(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160639
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】重合性不飽和基を有する樹脂、硬化性樹脂組成物、硬化物および物品
(51)【国際特許分類】
C08G 59/14 20060101AFI20241107BHJP
C08G 2/30 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
C08G59/14
C08G2/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075858
(22)【出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 駿介
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンチャン
【テーマコード(参考)】
4J032
4J036
【Fターム(参考)】
4J032CA04
4J032CA12
4J032CA43
4J032CB04
4J032CC01
4J032CE03
4J032CF03
4J032CG01
4J036AE05
4J036AJ24
4J036AK10
4J036AK11
4J036CA21
4J036CD03
4J036CD07
4J036JA07
4J036JA09
4J036JA10
(57)【要約】
【課題】高い耐熱性、低い弾性率、低い誘電率および低い誘電正接を有する硬化物を形成可能な樹脂を提供すること。
【解決手段】フェノール性水酸基含有樹脂と、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物との反応生成物である重合性不飽和基を有する樹脂であり、フェノール性水酸基含有樹脂が、フルオレン化合物(9位に置換基を有しない)と、フェノール性水酸基含有化合物と、式(1)で表される化合物との反応生成物であり、式(1)中、Arは、置換基を有していてもよい芳香環式基であり、R
1は、各々独立して、水素原子または炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基であり、Xは、脱離基である、重合性不飽和基を有する樹脂。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性不飽和基を有する樹脂であって、
前記重合性不飽和基を有する樹脂が、
フェノール性水酸基含有樹脂と、
エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物と、
の反応生成物であり、
前記フェノール性水酸基含有樹脂が、
フルオレン化合物(ただし、当該フルオレン化合物は、9位に置換基を有しない)と、
フェノール性水酸基含有化合物と、
一般式(1)で表される化合物と、
【化1】
の反応生成物であり、
一般式(1)中、Arは、置換基を有していてもよい芳香環式基であり、
R
1は、各々独立して、水素原子または炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基であり、
Xは、脱離基である、重合性不飽和基を有する樹脂。
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物のモル(M1)に対する前記フルオレン化合物のモル(Mf)の比(Mf/M1)が、0.01~0.99である、請求項1に記載の重合性不飽和基を有する樹脂。
【請求項3】
前記フェノール性水酸基含有樹脂が、一般式(5)で表され、
【化2】
一般式(5)中、
Arは、各々独立して、一般式(1)で定義したとおりであり、
pは、平均値であり、0より大きく、10以下の数であり、
R
1は、一般式(1)で定義したとおりであり、
Zは、各々独立して、一般式(2A)または一般式(3A)で表される構造単位であり、
【化3】
一般式(2A)中、R
2は、各々独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子であり、
mは、各々独立して、0~4の整数であり、
*は、一般式(5)との結合手であり、
一般式(3A)中、R
3は、各々独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子であるか、あるいは、2つのR
3は、それらが結合する炭素原子と一緒になって環を形成していてもよく、
nは、0~3の整数であり、
*は、一般式(5)との結合手であり、
Z’は、各々独立して、一般式(2A’)または一般式(3A’)で表される構造単位であり、
【化4】
一般式(2A’)中、R
2’は、各々独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子であり、
m’は、各々独立して、0~4の整数であり、
*は、一般式(5)との結合手であり、
一般式(3A’)中、R
3’は、各々独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子であるか、あるいは、2つのR
3’は、それらが結合する炭素原子と一緒になって環を形成していてもよく、
n’は、0~4の整数であり、
*は、一般式(5)との結合手であり、
前記フェノール性水酸基含有樹脂が、一般式(2A)および一般式(2A’)からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位と、一般式(3A)および一般式(3A’)からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位とを含む、請求項1に記載の重合性不飽和基を有する樹脂。
【請求項4】
前記フェノール性水酸基含有樹脂が、一般式(5-1)で表される化合物の少なくとも1種を含み、
【化5】
一般式(5-1)中、
ArおよびR
1は、一般式(1)で定義したとおりであり、
Zは、一般式(5)で定義したとおりであり、
R
3’およびn’は、一般式(3A’)で定義したとおりであり、
pは、1または2である、請求項3に記載の重合性不飽和基を有する樹脂。
【請求項5】
前記フェノール性水酸基含有樹脂の水酸基当量が100~2000g/当量である、請求項1に記載の重合性不飽和基を有する樹脂。
【請求項6】
前記数フェノール性水酸基含有樹脂の平均分子量が100~10000である、請求項1に記載の重合性不飽和基を有する樹脂。
【請求項7】
Arが、Ar1-Y-Ar1であり、
Ar1は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香環式基であり、
Yは、単結合、炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基、-P(=O)Ra-基、酸素原子、硫黄原子またはスルホニル基であり、
Raは、芳香環式基である、請求項1に記載の重合性不飽和基を有する樹脂。
【請求項8】
請求項1に記載の重合性不飽和基を有する樹脂と、
光重合開始剤と、
を含む、硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化物からなる塗膜を有する、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性不飽和基を有する樹脂、硬化性樹脂組成物、硬化物および物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線などの活性エネルギー線により硬化可能な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物や、熱により硬化可能な熱硬化性樹脂組成物などの硬化性樹脂組成物は、インキ、塗料、コーティング剤、接着剤、光学部材などの分野において広く用いられている。
【0003】
例えば、プリント配線基板あるいは絶縁層といったコーティング剤に使用される材料として、特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
なかでも、コーティング剤は、用途に応じて、高い耐熱性、低い弾性率、低い誘電率および低い誘電正接を有する硬化物を形成できることが求められる。
【0006】
そこで、本発明は、高い耐熱性、低い弾性率、低い誘電率および低い誘電正接を有する硬化物を形成可能な樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る重合性不飽和基を有する樹脂は、
前記重合性不飽和基を有する樹脂が、
フェノール性水酸基含有樹脂と、
エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物と、
の反応生成物であり、
前記フェノール性水酸基含有樹脂が、
フルオレン化合物(ただし、当該フルオレン化合物は、9位に置換基を有しない)と、
フェノール性水酸基含有化合物と、
一般式(1)で表される化合物と、
【化1】
の反応生成物であり、
一般式(1)中、Arは、置換基を有していてもよい芳香環式基であり、
R
1は、各々独立して、水素原子または炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基であり、
Xは、脱離基である、重合性不飽和基を有する樹脂である。これにより、高い耐熱性、低い弾性率、低い誘電率および低い誘電正接を有する硬化物を形成可能である。
【0008】
本発明に係る重合性不飽和基を有する樹脂の一実施形態では、前記一般式(1)で表される化合物のモル(M1)に対する前記フルオレン化合物のモル(Mf)の比(Mf/M1)が、0.01~0.99である。
【0009】
本発明に係る重合性不飽和基を有する樹脂の一実施形態では、前記フェノール性水酸基含有樹脂が、一般式(5)で表され、
【化2】
一般式(5)中、
Arは、各々独立して、一般式(1)で定義したとおりであり、
pは、平均値であり、0より大きく、10以下の数であり、
R
1は、一般式(1)で定義したとおりであり、
Zは、各々独立して、一般式(2A)または一般式(3A)で表される構造単位であり、
【化3】
一般式(2A)中、R
2は、各々独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子であり、
mは、各々独立して、0~4の整数であり、
*は、一般式(5)との結合手であり、
一般式(3A)中、R
3は、各々独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子であるか、あるいは、2つのR
3は、それらが結合する炭素原子と一緒になって環を形成していてもよく、
nは、0~3の整数であり、
*は、一般式(5)との結合手であり、
Z’は、各々独立して、一般式(2A’)または一般式(3A’)で表される構造単位であり、
【化4】
一般式(2A’)中、R
2’は、各々独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子であり、
m’は、各々独立して、0~4の整数であり、
*は、一般式(5)との結合手であり、
一般式(3A’)中、R
3’は、各々独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子であるか、あるいは、2つのR
3’は、それらが結合する炭素原子と一緒になって環を形成していてもよく、
n’は、0~4の整数であり、
*は、一般式(5)との結合手であり、
前記フェノール性水酸基含有樹脂が、一般式(2A)および一般式(2A’)からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位と、一般式(3A)および一般式(3A’)からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位とを含む。
【0010】
本発明に係る重合性不飽和基を有する樹脂の一実施形態では、前記フェノール性水酸基含有樹脂が、一般式(5-1)で表される化合物の少なくとも1種を含み、
【化5】
一般式(5-1)中、
ArおよびR
1は、一般式(1)で定義したとおりであり、
Zは、一般式(5)で定義したとおりであり、
R
3’およびn’は、一般式(3A’)で定義したとおりであり、
pは、1または2である。
【0011】
本発明に係る重合性不飽和基を有する樹脂の一実施形態では、前記フェノール性水酸基含有樹脂の水酸基当量が100~2000g/当量である。
【0012】
本発明に係る重合性不飽和基を有する樹脂の一実施形態では、前記数フェノール性水酸基含有樹脂の数平均分子量が100~10000である。
【0013】
本発明に係る重合性不飽和基を有する樹脂の一実施形態では、Arが、Ar1-Y-Ar1であり、
Ar1は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香環式基であり、
Yは、単結合、炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基、-P(=O)Ra-基、酸素原子、硫黄原子またはスルホニル基であり、
Raは、芳香環式基である。
【0014】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、
上記いずれかに記載の重合性不飽和基を有する樹脂と、
光重合開始剤と、
を含む、硬化性樹脂組成物である。これにより、高い耐熱性、低い弾性率、低い誘電率および低い誘電正接を有する硬化物を形成可能である。
【0015】
本発明に係る硬化物は、上記硬化性樹脂組成物の硬化物である。
【0016】
本発明に係る物品は、上記硬化物からなる塗膜を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高い耐熱性、低い弾性率、低い誘電率および低い誘電正接を有する硬化物を形成可能な樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0019】
本発明において、2以上の実施形態を任意に組み合わせることができる。
【0020】
用語
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートからなる群より選択される1種以上を表す。
【0021】
本明細書における「反応原料」とは、化合または分解などの化学反応により目的の化合物を得るために用いられ、目的の化合物の化学構造を部分的に構成する化合物を指す。用語「反応原料」には、溶剤、触媒など化学反応の助剤の役割を担う物質であって、目的の化合物の化学構造を部分的に構成しない物質は含まれない。
【0022】
本明細書における「構造単位」とは、反応または重合時に形成される化学構造の単位(繰り返し単位)を指す。換言すると、反応または重合より形成される生成化合物において、当該反応または重合に関与する化学結合の構造以外の部分構造をいい、いわゆる残基をいう。
【0023】
本明細書における脂肪族炭化水素基は、直鎖型、分岐型および環式型のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、例えば、1~20である。
【0024】
本明細書における一価の脂肪族炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基およびシクロアルキニル基を包含する。
【0025】
本明細書におけるアルキル基は、直鎖型および分岐型のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、3-ペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、クミル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基およびドデシル基などが挙げられる。
【0026】
本明細書におけるアルケニル基は、直鎖型および分岐型のいずれでもよく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ブタジエニル基、ペンテル基、ヘキセル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基およびドデセニル基などが挙げられる。
【0027】
本明細書におけるアルキニル基は、直鎖型および分岐型のいずれでもよく、例えば、エチニル基、プロパギル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基およびドデシニル基などが挙げられる。
【0028】
本明細書におけるシクロアルキル基は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキル基の炭素原子数は、例えば、3~30である。シクロアルキル基は、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、アダマンチル基、メチルシクロヘキシル基およびエチルシクロヘキシル基などが挙げられる。
【0029】
本明細書におけるシクロアルケニル基は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルケニル基の炭素原子数は、例えば、3~30である。シクロアルケニル基は、例えば、シクロヘキセニル基、メチルシクロヘキセニル基およびエチルシクロヘキセニル基などが挙げられる。
【0030】
本明細書におけるシクロアルキニル基は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキニル基の炭素原子数は、例えば、4~30である。シクロアルキニル基は、例えば、シクロヘキシニル基、メチルシクロヘキシニル基およびエチルシクロヘキシニル基などが挙げられる。
【0031】
本明細書における二価の脂肪族炭化水素基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基およびシクロアルキニレン基を包含する。
【0032】
本明細書におけるアルキレン基は、直鎖型および分岐型のいずれでもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基およびドデシレン基などが挙げられる。
【0033】
本明細書におけるアルケニレン基は、直鎖型および分岐型のいずれでもよく、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ブタジエニレン基、オクテニレン基、デセニレン基およびドデセニレン基などが挙げられる。
【0034】
本明細書におけるアルキニレン基は、直鎖型および分岐型のいずれでもよく、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ブタジニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、ヘプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基およびドデシニレン基などが挙げられる。
【0035】
本明細書におけるアルコキシ基は、アルキル-O-の構造を有し、構造中のアルキル部分に関しては、アルキル基の定義が適用される。アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基およびアリルオキシ基などが挙げられる。
【0036】
本明細書におけるシクロアルキレン基は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキレン基の炭素原子数は、例えば、3~30である。シクロアルキレン基は、例えば、シクロアルキル基で例示した基に対応する2価基である。
【0037】
本明細書におけるシクロアルケニレン基は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルケニレン基の炭素原子数は、例えば、3~30である。シクロアルケニレン基は、例えば、シクロアルケニル基で例示した基に対応する2価基である。
【0038】
本明細書におけるシクロアルキニレン基は、単環の基であってもよく、多環の基であってもよい。シクロアルキニレン基の炭素原子数は、例えば、4~30である。シクロアルキニレン基は、例えば、シクロアルキニル基で例示した基に対応する2価基である。
【0039】
本明細書における芳香環は、芳香族性を有する、単環、複数の環または縮合環からなる炭化水素環である。芳香環の炭素原子数は、例えば、6~20である。芳香環は、例えば、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、インデン環、アントラセン環およびアダマンタンなどが挙げられる。芳香環式基は、芳香環の残基である。
【0040】
本明細書におけるアリール基は、1価の芳香族炭化水素基である。アリール基の炭素原子数は、例えば、6~20である。アリール基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基およびフェナントリル基などが挙げられる。
【0041】
本明細書におけるアリールアルキル基は、アルキル基の1個以上、好ましくは1個または2個、特に1個の水素原子がアリール基で置換されたアルキル基であり、アリール基およびアルキル基に関しては、上記のアリール基およびアルキル基の記載が適用される。アリールアルキル基は、例えば、ベンジル基およびフェネチル基などが挙げられる。
【0042】
本明細書におけるハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。
【0043】
本明細書における数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」という。)を用いて、後述する実施例に記載の測定条件で測定した値とする。
【0044】
本明細書における水酸基当量は、JIS K 0070に準拠した中和滴定法により測定した値とする。
【0045】
本明細書に記載の材料、成分、化合物、樹脂、触媒および溶剤は、別段の記載がない限り、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
本明細書において、数値範囲は、別段の記載がない限り、その範囲の上限値および下限値を含むことを意図している。例えば、100~2000g/当量は、100g/当量以上2000g/当量以下の範囲を意味する。
【0047】
本明細書において、第1、第2、工程(1)、工程(2)、工程(3)などの符号は、ある要素、材料、工程などを他の要素、材料、工程などと区別するために使用しており、その要素または材料の多少および工程の順序を限定することを意図するものではない。
【0048】
本明細書において、一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物、一般式(3)で表される化合物、一般式(5)で表されるフェノール性水酸基含有樹脂、一般式(5-0)で表されるフェノール性水酸基含有樹脂、一般式(5-0’)で表されるフェノール性水酸基含有樹脂および一般式(5-1)で表される化合物をそれぞれ、単に「化合物(1)」、「化合物(2)」、「化合物(3)」、「樹脂(5)」、「樹脂(5-0)」、「樹脂(5-0’)」および「化合物(5-1)」ということがある。
【0049】
本明細書において、一般式(1A)で表される構造単位、一般式(2A)で表される構造単位、一般式(2A’)で表される構造単位、一般式(3A)で表される構造単位および一般式(3A’)で表される構造単位をそれぞれ、単に「構造単位(1A)」、「構造単位(2A)」、「構造単位(2A’)」、「構造単位(3A)」および「構造単位(3A’)」ということがある。
【0050】
本明細書において、本発明の重合性不飽和基を有する樹脂を「第1樹脂」、本発明の重合性不飽和基を有する樹脂以外の重合性不飽和基を有する樹脂を「第2樹脂」ということがある。
【0051】
(重合性不飽和基を有する樹脂)
本発明に係る重合性不飽和基を有する樹脂は、
フェノール性水酸基含有樹脂と、
エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物と、
の反応生成物であり、
前記フェノール性水酸基含有樹脂が、
フルオレン化合物(ただし、当該フルオレン化合物は、9位に置換基を有しない)と、
フェノール性水酸基含有化合物と、
一般式(1)で表される化合物と、
【化6】
の反応生成物であり、
一般式(1)中、Arは、置換基を有していてもよい芳香環式基であり、
R
1は、各々独立して、水素原子または炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基であり、
Xは、脱離基である、重合性不飽和基を有する樹脂である。
【0052】
フェノール性水酸基含有樹脂
フェノール性水酸基含有樹脂は、フルオレン化合物(ただし、当該フルオレン化合物は、9位に置換基を有しない)、フェノール性水酸基含有化合物および一般式(1)で表される化合物の反応生成物である。換言すると、フルオレン化合物、フェノール性水酸基含有化合物および一般式(1)で表される化合物を反応原料とする。
【0053】
フルオレン化合物
フルオレン化合物は、フルオレンの9位に置換基を有しこと以外は、特に限定されない。フルオレン化合物は、非置換であってもよいし、9位以外の位置で置換されていてもよい。
【0054】
好適な一実施形態では、フルオレン化合物は、非置換のフルオレンである。
【0055】
フルオレン化合物としては、例えば、一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化7】
一般式(2)中、
R
2は、各々独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子であり、
mは、各々独立して、0~4の整数である。
【0056】
R2の脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~4のアルキル基が挙げられる。アルキル基は、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基である。
【0057】
R2のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、インデニル基およびインダニル基などが挙げられる。
【0058】
R2のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基およびクミル基などが挙げられる。
【0059】
R2のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基およびブトキシ基などが挙げられる。
【0060】
R2のハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素および臭素などが挙げられる。
【0061】
mは、0、1、2、3または4の整数であり、好ましくは、0、1または2の整数である。
【0062】
好適な一実施形態では、2つのmは、同一である。
【0063】
2つのmがいずれも1以上である場合、2つのベンゼン環のR2は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0064】
mが2以上である場合、同一のベンゼン環のR2は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0065】
好適な別の実施形態では、化合物(2)は、2つのmが0である、すなわち、化合物(2)は、非置換のフルオレンである。
【0066】
フェノール性水酸基含有化合物
フェノール性水酸基含有化合物は、分子内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物である。
【0067】
フェノール性水酸基含有化合物としては、一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【化8】
一般式(3)中、
R
3”は、各々独立して、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子であるか、あるいは、2つのR
3”は、それらが結合する炭素原子と一緒になって環を形成していてもよく、
n”は、0~4の整数である。
【0068】
R3”の脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~4のアルキル基が挙げられる。好適な一実施形態では、アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基からなる群より選択される1種以上である。
【0069】
R3”のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基およびナフチル基などが挙げられる。
【0070】
R3”のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基およびクミル基などが挙げられる。
【0071】
R3”のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基およびブトキシ基などが挙げられる。
【0072】
R3”のハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素および臭素などが挙げられる。
【0073】
好適な一実施形態では、R3”は、アルキル基およびアリール基からなる群より選択される1種以上である。
【0074】
2つのR3”は、それらが結合している炭素原子と一緒になって環を形成していてもよい。環としては、例えば、環を構成する炭素原子数6~20の炭化水素環などの環が挙げられる。環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、アダマンタン環、インダン環およびインデン環などが挙げられる。2つのR3”が形成する環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基およびハロゲン原子などが挙げられる。また、2つのR3”が形成する環は、ヘテロ原子を含む複素環であってもよい。
【0075】
n”は、0、1、2、3または4の整数であり、好ましくは0、1または2である。
【0076】
好適な一実施形態では、n”が2の場合、2つのR3”は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、ベンゼン環またはナフタレン環を形成している。
【0077】
好適な一実施形態では、化合物(3)は、フェノール、о-クレゾール、2,6-ジメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、1-ナフトールおよび2-ナフトールからなる群より選択される1種以上である。
【0078】
一般式(1)で表される化合物
化合物(1)は、フルオレン構造単位の9位の水素原子をアラルキルに変性することができる。また、化合物(1)は、フェノール性水酸基含有化合物とも反応することができるため、結合剤として機能し得る。
【化9】
一般式(1)中、
Arは、置換基を有していてもよい芳香環式基であり、
R
1は、各々独立して、水素原子または炭素原子数1~4の脂肪族炭化水素基であり、
Xは、脱離基である。
【0079】
Arとしての芳香環式基は、特に限定されず、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基およびアントラセニレン基などが挙げられる。フェニレン基の場合、1,4位に結合手があることが好ましく、ナフチレン基の場合、2,6位に結合手があることが好ましく、アントラセニレン基の場合、9,10位に結合手があることが好ましい。
【0080】
芳香環式基における置換基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、アリール基、アリールアルキル基、アルコキシ基およびハロゲン原子などが挙げられる。
【0081】
芳香環式基の置換基の脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~4のアルキル基などが挙げられる。好適な一実施形態では、アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピレン基およびブチレン基からなる群より選択される1種以上である。
【0082】
芳香環式基の置換基のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基およびナフチル基などが挙げられる。
【0083】
芳香環式基の置換基のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基およびクミル基などが挙げられる。
【0084】
芳香環式基の置換基のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基およびブトキシ基などが挙げられる。
【0085】
芳香環式基の置換基のハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素および臭素などが挙げられる。
【0086】
好適な一実施形態では、芳香環式基の置換基は、アルキル基アリール基からなる群より選択される1種以上である。
【0087】
R1の脂肪族炭化水素基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基などが挙げられる。
【0088】
好適な一実施形態では、R1は、水素原子およびメチルからなる群より選択される1種以上である。
【0089】
R1は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。4つのR1は、同一であることが好ましい。
【0090】
Xは、例えば、水酸基、ハロゲン原子およびアルコキシ基などが挙げられる。
【0091】
Xのハロゲン原子としては、例えば、塩素、臭素およびヨウ素などが挙げられる。
【0092】
Xのアルコキシ基としては、例えば、炭素原子数1~4のアルコキシ基などが挙げられる。好適な一実施形態では、アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基およびブトキシ基からなる群より選択される1種以上である。
【0093】
好適な一実施形態では、Xは、塩素、臭素、ヨウ素、水酸基およびメトキシ基からなる群より選択される1種以上である。
【0094】
2つのXは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0095】
一実施形態では、一般式(1)において、
Arが、Ar1-Y-Ar1であり、
Ar1は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香環式基であり、
Yは、単結合、炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基、-P(=O)Ra-基、酸素原子、硫黄原子またはスルホニル基であり、
Raは、芳香環式基である。
【0096】
好適な一実施形態では、化合物(1)は、1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、2,6-ビス(クロロメチル)ナフタレンおよび4,4’-ビス(クロロメチル)ビフェニルからなる群より選択される1種以上である。
【0097】
フェノール性水酸基含有樹脂の製造方法
フェノール性水酸基含有樹脂の製造方法の一例を説明する。
【0098】
フルオレン化合物、フェノール性水酸基含有化合物および化合物(1)の量は、例えば、以下のとおりである。
【0099】
化合物(3)の導入の観点から、フルオレン化合物は、化合物(1)の合計1モルに対し、1モル未満であることが好ましい。フルオレン化合物の量は、例えば、化合物(1)の合計1モルに対し、0.01モル以上または0.05モル以上であり、また、0.99モル以下または0.90モル以下である。一実施形態では、フルオレン化合物の量は、化合物(1)の合計1モルに対し、0.01~0.99モルである。
【0100】
一実施形態では、一般式(1)で表される化合物の合計モル(M1)に対するフルオレン化合物のモル(Mf)の比(Mf/M1)が、0.01~0.99である。別の実施形態では、Mf/M1は、0.01以上、0.10以上、0.20以上、0.30以上、0.40以上、0.50以上、0.60以上、0.70以上、0.80以上、0.90以上または0.95以上である。さらに別の実施形態では、Mf/M1は、0.99以下、0.90以下、0.80以下、0.70以下、0.60以下、0.50以下、0.40以下、0.30以下、0.20以下または0.10以下である。さらに別の実施形態では、Mf/M1は、0.35~0.50である。
【0101】
フルオレン化合物と化合物(1)は、実質的に全量が反応するため、反応に使用するフルオレン化合物と化合物(1)のモル比は、得られるフェノール性水酸基含有樹脂におけるフルオレン化合物から誘導される構造単位と化合物(1)から誘導される構造単位のモル比と実質的に同じである。
【0102】
フェノール性水酸基含有化合物の量は、例えば、化合物(1)の合計1モルに対し、フェノール性水酸基含有化合物の水酸基が0.01モル以上または0.02モル以上となる量であり、また、10モル以下または9.5モル以下となる量である。一実施形態では、フェノール性水酸基含有化合物の量は、化合物(1)の合計1モルに対し、フェノール性水酸基含有化合物の水酸基が0.01~10モルとなる量である。フェノール性水酸基含有化合物については、未反応で残存するフェノール性水酸基含有化合物も発生するが、反応したフェノール性水酸基含有化合物の量は、フェノール性水酸基含有樹脂の水酸基当量から算出することができる。
【0103】
フェノール性水酸基含有樹脂は、例えば、以下の工程1および工程2により製造することができる。
【0104】
工程1
フルオレン化合物の全量と、化合物(1)の全量と、フェノール性水酸基含有化合物の一部の量を、アルカリ触媒存在下、有機溶剤中で、10~100℃で反応させる。
【0105】
有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、ソルベッソ(商品名)、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドなどが挙げられる。この他、例えば、特開2023-028337号に記載の有機溶剤を用いてもよい。好適な一実施形態では、有機溶剤は、トルエン、キシレン、メシチレン、ソルベッソ、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドからなる群より選択される1種以上である
【0106】
有機溶剤の量は、特に限定されず、例えば、化合物(1)およびフルオレン化合物の合計質量に対して50~500質量%である。
【0107】
アルカリ触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、メトキシナトリウム、エトキシナトリウム、tert-ブトキシナトリウム、メトキシカリウム、エトキシカリウム、tert-ブトキシカリウム、トリエチルアミン、ピリジンおよびジメチルアミノピリジンなどが挙げられる。好適な一実施形態では、アルカリ触媒は、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群より選択される1種以上である。アルカリ触媒は、例えば、1~50質量%の水溶液として用いてもよい。
【0108】
アルカリ触媒の量は、例えば、化合物(1)のモル数に対し、10~1000モル%である。
【0109】
工程1では、相間移動触媒を用いてもよい。相間移動触媒としては、例えば、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムヨージドおよびベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシドなどのアンモニウム系;テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムヨージドおよびテトラブチルホスホニウムヒドロキシドなどのホスホニウム系;12-クラウン-4-エーテル、15-クラウン-5-エーテル、18-クラウン-6-エーテルおよびトリベンゾ-18-クラウン-6-エーテルなどのクラウンエーテル系が挙げられる。好適な一実施形態では、相間移動触媒は、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミドおよびベンジルトリエチルアンモニウムヨージドからなる群より選択される1種以上である。
【0110】
添加剤を使用してもよい。添加剤としては、例えば、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムおよびヨウ化セシウムなどのハロゲン化物が挙げられる。好適な一実施形態では、添加剤は、ヨウ化ナトリウムおよびヨウ化カリウムからなる群より選択される1種以上である。
【0111】
工程1の反応温度は、例えば、10~100℃である。反応性の点から、反応温度は、好ましくは20~80℃である。
【0112】
工程1の反応時間は、例えば、1~72時間である。
【0113】
反応終了後、適宜、反応混合物を上層と下層に分離させ、水層である下層を除去して生成物を得る。その際、必要に応じて水を添加して塩を溶解させて下層を除去してもよい。また、その水層は塩基性、中性または酸性でもよい。中和に用いる中和剤としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、第一リン酸ソーダおよび塩化アンモニウムなどの無機酸;メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸およびシュウ酸などの有機酸などが挙げられる。
【0114】
工程2
工程1で得られた生成物に、フェノール性水酸基含有化合物の残りを加え、酸触媒の存在下で、60~250℃で反応させる。
【0115】
工程2で使用するフェノール性水酸基含有化合物は、工程1で使用するフェノール性水酸基含有化合物と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0116】
酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸およびリン酸などの無機酸;メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸およびシュウ酸などの有機酸;三フッ化ホウ素、塩化アルミニウムおよび塩化亜鉛などのルイス酸などが挙げられる。好適な一実施形態では、酸触媒は、パラトルエンスルホン酸およびメタンスルホン酸からなる群より選択される1種以上である。
【0117】
酸触媒の量は、例えば、反応原料の総質量に対して、0.01~10質量%である。
【0118】
工程2の反応温度は、例えば、60~250℃である。好適な一実施形態では、反応温度は、80~240℃である。
【0119】
工程2の反応時間は、例えば、1~72時間である。
【0120】
工程2の反応終了後、中和処理および水洗処理を行い、未反応の反応原料、有機溶剤などを減圧加熱条件下で留去してフェノール性水酸基含有樹脂を得る。
【0121】
本発明のフェノール性水酸基含有樹脂の製造方法は、例えば、工程1に代えて、フルオレン化合物と化合物(1)を、触媒の存在下、有機溶剤中で、10~100℃で反応させ、次いでフェノール性水酸基含有化合物の一部を添加して、10~100℃で反応させたのち、水層を除去し、水洗処理を行ってもよい。その際、工程1の生成物は末端に反応性基を有することができる。その反応性基は、使用する化合物の種類に応じて、エーテル、ハロゲン基または水酸基であってもよい。
【0122】
一実施形態では、化合物(2)は、一般式(2A)または一般式(2A’)で表される構造単位を生成することができ、化合物(3)は、一般式(3A)または一般式(3A’)で表される構造単位を生成することができ、化合物(1)は、一般式(1A)で表される構造単位を生成することができる。
【化10】
一般式(2A)および(2A’)中、
mおよびm’は、一般式(2)のmと同様であり、
R
2およびR
2’は、一般式(2)のR
2と同様であり、
*は、各々結合手を表し、
一般式(3A)または(3A’)中、
nは、0~3の整数であり、好ましくは0、1または2であり
n’は、0~4の整数であり、好ましくは0、1または2であり、
R
3およびR
3’は、一般式(3)のR
3”と同様であり、
*は、各々結合手を表し、
一般式(1A)中、
ArおよびR
1は、一般式(1)のArおよびR
1と同様であり、
*は、結合手を表す。
【0123】
フェノール性水酸基含有樹脂は、構造単位(2A)および構造単位(2A’)からなる群より選択される1種以上に、構造単位(1A)が結合した構造を含むことができる。
【0124】
好適な一実施形態では、フェノール性水酸基含有樹脂の少なくとも一方の分子鎖末端は、構造単位(3A’)である。別の好適な一実施形態では、フェノール性水酸基含有樹脂の両方の分子鎖末端は、構造単位(3A’)である。
【0125】
好適な一実施形態では、フェノール性水酸基含有樹脂は、構造単位(2A)および構造単位(2A’)からなる群より選択される1種以上の構造単位、構造単位(3A)および構造単位(3A’)からなる群より選択される1種以上の構造単位ならびに構造単位(1A)から構成される。構造単位(2A)の結合手には構造単位(1A)の結合手が結合していてもよい。構造単位(2A’)を有する場合、その構造単位は分子鎖末端を構成する。
【0126】
好適な一実施形態では、フェノール性水酸基含有樹脂の少なくとも一方の分子鎖末端は、構造単位(3A’)である。別の好適な一実施形態では、フェノール性水酸基含有樹脂の両方の分子鎖末端が構造単位(3A’)である。
【0127】
一般式(1A)で表される構造単位の好ましい例としては、以下が挙げられる。
【化11】
【0128】
一実施形態では、フェノール性水酸基含有樹脂が、以下の一般式(5)で表され、
【化12】
一般式(5)中、
Arは、各々独立して、一般式(1)で定義したとおりであり、
pは、平均値であり、0より大きく、10以下の数であり、
R
1は、一般式(1)で定義したとおりであり、
Zは、各々独立して、一般式(2A)または一般式(3A)で表される構造単位であり、
Z’は、各々独立して、一般式(2A’)または一般式(3A’)で表される構造単位であり、
ただし、フェノール性水酸基含有樹脂は、一般式(2A)および一般式(2A’)からなる群より選択される1種以上の構造単位と、一般式(3A)および一般式(3A’)からなる群より選択される1種以上の構造単位とを含む。
【0129】
好適な一実施形態では、樹脂(5)は、一般式(5)のpが1以上の自然数である化合物の混合物であり、構造単位(2A)およびまたは構造単位(2A’)からなる群より選択される1種以上の構造単位と、構造単位(3A)および構造単位または(3A’)からなる群より選択される1種以上の構造単位との両方を分子内に含む化合物を含む。
【0130】
フェノール性水酸基含有樹脂中、構造単位(3A)および構造単位(3A’)からなる群より選択される1種以上の構造単位の合計1モルに対し、構造単位(2A)および構造単位(2A’)からなる群より選択される1種以上の構造単位の合計が0.1~10モルであることが好ましく、0.5~9.5モルであることがより好ましい。
【0131】
好適な一実施形態では、フェノール性水酸基含有樹脂は、以下の一般式(5-0)で表される。
【化13】
一般式(5-0)中、Ar、R
1、Z、R
3’、n’およびpは、一般式(5)で定義したとおりである。
【0132】
別の好適な一実施形態では、フェノール性水酸基含有樹脂は、以下の一般式(5-0’)で表される。
【化14】
一般式(5-0’)中、
R
2およびmは、一般式(2A)で定義したとおりであり、
R
3およびnは、一般式(3A)で定義したとおりであり、
R
3’およびn’は、一般式(3A’)で定義したとおりであり、
Ar’は、
【化15】
であり、
sは、平均値であり、0より大きい数であり、
tは、平均値であり、0以上の数であり、
sを付した構造単位およびtを付した構造単位の順序は限定されない。
【0133】
sは、例えば、1~10の数または1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10である。tは、例えば、0~10の数または0、1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10である。sとtの和は、例えば、10以下である。
【0134】
樹脂(5)および樹脂(5-0)は、各々、pを付した構造単位を1以上の自然数で有する化合物の混合物であってもよい。
【0135】
好適な一実施形態では、樹脂(5)は、一般式(5-1)で表される化合物の少なくとも1種を含む。
【化16】
一般式(5-1)中、
ArおよびR
1は、一般式(1)で定義したとおりであり、
pは、1または2であり、
R
3‘およびn’は、一般式(3A’)で定義したとおりであり、
Zは、一般式(5)で定義したとおりである。
【0136】
一実施形態では、化合物(5-1)において、少なくとも1つのZは、構造単位(2A)である。
【0137】
本発明のフェノール性水酸基樹脂は、本発明のフェノール性水酸基樹脂の混合物であってもよく、当該混合物が、一般式(6)で表される化合物を含んでいてもよい。
【化17】
一般式(6)中、
ArおよびR
1は、一般式(1)で定義したとおりであり、
R
3’およびn’は、一般式(3A’)で定義したとおりである。
【0138】
フェノール性水酸基含有樹脂の数平均分子量(Mn)は、例えば、100~10000の範囲であってもよく、好ましくは200~8000の範囲である。一実施形態では、フェノール性水酸基含有樹脂のMnは、300~1200の範囲である。
【0139】
フェノール性水酸基含有樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、100~50000の範囲であってもよく、好ましくは300~4000の範囲である。
【0140】
フェノール性水酸基含有樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、1~5の範囲であり、好ましくは1~4である。
【0141】
フェノール性水酸基含有樹脂の水酸基当量は、例えば、100~2000g/当量の範囲であり、好ましくは200~1800g/当量の範囲である。一実施形態では、フェノール性水酸基含有樹脂の水酸基当量は、200~400g/当量の範囲である。
【0142】
エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物
エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、分子構造中に(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基を有すること以外は特に限定されない。エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシブチルメタクリレートグリシジルエーテル、エポキシシクロへキシルメチルアクリレートおよびエポキシシクロへキシルメチルメタクリレートなどのグリシジル基を有する(メタ)アクリレートモノマー;ジヒドロキシベンゼンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテルおよびビスフェノールジグリシジルエーテルなどのジグリシジルエーテル化合物のモノ(メタ)アクリレート化物などが挙げられる。好適な一実施形態では、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物は、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシブチルメタクリレートグリシジルエーテル、エポキシシクロへキシルメチルアクリレートおよびエポキシシクロへキシルメチルメタクリレートからなる群より選択される1種以上である。
【0143】
好適な一実施形態では、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物の量は、フェノール性水酸基含有樹脂が有するフェノール性水酸基1モルに対して、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物が有するエポキシ基のモル数が0.9~1.1モルとなる範囲、またはエポキシ基のモル数が0.95~1.1モルとなる範囲である。
【0144】
フェノール性水酸基含有樹脂およびエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物の合計質量は、重合性不飽和基を有する樹脂の原料の固形分の合計質量に対して、70質量%以上であることが好ましい。
【0145】
重合性不飽和基を有する樹脂の製造方法
重合性不飽和基を有する樹脂の製造方法としては、特に制限されず、どのような方法にて製造してもよい。例えば、フェノール性水酸基含有樹脂と、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物とを含有する反応原料の全てを一括で反応させる方法で製造してもよい。
【0146】
また、フェノール水酸基含有樹脂と、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物との反応は、必要に応じて有機溶剤中で行うこともできる。また、必要に応じて、重合禁止剤や酸化防止剤を用いることもできる。
【0147】
塩基性触媒としては、例えば、トリエチルアミンなどのアミン化合物が挙げられる。この他、例えば、特開2023-028337号に記載の塩基性触媒を用いてもよい。塩基性触媒は、10~55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用してもよい。
【0148】
塩基性触媒の量は、適宜調節すればよい。例えば、塩基性触媒の量は、フェノール性水酸基含有樹脂およびエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物の合計100質量部に対して、0.01~1質量部の範囲が好ましく、0.05~0.8質量部の範囲がより好ましい。
【0149】
有機溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。この他、例えば、特開2023-028337号に記載の有機溶剤を用いてもよい。
【0150】
有機溶剤の量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。有機溶剤の量は、反応効率が良好となることから、反応原料の合計質量に対して0.1~5倍程度の質量の範囲で用いることが好ましい。
【0151】
有機溶剤と水との混合溶剤を使用してもよい。混合溶剤中における水の量は、混合溶剤100質量部に対して5~60質量部の範囲が好ましく、10~50質量部の範囲がより好ましい。
【0152】
重合禁止剤としては、例えば、メトキノンなどが挙げられる。この他、例えば、特開2023-028337号に記載の重合禁止剤を用いてもよい。
【0153】
酸化防止剤としては、重合禁止剤で例示した化合物を用いることができる。
【0154】
(硬化性樹脂組成物)
本発明に係る硬化性組成物は、
本発明の重合性不飽和基を有する樹脂と、
光重合開始剤と、
を含有する、硬化性樹脂組成物である。
【0155】
硬化性樹脂組成物における重合性不飽和基を有する樹脂の量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。硬化性樹脂組成物における重合性不飽和基を有する樹脂の量は、例えば、硬化性樹脂組成物の固形分100質量部に対して、重合性不飽和基を有する樹脂の固形分で20~98質量部である。
【0156】
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オンなどが挙げられる。この他、例えば、特開2023-028337号に記載の重合禁止剤も用いることができる。
【0157】
光重合開始剤の量は、適宜調節すればよい。例えば、光重合開始剤の量は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、0.5~20質量部の範囲である。
【0158】
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の重合性不飽和基を有する樹脂以外の樹脂成分(以下、「その他の樹脂成分」ということがある。)を含んでいてもよい。その他の樹脂成分としては、例えば、第2樹脂、(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられる。
【0159】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、硬化促進剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、酸化防止剤、有機溶剤、無機質充填材、ポリマー微粒子、顔料、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、難燃剤、保存安定化剤などの添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、特開2023-028337号に記載の添加剤が挙げられる。
【0160】
第2樹脂としては、例えば、特開2023-037525号に記載の重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂;特開2022-006902号に記載の重合性不飽和基を有するウレタン樹脂、重合性不飽和基を有するアクリル樹脂、重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂、重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂および重合性不飽和基を有するエステル樹脂などが挙げられる。
【0161】
第2樹脂は、酸基を有していてもよいし、有さなくてもよい。
【0162】
第2樹脂の量は、適宜調節すればよい。例えば、第2樹脂の量は、第1樹脂100質量部に対して、10~900質量部の範囲である。
【0163】
本発明に係る硬化性樹脂組成物の一実施形態では、第2樹脂をさらに含む。
【0164】
(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ビスフェノールAのEO変性ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートなどが挙げられる。この他、特開2023-028337号に記載の(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0165】
(メタ)アクリレートモノマーの量は、適宜調節すればよい。例えば、(メタ)アクリレートモノマーの量は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、1~90質量部である。
【0166】
硬化促進剤は、硬化反応を促進する働きを有する。硬化促進剤としては、例えば、リン系化合物、アミン系化合物、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸およびアミン錯塩などが挙げられる。
【0167】
硬化促進剤の量は、適宜調節すればよい。例えば、硬化促進剤の量は、硬化性樹脂組成物の固形分100質量部に対して、0.01~10質量部の範囲である。
【0168】
硬化性樹脂組成物は、本発明の重合性不飽和基を有する樹脂、光重合開始剤および任意の成分を混合することにより得ることができる。
【0169】
また、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物ないし当該硬化物からなる塗膜は、例えば、例えば、携帯電話、家電製品、自動車内装材、自動車外装材、事務機器、半導体デバイス、表示デバイス、撮像デバイス
などに好適に用いることができる。
【0170】
本発明の硬化性樹脂組成物に、活性エネルギー線を照射することで硬化物を得ることができる。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線などが挙げられる。
【0171】
紫外線発生源としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光およびLEDなどが挙げられる。
【0172】
硬化性樹脂組成物の硬化方法は特に限定されず、公知の光硬化性樹脂組成物の硬化方法を用いることができる。例えば、特開2023-028337号に記載の硬化方法を用いることができる。
【0173】
本発明に係る硬化物は、上記いずれかに記載の硬化性樹脂組成物の硬化物である。一実施形態では、本発明に係る硬化物は、塗膜である。
【0174】
本発明に係る物品は、本発明の硬化物からなる塗膜を有する。
【実施例0175】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0176】
GPC測定
以下の測定装置、測定条件を用いて、実施例および比較例で得られたフェノール性水酸基含有樹脂のMn、MwおよびMw/Mnを算出した。
試料:合成例で得られたフェノール性水酸基含有樹脂の樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したろ液(50μL)
測定装置、カラム、検出器、データ処理、測定条件および使用ポリスチレンは、特開2023-028337号の段落[0191]に記載の装置などと同じである。
【0177】
軟化点
測定法:JIS K7234(環球法)に準拠して、以下に示す合成例で得られたフェノール性水酸基含有樹脂の軟化点(℃)を測定した。
【0178】
FD-MS測定
特開2021-102714号の段落[0157]に記載の測定装置および測定条件でフェノール性水酸基含有樹脂のFD-MSスペクトルを測定した。
【0179】
13C-NMR測定
フェノール性水酸基含有樹脂の13C-NMRスペクトルを以下の測定装置および測定条件で測定した。
13C-NMR:日本電子製、商品名「JNM-ECZ400S」
共鳴周波数:100MHz
積算回数:4000回
溶媒:クロロホルム-d
試料濃度:12質量%
緩和試薬:クロム(III)アセチルアセトネート
【0180】
表2中の成分の詳細は以下のとおりである。
光重合性開始剤:2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、IGM Resins社製、商品名「Omnirad 907」
アクリレートモノマー:ビスフェノールAのEO変性ジアクリレート、Miwon社製、商品名「Miramer M-240」
【0181】
比較例用フェノール樹脂
ビフェニルアラルキルフェノール樹脂:明和化成社製、商品名「MEHC-7851SS」、水酸基当量:212g/当量
【0182】
銅箔:古河産業社製、電解銅箔、商品名「F2-WS」、18μm
粘弾性測定装置:DMA:レオメトリック社製、固体粘弾性測定装置、商品名「RSAII」
引張試験機:島津製作所社製、精密万能試験機オートグラフ、商品名「AG-IS」
【0183】
化合物名とその略称は以下のとおりである。
ジメチルスルホキシド:DMSO
メチルイソブチルケトン:MIBK
【0184】
合成例1:フェノール性水酸基含有樹脂A1の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管および撹拌器を取り付けたフラスコに、フルオレン100.0質量部、1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン273.4質量部、フェノール147.0質量部、トルエン520.4質量部および520.4質量部のDMSOを加え、40℃まで昇温して均質化させた。続いて、温度が60℃以下になるように49質量%の水酸化ナトリウム水溶液269.4質量部を滴下した。滴下後、温度を60℃まで昇温し、8時間反応させた後、水383.9質量部を加え、塩を溶かし、下層を分液で除去した。続いて、89質量%のリン酸水溶液6.88質量部で有機層を中和した後、383.9質量部の水で3回水洗した。次に、フェノール283.1質量部、p-トルエンスルホン酸一水和物を10.4質量部加え、水と溶剤を共沸させながら160℃まで昇温し、3時間反応させた。反応終了後、冷却し、49質量%の水酸化ナトリウム水溶液4.52質量部で有機層を中和し、812.8質量部のMIBKを加えながら80℃まで冷却し、80℃で575.8質量部の水で3回水洗した。得られた有機層を加熱および減圧蒸留して揮発分をすべて除去してフェノール性水酸基含有樹脂A1を得た。13C-NMRのチャートからフルオレンの9位から反応していることを確認した。FD-MSのチャートのm/z=558.3、754.4および826.4から、目的のフェノール性水酸基含有樹脂であることを確認した。
【0185】
合成例2:フェノール性水酸基含有樹脂A2の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管および撹拌器を取り付けたフラスコに、フルオレン100.0質量部、1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン210.6質量部、о-クレゾール130.1質量部、トルエン440.7質量部および440.7質量部のDMSOを加え、40℃まで昇温して均質化させた。続いて、温度が60℃以下になるように49質量%の水酸化ナトリウム水溶液297.7質量部を滴下した。滴下後、温度を60℃まで昇温し、8時間反応させた後、水424.2質量部を加え、塩を溶かし、下層を分液で除去した。続いて、89質量%のリン酸水溶液3.97質量部で有機層を中和した後、424.2質量部の水で3回水洗した。次に、о-クレゾール325.3質量部、p-トルエンスルホン酸一水和物を8.81質量部加え、水と溶剤を共沸させながら160℃まで昇温し、3時間反応させた。反応終了後、冷却し、49質量%の水酸化ナトリウム水溶液3.83質量部で有機層を中和し、661.1質量部のトルエンを加えながら80℃まで冷却し、80℃で424.2質量部の水で3回水洗した。得られた有機層を加熱および減圧蒸留して揮発分をすべて除去してフェノール性水酸基含有樹脂A2を得た。13C-NMRのチャートからフルオレンの9位から反応していることを確認した。FD-MSのチャートのm/z=586.4、796.5および1064.7から、目的のフェノール性水酸基含有樹脂であることを確認した。
【0186】
合成例3:フェノール性水酸基含有樹脂A3の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管および撹拌器を取り付けたフラスコに、フルオレン75.0質量部、1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン158.0質量部、2,6-ジメチルフェノール110.3質量部、トルエン343.2質量部および343.2質量部のDMSOを加え、40℃まで昇温して均質化させた。続いて、温度が60℃以下になるように49質量%の水酸化ナトリウム水溶液223.3質量部を滴下した。滴下後、温度を60℃まで昇温し、8時間反応させた後、水318.2質量部を加え、塩を溶かし、下層を分液で除去した。続いて、89質量%のリン酸水溶液2.98質量部で有機層を中和した後、318.2質量部の水で3回水洗した。次に、2,6-ジメチルフェノール165.4質量部、p-トルエンスルホン酸一水和物を6.86質量部加え、水と溶剤を共沸させながら160℃まで昇温し、3時間反応させた。反応終了後、冷却し、49質量%の水酸化ナトリウム水溶液2.98質量部で有機層を中和し、343.2質量部のトルエンを加えながら80℃まで冷却し、80℃で318.2質量部の水で3回水洗した。得られた有機層を加熱および減圧蒸留して揮発分をすべて除去してフェノール性水酸基含有樹脂A3を得た。13C-NMRのチャートからフルオレンの9位から反応していることを確認した。FD-MSのチャートのm/z=614.4および838.5から、目的のフェノール性水酸基含有樹脂であることを確認した。
【0187】
合成例4:フェノール性水酸基含有樹脂A4の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管および撹拌器を取り付けたフラスコに、フルオレン75.0質量部、1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン158.0質量部、2-ナフトール130.1質量部、トルエン363.1質量部および363.1質量部のDMSOを加え、40℃まで昇温して均質化させた。続いて、温度が60℃以下になるように49質量%の水酸化ナトリウム水溶液223.3質量部を滴下した。滴下後、温度を60℃まで昇温し、8時間反応させた後、水318.2質量部を加え、塩を溶かし、下層を分液で除去した。続いて、89質量%のリン酸水溶液2.98質量部で有機層を中和した後、318.2質量部の水で3回水洗した。次に、2-ナフトール195.2質量部、p-トルエンスルホン酸一水和物を7.26質量部加え、水と溶剤を共沸させながら160℃まで昇温し、3時間反応させた。反応終了後、冷却し、49質量%の水酸化ナトリウム水溶液3.15質量部で有機層を中和し、544.6質量部のトルエンを加えながら80℃まで冷却し、イソプロピルアルコール435.7質量部および水318.2質量部で3回水洗した。得られた有機層を加熱および減圧蒸留して揮発分をすべて除去してフェノール性水酸基含有樹脂A4を得た。13C-NMRのチャートからフルオレンの9位から反応していることを確認した。FD-MSのチャートのm/z=658.4、904.5および1172.7から、目的のフェノール性水酸基含有樹脂であることを確認した。
【0188】
合成例5:フェノール性水酸基含有樹脂A5の合成
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管および撹拌器を取り付けたフラスコに、フルオレン75.0質量部、4,4’-ビス(クロロメチル)ビフェニル294.2質量部、フェノール110.3質量部、トルエン479.5質量部および479.5質量部のDMSOを加え、40℃まで昇温して均質化させた。続いて、温度が60℃以下になるように49質量%の水酸化ナトリウム水溶液202.7質量部を滴下した。滴下後、温度を60℃まで昇温し、8時間反応させた後、水413.0質量部を加え、塩を溶かし、室温まで冷却した。続いて、89質量%のリン酸水溶液193.5質量部を滴下し中和した後、下層を分液で除去した。その際、下層が酸性であることを確認した。次に、フェノール212.3質量部およびp-トルエンスルホン酸一水和物を9.59質量部を加え、水と溶剤を共沸させながら160℃まで昇温し、3時間反応させた。反応終了後、トルエン719.2質量部を加えながら80℃まで冷却し、49質量%の水酸化ナトリウム水溶液4.2質量部を加えた後、394.0質量部の水で80℃で4回水洗して、有機層を中性とした。得られた有機層を加熱および減圧蒸留して揮発分をすべて除去してフェノール性水酸基含有樹脂A5を得た。13C-NMRのチャートからフルオレンの9位から反応していることを確認した。FD-MSのチャートのm/z=710.4および982.4から、目的のフェノール性水酸基含有樹脂であることを確認した。
【0189】
合成例6:フェノール性水酸基含有樹脂A6の合成
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管および撹拌器を取り付けたフラスコに、フルオレン50.0質量部、1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン79.0質量部、4,4’-ビス(クロロメチル)ビフェニル37.8質量部、テトラブチルアンモニウムブロミド7.76質量部、ヨウ化カリウム4.0質量部およびキシレン333.5質量部を加え、60℃まで昇温して均質化させた。続いて、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液154.7質量部を滴下した。滴下後、60℃で6時間反応させた。続いて、1-ナフトール91.1質量部、イソプロピルアルコール64.5質量部および水142.3質量部を加え、75℃まで昇温し、5時間反応させた。次いで、下層を分液で除去して、209.6質量部の水で6回水洗した。次に、1-ナフトール130.1質量部およびp-トルエンスルホン酸4.2質量部を加え、160℃まで昇温し、3時間反応させた。反応終了後、冷却し、49質量%の水酸化ナトリウム水溶液1.8質量部を加えて中和した。次いで、加熱および減圧蒸留して溶剤および1-ナフトールを留去して、フェノール性水酸基含有樹脂A6を得た。13C-NMRのチャートからフルオレンの9位から反応していることを確認した。FD-MSのチャートのm/z=658.4および734.4から、目的のフェノール性水酸基含有樹脂であることを確認した。
【0190】
得られたフェノール性水酸基含有樹脂A1~A6のMn、Mw、Mw/Mn、水酸基当量、軟化点およびMf/M1を表1に示す。
【0191】
【0192】
実施例1:重合性不飽和基を有する樹脂1の合成
温度計、撹拌器および還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート157.3質量部を入れ、合成例1で得たフェノール性水酸基含有樹脂A1を225質量部溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン0.9質量部およびメトキノン0.2質量部を加えた後、グリシジルメタクリレート142質量部およびトリエチルアミン1.8質量部を加え、空気を吹き込みながら120℃で15時間反応させた。次いで、リン酸1.8質量部を加え、80℃で2時間撹拌し、重合性不飽和基を有する樹脂1を得た。重合性不飽和基を有する樹脂1の不揮発分は70質量%であった。
【0193】
実施例2:重合性不飽和基を有する樹脂2の合成
温度計、撹拌器および還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート169.7質量部を入れ、合成例2で得たフェノール性水酸基含有樹脂A2を254質量部溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン1質量部およびメトキノン0.2質量部を加えた後、グリシジルメタクリレート142質量部、トリエチルアミン2質量部を加え、空気を吹き込みながら120℃で14時間反応させた。次いで、リン酸2質量部を加え、80℃で2時間撹拌し、重合性不飽和基を有する樹脂2を得た。重合性不飽和基を有する樹脂2の不揮発分は70質量%であった。
【0194】
実施例3:重合性不飽和基を有する樹脂3の合成
温度計、撹拌器および還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート177質量部を入れ、合成例3で得たフェノール性水酸基含有樹脂A3を271質量部溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン1質量部およびメトキノン0.2質量部を加えた後、グリシジルメタクリレート142質量部、トリエチルアミン2.1質量部を加え、空気を吹き込みながら120℃で13時間反応させた。次いで、リン酸2.1質量部を加え、80℃で2時間撹拌し、重合性不飽和基を有する樹脂3を得た。重合性不飽和基を有する樹脂3の不揮発分は70質量%であった。
【0195】
実施例4:重合性不飽和基を有する樹脂4の合成
温度計、撹拌器および還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート205.3質量部を入れ、合成例4で得たフェノール性水酸基含有樹脂A4を337質量部溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン1.2質量部およびメトキノン0.2質量部を加えた後、グリシジルメタクリレート142質量部、トリエチルアミン2.4質量部を加え、空気を吹き込みながら120℃で13時間反応させた。次いで、リン酸2.4質量部を加え、80℃で2時間撹拌し、重合性不飽和基を有する樹脂4を得た。重合性不飽和基を有する樹脂4の不揮発分は70質量%であった。
【0196】
実施例5:重合性不飽和基を有する樹脂5の合成
温度計、撹拌器および還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート183.9質量部を入れ、合成例5で得られたフェノール性水酸基含有樹脂A2を287質量部溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン1.1質量部およびメトキノン0.2質量部を加えた後、グリシジルメタクリレート142質量部およびトリエチルアミン2.1質量部を加え、空気を吹き込みながら120℃で16時間反応させた。次いで、リン酸2.1質量部を加え、80℃で2時間撹拌し、重合性不飽和基を有する樹脂5を得た。重合性不飽和基を有する樹脂5の不揮発分は70質量%であった。
【0197】
実施例6:重合性不飽和基を有する樹脂6の合成
温度計、撹拌器および還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート215.1質量部を入れ、合成例6で得たフェノール性水酸基含有樹脂A6を360質量部溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン1.3質量部およびメトキノン0.3質量部を加えた後、グリシジルメタクリレート142質量部、トリエチルアミン2.5質量部を加え、空気を吹き込みながら120℃で12時間反応させた。次いで、リン酸2.5質量部を加え、80℃で2時間撹拌し、重合性不飽和基を有する樹脂6を得た。重合性不飽和基を有する樹脂6の不揮発分は70質量%であった。
【0198】
比較例1:重合性不飽和基を有する樹脂C1の合成
温度計、撹拌器および還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート151.7質量部を入れ、ビフェニルアラルキルフェノール樹脂105質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン0.9質量部およびメトキノン0.2質量部を加えた後、グリシジルメタクリレート142質量部およびトリエチルアミン1.8質量部を加え、空気を吹き込みながら120℃で17時間反応させた。次いで、リン酸1.8質量部を加え、80℃で2時間撹拌し、重合性不飽和基を有する樹脂C1を得た。重合性不飽和基を有する樹脂C1の不揮発分は65質量%であった。
【0199】
実施例7~12、比較例2
表2に示す配合で各成分を混合して硬化性樹脂組成物を調製した。表2中の量は、固形分量を示す。
【0200】
【0201】
硬化性樹脂組成物1~6およびC1を用いて、以下の耐熱性、弾性率、比誘電率および誘電正接の評価を行った。結果を表2に合わせて示す。
【0202】
耐熱性
得られた硬化性樹脂組成物を、アプリケーターを用いて銅箔上に膜厚50μmとなるように塗布し、80℃で30分乾燥させた。次いで、10kJ/m2の紫外線を塗膜に照射した。その塗膜を160℃で1時間加熱して、硬化塗膜を得た。次いで、硬化塗膜を銅箔から剥離して硬化性樹脂組成物の硬化物を得た。この硬化物から6mm×35mmの試験片1を切り出し、粘弾性測定装置を用いて引張り法(周波数1Hz、昇温速度3℃/分)によって、弾性率変化が最大となる温度(℃)をガラス転移温度(Tg)として評価した。Tgが高いほど、耐熱性に優れることを示す。
【0203】
弾性率
上記耐熱性の評価と同様に、硬化性樹脂組成物から硬化物を得た。その硬化物から10mm×80mmの試験片2を切り出した。その試験片2について、精密万能試験機を用いて、以下の測定条件で引張試験を行った。試験片2が破断するまでの弾性率(MPa)を測定した。
測定条件
温度:23℃
湿度:50%
標線間距離:20mm
支点間距離:20mm
引張速度:10mm/分
【0204】
比誘電率
得られた硬化性樹脂組成物を、アプリケーターを用いてガラス基板上に膜厚50μmとなるように塗布し、80℃で30分乾燥させた。次いで、メタルハライドランプを用いて10kJ/m2の紫外線を塗膜に照射した。その塗膜を160℃で1時間加熱して、硬化塗膜を得た。次いで、硬化塗膜をガラス基板から剥離し、硬化性樹脂組成物の硬化物を得た。次いで、温度23℃、湿度50%の室内に24時間保管した硬化物を試験片3とし、アジレント・テクノロジー社製「ネットワークアナライザE8362C」を用いて、空洞共振法により試験片3の1GHzでの比誘電率を測定した。
【0205】
誘電正接
比誘電率の測定で得た試験片3について、上記「ネットワークアナライザE8362C」を用いて、空洞共振法により試験片3の1GHzでの誘電正接を測定した。