11a又はRa’11bとは、互いに結合して環を形成してもよい。Ra’11a又はRa’11bと、Ra’12とは、互いに結合して環を形成してもよい。]
【0148】
式中、Ra’10及びRa’12における炭化水素基としては、前記Ra’と同様のものが挙げられる。
式中、Ra’11a及びRa’11bにおけるアルキル基としては、前記Ra’におけるアルキル基と同様のものが挙げられる。
式中、Ra’10及びRa’12における炭化水素基、並びに、Ra’11a及びRa’11bにおけるアルキル基は置換基を有してもよい。この置換基としては、例えば、上述したRax5等が挙げられる。
【0149】
Ra’10とRa’11a又はRa’11bとは、互いに結合して環を形成してもよい。該環は、多環であっても、単環であってもよく、脂環であっても、芳香環であってもよい。
該脂環及び芳香環は、ヘテロ原子を含むものでもよい。
【0150】
Ra’10とRa’11a又はRa’11bとが、互いに結合して形成する環としては、上記の中でも、モノシクロアルケン、モノシクロアルケンの炭素原子の一部がヘテロ原子(酸素原子、硫黄原子等)で置換された環、モノシクロアルカジエンが好ましく、炭素原子数3~6のシクロアルケンが好ましく、シクロペンテン又はシクロヘキセンが好ましい。
【0151】
Ra’10とRa’11a又はRa’11bとが、互いに結合して形成する環は、縮合環であってもよい。該縮合環として、具体的には、インダン等が挙げられる。
【0152】
Ra’10とRa’11a又はRa’11bとが、互いに結合して形成する環は、置換基を有してもよい。この置換基としては、例えば、上述したRax5等が挙げられる。
【0153】
Ra’11a又はRa’11bと、Ra’12とは、互いに結合して環を形成してもよく、該環としては、Ra’10とRa’11a又はRa’11bとが、互いに結合して形成する環と同様のものが挙げられる。
【0154】
前記式(a1-r-4)で表される基の具体例を以下に挙げる。
【0155】
【化32】
【0156】
構成単位(a1)としては、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位、アクリルアミドから誘導される構成単位、ヒドロキシスチレン若しくはヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構成単位の水酸基における水素原子の少なくとも一部が前記酸分解性基を含む置換基により保護された構成単位、ビニル安息香酸若しくはビニル安息香酸誘導体から誘導される構成単位の-C(=O)-OHにおける水素原子の少なくとも一部が前記酸分解性基を含む置換基により保護された構成単位等が挙げられる。
【0157】
構成単位(a1)としては、上記のなかでも、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位が好ましい。
かかる構成単位(a1)の好ましい具体例としては、下記一般式(a1-1)、(a1-2)又は(a1-3)で表される構成単位が挙げられる。
【0158】
【化33】
[式中、Rは、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。Vaは、エーテル結合を有していてもよい2価の炭化水素基である。na1は、0~2の整数である。Raは、上記の一般式(a1-r-1)、(a1-r-2)又は(a1-r-4)で表される酸解離性基である。Waはna2+1価の炭化水素基である。na2は1~3の整数である。Raは、上記の一般式(a1-r-1)又は(a1-r-3)で表される酸解離性基である。Ya001は、単結合又は2価の連結基である。Ya01は、単結合又は2価の連結基である。Rax01は、上記の一般式(a1-r-1)、(a1-r-2)又は(a1-r-4)で表される酸解離性基である。qは、0~3の整数である。nは、1以上の整数である。ただし、n≦q×2+4である。]
【0159】
前記式(a1-1)~(a1-3)中、Rは、前記式(g0-1)中のRと同じである。Rとしては、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のフッ素化アルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
【0160】
前記式(a1-1)中、Vaにおける2価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。Vaにおける2価の炭化水素基としては、前記式(g0-1)中のYgにおける2価の連結基において例示した2価の炭化水素基と同様のものが挙げられる。
Vaは、脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素原子数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1~10の直鎖状アルキレン基がさらに好ましい。
【0161】
前記式(a1-1)中、Raは、上記の一般式(a1-r-2)又は(a1-r-4)で表される酸解離性基が好ましく、これらの中でも、一般式(a1-r2-1)で表される基、又は一般式(a1-r-4)で表される酸解離性基がより好ましい。
【0162】
前記式(a1-2)中、Waにおけるna2+1価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。該脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味し、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。前記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基、或いは直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基と構造中に環を含む脂肪族炭化水素基とを組み合わせた基が挙げられる。
前記na2+1価は、2~4価が好ましく、2又は3価がより好ましい。
前記式(a1-2)中、Raは、上記の一般式(a1-r-1)で表される酸解離性基が好ましい。
【0163】
前記式(a1-3)中、Ya001における2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有してもよい2価の炭化水素基、及びヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
Ya001としては、エステル結合[-C(=O)-O-、-O-C(=O)-]、エーテル結合(-O-)、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、芳香族炭化水素基又はこれらの組合せ、あるいは単結合であることが好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1~10であることが好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4がさらに好ましく、炭素原子数1~3が特に好ましい。
これらの中でも、Ya001としては、エステル結合[-C(=O)-O-、-O-C(=O)-]と直鎖状のアルキレン基との組み合わせ、又は単結合であることがより好ましく、単結合であることがさらに好ましい。
【0164】
前記式(a1-3)中、Ya01における2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有してもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。
Ya01は、上記の中でも、エステル結合[-C(=O)-O-、-O-C(=O)-]、エーテル結合(-O-)、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、芳香族炭化水素基又はこれらの組合せ、あるいは単結合であることが好ましい。これらの中でも、Ya01としては、エステル結合[-C(=O)-O-、-O-C(=O)-]と直鎖状のアルキレン基との組み合わせ、又は単結合であることがより好ましく、単結合であることがさらに好ましい。
【0165】
前記式(a1-3)中、Rax01は、上記の一般式(a1-r-2)又は(a1-r-4)で表される酸解離性基が好ましく、これらの中でも、一般式(a1-r-2)で表される酸解離性基がより好ましく、一般式(a1-r2-1)で表される基がさらに好ましい。
【0166】
前記式(a1-3)中、qは、0~3の整数である。qが0の場合はベンゼン構造、qが1の場合はナフタレン構造、qが2の場合はアントラセン構造、qが3の場合はテトラセン構造となる。
前記式(a1-3)中、nは、1以上の整数であり、好ましくは1~5であり、より好ましくは1~3であり、さらに好ましくは1又は2である。
前記式(a1-3)中、n≦q×2+4である。例えば、qが1でナフタレン構造である場合、該ナフタレンは、6個全部の水素原子がヒドロキシ基で置換されていてもよい。また、該ナフタレンにおいて、Ya001、-Ya01-C(=O)-O-Ra01基、及びヒドロキシ基の置換位置は特に限定されない。
【0167】
以下に構成単位(a1)の具体例を示す。以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0168】
【化34】
【0169】
【化35】
【0170】
【化36】
【0171】
【化37】
【0172】
【化38】
【0173】
【化39】
【0174】
【化40】
【0175】
【化41】
【0176】
【化42】
【0177】
【化43】
【0178】
【化44】
【0179】
【化45】
【0180】
【化46】
【0181】
【化47】
【0182】
構成単位(a1)としては、前記式(a1-1)で表される構成単位、又は前記式(a1-3)で表される構成単位が好ましく、前記式(a1-1)で表される構成単位がより好ましい。中でも、EB用又はEUV用において反応性を高められて好適なことから、酸解離性基(Ra、Rax01)が、それぞれ、上記一般式(a1-r2-1)、(a1-r2-3)、(a1-r2-4)又は(a1-r-4)で表される酸解離性基であることが好ましい。
【0183】
(P)成分が構成単位(a1)を有する場合、構成単位(a1)は、1種でもよく2種以上でもよい。(P)成分は、構成単位(a1)を有してもよく、有しなくてもよい。
【0184】
(P)成分が構成単位(a1)を有する場合、(P)成分中の構成単位(a1)の割合は、(P)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、5~80モル%が好ましく、10~75モル%がより好ましく、30~70モル%がさらに好ましく、30~60モル%が特に好ましい。
構成単位(a1)の割合が、前記好ましい範囲の下限値以上であると、レジストパターンを形成した際に、残渣が生じにくくなる。また、支持体に対するレジスト膜の密着性がより向上し、微細なレジストパターンを形成した場合でも、パターン倒れが生じにくくなる。構成単位(a1)の割合が、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、他の構成単位とのバランスを取ることができ、レジストパターンを形成したときの種々のリソグラフィー特性が良好となる。
【0185】
構成単位(a11):
(P)成分は、構成単位(a11)を有してもよい。構成単位(a11)は、上記(G)成分で説明したものと同じである。
【0186】
(P)成分が有する構成単位(a11)を有する場合、構成単位(a11)は、1種でもよく2種以上でもよい。(P)成分は、構成単位(a11)を有してもよく、有しなくてもよい。
(G)成分が有する構成単位(a11)を有する場合、(G)成分中の構成単位(a11)の割合は、(G)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、1~50モル%が挙げられ、5~40モル%が好ましく、10~30モル%がより好ましく、10~20モル%がさらに好ましい。
構成単位(a11)の割合が前記好ましい範囲内であると、本実施形態の表面改質層形成用組成物により形成した表面改質層上にレジストパターンを形成したときの種々のリソグラフィー特性が良好となる。
【0187】
本実施形態の表面改質層形成用組成物が含有する(P)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0188】
(P)成分としては、例えば、構成単位(p0)の繰り返し構造からなる高分子化合物;構成単位(p0)と構成単位(a1)との繰り返し構造を含む高分子化合物;構成単位(p0)と構成単位(a11)との繰り返し構造を含む高分子化合物;構成単位(p0)と構成単位(a1)と構成単位(a11)との繰り返し構造を含む高分子化合物;構成単位(p01)と構成単位(a1)と構成単位(a11)との繰り返し構造を含む高分子化合物;構成単位(p02)と構成単位(a1)と構成単位(a11)との繰り返し構造を含む高分子化合物;構成単位(p01)と構成単位(p02)と構成単位(a11)との繰り返し構造を含む高分子化合物;構成単位(p01)と構成単位(p02)と構成単位(a1)と構成単位(a11)との繰り返し構造を含む高分子化合物等が挙げられる。
【0189】
構成単位(p0)と構成単位(a11)との繰り返し構造を有する高分子化合物において、構成単位(p0)の割合は、該高分子化合物を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、20~90モル%が好ましく、30~90モル%がより好ましく、40~90モル%がさらに好ましく、50~90モル%が特に好ましい。構成単位(a11)の割合は、該高分子化合物を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、10~80モル%が好ましく、10~70モル%がより好ましく、10~60モル%がさらに好ましく、10~50モル%が特に好ましい。
【0190】
構成単位(p0)と構成単位(a1)と構成単位(a11)との繰り返し構造を有する高分子化合物において、構成単位(p0)の割合は、該高分子化合物を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、20~80モル%が好ましく、30~70モル%がより好ましい。構成単位(a1)の割合は、該高分子化合物を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、5~80モル%が好ましく、10~75モル%がより好ましく、30~70モル%がさらに好ましく、30~60モル%が特に好ましい。構成単位(a11)の割合は、該高分子化合物を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、5~40モル%が好ましく、10~30モル%がより好ましく、10~20モル%がさらに好ましい。
【0191】
(P)成分は、各構成単位を誘導するモノマーを重合溶媒に溶解し、ここに、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソ酪酸ジメチル(例えばV-601など)等のラジカル重合開始剤を加えて重合することにより製造することができる。
あるいは、(P)成分は、構成単位(p0)を誘導するモノマーと、任意の構成単位(例えば、構成単位(a1)、構成単位(a11)等を誘導するモノマーと、を重合溶媒に溶解し、ここに、上記のようなラジカル重合開始剤を加えて重合し、その後、脱保護反応を行うことにより製造することができる。
なお、重合の際に、例えば、HS-CH-CH-CH-C(CF-OHのような連鎖移動剤を併用して用いることにより、末端に-C(CF-OH基を導入してもよい。
【0192】
(P)成分の重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算基準)は、例えば、1000~1000000が好ましく、100000~600000がより好ましく、150000~500000がさらに好ましく、200000~400000が特に好ましい。
(P)成分の重量平均分子量が前記範囲であると、支持体に対するレジスト膜の密着性がより良好となる。
(P)成分の分散度(Mw/Mn)は、特に限定されず、1.0~4.0が好ましく、1.0~3.0がより好ましい。なお、Mnは数平均分子量を示す。
【0193】
(P)成分の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
以下の各式中、Rαは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す。
【0194】
【化48】
【0195】
【化49】
【0196】
【化50】
【0197】
【化51】
【0198】
【化52】
【0199】
【化53】
【0200】
本実施形態の表面改質層形成用組成物における(P)成分の含有量は、(G)成分及び(P)成分の合計質量100質量部に対して、5~70質量部が好ましく、5~60質量部がより好ましく、5~50質量部がさらに好ましく、10~50質量部が特に好ましい。
(P)成分の含有量を、前記の好ましい範囲とすることで、支持体に対するレジスト膜の密着性をより向上させることができる。
【0201】
<その他成分>
本実施形態の表面改質層形成用組成物は、上記(G)成分及び(P)成分以外のその他成分を含有してもよい。その他成分としては、たとえば、有機溶剤等が挙げられる。
【0202】
有機溶剤としては、(G)成分及び(P)成分を溶解して均一な溶液とすることができるものであればよい。有機溶剤としては、たとえば、一般的な化学増幅型レジスト組成物の有機溶剤として用いられているものが挙げられる。
【0203】
有機溶剤としては、たとえば、γ-ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい]; ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤などが挙げられる。
【0204】
有機溶剤は、一種を単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。例えば、2-ヘプタノン等のケトン系溶剤を用いて、(G)成分及び(P)成分を溶解し、PGMEA等の希釈用溶媒を用いて希釈してもよい。有機溶剤は、例えば、表面改質層形成用組成物の(G)成分及び(P)成分の合計含有量が、0.01~5質量%、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.1~1質量%となるように用いてもよい。(G)成分及び(P)成分の合計含有量が前記好ましい下限値以上であると、レジスト膜と支持体との密着性がより高くなる。(G)成分及び(P)成分の合計含有量が前記好ましい上限値以下であると、表面改質層形成用組成物が適度な粘度を有し、支持体上に均一に塗布しやすくなる。
【0205】
本実施形態の表面改質層形成用組成物は、(G)成分、(P)成分及び有機溶剤を含有するものが好ましく、(G)成分(P)成分及び有機溶剤からなるものがより好ましい。
【0206】
本実施形態の表面改質層形成用組成物は、支持体とレジスト膜との間に設けられる表面改質層を形成するために用いられる。本実施形態の表面改質層形成用組成物による表面改質層の形成は、後述のように、支持体上に、本実施形態の表面改質層形成用組成物を塗布し、ベークすることで行うことができる。そのようにして形成した表面改質層上に、レジスト組成物を塗布し、ベークすることで、レジスト膜を形成することができる。このように、本実施形態の表面改質層形成用組成物を用いて、支持体とレジスト膜との間に、表面改質層を形成することができる。
【0207】
<支持体>
本実施形態の表面改質層形成用組成物を適用する支持体は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。支持体としては、例えば、電子部品用の基板、これに所定の配線パターンが形成されたもの等が挙げられる。支持体の具体例としては、例えば、シリコンウェーハ;銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板;及びガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、金等が挙げられる。
【0208】
支持体は、基板上に加工層が成膜されたものでもよい。加工層としては、Si、SiO2、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等種々のLow-k膜及びそのストッパー膜等が挙げられる。
支持体は、基板上又は前記加工層上に、ハードマスク層が成膜されたものでもよい。ハードマスク層は、無機系材料で形成されてもよく、有機系材料で形成されてもよい。ハードマスク層を形成するための無機系材料としては、例えば、ケイ素酸化膜(SiO膜)、ケイ素窒化膜(Si膜)、及びケイ素酸化窒化膜(SiON膜)等が挙げられる。ハードマスク層を形成するための有機系材料としては、例えば、ノボラック樹脂等が挙げられる。
【0209】
<レジスト組成物>
本実施形態の表面改質層形成用組成物を適用するレジスト組成物は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。レジスト組成物は、市販のものを特に制限なく用いることができる。
【0210】
レジスト組成物は、化学増幅型レジスト組成物であることが好ましい。化学増幅型レジスト組成物としては、露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物が挙げられる。かかるレジスト組成物は、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)(以下「(A)成分」ともいう)を含有する。レジスト組成物は、(1)露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下「(B)成分」ともいう)をさらに含有するものであってもよく;(2)(A)成分が露光により酸を発生する成分であってもよく;(3)(A)成分が露光により酸を発生する成分であり、且つ、さらに(B)成分を含有するものであってもよい。
レジスト組成物は、さらに、塩基成分(D)(以下、「(D)成分」ともいう)、有機カルボン酸、並びにリンのオキソ酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(E)(以下、「(E)成分」ともいう)、フッ素添加剤成分(F)成分(以下、「(F)成分」ともいう)、及び有機溶剤成分(S)成分(以下、「(S)成分」ともいう)等を含有してもよい。
【0211】
レジスト組成物は、ポジ型レジスト組成物であってもよく、ネガ型レジスト組成物であってもよい。レジスト組成物は、レジストパターン形成時の現像処理にアルカリ現像液を用いるアルカリ現像プロセス用であってもよく、該現像処理に有機溶剤を含む現像液(有機系現像液)を用いる溶剤現像プロセス用であってもよい。レジスト組成物は、アルカリ現像プロセス用であることが好ましい。
【0212】
≪基材成分(A)≫
(A)成分は、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂成分(A1)(以下「(A1)成分」ともいう)を含むことが好ましい。
【0213】
・(A1)成分について
(A1)成分は、上述の構成単位(a1)を有することが好ましい。(A1)成分が有してもよい他の構成単位としては、例えば、上述の構成単位(a10);ラクトン含有環式基を含む構成単位(a2);後述の一般式(a8-1)で表される化合物から誘導される構成単位(a8)などが挙げられる。
【0214】
構成単位(a1):
構成単位(a1)についての説明は、前記(P)成分におけるものと同じである。
【0215】
(A1)成分が有する構成単位(a1)は、1種でもよく2種以上でもよい。
構成単位(a1)としては、電子線やEUVによるリソグラフィーでの特性(感度、形状等)をより高められやすいことから、前記式(a1-1)で表される構成単位、又は前記式(a1-3)で表される構成単位がより好ましい。
中でも、EB用又はEUV用において反応性を高められて好適なことから、酸解離性基(Ra、Rax01)が、それぞれ、上記の一般式(a1-r2-1)、(a1-r2-3)、(a1-r2-4)又は(a1-r-4)で表される酸解離性基であることが好ましく、その中でも環式基であるものを選択することが特に好ましい。
【0216】
(A1)成分中の構成単位(a1)の割合は、該(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、5~80モル%が好ましく、10~75モル%がより好ましく、30~70モル%がさらに好ましく、40~70モル%が特に好ましい。
構成単位(a1)の割合を、前記の好ましい範囲の下限値以上とすることによって、感度、解像性、ラフネス改善等のリソグラフィー特性が向上する。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、他の構成単位とのバランスを取ることができ、種々のリソグラフィー特性が良好となる。
【0217】
構成単位(a10):
構成単位(a10)についての説明は、前記(G)成分におけるものと同じである。
【0218】
(A1)成分が有する構成単位(a10)は、1種でもよく2種以上でもよい。(A1)成分は、構成単位(a10)を有してもよく、有しなくてもよいが、構成単位(a10)を有することが好ましい。
(A1)成分が構成単位(a10)を有する場合、(A1)成分中の構成単位(a10)の割合は、(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、20~80モル%が好ましく、25~70モル%がより好ましく、30~60モル%がさらに好ましく、30~50モル%が特に好ましい。
構成単位(a10)の割合を下限値以上とすることにより、感度がより高められやすくなる。一方、上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとりやすくなる。
【0219】
構成単位(a2):
(A1)成分は、ラクトン含有環式基を含む構成単位(a2)(但し、構成単位(a1)に該当するものを除く)を有してもよい。
【0220】
「ラクトン含有環式基」とは、その環骨格中に-O-C(=O)-を含む環(ラクトン環)を含有する環式基を示す。ラクトン環をひとつ目の環として数え、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。ラクトン含有環式基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。
構成単位(a2)におけるラクトン含有環式基としては、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。具体的には、下記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0221】
【化54】
[式中、Ra’21はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、-COOR”、-OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり;R”は水素原子、アルキル基、又は、ラクトン含有環式基であり;A”は酸素原子(-O-)もしくは硫黄原子(-S-)を含んでいてもよい炭素原子数1~5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子であり、n’は0~2の整数であり、m’は0または1である。*は結合手を示す(以下、同様)。]
【0222】
前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)中、Ra’21におけるアルキル基としては、炭素原子数1~6のアルキル基が好ましい。該アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
Ra’21におけるアルコキシ基としては、炭素原子数1~6のアルコキシ基が好ましい。該アルコキシ基は、直鎖状または分岐鎖状であることが好ましい。具体的には、前記Ra’21におけるアルキル基として挙げたアルキル基と酸素原子(-O-)とが連結した基が挙げられる。
Ra’21におけるハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
Ra’21におけるハロゲン化アルキル基としては、前記Ra’21におけるアルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン化アルキル基としては、フッ素化アルキル基が好ましく、特にパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0223】
Ra’21における-COOR”、-OC(=O)R”において、R”はいずれも水素原子、アルキル基、又は、ラクトン含有環式基である。
R”におけるアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、炭素原子数は1~15が好ましい。
R”が直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基の場合は、炭素原子数1~10であることが好ましく、炭素原子数1~5であることがさらに好ましく、メチル基またはエチル基であることが特に好ましい。
R”が環状のアルキル基の場合は、炭素原子数3~15であることが好ましく、炭素原子数4~12であることがさらに好ましく、炭素原子数5~10が最も好ましい。具体的には、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
R”におけるラクトン含有環式基としては、前記一般式(a2-r-1)~(a2-r-7)でそれぞれ表される基と同様のものが挙げられる。
Ra’21におけるヒドロキシアルキル基としては、炭素原子数が1~6であるものが好ましく、具体的には、前記Ra’21におけるアルキル基の水素原子の少なくとも1つが水酸基で置換された基が挙げられる。
【0224】
Ra’21としては、上記の中でも、それぞれ独立に水素原子又はシアノ基であることが好ましい。
【0225】
前記一般式(a2-r-2)、(a2-r-3)、(a2-r-5)中、A”における炭素原子数1~5のアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。該アルキレン基が酸素原子または硫黄原子を含む場合、その具体例としては、前記アルキレン基の末端または炭素原子間に-O-または-S-が介在する基が挙げられ、例えば、-O-CH-、-CH-O-CH-、-S-CH-、-CH-S-CH-等が挙げられる。A”としては、炭素原子数1~5のアルキレン基または-O-が好ましく、炭素原子数1~5のアルキレン基がより好ましく、メチレン基が最も好ましい。
【0226】
構成単位(a2)としては、なかでも、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位が好ましい。
【0227】
(A1)成分が有する構成単位(a2)は、1種でもよく2種以上でもよい。(A1)成分は、構成単位(a2)を有してもよく、有しなくてもよい。
(A1)成分が構成単位(a2)を有する場合、構成単位(a2)の割合は、当該(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、1~20モル%であることが好ましく、1~15モル%であることがより好ましく、1~10モル%であることがさらに好ましい。
構成単位(a2)の割合を好ましい下限値以上とすると、前述した効果によって、構成単位(a2)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下であると、他の構成単位とのバランスを取ることができ、種々のリソグラフィー特性が良好となる。
【0228】
構成単位(a8):
構成単位(a8)は、下記一般式(a8-1)で表される化合物から誘導される構成単位である。
【0229】
【化55】
[式中、Wは、重合性基含有基である。Yax2は、単結合又は(nax2+1)価の連結基である。Yax2とWとは縮合環を形成していてもよい。Rは炭素原子数1~12のフッ素化アルキル基である。Rはフッ素原子を有してもよい炭素原子数1~12の有機基又は水素原子である。R及びYax2は、相互に結合して環構造を形成していてもよい。nax2は、1~3の整数である。]
【0230】
の重合性基含有基における「重合性基」とは、重合性基を有する化合物がラジカル重合等により重合することを可能とする基であり、例えばエチレン性二重結合などの炭素原子間の多重結合を含む基をいう。
【0231】
重合性基含有基としては、重合性基のみから構成される基でもよいし、重合性基と該重合性基以外の他の基とから構成される基でもよい。該重合性基以外の他の基としては、置換基を有してもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が挙げられる。
重合性基含有基としては、例えば、化学式:C(RX11)(RX12)=C(RX13)-Yax0-で表される基が好適に挙げられる。
この化学式中、RX11、RX12及びRX13は、それぞれ、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基であり、Yax0は、単結合または2価の連結基である。
【0232】
Yax2とWとが形成する縮合環としては、W部位の重合性基とYax2とが形成する縮合環、W部位の重合性基以外の他の基とYax2とが形成する縮合環が挙げられる。
Yax2とWとが形成する縮合環は、置換基を有してもよい。
【0233】
(A1)成分が有する構成単位(a8)は、1種でもよく2種以上でもよい。(A1)成分は、構成単位(a8)を有してもよく、有しなくてもよい。
(A1)成分における構成単位(a8)の割合は、(A1)成分を構成する全構成単位の合計(100モル%)に対して、0~50モル%であることが好ましく、0~30モル%であることがより好ましい。
【0234】
レジスト組成物が含有する(A1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0235】
(A1)成分としては、例えば、構成単位(a1)と構成単位(a10)との繰り返し構造を含む高分子化合物;構成単位(a1)と構成単位(a10)と構成単位(a2)との繰り返し構造を含む高分子化合物等が挙げられる。
【0236】
(A1)成分は、各構成単位を誘導するモノマーを重合溶媒に溶解し、ここに、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソ酪酸ジメチル(例えばV-601など)等のラジカル重合開始剤を加えて重合することにより製造することができる。
【0237】
・(A2)成分について
本実施形態のレジスト組成物は、(A)成分として、前記(A1)成分に該当しない、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(以下「(A2)成分」という。)を併用してもよい。
(A2)成分としては、特に限定されず、化学増幅型レジスト組成物用の基材成分として従来から知られている多数のものから任意に選択して用いればよい。
(A2)成分は、高分子化合物又は低分子化合物の1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0238】
≪酸発生剤成分(B)≫
(B)成分としては、特に限定されず、これまで化学増幅型レジスト組成物用の酸発生剤として提案されているものを用いることができる。
このような酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤;オキシムスルホネート系酸発生剤;ビスアルキル又はビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤;ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤;イミノスルホネート系酸発生剤;ジスルホン系酸発生剤など多種のものが挙げられる。
【0239】
レジスト組成物における(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0~30質量部が好ましく、0~20質量部がより好ましく、0~10質量部がさらに好ましく、0~8質量部が特に好ましい。
(B)成分の含有量を、前記の好ましい範囲とすることで、レジスト組成物の各成分を有機溶剤に溶解した際、均一な溶液が得られやすく、レジスト組成物としての保存安定性が良好となるため好ましい。
【0240】
≪塩基成分(D)≫
(D)成分は、レジスト組成物において露光により発生する酸をトラップするクエンチャー(酸拡散制御剤)として作用するものである。
(D)成分としては、例えば、露光により分解して酸拡散制御性を失う光崩壊性塩基(D1)(以下「(D1)成分」という。)、該(D1)成分に該当しない含窒素有機化合物(D2)(以下「(D2)成分」という。)等が挙げられる。
【0241】
・(D1)成分について
(D1)成分としては、露光により分解して酸拡散制御性を失うものであれば特に限定されず、下記一般式(d1-1)~(d1-3)のいずれかで表される化合物が挙げられる。
【0242】
【化56】
[式中、Rd~Rdは置換基を有してもよい環式基、置換基を有してもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有してもよい鎖状のアルケニル基である。但し、式(d1-2)中のRdにおける、S原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子は結合していないものとする。Ydは単結合又は2価の連結基である。mは1以上の整数であって、Mm+はそれぞれ独立にm価の有機カチオンである。]
【0243】
m+における有機カチオンとしては、スルホニウムカチオン、又はヨードニウムカチオンが好ましい。
【0244】
(D1)成分は、上記(d1-1)~(d1-3)成分のいずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
レジスト組成物が(D1)成分を含有する場合、レジスト組成物中の(D1)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5~15質量部が好ましく、1~12質量部がより好ましく、2~10質量部がさらに好ましい。
【0245】
・(D2)成分について
(D2)成分としては、酸拡散制御剤として作用するもので、かつ、(D1)成分に該当しないものであれば特に限定されず、公知のものから任意に用いればよい。なかでも、脂肪族アミンが好ましく、この中でも特に第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミンがより好ましい。
【0246】
(D2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
レジスト組成物が(D2)成分を含有する場合、レジスト組成物中、(D2)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、通常、0.01~5質量部の範囲で用いられる。上記範囲とすることにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等が向上する。
【0247】
≪有機カルボン酸、並びにリンのオキソ酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(E)≫
レジスト組成物には、感度劣化の防止や、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等の向上の目的で、任意の成分として、有機カルボン酸、並びにリンのオキソ酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(E)(以下「(E)成分」という)を含有させることができる。
有機カルボン酸として、具体的には、酢酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等が挙げられ、その中でも、サリチル酸が好ましい。
リンのオキソ酸としては、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられ、これらの中でも特にホスホン酸が好ましい。
【0248】
本実施形態のレジスト組成物において、(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物が(E)成分を含有する場合、(E)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.05~3質量部がより好ましい。
【0249】
≪フッ素添加剤成分(F)≫
(F)成分は、レジスト膜に撥水性を付与するために使用され、(A)成分とは別の樹脂として用いられることでリソグラフィー特性を向上させることができる。
(F)成分としては、例えば、特開2010-002870号公報、特開2010-032994号公報、特開2010-277043号公報、特開2011-13569号公報、特開2011-128226号公報に記載の含フッ素高分子化合物を用いることができる。
【0250】
(F)成分の重量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、1000~50000が好ましく、5000~40000がより好ましく、10000~30000が最も好ましい。この範囲の上限値以下であると、レジストとして用いるのにレジスト用溶剤への充分な溶解性があり、この範囲の下限値以上であると、レジスト膜の撥水性が良好である。
(F)成分の分散度(Mw/Mn)は、1.0~5.0が好ましく、1.0~3.0がより好ましく、1.0~2.5が最も好ましい。
【0251】
(F)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物が(F)成分を含有する場合、(F)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5~10質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましい。
【0252】
≪有機溶剤成分(S)≫
(S)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。なかでも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル(EL)、シクロヘキサノンが好ましい。
【0253】
(S)成分としては、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶剤も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよい。
(S)成分としては、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ-ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者との質量比が、好ましくは70:30~95:5とされる。
(S)成分の使用量は、特に限定されず、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が0.1~20質量%、好ましくは0.2~15質量%の範囲内となるように(S)成分は用いられる。
【0254】
本実施形態の表面改質層形成用組成物は、(G)成分に加えて、(P)成分を含有する。これにより、支持体上に、本実施形態の表面改質層形成用組成物により表面改質層を形成し、さらに前記表面改質層上にレジスト膜を成膜した際に、支持体に対するレジスト膜の密着性を高めることができる。さらに、レジスト膜の露光及び現像によりレジストパターンを形成する際の残渣の発生を抑制することができる。
そのような効果を奏する理由としては、以下のように推測される。
支持体上に表面改質層を形成する際のベークにより、(G)成分が有する構成単位(g0)中のエポキシ基が開環し、支持体と架橋する。一方、表面改質層上に、レジスト膜を成膜すると、(P)成分中の構成単位(p0)とレジスト膜との親和性により、表面改質層にレジスト膜が吸着する。これらが相乗的に作用することにより、支持体に対するレジスト膜の密着性が高まり、レジストパターン形成後の残渣が低減される、と考えられる。
【0255】
(レジストパターン形成方法)
本発明の第2の態様に係るレジストパターン形成方法は、支持体上に、第1の態様に係る表面改質層形成用組成物を用いて表面改質層を形成する工程(i)と、前記支持体上に形成された前記表面改質層上に、レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程(ii)と、前記レジスト膜を露光する工程(iii)と、露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程(iv)とを有する。
【0256】
<工程(i)>
支持体は、上記第1の態様で挙げたものと同様のものを用いることができる。支持体上に、表面改質層形成用組成物を用いて表面改質層を形成する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
例えば、表面改質層形成用組成物を、支持体上に、スピンナー等を用いる従来公知の方法により塗布し、ベーク処理を施して有機溶剤を揮発させることにより、表面改質層を形成することができる。
【0257】
ベーク処理におけるベーク温度としては、80~400℃が挙げられ、100~300℃が好ましく、160℃~300℃がより好ましく、190~300℃がさらに好ましく、190~250℃が特に好ましい。ベーク温度を前記好ましい範囲内とすることで、支持体に対するレジスト膜の密着性向上効果を十分に得ることができる。
ベーク処理時間としては、30秒~10分が挙げられ、50秒~10分が好ましく、60秒~10分がより好ましい。ベーク時間を前記好ましい範囲内とすることで、支持体に対するレジスト膜の密着性向上効果を十分に得ることができる。
【0258】
表面改質層の膜厚としては、1~5nmが挙げられ、2~4nmが好ましい。表面改質層の膜厚を前記範囲内とすることにより、支持体に対するレジスト膜の密着性向上効果を十分に得ることができる。また、レジストパターン形成後の残渣を低減することができる。
【0259】
<工程(ii)>
レジスト組成物は、上記第1の態様で挙げたものと同様のものを用いることができる。表面改質層上に、レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
例えば、レジスト組成物を、表面改質層上に、スピンナー等用いる従来公知の方法により塗布する。次いで、ベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理を、例えば80~150℃の温度条件にて、60秒~10分施してレジスト膜を形成する。
【0260】
レジスト膜の膜厚としては、10~300nmが挙げられ、15~200nmが好ましく、20~100nmがより好ましく、20~50nmがさらに好ましい。レジスト膜の膜厚を前記範囲内とすることにより、レジストパターンを高解像度で形成でき、エッチングに対する充分な耐性を得ることができる。
【0261】
<工程(iii)>
レジスト膜の露光は、従来公知の方法で行うことができる。レジスト膜に対し、例えば、電子線描画装置、ArF露光装置等の露光装置を用いて、所定のパターンが形成されたマスク(マスクパターン)を介した露光、又はマスクパターンを介さない電子線の直接照射による描画等による選択的露光を行う。その後、ベーク(ポストエクスポージャーベーク(PEB))処理を、例えば、80~150℃の温度条件にて、60秒~10分施す。
【0262】
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV(極端紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。
【0263】
レジスト膜の露光方法は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)であってもよい。
液浸露光は、予めレジスト膜と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たし、その状態で露光(浸漬露光)を行う露光方法である。
液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、かつ、露光されるレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒が好ましく、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
液浸媒体としては、水が好ましく用いられる。
【0264】
<工程(iv)>
露光後のレジスト膜の現像処理は、従来公知の方法で行うことができる。現像処理は、アルカリ現像プロセスの場合は、アルカリ現像液を用い、溶剤現像プロセスの場合は、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)を用いて行う。現像処理は、アルカリ現像が好ましい。
【0265】
アルカリ現像プロセスで現像処理に用いるアルカリ現像液としては、例えば0.1~10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液が挙げられる。
溶剤現像プロセスで現像処理に用いる有機系現像液が含有する有機溶剤としては、(A)成分(露光前の(A)成分)を溶解し得るものであればよく、公知の有機溶剤の中から適宜選択できる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、ニトリル系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0266】
現像処理は、公知の現像方法により実施することが可能であり、例えば現像液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、支持体表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している支持体上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出し続ける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0267】
現像処理後、好ましくはリンス処理を行う。リンス処理は、アルカリ現像プロセスの場合は、純水を用いた水リンスが好ましく、溶剤現像プロセスの場合は、有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
溶剤現像プロセスの場合、前記現像処理またはリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液またはリンス液を、超臨界流体により除去する処理を行ってもよい。
現像処理後またはリンス処理後、乾燥を行う。また、場合によっては、上記現像処理後にベーク処理(ポストベーク)を行ってもよい。
【0268】
リンス液を用いたリンス処理(洗浄処理)は、公知のリンス方法により実施できる。該リンス処理の方法としては、例えば一定速度で回転している支持体上にリンス液を塗出し続ける方法(回転塗布法)、リンス液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【0269】
以上説明した本実施形態のレジストパターン形成方法によれば、第1態様に係る表面改質層形成用組成物を用いて支持体上に表面改質層を形成し、前記表面改質層上にレジスト膜を形成するため、支持体に対するレジスト膜の密着性が高められる。そのため、微細なパターンを形成した場合であっても、レジストパターンのパターン倒れを抑制することができる。また、レジストパターン形成時の残渣の発生を抑制することができる。
【0270】
上述した実施形態の表面改質層形成用組成物、及び、上述した実施形態のレジストパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、レジスト組成物、レジスト溶剤、現像液、リンス液など)は、金属、ハロゲンを含む金属塩、酸、アルカリ、硫黄原子又はリン原子を含む成分等の不純物を含まないことが好ましい。ここで、金属原子を含む不純物としては、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mn、Mg、Al、Cr、Ni、Zn、Ag、Sn、Pb、Li、またはこれらの塩などを挙げることができる。これら材料に含まれる不純物の含有量としては、200ppb以下が好ましく、1ppb以下がより好ましく、100ppt(parts per trillion)以下が更に好ましく、10ppt以下が特に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が最も好ましい。
【実施例0271】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0272】
<表面改質層形成用組成物の調製>
表1~3に示す各成分を混合して溶解し、各例の表面改質層形成用組成物をそれぞれ調製した。樹脂成分は、2-ヘプタノンで溶解し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにより希釈して、固形分濃度1300ppm(0.13質量%)の溶液とした。
【0273】
【表1】
【0274】
【表2】
【0275】
【表3】
【0276】
表1~3中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。
(G)-1:下記式(G-1)で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は7,000、分子量分散度(Mw/Mn)2.80。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m=40/60。
(G)-2:下記式(G-2)で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は7,000、分子量分散度(Mw/Mn)2.80。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m=80/20。
(G)-3:下記式(G-3)で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は7,000、分子量分散度(Mw/Mn)2.80。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n=40/40/20。
【0277】
【化57】
【0278】
(P)-1:下記式(P-1)で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は240,000、分子量分散度(Mw/Mn)2.50。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n/o=35/40/15/10。
(P)-2:下記式(P-2)で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は240,000、分子量分散度(Mw/Mn)2.50。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n/o=35/40/15/10。
(P)-3:下記式(P-3)で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は240,000、分子量分散度(Mw/Mn)2.50。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n/o=35/40/15/10。
(P)-4:下記式(P-4)で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は240,000、分子量分散度(Mw/Mn)2.50。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n/o=35/40/15/10。
(P)-5:下記式(P-5)で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は240,000、分子量分散度(Mw/Mn)2.50。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n/o=35/40/15/10。
(P)-6:下記式(P-6)で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は240,000、分子量分散度(Mw/Mn)2.50。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n/o=35/40/15/10。
(P)-7:下記式(P-7)で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は240,000、分子量分散度(Mw/Mn)2.50。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n/o=35/40/15/10。
(P)-8:下記式(P-8)で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は240,000、分子量分散度(Mw/Mn)2.50。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n/o=35/40/15/10。
(P)-9:下記式(P-9)で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は240,000、分子量分散度(Mw/Mn)2.50。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n/o=35/40/15/10。
(P)-10:下記式(P-10)で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は240,000、分子量分散度(Mw/Mn)2.50。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n/o=35/40/15/10。
(P)-11:下記式(P-11)で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は240,000、分子量分散度(Mw/Mn)2.50。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n/o=35/40/15/10。
(P)-12:下記式(P-12)で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は240,000、分子量分散度(Mw/Mn)2.50。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n/o=35/40/15/10。
(P)-13:下記式(P-13)で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は240,000、分子量分散度(Mw/Mn)2.50。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n/o=35/40/15/10。
(P)-14:下記式(P-2)で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は240,000、分子量分散度(Mw/Mn)2.50。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n=55/35/10。
(P)-15:下記式(P-15)で表される高分子化合物。GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は240,000、分子量分散度(Mw/Mn)2.50。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m/n=55/35/10。
【0279】
【化58】
【0280】
【化59】
【0281】
【化60】
【0282】
【化61】
【0283】
【化62】
【0284】
【化63】
【0285】
<レジストパターンの形成>
(実施例1~29、比較例1~3)
シリコン基板上及びガラス基板上に、表4~6に示す表面改質層形成用組成物を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、表4~6に示すベーク処理を行うことにより、膜厚3nmの表面改質層を形成した。次いで、前記表面改質層上に、ポジ型EBレジスト(OEBR-CAP1000AE、東京応化工業株式会社製)を、スピンナーを用いて塗布し、温度100℃でシリコン基板では60秒間、ガラス基板では10分間のベークをすることで、膜厚30nmのレジスト膜を形成した。次に、前記レジスト膜に対し、電子線描画装置JEOL JBX-9300FS(日本電子株式会社製)を用い、加速電圧100kVにて、ターゲットサイズをライン幅20nm、25nm又は30nmの1:1ラインアンドスペースパターン(以下「LSパターン」)とする描画(露光)を行った。その後、80℃でシリコン基板では60秒間、ガラス基板では10分間の露光後加熱(PEB)処理を行った。
次いで、23℃にて、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液「NMD-3」(商品名、東京応化工業株式会社製)を用いて、30秒間のアルカリ現像を行った。
その後、純水を用いて15秒間水リンスを行った。
その結果、ライン幅30nm、25nm又は20nmの1:1のLSパターンが形成された。
【0286】
[LSパターン形状の評価]
前記<レジストパターンの形成>によって形成されたLSパターンの形状を、測長SEM(走査型電子顕微鏡、加速電圧800V、商品名:SU-8000、日立ハイテクノロジー社製)により観察した。シリコン基板を用いた場合とガラス基板を用いた場合とで、評価結果に差はなかった。
【0287】
(判定方法)
ライン幅30nm、25nm及び20nmの1:1のLSパターン形状を、以下の評価基準により判定した。その結果を、表4~6の「30nm LS」、「25nm LS」、及び「20nm LS」にそれぞれ示した。表4~6の「判定」には、それらの総合評価を示した。
<評価基準>
A:残渣なし、且つレジストの密着効果十分あり(パターン倒れなし)。
B:若干の残渣あり、且つ密着効果十分あり(パターン倒れなし)。
C:若干の残渣あり、密着効果あり(一部パターン倒れあり)。
D:多くの残渣あり、又は密着効果なし(パターン形成せず)。
【0288】
【表4】
【0289】
【表5】
【0290】
【表6】
【0291】
表4~6に示す結果から、表面改質層形成用組成物(M1)-1~(M1)-21を用いた実施例1~29では、いずれのLSパターンにおいても、レジストパターン形成後の残渣がないか少なく、且つレジスト膜の基板に対する密着性も良好であることが確認された。一般的に、30nm LSパターンに比べて、より微細な20nm LSパターンの方が、残渣が残りやすく、密着効果が得られにくい。実施例1~29では、20nm LSパターンにおいても、残渣が少なく、密着効果が得られた。一方、表面改質層形成用組成物(M2)-1~(M2)-3を用いた比較例1~3では、レジスト膜の基板に対する密着性が不良でパターン形成できないか、レジストパターン形成できた場合でも多くの残渣が生じた。
(P)成分は、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位(a1)を有する方が好ましく、また一般式(p0-1)で表される構成単位(p0)を2種以上有する方が好ましいことが確認された。表面改質層を形成する際のベーク温度は、190℃以上が好ましいことが確認された。